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特許7217091コーティングがない低圧永久鋳型のための方法および合金
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】コーティングがない低圧永久鋳型のための方法および合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/02 20060101AFI20230126BHJP
   C22C 1/02 20060101ALI20230126BHJP
   B22D 21/04 20060101ALI20230126BHJP
   B22D 18/04 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
C22C21/02
C22C1/02 503J
B22D21/04 A
B22D18/04 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018058605
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2018165405
(43)【公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】15/471668
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】318011897
【氏名又は名称】ブランズウイック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドナヒュー,レイモンド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】モンロー,アレクサンダー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ケビン アール
(72)【発明者】
【氏名】クリアリー,テランス エム
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-342425(JP,A)
【文献】特開2006-207024(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102899539(CN,A)
【文献】特開平09-272940(JP,A)
【文献】特開2008-093722(JP,A)
【文献】特開2009-178722(JP,A)
【文献】特開2016-049844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00 - 21/18
C22F 1/04 - 1/057
C22C 1/02
B22D 17/00 - 18/18
B22D 21/00 - 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属体を低圧永久鋳型鋳造するための方法であって、前記方法は、
永久鋳型鋳造ダイを調製するステップであって、前記永久鋳型鋳造ダイの表面に塗型剤及び離型剤のいずれも適用しないで前記調製が行われるステップと、
4.5~11.5重量%のケイ素、0.005~0.45重量%の鉄、0.20~0.40重量%のマンガン、0.045~0.110重量%のストロンチウム、0.05~5重量%の銅、0.10~0.7重量%のマグネシウムおよび残余のアルミニウムをからなる永久鋳型鋳造合金を調製するステップと、
前記永久鋳型鋳造合金を低圧で前記永久鋳型鋳造ダイに押し込み、永久鋳型鋳物を作製するステップと、
前記永久鋳型鋳物を冷却するステップと、
前記永久鋳型鋳造ダイから前記永久鋳型鋳物を取り出すステップと
を含み、
得られた前記永久鋳型鋳物の表面粗さRaが12.5μm以下である、方法。
【請求項2】
前記永久鋳型鋳造ダイから前記永久鋳型鋳物を取り出す前記ステップの後に、前記永久鋳型鋳物を熱処理するステップが追加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記永久鋳型鋳物を冷却するステップが、初晶金属間化合物を生成させずに前記永久鋳型鋳造合金を凝固させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記初晶金属間化合物が、AlFeSiまたはAl15(MnFe)Siである、請求項3請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記永久鋳型鋳物がLブラケットである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記永久鋳型鋳物が、一体スプラッシュプレートを備えるギアケースハウジングである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
永久鋳型鋳造ダイを調製する前記ステップが、少なくとも1つの薄肉部を有する永久鋳型鋳造ダイを調製するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記永久鋳型鋳造合金を前記永久鋳型鋳造ダイに押し込むステップが、前記合金が凝固する前に前記永久鋳型鋳造合金を前記薄肉部に押し込むステップを含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は冶金の分野にあり、とりわけ、永久鋳型鋳造プロセスを用いた金属体の鋳造を対象とする。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミニウム鋳物は、経済的な考慮、品質要件および技術的な考慮に応じて、少なからぬ鋳造プロセスによって製造される。インベストメント鋳造(ロストワックスとも呼ばれる。)、ロストフォーム鋳造、遠心鋳造、石膏鋳型鋳造、セラミック鋳型鋳造、スクイズ鋳造、半凝固鋳造、およびその変種のスラリー・オン・デマンド鋳造(slurry-on-demand casting)を含む多くの特殊な鋳造プロセスが存在するが、主な鋳造プロセスは、砂型鋳造、永久鋳型鋳造および高圧ダイカストの3つである。
【0003】
砂型鋳造では断熱性の砂型を使用し、冷却速度が比較的遅くなる。結晶粒度またはアルミニウムのデンドライトアーム間隔などのミクロ組織的特徴は比較的大きく、ミクロ組織的特徴のサイズと機械的特性との間の逆相関のために、機械的特性がより低くなることが予想される。これらの特徴および特性のために、その鋳物の品質は比較的低いと考えられる。たった1個から数千個までの範囲の量の非常に小さい鋳物および最大数トンの非常に大きい鋳物を砂型鋳造で製造することができる。大量のケースでは、砂型を鋳物毎に複製しなければならないため、砂型鋳物が最も費用がかかる。少量の場合、砂型鋳造の部品当たりの鋳型費は、永久鋳型鋳造または高圧ダイカストのものよりも低い。
【0004】
永久鋳型鋳造(重力か低圧かを問わず)では、溶融金属からの熱抽出を制御および制限する目的で、鋼製ダイと溶融アルミニウム合金との間の障壁を設けるために、コーティングがある金型またはダイを使用する。コーティング厚は変動するため、コーティングは、コーティングされたダイの中に鋳物が非化学的に付着して、鋳物をダイから取り出すときに人の介入または監視が必要になる原因となることも多い。したがって、高圧ダイカストとは異なり、低圧永久鋳型プロセスは完全に自動化されていない。場合によっては、熱抽出を制御し、向上させるためにダイの中の水路が使用される。水は、所与の温度および所与の流量で供給することができて、あるいは、水を油で置き換えることができる。その結果、砂型鋳造の遅い冷却速度と比較したとき、永久鋳型の冷却速度は大幅に高く、結晶粒度がより小さく、アルミニウムのデンドライトアーム間隔がより小さく、機械的特性がより高い、非常に高品質な鋳物が得られる。永久鋳型鋳造では、最大100kgの中型鋳物を、1,000個~100,000個の量で製造することができる。その結果、費用がかかる永久鋳型ではあるが、これを使用して100,000個以上の鋳物を製造することができるため、1ポンド当たりのコストは砂型鋳造よりも低いコストになる。鋳造プロセスの間に溶融合金がダイに溶着するのを防ぐため、鋼製ダイはコーティングでコーティングされる。ダイ上のコーティングは、コーティングの粗く、望ましくない形状を複製する表面仕上げが鋳物上に得られる。この粗い仕上げは、より平滑な表面仕上げを得るために、二次作業を必要とすることが多い。低圧永久鋳型鋳造では、溶融合金が3~15psiの範囲内で鋳型に押し込まれる。
【0005】
永久鋳型鋳造(重力か低圧かを問わず)は、経済的な完全なT6熱処理を可能にする唯一の鋳造プロセスであるため、最も機械的な部品が製造される。この固溶化熱処理は、膨れを避けながら、均質化したミクロ組織が得られる。高圧ダイカストでは、閉じ込められたダイの離型剤または空気による「膨れ」を避けるため、固溶化熱処理の時間を大幅に短くし、温度を大幅に下げなければならない。砂型鋳造では、対照的に、さもなければ粗いミクロ組織を均質化し、固溶化熱処理および人工時効の後に最も高い機械的特性を得るために、より長い固溶化熱処理の時間および温度を適用しなければならない。しかしながら、永久鋳型鋳造におけるダイ上のコーティングは、コーティングの粗い形状を複製するため、永久鋳型鋳造における表面仕上げは、砂型鋳造またはダイカストのいずれの表面平滑性にも匹敵しない。
【0006】
高圧ダイカストでは、コーティングされていないダイを使用し、凝固中、溶融金属への圧力を強化しながら溶融金属を高速でダイキャビティに注入する。部分的には乱流充填が理由で、しかしながら、主には耐ダイ溶着性(die soldering resistance)のために必要な(約1%の)高鉄分が理由で、より小さい結晶粒度およびより小さいアルミニウムのデンドライトアーム間隔にも関わらず、ダイカストの品質およびダイカストの機械的特性は、永久鋳型鋳物および砂型鋳物のいずれよりも低い。高圧ダイカストは、典型的には、最大約50kgの小さい鋳物である。高圧ダイカストの鋳型は費用がかかり、10,000個~100,000個の範囲内の大量の鋳物を製造することが予想される。したがって、高圧ダイカスト1ポンド当たりのコストは、永久鋳型鋳造または砂型鋳造よりも低い。
【0007】
構造用アルミニウムダイカストは、低鉄分の高圧ダイカストを指す。構造用アルミニウムダイカストでは、耐ダイ溶着性を与えるために、鉄の代わりに高レベルのマンガンが通常使用される。Silafont-36では、最大0.80%のマンガンを使用し、一方、Aural-2およびAural-3ではいずれも最大0.60%のマンガンを使用する。アルミニウム協会登録ダイカスト合金380、A380、B380、C380、D380、E380、381、383、A383、B383、384、A384、B384およびC384を含む従来の銅はすべて最大0.50%のマンガンを含み、スクラップから製造される低品質合金と見なされる。これらの最も低品質なダイカスト合金は、マンガンが高すぎるため、構造用アルミニウムダイカスト合金として使用することができない。あらゆるダイカスト合金の中でマンガンが最も重要な元素であると一般に考えられているが、その理由は、参考文献のLennard Backerud、Guocai Chai、Jamo Tamminen著、Solidification Characteristics of Aluminum Alloys、Vol.2-Foundry Alloys、1990 AFS BookによるAl-Si-Fe-Mn四元系状態図にしたがい、それ未満ではMn/Fe-金属間化合物が生成しない鉄レベルがマンガンによって決まるからである。マンガンが0.1%のとき、機械的特性、特に延性を低下させる金属間の初晶を避けるため、鉄は0.7%未満であるべきである。したがって、金属間の初晶を避けるため、Mnが0.2%のとき、鉄は0.6%未満であるべきであり、Mnが0.3%のとき、鉄は0.5%未満であるべきであり、Mnが0.4%のとき、鉄は0.4%未満であるべきであり、Mnが0.5%のとき、鉄は0.3%未満であるべきであり、Mnが0.6%のとき、鉄は0.2%未満であるべきであり、Mnが0.7%のとき、鉄は0.1%未満であるべきであり、最後にMnが0.8%のとき、鉄は0%未満であるべきであり、不可能なことである。上述の従来のダイカスト合金のいずれも、金属間の初晶を避けるためのマンガンと鉄の要件を満たさない。さらに、これは、Mnが0.8%で、Feが鉄のアルミニウム協会の規格限界の0.12%(これはかなり低い。)のSilafont-36は、依然として、延性を低下させる金属間化合物を析出させることを意味する。しかしながら、Mnが0.6%であるとき、初晶を避けるための鉄の限界値が0.20%未満であるため、Mnが0.6%で、鉄がアルミニウム協会の規格限界の0.25%のAural-2およびAural-3は、金属間化合物を析出させる傾向がSilafont-36よりも少ない可能性がある。
【0008】
高圧ダイカストのためのこのダイ溶着の解決策は、低圧永久鋳型鋳造プロセスでは機能しない。この理由は、初晶金属間化合物は、ダイカスト中よりも凝固中にさらに大きく成長し、機械的特性の低下により著しい影響を与えるであろうから、鉄および/またはマンガンは、耐ダイ溶着性のために高圧ダイカストにおいて(1.3%および2%という高いバルクレベルで)独占的に使用されているが、冷却がさらに遅い低圧永久鋳型鋳造プロセスでは耐ダイ溶着性のために使用することができないためである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
Lennard Backerud、Guocai Chai、Jamo Tamminen著、Solidification Characteristics of Aluminum Alloys、Vol.2-Foundry Alloys、1990 AFS Book
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
鉄またはマンガンのいずれかの10分の1の濃度のストロンチウムが、鉄またはマンガンのいずれかと同等の耐ダイ溶着性を与えることが見つかっている。それについては、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7347905号および第7666353号を参照されたい。耐ダイ溶着性のために0.05~0.08%のストロンチウムを利用し、0.25%~0.35%の範囲のマンガンを有する合金367、368および362などのこのような構造用アルミニウムダイカスト合金は、鉄が0.45%未満である場合、いかなる条件下でも、凝固時に初晶金属間化合物を析出させない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願は、コーティングがない低圧永久鋳型鋳造のための方法および合金を意図している。金属体を低圧永久鋳型鋳造するための方法は、永久鋳型鋳造ダイを調製するステップを含む。永久鋳型鋳造ダイは、ダイカスト表面に沿ってダイコーティングまたは潤滑がない。本発明の合金は、永久鋳型鋳造ダイに溶着しないことが見つかっており、永久鋳型の薄肉部からでも潤滑を必要とせずに押し出すことができるため、このようなダイコーティングまたは潤滑は必要ではない。本方法は、次に、4.5~11.5重量%のケイ素、最大0.45重量%の鉄、0.20~0.40重量%のマンガン、0.045~0.110重量%のストロンチウム、0.05~5.0重量%の銅、0.01~0.70重量%のマグネシウムおよび残余のアルミニウムを有する永久鋳型Al-Si鋳造合金の調製を意図している。いくつかの実施形態において、合金は、最大0.50重量%までのニッケルをさらに含んでもよい。他の実施形態では、永久鋳型鋳造合金を調製するステップは、4.2~5.0重量%の銅、0.005~0.45重量%の鉄、0.20~0.50重量%のマンガン、0.15~0.35重量%のマグネシウム、0.045~0.110重量%のストロンチウム、最大0.50重量%のニッケル、最大0.10重量%のケイ素、0.15~0.30重量%のチタン、最大0.05重量%のスズ、最大0.10重量%の亜鉛および残余のアルミニウムを有するAl-Cu永久鋳型鋳造合金の調製を意図している。
【0012】
本方法は、次に、合金の低圧での永久鋳型鋳造ダイへの押し込みを意図している。合金は、3~15psiの圧力範囲内で永久鋳型鋳造ダイに押し込んでもよい。合金を低圧で永久鋳型ダイに押し込むステップは、永久鋳型鋳物を作製するよう機能する。本方法は、永久鋳型鋳物の冷却および永久鋳型ダイからの永久鋳型鋳物の取り出しを意図している。永久鋳型ダイから永久鋳型鋳物を取り出すステップにおいて、永久鋳型鋳物は、永久鋳型ダイに溶着しない。本出願の方法によって製造される永久鋳型鋳物の表面粗さは、±500マイクロインチであるか、またはさらに良い。本出願の方法はまた、ダイから鋳物を取り出すステップの後に、鋳物を熱処理するステップを意図している。本方法はさらに、永久鋳型鋳物を冷却するステップが、Al5FeSiまたはAl15(MnFe)3Si2などの初晶金属間化合物を生成させずに合金を凝固させるステップをさらに含んでもよいことを意図している。
【0013】
本出願の方法は、他の種々の複雑な永久鋳型鋳物の中でも、Lブラケット、または一体スプラッシュプレートを備えるギアケースハウジングの永久鋳型鋳物を作製するために用いられてもよい。それについては、1つの実施形態において、本出願の方法は、永久鋳型鋳造ダイを調製するステップと、少なくとも1つの薄肉部を有する永久鋳型鋳造ダイを調製するステップとを意図している。その実施形態の方法において、合金を永久鋳型鋳造ダイに押し込むステップは、合金が凝固する前に合金を薄肉部に押し込むステップを含む。
【0014】
本出願はさらに、永久鋳型ダイに溶着せず、初晶金属間化合物を生成せず、かつダイ潤滑剤またはコーティングがない永久鋳型鋳造ダイの中で使用されてもよい永久鋳型鋳造プロセスのための独特の合金を意図している。1つの実施形態では、永久鋳型鋳造合金は、実質的に4.5~11.5%のケイ素、最大0.45重量%の鉄、0.20~0.40重量%のマンガン、0.045~0.110重量%のストロンチウムおよび残余のアルミニウムからなるAl-Si合金である。別の実施形態では、この合金は、さらに0.05~5.0重量%の銅からなっていてもよい。さらに別の実施形態では、この合金は、さらに0.10~0.70重量%のマグネシウムからなっていてもよい。さらに別の実施形態では、この合金は、さらに最大0.50重量%のニッケルからなっていてもよい。さらに別の実施形態では、この合金は、さらに最大4.5重量%の亜鉛からなっていてもよい。
【0015】
別の永久鋳型鋳造合金が意図され、この合金は、実質的に4.2~5.0重量%の銅、0.005~0.15重量%の鉄、0.20~0.50重量%のマンガン、0.15~0.35重量%のマグネシウム、0.045~0.110重量%のストロンチウム、最大0.05重量%のニッケル、最大0.10重量%のケイ素、0.15~0.30重量%のチタン、最大0.05重量%のスズ、最大0.10重量%の亜鉛および残余のアルミニウムからなるAl-Cu永久鋳型鋳造合金である。
【0016】
本出願によって意図される合金はすべて、ダイ潤滑剤またはコーティングが永久鋳型鋳造ダイ上に施されないのにも関わらず永久鋳型ダイに溶着しない。さらに、これらの合金の冷却中に金属間化合物は生成されず、特にAl5FeSiまたはAl15(MnFe)3Si2は生成されない。
【0017】
以下の図を参照して本開示を説明する。同様の特徴および同様の構成要素を参照するために同じ番号が図全体にわたって使用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ダイキャビティをコーティングするためにコーティングまたは潤滑が利用される従来の低圧永久鋳型鋳造プロセスによって製造されたLブラケットの写真である。
【0019】
図2】本出願の新規の低圧永久鋳型鋳造プロセスによって製造されたLブラケットの写真である。
【0020】
図3図1および図2のLブラケットを横に並べて比較した写真である。
【0021】
図4図3の近接写真である。
【0022】
図5】本出願にしたがって製造されたLブラケットの表面粗さ測定を示す図である。
【0023】
図6】本出願にしたがって製造されたLブラケットの表面粗さ測定を示す図である。
【0024】
図7】本出願にしたがって製造されたLブラケットの表面粗さ測定を示す図である。
【0025】
図8】ダイキャビティ内にコーティングまたは潤滑剤を有する従来の低圧永久鋳型鋳造によって製造されたLブラケットの表面粗さ測定を示す図である。
【0026】
図9】ダイキャビティ内にコーティングまたは潤滑剤を有する従来の低圧永久鋳型鋳造によって製造されたLブラケットの表面粗さ測定を示す図である。
【0027】
図10】本出願の方法にしたがって製造された薄い一体スプラッシュプレートを有するギアケースハウジングの側面図である。
【0028】
図11図10のギアケースハウジングの下面写真である。
【0029】
図12】ダイコーティングまたは潤滑剤を使用する従来の永久鋳型鋳造プロセスによって製造された、薄い一体スプラッシュプレートを備えるギアケースハウジングの側面写真である。
【0030】
図13図12のギアケースハウジングの下面図である。
【0031】
図14-18】アルミニウム-マンガン-鉄-ケイ素四元系の一連の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明者らは、永久鋳型ダイの溶着が発生するとき、または発生しないときを判断する式を見出した。その式は次の通りである。
(10[Sr]+Mn+Fe)>1.1
式の値は、本明細書において、「ダイ溶着係数(die soldering factor)」と呼ばれる。ダイ溶着係数が1.1未満である場合、ダイ溶着が発生すると予想される。反対に、ダイ溶着係数が1.1より大きい場合は、ダイ溶着が発生しないと予想される。
【0033】
適用例として、合金367および368は、0.065%が中間点の0.05%~0.08%の範囲のストロンチウム(Sr)、0.30%が中間点の0.25%~0.35%の範囲のマンガン(Mn)、および0.125%が中間点の0%~0.25%の範囲の鉄(Fe)を有する。式を適用すると、([10]0.065+0.30+0.125)=1.075となる。1.075の数字は1.1に切り上げられ、ダイ溶着が発生しないことを示す。
【0034】
本発明者らは、凝固時に初晶金属間化合物を析出させない耐ダイ溶着性を有するストロンチウム含有永久鋳型合金に永久鋳型合金を変換するときにダイ溶着係数を使用できることを見出した。予想外に、このような合金は、ダイ上にコーティングがない低圧永久鋳型鋳造プロセスにおいて鋳造することができる。コーティングがないと、より速い冷却速度が可能になり、これは機械的特性を高め、より短いサイクルタイムを促進し、これは製造コストを低減し、かつ、コーティングの非常に粗い表面形状ではなく、コーティングされていないダイ表面形状を複製するはるかに平滑な表面仕上げが得られる。
【0035】
0.045~0.110の範囲内の低レベルのストロンチウムによって耐ダイ溶着性が与えられるとき、従来から耐ダイ溶着性を与える2つの元素である鉄およびマンガンの全バルク濃度レベルを下げることができて、最終的に合金の機械的特性にとって利益になる。本発明の予想外の発見においてマンガンは重要な元素であるが、その理由は、それ未満では初晶のMn/Fe金属間化合物が生成しない特定の鉄濃度がマンガンによって決まるからである。この濃度を上回ると、金属間化合物が析出し、機械的特性、特に延性が低下する。
【0036】
鉄が0.2%、マンガンが最大0.1%のA356から合金が製造される応用において、ストロンチウムがその上限の0.08%でない限りダイ溶着が発生する。鉄の規格最大値が0.4%の合金362の場合、ストロンチウムがその中点値未満のとき、同じ条件下でダイ溶着が発生する。しかしながら、合金367または合金368のいずれかの場合、鉄分が0.2%、マンガンがその中域にあるとき、ストロンチウムがその規格下限値の0.05%以上であるとダイ溶着は発生しない。Silafont-36が、マンガンの規格上限の0.80%、鉄の上限の0.12%にあるとき、共晶ケイ素がストロンチウムで改質されていない場合、式の値はダイ溶着係数が0.92となり、ダイ溶着が予想される。さらに、そのマンガンの限界値が0.6%、鉄の限界値が0.25%であるAural-2およびAural-3は、0.85のダイ溶着係数を有する。したがって、共晶ケイ素が改質されていない場合、ダイ溶着が予想される。共晶ケイ素を改質するために、0.03%のストロンチウムをSilafont-36、Aural-2およびAural-3に加えることができて、3つの合金のダイ溶着係数に0.3が加えられ、Silafont 36は1.22、Aural-2およびAural-3は1.15になり、永久鋳型鋳物においてダイ溶着が避けられる。
【0037】
ここで表1を参照すると、そこには、「Designations and Chemical Composition Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingots」と題する2008年2月のピンクシートに記載されたすべてのアルミニウム協会の永久鋳型合金が表にされている。記載されたマンガン濃度は、それ未満では初晶金属間化合物が生成せず、合金の延性に影響しない鉄レベルを規定する。ダイ溶着係数の値が記載されており、先述の通り、1.1以上の値は、ダイ溶着がないことを示す。高い鉄レベル(すなわち、0.6重量%以上、好ましくは0.45重量%以上)ではダイ溶着が発生しないが、高鉄分は延性が不十分になり、最適な解決策ではない。

【表1】
【0038】
下の表2において、表1の同じ合金のマンガンレベルは0.25~0.35%の範囲に変更されており、鉄の値は最大0.45%に変更されている。したがって、0.05~0.08の好ましい範囲のその0.065の中点値のストロンチウムが加えられ、マンガンが、0.25~0.35の範囲のその0.30の中点値、鉄が、より良い延性のために0.40の保守的な限界値のとき、ダイ溶着係数の値は、(10[0.065]+0.30+0.40)=1.35である。ストロンチウムの好ましい範囲は0.05~0.08重量%であるが、適合するSr範囲は、0.045~0.110重量%のストロンチウムであることに留意されたい。表2の合金は、0.045~0.11重量%のストロンチウムを加えることによって一意に識別される、コーティングがない低圧永久鋳型鋳造のための合金である。
【表2】
【0039】
述べた通り、マンガンは、コーティングされていない金型を使用するあらゆる合金の中で重要な元素であるが、その理由は、図14のAl-Si-Mn-Fe状態図にしたがい、それ未満では有害なAl5FeSiおよびAl15(MnFe)3Si2の初晶金属間化合物が生成できない鉄レベルをマンガンが規定するからである。
【0040】
最良の熱処理条件(すなわち、鋳放し、T5、T6またはT7)および最良の機械的特性(すなわち、終局強度、耐力または伸び)を決定し、次いで、コーティングありとなしで低圧永久鋳型鋳造プロセス間の差を評価した。ASM Specialty Handbook「Aluminum and Aluminum Alloys」初版:1993年12月、表14、p.113および114の機械的特性の総説は、「鋳放し」伸びが許容される測定値であることを示唆している。その参考文献の表14から、以下の表3をまとめた。
【表3】
「鋳放し」条件が(必ずではないが)ほとんど最高伸び値であり、他の焼戻し条件では一般に伸びがさらに低かったため、この条件を選択した。
【0041】
図1および図2を参照すると、シート用の背板および2つのバーを備えたLブラケットが示されている。図1は、通常のコーティングを有する低圧永久鋳型内で製造し、図2は、コーティングがない低圧永久鋳型内で製造した。図2の優れた美しさが明らかである。図3および図4は、図1および図2のLブラケットをさらに高い倍率で示し、図中、両方のLブラケットを横に並べてある。コーティングなしで製造したLブラケットが左側であり、コーティングなしで製造したLブラケットが優れた美しさを示すことは明らかである。
【0042】
各仕上げの平滑性を図5図9の表面粗さで定量化した。図5図7では、コーティングされていないLブラケットダイの表面粗さが±500マイクロインチ以下と測定されたが、コーティングされたダイは、図8図9によって示される通り、±2200マイクロインチRaの表面粗さを示した。これは、コーティングされていないダイは、図5図9の表面走査が示す通り、ほぼ5倍優れた表面仕上げが得られることを意味する。さらに具体的には、コーティングされていないLブラケットダイについて、図5および図6は、+300マイクロインチRa~-300マイクロインチRaの間の範囲を有していたが、図7は、+250マイクロインチRa~-250マイクロインチRaの間の範囲を有していた。コーティングされたLブラケットダイについては、図8は、+1,000マイクロインチRa~1,200マイクロインチRaの間の範囲を有し、図9は、+1,200マイクロインチRa~-1,300マイクロインチRaの間の範囲を有していたが、これらはコーティングされていないダイの結果よりも著しく粗い仕上げを示す。したがって、本出願の方法および合金によって得られる鋳物の表面粗さは、±500マイクロインチRaであるか、またはさらに良い。
【0043】
したがって、永久鋳型鋳造においてダイからコーティングを排除する一方で機械的特性を改善することにより、本出願は、永久鋳型鋳物の表面の美しさ、ならびに弱い力で鋳型から取り出すことができる鋳造の能力を改善する。後者の特徴によって、本出願による低圧永久鋳造プロセスを、より低コストの鋳造プロセスとして完全に自動化することができて、これは、コーティングがあると、非化学的付着の問題により不可能である。これがすべて可能であるのは、高レベルの鉄およびマンガンではなく、低レベルのストロンチウムによって与えられる耐ダイ溶着性を有する永久鋳型鋳造合金が利用されるからである。鉄およびマンガンが、耐ダイ溶着性のために、構造用アルミニウムダイカストにおいて0.6%および0.8%のバルクレベルで使用されるとき、ならびに従来の高圧ダイカストにおいて1.0%以上で使用されるとき、延性を低下させ、特性に影響するこれらの元素を含む化合物がミクロ組織内に見える。永久鋳型鋳物のさらに遅い冷却速度では、鉄およびマンガンの化合物がダイカスト中よりも大きく成長し、機械的特性にさらに害を与える。対照的に、ストロンチウムを0.05%~0.08%加えても、ストロンチウムを含む見える化合物はミクロ組織内に生じず、したがって、ダイ上にコーティングがない低圧永久鋳型鋳造において耐ダイ溶着性を与える理想的な元素である。さらに、永久鋳型ダイからコーティングを排除することによって鋳物はより速く冷却し、永久鋳型鋳物の高い機械的特性をさらに高く向上させ、かつサイクルタイムを増加させ、それによって、永久鋳型鋳物の製造コストを低減する。
【0044】
長さ8インチ×幅3/4インチの平坦な全厚のバー(厚さ1/2インチ)と、「鋳放し」表面を含む片面[すなわち、8インチ×3/4インチの面]を有する厚さが半分のバー(厚さ1/4インチ)とを、「鋳放し」機械的特性を試験するために、図1および図2に示したLブラケットから切り出した。ゲージ長2インチの合金367のこれら2つのタイプの引張試験片の「鋳放し」機械的特性を下の表4に示した。
【表4】
【0045】
「全厚の平坦な」サンプルと「片面スキンの平坦な」サンプルのいずれも、コーティングされたダイよりもコーティングされていないダイのUTS、伸びおよび品質指標値が高かった。平均値の平均は、コーティングされていないダイが、コーティングされたダイよりも15%高いUTS、同等の耐力、57%高い伸びおよび22%高い品質指標を与えることを示す[ここで、品質指標=UTS[MPa]+150log(伸び)]。
【0046】
上述に加えて、6つの円形の引張試験片(直径0.5およびゲージ長2インチ)それぞれを、図1および図2の「鋳放し」の1 1/4インチ厚の設定区画から切り出した。機械的特性を表5に示した。
【表5】
【0047】
スチューデントのt検定を用いて、最大引張応力について計算されたt値は2.418であることが明らかになった。自由度=6+6-2=10における表5のデータの表のt値は2.228である。したがって、計算されたt値2.418は、自由度10における表の値2.228よりも大きいので、本発明者らは、平均が等しく、標準偏差が等しい2つの母集団から選択する確率は5%よりもかなり小さく、この結果は統計的に有意であることを示すと結論付ける。したがって、コーティングされていないダイの使用と、コーティングされたダイの使用との間の差は、コーティングされていないダイが、より良い機械的特性を与えると結論付けるのに十分である。
【0048】
合金367(9.1重量%のSi、0.06重量%のSr、0.20重量%のFe、0.13重量%のCu、0.31重量%のMn、0.49重量%のMg)について、ダイ上のコーティングありとなしのLブラケットから得られる直径0.5インチ、ゲージ長2インチの引張試験片の機械的特性の平均を表6に示した。スチューデントt検定は、コーティングありとなしの相対的な最大引張強度が、T61およびT62両方の熱処理について、有意水準5%で有意であることを示す。反対に、T62の熱処理について、コーティングありとなしの相対的な耐力のみが有意水準5%で有意である。したがって、強度特性は、コーティングが排除されたときにより高くなるように見受けられる。
【表6】
【0049】
合金362(11.5重量%のSi、0.07重量%のSr、0.41重量%のFe、0.10重量%のCu、0.69重量%のMg)および規格外の319合金(4.5重量%のSi、0.05重量%のSr、0.45重量%のFe、3.9重量%のCu、0.40重量%のMn、0.14重量%のMg)について、これらの同じ機械的特性を測定し、表7の同様の結果を得たが、5つの試験片の平均は、5つの別々のLブラケットシートそれぞれから切り出した試験片からのものであり、試験片の表面は、Lブラケットの鋳放し表面を有していた。コーティングが排除されたとき、より速い冷却速度と、より平滑な表面仕上げの両方が、サンプルのより高い機械的特性に寄与した。
【表7】
【0050】
ここで図10および図11を参照すると、一体スプラッシュプレートを備えるギアケースハウジングのための低圧永久鋳型鋳物が、ダイ上のコーティングなしで製造された。これらの部品のいずれも、厚肉部に対して垂直な薄肉部を有し、ダイ上にコーティングがない低圧永久鋳型内で複雑な部品構造が製造され得ることを示す。図10および図11は、ダイ上にコーティングがない低圧永久鋳型鋳造プロセスにおいて製造された薄い一体スプラッシュプレートを備える35ポンドのギアケースハウジングである。図12および図13は、ダイ上に従来のコーティングがある低圧永久鋳型内で製造された薄い一体スプラッシュプレートを備える同様のギア鋳造ハウジングであり、コーティングなしで製造された図10および図11のギアケースと比べたとき、鋳物表面仕上げがより粗く、色がくすんでいることが明らかである。ダイからコーティングを排除すると、これは、低圧永久鋳型鋳造プロセスの穏やかで遅い充填の間に溶融金属から膨大な量の熱が抽出されることが従来は予想されたが、予想外に、より厚い部分に対して垂直な薄く狭い部分でも、凝固が始まる前にダイの充填を妨げることはなかった。従来、この業界では、ダイ溶着が予想されたため、ダイコーティングの排除を試みることすら思いとどまっていた。実際、これは、予想されるダイ溶着を避けるために、ダイから剥落するコーティング部分をリコートしなければならない現行の永久鋳型鋳造プロセスでは問題である。コーティング部分がダイから剥落するときのこの予想されるダイ溶着の問題のために、当業者がすべてのコーティングを意図的に排除することはないであろう。
【0051】
やはり、鉄またはマンガンのいずれかの10分の1の濃度で機能し、鉄またはマンガンと同等か、あるいはこれらより良い耐ダイ溶着性を与え、0.25~0.35重量%の範囲のマンガンを可能にし、かつ初晶金属間化合物の析出を避けるため、鉄分が0.45%未満であることを必要とし、この新規の革新的なコーティングされていない永久鋳型ダイプロセスを実行可能にするのはストロンチウムである。
【0052】
したがって、金属体を低圧永久鋳型鋳造するための方法が開示されている。本方法は、ダイカスト表面に沿ってダイコーティングまたは潤滑がない永久鋳型鋳造ダイの調製を意図している。溶融合金によるダイ溶着から保護するための、鋼製永久鋳型ダイ上に機械的に結合した障壁コーティングの必要性は、本出願では単に必要でない。さらに、このような機械的に結合した障壁コーティングがないため断熱もなくなり、凝固プロセスのサイクルタイムが短縮される。本方法は、次に、永久鋳型鋳造合金の調製を意図している。永久鋳型鋳造合金は、1つの実施形態では、実質的に4.5~11.5重量%のケイ素、0.005~0.45重量%の鉄、0.20~0.40重量%のマンガン、0.45~0.110重量%のストロンチウムおよび残余のアルミニウムからなる。別の実施形態では、この合金は、さらに0.05~5重量%の銅からなる。さらに別の実施形態では、この合金は、さらに0.10~0.70重量%のマグネシウムからなる。さらに別の実施形態では、この合金は、さらに最大0.50重量%のニッケルからなり、さらに別の実施形態では、この合金は、さらに最大4.5重量%の亜鉛からなる。さらに別の実施形態では、この合金は、実質的に4.2~5重量%の銅、0.005~0.15重量%の鉄、0.20~0.50重量%のマンガン、0.15~0.35重量%のマグネシウム、0.045~0.110重量%のストロンチウム、最大0.05重量%のニッケル、最大0.10重量%のケイ素、0.15~0.30重量%のチタン、最大0.05重量%のスズ、最大0.10重量%の亜鉛および残余のアルミニウムからなるアルミニウム永久鋳型鋳造合金であってもよい。
【0053】
本出願の方法は、調製した合金を低圧で永久鋳型鋳造ダイに押し込み、永久鋳型鋳物を作製することを意図している。この圧力は、3~15psiの範囲内であってもよい。次に、本方法は、永久鋳型鋳物の冷却およびダイからの永久鋳型鋳物の取り出しを意図している。特定の実施形態では、ダイから鋳物を取り出すステップの後に、鋳物を熱処理するステップが追加される。本発明の方法は、ダイ上のコーティングまたは潤滑がない低圧永久鋳型鋳造プロセスを意図している。コーティングまたは潤滑が存在しないため、鋳造品はダイに接着または付着せず、弱い力で取り出すことができる。これによって、コーティングを加えたり、またはダイから鋳物を取り出すための人の介入が必要でないため、本出願の方法を完全に自動化することができる。したがって、永久鋳型鋳造ダイを調製するステップ、合金を調製するステップ、合金を永久鋳型に押し込むステップ、永久鋳型鋳物を冷却するステップ、鋳物を熱処理するステップ、または永久鋳型ダイから鋳物を取り出すステップのうちの1つまたは複数が完全に自動化されてもよい。特定の実施形態では、すべての方法が完全に自動化されており、他の実施形態では、選択されたステップが自動化されている。
【0054】
本出願の方法が利用されるとき、永久鋳型鋳物は永久鋳型ダイに溶着しない。さらに、鋳物の表面粗さは±500マイクロインチRa以下である。さらに、永久鋳型鋳物を冷却するステップは、主としてAl5FeSiまたはAl15(MnFe)3Si2などの金属間化合物を生成させずに合金を凝固させるステップを意図している。本方法は、単純な永久鋳型鋳物または複雑な永久鋳型鋳物を作製するために用いられてもよい。先述の通り、本方法は、Lブラケット、または一体スプラッシュプレートを備えるギアケースハウジングを作製するために用いられてもよい。
【0055】
少なくとも1つの薄肉部を有する鋳物など、複雑な鋳物を作製するために本方法が用いられる例では、合金を永久鋳型鋳造ダイに押し込むステップは、合金が凝固する前に合金を薄肉部に押し込むステップを含む。
【0056】
本開示では、簡潔さ、明確さおよび理解のために特定の用語を用いた。このような用語は説明のためだけに用いられ、広く解釈されることが意図されるため、それらから先行技術の要件を越えて不必要な限定は推論されない。本明細書に記載の様々な装置は、単独で、または他の装置と組み合わせて使用されてもよい。様々な均等物、代替および修正が添付された特許請求の範囲内で可能である。添付された特許請求の範囲内のそれぞれの限定は、「のための手段」または「のためのステップ」という用語がそれぞれの限定において明示的に記載されている場合にのみ、米国特許法(35U.S.C.)第112条第6項に基づいて解釈されるものとする。
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