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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ワッシャ及びワッシャの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/06 20060101AFI20230126BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20230126BHJP
   F16C 33/14 20060101ALI20230126BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
F16C33/06
F16C33/10 Z
F16C33/14 Z
F16C17/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018157580
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2020029947
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】落合 洋一
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-165824(JP,U)
【文献】特表2016-529450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/02-33/28
F16C 17/04
F16C 9/02-9/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの円弧状部材を有するワッシャであって、
前記円弧状部材は、円弧状に形成された本体部と、
前記本体部の外周面において所定方向に突出するように形成された爪部と、
前記本体部の内周面において前記爪部に対応する位置に形成された切欠部と、
を具備し、
前記切欠部は、
当該切欠部と前記爪部とを互いの厚さ方向を揃えて仮想的に重ね合わせた場合に、前記爪部の少なくとも先端部を内側に収納可能な形状に形成され、
前記本体部は、
厚さ方向一方面において、前記爪部と前記切欠部との間に亘って前記本体部の油溝が形成され、
前記爪部は、
前記本体部の外周面に対して前記所定方向として前記本体部の厚さ方向において前記油溝とは反対側に延びるように形成され、
前記油溝の溝深さ寸法、前記油溝の底部の厚さ寸法、及び、前記爪部の厚さ寸法は、それぞれ互いに同一に形成されている、
ワッシャ。
【請求項2】
前記爪部の厚さ寸法は、前記本体部の厚さ寸法よりも小さい、
請求項1に記載のワッシャ。
【請求項3】
前記切欠部の厚さ方向に見た形状は、厚さ方向に見た前記爪部の少なくとも先端部の形状と、同一形状である、
請求項1又は請求項2に記載のワッシャ。
【請求項4】
少なくとも一つの円弧状部材を有するワッシャの製造方法であって、
板状の素材を準備する準備工程と、
円弧状に形成されると共に、外周面において所定方向に突出するように爪部が形成され、内周面において前記爪部に対応する位置に切欠部が形成された第一の円弧状部材を、前記素材から抜き取る第一抜き取り工程と、
前記第一抜き取り工程の後、前記第一の円弧状部材と同一形状とされた第二の円弧状部材を、前記素材から抜き取る第二抜き取り工程と、
を具備し、
前記第二抜き取り工程は、
前記第一抜き取り工程において前記第一の円弧状部材の前記爪部を抜き取った跡が、前記第二の円弧状部材の切欠部の少なくとも一部を構成するように、又は、前記第一抜き取り工程において前記第一の円弧状部材の前記切欠部を抜き取った跡が、前記第二の円弧状部材の爪部の少なくとも一部を構成するように、前記第二の円弧状部材を前記素材から抜き取り、
前記第一抜き取り工程の前に、前記素材の厚さ方向一方面において、一方向に溝を形成する溝形成工程を具備し、
前記第一抜き取り工程及び前記第二抜き取り工程において、前記溝と、前記第一の円弧状部材及び前記第二の円弧状部材の前記爪部及び前記切欠部と、が厚さ方向に見て重なり合うように、前記第一の円弧状部材及び前記第二の円弧状部材を前記素材から抜き取り、
前記第二抜き取り工程により抜き取られた前記第二の円弧状部材において前記爪部を前記溝とは反対側に折り曲げる折り曲げ工程を具備し、
前記溝の溝深さ寸法、前記溝の底部の厚さ寸法、及び、前記爪部の厚さ寸法は、それぞれ互いに同一に形成されている、
ワッシャの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワッシャ及びワッシャの製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワッシャ及びワッシャの製造方法の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、板状の素材を所定の金型を用いて抜き取ることで形成されるワッシャ及びワッシャの製造方法が記載されている。上記特許文献1に記載されたワッシャの製造方法では、板状の素材から、ワッシャを構成する円弧状の複数のワッシャ片を一方向に揃えて抜き取る構成とされている。
【0004】
上記特許文献1に記載されたワッシャの製造方法では、複数のワッシャ片を、互いに間隔を空けて抜き取る構成とされている。ここで、上記ワッシャ片には、上記一方向に突出した爪部が形成されている。これにより、板状の素材における複数のワッシャ片間の余剰部分が大きくなってしまい、材料歩留まりが悪くなる。従って、ワッシャの低コスト化が図り難いという点において改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-105423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、低コスト化が可能とされたワッシャ及びワッシャの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、少なくとも一つの円弧状部材を有するワッシャであって、前記円弧状部材は、円弧状に形成された本体部と、前記本体部の外周面において所定方向に突出するように形成された爪部と、前記本体部の内周面において前記爪部に対応する位置に形成された切欠部と、を具備し、前記切欠部は、当該切欠部と前記爪部とを互いの厚さ方向を揃えて仮想的に重ね合わせた場合に、前記爪部の少なくとも先端部を内側に収納可能な形状に形成され、前記本体部は、厚さ方向一方面において、前記爪部と前記切欠部との間に亘って前記本体部の油溝が形成され、前記爪部は、前記本体部の外周面に対して前記所定方向として前記本体部の厚さ方向において前記油溝とは反対側に延びるように形成され、前記油溝の溝深さ寸法、前記油溝の底部の厚さ寸法、及び、前記爪部の厚さ寸法は、それぞれ互いに同一に形成されているものである。
【0010】
請求項においては、前記爪部の厚さ寸法は、前記本体部の厚さ寸法よりも小さいものである。
【0011】
請求項においては、前記切欠部の厚さ方向に見た形状は、厚さ方向に見た前記爪部の少なくとも先端部の形状と、同一形状であるものである。
【0012】
請求項4においては、少なくとも一つの円弧状部材を有するワッシャの製造方法であって、板状の素材を準備する準備工程と、円弧状に形成されると共に、外周面において所定方向に突出するように爪部が形成され、内周面において前記爪部に対応する位置に切欠部が形成された第一の円弧状部材を、前記素材から抜き取る第一抜き取り工程と、前記第一抜き取り工程の後、前記第一の円弧状部材と同一形状とされた第二の円弧状部材を、前記素材から抜き取る第二抜き取り工程と、を具備し、前記第二抜き取り工程は、前記第一抜き取り工程において前記第一の円弧状部材の前記爪部を抜き取った跡が、前記第二の円弧状部材の切欠部の少なくとも一部を構成するように、又は、前記第一抜き取り工程において前記第一の円弧状部材の前記切欠部を抜き取った跡が、前記第二の円弧状部材の爪部の少なくとも一部を構成するように、前記第二の円弧状部材を前記素材から抜き取り、前記第一抜き取り工程の前に、前記素材の厚さ方向一方面において、一方向に溝を形成する溝形成工程を具備し、前記第一抜き取り工程及び前記第二抜き取り工程において、前記溝と、前記第一の円弧状部材及び前記第二の円弧状部材の前記爪部及び前記切欠部と、が厚さ方向に見て重なり合うように、前記第一の円弧状部材及び前記第二の円弧状部材を前記素材から抜き取り、前記第二抜き取り工程により抜き取られた前記第二の円弧状部材において前記爪部を前記溝とは反対側に折り曲げる折り曲げ工程を具備し、前記溝の溝深さ寸法、前記溝の底部の厚さ寸法、及び、前記爪部の厚さ寸法は、それぞれ互いに同一に形成されているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、低コスト化が可能とされたワッシャを提供することができる。また、油溝を形成したことで、潤滑油をワッシャの摺動面に供給し易い構成とすることができる。
【0017】
請求項においては、ワッシャの軽量化を図ることができる。
【0018】
請求項においては、ワッシャのコストの低減を可能としながらも、摺動面を確保することができる。
【0019】
請求項においては、ワッシャの低コスト化を図ることができる。また、円弧状部材を素材から打ち抜いた後に、油溝を形成するような製造方法と比べて、容易に油溝を有するワッシャを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るワッシャの構成を示した正面図。
図2】ワッシャ片の構成を示した正面図。
図3】(a)爪部を径方向に突出させた状態のワッシャ片を示した斜視図、(b)爪部を厚さ方向に突出させた状態のワッシャ片を示した斜視図。
図4】ワッシャの製造方法を示したフローチャート。
図5】(a)準備工程における素材を示した正面図、(b)溝形成工程で、溝を形成した様子を示した正面図。
図6】(a)第一抜き取り工程で、第一ワッシャ片が抜き取られた様子を示した正面図、(b)第二抜き取り工程で、第一ワッシャ片の切欠部を抜き取った跡が、第二ワッシャ片の爪部の先端部を構成するように、第二ワッシャ片が抜き取られた様子を示した正面図。
図7】第一抜き取り工程にて抜き取られる第一ワッシャ片と第二抜き取り工程にて抜き取られる第二ワッシャ片との、素材における互いの位置関係を示した模式図。
図8】(a)第一抜き取り工程で、第一ワッシャ片が抜き取られた様子を示した正面図、(b)第二抜き取り工程で、第一ワッシャ片の爪部を抜き取った跡が、第二ワッシャ片の切欠部を構成するように、第二ワッシャ片が抜き取られた様子を示した正面図。
図9】(a)切欠部が形成されていないワッシャ片が抜き取られた様子を示した正面図、(b)第一抜き取り工程で、切欠部が形成されていないワッシャ片の爪部を抜き取った跡が、第一ワッシャ片の切欠部を構成するように、第一ワッシャ片が抜き取られた様子を示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0023】
以下では、図1から図3までを用いて、本発明の第一実施形態に係るワッシャ1の構成について説明する。
【0024】
ワッシャ1は、適宜荷重を受けるための部材である。ワッシャ1は、図1に示すように、厚さ方向に見て(正面視)円環状に形成される。ワッシャ1は軸方向(前後方向)の荷重を受けることができる。ワッシャ1は、車両の動力伝達機構において同軸上に設けられ、互いに相対回転可能な二つの回転部材(不図示)の間に配置される。ワッシャ1は、厚さ方向一方面(前面)が二つの回転部材のうち、前方に位置する回転部材(例えば、プーリ等)に対して摺動する。また、ワッシャ1は、厚さ方向他方面(後面)が、後方に位置する回転部材(例えば、プラネタリギヤ等)に対向するように、後述する爪部50を介して当該回転部材に固定される。
【0025】
ワッシャ1は、複数(本実施形態においては、4つ)のワッシャ片10により構成される。ワッシャ1は、4つのワッシャ片10がそれぞれ接続され、全体として円環状に形成される。本実施形態において、4つのワッシャ片10は、互いに同一形状(同寸同形状)に形成される。
【0026】
なお、以下では説明の便宜上、ワッシャ1の周方向を単に「周方向(円弧方向)」、ワッシャ1の径方向を単に「径方向」とそれぞれ称する。また、4つのワッシャ片10のうち、図1における上部に配置されたワッシャ片10を「第一ワッシャ片11」、右部に配置されたワッシャ片10を「第二ワッシャ片12」、下部に配置されたワッシャ片10を「第三ワッシャ片13」、左部に配置されたワッシャ片10を「第四ワッシャ片14」とそれぞれ称する。
【0027】
また、これらのワッシャ片10は、上述の如く互いに同一形状(同寸同形状)に形成されるため、以下では、主として第一ワッシャ片11について詳細に説明し、その他のワッシャ片10の詳細な説明は適宜省略するものとする。
【0028】
第一ワッシャ片11は、その板面を前後方向に向けた板状に形成される。第一ワッシャ片11は、適宜の金属材料(例えば、表面に耐摩耗性等が高い金属を焼結させたバイメタル材や鉄系材料等)によって形成される。第一ワッシャ片11は、主として本体部20、第一嵌合部30、第二嵌合部40、爪部50、切欠部60及び油溝70を具備する。
【0029】
本体部20は、第一ワッシャ片11の主たる部分を形成する部分である。本体部20は、厚さ方向に見て、中心角が約90度の円弧状に形成される。なお以下では、本体部20の、周方向における右側の端部を「右側端部」、周方向における左側の端部を「左側端部」とそれぞれ称する。
【0030】
図1及び図2に示す第一嵌合部30は、本体部20の右側端部から周方向(円弧方向)に凸となる部分である。第一嵌合部30は、第一ワッシャ片11の周方向右下隣の第二ワッシャ片12の第二嵌合部40と嵌合される。第一嵌合部30は、径方向に沿う最大の寸法が、基端部の径方向に沿う寸法よりも大きく形成される。図例では、厚さ方向に見て、第一嵌合部30の周方向先端部を略真円状とした例を示している。また、第一嵌合部30は、全体として、厚さ方向に見て丸みを帯びた形状(角が無い形状)に形成される。これにより、第一嵌合部30は、素材Mからプレス加工により打ち抜き易い形状に形成される。
【0031】
図1及び図2に示す第二嵌合部40は、本体部20の左側端部から周方向(円弧方向)に凹となる部分(切り欠いた部分)である。第二嵌合部40は、厚さ方向に見て、第一嵌合部30に対応した形状とされる。第二嵌合部40は、第一ワッシャ片11の周方向左下隣の第四ワッシャ片14の第一嵌合部30と嵌合される。
【0032】
図1に示すように、第一嵌合部30及び第二嵌合部40は、互いにかみ合った状態で嵌合される。各ワッシャ片10は、第一嵌合部30及び第二嵌合部40が互いに嵌合した状態で、適宜のかしめ装置を用いたプレス加工によってかしめられることで、互いに固定される。
【0033】
爪部50は、図1から図3までに示すように、本体部20の外周面において、本体部20に対して突出するように形成された部分である。爪部50は、図1図2及び図3(a)に示すように、径方向に突出した状態から、図3(b)に示すように、本体部20に対して後方(厚さ方向)に突出するように折り曲げ可能である。
【0034】
爪部50は、本体部20の外周面において周方向中央に形成される。爪部50は、厚さ方向に見て略矩形状に形成される。爪部50は、厚さ寸法が本体部20の厚さ寸法(後述する油溝70が形成された部分を除いた本体部20の厚さ寸法)よりも小さく形成される。図3に示す例では、爪部50の厚さ寸法を、本体部20の厚さ寸法の1/2程度としている。爪部50の厚さ寸法は、爪部50を折り曲げる際の加工性や強度等の観点から適宜の寸法を採用可能である。
【0035】
図例では、爪部50の本体部20に対する突出寸法を、本体部20の径方向に沿う寸法よりもやや大きい寸法としている。また、図例では、爪部50の幅寸法(厚さ方向に見て突出寸法に対して直交する寸法)を、本体部20の径方向に沿う寸法よりもやや小さい寸法としている。爪部50の突出寸法及び幅寸法は、強度等の観点から適宜の寸法を採用可能である。
【0036】
爪部50は、図1図2及び図3(a)に示す状態(折り曲げる前の状態)では、前面が、本体部20の前面(摺動面)よりも後方側(厚さ方向他方側)に位置する。また、爪部50は、当該爪部50の後面が本体部20の後面と同一平面状とされている。上述した構成としたことで、爪部50を本体部20に対して後方に突出するように折り曲げる加工を行なう場合に、本体部20の前面(摺動面)に加工の影響が及ぶことを抑制することができる。
【0037】
爪部50は、図3(b)に示すように、後方に突出するように折り曲げられた状態では、ワッシャ1の後方に位置する回転部材に対して係合可能となる。ワッシャ1は、爪部50が回転部材に対して係合することで、当該回転部材に対して固定される。これにより、ワッシャ1は、当該回転部材に対する回転が規制される。
【0038】
切欠部60は、本体部20の内周面において、厚さ方向及び径方向内側に開口するように切り欠かれた部分である。本実施形態では、切欠部60は、本体部20の内周面において、径方向に見て爪部50と重なり合う位置に形成される。すなわち、切欠部60は、本体部20の内周面において周方向中央に形成される。
【0039】
切欠部60は、厚さ方向に見て、略矩形状に開口している。切欠部60の径方向に沿う寸法は、本体部20の径方向に沿う寸法の1/2程度とされている。また、切欠部60の幅寸法(厚さ方向に見て径方向に対して直交する寸法)は、爪部50の幅寸法と同寸法とされている。すなわち、切欠部60の厚さ方向に見た形状は、厚さ方向に見た爪部50の先端部の形状と同一形状(同寸同形状)とされている。上記構成とされた切欠部60は、当該切欠部60と爪部50とを互いの厚さ方向を揃えて仮想的に重ね合わせた場合に、爪部50の先端部を内側に収納可能とされる。
【0040】
油溝70は、本体部20の前面が、後方へ凹むことにより形成された部分である。油溝70は、所定の油路を介して供給されてきた潤滑油を、本体部20の前面に供給する。油溝70は、本体部20の厚さ方向一方面において、爪部50と切欠部60との間に亘って形成される。本実施形態では、油溝70は、本体部20の前面において周方向中央に形成される。また、油溝70は、溝底における径方向内側部分(径方向内側半分)が、切欠部60によって切り欠かれている。これにより、油溝70と切欠部60とは連通している。
【0041】
油溝70は、溝深さ寸法が、本体部20の厚さ寸法の1/2程度とされている。すなわち、本体部20において油溝70が形成された部分の厚さ寸法と、爪部50の厚さ寸法と、は同寸法とされている。油溝70の溝底面は、爪部50の前面と同一平面状とされている。また、油溝70は、溝幅寸法が、爪部50及び切欠部60の幅寸法よりもやや大きい寸法とされている。上記構成としたことで、切欠部60は、油溝70に対して、厚さ方向に見て三方向(図2に示す例では、上方、左方及び右方)で連通する。これにより、例えば、切欠部60が油溝70に対して厚さ方向に見て一方向で連通する場合(油溝70の溝幅寸法が切欠部60の幅寸法と同寸法の場合)と比べて、切欠部60の潤滑油を油溝70に供給し易くすることができる。
【0042】
なお、上記においては、4つのワッシャ片10のうち、第一ワッシャ片11について説明したが、他の3つのワッシャ片10(第二ワッシャ片12、第三ワッシャ片13及び第四ワッシャ片14)も同様に構成される。そして、4つのワッシャ片10は、それぞれ周方向に隣り合うワッシャ片10と第一嵌合部30及び第二嵌合部40により互いに固定され、1つのワッシャ1として構成される。
【0043】
以下では、図4から図6までを用いて、上述の如く構成されるワッシャ1の製造方法について説明する。
【0044】
図4に示すように、ワッシャ1の製造方法は、主として準備工程S1、溝形成工程S2、抜き取り工程S3、嵌合工程S4、かしめ工程S5を具備する。
【0045】
準備工程S1は、素材Mを準備する工程である。図5(a)に示すように、素材Mは、矩形板状の部材である。素材Mは、適宜の材料(例えば、単一種類の材料により形成された鋼板や、複数種類の材料により形成されたバイメタル等)により形成される。素材Mは、説明の便宜上、長手方向を上下方向に向けた状態で配置されたものとする。
準備工程S1が行われた後、溝形成工程S2が行われる。
【0046】
溝形成工程S2は、図5(b)に示すように、準備工程S1において準備された素材Mに対して長手方向に沿って溝Maを形成する工程である。溝形成工程S2においては、切削加工により所定幅の溝Maが形成される。図例では、素材Mの幅方向(左右方向)中央に、長手方向の全体に亘って溝Maを形成している。なお、溝Maの溝幅寸法は、後述する第一抜き取り工程S3a及び第二抜き取り工程S3bにおいて打ち抜かれるワッシャ片10の爪部50及び切欠部60の幅寸法(左右寸法)よりもやや大きい寸法とされる。また、溝Maの溝深さ寸法は、素材Mの厚さ寸法の1/2程度とされる。
溝形成工程S2が行われた後、抜き取り工程S3が行われる。
【0047】
抜き取り工程S3は、溝Maが形成された素材Mから、複数のワッシャ片10を抜き取る工程である。以下では、抜き取り工程S3において、2つのワッシャ片10を抜き取る工程について説明する。なお、以下では、図6を用いて、一つ目のワッシャ片10(以下では便宜上「第一ワッシャ片11」と称して説明する)を抜き取る工程を第一抜き取り工程S3aとし、二つ目のワッシャ片10(以下では便宜上「第二ワッシャ片12」と称して説明する)を抜き取る工程を第二抜き取り工程S3bとして説明する。
【0048】
第一抜き取り工程S3aでは、図6(a)に示すように、ワッシャ片10(第一ワッシャ片11)の形状に形成された所定の金型を用いて、素材Mのうち、第一ワッシャ片11の形状に対応した部分が抜き取られる(プレス加工により打ち抜かれる)。これによって、素材Mから第一ワッシャ片11を得ることができる。
【0049】
第一抜き取り工程S3aでは、溝Maと、第一ワッシャ片11の爪部50及び切欠部60と、が厚さ方向に見て重なり合うように、第一ワッシャ片11を素材Mから抜き取る。すなわち、素材Mの溝Maが形成された部分が、第一ワッシャ片11の爪部50、切欠部60及び油溝70を構成するように、第一ワッシャ片11を素材Mから抜き取る。また、第一ワッシャ片11が素材Mから抜き取られれば、素材Mには、第一ワッシャ片11と同一形状(同寸同形状)の跡が形成される。なお、図6(a)に示した例では、素材Mの上端側の部分から、第一ワッシャ片11を抜き取った例を示している。また、図6(a)において、二点鎖線で示された部分は、後述する第二抜き取り工程S3bにおいて抜き取られる部分を示している。
【0050】
第二抜き取り工程S3bにおいては、図6(b)に示すように、第一抜き取り工程S3aにおいて第一ワッシャ片11の切欠部60を抜き取った跡が、第二ワッシャ片12の爪部50の先端部を構成するように、第二ワッシャ片12を素材Mから連続して抜き取る。すなわち、図6(a)に示すように、第一ワッシャ片11の切欠部60が素材Mから抜き取られたことで、当該素材Mにおいて上方へ突出するように形成された部位(符号Xで示す一点鎖線で囲まれた部位)が、図6(b)に示すように、第二ワッシャ片12の爪部50の先端部となるように、第二ワッシャ片12を抜き取る。図7では、第一抜き取り工程S3aにて抜き取られる第一ワッシャ片11と、第二抜き取り工程S3bにて抜き取られる第二ワッシャ片12と、の素材Mにおける互いの位置関係を示している。
【0051】
上記第二抜き取り工程S3bに示したように、切欠部60は、本体部20の内周面において、素材Mにおいて複数のワッシャ片10が連続する方向(上下方向)に見て、爪部50と重なり合う位置(爪部50に対応する位置)に形成される。
【0052】
なお、第二抜き取り工程S3bにおいても、第一抜き取り工程S3aと同様、素材Mの溝Maが形成された部分が、第二ワッシャ片12の爪部50、切欠部60及び油溝70を構成するように、第二ワッシャ片12を素材Mから抜き取る。また、上述した例では、第一ワッシャ片11の切欠部60を抜き取った跡が、第二ワッシャ片12の爪部50の一部(先端部)を構成するものとしているが、このようなものに限られず、第一ワッシャ片11の切欠部60を抜き取った跡が、第二ワッシャ片12の爪部50の全体を構成するものとしても良い。
【0053】
上述した抜き取り工程S3により、一のワッシャ片10の爪部50の少なくとも先端部と、他のワッシャ片10の切欠部60と、が重複するように、各ワッシャ片10を素材Mから打ち抜くことができる。これにより、素材Mにおいて隣り合う第一ワッシャ片11及び第二ワッシャ片12の間の余剰部分を小さくすることで材料歩留まりの向上を図ることができる。また、予め溝Maが形成された素材Mからワッシャ片10を打ち抜くことで、ワッシャ片10を素材Mから打ち抜いた後に、各ワッシャ片10について一つずつ油溝70を形成するような製造方法と比べて、容易に油溝70を有するワッシャ1を製造することができる。
【0054】
なお、抜き取り工程S3は、上述した第一抜き取り工程S3a及び第二抜き取り工程S3bに限られない。例えば、上記第二抜き取り工程S3bの後、当該第二抜き取り工程S3bと同様の工程(第三抜き取り工程、第四抜き取り工程・・・)を実行することで、所望の数のワッシャ片10(第三ワッシャ片13や第四ワッシャ片14等)を素材Mから連続して打ち抜くことが可能である。
【0055】
また、抜き取り工程S3としては、図6に示したような態様に限られない。以下では、図8を用いて、図6に示した例とは異なる抜き取り工程S3の態様について説明する。
【0056】
図8(a)は、第一抜き取り工程S3aを示している。図8(a)で示した例では、素材Mの下端側の部分から、第一ワッシャ片11を抜き取った点で、図6(a)で示した例とは異なる。なお、図8(a)において、二点鎖線で示された部分は、後述する第二抜き取り工程S3bにおいて抜き取られる部分を示している。
【0057】
図8(b)は、第二抜き取り工程S3bを示している。図8(b)で示した例では、第一抜き取り工程S3aにおいて第一ワッシャ片11の爪部50を抜き取った跡が、第二ワッシャ片12の切欠部60を構成するように、第二ワッシャ片12を素材Mから抜き取った点で、図6(b)で示した例とは異なる。すなわち、図8(b)に示した例では、第一ワッシャ片11の爪部50が素材Mから抜き取られたことで、当該素材Mにおいて上方へ凹むように形成された部位(符号Yで示す一点鎖線で囲まれた部位)が、図8(b)に示すように、第二ワッシャ片12の切欠部60となるように、第二ワッシャ片12を抜き取る構成としている。
【0058】
なお、上述した例では、第一抜き取り工程S3aにおいて第一ワッシャ片11の爪部50を抜き取った跡が、第二ワッシャ片12の切欠部60の全体を構成するものとしているが、このようなものに限られず、第一ワッシャ片11の爪部50を抜き取った跡が、第二ワッシャ片12の切欠部60の一部を構成するものとしても良い。
【0059】
上述した抜き取り工程S3によっても、図6に示した抜き取り工程S3と同様、素材Mにおいて隣り合う第一ワッシャ片11及び第二ワッシャ片12の間の余剰部分を小さくすることで材料歩留まりの向上を図ることができる。
【0060】
また、以下では、図9を用いて、図8に示した例とは異なる抜き取り工程S3の態様について説明する。
【0061】
図9に示す例は、プレス加工に用いられる金型が、ワッシャ片10の形状に対して完全には対応していない点で、上記図8に示した例とは異なる。具体的には、図9に示す例で用いられる金型は、当該金型の形状としては、ワッシャ片10の切欠部60に相当するものがない点で、図8に示した例で用いられる金型とは異なる。
【0062】
図9に示す例では、まず、図9(a)に示すように、上記金型によって、図8(a)で示した例と同様、素材Mの下端側の部分を打ち抜く。これにより、素材Mの下端側の部分から、切欠部60が形成されていないワッシャ片10Aが打ち抜かれることとなる。当該ワッシャ片10Aは、切欠部60が形成されていない点を除いてワッシャ片10と同様な形状とされている。
【0063】
次に、図9(b)に示すように、図8(b)で示した例と同様、上記ワッシャ片10Aの爪部50を抜き取った跡が、次に打ち抜かれるワッシャ片10(第一ワッシャ片11)の切欠部60を構成するように、第一ワッシャ片11を素材Mから抜き取る工程(第一抜き取り工程S3a)を実行する。すなわち、上記ワッシャ片10Aの爪部50が素材Mから抜き取られたことで、当該素材Mにおいて上方へ凹むように形成された部位(符号Zで示す一点鎖線で囲まれた部位)が、第一ワッシャ片11の切欠部60となるように、第一ワッシャ片11を抜き取る構成としている。これにより、上記金型を用いて、切欠部60が形成されたワッシャ片10(第一ワッシャ片11)を得ることができる。
【0064】
また、当該抜き取り工程S3においては、第一抜き取り工程S3aと同様に、第一ワッシャ片11の爪部50を抜き取った跡が、次に打ち抜かれる第二ワッシャ片12の切欠部60を構成するように、第二ワッシャ片12を打ち抜く工程(第二抜き取り工程S3b)を実行可能である。
【0065】
上述した抜き取り工程S3によっても、図8に示した抜き取り工程S3と概ね同様、材料歩留まりの向上を図ることができる。また、当該抜き取り工程S3によれば、切欠部60を抜き取る部分が形成されていない、簡略化された形状の金型を用いてワッシャ片10を得ることができる。
抜き取り工程S3が行われた後、嵌合工程S4が行われる。
【0066】
嵌合工程S4は、抜き取り工程S3において抜き取られた複数のワッシャ片10をそれぞれ嵌合させる工程である。なお、本実施形態においては、1つのワッシャ1を形成するために、上述の如く4つのワッシャ片10がそれぞれ嵌合される。
【0067】
具体的には、一つのワッシャ片10の第一嵌合部30に、周方向一側(厚さ方向に見て時計回り方向)に隣り合うワッシャ片10の第二嵌合部40が嵌合される。また、前記一つのワッシャ片10の第二嵌合部40に、周方向他側(厚さ方向に見て反時計回り方向)に隣り合うワッシャ片10の第一嵌合部30が嵌合される。こうして、4つのワッシャ片10がそれぞれ嵌合されると、円環状の部材が形成される。
嵌合工程S4が行われた後、かしめ工程S5が行われる。
【0068】
かしめ工程S5は、第一嵌合部30をかしめることで、互いに嵌合した複数のワッシャ片10を固定する工程である。かしめ工程S5では、適宜のかしめ装置を用いて、プレス加工が行われる。
【0069】
上述の工程により、図1に示すワッシャ1が製造される。また、ワッシャ1は、爪部50を、図3(a)に示すように径方向に突出した状態から、図3(b)に示すように後方に突出するように折り曲げられる。
【0070】
また、上述したように、本実施形態では、溝形成工程S2を施した素材Mに対して、溝Maと、ワッシャ片10の爪部50及び切欠部60と、が厚さ方向に見て重なり合うように、ワッシャ片10を抜き取る構成としている。また、本実施形態では、油溝70の溝幅寸法(溝Maの溝幅寸法)を、爪部50及び切欠部60の幅寸法よりもやや大きい寸法としている。これにより、爪部50と、本体部20において油溝70が形成された部位と、の厚さ寸法が同寸法とされたワッシャ片10を製造することができる。
【0071】
ここで、上記工程によって製造されるワッシャ片10において、油溝70の溝幅寸法(溝Maの溝幅寸法)が爪部50の幅寸法より小さければ、爪部50において、厚さ寸法の大きい部分(本体部20の厚さ寸法と同寸法の部分)と厚さ寸法の小さい部分(本体部20の厚さ寸法の1/2程度の部分)が形成されることとなる。この場合において、上記厚さ寸法の大きい部分は、曲げ変形し難いことから、ワッシャ片10がバイメタル材で形成されている場合、爪部50を折り曲げた際に材料の剥離が生じ易くなることが考えられる。一方、本実施形態では、上述したように、油溝70の溝幅寸法(溝Maの溝幅寸法)を爪部50の幅寸法以上とし、爪部50の全体の厚さ寸法を比較的小さくしたことで、爪部50を折り曲げた際の剥離を抑制することができる。
【0072】
以上のように、本発明の第一実施形態に係るワッシャ1においては、
少なくとも一つのワッシャ片10(円弧状部材)を有するワッシャ1であって、
前記ワッシャ片10は、円弧状に形成された本体部20と、
前記本体部20の外周面において所定方向に突出するように形成された爪部50と、
前記本体部20の内周面において前記爪部50に対応する位置に形成された切欠部60と、
を具備し、
前記切欠部60は、
当該切欠部60と前記爪部50とを互いの厚さ方向を揃えて仮想的に重ね合わせた場合に、前記爪部50の少なくとも先端部を内側に収納可能な形状に形成されているものである。
【0073】
このような構成により、低コスト化が可能とされたワッシャ1を提供することができる。すなわち、板状の素材Mから複数のワッシャ片10を連続して打ち抜く場合、第一ワッシャ片11(一の円弧状部材)を素材Mから打ち抜いた後、当該素材Mにおいて第一ワッシャ片11の爪部50を抜き取った跡が、第二ワッシャ片12(他の円弧状部材)の切欠部60の少なくとも一部を構成するように(図6(b)参照)、又は、第一ワッシャ片11の切欠部60を抜き取った跡が第二ワッシャ片12の爪部50の少なくとも一部を構成するように(図8(b)参照)、第二ワッシャ片12を素材Mから打ち抜くことができる。これにより、素材Mにおける隣り合うワッシャ片10の間の余剰部分を小さくすることで材料歩留まりの向上を図ることができ、ワッシャ1のコストの低減を図ることができる。また、切欠部60を形成したことで、ワッシャ1の軽量化を図ることができる。また、切欠部60に潤滑油を溜めることができ、ワッシャ1の摺動面(前面)と、当該ワッシャ1に対して摺動する回転部材と、の間に介在される潤滑油の油膜切れを抑制することができる。
【0074】
また、前記本体部20は、
前面(厚さ方向一方面)において、前記爪部50と前記切欠部60との間に亘って油溝70が形成されているものである。
【0075】
このような構成により、油溝70を形成したことで、潤滑油をワッシャ1の摺動面に供給し易い構成とすることができる。また、油溝70と切欠部60とが連通することとなるので、切欠部60に溜めた潤滑油を油溝70に供給し易い構成とすることができる。
【0076】
また、前記爪部50の厚さ寸法は、前記本体部20の厚さ寸法よりも小さいものである。
【0077】
このような構成により、ワッシャ1の軽量化を図ることができる。
【0078】
また、前記切欠部60の厚さ方向に見た形状は、厚さ方向に見た前記爪部50の少なくとも先端部の形状と、同一形状(同寸同形状)であるものである。
【0079】
このような構成により、ワッシャ1のコストの低減を可能としながらも、摺動面を確保することができる。すなわち、切欠部60の厚さ方向に見た大きさ(幅寸法等)が、厚さ方向に見た爪部50の少なくとも先端部の大きさ(幅寸法等)よりも大きいものと比べて、摺動面を確保することができる。
【0080】
また、以上のように、本発明の一実施形態に係るワッシャ1の製造方法においては、
少なくとも一つのワッシャ片10(円弧状部材)を有するワッシャ1の製造方法であって、
板状の素材Mを準備する準備工程S1と、
円弧状に形成されると共に、外周面において所定方向に突出するように爪部50が形成され、内周面において前記爪部50に対応する位置に切欠部60が形成された第一ワッシャ片11(第一の円弧状部材)を、前記素材Mから抜き取る第一抜き取り工程S3aと、
前記第一抜き取り工程S3aの後、前記第一ワッシャ片11と同一形状(同寸同形状)とされた第二ワッシャ片12(第二の円弧状部材)を、前記素材Mから抜き取る第二抜き取り工程S3bと、
を具備し、
前記第二抜き取り工程S3bは、
前記第一抜き取り工程S3aにおいて前記第一ワッシャ片11の前記爪部50を抜き取った跡が、前記第二ワッシャ片12の切欠部60の少なくとも一部を構成するように、又は、前記第一抜き取り工程S3aにおいて前記第一ワッシャ片11の前記切欠部60を抜き取った跡が、前記第二ワッシャ片12の爪部50の少なくとも一部を構成するように、前記第二ワッシャ片12を前記素材Mから抜き取るものである。
【0081】
このような構成により、ワッシャ1の低コスト化を図ることができる。すなわち、素材Mにおける隣り合うワッシャ片10の間の余剰部分を小さくすることで材料歩留まりの向上を図ることができる。
【0082】
また、前記第一抜き取り工程S3aの前に、前記素材Mの厚さ方向一方面において、一方向に溝Maを形成する溝形成工程S2を具備し、
前記第一抜き取り工程S3a及び前記第二抜き取り工程S3bにおいて、前記溝Maと、前記第一ワッシャ片11及び前記第二ワッシャ片12の前記爪部50及び前記切欠部60と、が厚さ方向に見て重なり合うように、前記第一ワッシャ片11及び第二ワッシャ片12を前記素材Mから抜き取るものである。
【0083】
このような構成により、ワッシャ片10を素材Mから打ち抜いた後に、油溝70を形成するような製造方法と比べて、容易に油溝70を有するワッシャ1を製造することができる。
【0084】
なお、ワッシャ片10は、円弧状部材の実施の一形態である。
また、第一ワッシャ片11は、第一の円弧状部材の実施の一形態である。
また、第二ワッシャ片12は、第二の円弧状部材の実施の一形態である。
【0085】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0086】
例えば、ワッシャ1はスラスト方向の荷重を受ける用途(スラストワッシャ)に限らず、任意の用途に使用することができる。
【0087】
また、ワッシャ1は、複数のワッシャ片10の第一嵌合部30及び第二嵌合部40を互いに嵌合させた後、かしめることで固定するようなものに限られない。例えば、複数のワッシャ片10を、互いに溶接して固定するものであっても良い。
【0088】
また、ワッシャ1は円環状のものに限らず、半円状(中心角が180度の円弧状)に形成されるものや、その他の円弧状(例えば、中心角が90度の円弧状、中心角が60度の円弧状等)に形成されるものであっても良い。
【0089】
また、ワッシャ片10は中心角が90度の円弧状のものに限らず、半円状(中心角が180度の円弧状)に形成されるものや、その他の円弧状(例えば、中心角が60度の円弧状等)に形成されるものであっても良い。
【0090】
また、ワッシャ片10は、他のワッシャ片10と固定されてワッシャ1を構成するものに限られず、ワッシャ片10自体が一つのワッシャ1を構成するものであっても良い。
【0091】
また、ワッシャ片10は、切欠部60の厚さ方向に見た形状が、厚さ方向に見た爪部50の先端部の形状と、同寸同形状であるものに限られない。例えば、切欠部60の厚さ方向に見た大きさ(幅寸法等)が、厚さ方向に見た爪部50の先端部の大きさ(幅寸法等)よりも大きいものであっても良い。切欠部60の厚さ方向に見た形状としては、当該切欠部60と爪部50とを互いの厚さ方向を揃えて仮想的に重ね合わせた場合に、爪部50の少なくとも先端部を内側に収納可能な形状であれば良い。すなわち、ワッシャ片10は、当該ワッシャ片10を素材Mから打ち抜く際に、一のワッシャ片10の爪部50の少なくとも先端部と、他のワッシャ片10の切欠部60と、が重複可能とされ、素材Mにおける隣り合うワッシャ片10の間の余剰部分を小さくすることが可能な形状であれば良い。
【0092】
また、ワッシャ片10は、油溝70の溝幅寸法が、爪部50及び切欠部60の幅寸法よりも大きいものに限られない。例えば、油溝70の溝幅寸法は、爪部50及び切欠部60の幅寸法と同寸法であっても良い。
【0093】
また、ワッシャ片10は、油溝70が形成されたものに限られない。例えば、油溝70が形成されていないものであっても良い。また、ワッシャ片10は、爪部50の厚さ寸法が本体部20の厚さ寸法よりも小さいものに限られない。例えば、爪部50の厚さ寸法と本体部20の厚さ寸法とが同寸法であっても良い。
【0094】
また、ワッシャ片10は、爪部50が、当該爪部50を折り曲げる前の状態で、本体部20の外周面から径方向に突出するものに限られない。例えば、爪部50が、厚さ方向に見て、本体部20の外周面から径方向に対して斜め方向に突出するものであっても良い。この場合には、本体部20の内周面において、上記爪部50に対応する切欠部60が形成される。
【0095】
また、ワッシャ片10は、切欠部60及び爪部50が、本体部20の周方向中央に形成されるものに限られず、例えば、本体部20の周方向中央よりも周方向一方側又は他方側に形成されるものであっても良い。また、ワッシャ片10は、切欠部60及び爪部50が、互いに径方向に見て一致する位置に形成されるものに限られず、互いに周方向にずれた位置に形成されるものであっても良い。
【0096】
また、ワッシャ1は、回転部材に固定される際に、爪部50を厚さ方向に折り曲げるものに限られない。例えば、ワッシャ1は、爪部50を折り曲げることなく(爪部50が径方向に突出した状態で)、回転部材に固定されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0097】
1 ワッシャ
10 ワッシャ片
11 第一ワッシャ片
12 第二ワッシャ片
13 第三ワッシャ片
14 第四ワッシャ片
20 本体部
50 爪部
60 切欠部
70 油溝
M 素材
Ma 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9