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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】電線クランプ装置および電線処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/048 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
H01R43/048 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018188522
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2020057556
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶紀
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05238177(US,A)
【文献】実開平03-055107(JP,U)
【文献】特開2014-176248(JP,A)
【文献】特開2018-082615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R43/027-43/28
B23B31/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を把持するとともに、前記電線の把持を解除しているときに前記電線を所定の中心線に沿って案内する電線クランプ装置であって、
それぞれ前記中心線と平行な方向に延びるとともに前記中心線の周囲に配置された電線接触面を有し、前記中心線を中心とする周方向に並んだ3つ以上のクランプ部材と、
前記電線接触面が前記中心線に対して接近および離反可能なように前記クランプ部材を保持する保持部材と、
前記電線接触面が前記中心線に対して接近および離反するように前記クランプ部材を駆動するアクチュエータと
前記クランプ部材を支持する支持部材と、
前記クランプ部材の先端側部分よりも根元側部分に近い位置にある旋回中心線周りに前記支持部材を旋回させる旋回アクチュエータと、を備え、
前記電線接触面は、前記中心線と平行な方向に真っ直ぐに延び、
前記クランプ部材の先端側部分は根元側部分よりも軽い、電線クランプ装置。
【請求項2】
前記電線接触面における前記中心線と平行な方向の長さは、前記電線を案内するときの前記電線接触面と前記中心線との距離の10倍以上である、請求項1に記載の電線クランプ装置。
【請求項3】
前記クランプ部材同士は、周方向に隙間なく接触している、請求項1または2に記載の電線クランプ装置。
【請求項4】
前記クランプ部材の前記電線接触面が前記中心線に対して同時に接近および離反するように前記クランプ部材を連結する連結機構を備えている、請求項1~3のいずれか一つに記載の電線クランプ装置。
【請求項5】
前記クランプ部材の先端側部分は根元側部分よりも、前記中心線と垂直な方向の寸法が小さい、請求項1~4のいずれか一つに記載の電線クランプ装置。
【請求項6】
前記クランプ部材は4つ設けられている、請求項1~5のいずれか一つに記載の電線クランプ装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載の電線クランプ装置を備えた電線処理装置であって、
前記電線は、芯線と前記芯線の周囲を覆う被覆材とを含み、
前記電線を切断するカッター刃と、
前記電線の前記被覆材を剥ぎ取るストリップ刃と、
前記電線の端部に端子を圧着する圧着機と、を備え、
前記電線クランプ装置は、前記カッター刃が前記電線を切断するとき、前記ストリップ刃が前記被覆材を剥ぎ取るとき、および、前記圧着機が前記端子を圧着するときに、前記電線を把持するように構成されている、電線処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を把持する電線クランプ装置およびそれを備えた電線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線に対して切断、被覆材の剥ぎ取り、および端子の圧着などの処理を行う電線処理装置において、電線の長手方向に沿った移動を案内する機能と、各処理の際に電線を把持する機能とを有する電線クランプ装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電線を挟み込むクランプ部とノズルとを備えた電線クランプ装置が知られている。ノズルは電線の長手方向に延びており、電線の長手方向に沿った移動を案内する。クランプ部は、電線を両側から挟み込むことによって把持する。ところで、電線を把持する際に、電線の中心位置が、電線を挟み込む方向と垂直な方向にずれるおそれがある。例えば、電線を上下から把持する際に、電線の中心位置が左右にずれるおそれがある。しかし、ノズルの内径と電線の外径とが一致している場合、そのような位置ずれはノズルによって抑えられる。ノズルは、電線を所定の中心線上に位置付ける(センタリング)機能を有している。
【0004】
また、図15および図16に示すように、電線110を両側から挟み込む一対のクランプ爪101,102が電線110の長手方向に複数配列された電線クランプ装置が知られている。この電線クランプ装置では、複数対のクランプ爪101,102により、電線110の長手方向の移動を案内する通路(図15の左右に延びる通路)が形成されている。ここで、電線110を挟み込む方向は、クランプ爪101,102毎に若干異なっている。そのため、この電線クランプ装置によれば、電線110を把持する際に、電線110の中心位置が特定の一方向にずれることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-210460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電線処理装置が処理すべき電線の仕様は様々であり、電線処理装置は外径の異なる複数種類の電線を処理しなければならない。それに応じて、電線クランプ装置は、外径の異なる複数種類の電線を案内および把持可能でなければならない。
【0007】
クランプ部とノズルとを備えた上記従来の電線クランプ装置では、電線の外径とノズルの内径とが等しくないと、電線の中心位置はノズルの中心位置からずれてしまう。ノズルの内径が電線の外径と合っていない場合、ノズルによって電線の位置決め(センタリング)を行うことができなくなる。そのため、上記電線クランプ装置では、電線の外径が変わる度にノズルを交換する必要がある。しかし、ノズルを交換する作業には手間と時間がかかってしまう。
【0008】
電線110の長手方向に並ぶ複数対のクランプ爪101,102を備えた上記従来の電線クランプ装置によれば、電線110の外径に応じて両クランプ爪101,102の間隔を調整することができる。電線110の外径が変わっても、両クランプ爪101,102の間隔を調整することにより、電線110のセンタリングが可能である。そのため、ノズル等の部品の交換作業は不要である。しかし、この電線クランプ装置では、図15に示すように、電線110の長手方向に隣り合うクランプ爪101,102の間に、段差103ができてしまう。そのため、電線110を長手方向に送り出す際に、電線110の移動を円滑に案内できないという課題がある。特に、電線110を交換する際に、電線クランプ装置の内部に電線110の先端部を通過させる必要があるが、先端部が段差103に引っ掛かってしまい、電線クランプ装置の内部で詰まってしまうという課題がある。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線の仕様の変更に伴う部品の交換作業が不要であり、電線を把持する際に電線を良好にセンタリングすることができ、電線の移動を円滑に案内することができる電線クランプ装置およびそれを備えた電線処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電線クランプ装置は、電線を把持するとともに、前記電線の把持を解除しているときに前記電線を所定の中心線に沿って案内する電線クランプ装置であって、それぞれ前記中心線と平行な方向に延びるとともに前記中心線の周囲に配置された電線接触面を有し、前記中心線を中心とする周方向に並んだ3つ以上のクランプ部材と、前記電線接触面が前記中心線に対して接近および離反可能なように前記クランプ部材を保持する保持部材と、前記電線接触面が前記中心線に対して接近および離反するように前記クランプ部材を駆動するアクチュエータと、を備えている。
【0011】
上記電線クランプ装置によれば、所定の中心線を中心とする周方向に並んだ3つ以上のクランプ部材の電線接触面により、電線を中心線に沿って案内する通路が区画される。ここで、通路の壁面である電線接触面は、中心線と平行な方向に延びている。そのため、電線の移動を円滑に案内することができる。また、上記電線クランプ装置によれば、電線接触面が中心線に接近するようにクランプ部材を駆動することにより、電線を把持することができる。ここで、電線接触面は中心線に対して接近および離反可能であり、電線の外径に応じて電線接触面と中心線との距離を調整することができる。そのため、部品を交換しなくても、外径の異なる複数種類の電線を把持することができる。よって、電線の仕様の変更に伴う部品の交換作業は不要である。また、上記電線クランプ装置によれば、クランプ部材は3つ以上設けられているので、クランプ部材が2つの場合と異なり、電線を把持するときに電線の中心位置が特定の方向にずれることが防止される。また、電線はその中心が前記中心線上に位置するように把持されるので、電線を良好にセンタリングすることができる。
【0012】
本発明によれば、前記電線接触面は、前記中心線と平行な方向に真っ直ぐに延びている。
【0013】
本発明によれば、中心線に沿った電線の移動を更に円滑に案内することができる。
【0014】
本発明の好ましい一態様によれば、前記電線接触面における前記中心線と平行な方向の長さは、前記電線を案内するときの前記電線接触面と前記中心線との距離の10倍以上である。
【0015】
上記態様によれば、電線接触面における中心線と平行な方向の長さが長いので、電線を把持したときに、電線が中心線から逸れて曲がってしまうことをより確実に防止することができる。よって、電線を更に良好にセンタリングすることができる。また、電線を中心線に沿って更に良好に案内することができる。また、電線接触面の面積が比較的大きいので、電線接触面が電線を押す圧力が一定の場合、把持力を大きくすることができ、電線を十分に把持することができる。逆に、把持力が一定の場合、電線接触面が電線を押す圧力は低減されるので、電線の局所的な変形を防止することができる。よって、電線の品質を良好に保つことができる。
【0016】
本発明の好ましい一態様によれば、前記クランプ部材同士は、周方向に隙間なく接触している。
【0017】
周方向に並ぶクランプ部材の間に隙間が形成されていると、電線が細い場合、電線が当該隙間に挟まってしまうおそれがある。しかし、上記態様によれば、クランプ部材同士は周方向に隙間なく接触しているので、細い電線であっても、クランプ部材同士の隙間に挟まってしまうおそれがない。そのため、電線の把持および案内を良好に行うことができる。
【0018】
本発明の好ましい一態様によれば、前記クランプ部材の前記電線接触面が前記中心線に対して同時に接近および離反するように前記クランプ部材を連結する連結機構を備えている。
【0019】
上記態様によれば、周方向に並んだクランプ部材の電線接触面は、中心線に対して同時に接近および離反する。そのため、電線の把持および把持の解除を良好に行うことができる。
【0020】
本発明の好ましい一態様によれば、前記クランプ部材の先端側部分は根元側部分よりも、前記中心線と垂直な方向の寸法が小さい。
【0021】
上記態様によれば、クランプ部材の先端側部分がコンパクトであるので、電線クランプ装置の先端側部分の近傍に、他の部材を設置するスペースを確保しやすい。電線クランプ装置の先端側部分の近傍に設置される部材、例えば、電線処理装置のカッター刃、ストリップ刃、端子圧着機などの設置スペースの制約を少なくすることができる。よって、当該電線クランプ装置が搭載される電線処理装置等を小型化することができる。
【0022】
本発明によれば、前記クランプ部材を支持する支持部材と、前記クランプ部材の先端側部分よりも根元側部分に近い位置にある旋回中心線周りに前記支持部材を旋回させる旋回アクチュエータと、を備えている。前記クランプ部材の先端側部分は根元側部分よりも軽い。
【0023】
本発明によれば、クランプ部材の先端側部分が軽いので、支持部材を旋回させるためのエネルギーが少なくて済む。そのため、旋回アクチュエータを小型化または省エネルギー化することができる。
【0024】
本発明の好ましい一態様によれば、前記クランプ部材は4つ設けられている。
【0025】
上記態様によれば、部品点数を比較的抑えながら、電線を良好にセンタリングすることができ、電線の移動を円滑に案内することができる。
【0026】
本発明に係る電線処理装置は、前記電線クランプ装置を備えた電線処理装置であり、前記電線は、芯線と前記芯線の周囲を覆う被覆材とを含んでいる。前記電線処理装置は、前記電線を切断するカッター刃と、前記電線の前記被覆材を剥ぎ取るストリップ刃と、前記電線の端部に端子を圧着する圧着機と、を備えている。前記電線クランプ装置は、前記カッター刃が前記電線を切断するとき、前記ストリップ刃が前記被覆材を剥ぎ取るとき、および、前記圧着機が前記端子を圧着するときに、前記電線を把持するように構成されている。
【0027】
上記電線処理装置によれば、前述の電線クランプ装置を電線の切断、被覆材の剥ぎ取り、および端子の圧着に用いることができる。また、処理対象の電線を外径の異なる電線に変更する際に、電線クランプ装置の部品の交換が不要であるので、電線処理装置のセッティングを迅速かつ容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電線の仕様の変更に伴う部品の交換作業が不要であり、電線を把持する際に電線を良好にセンタリングすることができ、電線の移動を円滑に案内することができる電線クランプ装置およびそれを備えた電線処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係る電線処理装置の構成を模式的に表す平面図である。
図2】電線の斜視図である。
図3】電線クランプ装置、ストリップ機構、およびカッター機構の斜視図である。
図4】電線クランプ装置、ストリップ機構、およびカッター機構の側面図である。
図5】電線クランプ装置の斜視図である。
図6】電線クランプ装置の平面図である。
図7】電線クランプ装置の正面図である。
図8】クランプ体の斜視図である。
図9】クランプ体の斜視図である。
図10】クランプ体の側面図である。
図11】クランプ体の背面図である。
図12】電線を案内しているときのクランプ体の先端部の拡大斜視図である。
図13】電線クランプ装置の一部の拡大斜視図である。
図14】電線を把持しているときのクランプ体の先端部の拡大斜視図である。
図15】従来の電線クランプ装置の断面図である。
図16】従来の電線クランプ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電線処理装置1の構成を模式的に表す平面図である。以下の説明では、図1の右側、左側をそれぞれ前側、後側とする。図1の上側、下側をそれぞれ左側、右側とする。ただし、以下の説明における各方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
【0031】
電線処理装置1は、伸線機25と、電線5を送り出す送給装置20と、電線クランプ装置30F,30Rと、ストリップ機構12F,12Rと、カッター機構11と、圧着機13F,13Rと、トレイ8とを備えている。図2に示すように、電線5は被覆電線であり、導体からなる芯線5aと、芯線5aの周囲を覆う絶縁体からなる被覆材5bとを含んでいる。
【0032】
伸線機25は、電線5の巻き癖を除去し、電線5を真っ直ぐに矯正する装置である。伸線機25は、千鳥状に配置された複数のローラを有している。
【0033】
送給装置20は電線5を送り出すことができる装置であれば足り、その具体的構成は何ら限定されない。本実施形態では、送給装置20は、図示しないモータによって駆動される駆動ローラ21aと、従動ローラ21bと、駆動ローラ21aおよび従動ローラ21bに巻かれた搬送ベルト22とを、左右に一対備えている。駆動ローラ21aが搬送ベルト22を走行させることにより、左右の搬送ベルト22に挟まれた電線5が前方に送り出される。
【0034】
電線クランプ装置30F,30Rは電線5を把持する装置である。特に電線クランプ装置30Fは、電線5を所定の中心線CLに沿って案内するとともに電線5を把持する装置である。本実施形態では、電線クランプ装置30Fは、送給装置20が電線5を送り出すときには電線5の把持を解除し、中心線CLに沿った電線5の移動を案内する。電線クランプ装置30F,30Rは、電線5が中心線CLに沿って移動した後には、電線5を把持する。また、電線クランプ装置30F,30Rは、前後に移動可能に構成されている。言い換えると、電線クランプ装置30F,30Rは、中心線CLに沿ってストリップ機構12F,12Rに対して接近および離反可能に構成されている。電線クランプ装置30F,30Rは、電線5の端部の被覆材5bを剥ぎ取るときには、それぞれストリップ機構12F,12Rから離反するように移動する。更に、電線クランプ装置30F,30Rは、鉛直線30c周りに旋回可能に構成されている。電線クランプ装置30F,30Rは、電線5の端部に端子7を圧着する際には、圧着機13F,13Rに向かって旋回する。
【0035】
カッター機構11は、電線5を切断する機構である。図3に示すように、カッター機構11は、上下一対の第1カッター刃11Aおよび第2カッター刃11Bを有している。第1カッター刃11Aは、第1ブロック14Aに固定されている。第2カッター刃11Bは、第2ブロック14Bに固定されている。第1ブロック14Aおよび第2ブロック14Bは、ガイド15にスライド可能に係合している。また、第1ブロック14Aおよび第2ブロック14Bは、モータ16に連結されており、モータ16によって上下に駆動される。モータ16が第1ブロック14Aおよび第2ブロック14Bを互いに接近および離反させることにより、第1カッター刃11Aおよび第2カッター刃11Bは互いに接近および離反するようになっている。
【0036】
ストリップ機構12F,12Rは、電線5の被覆材5bを剥ぎ取るための機構である。図4に示すように、ストリップ機構12Fは、カッター機構11の後方に配置されており、電線クランプ装置30Fに把持された後側の電線5の前端部の被覆材5bを剥ぎ取る。一方、ストリップ機構12Rは、カッター機構11の前方に配置されており、電線クランプ装置30Rに把持された前側の電線5の後端部の被覆材5bを剥ぎ取る。図3に示すように、ストリップ機構12F,12Rの各々は、電線5の上下両側に配置された第1ストリップ刃12Aおよび第2ストリップ刃12Bを有している。ここでは、第1ストリップ刃12Aは電線5の上側に配置され、第2ストリップ刃12Bは電線5の下側に配置されている。第1ストリップ刃12Aと第2ストリップ刃12Bとは、電線5を挟んで向かい合っている。第1ストリップ刃12Aは第1ブロック14Aに固定され、第2ストリップ刃12Bは第2ブロック14Bに固定されている。第1ストリップ刃12Aおよび第2ストリップ刃12Bは、モータ16の駆動力により上下に移動し、互いに接近および離反するように構成されている。
【0037】
圧着機13F,13Rは、電線5の端部に端子7を圧着する装置である。前述したように、電線クランプ装置30F,30Rは、鉛直線30c周りに旋回可能に構成されている。圧着機13Fは、電線クランプ装置30Fに把持された電線5の前端部に端子7を圧着するように構成されている。圧着機13Rは、電線クランプ装置30Rに把持された電線5の後端部に端子7を圧着するように構成されている。
【0038】
トレイ8は、電線5と電線5の両端に圧着された端子7とを有する電線(以下、端子付き電線という)6を回収する箱体である。後述するように、電線処理装置1は、電線5の切断、被覆材5bの剥ぎ取り、端子7の圧着を連続的に繰り返し行い、端子付き電線6を連続的に製造する。トレイ8には、このように連続的に製造される複数の端子付き電線6が収容される。
【0039】
以上が電線処理装置1の全体構成である。次に、電線クランプ装置30Fの詳細について説明する。
【0040】
図5は、電線クランプ装置30Fの斜視図である。図6は、電線クランプ装置30Fの平面図である。図7は、電線クランプ装置30Fの正面図である。図5図7に示すように、電線クランプ装置30Fは、クランプ体40と、クランプ体40を保持する保持部材50と、エアシリンダ60と、リンク機構70とを備えている。図5および図6の矢印は電線5の送給方向を表す。なお、本実施形態では、電線5は前方に向けて送給される。以下の説明では、電線5の送給方向の上流側、下流側をそれぞれ電線クランプ装置30Fの根元側、先端側と言う。本実施形態では、電線クランプ装置30Fの前側、後側がそれぞれ先端側、根元側に対応する。
【0041】
まず、クランプ体40について説明する。クランプ体40は、電線5の移動を案内する通路を区画するとともに、電線5を把持する部材である。図8および図9は、クランプ体40の斜視図である。図10はクランプ体40の側面図であり、図11はクランプ体40の背面図である。図11に示すように、クランプ体40は、第1クランプ部材40A、第2クランプ部材40B、第3クランプ部材40C、および第4クランプ部材40Dを有している。すなわち、クランプ体40は、4つのクランプ部材40A~40Dを有している。図8に示すように、これらのクランプ部材40A~40Dは、中心線CLの周囲に配置されており、中心線CLを中心とする周方向に並んでいる。
【0042】
クランプ部材40A~40Dの形状または寸法は互いに相違していてもよいが、本実施形態では同一である。クランプ部材40A~40Dは、延伸部41と、被支持部42と、連結部43とを含んでいる。ここでは、延伸部41、被支持部42、および連結部43は、一体的に形成されている。延伸部41、被支持部42、および連結部43は、一体物である。ただし、特に限定される訳ではない。
【0043】
延伸部41は、中心線CLと平行な方向に延びている。なお、本明細書において、「中心線CLと平行な方向に延びている」とは、中心線CLと平行な方向の寸法が、中心線CLに垂直な方向の寸法よりも大きいことを言う。また、「中心線CLと平行な方向に延びている」とは、中心線CLと平行な方向に真っ直ぐに延びている場合に限られない。例えば、中心線CLの周りに螺旋状に延びている場合も含まれる。ただし、本実施形態では、クランプ部材40A~40Dの延伸部41は、中心線CLと平行な方向に真っ直ぐに延びている。
【0044】
クランプ部材40A~40Dの延伸部41は、中心線CLを囲むように組み立てられている。図12は、延伸部41の先端部分を表している。図12に示すように、延伸部41は、中心線CLに臨む電線接触面41aを有している。電線接触面41aは、中心線CLと平行な方向に延びるとともに、中心線CLの周囲に配置されている。クランプ部材40A~40Dの4つの電線接触面41aは、中心線CLに垂直な同一平面内に位置する部分を有している。すなわち、クランプ部材40A~40Dの4つの電線接触面41aは、中心線CLに沿った方向に関して、電線5の同一部分に接触できるように構成されている。本実施形態では、電線接触面41aは中心線CLと平行な方向に真っ直ぐに延びており、中心線CLと平行な方向に関して段差がなく連続している。周方向に隣り合う電線接触面41a同士の間には隙間があってもよいが、本実施形態では隙間は形成されていない。電線接触面41a同士は、周方向に隙間なく接触している。よって、本実施形態では、クランプ部材40A~40Dは周方向に隙間なく接触している。クランプ部材40A~40Dの電線接触面41aにより、電線5の長手方向に沿った移動を案内する通路40aが区画されている。
【0045】
電線接触面41aは、中心線CLと平行な方向に長く形成されている。本実施形態では、電線接触面41aにおける中心線CLと平行な方向の長さ41L(図10参照)は、電線クランプ装置30Fが電線5を案内するときの電線接触面41aと中心線CLとの距離41r(図12参照)の10倍以上である。ただし、上記長さ41Lは特に限定されない。上記長さ41Lは上記長さ41rの20倍以上であってもよく、30倍以上であってもよい。電線5を案内するときの摺動抵抗を抑える観点から、上記長さ41Lは上記長さ41rの100倍以下が好ましい。ただし、限定される訳ではない。
【0046】
図8および図9に示すように、被支持部42は、延伸部41よりも中心線CLから離れた位置に設けられている。被支持部42には、中心線CLと平行な方向に延びる支持孔42aが形成されている。支持孔42aには支持ピン51が貫通している。被支持部42は、支持ピン51に支持されている。図10に示すように、被支持部42は、延伸部41の中間位置41mよりも根元側(図10の右側)の部分に設けられている。各クランプ部材40A~40Dにおいて、被支持部42は中間位置よりも根元側に配置されている。
【0047】
連結部43は延伸部41に設けられていてもよいが、ここでは被支持部42の根元側部分に設けられている。各クランプ部材40A~40Dにおいて、連結部43は根元側に配置されている。連結部43には、後述する連結ピン77(図13参照)が挿通される連結孔43aが形成されている。連結孔43aは、中心線CLと平行な方向に延びている。
【0048】
本実施形態によれば、図10に示すように、クランプ部材40A~40Dの先端側部分における中心線CLと垂直な方向の寸法41pは、根元側部分における中心線CLと垂直な方向の寸法41qよりも小さい。クランプ部材40A~40Dの先端側部分は、根元側部分よりもコンパクトに構成されている。また、クランプ部材40A~40Dの先端側部分(中間位置41mよりも先端側の部分)の重量は、根元側部分(中間位置41mよりも根元側の部分)の重量よりも小さい。クランプ部材40A~40Dの先端側部分は根元側部分よりも軽くなっている。以上がクランプ体40の構成である。
【0049】
次に、保持部材50の構成について説明する。保持部材50は、電線接触面41aが中心線CLに対して接近および離反可能なようにクランプ部材40A~40Dを保持する部材である。本実施形態では、保持部材50は、各クランプ部材40A~40Dを支持ピン51の中心線周りに回動可能に保持している。図13に示すように、保持部材50は、4本の支持ピン51と、支持ピン51を保持するホルダ52とを有している、ホルダ52は、支持ピン51の前端部を保持する前側リング52aと、支持ピン51の後端部を保持する後側リング52bと、前側リング52aと後側リング52bとを接続する4本の棒状体52cとを有している。本実施形態では、後側リング52bと棒状体52cとは一体化され、前側リング52aと棒状体52cとはボルト53により固定されている。
【0050】
クランプ部材40A~40Dは、保持部材50に組み付けられている。クランプ部材40A~40Dの延伸部41は、前側リング52aよりも前方に延びている。クランプ部材40A~40Dの被支持部42は、前側リング52aと後側リング52bとの間に配置されている。クランプ部材40A~40Dの連結部43は、前側リング52aと後側リング52bとの間に配置されるとともに、周方向に並ぶ2本の棒状体52cの間に配置されている。連結部43は、ホルダ52よりも径方向の外方に突出している。
【0051】
エアシリンダ60は、クランプ部材40A~40Dを駆動するアクチュエータである。図5に示すように、エアシリンダ60は片ロッド式のエアシリンダであり、シリンダ本体65と、シリンダ本体65から延びるロッド61と、シリンダ本体65を支える支持部62とを有している。ロッド61はシリンダ本体65に対して伸縮するように構成されている。なお、ロッド61が伸張するとは、ロッド61がシリンダ本体65の外部に向かって移動することを言い、ロッド61が収縮するとは、ロッド61がシリンダ本体65の内部に向かって移動することを言う。
【0052】
リンク機構70は、クランプ部材40A~40Dの電線接触面41aが中心線CLに対して同時に接近および離反するようにクランプ部材40A~40Dを連結する連結機構である。すなわち、リンク機構70は、クランプ部材40A~40Dを連動可能に連結する機構である。また、リンク機構70は、エアシリンダ60とクランプ部材40A~40Dとを連結する機構である。リンク機構70は、連結板71と、連結板71とロッド61とを繋ぐアーム72と、連結筒73と、連結筒73と支持部62とを繋ぐアーム74とを有している。アーム72とロッド61とは回動可能に連結され、アーム74と支持部62とは回動可能に連結されている。また、図13に示すように、リンク機構70は、連結板71と各クランプ部材40A~40Dの連結部43とを繋ぐリンク部材75を有している。リンク部材75は、連結ピン76により連結板71に回動可能に連結され、連結ピン77により各クランプ部材40A~40Dの連結部43に回動可能に連結されている。図示は省略するが、連結板71の中央部には孔が形成されており、電線5はこの孔を通じて後側から前側に送られるようになっている。
【0053】
図3および図4に示すように、電線クランプ装置30Fは、クランプ体40、保持部材50、エアシリンダ60、およびリンク機構70を支持する支持部材として、支持台85を備えている。支持台85は、クランプ体40、保持部材50、エアシリンダ60、およびリンク機構70を前後に移動可能であり(図3の矢印A1参照)、また、鉛直線30c周りに旋回可能に構成されている(図3の矢印A2参照)。支持台85の構成は何ら限定されないが、例えば、支持台85は、鉛直線30c周りに旋回可能な土台85Aと、土台85Aに支持され、土台85Aに対して前後に移動可能なスライド台85Bとを有していてもよい。電線クランプ装置30Fは更に、土台85Aを旋回させるアクチュエータ86と、スライド台85Bを前後に移動させるアクチュエータ87とを備えている。なお、鉛直線30cは、クランプ部材40A~40Dの先端側部分よりも根元側部分に近い位置にある旋回中心線である。アクチュエータ86は、その旋回中心線30c周りに保持部材50を旋回させる旋回アクチュエータである。アクチュエータ86,87の種類は何ら限定されず、例えば、エアシリンダ、モータなどを好適に用いることができる。
【0054】
図6に示すように、電線クランプ装置30Fの後側にはノズル80が設けられている(なお、図1ではノズル80の図示は省略している)。ただし、ノズル80は必ずしも必要ではなく、省略してもよい。
【0055】
以上が電線クランプ装置30Fの構成である。次に、電線クランプ装置30Fの動作について説明する。
【0056】
エアシリンダ60は、ロッド61が伸張する第1状態(図5参照)と、ロッド61が収縮する第2状態とに切り替えられる。電線クランプ装置30Fは、エアシリンダ60の状態を切り替えることにより、電線5を把持する状態と把持を解除した状態とに切り替えられる。
【0057】
エアシリンダ60を第1状態に切り替えると、エアシリンダ60の駆動力がリンク機構70を介してクランプ部材40A~40Dに伝えられ、クランプ部材40A~40Dは図11に矢印で示すように、支持ピン51の中心線周りに回動する。すると、図14に示すように、クランプ部材40A~40Dの電線接触面41aは、中心線CLに接近するように移動する。これにより、全ての電線接触面41aが電線5と接触し、これら電線接触面41aによって電線5が把持される。
【0058】
一方、エアシリンダ60を第2状態に切り替えると、クランプ部材40A~40Dは、図11に矢印で示す方向と反対の方向に向かって、支持ピン51の中心線周りに回動する。すると、図12に示すように、クランプ部材40A~40Dの電線接触面41aは、中心線CLから離反する。これにより、電線接触面41aによる電線5の把持が解除される。
【0059】
このように、電線クランプ装置30Fでは、エアシリンダ60を第1状態に切り替えると、クランプ部材40A~40Dは電線5を把持し、エアシリンダ60を第2状態に切り替えると、クランプ部材40A~40Dは電線5の把持を解除する。図12に示すように、電線5の把持を解除しているときに、クランプ部材40A~40Dの電線接触面41aにより、電線5の移動を案内する通路40aが区画される。
【0060】
次に、電線処理装置1の動作について説明する。すなわち、電線処理装置1が端子付き電線6を製造する方法について説明する。なお、電線処理装置1の動作は、制御装置9(図1参照)によって制御される。
【0061】
まず、制御装置9は、送給装置20を駆動することにより、電線5を前方に送り出す。なお、この際、電線クランプ装置30F,30Rは、電線5の把持を解除した状態に設定される。前述の通り、電線クランプ装置30Fのクランプ部材40A~40Dの電線接触面41aは、中心線CLと平行な方向に真っ直ぐに延びている。電線接触面41aは、中心線CLと平行な方向に関して、段差がなく連続している。また、周方向に隣り合う電線接触面41a同士の間には、隙間が形成されていない(図12)。そのため、電線5は電線クランプ装置30Fの内部において引っ掛かることがなく、電線クランプ装置30Fによって円滑に案内される。
【0062】
送給装置20は、電線5を所定長さだけ前方に送り出すと停止する。送給装置20が停止した後、電線クランプ装置30F,30Rは電線5を把持する。なお、電線クランプ装置30Fが電線5を把持する動作は前述の通りである。
【0063】
次に、制御装置9は、モータ16(図3参照)を制御し、第1カッター刃11Aおよび第2カッター刃11Bを互いに接近させ、電線5を切断する。
【0064】
次に、制御装置9は、モータ16を制御し、ストリップ機構12F,12Rの第1ストリップ刃12Aおよび第2ストリップ刃12Bを互いに接近させ、電線5の被覆材5bを切り込む。そして、アクチュエータ87(図3参照)を駆動し、電線クランプ装置30Fをストリップ機構12Fから離反するように移動させ、電線クランプ装置30Rをストリップ機構12Rから離反するように移動させる。その結果、電線クランプ装置30Fに把持された電線5の前端部の被覆材5bは、ストリップ機構12Fのストリップ刃12A,12Bによって剥ぎ取られ、当該電線5の前端部の芯線5aが露出する。また、電線クランプ装置30Rに把持された電線5の後端部の被覆材5bは、ストリップ機構12Rのストリップ刃12A,12Bによって剥ぎ取られ、当該電線5の後端部の芯線5aが露出する。
【0065】
その後、制御装置9は、アクチュエータ86を駆動し、電線クランプ装置30Fを旋回させる。電線クランプ装置30Fは、後側の電線5を把持したまま左側に旋回し、後側の電線5の前端部を圧着機13Fに導く。また、制御装置9は、電線クランプ装置30Rを旋回させる。電線クランプ装置30Rは、前側の電線5を把持したまま右側に旋回し、前側の電線5の後端部を圧着機13Rに導く。そして、圧着機13F,13Rにより、各電線5の端部に端子7が圧着される。
【0066】
その後、電線クランプ装置30Fは、後側の電線5を把持したままストリップ機構12Fに対向する初期位置(図1に示す位置)に戻り、当該電線5の把持を解除する。なお、電線クランプ装置30Fが電線5の把持を解除する動作は前述の通りである。電線クランプ装置30Rは、前側の電線5の把持を解除した後、ストリップ機構12Rに対向する初期位置(図1に示す位置)に戻る。なお、端子付き電線6は、電線クランプ装置30Rによる把持が解除されると、落下してトレイ8に回収される。
【0067】
その後は、上述の動作を繰り返す。これにより、複数の端子付き電線6が連続的に順次製造される。
【0068】
次に、本実施形態に係る電線処理装置1および電線クランプ装置30Fによってもたらされる効果について説明する。
【0069】
電線クランプ装置30Fによれば、図12に示すように、中心線CLを中心とする周方向に並んだ4つのクランプ部材40A~40Dの電線接触面41aにより、電線5を中心線CLに沿って案内する通路40aが区画される。通路40aの壁面である電線接触面41aは、中心線CLと平行な方向に延びている。そのため、電線クランプ装置30Fによれば、電線5を中心線CLに沿って円滑に案内することができる。
【0070】
また、電線クランプ装置30Fによれば、電線接触面41aが中心線CLに接近するようにクランプ部材40A~40Dを駆動することにより、電線5を把持することができる。ここで、各電線接触面41aは中心線CLに対して同時に接近および離反可能であり、電線5の外径に応じて電線接触面41aと中心線CLとの距離を調整することができる。そのため、電線クランプ装置30Fによれば、部品を交換しなくても、外径の異なる複数種類の電線5を把持することが可能である。よって、電線5の仕様の変更に伴う部品の交換作業は不要である。
【0071】
ところで、クランプ部材の個数が2つの場合、クランプ部材は中心線CLに垂直な2方向から電線5を挟み込むことになる。このように電線5を両側から挟み込むときに、電線5の中心位置が電線5を挟み込む方向と垂直な方向にずれてしまうおそれがある。しかし、本実施形態に係る電線クランプ装置30Fによれば、4つのクランプ部材40A~40Dを備えているので、クランプ部材の個数が2つの場合と異なり、電線5を把持するときに電線5の中心位置が特定の方向にずれることが防止される。また、電線5は、その中心が中心線CL上に位置するように把持される。よって、電線クランプ装置30Fによれば、電線5を良好にセンタリングすることができる。また、電線5を4方向から把持するので、2方向から把持する場合に比べて、電線5が変形しにくい。
【0072】
したがって、本実施形態に係る電線クランプ装置30Fによれば、電線5の仕様の変更に伴う部品の交換作業が不要であり、電線5を把持する際に電線5を良好にセンタリングすることができ、電線5の移動を円滑に案内することができる。
【0073】
クランプ体40を構成するクランプ部材の個数は3つ以上であれば足り、特に限定されないが、本実施形態では4つ(第1~第4クランプ部材40A~40D)である。本実施形態に係る電線クランプ装置30Fによれば、部品点数を抑えながら、電線5のセンタリングおよび案内を良好に行うことができる。
【0074】
電線接触面41aは、必ずしも中心線CLと平行な方向に真っ直ぐに延びている必要はないが、本実施形態では中心線CLと平行な方向に真っ直ぐに延びている。そのため、中心線CLに沿った電線5の移動をより一層円滑に案内することができる。
【0075】
本実施形態によれば、電線接触面41aにおける中心線CLと平行な方向の長さ41L(図10参照)は、電線クランプ装置30Fが電線5を案内するときの電線接触面41aと中心線CLとの距離41r(図12参照)の10倍以上である。本実施形態では、エアシリンダ60が第2状態に切り替えられ、電線5の把持が解除されているときに、電線5は中心線CLに沿って案内される。上記距離41rは、電線5の把持が解除されているときの電線接触面41aと中心線CLとの距離のことである。
【0076】
本実施形態によれば、電線接触面41aにおける中心線CLと平行な方向の長さ41Lが長いので、電線5を把持したときに、電線5が中心線CLから逸れて曲がってしまうことをより確実に防止することができる。よって、電線5を良好にセンタリングすることができるとともに、電線5を中心線CLに沿って良好に案内することができる。また、電線接触面41aにおける中心線CLと平行な方向の長さ41Lが長いことから、電線接触面41aの面積が比較的大きくなる。そのため、電線接触面41aが電線5を押す圧力(単位面積当たりの把持力)が一定の場合、把持力を大きくすることができ、電線5を十分に把持することができる。逆に、把持力が一定の場合、電線5が電線接触面41aから受ける圧力は低減されるので、電線5の局所的な変形を防止することができる。よって、電線5の品質を良好に保つことができる。
【0077】
ところで、周方向に並ぶクランプ部材40A~40Dの間に隙間が形成されていると、電線5が細い場合、電線5が当該隙間に挟まってしまうおそれがある。しかし、本実施形態によれば、図12および図14に示すように、クランプ部材40A~40Dは周方向に隙間なく接触しているので、電線5が細い場合であっても、電線5がクランプ部材40A~40D同士の隙間に挟まってしまうおそれがない。よって、本実施形態に係る電線クランプ装置30Fによれば、細い電線5を利用する場合であっても、電線5の把持および案内を良好に行うことができる。
【0078】
本実施形態によれば、クランプ部材40A~40Dはリンク機構70により、電線接触面41aが中心線CLに対して同時に接近および離反するように連結されている。すなわち、クランプ部材40A~40Dは、連動するように連結されている。よって、電線5の把持および把持の解除を良好に行うことができる。
【0079】
本実施形態によれば、図10に示すように、クランプ部材40A~40Dの先端側部分における中心線CLと垂直な方向の寸法41pは、根元側部分における中心線CLと垂直な方向の寸法41qよりも小さい。このように、クランプ部材40A~40Dの先端側部分がコンパクトであるので、電線クランプ装置30Fの先端側部分の近傍に、他の部材を設置するスペースを確保しやすい。電線クランプ装置30Fの先端側部分の近傍に設置される部材、例えば、カッター機構11、ストリップ機構12F、圧着機13F(図1参照)などの設置スペースの制約を少なくすることができる。よって、本実施形態によれば、電線処理装置1を小型化することができる。
【0080】
本実施形態によれば、図3に示すように、電線クランプ装置30Fは、クランプ部材40A~40D等を支持する支持台85と、クランプ部材40A~40Dの先端側部分よりも根元側部分に近い位置にある旋回中心線30c周りに支持台85を旋回させるアクチュエータ86とを備えている。そして、クランプ部材40A~40Dの先端側部分は根元側部分よりも軽くなっている。本実施形態によれば、クランプ部材40A~40Dの先端側部分が軽いので、支持台85を旋回させるためのエネルギーが少なくて済む。そのため、アクチュエータ86を小型化または省エネルギー化することができる。
【0081】
本実施形態に係る電線処理装置1によれば、処理対象の電線5を外径の異なる電線5に変更する際に、電線クランプ装置30Fの部品の交換が不要であるので、電線処理装置1のセッティングを迅速かつ容易に行うことができる。
【0082】
以上、本発明の実施の一形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。他にも種々の実施形態が可能である。以下、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0083】
前記実施形態では、電線クランプ装置30Fのクランプ部材40A~40Dを駆動するアクチュエータはエアシリンダ60であるが、アクチュエータは特に限定されない。アクチュエータは、例えばサーボモータであってもよく、その他のアクチュエータであってもよい。
【0084】
前記実施形態では、電線接触面41aが中心線CLに対して同時に接近および離反するようにクランプ部材40A~40Dを連結する連結機構は、リンク機構70であった。しかし、連結機構はリンク機構70に限定されない。例えば、連結機構は、ギアまたは伝動ベルトを備えた機構であってもよい。連結機構は、リンク、ギア、および伝動ベルトの2つ以上を組み合わせた機構であってもよい。例えば、連結機構は、クランプ部材40A~40Dの被支持部42の根元側部分に形成され、互いに係合する4つのギアを備えていてもよい。
【0085】
前記実施形態では、電線クランプ装置30Fは、鉛直線30c周りに旋回するように構成されているが、特に限定されない。電線クランプ装置30Fは、中心線CLと垂直な方向に移動するように構成されていてもよい。例えば、電線クランプ装置30Fは、左右に移動するように構成されていてもよい。
【0086】
前記実施形態では、クランプ部材40A~40Dは、先端側の方が根元側よりも小型に形成されているが、特に限定されない。また、クランプ部材40A~40Dは、先端側の方が根元側よりも軽量であるが、特に限定されない。
【0087】
前述したように、クランプ部材の個数は4つに限定されない。クランプ部材の個数は3つであってもよく、5つであってもよく、6つであってもよく、7つ以上であってもよい。
【0088】
電線クランプ装置30Fの適用対象は電線処理装置に限定されない。電線クランプ装置30Fは、中心線CLに沿った電線5の移動の案内および電線5の把持が必要な任意の装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 電線処理装置
5 電線
5a 芯線
5b 被覆材
11A,11B カッター刃
12A,12B ストリップ刃
13F 圧着機
30F 電線クランプ装置
41a 電線接触面
40A~40D クランプ部材
50 保持部材
60 エアシリンダ(アクチュエータ)
70 リンク機構(連結機構)
85 支持台(支持部材)
86 アクチュエータ(旋回アクチュエータ)
CL 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16