(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】高周波誘導加熱ヘッドと、それを用いた高周波誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
B23K 3/00 20060101AFI20230126BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20230126BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20230126BHJP
H05B 6/36 20060101ALI20230126BHJP
B23K 1/002 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
B23K3/00 310R
H05K3/34 507D
H05B6/10 331
H05B6/36 Z
B23K1/002
B23K3/00 310A
(21)【出願番号】P 2018192028
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】518360139
【氏名又は名称】株式会社スフィンクス・テクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】515037818
【氏名又は名称】パワーサプライテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】臼田 武史
(72)【発明者】
【氏名】高柳 毅
(72)【発明者】
【氏名】石橋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】頓部 光司
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-066358(JP,A)
【文献】特開平08-306475(JP,A)
【文献】特開昭62-180982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/00
H05K 3/34
H05B 6/10
H05B 6/36
B23K 1/002
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の一面側において、それぞれの先端側に設けた加熱部が、
間隔を介して対向配置させられる第1及び第2のコア体と、
前記第1及び第2のコアに磁束を供給するコイルと、を備え、
前記第1及び第2のコア体は、それぞれ、軸支部と、この軸支部と前記先端側の加熱部との間に設けた磁路部とを有し、前記第1のコア体の軸支部と前記第2のコア体の軸支部とを重合させると共に、この重合した前記第1のコア体の軸支部と前記第2のコア体の軸支部とに
回動支軸を貫通させ、前記第1及び第2のコア体は、前記
回動支軸の外周で摺動自在に重合した状態で磁気的に結合される構成とし、
前記第1のコア体の加熱部と第2のコア体の加熱部との、加熱時における対向距離は、前記軸支部側の距離よりも、先端側の距離を小さくしたことを特徴とする高周波誘導加熱ヘッド。
【請求項2】
前記第1及び第2のコア体は、それぞれ、板状体で形成し、これら第1及び第2のコア体の、それぞれの軸支部近傍における、板厚方向の断面積を、それぞれの磁路部における、板厚方向の断面積よりも大きくした請求項1に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
【請求項3】
前記第1及び第2のコア体は、それぞれ、板状体で形成し、これら第1及び第2のコア体の、それぞれの加熱部における、板厚方向の断面積を、それぞれの軸支部近傍における、板厚方向の断面積、および、それぞれの磁路部における、板厚方向の断面積よりも小さくした請求項1または2に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
【請求項4】
前記第1及び第2のコア体の、少なくとも一方の加熱部の先端側には、先端側に向けて拡角する先端磁束強化部を設けた請求項1乃至3のいずれか一つに記載の高周波誘導加熱ヘッド。
【請求項5】
前記第1及び第2のコア体の加熱部を、軸支部とは反対側に向けた突出形状とし、その先端側には、先端側に向けて拡角する先端磁束強化部を設けた請求項4に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
【請求項6】
前記コイルの一部を、前記第1及び第2のコア体で囲まれた部分に配置した請求項1乃至5のいずれか一つに記載の高周波誘導加熱ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘導加熱ヘッドと、それを用いた高周波誘導加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板上における部品を、はんだ付けする方法として、回路基板の上下に、第1、第2のコア体を配置し、前記第1、第2のコア体に加熱コイルから磁束を供給することで、回路基板に実装された電子部品などのはんだ付けを行うものが提案されている(これに類似する先行文献としては下記特許文献1が存在する)。
【0003】
また、回路基板の表面上に、一つの環状のコア体を配置し、このコア体に加熱コイルから磁束を供給するものも提案されている。
このコア体では、環状のコア体の一部に切り欠き部を設け、この切り欠き部を、はんだ場所に移動させ、この切り欠き部で、はんだを溶融させ、はんだ付けを行っている(これに類似する先行文献としては下記特許文献2が存在する)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-42730号公報
【文献】特開2014-120649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記前者の先行技術では、回路基板の上下に、第1、第2のコア体を配置しているので、第1、第2のコア体で挟まれた回路基板上の、はんだ付け部だけを加熱することが出来るようになる。
したがって、回路基板上の他の電子部品などを不用意に加熱することが無くなるという利点がある。
【0006】
しかしながら、回路基板の上下面には、他の部品が実装されており、しかもその大きさ、背の高さもまちまちであるので、それらを考慮して、第1、第2のコア体を、希望の場所に移動させるのは非常に難しく、生産性の向上が求められる。
そこで、後者の先行文献では、回路基板の表面上に、一つのコア体を配置し、このコア体に加熱コイルから磁束を供給する構成となっているので、コア体の移動は回路基板の表面上だけで行えば良く、その点では、作業性を向上できる。
【0007】
しかしながら、この後者の先行文献では、コア体の切り欠き部の大きさは固定されたものであるので、はんだ付け部の状況、つまり、はんだ付けする部品の大きさや形状によっては、コア体を取り替える必要も発生し、その点では、生産性の向上が課題となる。
そこで、本発明は、生産性を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために本発明の高周波誘導加熱ヘッドは、回路基板の一面側において、それぞれの先端側に設けた加熱部が、間隔を介して対向配置させられる第1及び第2のコア体と、前記第1及び第2のコアに磁束を供給するコイルと、を備え、
前記第1及び第2のコア体は、それぞれ、軸支部と、この軸支部と前記先端側の加熱部との間に設けた磁路部とを有し、前記第1のコア体の軸支部と前記第2のコア体の軸支部とを重合させると共に、この重合した前記第1のコア体の軸支部と前記第2のコア体の軸支部とに回動支軸を貫通させ、前記第1及び第2のコア体は、前記回動支軸の外周で摺動自在に重合した状態で磁気的に結合される構成とし、
前記第1のコア体の加熱部と第2のコア体の加熱部との、加熱時における対向距離は、前記軸支部側の距離よりも、先端側の距離を小さくしたものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明の高周波誘導加熱ヘッドは、回路基板の一面側において、それぞれの先端側に設けた加熱部が、間隔を介して対向配置させられる第1及び第2のコア体と、前記第1及び第2のコアに磁束を供給するコイルと、を備え、
前記第1及び第2のコア体は、それぞれ、軸支部と、この軸支部と前記先端側の加熱部との間に設けた磁路部とを有し、前記第1のコア体の軸支部と前記第2のコア体の軸支部とを重合させると共に、この重合した前記第1のコア体の軸支部と前記第2のコア体の軸支部とに回動支軸を貫通させ、前記第1及び第2のコア体は、前記回動支軸の外周で摺動自在に重合した状態で磁気的に結合される構成とし、前記第1のコア体の加熱部と第2のコア体の加熱部との、加熱時における対向距離は、前記軸支部側の距離よりも、先端側の距離を小さくしたものである。
【0010】
このため、第1及び第2のコア体の加熱部の対向距離も可変すれば、加熱部の形状、大きさ等にも容易に対応でき、高周波誘導加熱ヘッドを交換する必要が無いので、生産性を高めることが出来る。
また、本発明は、第1のコア体の加熱部と第2のコア体の加熱部との、加熱時における第1の対向距離は、前記軸支部側の距離よりも、先端側の距離を小さくしているので、磁束は、加熱部の先端側、つまり、配線基板側に集中することとなり、その結果として、電子部品の端子、および、ランドを短時間で、効果的に加熱し、はんだを溶融させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる高周波誘導加熱ヘッドを用いた高周波誘導加熱装置の斜視図である。
【
図6】同、高周波誘導加熱装置を用いて、はんだ付けをするサンプルの一例を示す斜視図である。
【
図7】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの一部拡大斜視図である。
【
図8】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図9】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図10】同、高周波誘導加熱装置の制御ブロック図である。
【
図11】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図12】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図13】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図14】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図15】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図16】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図17】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図18】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図19】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図20】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図21】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの動作を説明する図である。
【
図22】同、高周波誘導加熱装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図23】同、高周波誘導加熱装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1~
図5は、高周波誘導加熱装置を示し、高周波誘導加熱ヘッド1と、XYテーブル2とを備えている。
XYテーブル2の可動枠2aには、配線基板の一例として、
図6に示すプリント配線基板3が、
図1~
図5のように装着されている。
この実施形態で用いたプリント配線基板3には、その下面に、電子部品4が接着剤(図示せず)で仮止めされ、
図6に示すように、電子部品4の端子5は、プリント配線基板3に設けた貫通孔6を、下方から上方へと貫通し、その先端がプリント配線基板3の上方へと突出している。
【0014】
また、この
図6に示すプリント配線基板3の貫通孔6内、および、プリント配線基板3の上下面における貫通孔6の開口縁には、はんだ付けのためのランド7が、銅などによって設けられている。
さらに、ランド7には、予め、クリームはんだが塗布されている。
【0015】
本実施形態では、
図1~
図5に示すように、プリント配線基板3の上面側において、高周波誘導加熱ヘッド1により、電子部品4の端子5、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、クリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5を、ランド7部分、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続するものである。
【0016】
さて、そのようなはんだ付けを行う高周波誘導加熱ヘッド1は、
図1~
図5に示すように、例えば、フェライトなどの軟磁性体よりなるコア体8、9を備えている。
コア体8、9は、それぞれ、Cの字状となっており、その開口側を対向させた状態で組み合わされている。
【0017】
具体的には、コア体8は上方に、軸支部8a、中部に磁路部8b、下方に加熱部8cを備えている。
同じく、コア体9は上方に、軸支部9a、中部に磁路部9b、下方に加熱部9cを備えている。
【0018】
そして、これらのコア体8、9を、上述のごとく、その開口側を対向させた状態で組み合わせる。
このとき、コア体8、9の軸支部8a、9aは重ね合わされ、この状態で、それぞれの軸支部8a、9aに設けた貫通孔(図示せず)に、
図1、
図3、
図4に示すように、回動支軸10を貫通させている。
つまり、コア体8、9は、回動支軸10の周りに、回動自在に支持されているのである。
【0019】
コア体8、9について説明を続ける。
これらのコア体8、9は板状体で形成されているが、加熱部8c、9cにおける、板厚方向の断面積(板厚方向に切断した場合に、そこに存在する断面の面積)は、磁路部8b、9bや、軸支部8a、9a近傍における、板厚方向の断面積(板厚方向に切断した場合に、そこに存在する断面の面積)よりも小さくしている。
【0020】
つまり、
図11、
図12に示すように、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、クリームはんだを溶融させる場合には、コア体8、9の加熱部8c、9cを端子5の両側に、近接(非接触状態)させるが、目標とする端子5だけを加熱するためにも、また、磁束を集中させるためにも、コア体8、9の加熱部8c、9cは小型化(板厚方向の断面積を小さくする)することが好ましい。
【0021】
これに対して、磁路部8b、9bや、軸支部8a、9aは、磁束が通りやすいように、その板厚方向の断面積(板厚方向に切断した場合に、そこに存在する断面の面積)を、加熱部8c、9cにおける、板厚方向の断面積(板厚方向に切断した場合に、そこに存在する断面の面積)よりも大きくする必要がある。
【0022】
また、軸支部8a、9a近傍における、板厚方向の断面積(板厚方向に切断した場合に、そこに存在する断面の面積)を、それぞれの磁路部8b、9bにおける、板厚方向の断面積(板厚方向に切断した場合に、そこに存在する断面の面積)よりも大きくしている。
これは、コア体8、9が開閉動作を行う場合でも、軸支部8a、9a間では、その重なり、摺動する部分に存在する隙間を介して、両者間に磁束が流れるので、軸支部8a、9aの対向面積を大きくし、これにより、この軸支部8a、9a間で磁束が流れやすく、かつ、軸支部8a、9aの一部に、磁束が集中しないようにするためである。
【0023】
そのようなことを考慮し、軸支部8a、9aの重なり部分に存在する隙間(第2の間隔)の距離を、加熱時における、加熱部8c、9c間に存在する距離(第1の間隔)よりも小さくし、軸支部8a、9aでの磁気的結合が効果的に行われるようにしている。
【0024】
また、この部分に関して別の表現で説明すると、コア体8、9は板状体で形成されているので、つぎのような表現でも説明される。
つまり、コア体8を平面視した場合、軸支部8aは、磁路部8b、加熱部8cよりも平面積が大きな状態となっている。
【0025】
また、コア体9を平面視した場合、軸支部9aは、磁路部9b、加熱部9cよりも平面積が大きな状態となっている。
そして、このように面積を大きくした軸支部8aを、
図2、
図11のように重ねた状態で、コア体8、9を開閉させるので、軸支部8a、9aは常に広い面積で、しかも狭い距離で対向することとなり、その結果として、軸支部8a、9a間における磁気抵抗は小さく、磁束の移動は効果的に行われる。
【0026】
図1~
図5に戻り、コア体8、9を開閉動作させる構成について説明する。
コア体8、9を開閉動作(回動動作)させる回動支軸10の一端は、基体11の下部縦面に、XYテーブル2と水平状態で固定されている。
【0027】
基体11の上部水平面には、モータ12が固定されている。このモータ12は、例えば特開2016-59170号公報に示されるようなステッピングモータで構成された、一般的なものであるので、説明の煩雑化を避けるために、簡単な説明にとどめる。
つまり、この特開2016-59170号公報に記載されたように、内部の、ローターマグネットのシャフトに雄ねじを形成し、このシャフトの雄ねじに、上下に移動する移動体13を、螺合させている。
【0028】
この移動体13の下端は、コア体8、9の上方に配置された、連結部14に連結されている。
また、連結部14には、
図1に示す左右方向に対向する状態で、リンク機構15、16が連結されている。
リンク機構15、16は周知の構造で、二枚の折れ曲げ板で構成され、上部の関節部分は、連結部14に回動自在に支持され、また中部にも関節部分が存在し、下部は、それぞれコア体8、9の軸支部8a、9aに爪止めにより固定されている。
【0029】
以上の構成で、モータ12を正転させ、または逆転させることで、移動体13を上下動させ、連結部14も上下動させ、リンク機構15、16の折れ曲がり状態を可変することで、コア体8、9の加熱部8c、9cを開閉動作させるのである。
つまり、
図20に示すように、電子部品4の端子5が細い場合には、コア体8、9の加熱部8c、9cを接近(加熱部8c、9c間のギャップが狭い)させ、また
図21に示すように、電子部品4の端子5が太い場合には、コア体8、9の加熱部8c、9cを、
図20よりは広げる(加熱部8c、9c間のギャップを広げる)のである。
【0030】
次に、コア体8、9の上下動について説明する。
コア体8、9や、モータ12を支持した基体11は、上下動機構17に連結され、この上下動機構17により基体11を上下動させることで、コア体8、9も上下動させる。
【0031】
上下動機構17は、外周に螺旋状の溝が設けられたシャフト18をモータ19で正転、または逆転させ、シャフト18の外周に螺合連結された連結体20を上下動させ、連結体20に固定された基体11を上下動させ、これにより、コア体8、9を上下動させる構成となっている。
【0032】
なお、モータ19も、例えば特開2016-59170号公報に示されるようなステッピングモータで構成された、一般的なものであるので、説明の煩雑化を避けるために、簡単な説明にとどめる。
【0033】
このモータ19は、上述したモータ12とは異なり、内部のローターマグネットのシャフトに、シャフト18を連結したことである。つまり、シャフト18は回転動作を行うように構成されている。
また、連結体20の上下動をスムーズに行わせるために、シャフト18とは平行状態で支持軸21も設けられ、これにより基体11を固定した連結体20は、シャフト18と支持軸21に支えられた状態で、上下動することになる。
【0034】
次に、コア体8、9に磁束を供給するためのコイル22について説明する。
このコイル22は、内部に冷却水を循環させるパイプ形状のもので、一例として1MHz、100Aの電流が供給される。
したがって、前記冷却水を安定的に供給するためにも、コイル22は、
図13~
図19に示すようにXYテーブル2の上方の定置に配置され、これ自体は基本的には可動させず、XYテーブル2の可動枠2aと、コア体8、9を可動させる。
【0035】
図13は、XYテーブル2によって、
図6のプリント配線基板3の、はんだ付けする端子5が設定位置に移動配置された状態で、コア体8、9が下降させられる状態を示している。
つまり、はんだ付け時には、
図11に示すように、コア体8、9の間に、コイル22が存在する状態にしなければならないので、
図13~
図14のように、加熱部8c、9cを開いた状態で、コア体8、9を上方から下降させる。
【0036】
次に、
図20、
図21で説明したように、加熱すべき端子5の太さ、形状に対応する加熱部8c、9c間のギャップまで、
図15のようにコア体8、9を閉じ、その後、
図15から
図16のように、コア体8、9を
図20、
図21で説明した端子5位置にまで下降させる。
【0037】
そして、この状態でコイル22に通電し、プリント配線基板3の上面側において、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、ランド7のクリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5をランド7と、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続するのである。
【0038】
次に、コイル22への通電を停止し、
図17から
図18のように、コア体8、9を閉じた状態で上昇させる。
なお、この実施形態では、
図6に示すように、加熱すべき同じ形状の端子5が複数存在するので、
図17、
図18では、加熱部8c、9c間のギャップを維持した状態で、しかも、コア体8、9間にコイル22が存在する状態まで、コア体8、9を上昇させることとしている。
【0039】
図18では、その状態で、XYテーブル2によって、次に、加熱すべき端子5を加熱部8c、9cの下方へと移動させ、その後、
図19のようにコア体8、9を端子5位置にまで下降させる。
そして、この状態でコイル22に通電し、プリント配線基板3の上面側において、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、クリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5をランド7、および、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続する。
以降、
図15~
図19を繰り返し、
図6に示す全ての端子5部分をはんだ付けする。
図10は、制御回路を示している。
【0040】
前記コア体8、9を開閉させるモータ(M1)12と、コア体8、9を上下動させるモータ(M2)19は、制御部23に接続されている。
また、XYテーブル2のX軸用のモータ(M3)24と、Y軸用のモータ(M4)25、および、タイマー26、メモリ27も、制御部23に接続されている。
さらに、コイル22は、インバータ28を介して制御部23に接続されている。
なお、XYテーブル2のモータ24、25としても、ステッピングモータを用いている。
【0041】
ステッピングモータは、例えば特開2016-59170号公報などでも、良く知られているように、パルスを与える毎にそのステッピングモータ固有の角度だけ、正転方向にも、逆転方向にも、回転させることができるもので、本実施形態でも、制御が正確、簡単と言うことで、採用した。
【0042】
また、現位置検出を、フォトインタラプタや、マイクロスイッチなどを用いて行えることも、モータ12、19、24、25としてステッピングモータを用いた理由である。
また、モータ12、19、24、25を制御するための位置情報などは、
図22、
図23に示す動作プログラムと共に、メモリ27に記憶されている。
【0043】
以上の構成において、動作説明を行う。
先ず、制御部23によって、XYテーブル2が駆動される。
すなわち、
図6に示すプリント配線基板3の、はんだ付けする端子5の設定位置は、メモリ27に位置情報として記憶されているので、
図13に示す位置まで、XYテーブル2によって、プリント配線基板3が移動させられる(
図22のS1、S2)。
【0044】
プリント配線基板3が定位置に移動させられると、モータ19によって、
図13~
図14のように、加熱部8c、9cを開いた状態で、コア体8、9が上方から下降させる(
図22のS3)。
コア体8、9が
図14に示す定位置(位置情報はメモリ27に記憶)まで下降すると、モータ12によって、コア体8、9を閉じる動作を行う(
図22のS4、S5)。
【0045】
図15のように、
図20、
図21で説明した、加熱すべき端子5の太さ、形状に対応する加熱部8c、9c間のギャップ位置(位置情報はメモリ27に記憶)まで、コア体8、9が閉じられると、モータ19によってコア体8、9が下降される(
図22のS6、
図23のS7)。
【0046】
図16のように、コア体8、9が、
図20、
図21で説明した端子5位置(位置情報はメモリ27に記憶)にまで下降させられると、インバータ28によりコイル22に通電を開始する(
図23のS8、S9)。
【0047】
タイマー26により通電時間が完了したことが判定されると、コイル22への通電を停止する(
図23のS10~S12)。
【0048】
図7~
図9は、コイル22への通電による加熱動作を説明するものである。
本実施形態では、
図7~
図9に示すように、コア体8の加熱部8cと、コア体9の加熱部9cの、加熱時における対向距離を、それぞれの軸支部8a、9a側の距離(T1)よりも、先端側(プリント配線基板3側)の距離(T2)を小さくしている。
このため、
図8に示すように、磁束は、加熱部8c、9cの先端側、つまり、プリント配線基板3側に集中することとなり、その結果として、電子部品4の端子5、および、ランド7のクリームはんだを短時間で、効果的に加熱し、クリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5をランド7、および、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続することが出来る。
【0049】
また、本実施形態では、コア体8、9の、少なくとも一方の加熱部8c、9cの先端側(プリント配線基板3側)で、それぞれの内側には、先端側に向けて拡角する先端磁束強化部8d、9dを設けている。さらに詳細に説明すると、加熱部8c、9cは、
図7に示すように、下方(プリント配線基板3側で、軸支部8a、9aとは反対側とも表現できる)に向けた突出形状とすることで、対向面積を増やすとともに、下端側まで十分な磁路が形成できるようにしている。そして、この様に下端部まで十分な磁路が形成される状態とし、その状態で、上述のように、それぞれの内側に、先端側に向けて拡角する先端磁束強化部8d、9dを設けている。
【0050】
この先端磁束強化部8d、9dは、加熱部8c、9cの先端側(プリント配線基板3側)における、いわゆるC端面ともいわれるものであり、この先端磁束強化部8d、9dを設けたことにより、
図9に示すように、ランド7側に向かう磁束量が増え、ランド7上に、予め塗布していたはんだが、短時間で、溶融し、プリント配線基板3の貫通孔6内にも流れ込みやすくなり、その結果として、電子部品4の端子5を、ランド7、および貫通孔6内に、電気的、機械的に接続することに対する信頼性が向上した。
【0051】
なお、先端磁束強化部8d、9dを設けたことにより、ランド7上に、予め塗布していた、はんだが、短時間で、溶融し、プリント配線基板3の貫通孔6内にも流れ込みやすくなった点に対する明確な理由は、現状では十分に解明できていないが、ランド7上の、はんだにも大量の磁束が流れることで、はんだが溶融し、溶融したはんだに、ローレンツ力が働き、はんだ自身にも流動状態が発生するためではないかと、考えられている。
【0052】
以上のようにしてランド7部分での端子5の、はんだ付けが完了すると、
図17~
図18のようにモータ19によってコア体8、9を、
図18の定位置(位置情報はメモリ27に記憶)まで上昇させる(
図23のS13、S14)。
続いて、
図6のように本実施形態では、はんだ付けすべき端子5が複数存在しているので、
図17~
図18のように、加熱部8c、9c間のギャップを維持した状態で、しかも、コア体8、9間にコイル22が存在する状態まで、コア体8、9を上昇させ、この状態で、XYテーブル2によって、プリント配線基板3が移動させられ、その後は、
図19のように、コア体8、9を下降させ、次の端子5のはんだ付けを行う(
図23のS16、S17、S7~S12)。
【0053】
そして、全ての、はんだ付けが完了すると、S15において、次に、はんだ付けする場所がないので、
図14のようにコア体8、9の加熱部8c、9cを開き、その後、
図13のようにコア体8、9を上昇させ、動作を停止する(
図23のS15、S18~S22)。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば、プリント配線基板への部品のはんだ接続に活用される。
【符号の説明】
【0055】
1 高周波誘導加熱ヘッド
2 XYテーブル
2a 可動枠
3 プリント配線基板
4 電子部品
5 端子
6 貫通孔
7 ランド
8 コア体
8a 軸支部
8b 磁路部
8c 加熱部
8d 先端磁束強化部
9 コア体
9a 軸支部
9b 磁路部
9c 加熱部
9d 先端磁束強化部
10 回動支軸
11 基体
12 モータ
13 移動体
14 連結部
15 リンク機構
16 リンク機構
17 上下動機構
18 シャフト
19 モータ
20 連結体
21 支持軸
22 コイル
23 制御部
24 モータ
25 モータ
26 タイマー
27 メモリ
28 インバータ