(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ノコギリヤシオイルの判別方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/88 20060101AFI20230126BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20230126BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20230126BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
G01N30/88 C
G01N30/74 E
G01N30/06 Z
G01N30/86 F
(21)【出願番号】P 2018218250
(22)【出願日】2018-11-21
【審査請求日】2021-11-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物 日本食品科学工学会 第65回大会講演集 発行日 平成30年8月22日 集会名 日本食品科学工学会 第65回大会 公開日 平成30年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】516067140
【氏名又は名称】BGG Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関川 貴寛
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-512621(JP,A)
【文献】特開2002-214215(JP,A)
【文献】特開2015-083564(JP,A)
【文献】特開2007-063204(JP,A)
【文献】特開2018-036214(JP,A)
【文献】 Tang-Sheng Peng et al., Systematic Investigation on Quality Management of Saw Palmetto Products,ACS SYMPOSIUM SERIES 803,2002年, pp.117-133
【文献】Matteo Perini et al.,Combined use of isotopic fingerprint and metabolomics analysis for the authentication of sae palmetto(Serenao repens)extracts,Fitoterapia,2018年04月22日,Vol.127,pp.15-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験試料の高極性画分を抽出する第1工程、
第1工程で得られた被験試料の高極性画分を分析する第2工程、及び
第2工程で得られた被験試料の分析結果において、被験試料の高極性画分
に桂皮酸が存
在する場合に、被験試料がノコギリヤシオイルの同等品であると判断する第3工程を含む、ノコギリヤシオイルの判別方法。
【請求項2】
第2工程の分析が高速液体クロマトグラフィーであり、
第3工程の分析結果が、紫外可視検出器またはPDA検出器を用い
て280nmの測定
波長により得られるクロマトグラムである、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
被験試料の高極性画分を抽出する第1工程、
第1工程で得られた被験試料の高極性画分を分析する第2工程、及び
第2工程で得られた被験試料の分析結果において、被験試料の高極性画分に分子量27
0、分子式C
18H
22O
2の物質が存在する場合に、被験試料がノコギリヤシオイルの同等品であると判断する第3工程を含む、ノコギリヤシオイルの判別方法。
【請求項4】
第2工程の分析が高速液体クロマトグラフィーであり、
第3工程の分析結果が、紫外可視検出器またはPDA検出器を用いて412nmの測定
波長により得られるクロマトグラムである、請求項
3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノコギリヤシ果実由来オイルを偽物オイルと判別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノコギリヤシは北アメリカ南東部に分布する小さなヤシ科の植物であり、アメリカの先住民は古くから薬草として活用していた。ノコギリヤシ果実の主成分はラウリン酸やオレイン酸などの脂肪酸であり、微量ではあるが高級アルコールや植物ステロールを含んでいる。ノコギリヤシオイルは、頻尿の予防改善や毛髪のケアなどに効果が期待できる。現在、日本市場におよそ10種類のノコギリヤシオイルが流通しているが、動植物油を用いて脂肪酸組成を調製した人工ノコギリヤシオイルなど、安価な偽物オイルが多数流通している。
【0003】
該偽物オイルは安価な未申告の植物油(パーム、キャノーラ、ココナッツなど)を使用して希釈されているノコギリヤシオイル混合品であることが多い。偽物オイルの脂肪酸組成がノコギリヤシの果実由来オイルと同様である場合、従来の分析法では判別が困難である。
【0004】
ノコギリヤシオイルとして流通している製品が偽物オイルかを判別する方法としては、これまでに脂肪酸組成、粘性、色、規格成分であるβ-シトステロールを分析する方法などが用いられてきた。しかしながら、脂肪酸組成は動植物由来脂肪酸を添加すること、粘性は乳化剤を添加すること、色は着色料を添加すること、β-シトステロールは他の植物由来品を添加することで、偽物オイルがノコギリヤシオイルに似るよう調整されており、偽物オイルかを判別する決め手に欠けていた。
【0005】
この改善策として、ノコギリヤシオイルメーカーなどが偽物オイルを判別する方法を提案しているが(非特許文献1及び2)、未だ判別の精度が高い方法とはいえない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Anthony B. et al. “A phytochemical comparison of saw palmetto products using gas chromatography and 1H nuclear magnetic resonance spectroscopy metabolomic profiling” Journal of Pharmacy and Pharmacology, 66 (2014) pp. 811-822
【文献】Matteo P. et al. “Combined use of isotopic fingerprint and metabolomics analysis for the authentication of saw palmetto (Serenoa repens) extracts”Fitoterapia 127 (2018) pp.15-19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡便な工程のノコギリヤシオイルの判別方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、試料の高極性画分を抽出して分析することで、ノコギリヤシオイル原料特有の微量成分が検出され、ノコギリヤシオイルを偽物オイルと判別できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]被験試料の高極性画分を抽出する第1工程、第1工程で得られた被験試料の高極性画分を分析する第2工程、及び第2工程で得られた被験試料の分析結果をノコギリヤシオイルの標準結果と比較する第3工程を含む、ノコギリヤシオイルの判別方法。
[2]被験試料の高極性画分を抽出する第1工程、第1工程で得られた被験試料の高極性画分を分析する第2工程、及び第2工程で得られた被験試料の分析結果において、被験試料の高極性画分にリノレン酸または桂皮酸が存在する場合に、被験試料がノコギリヤシオイルの同等品であると判断する第3工程を含む、ノコギリヤシオイルの判別方法。
[3]第2工程の分析が高速液体クロマトグラフィーであり、第3工程の分析結果が、紫外可視検出器またはPDA検出器を用いて212nmまたは280nmの測定波長により得られるクロマトグラムである、[1]または[2]に記載の方法。
[4]被験試料の高極性画分を抽出する第1工程、第1工程で得られた被験試料の高極性画分を分析する第2工程、及び第2工程で得られた被験試料の分析結果において、被験試料の高極性画分に分子量270、分子式C18H22O2の物質が存在する場合に、被験試料がノコギリヤシオイルの同等品であると判断する第3工程を含む、ノコギリヤシオイルの判別方法。
[5]第2工程の分析が高速液体クロマトグラフィーであり、第3工程の分析結果が、紫外可視検出器またはPDA検出器を用いて412nmの測定波長により得られるクロマトグラムである、[4]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、簡便な工程でノコギリヤシオイルを偽物オイルと判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】測定波長212nmで得られた各試料のクロマトグラムである。
【
図2】測定波長280nmで得られた各試料のクロマトグラムである。
【
図3】測定波長412nmで得られた各試料のクロマトグラムである。
【
図4】測定波長212nmで得られたノコギリヤシオイルのピークをリノレン酸のピークと比較した図である。
【
図5】測定波長280nmで得られたノコギリヤシオイルのピークを桂皮酸のピークと比較した図である。
【
図6】測定波長412nmで得られたノコギリヤシオイルのピークのマススペクトルである。
【
図7】測定波長412nmで得られたノコギリヤシオイルのピークのマススペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ノコギリヤシオイルとして存在しているものから高極性画分を抽出し、分析することで、ノコギリヤシオイルと偽物オイルとに判別する方法である。
【0013】
<被験試料の高極性画分を抽出する第1工程>
本発明において被験試料は、ノコギリヤシオイルとして存在しているものを用いる。ノコギリヤシ果実の粉砕物(陽性コントロール)、パーム油、キャノーラ油、およびココナッツ油などの植物油(陰性コントロール)を対比のために用いることもできる。
【0014】
被験試料の高極性画分は、公知の方法を用いて抽出することができる。被験試料の高極性画分は高極性溶媒により得ることができる。溶媒の極性値は本明細書においてはSnyderの極性パラメーターを用いる。本明細書における高極性溶媒は、Snyderの極性パラメーターが3.9以上である。液液抽出により高極性画分を得ることもでき、その場合、溶媒の混合比は、1:2~2:1が好ましく、1:1がより好ましい。
【0015】
本明細書において、「Snyderの極性パラメーター」は、Snyderによって定義された、有機溶媒の極性を定量的に表現するためのパラメーターを意味する(L.R. Snyder, Journal
of Chromatography A, 第92巻, p. 223-230, 1974年)。特定の有機溶媒についてのSnyderの極性パラメーター値は、例えば、公知文献(例えば、Wako Analytical Circle No. 11, 「クロマトQ & A」)に記載の値を参照する、あるいは、前記文献に従って平衡定数を測定することにより、算出することができる。
【0016】
高極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、ピリジン、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドが挙げられる。水を含んでいてもよい。被験試料を脱脂するために、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフランを用いてもよい。
抽出に用いる溶媒の使用量に特に制限はないが、被験試料100体積部に対して、通常200~10000体積部、好ましくは500~2000体積部である。
【0017】
被験試料の高極性画分の抽出は、常温~加温(例えば20~100℃)下において、静置もしくは撹拌しながら行う。また、抽出時間は、被験試料の高極性画分を十分に移行させるために、30分以上であることが好ましい。被験試料は、抽出により高極性画分と低極性画分とに分けられ、高極性画分が分取される。
【0018】
次に、必要に応じて高極性画分を濃縮、乾燥する。被験試料の高極性画分の濃縮及び乾燥には、公知の減圧濃縮、膜濃縮、凍結濃縮、真空乾燥、噴霧乾燥又は凍結乾燥を用いることができる。
高極性画分は次の工程で分析に供されるため、必要に応じて有機溶媒に溶解される。この有機溶媒は、例えばジメチルホルムアミド、メタノールを用いることができる。
【0019】
<被験試料の高極性画分を分析する第2工程>
被験試料の高極性画分の分析は、公知の分析手法を用いることができる。高極性画分に含まれる成分は微量なので、微量成分を検出できる手法が好ましい。具体的には高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography;略してHPLC)、ガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography;略してGC)、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance;略してNMR)分析、質量分析(Mass Spectrometry;略してMS)などが挙げられ、これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。微量成分の分析という目的から、高速液体クロマトグラフィーの1種で超高速高分離液体クロマトグラフィー(通称:UPLC)を用いることがさらに好ましい。
【0020】
被験試料の高極性画分を高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと表記することがある。)により分析する場合、HPLCは逆相又は順相クロマトグラフィーにより行う。カラムとしてはシリカゲル、アルミナやスチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリレート等のポリマーゲルを担体とし、オクタデシルシリル基(C18)を有するカラムが好ましいが、オクチル基(C8)、ブチル基(C4)、トリメチル基(C3)、アミノプロピル基(NH2)等の基を有するカラムを用いることもできる。この中でもシリカゲルを担体とし、オクタデシル基を有するODSカラム(C18カラム)がより高精度の分析ができるという点で好ましい。C18カラムを用いた場合、被験試料の高極性画分に含まれるそれぞれの成分のピークの分離がよくなり、分析における信頼区間が上限、下限とも広がる。HPLCは市販の装置を用い、カラムも市販のものを用いればよい。カラムに充填する担体は、球形、破砕形を用いることができ、その粒子径は通常1.5~3μmであり、高精度分析という観点から高理論段数を有することが要求され、球形で2μm以下が好ましく、1.8μmがさらに好ましい。なお、試料中の夾雑物による目詰まりを防ぐ目的で、ガードカラムを用いることもできる。用いるカラムのサイズはサンプルとし
て注入される試料の容積にもよるが、例えば内径1~5mm、長さ30~200mmのものを用いればよい。好ましくは、内径2.1mm、長さ50mmのものを使用する。HPLCに注入される試料の容積は、カラム内に注入できて溢れなければ特に制限されるものではないが、1μL~10μLが好ましく、2μL~5μLがさらに好ましい。
【0021】
HPLC分析の際の移動相は、UV吸収のないもの又は少ないものを用いる。このようなものとして、アセトニトリル、メタノール、テトラヒドロフラン等が挙げられるが、UV吸収がないという点でアセトニトリルが好ましい。溶出は移動相の組成及び濃度を徐々に変化させるグラジエント溶出法により行なってもよい。分析をする際の移動相の流速は、0.05mL/分~2mL/分、好ましくは0.1mL/分~1mL/分である。
【0022】
<被験試料の分析結果をノコギリヤシオイルの標準結果と比較する第3工程>
分析手法がHPLCの場合、検出器は紫外可視検出器、PDA検出器などの吸光度検出器、質量分析検出器などを用いることができる。
本発明者は、紫外可視検出器を用いたHPLC分析で、ノコギリヤシオイルの212nm、280nm及び412nmの測定波長におけるクロマトグラムで、それぞれ特徴的なピークが存在するとの知見を得た。ノコギリヤシオイルの212nmの測定波長におけるクロマトグラムはリノレン酸(C18H30O2)と同じ保持時間にピークが存在する。ノコギリヤシオイルの280nmの測定波長におけるクロマトグラムでは、桂皮酸(C9H8O2)と同じ保持時間にピークが存在する。ノコギリヤシオイルの412nmの測定波長におけるクロマトグラムでは、分子量270で分子式C18H22O2の物質のピークが存在する。
【0023】
本発明では被験試料の212nm、280nm及び412nmの測定波長におけるクロマトグラムを得て、被験試料のクロマトグラムと標準結果であるノコギリヤシオイルのクロマトグラムとを比較することがノコギリヤシオイルを判別する上で有用である。被験試料は、リノレン酸(C18H30O2)、桂皮酸(C9H8O2)または分子量270で分子式C18H22O2の物質のピークが少なくとも1つ存在する場合は、ノコギリヤシオイルと同等品であると判別することができる。また、これらのピークが1つでも存在しない場合には、ノコギリヤシオイルの偽物であると判別することができる。
【0024】
また、ノコギリヤシオイルが動植物油で希釈されているものは、ノコギリヤシオイルのクロマトグラムに比べて、クロマトグラムのピーク形状が変化、およびノコギリヤシオイル特有のピークの面積が減少するので、希釈されたオイルであることを判別できる。
【0025】
分析手法がHPLCでない場合、リノレン酸、桂皮酸、または分子量270で分子式C18H22O2の物質をノコギリヤシオイルの標準結果として用い、被験試料の高極性画分を分析して得られた結果と比較することが、ノコギリヤシオイルを判別する上で有用である。被験試料の高極性画分を分析してリノレン酸、桂皮酸、または分子量270で分子式C18H22O2の物質が検出できた場合は、ノコギリヤシオイルと同等品であると判別することができる。また、リノレン酸、桂皮酸、及び分子量270で分子式C18H22O2の物質の内1つでも存在が検出できない場合には、ノコギリヤシオイルの偽物であると判別することができる。
【0026】
比較に用いるノコギリヤシオイルの標準結果は、被験試料の分析結果と同時に得てもよいし、被験試料の分析の条件と同等の条件で行われた過去の結果を標準結果として用いてもよい。
【実施例】
【0027】
これより具体的な例をもって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の具体例に限定
されるものではない。
【0028】
[実施例1~3]超高速高分離液体クロマトグラフィーのクロマトグラムの比較
ノコギリヤシオイル製品1、製品2、製品3、製品4、製品5を被験試料とし、比較のためにノコギリヤシ乾燥果実試料を超高速高分離液体クロマトグラフィー(以下、UPLCと表記する。)に供した。なお、製品1はノコギリヤシオイルの本物である。
【0029】
(被験試料の調製)
ノコギリヤシオイル製品1~5をそれぞれ約1g取り、90%メタノールを5mL加え、ヘキサン5mLを用いた脱脂操作を3回繰り返した。90%メタノール層3.5mLを分取し、乾固した。その後、メタノール150μLに溶解させ、分析に供した。
【0030】
(果実試料の調製)
凍結粉砕した後、約1g取り、クロロホルム/メタノール(1:1)を加えて攪拌した。懸濁液をろ過した後、ろ液を乾固した。乾固物に90%メタノールを5mL加え、ヘキサン5mLによる脱脂操作を3回行った。その後90%メタノール層を3.5mL分取し、再度乾固した。得られた乾固物をジメチルホルムアミド150μLに溶解させ、分析に供した。
なお、製品4については検出過剰なピークが存在したため、5倍希釈物を用いた。
【0031】
(UPLC分析)
以下の条件にて各試料をUPLCに供与した。得られたクロマトグラムを
図1~3に示す。各図中に矢印で示しているのが、それぞれの測定波長におけるノコギリヤシオイルに特徴的なピークである。
図1~3のどれを見ても、被験試料のうち製品2~3はノコギリヤシオイル同等品、製品4~5は偽物オイルであることが判別できる。
【0032】
(分析条件)(UPLC)
機器 :Waters製ACQUITY型 UPLC
カラム :Waters製ACQUITY UPLC HSS C18 (100×2.1 mm i.d.)
移動相 :A=5% MeCN/H2O + 0.05% HCOOH、B=MeCN + 0.05% HCOOH
グラジエント :%B=10 (0 min)→50 (5-7.5 min)→100 (9-15 min)
カラム温度 :40℃
流速 :0.40 mL/min
注入量 :0.5 μL
検出器 :PDA
測定波長 :212 nm(実施例1)、280 nm(実施例2)、412 nm(実施例3)
【0033】
[試験例1]HPLCによるノコギリヤシオイル特有成分の分析
(高濃度試料の調製)
ノコギリヤシオイル1mLを90%メタノール5mLおよびヘキサン5mLで液液分配した。90%メタノール層3.5mLを分取し、乾固した。その後、メタノール150μLに溶解させた。
【0034】
(HPLC分析)
測定波長212nmにおける特徴的なピーク(以下、ピークA)がリノレン酸、測定波長280nmにおける特徴的なピーク(以下、ピークB)が桂皮酸であることが予想された。それを確認するため、それぞれ、以下の条件でリノレン酸の標品、桂皮酸の標品と保持時間の比較を行った。結果を
図4,5に示す。ピークAもピークBも標品と保持時間が一致したことから、ピークAがリノレン酸、ピークBが桂皮酸であると推定した。
【0035】
(分析条件)(HPLC)
機器 :日本分光製 LC2000 Plus型
カラム :Waters XSelectTM HSS C18 (150×3.0 mm i.d.)
移動相 :A=5% MeCN/H2O + 0.05% HCOOH、B=MeCN + 0.05% HCOOH
グラジエント :%B=0 (0 min)→50 (10-20 min)→100 (23-38 min)
カラム温度 :40℃
流速 :0.40 mL/min
注入量 :5 μL
検出器 :UV
測定波長 :212 nm、280 nm
【0036】
[試験例2]液体クロマトグラフ/高分解能質量分析(LC/MS分析)によるノコギリヤシオイル特有成分の分析
(高濃度試料の調製)
試験例1と同様に、試料を調製した。ノコギリヤシオイル1mLを90%メタノール5mLおよびヘキサン5mLで液液分配した。90%メタノール層3.5mLを分取し、乾固した。その後、メタノール150μLに溶解させた。
【0037】
(LC/MS分析)
測定波長412nmにおける特徴的なピーク(以下、ピークC)の分子量および分子式を同定するため、LC/MS分析を行った。結果を
図6及び表1、2に示した。ピークCのマススペクトルが得られ、ピークCの分子量は270と推定された。推定分子式はC
18H
22O
2もしくはC
16H
20N
30と推定されたが、同定には至らなかった。
【0038】
(分析条件)(LC/MS)
機器(LC部) :Waters 製ACQUITY 型
機器(質量分析部) :Waters 製SynaptG2-S 型
カラム :ACQUITY UPLC HSS C18 (100×2.1 mm i.d.)
移動相 :A=H2O + 10 mM HCOONH4、B=MeCN
グラジエント :%B=10 (0 min)→50 (5-7.5 min)→100 (9-15 min)
カラム温度 :40℃
流速 :0.40 mL/min
注入量 :2 μL
検出器 :UV(212、280、412 nm)、MS(APCI)
【0039】
【0040】
【0041】
(LC/MS/MS分析)
ピークCの分子式を同定するため、LC/MS/MS分析を行った。試料の調製及び分析条件はLC/MSと同様とした。結果を
図7に示した。脱水由来と考えられるフラグメントイオンが2つ検出され、ピークCが酸素原子を2つ以上有していると考えられたことから、ピークCの分子式をC
18H
22O
2と推定した。