(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】配線基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
H05K3/46 N
(21)【出願番号】P 2018236877
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098615
【氏名又は名称】鈴木 学
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】肥田 敏徳
(72)【発明者】
【氏名】水野 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】福永 一範
(72)【発明者】
【氏名】溝口 憲
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-085098(JP,A)
【文献】特開2009-054761(JP,A)
【文献】特開2013-098209(JP,A)
【文献】特開2001-015924(JP,A)
【文献】特開2007-189043(JP,A)
【文献】特開2014-075548(JP,A)
【文献】国際公開第2011/122245(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層を積層してなり、且つ対向する表面と裏面とを有する基板本体と、
上記基板本体の表面に開口し、該基板本体の表面側の絶縁層を貫通する第1の貫通部と、該第1の貫通部と連通し、且つ上記基板本体の裏面に開口し、該基板本体の裏面側の絶縁層を貫通する第2の貫通部とからなり、上記基板本体の表面および裏面と直交する厚み方向に沿った上記第1の貫通部および上記第2の貫通部を含む断面において、上記第1の貫通部の中心と第2の貫通部の中心とがずれているビアホールと、
上記第1の貫通部を構成する内壁面に沿って形成された第1のメタライズ部、および該第1のメタライズ部に隣接し且つ上記第2の貫通部を構成する内壁面に沿って形成された第2のメタライズ部と、
上記第1および第2のメタライズ部に囲まれた中空部に充填され、且つ上記基板本体の表面および裏面に達する金属部とからなるビア導体と、を備えた配線基板であって、
上記断面において、上記第1のメタライズ部と上記第2のメタライズ部とは、前記厚み方
向に、互いに対向する第1の重複部分を有している、
ことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記断面において、前記第1の貫通部を有する前記表面側の絶縁層のうち、該第1の貫通部を構成する内壁面と、前記第2の貫通部を有する前記裏面側の絶縁層のうち、該第2の貫通部を構成する内壁面とは、前記厚み方
向に、互いに対向する第2の重複部分を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記ビアホールを構成する前記第1の貫通部の中心と前記第2の貫通部の中心とのずれは、前記厚み方向に沿った視覚において、上記第1の貫通部または上記第2
の貫通部のうち、何れか一方の内径を基準として、該内径の長さの30%以下である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第1の貫通部を構成する前記表面側の絶縁層と、前記第2の貫通部を構成する前記裏面側の絶縁層との間には、前記第1のメタライズ部と前記第2のメタライズ部とを電気的に接続する層間メタライズ層が形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
複数の絶縁層を積層してなり、且つ対向する表面と裏面とを有する基板本体と、該基板本体の表面に開口し、該基板本体の表面側の絶縁層を貫通する第1の貫通部と、該第1の貫通部と連通し、且つ上記基板本体の裏面に開口し、該基板本体の裏面側の絶縁層を貫通する第2の貫通部とからなり、上記基板本体の表面および裏面と直交する厚み方向に沿った上記第1の貫通部および上記第2の貫通部を含む断面を含む視覚において、上記第1の貫通部の中心と第2の貫通部の中心とがずれているビアホールと、上記第1の貫通部を構成する内壁面に沿って形成された第1のメタライズ部、および該第1のメタライズ部に隣接し且つ上記第2の貫通部を構成する内壁面に沿って形成された第2のメタライズ部と、前記第1および第2のメタライズ部に囲まれた中空部に充填され、且つ上記基板本体の表面および裏面に達する金属部とからなるビア導体と、を備えた配線基板の製造方法であって、
追って上記基板本体の表面側および裏面側の絶縁層となる2組の絶縁層における所定の位置ごとに貫通孔を個別に形成する工程と、
上記2組の絶縁層ごとに形成された貫通孔を構成する内壁面、および該貫通孔ごとにおける両端の開口部を囲む上記
2組の絶縁層ごとの対向する一対の表面に沿って、メタライズ層を個別に形成する工程と、
上記絶縁層の表面と直交する厚み方向に沿った視覚で、上記メタライズ層が形成された上記表面側の絶縁層と上記裏面側の絶縁層とを、両者の貫通孔の中心が互いにずれるように積層し且つ圧着して、上記基板本体、ビアホール、および第1のメタライズ部と第2のメタライズ部を形成する圧着工程と、
上記第1および第2のメタライズ部に囲まれた中空部内に金属メッキを施して、該中空部内に上記金属部を形成するメッキ工程と、を含み、
上記圧着工程では、上記断面において、上記第1のメタライズ部と上記第2のメタライズ部とは、前記厚み方
向に、互いに対向する第1の重複部分を有するように圧着している、
ことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記圧着工程では、前記断面において、前記第1の貫通部を有する前記表面側の絶縁層のうち、該第1の貫通部を構成する内壁面と、前記第2の貫通部を有する前記裏面側の絶縁層のうち、該第2の貫通部を構成する内壁面とは、前記厚み方
向に、互いに対向する第2の重複部分を有するように圧着している、
ことを特徴とする請求項5に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁材からなる基板本体の表面と裏面との間を貫通し且つボイドの発生を抑制したビア導体を備えた配線基板、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、セラミックからなる絶縁基板の上下面に設けた配線導体同士を導通するビア導体にボイドの発生を抑制し、該ビア導体と上記絶縁基板との剥離を防ぐため、絶縁基板の上面に開口する第1の凹部と、前記絶縁基板の下面に開口する第2の凹部とを、前記絶縁基板の厚み方向において、前記第1および第2の凹部の中心軸を互いにずらして該両凹部を連通させたビアホールを形成し、該ビアホール内の中程に上記絶縁基板の上下面に開口する窪みを上下に有するビア導体(メタライズ部)を形成した後、前記窪み内をメッキによる金属材料にて充填してなる配線基板および電子装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記配線基板などによれば、前記ビアホールの軸方向における中間付近において、前記第1・第2の凹部の中心軸間のずれに起因する狭隘部が位置しているため、金属ペーストをスクリーン印刷により、前記狭隘部を閉塞し且つ上下一対の窪みを有する前記ビア導体を形成でき、前記一対の窪み内を金属メッキによる金属材料で個別に埋設できるため、ボイドの発生が抑制されたビア導体部を形成することが可能となる。
【0003】
しかし、前記配線基板などでは、前記第1および第2の凹部からなり、両凹部の中心軸をずらした前記ビアホールを形成するべく、前記絶縁基板の上下面に対して、フォトリソグラフィ法を用いたブラスト法やエッチング法を適用して穿設するため、煩雑で且つ複雑な製造工程が必要となる。しかも、セラミックからなる前記絶縁基板に形成した前記第1および第2の凹部からなるビアホール内に、該ビアホールの軸方向における狭隘部を閉塞し、第1および第2の凹部の内壁面に沿って上下面側に延び且つ上下一対の窪みを有する前記ビア導体(メタライズ部)を、金属ペーストのスクリーン印刷およびその後の焼成によって形成することは、技術的に甚だ困難であり、且つコスト高を招くおそれが大であった。
特に、ビアホールの直径を大きくする必要がある場合には、前記第1および第2の凹部からなるビアホール内に、該ビアホールの軸方向における狭隘部を閉塞することがそもそも困難であると共に、上記第1および第2の凹部の内壁面に沿って上面・下面側に延び、且つ上下一対の窪みを有する前記ビア導体(メタライズ部)を形成するも困難である、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-85098号公報(第1~9頁、
図1~3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術で説明した問題点を解決し、絶縁材からなる基板本体の表面と裏面との間を貫通し、且つボイドの発生を抑制したビア導体を有する配線基板、および該配線基板を比較的簡素な工程により確実に得られる製造方法を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、絶縁材からなる基板本体をその表面側および裏面側に位置する複数の絶縁層により構成し、該絶縁層ごとに貫通部を個別に形成し且つ該貫通部ごとの内壁面に沿ってメタライズ部を形成した後、前記複数の絶縁層をそれらの貫通部の中心が互いに互いにずれるように積層および圧着することで、上記メタライズ部の一部が基板本体の厚み方向に対向するようにする、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明による配線基板(請求項1)は、複数の絶縁層を積層してなり、且つ対向する表面と裏面とを有する基板本体と、該基板本体の表面に開口し、該基板本体の表面側の絶縁層を貫通する第1の貫通部と、該第1の貫通部と連通し、且つ上記基板本体の裏面に開口し、該基板本体の裏面側の絶縁層を貫通する第2の貫通部とからなり、上記基板本体の表面および裏面と直交する厚み方向に沿った上記第1の貫通部および上記第2の貫通部を含む断面において、上記第1の貫通部の中心と第2の貫通部の中心とがずれているビアホールと、前記第1の貫通部を構成する内壁面に沿って形成された第1のメタライズ部、および該第1のメタライズ部に隣接し且つ上記第2の貫通部を構成する内壁面に沿って形成された第2のメタライズ部と、該第1および第2のメタライズ部に囲まれた中空部に充填され、且つ上記基板本体の表面および裏面に達する金属部とからなるビア導体と、を備えた配線基板であって、上記断面において、上記第1のメタライズ部と上記第2のメタライズ部とは、前記厚み方向に、互いに対向する第1の重複部分を有している、ことを特徴とする。
【0007】
前記配線基板によれば、以下の効果(1),(2)を得ることができる。
(1)前記ビア導体は、前記第1・第2のメタライズ部と、該第1・第2のメタライズ部の中空部内に形成され、且つ前記基板本体の厚み方向における中間付近に位置する前記第1の重複部分に囲まれた狭隘な部分を含む前記金属部とからなっている。しかも、製造時において、前記基板本体の厚み方向における中間付近に位置する前記第1の重複部分から金属メッキによる金属の析出により中空部内が閉塞されていき、上記第1の重複部分を挟んだ基板本体の表面側と裏面側に向かって金属メッキによる金属の析出が順次成されているので、ビア導体の直径を大きく形成する場合であっても、前記金属部内におけるボイドの発生が確実に抑制されている。従って、上記ビア導体による前記基板本体の表面側と裏面側との電気的な接続および熱の伝達性に優れた配線基板とすることができる。
(2)上記効果(1)に起因して、前記基板本体の表面側と裏面側との間における電気的接続の信頼性および放熱性に優れた配線基板を提供することができる。
【0008】
尚、前記絶縁材は、アルミナやガラス-セラミックなどのセラミック、あるいはエポキシ系などの樹脂である。
また、前記表面側および裏面側の絶縁層は、単層の形態のほか、予め、複数の絶縁シートを積層した形態でも良く、後者の場合、内層配線を含んでいても良い。
更に、前記表面側および裏面側の絶縁層同士の層間には、前記第1および第2のメタライズ部と接続されたメッキ用配線や内層配線が形成されていても良い。
また、前記第1および第2の貫通部(貫通孔)の軸方向における外形は、円形のほか、楕円形、長円形、四角形以上の正多角形状または変形多角形状も含まれる。
【0009】
また、前記第1および第2のメタライズ部は、前記各絶縁層がアルミナなどの高温同時焼成セラミックの場合には、タングステン(以下、Wと略記する)またはモリブデン(以下、Moと略記する)が用いられ、前記各絶縁層がガラス-セラミックなどの低温同時焼成セラミックや樹脂の場合には、銅(Cu)または銀(Ag)が用いられる。
更に、第1および第2の貫通部は、互いの内径が相違していても良い。
また、前記ずれは、第1および第2の貫通部の断面形状が楕円形や長円形の場合には、長径または短径が基準となり、前記断面形状が矩形(正方形や長方形)状の場合には、ずれの方向と一致する長辺、短辺、または対角線が基準となる。
加えて、前記各絶縁層の表・裏面上に、該表・裏面を底面とするキャビティを形成するための枠形状である別の絶縁層を更に積層した形態としても良い。
【0010】
また、本発明には、前記断面において、前記第1の貫通部を有する前記表面側の絶縁層のうち、該第1の貫通部を構成する内壁面と、前記第2の貫通部を有する前記裏面側の絶縁層のうち、該第2の貫通部を構成する内壁面とは、前記厚み方向に、互いに対向する第2の重複部分を有している、配線基板(請求項2)も含まれる。
これによれば、前記厚み方向に、前記第1の重複部分に加えて、更に第1・第2の貫通部を構成する内壁面同士の間に第2の重複部分が、前記基板本体の厚み方向における中間付近に位置しているので、上記第1の重複部分を確実に形成することができる。従って、製造時において、第1の重複部分から金属メッキによる金属の析出によって、中空部内が閉塞されていき、第1および第2の重複部分を挟んだ基板本体の表面側と裏面側とに順次向かうように金属メッキによる金属の析出が成されている。そのため、ビア導体の直径を大きく形成する場合であっても、前記金属部内にボイドの発生が一層抑制された該金属部を含むビア導体が、上記基板本体の表面と裏面との間を貫通しているので、前記効果(1)をより確実に得ることができる。
【0011】
更に、本発明には、前記ビアホールを構成する前記第1の貫通部の中心と前記第2の貫通部の中心とのずれは、前記厚み方向に沿った視覚において、上記第1の貫通部または上記第2の貫通部のうち、何れか一方の内径を基準として、該内径の長さの30%以下である、配線基板(請求項3)も含まれる。
これによれば、前記金属部における軸方向の中間付近に、前記第1の重複部分に囲まれた狭隘部の断面積が過小となる事態が防止できるため、前記効果(1)を安定して得ることが保証されている。
尚、前記ずれが前記内径の長さの30%を超えると、前記第1の重複部分において対向する距離が過小となり、且つ前記金属部の軸方向における中間に水平方向の断面積が過小な狭隘部ができ、第1の重複部分における該金属部が過小となる。この場合、該金属部を通じた導電性や伝熱性が低下し得るため、かかる範囲を除いたものである。因みに、前記ずれの最小値は、前記内径の長さの5%である。
また、前記第1の貫通部と第2の貫通部との内径が相違している場合、前記ずれの基準となる内径(対角線)には、比較的小径な貫通部の内径が適用される。
【0012】
加えて、本発明には、前記第1の貫通部を構成する前記表面側の絶縁層と、前記第2の貫通部を構成する前記裏面側の絶縁層との間には、前記第1のメタライズ部と前記第2のメタライズ部とを電気的に接続する層間メタライズ層が形成されている、配線基板(請求項4)も含まれる。
これによれば、前記第1・第2のメタライズ層同士間は、前記ずれに基づく第1・第2の貫通部同士間に位置する前記絶縁材の段部に形成された前記層間メタライズ層が配設されているので、前記効果(1)をより確実に得ることができる。
【0013】
一方、本発明による配線基板の製造方法(請求項5)は、複数の絶縁層を積層してなり、且つ対向する表面と裏面とを有する基板本体と、該基板本体の表面に開口し、該基板本体の表面側の絶縁層を貫通する第1の貫通部と、該第1の貫通部と連通し、且つ上記基板本体の裏面に開口し、該基板本体の裏面側の絶縁層を貫通する第2の貫通部とからなり、上記基板本体の表面および裏面と直交する厚み方向に沿った上記第1の貫通部および上記第2の貫通部を含む断面を含む視覚において、上記第1の貫通部の中心と第2の貫通部の中心とがずれているビアホールと、上記第1の貫通部を構成する内壁面に沿って形成された第1のメタライズ部、および該第1のメタライズ部に隣接し且つ上記第2の貫通部を構成する内壁面に沿って形成された第2のメタライズ部と、前記第1および第2のメタライズ部に囲まれた中空部に充填され、且つ上記基板本体の表面および裏面に達する金属部とからなるビア導体と、を備えた配線基板の製造方法であって、
追って上記基板本体の表面側および裏面側の絶縁層となる2組の絶縁層における所定の位置ごとに貫通孔を個別に形成する工程と、前記2組の絶縁層ごとに形成された貫通孔を構成する内壁面、および該貫通孔ごとにおける両端の開口部を囲む上記2組の絶縁層ごとの対向する一対の表面に沿って、メタライズ層を個別に形成する工程と、上記絶縁層の表面と直交する厚み方向に沿った視覚で、上記メタライズ層が形成された上記表面側の絶縁層と上記裏面側の絶縁層とを、両者の貫通孔の中心が互いにずれるように積層し且つ圧着して、上記基板本体、ビアホール、および第1のメタライズ部と第2のメタライズ部を形成する圧着工程と、該第1および第2のメタライズ部に囲まれた中空部内に金属メッキを施して、該中空部内に上記金属部を形成するメッキ工程と、を含み、上記圧着工程では、上記断面において、上記第1のメタライズ部と上記第2のメタライズ部とは、前記厚み方向に、互いに対向する第1の重複部分を有するように圧着している、ことを特徴とする。
【0014】
前記配線基板の製造方法によれば、以下の効果(3),(4)が得られる。
(3)前記ビア導体は、前記第1・第2のメタライズ部と、該第1・第2のメタライズ部の中空部内に形成され、且つ前記基板本体の厚み方向における中間付近に位置する前記第1の重複部分に囲まれた狭隘な部分を含む前記金属部とから構成されている。更に、前記圧着工程では、前記2組の絶縁層を、第1・第2メタライズ部同士が前記基板本体の厚み方向に、互いに対向する第1の重複部分を有するように圧着している。従って、前記金属部内にボイドの発生が抑制された該金属部を含むビア導体を容易に形成することができる。
(4)前記第1の貫通部と第1のメタライズ部とは、2組の絶縁層の一方に形成され、且つ前記第2の貫通部と第2のメタライズ部とは、2組の絶縁層の他方に形成されると共に、該2組の絶縁層を所要の前記ずれを含めて積層・圧着する比較的簡素な工程により行われる。従って、工程管理が比較的容易で、形状および寸法精度に優れた配線基板を効率良く且つ低コストで製造することができる。
【0015】
尚、前記2組の絶縁層に前記貫通孔を個別に形成する工程は、ポンチとダイとによる打ち抜き加工、あるいはレーザー加工によって行われる。
また、前記貫通孔の内壁面に沿ってメタライズ層を形成する工程は、例えば、金属粉末(W粉末など)を含む導電性ペーストを、負圧およびメタルマスクを利用したマスク印刷や、スクリーン印刷などによって行われる。
更に、前記メタライズ層を形成する工程は、第1・第2のメタライズ部に加えて、これらに接続された内層配線(メッキ用配線を含む)や、前記基板本体の表面側の電極パッド、および裏面側の外部接続端子の一部も形成される。
また、前記メッキ工程は、例えば、電解銅メッキまたは無電解銅メッキにより行われる。
更に、前記メッキ工程の後において、前記金属部の外部への露出面には、追って電解金属メッキによる薄いニッケル層が形成され、該ニッケル層の上に金層が順次形成することも可能である。
加えて、前記製造方法における各工程は、前記2組の絶縁層が多数個取り用の形態によっても、行うことが可能である。
【0016】
また、本発明には、前記圧着工程では、前記断面において、前記第1の貫通部を有する前記表面側の絶縁層のうち、該第1の貫通部を構成する内壁面と、前記第2の貫通部を有する前記裏面側の絶縁層のうち、該第2の貫通部を構成する内壁面とは、前記厚み方向に、互いに対向する第2の重複部分を有するように圧着している、配線基板の製造方法(請求項6)も含まれる。
これによれば、前記圧着工程で、前記厚み方向に、前記第1の重複部分に加えて、更に第1・第2の貫通部を構成する内壁面同士の間に第2の重複部分が、前記基板本体の厚み方向における中間付近に形成されるので、第1の重複部分を確実に形成できる。そのため、前記メッキ工程において、第1の重複部分から金属メッキによる金属の析出によって、中空部内が徐々に閉塞されていき、第1および第2の重複部分を挟んだ基板本体の表面側と裏面側に順次向かうように金属メッキによる金属の析出が確実に成される。従って、ビア導体の直径を大きく形成する場合であっても、内部にボイドの発生が一層抑制された前記金属部を含むビア導体を容易に形成できるため、前述した効果(3)をより確実に得ることが可能となる。
尚、前記第2の重複部分を形成するには、前記2組の絶縁層を圧着する工程において、一方の絶縁層の貫通部における開口部の端縁付近が、他方の絶縁層における平坦な圧着面の内部に若干食い込むように圧着する方法が例示される。
また、前記第2の重複部分を形成する際には、前記第1・第2のメタライズ層の厚みが前記第1・第2の貫通部の内壁面に沿って比較的均一であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)は本発明による一形態の配線基板における基板本体の内部を示す水平断面図、(B)は(A)中のB-B線の矢視に沿った垂直断面図、(C)は(A)中のC-C線の矢視沿った垂直断面図。
【
図2】(A)~(D)は前記配線基板の製造工程を示す概略図。
【
図3】(A)~(D)は
図2(D)に続く製造工程を示す概略図。
【
図4】(A)は異なる形態の配線基板の基板本体におけるビアホールの形態を示す透視的斜視図、(B)は(A)中のB-B線の矢視に沿った垂直断面図、(C1),(C2)は上記配線基板の製造工程を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1(A)は、本発明による一形態の配線基板1における基板本体2の内部を示す水平断面図、
図1(B)は、(A)中のB-B線の矢視に沿った垂直断面図、
図1(C)は、(A)中のC-C線の矢視沿った垂直断面図である。尚、
図1(A)は、
図1(B)中のA-A線の矢視に沿った垂直断面図でもある。
上記配線基板1は、
図1(A)~(C)に示すように、対向する表面3および裏面4を有し、且つ全体が板形状の基板本体2と、該基板本体2の表面3と裏面4との間を屈曲して貫通するビアホール5と、該ビアホール5の内側に形成されたビア導体9と、を備えている。
【0019】
前記基板本体2は、表面3側のセラミック層(絶縁層)c1と、裏面4側のセラミック層(絶縁層)c2との2層(複数層)を一体に積層したものである。上記セラミックには、例えば、アルミナが例示される。
また、前記ビアホール5は、前記セラミック層c1をその厚み方向に沿って垂直に貫通し、且つ平面視の外形が円形である第1の貫通部6と、前記セラミック層c2をその厚み方向に沿って垂直に貫通し、且つ平面視の外形が円形である第2の貫通部7とからなり、両貫通部6,7の内径は同径である。
図1(A),(B)に示すように、第1の貫通部6の中心(中心軸)6cと、第2の貫通部7の中心(中心軸)7cとは、平面視でこれらの内径の30%以内の長さであるずれGcを有している。そのため、第1および第2の貫通部6,7が互いに連通する接続部には、平面視が三日月形状で且つ水平な左右一対の段部8が対称に位置している。
【0020】
更に、前記ビア導体9は、前記第1の貫通部6を構成する内壁面に沿って円筒形状に形成された第1のメタライズ部11と、前記第2の貫通部7を構成する内壁面に沿って円筒形状に形成された第2のメタライズ部12と、該第1および第2のメタライズ部11,12間を接続し且つ前記一対の段部8ごとの上に形成された層間メタライズ層10と、上記第1・第2メタライズ部11,12と前記層間メタライズ層10とに囲まれ、且つ全体が屈曲した円柱形状の中空部16内に形成された金属部18とから構成されている。
尚、前記第1・第2メタライズ部11,12や層間メタライズ層10は、WまたはMoからなり、前記金属部18は、銅(Cu)からなる。
【0021】
また、
図1(B)に示すように、前記基板本体2の表面3および裏面4と直交する厚み方向に沿った前記第1および第2の貫通部6,7を含む断面において、前記第1のメタライズ部11と第2のメタライズ部12とは、上記厚み方
向において、互いに対向する(
図1(B)において互いに向かい合っている)第1の重複部分L1を有している。
更に、
図1(B),(C)に示すように、前記セラミック層c1,c2の層間には、前記第1・第2メタライズ部11,12と層間メタライズ層10とに接続され、後述する製造工程でメッキ用配線を兼ねる内層配線15が形成されている。
加えて、前記第1・第2のメタライズ部11,12における基板本体2の表面3上および裏面4上には、平面視がリング形状の円環部13,14が接続されている。かかる円環部13,14は、前記金属部18における最上部または最下部が達していると共に、追って電極パッドあるいは外部接続端子を構成するものとなる。該円環部13,14の外側面にも、前記金属部18の一部が被覆されている。
尚、前記第1・第2メタライズ部11,12や層間メタライズ層10と、前記金属部18との間には、ニッケル層(図示せず)が位置し、且つ該金属部18における外部への露出面には、前記同様のニッケル層と金層(何れも図示せず)とが順次被覆されている。
【0022】
以上のような前記配線基板1では、前記ビア導体6は、前記第1・第2のメタライズ部11,12と、これらの中空部16内に形成され、且つ前記基板本体2の厚み方向における中間付近に位置する前記第1の重複部分L1に囲まれた狭隘な部分を含む前記金属部18とからなっている。しかも、製造時において、前記基板本体3の厚み方向における中間付近に位置する前記第1の重複部分L1から金属メッキによる金属の析出によって中空部16内が閉塞されていき、該第1の重複部分L1を挟んだ基板本体2の表面3側と裏面4側とに向かって金属メッキによる金属の析出が順次成されているので、前記金属部18内におけるボイドの発生が確実に抑制されている。そのため、上記ビア導体9のうち、特に金属部18の直径を大きく形成する場合であっても、該ビア導体9による前記基板本体2の表面3側と裏面4側との電気的な接続および熱の伝達性に優れた配線基板1となっている。従って、前記基板本体2の表面3側と裏面4側との間における電気的接続の信頼性および放熱性に優れた配線基板1を提供できる。従って、前記配線基板1が前記効果(1),(2)を有していることが容易に理解される。
尚、前記金属部18は、メタライズ部11,12よりも電気抵抗が小さく、且つ熱伝導率が大きい金属が充填されることで、より一層効果的に前記効果(1),(2)を得ることができる。
【0023】
以下において、前記配線基板1の製造方法について説明する。
予め、アルミナ粉末、バインダー樹脂、可塑剤、および溶剤などを適量ずつ配合してセラミックスラリーを作成し、該セラミックスラリーをドクタープレード法などによってシート状に成形することにより、
図2(A)に示すように、追って前記セラミック層c1,c2となる2組のセラミックグリーンシート(絶縁層、以下単にグリーンシートと称する)g1,g2を用意した。
先ず、上記2組のグリーンシートg1,g2における所定の位置ごとに対し、円柱形のポンチと、該ポンチの先端部を受け入れる受け孔を有するダイ(何れも図示せず)とを用いる打ち抜き加工を行った。その結果、
図2(A)に示すように、上記グリーンシートg1,g2における所定の位置ごとに、同じ内径の貫通部(貫通孔)6,7が個別に形成された。
【0024】
次に、前記2組のグリーンシートg1,g2に形成された貫通部6,7を構成する内壁面と、該貫通部6,7における両端の開口部を囲む上記グリーンシートg1,g2ごとで対向する一対の表面とに沿って、W粉末などを含む導電性ペーストを、負圧を利用したマスク印刷やスクリーン印刷を順次行った。
その結果、
図2(B)に示すように、上記グリーンシートg1,g2の貫通部6,7を構成する内壁面に沿って円筒形状で且つ未焼成の第1・第2のメタライズ部11,12が形成されると共に、これらの両端の開口部を囲む一対の表面ごとに沿って、未焼成の円環部13,14と内層配線15とが個別に形成された。
【0025】
次いで、前記グリーンシートg1,g2の表面ごとに直交する厚み方向に沿った視角で、前記第1・第2メタライズ11,12が形成された上記グリーンシートg1,g2を、両者の貫通部6,7の前記中心(中心軸)6c,7cが前記ずれGcでずれるように積層し且つ圧着する圧着工程を行った。
その結果、
図2(C)に示すように、上記グリーンシートg1,g2からなるグリーンシート積層体(未焼成の基板本体)20と、上記貫通部6,7が両者の間でずれて連通したビアホール5とが形成された。同時に、上記第1・第2メタライズ11,12が
図2(C)において左右一対で且つ未焼成の層間メタライズ層10を介して接続された。併せて、上記第1・第2のメタライズ部11,12の内側には、これらに囲まれ且つ屈曲した円柱形状の中空部16が形成されていた。
【0026】
尚、前記圧着工程では、前記グリーンシートg1,g2を、両者の貫通部6,7の前記中心(中心軸)6c,7cが前記ずれGcを伴ってずれるように積層し且つ圧着したが、上記グリーンシートg1,g2の外形を揃えて積層した場合には、両者の貫通部6,7の前記中心(中心軸)6c,7cが前記ずれGcでずれるように、該貫通部6,7を形成する打ち抜き加工を行っても良い。この場合、前記圧着工程でグリーンシートg1,g2の外形をずらす必要はなく、該グリーンシートg1,g2の外形を揃えて積層を行うことで、両者の貫通部6,7の前記中心(中心軸)6c,7cが前記ずれGcでずれるように積層し且つ圧着する圧着工程を行うことができる。
【0027】
また、前記層間メタライズ層10は、前記内層配線15のうち、前記段部8ごとの上方に位置していた部分などから形成されている。
更に、
図2(C)に示すように、前記グリーンシート積層体20の表面3および裏面4と直交する厚み方向に沿った前記第1および第2の貫通部6,7を含む断面において、前記第1のメタライズ部11と第2のメタライズ部12とは、上記厚み方
向において、互いに対向する第1の重複部分L1を形成していた。
次いで、前記グリーンシート積層体20を焼成した。
その結果、
図2(D)に示すように、前記グリーンシート積層体20は、一体に積層されたセラミック層c1,c2からなる基板本体2となり、前記第1・第2メタライズ部11,12、層間メタライズ層10、円環部13,14、および内層配線15も同時に焼成されていた。
【0028】
更に、前記第1・第2メタライズ部11,12、層間メタライズ層10、および円環部13,14について、前記内層配線15を介して、一方のメッキ用電源に電気的に接続した状態で、前記基板本体2を電解ニッケルメッキ浴(図示せず)中に浸漬して、上記第1・第2メタライズ部11,12などの表面に沿って、ニッケル層を皮膜状に被覆した。
次いで、上記と同様な電気的接続状態とした基板本体2を、電解銅メッキ浴(図示せず)中に浸漬して、前記中空部16内に対して電解銅メッキ(金属メッキ)を施すメッキ工程を行った。
上記メッキ工程の当初では、
図3(A)で例示するように、上記第1・第2メタライズ部11,12、層間メタライズ層10、および円環部13,14の表面ごとに沿って、メッキ電流に載って微細な銅(金属)m1が徐々に析出した。
【0029】
引き続き上記電解銅メッキを行った結果、
図3(B)で例示するように、析出し続けた銅m2は、前記第1の重複部分L1付近において、前記中空部16を上下に分割するように該中空部16を閉塞した。同時に、上記第1・第2メタライズ部11,12などの表面にも、やや厚い銅m2が析出していた。
更に、前記電解銅メッキを行った結果、
図3(C)で例示するように、前記中空部16内は、第1・第2の貫通部6,7における基板本体2の表面3および裏面4側の開口部ごとの中心部付近を除いて、銅m3の析出により埋設されていた。
そして、前記電解銅メッキを続行した結果、
図3(D)に示すように、前記中空部16内は、析出した銅からなる金属部18によって埋設(充填)された。
【0030】
同時に、前記金属部18は、基板本体2の表面3および裏面4に達し、且つ該表面3側および裏面4側の両端部が前記円環部13,14の表面をも覆って、電極パッドや外部接続端子を形成していた。
最後に、前記と同様な電気的接続状態とした基板本体2を、電解ニッケルメッキ浴および電解金メッキ浴(図示せず)中に順次浸漬することにより、前記金属部18のうち、基板本体2の表面3側および裏面4側の外部に露出する表面に対し、電解ニッケルメッキおよび電解金メッキを順次施した。
その結果、
図3(D)に示すように、前記基板本体2、ビアホール5、および、前記第1・第2メタライズ部11,12や金属部18などからなるビア導体9を有する配線基板1を得ることができた。
【0031】
以上のような配線基板1の製造方法では、前記ビア導体9は、前記第1・第2のメタライズ部11,12と、これらの中空部16内に形成され、且つ前記基板本体2の厚み方向における中間付近に位置する前記第1の重複部分L1に囲まれた狭隘な部分を含む前記金属部18とから構成されていた。更に、前記圧着工程では、前記2組のグリーンシート(絶縁層)g1,g2を、第1・第2のメタライズ部11,12が上記厚み方向に、互いに対向する第1の重複部分L1を有するように圧着している。その結果、前記金属部18内にボイドの発生が確実に抑制された該金属部18を含むビア導体9を容易に形成することができた。
しかも、前記第1の貫通部6と第1のメタライズ部11とは、一方のグリーンシートg1に形成され、且つ前記第2の貫通部7と第2のメタライズ部12とは、他方のグリーンシートg2に形成されると共に、該2組のグリーンシートg1,g2を所要の前記ずれGcを含めて積層・圧着するか、あるいは、該2組のグリーンシートg1,g2に所要の前記ずれGcを含めて前記第1・第2の貫通部6,7を形成しておき、積層し且つ圧着する、という比較的簡素な工程により行うことができた。その結果、工程管理が比較的容易で、形状および寸法精度に優れた配線基板1を効率良く且つ低コストで製造することができた。
従って、前記製造方法によれば、前記(3),(4)が容易に得られた。
【0032】
図4(A)は、異なる形態の配線基板1aの基板本体2におけるビアホール5の形態を示す透視的斜視図、
図4(B)は、前記(A)中のB-B線の矢視に沿った垂直断面図である。
上記配線基板1aは、
図4(B)に示すように、前記同様の基板本体2、ビアホール5、およびビア導体9を備えている。但し、前記ビア導体9を構成している第1および第2のメタライズ部11,12は、前記配線基板1の形態に比べて、前記ビアホール5の第1および第2の貫通部6,7を構成する内壁面ごとに沿って、比較的薄く且つ均一な厚みにして形成されている。
また、
図4(B)に示すように、前記基板本体2の表面3および裏面4と直交する厚み方向に沿った前記第1および第2の貫通部6,7を含む断面において、前記第1のメタライズ部11と第2のメタライズ部12とは、上記厚み方
向において、互いに対向する第1の重複部分L1を有している。
【0033】
更に、前記断面において、前記第1の貫通部6を有する前記表面3側のセラミック層(絶縁層)c1のうち、該第1の貫通部6を構成する内壁面と、前記第2の貫通部7を有する前記裏面4側のセラミック層(絶縁層)c2のうち、該第2の貫通部7を構成する内壁面とは、前記厚み方
向に、互いに対向する第2の重複部分L2を有している。該第2の重複部分L2は、
図4(B)に示すように、上記断面において、前記第1の重複部分L1に含まれ、且つ該第1の重複部分L1よりも小さい。
本配線基板1aが上記第2の重複部分L2を有する理由は、
図4(A)に示すように、第1の貫通部6と第2の貫通部7とが接続する左右一対の段部8が、マクロ(巨視)的には、同図で若干左側に傾斜していることに起因している。具体的には、以下で述べる通り、グリーンシートg1,g2を積層し圧着する際に、中空部16内での厚み方向において、各グリーンシートで互いに支えていないことによって、厚み方向に前記段部8がせり出すことに起因している。
【0034】
図4(C1),(C2)は、前記配線基板1aの製造工程を示す概略図である。
図4(C1)に示すように、同じ厚みである2組のグリーンシートg1,g2に、予め、同じ内径である第1・第2の貫通部6,7を個別に形成した後、同図中の矢印で示すように、上記グリーンシートg1,g2を、第1・第2の貫通部6,7の中心6c,7c間に所定のずれGcが生じるように、積層し且つ圧着する前記同様の圧着工程を行った。この際、圧着するための押圧力を調整することにより、
図4(C1)において、第1の貫通部6を構成する図示で右側の内壁面は、その下端の角部付近と共に、下層側グリーンシートg2の平坦な圧着面の内部に食い込もうとする。同時に、同図で、第2の貫通部7を構成する図示で左側の内壁面は、その上端の角部付近と共に、上層側のグリーンシートg1の平坦な圧着面の内部に食い込もうとする。
尚、本形態においても、前述と同様に、前記グリーンシートg1,g2の外形を揃えて積層した場合には、両者の貫通部6,7の前記中心(中心軸)6c,7cが前記ずれGcを伴ってずれるように、予め前記貫通部6,7を形成する打ち抜き加工を行っても良い。
【0035】
その結果、
図4(C2)に示すように、焼成後に得られた基板本体2のビアホール5付近において、第1の貫通部6を構成する図示で右側の内壁面を含むセラミック層c1の厚みt1は、第2の貫通部7を構成する図示で右側の内壁面を含むセラミック層c2の厚みt2よりも小さくなると共に、第1の貫通部6を構成する図示で左側の内壁面を含むセラミック層c1の厚みt3は、第2の貫通部7を構成する図示で左側の内壁面を含むセラミック層c2の厚みt4よりも大きくなっている。即ち、前記
図4(A)で示したように、第1・第2の貫通部6,7の接続部に位置する左右一対の段部8が、マクロ的には若干左側に傾斜している形態となる。
【0036】
以上のような配線基板1aでは、前記厚み方向に、前記第1の重複部分L1に加えて、更に第1・第2の貫通部6,7を構成する内壁面同士の間に第2の重複部分L2が、前記基板本体2の厚み方向における中間付近に位置しているので、第1の重複部分L1を一層確実に形成することができる。従って、製造時において、第1の重複部分L1から電解銅メッキによる銅(金属)の析出によって中空部16内が閉塞されていき、第1の重複部分L1および第2の重複部分L2を挟んだ基板本体2の表面3側と裏面4側とに順次向かうように電解銅メッキによる銅(金属)の析出が成されている。そのため、前記ビア導体9のうち、特に金属部18の直径を大きく形成する場合であっても、前記金属部18内にボイドの発生が皆無となった該金属部18を含むビア導体9が上記基板本体2の表面3と裏面4との間を貫通している。
従って、前記配線基板1aによれば、前記効果(1),(2)をより確実に得ることができる。
また、前述した圧着工程で例示したように、前記配線基板1aは、前記配線基板1の製造方法に準じて容易に製造できると共に、該製造方法によれば、前記効果(3),(4)を確実に奏し得ることも容易に理解されよう。
【0037】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記絶縁層の絶縁材は、前記アルミナ以外のムライトや窒化アルミニウムなどの高温同時セラミック、ガラス-セラミックなどの低温同時セラミック、あるいは、エポキシ系などの樹脂としても良い。後記した2者の場合、前記第1・第2のメタライズ部には、銅または銀が適用される。
また、前記複数の絶縁層は、各絶縁層が複数の絶縁シートを積層し、且つこれらのシート間に前記ビア導体と接続する内層配線を有する形態でも良い。
更に、前記基板本体の表面または裏面に、これらの一方または双方を底面とするキャビティを形成するための別の絶縁層を更に積層した形態としても良い。
また、前記ビアホールを構成する前記第1・第2の貫通部は、互いの内径が異なる形態や、断面形状(外形)が長円形や楕円形としたり、あるいは、これらの長軸や短軸が相違している形態としても良い。
【0038】
更に、前記第1・第2の貫通部は、互いの断面形状(外形)が、矩形(正方形または長方形)状や、その他の正多角形状で、且つこれらの対角線、長辺、短辺が相違していても良い。
また、前記第1・第2の貫通部を構成する内壁面は、前記基板本体の厚み方向と垂直である形態に限らず、該厚み方向に対して傾斜している形態としても良い。
更に、前記2組の絶縁層に前記貫通孔を個別に形成する工程は、レーザー加工により行っても良い。
また、前記メッキ工程は、無電解金属(銅)メッキによって行っても良い。
更に、前記金属部は、銀からなり、前記メッキ工程を電解銀メッキあるいは無電解銀メッキによって行っても良い。
加えて、前記配線基板の製造方法は、多数個取りの形態によっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、絶縁材からなる基板本体の表面と裏面との間を貫通し、且つボイドの発生を確実に抑制したビア導体を有する配線基板、および該配線基板を比較的簡素な工程により確実に得られる製造方法を提供できる。
【符号の説明】
【0040】
1,1a……配線基板
2……………基板本体
3……………表面
4……………裏面
5……………ビアホール
6……………第1の貫通部
6c…………第1の貫通部の中心
7……………第2の貫通部
7c…………第2の貫通部の中心
9……………ビア導体
10…………層間メタライズ層
11…………第1のメタライズ部
12…………第2のメタライズ部
13~15…メタライズ層
16…………中空部
18…………金属部
c1,c2…セラミック層(絶縁層)
g1,g2…グリーンシート(絶縁層)
Gc…………ずれ(距離)
L1…………第1の重複部分
L2…………第2の重複部分