IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーインスツル株式会社の特許一覧

特許7217161ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計
<>
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図1
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図2
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図3
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図4
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図5
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図6
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図7
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図8
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図9
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図10
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図11
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図12
  • 特許-ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/253 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
G04B19/253 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019013298
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020122670
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】河田 正幸
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特公平6-27880(JP,B2)
【文献】国際公開第98/032055(WO,A1)
【文献】特開2015-200648(JP,A)
【文献】実開昭60-111287(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
G04C 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表示する表示車を所定の周期で間欠的に回転させるゼネバ機構であって、
前記表示車に対して噛合可能な複数の歯部を有し、第1軸線回りの回転によって前記表示車を回転させる回し車と、
伝達される動力によって第2軸線回りに連続回転すると共に、前記回し車を間欠的に回転させる回し中間車と、を備え、
前記回し中間車は、
前記第2軸線回りに回転する歯車本体と、
前記歯車本体から、前記第2軸線に対して交差する径方向に突出するように設けられた突起部と、
前記歯車本体から、前記径方向に沿って前記突起部における突出端の回転軌跡よりも外側に突出するように形成され、前記歯車本体の回転に伴って前記歯部の1つに噛合し、該歯部を前記回転軌跡内に進入するように移動させる送り歯と、を備え、
前記突起部は、前記回転軌跡内に前記歯部が進入したときに、該歯部を前記回転軌跡の外側に退避させることを特徴とするゼネバ機構。
【請求項2】
請求項1に記載のゼネバ機構において、
前記回し車は、前記歯部が前記回転軌跡に対する進入と退避とを繰り返すように、前記第1軸線回りに回転可能とされていると共に、前記歯部の1つが前記回転軌跡内に進入したときに、残りの前記歯部の1つが前記表示車に対して噛合可能とされ、
前記突起部は、前記送り歯と前記歯部との噛合の解除時において前記回転軌跡内に前記歯部が進入したときに、該歯部を進入方向とは逆向きに後退させて前記回転軌跡の外側に退避するように、前記回し車を回転させる、ゼネバ機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゼネバ機構において、
前記突起部は、前記第2軸線回りを周回する周方向に、2箇所以上形成されている、ゼネバ機構。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のゼネバ機構において、
前記突起部は、前記第2軸線回りを周回する周方向に沿って延びるように形成されると共に前記径方向に弾性変形可能とされ、弾性復元力により前記歯部を前記回転軌跡の外側に向けて押し出す、ゼネバ機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のゼネバ機構と、
前記表示車と、を備え、
前記表示車は、前記情報として日文字を表示する日車とされていることを特徴とするカレンダ機構。
【請求項6】
請求項5に記載のカレンダ機構を備えていることを特徴する時計用ムーブメント。
【請求項7】
請求項6に記載の時計用ムーブメントを備えていることを特徴する時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カレンダ機構を具備する時計が知られている。例えば下記特許文献1に示されるように、ムーブメントにより連続回転駆動(例えば24時間で1回転)される駆動列と、駆動列が有するゼネバ機構(連続回転運動を断続回転に変換する機構)によって不連続回転駆動され、日車(時計表示器)を回転させる伝動組立体と、を備えた時計が知られている。
【0003】
伝動組立体は、第1ピニオン及び第1ピニオンよりも大径の第2ピニオンを有している。第1ピニオン及び第2ピニオンは、それぞれ同数の歯部を有し、共回りするように同軸に固定されている。駆動列は、第1ピニオンを間欠的に回転駆動する第1駆動手段と、第1ピニオンの回転駆動に続いて第2ピニオンを間欠的に回転駆動する第2駆動手段と、伝動組立体の非回転駆動時に第2ピニオンの回転を阻止する阻止手段と、を備えている。
第1駆動手段は、第1ピニオンにおける1つの歯部を回転駆動するフィンガを有している。阻止手段は、フィンガと同軸に固定され、第2ピニオンにおける2つの歯部が摺接する円形フランジを有している。第2駆動手段は、円形フランジの周縁部に形成された縁部を有し、該縁部を利用して第2ピニオンにおける歯部を駆動する。
【0004】
上記従来の時計では、ムーブメントの回転に伴って駆動列が回転駆動し、所定の時刻に達すると、フィンガが第1ピニオンの歯部に噛み合う。これにより、伝動組立体を介して、日車を日送り方向に回転させることができる。そして駆動列がさらに回転すると、フィンガが第1ピニオンの歯部から離間すると共に、縁部が第2ピニオンの歯部に噛み合う。そのため、伝動組立体を介して日車を日送り方向にさらに回転させることができる。
このように、二重動作によって伝動組立体を回転駆動させることができ、日車を1日分だけ回転させることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平6-27880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の時計では、縁部によって回転駆動した伝動組立体は、第2ピニオンの歯部が円形フランジに対して接触することで、それ以上の回転が阻止される。しかしながら、第2ピニオン及び円形フランジの製造誤差(製造ばらつき)等によって、第2ピニオンの歯部と円形フランジとの間に大きながたつきが生じてしまう可能性があり、第2ピニオンの回転量が増大するおそれがあった。
この場合、第2ピニオンに追従して第1ピニオンも回転してしまうため、日車の回転量も同様に増大するおそれがあった。従って、結果的に日車に表示された日文字が文字板に形成された窓孔からずれてしまう可能性があった。
【0007】
このような不都合を抑制するためには、例えば第2ピニオン及び円形フランジの形状公差をより厳しく管理しながら、日文字と窓孔との回転ずれ量を予め考慮して、窓孔と日文字との間に大きな隙間を確保しておく等といった対策を施すことが考えられる。しかしながら、時計サイズを大きくせずに、窓孔と日文字との間に大きな隙間を確保するためには、日文字のサイズの縮小に繋がってしまい、日文字の視認性を低下させる等のユーザに対するデメリットになってしまう。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、情報を表示する表示車の回転ずれを修正しながら、一定の周期で間欠的に回転させることができるゼネバ機構、カレンダ機構、時計用ムーブメント及び時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るゼネバ機構は、情報を表示する表示車を所定の周期で間欠的に回転させるゼネバ機構であって、前記表示車に対して噛合可能な複数の歯部を有し、第1軸線回りの回転によって前記表示車を回転させる回し車と、伝達される動力によって第2軸線回りに連続回転すると共に、前記回し車を間欠的に回転させる回し中間車と、を備え、前記回し中間車は、前記第2軸線回りに回転する歯車本体と、前記歯車本体から、前記第2軸線に対して交差する径方向に突出するように設けられた突起部と、前記歯車本体から、前記径方向に沿って前記突起部における突出端の回転軌跡よりも外側に突出するように形成され、前記歯車本体の回転に伴って前記歯部の1つに噛合し、該歯部を前記回転軌跡内に進入するように移動させる送り歯と、を備え、前記突起部は、前記回転軌跡内に前記歯部が進入したときに、該歯部を前記回転軌跡の外側に退避させることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るゼネバ機構によれば、伝達される動力によって回し中間車が第2軸線回りに連続回転すると、この回転に伴って送り歯が移動して回し車の歯部に接近する。そして、例えば所定の時刻に達すると、回し中間車における送り歯が回し車の歯部の1つに噛合して、回し車に動力を伝達する。これにより、回し中間車の回転に伴って、歯部を回転軌跡内に進入するように回し車を回転させることができる。このとき、回し車における残りの歯部の1つが表示車に噛合するので、回し車を介して表示車に動力を伝達することができる。従って、回し車の回転に伴って表示車を回転させることができる。
そして回し中間車のさらなる回転が進むと、送り歯に噛合していた歯部が回転軌跡の外側に退避するように移動するので、送り歯と歯部との噛合が解除される。これにより、回し車及び表示車への動力の伝達を遮断することができ、回し車及び表示車の回転を停止させることができる。その後、回し中間車が1周して送り歯が再び歯部に噛合するまで、回し車及び表示車を停止させることができる。その結果、連続回転する回し中間車を利用して、表示車を所定の周期で間欠的に回転させることができる。
【0011】
特に、回し中間車には突起部が設けられているので、送り歯と歯部との噛合が解除された状態において、回転軌跡内に歯部が進入したとしても、突起部を利用して該歯部を回転軌跡の外側に退避させることができる。これによって、歯部が回転軌跡の外側に位置した待機位置に回し車を位置決めしておくことが可能である。従って、例えばジャンパ等の規制部品を用いることなく、表示車の回転位置を位置決めすることが可能である。さらに、例えば外部からの衝撃等によって表示車が意図せずに僅かに回転し、それによって回し車が僅かに回転したとしても、突起部を利用して回し車を待機位置に復帰するように修正を行えるので、表示車の回転ずれについても修正を行うことができる。従って、表示車の回転ずれを抑制しながら、一定の周期で間欠的に回転させることができる。
【0012】
(2)前記回し車は、前記歯部が前記回転軌跡に対する進入と退避とを繰り返すように、前記第1軸線回りに回転可能とされていると共に、前記歯部の1つが前記回転軌跡内に進入したときに、残りの前記歯部の1つが前記表示車に対して噛合可能とされ、前記突起部は、前記送り歯と前記歯部との噛合の解除時において前記回転軌跡内に前記歯部が進入したときに、該歯部を進入方向とは逆向きに後退させて前記回転軌跡の外側に退避するように、前記回し車を回転させても良い。
【0013】
この場合には、送り歯と歯部との噛合が解除された状態において、回転軌跡内に歯部が進入したとしても、突起部を利用して該歯部を進入方向とは逆向きに後退させて、回転軌跡の外側に退避するように回し車を回転させることができる。従って、送り歯と歯部との噛合が解除されているとき、すなわち表示車の回転が停止しているときに、歯部が回転軌跡の外側に位置した待機位置に回し車を位置決めしておくことが可能である。なお、この待機位置では回し車の歯部が表示車に対して非接触となっている。
従って、例えばジャンパ等の規制部品を用いることなく、表示車の回転位置をより確実に位置決めすることが可能である。さらに、例えば外部からの衝撃等によって表示車が意図せずに僅かに回転し、それによって回し車が僅かに回転したとしても、突起部を利用して回し車を待機位置に復帰するように、より確実に修正を行えるので、表示車の回転ずれを適切に修正することができる。
【0014】
(3)前記突起部は、前記第2軸線回りを周回する周方向に、2箇所以上形成されても良い。
【0015】
この場合には、突起部が周方向に2箇所以上形成されているので、送り歯と歯部との噛合が解除されているときにおいて、例えば外部からの衝撃等によって表示車が意図せずに僅かに回転し、それによって回し車が僅かに回転したとしても、いずれかの突起部を利用して回し車を待機位置に速やかに復帰させることが可能である。従って、回し車を待機位置に修正する機会を増やすことができるので、表示車の回転ずれを速やかに修正することができる。
【0016】
(4)前記突起部は、前記第2軸線回りを周回する周方向に沿って延びるように形成されると共に前記径方向に弾性変形可能とされ、弾性復元力により前記歯部を前記回転軌跡の外側に向けて押し出しても良い。
【0017】
この場合には、送り歯と歯部との噛合が解除されているときにおいて、回転軌跡内に歯部が進入したときに、突起部は径方向の内側に向けて弾性変形した後、弾性復元力によって歯部を径方向の外側に押し返し、回転軌跡の外側に向けて押し出す。これにより、回し車を待機位置に復帰させることができる。さらに、突起部は周方向に沿って延びるように形成されているので、例えば送り歯と歯部とが噛合している場合以外の時間で、回し車の位置修正を適宜行って、待機位置に位置決めすることが可能である。従って、表示車の回転ずれをより速やかに修正することができる。
【0018】
(5)本発明に係るカレンダ機構は、上記ゼネバ機構と、前記表示車と、を備え、前記表示車は、前記情報として日文字を表示する日車とされていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るカレンダ機構によれば、上述したゼネバ機構により、日車の回転ずれを修正することができるので、日文字が文字板の窓孔からずれてしまうことを防止することができる。従って、日文字のサイズを大きくして視認性を向上することができる。
【0020】
(6)本発明に係る時計用ムーブメントは、上記カレンダ機構を備えていることを特徴とする。
(7)本発明に係る時計は、上記時計用ムーブメントを備えていることを特徴とする。
【0021】
この場合には、上記カレンダ機構を備えているので、日文字の視認性が向上することができ、使い易い高品質な時計用ムーブメント及び時計とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、表示車の回転ずれを修正しながら、一定の周期で間欠的に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る第1実施形態を示す図であって、時計の外観図である。
図2図1に示すムーブメントを裏側から見た平面図である。
図3図2に示す日回し中間車の斜視図である。
図4図3に示す日回し中間車を下面側から見た斜視図である。
図5図2に示す状態から日回し中間車が反時計方向に回転した状態を示す平面図である。
図6図5に示す状態から日回し中間車がさらに反時計方向に回転して、日車を内歯の1歯分だけ回転させた状態を示す平面図である。
図7図6に示す状態から日回し中間車がさらに反時計方向に回転して、日車を内歯の1歯分だけさらに回転させた状態を示す平面図である。
図8図7に示す状態から日回し中間車がさらに反時計方向に回転して、突起部を利用して日回し車を反時計方向に僅かに逆転させた状態を示す平面図である。
図9】本発明に係る第2実施形態を示す図であって、ムーブメントを裏側から見た平面図である。
図10図9に示す日回し中間車の斜視図である。
図11図10に示す日回し中間車を下面側から見た斜視図である。
図12図10に示す日回し中間車の分解斜視図である。
図13図10に示す状態から日回し中間車が反時計方向に回転して、突起プレートを利用して日回し車を反時計方向に僅かに逆転させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態について図面を参照して説明する。
なお本実施形態では、時計の一例として機械式の腕時計を例に挙げて説明する。
【0025】
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側(すなわち、文字板のある方の側)をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側(すなわち、文字板と反対の側)をムーブメントの「表側」と称する。
なお本実施形態では、ケース裏蓋側から文字板に向かう方向を上側、その反対側を下側として説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の時計1は、図示しないケース裏蓋及びガラス2からなる時計ケース内に、ムーブメント(本発明に係る時計用ムーブメント)3と、少なくとも時に関する情報を示す目盛りを有する文字板4と、目盛りを指す指針5(すなわち時を示す時針6、分を示す分針7、及び秒を示す秒針8)と、を備えている。
文字板4には、後述する日車20に表示された日文字21を明示させる日窓(窓孔)9が開口している。これにより、時刻に加え、日付を確認することが可能とされている。
【0027】
図2に示すように、ムーブメント3は、基板を構成する地板10を有している。地板10の裏側には、文字板4が配置されている。地板10の表側には、表輪列、表輪列の回転を制御する脱進機、及び脱進機を調速する調速機が少なくとも配置されている。なお、各図面では、表輪列、脱進機及び調速機の図示を省略している。
【0028】
表輪列は、香箱車、二番車、三番車及び四番車を主に備えている。なお、各図面では、これら香箱車、二番車、三番車及び四番車の図示を省略している。香箱車の内部には、図1に示すりゅうず11及び巻真12を介して巻き上げられる図示しないぜんまいが収容されている。香箱車は、ぜんまいの巻き解きに伴う弾性復元力によって回転する。二番車、三番車及び四番車は、香箱車の回転に伴って順に回転する。
【0029】
地板10の裏側には、図示しない分車、図示しない日の裏車及び筒車13を含む裏輪列14と、カレンダ機構15と、が少なくとも配置されている。
カレンダ機構15は、日車(本発明に係る表示車)20と、日車20を所定の周期で間欠的に回転させるゼネバ機構25と、を備えている。ゼネバ機構25は、第1軸線O1回りに回転可能に配置された日回し車(本発明に係る回し車)30と、第2軸線O2回りに回転可能に配置された日回し中間車(本発明に係る回し中間車)40と、筒車13と日回し中間車40とを連結する日回し輪列60と、を備えている。
【0030】
なお、日回し車30、日回し中間車40及び日回し輪列60は、地板10の裏側に配置された図示しない裏物押さえと地板10との間に軸支されている。裏物押さえは、日車20の内側に配置されている。さらに裏物押さえの裏側には、文字板4がガラス2を通じて視認可能に配置されている。
【0031】
図1に示す秒針8は、四番車の回転に基づいて回転すると共に脱進機及び調速機によって調速された回転速度、すなわち1分間で1回転する。分針7は、二番車の回転に伴って回転する分車の回転に基づいて回転すると共に脱進機及び調速機によって調速された回転速度、すなわち1時間で1回転する。時針6は、日の裏車を介して、二番車の回転に伴って回転する筒車13の回転に基づいて回転すると共に、脱進機及び調速機によって調速された回転速度、すなわち12時間或いは24時間で1回転する。
【0032】
脱進機は、四番車に噛み合うと共にぜんまいから伝達される動力によって回転するがんぎ車、及びがんぎ車を脱進させて規則正しく回転させるアンクルを備え、てんぷからの規則正しい振動で表輪列を制御する。調速機は、主に図示しないひげぜんまいを動力源として、香箱車の出力トルクに応じた定常振幅(振り角)で往復回転(正逆回転)するてんぷを備えている。
【0033】
地板10には図示しない巻真案内穴が形成されており、この巻真案内穴に巻真12が回転可能に組み込まれている。巻真12は、例えば日付の修正や、時刻表示(時及び分の表示)を修正する際に用いられる時計用部品であって、その一端部には図1に示すように時計ケースの側方に位置するりゅうず11が連結されている。これにより、りゅうず11を介して巻真12を回転操作することができる。
【0034】
巻真12は、おしどり、かんぬき、かんぬきばね等を有する図示しない切換装置により、軸方向の位置が決められている。巻真12の案内軸部には、巻真12に対して回転可能、且つ軸方向に移動不能に図示しないきち車が取り付けられている。巻真12のうちきち車よりも先端側に位置する部分には、巻真12に対して回転不能、且つ軸方向に移動可能に図示しないつづみ車が取り付けられている。
【0035】
きち車とつづみ車とは、例えば巻真12を、軸方向に沿ってムーブメント3に最も近い巻真位置(0段位置)にセットしたときに、互いに噛合可能とされている。従って、この状態でりゅうず11を介して巻真12を回転操作することで、つづみ車を介してきち車を回転させることが可能とされている。きち車が回転することで、香箱車の内部に収容された動力源であるぜんまいを巻き上げることが可能とされている。
【0036】
さらに、巻真12を上記0段位置から1段階引き出した状態で回転させた場合には、つづみ及び小鉄車を介して、筒車13及び分車を回転させることが可能とされている。これにより、時刻の修正を行って、時刻合わせ及び日付の修正が可能とされている。
【0037】
図2に示すように、日車20は、地板10に対して回転可能に取付けられたリング状部材であり、その表面には周方向に沿って日付情報である日文字21が表示されている、日車20の内周縁には、全周に亘って複数の内歯22が形成されている。
【0038】
なお、日車20は、上方(文字板4側)から見て、図2に示す矢印の如く時計回り方向(以下、単に時計方向という)に回転可能とされている。従って、日車20が時計方向に回転することで、日送りを行うことが可能とされている。なお、日車20の回転方向とは反対の回転方向を、反時計回り方向(以下、単に反時計方向という)という。
ただし、日車20の回転方向は上述した場合に限定されるものではなく、例えば日車20が反時計方向に回転することで、日送りを行うように構成しても構わない。
【0039】
本実施形態の日車20は、内歯22の数が62歯とされ、所定の時刻(例えば午前0時付近)で日回し車30によって回転がはじまって、例えば一定時間の経過後に日付1日分、すなわち内歯22の2歯分だけ間欠的に回転するように構成されている。
ただし、内歯22の数は62歯に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。さらに、内歯22の数に対応して、日付1日分における日車20の回転量を適宜変更して構わない。
【0040】
日回し車30は、第1軸線O1と同軸に配置された車軸31と、車軸31に例えば打ち込みによる圧入等によって一体的に固定され、日回し中間車40から回転力が伝達される日回し歯車32と、を備え、日送り時に時計方向に回転するように構成されている。
【0041】
車軸31は、例えば上端部が裏物押さえに軸支され、下軸部が地板10に軸支されている。これにより、日回し車30は第1軸線O1回りに安定して回転可能とされている。
日回し歯車32の外周縁には、日車20の内歯22に対して噛合可能な複数の日回し歯部(本発明に係る歯部)33が全周に亘って形成されている。図示の例では、日回し歯部33の数は6歯とされている。ただし、日回し歯部33の数は6歯に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0042】
日回し中間車40は、日回し輪列60を介して筒車13から伝達される回転力によって第2軸線O2回りに連続回転すると共に、日回し車30を間欠的に回転させるように構成されている。日回し中間車40は、反時計方向に24時間で1回転するように構成されている。
なお、第2軸線O2方向から見て、該第2軸線O2に対して交差する方向を径方向といい、第2軸線O2回りを周回する方向を周方向という。
【0043】
図2図4に示すように、日回し中間車40は、第2軸線O2と同軸に配置された車軸41と、車軸41に例えば打ち込みによる圧入等によって一体的に固定され、日回し輪列60を介して筒車13から回転力が伝達される歯車本体42と、歯車本体42から径方向に突出するように形成された第1送り歯(本発明に係る送り歯)43及び突起部44と、を備えている。なお、図3及び図4では、車軸41の図示を省略している。
【0044】
車軸41は、例えば上端部が裏物押さえに軸支され、下軸部が地板10に軸支されている。これにより、日回し中間車40は第2軸線O2回りに安定して回転可能とされている。歯車本体42は、複数の中間歯部が外周縁の全周に亘って形成された中間歯車45と、中間歯車45上に重なった状態で中間歯車45に対して一体的に組み合わされたプレート体46と、を備えている。
【0045】
中間歯車45は、中間歯部45aが形成されている外周縁側の肉厚よりも、車軸41側に位置する中央部の肉厚が厚肉とされており、上面側が段付き形状とされている。これにより、中間歯車45のうち中央部側に位置する部分は厚肉部45bとされている。
厚肉部45bには、車軸41が固定される軸孔45cが第2軸線O2と同軸に形成されている。
【0046】
プレート体46はリング状に形成され、中間歯車45のうち厚肉部45bを除いた部分に対して重なった状態で、厚肉部45bを対して例えば嵌合固定されている。これにより、先に述べたように、中間歯車45とプレート体46とは一体的に組み合わされている。
プレート体46は、中間歯車45よりも外形が大きく形成されていると共に、日回し車30と同じ高さ位置となるように配置されている。なお、中間歯車45は、日回し車30における日回し歯部33に対して非接触とされている。
【0047】
第1送り歯43及び突起部44は、プレート体46に一体に形成され、該プレート体46の外周面よりも径方向の外側に突出するようにそれぞれ形成されている。
さらにプレート体46には、第1送り歯43よりも時計方向に配置された第2送り歯50と、第1送り歯43よりも反時計方向に配置された第3送り歯51と、が一体に形成されている。これにより、第1送り歯43、第2送り歯50及び第3送り歯51は、第2送り歯50と第3送り歯51との間に第1送り歯43が位置するように、周方向に間隔をあけて並んで配置されている。
【0048】
第1送り歯43と第2送り歯50との間、及び第1送り歯43と第3送り歯51との間には、プレート体46の外周面よりも径方向の内側に向けて窪んだ凹部52がそれぞれ形成されている。これにより、第1送り歯43、第2送り歯50及び第3送り歯51は、所定の間隔をあけて周方向に並んでいる。
【0049】
突起部44について、先に説明する。
突起部44は、プレート体46の外周面のうち第1送り歯43、第2送り歯50及び第3送り歯51を除いた部分から、径方向の外側に向かって突出するように形成されている。本実施形態では、突起部44は周方向に間隔をあけて複数形成されている。具体的には、突起部44は周方向に一定の間隔をあけて5つ形成されている。
ただし、突起部44の数は、この場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0050】
各突起部44は、突出端面(本発明に係る突出端)44aと、突出端面44aに連設された第1誘導面44b及び第2誘導面44cと、を備え、平面視で台形状に形成されている。
突出端面44aは、第2軸線O2を中心として周方向に僅かに延びた湾曲面とされている。なお、日回し中間車40の回転に伴って突出端面44aが第2軸線O2を中心として移動する軌跡を回転軌跡M(図2参照)という。
【0051】
第1誘導面44bは、突出端面44aよりも反時計方向側に配置され、突出端面44aとプレート体46の外周面とを接続している。第1誘導面44bは、突出端面44aから反時計方向に向かうにしたがって、プレート体46の外周面に向かって延びるように傾斜した傾斜面とされている。
第2誘導面44cは、突出端面44aよりも時計方向側に配置され、突出端面44aとプレート体46の外周面とを接続している。第2誘導面44cは、突出端面44aから時計方向に向かうにしたがって、プレート体46の外周面に向かって延びるように傾斜した傾斜面とされている。
なお、第1誘導面44bの傾斜角度と第2誘導面44cの傾斜角度とは同等とされている。
【0052】
日回し車30と日回し中間車40とは、各日回し歯部33が回転軌跡Mに対する進入と退避とを繰り返しながら日回し車30が回転するように、互いの位置関係が決められた状態で配置されている。特に日回し車30は、図5に示すように、日回し歯部33の1つが回転軌跡M内に進入したときに、残りの日回し歯部33の1つが日車20における内歯22に対して噛合するように構成されている。
また、図2に示すように、日回し歯部33が例えば日車20における内歯22と内歯22との中間位置に位置する等して、内歯22に対する噛み合いが外れている場合には、残りの日回し歯部33は回転軌跡Mの外側に退避した状態となる。このように、日回し歯部33が回転軌跡Mの外側に退避しているときの日回し車30の位置を、待機位置P1という。
【0053】
図5に示すように、第1送り歯43は、回転軌跡Mよりも径方向の外側に突出するように形成され、歯車本体42の回転に伴って日回し歯部33の1つに噛合し、該日回し歯部33を回転軌跡M内に進入するように移動させることが可能とされている。これにより、第1送り歯43を利用して、日回し車30に対して回転力を伝達することができ、日回し車30を介して日車20を内歯22の1歯分だけ回転させることが可能とされている。
【0054】
第2送り歯50は、日回し車30を介して日車20を内歯22の1歯分だけさらに回転させる送り歯として機能する。この第2送り歯50による送りによって、先に述べたように日車20は1日分だけ回転する。
【0055】
図2図4に示すように、第2送り歯50は、回転軌跡Mよりも径方向の外側に僅かに突出するように形成されていると共に、周方向に延びるように形成されている。従って、第2送り歯50の突出量は、第1送り歯43の突出量よりも小さい。
第2送り歯50は、図6に示すように、第1送り歯43が日回し歯部33から外れた後、次の日回し歯部33に対して噛合し、日回し車30に対して回転力を伝達することが可能とされている。
なお、第2送り歯50の頂面50aは、第1送り歯43側から時計方向にむけて周方向に沿って延びた後、プレート体46の外周面に向けて延びるように傾斜している。
【0056】
図2図4に示すように、第3送り歯51は、第1送り歯43を挟んで第2送り歯50と対称に形成されている。従って、第3送り歯51は、第2送り歯50と同様に、回転軌跡Mよりも径方向の外側に僅かに突出するように形成されていると共に、周方向に延びるように形成されている。従って、第3送り歯51の突出量は、第1送り歯43の突出量よりも小さく、第2送り歯50の突出量と同等とされている。
第3送り歯51の頂面51aは、第1送り歯43側から反時計方向にむけて周方向に沿って延びた後、プレート体46の外周面に向けて延びるように傾斜している。
【0057】
第3送り歯51は、例えば日回し中間車40を、本実施形態とは逆向きの時計方向に回転させて使用する際に、第2送り歯50と同じ役割を果たすための送り歯とされている。それに加え、本実施形態では、第1送り歯43を利用して日回し車30を時計方向に回転させる際に、第3送り歯51を利用して、日回し車30を予め時計方向に僅かに回転させて、第1送り歯43から日回し車30に伝達される回転力の伝達効率を向上させる役割を担っている。この点については、後に説明する。
【0058】
突起部44は、第1送り歯43及び第2送り歯50と日回し歯部33との噛合の解除時において、回転軌跡M内に日回し歯部33が進入したときに、プレート体46の回転に伴って日回し歯部33を進入方向とは逆向きに後退させて、回転軌跡Mの外側に退避させるように日回し車30を回転させることが可能とされている。この点についても、後に説明する。
【0059】
上述のように構成された日回し中間車40は、図2に示すように、日回し輪列60を介して筒車13から伝達された回転力を受けて第2軸線O2回りに回転する。
日回し輪列60は、筒車13の回転に基づいて第3軸線O3回りに回転する第1時中間車61と、第1時中間車61の回転に基づいて第4軸線O4回りに回転する第2時中間車65と、を備えている。これら第1時中間車61及び第2時中間車65は、地板10と裏物押さえとの間に配置されていると共に、地板10及び裏物押さえによって回転可能に軸支されている。
【0060】
第1時中間車61は、時計方向に回転する筒車13の筒歯車13aに噛合する第1時中間歯車62と、第1時中間かな63と、を備えている。これにより、第1時中間車61は、筒車13の回転に基づいて反時計方向に第3軸線O3回りを回転可能とされている。
第2時中間車65は、第1時中間かな63に噛合すると共に、日回し中間車40の中間歯車45に噛合する第2時中間歯車66を有している。これにより、第2時中間車65は、第1時中間車61の回転に基づいて時計方向に第4軸線O4回りを回転可能とされていると共に、日回し中間車40を反時計方向に回転させることが可能とされている。
なお、第1時中間車61及び第2時中間車65で日回し輪列60を構成したが、この場合に限定されるものではなく、例えば中間車の数を増減しても構わない。
【0061】
(時計の作用)
次に、上述のように構成された時計1の作用について説明する。
本実施形態の時計1によれば、ぜんまいからの動力、及び脱進機、調速機によって表輪列が規則正しく駆動されることで、二番車及び三番車が回転し、四番車が1分間に1回転する。これにより秒針8を1分間に1回転させることができる。同時に分車が1時間に1回転し、筒車13が例えば12時間に1回転するので、これによって分針7を1時間に1回転させ、時針6を12時間に1回転させることができる。
【0062】
ところで筒車13が回転すると、図2に示すように、日回し輪列60を介して日回し中間車40に回転力を伝達することができる。すなわち、筒車13の回転に基づいて第1時中間車61を反時計方向に第3軸線O3回りに回転させることができ、続けて第2時中間車65を時計方向に第4軸線O4回りに回転さることができる。これにより、日回し中間車40の全体を反時計方向に第2軸線O2回りに連続回転させることができる。
【0063】
そのため、日回し中間車40の回転に伴って、第1送り歯43、第2送り歯50及び第3送り歯51を日回し車30における日回し歯部33に対して接近させることができる。このとき、日回し車30が待機位置P1に位置していることで、第1送り歯43が日回し歯部33に噛合する前に、突起部44が日回し歯部33に対して接触することがない。従って、突起部44は、日回し歯部33に対して接触することなく、日回し中間車40の回転に伴って移動する。
【0064】
そして、日回し中間車40の回転がさらに進み、例えば所定の時刻(午前0時付近)に達すると、図5に示すように、第1送り歯43が日回し歯部33の1つに噛合して、日回し車30に回転力を伝達する。
【0065】
なお、第1送り歯43よりも反時計方向側に第3送り歯51が位置しているので、第1送り歯43が日回し歯部33に噛合する前に、この日回し歯部33に対して第3送り歯51が接触する。このとき、日回し歯部33は、第3送り歯51における頂面51a上に乗り上がるように相対移動するので、日回し車30は反時計方向に第1軸線O1回りを僅かに回転した状態となる。これにより、第3送り歯51は、日回し中間車40の回転に伴って、日回し歯部33に対してすれ違うように反時計方向に移動することが可能となる。
【0066】
そして第3送り歯51は、日回し中間車40のさらなる回転によって、すれ違った日回し歯部33の先に位置している日回し歯部33に対して接触する。すると、この日回し歯部33は、上述した場合と同様に、第3送り歯51における頂面51a上に乗り上がるように相対移動する。ところが、この日回し歯部33については、第3送り歯51の頂面51aに対して倣うように配置された状態となっているので、図5に示すように、先ほどとは逆に日回し車30が時計方向に第1軸線O1回りを僅かに回転した状態となる。
【0067】
これにより、第1送り歯43が日回し歯部33の1つに噛合するタイミングで、日回し車30を時計方向に僅かに回転させることができ、第1送り歯43と日回し歯部33との噛み合い時のベクトル角を変化させて、第1送り歯43から日回し歯部33に伝達される回転力の伝達効率を向上することができる。
【0068】
そして、第1送り歯43が日回し歯部33に噛合することで、日回し中間車40の回転に伴って、日回し歯部33を回転軌跡M内に進入するように日回し車30を時計方向に回転させることができる。このとき、日回し車30における他の日回し歯部33の1つが日車20の内歯22に噛合するので、日回し車30を介して日車20に回転力を伝達することができる。従って、図6に示すように、日回し車30のさらなる回転に伴って日車20を時計方向に向けて、内歯22の1歯分だけ回転させることができる。
【0069】
内歯22の1歯分だけ日車20が回転し終わると、第1送り歯43に噛合していた日回し歯部33が回転軌跡Mの外側に退避するように移動するので、第1送り歯43と日回し歯部33との噛合が解除される。
【0070】
さらにこれと同時に、新たに回転軌跡M内に進入してきた日回し歯部33に対して、第3送り歯51が噛合する。これにより、日回し中間車40の回転に伴って、第3送り歯51を利用して日回し車30を時計方向にさらに回転させることができる。このとき、日回し車30における他の日回し歯部33の1つが日車20の内歯22に噛合するので、日回し車30を介して日車20に回転力を伝達することができる。従って、図7に示すように、日回し車30の回転に伴って日車20を時計方向に向けて、さらに内歯22の1歯分だけ回転させることができる。
【0071】
内歯22の1歯分だけ日車20が回転し終わると、第2送り歯50に噛合していた日回し歯部33が回転軌跡Mの外側に退避するように移動するので、第2送り歯50と日回し歯部33との噛合が解除される。
なお、これ以降、日回し歯部33は第2送り歯50における頂面50a上を相対移動するので、第2送り歯50は日回し中間車40の回転に伴って、日回し歯部33に対してすれ違うように反時計方向に移動させることが可能となる。
【0072】
そして、第2送り歯50と日回し歯部33との噛合が解除されることで、日回し車30及び日車20への回転力の伝達を遮断することができ、日回し車30及び日車20の回転を停止させることができる。その後、日回し中間車40が一周して第1送り歯43が再び日回し歯部33に噛合するまで、日回し車30及び日車20を停止させることができる。
その結果、連続回転する日回し中間車40を利用して、日車20を所定の周期で間欠的に回転させることができる。具体的には、日車20を内歯22の2歯分だけ時計方向に回転させることができ、1日分の日送りを行うことができる。
【0073】
さらに、日回し中間車40には突起部44が設けられているので、第1送り歯43及び第2送り歯50と日回し歯部33との噛合が解除された状態において、回転軌跡M内に日回し歯部33が進入したとしても、突起部44を利用して該日回し歯部33を進入方向とは逆向きに後退させて、回転軌跡Mの外側に退避するように日回し車30を回転させることができる。
【0074】
具体的には、図7に示すように、第3送り歯51を利用して日車20を回転させて、1日分の日送りを行った直後の状態では、日回し歯部33が日車20の内歯22に対して接触した状態になっていると共に、他の日回し歯部33が新たに回転軌跡M内に進入した状態とされている。
このような状態において、日回し中間車40が反時計方向に回転すると、図8に示すように、回転軌跡M内に進入した日回し歯部33に対して突起部44が接触すると共に、日回し中間車40のさらなる回転に伴って、第1誘導面44bから突出端面44a上に突起部44を乗り上げるように誘導することができる。これにより、突起部44を利用して日回し歯部33を進入方向とは逆向きに後退させて、回転軌跡Mの外側に退避するように日回し車30を反時計方向に僅かに回転させることができる。
【0075】
その結果、図8に示すように、日回し歯部33が回転軌跡Mの外側に位置した待機位置P1に日回し車30を復帰させて、該待機位置P1に日回し車30を位置決めしておくことができる。これにより、日車20における内歯22と内歯22との中間位置に日回し歯部33を位置させることができ、内歯22に対する日回し歯部33の噛み合いを外した状態にすることができる。
【0076】
従って、例えば日ジャンパ等の規制部材を用いることなく、日車20の回転位置を位置決めすることが可能である。
さらに、日送りを行っていないときに、例えば外部からの衝撃等によって日車20が意図せずに僅かに回転し、それによって日回し車30が僅かに回転したとしても、突起部44を利用して日回し車30を待機位置P1に復帰するように修正を行えるので、日車20の回転ずれについても修正を行うことができる。従って、日車20の回転ずれを抑制しながら間欠的に回転させることができる。
【0077】
なお、突起部44の第2誘導面44cは、例えば日回し中間車40を、本実施形態とは逆向きの時計方向に回転させて使用する際に、第1誘導面44bと同じ役割を果たすための誘導面とされている。
【0078】
以上説明したように、本実施形態の時計1によれば、ゼネバ機構25を備えているので、日車20の回転位置を位置決めすることが可能であるうえ、外部からの衝撃等によって日車20が意図せずに回転したとしても、この日車20の回転ずれを修正しながら一定の周期で間欠的に回転させることができる。
【0079】
特に、突起部44は周方向に間隔をあけて複数形成されているので、日送り時間以外のときに、外部からの衝撃等によって日車20が意図せずに回転したとしても、いずれかの突起部44を利用して日回し車30を待機位置P1に速やかに復帰させることができる。従って、日回し車30を待機位置P1に修正する機会(時期)を増やすことができるので、日車20の回転ずれを速やかに修正することができる。
【0080】
さらに本実施形態のカレンダ機構15によれば、ゼネバ機構25により日車20の回転ずれを修正することができるので、日文字21が文字板4の日窓9からずれてしまうことを防止することができる。従って、日文字21のサイズを大きくして視認性を高めることができる。
【0081】
さらに本実施形態のムーブメント3及び時計1によれば、上記カレンダ機構15を備えているので、日文字21の視認性が向上した高品質なムーブメント及び時計とすることができる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
図9に示すように、本実施形態の時計1は、径方向に弾性変形可能な突起プレート(本発明に係る突起部)71を有する日回し中間車(本発明に係る回し中間車)70を備えている。なお、図9図13でも同様)では、図面を見易くするために、後述する押さえプレート100の図示を省略している。
【0083】
図10図12に示すように、本実施形態の日回し中間車70のプレート体46には、第1送り歯43、第2送り歯50及び第3送り歯51を除いた部分において、外周縁に沿って延びると共に、上方及び径方向の外側に開口した円弧状の収容凹部72が形成されている。突起プレート71は、収容凹部72を利用してプレート体46に組み合わされている。
【0084】
突起プレート71は、周方向に一定の間隔をあけて複数配置され、収容凹部72における底壁面72a上に載置されている。図示の例では、6つの突起プレート71が周方向に並んで配置されている。ただし、突起プレート71の数は、この場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0085】
各突起プレート71は、周方向に沿って延びるように形成されていると共に、径方向に弾性変形可能とされ、弾性復元力により日回し歯部33を回転軌跡Mの外側に向けて押し出すことが可能とされている。
具体的には、突起プレート71は、周方向に沿って延びる帯板状のプレート本体80と、プレート本体80における周方向の中央部から径方向の内側に向かって延びた連結片81と、連結片81から時計方向及び反時計方向に向けてそれぞれ延びた一対の弾性アーム82と、を備えている。
【0086】
弾性アーム82は、径方向に弾性変形可能とされ、先端部には径方向の内側に向けて膨出した膨出部83が形成されている。膨出部83は、収容凹部72のうち径方向の外側を向いた内壁面72bに対して接触している。これにより、突起プレート71の全体は、一対の弾性アーム82の膨出部83が内壁面72bに対して接触した状態で、収容凹部72の底壁面72a上に載置されている。
【0087】
連結片81には、該連結片81を上下に貫通すると共に、径方向に沿って延びる長孔状の貫通孔84が形成されている。突起プレート71は、収容凹部72における底壁面72aに立設された連結ピン90を貫通孔84内に挿通させた状態で底壁面72a上に載置されている。これにより、突起プレート71は、連結ピン90によって周方向への移動が規制されつつ、径方向への移動が許容された状態で底壁面72a上に載置されている。
【0088】
プレート本体80における周端部には、周方向にさらに突出した規制突起85が形成されている。規制突起85は、収容凹部72における底壁面72aに立設された規制壁91に対して、径方向の内側から離間可能に接触する。規制突起85が規制壁91に対して接触することで、突起プレート71の全体は、それ以上、径方向の外側へ向けて移動することが規制されている。
なお、規制壁91のうちの2つは、第2送り歯50及び第3送り歯51にそれぞれ一体に形成されている。
【0089】
上述のように構成された突起プレート71は、一対の弾性アーム82を弾性変形させた状態で、貫通孔84内に連結ピン90を挿通させながら収容凹部72の底壁面72a上に載置されている。そのため、突起プレート71は、弾性アーム82による弾性復元力によって径方向の外側に向けて付勢された状態でプレート本体80に組み合わされ、規制突起85が規制壁91に対して接触した位置で位置決めされている。
なお、プレート本体80における外周端面(本発明に係る突出端)80aが第2軸線O2を中心として移動する軌跡が、回転軌跡Mとなる。
【0090】
収容凹部72の底壁面72a上に載置された複数の突起プレート71は、押さえプレート100によって上方から覆われることで、脱落が防止されている。
押さえプレート100は、収容凹部72の形状に対応して平面視円弧状に形成されていると共に、連結ピン90が組み合わされる第1嵌合孔101、及び規制壁91が組み合わされる第2嵌合孔102が形成されている。
押さえプレート100は、第1嵌合孔101内に連結ピン90を嵌合させ、且つ第2嵌合孔102内に規制壁91を嵌合させながら、突起プレート71を上方から覆った状態でプレート本体80に組み合わされている。
【0091】
(時計の作用)
上述のように構成された本実施形態の時計1であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【0092】
特に本実施形態の場合には、日送り直後や日送り時間以外において、回転軌跡M内に日回し歯部33が進入した際、弾性アーム82が弾性変形することで突起プレート71の全体が径方向の内側に向けて弾性変形する。これにより、弾性アーム82の弾性復元力を利用して日回し歯部33を径方向の外側に押し返すことができ、回転軌跡Mの外側に向けて押し出すことができる。これにより、日回し車30を待機位置P1に修正することができる。
【0093】
例えば図13に示すように、日送り直後では、日回し歯部33が回転軌跡M内に進入するので、突起プレート71が径方向の内側に弾性変形する。そのため、日回し歯部33を突っ張らせることなく、時計方向への日回し車30の回転を許容できるので、適切に日車20を回転させて日送りを行うことができる。そして、この直後に、先に述べたように、弾性アーム82の弾性復元力を利用して突起プレート71が日回し歯部33を径方向の外側に押し返して、回転軌跡Mの外側に押し出すので、日回し車30を反時計方向に僅かに回転させて、待機位置P1に修正することができる。
【0094】
従って、本実施形態の場合であっても、日車20の回転ずれを修正しながら、日車20を間欠的に回転させることができる。
しかも、突起プレート71は、周方向に沿って延びるように形成されているうえ、周方向に間隔をあけて複数配置されているので、日送り時間以外の時間で、日回し車30の位置修正を適宜行って、待機位置P1に位置決めすることが可能である。従って、日車20の回転ずれをより速やかに修正することができる。
【0095】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0096】
例えば、上記各実施形態では、機械式の時計1を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えばクォーツ式の時計に適用しても構わない。この場合には、例えばステップモータの駆動力を利用して、各車を回転させるように構成すれば良い。
【0097】
例えば、上記各実施形態では、情報を表示する表示車として日車20を例に挙げて説明したが、日車20に限定されるものではない。例えば、情報として曜日を表示する曜車を表示車として適用しても構わない。このように、間欠的に回転する表示車であれば、本発明に係るゼネバ機構を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
O1…第1軸線
O2…第2軸線
M…回転軌跡
1…時計
3…ムーブメント(時計用ムーブメント)
20…日車(表示車)
21…日文字
25…ゼネバ機構
30…日回し車(回し車)
33…日回し歯部(歯部)
40、70…日回し中間車(回し中間車)
42…歯車本体
43…第1送り歯(送り歯)
44…突起部
44a…突出端面(突起部の突出端)
71…突起プレート(突起部)
80a…外周端面(突起部の突出端)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13