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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】遠心送風機のブレード構造
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/30 20060101AFI20230126BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
F04D29/30 C
F04D29/30 F
F04D29/66 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019038382
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020143580
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390003333
【氏名又は名称】新晃工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】上田 和成
(72)【発明者】
【氏名】日置 達也
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-206892(JP,A)
【文献】特開2012-193740(JP,A)
【文献】特表2017-502207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/30
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックプレート及びシュラウドとを含む遠心送風機の構造であって、
バックプレートと所定間隔で配置されるシュラウドとの間に複数のブレードを立設し、
バックプレート側及びシュラウド側のブレード回転方向の前縁部近傍を捻り形状とし、該捻り形状は前記ブレードのバックプレート及びシュラウドの近傍で外周方向に湾曲し、それに続く前記ブレードの後続部は同一円柱平面で、且つ前記前縁部の縁の形状は中央部が凹んだ湾曲形状であることを特徴とする遠心送風機の構造
【請求項2】
ブレードの回転軸に平行な方向であるブレード幅方向の中央部前縁部から後続部まで同一円柱平面としたことを特徴とする請求項1に記載の遠心送風機の構造
【請求項3】
前記ブレードの前縁部とバックプレートの接続部の近傍のブレードが裾野状に延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遠心送風機の構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等に使用する遠心送風機のブレード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、シロッコファンやプラグファン等の遠心送風機は、空気吸い込み側のシュラウドとモータ側バックプレートの間に複数のブレードを立設したランナの吸入部にインレットコーンを組み合わせた構成であり、モータの回転によりランナを回転させて送風する。
これら遠心送風機は特許文献1に示されるように空調機器の送風等に多用されているが、従来の一般的なプラグファンを図1~4に示して説明する。
図1において、シュラウドa,ブレードb,バックプレートcから成るランナdの吸入部eに、図2に示すように、インレットコーンgを組合わせた構成である。ランナdのバックプレートcにはモータシャフトhをハブ等(締結継手)jで締結し、モータiの回転によりランナdを回転させる。
【0003】
ここで、前記ブレードbの形状は図3~4に示す形状で、全体としては図1図3に示すような円柱の一部を切り取った形状で、シュラウドaとバックプレートcの間に吸入部e(図1参照)から外周の吐出部fに向かって斜めに配置されている。図3で下側はバックプレートcに沿った直線b1で、上側はシュラウドaの内側面に沿った形状で、図3の右側の吸入部eの近傍は盛り上がった形状b2となっており、それに続き水平縁b3を有し、風を切る前面縁は直線b4であり、後面縁も上下方向に直線b5である。
図3のブレードbの破断線A-A’、B-B’、C-C’の断面図が図4である。
このように、図4でブレードbの各破断線A-A’、B-B’、C-C’での断面は同一形状であって、ブレードの回転軸に平行な方向であるブレード幅方向で同一のブレード断面形状が連続するブレード形状であり、製作は容易であるが、ブレード前縁部およびブレード間の流路内にて気流の乱れが生じファンの送風効率が低下し、風切音による騒音も発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-96378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、ブレードの上下の幅方向の形状変化でも送風効率の改善が見込めるであろうことに着目し、ブレードの上下の幅方向の形状を変化させることによって、送風効率や騒音低減効果が得られる遠心送風機のブレード構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、バックプレートと所定間隔で配置されるシュラウドとの間に複数のブレードを立設した遠心送風機の構造であって、バックプレート側及びシュラウド側のブレード回転方向の前縁部近傍を捻り形状とし、該捻り形状は前記ブレードのバックプレート及びシュラウドの近傍で外周方向に湾曲し、それに続く前記ブレードの後続部は同一円柱平面で、且つ前記前縁部の縁の形状は中央部が凹んだ湾曲形状である遠心送風機の構造である
請求項2の発明は、ブレードの回転軸に平行な方向であるブレード幅方向の中央部を前縁部から後続部まで同一円柱平面とした遠心送風機の構造である
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の遠心送風機の構造において、前記ブレードの前縁部とバックプレートの接続部の近傍のブレードが裾野状に延びている遠心送風機の構造である
【発明の効果】
【0007】
請求項1の遠心送風機の構造によれば、ブレード前縁部の捻り形状により、ブレード幅方向の中央部からバックプレートおよびシュラウドにかけてブレード入口角が連続的に小さくなることで、ブレード前縁部における気流の流入状態が改善し、ブレードと気流の衝突により生じる乱れだけでなく流路全体での乱れが抑制され、高効率化・低騒音化を実現できた。
また、請求項2の遠心送風機の構造によれば、請求項1の効果に加えて、ブレードの回転軸に平行方向であるブレード幅方向の中央部をブレードの幅方向に円柱状に平行に伸ばすことで、高効率化・低騒音化に効果のあるブレード捻り形状部を維持しながら、ブレード幅が可変でき、これにより効率を維持しながら同一ランナ径で風量の異なるファンを極めて容易に製作することが可能となる。すなわち、円柱状の捻れのない上下幅中央部の帯の幅z(図10参照)の長さを変えることで簡単に全体のブレード幅を変えることができる。
さらに、請求項3の遠心送風機の構造によれば、請求項1又は2の効果に加えて、ブレードの前縁部とバックプレートの接続部の近傍のブレードが裾野状に延びていることで、ブレード前縁のバックプレート近傍部における気流の流入状態がさらに改善し、さらなる高効率化・低雑音化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】従来の遠心送風機のランナ構造の説明斜視図、
図2】従来(本発明)の遠心送風機を空調機器に組み込んだ状態の側面図、
図3】従来の図1のブレード単体の側面図、
図4図3の切断線でのブレードの断面図、
図5】本発明の実施例1の遠心送風機のランナ構造の説明斜視図、
図6】実施例1のブレード単体で、ブレードの断面線の箇所を示す側面図
図7】実施例1の図6でのブレードの各破断線での断面図、
図8】ブレードの入口角αの説明図、
図9】本発明の実施例2の遠心送風機のランナ構造の説明斜視図、
図10】実施例2の図9のブレードの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の遠心送風機のブレード構造の実施例を図面を参照して説明するが、実施例1は図5~8、実施例2は図9、10を参照して説明する。
【0010】
[実施例1]
本発明の遠心送風機のブレード構造の好適な実施例1について説明するが、図5の遠心送風機のランナ4は、従来と同様に図2に示すような構成で、空調機器内の送風室に配置される。
まず、図5の実施例1のインレットコーン7が組合わされた、ランナ4に組み込まれたブレード3から説明する。
ランナ4は、バックプレート1とシュラウド2との間にブレード3が等間隔で、吸入部5から外周の吐出部6に向かって斜めに配置されている。
ブレード3のブレード下側31はバックプレート1に沿った形状で、ブレード上側33はシュラウド2の内側面に沿った形状で、ブレード上側33の空気を切る吸入部5の近傍には盛り上がった凸形状部332を有している。
【0011】
また、空気を切り裂くブレード前縁部32は多少内側に凹んだ曲線を有する湾曲部321(X2)を有しており、ブレード3のブレード前縁部32とバックプレート1のバックプレート吸入部5の近傍には裾野状部313(X1)が設けられ、前方に延びている。この裾野状部31(X1)により、ブレードと気流により生じる乱れだけでなく流路全体での乱れが抑制され、高効率化・低騒音化を実現できる。同様に、前記湾曲部321(X2)も空気の乱れが抑制される形状である。なお、本実施例でのブレード後縁部34は上下方向の直線であるが他の形状でもよい。
【0012】
また、図7に示すように、バックプレート1側のブレード回転方向の前縁部近傍312を捻り形状Y1(実線)とし、捻り方向はバックプレート1の近傍で外周外側に湾曲、すなわち、A-A’断面形状では、中央のC-C’(破線)断面形状より湾曲がゆるやかで外周外側に捻れている。同様にブレード3は、シュラウド2側でブレード回転方向の前縁部近傍331も捻り形状Y2(実線)とし、捻り方向はシュラウド2の近傍で外周外側に湾曲している。これを実施例1の数値で示すと、例えば、ブレード3の上下の高さは140mmであり、図7で基準となるC-C’断面形状での前縁部での曲率半径をR3を313.2mmとすると、A-A’断面形状での前縁部での曲率半径をR1は333.2mmであり距離a1は、4.9mm前後である。また、E-E’断面形状での前縁部での曲率半径をR2は318.3mmであり、距離a2は、1.7mm前後である。
【0013】
前縁部近傍312,331の捻り形状Y1、Y2により、ブレード3の上下幅中央部(C-C')からバックプレート1およびシュラウド2にかけてブレード入口角αが連続的に小さくなる。この入口角αを図8で説明すると、中央部の鎖線で示すブレード3(図8)の接線とブレード内接円Rとがなす角度である入口角はα1であるが、前縁部近傍を捻り形状Y1、Y2にすることにより入口角α2はブレード前縁部(32)全体が空気の流入角度に近づくことから、ブレード3の前縁部近傍312、331における気流の流入状態が改善し、ブレードと気流の衝突により生じる乱れだけでなく流路全体での乱れが抑制され、高効率化・低騒音化を実現できる。
【0014】
[実施例2]
本発明は、遠心送風機のランナ4内のブレード3の上下幅中央部の帯の幅z(図10参照)を調節することで、前縁部近傍の捻り形状Y1、Y2はそのままにして、高効率化・低騒音化を維持しながら、全体のブレード幅を簡単に変更することができる。したがって、仕様風量に応じたプラグファンの設計・製造ができる。
【0015】
ここで、ランナ4’の上下幅を変化させ、送風量に応じたブレード幅にした実施例2を図9及び図10を参照して説明する。
図9は、実施例2のランナ4’の斜視図であるが、図10に示すように、ブレード3は前縁部近傍の捻り形状Y1、Y2は実施例1と同じであり、従来の一部円柱状のブレードよりも、送風効率は向上し、騒音も低減される。すなわち、ブレード3の上下幅を変化させる際はブレード3の中央部の捻れのない帯状部分(一点鎖線C-C‘、D-D’で囲まれる範囲)での上下幅zを伸縮させて全体としてブレードZの上下幅Zを長くあるいは短くし、バックプレート1側およびシュラウド2側に存在する捻り形状Y1、Y2はそのままにしておけばよい。
このように、高効率化・低騒音化に効果のあるブレード捻り形状部を維持しながらブレード幅可変が容易であり、同一ランナ径で風量の異なるファンを簡単に形成できる。
【0016】
以上のような構成であるので、各実施例の遠心送風機のブレード構造によれば、ブレード前縁部の捻り形状により、ブレードの回転軸に平行な方向であるブレード幅方向の中央部からバックプレートおよびシュラウドにかけてブレード入口角が連続的に小さくなることで、ブレード前縁部における気流の流入状態が改善し、ブレードと気流の衝突により生じる乱れだけでなく流路全体での乱れが抑制され、高効率化・低騒音化を実現できた。
また、ブレードの回転軸と平行な方向であるブレード幅方向の中央部をブレードの幅方向に円柱状に平行に伸ばすことで、高効率化・低騒音化に効果のあるブレード捻り形状部を維持しながら、ブレード幅を可変にしても送風効率、騒音低減の効果をそうする。これにより効率を維持しながら同一ランナ径で風量の異なるファンを極めて容易に製作することが可能となる。すなわち、円柱状の捻れのない上下幅中央部の帯の幅z(図10参照)の長さを変えることで簡単に全体のブレード幅を変えることができる。
さらに、ブレードの前縁部とバックプレートの接続部の近傍のブレードが裾野状に延びているので、ブレード前縁のバックプレート近傍部における気流の流入状態がさらに改善し、さらなる高効率化・低雑音化が可能となる。
【0017】
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の実施例に限定されるものでないことは勿論であり、実施例では空調機器の送風ファンに適用したが、例えば、送風機単体として用いてもよい。
【符号の説明】
【0018】
1・・バックプレート、2・・シュラウド、
3・・ブレード、31・・ブレード下側、
312・・バックプレート側前縁部近傍(Y1)、
313・・バックプレート側裾野状部 (X1)
32・・ブレード前縁部、321・・湾曲部(X2)
33・・ブレード上側、331・・シュラウド側前縁部近傍(Y2)、
332・・凸形状部、
34・・ブレード後縁部、
4・・ランナ、
5・・吸入部、
6・・吐出部、
7・・インレットコーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10