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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】断熱性扉、および冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/08 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
F25D23/08 U
F25D23/08 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019056267
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020159569
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】内田 武
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-020088(JP,U)
【文献】実公昭49-002619(JP,Y1)
【文献】特開2002-062038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/08
F25D 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側部材と、
前記前面側部材と対向配置された背面側部材と、
前記前面側部材と前記背面側部材との間に位置し、発泡断熱材を有する断熱層と、
前記前面側部材の裏面に配置されており、前記裏面に対して凹凸を有している網目状シート部材と
を備え、
前記網目状シート部材の少なくとも一部は、前記前面側部材の前記裏面に接着されており、
前記網目状シート部材における前記前面側部材の前記裏面との接着部は、樹脂材料を硬化させることによって得られたものである、断熱性扉。
【請求項2】
前面側部材と、
前記前面側部材と対向配置された背面側部材と、
前記前面側部材と前記背面側部材との間に位置し、発泡断熱材を有する断熱層と、
前記前面側部材の裏面に配置されており、前記裏面に対して凹凸を有している網目状シート部材と
を備え、
前記網目状シート部材は、複数の線状体を織り合わせて形成されている、断熱性扉。
【請求項3】
前面側部材と、
前記前面側部材と対向配置された背面側部材と、
前記前面側部材と前記背面側部材との間に位置し、発泡断熱材を有する断熱層と、
前記前面側部材の裏面に配置されており、前記裏面に対して凹凸を有している網目状シート部材と
を備え、
前記網目状シート部材は、樹脂材料を少なくとも部分的に硬化させることによって得られるものである、断熱性扉。
【請求項4】
前面側部材と、
前記前面側部材と対向配置された背面側部材と、
前記前面側部材と前記背面側部材との間に位置し、発泡断熱材を有する断熱層と、
前記前面側部材の裏面に配置されており、前記裏面に対して凹凸を有している網目状シート部材と
を備え、
前記断熱層は、前記前面側部材の長手方向に沿って移動する注入ヘッドから発泡断熱材料を滴下することによって形成されるものであり、
前記網目状シート部材は、前記前面側部材の長手方向の方が前記長手方向に直交する方向よりも短い網目形状を有している、断熱性扉。
【請求項5】
前記網目状シート部材は、電子線を照射することによって前記前面側部材の前記裏面に対して接着されている、請求項1から4の何れか1項に記載の断熱性扉。
【請求項6】
前記網目状シート部材は、複数の線状体を織り合わせて形成されている、請求項1、3、および4の何れか1項に記載の断熱性扉。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の断熱性扉を備えている冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性扉に関する。また、本発明は、この断熱性扉を備えている冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷蔵庫には、周囲との断熱を行うために、貯蔵空間の外周を覆うように断熱箱体が設けられている。また、冷蔵庫の扉も、断熱性を有している。
【0003】
このような断熱性を有する扉の内部には、断熱層が形成されている。断熱層は、冷蔵庫内の断熱性能を維持するために、発泡ポリウレタン(硬質ウレタンフォームともいう)などの発泡断熱材で形成されている。すなわち、断熱性扉は、主として、扉の外形を構成する外板(前面側部材ともいう)と、内板(背面側部材ともいう)と、これらの間に存在する上述の断熱層とで構成されている。
【0004】
このような構成を有する断熱性扉を製造する際には、例えば、特許文献1に開示されているようなオープン注入方式で発泡断熱材料が注入される。オープン注入方式とは、下表面板(前面側部材ともいう)と外周枠とで形成される空間内に発泡断熱材料(樹脂液)を注入する際に、上表面板(背面側部材ともいう)を開いて上部を開放して置き、該開放空間に樹脂液を注入する方式のことである。このオープン注入方式を採用することで、上表面板に注入孔を設ける必要がなく、また、注入ヘッドを移動させながら注入できる。そのため、短時間で空間周辺に隈なく均一に樹脂液を注入することができ、均質な断熱層を有する断熱性扉を製造することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-86160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発泡断熱材料が滴下される下表面板の裏面には、生産上の都合で表面に保護層が形成されていることがある。この保護層と発泡断熱材料との相性、並びに表面に形成されている保護層の膜厚や下表面板の裏面の平坦性のバラツキなどの影響によって、滴下された発泡断熱材料が均一に拡がらない可能性がある。滴下された発泡断熱材料が下表面板の裏面において均一に拡がらないと、断熱材料が発泡して扉内に充填される際に充填ムラが生じ得る。下表面板のコーナー部などで発泡断熱材料が充填できない箇所があると、そこに空洞が生じて断熱性扉の表面に凹凸を発生させる要因となる。これにより、扉の外観の品質が低下する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明の一局面では、発泡断熱材料がより均一に充填された断熱層を有し、外観の品質低下が抑制された断熱性扉を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面にかかる断熱性扉は、前面側部材と、前記前面側部材と対向配置された背面側部材と、前記前面側部材と前記背面側部材との間に位置し、発泡断熱材を有する断熱層と、前記前面側部材の裏面に配置されており、前記裏面に対して凹凸を有している網目状シート部材とを備えている。
【0009】
上記の本発明の一局面の断熱性扉において、前記網目状シート部材の少なくとも一部は、前記前面側部材の前記裏面に接着されていてもよい。
【0010】
上記の本発明の一局面の断熱性扉において、前記網目状シート部材における前記前面側部材の前記裏面との接着部は、樹脂材料を硬化させることによって得られたものであってもよい。
【0011】
上記の本発明の一局面の断熱性扉において、前記網目状シート部材は、複数の線状体を織り合わせて形成されていてもよい。
【0012】
上記の本発明の一局面の断熱性扉において、前記網目状シート部材は、樹脂材料を少なくとも部分的に硬化させることによって得られるものであってもよい。
【0013】
上記の本発明の一局面の断熱性扉において、前記網目状シート部材は、電子線を照射することによって前記前面側部材の前記裏面に対して接着されていてもよい。
【0014】
上記の本発明の一局面の断熱性扉において、前記断熱層は、前記前面側部材の長手方向に沿って移動する注入ヘッドから発泡断熱材料を滴下することによって形成されるものであり、前記網目状シート部材は、前記前面側部材の長手方向の方が前記長手方向に直交する方向よりも短い網目形状を有していてもよい。
【0015】
本発明のもう一つの局面は、断熱性扉を備えている冷蔵庫に関する。ここで、前記断熱性扉は、上述の本発明の一局面にかかる断熱性扉である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一局面にかかる断熱性扉では、前面側部材の裏面に網目状シート部材が配置されている。これにより、断熱材料を前面側部材の裏面に滴下したときに断熱材料が均一に拡がるようにすることができる。したがって、断熱材料がより均一に充填された断熱層を有し、外観の品質低下が抑制された断熱性扉が得られる。
【0017】
さらに、網目状シート部材の表面には、少なくとも前面側部材との対向面側に凹凸が形成されている。これにより、網目状シート部材の表面には、前面側部材の裏面に接触する部分と、前面側部材の裏面に接触しない部分とができる。そのため、網目状シート部材と前面側部材との間に形成される隙間にも、断熱材料を行き渡らせることができる。
【0018】
また、本発明の一局面にかかる冷蔵庫は、上記のような断熱性扉を備えていることで、良好な外観を有している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態にかかる冷蔵庫の外観を示す斜視図である。
図2図1に示す冷蔵庫に設けられた冷蔵室扉の内部構成を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる冷蔵室扉の製造方法の概要を示す模式図である。
図4】第1の実施形態にかかる冷蔵庫の正面部材の裏面を示す模式図である。
図5図4に示す網状シートの一部を拡大して示す模式図である。
図6図4に示す網状シートの一部を拡大して示す断面図である。
図7】網状シートと正面部材との接着位置を示す模式図である。
図8】網状シートと正面部材との接着位置の他の例を示す模式図である。
図9】第2の実施形態にかかる冷蔵庫の正面部材の裏面を示す模式図である。
図10】第3の実施形態にかかる冷蔵庫の正面部材の裏面を示す模式図である。
図11】第4の実施形態にかかる冷蔵庫の正面部材の裏面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0021】
〔第1の実施形態〕
(冷蔵庫の全体構成)
本実施形態では、2つの収納室(冷蔵室2および冷凍室3)を有している冷蔵庫1を例に挙げて説明する。図1には、本実施形態にかかる冷蔵庫1の外観を示す。図1では、冷蔵庫1の各扉を開けた状態の外観を示す。冷蔵庫1は、主として、本体部10と、冷蔵室扉11および冷凍室扉12とで構成されている。冷蔵室扉11および冷凍室扉12は、本発明の一例の断熱性扉である。本体部10は、断熱箱体でその外形が形成されている。
【0022】
冷蔵庫1の上段には冷蔵室2が配置されている。冷蔵室2の正面の開口部には、冷蔵室扉11が取り付けられている。冷蔵庫1の下段には冷凍室3が配置されている。冷凍室3の正面の開口部には、冷凍室扉12が取り付けられている。
【0023】
なお、冷蔵庫1における各貯蔵室の構成や配置は、上記のものに限定はされない。各貯蔵室の構成および配置は、冷蔵庫の容量、用途などに応じて適宜変更することができる。
【0024】
本実施形態では、扉が設けられている面を冷蔵庫1の前面(正面)とする。そして、前面を基準にして、冷蔵庫1を通常の状態で設置した場合に存在する位置に基づいて、冷蔵庫1の本体部10の各面を、上面、側面、背面、及び底面とする。また、冷蔵庫1を正面側から見た状態で、上に位置する側を冷蔵庫1(または冷蔵室扉11)の上方側と呼び、下に位置する側を冷蔵庫1(または冷蔵室扉11)の下方側と呼ぶ。また、冷蔵庫1を正面側から見た状態で、左に位置する側を冷蔵庫1(または冷蔵室扉11)の左側と呼び、右に位置する側を冷蔵庫1(または冷蔵室扉11)の右側と呼ぶ。
【0025】
(冷蔵室扉の構成)
続いて、冷蔵室扉11の内部構成について、図面を参照しながら説明する。図2には、冷蔵室扉11の断面構成を示す。
【0026】
冷蔵室扉11は、主として、正面部材(前面側部材)21、ドアバック(背面側部材)22、断熱層23、および網状シート(網目状シート部材)24などで構成されている。
【0027】
正面部材21は、冷蔵室扉11の正面側に位置し、冷蔵室扉11の本体部分の正面を構成する。ドアバック22は、正面部材21と対向配置され、冷蔵室扉11の背面側を構成する。正面部材21の背面にドアバック22が取り付けられることによって、冷蔵室扉11の本体部分の外形が形成される。断熱層23は、正面部材21とドアバック22との間に位置している。
【0028】
断熱層23は、例えば、発泡断熱材などで構成される。発泡断熱材には、例えば、発泡ポリウレタン(硬質ウレタンフォームともいう)などが含まれる。発泡断熱材は、液体状の断熱材料40を正面部材21の裏面上に滴下し(図3参照)、正面部材21とドアバック22との間の空間内で断熱材料40を発泡させることによって形成される。発泡ポリウレタンの断熱材料は、ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、および可塑剤などを含んでいる。
【0029】
なお、断熱層23には、真空断熱材が含まれていてもよい。真空断熱材は、シート状または板状の断熱材である。真空断熱材は、冷蔵庫において、特に高い断熱性が要求される場所に配置することが望ましい。断熱層23が真空断熱材を含むことで、冷蔵室扉11の断熱性能をより高めることができる。
【0030】
網状シート24は、正面部材21とドアバック22との間に配置されている。具体的には、網状シート24は、正面部材21の裏面に配置されている。後述するように、冷蔵室扉11の製造時に、網状シート24は正面部材21の裏面上に配置される。この状態で、正面部材21上に断熱材料が滴下される。その後、正面部材21上にドアバック22が取り付けられ、網状シート24が配置された状態で正面部材21とドアバック22との間の空間に発泡断熱材を含む断熱層23が形成される。これにより、網状シート24は、正面部材21と断熱層23との間に位置することとなる。
【0031】
冷凍室扉12についても、冷蔵室扉11と同様の内部構成を有している。
【0032】
(冷蔵室扉の製造方法)
続いて、冷蔵室扉11の製造方法について説明する。本実施形態にかかる冷蔵室扉11の製造方法は、断熱材料を正面部材21の表面(裏面)上に滴下する滴下工程と、断熱材料を滴下後に正面部材21上にドアバック22を取り付ける取り付け工程と、正面部材21とドアバック22との間の空間内で断熱材料を発泡させる発泡工程とを少なくとも含んでいる。
【0033】
図3には、本実施形態にかかる冷蔵室扉11の製造方法において、滴下工程が行われる様子を(1)から(4)の工程順に示す。なお、図3では、従来の製造方法、すなわち、正面部材21上に網状シート24が配置されずに滴下工程が行われる様子を比較例として示す。
【0034】
滴下工程の前段階では、正面部材21上に網状シート24が配置される。この状態の正面部材21を、断熱材料の注入装置50の下方に設置する。注入装置50は、下方に向かって延びる注入ヘッド51を有している。注入ヘッド51は、一方向に移動しながら(図3に示す例では、矢印で示すように右方向に移動しながら)断熱材料40を滴下する。この注入ヘッド51の移動方向は、正面部材21の長手方向(本実施形態では、冷蔵室扉11の上下方向)に沿った方向とすることが好ましい。これにより、距離のより長い長手方向に対する断熱材料40の均一性を確保しやすくなっている。
【0035】
本実施形態では、正面部材21上に網状シート24が配置されていることで、滴下された断熱材料40は、網状シート24の網目形状に沿って縦横に拡がる。網状シート24は、正面部材21の裏面上に載置されている。網状シート24は、正面部材21の裏面上に接着されている。このとき、網状シート24は、正面部材21の裏面との対向面の全体が正面部材21に対して接着されているわけではなく、網状シート24の少なくとも一部(例えば、(正面部材21の裏面と対向している側に位置する凸部24a(図2参照)のうちのいくつか)が正面部材21の裏面上に接着された状態となっている。
【0036】
これに対して、比較例では、正面部材21上に網状シート24が配置されていないため、断熱材料40は拡がりにくい。
【0037】
注入ヘッド51が滴下の終了位置(終点B)まで到達すると、注入装置50は、断熱材料40の滴下を終了し、その後、注入ヘッド51は正面部材21上から遠ざかる(図3の(3)および(4)参照)。
【0038】
滴下工程後の取り付け工程では、正面部材21に覆い被さるようにドアバック22が取り付けられる。これにより、内部に空間を有する冷蔵室扉11の外形が形成される。
【0039】
発泡工程では、冷蔵室扉11の内部空間において断熱材料40が反応し、ガスを発生させる。これにより、冷蔵室扉11の内部空間に発泡断熱材(具体的には、ポリウレタンフォーム)が形成される。最終的に発泡断熱材は硬化し、硬質の発泡断熱材を有する断熱層23が得られる。
【0040】
以上のように、本実施形態では、オープン注入方式を用いて冷蔵室扉11の内部に断熱材料40が注入され、断熱層23が形成される。なお、図3に示す断熱材料の注入装置50は、一例であり、本実施形態にかかる冷蔵室扉11の製造方法に用いられる注入装置はこれに限定されない。
【0041】
本実施形態では、正面部材21上に網状シート24を配置した状態で滴下工程が実施されることで、断熱材料40を水平方向によりスムーズに流動させて、正面部材21のより広範な領域に断熱材料40を拡張させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、網状シート24の少なくとも一部が正面部材21の裏面上に接着された状態となっている。すなわち、網状シート24の少なくとも一部が正面部材21の裏面上に固定されている。これにより、断熱材料40の滴下工程において、網状シート24が移動したり撓んだりすることを防止できる。また、滴下工程中に網目の下に入り込んで発泡により膨張した断熱部材40により、網状シート24が浮き上がることを防止できる。したがって、網状シート24による断熱材料の流動性を滴下工程に亘って維持することができ、正面部材21のより広範な領域に断熱材料40を拡張させることができる。
【0043】
これに対して、網状シート24を配置しない従来例であっても、注入ヘッド51の移動位置や速度、滴下量を制御することで、注入ヘッド51の移動方向である正面部材21の長手方向に対しては、断熱材料40をある程度均一に滴下することができる。その一方で、注入ヘッド51の移動方向と直交する正面部材21の短手方向に対しては、注入ヘッド51の移動による滴下の制御ができないため、断熱材料40は拡がりにくい。そのため、正面部材21の左右両側の端部周辺では、断熱材料40の充填度合いが中央部と比較して低くなり、断熱材料40の充填度合いの不均一化が起こり得る。このような状態で発泡工程が行われると、断熱材料40の充填が不十分な箇所では正面部材21との間に空洞が生じて正面部材21との接着性が低くなり、冷蔵室扉11の前面部分に凹凸が発生し、冷蔵庫1の美観が損なわれる。
【0044】
なお、鋼板などの金属製の板状部材で形成されている正面部材21の裏面には、傷や化学変化に対する保護層としてコーティング剤が塗布されている場合がある。このコーティング剤と断熱材料との相性や、コーティング剤の膜厚のバラツキなどの影響によって、正面部材21上に滴下された断熱材料がより拡がりにくくなる可能性がある。例えば、断熱材料40との接着性が高いコーティング剤が正面部材21の表面に塗布されていると、正面部材21と断熱材料(ポリウレタンフォームの材料)との接着力が高まり、断熱材料の流動性がより妨げられる可能性がある。
【0045】
そこで、本実施形態のように、正面部材21の裏面に網状シート24を配置することで、正面部材21の表面と断熱材料40との直接的な接触が抑制され、断熱材料40の流動性を向上させ、正面部材21上に断熱材料40を均一に拡張させることができる。なお、網状シート24は、断熱材料40および断熱材料40から形成される発泡断熱材に対して非接着性を有していることが好ましい。これにより、正面部材21上に断熱材料40をより均一に拡張させることができる。
【0046】
また、本実施形態では、網状シート24は、注入ヘッド51から滴下される断熱材料40の滴下の開始位置(図3の(4)の平面図のAの位置)およびその外側、並びに滴下の終了位置(図3の(4)の平面図のBの位置)およびその外側を含む領域の全体にわたって配置されている。これにより、断熱材料40の滴下の始点Aから終点Bまで領域の外側の領域にも、より確実に断熱材料40を拡張させることができる。
【0047】
なお、網状シート24は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリアミド、シリコン系樹脂、およびフッ素系樹脂などの樹脂材料で形成されていることが好ましい。これらの樹脂材料は、ポリウレタンに対する非接着性を有している。したがって、断熱層23がポリウレタンフォームを有している場合に、断熱層形成時の断熱材料40の流動性および拡張性を高めることができる。
【0048】
図2には、網状シート24と正面部材21の一部分を拡大して示す。図2に示すように、網状シート24は、表面に凹凸を有している。具体的には、網状シート24は、正面部材21の裏面に向かって突出している部分(凸部24a)と、正面部材21の裏面に対して凹んでいる部分(凹部24b)とを有している。なお、このような凹凸は、網状シート24の両面に形成されていてもよいし、正面部材21の裏面との対向面のみに形成されていてもよい。
【0049】
正面部材21と対向する側に形成されている網状シート24の凸部24aは、正面部材21の裏面と接触している。そして、これら複数の凸部24aのうちの少なくとも数ヶ所は、正面部材21の裏面と接着されている。図2の拡大図では、接着部31を破線の枠で囲んでいる。これにより、網状シート24は、正面部材21の裏面上に固定される。
【0050】
図4には、正面部材21上に配置される網状シート24のより具体的な構成を示す。図4では、滴下工程における注入ヘッド51の移動方向を矢印で示している。また、図4では、網状シート24の網目形状を拡大して示す。
【0051】
図4に示すように、網状シート24は、縦横に延びる複数の繊維(線状体)で形成されている。網状シート24は、長方形の開口を有する格子状の網目形状を有している。ここで、網状シート24の網目形状は、注入ヘッド51の移動方向の方が該移動方向に直交する方向よりも短い長方形状となっている。すなわち、網状シート24の長方形状の開口部において、注入ヘッド51の移動方向の長さL1は、該移動方向に直交する方向の長さL2よりも小さい。
【0052】
網目の長さが長い、すなわち、網目が粗ければ、液状の断熱材料40は網の上を流動しやすい。しかしその一方で、網目が粗いと、網目の間から液状の断熱材料40が正面部材21の表面に落ちやすくもなる。網目の長さが短ければ、これとは逆に、液状の断熱材料40は網目の間から落ちにくくなるが、網の上での流動性も低下する。
【0053】
そこで、本実施形態では、網状シート24の網目形状が上記のような構造を有していることで、滴下された断熱材料40は、網目(開口部)の長手方向(長さL2の方向)への流れが促進される。これにより、注入ヘッド51の移動方向に直交する方向(すなわち、冷蔵室扉11の左右方向)へ断熱材料40をより拡がらせることができる。その一方で、網目(開口部)の短手方向(長さL1の方向)では、網目を密にできるため、液状の断熱材料40が網目の間から落ちることを抑制する。したがって、液状の断熱材料40を、網目の長手方向(長さL2の方向)へ、より確実に流動させることができる。
【0054】
このような網目形状を有している網状シート24において、シートに形成された開口部の開口率は、50%以上97%以下とすることが好ましい。これにより、滴下された断熱材料40を、網状シート24の上面を通過させて滴下領域の外側へと流動させつつ、その一部を、開口部を介して正面部材21の表面に落とすことができる。したがって、網状シート24と正面部材21の裏面との間に断熱材料40による断熱層23を均一に形成することができ、断熱材料40と正面部材21の裏面とが離間した状態となることが抑制される。
【0055】
また、網状シート24を形成している繊維の線径は、0.2mm以上とすることが好ましく、1.0mm以上とすることがより好ましい。線径を0.2mm以上とすることで、網状シート24にある程度の剛性および重量を持たせることができる。そのため、正面部材21上に網状シート24を配置したときに、網状シート24が位置ずれすることを抑制することができる。また、線径を1.0mm以上とすることで、液状の断熱材料40が網の上で流動するための幅を十分に確保することができ、断熱材料40の網の上での流動性が向上する。
【0056】
なお、網状シート24を形成している繊維の線径を太くすると、網状シート24の開口部の開口率が低下する傾向となる。本実施形態では、上述の様に、網目(開口部)の長手方向と短手方向の網目の密度を変えているため、この密度をそれぞれ調整することで、網状シート24の開口部の開口率を上記の様な所望の比率にすることができる。
【0057】
なお、網状シート24は、2枚以上重ねて配置してもよい。このとき、各網状シート24の網目形状をわずかにずらして重ねることで、滴下直後の断熱材料40と、正面部材21の表面との接触面積をより減らす(すなわち、開口率をより小さくする)ことができる。これにより、断熱材料40の流動性をより向上させることができる。この場合は、下側となる網状シート24の少なくとも一部が正面部材21の裏面上に接着された状態となっていればよい。
【0058】
網状シート24は、複数の繊維(線状体)を織り合わせて形成されていてもよい。図5および図6には、複数の繊維を織り合わせて形成されている網状シート24を示す。図6は、図5に示す網状シート24の断面図であって、網状シート24を横糸26a側から見たときの図である。
【0059】
これらの図に示す例では、第1の方向に延びる繊維(縦糸)25a・25b・25cに対して、第1の方向に直交する第2の方向に延びる繊維(横糸)26a・26bが上下に波打つように配置されている。なお、図5および図6に示す網状シート24は、縦糸と横糸とが平織りで織られている。しかし、網状シート24の織り方は、平織りに限定はされず、綾織り、朱子織り、からみ織り、模紗織りなどの他の織り方であってもよい。
【0060】
網状シート24を構成している繊維は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリアミド、シリコン系樹脂、およびフッ素系樹脂などの樹脂材料で形成されていることが好ましい。
【0061】
網状シート24が、例えば、図5に示す平織りの網状シート24のように、異なる2方向に延びる複数の繊維を互いに交差させて形成されている場合、凸部24aは、第1の方向に延びる繊維(縦糸)25と、第2の方向に延びる繊維(横糸)26との交差部分に形成される。図5では、凸部24aが形成されている位置に破線の円を付している。
【0062】
(網状シートの接着方法について)
上述したように、網状シート24は、正面部材21に対して接着固定されている。正面部材21に対して網状シート24を固定する方法としては、例えば、従来公知の接着剤を用いて網状シート24を正面部材21の裏面に接着する方法が挙げられる。図2に示すように、網状シート24と正面部材21との接着部31は、網状シート24の凸部24aの全てまたはいくつかに存在する。
【0063】
図7には、網状シート24と正面部材21との接着部31の位置を示す。図7に示す例では、縦糸25と横糸26との各交差部のうち、縦糸25および横糸26双方について一つ置きの間隔で位置する交差部が、接着部31となっている。また、図8には、接着部31の配置の他の例を示す。図8に示す例では、接着部31の個数は図7に示す例よりも少なく、各接着部31の配置間隔は図7に示す例よりも広くなっている。なお、網状シート24が複数のシートに分割されている場合には、1つのシートにつき少なくとも1つの接着部31を設けるのがよい。
【0064】
また、網状シート24を正面部材21に固定させる別の方法として、網状シート24を電子線硬化性、紫外線硬化性、または熱硬化性などの硬化特性を有する樹脂材料で形成し、これらの樹脂材料に所定のエネルギーを付与することによって樹脂材料を硬化させて、網状シート24を正面部材21に対して接着させるという方法も可能である。
【0065】
網状シート24が、PP、PEなどのオレフィン系の樹脂材料で形成されている場合には、電子線を網状シート24の全体または一部に照射することによって、照射した部分の樹脂材料を硬化させ、接着部31を形成することができる。また、照射した部分の樹脂材料に架橋を起こさせることで、網状シート24の強度や耐熱性を向上させ、正面部材21の強度を向上させることができる。さらに、電子線を網状シート24の全体に照射した場合には、正面部材21の裏面にも電子線が照射される。このとき、正面部材21の裏面が電子線照射によって滅菌処理され、断熱材料40の流動性を向上させることができる。
【0066】
また、網状シート24が、紫外線硬化性樹脂で形成されている場合には、紫外線を網状シート24の全体または一部に照射することによって、照射した部分の樹脂材料を硬化させ、接着部31を形成することができる。
【0067】
電子線または紫外線などの放射線を照射する場合には、先ず、正面部材21の裏面上の適切な位置に網状シート24を載置し、例えば、図7および図8に示すような接着部31の形成位置のみをターゲットとして、局所的に放射線を照射してもよい。
【0068】
また、別の方法として、網状シート24が配置されている領域の全体に放射線を照射してもよい。これにより、網状シート24を形成している樹脂材料の全領域に硬化反応を発生させることができ、網状シート24の剛性を向上させることができる。このようにして、網状シート24に放射線を照射して、網状シート24を形成している樹脂材料を硬化させることで、網状シート24が接着されている正面部材21の強度を向上させることができる。
【0069】
なお、上述したように、網状シート24は表面に凹凸を有している。そのため、網状シート24の全体に放射線を照射しても、凹部24bが形成されている箇所は、正面部材21の裏面から離れているため、接着部31は形成されない。したがって、網状シート24の全体に放射線を照射しても、網状シート24の全体が正面部材21の裏面と接着することはなく、部分的に隙間が形成される。そのため、網状シート24と正面部材21の裏面との間の隙間にも断熱材料を充填させることができる。
【0070】
(まとめ)
以上のように、本実施形態にかかる冷蔵庫1では、冷蔵室扉11を構成する正面部材21の裏面に網状シート24が配置されている。これにより、断熱材料40を正面部材21の裏面に滴下したときの断熱材料40の流動性を向上させることができる。したがって、断熱材料40がより均一に充填され、空隙の少ない断熱層23を形成することができる。このような断熱層23を有していることで、冷蔵室扉11の表面に凹凸が形成されることが抑制されるため、冷蔵庫1の外観の品質を向上させることができる。
【0071】
また、正面部材21をより厚さの薄い鋼板で形成した場合にも、冷蔵室扉11の前面に凹凸が形成されることが抑制されるため、冷蔵庫1を正面から見たときの美観を向上させることができる。
【0072】
さらに、網状シート24の表面には、少なくとも正面部材との対向面側に凹凸(凸部24aおよび凹部24b)が形成されている。これにより、網状シート24の表面には、正面部材21の裏面に接触する部分と、正面部材21の裏面に接触しない部分とができる。そのため、網状シート24と正面部材21との間に形成される隙間にも、断熱材料を行き渡らせることができる。
【0073】
また、正面部材21と対向する側に形成されている網状シート24の凸部24aのうちのいくつかは、正面部材21の裏面と接着されている。これにより、冷蔵室扉11の製造時の断熱材料を注入する工程などにおいて、正面部材21上に載置された網状シート24の位置ずれや浮き上がりを回避することができる。
【0074】
また、網状シート24は、所定のエネルギー(例えば、放射線、熱など)を付与することで硬化する特性を有する樹脂材料で形成されていてもよい。これにより、正面部材21上に網状シート24を載置した状態で所定のエネルギーを付与することで、網状シート24を正面部材21の裏面上に接着固定することができる。このようにして硬化された網状シート24は剛性が増すため、結果的に、網状シート24が貼り付けられた正面部材21の強度を向上させることができる。
【0075】
上述した実施形態では、上下に長い長方形状を有している冷蔵室扉11を例に挙げて説明したが、左右に長い長方形状を有している断熱性扉にも上述の製造方法を適用することができる。この場合には、断熱性扉の左右方向(正面部材の長手方向)に沿って注入装置50の注入ヘッド51を移動させることが好ましい。そして、網状シート24の長方形状の開口部は、注入ヘッド51の移動方向の長さL1が、該移動方向に直交する方向の長さL2よりも小さくなるように、網状シート24を正面部材上に配置することが好ましい。
【0076】
また、上述の冷蔵室扉11の製造方法は、冷蔵室扉11以外の断熱性扉(例えば、冷凍庫、保温器などの断熱庫の扉)を製造する場合にも用いることができる。
【0077】
〔第2の実施形態〕
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、正面部材の裏面に配置される網状シートの構造が第1の実施形態とは異なっている。その他の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。そこで、以下では、第1の実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0078】
図9には、第2の実施形態にかかる冷蔵室扉11を構成する正面部材21上に配置される網状シート124の構成を示す。図9では、滴下工程における注入ヘッド51の移動方向を矢印で示している。また、図9では、網状シート124の網目形状を拡大して示す。
【0079】
図9に示すように、網状シート124は、正面部材21の上下方向に対して傾斜した方向に延びる複数の繊維で形成されている。網状シート124は、菱形の開口を有する格子状の網目形状を有している。ここで、網状シート124の網目形状は、注入ヘッド51の移動方向の方が該移動方向に直交する方向よりも短い菱形状となっている。すなわち、網状シート124の菱形状の開口部において、注入ヘッド51の移動方向の長さL1は、該移動方向に直交する方向の長さL2よりも小さい。
【0080】
網状シート124の網目形状が上記のような構造を有していることで、滴下された断熱材料40は、網目(開口部)の長手方向(長さL2の方向)への流れが促進される。これにより、注入ヘッド51の移動方向に直交する方向(すなわち、冷蔵室扉11の左右方向)へ断熱材料40をより拡がらせることができる。
【0081】
網状シート124を形成する材料、および網状シート124の表面の凹凸形状については、第1の実施形態で説明した網状シート24と同様のものが適用できる。また、網状シート24と同様に、網状シート124は、第1の方向に延びる複数の繊維と、第1の方向と交差する第2の方向に延びる複数の繊維とを織り合わせて形成されていてもよい。網状シート124を正面部材21の裏面に接着させる方法も、第1の実施形態で説明した方法を適用することができる。
【0082】
〔第3の実施形態〕
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、正面部材の裏面に配置される網状シートの構造が第1の実施形態とは異なっている。その他の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。そこで、以下では、第1の実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0083】
第3の実施形態では、網状シートが、複数に分割されている例について説明する。図10には、第3の実施形態にかかる冷蔵室扉11を構成する正面部材21上に配置される網状シート224aから224dの構成を示す。図10では、滴下工程における注入ヘッド51の移動方向を矢印で示している。
【0084】
本実施形態にかかる冷蔵室扉11では、正面部材21の裏面上に、4枚の網状シート224a・224b・224c・224dが配置されている。各網状シート224a・224b・224c・224dは、第1の実施形態で説明した網状シート24と同様の構成を有している。
【0085】
具体的には、網状シート224aは、正面部材21の中央部分から右上の領域をカバーするように配置されている。網状シート224bは、正面部材21の中央部分から左上の領域をカバーするように配置されている。網状シート224cは、正面部材21の中央部分から右下の領域をカバーするように配置されている。網状シート224dは、正面部材21の中央部分から左下の領域をカバーするように配置されている。
【0086】
また、各網状シート224aから224dの表面には、第1の実施形態で説明した網状シート24と同様に、凹凸が形成されている。また、網状シート24と同様に、網状シート224aから224dは、第1の方向に延びる複数の繊維と、第1の方向と交差する第2の方向に延びる複数の繊維とを織り合わせて形成されていてもよい。
【0087】
網状シート224aから224dを正面部材21の裏面に接着させる方法も、第1の実施形態で説明した方法を適用することができる。具体的には、図7または図8に示すような間隔で接着部31を形成すればよい。このとき、1つの網状シートにつき複数の接着部31を設けることが好ましい。
【0088】
〔第4の実施形態〕
続いて、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、正面部材の裏面に配置される網状シートの構造が第1の実施形態とは異なっている。その他の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。そこで、以下では、第1の実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0089】
第4の実施形態では、網状シートが、注入ヘッド51から滴下される断熱材料40の滴下の開始位置およびその外側を含む領域と、滴下の終了位置およびその外側を含む領域とにそれぞれ配置されている例について説明する。図11には、第4の実施形態にかかる冷蔵室扉11を構成する正面部材21上に配置される網状シート324aおよび324bの構成を示す。
【0090】
図11では、滴下工程における注入ヘッド51の移動方向を矢印で示している。また、図11では、注入ヘッド51から滴下される断熱材料40の滴下の開始位置をAとして示し、滴下の終了位置をBとして示している。
【0091】
図11に示すように、本実施形態にかかる冷蔵室扉11では、正面部材21の裏面上に、2枚の網状シート324aおよび324bが配置されている。網状シート324aは、正面部材21の上方に配置されている。網状シート324bは、正面部材21の下方に配置されている。
【0092】
具体的には、網状シート324aは、注入ヘッド51から滴下される断熱材料40の滴下の開始位置Aおよびその上方側を含む領域に配置されている。また、網状シート324bは、注入ヘッド51から滴下される断熱材料40の滴下の終了位置Bおよびその下方側を含む領域に配置されている。
【0093】
網状シート324aが正面部材21上の上記のような領域に配置されていることで、正面部材21上に滴下された断熱材料40は、網状シート324aの配置位置に沿って滴下の開始位置Aから上方側へ拡張する方向へと誘導される。また、網状シート324bが正面部材21上の上記のような領域に配置されていることで、正面部材21上に滴下された断熱材料40は、網状シート324aの配置位置に沿って滴下の終了位置Bから下方側へ拡張する方向へと誘導される。これにより、滴下後の断熱材料40が行き渡りにくい正面部材21の上端部側および下端部側へ断熱材料40をより確実に誘導させることができる。
【0094】
網状シート324aおよび324bの構成は、第1の実施形態または第2の実施形態で説明した構成を適用することができる。また、網状シート324aおよび324bを正面部材21の裏面に接着させる方法は、第1の実施形態で説明した方法を適用することができる。
【0095】
なお、上述の各実施形態では、本発明の一例として、冷蔵庫の断熱性扉を例に挙げて説明した。しかし、本発明は、これに限定はされない。本発明にかかる断熱性扉は、例えば、保温庫、冷凍庫などの断熱庫の扉などに適用することができる。
【0096】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1 :冷蔵庫
11 :冷蔵室扉(断熱性扉)
12 :冷凍室扉(断熱性扉)
21 :正面部材(前面側部材)
22 :ドアバック(背面側部材)
23 :断熱層(発泡断熱材)
24 :網状シート(網目状シート部材)
24a :凸部
24b :凹部
25 :第1の方向に延びる繊維(線状体)
26 :第2の方向に延びる繊維(線状体)
31 :接着部
50 :(断熱材料の)注入装置
51 :注入ヘッド
124 :網状シート(網目状シート部材)
224a:網状シート(網目状シート部材)
224b:網状シート(網目状シート部材)
224c:網状シート(網目状シート部材)
224d:網状シート(網目状シート部材)
324a:網状シート(網目状シート部材)
324b:網状シート(網目状シート部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11