IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーインスツル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-時計 図1
  • 特許-時計 図2
  • 特許-時計 図3
  • 特許-時計 図4
  • 特許-時計 図5
  • 特許-時計 図6
  • 特許-時計 図7
  • 特許-時計 図8
  • 特許-時計 図9
  • 特許-時計 図10
  • 特許-時計 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/08 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
G04B37/08 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019056659
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020159737
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 勝信
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-121064(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 37/08
G04B 37/20
G04B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側が開口し、内周部に凹部が形成され、ムーブメントが上面側から収納される胴と、
風防が固定され、前記胴の上面側に取り付けられる風防縁と、
前記風防縁のうち前記胴の内側に挿入される部位に設けられ、前記内周部に向けて前記凹部に入り込まない程度に突出する凸部と、
前記風防縁に回動自在に取り付けられ、弾性変形しつつ前記凸部を乗り越えることで前記凸部の上側と下側の間を揺動可能とされ、前記風防縁を前記胴に取り付けた状態で上部が前記凹部の天井部に当接し、下部が前記凸部に当接して、前記胴及び前記風防縁にそれぞれ係合する止め部材と、
前記風防縁に設けられ、前記風防縁を前記胴に取り付けておらずかつ前記風防縁を水平状態にしたときに前記止め部材が前記凸部の下側の所定位置に留まるように、前記止め部材の下方への回動範囲を制限する支持部と、
を有する時計。
【請求項2】
上面側が開口し、内周部に凹部が形成され、ムーブメントが上面側から収納される胴と、
風防が固定され、前記胴の上面側に取り付けられる風防縁と、
前記風防縁のうち前記胴の内側に挿入される部位に設けられ、前記内周部に向けて前記凹部に入り込まない程度に突出する凸部と、
前記風防縁に回動自在に取り付けられ、弾性変形しつつ前記凸部を乗り越えることで前記凸部の上側と下側の間を揺動可能とされ、前記風防縁を前記胴に取り付けた状態で上部が前記凹部の天井部に当接し、下部が前記凸部に当接して、前記胴及び前記風防縁にそれぞれ係合する止め部材と、を有し、
前記止め部材は、前記風防縁の径方向の片側に設けられ、
前記風防縁のうち前記止め部材が設けられていない側には、前記胴に対して直接係合する係合部が設けられてい時計。
【請求項3】
上面側が開口し、内周部に凹部が形成され、ムーブメントが上面側から収納される胴と、
風防が固定され、前記胴の上面側に取り付けられる風防縁と、
前記風防縁のうち前記胴の内側に挿入される部位に設けられ、前記内周部に向けて前記凹部に入り込まない程度に突出する凸部と、
前記風防縁に回動自在に取り付けられ、弾性変形しつつ前記凸部を乗り越えることで前記凸部の上側と下側の間を揺動可能とされ、前記風防縁を前記胴に取り付けた状態で上部が前記凹部の天井部に当接し、下部が前記凸部に当接して、前記胴及び前記風防縁にそれぞれ係合する止め部材と、を有し、
前記凹部の前記天井部は、前記胴の径方向内側に向かって前記胴の上面側に傾斜し、
前記凸部は、前記風防縁の径方向外側に向かって断面テーパ状に形成されてい時計。
【請求項4】
前記止め部材は、前記風防縁の径方向の両側に一対設けられている請求項1~請求項3の何れか1項に記載の時計。
【請求項5】
前記止め部材には、弾性変形の際の伸び代となる伸長予定部が設けられている請求項1~請求項の何れか1項に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
時計の胴に対し、該胴に対するガラス縁の取付け方向から針及び文字盤付きムーブメントを挿入した後、ガラス縁を胴に取り付ける構造の時計が存在する。この一例として、時計の胴とガラス縁とを、小ねじを用いて固定する構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-189084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
胴とガラス縁とを固定するための構造として、上記したような小ねじ止めの構造の他、ガラス縁のうち胴に差し込まれる足に係合部を設けて、該足の撓み力を利用して係合部を胴に係合させる構造が知られている。
【0005】
しかしながら、ガラス縁の足の撓み力を利用して係合部を胴に係合させる構造では、ガラス縁の胴への取付け及び取外しの回数、つまり開閉回数が増える毎に、胴またはガラス縁が削れてしまうことが懸念される。更に、ガラス縁や胴に金のような変形を生じやすい材料やチタン等のような硬い材料が用いられる場合には、ガラス縁の足の撓み力を利用して係合部を胴に係合させる構造は不向きである。
【0006】
本発明の実施形態は、上記事実を考慮して、胴に対する風防縁の開閉を無理なく繰り返すことを可能にして、時計のメンテナンス性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る時計は、上面側が開口し、内周部に凹部が形成され、ムーブメントが上面側から収納される胴と、風防が固定され、前記胴の上面側に取り付けられる風防縁と、前記風防縁のうち前記胴の内側に挿入される部位に設けられ、前記内周部に向けて前記凹部に入り込まない程度に突出する凸部と、前記風防縁に回動自在に取り付けられ、弾性変形しつつ前記凸部を乗り越えることで前記凸部の上側と下側の間を揺動可能とされ、前記風防縁を前記胴に取り付けた状態で上部が前記凹部の天井部に当接し、下部が前記凸部に当接して、前記胴及び前記風防縁にそれぞれ係合する止め部材と、を有する。
【0008】
この時計では、風防縁に止め部材が回動自在に取り付けられている。ムーブメントを胴に収納し、風防縁を胴に取り付ける際には、風防縁の足部を胴に挿入する。このとき、足部に設けられた凸部は、凹部に入り込まない程度に突出しているので、胴の内周部と干渉し難い。またこのとき、風防縁に取り付けられた止め部材が、胴の凹部に入り込み始める。風防縁の足部を胴に押し込んで行くと、止め部材の上側にあった風防縁の凸部が、止め部材が一旦凹部に深く入り込むように該止め部材を弾性変形させながら、止め部材の下側に入り込む。このとき、相対的には、止め部材が弾性変形しながら風防縁の凸部を乗り越えて、該凸部の下側から上側に回動する。止め部材は、凸部を乗り越える際に一旦弾性的に伸長し、乗り越えた後に自身の弾性力により元の形状に戻ろうとする。このとき、止め部材の上部は凹部の天井部に当接し、止め部材の下部は凸部に当接し、止め部材が胴及び風防縁にそれぞれ係合した状態となる。これにより、風防縁が胴に取り付けられる。止め部材は、風防縁と胴の間に収納された状態となる。
【0009】
一方、風防縁を胴から取り外す際には、風防縁の足部に設けられた凸部が、止め部材が一旦凹部に深く入り込むように該止め部材を弾性変形させながら、止め部材の下側から上側に移動する。このとき、相対的には、止め部材が、風防縁の凸部を乗り越えて、該凸部の上側から下側に回動する。これにより、止め部材と、胴及び風防縁との係合が解除されるので、風防縁を胴から取り外すことができる。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る時計において、前記風防縁に、前記風防縁を前記胴に取り付けておらずかつ前記風防縁を水平状態にしたときに前記止め部材が前記凸部の下側の所定位置に留まるように、前記止め部材の下方への回動範囲を制限する支持部が設けられている。
【0011】
この時計では、風防縁を胴に取り付けておらずかつ風防縁を水平状態にしたときに、支持部により止め部材の下方への回動範囲が制限され、止め部材が凸部の下側の所定位置に留まる。これにより、風防縁からの止め部材の垂れ下がりが抑制される。このため、風防縁を胴に取り付ける際に、ムーブメントに取り付けられた針や文字板に対する止め部材の干渉を抑制できる。
【0012】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る時計において、前記止め部材が、前記風防縁の径方向の両側に一対設けられている。
【0013】
この時計では、風防縁を胴に取り付ける際に、風防縁の足部を胴に挿入して押し込んで行くことにより、風防縁の径方向の両側において、止め部材が胴及び風防縁にそれぞれ係合した状態となる。したがって、胴に対する風防縁の取付け作業が容易である。
【0014】
第4の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る時計において、前記止め部材が、前記風防縁の径方向の片側に設けられ、前記風防縁のうち前記止め部材が設けられていない側には、前記胴に対して直接係合する係合部が設けられている。
【0015】
この時計では、風防縁のうち止め部材が設けられていない側の係合部を胴に直接係合させてから、止め部材が設けられている側を胴に押し込み、止め部材を胴及び風防縁にそれぞれ係合させる。止め部材が風防縁の径方向の片側に設けられているので、止め部材が径方向の両側に設けられている場合と比較して、部品点数を少なくすることができる。
【0016】
第5の態様は、第1~第4の態様の何れか1態様に係る時計において、前記凹部の前記天井部が、前記胴の径方向内側に向かって前記胴の上面側に傾斜し、前記凸部は、前記風防縁の径方向外側に向かって断面テーパ状に形成されている。
【0017】
この時計では、胴における凹部の天井部が傾斜しているので、止め部材が凹部に出入りし易い。また、風防縁の凸部が断面テーパ状に形成されているので、止め部材が凸部を乗り越え易い。このため、胴に対する風防縁の着脱が容易である。
【0018】
第6の態様は、第1~第5の態様の何れか1態様に係る時計において、前記止め部材に、弾性変形の際の伸び代となる伸長予定部が設けられている。
【0019】
この時計では、止め部材に弾性変形の際の伸び代となる伸長予定部が設けられているので、該伸長予定部がない場合と比較して、止め部材が風防縁の凸部を乗り越える際に凸部の突出方向に伸長し易い。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態によれば、胴に対する風防縁の開閉を無理なく繰り返すことを可能にして、時計のメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る時計を示す部分破断正面図である。
図2】第1実施形態に係る時計を示す分解斜視図である。
図3】胴の構造を示す部分断面斜視図である。
図4】裏返しにされたガラス縁及び止め部材を示す分解斜視図である。
図5】止め部材の第1変形例を示す正面図である。
図6】ガラス縁を胴に固定する前の状態を示す拡大断面図である。
図7図6のA部分を示す拡大断面図である。
図8】(A)は、ガラス縁を胴に固定した状態を示す拡大断面図である。(B)は、図8(A)のB部分を示す拡大断面図である。
図9】(A)は、止め部材の第2変形例を示す拡大断面図である。(B)は、胴に対する止め部材の回動範囲が制限されている状態を示す拡大断面図である。
図10】第2実施形態に係る時計において、ガラス縁を胴に固定する前の状態を示す拡大断面図である。
図11】第2実施形態に係る時計において、ガラス縁を胴に固定した状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1図2において、本実施形態に係る時計10は、例えば腕時計であり、胴12と、風防縁の一例としてのガラス縁14と、凸部16と、止め部材18とを有している。
【0024】
胴12は、上面側が開口し、内周部22に凹部24が形成され、ムーブメント26が上面側から収納される時計部品である。図1における胴12の両端には、バンド取付け部12Aがそれぞれ設けられている。バンド取付け部12Aには、ばね棒30を介してリストバンド32が取り付けられる。図2に示されるように、胴12の側面には、竜頭28の軸28Aが差し込まれる孔12Bが形成されている。この孔12Bは、胴12の内周部22に貫通している。竜頭28の軸28Aは、この孔12Bを通じて、胴12に収納されるムーブメント26に結合される。
【0025】
図2図3において、胴12には、文字板34が収納される文字板収納部44が設けられている。文字板収納部44には、ムーブメント26に取り付けられた針35も収納される。文字板収納部44の下側には、ムーブメント26が収納されるムーブメント収納部46が設けられている。ムーブメント収納部46は、ムーブメント26の外形に合わせて筒状に形成されている。ムーブメント収納部46の下側には、裏蓋36を取り付けるための例えば雌ねじ12Cが形成されている。なお、ここでの「下側」とは、時計10の裏側(裏蓋36側)を意味する。
【0026】
図2において、文字板収納部44内において、ムーブメント26は、中枠38により位置決めされている。裏蓋36と胴12との間には、密閉性確保のため裏蓋パッキン40が設けられている。
【0027】
凹部24が設けられる内周部22は、文字板収納部44の内周に位置する。凹部24は、例えば時計10を平面視した場合において、該時計10の上側(時計10の12時側)と下側(時計10の6時側)にそれぞれ設けられている。この凹部24は、例えば胴12の内周部22から径方向外側に凹状に形成された凹溝であり、胴12の幅方向に例えば直線状又は弧状に延びている。この幅方向とは、時計装着時の横幅方向であり、換言すれば文字板34の3時と9時を結ぶ方向である。時計10の形状が角形でなく円形である場合には、凹部24は周方向に延びていてもよい。図6図7において、凹部24の天井部24Aは、胴12の径方向内側に向かって胴12の上面側に傾斜している。これにより、天井部24Aは、胴12の中央側斜め下方を向いている。また、凹部24の底部24Bは、文字板収納部44の底部44Bよりも一段低く形成されており、胴12の径方向内側に連続し、ムーブメント収納部46に至っている。
【0028】
図1図2図4において、ガラス縁14は、風防の一例としてのガラス42が固定され、胴12の上面側に取り付けられる。ガラス縁14と胴12との間には、密閉性確保のためガラス縁パッキン48が設けられる。図4には、裏返しにされたガラス縁14が示されている。ガラス縁14は、胴12に被さりガラス42の周囲の意匠面を構成する縁部14Aを有している。また、ガラス縁14は、胴12の内側に挿入される部位としての足部14Bを有している。なお、風防はガラス42に限られず、透明で硬質な素材であればよく、例えば透明な樹脂であってもよい。
【0029】
凹部24の底部24Bが文字板収納部44の底部44Bよりも一段低く形成されていることに対応して、足部14Bのうち凸部16が形成されている部分は、他の部分よりもガラス縁14の下側(図4では上側)に突出している。
【0030】
図6図7において、凸部16は、ガラス縁14のうち胴12の内側に挿入される部位としての足部14Bに設けられ、内周部22に向けて凹部24に入り込まない程度に突出する部位である。凸部16は、ガラス縁14の径方向外側に向かって断面テーパ状(先細り状)に形成されている。換言すれば、凸部16は、上側と下側に傾斜面を有している。図1に示されるように、時計10の平面視における凸部16の範囲は、胴12の凹部24の範囲よりも狭く(短く)設定されている。また、図7(B),図8(B)に示されるように、凸部16の上側の面の傾斜角度は、凹部24の天井部24Aの傾斜角度が異なっており、これによって、胴12の径方向内側に向かって凸部16と凹部24の天井部24Aとの離間距離が狭まっている。
【0031】
図2図4において、止め部材18は、ガラス縁14に回動自在に取り付けられ、弾性変形しつつ凸部16を乗り越えることで凸部16の上側と下側の間を揺動可能とされている。この止め部材18は、ガラス縁14を胴12に取り付けた状態で上部が凹部24の天井部に当接し、下部が凸部16に当接して、胴12及びガラス縁14にそれぞれ係合するようになっている。
【0032】
具体的には、止め部材18は、例えば金属製のワイヤー線(ピアノ線)を、ガラス縁14の足部14Bの外形に沿うように、例えば略C字状に折り曲げて形成されている。胴12及びガラス縁14の摩耗を抑制するために、止め部材18の材質は、胴12及びガラス縁14のうち止め部材18に接触する部分の材料よりも柔らかいことが望ましい。止め部材18の幅方向中央部には、後述する差込み部18Cから遠のく方向(胴12の凹部24の深さ方向)に部分的に張り出す張出し部18Aが形成されている。図1に示されるように、張出し部18Aは、ガラス縁14の凸部16及び胴12の凹部24に沿う形状とされている。また、張出し部18Aの範囲は、ガラス縁14の凸部16の範囲よりも広く(長く)設定されている。
【0033】
止め部材18の両端には、ワイヤー線の両端を幅方向内側に折り曲げた差込み部18Cが形成されている。一方、ガラス縁14における足部14Bの側面には、取付け穴14Cが例えば2箇所ずつ形成されている。止め部材18の差込み部18Cを取付け穴14Cに差し込むことにより、止め部材18がガラス縁14に取り付けられている。止め部材18は、差込み部18Cを中心として回動自在とされている。この止め部材18は、ガラス縁14の径方向の両側に一対設けられている。これに対応して、ガラス縁14の凸部16及び胴12の凹部24も、それぞれ一対設けられている。
【0034】
また、ガラス縁14の時計幅方向両側には、支持部50が設けられている。この支持部50は、ガラス縁14を胴12に取り付けておらずかつガラス縁14を水平状態にしたときに止め部材18が凸部16の下側の所定位置に留まるように、止め部材18の下方への回動範囲を制限する部位である。図4に示されるように、支持部50は、足部14Bから外側へ張り出すように該足部14Bに一体的に形成されている。支持部50は、ガラス縁14を胴12に取り付けておらずかつガラス縁14を水平状態にしたときに、止め部材18が下方へ若干回動した位置で止め部材18に当接するように、少なくとも止め部材18の差込み部18Cの下側(図4では上側)において張り出している。
【0035】
なお、図5に示される変形例1のように、止め部材18に、弾性変形の際の伸び代となる伸長予定部18Bが設けられていてもよい。この伸長予定部18Bは、止め部材18の一部を波形に屈曲させた部位であり、1つの止め部材18につき例えば一対又は複数対設けられている。
【0036】
また、図9(A)に示される変形例2のように、止め部材18及び取付け穴14Cを構成してもよい。この支持部60では、止め部材18の差込み部18Cが断面非円形、例えば断面長方形とされ、取付け穴14Cが断面非円形、例えば長円形とされている。取付け穴14Cの幅は、差込み部18Cの幅よりも若干大きく設定されている。図9(B)に示されるように、この変形例では、止め部材18がある程度回動したときに、差込み部18Cが取付け穴14Cに干渉する。このような構成でも、止め部材18の回動範囲を制限できる。つまり、止め部材18の回動範囲を制限するための支持部を、このような構成により実現してもよい。更に、支持部は、止め部材18の回動範囲を制限できるものであれば、他の構成であってもよい。
【0037】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図6から図8において、本実施形態に係る時計10では、ガラス縁14に止め部材18が差込み部18Cを中心として回動自在に取り付けられている。この止め部材18は、差込み部18Cをガラス縁14の取付け穴14Cに差し込むだけで、該ガラス縁14に容易に取り付けることができる。
【0038】
文字板34及び針35が取り付けられたムーブメント26を胴12に収納し、ガラス縁14を胴12に取り付ける際には、図6図7(A)に示されるように、ガラス縁14の足部14Bを胴12に挿入する。このとき、足部14Bに設けられた凸部16は、胴12の内周部22と干渉し難いので、ガラス縁14と胴12との接触による摩耗が生じ難い。またこのとき、ガラス縁14に取り付けられた止め部材18が、文字板収納部44の底部44B、又は凹部24の底部24Bの上を滑りながら、胴12の凹部24に入り込み始める。具体的には、止め部材18の張出し部18Aが凹部24に入り込み始める。
【0039】
図7図8に示されるように、ガラス縁14の足部14Bを胴12に押し込んで行くと、止め部材18の上側にあったガラス縁の凸部16が、止め部材18の張出し部18Aが一旦凹部24に深く入り込むように該止め部材18を弾性変形させながら(図7(B))、止め部材18の下側に入り込む(図8)。このとき、相対的には、止め部材18が弾性変形しながら、その張出し部18Aがガラス縁の凸部16を乗り越えて、該凸部16の下側から上側に回動する。
【0040】
止め部材18は、C字形の曲げ形状を有しているので、凸部16を乗り越える際に一旦弾性的に伸長し、乗り越えた後に自身の弾性力により元の形状に戻ろうとする。このとき、止め部材18における張出し部18Aの上部は凹部24の天井部24Aに当接し、止め部材18の下部は凸部16に当接し、止め部材18が胴12及びガラス縁14にそれぞれ係合した状態となる。これにより、ガラス縁14が胴12に取り付けられる。止め部材18の弾性変形を利用して、張出し部18Aが凸部16を乗り越えるので、摩耗が生じ難い。また、ガラス縁14の凸部16が断面テーパ状に形成されているので、止め部材18の張出し部18Aが凸部16を乗り越えて自身の弾性力により元の形状に戻ろうとするときに、凸部16に当接し易い。
【0041】
凸部16の上側の面の傾斜角度は、凹部24の天井部24Aの傾斜角度が異なっており、これによって、胴12の径方向内側に向かって凸部16と凹部24の天井部24Aとの離間距離が狭まっている。したがって、止め部材18の張出し部18Aが凸部16を乗り越えて自身の弾性力により元の形状に戻ろうとするときに、張出し部18Aは、凸部16だけでなく凹部24の天井部24Aにも当接する。これにより、止め部材18は、自然状態には復元せず、若干弾性変形した状態で拘束される。これにより、異音の発生が抑制される。また、止め部材18の弾性力により張出し部18Aが凸部16の上側に当接することで、凸部16に対し下側へ力を作用させることができる。これにより、ガラス縁14を胴12の下側に引き込むことができる。
【0042】
本実施形態では、止め部材18がガラス縁14の径方向の両側に一対設けられているので、ガラス縁14を胴12に取り付ける際に、ガラス縁14の足部14Bを胴12に挿入して押し込んで行くことにより、ガラス縁14の径方向の両側において、止め部材18が胴12及びガラス縁14にそれぞれ係合した状態となる。したがって、胴12に対するガラス縁14の取付け作業が容易である。
【0043】
一方、ガラス縁14を胴12から取り外す際には、ガラス縁14の足部14Bに設けられた凸部16が、止め部材18が一旦凹部24に深く入り込むように該止め部材18を弾性変形させながら、止め部材18の下側から上側に移動する。このとき、相対的には、止め部材18が、ガラス縁14の凸部16を乗り越えて、該凸部16の上側から下側に回動する。これにより、止め部材18と、胴12及びガラス縁14との係合が解除されるので、ガラス縁14を胴12から取り外すことができる。
【0044】
胴12に対するガラス縁14の着脱により止め部材18に摩耗が生じたとしても、該止め部材18のみを交換すればよい。止め部材18はワイヤー線を折り曲げた安価な部品であるので、交換費用を抑制できる。
【0045】
また、図2に示されるように、ガラス縁14を胴12に取り付けておらずかつガラス縁14を水平状態にしたときに、支持部50により止め部材18の下方への回動範囲が制限され、止め部材18が凸部16の下側の所定位置に留まる。これにより、ガラス縁14からの止め部材18の垂れ下がりが抑制される。このため、ガラス縁14を胴12に取り付ける際に、ムーブメント26に取り付けられた針や文字板に対する止め部材18の干渉を抑制できる。
【0046】
更に、図7図8に示されるように、胴12における凹部24の天井部24Aが傾斜しているので、止め部材18が凹部24に出入りし易い。また、ガラス縁14の凸部16が断面テーパ状に形成されているので、止め部材18が凸部16を乗り越え易い。このため、胴12に対するガラス縁14の着脱が容易である。
【0047】
図5に示される変形例1に係る止め部材18では、弾性変形の際の伸び代となる伸長予定部18Bが設けられているので、該伸長予定部18Bがない場合と比較して、止め部材18がガラス縁14の凸部16を乗り越える際に凸部16の突出方向に伸長し易い。
【0048】
このように、本実施形態によれば、胴12に対するガラス縁14の開閉を無理なく繰り返すことを可能にして、時計のメンテナンス性を向上させることができる。
【0049】
なお、ガラス縁を胴に小ねじを用いて固定する場合は、ガラス縁の足部に小ねじを締結するための雌ねじを切ることからガラス縁の幅が必要となり、視認性に影響する文字板が大きく見せられない。同じく胴にもねじを通す貫通孔が必要となり、ねじを隠すためにはリストバンドの上面にねじを配置する等の配慮が必要となる。
【0050】
その点、本実施形態では、小ねじが不要であるので、小ねじを用いる場合と比較して、ガラス縁14の縁幅を比較的細くできる。このため、文字板34を大きく見せて視認性を向上させることができる。また、止め部材18は、ガラス縁14と胴12の間に、スペース的に無駄なく収納された状態となるので、時計10の内部に余分なスペースが必要ない。したがって、リストバンド32の配置スペースをガラス縁14の下に確保することも可能となる。
【0051】
[第2実施形態]
図10図11において、本実施形態に係る時計20では、止め部材18がガラス縁14の径方向の片側に設けられており、例えば時計20の上側(文字板34の12時側)又は下側(文字板34の6時側)に設けられている。
【0052】
ガラス縁14のうち止め部材18が設けられていない側、具体的には、ガラス縁14の径方向における凸部16の反対側には、胴12の凹部25に対して直接係合する係合部52が設けられている。係合部52は、足部14Bに設けられている。また、係合部52は、足部14Bの外面が内周部22に当接した状態で凹部25に入り込む形状の凸部である。止め部材18と係合する凸部16は、胴12の内周部22に向けて凹部24に入り込まない程度に突出するのに対し、係合部52は、凹部25に入り込む位置まで突出している。つまり、係合部52は、凸部16よりも突出している。
【0053】
図10に示されるように、本実施形態に係る時計20では、ガラス縁14のうち止め部材18が設けられていない側の係合部を胴12に直接係合させてから、止め部材18が設けられている側を胴12に押し込み、止め部材18を胴12及びガラス縁14にそれぞれ係合させる(図11)。止め部材18がガラス縁14の径方向の片側に設けられているので、止め部材18が径方向の両側に設けられている場合と比較して、部品点数を少なくすることができる。
【0054】
ガラス縁14の着脱時における止め部材18と胴12及びガラス縁14との係合とその解除については、第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様の部分については、図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0055】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0056】
凹部24が胴12の幅方向に延びる凹溝であるものとして説明したが、凹溝は断続的に複数箇所に設けられていてもよい。また、凹部24は凹溝に限られず、1箇所以上の局所的な凹部であってもよい。凹溝と局所的な凹部を組み合わせてもよい。
【0057】
凸部16が、その上面と下面が傾斜した断面テーパ状であるものとしたが、上面と下面は平面状に限られず、湾曲面で構成されていてもよい。また、凸部16の上面と下面が、平面と湾曲面の組合せで構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 時計
12 胴
14 ガラス縁(風防縁)
14B 足部(胴の内側に挿入される部位)
16 凸部
18 止め部材
18B 伸長予定部
20 時計
22 内周部
24 凹部
24A 天井部
26 ムーブメント
42 ガラス(風防)
50 支持部
52 係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11