(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】規則的なメゾ気孔を有するゼオライト粒子に金属が含浸された炭化水素吸着剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/18 20060101AFI20230126BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20230126BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230126BHJP
B01D 53/02 20060101ALI20230126BHJP
B01D 53/72 20060101ALI20230126BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20230126BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20230126BHJP
C01B 39/36 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
B01J20/18 D
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01D53/02
B01D53/72
B01D53/81
B01D53/92 280
B01D53/92 350
C01B39/36
(21)【出願番号】P 2020535532
(86)(22)【出願日】2018-12-24
(86)【国際出願番号】 KR2018016590
(87)【国際公開番号】W WO2019132482
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】10-2017-0183959
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512297583
【氏名又は名称】ヒョンダイ モーター カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】510273880
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】512297594
【氏名又は名称】キア コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジョン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】イ,グァン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ウン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム,チャン ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン,チョン ヨン
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-240273(JP,A)
【文献】特開昭59-196745(JP,A)
【文献】特表2013-506554(JP,A)
【文献】特開2008-073625(JP,A)
【文献】特開昭49-091092(JP,A)
【文献】特開2015-063449(JP,A)
【文献】Applied Catalysis B: Environmental,Vol.154-155,2014年,p.161-170
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
B01D 53/02-53/12
C01B 33/20-39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2~10nmの大きさのメゾ気孔が規則的に形成されたゼオライト粒子に
Cuの金属陽イオンおよび
Cuの金属酸化物が
担持され、
前記金属陽イオンおよび前記金属酸化物は、炭化水素の吸着および酸化にそれぞれ作用し、メゾ気孔度(mesoporosity)は、メゾ気孔の体積が0.01cm
3
/g以上であり、ゼオライトのSi/Alモル比が10~200であり、前記ゼオライトは、SPP(Self-pillared pentasil)ゼオライトであることを特徴とする炭化水素吸着剤。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化水素吸着剤の製造法であって、
前記ゼオライト粒子を金属含有溶液に添加して金属陽イオンおよび金属酸化物を
前記ゼオライト粒子に含浸させることを特徴とする炭化水素吸着剤の製造方法。
【請求項3】
前記ゼオライト粒子の合成前駆体溶液は、1 SiO
2:x Al
2O
3:0.3 TBPOH:y H
2O:2x NaOH:z EtOH(x=0.001~0.1、y=0.1~9、z=0~3.9)のモル比で構成されたことを特徴とする
請求項2に記載の炭化水素吸着剤の製造方法。
【請求項4】
前記ゼオライト粒子の合成前駆体溶液でエタノールと水の含有量によりメゾ気孔度が変わることを特徴とする
請求項3に記載の炭化水素吸着剤の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の炭化水素吸着剤を利用したことを特徴とする炭化水素の吸着方法。
【請求項6】
前記炭化水素は、プロペン、トルエン、エタン、エテン、プロパン、ベンゼン、キシレン、エチレン、2-メチルブタン、ホルムアルデヒド、スチレンおよびアセトアルデヒドから構成された群より選択されることを特徴とする
請求項5に記載の炭化水素の吸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互引用]
本出願は、2017年12月29日付韓国特許出願第10-2017-0183959号に基づいた優先権を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を含む。
【0002】
本発明は、規則的なメゾ気孔を有するゼオライト粒子に金属が含浸された炭化水素吸着剤およびその製造方法に関し、より詳しくは、ゼオライト粒子の合成前駆体溶液での水とエタノールの含有量およびSi/Al比率を調節することによってメゾ気孔度を調節することができる炭化水素吸着剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
大気汚染に関する関心が高まることに伴い、米国、欧州などの国でCO、NOx、HC(hydrocarbon)、PM(particulate matter)などの自動車排気ガス規制が強化されている。このうちHCは、三元触媒(three-way catalysts;TWCs)により大部分酸化されるが、この三元触媒は約200~300℃温度以上で活性を示し、三元触媒が活性を示さない低温始動区間でHC排出量全体の50~80%に該当するHCが排出される。HC排出を低減させるために炭化水素吸着剤(HC trap)に対する研究が行われている。炭化水素吸着剤とは、低温始動区間で排出されるHCを吸着して三元触媒が活性を示す200~300℃に到達する時に脱着させる装置である。
【0004】
炭化水素吸着剤として高い物理的、化学的安定性を有するゼオライトが多く研究されている。代表的なHC排出物質であるプロペン(propene)、トルエン(toluene)の吸/脱着測定を通じて炭化水素吸着剤の性能をテストする。ゼオライト構造およびSi/Al比、金属含浸有無による炭化水素吸着剤の性能に関する研究が行われている。HCは、ゼオライトのAl含有量(Si/Al比率)が多くなるほど高い吸着量を示す。また多様なゼオライト構造中のZSM-5とベータゼオライトが最も高い性能を示す。しかし、多量の水分(~10vol%)が存在する場合、炭化水素吸着剤の性能が低下する。
【0005】
最近、イオン交換過程を通じて銅を含浸したZSM-5が300℃以上の高温までプロペンおよびトルエンを吸着して炭化水素吸着剤の性能を高めた研究が報告されている(M.S. Reiter et al., Transport. Res. Part D-Transport. Environ. 43, 123-132, 2016)。より多量の銅を用いてイオン交換を行う場合、一部の残った銅が酸化銅(CuO)形態でZSM-5に存在し、このCuOがプロペンとトルエンを酸化させることが知られている(K. Ravindra et al., Atmos. Environ. 42, 2895-2921, 2008)。特に脱アルミニウム(dealumination)および脱ケイ酸(desilication)を通じてメゾ気孔を導入したZSM-5粒子に銅イオン交換を行ったCu-ZSM-5粒子が高いHC trap性能を有することが報告されている。このCu-ZSM-5の場合、高い温度までプロペンとトルエンを吸着し、その後に脱着するプロペンとトルエンを酸化して排出されるプロペンとトルエンが殆どないことが報告されている(G.C. Koltsakis et al., Prog. Energy Combust. Sci. 23, 1-39, 1997)。しかしながら、前記脱アルミニウム(dealumination)および脱ケイ酸(desilication)を通じてメゾ気孔を導入したZSM-5粒子は、不規則なメゾ気孔を有し、Si/Al比率およびメゾ気孔度を調節することができないという短所がある。
【0006】
そこで、本発明者らは、規則的なメゾ気孔を有し、Si/Al比率およびメゾ気孔度を調節することができる炭化水素吸着剤を開発するために努力した結果、エタノールと水の含有量を変化させることによってメゾ気孔度を調節したゼオライト粒子に湿式含浸法を利用して金属陽イオンおよび金属酸化物を含浸させた炭化水素吸着剤を作製すれば、低温始動区間で炭化水素の吸着力が増加し、前記炭化水素が脱着する時に急速に酸化されることを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、規則的なメゾ気孔を有し、Si/Al比率およびメゾ気孔度を調節することができる炭化水素吸着剤を提供することにある。本発明の他の目的は、炭化水素吸着剤の製造方法を提供することにある。本発明のまた他の目的は、前記炭化水素吸着剤を利用することを特徴とする炭化水素の吸着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による炭化水素吸着剤は、2~10nmの大きさのメゾ気孔が規則的に形成されたゼオライト粒子に金属陽イオンおよび金属酸化物が含浸されたことを特徴とする。
【0009】
本発明による炭化水素吸着剤の製造方法は、2~10nmの大きさのメゾ気孔が規則的に形成されたゼオライト粒子を金属含有溶液に添加して金属陽イオンおよび金属酸化物をゼオライト粒子に含浸させることを特徴とする。
【0010】
本発明による炭化水素の吸着方法は、前記炭化水素吸着剤を利用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による炭化水素吸着剤は、規則的なメゾ気孔を有し、Si/Al比率およびメゾ気孔度を調節することができるため、低温始動区間で炭化水素の吸着力が増加し、前記炭化水素が脱着する時に急速に酸化させるため、自動車および産業体で発生する排気ガスの排出を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明によるCu含浸されたSPPゼオライトの概略図である。
【
図2】本発明のSPP粒子の合成前駆体溶液でエタノールおよび脱イオン水の量によるSPP粒子の走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
【
図3】本発明のSPP粒子の合成前駆体溶液でエタノールおよび脱イオン水の量によるSPP粒子の透過電子顕微鏡(TEM)イメージである。
【
図4】本発明のSPP粒子の合成前駆体溶液でエタノールおよび脱イオン水の量によるSPP粒子のX線回折(X-ray diffraction(XRD))パターンを観察したものである。
【
図5】本発明のNa-型SPP粒子のN
2物理吸着等温線および気孔サイズ分布を観察したものである。
【
図6】本発明のH-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子の走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
【
図7】本発明のH-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子の低倍率透過電子顕微鏡(TEM)イメージである(白色矢印は5nmの大きさのCuOを示し、黒色矢印は20nmの大きさのCuOを示す)。
【
図8】本発明のCu含浸されたSPP粒子の高角度環状暗視野走査透過電子顕微鏡(high-angle annular dark-field scanning transmission electron microscopy(HAADF-STEM))イメージおよびCuとAlの元素マッピング(mapping)した結果である。
【
図9】本発明のCu含浸されたSPP粒子の走査電子顕微鏡/エネルギー分散X線分光器(scanning electron microscopy/energy dispersive X-ray spectroscopy、SEM/EDS)マッピング結果である(緑色点はSiを示し、赤色点はCuを示す)。
【
図10】本発明のH-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子のX線回折(X-ray diffraction、XRD)パターンを観察したものである。
【
図11】本発明のH-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子のN
2物理吸着等温線および気孔サイズ分布を観察したものである。
【
図12】本発明のH-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子の低温始動試験(cold-start tests、CST)を行った結果である。
【
図13】炭化水素吸着剤(HC trap)テストの間、本発明のH-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子から生成された副産物を質量分析器(mass spectrometer)で測定した質量スペクトル(mass spectrum(MS))である。
【
図14】本発明のH-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子のコークス形成を熱重量分析器(thermogravimetric analyzer、TGA)で測定した結果である。
【
図15】本発明の連続試験および熱水処理したCu含浸されたSPP粒子の低温始動試験(cold-start tests(CST))を行った結果である。
【
図16】連続的な低温始動試験でCu含浸されたSPP粒子から生成された副産物を質量分析器(mass spectrometer)で測定した質量スペクトル(mass spectrum(MS))である。
【
図17】低温始動試験後、Cu含浸されたSPP粒子のコークス形成を熱重量分析器で測定した結果である。
【
図18】熱水処理したCu含浸されたSPP粒子の透過電子顕微鏡(TEM)イメージである。
【
図19】熱水処理したCu含浸されたSPP粒子およびα-クリストバライトのX線回折(XRD)パターンを観察したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では規則的なメゾ気孔を有し、Si/Al比率およびメゾ気孔度を調節することができる炭化水素吸着剤の製造方法を利用して炭化水素吸着剤を製造後、吸着剤に金属陽イオンおよび金属酸化物含浸を行った結果、10vol%の水分存在下で、低温始動区間で炭化水素の吸着力が増加し、前記炭化水素が脱着する時に急速に酸化させることができることを確認した。金属陽イオンは炭化水素の吸着向上に、そして金属酸化物は炭化水素の酸化にそれぞれ役割を果たすことを確認した。したがって、本発明は一観点で、2~10nmの大きさのメゾ気孔が規則的に形成されたゼオライト粒子に金属陽イオンおよび金属酸化物が含浸されたことを特徴とする炭化水素吸着剤に関する。
【0014】
本発明において、前記金属陽イオンは、炭化水素の吸着向上に、そして金属酸化物は炭化水素の酸化にそれぞれ役割を果たして吸着および酸化性能が改善される。前記メゾ気孔度(mesoporosity)は、メゾ気孔の体積が0.01cm3/g以上であり、ゼオライトのSi/Alモル比が10~200であり、金属陽イオンは、ゼオライトに含浸可能な最大重量に対して3~85%の量で存在し、前記金属酸化物は、ゼオライトに含浸可能な最大重量に対して15~97%の量で存在することを特徴とする。好ましくはメゾ気孔の体積が0.1cm3/g以上であり、ゼオライトのSi/Alモル比が20~80であり、金属陽イオンは、ゼオライトに含浸可能な最大重量に対して25~40%の量で存在し、前記金属酸化物は、ゼオライトに含浸可能な最大重量に対して65~75%の量で存在することを特徴とする。
【0015】
本発明において、前記金属陽イオンは、Al、Cr、Fe、Co、Ti、W、Si、Ir、Pt、Rd、Pd、Ru、Th、Ni、Cu、V、Au、Re、ZrおよびMoから構成された群より選択されることを特徴とする。好ましくは、Fe(I)、Fe(II)、Fe(III)、Co(I)、Co(II)、Ni(I)、Ni(II)、Cu(I)またはCu(II)の陽イオンであることを特徴とする。前記金属酸化物は、Al、Cr、Fe、Co、Ti、W、Si、Ir、Pt、Rd、Pd、Ru、Th、Ni、Cu、V、Au、Re、ZrおよびMoから構成された群より選択された金属の酸化物であることを特徴とする。好ましくはFeO、Fe3O4、Fe2O3、Co3O4、CoO、NiO、Cu2O、Cu2O3またはCuOであることを特徴とする。前記ゼオライトは、SPP(Self-pillared pentasil)ゼオライトであることを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施例において、エタノールおよび水のモル組成によるSPP粒子の表面形態の変化を観察した結果、エタノールと水の除去によりSPP構造が変わることを確認した。本発明は他の観点で、2~10nmの大きさのメゾ気孔が規則的に形成されたゼオライト粒子を金属含有溶液に添加して金属陽イオンおよび金属酸化物をゼオライト粒子に含浸させることを特徴とする炭化水素吸着剤の製造方法に関する。
【0017】
本発明において、ゼオライト粒子の合成前駆体溶液は、1 SiO2:x Al2O3:0.3 TBPOH:y H2O:2x NaOH:z EtOH(x=0.001~0.1、y=0.1~9、z=0~3.9)のモル比で構成されたことを特徴とする。好ましくはx=0.01~0.02、y=4~6、z=0~1のモル比で構成されたことを特徴とする。本発明において、前記金属陽イオンは、Al、Cr、Fe、Co、Ti、W、Si、Ir、Pt、Rd、Pd、Ru、Th、Ni、Cu、V、Au、Re、ZrおよびMoから構成された群より選択されることを特徴とする。好ましくはFe(I)、Fe(II)、Fe(III)、Co(I)、Co(II)、Ni(I)、Ni(II)、Cu(I)またはCu(II)の陽イオンであることを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記金属酸化物は、Al、Cr、Fe、Co、Ti、W、Si、Ir、Pt、Rd、Pd、Ru、Th、Ni、Cu、V、Au、Re、ZrおよびMoから構成された群より選択された金属の酸化物であることを特徴とする。好ましくはFeO、Fe3O4、Fe2O3、Co3O4、CoO、NiO、Cu2O、Cu2O3またはCuOであることを特徴とする。前記ゼオライト粒子の合成前駆体溶液でエタノールと水の含有量によりメゾ気孔度が変わることを特徴とする。前記ゼオライト粒子の合成前駆体溶液でSi:Alのモル比が5~500であることを特徴とする。好ましくは20~50であることを特徴とする。
【0019】
本発明はまた他の観点で、前記炭化水素吸着剤を利用したことを特徴とする炭化水素の吸着方法に関する。前記炭化水素は、プロペン、トルエン、エタン、エテン、プロパン、ベンゼン、キシレン、エチレン、2-メチルブタン、ホルムアルデヒド、スチレン、アセトアルデヒドから構成された群より選択されることを特徴とする。ただし、これに制限されない。本発明で炭化水素は、石油化学、精油、塗料、塗装工場の製造と貯蔵過程、自動車排気ガス、ペイントや接着剤など建築材料、ガソリンスタンドの貯蔵タンクなどで発生する揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)を全て含むことができる。
【0020】
本発明の他の実施例において、銅を含浸していないSPPゼオライトの場合、プロペンを吸着することができず、トルエンの場合、約140℃で6分まで吸着後、吸着した量の大部分を脱着することを観察した。5重量%銅を担持したSPPゼオライトの場合、プロペンの吸着量が急激に増加して、約90℃で5分まで吸着後に脱着して、一部分を排出し、トルエンの場合、若干増加して190℃で7分まで吸着した後に脱着して一部分を排出することを観察した。この時、排出されなかったプロペンおよびトルエンの場合、CuOにより酸化されて二酸化炭素と一酸化炭素に変換されることを観察した。
【0021】
特にプロペンの場合、吸着した量がCu
2+イオンの量に比例して増加することを確認した。Cu/M_30で最も高いプロペン吸着量を示し、Cu/L_100で最も低い吸着量を示した。SPPゼオライトの構造によりプロペンおよびトルエンを吸着するCu
2+イオンの大部分が外部表面に存在し、酸化させるCuOも表面に存在することを確認した。したがって、Cu
2+イオンが先にプロペンおよびトルエンを吸着し、脱着する時、周辺のCuOにより脱着されたプロペンおよびトルエンの一部が簡単に酸化されることが分かる(
図1)。つまり、SPPゼオライトの格子構造により炭化水素吸着剤の性能が向上することを確認した。
【0022】
本発明において、ゼオライトのプロペンおよびトルエン吸着力は表面積および酸の増加と共に増加する。プロペンと蒸気が同時にH-型ZSM-5ゼオライトに吸着される時、前記プロペンと蒸気は吸着部位に対して競争する。プロペンはCu-ZSM-5に化学的に強く吸着されてH-ZSM-5に比べて化学吸着が大幅に増加する(M. Navlani-Garcia et al., Environ. Sci. Technol. 47, 5851-5857, 2013;H.W. Jen et al., Catal. Lett. 26, 217-225, 1994)。蒸気の競争吸着を考慮したCu-ZSM-5でプロペンおよびトルエンの吸着に関する分子シミュレーション研究は、プロペンが主にZSM-5内部に存在するCu2+イオンに位置することを明らかにした(B. Puertolas et al., Chem. Commun. 48, 6571-6573, 2012)。特に、ZSM-5骨格と結合されたCu2+イオン中で、ブレンステッド酸(B酸)でプロトンを代替するCu2+イオンがプロペンの吸着親和力を増加させるのに決定的な役割を果たす(D.J. Parrillo et al., J. Catal. 142, 708-718, 1993)。
【0023】
本発明のまた他の実施例において、Cu含浸されたSPPゼオライト(Cu-impregnated SPP)の熱水安定性テストを行った結果、熱水処理されたCu含浸されたSPPは、大部分の構造が他の構造に変換されたことを確認した。したがって、プロペンおよびトルエンの吸着が全く起こらないことが分かる。しかし、残っているCuOにより既存のCu含浸されたSPP粒子よりも高い高温で(450-530℃以上)プロペンおよびトルエンが完全酸化されることを観察した。Cu/H_100の場合、一部のSPP構造が残っていることを確認した。構造変換がNaにより活性化されるため、残っているNaの量がH_100で最も少ないことが分かる。これはメゾ気孔度が最も高いH_100がNa+からH+に交換する時、多くのメゾ気孔によりイオン交換がより簡単に起こるためである。
【0024】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。実施例は、本発明を例示するためのもので、これにより本発明が制限されるものではないことは自明であろう。
【0025】
実施例1:SPP粒子の合成
SPP粒子を合成するために、SPP粒子の合成前駆体溶液を製造した。前記SPP粒子の合成前駆体溶液を製造するために、アルミニウムイソプロポキシド(aluminum isopropoxide)(98%、Alfa Aesar)をテトラエチルオルトシリケート(tetraethylorthosilicate)(TEOS、98%、Sigma-Aldrich)に添加し、攪拌しながらテトラブチルホスホニウムヒドロキシド(tetrabutylphosphonium hydroxide)(TBPOH、40%、Alfa Aesar)を前記混合物に一滴ずつ添加した。便宜上、前記前駆体溶液を化合物Aという。脱イオン水に水酸化ナトリウム(NaOH、98%、Sigma-Aldrich)を添加し、前記NaOH溶液を前記製造した化合物Aに添加して最終の合成前駆体溶液を製造した。その後、最終の合成前駆体溶液をポリプロピレン瓶に密封して、少なくとも一晩中追加的に加水分解させた。Si/Al比率が異なるサンプルを得るために、前記合成前駆体溶液の最終組成を1 SiO2:x Al2O3:0.3 TBPOH:10 H2O:2x NaOH:4 EtOH(ここでx=0.005、0.01または0.0167)とした。
【0026】
実施例2:SPP粒子の合成でエタノールおよび水分含有量によるメゾ気孔度分析
SPP粒子の合成前駆体溶液でエタノールと脱イオン水の量によるメゾ気孔度を分析するために、実施例1の加水分解段階後の合成前駆体溶液をキャップフリー(cap-free)の45mLテフロン(登録商標)ライナ(Teflon-liner)に移して室温で攪拌しながら一定の含有量のエタノールと水を蒸発させた。前記で言及されたモル組成と共にエタノール除去後のモル組成は、1 SiO2:x Al2O3:0.3 TBPOH:10 H2O:2x NaOH:0 EtOHであり、エタノールの量および水の量の半分を除去した後のモル組成は、1 SiO2:x Al2O3:0.3 TBPOH:5 H2O:2x NaOH:0 EtOHである。生成された固体生成物は遠心分離、デキャンティングおよび脱イオン水洗浄を5回繰り返して回収した。その後、70℃で一晩中乾燥させ、200mL/分の気流下で1℃/分の上昇速度で12時間にかけて550℃条件でか焼させた。
【0027】
(1)蒸発なし、(2)エタノール蒸発および(3)追加の水蒸発後に得たサンプルのラベルは、それぞれα_E1_W1.0、α_E0_W1.0およびα_E0_W0.5で表示した。αはSi/Al比率を示し、EとWの側の数字は既存の前駆体溶液に対するエタノールと水の比率を示したものである。合成前駆体溶液のモル組成が粒子合成に及ぼす影響を観察するために、前記製造方法で得た100_E1_W1.0、100_E0_W1.0、100_E0_W0.5、50_E1_W1.0、50_E0_W1.0、50_E0_W0.5、30_E1_W1.0、30_E0_W1.0および30_E0_W0.5の9種類のSPP粒子を、Hitachi S-4800電界放出走査顕微鏡(FE-SEM)を利用して走査電子顕微鏡(SEM)イメージを観察した。
【0028】
その結果、100_E1_W1.0粒子は、400-600nmの大きさを有し、柔らかくなく、多少凸凹な表面を示す(
図2(a1))。エタノール除去後に得た100_E0_W1.0の各粒子は、主により薄いか、または鋭いナノシートからなっており、粒子サイズは減少した(
図2(a2))。水を追加的に除去した後に合成された100_E0_W0.5サンプルの形態は、100_E0_W1.0と類似に鋭いナノシートからなっており、大きさはより減少した(
図2(a3))。したがって、合成前駆体溶液のエタノール(TEOSの加水分解により生成された)と水の量はSPP粒子合成に影響を与えることが分かる。
【0029】
実施例3:SPP粒子の合成でSi/Al比率の影響
エタノールと水分含有量の変化と共に合成前駆体溶液のSi/Al比によるSPP粒子の変化を確認するために、Tecnai G2 F30ST電界放出透過電子顕微鏡(FE-TEM)を利用して透過電子顕微鏡(TEM)イメージを観察した。その結果、100_E1_W1.0は、主に厚いナノシートから構成されているが(
図3(a1))、エタノールの蒸発後の100_E0_W1.0は、厚さが大幅に減少した鋭いMFIナノシートまたはラメラを示す((
図3(a2))。
図2(a2)および(a3)に示されたように、水を追加的に除去すれば、粒子サイズとナノシートサイズの厚さが全て減少することを確認した(
図3(a2)および(a3))。
【0030】
Si/Al比率が50と30で合成されたサンプルの場合、30_E1_W1.0を除いた全ての粒子がナノシートから構成されることを確認した(
図3(c1))。50_Ex_Wyサンプルと100_Ex_Wyサンプルは、全てナノシートの形態がエタノールの除去およびエタノール/水の除去により単調に増加した(
図3(b2)および(b3))。Si/Al比率を30に下げると、より厚いナノシートが形成された(
図3(c2)および(c3))。30_E1_W1.0は、柔らかく、小さい球形粒子から構成された(
図3(c1))。
したがって、30_E1_W1.0は、MFIゼオライト段階と異なる段階の形成があることが分かる。また、SEMイメージおよびTEMイメージを組み合わせて分析した結果、TEOSの加水分解により生成されたエタノールがない場合にself-pillaringが示されることを確認した。
【0031】
実施例4:SPP粒子の結晶性確認
SPP粒子の結晶性を確認するために、実施例1で得たSPP粒子に対してX線回折(X-ray diffraction(XRD))分析を行った。XRD分析は、RINT2000垂直ゴニオメーター(goniometer)が装着されたRigakuモデルD/MAX-2500V/PCを利用して、Cu Kα線(40kV、100mA、λ=1.54A)に基づいてか焼されたゼオライトサンプルのX線回折(XRD)パターンを得た後、Mercuryソフトウェア(バージョン3.8、Cambridge Crystallographic Data Centerウェブサイトで使用可能)を利用して当該結晶学情報ファイル(CIF)で分析した。三つのCIFファイルは、全てMaterial Studio 7.0(Accelrys)で提供した。
【0032】
その結果、全てのサンプルのXRDパターンは、非結晶質である30_E1_W1.0を除いては、MFI構造に該当する代表ピークが示された。しかし、SPP粒子は結晶性が確認されたにもかかわらず、いくつかのXRDピークが示されなかった。特に、(hkl)平面に該当するXRDピークは弱くなったが、(h0l)または(0k0)平面に該当するピークは示された(
図4)。これは、SPPでナノシートがac-平面に多いか、または測定する間にサンプルホルダーがac-平面に多く整列したためであり得る。また、(h0l)または(0k0)平面に該当する特定のピークから構成されたXRDパターンは、b軸に沿って薄い層のMFIナノシートが形成されたことを意味する(H. Kim et al., Catal. Tod. In press, 2017)。
【0033】
したがって、SPP粒子形成でエタノールがb軸の結晶成長(crystal growth)に関与することが分かり、エタノールを除去すれば、ナノシートの厚さが減り、薄いナノシートを有するSPP粒子が形成されることを確認した。
【0034】
実施例5:SPP粒子の気孔構造分析
SPP粒子の気孔構造を分析するために、Micromeritics ASAP2020システムを利用して77KでN
2物理吸着等温線を測定した。気孔サイズおよび体積は製造者が提供したBJH(Barrett-Joyner-Halenda)方法に基づいて計算した。その結果、0.4-0.8の相対圧力範囲でSi/Al比率と関係なしに、合成前駆体溶液でエタノールの除去と追加的な水の除去はメゾ気孔度を増加させることを確認した(
図5(a1)、(a2)および(a3))。また、BJH気孔サイズ分布でもSi/Al比率と関係なしに、合成前駆体溶液でエタノールの除去と追加的な水の除去はメゾ気孔領域が増加することを確認した(
図5(b1)、(b2)および(b3))。
【0035】
SPP粒子でself-pillared MFIナノシートまたは薄膜(lamellae)の間に中間気孔が形成される。したがって、生成されたSPP粒子、特に2-10nm範囲のメゾ気孔は板状(plate-like)ナノシートの厚さ減少およびナノシート間の間隔の増加で誘導されたものであることが分かる。また、高いSi/Al比率を有するSPP粒子は、合成前駆体溶液でエタノールおよびエタノール/水含有量を除去した後により強いメゾ気孔性を示すことを確認した(
図5(b2)および(b3))。これは、より低いSi/Al比率(50または30)を有するSPP粒子がより厚いまたは細かく切れたナノシートを有するためである。また、他の尺度で各サンプルの表面積を測定するために、BET(Brunauer-Emmett-Teller)表面積分析および変形されたt-plot方法を利用した。
【0036】
Smeso+extおよびVmicroは、変形されたt-plot方法を用いて測定し、Smicroは、下記式を用いて計算した。
【0037】
[数1]
Smicro=SBET -Smeso+ext
【0038】
また、V2-10は、2-10nm範囲のBJH気孔サイズ分布を利用して計算した。その結果、N2物理吸着等温線から計算された表面積および気孔体積は、エタノールおよびエタノール/水含有量を除去した後、メゾ気孔が増加することを確認した(表1)。
下記表1は、77Kで、N2物理吸着等温線で計算されたか焼されたSPPサンプルの気孔体積を示したものである。(aは変形されたt-plot方法を用いて測定したSmeso+extおよびVmicroを示したものであり、bはBJH気孔サイズ分布データである)。
【0039】
【0040】
実施例6:H-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子の合成
H-型SPP粒子を合成するために、実施例1でか焼された9種類のNa-型SPP粒子のうち、100_E1_W1.0、100_E0_W0.5および30_E0_W0.5を0.01M Na-型SPP粒子(g)/NH4NO3溶液(mL)の固定比率で、1M硝酸アンモニウム(NH4NO3)溶液で6時間にかけて80℃条件下で攪拌してイオン交換されたサンプルを得た。前記で得たサンプルを遠心分離、デキャンティングおよび脱イオン水洗浄を3回繰り返して回収した。回収したサンプルは一晩中70℃で乾燥させ、200mL/分の空気流れ下で10℃/分の上昇速度で、500℃で6時間か焼させた。
【0041】
その結果、得た粒子をL_100、H_100およびM_30で表示した。文字H、MおよびLは、それぞれ生成された粒子で高、中および低メゾ気孔性を意味し、後の数字はSi/Al比率を示す。Cu含浸されたSPP粒子を製造するために、湿式含浸法(wetness impregnation)を利用してCuをH-型SPP粒子に含浸させた。具体的に、硝酸銅三水化物(Cu(NO3)2・3H2O、98%、Sigma-Aldrich)を脱イオン水に溶解して0.04M硝酸銅II(Cu(NO3)2)溶液を製造した。H-型SPP粒子を硝酸銅溶液に添加して最終的に5重量%Cuが含浸されるようにした。その後、混合物を回転式蒸発器に入れて水分を全て除去した後、Cu含浸されたSPPを回収して、100℃で3時間乾燥させ、200mL/分の気流下で1℃/分の上昇速度で、550℃で6時間か焼させた。その結果、得た粒子をCu/L_100、Cu/H_100およびCu/M_30で表示した。ここでCuは、H-型SPP粒子(L_100、H_100およびM_30)に銅が含浸されたことを意味する。
【0042】
実施例7:H-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子の物理的性質
H-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子の形態を観察するために、Hitachi S-4800電界放出走査顕微鏡(FE-SEM)およびTecnai G2 F30ST電界放出透過電子顕微鏡(FE-TEM)を利用して走査電子顕微鏡(SEM)イメージおよび透過電子顕微鏡(TEM)イメージを観察した。その結果、H-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子の形態がNa-型SPP粒子の形態と類似することを確認した(
図6および
図7)。
【0043】
また、Hitachi SU-70電界放出走査電子顕微鏡を利用して得たエネルギー分散型X線分光分析法(energy dispersive X-ray spectroscopy(EDX))データの元素分析およびSEM/EDXマッピングを行った。その結果、H-型およびCu含浸されたSPP粒子のSi/Al比率は、L_100およびCu/L_100を除き、Na-型粒子のSi/Al比率と類似している(表2および表3)。L_100およびCu/L_100の場合、平均値と比較して標準偏差値が高いため、正確なSi/Al比率値を得るには困難がある。H-型粒子のNa/Al比率が0に近い値を有するため、Na+イオンがH+イオンに完全に交換されたことが分かる。Cu重量%と関連して、全てのCu含浸されたSPPは通常値である5重量%より小さい3-4重量%を示す(表2および表3)。
【0044】
したがって、表2および表3のCu wt%値と
図9のSEM/EDXマッピング結果を比較した結果、Cu/L_100とCu/H_100の場合、全てのCu種がSPP内部および表面にあることを確認した(
図9)。反対に、Cu/M_30は、5.6Cu重量%を含み、これはSEM/EDXマッピングから得た値である3.5Cu重量%より高い。SEM/EDXマッピングでCu種は強烈な赤色を示すため、粒子上に均質に分布しないことが分かる(
図9)。下記表2は、H-型およびCu含浸されたSPP粒子のEDXデータから測定した元素分析結果である(
aは各サンプルのEDXデータを示したものであり、
bは
図9のSEM/EDXマッピングから測定した銅含浸されたSPPのCu wt%データである)。
【0045】
【0046】
下記表3は、Na-型SPP粒子のEDXデータから測定した元素分析結果である(aは各サンプルのEDXデータを示したものである)。
【0047】
【0048】
実施例8:H-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子の結晶性確認
H-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子のナノシート構成物を観察するために、TEM分析を行った。その結果、H-型SPP粒子は、ナノシート(L_100およびH_100はナノシートが示され、M_30は断片または細かく切られたナノシートが示されることを確認した(
図7(a1)、(a2)および(a3))。したがって、プロトンにイオン交換した後にもSPP粒子のナノシートが保存されることが分かる。
【0049】
Cu含浸されたSPP粒子は、20nmの大きさの粒子が散発的に観察され(
図7(c1)で、黒色矢印で表示)、5nmの大きさの粒子も多く観察され、よく分布されている(
図7(c1)、(c2)、(c3)および
図8)。61、82および24のSi/Al比率を有するMFIゼオライトでイオン交換することができる最大Cu重量%は、それぞれ0.8、0.6および2.1である。本発明のSPP粒子のCu含浸時、約3~4重量%のCuを用いた。したがって、前記表面に観察された小さい粒子がCuOであることが分かる。元素マッピングを通じて前記粒子のナノシート構成物を観察した結果、Cu原子がSPP粒子に均一かつ連続して分布していることを観察した(
図8)。したがって、Cu原子はSPP表面およびSPP内部と表面で陽イオンの形態で存在することが分かる。H-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子の結晶性を確認するために、XRD分析を行った。
【0050】
その結果、L_100、H_100およびM_30のXRDパターンは、プロトンにイオン交換されたSPP粒子の全てが
図4の既存のMFI類型ゼオライト構造を維持することを観察した。また、Cu含浸されたSPP粒子も既存のMFIゼオライト構造を維持することを確認した(
図10)。したがって、Cuに含浸された後にもSPP粒子のナノシートが保存されることが分かる。Cu含浸されたサンプルは、CuOに相応するXRDピーク(約36°および39°)が示され、大きさはScherrer方程式に基づいて計算した結果、20nmであることを確認した(
図10)。したがって、5nmおよび20nmの大きさのCuO粒子が全てSPP表面に存在することが分かる。また、CuO粒子が無作為に配向されたと仮定すれば、Cu含浸されたSPP粒子中の20nmの大きさのCuO量は対応するXRDピーク領域で簡単に推定することができる。具体的に、CuO上で(002)面のXRDピークの相対面積は、Cu/L_100、Cu/H_100およびCu/M_30がそれぞれ0.6、1および0.4である。含浸されたCu種がCuOの形態で存在することを考慮すれば、5nmの大きさのCuO量は、Cu/M_30、Cu/L_100およびCu/H_100の順に多いことが分かる。
【0051】
実施例9:H-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子の気孔構造分析
H-型SPP粒子およびCu含浸されたSPP粒子の気孔構造を分析するために、実施例5と同様な方法でN2物理吸着等温線を測定し、気孔サイズおよび体積を計算した。また、他の尺度で各サンプルの表面積を測定するために、実施例5と同様にBET(Brunauer-Emmett-Teller)表面積分析および変形されたt-plot方法を利用した。
【0052】
その結果、Cu含浸後にH-型SPP粒子本来の特性が保存されることを確認した。微細気孔性表面積は、Cu含浸後(H-型SPPに比べて90-105%)顕著に変化せず、メゾ気孔および外部表面積は減少した(L_100の場合、8%、H_100およびM_30の場合、17-29%)(
図11および表4)。前記メゾ気孔の減少はより高いメゾ気孔度を有するSPP粒子で顕著に示された。これは、5nmの大きさのCuO粒子がSPP粒子のメゾ気孔表面上に存在することを意味する。表4は、H-型およびCu含浸されたSPP粒子の気孔構造および酸滴定結果を示したものである(
cは外部およびメゾ気孔表面に位置する全てのB酸)。
【0053】
【0054】
SPP粒子内酸を定量化するために、ピリジン(pyridine(Py))および2,6-ジ-tert-ブチルピリジン(2,6-di-tert-butylpyridine(dTBPy))利用してフーリエ変換赤外線分光法(FT-IR)を行った。in-situ FT-IRセルでセルフペレット化した(self-pelletized)サンプルを6時間にかけて真空および500℃条件下で活性化した。サンプルにピリジン(Py;25℃で飽和蒸気圧2.80kPa)または2,6-ジ-tert-ブチルピリジン(dTBPy;25℃で飽和蒸気圧0.034kPa)の飽和蒸気を30mL/分のHe流動で1時間にかけて流れるようにして吸着させた。その後、150℃に冷却させた後、60分間真空下で弱く付着されたPyまたはdTBPy分子を除去した後に活性化されたサンプルのFT-IRスペクトルを得た。
【0055】
その後、FT-IRスペクトルで1450cm-1(Py)、1550cm-1(Py)および1615cm-1(dTBPy)の波数を利用して総ルイス酸、総ブレンステッド酸、およびメゾ気孔および外部表面に位置するブレンステッド酸の濃度をそれぞれ計算した。便宜上、ルイス酸およびブレンステッド酸は、それぞれL酸(L site)およびB酸(B site)で表示した。その結果、H-型SPP粒子(L_100、H_100およびM_30)のB酸は、主にメゾ気孔および外部表面領域に位置することを確認した。具体的に、総B酸の量はM_30(191μmol/g、主に最も低いSi/Al比率のため)が最も大きく、L_100(45μmol/g、主に最も低いメゾ気孔および外部表面積のため)が最も低かった(表2)。
【0056】
Cu含浸を行った後、Cu/M_30で総B酸の量が69μmol/g減少し、Cu/L_100では24μmol/g減少した。これは、Cu含浸されたSPP粒子でCu2+イオンの量がCu/M_30に最も多く、Cu/L_100に最も少ないことを意味する。したがって、MFIゼオライト構造にCuを含浸する時、低いSi/Al比率を有するSPP粒子が多量のCu2+イオンに交換されることが分かる。Cu/L_100およびCu/H_100で総B酸の減少と共に外部B酸の減少が示された。これは、Cu2+イオンの大部分がメゾ気孔および外部表面に位置することを意味する。Cu/M_30では外部B酸が減少した。したがって、Cu2+イオンがメゾ気孔および外部表面よりは内部表面に位置することが分かる。
【0057】
実施例10:H-型SPP粒子の低温始動試験(CST)
低温始動試験は、150乃至250μm範囲で篩った0.06gのH-型SPP粒子サンプルを石英管型反応器(内径6.9mmおよび外径9.6mm)に充填して行った。温度は温度調節器(UP35A、Yokogawa)を用いて調節し、供給蒸気の流れ速度はマスフロー調節器(High Tech、Bronkhorst)を用いて調節した。温度はサンプルが置かれた石英フリット下の熱電帯を用いて測定した。蒸気は加熱されたチュービングに一定量の水を注入して生成した。反応器を通過した後、冷却水(1℃)が循環するトラップ(trap)が排出口ガスストリーム(stream)内の蒸気を除去した。トラップ後、排出口を質量分析器(Lab Questor-RGA、Bongil)に連結した。
【0058】
か焼されたH-型SPP粒子を600℃で30分間30mL/分のHe流動下で30分間活性化した。CSTでは100ppmvのプロペン、100ppmのトルエン、1vol%のO2、10vol%のH2OおよびHeと均衡を取る560ppmvのArを含む100mL/分のガス混合物を活性化されたサンプルに供給してWHSV=100,000mLg-1h-1になるようにした。前記供給で、560ppmvのArはガス流出口のモル組成の定量化のための内部標準で用いた。
【0059】
CSTの測定は、反応器を70℃で始めて5分間維持した。その後、反応器を50℃/分の上昇速度で600℃まで加熱し、600℃で30分間維持した。供給成分と関連して差を確認するために、Arの場合、m/z=40、プロペンの場合、42、トルエンの場合、91、O
2の場合、32、H
2Oの場合、18に該当する信号を検出し、酸化工程を検出するために、COの場合、m/z=28およびCO
2の場合、44に該当する信号をモニターした。その結果、L_100、H_100およびM_30の場合、ほとんど同一の排出プロファイルが示された(
図12)。具体的に、H-型SPPは初期にはプロペンをほとんど吸着しなかった(
図12(a1))。これはストリーム(10vol%供給)の強い吸着抑制のためである。H_100では、温度上昇直後にプロペンの一部が消費された後、供給濃度に回復した(
図12(a1))。
【0060】
反対に、トルエンは温度が140℃に増加する時まで吸着され、その後、2-3分内に急速に脱着した(
図12(a2))。300℃以上ではプロペンとトルエンを吸着せずに通過させた(
図12(a1)および(a2))。また、CO
2やCOが発生しないことを確認した。したがって、炭化水素(プロペンおよびトルエン)の酸化が起こらないことが分かる。プロペンまたはトルエンの非酸化的な転換により生成された炭化水素の生成を確認するために、m/z=56、77および106に該当する信号を観察した。
【0061】
その結果、異なる形態の炭化水素が生成されたことを確認した(
図13(a1)、(a2)および(a3))。具体的に、m/z=56はプロペンオリゴマー化に関連した2-メチルブタンであり(
図12(a1))、m/z=77(
図13(a2)および107(
図13(a3))は、トルエン不均等化に関連したベンゼンおよびキシレン異性体(ベンズアルデヒドを含む)である。ベンゼンおよびキシレン異性体は全てのH-型SPP粒子で生成される反面、2-メチルブタンはH_100でのみ生成された(
図13)。また、m/z=56のMS信号が発生した時、プロペン排出が減少してから、再び増加すると同時にトルエンが脱着されることを確認した(
図12(a1)および(a2))。この時、トルエン脱着後、空いていたB酸はプロペンを迅速に吸着して触媒作用(オリゴマー化)を起こすことが分かる。このような特徴を要約すれば、H-型SPP(L_100、H_100およびM_30)はTWCsの活性温度までプロペンおよびトルエンの排出を遅延させ、炭化水素を酸化させる能力を有していないことが分かる。したがって、H-型SPP粒子は、低温始動区間でHC吸着剤として使用するに適しないということを確認した。
【0062】
実施例11:Cu含浸されたSPP粒子の低温始動試験(CST)
実施例10と同様な方法で、Cu含浸されたSPP粒子のCST性能を確認した。その結果、Cu含浸されたSPP粒子は、H-型SPP粒子と比較して他の独特の放出プロファイルを示した(
図12(b1)、(b2)および(b3))。Cu含浸されたSPP粒子は、初期温度70℃でプロペンを吸着することができ、Cu/M_30が最も高い吸着力を示した。Cu/L_100は、加熱が始まる前にプロペンを放出し始め、Cu/M_30は90℃付近でプロペンを脱着した。Cu/H_100は、Cu/L_100とCu/M_30の中間程度の性能を示した。
【0063】
また、H-型SPP粒子と類似にトルエンを完全に吸着した(
図12(b2))。トルエンの脱着はCu/M_30で最も遅滞された(トルエンが190℃で放出され始める)。これは、Cu/M_30がプロペンを強く吸着するためである。Cu/L_100は、L_100に比べて吸着力が向上した。Cu/H_100は、トルエン脱着量が多く減少したが、脱着挙動はH_100とほとんど同じである。Cu/L_100は、吸着されたトルエンの大部分を脱着する反面、Cu/H_100およびCu/M_30は、脱着されるトルエンの量が顕著に減少した。
【0064】
したがって、Cu/M_30は、最も遅くトルエンが脱着され、脱着される量が減少するため、効果的なHC吸着剤であることを確認した。脱着されたプロペンとトルエンの減少した量は、CO
2とCO(
図12(b3))および他の炭化水素への活性転換と相関関係がある(
図13(b1)、(b2)および(b3))。Cu含浸されたSPPは、CO
2またはCOへの効果的な酸化によって、約600℃の全ての供給成分を除去することができる。特に、CO
2およびCOは200℃で発生し、Cu/L_100、Cu/H_100およびCu/M_30(それぞれ300℃、350℃および370℃)の順に増加した。Cu含浸されたSPP粒子で脱着されたプロペンの一部は、Cu/L_100を除いて300℃でオリゴマー(m/z=56)に転換されたことを確認した(
図13(b1))。Cu/L_100が不活性されたことは、プロペンオリゴマー化(propene oligomerization)を行うB酸の量が少ないか、またはプロペンが脱着される温度が低いためである。
【0065】
トルエン不均等化と関連した質量スペクトル(mass spectrum(MS))(m/z=77および106)は、トルエンが脱着された同一の位置で発生した(
図13(b2)および(b3))。トルエン脱着は、Cu/H_100、Cu/L_100およびCu/M_30の順に強いため、トルエン不均等化によるMS信号も同じ順に示された。また、トルエン不均等化によるMS信号以外にも、Cu/H_100およびCu/M_30で約9-11分(320-370℃に該当)に不明なピークが観察された。前記不明なピークは、トルエン分子間の副反応で生成されたものである。したがって、Cu/M_30は、プロペンとトルエンを全て吸着することができるため、優れたHC吸着剤として使用可能であることが分かる。低温始動テストを完了した後、コークスの形成を確認するために、テストされたサンプルを100mL/分の空気流れ下で5℃/分の上昇速度で800℃まで加熱して熱重量分析器(TGA、Q50、TA Instruments)を利用して測定した。その結果、コークスがほとんど形成されないことを確認した(
図14)。
【0066】
実施例12:Cu含浸されたSPP粒子の安定性確認
Cu含浸されたSPP粒子の安定性を確認するために、熱水処理されていないCu含浸されたSPP粒子および熱水処理されたCu含浸されたSPP粒子の連続的なCSTを行った。連続的なCST性能測定のために、反応器を600℃から70℃に冷却させる間、6時間にかけて100mL/分のHeを流れるようにし、流動反応器に蒸気が存在しないことを確認した。Cu/L_100、Cu/H_100およびCu/M_30は、800℃で24時間にかけて10vol%の蒸気と共に100mL/分のHe下で熱水処理した。生成されたサンプルは、Cu/L_100 HT、Cu/H_100 HT、およびCu/M_30 HTで表示し、ここでHTは熱水処理を示す。
【0067】
熱水処理されたCu含浸されたSPPの低温始動テスト(cold-start tests(CST))性能を前記と同一の条件下で観察した。その結果、Cu/H_100およびCu/M_30は、プロペンおよびトルエン排出が類似しているが、Cu/L_100の場合、プロペンおよびトルエンは3サイクルで早く放出されることを観察した(
図15(a1)、(b1)および(c1))。副産物炭化水素プロファイル(
図16)によれば、プロペンおよびトルエンは3サイクルで他の炭化水素へさらに転換された。これと同時に、CO
2およびCO発生時間が1分未満に遅延され、当該CO
2/CO生成量は減少した。
【0068】
連続的なテストによる漸進的な性能低下にもかかわらず、Cu含浸されたSPP粒子はHC吸着剤の性能が示されたが、熱水処理したCu含浸されたSPPはプロペンとトルエンの吸着力が低下した。Cu含浸されたSPP HTの酸化温度は、Cu含浸されたSPPの酸化温度より高く、このような酸化温度は、バルクCuOの酸化温度と類似している(
図15(a2)、(b2)および(c2))。排出プロファイル(
図15(a2)、(b2)および(c2))とTGA結果(
図17)を分析した結果、炭化水素がCO
2またはCOに転換されたことが分かる。
【0069】
したがって、Cu含浸されたSPP HTのTEMイメージ(
図18)およびXRDパターン(
図19)を通じて、熱水処理後、Cu/H_100はある程度MFIゼオライト構造を維持するが、Cu/M_30およびCu/L_100は、MFIゼオライト構造がα-クリストバライト(α-cristobalite)に変形され、CuO粒子は保存されることが分かる。
【0070】
以上にように、本発明内容の特定の部分を詳しく、具体的に記述したので、好ましい実施様態といえる。なお、本発明が実施例によって制限されるものではない点は明白であろう。