(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】基板の洗浄方法及び洗浄装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
H01L21/304 643D
H01L21/304 643A
H01L21/304 647Z
H01L21/304 648G
(21)【出願番号】P 2020540638
(86)(22)【出願日】2018-01-23
(86)【国際出願番号】 CN2018073723
(87)【国際公開番号】W WO2019144256
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-01-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510005650
【氏名又は名称】エーシーエム リサーチ (シャンハイ) インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ワン フゥイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン シー
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン シャオイェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン フーファ
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-212690(JP,A)
【文献】特開平10-064870(JP,A)
【文献】特開2007-150164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を基板ホルダに配置する工程と、
前記基板の表面上に洗浄液を供給する工程と、
前記基板の前記表面から気泡を分離する前処理プロセスの実行工程と、
前記基板を洗浄する超音波又は高周波超音波洗浄プロセスの実行工程とを備えて
おり、
前記基板の前記表面から気泡を分離するための前記前処理プロセスの実行工程が、安定した気泡キャビテーションを生成するために、前記洗浄液に第1のパワーで超音波又は高周波超音波を印加することを含み、
前記基板を洗浄する超音波又は高周波超音波洗浄プロセスの実行工程が、前記基板を洗浄する超音波又は高周波超音波洗浄プロセスを実行するために、第2のパワーで超音波又は高周波超音波を印加することを含み、
前記第2のパワーが前記第1のパワーよりも大きい基板の洗浄方法。
【請求項2】
前記前処理プロセスの実行工程の期間が5秒以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超音波又は高周波超音波が、連続モード又はパルスモードで動作する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板の前記表面から気泡を分離する前記前処理プロセスの実行工程が、前記基板の前記表面を疎水性から親水性に改質することを含む、請求項1
~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基板の前記表面の疎水性から親水性への改質は、前記基板の前記表面に親水性被覆層を形成する化学溶液を供給することにより実行されることを特徴とする請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板の前記表面の疎水性から親水性への改質は、疎水性の前記基板の前記表面を酸化させて親水性酸化物の層にする化学溶液を供給することにより実行されることを特徴とする請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
前記基板の前記表面から気泡を分離するための前記前処理プロセスの実行工程が、前記基板の前記表面上の前記化学溶液の濡れ性を増加させるために、前記基板の前記表面上に化学溶液を供給することを含む、請求項1
~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記基板の前記表面から気泡を分離するための前記前処理プロセスの実行工程が、前記基板の前記表面に付着した不純物を除去することを含む、請求項
1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板の前記表面に付着した前記不純物を、化学溶液を用いて除去することを特徴とする請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
安定した気泡キャビテーションを生成するために、前記化学溶液に第1のパワーで超音波又は高周波超音波を印加する工程をさらに備えている、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板の前記表面から気泡を分離するための前記前処理プロセスの実行工程が、粒子を除去し、しかる後に、前記基板の前記表面から気泡を分離することを含む、請求項
1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
第1パワーの超音波又は高周波超音波が、前記粒子を除去し、前記気泡を前記基板の前記表面から分離するために、前記洗浄液に印加される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板の前記表面に化学溶液を供給して前記粒子を反応又は溶解させることを特徴とする、請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
基板洗浄装置であって、
基板を支持するように構成された基板ホルダと、
前記基板の表面上に洗浄液を供給するように構成された少なくとも1つの注入口と、
前記洗浄液に音響エネルギーを供給するように構成された超音波又は高周波超音波デバイスと、
一又は複数のコントローラとを備えており、前記一又は複数のコントローラは、
前記基板の前記表面から気泡を分離する前処理プロセスを実行するために、前記超音波又は高周波超音波デバイスを第1のパワーに制御し、
前記基板を洗浄する超音波又は高周波超音波洗浄プロセスを実行するために、前記超音波又は高周波超音波デバイスを前記第1のパワーよりも大きい第2のパワーに制御する基板洗浄装置。
【請求項15】
前記超音波又は高周波超音波デバイスが、連続モード又はパルスモードで動作する、請求項
14に記載の装置。
【請求項16】
前記注入口が、前記基板の前記表面を疎水性から親水性に変更して前記基板の前記表面から気泡を分離する化学溶液を供給する、請求項
14に記載の装置。
【請求項17】
前記注入口は、前記基板の前記表面上の前記化学溶液の濡れ性を増加させて前記基板の前記表面から気泡を分離するために、前記基板の前記表面上に化学溶液を供給する、請求項
14に記載の装置。
【請求項18】
前記注入口は、前記基板の前記表面から気泡を分離するために、前記基板の前記表面上に付着した不純物を除去する化学溶液を供給する、請求項
14に記載の装置。
【請求項19】
前記注入口は、前記基板の前記表面から気泡を分離するために、前記基板の前記表面上に、粒子を反応又は溶解させる化学溶液を供給する、請求項
14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の洗浄方法及び洗浄装置に関する。より具体的には、基板上のパターン構造においてより効率的に微粒子を除去するために、洗浄プロセス中に損傷を引き起こす気泡内破を回避するように基板の表面から気泡を分離することに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、複数の異なる処理工程を経てトランジスタ及び相互接続要素を製造することによって、半導体基板上に製造又は加工される。近年トランジスタは、フィン電界効果トランジスタ(Fin Field Effect Transistor; finFET)及び3次元NANDメモリのように二次元から三次元に構築されるものがある。半導体基板に伴うトランジスタ端子同士を電気的に接続するために、半導体装置の一部として誘電材料に導電性(例えば、金属)のトレンチ、ビアホール(via)などが形成される。トレンチ及びビアホールは、トランジスタ、半導体装置の内部回路、及び、半導体装置の外部への回路間における電気信号及び電力を結合する。
【0003】
半導体基板上におけるfinFET及び相互接続要素の形成工程では、例えばマスキング、エッチング、及び、堆積工程を経て、所望の半導体装置の電子回路が形成されてよい。特に、複数のマスキング及びプラズマエッチング工程を行うことによって、トランジスタのフィン及び/又は相互接続要素のトレンチやビアホールとして機能する半導体基板の誘電層に、finFET、3次元NANDフラッシュセル及び/又は陥凹領域のパターンを形成することができる。ポストエッチング又はフォトレジストアッシングにおいて、フィン構造及び/又はトレンチやビアホールにおける粒子及び異物を除去するために、湿式洗浄工程が必要となる。特に装置製造ノードが14nm又は16nm、或いは、それ以上移動する場合に、フィン及び/又はトレンチ及びビアホールの側壁損失は、臨界寸法の維持に重要となる。側壁損失を低減又は排除するには、適度に希釈された化学薬品、又は、場合によっては脱イオン水のみを使用することが重要となる。しかし、通常、希釈された化学薬品や脱イオン水では、フィン構造、3次元NANDホール及び/又はトレンチ及びビアホール内の粒子を効率的に除去できない。したがって、これらの粒子を効率的に除去するには、超音波又は高周波超音波(ultra or mega sonic)などの機械的な力が必要である。超音波又は高周波超音波は、基板構造に機械的な力を加える気泡キャビテーションを発生させ、トランジットキャビテーションやマイクロジェットなどの激しいキャビテーションは、パターン構造を損傷させる。安定した又は制御されたキャビテーションを維持することは、機械的な力を損傷限界内に制御すると同時に粒子の効率的な除去を行うために重要なパラメータとなる。
【0004】
図1A及び
図1Bは、トランジットキャビテーション(transit cavitation)が洗浄プロセス中に基板1010上のパターン構造1030を損傷させる様子を示している。トランジットキャビテーションは、基板1010を洗浄するために印加される音響エネルギーによって生成されるものであってもよい。
図1A及び
図1Bに示すように、気泡1050の内破(implosion)によって引き起こされるマイクロジェットは、パターン構造1030の頂部よりも上に生じるものであり、非常に荒々しく(数千気圧及び数千℃に達することもある)、特に特徴部のサイズtが70nm以下に収縮すると、基板1010上の微細パターン構造1030に損傷を与えうる。
【0005】
気泡内破によって生じるマイクロジェットによって引き起こされる、基板上のパターン構造を損傷させる気泡キャビテーションは、洗浄プロセス中の気泡キャビテーションを制御することによって、抑えることができる。基板全体における安定した又は制御されたキャビテーションによって、パターン構造の損傷回避を実現することができることは、2015年5月20日に出願されたPCT/CN2015/079342号に開示されている。
【0006】
ある場合には、基板を洗浄するために印加される超音波又は高周波超音波のパワー強度は非常に低いレベル(ほとんど粒子を除去できない効率)に低減されるが、基板上のパターン構造には依然として損傷が生じる。損傷の数は、わずか(100よりも小さい)である。しかしながら、通常、超音波又は高周波超音波アシストプロセスでは、洗浄プロセスにおける気泡の数は、数万である。基板上におけるパターン構造の損傷数と気泡の数とは一致しない。この現象のメカニズムは知られていない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一つの観点では、基板を基板ホルダに配置する工程と、基板の表面上に洗浄液を供給する工程と、基板表面から気泡を分離する前処理プロセスの実行工程と、基板を洗浄する超音波又は高周波超音波洗浄プロセスの実行工程とを備えた基板の洗浄方法が開示される。
【0008】
本発明の別の観点では、基板を支持するように構成された基板ホルダと、基板の表面上に洗浄液を供給するように構成された少なくとも1つの注入口と、洗浄液に音響エネルギーを供給するように構成された超音波又は高周波超音波デバイスと、一又は複数のコントローラとを備えており、前記一又は複数のコントローラは、基板の表面から気泡を分離する前処理プロセスを実行するために超音波又は高周波超音波デバイスを第1のパワーに制御し、前記基板を洗浄する超音波又は高周波超音波洗浄プロセスを実行するために、前記超音波又は高周波超音波デバイスを前記第1のパワーよりも大きい第2のパワーに制御する基板洗浄装置が開示される。
【0009】
本発明の別の観点では、基板を保持するように構成された基板ホルダと、基板を洗浄するために基板の表面上に洗浄液を供給し、基板の表面から気泡を分離する前処理プロセスを実行するために基板の表面上に化学溶液を供給するように構成された一又は複数の注入口と、基板を洗浄するために洗浄液に音響エネルギーを供給するように構成された超音波又は高周波超音波デバイスとを備えた基板洗浄装置が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】トランジットキャビテーションが洗浄プロセス中に基板上のパターン構造を損傷させる様子を示している。
【
図1B】トランジットキャビテーションが洗浄プロセス中に基板上のパターン構造を損傷させる様子を示している。
【
図2A】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させる様子を示している。
【
図2B】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させる様子を示している。
【
図2C】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させる様子を示している。
【
図2D】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させる様子を示している。
【
図3A】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3B】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3C】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3D】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3E】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3F】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3G】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3H】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図4A】パターン構造及び基板の表面に付着した気泡を、基板上のパターン構造の表面から分離するための例示的な方法を示している。
【
図4B】パターン構造及び基板の表面に付着した気泡を、基板上のパターン構造の表面から分離するための例示的な方法を示している。
【
図5A】不純物に付着した気泡を、基板上のパターン構造の表面から分離する例示的な方法を示している。
【
図5B】不純物に付着した気泡を、基板上のパターン構造の表面から分離する例示的な方法を示している。
【
図5C】不純物に付着した気泡を、基板上のパターン構造の表面から分離する例示的な方法を示している。
【
図6A】不純物に付着した気泡を、基板上のパターン構造の表面から分離する別の例示的な方法を示している。
【
図6B】不純物に付着した気泡を、基板上のパターン構造の表面から分離する別の例示的な方法を示している。
【
図6C】不純物に付着した気泡を、基板上のパターン構造の表面から分離する別の例示的な方法を示している。
【
図7A】粒子に付着した気泡を、基板上のパターン構造の表面から分離する例示的な方法を示している。
【
図7B】粒子に付着した気泡を、基板上のパターン構造の表面から分離する例示的な方法を示している。
【
図8A】粒子に付着した気泡を、基板上のパターン構造の表面から分離する別の例示的な方法を示している。
【
図8B】粒子に付着した気泡を、基板上のパターン構造の表面から分離する別の例示的な方法を示している。
【
図9】本発明による基板を洗浄するための例示的な方法を示す。
【
図10】本発明による基板を洗浄するための別の例示的な方法を示す。
【
図11】本発明による基板を洗浄するための別の例示的な方法を示す。
【
図12】本発明による基板を洗浄するための別の例示的な方法を示す。
【
図13A】本発明による基板を洗浄するための例示的な装置を示す。
【
図13B】本発明による基板を洗浄するための例示的な装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図2Aに示すように、超音波又は高周波超音波アシスト基板洗浄プロセスの間、基板2010を洗浄するために印加される超音波又は高周波超音波のパワー強度は非常に低いレベル(ほとんど粒子を除去できない効率)に低減されるが、基板2010上のパターン構造2030には依然として損傷が生じる。さらに、パターン構造2030の単一壁(single wall)が損傷されることが多い。
図2Aは、損傷の2つの例を示している。一つは、パターン構造2030の単一壁が横に向かってはがれるものである。もう一つは、パターン構造2030の単一壁の一部が除去されるものである。
図2Aは2つの例を示しているが、他の同様の損傷が発生し得ることが認識されるべきである。これらの損傷を何が引き起こすのであろうか。
【0012】
図2B~
図2Dを参照すると、基板洗浄プロセスにおいて、小さい気泡2050、2052は、
図2B及び
図2Cに示すように、基板2010の表面又はパターン構造2030の側壁などの固体表面に付着する傾向がある。パターン構造2030の底部コーナーに付着した気泡2052及びパターン構造2030の単一壁に付着した気泡2050のように、気泡2050、2052が基板2010の表面又はパターン構造2030の側壁に付着しているとき、これらの気泡2050、2052が内破すると、
図2Aに示すように、単一側壁に作用する気泡内破力の方向に従った方向に向かって基板2010のサブレイヤ(sub-layer)からパターン構造2030が剥離するか、又は、パターン構造2030の単一側壁の一部が除去される。内破はマイクロジェットほど強烈ではないが、基板2010の表面及びパターン構造2030の側壁に気泡2050、2052が付着していることによって、小さい気泡の内破によって発生するエネルギーであってもパターン構造2030を損傷させ得る。
【0013】
さらに、湿式工程の間、複数の小さな気泡は、より大きな気泡に合体し得る。固体表面上に気泡が付着しやすいために、パターン構造の表面及び基板の表面などの固体表面上での合体は、パターン構造、特に幾何学的な臨界的部分で生じる気泡内破の危険性を増加させる。
【0014】
図3A~
図3Hは、本発明による超音波又は高周波超音波アシスト湿式洗浄プロセスの間、基板に付着した気泡の内破が基板上のパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
図3Aは、パターン構造3030を有する基板3010の表面上に洗浄液3070が供給され、パターン構造3030の底角部上に少なくとも1つの気泡3050が付着している様子を示している。
図3Bに示す正の超音波又は高周波超音波動作プロセスでは、F1は、気泡3050に作用する超音波又は高周波超音波加圧力であり、
F3は、気泡3050がパターン構造3030の側壁を押圧しているときに、パターン構造3030の側壁によって生成されて気泡3050に作用する反力であり、
F2は、気泡3050が基板3010を押圧しているときに、基板3010によって生成されて気泡3050に作用する反力である。
図3C及び
図3Dに示される負の超音波又は高周波超音波動作工程では、気泡3050は、気泡3050を引っ張る超音波又は高周波超音波の負の力によって膨張している。気泡の体積が膨張する過程において、F1'は、気泡3050が洗浄液3070を押す力であり、F2'は、気泡3050が基板3010を押す力であり、F3'は、気泡3050がパターン構造3030の側壁を押す力である。正の超音波又は高周波超音波及び負の超音波又は高周波超音波が交互多数回印加された後、気泡内部のガス温度が益々高くなり、気泡の体積が益々大きくなり、ついには、気泡の内破3051が生じる。内破3051は、
図3Gに示すように、洗浄液3070に作用する力F1''、基板3010に作用するF2''、パターン構造3030の側壁に作用する力F3''という内破力を発生させる。内破力は、
図3Hに示すように、パターン構造3030の側壁を損傷させる。
【0015】
超音波又は高周波超音波アシスト湿式洗浄プロセスの間の気泡内破によって引き起こされる基板上のパターン構造の損傷を回避するために、基板を洗浄する洗浄液に対して音響エネルギーが印加される前に、パターン構造の表面及び基板の表面から気泡を除去することが好ましい。
【0016】
以下では、パターン構造及び基板の表面から気泡を分離するための複数の方法が開示される。
【0017】
図4A及び
図4Bは、本発明による基板上のパターン構造の表面から気泡を除去するための基板前処理プロセスの実施形態を示している。パターン構造4030を有する基板4010の表面上に洗浄液4070が供給されたときに、
図4Aに示すようにパターン構造4030の底角部上に少なくとも1つの気泡4050が付着している。したがって、超音波又は高周波超音波での洗浄プロセスの前に、気泡分離の前処理プロセスが必要とされる。気泡分離の前処理プロセスでは、最終的に
図4Bに示すようにパターン構造4030及び基板4010からの気泡の分離を達成するために、パターン構造4030の表面及び基板4010の表面と、気泡4050との界面を徐々に縮小させるべく、パターン構造4030の固体表面及び基板4010の固体表面のそれぞれに沿った方向D1及びD2からのパターン構造4030の表面濡れ性を増加させる、又は、方向D1及びD2から干渉する極小さな機械的な力(minimal mechanical force)を用いるといったような方法が必要である。
【0018】
本発明による気泡分離の前処理プロセスの一実施形態は、例えば、基板4010表面上に親水性被覆層を形成する化学溶液を供給すること、又は、シリコン又はポリシリコン層のような疎水性表面材料を酸化させて親水性シリコン酸化物層とするオゾン溶液又はSC1溶液(NH4OH、H2O2、H2Oの混合物)のような化学溶液を供給することのように、基板4010の表面に化学溶液を供給することによって、基板4010表面を疎水性から親水性に改質することである。
【0019】
本発明による気泡分離の前処理プロセスの一実施形態は、界面活性剤、添加剤又はキレート剤を含む化学溶液を基板4010の表面上に供給することである。界面活性剤、添加剤又はキレート剤を含む化学溶液は、パターン構造4030及び基板4010の表面に付着した気泡を分離するために、基板4010の表面における化学溶液の濡れ性を向上させることができる。カルボキシル基含有エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、テトラカルボキシル化合物-エチレンジアミン4プロピオン酸(EDTP)酸/塩などの化学物質は、化学溶液の濡れ性を高めるために、化学溶液中に加えられる界面活性剤として使用される。
【0020】
加えて、低パワーの超音波又は高周波超音波を上記の実施形態と組み合わすことによって、気泡分離の効率を向上させることが可能である。低パワーの超音波又は高周波超音波は、パターン構造4030の表面及び基板4010の表面から気泡4050を分離するための機械的な力を生成するために、安定した気泡キャビテーションに寄与する極小さな機械的な力を発生させる。低パワーの超音波又は高周波超音波は、連続モード(非パルスモード)で動作することができ、そのパワー密度は、例えば、1mw/cm2-15mw/cm2であってよい。パターン構造4030の表面及び基板4010の表面から気泡を分離するために洗浄液に連続モードで低パワーの超音波又は高周波超音波を印加する期間は、例えば10秒から60秒であってよい。洗浄液に連続モードで超音波又は高周波超音波を印加することのより詳細な説明は、2008年12月12日に出願された特許出願PCT/CN2008/073471号に開示されており、その全てが参照により本明細書に組み込まれる。低パワーの超音波又は高周波超音波は、パルスモードで動作することができ、そのパワー密度は、例えば、15mw/cm2-200mw/cm2であってよい。パターン構造4030の表面及び基板4010の表面から気泡を分離するために洗浄液にパルスモードで低パワーの超音波又は高周波超音波を印加する期間は、例えば10秒から120秒であってよい。洗浄液にパルスモードで超音波又は高周波超音波を印加することのより詳細な説明は、2015年5月20日に出願された特許出願PCT/CN2015/079342号に開示されており、その全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
図5A~
図5Cに示すように、本発明による気泡分離の前処理プロセスの一実施形態は、基板表面に付着した金属不純物、有機汚染物質及びポリマー残留物などの不純物を除去することである。気泡5050は、基板5010の表面に付着した金属不純物、有機汚染物質、及びポリマー残留物などの不純物5090の周囲に付着しやすいので、パターン構造5030及び基板5010の表面に付着した気泡5050は、後続の超音波又は高周波超音波洗浄プロセスの間、内破することによって基板5010上のパターン構造5030を損傷させるという危険性を有する。表面ポリマー残留物を酸化するためのオゾン溶液を使用する、及び、表面ポリマー残留物を炭化させるための高温(90~150℃)SPM溶液(H
2SO
2、H
2O
2の混合物)を使用するといったような基板5010の表面に化学溶液
5070を供給する前処理方法は、超音波又は高周波超音波による洗浄プロセスの前に、基板5010表面上の金属不純物及びポリマー残留物などの不純物5090を除去することに寄与する。別の実施形態では、金属不純物を除去するために、表面金属イオンキレート剤としてEDTAのような化学物質が使用される。
【0022】
ある場合には、有機汚染物質又はポリマー残留物などの不純物5090がパターン構造5030の角部に蓄積されたときに、気泡5050は、不純物5090の表面への化学溶液の濡れ性が不十分であるため、不純物5090上に付着しやすくなる。これが、パターン構造5030の表面における損傷を引き起こす内破につながることがある。不純物5090を除去し、蓄積された気泡5050を分離するための2つの方法が開示される。一実施形態では、例えば
図5Aに示すようにオゾン又はSC1溶液を用いて有機汚染物質を除去する前処理プロセスにおいて、不純物5090を除去するために化学溶液
5070が使用される。不純物5090の大きさは、
図5Bに示すように、化学溶液
5070が不純物5090と反応することによって収縮する。パターン構造5030及び基板5010の表面から不純物5090が除去されるので、化学溶液
5070の濡れ性が高まり、
図5Cに示すようにパターン構造5030表面から気泡5050が離れる。
【0023】
図6A~
図6Cに示すように、本発明の別の実施形態では、例えば
図6Aに示すようにオゾン又はSC1溶液を用いて有機汚染物質を除去する前処理プロセスにおいて、不純物6090を除去する効率を改善するために、低パワー超音波又は高周波超音波プロセスが使用される。低パワー超音波又は高周波超音波を印加することにより、気泡6050のサイズは、交互に拡張及び収縮して、不純物6090を化学溶液
6070に暴露し、さらに化学溶液
6070と反応させる。このプロセスは、化学溶液
6070と不純物6090との反応効率を加速させる。パターン構造6030の表面から不純物6090が除去されるので、化学溶液
6070の濡れ性が高まり、
図6Cに示すようにパターン構造6030表面から気泡6050が離れる。低パワーの超音波又は高周波超音波は連続モード(非パルスモード)で動作することができ、そのパワー密度は、例えば、1mw/cm
2-15mw/cm
2であってよい。低パワーの超音波又は高周波超音波は、パルスモードで動作することができ、そのパワー密度は、例えば、15mw/cm
2-200mw/cm
2であってよい。
【0024】
図7A及び
図7Bは、基板上のパターン構造の表面から除去される気泡の実施形態を示している。基板7010上のパターン構造7030の角部に粒子7090が捕捉された場合、粒子の不規則な形状のために、粒子7090の表面付近に気泡7052、7054、7056が蓄積しやすくなる。パターン構造7030の表面及び基板7090の表面に付着している気泡7052、7054、7056は、内破することによってパターン構造7030を損傷させるという危険性を有する。したがって、超音波又は高周波超音波での洗浄プロセスの前に、粒子除去及び気泡分離の前処理プロセスが必要とされる。
【0025】
本発明による
図7A及び
図7Bに示されるように、前処理プロセスにおいて、パターン構造7030の表面及び基板7010の表面から気泡7052、7054、7056が分離されるように、粒子7090が除去される。後続の超音波又は高周波超音波洗浄プロセスの前に、パターン構造7030の表面及び基板7010の表面から粒子7090が除去され且つ気泡7052、7054、7056が分離されるように、低パワーの超音波又は高周波超音波を洗浄液7070に印加することができる。低パワーの超音波又は高周波超音波は、気泡7052、7054、7056上に気泡キャビテーションを発生させる。気泡7052、7054、7056のキャビテーションは、
図7Aに示すように、機械的な力f1、f2、f3を生成し、その合成力Fが粒子7090を外側に押す。そして、粒子7090は最終的に持ち上げられ、気泡7052、7054、7056のキャビテーション力も、パターン構造7030の表面及び基板7010の表面から気泡7052、7054、7056を剥離させるための音響撹拌を発生させる。低パワーの超音波又は高周波超音波は、連続モード(非パルスモード)で動作することができ、そのパワー密度は、例えば、1mw/cm
2-15mw/cm
2であってよい。低パワーの超音波又は高周波超音波は、パルスモードで動作することができ、そのパワー密度は、例えば、15mw/cm
2-200mw/cm
2であってよい。
【0026】
図8A及び
図8Bは、本発明による基板上のパターン構造の表面から除去される気泡の別の実施形態を示している。前処理プロセスでは、基板8010の表面に化学溶液8070を供給して粒子8090を反応又は溶解させることにより、パターン構造8030の表面及び基板8010の表面から気泡8052、8054、8056が分離されるように、粒子8090が除去される。化学溶液の例は、ポリマー粒子を酸化させる、オゾン溶液又はSC1溶液である。このプロセスには、後続の超音波又は高周波超音波洗浄プロセスの前に化学反応又は溶解をアシストするために、低パワーの超音波又は高周波超音波プロセスを適用することもできる。低パワーの超音波又は高周波超音波は、パターン構造8030の角部に捕捉された粒子8090を取り囲む気泡8052、8054、8056上に気泡キャビテーションを発生させる。気泡8052、8054、8056のキャビテーションは、機械的な力f1、f2、f3を生成し、その合成力Fが粒子8090を外側に押す。低パワーの超音波又は高周波超音波の機械的な力と組み合わされた、粒子8090における化学溶液の反応又は溶解によって、粒子8090が最終的に持ち上げられ、気泡8052、8054、8056のキャビテーション力もまた、パターン構造8030の表面及び基板8010の表面から気泡8052、8054、8056を剥離させるのための音響撹拌を生成する。
【0027】
本発明は、
【0028】
基板を基板ホルダに配置する工程と、
【0029】
前記基板の表面上に洗浄液を供給する工程と、
【0030】
前記基板の前記表面から気泡を分離する前処理プロセスの実行工程と、
【0031】
前記基板を洗浄する超音波又は高周波超音波洗浄プロセスの実行工程とを備えている基板の洗浄方法を開示する。
【0032】
前記前処理プロセスの実行工程の期間は、5秒以上である。
【0033】
図9は、本発明による基板洗浄方法の一実施形態を示す。この実施形態では、パルスモードで動作する超音波又は高周波超音波が印加され、基板の表面から気泡を分離する前処理プロセスを実行する。このときの超音波又は高周波超音波は、第1パワーを有している。そのパワー密度は、例えば、15mw/cm
2-200mw/cm
2であってよい。気泡を分離するために低パワーの超音波又は高周波超音波をパルスモードで印加する期間は、例えば10秒から120秒であってよい。気泡が基板の表面から分離された後、続いて、パルスモードで動作する超音波又は高周波超音波が印加されて、基板を洗浄するための超音波又は高周波超音波洗浄プロセスが実施される。このときの超音波又は高周波超音波は、第1のパワーよりも高い第2のパワーを有している。パワー密度は、例えば0.2w/cm
2-2w/cm
2であってよい。基板を洗浄するために高パワーの超音波又は高周波超音波をパルスモードで印加する期間は、例えば600秒以内であってよい。
【0034】
図10は、本発明による基板洗浄方法の別の実施形態を示す。この実施形態では、連続モード(非パルスモード)で動作する超音波又は高周波超音波が印加され、基板の表面から気泡を分離する前処理プロセスを実行する。このときの超音波又は高周波超音波は、第1パワーを有している。パワー密度は、例えば1mw/cm
2-15mw/cm
2であってよい。気泡を分離するために低パワーの超音波又は高周波超音波を連続モードで印加する期間は、例えば10秒から60秒であってよい。気泡が基板の表面から分離された後、続いて、パルスモードで動作する超音波又は高周波超音波が印加されて、基板を洗浄するための超音波又は高周波超音波洗浄プロセスが実施される。このときの超音波又は高周波超音波は、第1のパワーよりも高い第2のパワーを有している。パワー密度は、例えば0.2w/cm
2-2w/cm
2であってよい。基板を洗浄するために高パワーの超音波又は高周波超音波をパルスモードで印加する期間は、例えば600秒以内であってよい。
【0035】
図11は、本発明による基板洗浄方法の別の実施形態を示す。この実施形態では、パルスモードで動作する超音波又は高周波超音波が印加され、基板の表面から気泡を分離する前処理プロセスを実行する。このときの超音波又は高周波超音波は、第1パワーを有している。そのパワー密度は、例えば、15mw/cm
2-200mw/cm
2であってよい。気泡を分離するために低パワーの超音波又は高周波超音波をパルスモードで印加する期間は、例えば10秒から120秒であってよい。気泡が基板の表面から分離された後、続いて、連続モード(非パルスモード)で動作する超音波又は高周波超音波が印加されて、基板を洗浄するための超音波又は高周波超音波洗浄プロセスが実施される。このときの超音波又は高周波超音波は、第1のパワーよりも高い第2のパワーを有している。パワー密度は、例えば15mw/cm
2-500mw/cm
2であってよい。基板を洗浄するために高パワーの超音波又は高周波超音波を連続モードで印加する期間t2は、例えば10秒から60秒であってよい。期間t2において、気泡内破又はトランジットキャビテーションが発生し得るが、それは構造よりも上方で起こるので、マイクロジェットによって生成される衝撃力は、基板上のパターン構造を損傷させない可能性がある。
【0036】
図12は、本発明による基板洗浄方法の別の実施形態を示す。この実施形態では、連続モード(非パルスモード)で動作する超音波又は高周波超音波が印加され、基板の表面から気泡を分離する前処理プロセスを実行する。このときの超音波又は高周波超音波は、第1パワーを有している。パワー密度は、例えば1mw/cm
2-15mw/cm
2であってよい。気泡を分離するために低パワーの超音波又は高周波超音波を連続モードで印加する期間は、例えば5秒から60秒であってよい。気泡が基板の表面から分離された後、続いて、連続モード(非パルスモード)で動作する超音波又は高周波超音波が印加されて、基板を洗浄するための超音波又は高周波超音波洗浄プロセスが実施される。このときの超音波又は高周波超音波は、第1のパワーよりも高い第2のパワーを有している。パワー密度は、例えば15mw/cm
2-500mw/cm
2であってよい。基板を洗浄するために高パワーの超音波又は高周波超音波を連続モードで印加する期間は、例えば10秒から120秒であってよい。
【0037】
図4A~
図8Bに開示された気泡を分離するための前処理方法は、
図9~
図12に開示された方法に適用可能である又はそれらと組み合わせ可能であることが認識されるべきである。
【0038】
図13A及び
図13Bを参照して、本発明の一実施形態による基板洗浄装置を説明する。
図13Aは、基板1310を保持する基板ホルダ1314と、基板ホルダ1314を駆動する回転駆動モジュール1316と、基板1310の表面に洗浄液及び化学溶液1370を供給するノズル1312とを含む基板洗浄装置の断面図である。基板洗浄装置は、基板1310の上方に配置された超音波又は高周波超音波デバイス1303も含んでいる。超音波又は高周波超音波デバイス1303は、清浄液と接触する共振器1308に音響的に結合された圧電トランスデューサ1304をさらに含んでいる。圧電トランスデューサ1304は電気的に励起されて振動し、共振器1308は洗浄液又は化学溶液に低音波エネルギー又は高音波エネルギーを伝達する。低い音波エネルギーによって発生した気泡のキャビテーションは、基板1310の表面からの気泡の除去を引き起こす。高い音波エネルギーによって発生した気泡のキャビテーションは、基板1310の表面の異物、すなわち汚染物質を振動させ、そこから除去させる。
【0039】
再び
図13Aを参照すると、基板洗浄装置はアーム1307も含んでいる。アーム1307は、超音波又は高周波超音波デバイス1303を垂直方向Zに移動させることによって液膜厚さdを変化させるために、超音波又は高周波超音波デバイス1303に結合されている。垂直駆動モジュール1306は、アーム1307を垂直方向に移動させる。垂直駆動モジュール1306及び回転駆動モジュール1316の両方が、制御装置1388によって制御される。
【0040】
図13Aに示す基板洗浄装置の平面図である
図13Bに示すように、超音波又は高周波超音波デバイス1303は、基板1310の小さな領域のみを覆っている。したがって、基板1310は、その全体にわたって均一な音波エネルギーを受け取るために回転しなければならない。
図13A及び
図13Bには1つの超音波又は高周波超音波デバイス1303だけが示されているが、他の実施形態では、2つ又はそれ以上の音波デバイスが同時にまた間欠的に用いられてもよい。同様に、2個以上のノズル1312が、それぞれ洗浄液及び化学溶液を基板1310の表面に供給するために使用されてもよい。
【0041】
本開示のいくつかの態様では、基板ホルダの回転及び音響エネルギーの印加が、一又は複数のコントローラ、例えば、機器のソフトウェアプログラマブル制御によって制御されてよい。一又は複数のコントローラは、回転及び/又はエネルギー印加のタイミングを制御するための一又は複数のタイマを備えていてよい。
【0042】
本発明の具体的な実施形態、実施例、及び、適用に関して説明したが、本発明から逸脱することなく種々の修正及び変形例が可能であることは当業者には明らかであろう。