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特許7217297複合リチウム電池セパレータ及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】複合リチウム電池セパレータ及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/449 20210101AFI20230126BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20230126BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20230126BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20230126BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20230126BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20230126BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20230126BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20230126BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20230126BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20230126BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20230126BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20230126BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20230126BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20230126BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/457
H01M50/403 D
H01M50/434
H01M50/426
H01M50/42
H01M50/443 M
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/44
H01M50/411
H01M50/491
H01M50/403 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020570121
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 CN2018092725
(87)【国際公開番号】W WO2020000164
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】518279484
【氏名又は名称】シェンチェン シニア テクノロジー マテリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ヨンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ピン,シャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リュウハオ
(72)【発明者】
【氏名】イエ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シウフェン
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-517811(JP,A)
【文献】特表2013-544430(JP,A)
【文献】特開2018-163872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
B32B 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムまたはセラミックフイルムと、前記ベースフィルムまたは前記セラミックフイルムの片側または両側を覆う塗布層を有し、
前記塗布層における塗布層ポリマーは、重量部としてフッ素系またはアクリル系樹脂ポリマー10~100部、高分子粘着剤0.5~10部及び無機ナノ粒子0~90部を含み、前記フッ素系または前記アクリル系樹脂ポリマーと前記高分子粘着剤と前記無機ナノ粒子との重量比が、(100:6:150)、(100:6:100)、(350:27:550)、(240:9:60)のいずれかを満たし、
前記フッ素系または前記アクリル系樹脂ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリフッ化ビニリデンとジクロロエテンとの共重合体、ポリスチレン、ポリn-ブチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ-tert-ブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、アクリルアミド及びポリメチルアクリレートからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含み、
前記高分子粘着剤は、スチレンブタジエンラテックス、アクリルスチレンラテックス、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリウレタンからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む
ことを特徴とする複合リチウム電池セパレータ。
【請求項2】
前記ベースフィルムの厚さが5~30μmであり、
空隙率が30%~60%であり、
前記塗布層の厚さが0.5~10μmである
ことを特徴とする請求項1に記載の複合リチウム電池セパレータ。
【請求項3】
前記ベースフィルムは、ポリエチレンベースフィルム、ポリプロピレンベースフィルム、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン複合ベースフィルム、ポリイミドベースフィルム、ポリフッ化ビニリデンベースフィルム、ポリエチレン不織布ベースフィルム、ポリプロピレン不織布ベースフィルム及びポリイミド不織布ベースフィルムからなる組み合わせから選択される1つであることを特徴とする請求項1に記載の複合リチウム電池セパレータ。
【請求項4】
前記フッ素系またはアクリル系樹脂ポリマーの分子量は50000~500000である、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合リチウム電池セパレータ。
【請求項5】
前記無機ナノ粒子は、一般的な無機粒子とリチウムイオン伝導能力を有する無機粒子との混合物であり、
前記一般的な無機粒子と前記リチウムイオン伝導能力を有する無機粒子との重量比が80~95:20~5であり、
前記一般的な無機粒子は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、ベーマイト、酸化チタン、炭酸カルシウム及び二酸化ジルコニウムからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の複合リチウム電池セパレータ。
【請求項6】
前記一般的な無機粒子の粒径範囲が0.01~10μmであり、
前記一般的な無機粒子は、小粒径無機粒子と大粒径無機粒子により重量比80~90:20~10で構成され、
前記小粒径無機粒子の粒径範囲が0.01~0.2μmであり、前記大粒径無機粒子の粒径範囲が0.2~10μmである
ことを特徴とする請求項5に記載の複合リチウム電池セパレータ。
【請求項7】
前記リチウムイオン伝導能力を有する無機粒子は、リン酸リチウム、リチウムチタンフォスフェイト、リチウムアルミニウムチタンホスフェート、リチウム窒素化合物及びリチウムランタンチタン酸塩からなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5に記載の複合リチウム電池セパレータ。
【請求項8】
前記塗布層ポリマーは、重量部として分散剤0.5~10部をさらに含み、
前記分散剤は、カルボン酸塩類フッ素分散剤、リン酸トリエチル、スルホン酸塩類フッ素分散剤、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム及びポリエチレングリコールからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の複合リチウム電池セパレータ。
【請求項9】
前記塗布層ポリマーは、重量部として湿潤剤0.1~8部をさらに含み、
前記湿潤剤は、ポリカーボネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ペルフルオロアルキル基メトキシル基アルコールエーテル、ペルフルオロアルキル基エトキシ基アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンエーテル及びポリオキシエチレンアルキルアミドからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の複合リチウム電池セパレータ。
【請求項10】
前記塗布層ポリマーは、重量部としてポロージェン0.1~10部をさらに含み、
前記ポロージェンが脱イオン水である
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の複合リチウム電池セパレータ。
【請求項11】
前記塗布層ポリマーは、重量部として帯電防止剤0.1~5部をさらに含み、
前記帯電防止剤は、オクタデシルジメチル第4級硝酸アンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムアセタート、N-セチルピリジン硝酸塩、N-アルキルアミノ酸塩、ベタイン系及びイミダゾリン塩類誘導体からなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の複合リチウム電池セパレータ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の複合リチウム電池セパレータの調製方法であって、
秤量したフッ素系またはアクリル系樹脂ポリマー、無機ナノ粒子を均一に攪拌する工程S1と、
段階的に各規定固形分にするように段階的に有機溶剤を加え、均一に攪拌する工程S2と、
高分子粘着剤を加え、均一に攪拌した後、濾過してスラリーを得る工程S3と、
前記スラリーをベースフィルムまたはセラミックフイルムの片側または両側に塗布し、凝固、水洗、乾燥、フォーミングにより、複合リチウム電池セパレータを得る工程S4とを含む
ことを特徴とする複合リチウム電池セパレータの調製方法。
【請求項13】
前記工程S1において、攪拌速度が40~80r/minであり、攪拌時間が15~40minであり、
前記工程S3において、攪拌速度が20~60r/minであり、分散速度が300~800r/minであり、攪拌時間が15~30minであり、スラリー粘度が50~1000cpである
ことを特徴とする請求項12に記載の複合リチウム電池セパレータの調製方法。
【請求項14】
前記工程S2において、
最初、重量部として分散剤0.5~10部を加えて攪拌し、攪拌速度が40~90r/minであり、攪拌時間が10~20minであり、
さらに有機溶剤を加える
ことを特徴とする請求項12に記載の複合リチウム電池セパレータの調製方法。
【請求項15】
有機溶剤は、以下のように添加され、
最初、有機溶剤合計量の4%~5%で徐々に加え、粉体を混練して凝集した直後に添加を停止し、粉体混練後の攪拌速度が80~120r/minであり、攪拌時間が30~90minであり、
さらに、段階的に各規定固形分にするように段階的に有機溶剤を加え、スラリー固形分を所定の固形分になるまで低減させる
ことを特徴とする請求項12または14に記載の複合リチウム電池セパレータの調製方法。
【請求項16】
固形分が所定の固形分よりも高い場合に、攪拌速度が40~100r/minであり、分散速度が2000~4000r/minであり、攪拌時間が15~45minであり、
固形分が所定の固形分になる場合に、攪拌速度が40~80r/minであり、分散速度が3000~4500r/minであり、攪拌時間が30~90minである
ことを特徴とする請求項15に記載の複合リチウム電池セパレータの調製方法。
【請求項17】
前記工程S4において、塗布法は、ディップコート法、マイクログラビア塗布法、スプレーコート法、スライドコート法またはスロットコート法のうちの一つを含み、乾燥温度が40~80℃であることを特徴とする請求項12に記載の複合リチウム電池セパレータの調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン電池分野に関し、具体的に、複合リチウム電池セパレータ及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3C製品(デジモノ)市場と電気自動車市場の繁栄に伴い、リチウムイオン電池への需要量がますます大きくなり、さらにリチウムイオン電池に対しても新しい要求が出されている。セパレータは、リチウムイオン電池の重要な構成部品の一つとして、正極材料と負極材料との間で電子絶縁の役割を果たし、正極と負極の機械的隔離を保証するためのものである。また、セパレータは、一定の気孔径と空隙率を有し、低抵抗と高イオン伝導性を保証するとともに、リチウムイオンの透過性を保つものである。したがって、セパレータの特性と品質は、電池の安全性能、レート性能、サイクル寿命及び基本的な電気性能を大きく左右している。現在、従来の消費電子製品に対して、高い電池エネルギー密度を実現するために、狭い空間でより多くの電極材料を収容する必要があるので、セパレータの厚さが薄くなりつつある。また、電気自動車の航続距離の向上に伴い、電池エネルギー密度への要求もさらに高まっており、セパレータの厚さがより薄くなっている。
【0003】
しかしながら、リチウムイオン電池は、セパレータが薄くなると、以下の性能上の問題が発生してしまう。セパレータの静電気が大きくなるので、電池を組み立てる際に、極片との接着が悪くなったり、高温条件でセパレータが溶縮したりして、電池の正極と負極が接触して電池内部において短絡が発生する場合がある。また、薄い電池セルの硬度、機械的性能も悪いので、リチウム電池製品の性能が弱くなる。さらに、リチウム電池の構造上、液系電池では、セパレータの液吸収能力が悪いため、液漏れの可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、セパレータの液吸収能力を向上させて電池の短絡を防ぐことは、現在、リチウム電池で解決されるべき問題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上記の問題の少なくとも1つを解消するために、イオン伝導性が高く、液吸収能力、液保持能力が良好であり、耐剥離性が強く、正極片と負極片との結合力が高い複合リチウム電池セパレータを提供する。
【0006】
また、本開示は、量産に適する複合リチウム電池セパレータの調製方法を提供する。
【0007】
本開示の目的の少なくとも1つは、以下の技術案によって達成することができる。
【0008】
複合リチウム電池セパレータは、ベースフィルムまたはセラミックフイルムと、ベースフィルムまたはセラミックフイルムの片側または両側を覆う塗布層を有し、塗布層は、スラリーを塗布して形成され、スラリーは、重量%として塗布層ポリマー5%~45%及び有機溶剤55%~95%を含み、塗布層ポリマーは、重量部としてフッ素系またはアクリル系樹脂ポリマー10~100部、高分子粘着剤0.5~10部及び無機ナノ粒子0~90部を含む。
【0009】
好ましい態様の一つとして、ベースフィルムの厚さが5~30μmであり、好ましくは10~20μmであり、空隙率が30%~60%であり、好ましくは40%~50%であり、塗布層の厚さが0.5~10μmであり、好ましくは3~8μmである。
【0010】
好ましい態様の一つとして、ベースフィルムは、ポリエチレンベースフィルム、ポリプロピレンベースフィルム、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン複合ベースフィルム、ポリイミドベースフィルム、ポリフッ化ビニリデンベースフィルム、ポリエチレン不織布ベースフィルム、ポリプロピレン不織布ベースフィルム及びポリイミド不織布ベースフィルムからなる組み合わせから選択される一つである。
【0011】
好ましい態様の一つとして、有機溶剤は、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド及びN-メチルピロリドンからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。
【0012】
好ましい態様の一つとして、フッ素系またはアクリル系樹脂ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリフッ化ビニリデンとジクロロエテンとの共重合体、ポリスチレン、ポリn-ブチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ-tert-ブチルアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、アクリルアミド及びポリメチルアクリレートからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含み、フッ素系またはアクリル系樹脂ポリマーの分子量が50000~500000であり、好ましくは200000~300000である。
【0013】
好ましい態様の一つとして、高分子粘着剤は、スチレンブタジエンラテックス、アクリルスチレンラテックス、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリウレタンからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。
【0014】
好ましい態様の一つとして、無機ナノ粒子は、主として一般的な無機粒子とリチウムイオン伝導能力を有する無機粒子との混合物であり、一般的な無機粒子とリチウムイオン伝導能力を有する無機粒子との重量比が80~95:20~5である。
【0015】
好ましい態様の一つとして、一般的な無機粒子は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、ベーマイト、酸化チタン、炭酸カルシウム及び二酸化ジルコニウムからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。
【0016】
好ましい態様の一つとして、一般的な無機粒子の粒径範囲が0.01~10μmであり、一般的な無機粒子は、小粒径無機粒子と大粒径無機粒子により重量比80~90:20~10で構成され、小粒径無機粒子の粒径範囲が0.01~0.2μmであり、大粒径無機粒子の粒径範囲が0.2~10μmである。
【0017】
好ましい態様の一つとして、リチウムイオン伝導能力を有する無機粒子は、リン酸リチウム、リチウムチタンフォスフェイト、リチウムアルミニウムチタンホスフェート、リチウム窒素化合物及びリチウムランタンチタン酸塩からなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。
【0018】
好ましい態様の一つとして、塗布層ポリマーは、重量部として分散剤0.5~10部をさらに含み、分散剤は、カルボン酸塩類フッ素分散剤、リン酸トリエチル、スルホン酸塩類フッ素分散剤、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム及びポリエチレングリコールからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。
【0019】
好ましい態様の一つとして、塗布層ポリマーは、重量部として湿潤剤0.1~8部をさらに含み、湿潤剤は、ポリカーボネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ペルフルオロアルキル基メトキシル基アルコールエーテル、ペルフルオロアルキル基エトキシ基アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンエーテル及びポリオキシエチレンアルキルアミドからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。
【0020】
好ましい態様の一つとして、塗布層ポリマーは、重量部としてポロージェン0.1~10部をさらに含み、ポロージェンが脱イオン水である。
【0021】
好ましい態様の一つとして、塗布層ポリマーは、重量部として帯電防止剤0.1~5部をさらに含み、帯電防止剤は、オクタデシルジメチル第4級硝酸アンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムアセタート、N-セチルピリジン硝酸塩、N-アルキルアミノ酸塩、ベタイン系及びイミダゾリン塩類誘導体からなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。
【0022】
上記複合リチウム電池セパレータの調製方法は、
秤量したフッ素系またはアクリル系樹脂ポリマー、無機ナノ粒子を均一に攪拌する工程S1と、
段階的に各規定固形分にするように段階的に有機溶剤を加え、均一に攪拌する工程S2と、
高分子粘着剤を加え、均一に攪拌した後、濾過してスラリーを得る工程S3と、
スラリーをベースフィルムまたはセラミックフイルムの片側または両側に塗布し、凝固、水洗、乾燥、フォーミングにより、複合リチウム電池セパレータを得る工程S4とを含む。
【0023】
好ましい態様の一つとして、工程S1において、攪拌速度が40~80r/minであり、攪拌時間が15~40minであり、工程S3において、攪拌速度が20~60r/minであり、分散速度が300~800r/minであり、攪拌時間が15~30minであり、スラリー粘度が50~1000cpである。
【0024】
好ましい態様の一つとして、工程S2において、最初、重量部として分散剤0.5~10部を加えて攪拌し、攪拌速度が40~90r/minであり、攪拌時間が10~20minであり、さらに有機溶剤を加える。
【0025】
好ましい態様の一つとして、有機溶剤は、以下のように添加され、最初、有機溶剤合計量の4%~5%で徐々に加え、粉体を混練して凝集した直後に添加を停止し、粉体混練後の攪拌速度が80~120r/minであり、攪拌時間が30~90minであり、さらに、段階的に各規定固形分にするように段階的に有機溶剤を加え、スラリー固形分を所定の固形分になるまで低減させる。
【0026】
好ましい態様の一つとして、固形分が所定の固形分よりも高い場合に、攪拌速度が40~100r/minであり、分散速度が2000~4000r/minであり、攪拌時間が15~45minであり、固形分が所定の固形分になる場合に、攪拌速度が40~80r/minであり、分散速度が3000~4500r/minであり、攪拌時間が30~90minである。
【0027】
好ましい態様の一つとして、工程S4において、塗布法は、ディップコート法、マイクログラビア塗布法、スプレーコート法、スライドコート法またはスロットコート法のうちの一つを含み、乾燥温度が40~80℃である。
【0028】
従来技術に比べて、本開示の利点および有益な効果は、少なくとも以下のことを含む。
【0029】
1.本開示における複合リチウム電池セパレータは、ベースフィルムまたはセラミックフイルムに存在する孔構造と、ベースフィルムまたはセラミックフイルムに塗布され無機ナノ粒子及び粘着剤によって形成された塗布層に存在する多孔構造との両方を有するため、高い塗布層空隙率を有し、液体電解液が浸入する空間体積を向上させることができる。これによって、リチウムイオン伝導率とセパレータの液吸収性、液保持性を大幅に改善し、ゲル状態の電解質を形成し、電池の液漏れのリスクを低減することができる。また、耐剥離性が強く、正極片と負極片との結合力が高くなる。
【0030】
2.本開示における調製方法によって調製されたスラリーは、安定性が高く、60days以上密閉されても、明らかな層化や沈殿が発生しなく、通常とおり使用できるので、複合リチウム電池セパレータにおける塗布層の連続的な量産に寄与できる。このため、本開示における調製方法は、量産に適している。
【0031】
3.本開示における無機ナノ粒子において、リチウムイオン伝導能力を有する無機粒子は、一般的な無機粒子と相乗効果があるので、リチウムイオン伝導率を向上させることができ、さらに電池性能を改善することができる。
【0032】
4.本開示は、大粒径無機粒子と小粒径無機粒子とを併用することにより、塗布層における無機粒子が密に堆積された形態になるので、塗布層の高温耐性を向上させることができ、セパレータの熱収縮性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本開示の具体的な実施形態または従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下では、具体的な実施形態または従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。以下の図面は、本開示に係るいくつかの実施形態を示すものであり、当業者であれば、発明能力を用いなくても、これらの図面に基づいてその他の関連図面を得ることが可能である。
図1】本開示の実施例1の複合リチウム電池セパレータの電子顕微鏡写真である。
図2】本開示の実施例1と比較例2で調製されたパウチ電池のサイクル試験のデータ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面及び具体的な実施形態を参照しながら、本開示の技術案を明確かつ完全に説明するが、当業者であれば、以下に記載する実施例は、本開示の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。さらに、当該実施例は、本開示を説明するためのものに過ぎず、本開示の範囲を限定するものではない。本開示の実施例をもとに、当業者が発明能力を用いることなく得たすべての他の実施例は、本開示の保護範囲に属する。実施例において、具体的な条件を明記しないことについて、常規の条件又はメーカーの勧めの条件下で行うことが可能である。使用する試剤又は器械の、製造メーカーが明記されていないものが、市販の常規製品を使用することが可能である。
【0035】
本開示の複合リチウム電池セパレータは、ベースフィルムまたはセラミックフイルムと、ベースフィルムまたはセラミックフイルムの片側または両側を覆う塗布層を有する。塗布層は、スラリーを塗布して形成される。スラリーは、重量%として塗布層ポリマー5%~45%と有機溶剤55%~95%とを含む。塗布層ポリマーは、重量部としてフッ素系またはアクリル系樹脂ポリマー10~100部、高分子粘着剤0.5~10部及び無機ナノ粒子0~90部を含む。ベースフィルムの厚さが5~30μmであってもよく、好ましくは10~20μmである。空隙率が30%~60%であってもよく、好ましくは40%~50%である。塗布層の厚さが0.5~10μmであってもよく、好ましくは3~8μmである。
【0036】
そのうち、フッ素系またはアクリル系樹脂ポリマーを第1粘着剤とし、高分子粘着剤を第2粘着剤とし、これらの油質ポリマーと無機ナノ粒子とが複合されて塗布層が形成される。そのため、本開示における複合リチウム電池セパレータは、ベースフィルムまたはセラミックフイルムに存在する孔構造と、ベースフィルムまたはセラミックフイルムに塗布され無機ナノ粒子及び粘着剤によって形成された塗布層に存在する多孔構造との両方を有するため、高い塗布層空隙率を有し、液体電解液が浸入する空間体積を向上させることができる。これによって、リチウムイオン伝導率とセパレータの液吸収性、液保持性を大幅に改善し、ゲル状態の電解質を形成し、電池の液漏れのリスクを低減することができる。また、第1粘着剤と第2粘着剤の分子上の極性官能基と電極材料との間のファンデルワールス力により、セパレータと極片とをしっかりと接着することができるので、電池短絡の発生比率を低減できるとともに、電池の硬度と形状保持能力を高めることができる。
【0037】
本開示における複合リチウム電池セパレータにおいて、ベースフィルムは、具体的に、ポリエチレンベースフィルム、ポリプロピレンベースフィルム、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン複合ベースフィルム、ポリイミドベースフィルム、ポリフッ化ビニリデンベースフィルム、ポリエチレン不織布ベースフィルム、ポリプロピレン不織布ベースフィルム及びポリイミド不織布ベースフィルムからなる組み合わせから選択される一つであってもよい。
【0038】
本開示における複合リチウム電池セパレータに用いられる有機溶剤は、具体的に、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド及びN-メチルピロリドン(NMP)からなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0039】
本開示における複合リチウム電池セパレータに用いられるフッ素系またはアクリル系樹脂ポリマーは、具体的に、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリフッ化ビニリデンとジクロロエテンとの共重合体、ポリスチレン、ポリn-ブチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ-tert-ブチルアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、アクリルアミド及びポリメチルアクリレートからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含んでも良い。フッ素系またはアクリル系樹脂ポリマーの分子量は、50000~500000であり、好ましくは、200000~300000である。
【0040】
本開示における複合リチウム電池セパレータに用いられる高分子粘着剤は、具体的に、スチレンブタジエンラテックス、アクリルスチレンラテックス、ポリビニルアセテート(PVAC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチルアクリレート(PEA)、ポリブチルメタクリレート(PBMA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)及びポリウレタン(PU)からなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含んでも良い。
【0041】
本開示における複合リチウム電池セパレータに用いられる無機ナノ粒子は、具体的に、主として一般的な無機粒子とリチウムイオン伝導能力を有する無機粒子との混合物であり、それらの重量比が80~95:20~5である。無機ナノ粒子のうちのリチウムイオン伝導能力を有する無機粒子は、一般的な無機粒子(圧電気性あり)と相乗効果があるので、リチウムイオン伝導率を向上させることができ、さらに電池性能を改善することができる。
【0042】
任意選択で、一般的な無機粒子は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、ベーマイト、酸化チタン、炭酸カルシウム及び二酸化ジルコニウムからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。一般的な無機粒子の粒径範囲が0.01~10μmである。一般的な無機粒子は、小粒径無機粒子と大粒径無機粒子により重量比80~90:20~10で構成され、小粒径無機粒子の粒径範囲が0.01~0.2μmであり、大粒径無機粒子の粒径範囲が0.2~10μmである。本開示は、大粒径無機粒子と小粒径無機粒子とを併用することにより、塗布層における無機粒子が密に堆積された形態になるので、塗布層の高温耐性を向上させることができ、セパレータの熱収縮性を低減することができる。
【0043】
任意選択で、リチウムイオン伝導能力を有する無機粒子は、リン酸リチウム、リチウムチタンフォスフェイト、リチウムアルミニウムチタンホスフェート、リチウム窒素化合物及びリチウムランタンチタン酸塩からなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。
【0044】
上記技術案において、本開示における塗布層ポリマーは、重量部として分散剤0.5~10部をさらに含んでも良い。分散剤は、カルボン酸塩類フッ素分散剤、リン酸トリエチル(TEP)、スルホン酸塩類フッ素分散剤、ポリアクリル酸ナトリウム(PAA-Na)、ポリアクリル酸カリウム(PAA-K)及びポリエチレングリコールからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。
【0045】
上記技術案において、本開示における塗布層ポリマーは、重量部として湿潤剤0.1~8部をさらに含んでも良い。湿潤剤は、ポリカーボネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ペルフルオロアルキル基メトキシル基アルコールエーテル、ペルフルオロアルキル基エトキシ基アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(APEO)、脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル(AEO)、脂肪酸ポリオキシエチレンエーテル(FMEE)及びポリオキシエチレンアルキルアミドからなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。
【0046】
上記技術案において、本開示における塗布層ポリマーは、重量部としてポロージェン0.1~10部をさらに含んでも良い。ポロージェンが脱イオン水である。本開示における複合リチウム電池セパレータは、ベースフィルムまたはセラミックフイルムに存在する孔構造と、塗布層に存在する多孔構造との両方を有し、さらに、ポロージェンにより塗布層にける気孔数量を大幅に増加させることができるので、複合リチウム電池セパレータの性能をさらに向上させることができる。ポロージェンは、脱イオン水であることが好ましい。これによって、安価であるとともに、形成される塗布層を凝固させ、水洗する際に、凝固槽や水洗槽へ過剰な不純物を放出することがなく、凝固槽や水洗槽の廃水回収の難しさを低減することができる。
【0047】
上記技術案において、本開示における塗布層ポリマーは、重量部として帯電防止剤0.1~5部をさらに含んでも良い。帯電防止剤は、オクタデシルジメチル第4級硝酸アンモニウム(SN)、トリメチルオクタデシルアンモニウムアセタート、N-セチルピリジン硝酸塩、N-アルキルアミノ酸塩、ベタイン系及びイミダゾリン塩類誘導体からなる組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。本開示は、帯電防止剤を用いることにより、形成されるセパレータの表面静電気が少なくなり、セパレータと極片とを組み立てる際の接着が平坦でないという問題を解決し、電池の組み立てが容易になる。さらに、セパレータの耐剥離性が強くなり、正極片と負極片との結合力が高くなり、電池の硬度を向上させ、電池の内部短絡のリスクが顕著に低減される。
【0048】
本開示は、さらに、以下の工程を含む上記複合リチウム電池セパレータの調製方法を提供する。
【0049】
S1において、秤量したフッ素系またはアクリル系樹脂ポリマー、無機ナノ粒子(具体的に大粒径無機粒子、小粒径無機粒子及びリチウムイオン伝導能力を有する無機粒子を含む)を均一に攪拌する。任意選択で、上記原料を小容量攪拌槽に入れて均一に攪拌し、攪拌速度が40~80r/minであり、攪拌時間が15~40minである。
【0050】
S2において、段階的に各規定固形分にするように段階的に有機溶剤を加え、均一に攪拌する。
【0051】
任意選択で、最初、小容量攪拌槽に分散剤を加えて、攪拌し、さらに有機溶剤を徐々に加え、添加された分散剤の攪拌速度が40~90r/minであり、攪拌時間が10~20minである。最初、有機溶剤合計量の4%~5%で徐々に加え、粉体を混練して凝集させた直後に添加を停止する。粉体混練後の攪拌速度が80~120r/minであり、攪拌時間が30~90minである。そして、小容量攪拌槽におけるスラリーを大容量攪拌槽に移す。
【0052】
さらに、段階的に各規定固形分にするように段階的に大容量攪拌槽に有機溶剤を加え、スラリー固形分を所定の固形分までに低減させ(高→中→所定の固形分)、均一に攪拌する。この過程において、固形分が所定の固形分よりも高い場合に、攪拌速度が40~100r/minであり、分散速度が2000~4000r/minであり、攪拌時間が15~45minである。固形分が所定の固形分になる場合に、攪拌速度が40~80r/minであり、分散速度が3000~4500r/minであり、攪拌時間が30~90minである。
【0053】
S3において、高分子粘着剤を加え、均一に攪拌した後、濾過してスラリーを得る。任意選択で、大容量攪拌槽に高分子粘着剤、湿潤剤、ポロージェン及び帯電防止剤を加え、均一に攪拌し、攪拌速度が20~60r/minであり、分散速度が300~800r/minであり、攪拌時間が15~30minであり、スラリー粘度が50~1000cpである。任意選択で、200メッシュのナイロン篩で濾過する。上記の方法により調製されたスラリーは、安定性が高く、60days以上密閉されても、明らかな層化や沈殿が発生しなく、通常とおり使用できるので、複合リチウム電池セパレータにおける塗布層の連続的な量産に寄与できる。
【0054】
S4において、スラリーをベースフィルムまたはセラミックフイルムの片側または両側に塗布し、凝固、水洗、乾燥、フォーミングにより、複合リチウム電池セパレータを得る。塗布法は、ディップコート法、マイクログラビア塗布法、スプレーコート法、スライドコート法またはスロットコート法のうちの一つを含み、乾燥温度が40~80℃である。
【0055】
以下、具体的な実施例及び比較例を参照しながら、上記の技術案をさらに説明する。
【0056】
実施例1
本実施例は、以下の工程により調製された複合リチウム電池セパレータを提供する。
【0057】
(1)3kgのポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、2.42kgの大粒径酸化アルミニウム粉体、430gの小粒径酸化アルミニウム粉体および150gのリチウムチタンフォスフェイトを小容量攪拌槽に入れて、70r/minの回転速度で25min攪拌した。
【0058】
(2)小容量攪拌槽に、120gのポリエチレングリコールを加え、NMP 1.5kgを徐々に加え、攪拌し、粉体を混練して凝集させ、この状態で110r/minの回転速度で50min攪拌し続け、攪拌した後、小容量攪拌槽におけるスラリーを大容量攪拌槽に移した。
【0059】
(3)大容量攪拌槽に、スラリー固形分が58%になるようにNMP 3kgを加え、75r/minの攪拌速度と3000r/minの分散速度で20min攪拌し、さらにスラリー固形分が30%になるようにNMP 10kgを加え、75r/minの攪拌速度と3000r/minの分散速度で20min攪拌し、さらにスラリー固形分が19.3%になるようにNMP 11.15kgを加え、80r/minの攪拌速度と3500r/minの分散速度で50min攪拌した。
【0060】
(4)大容量攪拌槽に、180gのポリビニルアルコール、60gのドデシル硫酸ナトリウム、30gの脱イオン水及び60gのオクタデシルジメチル第4級硝酸アンモニウムをそれぞれ加え、30r/minの攪拌速度と600r/minの分散速度でスラリーを30min攪拌し、スラリーを均一に攪拌した後、200メッシュのナイロン篩で濾過し、固形分が20%であり、粘度が210cpであるスラリーを得た。
【0061】
(5)マイクログラビア塗布法により、厚さが16μmであり、空隙率が47%であるポリプロピレンベースフィルムの両側にスラリーを塗布し、凝固、水洗、乾燥、フォーミングにより、複合リチウム電池セパレータを得、複合リチウム電池セパレータの厚さが23μmであり、各側面塗布層のそれぞれの厚さが3.5μmであった。
【0062】
実施例2
本実施例は、以下の工程により調製された複合リチウム電池セパレータを提供する。
【0063】
(1)3kgのポリフッ化ビニリデンとジクロロエテンとの共重合体、2.42kgの大粒径ベーマイト粉体、430gの小粒径ベーマイト及び150gのリン酸リチウムを小容量攪拌槽に入れて、70r/minの回転速度で25min攪拌した。
【0064】
(2)実施例1の(2)~(4)により、固形分が20%で、粘度が230cpであるスラリーを得た。
【0065】
(3)マイクログラビア塗布法により、厚さが12μmであり、空隙率が42%であるポリプロピレンベースフィルムの両側にスラリーを塗布し、凝固、水洗、乾燥、フォーミングにより、複合リチウム電池セパレータを得、複合リチウム電池セパレータの厚さが18μmであり、各側面塗布層のそれぞれの厚さが3μmであった。
【0066】
実施例3
本実施例は、以下の工程により調製された複合リチウム電池セパレータを提供する。
【0067】
(1)3kgの第1粘着剤(ポリメチルメタクリレート:ポリフッ化ビニリデン=20:80)、3.6kgの大粒径ベーマイト粉体、700gの小粒径ベーマイト粉体および200gのリチウムアルミニウムチタンホスフェートを小容量攪拌槽に入れて、60r/minの回転速度で30min攪拌した。
【0068】
(2)小容量攪拌槽に172.5gのポリアクリル酸ナトリウムを加え、徐々にアセトン2kgを加え、攪拌し、粉体を混練して凝集させ、この状態で110r/minの回転速度で50min攪拌し続け、攪拌した後、小容量攪拌槽におけるスラリーを大容量攪拌槽に移した。
【0069】
(3)大容量攪拌槽に、スラリー固形分が52%になるようにアセトン4kgを加え、75r/minの攪拌速度と3000r/minの分散速度で20min攪拌し、さらにスラリー固形分が32%になるようにアセトン10kgを加え、75r/minの攪拌速度と3000r/minの分散速度で20min攪拌し、さらにスラリー固形分が24.3%になるようにアセトン7.9kgを加え、80r/minの攪拌速度と3500r/minの分散速度で50min攪拌した。
【0070】
(4)大容量攪拌槽に、180gのアクリルスチレンラテックス、60gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、30gの脱イオン水及び60gのトリメチルオクタデシルアンモニウムアセタートをそれぞれ加え、30r/minの攪拌速度と600r/minの分散速度でスラリーを30min攪拌し、スラリーを均一に攪拌した後、200メッシュのナイロン篩で濾過し、固形分が25%であり、粘度が160cpであるスラリーを得た。
【0071】
(5)スプレーコート法により、厚さが12μmであり、空隙率が40%であるポリエチレンベースフィルムの両側に高結合性スラリーを塗布し、凝固、水洗、乾燥、フォーミングにより、複合リチウム電池セパレータを得、複合リチウム電池セパレータの厚さが16μmであり、各側面塗布層のそれぞれの厚さが2μmであった。
【0072】
実施例4
本実施例は、以下の工程により調製された複合リチウム電池セパレータを提供する。
【0073】
(1)3.5kgの第1粘着剤(ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体:ポリメチルメタクリレート=90:10)、4.4kgの大粒径二酸化チタン粉体、800gの小粒径二酸化チタン粉体および300gのリチウム窒素化合物を小容量攪拌槽に入れて、50r/minの回転速度で30min攪拌した。
【0074】
(2)小容量攪拌槽に、180gのリン酸トリエチルを加え、DMAC 2.5kgを徐々に加え、攪拌し、粉体を混練して凝集させ、この状態で110r/minの回転速度で50min攪拌し続け、攪拌した後、小容量攪拌槽におけるスラリーを大容量攪拌槽に移した。
【0075】
(3)大容量攪拌槽に、スラリー固形分が55%になるようにDMAC 5kgを加え、75r/minの攪拌速度と3000r/minの分散速度で20min攪拌し、さらにスラリー固形分が37%になるようにDMAC 8kgを加え、75r/minの攪拌速度と3000r/minの分散速度で20min攪拌し、さらにスラリー固形分が29.1%になるようにDMAC 6.9kgを加え、80r/minの攪拌速度と3500r/minの分散速度で50min攪拌した。
【0076】
(4)大容量攪拌槽に、270gのポリブチルメタクリレート、60gのポリカーボネート、45gの脱イオン水及び90gのN-セチルピリジン硝酸塩をそれぞれ加え、30r/minの攪拌速度と600r/minの分散速度でスラリーを30min攪拌し、スラリーを均一に攪拌した後、200メッシュのナイロン篩で濾過し、固形分が30%であり、粘度が400cpであるスラリーを得た。
【0077】
(5)ディップコート法により、厚さが16μmであり、空隙率が45%であるPP/PE/PP複合ベースフィルムの両側に高結合性スラリーを塗布し、凝固、水洗、乾燥、フォーミングにより、複合リチウム電池セパレータを得、複合リチウム電池セパレータの厚さが20μmであり、各側面塗布層のそれぞれの厚さが2μmであった。
【0078】
実施例5
本実施例は、以下の工程により調製された複合リチウム電池セパレータを提供する。
【0079】
(1)4.8kgのポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、969gの大粒径酸化アルミニウム粉体、171gの小粒径酸化アルミニウム粉体および60gのリチウムランタンチタン酸塩を小容量攪拌槽に入れて、70r/minの回転速度で30min攪拌した。
【0080】
(2)小容量攪拌槽に、120gのスルホン酸塩類フッ素分散剤を加え、NMP 1.5kgを徐々に加え、攪拌し、粉体を混練して凝集させ、この状態で110r/minの回転速度で50min攪拌し続け、攪拌した後、小容量攪拌槽におけるスラリーを大容量攪拌槽に移した。
【0081】
(3)大容量攪拌槽に、スラリー固形分が58%になるようにNMP 3kgを加え、75r/minの攪拌速度と3000Rの分散速度で20min攪拌し、さらにスラリー固形分が24%になるようにNMP 15kgを加え、75r/minの攪拌速度と3000r/minの分散速度で20min攪拌し、さらにスラリー固形分が14.4%になるようにNMP 17kgを加え、80r/minの攪拌速度と3500r/minの分散速度で50min攪拌した。
【0082】
(4)大容量攪拌槽に、180gのエチレン-酢酸ビニル共重合体、80gのペルフルオロアルキル基メトキシル基アルコールエーテル、30gの脱イオン水及び60gのN-アルキルアミノ酸塩をそれぞれ加え、30r/minの攪拌速度と600r/minの分散速度でスラリーを30min攪拌し、スラリーを均一に攪拌した後、200メッシュのナイロン篩で濾過し、固形分が15%であり、粘度が280cpであるスラリーを得た。
【0083】
(5)マイクログラビア塗布法により、厚さが16μmである片面セラミックフイルムの両側にスラリーを塗布し、凝固、水洗、乾燥、フォーミングにより、複合リチウム電池セパレータを得、複合リチウム電池セパレータの厚さが18μmであり、各側面塗布層のそれぞれの厚さが1μmであった。
【0084】
比較例1
本比較例は、厚さが16μmであり、空隙率が47%であるポリプロピレンベースフィルムであるリチウム電池セパレータを提供し、塗布層処理が施されていない。
【0085】
比較例2
本比較例は、従来のセラミックスラリーにより塗布されたリチウムイオン電池セパレータを提供し、セパレータ厚さが22μmである。そのうち、ベースフィルムは、厚さが16μmであり、空隙率が47%であるポリプロピレンベースフィルムである。従来のセラミックスラリーを両側に塗布して塗布層を形成し、各側面塗布層のそれぞれの厚さが3μmであった。
【0086】
以下、試験により実施例と比較例の製品を測定する。
【0087】
一.電子顕微鏡で実施例1の複合リチウム電池セパレータをスキャンした。図1は、電子顕微鏡写真である。
【0088】
図1から分かるように、当該複合リチウム電池セパレータは、多孔構造を有し、空隙率が非常に高い。そのため、本開示における調製方法により得られた複合リチウム電池セパレータは、イオン伝導性が高く、液吸収能力、液保持能力が良好である。
【0089】
二.実施例1~5の複合リチウム電池セパレータ、比較例1のリチウム電池セパレータ及び比較例2のリチウムイオン電池セパレータに対して、塗布層空隙率、熱収縮データ、塗布層と極片との界面結合力、及び電池セルの曲げ強度を測定した。そのうち、界面結合力のテスト条件は、温度90℃、圧力8Mpa、時間1minであり、極片がコバルト酸リチウム極片であり、各測定のデータ結果を下記の表1に示す。
【0090】
表1 製品の測定データの結果
【0091】
【表1】
上記の表から分かるように、本開示における調製方法により得られた複合リチウム電池セパレータは、熱収縮性が良好であり、極片との結合力が高く、電池セルの曲げ強度が大きく、比較例における塗布層が塗布されていないセパレータとセラミックスラリーが塗布されたセパレータによりも、著しく優れている。
【0092】
比較例1と比較例2のセパレータは、ポリオレフィンセパレータとセラミックセパレータである。ポリオレフィンセパレータは、常温で十分な機械的強度と化学安定性を提供できるが、高温条件下で大きな熱収縮が発生し、正極が負極と接触すると、急速に大量の熱が蓄積され、電池内部が高気圧状態になる。したがって、電池の燃焼や爆発を引き起こす可能性がある。セパレータの減厚の傾向に伴い、膜厚が薄くなると、突刺リスクが相対的に高くなり、熱安定性が相対的に低くなるため、セパレータ生産企業は、セパレータ表面にセラミックを塗布したり、セラミックフイルム表面に水系ポリマーを塗布したりして、セパレータを強化するが、セパレータと極片との粘着能力、セパレータの電解液への液吸収能力をよく改善できず、電池の安全性能がよく保障されていない。
【0093】
三.実施例1の複合リチウム電池セパレータ、比較例2のリチウムイオン電池セパレータを用いて、同じプロセス及び条件でパウチ電池を製造し、1Cレートの充放電でサイクル試験を行う。図2は、サイクル試験のデータ図である。
【0094】
図2には、a線が実施例1に対応するパウチ電池の容量維持率のサイクル回数の増加に伴う変化を示し、b線が比較例2に対応するパウチ電池の容量維持率のサイクル回数の増加に伴う変化を示す。図2から分かるように、比較例2に比べて、実施例1の容量維持率が安定である。これは、本開示に用いられるポリマー樹脂の割合が比較例2に用いられるセラミック粒子よりも低く、リチウムイオン電池のエネルギー密度を向上させたためである。また、従来のセラミックスラリーに比べて、ポリマー樹脂の硬度がアルミナよりも小さく、生産上、機器の摩耗も小さくなる。
【0095】
具体的な実施例を用いて本開示を説明したが、上記の各実施例は、本開示の技術案を説明するためのものにすぎず、制限するものではない。当業者であれば、本開示の精神と範囲を逸脱しない限り、上記の各実施例に記載された技術案を変更し、或いはその中の一部又は全部の技術的特徴を均等置換することが可能である。これらの変更又は置換が、該当する技術案の主旨に本開示の各実施例における技術案の範囲を逸脱させることがない。このため、付する特許請求の範囲は、本開示の範囲内に属する全ての当該置換と変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本開示における複合リチウム電池セパレータは、イオン伝導性が高く、液吸収能力、液保持能力が良好であり、耐剥離性が強く、正極片と負極片との結合力が高い。本開示における複合リチウム電池セパレータの調製方法は、量産に適しており、その実用性と経済性を向上させた。
図1
図2