(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】キャビティ付き気密型表面実装ヒューズ
(51)【国際特許分類】
H01H 85/175 20060101AFI20230126BHJP
H01H 85/10 20060101ALI20230126BHJP
H01H 85/143 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
H01H85/175
H01H85/10
H01H85/143
(21)【出願番号】P 2021089128
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2021-05-27
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】510101697
【氏名又は名称】功得電子工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Conquer Electoronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.26,Wucyuan 5th RD.,Wugu Dist.,New Taipei City,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】邱 鴻智
(72)【発明者】
【氏名】邱 柏碩
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0294126(US,A1)
【文献】特開昭61-259430(JP,A)
【文献】特開2003-151417(JP,A)
【文献】特開2004-152518(JP,A)
【文献】中国実用新案第211265400(CN,U)
【文献】特開2004-319195(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130306(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0111240(US,A1)
【文献】米国特許第05604475(US,A)
【文献】特許第5737664(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/00 - 87/00
H01H 37/76
H01H 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口及び気密型内部空間を有するハウジングと、
溶断部と、二つの中間部と、二つの導電部とを有するヒューズエレメントであって、各前記中間部が、前記溶断部における
一対の端部と、
一対の前記導電部との間に接続され、前記溶断部及び二つの前記中間部が前記ハウジングの内部空間内に設置され、各前記導電部が前記開口から前記ハウジング外に延出しているヒューズエレメントと、
前記ハウジングの開口に取り付けられている蓋と、
前記ハウジングと、前記蓋と、前記ハウジングにおける前記蓋の取り付け箇所に位置する前記導電部とを被覆する封止体と、を備え、
前記ヒューズエレメントにおける二つの前記導電部は、前記封止体外に部分的に露出し
、
前記ハウジングの開口は、長方形をなし、且つ、対向する二つの第1縁部及び対向する二つの第2縁部を有し、
前記ハウジングの蓋は、直方体をなし、且つ、前記気密型内部空間側に、対向する二つの第3縁部及び対向する二つの第4縁部を有し、
前記開口における二つの前記第1縁部の高さは、二つの前記第2縁部の高さよりも高く、
前記蓋の二つの前記第4縁部は、前記開口の二つの前記第2縁部のそれぞれに設置され、且つ前記蓋の外表面は前記開口の二つの第1縁部と面一となり、
前記ヒューズエレメントの二つの前記導電部は、前記開口の二つの前記第2縁部のそれぞれに設置され、且つ各前記導電部における前記封止体外に露出している部分は、当該部分に対応する前記蓋の外表面を被覆する前記封止体に沿うように湾曲されている、キャビティ付き気密型表面実装ヒューズ。
【請求項2】
二つの前記中間部及び前記溶断部は、前記開口から離れるように湾曲した弧状に形成されている、請求項1に記載のキャビティ付き気密型表面実装ヒューズ。
【請求項3】
前記ヒューズエレメントの前記溶断部は、
第1部と、
前記第1部の両端部から延出し、且つ対応の前記中間部にそれぞれ接続される二つの第2部とを有し、
二つの前記第2部のそれぞれに孔部が形成されている、請求項1
又は2に記載のキャビティ付き気密型表面実装ヒューズ。
【請求項4】
前記溶断部の前記第1部は一字状に形成されており、
二つの前記中間部の幅は、前記溶断部の前記第1部の幅より大きい、請求項
3に記載のキャビティ付き気密型表面実装ヒューズ。
【請求項5】
前記ヒューズエレメントの各前記導電部に貫通孔が形成されている、請求項1から
4のいずれか一項に記載のキャビティ付き気密型表面実装ヒューズ。
【請求項6】
前記ヒューズエレメントは、銀、銅、ニッケル、スズ、アルミニウム、亜鉛又はこれらの合金から形成される、請求項1から
5のいずれか一項に記載のキャビティ付き気密型表面実装ヒューズ。
【請求項7】
前記ヒューズエレメントの前記溶断部は
蛇腹状に湾曲
している、請求項1
又は2に記載のキャビティ付き気密型表面実装ヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装ヒューズに関し、特に表面実装技術を用いて設置される表面実装ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒューズは、ヒューズエレメントを有しており、当該ヒューズが直列に接続された保護対象の回路に異常(例えば過電流)が発生した際にヒューズエレメントが過熱によって溶断されて保護対象の回路が遮断されることで、回路を保護する目的が果たされる。
【0003】
ヒューズは、工場又は宇宙空間を含め多種多様な環境で使用されている。ヒューズエレメントが溶断した際、溶断箇所に存在する強い電場によって絶縁体である空気が絶縁破壊されて電気アークが発生することがある。そのため、可燃性ガスが存在する工場にヒューズが使用される場合では、電気アークによって可燃性ガスが引火される危険性がある。一方、宇宙空間等の特殊環境によるヒューズエレメントへの影響に関する実験データは未だ報告されておらず、宇宙空間で使用する場合にはヒューズが機能しない虞がある。したがって、これら問題点を解決できるヒューズが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、異なる環境に適応可能なキャビティ付き気密型表面実装ヒューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記発明の目的を達成するために提供される本発明に係るキャビティ付き気密型表面実装ヒューズは、
開口及び気密型内部空間を有するハウジングと、
溶断部と、二つの中間部と、二つの導電部とを有するヒューズエレメントであって、各前記中間部が、前記溶断部における一対の端部と、一対の前記導電部との間に接続され、前記溶断部及び二つの前記中間部が前記ハウジングの内部空間内に設置され、各前記導電部が前記開口から前記ハウジング外に延出しているヒューズエレメントと、
前記ハウジングの開口に取り付けられている蓋と、
前記ハウジングと、前記蓋と、前記ハウジングにおける前記蓋の取り付け箇所に位置する前記導電部とを被覆する封止体と、を備え、
前記ヒューズエレメントにおける二つの前記導電部は、前記封止体外に部分的に露出している、という点に特徴がある。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように、本発明に係るキャビティ付き気密型表面実装ヒューズでは、ハウジングと、蓋と、ハウジングにおける蓋の取り付け箇所に位置するヒューズエレメントの導電部とを封止体によって被覆しているため、ハウジング、蓋及び導電部の間の隙間を完全に封止し、ハウジングの内部空間を気密状態にすることができる。気密型内部空間内にヒューズエレメントの溶断部が設置されていることで、溶断部が溶断した際に発生する電気アークによって外部の可燃性ガスが引火されることが回避される。そして、気密環境に設置された溶断部は外部環境による影響を受けにくくなるため、本発明のキャビティ付き気密型表面実装ヒューズは様々な環境への適用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る第1実施形態のキャビティ付き気密型表面実装ヒューズの斜視図である。
【
図2】
図1に示すキャビティ付き気密型表面実装ヒューズの、封止体が省略された分解斜視図である。
【
図3】
図1に示すキャビティ付き気密型表面実装ヒューズの側面断面図である。
【
図4】本発明に係る第1実施形態のヒューズエレメントの湾曲前の状態を示す平面図である。
【
図5A】本発明に係る第2実施形態のヒューズエレメントの湾曲前の状態を示す平面図である。
【
図5B】
図5Aに示すヒューズエレメントの湾曲後の状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係る第2実施形態のキャビティ付き気密型表面実装ヒューズの斜視図である。
【
図7】本発明に係る第3実施形態のキャビティ付き気密型表面実装ヒューズの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るキャビティ付き気密型表面実装ヒューズのいくつかの実施形態を詳細に説明する。
【0009】
図1に示す本発明に係る第1実施形態のキャビティ付き気密型表面実装ヒューズ1aは、ハウジング10、ヒューズエレメント20、蓋30及び封止体40を備える。
【0010】
図2に示すように、ハウジング10は開口11及び内部空間12を有する。本実施形態において、ハウジング10は、直方体をなしており、平面視で長方形をなす横板101と、横板101の四つの縁部から垂直的に延出する縦板102とを有する。これら縦板102は、内部空間12及び開口11を構成するように互いに接続されている。直方体であるハウジング10の開口11は、長方形をなしており、対向する二つの第1縁部111、及び対向する二つの第2縁部112を有する。対向する二つの第1縁部111の高さは対向する二つの第2縁部112の高さよりも高い。ある実施形態において、
図2に示すように、第1縁部111が長縁部であって第2縁部112が短縁部であり、且つハウジング10がセラミック材料から構成されるが、本発明はこれに限定されない。
【0011】
図2及び
図4に示すように、ヒューズエレメント20は、互いに直交する長手方向と短手方向を有する、平面視形状が略矩形状である板体から構成されており、溶断部21、二つの中間部22、二つの導電部23を有する。ヒューズエレメント20は、ハウジング10の開口11に固定されている。本実施形態において、二つの導電部23は、ヒューズエレメント20の長手方向における両端部にそれぞれ設けられ、溶断部21は、長手方向における略中央部に設けられている。各中間部22は、溶断部21における
一対の端部と、
一対の導電部23との間に接続されている。溶断部21及び二つの中間部22は、ハウジング10の内部空間12内に配置されており、且つハウジング10の横板101に向かって下方へ湾曲されて弧状に形成されている。ヒューズエレメント20の二つの導電部23は、開口11における二つの第2縁部112のそれぞれに設置されている。ある実施形態において、
図4に示すように、溶断部21は、第1部211と、当該第1部211から各中間部22に延出する二つの第2部212とを有する。第1部211は一字状に形成されており、且つ第1部211の短手方向における幅は、各第2部212の短手方向における幅よりも小さい。また、第1部211の短手方向における幅は、各中間部22の短手方向における幅よりも小さい。各第2部212に孔部24が形成されており、溶断部21が溶断すると、溶断箇所間の距離はこれら孔部24の存在により増加し、その結果、電気アークが発生する確率は低くなる。各導電部23には、貫通孔231が形成されている。ある実施形態において、ヒューズエレメント20は銀、銅、ニッケル、スズ、アルミニウム及び亜鉛などの金属又はこれらの合金から形成される。別実施形態において、ヒューズエレメント20は、定格電流が比較的小さい(例えば0.5アンペア~10アンペア)回路の保護に用いられるものとして、
図5Aに示すように、溶断部21が非直線状
すなわち蛇腹状に湾曲した
平板状の経路に形成されており、これにより、中間部22同士間の距離を広げることなく、溶断部21の全長を長くすることができる。ここで、溶断部21の短手方向における幅D1は、中間部22の短手方向における幅D2よりも大きい。そして、
図2に示す実施形態と同様に、ハウジング10の内部空間12内に設置される前に、ヒューズエレメント20の溶断部21及び二つの中間部22は、
図5Bに示すように、横板101に向かって下方へ湾曲されて弧状に形成され、すなわち、溶断部21及び二つの中間部22は、開口11から離れるように湾曲されている。加えて、溶断部21の短手方向における両縁部も開口11から離れる方向に湾曲されている。これにより、溶断部21の短手方向における幅が小さくなるため、ハウジング10の内部空間12へのヒューズエレメント20の設置がより容易となる。
【0012】
図2及び
図3に示すように、蓋30は、ヒューズエレメント20の溶断部21をハウジング10の内部空間12内に封入するように、ハウジング10の開口11内に取り付けられている。本実施形態において、蓋30は、直方体をなしており、対向する二つの第3縁部31と、対向する二つの第4縁部3
2とを有する。二つの第4縁部32は、開口11の二つの第2縁部112のそれぞれに設置され、
図1に示すように、蓋30の外表面301は、開口11の対向する二つの第1縁部111と面一となる。ヒューズエレメント20の二つの導電部23は、開口11の対向する二つの第2縁部112のそれぞれに設置されて開口11外に露出している。ある実施形態において、蓋30はセラミック又はプラスチックから形成されている。
【0013】
図1及び
図3に示すように、封止体40は、ハウジング10と、蓋30と、ハウジング10における蓋30の取り付け箇所に位置する導電部23とを被覆し、ハウジング10、蓋30及び導電部23の間の隙間を封止する。これにより、ヒューズエレメント20の導電部23が部分的に封止体40外に露出しながらも、ハウジング10の内部空間12は気密な状態となる。また、
図1に示すように、封止体40外に露出している導電部23は、蓋30の外表面301に対応する封止体40の表面401に沿うように蓋30に向かって湾曲されている。このようにして、キャビティ付き気密型表面実装ヒューズ1aが構成される。各導電部23に貫通孔231が形成されているため、封止体40に沿うように各導電部23を湾曲することが容易となる。ある実施形態において、封止体40はインサート成形(insert molding)によって形成され、封止体40としては、シリコーン(silicon)、エポキシ樹脂(epoxy)、ナイロン(nylon)又はエンジニアリングプラスチックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
ある実施形態において、ハウジング10、蓋30及びヒューズエレメント20の組み立てに際し、ヒューズエレメント20の導電部23におけるハウジング10から露出している部分は、ハウジング10及び蓋30が封止体40によって被覆された後に、封止体40の表面401に沿うように湾曲される。
【0015】
図6に示す本発明の第2実施形態に係る表面実装ヒューズ1bは、
図1に示す第1実施形態の表面実装ヒューズ1aと略同一の構成を有する。但し、本実施形態では、ハウジング10の開口11における対向する二つの第1縁部111と対向する二つの第2縁部112とは高さが同一である。蓋30は、外表面301と、開口11における二つの第1縁部111及び二つの第2縁部112とが面一となるように、開口11内に収容されている。本実施形態では、ヒューズエレメント20の二つの導電部23は、開口11の二つの第2縁部112から開口11外へ露出している。ハウジング10と、蓋30と、ハウジング10における蓋30の取り付け箇所に位置する導電部23とが封止体40によって被覆された後、二つの導電部23における封止体40外に露出している部分は、当該部分に対応する第2縁部112とハウジング10の外側面とを被覆する封止体40に沿うように湾曲される。
【0016】
図7に示す本発明の第3実施形態に係る表面実装ヒューズ1cは、
図6に示す第2実施形態と略同一の構成を有する。但し、本実施形態では、ハウジング10の開口11における対向する二つの第2縁部112のそれぞれに二つの係合溝113が形成されていると共に、開口11内に収容されている蓋30における対向する二つの第4縁部32のそれぞれに、開口11の第2縁部112における係合溝113に対応する二つの係合部材321が横方向に延設されている。係合部材321は、開口11に形成された係合溝113に締りばめ状態で嵌合され、蓋30の外表面301は、開口11における二つの第1縁部111及び二つの第2縁部112と面一となる。ある実施形態において、蓋30はプラスチックから形成される。
【0017】
以上のように、ハウジング及び蓋が封止体によって覆われているため、ハウジングの内部空間は気密状態となっている。気密型内部空間内にヒューズエレメントの溶断部が設置されていることで、溶断部が溶断した際に発生する電気アークによって外部の可燃性ガスが引火されることが回避される。そして、気密環境に設置された溶断部は外部環境による影響を受けにくくなるため、本発明のキャビティ付き気密型表面実装ヒューズは様々な環境への適用が可能となる。
【0018】
上述した実施形態は例示にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明を上記実施形態により説明したが、本発明はこれら開示された実施形態に限定されず、当業者であれば、本発明の技術的思想を逸脱することなく、様々な変更および修飾を加えて均等物とすることができる。したがって、上記実施形態に変更、改変および修飾を加えた内容もまた、本発明の技術的思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0019】
1a、1b、1c キャビティ付き気密型表面実装ヒューズ
10 ハウジング
101 横板
102 縦板
11 開口
111 第1縁部
112 第2縁部
12 内部空間
20 ヒューズエレメント
21 溶断部
211 第1部
212 第2部
22 中間部
23 導電部
231 貫通孔
24 貫通孔
30 蓋
301 外表面
31 第3縁部
32 第4縁部
40 封止体
401 表面