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特許7217344粘着性フィルムおよび電子装置の製造方法
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  • 特許-粘着性フィルムおよび電子装置の製造方法 図1
  • 特許-粘着性フィルムおよび電子装置の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】粘着性フィルムおよび電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230126BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20230126BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230126BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/06
B32B27/00 M
H01L21/56 R
H01L21/56 T
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021515953
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2020015553
(87)【国際公開番号】W WO2020217955
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2019086215
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】三浦 徹
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 康二
(72)【発明者】
【氏名】栗原 宏嘉
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157037(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188546(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/188543(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/188542(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/181766(WO,A1)
【文献】特開2012-062373(JP,A)
【文献】国際公開第2020/184199(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/184201(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/195519(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 7/12、27/00
H01L 21/56
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の第1面側に設けられた粘着性樹脂層(A)と、
前記基材層の第2面側に設けられ、かつ、外部刺激により粘着力が低下する粘着性樹脂層(B)と、を備える粘着性フィルムであって、
130℃で30分間加熱乾燥した後の前記粘着性フィルムの質量をWとし、
加熱乾燥後の前記粘着性フィルムを25℃で、かつ、50%RHの雰囲気下で24h静置させて吸水させた後の前記粘着性フィルムの質量をWとしたとき、100×(W-W)/Wで示される平均吸水率が0.90質量%以下である粘着性フィルム(ただし、前記粘着性樹脂層(B)中の粘着性樹脂(B1)を形成するモノマー単位の中にアクリル酸由来の単位を含む粘着性フィルムは除く)
【請求項2】
請求項1に記載の粘着性フィルムにおいて、
電子装置の製造工程において封止材により電子部品を封止する際に前記電子部品を仮固定するために用いられる粘着性フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記基材層が一軸延伸または二軸延伸ポリエステルフィルムを含む粘着性フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記粘着性樹脂層(B)は180℃を超える温度で加熱することにより粘着力が低下する粘着性フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記粘着性樹脂層(B)が気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種を含む粘着性フィルム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記粘着性樹脂層(A)中の気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種の含有量が、前記粘着性樹脂層(A)の全体を100質量%としたとき、0.1質量%以下である粘着性フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記粘着性樹脂層(A)は(メタ)アクリル系粘着性樹脂を含む粘着性フィルム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の粘着性フィルムと、前記粘着性フィルムの前記粘着性樹脂層(A)に貼り付けられた電子部品と、前記粘着性フィルムの前記粘着性樹脂層(B)に貼り付けられた支持基板と、を備える構造体を準備する工程(1)と、
封止材により前記電子部品を封止する工程(2)と、
外部刺激を与えることにより前記粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させて前記構造体から前記支持基板を剥離する工程(3)と、
前記電子部品から前記粘着性フィルムを剥離する工程(4)と、
を少なくとも備える電子装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電子装置の製造方法において、
前記封止材がエポキシ樹脂系封止材である電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性フィルムおよび電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置(例えば、半導体装置)の小型化・軽量化を図ることができる技術として、ファンアウト型WLP(ウエハレベルパッケージ)が開発されている。
ファンアウト型WLPの作製方法のひとつであるeWLB(Embedded Wafer Level Ball Grid Array)では、支持基板に貼り付けた粘着性フィルム上に、半導体チップ等の複数の電子部品を離間させた状態で仮固定し、封止材により複数の電子部品を一括封止する手法が取られる。ここで、粘着性フィルムは、封止工程等においては電子部品および支持基板に固着させる必要があり、封止後は支持基板とともに封止された電子部品から除去する必要がある。
【0003】
このようなファンアウト型WLPの製造方法に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、基板レス半導体チップを樹脂封止する際に、貼着して使用される半導体装置製造用耐熱性粘着シートであって、上記耐熱性粘着シートは基材層と粘着剤層とを有し、該粘着剤層は貼り合わせ後の対SUS304粘着力が0.5N/20mm以上であり、樹脂封止工程完了時点に至るまでに受ける刺激により硬化して、対パッケージ剥離力が2.0N/20mm以下になる層であることを特徴とする半導体装置製造用耐熱性粘着シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-134811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、粘着性フィルム上に電子部品を配置して封止材により電子部品を封止する際に、電子部品の位置がずれてしまう(以下、電子部品の位置ずれとも呼ぶ。)場合があることが明らかになった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、封止工程における電子部品の位置ずれを抑制することが可能な粘着性フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、基材層の両面に粘着性樹脂層を設けてなる粘着性フィルムにおいて、フィルムの吸水率を特定範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。
【0008】
本発明によれば、以下に示す粘着性フィルムおよび電子装置の製造方法が提供される。
【0009】
[1]
基材層と、
上記基材層の第1面側に設けられた粘着性樹脂層(A)と、
上記基材層の第2面側に設けられ、かつ、外部刺激により粘着力が低下する粘着性樹脂層(B)と、を備える粘着性フィルムであって、
130℃で30分間加熱乾燥した後の上記粘着性フィルムの質量をWとし、
加熱乾燥後の上記粘着性フィルムを25℃で、かつ、50%RHの雰囲気下で24h静置させて吸水させた後の上記粘着性フィルムの質量をWとしたとき、100×(W-W)/Wで示される平均吸水率が0.90質量%以下である粘着性フィルム。
[2]
上記[1]に記載の粘着性フィルムにおいて、
電子装置の製造工程において封止材により電子部品を封止する際に上記電子部品を仮固定するために用いられる粘着性フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載の粘着性フィルムにおいて、
上記基材層が一軸延伸または二軸延伸ポリエステルフィルムを含む粘着性フィルム。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層(B)は180℃を超える温度で加熱することにより粘着力が低下する粘着性フィルム。
[5]
上記[4]に記載の粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層(B)が気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種を含む粘着性フィルム。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層(A)中の気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種の含有量が、上記粘着性樹脂層(A)の全体を100質量%としたとき、0.1質量%以下である粘着性フィルム。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層(A)は(メタ)アクリル系粘着性樹脂を含む粘着性フィルム。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の粘着性フィルムと、上記粘着性フィルムの上記粘着性樹脂層(A)に貼り付けられた電子部品と、上記粘着性フィルムの上記粘着性樹脂層(B)に貼り付けられた支持基板と、を備える構造体を準備する工程(1)と、
封止材により上記電子部品を封止する工程(2)と、
外部刺激を与えることにより上記粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させて上記構造体から上記支持基板を剥離する工程(3)と、
上記電子部品から上記粘着性フィルムを剥離する工程(4)と、
を少なくとも備える電子装置の製造方法。
[9]
上記[8]に記載の電子装置の製造方法において、
上記封止材がエポキシ樹脂系封止材である電子装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、封止工程における電子部品の位置ずれを抑制することが可能な粘着性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態の粘着性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
図2】本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
図3】本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とはアクリル、メタクリルまたはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0013】
1.粘着性フィルム
以下、本実施形態に係る粘着性フィルム50について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の粘着性フィルム50の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る粘着性フィルム50は、基材層10と、基材層10の第1面10A側に設けられた粘着性樹脂層(A)と、基材層10の第2面10B側に設けられ、かつ、外部刺激により粘着力が低下する粘着性樹脂層(B)と、を備える粘着性フィルムであって、130℃で30分間加熱乾燥した後の粘着性フィルム50の質量をWとし、加熱乾燥後の粘着性フィルム50を25℃で、かつ、50%RHの雰囲気下で24h静置させて吸水させた後の粘着性フィルム50の質量をWとしたとき、100×(W-W)/Wで示される平均吸水率が0.90質量%以下である。
【0015】
上述したように、本発明者らの検討によれば、粘着性フィルム上に電子部品を配置して封止材により電子部品を封止する際に、電子部品の位置ずれが生じる場合があることが明らかになった。
【0016】
本発明者らは、封止工程における電子部品の位置ずれを抑制することが可能な粘着性フィルムを実現するために、鋭意検討を重ねた。その結果、基材層10と、基材層10の第1面10A側に設けられた粘着性樹脂層(A)と、基材層10の第2面10B側に設けられ、かつ、外部刺激により粘着力が低下する粘着性樹脂層(B)と、を備える粘着性フィルム50において、100×(W-W)/Wで示される平均吸水率という尺度が、封止工程における電子部品の位置ずれを抑制するための粘着性フィルムの設計指針として有効であることを初めて見出した。
すなわち、本実施形態に係る粘着性フィルム50は、上記平均吸水率を上記上限値以下になるような構成とすることで、封止工程における電子部品の位置ずれを抑制することが可能となる。
本実施形態に係る粘着性フィルム50を用いることにより、封止工程における電子部品の位置ずれを抑制できる理由は明らかでないが、以下の理由が考えられる。
まず、1)粘着性フィルムに含まれる水分が減圧または加熱によって膨張することにより、支持基板と粘着性樹脂層との界面で気泡が発生し、粘着性フィルムが支持基板から剥離しやすくなる;2)電子部品側の粘着性樹脂層と電子部品との間の界面で気泡が生じ、電子部品を押し上げることにより、電子部品の飛びが生じたり、浮きが生じた部分に封止樹脂が侵入し電子部品が埋没したりする;という機構により電子部品の位置ずれが起きると考えられる。これに対し、本実施形態に係る粘着性フィルム50は吸水性が制御されているため、水分由来の気泡の発生を抑制することができ、その結果、封止工程における電子部品の位置ずれを抑制できると考えられる。
以上の理由から、本実施形態に係る粘着性フィルム50を用いることにより、封止工程における電子部品の位置ずれを抑制できると考えられる。
【0017】
本実施形態において100×(W-W)/Wで示される平均吸水率は、0.75質量%以下が好ましく、0.65質量%以下であることがより好ましい。平均吸水率は低いほど好ましいため、下限値は特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上であってもよいし、0.10質量%以上であってもよい。
平均吸水率は、例えば、以下の手順で求めることができる。
1)粘着性フィルム50を25℃で、かつ、50%RHの雰囲気下のクリーンルーム内で24h静置する。ここで、粘着性フィルム50にセパレータが貼り付けられている場合はセパレータが貼り付けられた状態で静置する。
2)130℃に設定したオーブン内で30分間加熱して、粘着性フィルム50中の水分を除去する。次いで、加熱乾燥後の粘着性フィルム50の質量を測定し、この質量をWとする。ここで、粘着性フィルム50にセパレータが貼り付けられている場合はセパレータを剥離してから加熱乾燥処理をおこなう。
3)加熱乾燥後の粘着性フィルム50を、25℃で、かつ、50%RHの雰囲気下の上記クリーンルーム内で24h静置させて吸水をさせた後に粘着性フィルム50の質量を測定する。この質量をWとする。
4)100×(W-W)/Wを吸収率とする。同測定を粘着性フィルム毎に6回ずつ繰り返し、その平均を平均吸水率とする。
【0018】
本実施形態に係る粘着性フィルム50において、平均吸水率は、粘着性樹脂層(A)や粘着性樹脂層(B)の構成;粘着性樹脂層(B)に含まれうる気体発生成分または熱膨張性の微小球の種類や含有量;粘着性樹脂層(B)の厚み等を制御することにより調整することができる。
粘着性樹脂層(A)を構成する粘着性樹脂としては、後述するように(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)を好ましく用いることができる。(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)は(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを構成単位とする共重合体が用いられる。上記共重合体中に含まれる極性モノマー(例えば、後述するモノマー(a2)のような水酸基、カルボキシル基またはアミド基を含むモノマー)単位の含有量を40質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下とすることが望ましい。
粘着性樹脂層(B)を構成する粘着性樹脂としては、後述するように(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)を好ましく用いることができる。(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)は(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを構成単位とする共重合体が用いられる。上記共重合体中に含まれる極性モノマー(例えば、後述するモノマー(b2)のような水酸基、カルボキシル基またはアミド基を含むモノマー)単位の割合を40質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下とすることが望ましい。
(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)および(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)を重合する際の重合開始剤として、後述する無機過酸化物を用いる場合は、モノマーの合計量に対して1質量%以下とすることが好ましい。
粘着性樹脂層(B)に含まれる熱膨張性の微小球は、例えば、シェルとしてポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル等比較的親水性の高い材料が用いられるため、熱膨張性の微小球の配合量は粘着性樹脂層(B)に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。熱膨張性の微小球の配合量の下限は粘着性樹脂層(B)に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
また、粘着性樹脂層(B)に含まれる熱膨張性の微小球は吸水しやすいため、粘着性樹脂層(B)の厚みが厚いほど、本実施形態に係る粘着性フィルム50の平均吸水率は大きくなる。よって、粘着性フィルム全体に占める粘着性樹脂層(B)の厚みを調整することによって、本実施形態に係る粘着性フィルム50の平均吸水率を調整することができる。
例えば、微小球の配合量が粘着性樹脂層(B)に対して15質量%前後の場合、粘着性樹脂層(B)の厚みをXとし、後述する凹凸吸収層の厚みをYとすると、X/Yは1.0~1.8程度が好ましく、1.0~1.5がより好ましい。
凹凸吸収層が無い場合、粘着性樹脂層(A)の厚みをZとすると、X/Zは1.0~2.2程度が好ましく、1.0~2.1がより好ましい。
微小球の配合量が異なる場合にも、上記厚み比を適宜調整することで平均吸水率を調整することができる。
【0019】
本実施形態に係る粘着性フィルム50全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスの観点から、好ましくは10μm以上1000μm以下であり、より好ましくは20μm以上500μm以下である。
【0020】
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、例えば、電子装置の製造工程において封止材により電子部品を封止する際に電子部品を仮固定するためのフィルム等に用いることができ、特に、ファンアウト型WLPやファンアウト型PLPの製造工程において電子部品を仮固定するためのフィルムとして好適に用いることができる。
【0021】
次に、本実施形態に係る粘着性フィルム50を構成する各層について説明する。
【0022】
<基材層>
基材層10は、粘着性フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
基材層10は特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
上記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタアクリレート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンエーテル等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、低収縮性や機械的強度、価格等のバランスに優れる観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートがより好ましい。
【0023】
基材層10は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層10を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、基材層10の低収縮性や機械的強度等のバランスに優れる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルムが好ましい。
基材層10を形成するために使用する樹脂フィルムとしては、低収縮性や機械的強度、価格等のバランスに優れる観点から、一軸延伸または二軸延伸ポリエステルフィルムがさらに好ましく、一軸延伸または二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが特に好ましい。
【0024】
JIS C2151に準拠し、150℃で30分間加熱する条件で測定される、基材層10の熱収縮が最大になる方向における収縮率は0.0%以上1.3%以下が好ましく、0.0%以上1.3%以下がより好ましい。基材層10の熱収縮が最大になる方向における収縮率が上記範囲内であると、粘着性フィルム50の熱収縮が最大になる方向における収縮率を前述した範囲内に制御しやすいため好ましい。
ここで、基材層10を形成するための樹脂フィルムのMD方向は、製膜時に巻取り応力が加わることで、製膜後に応力が残留し、収縮が大きくなる傾向にあるため、基材層10の熱収縮が最大になる方向は、基材層10を形成するための樹脂フィルムのMD方向になる場合が多い。
また、基材層10を形成するための樹脂フィルムが一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルムの場合、基材層10の熱収縮が最大になる方向は、延伸倍率が最も大きい方向になる場合が多い。
【0025】
ここで、基材層10の熱収縮が最大になる方向における収縮率は、例えば、基材層10を形成するために使用する樹脂フィルムに対して熱処理などの応力緩和処理をおこない、熱応力を低減させることによって制御することが可能である。
基材層10を形成するために使用する樹脂フィルムが一軸延伸または二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの場合、熱処理温度は、例えば、140℃以上240℃以下であり、熱処理時間は、例えば、10秒以上200秒以下である。
【0026】
基材層10の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは1μm以上500μm以下、より好ましくは5μm以上300μm以下、さらに好ましくは10μm以上250μm以下である。
基材層10は、他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0027】
<粘着性樹脂層(A)>
粘着性樹脂層(A)は、基材層10の一方の面側に設けられる層であり、例えば、電子装置の製造工程において封止材により電子部品を封止する際に、電子部品の表面に接触して電子部品を仮固定するための層である。
【0028】
粘着性樹脂層(A)は、粘着性樹脂(A1)を含む。
粘着性樹脂(A1)としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)、シリコーン系粘着性樹脂、ウレタン系粘着性樹脂、オレフィン系粘着性樹脂、スチレン系粘着性樹脂等が挙げられる。
これらの中でも粘着力の調整を容易にする観点等から、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)が好ましい。
【0029】
粘着性樹脂層(A)としては、放射線により粘着力を低下させる放射線架橋型粘着性樹脂層を用いることもできる。放射線架橋型粘着性樹脂層は、放射線の照射により架橋して粘着力が著しく減少するため、電子部品から粘着性フィルム50を剥離し易くなる。放射線としては、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。
放射線架橋型粘着性樹脂層としては、紫外線架橋型粘着性樹脂層が好ましい。
【0030】
粘着性樹脂層(A)に使用される(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(a2)を含む共重合体が挙げられる。
本実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、またはこれらの混合物を意味する。
【0031】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(a2)を含むモノマー混合物を共重合することにより得ることができる。
【0032】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a1)を形成するモノマー(a1)としては、炭素数1~12程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a1)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、10質量%以上98.9質量%以下であることが好ましく、50質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(a2)を形成するモノマー(a2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル-ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル-ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等である。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)において、モノマー単位(a2)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)は、モノマー単位(a1)、モノマー単位(a2)以外に、2官能性モノマー単位(a3)や界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、重合性界面活性剤と称する)単位をさらに含んでもよい。
重合性界面活性剤は、モノマー(a1)、モノマー(a2)およびモノマー(a3)と共重合する性質を有すると共に、乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。
【0035】
2官能性モノマー単位(a3)を形成するモノマー(a3)としては、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、例えば、両末端がジアクリレートまたはジメタクリレートで主鎖の構造がプロピレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製;商品名:PDP-200、同PDP-400、同ADP-200、同ADP-400)、テトラメチレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製;商品名:ADT-250、同ADT-850)およびこれらの混合型(例えば、日本油脂(株)製;商品名:ADET-1800、同ADPT-4000)であるもの等が挙げられる。
【0036】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)において、モノマー単位(a3)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0037】
重合性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンRN-10、同RN-20、同RN-30、同RN-50等)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS-10、同HS-20、同HS-1025等)、および分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系(花王(株)製;商品名:ラテムルS-120A、同S-180A等)等が挙げられる。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)において、重合性界面活性剤の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0038】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)は、さらに必要に応じて、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性2重結合を有するモノマーにより形成されたモノマー単位をさらに含有してもよい。
【0039】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)の重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)の製造コスト、モノマーの官能基の影響および電子部品表面へのイオンの影響等を考慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。
ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-ヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物;2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0040】
乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中で、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が好ましい。電子部品表面へのイオンの影響を考慮すれば、過硫酸アンモニウム、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物がさらに好ましく、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が特に好ましい。
【0041】
本実施形態に係る粘着性樹脂層(A)は、粘着性樹脂(A1)に加えて、架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤(A2)をさらに含むことが好ましい。
架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤(A2)は、粘着性樹脂(A1)が有する官能基と反応させ、粘着力および凝集力を調整するために用いる。
このような架橋剤(A2)としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物;N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N'-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の4官能性エポキシ系化合物;ヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物およびアジリジン系化合物から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0042】
架橋剤(A2)の含有量は、通常、架橋剤(A2)中の官能基数が粘着性樹脂(A1)中の官能基数よりも多くならない程度の範囲が好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。
粘着性樹脂層(A)中の架橋剤(A2)の含有量は、粘着性樹脂層(A)の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、粘着性樹脂(A1)100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0043】
粘着性樹脂層(A)中の粘着性樹脂(A1)および架橋剤(A2)の含有量の合計は、粘着性樹脂層(A)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。これにより、電子部品から粘着性フィルムを剥離する際の電子部品側の糊残りをより一層抑制することができる。
【0044】
粘着性樹脂層(A)の厚さは特に制限されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0045】
粘着性樹脂層(A)は、例えば、基材層10上に粘着剤を塗布することにより形成することができる。粘着剤は溶剤に溶解して塗布液として塗布してもよいし、水系エマルジョンとして塗布してもよいし、液状の粘着剤を直に塗布してもよい。
中でも水系エマルジョン塗布液が好ましい。水系エマルジョン塗布液としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)、シリコーン系粘着性樹脂、ウレタン系粘着性樹脂、オレフィン系粘着性樹脂、スチレン系粘着性樹脂等を水に分散させた塗布液が挙げられる。
有機溶剤に溶解した粘着剤塗布液を用いてもよい。有機溶剤は特に限定されず、溶解性や乾燥時間を鑑みて公知の中から適宜選択すればよい。有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系;アセトン、MEK等のケトン系;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族系;ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の直鎖ないし環状脂肪族系;イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系を例示することができる。有機溶剤として酢酸エチル、トルエンが好ましい。これらの溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。
塗布された粘着剤の乾燥条件は、粘着性樹脂層(A)や基材層10の熱応力を低減させ、粘着性フィルム50の上記収縮率を低減させる観点から、100~240℃の温度範囲において、10秒~5分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは120~200℃の温度範囲において、30秒~3分間乾燥することが好ましい。
【0046】
<粘着性樹脂層(B)>
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、基材層10の第1面10Aとは反対側の第2面10B側に外部刺激により粘着力が低下する粘着性樹脂層(B)を備える。
これにより、外部刺激を与えることで支持基板80から粘着性フィルム50を容易に剥離することができる。
ここで、外部刺激により粘着力が低下する粘着性樹脂層(B)としては、例えば、加熱により粘着力が低下する加熱剥離型の粘着性樹脂層や、放射線により粘着力が低下する放射線剥離型の粘着性樹脂層等が挙げられる。これらの中でも加熱により粘着力が低下する加熱剥離型の粘着性樹脂層が好ましい。
加熱剥離型の粘着性樹脂層としては、例えば、気体発生成分を含む加熱膨張型粘着剤、膨張して粘着力を低減できる熱膨張性の微小球を含む加熱膨張型粘着剤、熱により接着剤成分が架橋反応することで粘着力が低下する加熱膨張型粘着剤等により構成された粘着性樹脂層が挙げられる。
【0047】
本実施形態において、粘着性樹脂層(B)に使用される加熱膨張型粘着剤は、例えば180℃を超える温度で加熱することで粘着力が低下または喪失する粘着剤である。例えば、180℃以下では剥離せず、180℃を超える温度で剥離する材料を選択することができ、電子装置の製造工程中に粘着性フィルム50が支持基板80から剥離しない程度の粘着力を有していることが好ましい。
ここで、180℃を超える温度で加熱することで粘着力が低下または喪失することは、例えば、粘着性樹脂層(B)側をステンレス板に貼り付け、140℃で1時間の加熱処理をおこない、次いで、180℃を超える温度で2分間加熱した後に測定される、ステンレス板からの剥離強度により評価することができる。180℃を超える温度で加熱する際の具体的な加熱温度は、気体が発生する温度や熱膨張性の微小球が熱膨張する温度よりも高い温度に設定され、発生する気体や熱膨張性の微小球の種類によって適宜設定される。本実施形態において、粘着力が喪失するとは、例えば、23℃、引張速度300mm/分の条件で測定される180°剥離強度が0.5N/25mm未満になる場合をいう。
【0048】
加熱膨張型粘着剤に使用される気体発生成分としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物、メルドラム酸誘導体等を用いることができる。また、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類等の無機系発泡剤や、水;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N´-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系化合物等の有機系発泡剤等も用いることができる。気体発生成分は粘着性樹脂(B1)に添加されていてもよく、粘着性樹脂(B1)に直接結合されていてもよい。
【0049】
加熱膨張型粘着剤に使用される熱膨張性の微小球としては、例えば、マイクロカプセル化されている発泡剤を用いることができる。このような熱膨張性の微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等の加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球等が挙げられる。上記殻を構成する材料として、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。熱膨張性の微小球は、例えば、コアセルベーション法や、界面重合法等により製造することができる。
熱膨張性の微小球は粘着性樹脂に添加することができる。
【0050】
気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種の含有量は、加熱剥離型の粘着性樹脂層(B)の膨張倍率や粘着力の低下性等に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、加熱剥離型の粘着性樹脂層(B)中の粘着性樹脂(B1)100質量部に対して、例えば1質量部以上150質量部以下、好ましくは10質量部以上130質量部以下、さらに好ましくは12質量部以上100質量部以下である。
気体が発生する温度や熱膨張性の微小球が熱膨張する温度が、180℃を超える温度になるように設計することが好ましい。
【0051】
加熱膨張型粘着剤を構成する粘着性樹脂(B1)としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂(b)、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン-ジエンブロック共重合体系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも(メタ)アクリル系樹脂(b)が好ましい。
【0052】
粘着性樹脂層(B)に使用される(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(b2)を含む共重合体が挙げられる。
本実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、またはこれらの混合物を意味する。
【0053】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b2)を含むモノマー混合物を共重合することにより得ることができる。
【0054】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b1)を形成するモノマー(b1)としては、炭素数1~12程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b1)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、10質量%以上98.9質量%以下であることが好ましく、50質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0055】
架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b2)を形成するモノマー(b2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル-ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル-ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等である。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)において、モノマー単位(b2)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0056】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)は、モノマー単位(b1)、モノマー単位(b2)以外に、2官能性モノマー単位(b3)や界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、重合性界面活性剤と称する)単位をさらに含んでもよい。
重合性界面活性剤は、モノマー(b1)、モノマー(b2)およびモノマー(b3)と共重合する性質を有すると共に、乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。
【0057】
2官能性モノマー単位(b3)を形成するモノマー(b3)としては、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、例えば、両末端がジアクリレートまたはジメタクリレートで主鎖の構造がプロピレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製;商品名:PDP-200、同PDP-400、同ADP-200、同ADP-400)、テトラメチレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製;商品名:ADT-250、同ADT-850)およびこれらの混合型(例えば、日本油脂(株)製;商品名:ADET-1800、同ADPT-4000)であるもの等が挙げられる。
【0058】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)において、モノマー単位(b3)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0059】
重合性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンRN-10、同RN-20、同RN-30、同RN-50等)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS-10、同HS-20、同HS-1025等)、および分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系(花王(株)製;商品名:ラテムルS-120A、同S-180A等)等が挙げられる。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)において、重合性界面活性剤の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0060】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)は、さらに必要に応じて、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性2重結合を有するモノマーにより形成されたモノマー単位をさらに含有してもよい。
【0061】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)の重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)の製造コスト、モノマーの官能基の影響および電子部品表面へのイオンの影響等を考慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。
ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-ヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物;2,2'-アゾ
ビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0062】
乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中で、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持
ったアゾ化合物が好ましい。電子部品表面へのイオンの影響を考慮すれば、過硫酸アンモニウム、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル
基を有するアゾ化合物がさらに好ましく、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックア
シッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が特に好ましい。
【0063】
本実施形態に係る粘着性樹脂層(B)は、支持基板からの剥離をより安定的に実施する観点から、粘着性樹脂(B1)に加えて、架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤(B2)をさらに含むことが好ましい。
架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤(B2)は、粘着性樹脂(B1)が有する官能基と反応させ、粘着力および凝集力を調整するために用いる。
このような架橋剤(B2)としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物;N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N'-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の4官能性エポキシ系化合物;ヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物およびアジリジン系化合物から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0064】
架橋剤(B2)の含有量は、通常、架橋剤(B2)中の官能基数が粘着性樹脂(B1)中の官能基数よりも多くならない程度の範囲が好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。
粘着性樹脂層(B)中の架橋剤(B2)の含有量は、支持基板からの剥離をより安定的に実施する観点から、粘着性樹脂(B1)100質量部に対し、0.5質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましい。
【0065】
粘着性樹脂層(B)中の粘着性樹脂(B1)および架橋剤(B2)の含有量の合計は、粘着性樹脂層(B)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。これにより、封止工程における電子部品の位置ずれをより一層抑制することができる。
【0066】
粘着性樹脂層(B)中の粘着性樹脂(B1)、架橋剤(B2)並びに気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種の含有量の合計は、粘着性樹脂層(B)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。
【0067】
また、本実施形態に係る粘着性フィルム50において、外部刺激を与えることにより粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させて粘着性樹脂層(B)から支持基板を剥離する際に電子部品を粘着性樹脂層(A)上に安定的に保持する観点から、粘着性樹脂層(A)中の気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種の含有量は、粘着性樹脂層(A)の全体を100質量%としたとき、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましく、粘着性樹脂層(A)中に気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種が含まれないことが特に好ましい。
【0068】
本実施形態に係る粘着性樹脂層(B)は、支持基板への密着性を向上させる観点から、粘着性樹脂(B1)に加えて、粘着付与樹脂を含むことが好ましい。粘着性樹脂層(B)に粘着付与樹脂を含有させることが、常温付近における支持基板との密着性の調整が容易となるために好ましい。粘着付与樹脂としては、その軟化点が100℃以上であるものが好ましい。粘着付与樹脂の具体例としては、エステル化等の処理をしたロジン系誘導体等のロジン系樹脂;α-ピネン系、β-ピネン系、ジペンテン系、テルペンフェノール系等のテルペン系樹脂;ガム系、ウッド系、トール油系等の天然系ロジン;これらの天然系ロジンに水素化、不均化、重合、マレイン化、石油樹脂;クマロン-インデン樹脂等を挙げることができる。
【0069】
これらのなかでも、軟化点が100~160℃の範囲内であるものがより好ましく、120~150℃の範囲であるものが特に好ましい。軟化点が上記範囲内である粘着付与樹脂を用いると、支持基板への汚染、糊残りが少ないばかりでなく、作業環境下における支持基板との密着性をさらに向上させることが可能となる。さらに、粘着付与樹脂として重合ロジンエステル系の粘着付与樹脂を用いると、支持基板への汚染、糊残りが少ないばかりか、80~130℃の環境下での支持基板との粘着性が向上するとともに、熱膨張性微小球の膨張後は、支持基板からさらに容易に剥離可能となる。
【0070】
粘着付与樹脂の配合割合は、粘着性樹脂層(B)の弾性率を所望とする所定の数値範囲内に調整することができるように適宜選択すればよく、特に制限はない。ただし、粘着性樹脂層(B)の弾性率と初期剥離力の面から、粘着性樹脂(B1)100質量部に対して、1~100質量部とすることが好ましい。粘着付与樹脂の配合割合が、粘着性樹脂(B1)100質量部に対して、上記下限値以上であると、作業時の支持基板との密着性が良好になる傾向にある。一方、上記上限値以下であると、常温における支持基板との貼り付け性が良好になる傾向にある。支持基板との密着性、及び常温における貼り付け性の面から、粘着付与樹脂の配合割合を、粘着性樹脂(B1)100質量部に対して、2~50質量部とすることがさらに好ましい。また、粘着付与樹脂の酸価は、30以下であることが好ましい。粘着付与樹脂の酸価が上記上限値以下であると剥離時に支持基板に糊残りが生じ難くなる傾向にある。
【0071】
粘着性樹脂層(B)の厚さは特に制限されないが、例えば、5μm以上300μm以下であることが好ましく、20μm以上150μm以下であることがより好ましい。
【0072】
粘着性樹脂層(B)は、例えば、基材層10上に粘着剤を塗布することにより形成することができる。粘着剤は溶剤に溶解して塗布液として塗布してもよいし、水系エマルジョンとして塗布してもよいし、液状の粘着剤を直に塗布してもよい。
中でも有機溶剤に溶解した粘着剤塗布液が好ましい。有機溶剤は特に限定されず、溶解性や乾燥時間を鑑みて公知の中から適宜選択すればよい。有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系;アセトン、MEK等のケトン系;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族系;ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の直鎖ないし環状脂肪族系;イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系を例示することができる。有機溶剤として酢酸エチル、トルエンが好ましい。これらの溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。
塗布された粘着剤の乾燥条件は、粘着性樹脂層(B)や基材層10の熱応力を低減させ、粘着性フィルム50の上記収縮率を低減させる観点から、100~240℃の温度範囲において、10秒~5分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは120~200℃の温度範囲において、30秒~3分間乾燥することが好ましい。ここで、粘着性樹脂層(B)が気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種を含む場合は、塗布された粘着剤の乾燥温度は、気体が発生する温度や熱膨張性の微小球が熱膨張する温度を超えない範囲が好ましい。
【0073】
<その他の層>
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、基材層10と粘着性樹脂層(A)との間あるいは基材層10と粘着性樹脂層(B)との間に、例えば凹凸吸収層、衝撃吸収層、易接着層等がさらに設けられていてもよい。
【0074】
凹凸吸収層は、ASTM D-2240のD型ショアーによるショアーD型硬度が、例えば50以下、好ましくは40以下の天然ゴムや合成ゴム、又はゴム弾性を有する合成樹脂により形成することが好ましい。凹凸吸収層の厚さは、例えば500μm以下、好ましくは5~300μm、より好ましくは10~150μmである。
【0075】
合成ゴム又は合成樹脂としては、例えばニトリル系やジエン系やアクリル系等の合成ゴム、ポリオレフィン系やポリエステル系等の熱可塑性エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体やポリウレタン、ポリブタジエンや軟質ポリ塩化ビニル等のゴム弾性を有する合成樹脂が挙げられる。なお、ポリ塩化ビニルのように本質的には硬質系のポリマーであっても可塑剤や柔軟剤等の配合剤との組合せでゴム弾性をもたせたものも本実施形態においては用いることができる。また上記の粘着性樹脂層(A)や粘着性樹脂層(B)で例示した粘着性樹脂等も凹凸吸収層の形成に好ましく用いることができる。
【0076】
2.電子装置の製造方法
次に、本実施形態に係る電子装置の製造方法について説明する。図2および3は、本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、以下の4つの工程を少なくとも備えている。
(1)粘着性フィルム50と、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層(A)に貼り付けられた電子部品70と、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層(B)に貼り付けられた支持基板80と、を備える構造体100を準備する工程
(2)封止材60により電子部品70を封止する工程
(3)外部刺激を与えることにより粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させて構造体100から支持基板80を剥離する工程
(4)電子部品70から粘着性フィルム50を剥離する工程
そして、本実施形態に係る電子装置の製造方法では、電子部品70を仮固定する粘着性フィルムとして、前述した本実施形態に係る粘着性フィルム50を使用する。
【0077】
以下、本実施形態に係る電子装置の製造方法の各工程について説明する。
【0078】
(工程(1))
はじめに、粘着性フィルム50と、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層(A)に貼り付けられた電子部品70と、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層(B)に貼り付けられた支持基板80と、を備える構造体100を準備する。
【0079】
このような構造体100は、例えば、以下の手順で作製することができる。
まず、支持基板80上に、粘着性フィルム50を、粘着性樹脂層(B)が支持基板80側となるように貼着する。粘着性樹脂層(B)上には保護フィルムが貼付けられていてもよく、当該保護フィルムを剥がし、粘着性樹脂層(B)の露出面を支持基板80表面に貼着することができる。
支持基板80としては、例えば、石英基板、ガラス基板、SUS基板等を使用することができる。
【0080】
次いで、支持基板80上に貼着された粘着性フィルム50の粘着性樹脂層(A)上に電子部品70を配置することにより構造体100を得ることができる。
電子部品70としては、例えば、IC、LSI、ディスクリート、発光ダイオード、受光素子等の半導体チップや半導体パネル、半導体パッケージ等を挙げることができる。
【0081】
(工程(2))
次いで、封止材60により電子部品70を封止する。
封止材60により電子部品70を覆い、例えば180℃以下の温度で封止材60を硬化させて、電子部品70を封止する。ここで、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層(B)が気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種を含む場合は、封止材60を硬化させる温度は、気体が発生する温度や熱膨張性の微小球が熱膨張する温度を超えない範囲が好ましい。
また、封止材60の形態としては特に限定されないが、例えば、顆粒状、シート状または液状である。
【0082】
封止材60としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂系封止材を用いることができる。
特に、粘着性フィルム50への封止材60の親和性がより良好になり、電子部品70をより一層ムラなく封止することが可能となる点から、液状のエポキシ樹脂系封止材が好ましい。
このようなエポキシ樹脂系封止材としては、例えば、ナガセケムテックス社製のT693/R4000シリーズやT693/R1000シリーズ、T693/R5000シリーズ等を用いることができる。
【0083】
封止方法としては、例えば、トランスファー成形、射出成形、圧縮成形、注型成形等が挙げられる。封止材60で電子部品70を封止後、例えば180℃以下の温度で加熱することによって封止材60を硬化させ、電子部品70が封止された構造体100が得られる。
【0084】
(工程(3))
次いで、外部刺激を与えることにより粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させて構造体100から支持基板80を剥離する。
支持基板80は、例えば、電子部品70を封止した後、180℃を超える温度に加熱して、粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させることにより、粘着性フィルム50から容易に除去することができる。
【0085】
(工程(4))
次いで、電子部品70から粘着性フィルム50を除去し、電子装置200を得る。
電子部品70から粘着性フィルム50を除去する方法としては、例えば、機械的に剥離する方法や、粘着性フィルム50表面の粘着力を低下させてから剥離する方法等が挙げられる。
【0086】
(工程(5))
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、図3に示すように、得られた電子装置200の露出面に、配線層310およびバンプ320を形成し、電子装置300を得る工程(5)をさらに備えてもよい。
【0087】
配線層310は、最外面に形成された外部接続端子であるパッド(不図示)と、露出した電子部品70と該パッドとを電気的に接続する配線(不図示)と、を備える。配線層310は、従来公知の方法によって形成することができ、多層構造であってもよい。
【0088】
そして、配線層310のパッド上にバンプ320を形成し、電子装置300を得ることができる。バンプ320としては、はんだバンプや金バンプ等を挙げることができる。はんだバンプは、例えば、配線層310の外部接続端子であるパッド上にはんだボールを配置し、加熱してはんだを溶融させる(リフローする)ことにより形成することができる。金バンプは、ボールボンディング法、めっき法、Auボール転写法等の方法により形成することができる。
【0089】
(工程(6))
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、図3に示すように、電子装置300をダイシングし、複数の電子装置400を得る工程(6)をさらに備えてもよい。
電子装置300のダイシングは、公知の方法で行うことができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0091】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例
【0092】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0093】
粘着性フィルムの作製に用いた材料の詳細は以下の通りである。
【0094】
<粘着性樹脂溶液SA1>
脱イオンを行った純水中に、重合開始剤として4,4’-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド(大塚化学(株)製;商品名:ACVA)を0.5質量部、モノマー(a1)としてアクリル酸-n-ブチルを78質量部、およびメタクリル酸メチルを10質量部、モノマー(a2)としてメタクリル酸-2-ヒドロキシエチルを9質量部、重合性界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS-1025)を3質量部それぞれ投入し、攪拌下で70~72℃において8時間乳化重合を実施し、アクリル系樹脂エマルションを得た。これをアンモニア水で中和(pH=7.0)し、固形分濃度42.5質量%の粘着性樹脂溶液SA1を得た。
【0095】
<粘着性樹脂溶液SA2>
脱イオンを行った純水中に、重合開始剤として過硫酸アンモニウムを0.5質量部、モノマー(a1)としてアクリル酸-2-エチルヘキシルを63質量部、アクリル酸-n-ブチルを21質量部、およびメタクリル酸メチルを9質量部、モノマー(a2)としてメタクリル酸-2-ヒドロキシエチルを3質量部、モノマー(a3)としポリテトラメチレングリコールジアクリレート(日本油脂(株)製;商品名;ADT-250)を1質量部、重合性界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS-1025)を2質量部それぞれ投入し、攪拌下で70~72℃において8時間乳化重合を実施し、アクリル系樹脂エマルションを得た。これをアンモニア水で中和(pH=7.0)し、固形分濃度56.5質量%の粘着性樹脂溶液SA2を得た。
【0096】
<粘着剤塗布液A1>
粘着性樹脂溶液SA1を55質量部、粘着性樹脂溶液SA2を45質量部、ジメチルエタノールアミンを0.5質量部、架橋剤であるエポキシ系化合物(ナガセケムテックス社製、Ex-1610)を4質量部、それぞれ混合して、粘着剤塗布液A1を得た。
【0097】
<粘着性樹脂溶液SB1>
酢酸エチルおよびトルエンを含む混合溶剤中に、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂社製;商品名:パーブチルO(登録商標))を0.5質量部、モノマー(b1)としてアクリル酸2-エチルヘキシルを35重量部、アクリル酸-n-ブチルを40質量部、およびアクリル酸エチルを15質量部、モノマー(b2)としてメタクリル酸-2-ヒドロキシエチルを10質量部それぞれ投入し、攪拌下で83~87℃において11時間溶液重合を実施し、固形分濃度45質量%のアクリル系樹脂溶液を得た。これを粘着性樹脂溶液SB1とした。
【0098】
<粘着剤塗布液B1>
粘着性樹脂溶液SB1を100質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製;商品名:オレスターP49-75S)0.9質量部(粘着性樹脂100質量部に対し、2質量部)それぞれ混合し、酢酸エチルで固形分濃度を40質量%に調整して粘着剤塗布液B1を得た。
【0099】
<粘着剤塗布液B2>
粘着性樹脂溶液SB1を100質量部、重合ロジンエステル系粘着付与剤(荒川化学工業(株)製;商品名:ペンセルD-125)2.25重量部(粘着性樹脂100質量部に対し、5質量部)、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製;商品名:オレスターP49-75S)1.2質量部(粘着性樹脂100質量部に対し、2質量部)、熱膨張性微小球(積水化学工業(株)製;商品名:アドバンセルEM-503)を6.75質量部(粘着性樹脂100質量部に対し、15質量部)それぞれ混合し、酢酸エチルで固形分濃度を30質量%に調整して粘着剤塗布液B2を調製した。
【0100】
<粘着性樹脂溶液SC1>
酢酸エチルおよびトルエンを含む混合溶剤中に、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂社製;商品名:パーブチルO(登録商標))を0.3質量部、モノマー(c1)としてブチルアクリレートを72重量部、メチルメタクリレートを18質量部、モノマー(c2)として2-ヒドロキシメタクリレートを7質量部、モノマー(c3)としてアクリル酸を3質量部それぞれ投入し、攪拌下で83~87℃において11時間溶液重合を実施し、固形分濃度45質量%のアクリル系樹脂溶液を得た。これを粘着性樹脂溶液SC1とした。
【0101】
<粘着剤塗布液C1>
粘着性樹脂溶液SC1を100質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製;商品名:オレスターP49-75S)0.9質量部(粘着性樹脂100質量部に対し、2質量部)それぞれ混合し、酢酸エチルで固形分濃度を40%に調整して粘着剤塗布液C1を得た。
【0102】
<粘着剤塗布液C2>
粘着性樹脂溶液SC1を100質量部、重合ロジンエステル系粘着付与剤(荒川化学工業(株)製;商品名:ペンセルD-125)2.25重量部(粘着性樹脂100質量部に対し、5質量部)、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製;商品名:オレスターP49-75S)1.2質量部(粘着性樹脂100質量部に対し、2質量部)、熱膨張性微小球(積水化学工業(株)製;商品名:アドバンセルEM-503)を6.75質量部(粘着性樹脂100質量部に対し、15質量部)それぞれ混合し、酢酸エチルで固形分濃度を30%に調整して粘着剤塗布液C2を調製した。
【0103】
[実施例1]
基材層であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム1(1軸延伸フィルム、厚み:38μm、MD方向の収縮率:1.2%、TD方向の収縮率0.3%(なお、MD方向が、熱収縮が最大になる方向であった。)上に、粘着剤塗布液A1を塗布した後、120℃、1分間加熱することによって乾燥させて、厚さ13μmの粘着性樹脂層(A)を形成した。次いで、セパレータ上に粘着剤塗布液B1を塗布し、120℃、1分間加熱することによって乾燥させて、厚さ20μmの凹凸吸収層を形成した。次いで、PETフィルム1の粘着性樹脂層(A)とは反対側の表面に、セパレータから厚さ20μmの上記凹凸吸収層を転写し、次いで、凹凸吸収層の上に粘着剤塗布液B2を塗布し、120℃、1分間加熱することによって乾燥させて、厚さ27μmの粘着性樹脂層(B)を形成し、粘着性樹脂層(B)を有する粘着性フィルムを得た。
ここで、PETフィルム1は、加熱処理による応力緩和処理をおこなったものである。
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0104】
[実施例2]
粘着性樹脂層(A)の厚さを6μmとした以外は、実施例1と同様の工程で粘着性フィルムを得た。
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0105】
[比較例1]
基材層であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム1(1軸延伸フィルム、厚み:38μm、MD方向の収縮率:1.2%、TD方向の収縮率0.3%(なお、MD方向が、熱収縮が最大になる方向であった。)上に、粘着剤塗布液A1を塗布した後、120℃、1分間加熱することによって乾燥させて、厚さ13μmの粘着性樹脂層(A)を形成した。次いで、セパレータ上に粘着剤塗布液C1を塗布し、120℃、1分間加熱することによって乾燥させて、厚さ15μmの凹凸吸収層を形成した。次いで、PETフィルム1の粘着性樹脂層(A)とは反対側の表面に、セパレータから厚さ20μmの上記凹凸吸収層を転写し、次いで、凹凸吸収層の上に粘着剤塗布液C2を塗布し、120℃、1分間加熱することによって乾燥させて、厚さ30μmの粘着性樹脂層(B)を形成し、粘着性樹脂層(B)を有する粘着性フィルムを得た。
ここで、PETフィルム1は、加熱処理による応力緩和処理をおこなったものである。
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0106】
<評価>
(1)平均吸水率
粘着性フィルムの平均吸水率は、以下の手順で測定した。
1)実施例および比較例で得られた粘着性フィルムの両面にセパレータを貼り、25℃で、かつ、50%RHの雰囲気下のクリーンルーム内で24h静置した。
2)粘着性フィルムのセパレータを両面剥離して粘着面を露出し、130℃に設定したオーブン内で、粘着性フィルムをつり下げた状態で30分間加熱し、粘着性フィルム中の水分を除去した。次いで、加熱乾燥後の粘着性フィルムの質量を測定し、この質量をWとした。
3)加熱乾燥後の粘着性フィルムをつり下げた状態で、25℃で、かつ、50%RHの雰囲気下の上記クリーンルーム内で24h静置させて吸水をさせた後に粘着性フィルムの質量を測定する。この質量をWとした。
4)100×(W-W)/W(%)を吸収率とする。同測定を粘着性フィルム毎に6回ずつ繰り返し、その平均を平均吸水率とした。
【0107】
(2)封止工程における電子部品の位置ずれ
実施例・比較例で得られた粘着性フィルムの粘着性樹脂層(B)側をコンプレッションモールド用のステンレス板(φ310mm、厚み1.5mm)上に接着し、電子部品として、5.0mm角の半導体チップを2.0mm間隔の格子状となるように粘着性フィルムの粘着性樹脂層(A)上に載せて密着させ、構造体を得た。
次いで、圧縮成形機を用いて、粘着性樹脂層(A)上の複数個の半導体チップを液状のエポキシ樹脂系封止材(ナガセケムテックス社製、製品名:T693/R4212-2C)により圧縮成形で封止し、封止樹脂ウェハ(φ300mm、厚み0.5mm)がステンレス板上に形成された構造体を得た。
次いで、下記の基準で電子部品の位置ずれを評価した。
無し:目視により、半導体チップの位置ずれが観察されなかった
有り:目視により、半導体チップの少なくとも一部に位置ずれが観察された
【0108】
【表1】
【0109】
平均吸水率が0.90質量%以下である粘着性フィルムを用いた実施例では、封止工程における半導体チップの位置ずれは観察されなかった。よって、実施例の粘着性フィルムでは、封止工程における電子部品の位置ずれを抑制できることが理解できる。
これに対し、収縮率が0.90%を超える範囲の粘着性フィルムを用いた比較例では、封止工程における半導体素子の位置ずれが観察された。よって、比較例の粘着性フィルムでは、封止工程における電子部品の位置ずれが発生してしまうことが理解できる。
【0110】
この出願は、2019年4月26日に出願された日本出願特願2019-086215号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0111】
A 粘着性樹脂層
B 粘着性樹脂層
10 基材層
10A 第1面
10B 第2面
50 粘着性フィルム
60 封止材
70 電子部品
80 支持基板
100 構造体
200 電子装置
300 電子装置
310 配線層
320 バンプ
400 電子装置
図1
図2
図3