(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】実質的にポリアルキレンテレフタレートを再処理するための方法、装置、および使用
(51)【国際特許分類】
C08J 11/24 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
C08J11/24 ZAB
(21)【出願番号】P 2021532358
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2019073598
(87)【国際公開番号】W WO2020053051
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】102018122210.6
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521106566
【氏名又は名称】リトテク ウムヴェルテクニク ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】RITTEC UMWELTTECHNIK GMBH
【住所又は居所原語表記】Moorweide 13,21339 Lueneburg Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】アイヒェルト,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ブレポール,エステル
(72)【発明者】
【氏名】ショール,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ビールマン,ラルス
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10058773(DE,A1)
【文献】特開2007-023119(JP,A)
【文献】特開2001-151709(JP,A)
【文献】特開平09-286744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00-28
B09B 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートを含む廃棄物を、解重合により連続プロセスで再処理する方法であって、
アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を該廃棄物に添加して反応混合物を調製すること、該反応混合物に、反応物としてアルキレングリコールを追加で添加すること、該アルキレングリコールが、目的の解重合の生成物として製造されるアルキレングリコールであること、前記反応混合物には、上記以外の反応性成分を添加しないこと、搬送に二軸スクリュー押出機が使用されること、ならびにその2つのスクリューが同方向に回転する方法において、
前記アルキレングリコールが、該アルキレングリコールに対する前記廃棄物の質量流量比が3.3となるように選択された質量流量で添加されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記反応混合物を調製する前に、前記廃棄物が、3mm以下の大きさに破砕されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属水酸化物および/または前記アルカリ土類金属水酸化物が、前記
ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートの構成繰り返し単位に対する該アルカリ金属水酸化物および/または該アルカリ土類金属水酸化物の比が化学量論比、2.4となるような質量流量で添加されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
解重合のための前記反応混合物が、反応器内で連続的に搬送されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記解重合が、前記
ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートの沸点未満および/もしくは
前記アルキレングリコールの沸点未満の温度、160℃で行われ、かつ/または1~3barの圧力下で行われることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応器に不活性ガスが供給されることを特徴とする、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物が、混練および/または混合および/または搬送および/または逆搬送されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アルキレングリコールが、蒸発により、反応送出物から除去されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応送出物に水を添加して固体成分を溶解させることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応送出物から固形物がろ去されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応送出物に酸を添加して、該反応送出物中に含まれる、前記解重合により生成したカルボキシラートイオンを酸に変換することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレンテレフタレート、特にポリアルキレンテレフタレートおよび/またはポリアルキレンテレフタレートを実質的に含む廃棄物を、解重合により連続プロセスで再処理する方法であって、好ましくは固体の、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムを該廃棄物に添加して反応混合物を調製することを特徴とする方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、前記方法を実施するための装置に関する。
【0003】
さらに、本発明は、前記方法を実施するための前記装置の使用に関する。
【0004】
より詳細には、本発明は、ポリアルキレンテレフタレート含有廃棄物をリサイクルするための連続的な方法に関するものであり、この方法において、該廃棄物は、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物とともに適切に調製され、押出機または混練反応器で混合および加熱される。
【0005】
本発明の方法の主な利点は、前記方法により、ポリアルキレンテレフタレート含有廃棄物および多層ポリアルキレンテレフタレートを連続的に処理できることである。連続的に再処理することにより、アルカリ金属テレフタル酸塩またはアルカリ土類金属テレフタル酸塩を含むリサイクル可能な材料フローを連続的に回収することができ、また、生成したアルキレングリコールと使用したアルキレングリコールを分離・製造することもできる。次いで、アルカリ金属テレフタル酸塩またはアルカリ土類金属テレフタル酸塩を含むリサイクル可能な材料フローを、水などの適切な溶媒に溶解して精製し、必要に応じてテレフタル酸(TPA)またはテレフタル酸エステルに変換することができる。
【背景技術】
【0006】
廃棄物としてのポリアルキレンテレフタレート、特にポリエチレンテレフタレート(PET)からTPAまたはTPAの中間体を製造する方法として、様々な方法が知られている。しかし、公知の方法では、多層構造のPET廃棄物を処理することはできず、また、効率性や経済性の観点からも公知の方法は不利である。公知の方法について、以下に簡単に説明する。
【0007】
米国特許第4542239号に、水酸化アンモニウム水溶液を用いてPET廃棄物からTPAを得る方法が記載されている。この方法を行うには、高圧と高温の両方が必要である。また、水酸化アンモニウムを使用する際には、広範な安全要件を満たす必要がある。
【0008】
米国特許第3120561号および第4578502号には、水またはメタノールの存在下でPETを加水分解する方法が開示されている。この方法でも、高温高圧の状態を数時間維持する必要があり、その後、冷却によりTPAが得られる。
【0009】
米国特許第4355175号では、希硫酸を用いてPET廃棄物の加水分解を行っている。その後、得られた溶液をアルカリ性溶液で処理し、沈殿した夾雑物をろ過して分離する。TPAは硫酸を加えることで得られる。
【0010】
米国特許第3952053号には、ポリエステル生産廃棄物を処理する方法が記載されている。この方法では、最初に硫酸を添加して、染料や添加物を除去する。そして、精製された中間生成物に水酸化ナトリウムを加えて、TPAを沈殿させる。残存するモノエチレングリコール(MEG)は、蒸留して回収する。
【0011】
独国特許第69714614号では、弱アルカリ性の水溶液を使用して、高温高圧下でPETの解重合を行っている。アルカリ性溶液としては、アンモニアやアルカリ金属の重炭酸塩、カルバミン酸アンモニウム、尿素などの試薬が使われる。放出された二酸化炭素は再利用される。
【0012】
独国特許第69522479号では、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の存在下、溶媒(水など)と湿潤剤を用いて、高温高圧下で解重合を行っている。溶解しているアルカリ金属テレフタル酸塩またはアルカリ土類金属テレフタル酸塩をろ過して、酸でTPAを沈殿させた後、TPA粒子を大きくするために結晶化を行う。
【0013】
米国特許第5395858号では、PET廃棄物と銀含有PET廃棄物(写真フィルムやX線フィルム)を水酸化ナトリウム溶液中で解重合している。その後、溶媒を蒸発させ、残ったテレフタル酸二ナトリウムを水に溶解して酸でTPAに変換する。
【0014】
米国特許第3544622号には、水酸化ナトリウムとエチレングリコールを用いて、大気圧下150℃以上でPETをけん化することが記載されている。この解重合は、撹拌容器を用いてバッチ式で行われ、これと同時にエチレングリコールの蒸発も行われる。得られたテレフタル酸二ナトリウムは、酸によりTPAに変換される。
【0015】
米国特許第6720448号B2では、高温下で水を使用せず、例えばエチレングリコール中で、塩を用いてPETを変換している。使用する塩は、TPAよりも弱い酸である。この方法では、様々な塩基やその混合物を使用する。得られた中間生成物を水に溶解してろ過し、強酸を加えてTPAを得る。
【0016】
米国特許公開第2017/0152203号A1には、ジクロロメタンとメタノールの混合溶媒中、20~60℃の温度でPETを解重合することが記載されている。また、TPAとエチレングリコールを回収するために、他の様々な溶媒を使用することも開示されている。また、例えば非極性溶媒を用いたポリマーの膨潤についても記載されている。この解重合はバッチ式で行われ、場合によっては長い時間かけて行われることもある。
【0017】
独国特許第69316545号T2には、混練押出機で、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を用いて、コーティングが施されていないPETを解重合する方法が記載されている。この方法では、溶媒は加えない。混合物を混練押出機で加熱し、少なくとも部分的に溶融させる。このようにして得られたアルカリ金属テレフタル酸塩またはアルカリ土類金属テレフタル酸塩を、水に溶解してろ過し、硫酸を用いてTPAを得る。
【0018】
「On-Line Monitoring of Molecular Weight Using NIR Spectroscopy in Reactive Extrusion Process」には、Bergmannらにより、320℃に設定した押出機でPETを解糖することが記載されている。この方法では、PETの解重合にエチレングリコールを使用している。しかし、TPAは得られない。
【0019】
上記した各種方法では、PETの変換は、主に高温高圧で行われる。そのため、設備や大量のエネルギーが必要であり、費用対効果が低いという欠点がある。また、ここで説明した方法のほとんどは、もっぱらバッチ式で行われる。先行技術のバッチ式処理は、高温高圧で実施されるため、加熱や加圧のためのコストがかさむという欠点がある。
【0020】
特に、ポリマーをベースにした多層複合材料のリサイクルでは、ポリアルキレンテレフタレートに様々な材料が結合しているため、プロセス上、非常に大きな課題があった。このような複合システムは、特に食品産業で多層包装材として使用されており、機械的安定性を保つ包装を提供し、包装された食品に必要な保護機能を提供するために使用されている。このような包装要件を満たすために、二層または多層の包装材が使用されている。このような包装材は、様々なポリマーもしくは材料および/または無機コーティング材からなる複数の層で構成されており、各層が少なくとも1つの機能を有する。例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体は、食品包装材の酸素バリアとして使用されている。多層包装システムの構造については、特許明細書米国特許第9475251号B2、米国特許第6610392号B1、および欧州特許公開第1036813号A1に記載されている。よく使用されている食品包装材として、例えば、ポリエチレン(PE)またはポリアミド(PA)の薄層がコーティングされたPETシェルがある。このような包装材に例示される多層包装材は、様々なポリマーや材料が永久的に結合していることが特徴である。よって、現行の技術では、多層構造の材料のリサイクルは困難であるか、あるいはほぼ不可能である。国際特許公開第2003104315号A1には、コーティングされた材料の解重合、溶解、酸化が起こらない多層システムの分離方法が記載されている。しかし、この方法は、環境に有害な溶媒を使用するものであり、著者らの知る限りにおいて、費用対効果の高い形ではまだ実現されていない。国際特許公開第2003070376号A1に記載されている方法によれば、PET成形品と、ポリビニルアルコールからなるバリア層と、コーティング層とからなる、コーティングが施されたプラスチック成形品を水を使用して分離することができる。この方法では、ポリビニルアルコールからなるバリア層である中間層を溶解させることにより、コーティング層からPET成形品を分離することができる。そのため、この方法の適用は、非常に特殊な3層システムに限定されるという欠点がある。
【0021】
現在の技術水準では、複数の異なる層を分離することは困難であるため、多層システムまたは多層材料は、使用後に加熱して再処理するか埋立地で分解させるしか方法がない。加熱による再処理にしても、廃棄物を埋立地に捨てるにしても、物質循環から物質が消失することになる。食品産業で使用されている様々な種類の包装材の概要については、「Recycling 2018」のKaiserらの「Recycling of polymer-based multilayer packaging: a review」に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
このような背景から、本発明の目的は、ポリアルキレンテレフタレート、特にポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートを実質的に含む廃棄物を、解重合により連続プロセスで再処理するための、上述したタイプの方法、装置、および使用であって、多層システムおよび着色された材料を、高い処理能力で、ほぼ完全に高品質の出発材料に化学的にリサイクルし、リサイクル産物から制限なく、新たなポリアルキレンテレフタレート製品を製造することができる方法、装置、および使用を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的は、本発明によれば、独立請求項に記載の特徴を組み合わせることによって達成される。
【0024】
特に、方法に関する目的は、前記反応混合物に、反応物としてアルキレングリコールを追加で添加すること、該アルキレングリコールが、目的の解重合の生成物として製造されるアルキレングリコール、特にモノエチレングリコール(MEG)であること、および前記反応混合物には、上記以外の反応性成分を添加しないことを特徴とする、上述したタイプの方法によって達成される。本発明において、解重合で生成されたアルキレングリコールを反応物として加えることにより、リサイクル率およびリサイクル品質に関して最適な処理が可能になることが示されている。
【0025】
特に、本発明において、PET廃棄物を再処理する際に、水酸化ナトリウムに加えて、例えばMEGを添加する。
【0026】
本発明の方法のさらに有利な一実施形態において、前記反応混合物を調製する前に、前記廃棄物は、3mm以下の大きさに破砕されることが好ましい。この場合、前記反応混合物を調製する際に、つまり実際の解重合を行う前に、廃棄物、特に多層システムを機械的に破砕して細片化することで、けん化反応のために最大限の表面積を確保することができる。機械的な破砕により、層と層の間の材料同士の結合や層自体が崩壊するため、本発明においては、廃棄物、特にPET表面のすべての面または複数の面で反応が行われる。
【0027】
本発明の方法の好ましい一実施形態において、前記アルキレングリコールは、該アルキレングリコールに対する前記廃棄物の質量流量比が少なくとも3、特に3.3となるように選択された質量流量で添加される。この比率は、本発明において、高い処理効率を実現し、高品質のリサイクル産物を得るのに適していることが示されている。
【0028】
本発明の方法のさらに有利な一実施形態において、前記アルカリ金属水酸化物および/または前記アルカリ土類金属水酸化物は、前記ポリアルキレンテレフタレートの構成繰り返し単位に対する該アルカリ金属水酸化物および/または該アルカリ土類金属水酸化物の化学量論比が少なくとも2、特に約2.4となるような流量で添加される。具体的には、質量流量3.33kg/hの水酸化ナトリウムを使用することで、質量流量6.66kg/hのPET含有廃棄物を処理することができる。
【0029】
本発明の方法のさらに有利な一実施形態において、解重合のために、前記反応混合物は反応器内で連続的に搬送される。連続操作により、高い処理能力を実現できるという利点がある。また、反応器内で連続処理が行われることで、該反応器を一定の温度に制御することができるため、エネルギー効率の高い処理を実現することができる。
【0030】
本発明において、前記搬送に押出機、特に二軸スクリュー押出機を使用することは特に有利であり、その2つのスクリューは同方向に回転することが好ましい。特にアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物として水酸化ナトリウム(例えば、ペレット状の水酸化ナトリウム)を使用する場合は、密に噛み合うスクリューエレメントを有する同方向回転二軸スクリュー押出機を使用することで、前記反応混合物の混合が良好に行われるという利点がある。これは、固形材料に強い機械的ストレスを付与することを目的としている。
【0031】
本発明の方法の有利な一実施形態において、前記解重合が、前記ポリアルキレンテレフタレートの分解点未満および/またはMEGの沸点未満の温度、特に160℃で行われることはさらに有利である。従来法では、180℃~250℃の温度や生成されるアルキレングリコールの沸点より高い温度、すなわちPET廃棄物の場合は197℃より高い温度が採用されていることから、本発明の方法では従来法と比べて省エネ処理が可能である。また、それに応じて加える圧力も抑えられるため、本発明の方法を実施する際に、高圧に適した反応器を使用する必要はない。特に、本発明において、押出機を反応器として使用することができる。本発明によれば、押出機の主な利点は、連続処理できることと、製品の混合が良好に行われることである。
【0032】
本発明の方法において、前記反応器に不活性ガス、好ましくは窒素を導入することは有利である。また、本発明において、窒素の代わりに、希ガス、希ガスの混合ガス、または希ガスと窒素の混合ガスを導入することもできる。この場合、酸素や湿気が前記反応器に入り込むことを防ぐことができるため、確実に定量供給を行うことができる。さらに、本発明によれば、不活性ガスで覆うことで、吸湿性の高い水酸化ナトリウムが凝集することや、目詰まりを起こして反応プロセスを停止させることを防止できるという利点がある。
【0033】
本発明の一実施形態において、高い処理能力で高いリサイクル率を実現するために、前記反応混合物は、解重合中に混練および/または混合および/または搬送および/または逆搬送される。特に、混練、混合、搬送、および逆搬送というひと続きの処理を時間的および/または空間的に連続して行うことで、固形物を均一に混合することができ、PET材料および多層システムを破砕して細片化することができるため、けん化反応のために最大限の表面積を確保することができる。機械的ストレスにより、層と層の間の材料同士の結合や層自体が崩壊するため、上記処理を行うことで、PET表面の複数の面で反応が行われるという利点がある。さらに、前記反応混合物の処理順序を適切に選択することで、反応器内の廃棄物の平均滞留時間を所望の時間に設定することができ、例えば2分にすることができる。
【0034】
本発明の方法の好ましい一実施形態において、アルキレングリコールは、好ましくは蒸発により、反応送出物(前記反応器からの送出物)から除去される。反応物として使用されたMEGなどのアルキレングリコールと、生成したアルキレングリコールはいずれも、実際に凝縮により回収可能である。これにより、特に効率的な処理が可能になる。
【0035】
解重合後に得られた反応送出物をさらに処理するために、本発明の方法の好ましい一実施形態において、該反応送出物に水を添加して固体成分を溶解させてもよい。この処理は、撹拌容器またはミキシングスクリューで行われる。この処理により、解重合により得られたTPA塩を溶解させることができる。水酸化ナトリウムを添加しながらPET含有廃棄物を処理する場合は、水を添加すると、解重合により生成したテレフタル酸二ナトリウムが溶解する。
【0036】
本発明の方法の好ましい一実施形態において、前記反応送出物から固形物がろ去される。この固形物は、特に、PET残渣、ポリエチレン、ポリプロピレン、金属、段ボール、ポリスチレンなどの不溶性残渣である。
【0037】
本発明の方法のさらに有利な一実施形態において、前記反応送出物にさらに酸を添加して、該反応送出物中に含まれる、前記解重合により生成したカルボキシラートイオンを酸に変換してもよい。この目的のために、本発明において、添加される酸は生成されるTPAよりも強い酸である必要がある。その意味で、本発明において、25%(w/w)の濃度の硫酸が特に適している。
【0038】
本発明の目的は、請求項1~13のいずれか1項に記載の再処理方法を実施するための上述したタイプの装置であって、移送手段を有する反応器と、好ましくは固体の、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を供給する手段と、アルキレングリコールを該反応器に供給する手段とを有する装置によっても達成される。本発明の装置は、移送手段を有する反応器を含むため、前記方法を連続的に行うことができる。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記反応器が温度制御されている場合、前記移送手段によって該反応器内の滞留時間を所望の時間にすることが可能であり、それにより、高いリサイクル率で高い処理効率を実現することができる。
【0040】
MEGなどのアルキレングリコールを供給する手段が設けられている本発明の特徴により、多層構造の廃棄物の再処理に特に適していることが証明されている形で本発明の方法を実施することができる。
【0041】
アルカリ金属水酸化物を供給する前記手段は、例えばペレット状の固体の水酸化ナトリウムを供給するために、強制移送機(フィーダー)を有する定重量供給装置を含んでいてもよい。アルカリ金属水酸化物を供給する前記手段は、固体材料定量供給装置として実装することもできる。さらに、MEGなどのアルキレングリコールを供給する前記手段は、定重量供給ユニットを含んでいてもよい。
【0042】
本発明の装置の一実施形態において、前記反応器は、押出機、特に二軸スクリュー押出機、好ましくは同方向回転二軸スクリュー押出機として実装されている。この場合、前記方法を実施する際に、固形物を均一に混合することができ、再処理する材料、特に多層システムを有する材料を機械的に破砕して細片化し、けん化反応のために最大限の表面積を確保することができる。
【0043】
本発明の装置の好ましい一実施形態において、前記移送手段は、内径に対する外径の比が約1.7、特に1.66である少なくとも1つのスクリューエレメントを含むスクリュー配置を有する。この比率は、本発明において、再処理品質の観点からも、処理能力の観点からも適切であることが示されている。
【0044】
さらに、本発明の装置の一実施形態において、外径に対する長さの比が約60であるスクリュー配置を有することが有利であることが示されている。この場合、滞留時間を2分に設定しても、非常に高い変換率を実現できる。
【0045】
本発明の装置のさらなる発展形において、前記反応混合物が前記反応器内のセグメントごとに移送、混練、または逆搬送されるために、前記移送手段は、特に、搬送スクリューエレメント、混練スクリューエレメント、および/または逆搬送スクリューエレメントを含んでいてもよい。本発明において、混練エレメント、混合エレメント、搬送エレメント、および逆搬送エレメントを適切な順序でひと続きに配置することで、固体材料が均一に混合され、処理対象のポリアルキレンテレフタレート材料および多層システムが機械的に破砕されて細片化される。これにより、けん化反応のために最大限の表面積を確保することができる。この機械的ストレスにより、層と層の間の材料同士の結合や層自体が崩壊するため、ポリエチレンテレフタレート表面のすべての面で反応が起こり得る。本発明において、前記スクリューエレメントを適切に組み合わせることで、押出機内の廃棄物の平均滞留時間をわずか約2分に設定することができ、この短い反応時間で行われる解重合により92%~97%の変換率を達成することができる。本発明において、前記スクリューエレメントは、直径の約1~2倍の長さを有していてもよい。
【0046】
本発明によれば、使用するスクリューエレメントは、所望の順序でひと続きにしてシャフトに固定することができる。スペーサーディスクまたはトランジションエレメントを使用して、前記スクリューエレメントのピッチを変更することができる。搬送エレメントおよび搬送機能を有さない混錬エレメントを使用して、最大限の機械的ストレスを付与することができ、約2分間の平均滞留時間も実現できる。本発明によれば、混錬エレメントを使用することで、前記反応混合物にエネルギーが導入され、反応を促進することができるという利点がある。さらに、混練エレメントにより、前記反応混合物中に塩基を良好に分散させることができる。逆搬送エレメントを使用することで、前記反応混合物を蓄積させる。本発明において、逆搬送エレメント間の隙間を小さくすることで、廃棄物の残渣が逆搬送エレメントとシリンダー壁と間の隙間を通って押し出されるまで、前記反応混合物を強制的に滞留させることができる。本発明によれば、一部のスクリューエレメントが搬送・混合エレメントとして実装される場合、低せん断力で非常に良好な混合が可能であるため、混練エレメントに比べて反応生成物への機械的ストレスを低減できる。
【0047】
本発明の装置の有利なさらなる発展形において、前記反応器は、該反応器内のセグメントごとにそれぞれのスクリューエレメントに適した温度に制御するための手段を備えている。この場合、それぞれの機械的処理に適した温度プロファイルを選択できるという利点がある。この目的のために、本発明において、前記反応器の各ハウジングセグメントは、それぞれ個別に制御可能な電気加熱器と水冷式冷却器を備えていてもよい。
【0048】
また、本発明の目的は、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法を実施するための、請求項14~19のいずれか1項に記載の装置を使用することにより達成される。
【0049】
本発明の方法において、1種のポリマーもしくは複数の異なる種類のポリマーおよび/または天然繊維および/または金属コーティングで構成された二層システムまたは多層システムとしてのポリアルキレンテレフタレート含有廃棄物が好適に使用される。前記ポリアルキレンテレフタレート含有廃棄物は、ポリエチレンテレフタレートの層を有することが好ましい。例としては、市販のペットボトル、食品用包装材などが挙げられる。
【0050】
独国特許第69316545号T2には、純粋な形態のポリアルキレンテレフタレート廃棄物または他のポリマーとの混合物としてのポリアルキレンテレフタレート廃棄物の無溶媒処理が記載されているが、本発明の方法では、コーティングが施されたポリアルキレンテレフタレート廃棄物およびポリアルキレンテレフタレート含有多層システムを処理することができる。本発明において、特定の用途では、前記押出機または前記混練反応器に溶媒または混合溶媒を添加することは有利である。この場合、前記溶媒は、アルコール類から選択されることが好ましい。
【0051】
添加材料を溶媒で処理すること、および前記押出機または前記混練反応器での解重合プロセスで溶媒を添加することにより、混合および相接触がより良好に行われ、物質変換率が増すため、解重合の効果が向上する。
【0052】
本発明において、前記ポリアルキレンテレフタレート含有廃棄物、例えば、ボトル、フィルム、繊維、シェル、自動車の内装トリムなどの包装廃棄物は、処理前に破砕され、次いで、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物と反応器内で混合される。試薬の添加は、前記アルカリ金属水酸化物または前記アルカリ土類金属水酸化物が、前記ポリアルキレンテレフタレートの構成繰り返し単位に対して化学量論量で存在するか、該化学量論量よりわずかに過剰に存在するように行われる。本発明において使用される反応器は、連続運転の押出機であっても、連続運転の混練反応器であってもよい。
【0053】
本発明の方法では、前記押出機または前記混練反応器で処理を行う前および処理を行っている間、添加された試薬および破砕されたポリアルキレンテレフタレート含有廃棄物はすべて、不活性ガス雰囲気で覆われているか包囲されていることが有利である。この不活性ガス雰囲気は、窒素、希ガス、またはこれらの混合物からなっていてもよく、特定のプロセスにおいては、乾燥空気または合成空気で構成されていてもよい。
【0054】
本発明の一実施形態において、添加材料の混合が良好に行われるように、密に噛み合うスクリューが同方向または逆方向に回転する二軸スクリューフィーダーまたは多軸押出機、およびセルフクリーニング作用を有するブレードを備えていることが好ましい混練反応器を使用してもよい。押出スクリューエレメントの配置やブレードの配置は、設計上、セルフクリーニング可能であることが好ましく、混合エレメント、搬送エレメント、逆搬送エレメント、および混練エレメントを使用することで、プロセスに応じて調整することができる。
【0055】
本発明の一実施形態の方法において、生成したアルキレングリコールを減圧下でまたは不活性ガスを流して除去できるように押出スクリューエレメントを配置してもよい。本発明の好ましい一実施形態において、前記溶媒の蒸気および前記アルキレングリコールの蒸気は、凝縮などの適切な手法により前記反応器の外部で回収することができる。
【0056】
本発明の方法の別の変形例において、混練ミキサーのブレードは、セルフクリーニング可能な方法で混合物を均質化できるように配置されていてもよく、前記廃棄物中のポリアルキレンテレフタレートのけん化は、1~60分の範囲で行うことができる。また、本発明のこの変形例において、前記反応器に不活性ガスを流して、前記アルキレングリコールの蒸気を該反応器の外部に送出してもよい。この蒸気は、本発明において、適切な装置を用いることにより、前記反応器の外部で再処理することができる。
【0057】
本発明の方法によれば、反応生成物として、アルカリ金属テレフタル酸塩またはアルカリ土類金属テレフタル酸塩、およびアルキレングリコールが得られ、任意選択で溶媒を使用した場合は、その溶媒も得られる。前記アルカリ金属テレフタル酸塩または前記アルカリ土類金属テレフタル酸塩は、適切な溶媒、好ましくは水に溶解され、次の工程でろ過、精製される。ろ過により、プロセス中に部分的に変化せずに現れたコーティングは、多層システムから容易に回収することができる。本発明による具体的な例において、そのような成分は、廃棄物の流れに入った、食品包装材としてのPE/PETまたはPP/PETの多層システム中のPE成分またはポリオレフィン成分であってもよい。
【0058】
先行技術の方法は、コーティングされていないPET廃棄物からアルカリ金属テレフタル酸塩またはアルカリ土類金属テレフタル酸塩を生成する方法であるが、本発明の方法では、コーティングが施された多層構造のポリアルキレンテレフタレートを含む廃棄物や、様々なポリマーとポリアルキレンテレフタレートと廃棄物との混合物を処理して、価値のあるアルカリ金属テレフタル酸塩またはアルカリ土類金属テレフタル酸塩を製造することができる。また、TPAよりも強い酸を添加することで、得られたアルカリ金属テレフタル酸塩またはアルカリ土類金属テレフタル酸塩からTPAを水溶液中で得ることができる。
【0059】
ここ10年間の状況の変化から、大量の包装材のリサイクルの可能性を見出す必要があることが示されている。本発明の方法により、特に、単層または多層のポリエチレンテレフタレートを含むボトルおよびその他の液体容器をリサイクルすることが可能であり、このようなリサイクルは、少なくとも2つの異なる材料の間に直接的な結合が存在する限り、現行の技術水準では不可能であることから、本発明の方法は、現在の問題のかなりの部分を解決することができる。
【0060】
本発明の方法は、材料同士の直接的な結合に加えて、ポリアルキレンテレフタレート含有廃棄物の中に、例えば、添加剤、充填剤、染料、顔料、包装材、ラベル、金属および金属コーティングなどの夾雑物が含まれていても対応できるという利点がある。本発明において、このような夾雑物は、反応生成物であるアルカリ金属テレフタル酸塩またはアルカリ土類金属テレフタル酸塩を水に溶解した後、ろ過および/またはその他の工程を経ることによって分離することができる。目的物であるTPAは、TPAよりも強い酸を用いてpH値を下げて精製する工程を経ることで得られる。
【0061】
以下、本発明のリサイクル方法の適用例をより詳細に説明するが、以下の例に限定されない。
【0062】
実施例1
スクリュー径18mmの同方向回転二軸スクリュー押出機に、不活性ガス雰囲気下、PEコーティングが施されたPETフレークを0.8kg/hで、水酸化ナトリウムを0.4kg/hで、2つの定量供給装置を用いて連続的に添加する。これらの添加フローにより、PETの構成繰り返し単位を基準としたPET/NaOHの重量比が約2で一定に保たれる。押出機のハウジングの温度は160~180℃に設定する。2つのスクリューの回転速度は500rpmである。生成物をサンプリングしたところ、PETのけん化度は80%を上回っていた。二軸スクリュー押出機で生成したMEGを留去する。このようにして得られた固形物は、テレフタル酸一ナトリウムおよびテレフタル酸二ナトリウムと、未反応のPE成分とで実質的に構成されている。押出物を水に溶解して固液分離した後、溶液を精製し、強酸を加えてTPAを沈殿させる。
【0063】
実施例2
実施例1と同じ装置を用いて同様の方法により、PEコーティングが施されたPETと、その他のポリマー、特にPPなどのポリオレフィンとを含む廃棄物の不均質な供給フローを処理する。供給フローには約0.8kg/hでPP/PEコーティングが施されたPETフレークが存在しており、水酸化ナトリウムを0.4kg/hで押出機に導入し、これと並行してMEGを0.9kg/hで別途定量供給する。これらの添加フローにより、NaOHに対するPETの重量比が約2で一定に保たれる。この方法では、装置全体を不活性ガスで覆う。押出機のハウジングの温度は140~160℃に設定する。2つのスクリューの回転速度は400rpmである。生成物をサンプリングしたところ、PETのけん化度は90%を上回っていた。使用したMEGと生成したMEGのいずれも、二軸スクリュー押出機において減圧除去する。このようにして得られた固形物は、テレフタル酸一ナトリウムおよびテレフタル酸二ナトリウムと、未反応のポリオレフィン成分、特にPP成分およびPE成分とで実質的に構成されている。
【0064】
実施例3
スクリューの直径が27mmであること以外は実施例1と同様の装置を用いて同様の方法により、PEコーティングが施された5kg/hのPETフレークを、2.5kg/hの水酸化ナトリウムで処理し、これと並行してMEGを5.7kg/hで添加する。これらの添加フローにより、NaOHに対するPETの重量比が約2で一定に保たれる。押出機のハウジングの温度は140~160℃に設定する。2つのスクリューの回転速度は270rpmである。生成物をサンプリングしたところ、PETのけん化度は90%を上回っていた。使用したMEGと生成したMEGのいずれも、二軸スクリュー押出機において留去する。このようにして得られた固形物は、テレフタル酸一ナトリウムおよびテレフタル酸二ナトリウムと、未反応のPE成分とで実質的に構成されている。
【0065】
実施例4
二軸混練反応器において、PEコーティングが施された0.8kg/hのPETフレークと0.4kg/hの水酸化ナトリウムを、0.9kg/hでMEGを添加しながら連続的に処理する。これらの量はそれぞれ別々に二軸混練反応器に供給され、これらの量により、PETの構成繰り返し単位を基準としたPETに対するNaOHの化学量論比が約2.4で一定に保たれる。混練反応器のハウジングの温度は160~180℃に設定する。混練シャフトの回転数は500rpmである。生成物をサンプリングしたところ、PETのけん化度は80%を上回っていた。二軸混練反応器で使用したMEGと生成したMEGを留去する。このようにして得られた固形物は、テレフタル酸一ナトリウムおよびテレフタル酸二ナトリウムと、未反応のPE成分とで実質的に構成されている。
【0066】
本発明のさらなる特徴を以下に示す。
特徴1
ポリアルキレンテレフタレート含有廃棄物をリサイクルする方法であって、
- 前記廃棄物を破砕する工程と、
- 破砕された廃棄物と、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物とを、押出機または混練反応器に供給する工程と、
- 破砕された前記廃棄物と、前記アルカリ金属水酸化物または前記アルカリ土類金属水酸化物とを、前記押出機または前記混練反応器で混合および加熱してけん化を行う工程と、
- アルカリ金属テレフタル酸塩またはアルカリ土類金属テレフタル酸塩を含む中間生成物を排出する工程と
を含む方法。
【0067】
特徴2
前記ポリアルキレンテレフタレート含有廃棄物が、1種のポリマーまたは複数の異なる種類のポリマーを含む二層システムおよび/または多層システムであることを特徴とする、特徴1に記載の方法。
【0068】
特徴3
前記ポリアルキレンテレフタレート含有廃棄物が、他のポリマー、ならびに/または他のポリマーおよび/もしくは天然材料および/もしくは金属で構成される混合物を含むことを特徴とする、特徴1または2に記載の方法。
【0069】
特徴4
前記ポリアルキレンテレフタレート含有廃棄物が、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ダンボール、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)もしくはこれらの共重合体と金属、またはこれらの混合物で構成される1つ以上の層を含むことを特徴とする、特徴1、2または3に記載の方法。
【0070】
特徴5
前記ポリアルキレンテレフタレート含有廃棄物が、ポリエチレンテレフタレートからなる層を含むことを特徴とする、前記特徴1~4のいずれかに記載の方法。
【0071】
特徴6
前記押出機または前記混練反応器に、溶媒または混合溶媒を添加することを特徴とする、前記特徴のいずれかに記載の方法。
【0072】
特徴7
前記溶媒が、アルコール類から選択されるものであること、または前記溶媒が、非極性のハロゲン化溶媒、特にジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、もしくは1,2-ジクロロエタンであること、または前記溶媒が、非ハロゲン化溶媒、特にジメチルスルホキシドであること、または前記溶媒が、1,4-ジオキサンもしくはテトラヒドロフランであることを特徴とする、特徴6に記載の方法。
【0073】
特徴8
前記けん化のための触媒として、酢酸亜鉛、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化亜鉛および/または酢酸鉛を添加することを特徴とする、前記特徴のいずれかに記載の方法。
【0074】
特徴9
反応性押出または混練反応が、100℃~180℃、好ましくは140℃~160℃の温度で行われることを特徴とする、前記特徴のいずれかに記載の方法。
【0075】
特徴10
前記反応性押出または前記混練反応が、不活性ガス、特にアルゴン/窒素で覆われた状態の乾燥した無酸素雰囲気で、連続的に行われることを特徴とする、前記特徴のいずれかに記載の方法。
【0076】
特徴11
前記けん化により生成したアルキレングリコールを蒸留により分離することを特徴とする、前記特徴のいずれかに記載の方法。
【0077】
本発明について、好ましい実施形態を例に挙げて、図面を参照しながら説明するが、利点のさらなる詳細については、図面で確認することができる。図面において、機能が同じ部材には、同じ参照符号を付している。図面には図が1つのみ示されており、詳細は下記の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】本発明の方法の一実施形態の各工程を示すブロックフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
図1を参照して説明される本発明の方法の好ましい実施形態により、従来はリサイクルできなかった、あるいはサーマルリサイクルしかできなかったポリエチレンテレフタレート(PET)廃棄物をリサイクルすることができる。この方法は、ポリブチレンテレフタレートなどの他のポリアルキレンテレフタレートのリサイクルにも適用できる。
【0080】
PET含有廃棄物(多層システムを含む)、例えば飲料ボトル、洗剤ボトル(不透明、透明、黒色)、またはその他の種類の食品包装材、例えばサラダシェル、ソーセージやチーズの包装材、またはPETを含む製造廃棄物は、第1の工程である工程1で洗浄され、3mm未満に破砕される。次いで、第2の工程である工程2において、PET材料の含水率を下げるために、前記廃棄物の予備乾燥を行ってもよい。あるいは、本発明の方法の実施後に、処理対象の材料の予備乾燥を行ってもよい。この場合、破砕工程1に続く乾燥工程2は省略してもよい。しかし、本発明における特定の用途では、さらに、より集中的な乾燥工程2が行われることが有利である。
【0081】
さらなる工程である「解重合」工程3において、前記廃棄物は、密に噛み合うスクリューエレメントを有する同方向回転二軸スクリュー押出機に供給される。この押出機において、PETのけん化反応と解重合反応が連続して行われる。
図1を参照して例を挙げて説明されるシステムにおいて、6.66kg/hのPET含有廃棄物、3.33kg/hの水酸化ナトリウム、2kg/hのMEGが押出機で処理される。プロセス中、PET廃棄物に対する水酸化ナトリウムの比率は、PETの構成繰り返し単位を基準とした化学量論比が約2.4で一定に保たれるように設定される。押出機から送出される反応送出物は、テレフタル酸二ナトリウム、MEG、水酸化ナトリウムやPET廃棄物の未反応分(例えば、PET残渣)、染料、PAや染料の分解産物、その他のポリマー(PE、PP、PS)などを含む。
【0082】
二軸スクリュー押出機は、モジュール方式で設計されており、14つの温度ゾーンで構成されている。各ハウジングには、個別に制御可能な電気加熱器と水冷式冷却器が備えられている。スクリュー内径Diに対するスクリュー外径Daの比は、スクリューの利用可能な自由容積を示すパラメータである。ここで使用する押出機では、スクリューエレメントのDa/Di比は1.66である。また、スクリューの直径Dに対するスクリューの長さLの比は、押出機のプロセス長さを表しており、この押出機では60である。スクリューの形状は、モジュール方式で設計されており、プロセスやPET材料に応じて調整することが可能である。押出機は、個別に温度調節された以下のシリンダーで構成されている。
シリンダー1:メインフィーダー、
シリンダー2:上部噴射ノズル、
シリンダー3:リバースフローを伴うサイド脱気、
シリンダー4:水酸化ナトリウム用サイドフィーダー、
シリンダー5:上部噴射ノズル、
シリンダー6:上部ベントポート、
シリンダー7:閉鎖、
シリンダー8:上部噴射ノズル、
シリンダー9:リバースフローを伴うサイド脱気、
シリンダー10:閉鎖、
シリンダー11:脱気、
シリンダー12:閉鎖、
シリンダー13:脱気、
シリンダー14:噴射ノズル、
シリンダー15:搬送、シリンダー15の後方で送出。
このように、シリンダー1~15において、反応物は、まず押出機に取り込まれ、各ゾーンを通過しながら装置内で機械的に処理される。最後のシリンダー、すなわち15番目のシリンダーでは、生成物が押出機から送出される。送出口は、生成物が装置外へと搬送されるための開口部として実装されている。
【0083】
この装置には最大3つの圧力センサーが備えられており、噴射ノズルのシリンダー開口部に挿入されている。ハウジング/シリンダー2~15は、160℃に温度制御されている。シリンダー1は、温度制御されていない。同方向に回転する2つのスクリューの回転数は、100rpmに設定されている。
【0084】
スクリューの構成は、上述の2種類の固体材料の混合がプロセス中、良好に行われるように選択される。使用するスクリューエレメントは、任意の順序でひと続きにしてシャフトに固定することができる。スクリューエレメントのねじ山数を変更する場合は、スペーサーディスクおよびトランジションエレメントを使用する。多層構造のPET廃棄物に対する可能な限りの変形/機械的ストレスを実現するために、また、多層構造のPET廃棄物の比較的長い(high)平均滞留時間(約2分)を実現するために、スクリュー構成の設計において、搬送エレメントおよび搬送機能を有さない混練エレメントを使用する。さらに、本発明において、混錬エレメントを使用することで、反応混合物にエネルギーを導入し、反応を促進することができる。さらに、混練エレメントにより、反応混合物中に塩基を良好に分散させることができる。逆搬送エレメントを使用することで、反応混合物を蓄積させる。逆搬送エレメント間の隙間を狭くすることで、PET廃棄物の残渣が逆搬送エレメントとシリンダー壁と間の隙間を通って押し出されるまで、反応混合物を強制的に滞留させることができる。脱気および大気開放を行う領域では、自由容積の大きいスクリューエレメントを使用する。これにより、反応混合物から溶媒を連続的に除去することができる。さらに、スクリュー構成には複数の搬送・混合エレメントが含まれており、これらの搬送・混合エレメントはせん断力が低いため、混練エレメントに比べて反応生成物への機械的ストレスが低減される。しかし、混合は非常に良好に行われる。
【0085】
シリンダー1の領域では、PETが固体定量供給装置により定重量供給される。この材料は、フィーダーと自由容積の大きいスクリューエレメントを介して、押出機内へと送られ、押出機内で加熱される。シリンダー1では、搬送だけが行われ、温度制御は行われない。シリンダー2では、上部の供給口から定重量供給装置によりMEGが添加される。ペレット状の固体の水酸化ナトリウムは、シリンダー4のサイドフィード用定量供給装置から定重量供給され、第2の定量供給装置から強制フィーダーにより添加される。また、シリンダー4は大気開放部を有する。PET用の固体定量注入装置と水酸化ナトリウム用の固体定量注入装置は、酸素および湿気が流入しないように、かつ定量供給が行われるように不活性ガスで覆われている。不活性ガスで覆われていない場合は、吸湿性の高い水酸化ナトリウムがすぐに凝集して目詰まりを起こし、プロセスを停止させてしまう恐れがある。シリンダー6とシリンダー10の大気開放部を介して、使用したMEGと生成したMEGを凝縮して回収することができる。
【0086】
スクリューの構成を表1に示す。各角度の値は、それぞれの場合の混練エレメントのディスク間の角度を示している。混練エレメント、混合エレメント、搬送エレメント、および逆搬送エレメントをひと続きにして用いることにより、固形物が均一に混合され、PET材料および多層システムが機械的に破砕されて細片化される。これにより、けん化反応のために最大限の表面積を確保することができる。機械的ストレスにより、層と層の間の材料同士の結合や層自体が崩壊するため、上記処理を行うことで、PET表面の複数の面で反応が行われるという利点がある。PETフレーク表面の1つ以上の面にコーティングが施されている場合、機械的ストレスを付与しなければ、塩基による攻撃はPETの露出面やPETの縁のみで起こることになる。示したスクリュー構成を選択することにより、PET廃棄物の押出機内における平均滞留時間が約2分に設定される。この反応時間の間に、PET含有廃棄物中のPET含量の92~97%が変換される。
【表1】
【0087】
ペースト状の反応送出物は、次の「後処理」工程4で、粒状にされ、粉砕され、温度制御された吸引式移送装置で運ばれる。MEGの蒸気は冷却器で凝縮され、回収される。
【0088】
次の「溶解」工程5では、反応送出物を攪拌容器またはミキシングスクリュー(55kg/h、テレフタル酸二ナトリウムの溶解度133g/L)で水に溶解させる。不溶性残渣(PET残渣、PE、PP、金属、PS、ダンボール)は、ろ過6により分離される。
【0089】
ろ過6の後、「精製」工程11で、プロセスの夾雑物および副産物が分離される。この工程では、本発明において様々な方法が考えられ、そのような方法はそれ自体当業者に公知である。
【0090】
次の「TPA沈殿」工程7では、硫酸(9.6kg/h、25%(w/w))が溶液に加えられる。ろ過8と水洗9により沈殿したTPAが得られ、ろ取される。得られたTPAは水洗され、残留する硫酸と沈殿時に生じた硫酸ナトリウムが除去される。
【0091】
洗浄10の後、水に不溶である固体のTPAを洗浄水から分離するために、固液分離10が行われる。
【0092】
本発明の方法、本発明の装置、および本発明の使用により、特に多層構造のPET廃棄物を高い処理能力で効率よく、重合反応に利用可能な高品質の出発材料に変換することができ、これらの材料は、制限なく再利用、すなわちポリアルキレンテレフタレート製造に利用することができる。この方法で生成されたアルキレングリコールの一部は、本発明の方法の解重合のためのリバースフローで使用することができる。
【要約】
本発明は、ポリアルキレンテレフタレート、特にポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートを実質的に含む廃棄物を、解重合により連続プロセスで再処理するための方法および装置であって、好ましくは固体の、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムを該廃棄物に添加して反応混合物を調製することを特徴とし、多層システムおよび着色された材料を、高い処理能力で、ほぼ完全に高品質の出発材料に化学的にリサイクルし、リサイクル産物から制限なく、新たなポリアルキレンテレフタレート製品を製造することができる方法および装置に関する。そのために、前記反応混合物に、反応物としてアルキレングリコールを追加で添加すること、該アルキレングリコールは、目的の解重合の生成物として製造されるアルキレングリコール、特にモノエチレングリコール(MEG)であること、ならびに前記反応混合物には、上記以外の反応性成分を添加しないことを提案する。