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特許7217362医薬液体を放出するためのディスペンサー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】医薬液体を放出するためのディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   F04B 9/14 20060101AFI20230126BHJP
   F04B 43/02 20060101ALI20230126BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
F04B9/14 B
F04B43/02 B
A61J1/05 313C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021557016
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2020060740
(87)【国際公開番号】W WO2020216673
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】19171385.8
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512245713
【氏名又は名称】アプタル ラドルフツエル ゲーエムベーハ
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】クランペン, ゲラルド
(72)【発明者】
【氏名】グライナー-ペルト, ユルゲン
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-245145(JP,A)
【文献】特表2008-514310(JP,A)
【文献】特表2009-512490(JP,A)
【文献】特開2012-092850(JP,A)
【文献】特開2013-066712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
A61M 1/00- 1/38
A61M 60/00-60/90
F04B 9/00-15/08
F04B 43/00-41/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬液体の放出のためのディスペンサー(10)であって、
(a)ディスペンサー(10)が、液体リザーバー(14)、容量変動可能なポンプ室(20)を有するポンプ装置(16)、及び液体の送出のための送出開口(28)を有し、
(b)ディスペンサー(10)が、ポンプ室(20)の一つの側を画定する膜部分(60)を有し、膜部分(60)が、少なくとも部分的に軟質プラスチックからなり、膜部分(60)が、変位及び/又は変形によってポンプ室(20)の容積を変更し、
(c)ディスペンサー(10)が、ポンプ装置が中に与えられるハウジング、並びに膜部分(60)を変位又は変形するため、及び液体放出のためにポンプ室(20)のサイズを減少させるために非作動開始位置と作動終了位置の間でハウジングに対して変位可能な作動ボタン(70)を有し、
(d)作動ボタン(70)が、硬質プラスチックから作られたボタン構成要素(80)を有し、
(e)ディスペンサー(10)が、ばね装置(72)を有し、それによって作動ボタン(70)が、その非作動開始位置の方向に力を受け、
(f)膜部分(60)が、作動ボタン(70)がその開始位置に変位されるときに膜部分(60)を移動させるように作動ボタン(70)の一つのボタン構成要素(80)に接続され、
(g)膜部分(60)へのボタン構成要素(80)の接続が、軟質プラスチックから作られた膜部分(60)の接続区域(68)がボタン構成要素(80)の少なくとも二つのクランプ面(84)間でクランプされることで実施され
(h)ボタン構成要素(80)が、細長開口の形の結合開口(82)を有し、結合開口(82)の縁に二つのクランプ面(84)が、互いに対向して与えられている
ことを特徴とするディスペンサー(10)。
【請求項2】
以下のさらなる特徴を有する、請求項に記載のディスペンサー(10):
(a)細長開口の形の少なくとも一つの組み立て開口(86)が、結合開口(82)と平行に与えられ、結合開口(82)が、膜部分(60)の接続区域(68)を導入するために少なくとも一つのクランプ面(84)の偏向を可能にする。
【請求項3】
医薬液体の放出のためのディスペンサー(10)であって、
(a)ディスペンサー(10)が、液体リザーバー(14)、容量変動可能なポンプ室(20)を有するポンプ装置(16)、及び液体の送出のための送出開口(28)を有し、
(b)ディスペンサー(10)が、ポンプ室(20)の一つの側を画定する膜部分(60)を有し、膜部分(60)が、少なくとも部分的に軟質プラスチックからなり、膜部分(60)が、変位及び/又は変形によってポンプ室(20)の容積を変更し、
(c)ディスペンサー(10)が、ポンプ装置が中に与えられるハウジング、並びに膜部分(60)を変位又は変形するため、及び液体放出のためにポンプ室(20)のサイズを減少させるために非作動開始位置と作動終了位置の間でハウジングに対して変位可能な作動ボタン(70)を有し、
(d)膜部分(60)が、外側縁領域でハウジングのハウジング区域(36)の周囲に固定され、
(e)膜部分(60)の縁領域が、硬質プラスチックから作られた固定リング(62)によってハウジング区域(36)に固定されており、固定リング(62)が、軟質プラスチックからなる膜部分(60)の複数の区域と一緒にワンピースで形成されるか、又は別個の構成要素として形成され、それによって膜部分の縁が、ハウジング構成要素に対して周囲を押圧される
ことを特徴とするディスペンサー(10)。
【請求項4】
以下のさらなる特徴を有する、請求項に記載のディスペンサー(10):
(a)ハウジング区域(36)が、環状形態であり、固定リング(62)が、ハウジング区域(36)の外面にクランプされ、ハウジング区域(36)の内面が、ポンプ室(20)の周囲壁を形成する。
【請求項5】
以下の特徴を有する、請求項1~のいずれかに記載のディスペンサー(10):
(a)ディスペンサー(10)のハウジングが、ディスペンサーの中心軸方向(2)に沿って細長外部形状を有し、送出開口(28)が、ディスペンサー(10)の遠位端に与えられ、
(b)ディスペンサー(10)が、ディスペンサー(10)の側のハウジングの外部面(54)の領域に与えられる作動ボタン(70)を有し、作動ボタン(70)が、ハウジングの膜部分の変形のために中心軸の方向に押し下げられることができる。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のディスペンサー(10)であって、
(a)ディスペンサー(10)が、液滴ディスペンサー(10)として設計され、かつ送出開口(28)の下流に液滴形成の手段を有する
ことを特徴とするディスペンサー(10)。
【請求項7】
(b)液滴形成の手段が、液滴形成表面を含み、液滴形成表面が送出開口を包囲し、平坦又は凹状形態であり、かつ/又は液滴形成表面が鋭利な破壊縁によって包囲される
ことを特徴とする請求項6に記載のディスペンサー(10)。
【請求項8】
(c)ディスペンサーが、作動ボタンの完全な作動が正確に一つの落下する液滴を生成するようにポンプ装置(16)と液滴形成の手段の間で共同作用を有する
ことを特徴とする請求項6又は7に記載のディスペンサー(10)。
【請求項9】
以下の特徴の少なくとも一つを有する、請求項1~のいずれかに記載のディスペンサー(10):
(a)最大ポンプ室容積と最小ポンプ室容積の間の差が、20μl~50μlであり、
(b)最ポンプ室容積と最ポンプ室容積の間の比率が、1:2以下であり、
(c)ディスペンサー(10)が、送出開口(28)の上流に送出弁(26)を有し
(d)ディスペンサーの液体リザーバー(14)が、ポンプ装置(16)を包囲するハウジングとともにワンピース形態で外部面(15)を有し
(e)液体リザーバーが、通気通路によって周囲大気に接続されるか、又は液体リザーバーが、変動可能な内部容積を有し、かつ可撓可能もしくは変位可能な壁によって目的のために画定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬液体の放出のため、特に個別の液滴の形の医薬液体の滴下放出のためのディスペンサーに関する。液滴は、例えば点眼薬、点耳薬又は点鼻薬であることができる。
【背景技術】
【0002】
一般的なタイプのディスペンサーは、液体リザーバー、容量変動可能なポンプ室を有するポンプ装置、及び液体の送出のための送出開口を有する。液体リザーバーから液体を吸引する目的のためにポンプ室の容積を変動させるため、及び放出の目的のために液体を加圧するため、ポンプ室は、少なくとも部分的に軟質プラスチックからなり、従って変形と同時に変位可能である膜部分によって一つの側を画定される。一般的なタイプのディスペンサーはまた、ハウジングを有し、その中にポンプ装置が与えられている。非作動開始位置と作動終了位置の間でハウジングに対して変位可能な作動ボタンは、液体放出の目的のための膜部分の変位/変形のために与えられる。
【0003】
DE102006012898A1の図2a及び3bの構成は、ポンプ装置を有する液滴ディスペンサーを既に開示し、そのポンプ室は、膜部分によって一つの側を画定されている。しかしながら、そこに記載されたディスペンサーの幾つかの態様は、不利である。特に、組み立て前及び組み立て中の軟らかい膜部分の取扱い、及び組み立て中の作動ボタンと膜部分の互いの結合が、自動化された組み立ての実施において問題である。さらに、従来技術から知られた構成は、最初の使用において問題を与える。なぜなら弁、通路の容積、及びポンプ室の配置及び構成が、最初に空気を追い出すことを難しくするからである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、上記の不利が克服又は少なくとも減少される膜部分によって画定されたポンプ室を有する上記の一般的なタイプのディスペンサーを開発することである。
【0005】
この目的は、放出前に液体を貯蔵するための液体リザーバー、容量変動可能なポンプ室を有する一体化されたポンプ装置を有するハウジング、及び液体の送出のための送出開口を有するディスペンサーを提案することによって達成される。ポンプ装置は、液体リザーバーから液体を吸引し、ディスペンサーの作動により送出開口を通してそれに送出する役割を行なう。
【0006】
ポンプ室は、膜部分によって一つの側を閉じられる。膜部分は、少なくとも複数の区域で本質的に変形可能であり、少なくともポンプ室壁の領域で軟質で、従って容易に変形可能なプラスチックからなる。ポンプ室の他の壁部分は、膜部分にきつく結合された硬質ハウジング区域によって形成される。膜部分は、ポンプ室の容積を減少し、従って送出開口の方向に液体を押すためにポンプ室の方向に押し下げられることができる。一般的に、ポンプ室は、二つの弁によって画定される:即ち、液体リザーバーに対してポンプ室内で負圧の場合に開放する入口側の入口弁と、送出開口に導く送出通路と比較してポンプ室内で正圧の場合に開放する出口側の出口弁とによって画定される。入口弁は、液体リザーバー中及びポンプ室中で同一圧力で閉じられ、好ましくはポンプ室中で約0.1~0.2の負圧を越えると開放する。出口弁は、ポンプ室中及び接続する送出通路中で同一圧力で閉じられ、好ましくはポンプ室中で約0.5barの正圧を越えると開放する。周囲圧力に対して送出通路中の液体が正圧の場合に開放するさらなる弁が、送出開口の上流にあることが好ましい。この送出弁は、少なくとも0.3bar、好ましくは少なくとも0.5barの正圧で開放するように設計されることが好ましい。保存剤を添加されていない医薬液体の場合、弁を開放する正圧は、圧力の外部変動が開放を起こすことをできるだけ防止するために、低くしすぎるべきではない。保存剤を有する液体の場合には、この要求が低くなる。それはまた、送出弁の開放圧力が0.05barに下げることが可能でありかつ有利である場合に当てはまる。
【0007】
ポンプ装置の作動のため、ディスペンサーは、非作動開始位置と作動最終位置の間で変位可能な作動ボタンを有し、最終位置へのその変位は、膜部分の変位/変形に、従って液体放出の目的のためのポンプ室のサイズの減少に導く。
【0008】
以下に記載される本発明の態様にとって絶対必要ではないが、記載された手段の実施は、いわゆる側部作動ディスペンサーの場合に特に有利であると考えられる。かかる側部作動ディスペンサーでは、ディスペンサーのハウジングは、主要範囲方向(main direction of extension)に整列された細長外部形状を有し、ディスペンサーの遠位端に送出開口が与えられる。ハウジングは、本質的に丸い横断面を有してもよいが、それから変化してもよく、より平坦な設計を持ってもよい。作動ボタンは、このディスペンサーのハウジングの側に与えられ、液体放出の目的のためにポンプ室のサイズを減少するために膜部分を変形するために中心軸の方向に押されることができる。作動ボタンは、一般的に親指によって作動される。作動ボタンは、ハウジング中の開口に、特に周囲のハウジング区域に対してくぼませて、又は静止位置でそれと面一に、又は数ミリ、特に5mm未満だけハウジングから外方に突出させて配置されることが好ましい。
【0009】
以下に記載される本発明の態様は、特に液滴ディスペンサー(即ち、単一液滴の形の医薬液体を送出するために意図されたディスペンサー)の実施の場合に有利である。この目的のため、液滴形成の手段は、送出開口(即ち、送出された液体が、その容積が重力下の液滴形成の手段から離れるようになる液滴を形成するのに十分になるまで集合する領域)を越えて与えられることが好ましい。特に、液滴形成の手段は、送出開口のまわりの液滴形成面であることができ、それは、特に平坦又は凹状形状を有するか、及び/又は好ましくは0.5mm未満の曲率半径を持つ鋭い破壊縁によって外側に画定される。
【0010】
もし本発明のディスペンサーが液滴ディスペンサーとして構成されるなら、ポンプ室は、20μl~50μl、好ましくは30μl~40μlのポンプ室の最大容積と最小容積の間の容積差によって形成された利用可能容積を持つことが好ましい。かかる容積は、液滴形成の手段の一般的な構成における液体の容積にほぼ相当する。従って、使用者は、作動ボタンの一回の作動によって正確に一つの液滴を送出することができる。もし液滴形成の手段がより大きな液滴を形成するように設計されるなら、ポンプ室の利用可能な容積は、対応してより大きくすることが好ましい。液滴ディスペンサーとしてディスペンサーを構成する場合であっても、一回の作動で複数の液滴を送出できるためにより大きなポンプ室が適切でありうる。
【0011】
比較的小さいポンプ室容積にもかかわらず最初の使用でポンプ室に存在する空気を押し出すことができるためには、ポンプ室の出口弁は、低い正圧のみで開放するように設計されることが好ましい。しかしながら、特に、最小ポンプ室容積と最大ポンプ室容積の間の比率が1:2以下、好ましくは1:3以下であるとき、ディスペンサーの問題のない最初の使用のために有利である。かかる比率は、特に以下に明らかにされる本発明の手段によって達成されることができる。
【0012】
本発明の第一態様では、上述の作動ボタンは、硬質プラスチックから作られたボタン構成要素を有する。さらに、ディスペンサーは、ばね装置を有し、それによって作動ボタンは、その非作動開始位置の方向の力を受け、作動ボタンは、作動ボタンが押圧された後に開始位置に戻るように押される。
【0013】
ポンプ室を画定する膜部分は、作動ボタンで述べたボタン構成要素に接続され、作動ボタンはまた、ばね装置によってもたらされるその開始位置への変位において膜部分を移動させる。従って、膜部分は、それ自体リセットしようとする強い固有の傾向を持たないが戻りばねによって間接的に引き戻されるプラスチックから製造することができる。膜構成要素の軟質の変形可能なプラスチックと、それと比較して硬くかつ剛いボタン構成要素のプラスチックの間の接続は、膜部分の接続区域がボタン構成要素の少なくとも二つのクランプ面間でクランプされることで実施される。
【0014】
クランプの技術は、第一にボタン構成要素から膜部分へ引張力を伝達するための良好な好適性を持ち、第二に自動化された組み立てにおいて比較的良好な実施可能性を持つことが見出された。この目的のため、二つのクランプ面は、膜構成要素の一区域が少なくとも二つのクランプ面の間に導入されるように、例えば一種のスプレッダーによって組み立て時に離れるように押されることでき、次いでスプレッダーは、引き抜かれる。クランプ面は、次いでいずれかの側で押された膜部分の区域に隣接し、接続区域の周囲に対してクランプ面間の各側に、ボタン構成要素が接続区域と接触しない領域を残す。接続区域は、膜部分のワンピース部であり、それは、クランプ面と効果的に係合させることができる突出区域を形成することが好ましい。
【0015】
クランプ面の数は一般には二つで十分であると考えられるにしても、それより多くのクランプ面を使用することも可能である。例えば、互いに向かって星形状で突出する三つ以上のクランプ面もまた、適切な設計である。
【0016】
クランプ面は、平坦であってもよい。伝達可能な引張力をさらに増加するためには、鋭い縁で0.3mm未満の曲率半径を有する鋭い縁の侵入幾何学形状をそれらの各々に与えることが代替的に推奨されることができる。かかる幾何学形状は、膜部分の挿入された区域中へより深く対応して侵入することができ、従ってクランプ効果を増大させる。
【0017】
好ましい構成では、ボタン構成要素は、細長開口の形の結合開口を有し、その縁で二つのクランプ面が互いに反対に与えられている。かかる細長開口は、その長手方向の範囲の方向では、相互に面するクランプ面間の距離より少なくとも2又は3倍大きいことが好ましい。細長の範囲は、膜部分を挿入する目的のために組み立て時に広げることを容易にする。
【0018】
また、細長開口の形の少なくとも一つの組み立て開口がボタン構成要素における結合開口に平行に与えられることが、特に有利である。かかる組み立て開口は、結合開口のいずれかの側に与えられることが好ましい。少なくとも一つの結合開口は、組み立て時、目的のためのボタン構成要素のプラスチックを有意に変形したり、潜在的に損傷する必要なしで膜部分の接続区域を挿入する目的のために少なくとも一つのクランプ面の偏向を可能にする。
【0019】
本発明の第二態様では、ディスペンサーは、膜部分に対してポンプ室の反対側に対向壁を有する。これは、硬質構成要素から形成されることが好ましい。弁構成要素は、この対向壁に挿入される。この弁構成要素は、ポンプ装置の入口弁又は出口弁の少なくとも一つの弁表面を有し、この弁表面は、弁の閉鎖された状態では対向壁のハウジング構成要素の表面に隣接するように設計されることが好ましい。弁構成要素が入口弁及び出口弁の両方の弁表面を有することが、特に有利であり、ここでは、好ましくは、単一の弁構成要素が、入口通路と出口通路の間の壁に配置され、内側に面する一つの弁リップと外側に面する一つの弁リップの両方を有するように、ポンプ室中への入口通路及びポンプ室中への出口通路が相互に同心配置される設計が与えられる。
【0020】
本発明のこの態様では、膜部分は、作動最終位置では、それが少なくとも複数の区域においてこの弁構成要素に隣接し、特に少なくとも複数の区域において弾性プラスチックから作られた弁リップの形の弁表面に隣接するように作動中に変位可能である。
【0021】
反対の弁構成要素までの膜部分のかかる変位可能性は、ポンプ室の極めて小さな最小容積を可能にする。その最終位置では、膜部分は、少なくとも複数の区域において膜部分と弁構成要素の間の距離をゼロに減少させる。膜部分及び弁構成要素の容易に変形可能なプラスチックから作られた表面が互いに対してもたれるようになることが、特に有利である。なぜならこれらは、互いの特に良好な適合を持ち、従って最小容積の減少をさらに促進するからである。特定の構成では、それは、さらにその最終位置の膜部分が、入口弁又は出口弁がポンプ室に存在する圧縮された空気を逃避させることを可能にするために機械的に強制開放されるように弁構成要素の上に押される場合でありうる。
【0022】
膜部分は、ポンプ室中に突出する中央部分を持ち、かつ弁構成要素の形状に適応された形状を持つことが好ましく、中央部分は、弁構成要素の方向に狭くなる形状を持ち、弁構成要素は、入口弁リップによって画定される相補ゴブレット状形状を持ち、その中に中央部分がかみ合うことが好ましい。これもポンプ室の最小容積の減少を促進する。
【0023】
さらに、膜部分が膜部分の中央部分を包囲するリング面を有することが好ましいと考えられる。このリング面は、ポンプ室のサイズ減少時に膜部分の変形の場合に効果的にひっくり返される。結果として、開始状態で外側に向いていたリング面のリング領域は、作動からもたらされる膜部分の最終位置において内側に向くようになる。このひっくり返し又はロールオフ(rolling off)は、最小ポンプ室容積を小さく保つことを可能にする。なぜならロールしない状態で膜部分によって形成されるポンプ室壁は、ポンプ室の硬い外壁に面一で隣接することができるからである。
【0024】
本発明の第三態様では、膜部分は、外側縁領域でハウジングのハウジング区域に周囲を固定される。ハウジング区域への膜部分の縁領域の固定のため、硬質プラスチックから作られた固定リングがここで与えられる。本明細書における硬質プラスチックは、ポンプ室サイズの減少の場合に変形されるポンプ室壁の領域における膜部分の弾性モジュラスより大きい弾性モジュラスを持つプラスチックを意味することが理解される。
【0025】
固定リングは、膜部分から分離された構成要素の形をとってもよく、それは、組み立て時にのみ膜部分と接触し、それをハウジング区域に対して押して封止を与えるか、又はそれ自体ハウジング区域に対して押し、ハウジング区域に封止を与える。
【0026】
しかしながら、膜部分は、複数の構成要素の射出成形によって互いに直接接合された異なるプラスチックからなるワンピース構成であることが好ましい。ここで述べた軟質プラスチックは、作動時に変形されることを意図される部分のための、特に膜部分で既に述べたリング領域のための材料を形成する。それに対して硬い構成要素は、その上に造形される周囲領域を形成し、それは、次に前述した固定リングを形成する。
【0027】
組み立てられた状態では、固定リングは、膜部分の縁がハウジング区域に信頼性高く固定されることを保証する。これは、特に軟質プラスチックが操作中に変形されることを意図される膜部分の区域のために選択されるとき、特に有利である。なぜならかかる材料は、追加の固定リングなしではハウジングに固定されるために良好な安定性を持たないからである。
【0028】
もし固定リングが膜部分のワンピース部であるなら、これはさらに、組み立て時にこの構成要素の取り扱いをかなり簡単にする。固定リングによって形成された膜部分の硬質部分は、指向性のない態様で供給された膜部分から進めて、続く組み立てのための個別化及び整合を容易にする。
【0029】
膜部分が固定リングによって固定されるハウジング区域は、リング形状ハウジング区域であることが好ましく、この環状ハウジング区域の外部面にクランプされた固定リングを有し、ハウジング区域の内部面がポンプ室の周囲壁を形成する。
【0030】
本発明の第四態様では、作動ボタンは、ロッカー軸のまわりでハウジングに対してロック可能であるように設計されたロッカーボタンとして設計される。ロッカーボタンは、ここでは作動ボタンのロッキング移動の場合に膜部分に対して押圧し、ポンプ室のサイズを減少させる硬質ボタン構成要素を有する。ロッカー軸のまわりでロック可能なボタン構成要素と変形可能な膜構成要素の間の直接接触、従って機能接触が存在することが好ましい。
【0031】
ロッカーボタンの使用は、極めて正確な投与を可能にする。これは、ロッカーボタンがその旋回結合のため、ねじれる傾向を持たないこと、及びロッカー軸からの力の手での付与の距離のため、ロッカーボタンが押し下げられるスピードの良好な制御性を使用者が持つことと特に関連する。これは、特に液滴送出の場合に有利でありうる。なぜならそれは、液滴形成の手段からの液滴の脱離に対して強い影響を持ちうるからである。
【0032】
ロッカーボタンの使用は、本発明に従って与えられる膜部分の場合に特に適切である。なぜなら膜部分は、その変形可能性によってロッカーボタンのロッキング運動を変位可能なポンプ室壁の本質的に直線運動に変換するために良好な好適性を持つからである。ポンプ室壁とロッカーボタンの間に配置された弾性的に変形可能な相補区域を有する膜部分を形成することは、製造目的のために極めて簡単である。
【0033】
ロッカーボタンのロッカー軸は、主要範囲方向に基づいて送出開口に対してロッカーボタンの反対端に与えられることが好ましい。ロッカー軸は、ディスペンサーの主要範囲方向に直交して整列されることが好ましい。原則として、かかる旋回運動は、簡単な一体成形ヒンジによって達成されることができる。しかしながら、対照的に、それぞれの他の側の軸受と係合し、従ってロッキング運動を可能にする軸区域がロッカーボタン又は周囲のハウジング区域の上に与えられることが好ましい。
【0034】
上で既に述べたように、ディスペンサーは、作動ボタンに作用し、作動ボタンを非作動開始位置の方向の力に供するばね装置を持つことが好ましい。このばね装置は、原則として、作動ボタンとワンピースで及び/又はハウジングとワンピースで弾性変形可能なばね区域として設計されることができる。しかしながら、特にプラスチック又は金属から作られた螺旋ばねの形の別個のばね装置が好ましい。ばね装置は、作動ボタンをその非作動開始位置に押し、それは、ポンプ室のサイズを再び増加させ、液体リザーバーから液体を吸引する。
【0035】
一つの可能な設計は、原則として一方ではばね装置が、他方では膜部分へのロッカーボタンの接続がロッカー軸から同じ距離で離間されているものである。これは、例えばばね装置がロッカーボタンへの膜部分の取り付けのために膜部分のまわりに同心で配置された螺旋ばねとして構成されるときに達成される。
【0036】
しかしながら、ロッカーボタンが膜部分に対して押す接続領域、及びばね装置がリセット力をロッカーボタンに導入する力入力領域がロッカー軸から異なる距離でロッカーボタンに与えられることが有利であると考えられる。従って、力入力領域が接続領域よりロッカー軸からさらに遠くに与えられることがここでは特に有利であると考えられる。さらに、ロッカー軸からの距離が少なくとも20%異なること、即ち有意に異なることが有利であると考えられる。ロッカー軸からの接続領域及び力入力領域の異なる距離は、様々な利点を有する。特に戻りばね及び変位可能なポンプ室壁への接続は、互いに空間的に分離されているので、組み立てがより簡単になる。
【0037】
好ましくは、本発明のディスペンサーは、除去可能なディスペンサーキャップを持ち、それは、ディスペンサーハウジングの上に置かれることができ、そしてディスペンサーの使用のためにそこから除去されることができる。このディスペンサーキャップは、それが置かれると送出開口を保護することができる。特に好ましくは、かかるディスペンサーキャップは、通気ディスペンサーキャップとして構成され、この目的のために少なくとも一つの通気開口を有し、それによって送出開口は、ディスペンサーキャップが適所にあるときであっても周囲大気に接続される。これは、その場に残る残留液滴の迅速な乾燥を促進する。ディスペンサーが供給されるとき、通気開口は、閉じられており、最初の利用のときに使用者によって開放されることが好ましい。ディスペンサーキャップは、微生物の進入を防止するために通気開口をカバーする滅菌フィルターを持つことが好ましい。さらに、ディスペンサーキャップは、一体化されたパッドを有することが好ましく、それは、ディスペンサーキャップを適所に有するとき、送出開口の下流に残る液体残留物が吸収及び/又は汚染除去されるように送出開口の上方又は上に位置される。
【0038】
本発明のディスペンサーの液体リザーバーは、送出開口に対してディスペンサーの反対端に与えられることが好ましい。それは、ポンプ装置を包囲するハウジングに結合された、例えば螺合された別個のボトル体によって形成されてもよい。異なる構成では、液体リザーバーの外部壁は、好ましくは外部壁に固定された別個の部分によって形成されたボトル体のベースとワンピース形態でハウジングに接続される。もし液体リザーバーが変動可能でない容積を持つなら、ディスペンサーは、特に滅菌フィルターを持つ通気通路を持つことが好ましく、それによって液体リザーバーは、周囲大気に接続される。あるいは、液体リザーバーは、変動可能な内部容積を持ってもよく、特にそこにはパウチが与えられ、そこには液体が貯蔵され、それは、硬質ボトル体によって包囲される。吸引プランジャーシステムはまた、変動可能な内部容積の実現を可能にする。
【0039】
本発明のディスペンサーは、医薬液体の放出のために意図される。それゆえ、供給されるとき、液体リザーバーは、かかる医薬液体で充填されていることが好ましい。
【0040】
特に、医薬液体は、高い眼圧の処置(緑内障治療)のため、ドライアイのための処置、及びアレルギ及び炎症の処置のためのものである。特定の役割は、ここでは次の群の分子によって果たされる:アルファー2アゴニスト、例えばブリモニジン、プロスタグランジンアナログ(タフルプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト)、ベーターブロッカー、例えばチモロール、及びカルボアンハイドラーゼ阻害剤、例えばドルゾラミド、又はヒアルロン酸化合物、フィルム形成剤、例えばメチルセルロース化合物、及びシクロスポリン、又は抗ヒスタミン、例えばオロパタジン及びレボカバスチン、ステロイド、例えばロテプレドノール及びデキサメタゾン、及びNSAID、例えばケラロラク。
【0041】
さらに、本発明のディスペンサーは、次のタイプの一つ以上の分子を有する液体のために有利に使用可能である:トリクロロ酢酸、トリオキシサレン、ウレア、酸化亜鉛、タクロリムス、クロベタゾールプロピオネート、モメタゾンフロエート、ベタメタゾンジプロピオネート、フルオシノニド、デソキシメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルチカゾンプロピオネート、ヒドロコルチゾン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ウンデシレノン酸、テルビナフィン、シクロピロックス、トルナフテート、アクジクロビル(akziklovir)、イミキモド、ドコサノール、フィナステリド、ミノキシジル、デキサメタゾン、トラマゾリン、ナファゾリン、ノストリラ、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン、テトリゾリン、トラマゾリンヒドロクロリド、ツアミノヘプタン、及びキシロメタゾリン。
【0042】
本発明のディスペンサーの構成要素は、プラスチックから作られることが好ましい。入口弁及び/又は出口弁に存在するばね及び記載したばねに対してのみ、金属構成要素が代替物を構成する。操作で変形可能であるように意図された部分、特に膜構成要素、弁リップ及び送出弁体の主な部分は、200N/mm未満の弾性モジュラスを有する弾性プラスチックからなることが好ましい。有用な材料の例は、LDPE(低密度ポリエチレン)である。操作において動かない部分は、500N/mmを越える弾性モジュラスを有するプラスチックからなることが好ましい。これは、例えばHDPE(高密度ポリエチレン)又はPP(ポリプロピレン)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明のさらなる利点及び態様は、図面を参照して以下に説明される本発明の好ましい作用例の以下の記載及び請求項から明らかである。
【0044】
図1A-1B】図1A-1Bは、断面化していない図で主要ユニット及びディスペンサーキャップを含む、本発明のディスペンサーを示す。
【0045】
図2A-2B】図2A-2Bは、膜部分及び弁構成要素によって画定された内部ポンプ室とともに断面図でディスペンサーを示す。
【0046】
図3-4】図3-4は、透視断面図でディスペンサーを示す。
【0047】
図5-6】図5-6は、ディスペンサーを作動する操作を示す。
【0048】
図7図7は、ディスペンサーの個々の部分の組み立て順序を示す。
【0049】
図8図8は、ディスペンサーの作動ボタンと膜部分の間の結合を示す。
【0050】
図9-10】図9-10は、弁構成要素及び膜部分の詳細を示す。
【0051】
図11図11は、ディスペンサーの代替設計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1A及び1Bは、本発明のディスペンサーの第一作用例をそのディスペンサーキャップとともに非断面図で示す。図1Aに示されたディスペンサーのこの構成の主要ユニットは、様々なハウジング構成要素30,12,52,44から構成されかつ主要範囲方向2に配置された細長いハウジングを有する。以下に記載されるように、ポンプ装置16は、ハウジング内に与えられ、それによって液体は、ディスペンサー10の近位端の液体リザーバー14からディスペンサー10の遠位端の送出開口28に運ばれることができる。ポンプ装置16の作動のため、作動ボタン70が与えられている。
【0053】
図1Bに示されたディスペンサーキャップ100は、ディスペンサー10のハウジング上へねじによって配置されることができる。
【0054】
図2A及び2Bは、ディスペンサー10の主要ユニット及びディスペンサーキャップ100を断面図で示す。
【0055】
主要要素は、まずこの図を参照して記載される。
【0056】
図2Aで明らかなように、ディスペンサー10の主要ユニットは、複数のハウジング部分からなり、その第一ハウジング構成要素30は、最も大きいハウジング構成要素であり、ディスペンサーのさらなる構成要素のための中央キャリアを構成する。このハウジング構成要素30は、その近位端に液体リザーバー14の外部壁を与える。それは、ポンプ装置の様々な構成要素、特にポンプ室20の両側に配置された膜部分60及び弁構成要素90のためのキャリアである。作動ボタン70は、第一ハウジング構成要素30の上でロッカー軸6のまわりで旋回するようにヒンジ付けされる。作動ボタン70自体は、二つのボタン構成要素76,80からなり、内部ボタン構成要素80は、膜部分60が作動ボタン70によってポンプ室20へと押し下げられることができるように、以下に記載される態様で膜部分60に接続されている。戻りばね72が、ボタン構成要素80と第一ハウジング構成要素の間に与えられる。
【0057】
第二ハウジング構成要素44は、第一ハウジング構成要素30の遠位端の上に接合される。この第二ハウジング構成要素44は、第一ハウジング構成要素30の上で固定された位置に与えられ、それと一緒に内部を封止し、その中に変形可能な送出弁体96が配置され、それに次に送出弁ばね98が割り当てられる。さらなるハウジング構成要素である外部ハウジング構成要素52は、前述のハウジング構成要素30,44を包囲し、ハウジング構成要素44は、アプリケーターチップ46によって外部ハウジング構成要素52の開口58を通って突出し、外部ハウジング構成要素52は、外部面54に開口56を有し、それを通って作動ボタン70は、矢印8によって示されるように押し下げられることができ、それによって矢印4によって示される方向に膜部分60を変位することができる。
【0058】
ディスペンサーは、図8~10の詳細を参照して図3及び4の透視図によってさらに説明される。
【0059】
液体の放出前、液体は、液体リザーバー14に貯蔵され、液体リザーバー14は、図1A~10の作用例の場合では、外部面15によって画定され、外部面15は第一ハウジング構成要素30の一部であり、スナップインベース12によってディスペンサーの近位端で閉じられる。ディスペンサー10は、液体リザーバー14中の液体が作動ボタン70の作動中に弁構成要素90に直接隣接するように、即ち入口弁18の入口弁リップ92にあるように、送出開口28が下方に向く配置で使用されることが一般的である。隣接ポンプ室20が減圧状態にある場合には、液体は、ポンプ室20中に流れることができる。ポンプ室20自体は、前述の弁構成要素90、第一ハウジング構成要素30の環状ハウジング区域36、及び既に述べた内部変形可能な膜部分60によって画定される。
【0060】
もし膜部分が矢印4の方向にかつ弁構成要素90の方向に変位されるなら、高い圧力がポンプ室に確立され、ポンプ室は、その出口弁リップ94を偏向することによって出口弁22を開放する。かくして液体は、通路区域24中に流れることができる。通路区域24は、主要範囲方向2に配置されており、ハウジング構成要素30の遠位端まで導く。ハウジング構成要素30の遠位端では、二つの環状ランド32,34が与えられる。外部ランド32は、二つのハウジング構成要素30,44によって画定される内部空間が環境から絶縁されるように第二ハウジング構成要素44の環状ランド48に整合した内径を有する。第二ハウジング構成要素44の環状ランド48には、ランスの形の付属物が与えられ、それは、通路区域24中に突出しかつその容積を優位に満たすインサート50を形成する。最小化された容積の通路区域24を通って第二ハウジング構成要素44まで流れた液体は、送出開口28を通ってここでは直接逃げることはできない。なぜなら、送出開口28は、既に述べた送出弁体96を含む上流送出弁26を有し、それは、送出弁ばね98によって送出開口28に対して押され、送出開口28を封止態様で閉じているからである。しかしながら、送出弁26での液体圧力を上昇すると、送出弁体96は、送出弁ばね98の力によって変形され、従って液体通路を開き、液体は、比較的低い圧力下で送出開口28を通って逃げることができ、液滴形成面120の形で送出開口28を越えて与えられた液滴形成の手段で液滴を形成する。液滴が液滴形成の手段の幾何学形状によって画定される容積を持つようになったときにのみ、液滴は、脱離することができ、従って液滴は、例えば使用者の目、鼻孔又は耳に付与されることができる。
【0061】
使用者が作動後に作動ボタン70を離すとき、それは、螺旋金属ばねの態様で構成されるばね装置72によってその開始位置に戻される。膜部分60は、作動ボタン70と共に引っ張られ、ポンプ室20の容積は、液体が液体リザーバー14からポンプ室20中に吸引されるように再び増加される。これが液体リザーバー14中の減圧を起こすことを防止するため、ディスペンサー10は、滅菌フィルター112を与えられかつ環境から液体リザーバー14中へのさらなる空気の流れを可能とする通気通路110を有する。
【0062】
前述の弁構成要素90及び膜部分60はそれぞれ、二成分射出成形によって製造された構成要素として構成される。各構成要素は、硬質構成要素区域、即ち固定リング91,62を持ち、それらの各々の上に軟質プラスチックから作られた構成要素が成形される。図9の拡大した弁構成要素の場合には、軟質プラスチックは、入口弁リップ92、及び透視図のために図9で見ることができない出口弁リップ94のために既に述べた構成要素を特に形成する。膜部分60の場合では、軟質プラスチックから製造された構成は、ポンプ室20の方向に向くポンプ室壁64、及びポンプ室から遠い側で補償区域66及び接続区域68に併合する厚い中央部分を形成する。
【0063】
再び外部ボタン構成要素76が存在しない図4の断面図を参照すると、前述の接続区域68が接続領域70Aでボタン構成要素80中に突出することは明らかである。それは、ここではクランプ接続によって固定される。このクランプ接続は、図8によって詳細に描かれる。図8は、ボタン構成要素76が除去されたディスペンサーの詳細を示す。ここで明らかであるように、三つの開口82,86がボタン構成要素80に与えられている。開口82は、実際の結合開口である。それは、細長開口の形で構成され、その対向する二つの長手方向側は、接続区域の画定のためにクランプ面84を形成する。これらは、鋭い縁の輪郭を与えられ、それは、両側から接続区域68中に押して希望の堅固なクランプ接続を作る。それに平行に配置された二つの開口86は、組み立て開口を形成する。これらの組み立て開口は、組み立て時の組み立て開口と結合開口の間のランドの偏向を、これらのランド又はボタン構成要素80の他の部分を損傷することなしで可能にする役割をする。
【0064】
同様に図8を参照すると、ボタン構成要素80の固定が説明される。ボタン構成要素80は、ロッカー軸6を画定する二つの成形軸区域74を有する。これらの軸区域74は、第一ハウジング構成要素30の一部である軸受ループ40中に横方向に装着される。作動ボタン70の反対端では、それは、二つの同様に構成されたガイドループ88を有し、その中に第一ハウジング構成要素30のピン42が突出する。これは、ばね装置72がボタン構成要素80及びロッカーボタン70の全体をハウジングの外に押すことを防止する。
【0065】
図3及び4から容易に明らかであるように、ボタン構成要素80が膜部分60の接続区域68に接続される接続領域70A、及びばね装置72がボタン構成要素76に作用する力入力領域70Bは、ロッカー軸6から異なる距離によって分離される。これは、第一に制限された構成空間における個々の部品の組み立てを容易にする。第二に、これは、ディスペンサーの設計と作動ボタン70に作用する戻り力の整合を可能にする。
【0066】
図8からわかるように、そこに示された内部ボタン構成要素80は、特にその成形に関する技術的機能に関係して構成される。それでもなお作動ボタン70の美観的に好ましい構成を達成するためには、第二の外部ボタン構成要素76が与えられ、スナップ接続によって内部ボタン構成要素80に接続される。この外部ボタン構成要素76の上には、作動の目的のために使用者が親指を置く圧力面78が与えられる。
【0067】
既に説明したように、示されたディスペンサーは、液滴ディスペンサーとして設計される。それは、ここでは、非作動開始位置からその作動最終位置への作動ボタンの作動が正確に一つの液滴の放出をもたらすように設計される。従って、ポンプ室20は、極めて小さく、40μlの利用可能なポンプ室容積、即ちポンプ室20の最小容積と最大容積の間の差を持つ。
【0068】
この極めて小さいポンプ室容積のため、ディスペンサーを操作させるために特に注意しなければならない。供給されたとき、ディスペンサーは、空気を充填されたポンプ室20を有する。ポンプ室20から送出開口28への液体通路は、同様に空気を充填されている。
【0069】
この開始状態から進めて、ポンプ室20から空気を排出することを可能にするために、ポンプ装置16は、作動状態のポンプ室20の最小容積と非作動状態のポンプ室20の最大容積の間の極めて小さい比率を有する。これは、図5及び6によって示される。図5は、非作動状態を示す。図6は、作動状態を示す。
【0070】
作動状態では、膜部分60は、環状対向壁38の上に置かれた弁構成要素90の方向に十分に遠くに変位され、膜部分60が弁構成要素90と接触することは明らかである。膜部分60と弁構成要素90が接触する場合、それらの間に残る残留容積はない。さらに、作動状態への変形において膜部分60によって形成されるポンプ室壁64は、作動の終わりに向かってそれが環状ハウジング区域36に隣接するか又はそれらの間に極めて狭い間隙のみが残るように部分的にひっくり返されるか又はロールオフされることは明らかである。図6に示される、それによって達成可能なポンプ室の最小容積は、2μl未満である。従って、ポンプ室20の最小容積と最大容積の比率は、1:20未満である。
【0071】
また、図5及び6から、作動ボタンのロッキング運動は、膜部分60の接続区域68もまた対応してロックされる効果を持つことは明らかである。それでもなお前述のポンプ室20の極めて小さい最小容積を可能にするために、補償区域66が図6に示されたように変形される。
【0072】
ポンプ室20での問題と同様の問題が送出開口28への液体通路に関しても存在する。ここでも、もし容積がディスペンサーの供給時に少しだけの空気(この空気は、放出前に追い出さなければならない)がここに存在するために最小であるなら有利である。
【0073】
ここで、特に、既に記載したインサート50は、容積を大きく減少させ、ポンプ室20から通路区域24の方向に追い出された空気が作動ボタン70の二回又は三回の操作後に送出弁26を開放するのに十分な圧力に達するようにする。
【0074】
組み立て順序が図7を参照して以下に説明される。
【0075】
図5及び6に与えられ、点線によって示されているのは、作動時に最小の力を要求する任意の戻り止め37である。これは、もしディスペンサーが液滴の純粋に重力による脱離のために要求されるより低いポンプ容積のために設計されるなら、特に適切である。かかる小さい容積が与えられるとき、不意のポンプ室圧縮によって発生される圧力パルスは、それでもなお液滴形成面120からの液滴の脱離をもたらすことができる。
【0076】
第一ハウジング構成要素30から進んで、弁構成要素90は、その固定リング91によって第一ハウジング構成要素30の環状対向壁38に挿入されかつ固定される。続いて、戻りばね72及び膜部分60が挿入され、膜部分60は、液密接続を作る固定リング62によって環状ハウジング区域36の外側に堅固にクランプされる。
【0077】
続いて、内部ボタン構成要素80が挿入され、それは、軸区域74の領域で軸受ループ40中にここで圧縮され、ガイドループ88の領域で第一ハウジング構成要素30上に与えられるピン42の上に押される。ボタン構成要素80の挿入中、結合開口82は、膜部分の接続区域68が変形なしで結合開口に嵌合することができるようにスプレッダーによって広げられる。続いて、スプレッダーが除去され、かくして前述のクランプ接続が作られる。
【0078】
その後、変形可能な送出弁体96及び第二ハウジング構成要素44の予め組み立てられた複合物は、第一ハウジング構成要素30の端面に送出弁ばね98を配置した後にこの端面の上に押され、第一ハウジング構成要素30の通路区域24中へのインサート50の追加挿入がなされる。
【0079】
最後の製造工程として、外部ハウジング構成要素52が、まず予め組み立てられた部品の複合物の上に押され、それはまた、第一ハウジング構成要素30及び第二ハウジング構成要素44の互いの固定を達成する。続いて、第二ボタン構成要素76は、ここで第一ボタン構成要素80の上に押され、スナップ嵌合される。
【0080】
二つの構成要素52,76は、液体と全く接触せず、それゆえディスペンサーの放出特性に影響しない。これらの二つの構成要素52,76は、ディスペンサー10を医薬液体の製造者の個々の希望に合わせることができるために、形状及び色に関して意図されるように適応されることができる構成要素である。
【0081】
図11は、本発明のディスペンサーの第二作用例を示す。これは、前述のディスペンサーとは一つだけの違いを有する。即ち、第一ハウジング構成要素30及び外部ハウジング構成要素52が別個のボルト体130に結合することを可能にするように構成されている点で相違する。
図1A-1B】
図2A-2B】
図3-4】
図5-6】
図7
図8
図9-10】
図11