(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20230127BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20230127BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230127BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/0606
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020026723
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敏充
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩平
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-012530(JP,A)
【文献】特開平8-293316(JP,A)
【文献】特開2012-207899(JP,A)
【文献】特開2008-103276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 8/0606
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含む燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料ガスを用いて発電する燃料電池と、
前記改質器を加熱する燃焼器と、
前記改質器、前記燃料電池および前記燃焼器を収容し、開口部が設けられている筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、前記燃焼器から排出される燃焼排ガスを前記筐体の外部から前記開口部を介して供給される空気により希釈して前記筐体の外部に排出する希釈部と、を備え、
前記希釈部は、前記希釈部に付着した結露水を前記筐体の内壁に導く導水手段を有する、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記希釈部は、前記導水手段として、前記筐体の接地面に対し傾斜して設けられる底面を有する、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記導水手段は、前記希釈部の底部に設けられる少なくとも1つの第1排水フィンを含む、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記導水手段は、前記少なくとも1つの第1排水フィンにより導かれた前記結露水を前記筐体の内壁に導く第2排水フィンをさらに含む、
請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第2排水フィンは、前記筐体の内側から前記筐体の外側に向かって広がる台形状である、
請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1排水フィンは、前記筐体の内側から前記筐体の外側に向かって延伸するように設けられる、
請求項3から5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1排水フィンは、複数の第1排水フィンを含む、
請求項3から6のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記複数の第1排水フィンは、互いに所定の間隔を有するように設けられる、
請求項7に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、燃料電池システムにおいて、燃料電池システムから排出される燃焼排ガスを、給気口から取り込んだ空気により希釈して筐体の外部に排出する排気口を備える燃料電池システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、燃料電池システムにおいて、燃焼排ガスを希釈する希釈構成に付着した結露水が滴下して補機などが破損することを抑制できる燃料電池システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における燃料電池システムは、水素を含む燃料ガスを生成する改質器と、燃料ガスを用いて発電する燃料電池と、改質器を加熱する燃焼器と、改質器、燃料電池および燃焼器を収容し、開口部が設けられている筐体と、筐体の内部に設けられ、燃焼器から排出される燃焼排ガスを筐体の外部から開口部を介して供給される空気により希釈して筐体の外部に排出する希釈部とを備える。希釈部は、希釈部に付着した結露水を筐体の内壁に導く導水手段を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示における燃料電池システムは、燃焼排ガスを希釈する希釈構成に設けられた導水手段により、希釈構成に付着した結露水を筐体の内壁に導くことができる。したがって、希釈構成に付着した結露水が滴下して補機などが破損することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の燃料電池システムの一例を示す構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の燃料電池システムが備える希釈部の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
一般に、燃料電池が発電している場合には、燃料電池システムの筐体の内部の温度は高温(例えば、60℃)となる。したがって、例えば冬季など外気の温度が低い場合には、燃料電池システムの筐体の内部の温度と、外気の温度との温度差が大きくなる。このため、特許文献1に記載の燃料電池システムによれば、給気口から取り込んだ空気により燃焼排ガスを希釈する際に給気口などに結露水が生じ、発生した結露水が補機などへ滴下することにより補機などが破損する虞があった。
【0009】
そこで、本発明者らは、燃焼排ガスを希釈する希釈構成に付着した結露水が補機などへ滴下し補機などが破損することを防ぐのに有利な技術について日夜検討を重ねた。その結果、本発明者らは、燃焼排ガスを希釈する希釈構成に導水手段を設け、希釈構成に付着した結露水を筐体の内壁に導くことにより、希釈構成に付着した結露水が滴下して補機などが破損することを抑制できることを見出した。この新たな知見に基づいて、本発明者らは、本開示の燃料電池システムを案出した。
【0010】
本開示は、燃料電池システムにおいて、燃焼排ガスを希釈する希釈構成に付着した結露水が滴下して補機などが破損することを抑制できる燃料電池システムを提供する。
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0012】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0013】
(実施の形態1)
以下、
図1および
図2を用いて、実施の形態1を説明する。
【0014】
燃料電池システム100は、燃料電池101と、筐体102と、改質器103と、燃焼器104とを備える。燃料電池101と、改質器103と、燃焼器104とは、筐体102に収容されている。筐体102には、開口部107が設けられている。
【0015】
改質器103は、水蒸気改質反応(CH4+H2O→CO+3H2)などの改質反応により水素含有ガス、すなわち水素を含む燃料ガスを生成するためのデバイスである。改質器103には、改質反応を進行させるための改質触媒が収容されている。改質器103は、水および原料ガスを用いて、水素含有ガスを生成する。原料ガスは、例えば、都市ガスおよびLPガス(液化石油ガス)などの炭化水素ガスである。改質器103により生成された水素含有ガスは、燃料電池101に供給される。
【0016】
燃料電池101は、酸化剤ガスおよび水素含有ガスを用いて発電し、電力を生成する。燃料電池101は、例えば、固体高分子形燃料電池である。なお、燃料電池101は、例えば、固体酸化物形燃料電池であってもよい。
【0017】
燃焼器104は、 燃料を燃焼させることにより改質器103を加熱する。燃焼器104は、改質器103に隣接して設けられる。
【0018】
燃料電池システム100は、さらに、酸化剤ガス供給器105と、酸化剤ガス流路114とを備える。酸化剤ガス流路114は、酸化剤ガス供給器105と、燃料電池101のカソード入口とに接続されている。酸化剤ガス流路114は、酸素などの酸化剤ガスを燃料電池101に供給するための流路である。酸化剤ガス供給器105は、酸化剤ガス流路114を介して、燃料電池101に酸化剤ガスを供給する。
【0019】
燃料電池システム100は、さらに、原料ガス流路110を備える。原料ガス流路110は、改質器103および燃焼器104に接続されている。原料ガス流路110は、都市ガスインフラおよびガスボンベなどの原料ガス源から改質器103および燃焼器104に原料ガスを供給するための流路である。
【0020】
燃料電池システム100は、さらに、水流路111を備える。水流路111は、改質器103に接続されている。水流路111は、貯水タンク(図示せず)などの水源から改質器103に水を供給するための流路である。改質器103に供給された水は、改質器103に設けられた蒸発器(図示せず)により加熱されて気化し、原料ガスとともに改質触媒層に導かれる。
【0021】
燃料電池システム100は、さらに、水素含有ガス流路113を備える。水素含有ガス流路113は、改質器103の出口に接続された一端と、燃料電池101のアノード入口に接続された他端とを有する。水流路111は、貯水タンク(図示せず)などの水源から改質器103に水を供給するための流路である。改質器103により生成された水素含有ガスは、水素含有ガス流路113を介して、燃料電池101に供給される。
【0022】
燃料電池システム100は、さらに、酸化剤ガス供給器105と、酸化剤ガス流路114とを備える。酸化剤ガス流路114は、酸化剤ガス供給器105と、燃料電池101のカソード入口とに接続されている。酸化剤ガス流路114は、酸素などの酸化剤ガスを燃料電池101に供給するための流路である。酸化剤ガス供給器105は、酸化剤ガス流路114を介して、燃料電池101に酸化剤ガスを供給する。
【0023】
燃料電池システム100は、さらに、燃焼用空気供給器106と、空気流路112とを備える。空気流路112は、燃焼用空気供給器106と、燃焼器104とに接続されている。空気流路112は、空気などの燃焼用空気を燃焼器104に供給するための流路である。燃焼用空気供給器106は、空気流路112を介して、燃焼器104に燃焼用空気を供給する。
【0024】
燃料電池システム100は、さらに、希釈部200と、燃焼排ガス流路115とを備える。燃焼排ガス流路115は、希釈部200と、燃焼器104とに接続されている。燃焼排ガス流路115は、燃焼器104にて生成された燃焼排ガスを希釈部200に供給するための流路である。希釈部200は、筐体102の内部に設けられ、燃焼排ガス流路115を介して排出された燃焼排ガスを、筐体102の外部から開口部107を介して供給される空気により希釈して、筐体102の外部に排出する。なお、希釈部200は、希釈部200の少なくとも一部が筐体102の外部に設けられてもよい。この場合、筐体102の内部には、筐体102の外部に設けられた希釈部200の少なくとも一部が含まれてもよい。
【0025】
ここで、燃料電池101が発電している場合に、燃料電池システム100の筐体102の内部の温度は高温(例えば、60℃)となる。したがって、例えば、冬季など外気の温度が低い場合には、燃料電池システム100の筐体102の内部の温度と、外気の温度との温度差が大きくなる。このため、開口部107を介して供給される空気、すなわち外気により燃焼排ガスを希釈する際に、希釈部200に結露水が生じる場合がある。
【0026】
そこで、本実施の形態では、外気により燃焼排ガスを希釈する希釈部200に導水手段210を設け、希釈部200に付着した結露水を筐体102の内壁に導くことにより、希釈部200に付着した結露水が筐体102内に設けられた補機など(図示せず)に滴下して、補機などが破損することを抑制できる。希釈部200は、希釈部筐体201と、導水手段210とを備える。導水手段210は、希釈部200の希釈部筐体201に付着した結露水を筐体102の内壁に導くように構成されている。導水手段210は、希釈部底面202と、第1排水フィン203と、第2排水フィン204とを備える。希釈部底面202は、筐体102の接地面に対し、傾斜して設けられる。
【0027】
第1排水フィン203は、希釈部底面202に設けられる。第1排水フィン203は、筐体102の内側から筐体102の外側に向かって延伸するように設けられる。第1排水フィン203は、互いに所定の間隔を有するように設けられる。本実施の形態では、第1排水フィン203は複数である。しかし、第1排水フィン203は、1つであってもよい。
【0028】
第2排水フィン204は、第1排水フィン203により導かれた結露水を筐体102の内壁に導くように構成されている。本実施の形態では、第2排水フィン204は、筐体102の内側から筐体102の外側に向かって広がる台形状である。しかし、第2排水フィン204は、長方形であってもよく、第1排水フィン203により導かれた結露水を筐体102の内壁に導くように構成されていればよい。
【0029】
以上のように、本実施の形態において、燃料電池システム100は、水素を含む燃料ガスを生成する改質器103と、燃料ガスを用いて発電する燃料電池101と、改質器103を加熱する燃焼器104と、改質器103、燃料電池101および燃焼器104を収容し、開口部107が設けられている筐体102と、筐体102の内部に設けられ、燃焼器104から排出される燃焼排ガスを筐体102の外部から開口部107を介して供給される空気により希釈して筐体102の外部に排出する希釈部200とを備える。希釈部200は、希釈部200に付着した結露水を筐体102の内壁に導く導水手段210を有する。
【0030】
これにより、燃焼排ガスを希釈する希釈部200に設けられた導水手段210により、希釈部200に付着した結露水を筐体102の内壁に導くことができる。したがって、希釈部200に付着した結露水が滴下して補機などが破損することが抑制される。
【0031】
また、本実施の形態において、希釈部200は、導水手段210として、筐体102の接地面に対し傾斜して設けられる希釈部底面202を有してもよい。
【0032】
これにより、希釈部200に設けられた傾斜した希釈部底面202により、希釈部200に付着した結露水を筐体102の内壁に導くことができる。したがって、希釈部200に付着した結露水が滴下して補機などが破損することがさらに抑制される。
【0033】
また、本実施の形態において、導水手段210は、希釈部200の希釈部底面202に設けられる第1排水フィン203を含んでもよい。
【0034】
これにより、希釈部200に設けられた第1排水フィン203により、希釈部200に付着した結露水を筐体102の内壁に導くことができる。したがって、希釈部200に付着した結露水が滴下して補機などが破損することがさらに抑制される。
【0035】
また、本実施の形態において、導水手段210は、第1排水フィン203により導かれた結露水を筐体102の内壁に導く第2排水フィン204をさらに含んでもよい。
【0036】
これにより、第1排水フィン203により導かれた結露水を第2排水フィン204により筐体102の内壁に導くことができる。したがって、希釈部200に付着した結露水が滴下して補機などが破損することがさらに抑制される。
【0037】
また、本実施の形態において、第2排水フィン204は、筐体102の内側から筐体102の外側に向かって広がる台形状であってもよい。
【0038】
これにより、第2排水フィン204に導かれた結露水を筐体102の内壁に導くことができる。したがって、希釈部200に付着した結露水が滴下して補機などが破損することがさらに抑制される。
【0039】
また、本実施の形態において、第1排水フィン203は、筐体102の内側から筐体102の外側に向かって延伸するように設けられてもよい。
【0040】
これにより、希釈部200に設けられた第1排水フィン203により、希釈部200に付着した結露水を筐体102の内側から筐体102の外側に向かって、筐体102の内壁に導くことができる。したがって、希釈部200に付着した結露水が滴下して補機などが破損することがさらに抑制される。
【0041】
また、本実施の形態において、第1排水フィン203は、複数の第1排水フィン203を含んでもよい。
【0042】
これにより、希釈部200に設けられた複数の第1排水フィン203により、希釈部200に付着した結露水を筐体102の内壁に導くことができる。したがって、希釈部200に付着した結露水が滴下して補機などが破損することがさらに抑制される。
【0043】
また、本実施の形態において、複数の第1排水フィン203は、互いに所定の間隔を有するように設けられてもよい。
【0044】
これにより、希釈部200に所定の間隔を有し設けられた第1排水フィン203により、希釈部200に付着した結露水を筐体102の内壁に導くことができる。したがって、希釈部200に付着した結露水が滴下して補機などが破損することがさらに抑制される。
【0045】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示は、燃料電池システムの信頼性を向上させる事ができる。具体的には、家庭用、定置用の燃料電池システムなどに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
100 燃料電池システム
101 燃料電池
102 筐体
103 改質器
104 燃焼器
105 酸化剤ガス供給器
106 燃焼用空気供給器
110 原料ガス流路
111 水流路
112 空気流路
113 水素含有ガス流路
114 酸化剤ガス流路
115 燃焼排ガス流路
200 希釈部
201 希釈部筐体
202 希釈部底面
203 第1排水フィン
204 第2排水フィン
210 導水手段