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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】正極材料およびそれを用いた電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1315 20100101AFI20230127BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230127BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230127BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230127BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230127BHJP
【FI】
H01M4/1315
H01M4/58
H01M4/62 Z
H01M10/0562
H01M10/052
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019567902
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2018045584
(87)【国際公開番号】W WO2019146292
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2018011525
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】上武 央季
(72)【発明者】
【氏名】酒井 章裕
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 出
(72)【発明者】
【氏名】杉本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晃暢
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-052733(JP,A)
【文献】特開2006-244734(JP,A)
【文献】BOHNSACK, Andreas et al.,Ternary Halides of the A3MX6 Type. VI. Ternary Chlorides of the Rare-Earth Elements with Lithium, Li,Zeitschrift fur anorganische und allgemeine Chemie,ドイツ,1997年,Vol.623,pp.1067-1073,ISSN:1521-3749
【文献】BOHNSACK, Andreas et al.,Ternary Halides of the A3MX6Type. VII. The Bromides Li3MBr6(M=Sm-Lu, Y): Synthesis, Crystal Structur,Journal of inorganic and General Chemistry,1997年,Vol.623,pp.1352-1356,特にp.1354右欄-p.1355左欄
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00
H01M 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質と第1固体電解質材料とを含み、
前記第1固体電解質材料は、組成式Li Me により表され、
Meは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、Al、Ga、Bi、Zr、Hf、Ti、Sn、Ta、およびNbからなる群より選択される少なくとも1つを表し、
Xは、ClおよびBrからなる群から選択される少なくとも1つと、Iと、を表し、
a、b、cは、a+mb+3c=6、かつ、c>0を満たし、
mは、Meの価数を表し、
前記正極活物質は、リン酸鉄リチウムを含む、
正極材料。
【請求項2】
前記第1固体電解質材料は、
LiYBrClI、または、
LiYBrCl
である、
請求項に記載の正極材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の正極材料を含む正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に設けられる電解質層と、
を備える、
電池。
【請求項4】
前記電解質層は、硫化物固体電解質を含む、
請求項に記載の電池。
【請求項5】
前記電解質層は、第2固体電解質材料を含み、
前記第2固体電解質材料は、下記の組成式(2)により表され、
Liα’M’β’X’γ’ ・・・式(2)
ここで、α’、β’、およびγ’は、それぞれ独立して、0より大きい値であり、
M’は、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
X’は、ClおよびBrからなる群から選択される少なくとも1つを含み、
請求項またはに記載の電池。
【請求項6】
前記M’は、イットリウムを含む、
請求項に記載の電池。
【請求項7】
前記第2固体電解質材料は、Li2.71.1Cl、である、
請求項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、正極材料およびそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インジウムを含むハロゲン化物を固体電解質として用いた電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-244734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、電池の充放電効率のさらなる向上が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一様態における正極材料は、 正極活物質と第1固体電解質材料とを含み、
前記第1固体電解質材料は、Li、M、およびXを含み、かつ、硫黄を含まず、
Mは、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群から選択される少なくとも1つを表し、
Xは、ClとBrとのうちの少なくとも一方と、Iと、を表し、
前記正極活物質は、リン酸鉄リチウムを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、電池の充放電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態1における正極材料1000の断面図を示す。
図2図2は、実施の形態2における電池2000の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。
【0009】
(実施の形態1)
実施の形態1における正極材料は、正極活物質と第1固体電解質材料とを含む。
【0010】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(1)により表される材料である。
Liαβγ ・・・式(1)
ここで、α、β、およびγは、それぞれ独立して、0より大きい値である。
【0011】
Mは、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0012】
Xは、ClとBrとのうちの少なくとも一方と、Iと、を含む。
【0013】
正極活物質は、リン酸鉄リチウムを含む。例えば、正極活物質は、LiFePOを含む。
【0014】
以上の構成によれば、電池の充放電効率を向上させることができる。
【0015】
ハロゲン化物固体電解質材料は、良好なイオン伝導性を示す。特に、Iを含むハロゲン化物固体電解質材料である第1固体電解質材料は、より高いイオン伝導性を示す。このため、例えば、全固体二次電池の高出力での動作に対して、有望な材料であると考えられる。
【0016】
特許文献1では、インジウムを含む固体電解質を含む全固体二次電池において、正極活物質の対Li電位が平均で3.9V以下であることが好ましく、これにより酸化分解による分解生成物からなる皮膜が良好に形成され、良好な充放電特性が得られると言及されている。また、対Li電位が平均で3.9V以下の正極活物質として、LiCoO、LiNi0.8Co0.15Al0.05などの一般的な層状遷移金属酸化物正極が開示されている。しかし、酸化分解の詳細なメカニズムについては明らかにされていない。
【0017】
一方、本発明者らは、正極材料にIを含むハロゲン化物固体電解質(すなわち、第1固体電解質材料)を用いた電池では、対Li電位が平均で3.9V以下の正極活物質を用いた場合であっても充電中にハロゲン化物固体電解質が酸化分解し、それに伴い電池の充放電効率が低下する課題が存在し、その主要因が、ハロゲン化物固体電解質に含まれるIの酸化反応であることを見出した。
【0018】
具体的には、正極材料中の正極活物質からリチウムと電子が引き抜かれる通常の充電反応に加え、正極活物質と接するハロゲン化物固体電解質からも電子が引き抜かれる副反応が生じ、副反応に電荷が消費されるため、充放電効率が低下すると考えられる。
【0019】
また、ハロゲン化物固体電解質の酸化反応に伴い、正極活物質とハロゲン化物固体電解質の間に、リチウムイオン伝導性に乏しい酸化層が形成され、正極の電極反応において大きな界面抵抗として機能すると考えられる。
【0020】
従って、ハロゲン化物固体電解質を含む全固体二次電池の高出力での動作のためには、正極材料にイオン電導性の高いIを含むハロゲン化物固体電解質を導入し、かつIの酸化反応を抑制することが必要である。この課題を解消するためにはハロゲン化物固体電解質の酸化反応が起こらない低電位領域で良好な充放電特性が得られる正極活物質を利用する必要がある。
【0021】
本開示の構成では、正極材料に、低電位領域で良好な充放電特性が得られる正極活物質のリン酸鉄リチウムを導入することで、ハロゲン化物固体電解質に含まれるIの酸化反応を抑制することができるため、ハロゲン化物固体電解質の副反応が生じず、充放電効率を向上させることができる。また、副反応が生じないため、酸化層形成が抑制され、電極反応の界面抵抗を低減することができる。
【0022】
なお、本明細書において用いられる「半金属元素」とは、B、Si、Ge、As、Sb、Teである。
【0023】
本明細書において用いられる「金属元素」とは、
(i)周期表1族から12族中に含まれるすべての元素(ただし、水素を除く)、および
(ii)周期表13族から16族に含まれるすべての元素(ただし、B、Si、Ge、As、Sb、Te、C、N、P、O、S、およびSeを除く)
を含む。すなわち、ハロゲン化合物と無機化合物を形成した際に、カチオンとなりうる元素群である。
【0024】
なお、組成式(1)においては、Mは、Y(すなわち、イットリウム)を含んでもよい。
【0025】
すなわち、第1固体電解質材料は、金属元素MとしてYを含んでもよい。
【0026】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0027】
Yを含む第1固体電解質材料として、例えば、LiMe(a+mb+3c=6、かつ、c>0を満たす)(Me:Li、Y以外の金属元素と半金属元素の少なくとも1つ)(m:Meの価数)の組成式で表される化合物であってもよい。
【0028】
Meとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、Al、Ga、Bi、Zr、Hf、Ti、Sn、Ta、およびNbからなる群より選択される少なくとも1つを用いてもよい。
【0029】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0030】
なお、第1固体電解質材料は、LiYBrClIまたはLiYBrClであってもよい。
【0031】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率をより向上させることができる。
【0032】
なお、第1固体電解質材料は、LiYBrClを含んでいてもよい。
【0033】
LiYBrClは、Iを含むハロゲン化物固体電解質の中でも特にイオン伝導度が高く、電池の出力密度を向上させることができる。
【0034】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(B1)により表される材料であってもよい。
Li6-3d・・・式(B1)
ここで、組成式(B1)においては、Xは、ClとBrとのうちの少なくとも一方と、Iと、を含む。
【0035】
また、組成式(B1)においては、0<d<2を満たす。
【0036】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0037】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(B2)により表される材料であってもよい。
LiYX・・・式(B2)
ここで、組成式(B2)においては、Xは、ClとBrとのうちの少なくとも一方と、Iと、を含む。すなわち、B1において、d=1であってもよい。
【0038】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0039】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(B3)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ+a1+δ-aMeCl6-x-yBr ・・・式(B3)
ここで、組成式(B3)においては、Meは、Mg、Ca、Sr、Ba、およびZnからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0040】
また、組成式(B3)においては、
-1<δ<2、
0<a<3、
0<(3-3δ+a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x<6、
0<y≦6、および
(x+y)<6、
が満たされる。
【0041】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0042】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(B4)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ1+δ-aMeCl6-x-yBr ・・・式(B4)
ここで、組成式(B4)においては、Meは、Al、Sc、Ga、およびBiからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0043】
また、組成式(B4)においては、
-1<δ<1、
0<a<2、
0<(1+δ-a)、
0≦x<6、
0<y≦6、および
(x+y)<6、
が満たされる。
【0044】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0045】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(B5)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ-a1+δ-aMeCl6-x-yBr ・・・式(B5)
ここで、組成式(B5)においては、Meは、Zr、Hf、およびTiからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0046】
また、組成式(B5)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.5、
0<(3-3δ-a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x<6、
0<y≦6、および
(x+y)<6、
が満たされる。
【0047】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0048】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(B6)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ-2a1+δ-aMeCl6-x-yBr ・・・式(B6)
ここで、組成式(B6)においては、Meは、Ta、およびNbからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0049】
また、組成式(B6)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.2、
0<(3-3δ-2a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x<6、
0<y≦6、および
(x+y)<6、
が満たされる。
【0050】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0051】
なお、第1固体電解質材料として、例えば、LiYX、LiMgX、LiFeX、Li(Al、Ga、In)X、Li(Al、Ga、In)X、など(X:ClとBrとのうちの少なくとも一方と、Iと、を含む)、が用いられうる。
【0052】
図1は、実施の形態1における正極材料1000の断面図を示す。
【0053】
実施の形態1における正極材料1000は、第1固体電解質粒子100と、正極活物質粒子110と、を含む。
【0054】
実施の形態1における、第1固体電解質粒子100の形状は、限定されるものではなく、例えば、針状、球状、楕円球状、など、であってもよい。
【0055】
例えば、実施の形態1における第1固体電解質粒子100の形状が球状である場合、第1固体電解質粒子100のメジアン径は、100μm以下であってもよい。
【0056】
メジアン径が100μmより大きいと、正極活物質粒子110と第1固体電解質粒子100とが、正極材料において良好な分散状態を形成できない可能性が生じる。このため、充放電特性が低下する。
【0057】
また、実施の形態1においては、メジアン径は10μm以下であってもよい。
【0058】
以上の構成によれば、正極材料において、正極活物質粒子110および第1固体電解質粒子100が、良好に分散し得る。
【0059】
また、実施の形態1においては、第1固体電解質粒子100のメジアン径は、正極活物質粒子110のメジアン径より小さくてもよい。
【0060】
以上の構成によれば、電極において第1固体電解質粒子100および正極活物質粒子110が、より良好に分散し得る。
【0061】
正極活物質粒子110のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。
【0062】
正極活物質粒子110のメジアン径が0.1μmより小さいと、正極材料において、正極活物質粒子110および第1固体電解質粒子100が、正極材料において良好に分散しないため、電池の充放電特性が低下し得る。
【0063】
また、正極活物質粒子110のメジアン径が100μmより大きいと、正極活物質粒子110内のリチウム拡散が遅くなる。このため、電池の高出力での動作が困難となる場合がある。
【0064】
正極活物質粒子110のメジアン径は、第1固体電解質粒子100のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、正極活物質粒子110および第1固体電解質粒子100が、良好に分散し得る。
【0065】
なお、実施の形態1における正極材料1000においては、第1固体電解質粒子100と正極活物質粒子110とは、図1に示されるように、互いに、接触していてもよい。
【0066】
また、実施の形態1における正極材料1000は、複数の第1固体電解質粒子100および複数の正極活物質粒子110を含んでもよい。
【0067】
また、実施の形態1における正極材料1000において、第1固体電解質粒子100の含有量は、正極活物質粒子110の含有量と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
なお、実施の形態1においては、正極活物質粒子110の表面に炭素材料の被覆処理を施してもよい。リン酸鉄リチウム表面に炭素材料を被覆することで正極材料に良好な電子伝導性を付与することができ、電池のより高出力での動作が可能となる。
【0069】
(第1固体電解質材料の製造方法)
実施の形態1における第1固体電解質材料は、例えば、下記の方法により、製造されうる。
【0070】
生成物の組成比を考慮して二元系ハロゲン化物の原料粉を用意する。例えば、LiYClを作製する場合には、LiClとYClを、3:1のモル比で用意する。
【0071】
このとき、原料粉の種類を選択することで、上述の組成式における「M」、「Me」、および「X」の元素を決定することができる。また、原料粉、配合比、および合成プロセスを調整することで、「α」、「β」、「γ」、「d」、「δ」、「a」、「x」、および「y」の値が決定される。
【0072】
原料粉がよく混合される。次いで、メカノケミカルミリングの方法を用いて原料粉は粉砕される。このようにして、原料粉は反応し、第1固体電解質材料を得る。もしくは、原料粉がよく混合された後、真空中で焼結して、第1固体電解質材料を得てもよい。
【0073】
これにより、結晶相を含む前述の固体電解質材料が得られる。
【0074】
なお、固体電解質材料における結晶相の構成(すなわち、結晶構造)は、原料粉どうしの反応方法および反応条件の選択により、決定され得る。
【0075】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2が説明される。上述の実施の形態1と重複する説明は、適宜、省略される。
【0076】
図2は、実施の形態2における電池2000の概略構成を示す断面図である。
【0077】
実施の形態2における電池2000は、正極201、電解質層202、および負極203を備える。
【0078】
正極201は、上述の実施の形態1における正極材料(例えば、正極材料1000)を含む。
【0079】
電解質層202は、正極201および負極203の間に配置される。
【0080】
以上の構成によれば、電池の充放電効率を向上させることができる。
【0081】
正極201において、正極活物質粒子110および第1固体電解質粒子110の合計体積に対する正極活物質粒子110の体積を表す体積比Vpは、0.3以上0.95以下であってもよい。体積比Vpが0.3未満である場合には、電池のエネルギー密度を十分に確保することが困難となり得る。一方、体積比Vpが0.95を超える場合には、高出力での電池の動作が困難となり得る。
【0082】
正極201の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。なお、正極201の厚みが10μm未満である場合には、十分な電池のエネルギー密度を確保することが困難となる可能性がある。なお、正極201の厚みが500μmを超える場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0083】
電解質層202は、電解質材料を含む層である。当該電解質材料は、例えば、固体電解質材料である。すなわち、電解質層202は、固体電解質層であってもよい。
【0084】
電解質層202に含まれる固体電解質材料として、上述の第1固体電解質材料を用いてもよい。
【0085】
もしくは、電解質層202に含まれる固体電解質材料として、第2固体電解質材料を用いてもよい。
【0086】
すなわち、電解質層202は、第2固体電解質材料を含んでもよい。
【0087】
第2固体電解質材料は、下記の組成式(2)により表される材料である。
Liα’M’β’X’γ’ ・・・式(2)
ここで、α’、β’、およびγ’は、それぞれ独立して、0より大きい値である。
【0088】
M’は、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0089】
X’は、ClとBrとのうちの少なくとも一方を含む。
【0090】
以上の構成によれば、電池の出力密度を向上させることができる。また、電池の熱的安定性を向上し、硫化水素などの有害ガスの発生を抑制することができる。
【0091】
なお、組成式(2)においては、M’は、Y(すなわち、イットリウム)を含んでもよい。
【0092】
すなわち、第2固体電解質材料は、金属元素M’としてYを含んでもよい。
【0093】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0094】
Yを含む第2固体電解質材料として、例えば、LiMe’X’(a+mb+3c=6、かつ、c>0を満たす)(Me’:Li、Y以外の金属元素と半金属元素の少なくとも1つ)(m:Me’の価数)の組成式で表される化合物であってもよい。
【0095】
Me’として、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、Al、Ga、Bi、Zr、Hf、Ti、Sn、Ta、およびNbからなる群より選択される少なくとも1つを用いてもよい。
【0096】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0097】
なお、第2固体電解質材料は、Li2.71.1Clであってもよい。
【0098】
以上の構成によれば、電池の出力密度をより向上させることができる。
【0099】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(A1)により表される材料であってもよい。
Li6-3d・・・式(A1)
ここで、組成式(A1)においては、Xは、ClおよびBrからなる群から選択される少なくとも1つである。また、組成式(A1)においては、0<d<2、を満たす。
【0100】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0101】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(A2)により表される材料であってもよい。
LiYX・・・式(A2)
ここで、組成式(A2)においては、Xは、ClおよびBrからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0102】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0103】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(A3)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ1+δCl・・・式(A3)
ここで、組成式(A3)においては、0<δ≦0.15が満たされる。
【0104】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0105】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(A4)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ1+δBr・・・式(A4)
ここで、組成式(A4)においては、0<δ≦0.25が満たされる。
【0106】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0107】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(A5)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ+a1+δ-aMeCl6-xBr ・・・式(A5)
ここで、組成式(A5)においては、Meは、Mg、Ca、Sr、Ba、およびZnからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0108】
また、組成式(A5)においては、
-1<δ<2、
0<a<3、
0<(3-3δ+a)、
0<(1+δ-a)、および
0≦x≦6、
が満たされる。
【0109】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0110】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(A6)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ1+δ-aMeCl6-xBr ・・・式(A6)
ここで、組成式(A6)においては、Meは、Al、Sc、Ga、およびBiからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0111】
また、組成式(A6)においては、
-1<δ<1、
0<a<2、
0<(1+δ-a)、および
0≦x≦6、
が満たされる。
【0112】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0113】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(A7)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ-a1+δ-aMeCl6-xBr ・・・式(A7)
ここで、組成式(A7)においては、Meは、Zr、Hf、およびTiからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0114】
また、組成式(A7)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.5、
0<(3-3δ-a)、
0<(1+δ-a)、および
0≦x≦6、
が満たされる。
【0115】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0116】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(A8)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ-2a1+δ-aMeCl6-xBr ・・・式(A8)
ここで、組成式(A8)においては、Meは、TaおよびNbからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0117】
また、組成式(A8)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.2、
0<(3-3δ-2a)、
0<(1+δ-a)、および
0≦x≦6、
が満たされる。
【0118】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0119】
なお、第2固体電解質材料として、例えば、LiYX、LiMgX、LiFeX、Li(Al、Ga、In)X、Li(Al、Ga、In)X、など(Xは、ClおよびBrからなる群から選択される少なくとも1つ)が用いられうる。
【0120】
電解質層202に含まれる固体電解質材料として、硫化物固体電解質を用いてもよい。
【0121】
すなわち、電解質層202は、硫化物固体電解質を含んでもよい。
【0122】
以上の構成によれば、還元安定性に優れる硫化物固体電解質を含むため、黒鉛または金属リチウムなどの低電位負極材料を用いることができ、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0123】
硫化物固体電解質としては、LiS-P、LiS-SiS、LiS-B、LiS-GeS、Li3.25Ge0.250.75、Li10GeP12、など、が用いられうる。また、これらに、LiX(X:F、Cl、Br、I)、LiO、MO、LiMO(M:P、Si、Ge、B、Al、Ga、In、Fe、Znのいずれか)(p、q:自然数)などが、添加されてもよい。
【0124】
電解質層202に含まれる固体電解質材料として、酸化物固体電解質、高分子固体電解質、錯体水素化物固体電解質を用いてもよい。
【0125】
酸化物固体電解質としては、例えば、
LiTi(POおよびその元素置換体を代表とするNASICON型固体電解質、
(LaLi)TiO系のペロブスカイト型固体電解質、
Li14ZnGe16、LiSiO、LiGeOおよびその元素置換体を代表とするLISICON型固体電解質、
LiLaZr12およびその元素置換体を代表とするガーネット型固体電解質、
LiNおよびそのH置換体、
LiPOおよびそのN置換体、
LiBO、LiBOなどのLi-B-O化合物をベースとして、LiSO、LiCOなどが添加されたガラス、
ガラスセラミックス
などが用いられうる。
【0126】
高分子固体電解質としては、例えば、高分子化合物と、リチウム塩との化合物が用いられうる。高分子化合物はエチレンオキシド構造を有していてもよい。エチレンオキシド構造を有する高分子固体電解質はリチウム塩を多く含有することができるので、イオン導電率をより高めることができる。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、など、が使用されうる。リチウム塩として、これらから選択される1種のリチウム塩が、単独で、使用されうる。もしくは、リチウム塩として、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が、使用されうる。
【0127】
錯体水素化物固体電解質としては、例えば、LiBH-LiI、LiBH-Pなど、が用いられうる。
【0128】
なお、電解質層202は、固体電解質材料を、主成分として、含んでもよい。すなわち、電解質層202は、固体電解質材料を、例えば、電解質層202の全体に対する重量割合で50%以上(50重量%以上)、含んでもよい。
【0129】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0130】
また、電解質層202は、固体電解質材料を、例えば、電解質層202の全体に対する重量割合で70%以上(70重量%以上)、含んでもよい。
【0131】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0132】
電解質層202は、さらに、不可避的な不純物を含み得る。電解質層202は、固体電解質材料の合成のために用いられた出発原料を含み得る。電解質層202は、固体電解質材料を合成する際に生成した副生成物または分解生成物を含み得る。
【0133】
第1電解質層101に含まれる固体電解質材料の第1電解質層101に対する重量比は、実質的に1であり得る。「重量比が実質的に1である」とは、第1電解質層101に含まれ得る不可避不純物を考慮せずに算出された重量比が1であるという意味である。すなわち、第1電解質層101は、固体電解質材料のみから構成されていてもよい。
【0134】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0135】
以上のように、電解質層202は、固体電解質材料のみから構成されていてもよい。
【0136】
なお、電解質層202は、固体電解質材料として挙げられた材料のうちの2種以上を含んでもよい。例えば、電解質層202は、ハロゲン化物固体電解質材料と硫化物固体電解質材料とを含んでもよい。
【0137】
電解質層202の厚みは、1μm以上かつ300μm以下であってもよい。電解質層202の厚みが1μm未満である場合には、正極201および負極203が短絡する可能性が高まる。また、電解質層202の厚みが300μmを超える場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0138】
負極203は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出する特性を有する材料を含む。負極203は、例えば、負極活物質を含む。
【0139】
負極活物質には、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪素化合物、など、が使用されうる。金属材料は、単体の金属であってもよい。もしくは、金属材料は、合金であってもよい。金属材料の例として、リチウム金属、リチウム合金、など、が挙げられる。炭素材料の例として、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛、非晶質炭素、など、が挙げられる。容量密度の観点から、珪素(Si)、錫(Sn)、珪素化合物、錫化合物、を好適に使用できる。
【0140】
負極203は、固体電解質材料を含んでもよい。以上の構成によれば、負極203内部のリチウムイオン伝導性を高め、高出力での動作が可能となる。固体電解質材料としては、電解質層202の例示としてあげる材料を用いてもよい。
【0141】
負極活物質粒子のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。負極活物質粒子のメジアン径が0.1μmより小さいと、負極において、負極活物質粒子および固体電解質材料が、良好に分散しないため、電池の充放電特性が低下し得る。また、負極活物質粒子のメジアン径が100μmより大きいと、負極活物質粒子内のリチウム拡散が遅くなる。このため、電池の高出力での動作が困難となる場合がある。
【0142】
負極活物質粒子のメジアン径は、固体電解質材料のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、負極活物質粒子および固体電解質材料が良好に分散し得る。
【0143】
負極203において、負極活物質粒子および固体電解質材料の合計体積に対する負極活物質粒子の体積を表す体積比Vnは、0.3以上0.95以下であってもよい。体積比Vnが0.3未満である場合には、電池のエネルギー密度を十分に確保することが困難となり得る。一方、体積比Vnが0.95を超える場合には、高出力での電池の動作が困難となり得る。
【0144】
負極203の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。負極の厚みが10μm未満である場合には、十分な電池のエネルギー密度を確保することが困難となる可能性がある。また、負極の厚みが500μmを超える場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0145】
正極201は、イオン電導性を高める目的で、固体電解質材料を含んでもよい。固体電解質材料としては、電解質層202の例示としてあげる材料を用いてもよい。
【0146】
正極201と電解質層202と負極203とのうちの少なくとも1つには、粒子同士の密着性を向上させる目的で、結着剤が含まれてもよい。結着剤は、電極を構成する材料の結着性を向上させるために、用いられる。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド
イミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、など、が挙げられる。
また、結着剤としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、およびヘキサジエンからなる群より選択された2種以上の材料の共重合体が用いられうる。
2種類以上の結着剤が用いられ得る。
【0147】
正極201と負極203との少なくとも1つは、電子導電性を高める目的で、導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、例えば、
天然黒鉛または人造黒鉛のグラファイト類、
アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、
炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維類、
フッ化カーボン、
アルミニウムなどの金属粉末類、
酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、
酸化チタンなどの導電性金属酸化物、
ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物、など、が用いられうる。
炭素導電助剤を用いた場合、低コスト化を図ることができる。
【0148】
なお、実施の形態2における電池は、コイン型、円筒型、角型、シート型、ボタン型、扁平型、積層型、など、種々の形状の電池として、構成されうる。
【0149】
(実施例)
以下、実施例および比較例を用いて、本開示の詳細が説明される。
【0150】
(実施例1)
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiClとYClとYBrとLiIとを、モル比でLiCl:YCl:YBr:LiI=6:2:1:3となるように用意した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料LiYBrClIの粉末を得た。
【0151】
[正極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、実施例1の第1固体電解質材料と、正極活物質LiFePOを、80:20の重量比率で用意した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、実施例1の正極材料を作製した。
【0152】
(実施例2)
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiBrとLiClとLiIとYClとYBrとを、モル比でLiBr:LiCl:LiI:YCl:YBr=1:1:4:1:1となるように、用意した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料LiYBrClの粉末を得た。
【0153】
第1固体電解質材料の作製以外の項目は、上述の実施例1の方法と同様に実施し、実施例2の正極材料を得た。
【0154】
(実施例3)
上述の実施例2の方法と同様に実施し、実施例3の正極材料を得た。
【0155】
(実施例4)
上述の実施例2の方法と同様に実施し、実施例4の正極材料を得た。
【0156】
(比較例1)
正極活物質として、Li(NiCoMn)Oを用いた。
【0157】
これ以外の項目は、上述の実施例2の方法と同様に実施し、比較例1の正極材料を得た。
【0158】
[第2固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiClとYClとを、モル比でLiCl:YCl=2.7:1.1となるように用意した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-5型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第2固体電解質材料Li2.71.1Clの粉末を得た。
【0159】
[硫化物固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のアルゴングローブボックス内で、LiSとPとを、モル比でLiS:P=75:25となるように、用意した。これらを乳鉢で粉砕して混合した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、10時間、510rpmでミリング処理することで、ガラス状の固体電解質を得た。ガラス状の固体電解質について、不活性雰囲気中で、270度で、2時間熱処理した。これにより、ガラスセラミックス状の固体電解質LiS-Pを得た。
【0160】
[二次電池の作製1]
上述の実施例1と2および比較例1の正極材料、およびガラスセラミックス状の固体電解質LiS-Pそれぞれを用いて、下記の方法で、それぞれ、実施例1、実施例2、および比較例1の電池を作製した。
【0161】
まず、絶縁性外筒の中で、ガラスセラミックス状の固体電解質LiS-P(80mg)および正極材料(10mg)をこの順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、固体電解質層および正極を有する積層体を得た。正極は、固体電解質層の表側の面に位置していた。
【0162】
次に、正極側に、アルミニウム粉末(20mg)を積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極側に集電体を形成した。
【0163】
次に、固体電解質層の裏側の面に、金属In(厚さ200μm)を積層した。これを80MPaの圧力で加圧成型することで、正極、固体電解質層、および負極を有する積層体を作製した。
【0164】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。
【0165】
最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉することで、電池を作製した。
【0166】
以上により、上述の実施例1、実施例2、および比較例1の電池をそれぞれ作製した。
【0167】
[二次電池の作製2]
上述の実施例3の正極材料およびハロゲン化物固体電解質LiYBrClを用いて、下記の方法で、実施例3の電池を作製した。
【0168】
まず、絶縁性外筒の中で、ハロゲン化物固体電解質LiYBrCl(80mg)および実施例3の正極材料(10mg)をこの順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極と固体電解質層を有する積層体を得た。正極は、固体電解質層の表側の面に位置していた。
【0169】
次に、正極側に、アルミニウム粉末(20mg)を積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極側に集電体を形成した。
【0170】
次に、固体電解質層の裏側の面に、金属In(厚さ200μm)を積層した。これを80MPaの圧力で加圧成型することで、正極、固体電解質層、負極からなる積層体を作製した。
【0171】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。
【0172】
最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉することで、電池を作製した。
【0173】
以上により、上述の実施例3の電池を作製した。
【0174】
[二次電池の作製3]
上述の実施例4の正極材料およびハロゲン化物固体電解質Li2.71.1Clを用いて、下記の方法で、実施例4の電池を作製した。
【0175】
まず、絶縁性外筒の中で、ハロゲン化物固体電解質Li2.71.1Cl(80mg)および実施例4の正極材料(10mg)をこの順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極および固体電解質層を有する積層体を得た。正極は、固体電解質層の表側の面に位置していた。
【0176】
次に、正極側に、アルミニウム粉末(20mg)を積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極側に集電体を形成した。
【0177】
次に、固体電解質層の裏側に、金属In(厚さ200μm)を積層した。これを80MPaの圧力で加圧成型することで、正極、固体電解質層、負極からなる積層体を作製した。
【0178】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。
【0179】
最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉することで、電池を作製した。
【0180】
以上により、上述の実施例4の電池を作製した。
【0181】
[充放電試験1]
上述の実施例1~3の電池をそれぞれ用いて、以下の充放電試験が実施された。
【0182】
電池を25℃の恒温槽に配置した。
【0183】
電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値16μAで、定電流充電し、電圧3.0Vで充電を終了した。
【0184】
次に、同じく0.05Cレートとなる電流値16μAで、放電し、電圧1.9Vで放電を終了した。
【0185】
以上により、上述の実施例1~3の電池のそれぞれの初回充放電効率(=初回放電容量/初回充電容量)を得た。この結果は、下記の表1に示される。なお、実施例1~3の電池の負極に用いる金属Inは、リチウムに対して0.6ボルトの電位を示す。
【0186】
すなわち、実施例1~3における電池の充電終止電圧3.0V、放電終止電圧1.9Vは、Li基準の電位に換算すると、それぞれ3.6Vvs.Li、2.5Vvs.Liとなる。
【0187】
[充放電試験2]
上述の実施例4の電池を用いて、以下の条件で、充放電試験が実施された。
【0188】
電池を25℃の恒温槽に配置した。
【0189】
電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値16μAで、定電流充電し、電圧3.4Vで充電を終了した。
【0190】
次に、同じく0.05Cレートとなる電流値16μAで、放電し、電圧1.9Vで放電を終了した。
【0191】
以上により、上述の実施例4の電池のそれぞれの初回充放電効率(=初回放電容量/初回充電容量)を得た。この結果は、下記の表1に示される。なお、実施例4の電池の負極に用いる金属Inは、0.6vs.Liの電位を示す。
【0192】
すなわち、実施例4における電池の充電終止電圧3.4V、放電終止電圧1.9Vは、Li基準の電位に換算すると、それぞれ4.0Vvs.Li、2.5Vvs.Liとなる。
【0193】
[充放電試験3]
上述の比較例1の電池を用いて、以下の条件で、充放電試験が実施された。
【0194】
電池を25℃の恒温槽に配置した。
【0195】
電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値20μAで、定電流充電し、電圧3.6Vで充電を終了した。
【0196】
次に、同じく0.05Cレートとなる電流値20μAで、放電し、電圧1.9Vで放電を終了した。
【0197】
以上により、上述の比較例1の電池のそれぞれの初回充放電効率(=初回放電容量/初回充電容量)を得た。この結果は、下記の表1に示される。なお、比較例1の電池の負極に用いる金属Inは、0.6vs.Liの電位を示す。
【0198】
すなわち、比較例1における電池の充電終止電圧3.6V、放電終止電圧1.9Vは、Li基準の電位に換算すると、それぞれ4.2Vvs.Li、2.5Vvs.Liとなる。
【0199】
【表1】
【0200】
(考察)
表1に示す実施例2、比較例1の結果から、第1固体電解質材料と正極活物質LiFePOとを含む正極材料を用いることで、電池の充放電効率が向上することが確認された。
【0201】
実施例1と2の結果から、正極固体電解質として異なる第1固体電解質材料を用いた場合でも、電池の充放電効率が向上することが確認された。
【0202】
実施例2、3、4の結果から、固体電解質層に第1固体電解質材料または第2固体電解質材料を用いた場合でも、硫化物固体電解質を固体電解質層に用いた場合と同様に、電池の充放電効率が向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本開示の電池は、例えば、全固体リチウム二次電池などとして、利用されうる。
【符号の説明】
【0204】
1000 正極材料
100 第1固体電解質粒子
110 正極活物質粒子
2000 電池
201 正極
202 電解質層
203 負極
図1
図2