(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】正極材料およびそれを用いた電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1315 20100101AFI20230127BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230127BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230127BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230127BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230127BHJP
【FI】
H01M4/1315
H01M4/62 Z
H01M10/0562
H01M4/525
H01M4/505
(21)【出願番号】P 2019567906
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2018045588
(87)【国際公開番号】W WO2019146296
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2018011530
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】夏井 竜一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 出
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晃暢
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-052733(JP,A)
【文献】特開2006-244734(JP,A)
【文献】特開2008-060033(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047015(WO,A1)
【文献】特開平08-171938(JP,A)
【文献】BOHNSACK, Andreas et al.,Ternary Halides of the A3MX6 Type. VI. Ternary Chlorides of the Rare-Earth Elements with Lithium, Li,Zeitschrift fur anorganische und allgemeine Chemie,ドイツ,1997年,Vol.623,pp.1067-1073,ISSN:1521-3749
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00
H01M 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質、および第1固体電解質材料を含み、
ここで、前記第1固体電解質材料は、
下記の組成式(1)により表され、かつ、硫黄を含まず、
Li
α
M
β
X
γ
・・・式(1)
Mは、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群から選択される少なくとも1つであり、
かつ、イットリウムを含み、
Xは、Cl、
およびB
rからなる群から選択される少なくとも1つであり、
α、β、およびγは、それぞれ独立して0より大きい値であり、かつ
前記正極活物質は、
下記の組成式(2)により表される金属オキシフッ化物を含
み、
Li
p
Me
q
O
m
F
n
・・・式(2)
ここで、
Meは、Mn、Co、Ni、Fe、Al、Cu、V、Nb、Mo、Ti、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、Ag、Ru、W、B、Si、およびPからなる群から選択される少なくとも1つであり、
かつ、下記の条件、
0.5≦p≦1.5、
0.5≦q≦1.0、
1≦m<2、および
0<n≦1
を満たす、
正極材料。
【請求項2】
前記第1固体電解質材料は、Li
3YCl
6、Li
3YBr
6、
およびLi
2.5
Y
0.5
Zr
0.5
Cl
6
からなる群から選択される少なくとも1つである、
請求項
1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記金属オキシフッ化物は、Li
1.05(Ni
0.35Co
0.35Mn
0.3)
0.95O
1.9F
0.1の組成を有する、
請求項
1または2に記載の正極材料。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載の正極材料を含む正極、
負極、および
前記正極と前記負極との間に設けられる電解質層、
を備える、
電池。
【請求項5】
前記電解質層は、前記第1固体電解質材料を含む、
請求項
4に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、正極材料およびそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インジウムを含むハロゲン化物から形成された固体電解質を含む全固体電池を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、電池の充放電効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、
正極活物質、および
第1固体電解質材料
を含み、
ここで、
前記第1固体電解質材料は、Li、M、およびXを含み、かつ、硫黄を含まず、
Mは、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群より選択される少なくとも1つであり、
Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1つであり、かつ
前記正極活物質は、金属オキシフッ化物を含む、
正極材料を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、電池の充放電効率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第2実施形態における電池1000の断面図を示す。
【
図2】
図2は、実施例1および比較例1における全固体電池の初期充放電特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態が、図面を参照しながら説明される。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態における正極材料は、正極活物質および第1固体電解質材料を含む。
【0010】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(1)により表される材料である。
LiαMβXγ (1)
ここで、α、β、およびγは、それぞれ独立して0より大きい値であり、
Mは、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、かつ
Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選ばれる少なくとも1つである。
【0011】
正極活物質は、金属オキシフッ化物を含む。
【0012】
以上の構成によれば、電池の充放電効率を向上させることができる。
【0013】
金属オキシフッ化物では、電気化学的に不活性なフッ素原子によって酸素原子の一部が置換されている。当該置換により、その電気化学安定性が向上し、その結果、充放電効率が向上する。
【0014】
正極材料に含まれる第1固体電解質材料はハロゲン化物固体電解質から形成される。ハロゲン化物固体電解質は、充放電効率を向上させる。なぜなら、正極活物質および第1固体電解質材料との間の接触面で第1固体電解質材料がフッ化されても抵抗層が形成されないからである。
【0015】
本明細書において用いられる用語「半金属元素」は、B、Si、Ge、As、Sb、およびTeからなる群から選択される少なくとも1つを意味する。
【0016】
本明細書において用いられる「金属元素」は、
(i)周期表1族から12族中に含まれるすべての元素(ただし、水素を除く)、および
(ii)周期表13族から16族に含まれるすべての元素(ただし、B、Si、Ge、As、Sb、Te、C、N、P、O、S、およびSeを除く)
を含む。
すなわち、金属元素は、ハロゲン化合物と共に無機化合物を形成し、カチオンとなる。
【0017】
組成式(1)においては、Mは、Y(すなわち、イットリウム)を含んでもよい。すなわち、第1固体電解質材料は、金属元素MとしてYを含んでもよい。
【0018】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率をより向上させることができる。
【0019】
Yを含む第1固体電解質材料の例は、LiaMebYcX6(ここで、a+mb+3c=6、c>0、MeはLiおよびY以外の金属元素および半金属元素からなる群より選択される少なくとも1つであり、かつmはMeの価数である)の組成式で表される化合物である。
【0020】
Meの例は、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、Al、Ga、Bi、Zr、Hf、Ti、Sn、Ta、およびNbからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0021】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0022】
第1固体電解質材料の例は、Li3YCl6、Li3YBr6、Li3Y0.5Zr0.5Cl6、またはLi3YBr2Cl2I2である。
【0023】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率をより向上させることができる。
【0024】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(A1)により表される材料であってもよい。
Li6-3dYdX6・・・式(A1)
ここで、Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選択される二種以上の元素である。
【0025】
組成式(A1)においては、0<d<2を満たす。
【0026】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0027】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(A2)により表される材料であってもよい。
Li3YX6・・・式(A2)
ここで、Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選択される二種以上の元素である。すなわち、A1において、d=1であってもよい。
【0028】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0029】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(A3)により表される材料であってもよい。
Li3-3δY1+δCl6・・・式(A3)
ここで、0<δ≦0.15が満たされる。
【0030】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0031】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(A4)により表される材料であってもよい。
Li3-3δY1+δBr6・・・式(A4)
ここで、0<δ≦0.25が満たされる。
【0032】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0033】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(A5)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ+aY1+δ-aMeaCl6-x-yBrxIy ・・・式(A5)
ここで、Meは、Mg、Ca、Sr、Ba、およびZnからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0034】
組成式(A5)においては、
-1<δ<2、
0<a<3、
0<(3-3δ+a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
0≦y≦6、および
(x+y)≦6、
が満たされる。
【0035】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0036】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(A6)により表される材料であってもよい。
Li3-3δY1+δ-aMeaCl6-x-yBrxIy ・・・式(A6)
ここで、Meは、Al、Sc、Ga、およびBiからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0037】
組成式(A6)においては、
-1<δ<1、
0<a<2、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
0≦y≦6、および
(x+y)≦6、
が満たされる。
【0038】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0039】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(A7)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ-aY1+δ-aMeaCl6-x-yBrxIy ・・・式(A7)
ここで、Meは、Zr、Hf、およびTiからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0040】
組成式(A7)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.5、
0<(3-3δ-a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
0≦y≦6、および
(x+y)≦6、
が満たされる。
【0041】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0042】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(A8)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ-2aY1+δ-aMeaCl6-x-yBrxIy ・・・式(A8)
ここで、Meは、Ta、およびNbからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0043】
組成式(A8)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.2、
0<(3-3δ-2a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
0≦y≦6、および
(x+y)≦6、
が満たされる。
【0044】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0045】
第1固体電解質材料として、例えば、Li3YX6、Li2MgX4、Li2FeX4、Li(Al、Ga、In)X4、Li3(Al、Ga、In)X6、など、が用いられうる。
【0046】
金属オキシフッ化物は、下記の組成式(2)により表される材料であってもよい。
LipMeqOmFn ・・・式(2)
ここで、Meは、Mn、Co、Ni、Fe、Al、Cu、V、Nb、Mo、Ti、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、Ag、Ru、W、B、Si、およびPからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0047】
組成式(2)においては、
0.5≦p≦1.5、
0.5≦q≦1.0、
1≦m<2、および
0<n≦1、
を満たす。
【0048】
以上の構成によれば、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0049】
金属オキシフッ化物の例は、Li1.05(Ni0.35Co0.35Mn0.3)0.95O1.9F0.1である。
【0050】
以上の構成によれば、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0051】
第1実施形態における正極材料は、
図1に示されるように、正極活物質粒子104および第1固体電解質粒子105を含んでもよい。
【0052】
第1実施形態において、第1固体電解質粒子105の形状は、限定されない。第1固体電解質粒子105の形状の例は、針状、球状、または楕円球状である。例えば、第1固体電解質粒子105の形状は、粒子状であってもよい。
【0053】
例えば、第1実施形態における第1固体電解質粒子105の形状が粒子状(例えば、球状)の場合、第1固体電解質粒子105のメジアン径は、100μm以下であってもよい。
【0054】
第1固体電解質粒子105のメジアン径が100μmより大きい場合、正極活物質粒子104および第1固体電解質粒子105が正極内で良好に分散しないため、電池の充放電特性が低下し得る。
【0055】
第1実施形態においては、第1固体電解質粒子105のメジアン径は10μm以下であってもよい。
【0056】
以上の構成によれば、正極材料において、正極活物質粒子104および第1固体電解質粒子105が、良好に分散し得る。
【0057】
第1実施形態においては、第1固体電解質粒子105のメジアン径は、正極活物質粒子104のメジアン径より小さくてもよい。
【0058】
以上の構成によれば、電極において第1固体電解質粒子105および正極活物質粒子104が、より良好に分散し得る。
【0059】
正極活物質粒子104のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。
【0060】
正極活物質粒子104のメジアン径が0.1μmより小さい場合、正極活物質粒子104および第1固体電解質粒子105が正極内で良好に分散しないため、電池の充放電特性が低下し得る。
【0061】
正極活物質粒子104のメジアン径が100μmより大きい場合、正極活物質粒子104においてリチウムの拡散速度が低下し得る。このため、電池の高出力での動作が困難となる場合がある。
【0062】
正極活物質粒子104のメジアン径は、第1固体電解質粒子105のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、正極活物質粒子104および第1固体電解質粒子105が、良好に分散し得る。
【0063】
第1実施形態における正極材料においては、第1固体電解質粒子105および正極活物質粒子104は、
図1に示されるように、互いに接触していてもよい。
【0064】
第1実施形態における正極材料は、複数の第1固体電解質粒子105および複数の正極活物質粒子104を含んでもよい。
【0065】
第1実施形態における正極材料において、第1固体電解質粒子105の含有量は、正極活物質粒子104の含有量と同じであってもよいし、または異なっていてもよい。
【0066】
(第1固体電解質材料の製造方法)
第1実施形態における第1固体電解質材料は、例えば、下記の方法により、製造される。
【0067】
生成物の組成比を考慮して二元系ハロゲン化物の原料粉が用意される。例えば、Li3YCl6の合成のためには、LiClおよびYCl3を、3:1のモル比で用意する。
【0068】
原料粉の種類を選択することで、上述の組成式における「M」、「Me」、および「X」の元素が決定される。原料粉、配合比、および合成プロセスを調整することで、「α」、「β」、「γ」、「d」、「δ」、「a」、「x」、および「y」の値が決定される。
【0069】
原料粉がよく混合される。次いで、メカノケミカルミリングの方法により、原料粉は粉砕される。このようにして、原料粉は反応して第1固体電解質材料を得る。もしくは、原料粉がよく混合された後、原料粉は真空中で焼結され、第1固体電解質材料を得てもよい。
【0070】
これにより、結晶相を含む前述の第1固体電解質材料が得られる。
【0071】
第1固体電解質材料における結晶相の構成、(すなわち、結晶構造)は、原料粉の反応方法および反応条件の選択により、決定され得る。
【0072】
(第2実施形態)
以下、本開示の第2実施形態が説明される。上 述の第1実施形態と重複する説明は、適宜、省略される。
【0073】
図1は、第2実施形態における電池1000の断面図を示す。
【0074】
第2実施形態における電池1000は、正極101、電解質層102、および負極103を備える。
【0075】
電解質層102は、正極101および負極103の間に配置される。
【0076】
正極101は、第1実施形態における正極材料を含む。
【0077】
以上の構成によれば、電池の充放電効率を向上することができる。
【0078】
金属オキシフッ化物においては、電気化学的に不活性なフッ素原子によって酸素原子の一部が置換される。当該置換により、電気化学安定性が向上し、充放電効率が向上すると考えられる。
【0079】
さらに、正極材料に含まれる第1固体電解質としてハロゲン化物固体電解質を用いることで、正極と固体電解質の接触面で固体電解質がフッ化されても抵抗層を形成せず、充放電効率が向上する。
【0080】
正極101において、正極活物質粒子104および第1固体電解質粒子105の合計体積に対する正 極活物質粒子104の体積を表す体積比Vpは、0.3以上0.95以下であってもよい。体積比Vpが0.3未満である場合には、電池のエネルギー密度を十分に確保することが困難となり得る。一方、体積比Vpが0.95を超える場合には、高出力での電池の動作が困難となり得る。
【0081】
正極101の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。正極101の厚みが10μm未満である場合には、十分な電池のエネルギー密度を確保することが困難となり得る。一方、正極101の厚みが500μmを超える場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0082】
電解質層102は、電解質材料を含む。電解質層102に含まれる電解質材料の例は、固体電解質材料である。すなわち、電解質層102は、固体電解質層であってもよい。
【0083】
電解質層102に含まれる固体電解質材料の例は、上述の第1固体電解質材料である。
【0084】
以上の構成によれば、電池の出力密度をより向上することができる。
【0085】
電解質層102に含まれる固体電解質材料の例は、硫化物固体電解質である。
【0086】
以上の構成によれば、還元安定性に優れる硫化物固体電解質を含むため、黒鉛または金属リチウムなどの低電位負極材料を用いることができ、電池のエネルギー密度を向上することができる。
【0087】
硫化物固体電解質の材料の例は、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、Li2S-B2S3、Li2S-GeS2、Li3.25Ge0.25P0.75S4、またはLi10GeP2S12である。硫化物固体電解質には、LiX(X:F、Cl、Br、またはI)、Li2O、MOq、またはLipMOq(Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、In、Fe、またはZnのいずれかであり、かつ、pおよびqはそれぞれ独立して自然数である)が添加されてもよい。
【0088】
電解質層102に含まれる固体電解質材料のさらに他の例は、酸化物固体電解質、高分子固体電解質、または錯体水素化物固体電解質である。
【0089】
酸化物固体電解質の例は、
(i) LiTi2(PO4)3またはその元素置換体のようなNASICON固体電解質、
(ii) (LaLi)TiO3系のペロブスカイト固体電解質、
(iii) Li14ZnGe4O16、Li4SiO4、LiGeO4、またはその元素置換体のようなLISICON固体電解質、
(iv) Li7La3Zr2O12またはその元素置換体のようなガーネット固体電解質、または
(v) Li3NおよびそのH置換体、
(vi) Li3PO4およびそのN置換体、
(vii)LiBO2、Li3BO3などのLi-B-O化合物を主成分として、Li2SO4、Li2CO3などの添加物が添加されたガラス、または
(viii) ガラスセラミックス
である。
【0090】
高分子固体電解質の例は、高分子化合物およびリチウム塩の化合物である。高分子化合物はエチレンオキシド構造を有していてもよい。エチレンオキシド構造を有する高分子固体電解質はリチウム塩を多く含有することができるので、イオン導電率をより高めることができる。リチウム塩の例は、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、またはLiC(SO2CF3)3である。2種以上のリチウム塩が用いられ得る。
【0091】
錯体水素化物固体電解質の例は、LiBH4-LiIまたはLiBH4-P2S5である。
【0092】
電解質層102は、固体電解質材料を主成分として含んでもよい。電解質層102に含まれる固体電解質材料の電解質層102に対する重量比は、0.5以上であり得る。
【0093】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0094】
電解質層102に含まれる固体電解質材料の電解質層102に対する重量比は、0.7以上であり得る。
【0095】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0096】
電解質層102は、さらに、不可避的な不純物を含み得る。電解質層102は、固体電解質材料の合成のために用いられた出発原料を含み得る。電解質層102は、固体電解質材料を合成する際に生成した副生成物または分解生成物を含み得る。
【0097】
電解質層102に含まれる固体電解質材料の電解質層102に対する重量比は、実質的に1であり得る。「重量比が実質的に1である」とは、電解質層102に含まれ得る不可避不純物を考慮せずに算出された重量比が1であるという意味である。すなわち、電解質層102は、固体電解質材料のみから構成されていてもよい。
【0098】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0099】
以上のように、電解質層102は、固体電解質材料のみから構成されていてもよい。
【0100】
電解質層102は、2種類以上の固体電解質材料を含み得る。例えば、電解質層102は、第1固体電解質材料および硫化物固体電解質材料を含んでもよい。
【0101】
電解質層102の厚みは、1μm以上かつ300μm以下であってもよい。電解質層102の厚みが1μm未満である場合には、正極101および負極103が短絡し得る。一方、電解質層102の厚みが300μmを超える場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0102】
負極103は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵かつ放出する特性を有する材料を含む。負極103は、負極活物質を含んでもよい。
【0103】
負極活物質の例は、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、または珪素化合物である。金属材料は、単体の金属であってもよい。もしくは、金属材料は、合金であってもよい。金属材料の例は、リチウム金属またはリチウム合金である。炭素材料の例は、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛、または非晶質炭素である。容量密度の観点から、負極活物質は、珪素、錫、珪素化合物、または錫化合物であることが望ましい。
【0104】
負極103は、固体電解質材料を含んでもよい。以上の構成によれば、負極103内部のリチウムイオン伝導性を高め、高出力での動作が可能となる。負極103に含まれる固体電解質材料は、電解質層102に含まれる固体電解質材料と同じであってもよい。
【0105】
負極活物質の粒子のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。負極活物質粒子のメジアン径が0.1μm未満である場合には、負極において、負極活物質粒子および固体電解質材料が良好に分散しないため、電池の充放電特性が低下し得る。負極活物質粒子のメジアン径が100μmを超える場合には、負極活物質粒子内でリチウムが拡散する速度が低下し得る。このため、電池の高出力での動作が困難となる場合がある。
【0106】
負極活物質粒子のメジアン径は、固体電解質材料のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、負極活物質粒子および固体電解質材料が良好に分散し得る。
【0107】
負極103において、負極活物質粒子および固体電解質材料の合計体積に対する負極活物質粒子の体積を表す体積比Vnは、0.3以上0.95以下であってもよい。体積比Vnが0.3未満である場合には、電池のエネルギー密度を十分に確保することが困難となり得る。一方、体積比Vnが0.95を超える場合には、高出力での電池の動作が困難となり得る。
【0108】
負極103の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。負極の厚みが10μm未満である場合には、十分に電池のエネルギー密度を確保すること困難となり得る。一方、負極の厚みが500μmを超える場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0109】
正極101、電解質層102、および負極103からなる群から選択される少なくとも1つには、粒子の密着性を向上させるために、結着剤が含まれてもよい。結着剤は、電極に含まれる材料の結着性を向上するために用いられる。
結着剤の材料の例は、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、またはカルボキシメチルセルロースである。
結着剤の材料の他の例は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、およびヘキサジエンからなる群より選択された2以上の材料の共重合体である。
2種以上の結着剤が用いられ得る。
【0110】
正極101および負極103からなる群から選択される少なくとも1つには、電子導電性を高めるために、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤の例は、
(i) 天然黒鉛または人造黒鉛のようなグラファイト、
(ii) アセチレンブラックまたはケッチェンブラックのようなカーボンブラック、
(iii) 炭素繊維または金属繊維のような導電性繊維、
(iv) フッ化カーボン、
(v) アルミニウムのような金属粉末、
(vi) 酸化亜鉛またはチタン酸カリウムのような導電性ウィスカー類、
(vii) 酸化チタンのような導電性金属酸化物、または
(viii) ポリアニリン、ポリピロール、またはポリチオフェンのような導電性高分子化合物
である。
炭素導電助剤は、低コスト化を図ることができる。
【0111】
第2実施形態における電池の形状の例は、コイン、円筒、角型、シート、ボタン、扁平型、または積層型である。
【0112】
(実施例)
以下の実施例および比較例を参照しながら、本開示がより詳細に説明される。
【0113】
(実施例1)
(第1固体電解質材料の作製)
摂氏マイナス60度以下の露点を有するアルゴングローブボックス内で、LiCl原料粉およびYCl3原料粉の混合物が、LiCl:YCl3=3:2のモル比を有するように用意された。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmで混合物がミリング処理され、実施例1による第1固体電解質材料Li3YCl6の粉末を得た。
【0114】
(金属オキシフッ化物正極活物質の作製)
摂氏マイナス60度以下の露点を有するアルゴングローブボックス内で、LiNiO2原料粉、LiCoO2原料粉、LiMnO2原料粉、およびLiF原料粉の混合物が、LiNiO2:LiCoO2:LiMnO2:LiF=33.25:33.25:28.5:10のモル比を有するように用意された。混合物を、5ミリメートルの直径を有するボールと共に容器に入れた。ボールはジルコニア製であった。容器もジルコニア製であった。容器は45ミリリットルの容量を有していた。混合物は、アルゴングローブボックス内で密閉された。混合物は、35時間、600rpmでミリング処理され、化合物を得た。得られた化合物は、空気中において摂氏700度の温度で1時間焼成された。このようにして、実施例1による金属オキシフッ化物正極活物質Li1.05(Ni0.35Co0.35Mn0.3)0.95O1.9F0.1が得られた。
【0115】
(正極材料の作製)
アルゴングローブボックス内で、実施例1による金属オキシフッ化物正極活物質および実施例1による第1固体電解質材料が、70:30の重量比で用意された。これらの金属オキシフッ化物正極活物質および第1固体電解質材料は、メノウ乳鉢で混合され、実施例1による正極材料を作製した。
【0116】
(二次電池の作製)
絶縁性外筒の中で、実施例1による正極材料(10ミリグラム)および実施例1による第1固体電解質材料(80ミリグラム)が、この順に積層された。次いで、これらの正極材料および第1固体電解質材料に360MPaの圧力が印加され、固体電解質層の表側に正極を有する積層体を作製した。
【0117】
次に、固体電解質層の裏側に、200マイクロメートルの厚みを有する金属In層、300マイクロメートルの厚みを有する金属Li層、および200マイクロメートルの厚みを有する金属In層が、この順に積層された。これらの3つの金属層に80MPaの圧力が印加され、正極、固体電解質層、および負極を有する積層体を作製した。
【0118】
正極および負極にステンレス鋼集電体が配置され、さらに集電体に集電リードが設けられた。
【0119】
最後に、絶縁性フェルールを用いて絶縁性外筒の内部を外気雰囲気から遮断かつ密閉した。このようにして、実施例1による二次電池が作製された。
【0120】
(実施例2)
(第1固体電解質材料の作製)
摂氏マイナス60度以下の露点を有するアルゴングローブボックス内で、LiBr原料粉およびYBr3原料粉の混合物が、モル比でLiBr:YBr3=3:2となるように用意された。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmで混合物をミリング処理することで、実施例2による第1固体電解質材料Li3YBr6の粉末を得た。
【0121】
次いで、実施例1による第1固体電解質材料に代えて、実施例2による第1固体電解質材料が正極のために用いられたこと以外は、実施例1の場合と同様に実施例2による二次電池が作製された。
【0122】
(実施例3)
(第1固体電解質材料の作製)
摂氏マイナス60度以下の露点を有するアルゴングローブボックス内で、LiCl原料粉、YCl3原料粉、およびZrCl4原料粉の混合物が、モル比でLiCl:YCl3:ZrCl4=2.5:0.5:0.5となるように用意された。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmで混合物はミリング処理され、実施例3による第1固体電解質材料Li2.5Y0.5Zr0.5Cl6の粉末を得た。
【0123】
次いで、実施例1による第1固体電解質材料に代えて、実施例3による第1固体電解質材料が正極のために用いられたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例3による二次電池が作製された。
【0124】
(実施例4)
(第1固体電解質材料の作製)
摂氏マイナス60度以下の露点を有するアルゴングローブボックス内で、LiBr原料粉、LiCl原料粉、LiI原料粉、YCl3原料粉、およびYBr3原料粉の混合物が、モル比でLiBr:LiCl:LiI:YCl3:YBr3=1:1:4:1:1となるように用意された。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmで混合物はミリング処理され、実施例4による第1固体電解質材料Li3YBr2Cl2I2の粉末を得た。
【0125】
次いで、実施例1による第1固体電解質材料に代えて、実施例4による第1固体電解質材料が正極のために用いられたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例4による二次電池が作製された。
【0126】
(比較例1)
(正極活物質材料の作製)
摂氏マイナス60度以下の露点を有するアルゴングローブボックス内で、LiNiO2原料粉、LiCoO2原料粉、LiMnO2原料粉、およびLiF原料粉の混合物が、モル比でLiNiO2:LiCoO2:LiMnO2=33.25:33.25:28.5となるように用意された。混合物を、5ミリメートルの直径を有するジルコニア製ボールと共に、容器に入れた。容器は、ジルコニア製であった。ジルコニア製容器は、45ミリリットルの容量を有していた。混合物は、アルゴングローブボックス内で密閉された。混合物は、35時間、600rpmでミリング処理され、化合物を得た。得られた化合物は、空気中において摂氏700度で1時間焼成された。このようにして、比較例1による正極活物質材料Li1.05(Ni0.35Co0.35Mn0.3)0.95O2が得られた。
【0127】
(正極材料の作製)
アルゴングローブボックス内で、比較例1による正極活物質材料および実施例1による第1固体電解質材料が、70:30の重量比で用意された。これらの正極活物質材料および第1固体電解質材料は、メノウ乳鉢で混合され、比較例1による正極材料を作製した。
【0128】
次いで、実施例1による正極材料に代えて、比較例1による正極材料が正極のために用いられたこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例1による二次電池が作製された。
【0129】
(比較例2)
(正極材料の作製)
アルゴングローブボックス内で、比較例1による正極活物質材料および実施例2による第1固体電解質材料が、70:30の重量比で用意された。これらの正極活物質材料および第1固体電解質材料は、メノウ乳鉢で混合され、比較例2による正極材料を作製した。
【0130】
次いで、実施例1による正極材料に代えて、比較例2による正極材料が正極のために用いられたこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例2による二次電池が作製された。
【0131】
(比較例3)
(正極材料の作製)
アルゴングローブボックス内で、比較例1による正極活物質材料および実施例3による第1固体電解質材料が、70:30の重量比で用意された。これらの正極活物質材料および第1固体電解質材料は、メノウ乳鉢で混合され、比較例3による正極材料を作製した。
【0132】
次いで、実施例1による正極材料に代えて、比較例3による正極材料が正極のために用いられたこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例3による二次電池が作製された。
【0133】
(比較例4)
(正極材料の作製)
アルゴングローブボックス内で、比較例1による正極活物質材料および実施例4による第1固体電解質材料が、70:30の重量比で用意された。これらの正極活物質材料および第1固体電解質材料は、メノウ乳鉢で混合され、比較例4による正極材料を作製した。
【0134】
次いで、実施例1による正極材料に代えて、比較例4による正極材料が正極のために用いられたこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例4による二次電池が作製された。
【0135】
(比較例5)
(硫化物固体電解質材料の作製)
摂氏マイナス60度以下の露点を有し、かつArガスが充填されたアルゴングローブボックス内で、Li2S原料粉およびP2S5原料粉の混合物が、モル比でLi2S:P2S5=75:25となるように用意された。混合物は、乳鉢で粉砕された。その後、混合物は、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、10時間、510rpmでミリング処理され、ガラス状の固体電解質材料を得た。ガラス状の固体電解質材料は、不活性雰囲気中で、摂氏270度で、2時間、熱処理に供された。これにより、硫化物固体電解質材料Li2S-P2S5を得た。
【0136】
(正極材料の作製)
アルゴングローブボックス内で、比較例1による正極活物質材料および比較例5による硫化物固体電解質材料が、70:30の重量比で用意された。これらの正極活物質材料および硫化物固体電解質材料は、メノウ乳鉢で混合され、比較例5による正極材料を作製した。
【0137】
次いで、実施例1による正極材料に代えて、比較例5による正極材料が正極のために用いられたこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例5による二次電池が作製された。
【0138】
(比較例6)
[正極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、実施例1による金属オキシフッ化物正極活物質および比較例5による硫化物固体電解質材料が、70:30の重量比で用意された。これらの金属オキシフッ化物正極活物質および硫化物固体電解質材料が、メノウ乳鉢で混合され、比較例6による正極材料を作製した。
【0139】
次いで、実施例1による正極材料に代えて、比較例6による正極材料が正極のために用いられたこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例6による二次電池が作製された。
【0140】
(充放電試験)
実施例1~4および比較例1~6の電池は、以下の充放電試験に供された。
【0141】
電池は摂氏25度に維持された恒温槽の内部に配置された。
【0142】
70マイクロアンペアの定電流で電池は充電された。Liに対する電位が4.9Vに達した時点で充電を終了した。
【0143】
次に、70マイクロアンペアの電流値で電池は放電された。Liに対する電位が2.5Vに達した時点で放電を終了した。
【0144】
充電および放電の結果に基づいて、実施例1~4および比較例1~6の電池の初回充放電効率(=初回放電容量/初回充電容量)が算出された。以下の表1は、算出結果を示す。
【0145】
【0146】
(考察)
図2は、実施例1および比較例1による全固体二次電池の初期充放電特性を示すグラフである。
【0147】
図2および表1に示される実施例1および比較例1の結果から、正極活物質および固体電解質としてそれぞれ金属オキシフッ化物およびハロゲン化物を正極のために用いることで、充放電効率が向上することが確認された。
【0148】
表1に示す実施例1~4および比較例1~4の結果から、Li3YCl6以外のハロゲン化物固体電解質においても同様の効果が確認された。
【0149】
比較例6を比較例5と比較すれば明らかなように、正極活物質および固体電解質としてそれぞれ金属オキシフッ化物および硫化物固体電解質が用いられた場合(比較例6を参照せよ)では、正極活物質および固体電解質としてそれぞれ金属酸化物および硫化物固体電解質が用いられた場合(比較例5を参照せよ)と比較して、充放電効率が低下する。この理由は、硫化物固体電解質が、金属オキシフッ化物に含まれるフッ素原子と反応し、抵抗層を形成したためであろう。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本開示による電池は、例えば、全固体リチウム二次電池として利用され得る。
【符号の説明】
【0151】
1000 電池
101 正極
102 電解質層
103 負極
104 正極活物質粒子
105 第1固体電解質粒子