(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】排水ます
(51)【国際特許分類】
E04D 13/08 20060101AFI20230127BHJP
E04D 13/04 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
E04D13/08 301Q
E04D13/04 D
(21)【出願番号】P 2019031762
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 舞
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】意匠登録第1429211(JP,S)
【文献】特開2009-079389(JP,A)
【文献】特開2005-146637(JP,A)
【文献】実開昭55-029690(JP,U)
【文献】特開2010-265726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/08
E04D 13/04
E04D 13/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁面から突出する排水パイプと竪樋とを接続する排水ますであって、
前記竪樋の上側に嵌合接続される本体筒部と、前記本体筒部の側壁に接続され、前記排水パイプが挿入される枝管とを含み、
前記枝管の先端側開口は、上下方向に長い楕円形状であり、
前記枝管は、内周面の上下方向に沿った断面形状が、先端から根元側端に向かって徐々に真円形状に近づくように形成され
、
前記枝管の内周面の上端縁及び下端縁は、先端に向かって上側に傾斜している、
排水ます。
【請求項2】
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記枝管の内周面の根元側端は、真円形状である、
排水ます。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の排水ますにおいて、
前記本体筒部の下端部に形成され貫通孔を有する下側板部と、前記下側板部の外周縁から長手方向に突出する角形筒状の外筒と、前記外筒の内側で前記下側板部の内周縁から、長手方向に突出し、円筒面部を有する内筒とを含む、
排水ます。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物から突出する排水パイプと竪樋とを接続する排水ますに関し、特に建物の外壁面に対する突出角度が異なる種々の排水パイプに接続できる構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物から突出する排水パイプと竪樋とを接続する排水ますが知られている。排水パイプは、例えばベランダ、または建物の屋上に設けられた排水口に接続された状態で建物の内部に配置されて、排水パイプの一部が外壁面から突出する。
【0003】
特許文献1には、竪樋に接続される函体(本体筒部)から筒状体(枝管)が突出しており、この筒状体の内側に排水パイプが挿入されて接続されている。排水パイプから排水ますに送られた雨水は、排水ますに接続した竪樋を通って排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物から突出する排水パイプは、建物によって外壁面に対する突出角度が異なる場合があり、突出角度は一定には限定されない。種々の突出角度の排水パイプに適用可能とするために、排水ますの枝管の内径を大きくすることが考えられるが、この場合は排水パイプ外周面と枝管内周面との隙間が大きくなるので、パッキン等で水密したり、水密が困難になる場合がある。このために、従来は、それぞれの排水パイプの突出角度に応じて異なる傾斜角度の枝管を有する排水ますを用意していたが、その場合には排水ますの共通化を図れないことにより、排水ますのコストが上昇する原因となる。
【0006】
本開示の目的は、建物の外壁面に対する突出角度が異なる種々の排水パイプに接続でき、かつ、水漏れの問題を生じない排水ますを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の排水ますは、建物の外壁面から突出する排水パイプと竪樋とを接続する排水ますであって、竪樋の上側に嵌合接続される本体筒部と、本体筒部の側壁に接続され、排水パイプが挿入される枝管とを含み、枝管の先端側開口は、上下方向に長い楕円形状であり、枝管は、内周面の上下方向に沿った断面形状が、先端から根元側端に向かって徐々に真円形状に近づくように形成される、排水ますである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様の排水ますによれば、枝管の先端側開口が上下方向に長い楕円形状であるので、建物の外壁面に対する突出角度が異なる種々の排水パイプに枝管を接続できる。また、枝管は、内周面の上下方向に沿った断面形状が、先端から根元側端に向かって徐々に真円形状に近づくように形成されるので、排水パイプを円筒状とする場合に、枝管と排水パイプとの接続部における水漏れの問題を防止できる。これにより、外壁面に対する突出角度が異なる種々の排水パイプに接続でき、かつ、水漏れの問題を生じない排水ますを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の排水ますを含む外部排水接続構造を示す斜視図である。
【
図3】
図2において、排水パイプを省略して右側から見た図である。
【
図4】
図2において、排水パイプを省略して下側から見た図である。
【
図5】排水ますに排水パイプを接続した状態を示している
図3のA-A断面相当図である。
【
図8】実施形態において、建物の外壁面から突出する排水パイプに排水ますを接続すると共に、外壁面に竪樋を取り付けた施工工程後の状態を示す図である。
【
図9】実施形態の排水ますに、別例の竪樋を接続した状態を示している
図4に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る排水ますの実施形態を説明する。以下で説明する形状、個数、数値、材料等は、説明のための例示であって、排水ますの仕様により適宜変更することができる。以下では全ての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。
【0011】
図1~
図8を用いて実施形態を説明する。
図1は実施形態の排水ます10により、排水パイプ50と竪樋60とを接続した状態を示す斜視図である。
図2は、
図1の正面図である。
図3は、
図2において、排水パイプ50を省略して右側から見た図であり、
図4は、
図2において、排水パイプ50を省略して下側から見た図である。
図1~
図2に示すように、外部排水接続構造1は、排水パイプ50と、竪樋60とを、排水ます10により接続して構成される。
【0012】
排水パイプ50は、後述の
図8に示すように建物80の外壁面81から突出している。排水パイプ50は、ステンレス合金等の金属または樹脂により断面が真円である円筒状に形成され、建物80の内部に配置され、排水パイプ50の一部が外壁面81から斜め下方向に突出している。排水パイプ50の建物内部側は、例えばベランダ(図示せず)の排水口に接続されている。排水パイプ50は、建物内部側が建物の屋上に設けられた排水口に接続された状態で、一部を建物の外壁面から突出させてもよい。
【0013】
竪樋60は、後述の
図8に示すように建物80の外壁面81に沿うように、外壁面81に、ほぼ上下方向に沿って後述の控え具90(
図8)により固定される。
図1、
図4に示すように、竪樋60は、ステンレス合金等の金属または樹脂により、断面が略八角形の角形筒状に形成される。具体的には、
図4に示すように、竪樋60の長手方向一方側から見た形状は、八角形の1つ置きの4つの辺が中心側に向かって台形状に窪んだ形状である。竪樋60の長手方向に対し直交する断面の形状も同様である。
【0014】
図5は、排水ます10に排水パイプ50を接続した状態を示している
図3のA-A断面相当図である。
図6は、
図5のB部拡大図である。
図7は、
図2のC-C断面図である。
【0015】
排水ます10は、竪樋60の上側に嵌合接続される本体筒部11と、本体筒部11の側壁12から突出するように側壁12に接続された枝管13と、本体筒部11の上部に結合された蓋部20とを含む。排水ます10は、ステンレス合金等の金属または樹脂により形成される。
図4に示すように、本体筒部11は、下端部内側に竪樋60の上端部を嵌合可能な断面略八角形の角形筒状に形成される。
【0016】
枝管13は、略円筒状の筒部であり、本体筒部11の側壁12から斜め上方向に突出するように、側壁12に接続される。枝管13の内側には、排水パイプ50が挿入されて接続される。
図2に示すように、枝管13の先端面13aは、上下方向に沿っている。
図3に示すように、枝管13の先端側開口は、上下方向に長い楕円形状である。これにより、
図3において、枝管13の先端側開口の上下方向長さD1は、横方向長さD2より大きくなっている(D1>D2)。
【0017】
さらに、枝管13は、先端から本体筒部11との接続端である根元側端に向かって、内周面の上下方向に沿った断面形状が、徐々に真円形状に近づくように形成される。これにより、
図6において、枝管13の先端側開口の上下方向長さD1は、根元側端に向かって、徐々に小さくなって横方向長さD2(
図3)に近づいている。このために、例えば、
図6に示すように枝管13の中心を上下方向に通過する断面の形状において、内周面の上端縁13bの水平方向に対する傾斜角度α1が、内周面の下端縁13cの水平方向に対する傾斜角度α2より大きくなっている(α1>α2)。横方向長さD2は、枝管13の長手方向の全長にわたる範囲で略同一である。これにより、後述のように、建物80の外壁面81に対する突出角度が異なる種々の排水パイプ50に接続でき、かつ、水漏れの問題を生じない排水ます10を実現できる。排水ます10において、好ましくは、枝管13の内周面の根元側端が、上下方向長さD1a(
図6、
図7)が、横方向長さD2と同一である真円形状である。
【0018】
図4、
図5に示すように、本体筒部11の下端部内周面には、内向きフランジ状に下側板部15が形成される。下側板部15の中心部には貫通孔15aが形成される。
図4に示すように貫通孔15aは、円形の90度位相が異なる4つの位置に中心側に向けて矩形枠状に突出する突部15bが形成された形状である。そして、下側板部15の内周縁部から長手方向に内筒16が突出しており、下側板部15の外周縁部から長手方向に外筒18が突出している。内筒16の断面形状は貫通孔15aの形状と同様である。これにより、内筒16の外周面の周方向4つの位置には、中心軸が同一である円筒面部16aが形成され、隣り合う円筒面部16aの間には、貫通孔15aの突部15bに対応して、中心側に窪んだ凹部16bが形成される。
【0019】
一方、外筒18は、内側に竪樋60の上端部を嵌合可能であり、本体筒部11の上側の他の部分と同様の八角筒状である。竪樋が八角筒状以外の角形筒状である場合に、外筒をその形状に応じた角形筒状とすることもできる。竪樋60の上端部は、外筒18に内挿するように嵌合される。この状態で竪樋60の上端は、下側板部15の下面に突き当たって位置決めされる。なお、後で
図9を用いて別例の組み合わせで示すように、竪樋60の代わりに円筒状の竪樋70を用いる場合には、内筒16の外側に外挿するように嵌合される。
【0020】
蓋部20は、本体筒部11の上端に、本体筒部11の上端開口を塞ぐように結合固定される。蓋部20は、ステンレス合金等の金属または樹脂により筒部21(
図6)の上端を天板部22で塞ぐ形状に形成される。天板部22は、中心に向かって下側に窪むすり鉢状である。蓋部20は本体筒部11の上端部の内側に嵌合され、蓋部20に形成した係止片23の先端部が本体筒部11の穴に係止されることにより、本体筒部11に固定される。
【0021】
図8を用いて、実施形態の排水ます10を含む外部排水接続構造1の施工方法を説明する。
図8は、実施形態において、建物80の外壁面81から突出する排水パイプ50に排水ます10を接続すると共に、外壁面81に竪樋60を取り付けた施工工程後の状態を示している。施工を行う場合、まず、外壁面81に控え具90を取り付ける。控え具90は、金属板を略L字形に折り曲げてなる固定部91と、樋支持部92とを有する。固定部91の先端部がネジ等により外壁面81に固定される。樋支持部92は、周方向両端部が切離可能な環状に形成されており、樋支持部92の中間部が固定部91の外壁面81側とは反対側の端部に結合される。後述のように、樋支持部92は、竪樋60を締め付けた状態で竪樋60を支持するために用いられる。
【0022】
その後、排水ます10を外壁面81近くに取り付ける前に、控え具90の固定部91における壁面側端部と樋支持部側端部との間隔Lに応じて、排水ます10の枝管13の先端部を、先端面が外壁面81と平行な上下方向に対応する方向に沿うように切断する。次いで、控え具90の上記間隔Lに応じて排水パイプ50の先端を、排水パイプ50の長手方向に対し直交する方向に切断する。
【0023】
そして、枝管13の内部において、
図8に破線部βで示す排水パイプ50の嵌合予定部に、周方向に沿って接着剤を塗布するとともに、排水ます10の外筒18における竪樋60の嵌合予定部である内周面にも接着剤を塗布する。次いで、排水パイプ50を、枝管13内周面の根元側端近くの突き当たる部分にまで差し込み、その後、控え具90の樋支持部92の内側に竪樋60を緩く挿通しながら、排水ます10の外筒18の内側に竪樋60の上端部を差し込む。枝管13の内周面の上下方向に沿った断面形状は、枝管13の先端から根元側端に向かって徐々に真円形状に近づくように形成されるので、円筒状の排水パイプ50の先端部は、枝管13の内周面に突き当てた状態で枝管13に固定しやすい。最後に控え具90で竪樋60を締め付けた状態で、控え具90の周方向一端部を周方向他端部に、爪部等の係合部で係合して、竪樋60を控え具90に固定する。これにより、外壁面81の近くに外部排水接続構造1が施工される。
【0024】
上記の排水ます10によれば、枝管13の先端側開口が上下方向に長い楕円形状であるので、建物80の外壁面81に対する突出角度γ(
図8)が異なる種々の排水パイプ50に枝管13を接続できる。また、枝管13は、上下方向に沿った断面形状が、先端から根元側端に向かって徐々に真円形状に近づくように形成されるので、排水パイプ50を円筒状とする場合に、枝管13と排水パイプ50との接続部における水漏れの問題を防止できる。これにより、外壁面81に対する突出角度γが異なる種々の排水パイプ50に接続でき、かつ、水漏れの問題を生じない排水ます10を実現できる。具体的には、パッキン等の専用の水密部材を用いることなく、枝管13と排水パイプ50とを水密に接続できる。
【0025】
図5に矢印δ方向で示すように、枝管13の内部で枝管13の先端側開口の中心と根元側端の中心とを通る軸14の方向に対し、上下方向について所定角度内で排水パイプ50の向きである排水パイプ50の中心軸51の方向の微調整を可能に、排水パイプ50を枝管13に組み付けることができる。例えば、排水パイプ50は、軸14の方向に対し+側(
図5の上側)と-側(
図5の下側)とで、それぞれ2°から7°を上限とする範囲で向きを調整可能に設定することができる。好ましくは、排水パイプ50は、軸14の方向に対し+側と-側とで、それぞれ2°を上限とする範囲で向きを調整可能に設定する。これにより、軸14の方向に対し傾斜角度が異なる種々の排水パイプ50の接続に、排水ます10を適用できる。
【0026】
さらに、枝管13の内周面の根元側端を真円形状とする場合には、排水パイプ50の先端が枝管13内側の根元側端に、より近づくように、排水パイプ50を枝管13に差し込むことができる。
【0027】
図9は、実施形態の排水ます10に、別例の竪樋70を接続した状態を示している
図4に対応する図である。
図9に示す別例の組み合わせでは、竪樋70は、角形筒状ではなく、円筒状に形成される。竪樋70の上端部は、排水ます10の下端部における内筒16に外挿されて、下側板部15の下面に突き当てられる。内筒16の円筒面部16aにおける外周面には接着剤が塗布されており、竪樋70の上端部はこの接着剤により内筒16に接着して固定される。上記のように、排水ます10は、下端部に、角形筒状の外筒18及びその内側の円筒面部16aを有する内筒16が形成されるので、角形筒状及び円筒状といった異なる形状の竪樋60、70のいずれも接続できる。
【符号の説明】
【0028】
1 外部排水接続構造、10 排水ます、11 本体筒部、12 側壁、13 枝管、13a 先端面、13b 上端縁、13c 下端縁、14 軸、15 下側板部、15a 貫通孔、15b 突部、16 内筒、16a 円筒面部、16b 凹部、18 外筒、20 蓋部、21 筒部、22 天板部、23 係止片、50 排水パイプ、51 中心軸、60,70 竪樋、80 建物、81 外壁面、90 控え具、91 固定部、92 樋支持部。