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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】マリオンの取付構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20230127BHJP
   E04B 2/88 20060101ALI20230127BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
E04B1/58 600E
E04B2/88
E04B1/24 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022033061
(22)【出願日】2022-03-04
【審査請求日】2022-03-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社ノゾミコーポレーションのカタログ「NOZOMIアルミマリオン 大型アルミ形材マリオン」
(73)【特許権者】
【識別番号】522086353
【氏名又は名称】株式会社ノゾミコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】星 修
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115401(JP,A)
【文献】特開平11-303196(JP,A)
【文献】実開昭56-167143(JP,U)
【文献】実開平02-103412(JP,U)
【文献】実開平07-006362(JP,U)
【文献】特開昭64-006438(JP,A)
【文献】米国特許第09567746(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 2/88
E04B 1/24
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主壁と一対の側壁とを有する断面コ字形をなし長手方向に連続して形成された第1部材と、上記第1主壁に対向する第2主壁と一対の側壁とを有する断面コ字形をなし長手方向に連続して形成された第2部材と、からなり、両部材の側壁の先端縁同士を重ねて互いにネジ止めすることで断面矩形状に構成されるマリオンと、
上記第1部材の上記第1主壁の内側面に上記第1主壁と一体に形成されており、互いに対向した一対の断面略L字形の脚部によってスライド溝が開口した断面矩形のチャンネル状に構成されているとともに、上記マリオンの長手方向に沿って延びた複数の取付レールと、
ビルのスラブの水平面にアンカーボルトによって固定される第1片部と、この第1片部に対し直角に折曲した第2片部と、からなり、上記第2片部に、上記取付レールの上記スライド溝と整列するように複数の取付孔がそれぞれ略U字形に切欠形成されてなるマリオン取付ブラケットと、
上記取付レールの内部に上記スライド溝を通して挿入可能な略長方形をなすとともに、挿入後に横向き姿勢とすることで上記取付レールの内側に係合するナット部材と、このナット部材が先端部に螺合するとともに頭部が上記取付レールの外側に位置し、上記ナット部材とともに上記取付レールに沿ってスライドさせることで軸部が上記マリオン取付ブラケットの略U字形をなす上記取付孔に嵌められる取付ボルトと、を含むファスナーと、
を備え、
上記取付ボルトおよび上記ナット部材により上記取付レールの上記脚部先端部と上記取付ブラケットの上記第2片部とが重ねて締め付けられている、
ことを特徴とするマリオンの取付構造。
【請求項2】
上記ナット部材は、上記スライド溝に沿った縦向き姿勢において上記スライド溝を通過可能な幅と、上記スライド溝と直交する横向き姿勢において上記取付レールの内側の幅寸法にほぼ等しいものとなる長さと、を有し、
上記スライド溝を通して上記取付レールの内部に挿入された上記ナット部材が上記取付レールの内部で上記縦向き姿勢から上記横向き姿勢へと一方向にのみ略90°回転できるように、長方形の4つの角部の中で互いに点対称となる2つの角部が切り落とされた形状をなしている、
ことを特徴とする請求項1に記載のマリオンの取付構造。
【請求項3】
ビルの1つの階の床側のスラブの水平面と天井側のスラブの水平面との間に上記第1部材が配置され、上記第1部材の上下両端部がそれぞれ上記マリオン取付ブラケットおよび上記ファスナーを介して固定されているとともに、
上記取付レールは、上記第1部材の全長に亘って連続して形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のマリオンの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビルの外壁面において主に装飾のために垂直に延びる柱状に設けられるマリオンの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば中高層ビルの外観品質を高めるために、ビル外壁面に、垂直方向に延びる矩形の柱状をなす装飾用のマリオンが設けられることがある。例えば、ある階のバルコニーの先端縁(ビルの外側縁)と、上方の次の階のバルコニーの先端縁と、に亘る縦桟のような形でマリオンが設けられる。中高層の集合住宅等では、1つの住居のバルコニーと隣接するバルコニーとの間にパーティションが設けられるが、このパーティションの前縁に沿ってマリオンが設けられることが多い。
【0003】
このような装飾用のマリオンは、ビルの荷重を負担する構造物ではなく、例えば、アルミニウム合金を用いて1辺が10~30cm程度の断面矩形の中空状に構成される。具体的には、それぞれが断面コ字形をなす2つの部材を組み合わせることで、断面矩形のマリオンが構成される。
【0004】
従来、このような装飾用のマリオンのビルへの取付は、L字形金具等の取付構造物が外部に露出していると外観品質の上で好ましくないことから、ある階のスラブと上方の次の階のスラブとの間に、マリオンの外形よりも細い下地柱を設け、この下地柱をマリオンで覆うようにマリオンを下地柱に固定する方法が採られてきた。
【0005】
図11は、従来のマリオン101の取付構造を例示したもので、下地柱102は、鋼板やアルミニウム合金から中空の柱状に形成され、下端および上端がそれぞれ下方のスラブの床面103と上方のスラブの天井面104とにL字形金具105を介してそれぞれ固定される。これらのL字形金具105は、マリオン101の取付前は、外部に露出したものとなる。そして、下地柱102に、上下方向の適当な間隔を有する複数箇所において、マリオン支持ブラケットが取り付けられ、このマリオン支持ブラケットにマリオン101が取り付けられる。
【0006】
図12は、従来の取付構造におけるマリオン101の断面を概略的に示したもので、下地柱102の左右の側面にL字形の金具106A,106Bを組み合わせてなるマリオン支持ブラケット106が取り付けられている。マリオン101は、断面コ字形の2つの部材101A,101Bに分割して構成されており、各々の側壁の先端縁同士を重ねてネジ107により固定することで2つの部材101A,101Bが一体化されるようになっているが、ネジ107はマリオン支持ブラケット106に螺合しており、いわゆる共締めの形で、2つの部材101A,101Bが一体化されると同時にマリオン101がマリオン支持ブラケット106に固定される。
【0007】
このようにマリオン101が取り付けられた状態では、下地柱102をスラブに対し固定しているL字形金具105は、外部から視認できない。つまり、マリオン101の外側にはその取付構造物が露出しないものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような従来の取付構造にあっては、ビルの外壁面に沿って多数設けられるマリオンの個々に対して下地柱の設置が必要であり、マリオンが実質的に二重構造物となるので、施工の作業効率が悪いとともに、重量や材料の増加を招く、という欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るマリオンの取付構造は、
第1主壁と一対の側壁とを有する断面コ字形をなし長手方向に連続して形成された第1部材と、上記第1主壁に対向する第2主壁と一対の側壁とを有する断面コ字形をなし長手方向に連続して形成された第2部材と、からなり、両部材の側壁の先端縁同士を重ねて互いにネジ止めすることで断面矩形状に構成されるマリオンと、
上記第1部材の上記第1主壁の内側面に上記第1主壁と一体に形成されており、互いに対向した一対の断面略L字形の脚部によってスライド溝が開口した断面矩形のチャンネル状に構成されているとともに、上記マリオンの長手方向に沿って延びた複数の取付レールと、
ビルのスラブの水平面にアンカーボルトによって固定される第1片部と、この第1片部に対し直角に折曲した第2片部と、からなり、上記第2片部に、上記取付レールの上記スライド溝と整列するように複数の取付孔がそれぞれ略U字形に切欠形成されてなるマリオン取付ブラケットと、
上記取付レールの内部に上記スライド溝を通して挿入可能な略長方形をなすとともに、挿入後に横向き姿勢とすることで上記取付レールの内側に係合するナット部材と、このナット部材が先端部に螺合するとともに頭部が上記取付レールの外側に位置し、上記ナット部材とともに上記取付レールに沿ってスライドさせることで軸部が上記マリオン取付ブラケットの略U字形をなす上記取付孔に嵌められる取付ボルトと、を含むファスナーと、
を備え、
上記取付ボルトおよび上記ナット部材により上記取付レールの上記脚部先端部と上記取付ブラケットの上記第2片部とが重ねて締め付けられている、
ことを特徴としている。
【0010】
このような構造により、マリオンの第1部材が下地柱を要さずにビルに固定され、この第1部材に第2部材を組み合わせることで、マリオン全体がビルに支持される。
【0011】
取付手順としては、例えば、最初にマリオン取付ブラケットをアンカーボルトによってビルの床面および天井面にそれぞれ取り付ける。次に、マリオンの第1部材の上下端部をマリオン取付ブラケットの第2片部の外側に重ねた状態とする。次いで、ファスナーを、第1部材の取付レールにそれぞれ緩めた状態のまま挿入し、かつマリオン取付ブラケットの第2片部へ向けてスライドさせる。
【0012】
取付レールのスライド溝と第2片部の略U字形をなす取付孔とが整列することで、取付ボルトの軸部が自然に取付孔に嵌まり込む。取付ボルトの軸部が第2片部の略U字形の取付孔に嵌まったら、取付ボルトを締め付ける。これにより、マリオンの第1部材がマリオン取付ブラケットに固定される。次に、マリオンの第2部材を第1部材と組み合わせ、互いにネジ止めすることでマリオンが完成する。この状態では、マリオン取付ブラケット等の取付構造物は外部から視認できない。
【0013】
この発明の好ましい一つの態様では、上記ナット部材は、上記スライド溝に沿った縦向き姿勢において上記スライド溝を通過可能な幅と、上記スライド溝と直交する横向き姿勢において上記取付レールの内側の幅寸法にほぼ等しいものとなる長さと、を有し、上記スライド溝を通して上記取付レールの内部に挿入された上記ナット部材が上記取付レールの内部で上記縦向き姿勢から上記横向き姿勢へと一方向にのみ略90°回転できるように、長方形の4つの角部の中で互いに点対称となる2つの角部が切り落とされた形状をなしている。
【0014】
また、この発明の好ましい一つの態様では、ビルの1つの階の床側のスラブの水平面と天井側のスラブの水平面との間に上記第1部材が配置され、上記第1部材の上下両端部がそれぞれ上記マリオン取付ブラケットおよび上記ファスナーを介して固定されているとともに、上記取付レールは、上記第1部材の全長に亘って連続して形成されている。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、取付構造物が外部に露出していない外観品質に優れたマリオンを提供することができる。そして、下地柱が不要となるため、施工が容易であるとともに、材料や重量の点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施例のマリオンの斜視図。
図2】天井面に固定されたマリオン上端部における一部断面図(図3のB-B線に沿った断面図)。
図3図2のA-A線に沿った断面図。
図4】第1部材を単体で示す断面図。
図5】第1部材の正面図。
図6】第2部材を単体で示す断面図。
図7】マリオン取付ブラケットに第1部材を固定した状態を示す第1部材を内側から見た正面図。
図8】取付ボルトとナット部材を含むファスナーの平面図。
図9】ナット部材の正面図。
図10】マリオン構成部材の異なる組み合わせ(A),(B),(C)を示す説明図。
図11】従来のマリオン取付構造を示す説明図。
図12】従来のマリオン取付構造を示すマリオンの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、一実施例のマリオン1を示している。マリオン1は、ビルの外壁面において主に装飾のために設けられるものであり、ビルの一つの階のスラブの床面と上方のスラブの天井面との間に垂直方向に取り付けられる。図1は、説明のために長さの一部を切り取って短いものとして示している。
【0018】
マリオン1は、断面コ字形をなす2つの部材に分割して構成されている。ここでは、ビルのスラブに直接に固定される方の部材を第1部材11とし、この第1部材11と組み合わせることで間接的に支持されることとなる部材を第2部材51とする。但し、後述するように、好ましい一実施例では、2つの部材(第1部材11と第2部材51)が同一ないし類似した構造を有し、いずれかが第1部材として機能し得る。図示例では、相対的に大きな第1部材11と相対的に小さな第2部材51とが組み合わされてマリオン1を構成する。なお、図2および図3の取付例では、第1部材11が相対的にビルの内側に、第2部材51がビルの外側に、それぞれ位置しているが、逆の関係であってもよい。
【0019】
第1部材11および第2部材52は、いずれもアルミニウム合金の押出成形によって一定断面形状を有する長手方向に連続したチャンネル材状の部材として構成されている。各部材の外表面は、電解複合被膜の形成や焼付塗装等によってビル装飾に適した適当な色に着色されている。
【0020】
図4に示すように、第1部材11は、ビルの外側もしくは内側へ向かう主壁12と、一対の側壁13,14と、を有する断面コ字形をなす。側壁13,14の先端には、第2部材12と結合するための連結片13a,14aが屈曲部13b,14bを介して内側にステップ状に折れ曲がった形に形成されている。また4箇所のコーナー部の内側には、切断面に薄い金属板からなる小口蓋16(図2参照)をネジで取り付けるためのボス部15が形成されている。
【0021】
主壁12の内側面には、第1部材11の長手方向に沿って互いに平行に延びる一対の取付レール17が形成されている。これら2本の取付レール17は、側壁13,14とともに左右対称となる位置に設けられている。個々の取付レール17は、主壁12の内側面から突出した一対の断面略L字形の脚部18によって、断面矩形のチャンネル状に構成されている。脚部18は、主壁12から直角に突出したレール側壁19と、該レール側壁19から直角に折曲したレール先端壁20と、を有し、一対の脚部18のレール先端壁20が互いに対向している。これにより、一対のレール先端壁20の間に、一定幅で直線状に延びるスライド溝21が構成される。従って、断面矩形をなす取付レール17の内部空間17aがスライド溝21を介して開口している。また、スライド溝21を構成する一対のレール先端壁20の先端縁は、取付レール17の内側に折曲した形をなし、部分的に厚肉となった補強リブ22を形成している。
【0022】
取付レール17は、第1部材11の一部として主壁12等と一体に押出成形されている。従って、図5に示すように、第1部材11の全長に亘って取付レール17が連続している。
【0023】
第2部材51は、図6に示すように、第1部材11の主壁12に対向する主壁52と、一対の側壁53,54と、を有する断面コ字形をなす。側壁53,54の先端には、第1部材11と結合するための連結片53a,54aが屈曲部53b,54bを介して内側にステップ状に折れ曲がった形に形成されている。また側壁53,54の中間部の内側には、切断面に薄い金属板からなる小口蓋56(図2参照)をネジで取り付けるためのボス部55が形成されている。
【0024】
主壁52の内側面には、第1部材11と同様に、第2部材51の長手方向に沿って互いに平行に延びる一対の取付レール17が形成されている。これら2本の取付レール17は、側壁53,54とともに左右対称となる位置に設けられている。取付レール17の構成は、上述した第1部材11の取付レール17と全く同様であるので、説明は省略する。第1部材11の取付レール17と第2部材51の取付レール17は、同一の寸法を有する。
【0025】
換言すれば、本実施例では、第2部材51は、側壁53,54の幅(ビル前後方向の寸法)が短いこと以外は第1部材11と同一の構成を有する。
【0026】
ここで、第1部材11の側壁13,14先端における連結片13a,14aの左右幅方向の位置は、当該連結片13a,14aの板厚(換言すれば第2部材51側の連結片53a,54aの板厚)分だけ互いに異なっている。つまり、屈曲部13b,14bの段差が大きさが左右で異なっている。同様に、第2部材51の側壁53,54先端における連結片53a,54aの左右幅方向の位置は、当該連結片53a,54aの板厚(換言すれば第1部材11側の連結片13a,14aの板厚)分だけ互いに異なっている。つまり、屈曲部53b,54bの段差が大きさが左右で異なっている。従って、マリオン1として第1部材11と第2部材51とを組み合わせたときに、例えば、第1部材11の連結片13aの外側に第2部材51の連結片54aが重なり、第2部材51の連結片53aの外側に第1部材11の連結片14aが重なる。そして、このように連結片同士が重なった状態において、側壁13と側壁54が同一平面上に整列し、側壁14と側壁53とが同一平面上に整列する。マリオン1として組み合わされた状態では、ステップ状に後退した連結片部分が凹溝状となり、この凹溝状部分の中で、互いに重なり合った連結片同士がネジ7(図2図3参照)によって結合される。
【0027】
図2および図3に示すように、第1部材11の上端および下端は、それぞれマリオン取付ブラケット2およびファスナー3を介して、スラブからなる天井面および床面に固定されている。
【0028】
マリオン取付ブラケット2は、幅の広い一種のL字形金具であり、ビルのスラブの水平面にアンカーボルト4によって固定される第1片部2aと、この第1片部2aに対し直角に折曲した第2片部2bと、を有する。第1片部2aは、位置調整可能なように長孔としたアンカーボルト4用の複数(例えば2つ)の取付孔5を有する。第2片部2bは、ファスナー3用の2つの長孔状の取付孔6を有する。ファスナー3用の2つの取付孔6は、第1部材11の一対の取付レール17(詳しくはそのスライド溝21)と整列する位置にあり、スライド溝21に沿うように垂直方向に細長く延びているとともに、その上端が切り欠かれて開放されている。つまり、取付孔6は、一端が第2片部2bの上縁において開口した略U字形をなすように切欠形成されている。
【0029】
ファスナー3は、図8および図9に示すように、頭部31aと軸部31bとを含む一般的な六角ボルトからなる取付ボルト31と、この取付ボルト31に螺合するナット部材32と、図示省略したワッシャならびにスプリングワッシャと、を備えている。第1部材11の上端部および下端部を固定するために計4個のファスナー3が用いられるが、いずれも同一の構成である。
【0030】
ナット部材32は、アルミニウム合金や鉄等の金属材料から形成したもので、図9に示すように、ボルト軸方向に沿って見たときに中心にネジ孔33を有する略長方形状をなす。詳しくは、一対の長辺32aと一対の短辺32bとを有する長方形を基本形状とし、かつ長方形の4つの角部の中で互いに点対称となる2つの角部が切欠部34として斜めに切り落とされた形状をなしている。一対の長辺32aの間の間隔をナット部材32の幅とすると、この幅は、取付レール17のスライド溝21の開口幅よりも僅かに小さい。また一対の短辺32bの間の間隔をナット部材32の長さとすると、この長さは、取付レール17の内側の幅寸法つまり一対のレール側壁19の間の間隔にほぼ等しい(スライド可能なように僅かな隙間のみが残存する)。
【0031】
従って、ナット部材32は、ファスナー3として取付ボルト31と組み合わせた状態のまま、スライド溝21に沿った縦向き姿勢とすることで、スライド溝21を通して取付レール17の内部空間17a内に挿入可能である。そして、挿入後に、2つの切欠部34を利用して取付レール17の内部空間17a内でナット部材32を90°回転させて横向き姿勢とすると、ナット部材32をスライド溝21から引き抜くことができなくなり、ナット部材32が取付レール17の脚部18のレール先端壁20内側面に係合することとなる。従って、ナット部材32の一対の切欠部34は、取付レール17内でナット部材32の90°の回転が可能な大きさに形成されている。一方、残りの2つの角部は切欠部34を具備しないので、ネジ孔33を中心とした半径が大きくなり、回転が不能である。つまり、ナット部材32は、取付レール17内で一方の回転方向にのみ90°の回転が可能であり、横向き姿勢となったら、それ以上回転させることができない。
【0032】
ここで、特に、2つの切欠部34の位置は、取付ボルト31の締付時の回転方向を考慮して設定されている。つまり、図9で示す2カ所に切欠部34を設けることで、ナット部材32を縦向き姿勢でもってスライド溝21を通して取付レール17内に挿入した後、取付ボルト31とともにナット部材32を時計回り方向に90°回転させて横向き姿勢とすることができる。そして、さらに時計回り方向に取付ボルト31を回転したときに、ナット部材32の時計回り方向の回転が取付レール17によって阻止されるので、ナット部材32と取付ボルト31とによる締付が可能である。
【0033】
さらに、ナット部材32の内側面(取付ボルト31の頭部31aに向かう面)には、図8図9に示すように、取付レール17のスライド溝21両側に位置する補強リブ22にそれぞれ係合する一対の係合溝35が短辺32bと平行に形成されている。従って、取付レール17内で横向き姿勢となったナット部材32が取付ボルト31で外側へ引っ張られると、上記の係合溝35が補強リブ22に係合し、これによってもナット部材32の回転が阻止される。特に、ファスナー3を一旦締め付けた後に緩める際には、ナット部材32の反時計回り方向の回転が係合溝35と補強リブ22との係合によって制限される。
【0034】
次に、図2図3等を参照して上記実施例のマリオン1のビルへの取付手順を説明する。まず初めに、スラブ8の床面および天井面のそれぞれにマリオン取付ブラケット2をアンカーボルト4によって固定する。次に、マリオン1の第1部材11をマリオン取付ブラケット2を囲むようにして配置し、取付レール17がマリオン取付ブラケット2の第2片部2bの外側面に接するようにしつつスライド溝21と第2片部2bの取付孔6に整列させる。なお、第1部材11は予め必要な長さに切断されており、上下の端面には、小口蓋16が取り付けられている(図2参照)。
【0035】
スライド溝21と取付孔6とが整列した状態において、取付レール17にそれぞれファスナー3を仮組付する。つまり、ナット部材32と取付ボルト31とを緩く組み合わせた状態で、ナット部材32を縦向き姿勢でもってスライド溝21から取付レール17内に挿入し、かつ時計回り方向に90°回転させて横向き姿勢とする。そして、このファスナー3をスライド溝21に沿って第2片部2bへ向けてスライドさせる。これにより、取付ボルト31の軸部31bが取付孔6に嵌まり込む。次に、このようにファスナー3の軸部31bが取付孔6に嵌まった状態で取付ボルト31を締め付ける。このときには、ナット部材32は係合溝35と補強リブ22との係合によって回転できないので、ナット部材32を手指等で保持している必要はなく、取付ボルト31の回転操作のみで締め付けが可能である。なお、前述した図示しないワッシャおよびスプリングワッシャは取付ボルト31の頭部31aと第2片部2bとの間に配置される。
【0036】
最後に、第2部材51を第1部材11に組み合わせ、互いに重なった連結片13a,14a,53a,54aをネジ7(図3参照)で結合する。第2部材51は予め必要な長さに切断されており、上下の端面には、小口蓋56が取り付けられている(図2参照)。なお、第2部材51は、必ずしも第1部材11と同一の長さであるとは限らない。例えば、図2の例では、上階のマリオン1の第2部材51がスラブ8の前面を覆うように下方に延びており、従って、第1部材11よりも第2部材51が長い構成となっている。
【0037】
このように上記実施例の構成によれば、L字形金具等の取付構造物が外部に露出していない外観品質に優れたマリオン1を提供することができる。そして、従来のような下地柱が不要となるため、施工が容易であるとともに、材料や重量の点で有利である。
【0038】
次に、上記実施例で第1部材11および第2部材51として説明した2つのマリオン構成部材の組み合わせの例を図10に示す。上記実施例では、第1部材11と第2部材51の双方が取付レール17を具備しており、適宜な組み合わせが可能である。図10の(A)は、側壁の幅(ビル前後方向の寸法)が大きなマリオン構成部材(上記実施例の第1部材11)を2つ組み合わせたものである。(B)は、側壁の幅が大きなマリオン構成部材(上記実施例の第1部材11)と小さなマリオン構成部材(上記実施例の第2部材51)とを組み合わせたものであり、上述した実施例に相当する。(C)は、側壁の幅が小さなマリオン構成部材(上記実施例の第2部材51)を2つ組み合わせたものである。このように、2つの構成部材の組み合わせによって、大・中・小の3つのマリオン1を構成することができる。そして、いずれか一方のマリオン構成部材をマリオン取付ブラケット2を介してビルに固定することができる。
【0039】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば上記実施例では、汎用性を高めるために第1部材11と第2部材51の双方が取付レール17を具備しているが、取付構造としては第2部材51の取付レール17は不要である。なお、請求項における「水平面」とは厳密な意味ではなく概ね水平方向に延びていればよく、同様に「直角」とは、取付面が多少傾いている場合には、マリオンが垂直となるようにある程度の範囲を含むものとなり得る。
【符号の説明】
【0040】
1…マリオン
2…マリオン取付ブラケット
2a…第1片部
2b…第2片部
3…ファスナー
4…アンカーボルト
6…取付孔
11…第1部材
17…取付レール
18…脚部
21…スライド溝
31…取付ボルト
32…ナット部材
34…切欠部
35…係合溝
51…第2部材
【要約】
【課題】L字形金具等の取付構造物が露出しなようにしつつ、下地柱を用いずにマリオン1をビルに固定する。
【解決手段】ビルの外壁面に設けられる装飾用のマリオン1は、アルミニウム合金を用いてそれぞれ断面コ字形に押出成形した第1部材11と第2部材とから構成される。第2部材51の主壁の内側面に一対の取付レール17を備え、ファスナー3の長方形のナット部材32がスライド溝21を通して内部に挿入される。ナット部材32を横向き姿勢として、マリオン取付ブラケット2の第2片部2bにおける略U字形をなす取付孔6に嵌め込んだ後に取付ボルト31を締め付けることで、第1部材11が固定される。第2部材は、第1部材11と側縁同士を重ねてネジ止めすることで第1部材11に組み合わせられる。
【選択図】図7
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