(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】包装材料およびそれを用いた包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20230127BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230127BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230127BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230127BHJP
B65D 81/28 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/18 F
B32B27/30 101
B32B27/32 C
B65D81/28 B
(21)【出願番号】P 2018078020
(22)【出願日】2018-04-13
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000166649
【氏名又は名称】五洋紙工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100076820
【氏名又は名称】伊丹 健次
(72)【発明者】
【氏名】小西 優也
(72)【発明者】
【氏名】川原 央
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3020994(JP,U)
【文献】特開2014-224058(JP,A)
【文献】特開2013-166596(JP,A)
【文献】特開平11-170444(JP,A)
【文献】実開平05-026839(JP,U)
【文献】登録実用新案第3023133(JP,U)
【文献】特開2010-285417(JP,A)
【文献】特開平9-66945(JP,A)
【文献】特開2004-250009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 27/18
B32B 27/30
B32B 27/32
B65D 81/28
B65D 30/00-33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防ダニ剤を含有するポリオレフィン系樹脂または軟質塩化ビニル樹脂から構成される表面層を含む、包装材料であって、
該表面層、
熱可塑性ポリエステル樹脂から構成される中間層、およびポリエチレン樹脂からなる内側層がこの順で積層されており、
該表面層が最も外側の層を構成している、包装材料。
【請求項2】
前記防ダニ剤が、前記表面層の全重量に対して0.1重量%から40重量%の割合で含有されている、請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
前記防ダニ剤がカルボン酸エステル系防ダニ剤である、請求項1または2に記載の包装材料。
【請求項4】
前記カルボン酸エステル系防ダニ剤がミリスチン酸イソプロピルである、請求項3に記載の包装材料。
【請求項5】
前記表面層と前記中間層との間にアンカーコート層が設けられている、請求項1から4のいずれかに記載の包装材料。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の包装材料から構成されており、かつ該包装材料の前記表面層が最も外側に配置されている、包装容器。
【請求項7】
食品または衣料品を包装するために使用される、請求項6に記載の包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料およびそれを用いた包装容器に関し、より詳細には、包装内容物へのダニの侵入を効果的に低減することのできる、包装材料およびそれを用いた包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
寄生虫の1種であるダニには、2000の種が存在し、これらは、戸外で生息する屋外ダニ(山ダニ)と、建物内に生息する屋内ダニ(家ダニ)とに大別される。このようなダニの死骸や糞はアレルゲンの1種であることが知られており、アレルギー体質のヒトにとっては屋外ダニや屋内ダニのいずれについても注意が必要であるといわれている。
【0003】
一方、衣料品や食品の包装に関して、ダニなどの害虫による製品への侵入被害が深刻である。例えば、衣料品や食品の製造分野では、消費者に対してダニを媒介するアレルギー疾患の発生の可能性が懸念されている。ここで、例えば、衣料品については殺虫剤の使用による対策が考えられるが、食品についてはその使用は制限を受ける。
【0004】
特に、小麦粉などの食品については、ダニの侵入を防止することが所望されている。例えば、日本国内において屋内ダニには、およそ20~30種類が生息するといわれている。こうした屋内ダニのうちアレルゲン性のダニであると考えられているチリダニ類(ヒョウヒダニ)は、家庭内ダストにまぎれて生息している。
【0005】
そのため、包装紙などの包装材料に包まれた小麦粉製品が家庭内で保管される際、特に一部が使用され、残りが次の使用まで保管されるような場合は、屋内ダニが包装材料の表面を這い登り、開封部分から内部に侵入することがある。このようにしてダニに汚染された小麦粉を調理に使用すると、ダニ自体は加熱等により死滅しても、残留する死骸や糞がそのままヒトの体内に入り込み、アレルギー疾患を引き起こすことが懸念されている。
【0006】
これに対し、例えば、雰囲気改良物質として、脂溶性揮発物質の防ダニ剤を含有するスチレン系エラストマーからなる表面層を、ポリオレフィン系樹脂を含む表面層で被覆した熱接着用多層テープが提案されている(特許文献1)。この多層テープは、食品包装や衣料品包装の包装体に熱接着させて使用されるものである。
【0007】
しかし、当該技術のみでは、保管小麦粉へのダニの侵入を低減させることは充分であるとはいえず、さらなる技術開発が所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、食品や衣料品等を収容する包装容器に対してダニの汚染および侵入をより効果的に防止することのできる包装材料およびそれを用いた包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、防ダニ剤を含有するポリオレフィン系樹脂または軟質塩化ビニル樹脂から構成される表面層を含む、包装材料であって、
該表面層、熱可塑性ポリエステル樹脂から構成される中間層、およびポリエチレン樹脂からなる内側層がこの順で積層されており、
該表面層が最も外側の層を構成している、包装材料である。
【0011】
1つの実施形態では、上記防ダニ剤は、上記表面層の全重量に対して0.1重量%から40重量%の割合で含有されている。
【0012】
1つの実施形態では、上記防ダニ剤はカルボン酸エステル系防ダニ剤である。
【0013】
さらなる実施形態では、上記カルボン酸エステル系防ダニ剤はミリスチン酸イソプロピルである。
【0014】
1つの実施形態では、上記表面層と上記中間層との間にアンカーコート層が設けられている。
【0015】
本発明はまた、上記包装材料から構成されており、かつ該包装材料の上記表面層が最も外側に配置されている、包装容器である。
【0016】
1つの実施形態では、本発明の包装容器は、食品または衣料品を包装するために使用される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、食品や衣料品等を収容する包装容器へのダニの侵入を効果的に低減することができる。これにより、当該食品や衣料品等を通じて、使用者が、ダニを媒介するアレルギー疾患を発生するリスクを低減させることができる。さらに、本発明の包装材料は、任意の大きさの包装容器に成形することができ、かつ成形された包装容器は、繰り返し使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の包装材料の例を示す概略断面図であって、(a)は表面層単独で構成される本発明の包装材料の一例を示す概略断面図であり、そして(b)は当該表面層を含む積層体として構成される本発明の包装材料の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図1の(b)に示す包装材料を用いて作製された本発明の包装容器の一例を示す図であって、(a)は当該包装容器の模式図であり、そして(b)は、(a)に示す包装容器の作製のために、
図1の(b)に示す本発明の積層体からなる包装材料を2枚配置した状態を説明するための模式図である。
【
図3】本発明の包装容器の他の例を説明するための図であって、(a)は、
図2の(b)に示す包装材料を用いて作製された本発明の包装容器の他の例を示す下方斜視図であり、そして(b)は当該包装容器に小麦粉製品を収容した状態を説明するための模式図である。
【
図4】実施例1~3で作製された包装容器、ならびに比較例1および2の包装容器に対するダニ忌避テスト(試験例1)のために使用した試験容器を模式的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳述する。
【0020】
(包装材料)
本発明の包装材料は、防ダニ剤を含有する、ポリオレフィン系樹脂または軟質塩化ビニル樹脂から構成される表面層を含む。
【0021】
本発明における包装材料は、種々の製品を包囲することにより、例えば、空気および水分に対して外部との遮断を可能にするものであり、光透過性の有無は特に限定されない。本発明における包装材料は、例えば、透明、半透明、または不透明のいずれのものであってもよい。
【0022】
本発明の包装材料を構成し得るポリオレフィン系樹脂は、例えば、比較的異物の含有や付着が敬遠される食品、衣料品、医薬品、電子部品等の分野にて使用可能なポリオレフィンおよびその変性物である。ポリオレフィン系樹脂の例としては、エチレンの単独重合体、エチレン成分を50重量%を超えて含有するエチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンの単独重合体、プロピレン成分を50重量%を超えて含有するプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体、ブテンの単独重合体、ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエンの単独重合体または共重合体などが挙げられ、プロピレンの単独重合体、およびプロピレン成分を50重量%を超えて含有するプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂中には、共重合成分としてオレフィン系単量体以外の単量体成分が含有されていてもよい。このような単量体成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0024】
共重合成分としてオレフィン系単量体以外の単量体成分が含有されているポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、アイオノマー、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。包装材料自体の折り畳みやロールによる保管が可能であることを考慮すると、ポリオレフィン系樹脂は軟質なものであることが好ましい。これらは単独で、または必要に応じて組み合わせて使用され得る。
【0025】
本発明の包装材料を構成し得る軟質塩化ビニル樹脂は、可塑剤が予め配合された塩化ビニル樹脂であり、予め可塑剤を含有していない硬質塩化ビニル樹脂とは区別される。軟質塩化ビニル樹脂は、必要に応じて上記ポリオレフィン系樹脂と組み合わせて使用され得る。
【0026】
本発明の包装材料を構成する防ダニ剤は、例えば、屋外ダニおよび/または屋内ダニに対して、忌避効果(以下「防ダニ効果」ともいう)を奏するもの全般を指していう。防ダニ剤の例としては、有機系防ダニ剤、無機系防ダニ剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。忌避効果に優れるとの理由から、有機系防ダニ剤が好ましい。当該有機系防ダニ剤は、例えば揮発性成分を含有し、当該揮発成分が空間内に揮発することによってダニ忌避効果を奏することができるものもある。
【0027】
このような有機系防ダニ剤としては、例えば、ファルネシルアセトン、ヒノキチオール、アレスリン、テトラメスリン、レスメトリン、フェノトフラメトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、トラロメスリン、エンペントリン、DDVP(ジクロルボス)、フェニチオン、テメホス、ハッカ油の他、ミリスチン酸イソプロピルなどのカルボン酸エステル系防ダニ剤、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。特に人体に対する安全性が良好であり、かつ汎用性に優れているという理由から、カルボン酸エステル系防ダニ剤が好ましく、ミリスチン酸イソプロピルがより好ましい。このようなカルボン酸エステル系防ダニ剤は、「マルカマイト」という商標で大阪化成株式会社より市販されている。
【0028】
防ダニ剤の含有量は、例えば表面層の全重量に対して設定される。本発明において、防ダニ剤は、包装材料を構成する表面層の全重量に対して、好ましくは0.1重量%~40重量%である。表面層に含まれる防ダニ剤の量が0.1重量%を下回ると、後述するような包装容器に成形した際に防ダニ効果が充分に発揮されない場合がある。表面層に含まれる防ダニ剤の量が40重量%を上回ると、防ダニ効果の実質的に変動しないだけでなく、使用の際に染み出したり、成形性を低下させる場合がある。
【0029】
なお、本発明においては、防ダニ剤の含有量を上記範囲のうち、より低濃度側にシフトしても良好な防ダニ効果を得ることができる。この観点において、本発明における、防ダニ剤の含有量は、包装材料を構成する表面層の全重量に対して、1つの実施形態では0.1重量%~10重量%であり、他の実施形態では0.15重量%~5重量%であり、さらに別の実施形態では0.2重量%~7.5重量%である。
【0030】
本発明において、防ダニ剤は、上記ポリオレフィン系樹脂または軟質塩化ビニル樹脂とともに例えば、混練することによって混合されていてもよく、あるいはポリオレフィン系樹脂または軟質塩化ビニル樹脂の層上に吸着、担持、結合などの様式で配置されていてもよい。なお、後者の様式で防ダニ剤が配置される場合、防ダニ剤は、包装材料の最外面(すなわち、外気と接する面)側に配置されることが好ましい。
【0031】
本発明において、表面層は上記防ダニ剤による効果を阻害しない範囲において、その他の添加剤を含有していてもよい。
【0032】
このような添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤(例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、および/またはリン系酸化防止剤);紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤および/またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤);帯電防止剤(例えば、アニオン系活性剤、カチオン系活性剤、非イオン系活性剤、および/または両性活性剤);透明化剤(例えば、カルボン酸金属塩、ソルビトール類、および/またはリン酸エステル金属塩類);滑剤(例えば、炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤、高級アルコール系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、金属石ケン系滑剤、および/またはエステル系滑剤);難燃剤(例えば、有機系難燃剤および/または無機系難燃剤);および可塑剤(例えば、エポキシ化植物油、フタル酸エステル類、および/またはポリエステル系可塑剤);ならびにそれらの組み合わせ;が挙げられる。本発明において、表面層に含有され得る上記添加剤の含有量は、特に限定されず、当業者によって任意の量が選択され得る。
【0033】
本発明の包装材料において、上記ポリオレフィン系樹脂または軟質塩化ビニル樹脂の樹脂成分と、防ダニ剤との間には適度な相溶性があることが好ましい。これらの間の相溶性が不充分であれば、防ダニ剤が樹脂成分となじまず、包装材料としてのフィルム化が困難となる、あるいはフィルム化することができたとしても、粘つきを生じて包装内容物との所望でない付着を引き起こすおそれがあるからである。他方、これらの間の相溶性が良好すぎると、包装材料としてフィルム状に成形することができたとしても、防ダニ剤が樹脂成分から放出することができないため、所望の防ダニ効果が充分に達成されないおそれがある。本発明においては、このような相溶性は、例えば、使用する忌避剤により処方は異なるが、ベースとなる樹脂、オレフィン系の単量体、または共重合体の選定、および忌避剤の添加量により、調整することができる。
【0034】
図1は、本発明の包装材料の例を示す概略断面図である。
【0035】
図1の(a)に示すように、本発明の包装材料100は表面層110単独で構成される単層フィルムの形態を有していてもよい。本発明の包装材料が、例えば、
図1の(a)に示すような単層フィルムの形態を有する場合、1つの実施形態では、表面層110の厚みは10μm~100μmの範囲内に設定される。
【0036】
あるいは、本発明の包装材料は、例えば、
図2の(b)に示すように当該表面層110を含む積層フィルムの形態を有していてもよい。なお、本発明の包装材料が積層フィルムの形態を有している場合、上記表面層は、含有する防ダニ剤による防ダニ効果を発揮し易いとの理由から、包装材料の最も外側の層を構成していることが好ましい。
【0037】
ここで、
図2の(b)を参照すると、包装材料200は、上記表面層110、中間層120、および内側層130から構成される3層がこの順で積層されている。
【0038】
図2の(b)において、中間層120は、例えば包装材料200自体に充分な強度を提供するために設けられている。中間層120は、例えば、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂)、ポリアミドなどの樹脂から構成されている。これらの樹脂は、水蒸気やガスに対するバリア性に優れている。なお、表面層110と中間層120との間には、両方の層の密着性を高めるために、図示しないアンカーコート層が設けられていてもよい。
【0039】
さらに、
図2の(b)において、内側層130は、例えば包装内容物と直接接触し得る面を形成するとともに、後述するような袋状の包装容器を成形する際に、包装材料200のシーラント層として機能し得る層である。内側層130は、例えば、ポリエチレン樹脂(例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LPDE)樹脂、および低密度ポリエチレン(LPDE)樹脂)、エチレンの単独重合体、エチレン成分を50重量%を超えて含有するエチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体、ポリプロピレン樹脂、プロピレン成分を50重量%を超えて含有するプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体などの樹脂から構成されている。
【0040】
中間層120および内側層130もまた、必要に応じて上述したような添加剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、透明化剤、滑剤、難燃剤、および可塑剤、ならびにそれらの組み合わせ)を含有していてもよい。本発明において、中間層120および内側層130に含有され得る上記添加剤の含有量は、特に限定されず、当業者によって任意の量が選択され得る。
【0041】
本発明の包装材料が、例えば、
図2の(b)に示すような3層からなる積層フィルムの形態を有する場合、表面層110、中間層120、および内側層130の厚みはそれぞれ当業者によって適切に設定され得る。当該積層フィルムの形態を有する場合、1つの実施形態では、表面層110の厚みは10μm~30μmの範囲内に設定され、中間層120の厚みは12μm~75μmの範囲内に設定され、そして内側層130の厚みは10μm~60μmの範囲内に設定される。
【0042】
本発明の包装材料は、上記単層フィルムの形態を有する場合(
図1の(a))または上記積層フィルムの形態を有する場合(
図1の(b))のいずれにおいても、当該分野において周知の手段を用いて作製することができる。また、上記積層フィルムを得る方法は、特に限定されないが、押出ラミネートが好ましく、共押出ラミネートがより好ましい。採用され得る積層条件については当業者によって適切に設定され得る。
【0043】
(包装容器)
次に、本発明の包装容器について説明する。
【0044】
本発明の包装容器は、上記本発明の包装材料から構成されている。
【0045】
図2は、
図1の(b)に示す包装材料(積層フィルム)を用いて作製された本発明の包装容器の一例を示す図である。
【0046】
図2の(a)に示すように、本発明の包装容器300は、2枚の包装材料200を重ね合わせ、3辺の貼着部310,320,330を貼着して、1つの開口部305が形成されるように構成されている。貼着部310,320,330は、例えばヒートシールによって貼着されているが、本発明は必ずしもそれに限定されるものではなく、当該分野において周知の接着剤を用いて貼着されていてもよい。
【0047】
さらに本発明の包装容器300は、開口部305の近傍にはジッパー350a,350aが開口部305の全周にわたって設けられており、開口部305からのダニの侵入を物理的に阻止するだけでなく、包装容器300の外部からの湿気や外気(酸素等)も遮断する役割も果たす。
図2の(a)では、2つのジッパー350a,350aが設けられているが、本発明はこのような構成にのみ限定されない。例えば、1つまたはそれ以上のジッパーが設けられていてもよい。
【0048】
包装容器300は、包装を行う内容物(包装内容物)の種類や大きさに応じて、任意の大きさのものが設計されている。
【0049】
本発明の包装容器300は、例えば、以下のようにして作製される。
【0050】
まず、
図2の(a)に示すように、2枚の(例えば矩形の)包装材料200が、各内側面130(すなわちシーラント層)が対向するように重ね合わせて配置される(なお、このとき、包装材料200の1辺には、ジッパー(図示せず)が予め形成されている)。このような重ね合わせによって、2枚の包装材料200に含まれる2つの表面層110はいずれも最も外側に位置することになる。
【0051】
次いで、重ね合わせた2枚の包装材料200のうち、開口部305を形成する、ジッパーが設けられた1辺を除く残りの3辺について、例えばヒートシールによる貼着が行われる。
【0052】
このようにして、
図2の(a)に示される本発明の包装容器300が袋状の容器として作製される。
【0053】
本発明の包装容器は他の形態を有していてもよい。
【0054】
図3は、本発明の包装容器の他の例を説明するための図である。
【0055】
図3の(a)に示すように、本発明の包装容器400は、上記包装材料を用いて底部にマチ410が設けられた袋状の形態を有していてもよい。マチ410を有することにより、本発明の包装容器400は縦置きの際の安定性が向上する。さらに、
図3の(a)に示す包装容器400では、底部のマチ410に対して、開口部405およびジッパー450a,450bが最も離れた場所に設けられていることになる。その結果、ダニは、仮に開口部405を通じて内部への侵入を試みることがあったとしても、マチ410からより長い距離を移動することとなり、その際に表面層に含まれる防ダニ剤による防ダニ効果が一層効果的に機能し得る。
【0056】
図3の(a)に示す包装材料300は、例えば、
図2の(a)に示す包装容器300の底部側の辺330を押し上げ、底部両端をそれぞれ内側に折り込むことによって作製することができる。
【0057】
本発明の包装容器は、ダニの発生や付着からの保護が求められる製品500を、例えば一時的に収容して保管するために使用することができる。このような製品の例としては、食品、飲料、衣料品、動物飼料、および医薬品が挙げられる。
【0058】
食品の例としては、小麦粉、米粉、大麦粉、はったい粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、コーンスターチ、稗粉、きな粉、蕎麦粉、片栗粉、タピオカ粉、ジャガイモ粉、栗粉、ドングリ粉、ココナッツ粉などの穀粉;小麦、米、大麦、ライ麦、オーツ麦、ハト麦、キビ、アワ、ヒエ、トウモロコシ、大豆、小豆、緑豆、インゲン豆、落花生、エンドウ豆、ソラ豆、ヒヨコ豆、蕎麦などの穀物;クミン、コショウ、コリアンダー、サフラン、山椒、シソ、シナモン、ショウガ、セージ、タイム、唐辛子、ナツメグ、ミント、マスタード、ローズマリー、ローリエなどの香辛料;コーヒー豆、紅茶、緑茶、玄米茶、ウーロン茶、プーアル茶、麦茶、ココアが挙げられる。
【0059】
衣料品の例としては、店舗販売展示用衣料品、消費者販売前の物流または倉庫保管に付される衣料品、ドライクリーニングが施された衣料品、家庭での衣替えに伴う保管用衣料品などが挙げられる。
【0060】
動物飼料の例としては、ペットフード、家畜・家禽用飼料、養殖魚用飼料などが挙げられる。
【0061】
医薬品の例としては、種々の疾患の治療または予防のために製造または調剤された医薬品、家庭用医薬品(常備薬)、漢方薬などが挙げられる。
【0062】
本発明の包装容器400はまた、
図3の(b)に示すように、上記食品、飲料、衣料品、動物飼料、または医薬品を所定の容器または袋内に充填した製品500(例えば、未開封製品および残存物を一時的に保管するための開封製品のいずれをも含む)をそのまま収納することができる。収納した包装内容物が必要な際は、ジッパー450a,450bを開放して取り出して使用し、再び包装容器400内に戻して保管することもできる。さらに、本発明の包装容器は、上記表面層に含まれる防ダニ剤の防ダニ効果が維持される間は繰り返し使用することも可能である。特に積層体からなる包装容器は、強度に優れているので繰り返し使用に好適である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0064】
(実施例1:単層フィルムを用いた包装容器の作製)
高密度ポリエチレン樹脂(京葉ポリエチレン株式会社製G1801)95重量部に、脂肪酸カルボン酸エステル系防ダニ剤(大阪化成株式会社製マルカマイトMS15-PP;薬剤15重量%配合ポリプロピレンマスターバッチ)を5重量部の割合で配合し、防ダニ剤配合の高密度ポリエチレン樹脂混合物を得た。そして、この混合物を用いてT-ダイ押出機によって平均厚み60μmの高密度ポリエチレン単層フィルムを得た。この単層フィルムをジッパー部材とヒートシール加工することにより、一重ジッパーを設け、袋状容器を作製した。得られた袋状容器のサイズは、ジッパー下(収容部)が273mm×268mmであった。
【0065】
(実施例2:単層フィルムを用いた包装容器の作製)
高密度ポリエチレン樹脂の代わりに、ポリプロピレン樹脂(プライムポリプロピレン株式会社製F109V)95重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてジッパー下(収容部)が実施例1と同一サイズの袋状容器を作製した。
【0066】
(実施例3:積層フィルムを用いた包装容器の作製)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリプロピレン株式会社製F109V)95重量部に、脂肪酸カルボン酸エステル系防ダニ剤(大阪化成株式会社製マルカマイトMS15-PP;薬剤15重量%配合ポリプロピレンマスターバッチ)を5重量部の割合で配合し、防ダニ剤配合のポリプロピレン樹脂混合物を得た。
【0067】
他方、平均厚み38μmのポリエチレンテレフタレートの2軸延伸フィルム(帝人株式会社製テイジンテトロンフィルム G2C)に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(出光ユニテック株式会社製ユニラックス)60μmをドタイラミネート加工することにより積層フィルムを得た。この積層フィルムのポリエチレンテレフタレートが配置された層の表面にアンカーコート剤(ユニチカ株式会社製アローベースDB4010J2)を平均厚み2μmとなるように配置しながら、上記で得られた防ダニ剤配合のポリプロピレン樹脂混合物を平均厚み30μmとなるように、T-ダイ押出機によって押出ラミネートを施して、最終的に全体の平均厚みが130μmである積層フィルムを得た。
【0068】
単層フィルムの代わりにこの積層フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてジッパー下(収容部)が実施例1と同一サイズの袋状容器を作製した。
【0069】
(比較例1:単層フィルムを用いた包装容器の作製)
防ダニ剤配合の高密度ポリエチレン樹脂混合物から得られた単層フィルムの代わりに、防ダニ剤を含有していないポリプロピレン樹脂でなる単層フィルム(平均厚み60μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ジッパー下(収容部)が実施例1と同一サイズの袋状容器を作製した。
【0070】
(比較例2:市販ポリエチレン製包装袋)
防ダニ剤配合の高密度ポリエチレン樹脂混合物から得られた単層フィルムから袋状容器を作製する代わりに、二重ジッパーが設けられたポリエチレン製包装袋(旭化成ホームプロダクツ株式会社製Ziploc)(ジッパー下(収容部)は実施例1のものと同様)を用いた。
【0071】
(試験例1:ダニ忌避テスト(1))
図4に示すように、上方に通気シート708を取り付けて内部と外部との通気性を保持した内容器706(240mm×330mm×110mm)に、実施例1~3、ならびに比較例1および2で作製した包装容器400をそれぞれ載置した(なお、実施例1~3、ならびに比較例1および2で作製した包装容器400には、それぞれ市販の小麦粉5gまたはフスマ(オリエンタル酵母工業株式会社製MF粉末)5gが予め充填された包装容器500を収納し、包装容器400の各ジッパーは約1/3を開放した(約2/3を閉じていた)。)。さらに内容器706の内側底部には、予めダニの個体密度が38,890頭/10gであることを確認したダニの飼育培地712(10g)を均一に配置した。さらに、この内容器706を、湿度を保つため予め所定量の飽和食塩水710を入れた半透明の外容器702(300mm×380mm×130mm)内に配置し、半透明の蓋704を被せて、25℃で27日間保管した。この保管の間、昼間は日光が入る明条件とし、かつ夜間は暗条件とした。
【0072】
保管開始から28日後に、内容器706内の包装容器500を取り出して、飽和食塩水浮遊法による包装容器中に侵入したダニの個体数をカウントした。比較例1および2の包装容器を除き、このような保管からカウントまでの操作を2回行って平均値を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0073】
(試験例2:ダニ忌避テスト(2))
各包装容器のジッパーを完全に閉じたこと以外は、試験例1と同様にして各包装容器の保管を行い、保管開始から28日後に包装容器中に侵入したダニの個体数をカウントした。比較例1および2の包装容器を除き、このような保管からカウントまでの操作を2回行って平均値を算出した。得られた結果を表2に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
表1から明らかなように、実施例1~3で作製した包装容器を用いると、比較例1および2の包装容器と比較して、ダニの侵入を著しく低下させることができるとわかる。この傾向は、誘引剤となる小麦またはフスマの種類に関わらず、同様のものであった。また、実施例1~3の中でも、積層フィルムの形態でなる包装材料から作成した実施例3の包装容器が最も効果的にダニの侵入を抑えていた。
【0077】
また、表2の結果から明らかなように、包装容器のジッパーを完全に閉じても、比較例1および2の包装容器では比較的多数のダニの侵入が認められた。これに対し、実施例1~3の包装容器では、ダニがほとんど侵入することができず、防ダニ剤が有効に機能していることがわかる。また、上記表1と同様に、実施例1~3の中でも、積層フィルムの形態でなる包装材料から作成した実施例3の包装容器が最も効果的にダニの侵入を抑えていた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、包装容器内へのダニの侵入を効果的に抑制することができる。このため、ダニを媒介するアレルギー疾患の発症を予防するだけでなく、包装内容物に対する衛生上の安心をも使用者に提供することができる。本発明は、例えば、食品分野、アパレル分野、医薬品分野における各種製品の保管および収納に有用である。
【符号の説明】
【0079】
100,200,300 包装材料
110 表面層
120 中間層
130 内側層
305,405 開口部
310,320,330 貼着部
350a,350b,450a,450b ジッパー
410 マチ