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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】セパレータを用いない電極材の巻回装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230127BHJP
   B65H 19/28 20060101ALI20230127BHJP
   B65H 19/26 20060101ALI20230127BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20230127BHJP
   H01G 13/02 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
H01M10/04 W
B65H19/28 Z
B65H19/26
H01G13/00 381
H01G13/02 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018163000
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020035701
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】513109566
【氏名又は名称】株式会社皆藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】皆藤 公輔
(72)【発明者】
【氏名】杉山 正芳
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-138076(JP,A)
【文献】特開2003-017111(JP,A)
【文献】特開2003-059525(JP,A)
【文献】特開2011-253701(JP,A)
【文献】特開2014-154457(JP,A)
【文献】特開2015-041574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/058-10/0587
B65H 19/28
B65H 19/26
H01G 13/00
H01G 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いずれか一方又は両方の片面若しくは両面に、絶縁被膜が形成された帯状の正電極シートと負電極シートを重ね合わせて巻回して巻回体を製造する巻回装置であって、
巻取り開始位置にある巻芯と、
巻取り終了位置にある巻芯と、
前記巻取り開始位置にある巻芯を前記巻取り終了位置に移動させる移動手段と、
両位置にある巻芯を結ぶ帯状の正電極シート又は負電極シートのいずれか一方を把持して並行して前記巻取り終了位置から前記巻取り開始位置にある巻芯側に移動する第1把持装置と、
前記第1把持装置と前記巻取り終了位置にある巻芯との間に配設された切断装置と
を備えたセパレータを用いない電極材の巻回装置。
【請求項2】
いずれか一方又は両方の片面若しくは両面に、絶縁被膜が形成された帯状の正電極シートと負電極シートを重ね合わせて巻回して巻回体を製造する巻回装置であって、
巻取り開始位置にある巻芯と、
巻取り終了位置にある巻芯と、
前記巻取り開始位置にある巻芯を前記巻取り終了位置に移動させる移動手段と、
両位置にある巻芯を結ぶ帯状の正電極シート又は負電極シートのいずれか一方を把持して並行して前記巻取り開始位置から前記巻取り終了位置にある巻芯側に移動する第2把持装置と、
前記第2把持装置と前記巻取り開始位置にある巻芯との間に配設された切断装置と
を備えたセパレータを用いない電極材の巻回装置。
【請求項3】
いずれか一方又は両方の片面若しくは両面に、絶縁被膜が形成された帯状の正電極シートと負電極シートを重ね合わせて巻回して巻回体を製造する巻回装置であって、
巻取り開始位置にある巻芯と、
巻取り終了位置にある巻芯と、
前記巻取り開始位置にある巻芯を前記巻取り終了位置に移動させる移動手段と、
両位置にある巻芯を結ぶ帯状の正電極シート又は負電極シートのいずれか一方を把持して並行して前記巻取り開始位置にある巻芯側に移動する第1把持装置と、前記巻取り終了位置にある巻芯側に移動する第2把持装置と、
前記第1把持装置と前記第2把持装置との間に配設された切断装置と
を備えたセパレータを用いない電極材の巻回装置。
【請求項4】
前記絶縁被膜は、電気的に短絡せず且つイオンが通隙間が空いている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のセパレータを用いない電極材の巻回装置。
【請求項5】
前記巻取り終了位置の巻芯の近傍部に、該巻芯に巻き取られた正電極シート又は負電極シートの端部を押さえる把持ローラを備えた請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のセパレータを用いない電極材の巻回装置。
【請求項6】
前記移動手段は、自身の軸心を中心に回転させられる回転盤である請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のセパレータを用いない電極材の巻回装置。
【請求項7】
前記巻芯に巻回された巻回体の周囲を固定する接着テープを備えた請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のセパレータを用いない電極材の巻回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータを用いない電極材の巻回装置に関し、特に新たに開発された電極シートにより二次電池等に用いる巻回体を製造するための巻回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、活物質が塗布された帯状の正電極材、負電極材の間に帯状の絶縁体からなる2枚のセパレータを交互に重ね合わせて絶縁した状態で巻芯に巻き取り、巻き取った巻回体を電解液に浸漬して二次電池等を製造している。
【0003】
図10に示すように、この巻回体を製造する巻回装置100には、正電極材102が巻き取られた原反104、セパレータ106が巻き取られた原反108、負電極材110が巻き取られた原反112、及びセパレータ114が巻き取られた原反116がそれぞれ所定位置に配設され、更に自身の中心軸を回転軸として回転させられる回転盤118が配設されている。回転盤118には、その周方向に等間隔で3か所に巻芯120が配設され、巻芯120は回転盤118の回転と共に、その取付け位置を移動する。巻芯120は、回転盤118の回転軸芯の方向にスライドし、回転盤118から突出するように出入りすることができ、更にそれぞれの軸心で回転するように構成されている。なお、符号124は、巻芯120に巻き取られたセパレータ106,114の端部を固定するための接着テープ122を巻き取った原反である。
【0004】
かかる構成において、原反108、116から繰り出されたセパレータ106、114が重ね合わせられてローラ126を介して巻芯120に送られ、これらセパレータ106,114の先端部が位置S1で巻芯120に設けられたスリットに挟み込まれる。巻芯120にセパレータ106,114を巻き付けた後、原反104から繰り出された帯状の正電極材102の先端を巻芯120とセパレータ106の間に挟み、原反112から繰り出された帯状の負電極材110の先端をセパレータ106とセパレータ114の間に挟み、これら正電極材102、セパレータ106、負電極材110及びセパレータ114の積層体を巻芯120に巻き付ける。これら積層体を巻芯120に巻き付けながら、位置S1から位置S2に回転盤118を回転させ、所定の長さを巻いた時点で、正電極材102と負電極材110を切断し、その後、正電極材102と負電極材110の切断端部を十分覆うところでセパレータ106、114を同時に切断する。続いて、接着テープ122で少なくともセパレータ106、114の切断端部を覆うように接合して、巻回体128を製造する。得られた巻回体128は回転盤118を回転させ、位置S3で巻芯120を回転盤118の表面から引き下げ、巻回体128から巻芯120を抜き取り、巻回体128を取り出す。
【0005】
以上の動作を繰り返すことにより巻回体128を製造するのであるが、セパレータ106,114は正電極材102と負電極材110を絶縁する役割を担うだけでなく、正電極材102と負電極材110を巻き始め、巻き終わりにおいて、電極端部での短絡や位置ずれを防ぎ、また電極材を支持する等の重要な役割を果たしている。
【0006】
ところで、二次電池等は電極間が狭いほど入出力と容量を同時に高めることができることから、セパレータの薄型化が研究されてきたが、この度、電極材を樹脂製のナノファイバー膜で被覆した二次電池が開発され提案された(非特許文献1)。この二次電池はセパレータを必要とせず、小型で容量の大きい電池が提供できるものと期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】東芝 プレスリリース http://engineer.fabcross.jp/archeive/180605_toshiba.html http://www.toshiba.co.jp/about/press/2018_06/pr_j0401.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、セパレータを用いないでどのようにして電極材を巻いて巻回体を作るのかについての提案はなされていない。すなわち、セパレータは巻回体の製造時において、正電極材と負電極材とを支持して、ガイドする等の役割も果たしている。連続して巻回体を生産する時に正電極材と負電極材を切断する必要が生じるが、セパレータがないと、ナノファイバー膜で被覆された正電極シートや負電極シートの端部が垂れ下がる等により、端部の位置決めができず、位置ずれが生じる恐れがある。なお、セパレータを用いないで電極材を巻いて巻回体を製造する巻回装置は、素材がなかったため、そのような装置はなかった。
【0009】
上記した問題に鑑み、本発明の課題は、セパレータを用いないで電極材を巻回して巻回体を製造するとき、巻回体の巻き始めと巻き終わりにおいて、正電極シートと負電極シートの端部が位置ずれしないようにする巻回装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、第1発明は、いずれか一方又は両方の片面若しくは両面に、絶縁被膜が形成された帯状の正電極シートと負電極シートを重ね合わせて巻回して巻回体を製造する巻回装置であって、
巻取り開始位置にある巻芯と、巻取り終了位置にある巻芯と、前記巻取り開始位置にある巻芯を前記巻取り終了位置に移動させる移動手段と、両位置にある巻芯を結ぶ帯状の正電極シート又は負電極シートのいずれか一方を把持して並行して前記巻取り終了位置から前記巻取り開始位置にある巻芯側に移動する第1把持装置と、前記第1把持装置と前記巻取り終了位置にある巻芯との間に配設された切断装置とを備えたことにある。
【0011】
また、かかる課題を解決するために、第2発明は、いずれか一方又は両方の片面若しくは両面に、絶縁被膜が形成された帯状の正電極シートと負電極シートを重ね合わせて巻回して巻回体を製造する巻回装置であって、
巻取り開始位置にある巻芯と、巻取り終了位置にある巻芯と、前記巻取り開始位置にある巻芯を前記巻取り終了位置に移動させる移動手段と、両位置にある巻芯を結ぶ帯状の正電極シート又は負電極シートのいずれか一方を把持して並行して前記巻取り開始位置から前記巻取り終了位置にある巻芯側に移動する第2把持装置と、前記第2把持装置と前記巻取り開始位置にある巻芯との間に配設された切断装置とを備えたことにある。
【0012】
さらに、かかる課題を解決するために、第3発明は、いずれか一方又は両方の片面若しくは両面に、絶縁被膜が形成された帯状の正電極シートと負電極シートを重ね合わせて巻回して巻回体を製造する巻回装置であって、
巻取り開始位置にある巻芯と、巻取り終了位置にある巻芯と、前記巻取り開始位置にある巻芯を前記巻取り終了位置に移動させる移動手段と、両位置にある巻芯を結ぶ帯状の正電極シート又は負電極シートのいずれか一方を把持して並行して前記巻取り開始位置にある巻芯側に移動する第1把持装置と、前記巻取り終了位置にある巻芯側に移動する第2把持装置と、前記第1把持装置と前記第2把持装置との間に配設された切断装置とを備えたことにある。
【0013】
これら第1発明から第3発明において、前記絶縁被膜は電気的に短絡せず且つイオンが通りやすい隙間が空いていること、前記巻取り終了位置の巻芯の近傍部に該巻芯に巻き取られた正電極シート又は負電極シートの端部を押さえる把持ローラを備えたこと、前記移動手段は自身の軸心を中心に回転させられる回転盤であること、前記巻芯に巻回された巻回体の周囲を固定する接着テープを備えたことにある。
【発明の効果】
【0014】
本第1発明に係る巻回装置によれば、巻取り終了位置の巻芯に巻き取られた巻回体から延び出す正電極シート又は負電極シートを、その巻芯の近傍部で第1把持装置により把持し、切断装置により切断する。巻取り終了位置の巻芯に巻き取られた巻回体から延び出す正電極シート又は負電極シートの切断端部は距離が短いので、巻取り終了位置の巻芯を回転させたとき、位置ずれを生じることなく巻回体に巻き取られる。一方、巻取り開始位置の巻芯から延び出す正電極シート又は負電極シートの切断端部は、距離が長いが、第1把持装置によって把持されているので、垂れ下がることはなく、第1把持装置が巻取り開始位置に戻されることにより、位置ずれを生じることなく巻取り開始位置の巻芯に巻き取られる。
【0015】
また、絶縁被膜で被覆された正電極シート又は負電極シートの一方で巻取りを開始するとともに、巻取りを終了することにより、他方の電極シートの切断端部は絶縁被膜で覆われるため、短絡が生じることはない。
【0016】
本第2発明に係る巻回装置によれば、巻取り終了位置の巻芯に巻き取られた巻回体から巻取り開始位置の巻芯に延び出す正電極シート又は負電極シートを、巻取り開始位置の巻芯の近傍部で第2把持装置により把持し、切断装置により切断する。巻取り開始位置の巻芯から延び出す正電極シート又は負電極シートの切断端部は、距離が短く、その巻芯のスリットにより把持されているので、端部が垂れ下がることはなく、また位置ずれが生じることもない。一方、巻取り終了位置の巻芯に巻き取られた巻回体から延び出す正電極シート又は負電極シートの切断端部は距離が長いが、第2把持装置によって把持されているので、垂れ下がることはなく、巻取り終了位置にある巻芯を回転させることにより第2把持装置を巻取り終了位置に引っ張ることができ、位置ずれを生じることなく巻回体に巻き取ることができる。
【0017】
また、絶縁被膜で被覆された正電極シート又は負電極シートの一方で巻取りを開始するとともに、巻取りを終了することにより、他方の電極シートの切断端部は絶縁被膜で覆われるため、短絡が生じることはない。
【0018】
本第3発明に係る巻回装置によれば、巻取り終了位置の巻芯に巻き取られた巻回体から巻取り開始位置の巻芯に延び出す正電極シート又は負電極シートを、第1把持装置と第2把持装置とにより中間部を把持する。第1把持装置と第2把持装置との間に設けられた切断装置により正電極シート又は負電極シートを切断したとき、2つの切断端部はそれぞれ第1把持装置と第2把持装置により把持されているので、垂れ下がったりすることはない。第1把持装置と第2把持装置により把持されている切断端部は、それぞれ上述したように巻取り開始位置と巻取り終了位置に移動させられることになり、一方は巻取り開始位置の巻芯のスリットに把持され、他方は巻取り終了位置の巻芯に巻き取られることになり、いずれも位置ずれを生じることはない。
【0019】
また、絶縁被膜で被覆された正電極シート又は負電極シートの一方で巻取りを開始するとともに、巻取りを終了することにより、他方の電極シートの切断端部は絶縁被膜で覆われるため、短絡が生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る巻回装置を示す正面図である。
図2】本発明に係る巻回装置に使用される正電極シート及び負電極シートを示す図であり、(a)、(b)はそれぞれ異なる実施例の平面図、(c),(d)、(e)はそれぞれ異なる実施例の断面図である。
図3】本発明に係る巻回装置の主要部を示す正面図である。
図4】同図(a)~(e)は、本発明に係る巻回装置の動作を説明するための正面図である。
図5】同図(a)~(d)は、図3に係る巻回装置の動作を説明するための正面図である。
図6】本発明に係る他の巻回装置の主要部を示す正面図である。
図7】同図(a)~(d)は、図6に係る巻回装置の動作を説明するための正面図である。
図8】本発明に係る更なる他の巻回装置の主要部を示す正面図である。
図9】同図(a)~(d)は、図8に係る巻回装置の動作を説明するための正面図である。
図10】従来の巻回装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る巻回装置10は、図1に示すように、鉛直方向に立設された作業パネル12に、帯状の正電極シート14がロール状に巻き取られた原反16と、帯状の負電極シート18がロール状に巻き取られた原反20と、帯状の接着テープ22がロール状に巻き取られた原反24と、これら正電極シート14と負電極シート18と接着テープ22を用いて巻回体26を製造する回転盤28とが所定位置に配置されている。
【0022】
正電極シート14と負電極シート18は、図2に示すように、アルミニウム、銅などの金属からなる薄板でシート状に加工した電極材30から作られる。これら金属シートからなる電極材30の表面には、絶縁被膜32が形成されている。絶縁被膜32は製造された巻回体26の用途によって、特性が異なる。例えば、巻回体26をコンデンサ等に用いる場合は、絶縁被膜32は誘電体として機能する素材であれば良い。
【0023】
あるいは、巻回体26を二次電池等に用いる場合は、絶縁被膜32は電気的に短絡せず且つイオンが通りやすい隙間が空いている構造のものであれば良い。この絶縁被膜32は、耐熱性を備えていることが望ましく、絶縁性を保持しつつ、電解液中でイオンが通りやすい膜である必要があれば良い。巻回体26を二次電池などに使用したとき、高温下に曝される場合があり、その場合でも絶縁性を保持する必要があるためである。また、絶縁被膜32は外力に対して容易に被膜が破れたり、押しつぶされたりしない強靭性を備えていることが望ましい。更に、絶縁被膜32は電解液に浸漬して長期間の使用に耐える材質であることが求められる。
【0024】
以上の特質を備えた絶縁被膜32は、具体的には次のようにして実現される。絶縁被膜32は、例えば、不織布状あるいは多孔質状に形成されたものであり、多孔質状の概念には例えば織布状等も含むものである。不織布状の絶縁被膜32は、図2(a)に示すように、好ましくはナノファイバー膜で形成される。ナノファイバー膜は、例えば高分子溶液に高電圧を加えて紡糸するエレクトロスピニング技術を用いて電極材30の表面に形成される。多孔質状の絶縁被膜32は、相溶性のない2種類の樹脂を用い、電極材30の表面に可溶性の樹脂を霧状などにして吹き付け、ドット状に被着させた後、他の不溶性の樹脂を塗布し、その後、ドット状の樹脂のみを溶媒で除去することにより、ドット状の空隙の空いた絶縁性の樹脂膜が形成される。あるいは、多孔質状の絶縁被膜32は、絶縁性樹脂を用い、微細な連続空間からなる発泡樹脂被膜を電極材30の表面に形成されても良い。また、図2(b)に示すように、多孔質状の絶縁被膜32は、樹脂製の極細線にて形成されたメッシュ材を電極材30の表面に接着して形成されることも可能である。これらはいずれも本明細書においては多孔質状の絶縁被膜32の概念に入るものである。正電極シート14と負電極シート18とを重ね合わせてロール状に巻き取ったとき、これらの電極材30同士が直に接触し、電気的に短絡しない厚みと密度を備えた絶縁被膜32であると共に、電解液に浸漬したとき、電解液中のイオンが通りやすい隙間が空いている構造であれば良い。なお、電極材30の片面に不織布状の絶縁被膜を設け、他の片面に多孔質状の絶縁被膜を設けることも可能である。
【0025】
これら不織布状あるいは多孔質状の絶縁被膜32は幅広い電極材30の表面に形成しておき、それを適切な幅にスリットして正電極シート14あるいは負電極シート18として用いても良く、さらに適切な幅に形成された電極材30の表面に不織布状あるいは多孔質状の絶縁被膜32を形成しても良い。不織布状あるいは多孔質状の絶縁被膜32は図2(c)に示すように、電極材30の片側表面に形成しても良く、あるいは図2(d)に示すように、両面に形成しても良い。電極材30の片側表面又は両面に絶縁被膜32を形成したものを本明細書では正電極シート14又は負電極シート18という。なお、図2(e)に示すように、電極材30の両面に絶縁被膜32を形成したものと、絶縁被膜32を形成していない電極材30との組み合わせであっても良い。正電極シート14と負電極シート18はそれぞれ原反16,20から一定のテンションが負荷されるようにして、回転盤28に送られる。
【0026】
回転盤28は、図1に示すように、それ自身の回転軸を中心に図示しないサーボモータなどにより120度毎に回転させられるように、作業パネル12に軸支されている。回転盤28には、周方向3か所に巻芯34が設けられている。巻芯34は、回転盤28に対して直角方向、すなわち回転盤28の回転軸方向にスライド可能で、巻芯34自身の軸心を中心に回転させられるように構成されている。巻芯34には、その巻芯34が回転盤28から突出させられる側に、その軸心方向にスリット36が設けられていて(図3参照)、正電極シート14又は負電極シート18を挟み込むことができるように構成されている。
【0027】
回転盤28の周方向3か所に設けられた巻芯34のうち、正電極シート14と負電極シート18がローラ38を介して送られる位置にある巻芯34は巻取り開始位置S1にあり、接着テープ22が巻かれる位置にある巻芯34は巻取り終了位置S2にあり、巻芯34に巻き取った巻回体26をその巻芯34から抜き取る位置にある巻芯34は抜き取り位置S3にある。回転盤28を回転させて巻芯34の位置をS1からS2へ、S2からS3へと移動させることによって、それぞれの位置で異なる作業を行わせ、S3からS1へ移動させることによって新たに巻芯34に巻回体26を巻回するように構成されている。
【0028】
巻芯34の巻取り開始位置S1と巻取り終了位置S2との間であって巻取り終了位置S2の近傍部に、図3に示すように、第1把持装置40が配設され、その第1把持装置40と巻取り終了位置S2との間には切断装置42とが配設される。第1把持装置40と切断装置42とは、通常時は回転盤28の内部に引き下がっていて、使用する直前に回転盤28の前面に出てくるように構成されている。第1把持装置40は、巻取り終了位置S2にある巻芯34に巻き取られている正電極シート14又は負電極シート18が巻取り開始位置S1にある巻芯34のスリット36を通って張り渡されているラインに沿って並行して移動し得るように構成されている。第1把持装置40は、例えば図示しないレール上を一定の摺動抵抗に抗して動くように構成されている。また、巻取り終了位置S2にある巻芯34の近傍部分に回転盤28の内部から把持ローラ44が突出して、その把持ローラ44と巻芯34との間で巻取り終了位置S2の巻芯34に巻き取られた正電極シート14又は負電極シート18を把持する。第1把持装置40は空気圧やバネ力等の付勢手段を利用して正電極シート14又は負電極シート18を把持し、巻取り終了位置S2にある巻芯34と第1把持装置40との間にある正電極シート14又は負電極シート18を切断装置42で切断する。
【0029】
切断装置42で切断された巻取り終了位置S2にある巻芯34側の正電極シート14又は負電極シート18の一端は把持ローラ44で把持され、巻取り開始位置S1にある巻芯34側からの正電極シート14又は負電極シート18の一端は第1把持装置40により把持される。第1把持装置40により把持された正電極シート14又は負電極シート18は、原反16、20とローラ36との間にあるテンションローラ等の働きにより、巻取り開始位置S1にある巻芯34側に引き寄せられるように構成されている。その動作に連れて巻取り開始位置S1に引き寄せられた第1把持装置40は、その位置の巻芯34のスリット36が正電極シート14又は負電極シート18の先端部を保持した後、第1把持装置40の把持を解除することにより、図示しないレールに沿って巻取り終了位置S2側に移動させられる。第1把持装置40の移動は、バネ力でも良いが、モータ等の駆動力でも良い。巻取り終了位置S2側に移動させられた第1把持装置40は回転盤28の内部に収納される。
【0030】
以上の構成に係る巻回装置10の作動の一例を説明する。まず、ナノファイバー膜などによって絶縁被膜32が施された負電極シート18を原反20から繰り出し、図4(a)に示すように、ローラ38を介して巻取り開始位置S1にある巻芯34のスリット36に先端部を挟み込む。この最初の巻取り開始動作は、作業者が行っても良いが、自動的に行うことができるように構成しても良い。巻芯34を1回転程度回転させ、巻芯34に負電極シート18を巻き付けた後、同図(b)に示すように、正電極シート16を原反16から繰り出し、ローラ38を介して、その先端を巻芯34と負電極シート18との間に挟み込む。そして、負電極シート18と正電極シート16とを重ね合わせて巻き取り、正電極シート16と負電極シート18とを所定の長さだけ巻芯34に巻き付ける。その後、正電極シート16を第2切断装置46で切断する。切断された正電極シート16を負電極シート18で挟むように巻き取り、正電極シート16の切断端面に露出する電極面を負電極シート18の絶縁被膜32により被覆する。
【0031】
その後、回転盤28を回転させ、同図(c)に示すように、巻芯34を巻取り開始位置S1から巻取り終了位置S2に移動させる。次いで、同図(d)に示すように、回転盤28の内部から支持片48を突出させた後、その支持片48を上方に持ち上げ、支持片48とローラ38の間の負電極シート18を一定方向、例えば水平方向になるようにする。すなわち、支持片48によって調整される負電極シート18の一定方向は、巻取り開始位置S1における巻芯34の軸心と交差する方向である。支持片48とローラ38の間の負電極シート18が一定方向になったところで、同図(e)に示すように、回転盤28の巻取り開始位置S1の所に、新たな巻芯34を回転盤28から突出させる。巻芯34のスリット36の方向は一定方向に向けられているため、スリット36に負電極シート18が挿入される。負電極シート18が巻取り開始位置S1の巻芯34のスリット36に挿入された後、支持片48が下方に下げられ、巻取り開始位置S1の巻芯34と巻取り終了位置S2の巻芯34との間の負電極シート18は直線状に伸ばされる。
【0032】
次に、図5(a)に示すように、巻取り終了位置S2の近傍部で第1把持装置40が回転盤28の内部から突出させられ、負電極シート18の両面を挟み込んだ後、把持する。次いで、図5(b)に示すように、巻取り開始位置S1の巻芯34の近傍部分に回転盤28の内部から把持ローラ44を突出させ、その把持ローラ44と巻芯34との間で巻取り終了位置S2の巻芯34に巻き取られた負電極シート18を把持する。それと同時に、巻取り終了位置S2の巻芯34と第1把持装置40との間に切断装置42を回転盤28の内部から突出させ、負電極シート18を切断する。
【0033】
切断された負電極シート18は、図5(c)に示すように、一方の端部は巻取り終了位置S2の巻芯34を回転させて巻取り、他方の端部は第1把持装置40に把持された状態で巻取り開始位置S1の巻芯34側に移動させられる。そして、同図(d)に示すように、第1把持装置40は巻取り開始位置S1の巻芯34に接近させられ、負電極シート18の端部がその巻芯34のスリット36に把持された後、第1把持装置40による把持が解除される。その後、第1把持装置40は回転盤28の内部に収納される。また、巻取り終了位置S2の巻芯34に巻き取られた正電極シート14と負電極シート18の積層体は、図1に示すように、その周囲に接着テープ22が巻き付けられて固定され、巻回体26が完成する。
【0034】
巻取り開始位置S1の巻芯34では、上述したように負電極シート18及び正電極シート14の巻取り作業が進行していて、回転盤28が回転させられる上記巻芯34は巻取り開始位置S1から巻取り終了位置S2に移動させられる。この回転に伴い、巻取り終了位置S2にある巻芯34に巻かれて完成した巻回体26は、抜き取り位置S3に移動させられ、この位置で巻回体26から巻芯34が抜き取られる。
【0035】
以上の動作によって、巻回体26が連続して製造されるのであるが、かかる巻回体26は先ず、両面又は片面に絶縁被膜32が形成された負電極シート18を巻芯34に巻き付けた後、両面又は片面に絶縁被膜32が形成された正電極シート14を巻き付けているため、正電極シート14の端部は負電極シート18によって覆われていて、両者が短絡することはなく、また位置ずれも生じない。また、本実施形態においては、第1把持装置40は巻取り終了位置S2の近傍で負電極シート18を把持し、切断装置42で切断しているため、巻回体26の巻き終わりにおいて位置ずれが生じることはない。また、第1把持装置40は負電極シート18の切断端部を把持して巻取り開始位置S1へ移動し、その巻取り開始位置S1の巻芯34に負電極シート18の先端、すなわち巻き始め部分を把持させているので、巻取り開始位置S1の巻芯34における負電極シート18の位置がずれることはない。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。なお、共通するところは、共通の番号を付し、説明を省略する。図6に示すように、巻取り開始位置S1の巻芯34と巻取り終了位置S2の巻芯34との間に第2把持装置50が配設され、その第2把持装置50と巻取り開始位置S1の巻芯34との間に切断装置42が配設された構成としても良い。第2把持装置50と切断装置42はいずれも巻取り開始位置S1の巻芯34の近傍に配設される。巻取り終了位置S2の巻芯34には正電極シート14と負電極シート18の積層体が巻き付けられているが、そのうち負電極シート18が巻取り開始位置S1の巻芯34のスリット36を通っている(このことは、前述の実施形態の動作説明において詳述した通りである。)。第2把持装置50は、巻取り終了位置S2の巻芯34から巻取り開始位置S1の巻芯34のスリット36に延びる負電極シート18に沿って並行して移動し得るように構成されている。第2把持装置50は、前述の第1把持装置40と同様に、図示しないレール上を一定の摺動抵抗に抗して動くように構成されていて、負電極シート18の切断端部を把持する第2把持装置50は巻取り終了位置S2の巻芯34が負電極シート18を巻き取ることにより、それに連れて引き寄せられる。第2把持装置50の他の構成は、第1把持装置40と同様である。
【0037】
まず、前述の第1把持装置40において説明したように(図4(e)参照)、負電極シート18が巻取り開始位置S1の巻芯34のスリット36に挿入された後、支持片48が下方に下げられる。巻取り開始位置S1の巻芯34と巻取り終了位置S2の巻芯34との間の負電極シート18が直線状に伸ばされた状態で、図7(a)に示すように、第2把持装置50は巻取り開始位置S1の巻芯34の近傍部に回転盤28から突出させられる。そして、第2把持装置50は負電極シート18を挟んだ後、空気圧等によって把持する。巻取り開始位置S1の巻芯34のスリット36に挿入された負電極シート18は、そのスリット36によって把持される。
【0038】
次いで、図7(b)に示すように、巻取り開始位置S1の巻芯34と第2把持装置50との間に切断装置42を回転盤28の内部から突出させ、負電極シート18を切断する。負電極シート18が切断された切断端部は第2把持装置50によって把持されており、垂れ下がることはない。このとき、図7(c)に示すように、巻取り終了位置S2の巻芯34が回転させられ、第2把持装置50は負電極シート18の切断端部を把持したまま、巻取り終了位置S2の巻芯34の近傍部まで引き寄せられる。第2把持装置50が巻取り終了位置S2の巻芯34の近傍部に引き寄せられたとき、図7(d)に示すように、把持ローラ44が回転盤28の内部から突出させられた後、巻芯34側の負電極シート18に接するように寄せられ、負電極シート18の端部を把持する。負電極シート18は、第2把持装置50による把持を解除するのと同時に巻取り終了位置S2の巻芯34を回転させて巻き取った後、図1に示すように、接着テープ22により周囲を固定して巻回体26を製造する。一方、巻取り開始位置S1の巻芯34のスリット36に把持された負電極シート18はその巻芯34を1回転程度回転させられて巻き取られた後、正電極シート14を巻芯34と負電極シート18の間に差し込んで、負電極シート18と正電極シート14との積層体を巻いていく。以下は、上述した通りである。
【0039】
本実施形態では、巻取り開始位置S1の巻芯34の近傍部で負電極シート18を切断しているため、巻取り開始位置S1の巻芯34のスリット36に把持されている負電極シート18の端部は位置ずれを生じない。また、巻取り開始位置S1の巻芯34の近傍部で切断された他の端部、すなわち巻取り終了位置S2の巻芯34側から延び出す負電極シート18の端部は第2把持装置50によって把持されたまま巻取り終了位置S2まで移動させられるため、負電極シート18の巻取り終了端部が位置ずれすることもない。
【0040】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。上述の実施形態と共通するところは説明を省略する。図8に示すように、巻取り開始位置S1の巻芯34と巻取り終了位置S2の巻芯34との間に第1把持装置40と第2把持装置50が配設され、その第1把持装置40と第2把持装置50との間に切断装置42が配設された構成としても良い。第1把持装置40と第2把持装置50とは、巻取り開始位置S1と巻取り終了位置S2とのほぼ中間部分に配設されるのが好ましいが、限定されるものではない。巻取り終了位置S2の巻芯34には正電極シート14と負電極シート18の積層体が巻き付けられているが、正電極シート14については所定の長さが巻き取られて切断されていて、負電極シート18のみが巻取り開始位置S1の巻芯34のスリット36を通っている(このことは、前述の実施形態の動作説明において詳述した通りである。)。
【0041】
第1把持装置40と第2把持装置50は、巻取り終了位置S2の巻芯34から巻取り開始位置S1の巻芯34のスリット36の間に延びる負電極シート18に沿って並行して移動し得るように構成されていて、第1把持装置40は巻取り開始位置S1の方向に、第2把持装置50は巻取り終了位置S2の方向にそれぞれ移動させられる。第1把持装置40と第2把持装置50は、いずれも図示しないレール上を一定の摺動抵抗に抗して動くように構成されていて、負電極シート18の一方の切断端部を把持する第1把持装置40は負電極シート18に一定のテンションを負荷するテンションローラなどの作用により負電極シート18が原反20側に引き戻されることにより、巻取り開始位置S1に引き寄せられ、他方の切断端部を把持する第2把持装置50は巻取り終了位置S2の巻芯34が負電極シート18を巻き取ることにより、巻取り終了位置S2に引き寄せられる。
【0042】
まず、図4(e)において説明したように、負電極シート18が巻取り開始位置S1の巻芯34のスリット36に挿入された後、支持片48が下方に下げられ、巻取り開始位置S1の巻芯34と巻取り終了位置S2の巻芯34との間の負電極シート18は直線状に伸ばされた状態とされる。そこで、図9(a)に示すように、第1把持装置40と第2把持装置50は、巻取り開始位置S1と巻取り終了位置S2の中間部に回転盤28から突出させられる。第1把持装置40と第2把持装置50は負電極シート18を挟んだ後、空気圧等によって把持する。
【0043】
次いで、図9(b)に示すように、第1把持装置40と第2把持装置50との間に切断装置42を回転盤28の内部から突出させ、負電極シート18を切断する。負電極シート18が切断された切断端部は、それぞれ第1把持装置40と第2把持装置50とによって把持されており、垂れ下がることはない。このとき、図9(c)に示すように、切断によってテンションがかからなくなった負電極シート18の一端を把持する第1把持装置40は、テンションローラなどの作用によって負電極シート18が引き戻されるのに伴って巻取り開始位置S1の巻芯34の近傍部に引き寄せられる。一方、巻取り終了位置S2の巻芯34が回転させられ、第2把持装置50は負電極シート18の切断端部を把持したまま、巻取り終了位置S2の巻芯34の近傍部まで引き寄せられる。
【0044】
第2把持装置50が巻取り終了位置S2の巻芯34の近傍部に引き寄せられたとき、図9(d)に示すように、把持ローラ44が回転盤28の内部から突出させられた後、巻芯34側の負電極シート18に接するように寄せられ、負電極シート18の端部を把持する。負電極シート18は、第2把持装置50による把持を解除するのと同時に巻取り終了位置S2の巻芯34を回転させて巻き取られた後、図1に示すように、接着テープ22により周囲を固定して巻回体26を製造する。一方、第1把持装置40によって把持された負電極シート18は、巻取り開始位置S1の巻芯34のスリット36に把持された後、第1把持装置40による把持が解除される。そして、巻取り開始位置S1の巻芯34を1回転程度回転させて、負電極シート18を巻芯34に巻いた後、正電極シート14を巻芯34と負電極シート18の間に差し込んで、負電極シート18と正電極シート14との積層体を巻いていく。以下は、上述した通りである。
【0045】
本実施形態では、負電極シート18の巻取り開始位置S1と巻取り終了位置S2の中間部を第1把持装置40と第2把持装置50がそれぞれ把持し、これら第1把持装置40と第2把持装置50の間を切断装置42で切断している。したがって、切断された負電極シート18はいずれも垂れ下がることはない。巻取り開始位置S1の巻芯34から延び出す負電極シート18の端部は第1把持装置40により把持されていて、負電極シート18の原反20側は一定のテンションを負荷するテンションローラなどの作用により原反20側に引き戻す力が働いている。このため第1把持装置40は巻取り開始位置S1側に引き戻され、その個所の巻芯34のスリット36に負電極シート18の切断端部が把持される。他方、巻取り終了位置S2の巻芯34側から延び出す負電極シート18の端部は第2把持装置50によって把持されており、その巻芯34を回転させて負電極シート18を巻き取ることにより、第2把持装置50は巻取り終了位置S2まで移動させられ、把持を解除することにより巻回体26が巻回される。したがって、負電極シート18の切断端部はいずれも巻取り開始位置S1及び巻取り終了位置S2において、位置ずれすることはない。また、巻回体26の巻き始め及び巻き終わりのいずれにおいても、正電極シート14は負電極シート18の絶縁被膜によって覆われ、短絡することはない。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述の実施形態に限定されるものではない。たとえば、上述の実施形態では正電極シート14は負電極シート18によって覆われる構成としたが、その逆でも良い。この場合、正電極シート14とその原反16の配置は、負電極シート18とその原反20の配置とは入れ替わることになる。
【0047】
前記第1把持装置40や第2把持装置50及び切断装置42は、回転盤28の内部から出てくる構成としているが、具体的には作業パネル12に配設し、第1把持装置40や第2把持装置50が移動させられるレールを含めて作業パネル12から出入りするように構成される。回転盤28には第1把持装置40や第2把持装置50がレールに沿って移動し得るように開口が設けられる。切断装置42についても、第1把持装置40や第2把持装置50と同様に個別に作業パネル12から出入りするように構成するのが好ましいが、第1把持装置40や第2把持装置50の側面に固定しておき、これらと一体に移動し得るように構成することも可能である。
【0048】
前記回転盤28は自身の軸心を中心に回転させられる間に一連の巻回体の製造工程を順に行うことができて最も効率的であるが、巻取り開始位置S1にある巻芯34を巻取り終了位置S2に移動させる移動手段として、例えば揺動装置で構成することも可能である。具体的には、巻取り開始位置S1にある巻芯34において巻取りを開始し、巻取り終了位置S2で巻取りを終えると同時に周囲を固定し、巻芯34を抜き取る作業を終えた後、巻取り開始位置S1に巻芯34を戻す。移動手段の構成部品の点数を減らすことが可能である。
【0049】
上述の実施例では、巻芯は断面円形で説明したが、それに限定されるものではなく、楕円形、長円形など用途に応じて形状を決めることができる。
【0050】
その他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正又は変形を加えた態様で実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0051】
10:巻回装置
12:作業パネル
14:正電極シート
16、20、24:原反
18:負電極シート
22:接着テープ
26:巻回体
28:回転盤(移動手段)
30:電極材
32:絶縁被膜
34:巻芯
36:スリット
40:第1把持装置
42:切断装置
44:把持ローラ
50:第2把持装置
S1:巻取り開始位置
S2:巻取り終了位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10