(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】浴槽用手摺装置
(51)【国際特許分類】
A47K 3/12 20060101AFI20230127BHJP
【FI】
A47K3/12
(21)【出願番号】P 2018202384
(22)【出願日】2018-10-28
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】599117255
【氏名又は名称】株式会社 シコク
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 圭一朗
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-139751(JP,A)
【文献】実開昭58-152193(JP,U)
【文献】特開平08-275895(JP,A)
【文献】特開平9-10130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02-4/00
日本意匠分類 D5-3192、L3-2029
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の近傍の床面に載置される基台と、該基台上に立設配置された手摺ユニットを備えた浴槽用手摺装置であって、
上記手摺ユニットは、上記基台上に立設された第1支柱と、上記浴槽
の側壁の上部にその上方から鞍座状態で嵌合配置され且つ締結具によって上記側壁に固定される固定具に立設された第2支柱と、これら第1支柱と第2支柱の上端間に跨って上記浴槽の側壁に対向する方向に延びる手摺体を備えたことを特徴とする浴槽用手摺装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記手摺ユニットが、上記基台の幅方向の両端側にそれぞれ設けられていることを特徴とする浴槽用手摺装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記各支柱は、その高さ寸法が増減調整可能に構成されていることを特徴とする浴槽用手摺装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3において、
上記第1支柱は、上記浴槽の側壁に対向する方向に複数個列設されていることを特徴とする浴槽用手摺装置。
【請求項5】
請求項1,2.3又は4において、
上記基台上と上記浴槽の底面上の何れか一方に、又は双方に、踏み台が配置されていることを特徴とする浴槽用手摺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、浴槽に設置されて浴槽利用者の歩行移動時における安全確保に供される浴槽用手摺装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の手摺装置としては、特許文献1に示されるように、浴槽が設置された浴室の壁面にI形とかL形の手摺を取り付け、浴槽利用者が上記手摺を把持しながら浴槽への出入りできるようにした壁面固定タイプの手摺装置と、特許文献2に示されるように、浴槽の側壁に鞍座状態で着脱自在に取り付けられる取付け基台に対して、主として環状形体の小型の手摺を固定し、浴槽利用者が上記手摺を掴んで姿勢を保持しつつ浴槽に出入りできるようにした浴槽固定タイプの手摺装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-184981号公報
【文献】特開2015-173700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、壁面固定タイプの手摺装置においては、使用者は浴槽に出入りする時には、この壁面に取付けられた手摺の方に体を向けてその手でこれを把持して自分の姿勢を安定させた状態で、浴槽の側壁を横歩き状態で跨いで該浴槽に出入りしなければならないことから、横向き状態(即ち、身体を浴槽の側壁に沿う方向に向けた状態)での動作が多くなり、軽快性あるいは安全性という点において問題が残る。
【0005】
また、浴槽固定タイプの手摺装置においては、該手摺装置が浴槽の側壁上に固定され、且つ上記把持部が比較的小さいが、例えば、浴槽の側壁を跨いで浴槽へ出入りする時には該把持部が浴槽使用者の体の近くにあることからこれを把持することは比較的容易であるものの、浴槽使用者の浴槽への接近移動時あるいは浴槽からの離間移動時(即ち、浴槽使用者が上記把持部から比較的離れた位置にある時)には、該浴槽使用者が上記把持部を掴んで自己の姿勢保持を図ることが難しく、浴槽使用者に対する姿勢保持機能を十分に得ることができないという問題があった。
【0006】
そこで本願発明は、浴槽への出入り時は勿論及びこと、該浴槽への接近移動時あるいは浴槽からの離間移動時においても浴槽利用者に対する姿勢保持を支援し得るとともに、その移動方向を浴槽に対面する方向(即ち、歩き易い方向)とすることで、高い安全性と軽快な使用性を兼ね備えた浴槽用手摺装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0008】
本願の第1の発明では、浴槽の近傍の床面に載置される基台と、該基台上に立設配置された手摺ユニットを備えた浴槽用手摺装置において、上記手摺ユニットが、上記基台上に立設された第1支柱と、上記浴槽の側壁の上部にその上方から鞍座状態で嵌合配置され且つ締結具によって上記側壁に固定される固定具に立設された第2支柱と、これら第1支柱と第2支柱の上端間に跨って上記浴槽の側壁に対向する方向に延びる手摺体を備えたことを特徴としている。
【0009】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る浴槽用手摺装置において、上記手摺ユニットを、上記基台の幅方向の両端側にそれぞれ設けたことを特徴としている。
【0010】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る浴槽用手摺装置において、上記各支柱の高さ寸法を増減調整可能に構成したことを特徴としている。
【0011】
本願の第4の発明では、上記第1、第2又は第3の発明に係る浴槽用手摺装置において、上記第1支柱が、上記浴槽の側壁に対向する方向に複数個列設されていることを特徴としている。
【0012】
本願の第5の発明では、上記第1、第2、第3又は第4の発明に係る浴槽用手摺装置において、上記基台上と上記浴槽の底面上の何れか一方に、又は双方に、踏み台が配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0014】
(a)本願の第1の発明
本願の第1の発明に係る浴槽用手摺装置によれば、浴槽の近傍の床面に載置される基台と、該基台上に立設配置された手摺ユニットを備えた浴槽用手摺装置において、上記手摺ユニットが、上記基台上に立設された第1支柱と、上記浴槽の側壁の上部にその上方から鞍座状態で嵌合配置され且つ締結具によって上記側壁に固定される固定具に立設された第2支柱と、これら第1支柱と第2支柱の上端間に跨って上記浴槽の側壁に対向する方向に延びる手摺体を備えているので、例えば、浴室内から上記浴槽側へ移動して該浴槽内の湯に入ろうとする場合には、浴室内を浴槽の手前まで進んだ後、身体を上記浴槽側へ向けた状態のまま、上記手摺体の上記第1支柱寄りの端部を把持し、そのまま該手摺体を伝って通常の歩行状態で上記第2支柱寄りの端部側まで移動し、ここで該手摺体を掴んだまま、上記浴槽の側壁その外側から内側へ乗り越えて該浴槽内に入れば良い。
【0015】
また、逆に上記浴槽内から出る場合には、該浴槽内で立ち上がり、上記手摺体の上記第2支柱寄りの端部を掴んで体勢を保持した状態で、身体を該浴槽の外側(即ち、移動方向の前方側)へ向けた姿勢で、上記浴槽の側壁をその内側から外側へ乗り越えて該浴槽外へ移動し、さらに身体を移動方向の前方側へ向けて通常の歩行状態のまま、上記手摺体を伝って上記第1支柱寄りの端部側まで移動すれば良い。
【0016】
即ち、この浴槽用手摺装置によれば、浴槽の側壁を跨いで該浴槽に出入りする際のみならず、該浴槽の外側での移動時においても上記手摺体による姿勢保持作用を得ることができることから、従来の手摺装置のように浴槽への出入り時においてのみ姿勢保持作用が発揮すされるような場合に比して、浴槽使用者に対する保護効果がより一層向上することになる。
【0017】
また、上記手摺体が、上記浴槽の側壁に対向する方向に延出していることから、浴槽使用者は身体を上記浴槽に対向させた姿勢、あるいは背向させた姿勢で(即ち、通常の歩行姿勢で)上記手摺体を伝ってより安全に移動でき、より安全性の高い浴槽用手摺装置を提供できる。
【0018】
(b)本願の第2の発明
本願の第2の発明では、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記手摺ユニットを、上記基台の幅方向の両端側にそれぞれ設けているので、浴槽使用者はこれら両側の手摺ユニットを同時に、あるいはいずれか一方を選択的に把持しながら移動することで、例えば、該手摺ユニットが上記基台の幅方向の一方側のみに設けられている場合に比して、浴槽使用者に対する保護効果が向上するとともに、その使用性が良好となる。
【0019】
また、人は無意識のうちに、利き腕で手摺体を把持することが多いが、この発明のように上記手摺ユニットが上記浴槽の手前側の通路部分の左右両側に設けられていると、上記浴槽に向かう場合も、浴槽から出てくる場合も、常に利き腕で手摺体を把持することができ、例えば、上記手摺ユニットが通路部分の左右一方側のみに設けられ、利き腕での手摺体の把持が、浴槽に向かう場合と浴槽から出てくる場合の何れか一方側においてのみ可能となる場合に比して、浴槽使用者に対する保護効果が向上する。
【0020】
(c)本願の第3の発明
本願の第3の発明では、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記各支柱の高さ寸法を増減調整可能に構成しているので、浴槽使用者は、その体格とか好みに合わせて上記手摺体の高さを調整することで、上記手摺体をより好ましい姿勢で的確に把持することができ、浴槽使用者に対する保護効果が向上する。
【0021】
(d)本願の第4の発明
本願の第4の発明では、上記(a)、(b)又は(c)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記第1支柱を、上記浴槽の側壁に対向する方向に複数個列設しているので、該手摺体の支持剛性が高く、それだけ浴槽使用者に対する保護作用における信頼性が向上する。
【0022】
(e)本願の第5の発明
本願の第5の発明では、上記(a)、(b)、(c)又は(d)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記基台上と上記浴槽の底面上の何れか一方に、又は双方に、踏み台を配置したので、上記浴槽の側壁の高さが大きい場合でも上記踏み台を使用することで該側壁を容易に乗り越えて浴槽に出入りすることができ、浴槽の側壁高さに対する適応性の高い浴槽用手摺装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本願発明の第1の実施形態に係る浴槽用手摺装置の全体斜視図である。
【
図3】本願発明の第2の実施形態に係る浴槽用手摺装置の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
「第1の実施形態」
図1及び
図2には、本願発明の第1の実施形態に係る浴槽用の手摺装置Z
1を、浴槽30の側壁31に近接させて設置した状態を示している。
【0025】
この手摺装置Z1は、上記浴槽30の近傍の床面上に載置された略長方形上の平面形体をもつ基台1に、次述の手摺ユニット2を取り付けて構成される。
【0026】
上記手摺ユニット2は、上記基台1の一方の短辺縁部において短辺方向に所定間隔をもって立設された二つの支柱5と支柱8(これら二つの支柱5,8で特許請求の範囲中の第1支柱」が構成される)と、上記浴槽30の側壁31にその上方から鞍座状態で嵌合配置された固定具15の上面に立設された支柱11と、これら上記各支柱5,8,11の上端同士に跨って取り付けられた手摺体12を備えて構成される。
【0027】
ここで、上記支柱5は、上記基台1に立設された脚柱3と該脚柱3に伸縮可能に内挿された伸縮柱4を備えた伸縮構造とされる。また、上記支柱8は、上記基台1に立設された脚柱6と該脚柱6に伸縮可能に内挿された伸縮柱7を備えた伸縮構造とされる。さらに、上記支柱11は、上記固定具15に立設された脚柱9と該脚柱9に伸縮可能に内挿された伸縮柱10を備えた伸縮構造とされる。
【0028】
また、上記手摺体12は、その両端部をそれぞれ環状の前側把持部12aと後該把持部12dとするとともに、これら前側把持部12aと後該把持部12dの間に、上記後該把持部12d側に向かって上昇傾斜する傾斜把持部12bと略水平に延出する水平把持部12cを備えた屈曲形体とされる。そして、この手摺体12は、上記前側把持部12aと傾斜把持部12bの境部近傍が上記支柱5に上端に固定され、上記傾斜把持部12bと水平把持部12cの境部近傍が上記支柱8の上端に固定されるとともに、上記水平把持部12cと後該把持部12dの境部近傍が上記支柱11の上端に固定されることで、上記各支柱5,8,11と一体化されている。
【0029】
なお、上記各支柱5,8,11は、図示しない固定材によって任意の伸縮位置で固定できるようになっている。また、上記固定具15は、
図2に示すように、略U形の断面形状をもつとともに、その一方の壁面には締結具16が備えられており、該締結具16を締め込むことで上記固定具15を上記側壁31に固定することができるようになっている。ただし、この固定具15は、上記構成に限定されるものではなく、上記側壁31に固定できる構成であれば十分である。
【0030】
上記手摺装置Z
1を上記浴槽30の側壁31の直前位置に載置した状態では、
図2に示すように、上記手摺体12の前側把持部12aは上記基台1よりも手前側に延出し、また上記後該把持部12dは上記浴槽30内に延出した状態となっている。したがって、例えば、浴室内を上記浴槽30側に向かって歩いて行く入浴動作時には、より早い段階から上記手摺体12を把持し、これを伝って姿勢保持しながら上記浴槽30に近づくことができる。そして、ここで浴槽使用者が上記側壁31をその外側から跨いで上記浴槽30内に進入する際は、該側壁31を跨ぐ時点から浴槽30内に身体が十分に進入するまでの期間、上記後該把持部12dによる姿勢保持作用が継続される。
【0031】
また、逆に、上記浴槽30に入った状態から、該浴槽30の外側へ移動する際には、上記浴槽30内において上記手摺体12の後該把持部12dを的確に把持した状態で、上記側壁31をその内側から外側へ跨いで浴槽30から出るとともに、さらに該浴槽30から出た後は、上記手摺体12の水平把持部12c、傾斜把持部12b、さらに前側把持部12aを順次伝って姿勢保持しながら安全に移動することができる。
【0032】
なお、上記側壁31の床面からの高さが大きいと、この側壁31を跨いで浴槽30に出入りしにくくなるが、この場合には、
図2に鎖線図示するように、上記基台1に踏み台35を、また上記浴槽30の底面32上に踏み台36を載置すれば良い。
【0033】
また、上記手摺体12が、上記浴槽30に対する進入及び退出方向(即ち、上記側壁31に対向する方向)に延出していることから、浴槽使用者が上記浴槽30側に進退移動する場合には、浴槽使用者は身体を前面に向けた通常の歩行姿勢のまま移動して、上記手摺体12を的確に把持することができることから、該手摺体12による浴槽使用者に対する姿勢保持作用、支援作用が確実となり、その浴槽使用者の安全な移動が担保される。
【0034】
「第2の実施形態」
図3には、本願発明の第2の実施形態に係る浴槽用の手摺装置Z
2を浴槽30の直前位置に設置した状態を示している。
【0035】
この実施形態の手摺装置Z2は、上記第1の実施形態における手摺装置Z1と基本構成を同じにするものであって、これと異なる点は、上記手摺装置Z1では上記手摺ユニット2が上記基台1の一方の端部寄りに一つだけ設けられていたのに対して、この実施形態の手摺装置Z2では該基台1の左右両端部寄りにそれぞれ一つ、合せて二つ設けられている点である。
【0036】
このように上記手摺ユニット12を、上記基台1の幅方向の両端側にそれぞれ設けたことで、浴槽使用者はこれら両側の手摺ユニット2の手摺体12を同時に、あるいは選択的に把持しながら移動することができ、例えば、該手摺ユニット2が上記基台1の幅方向の一方側にしかに設けられていない場合に比して、浴槽使用者に対する姿勢保持作用、支援作用がより確実となる。
【0037】
また、人は無意識のうちに、利き腕で手摺体12を把持することが多いが、この実施形態の手摺装置Z2のように上記手摺ユニット2が上記浴槽30の手前側の通路部分の左右両側に設けられていると、該浴槽30に向かう場合も、該浴槽30から出てくる場合も、常に利き腕で手摺体12を把持することができる。この結果、例えば、上記手摺ユニット2が通路部分の左右一方側のみに設けられ、利き腕での手摺体1の把持が、浴槽30に向かう場合と浴槽30から出てくる場合の何れか一方側においてのみ可能となるような場合に比して、浴槽使用者に対する保護効果が向上する。
【0038】
なお、上記以外の作用効果は、上記手摺装置Z1における場合と同様であることから、上記第1の実施形態における該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本願発明に係る浴槽用手摺装置は、主として介護分野において広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 ・・基台
2 ・・手摺ユニット
5 ・・支柱
8 ・・支柱
11 ・・支柱
12 ・・手摺体
15 ・・固定具
30 ・・浴槽