(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】変位拡大機構、研磨装置、アクチュエータ、ディスペンサ、及びエアバルブ
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20230127BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20230127BHJP
H10N 30/88 20230101ALI20230127BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230127BHJP
B24B 1/04 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
H02N2/04
H01L41/09
H01L41/053
B24B37/00 E
B24B1/04 E
(21)【出願番号】P 2019527604
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2018022644
(87)【国際公開番号】W WO2019009035
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2017134062
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502254796
【氏名又は名称】有限会社メカノトランスフォーマ
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100140899
【氏名又は名称】竹本 如洋
(72)【発明者】
【氏名】徐 世傑
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭雄
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-175746(JP,A)
【文献】特開2000-092876(JP,A)
【文献】特開2009-044861(JP,A)
【文献】特開2009-052985(JP,A)
【文献】特開2017-070133(JP,A)
【文献】国際公開第2016/209168(WO,A1)
【文献】特表2014-504135(JP,A)
【文献】特開2006-141182(JP,A)
【文献】特開2002-124048(JP,A)
【文献】特開2016-178806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
H01L 41/09
H01L 41/053
B24B 37/00
B24B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤となる基部と、
前記基部の一方側の面に設けられた第1の取付部および第2の取付部と、
前記第1の取付部および前記第2の取付部に、それぞれその一端が取り付けられる第1の圧電素子および第2の圧電素子と、
前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の他端に接続される、圧電素子の伸縮により変位を生じる作用部と、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子の
間に配置され、前記作用部と前記基部を連結
し、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子に与圧を印加する連結部と、
を備え
、
前記作用部は、前記基部の上部からの距離が、前記第1の取付部および前記第2の取付部の間の距離より長くなるように配置されており、
前記第1の圧電素子が伸び変位を発生する場合に、前記第2の圧電素子は縮み変位を発生するように構成されており、
前記第1の圧電素子の伸縮方向の軸線の延長線と前記第2の圧電素子の伸縮方向の軸線の延長線とが交わるように構成されている、
変位拡大機構。
【請求項2】
前記第1の圧電素子及び前記第2の圧電素子は、前記連結部の軸線の延長線上で、前記第1の圧電素子の伸縮方向の軸線の延長線と前記第2の圧電素子の伸縮方向の軸線の延長線とが交わるように構成されている、
請求項1に記載の変位拡大機構。
【請求項3】
前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に対して最大印加電圧の約1/2の中間電圧を常時印加しておき、前記第1の圧電素子に対しては前記中間電圧よりも高い電圧を印加する場合に、前記第2の圧電素子に対しては前記中間電圧よりも低い電圧を印加する、
請求項1又は2に記載の変位拡大機構。
【請求項4】
前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子は、前記基部の設置面の垂直方向に対して所定の角度を持つように配置されている、請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の変位拡大機構。
【請求項5】
前記連結部の材質は、金属であり、前記基部又は前記作用部の少なくともいずれか一つと一体加工されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の変位拡大機構。
【請求項6】
前記取付部は、前記圧電素子に対して接する幅よりも、前記基部に対して接する幅の方が狭くなるように形成されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の変位拡大機構。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の変位拡大機構と、
前記作用部の、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に接している面とは逆側の面に設けられた研磨部と、
を備える
研磨装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の変位拡大機構と、
前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に電圧または電流を供給して、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子を伸縮駆動させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部により、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に電圧または電流が供給されて前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子が伸縮変位することにより、前記作用部から拡大された変位が出力される、アクチュエータ。
【請求項9】
前記駆動部は、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子が互いに反対方向に所定の量で変位するように、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に電圧または電流を供給する、請求項8に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
チップ状の電子部品を処理する電子部品処理装置において電子部品の処理に用いる作用子を駆動する、請求項
8又は9に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記電子部品処理装置は、電子部品の特性の測定を行うための測定装置であり、前記作用子は、前記電子部品に接触されて特性を測定するための測定プローブである、請求項
10に記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記電子部品処理装置は、電子部品の特性の測定を行うための測定装置であり、前記作用子は、前記電子部品を吸着するための吸着ノズルであり、前記吸着ノズルに吸着された電子部品が特性を測定するための測定プローブに接触される、請求項
10に記載のアクチュエータ。
【請求項13】
前記電子部品処理装置は、電子部品をテーピングする際に電子部品をキャリアテープに挿入する挿入装置であり、前記作用子は、前記電子部品を吸着するための吸着ノズルであり、前記吸着ノズルに吸着された電子部品が前記テープに挿入される、請求項
10に記載のアクチュエータ。
【請求項14】
液体が導入され、導入された液体を吐出する液体吐出部材と、
前記液体吐出部材からの液体の吐出および遮断を行う弁と、
前記弁体を駆動する、請求項8
又は9に記載のアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータから出力された変位により、前記弁が変位し、前記液体吐出部材からの液体の吐出および遮断を行う、ディスペンサ。
【請求項15】
圧力空気が導入される空気圧力室と、該空気圧力室から外部へ通じる空気排出口とを有するバルブ本体と、
前記空気圧力室内部で前記空気排出口を閉鎖および開放するように動作する弁体と、
前記空気圧力室に設けられ、前記弁体を駆動する、請求項8
又は9に記載のアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータから出力された変位により前記弁体が変位し、前記空気排出口からの空気の吐出および遮断を行う、エアバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位拡大機構、研磨装置、アクチュエータ、ディスペンサ、及びエアバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、比較的低い電圧で所要の変位を発生させる素子として、圧電素子(ピエゾ素子)が存在する。圧電素子は、圧電効果を備えた物質と薄い電極とを交互に積み重ねた構造を持ち、力を電圧に変換する、または、電圧を力に変換する機能を持った素子である。
【0003】
圧電素子は、電圧の制御によって微妙に伸縮変化させることが可能であるため、インクジェットプリンタのインク射出機構やアクチュエータなどの制御機構等、種々の分野に用いられている。
【0004】
圧電素子は、電圧が印加されると伸縮するが、発生する変位が小さいため、当該伸縮する圧電素子の変位を拡大して対象物に作用させる変位拡大機構が用いられる。
【0005】
特許文献1には、圧電素子の発生した変位を拡大して作用部を自在に動かすことができる変位拡大機構、および、当該変位拡大機構を用いた研磨装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の変位拡大機構では、圧電素子が伸縮した際に、当該伸縮方向に対して垂直方向に拡大した変位が現れるが、基部を固定した状態で、作用部に当該垂直方向の力が加わる、あるいは当該拡大した変位を妨げる様な負荷が存在すると、圧電素子(伸縮部材)には引張力が加わる。圧電素子は、一般的に引張力に対しては破壊し易いため、このような垂直方向の力または拡大した変位を妨げるような負荷によって破壊に至る場合がある。
【0008】
引用文献1に記載されたような、変位拡大機構は、研磨装置のみならず、アクチュエータとして、種々の用途への適用が期待されるが、圧電素子の引張力に弱いという性質のために適用が制限されている。
【0009】
そこで、本発明は、電圧を印加して所要の変位を発生させる変位拡大機構において、圧電素子に対する引張力を効率よく解除することができる変位拡大機構及び研磨装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、圧電素子の変位を拡大して出力し、圧電素子に対する引張力を効率よく解除することができるアクチュエータ、並びにそれを用いたディスペンサ、及びエアバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る変位拡大機構は、例えば特許請求の範囲に記載の構成を備える。
【0012】
本発明に係る変位拡大機構において、前記作用部は、前記基部からの距離が、前記第1の取り付け部および前記第2の取付部の間の距離より長くなるように配置されてもよい。
【0013】
本発明に係る変位拡大機構において、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子は、前記基部の設置面の垂直方向に対して所定の角度を持つように配置されていてもよい。
【0014】
本発明に係る変位拡大機構において、所定の角度は、変位拡大機構に負荷が印加される線上に、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の伸縮方向の軸線の延長線が交わるように設けられていてもよい。
【0015】
本発明に係る変位拡大機構において、前記連結部の材質は、金属であり、前記基部又は前記作用部の少なくともいずれか一つと一体加工されていてもよい。
【0016】
本発明に係る変位拡大機構において、前記取付部は、前記圧電素子に対して接する幅よりも、前記基部に対して接する幅の方が狭くなるように形成されていてもよい。
【0017】
本発明に係る研磨装置は、基盤となる基部と、前記基部の一方側の面に設けられた第1の取付部および第2の取付部と、前記第1の取付部および前記第2の取付部に、それぞれその一端が取り付けられる第1の圧電素子および第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の他端に接続される、圧電素子の伸縮により変位を生じる作用部と、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子の間の中央に配置され、前記作用部と前記基部を連結し、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子よりも高いヤング率を有する材質からなる連結部と、前記作用部の、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に接している面とは逆側の面に設けられた研磨部と、を備える。
【0018】
本発明に係るアクチュエータは、基盤となる基部と、前記基部の一方側の面に取り付けられる第1の取付部および第2の取付部と、前記第1の取付部および前記第2の取付部の先端部に、それぞれその一端が接続される第1の圧電素子および第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の他端に接続される、圧電素子の伸縮により変位を生じる作用部と、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子の間の中央に配置され、前記作用部と前記基部を連結し、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子よりも高いヤング率を有する材質からなる連結部と、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に電圧または電流を供給して、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子を伸縮駆動させる駆動部と、を備え、前記駆動部により、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に電圧または電流が供給されて前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子が伸縮変位することにより、前記作用部から拡大された変位が出力される。
【0019】
本発明のアクチュエータにおいて、前記駆動部は、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子が互いに反対方向に所定の量で変位するように、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に電圧または電流を供給してよい。
【0020】
本発明のアクチュエータには、チップ状の電子部品を処理する電子部品処理装置において電子部品の処理に用いる作用子を駆動するものであってよい。また、前記電子部品処理装置は、電子部品の特性の測定を行うための測定装置であり、前記作用子は、前記電子部品に接触されて特性を測定するための測定プローブであってよい。前記電子部品処理装置は、電子部品の特性の測定を行うための測定装置であり、前記作用子は、前記電子部品を吸着するための吸着ノズルであり、前記吸着ノズルに吸着された電子部品が特性を測定するための測定プローブに接触されるものであってよい。
【0021】
本発明に係るディスペンサは、液体が導入され、導入された液体を吐出する液体吐出部材と、前記液体吐出部材からの液体の吐出および遮断を行う弁と、前記弁を駆動する、上記構成を有するアクチュエータと、を備え、前記アクチュエータから出力された変位により、前記弁が変位し、前記液体吐出部材からの液体の吐出および遮断を行う。
【0022】
本発明に係るエアバルブは、圧力空気が導入される空気圧力室と、該空気圧力室から外部へ通じる空気排出口とを有するバルブ本体と、前記空気圧力室内部で前記空気排出口を閉鎖および開放するように動作する弁体と、前記空気圧力室に設けられ、前記弁体を駆動する、上記構成のアクチュエータと、前記アクチュエータから出力された変位により前記弁体が変位し、前記空気排出口からの空気の吐出および遮断を行う。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る変位拡大機構及び研磨装置は、圧電素子に加わる引張力に対して与圧力を与える高い剛性を有する連結部を備えることで、当該引張力を効率よく解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】変位拡大機構100の第1の実施形態の構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】変位拡大機構100の第1の実施形態の構成の一例を示す正面図である。
【
図3】変位拡大機構100の第1の実施形態の構成の一例を示す正面図である。
【
図4】変位拡大機構100の第2の実施形態の構成の一例を示す正面図である。
【
図5】変位拡大機構100の第2の実施形態の構成の一例を示す正面図である。
【
図6】変位拡大機構100の一実施形態の構成の一例を模式的に示す説明図である。
【
図7】研磨装置900の実施形態の構成の一例を示す正面図である。
【
図8】第2の実施形態の変形例に係る変位拡大機構を用いたアクチュエータの一例を示す正面図である。
【
図9】
図8のアクチュエータを電子部品の処理に用いる作用子である測定プローブの駆動に用いた一例を示す正面図である。
【
図10】測定プローブにより電子部品の電気特性を測定している状態を示す図である。
【
図11】
図8のアクチュエータを電子部品の処理に用いる作用子である吸着ノズルの駆動に用いた他の例を示す正面図である。
【
図12】吸着ノズルを装着したアクチュエータを用いた電子部品の測定を行うための測定装置の例を示す図である。
【
図13】吸着ノズルを装着したアクチュエータを用いた電子部品をキャリアテープに装入する挿入装置の例を示す図である。
【
図14】一実施形態に係るディスペンサを示す部分断面正面図である。
【
図15】
図14のディスペンサの液吐出部材を示す断面図である。
【
図16】
図14のディスペンサの液吐出部材を示す断面図である。
【
図17】一実施形態に係るエアバルブを示す断面図である。
【
図18】一実施形態に係るエアバルブを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
<変位拡大機構>
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態に係る変位拡大機構について説明する。
【0027】
(第1の実施形態に係る変位拡大機構の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る変位拡大機構100の構成の一例を説明するための斜視図である。
変位拡大機構100は、印加電圧に応じて伸縮する圧電素子の変位を拡大して対象物に作用させる圧電素子の機構である。
図1に示すように、変位拡大機構100は、変位拡大機構100の基盤となる基部200と、基部200の一方側の面(上面)に取り付けられている第1の取付部300aおよび第2の取付部300bと、第1の取付部300aおよび第2の取付部300bの先端部(上端部)に、それぞれその一端が接続される第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bと、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bの他端に接続され、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bの伸縮により変位を生じる作用部500と、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bの間の略中央に配置され、作用部500と基部200を連結し、圧電素子400a、400bよりも高いヤング率を有する材質からなる連結部600と、を備える。なお、第1の取付部300aと第2の取付部300bは基部200と一体であってもよく、また、単に基部200の一方側の面にポートとして設けられていてもよい。
【0028】
第1の取付部300aおよび第2の取付部300bは、特に区別の必要がなければ総称して取付部300とする。また、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bも、特に区別の必要がなければ総称して圧電素子400とすることがある。
【0029】
基部200は、変位拡大機構100の基盤となる部材である。基部200は、圧電素子400を、取付部300に取り付けて固定できればよく、どの様な形状又は材質でもよい。基部200は、具体的には、
図1に示すように、矩形状とすることができる。また、材質としては、金属等を用いることが考えられる。
【0030】
また、基部200は、取付部300、作用部500及び連結部600の少なくともいずれか一つと一体加工してもよい。このような構成とすることで、加工がしやすく、また、接合部分を設ける必要がないため、当該接合部分から部品が外れて壊れてしまう等といった脆弱性に対処することができる。
【0031】
取付部300は、基部200の上部に取り付けられている部材である。取付部300は、圧電素子400を基部200に連結させるために用いられる。取付部300は、
図1に示すように、矩形状に形成し、圧電素子400を固定させるように連結してもよいし、
図2に示すように、取付部300の前記圧電素子に対して接する幅よりも、前記基部に対して接する幅の方が狭くなるように形成(例えば、L字型、T字型など。
図2ではT字型に形成した例を示す)してヒンジ機構を設けて、自由度がある状態で連結してもよい。前者の方が、圧電効果による力が作用部500に確実に伝達されやすい点で好ましく、一方、後者の方が、作用部500の
図2に示すY方向のストロークが出やすい点で好ましい。また、取付部300は、基部200、基部200及び連結部600、又は、基部200、連結部600及び作用部500と一体成形してもよい。
【0032】
圧電素子400は、印加電圧に応じて伸縮する部材である。圧電素子400は、
図1に示すように、取付部300の上部に配置されている。圧電素子400は、例えば、
図1に示すように矩形状に形成することができる。圧電素子400を構成する主要な材料としては、圧電効果を有する物質である圧電体、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用いることができる。圧電素子400は、薄い電極と、薄い圧電体を交互に積み重ねた積層構造であってよい。このような積層構造とすることで、低い電圧でも大きな変位を実現することが可能になる。なお、圧電素子400は、本例では矩形状に形成された例を示したが、特に矩形状に限定されず、圧電効果によって作用部500に効率よく変位を作用させることができる形状であれば、どのような形状でもよい。
【0033】
圧電素子400は、具体的には、
図1に示すように、細長い矩形状に形成してもよく、また、矩形状に形成された基部200の上部に対して垂直方向と同方向に長手方向がくるように直立に配置されてもよい。このような構成とすることで、より効率よく変位を拡大させることができる。
【0034】
ここで
図6を用いて、本発明の一実施形態に係る変位拡大機構100の構成について説明する。
図6は、変位拡大機構100の一実施形態の構成の一例を示す説明図である。
【0035】
本発明の一実施形態に係る変位拡大機構100において、第1の取付部300aおよび第2の取付部300bから作用部500までの長さをrとし、第1の取付部300aおよび第2の取付部300bの間の間隔をdとする。第1の圧電素子400aが第2の圧電素子400bに対し、相対的にΔrだけ伸びたときに、変位拡大機構100が角度θ傾斜して、作用部500にΔxの変位が生じたとする。
【0036】
このとき、
図6に示すようにΔx及びΔrは、次の(1)及び(2)の式で表せられる。
【0037】
【0038】
【0039】
上記(1)及び(2)の式より、次の(3)の式を得ることができる。
【0040】
【0041】
このように圧電素子400aが圧電素子400bに対し、相対的にΔrだけ伸びることを効果的に実現する手段として、例えば、第1の圧電素子400aに対しては伸び変位を発生させ、第2の圧電素子400bに対しては縮み変位を発生させてよい。圧電素子は一般に、“伸び”変位として用いられることが多く、直接的に“縮み”変位を発生させることは一般的ではないが、第1の圧電素子400a及び第2の圧電素子400bに対して最大印加電圧の約1/2の中間電圧を常時印加しておき、圧電素子400aに対しては中間電圧よりも高い電圧を印加し、圧電素子400bに対しては中間電圧よりも低い電圧を印加することで実質的にこのような相対変位を発生させることが可能である。
【0042】
ここで、変位拡大機構100を構成するためには、圧電素子400の変位量よりも作用部500での変位量のほうが大きくなる必要があり、具体的には、Δx>Δrでなければならない。つまり、上記(3)の式より、r/d>1である必要がある。また、r/dの値が大きければ大きいほど、変位拡大機構100としての拡大率が大きくなることから、圧電素子400を細長い矩形状に形成して、rの長さを長くしたり、取付部300同士の間隔を狭くするよう配置したりすることで、より効率の良く変位を拡大させる変位拡大機構100を提供することができる。
【0043】
作用部500は、圧電素子400の上部に配置されている、圧電素子の伸縮により変位を生じる部材である。作用部500は、対象物に作用させるための部材であり、対象物に応じて形状及び材質を選択して用いればよい。
【0044】
また、作用部500は、一例として、矩形状に形成された基部200の上部からの距離が、2つの取付部300a、300bの間の距離より長くなるように配置されていてもよい。この様に構成することで、上記のr/dの値を大きくすることができ、効率よく変位を拡大させる変位拡大機構100を提供することができる。
【0045】
連結部600は、2つの圧電素子400a、400bの間の略中央に配置され、作用部500と基部200を連結し、圧電素子400よりも高いヤング率を有する材質からなる部材である。作用部500と基部200を連結する連結部600を備えることで、連結部600によって圧電素子400に与圧力を印加して、
図2に示すようなY方向に拡大した変位が現れた際に圧電素子400に加わる引張力を解除することができる。
【0046】
ここで、当該引張力を解除する原理は次の通りである。
図1に示した基本構造においては、作用部500に印加された力、あるいは当該拡大した変位を妨げるような負荷が存在する場合には、圧電素子400aあるいは圧電素子400bの何れかに対して引っ張り力が加わることは基本的には避けることができない。しかし、予め加わるであろう引張力よりも強い圧縮力を圧電素子400aおよび圧電素子400bに印加しておけば、結果的に圧電素子400aおよび圧電素子400bに加わる力は圧縮力の範囲に留まることになる。この圧縮力のことを本願では与圧力と呼んでいる。勿論、与圧力を与えた場合には、圧電素子には圧縮力の値としてはこの与圧力分だけ高くなるが、一般に圧電素子を構成する材料は引っ張り力には弱いが、圧縮力に対しては十分な余裕が存在するので、与圧力を加えることにより圧電素子の破壊を促進することはない。
【0047】
また、連結部600は、このような構成とすることで、与圧力の印加には寄与するが、変位拡大動作に対する影響は少なくて済む。特に、一方の圧電素子400に伸び変位を与え、もう一方の圧電素子に縮み変位を与えた場合には、連結部600の長さ変化が相殺される。そのため、連結部600の曲げ変形に関連する力のみが変位拡大動作に対する負荷となり、変位拡大動作に対する影響がより少なくて済む。このような構成により、圧電素子400に加わる引張力を効率よく解除することができ、圧電素子400に対する当該Y方向の力による破壊や接続箇所の剥離等を効率よく防止することができる。
【0048】
また、
図2の連結部600は、基部200又は作用部の少なくともいずれか一つと500一体加工してもよい。連結部600は、基部200又は作用部を介して取付部300と一体加工してもよい。このような構成とすることで、接合部分を設ける必要がないため、当該接合部分から部品が外れて壊れてしまう等といった脆弱性に対処することができる。
【0049】
また、連結部600は、別の例として、基部200又は作用部500の少なくともいずれか一つとの接合において、ろう付け又は溶接により接合されてもよい。
【0050】
また、連結部600については、圧電素子400に対して所要の与圧力を与えるために、その与圧力に相当する引張力に耐える材質である必要がある。その意味で脆性材料であってはならず、圧電素子よりも高いヤング率を有する材質からなる部材とする必要がある。上述したように、第1の圧電素子400aに対しては伸び変位を発生させ、第2の圧電素子400bに対しては縮み変位を発生させる場合には連結部600は総合して伸縮しなくて済むためエネルギーを取られずに済み、第1および第2の圧電素子400a、400bに効率よく与圧力を与えることができる。なお、連結部600の材質は、具体的には、金属であってよい。
【0051】
(第1の実施形態に係る変位拡大機構の動作)
本発明の第1の実施形態に係る変位拡大機構100の動作の一例について、
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る変位拡大機構100の第1の実施形態の構成の一例を示す正面図である。
【0052】
図2に示すように、変位拡大機構100は、基部200に取付部300を介して接続された圧電素子400aに電圧や電流を供給して、伸縮させると、当該伸縮に応じて全体的に傾斜して作用部500にY方向の変位が生じさせる。また、変位拡大機構100は、圧電素子400a、400bの両方を同位相で伸縮させれば、作用部500にZ方向の変位を生じさせることも可能である。
【0053】
(第1の変位拡大機構の与圧力の印加方法)
本発明の第1の実施形態に係る変位拡大機構100における圧電素子400への与圧力の印加方法の一例について、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る変位拡大機構100へ与圧力を印加する状態を説明するための正面図である。
【0054】
変位拡大機構100において、圧電素子400を挿入して取り付けるためのギャップ間(取付部300の上部と作用部500の下部との間)の距離は、圧電素子400の伸縮方向の寸法より狭くなるように設けられていてもよい。別の観点でいえば、連結部600の連結方向の寸法は、圧電素子400の伸縮方向の寸法と取付部300の取付方向の寸法の和より短くなるように設けられてもよい。この場合、圧電素子400を取り付ける場合には、組み立て完了時点においてある程度収縮させた状態になる様に取り付ける。この様に各々の寸法を設定することで、各部を組み立てた状態で圧電素子400に与圧力を簡易的に印加させることができる。
【0055】
つまり、変位拡大機構100は、
図3に示すように、圧電素子400を取り付ける際において、上下の取付部300と作用部500との間に引張力を加えて連結部600を伸ばすことで、圧電素子400を挿入して取り付けるためのギャップ間の距離を圧電素子400の伸縮方向の寸法よりも広くして圧電素子400を挿入した後に当該引張力を解除する。この様にして、圧電素子400に与圧力を簡易的に印加することができる。
【0056】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る変位拡大機構について説明する。
【0057】
(第2の実施形態に係る変位拡大機構の構成)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る変位拡大機構100の構成の一例を示す正面図である。
【0058】
図4に示すように、本発明の第2の実施形態に係る変位拡大機構100において、第1の実施形態との構成の差異点は、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bが基部200の上部(上面)の垂直方向に対して所定の角度を持つように(互いに角度を持つように)配置されている点である。このように互いに角度を持つように構成した場合でも、変位拡大の動作には本質的な影響を与えない。異なるのは発生する力の値である。第1の圧電素子400a及び第2の圧電素子400bに異なる変位を発生させ、作用部500に拡大された変位が発生しているものとする。この場合に、作用部500に発生する変位を打ち消す方向に力を加えると想定した時に、作用部500の位置が元の位置になる様な力の値を発生力Fとする。作用部500の発生変位をξとし、作用部から見た剛性をKとすると、発生変位、発生力と剛性の関係の関係は、次の(4)の式で表せられる。
【0059】
【0060】
圧電素子400が互いに角度を持つように構成した場合、Kの値が大きくなる。例えば、
図5の構成で圧電素子400の断面寸法5mm×5mm長さ10mm、圧電素子400の発生変位10μmの時、圧電素子400の相対角度(圧電素子400が基部200の上部の垂直方向に対する所定の角度)が0°の場合と10°の場合との発生力の違いは表1の通り、作用部500における発生変位、発生力共に圧電素子相対角が10°の場合の方が優れている。
【0061】
【0062】
このような構成とすることで何故発生力の改善がなされるかは、圧電素子400を互いに斜めに配置することにより、外力が加わった場合に外力は圧電素子の軸上の力として圧電素子に加わるため圧電素子への曲げ変形を極めて少さくすることができるためと考えられる。
【0063】
なお、本発明の第2の実施形態に係る変位拡大機構100の動作及び与圧力の印加方法については、第1の実施形態と同様である。
【0064】
(第2の実施形態の変形例)
図5を用いて、本発明の第2の実施形態に係る変位拡大機構100の構成の変形例を説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る変位拡大機構100の構成の一例を示す正面図である。
【0065】
図5に示すように、本発明の第2の実施形態の変形例に係る変位拡大機構100は、作用部500は、圧電素子400が接続される第1の作用部500aと第1の作用部500aに接続される第2の作用部500bとを有する。第2の作用部は、拡大された変位を出力し、対象物に力を伝達する部材であり、先端に行くに従って幅が狭くなる形状を有している。第2の作用部500bは、対象物に作用させられる程度に剛性があれば、どのような材質でもよく、例えば、軽量化を目的としてアルミニウムを用いることができる。第1の作用部500aと第2の作用部500bとは一体に設けられていてもよい。
【0066】
第2の作用部500bの上部において、矢印の方向(基部の設置面の垂直方向(Y方向))に負荷が加わる場合に、当該負荷のベクトルの延長線上に、伸縮方向の軸線の延長線が交わるように所定の角度を設けて配置されている。このような角度を設けるように圧電素子400が配置されている場合、圧電素子400に印加される力は圧電素子400の圧縮力と引張力が主体となり、曲げ力は極めて小さくなる。引っ張り方向の力については、第1の実施形態と同様に、当該引張力に打ち勝つような圧縮力を与圧力として予め圧電素子400に与えておけば、総合的に引張力が圧電素子400に加わることがないため、より効率よく引張力を解除することができる。
【0067】
<研磨装置>
次に、第1の実施形態に係る変位拡大機構を用いた研磨装置について説明する。
[研磨装置の構成]
図7は、本発明の第1の実施形態に係る変位拡大機構を用いた研磨装置900の構成の一例を示す正面図である。研磨装置900は、変位拡大機構100と、作用部500の、圧電素子400に接している面とは逆側の面に設けられた研磨部800と、を備える。
【0068】
研磨装置900は、変位拡大機構100の作用部500に取り付けられ、ポリッシングツールとしての研磨部800は、その先端を被研磨物901に当接し、もしくは遊離砥粒902を介した状態で、被研磨物901に接している。ここで例示する研磨方法は、研磨位置に液体に混ぜた遊離砥粒902を備え、圧電素子400を伸縮させることで研磨部800が被研磨物901の面上を摺動し、被研磨物901を研磨するものとしているが、研磨部800に直接ダイヤモンド砥粒等を固定したものを研磨する研磨方法も考えられる。
【0069】
研磨装置900は、
図7に示す例とは異なり、作用部500に被研磨物901を取り付け、研磨部800を固定するという構成にしても、研磨部800と被研磨物901との相対的な動きには変わりはないので、同様な研磨を行うことができる。
【0070】
研磨装置900において、このような構成にすることで、圧電素子400に加わる引張力を効率よく解除することができ、圧電素子400に対する当該Y方向の力による破壊や接続箇所の剥離等を効率よく防止することができる研磨装置を提供することができる。
【0071】
また、研磨装置900において、従来の変位拡大機構は、圧電素子ごとに設けられていたため、研磨装置等に変位拡大機構を備えると、互いの変位拡大機構が衝突したり、研磨装置全体が大きくなったりするという問題があった。しかし、実施例に示したように、本発明の変位拡大機構は、すべての圧電素子を使って全体として一つの変位拡大機構を構成しているため、研磨装置の構造をシンプルかつコンパクトにすることが可能である。
【0072】
<アクチュエータ>
次に、本発明の変位拡大機構をアクチュエータとして用いた例について説明する。
図8は、第2の実施形態の変形例に係る変位拡大機構を用いたアクチュエータの一例を示す正面図である。アクチュエータ1000の基本構成は第2の実施形態の変形例に係る変位拡大機構100と同じである。
【0073】
アクチュエータ1000は、基盤となる基部200と、基部の一方側の面に設けられた第1の取付部300aおよび第2の取付部300bと、第1の取付部300aおよび第2の取付部300bに、それぞれその一端が接続される第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bと、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bの他端に接続される、圧電素子の伸縮により変位を生じる作用部500と、第1の圧電素子400aと第2の圧電素子400bの間の中央に配置され、作用部500と基部200を連結し、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bよりも高いヤング率を有する材質からなる連結部600と、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに電圧または電流を供給して、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bを伸縮駆動させる駆動部700とを備えている。第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bは、
図5の変位拡大機構と同様、斜めに配置されている。そして、駆動部700により、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに電圧または電流が供給されて第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bが伸縮変位することにより、作用部500から拡大された変位が出力される。
【0074】
作用部500は、圧電素子400が接続される第1の作用部500aと第1の作用部500aに接続される第2の作用部500bとを有する。第2の作用部500bは、拡大された変位を出力し、対象物に力を伝達する部材であり、先端に行くに従って幅が狭くなる形状を有している。第2の作用部500bは、対象物に作用させられる程度に剛性があれば、どのような材質でもよく、例えば、軽量化を目的としてアルミニウムを用いることができる。第1の作用部500aと第2の作用部500bとは一体に設けられていてもよい。第2の作用部500bに対象物1100を取り付けることにより、対象物1100に拡大されたY方向の変位を生じさせることができる。具体的には、第1の圧電素子400aのみに電圧を印加した場合には、対象物1100を右側に変位させることができ、第2の圧電素子400bのみに電圧を印加した場合には、対象物1100を左側に変位させることができる。
【0075】
このようなアクチュエータ1000においては、連結部600により第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに与圧力を印加することができるので、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに加わる引張り力を有効に解除することができる。
【0076】
また、連結部600は、このような構成とすることで、与圧力の印加には寄与するが、変位拡大動作に対する影響は少なくて済む。特に、駆動部700により第1の圧電素子400aに対しては延び変位を発生させ、第2の圧電素子400bには縮み変位を発生させるように駆動する場合(またはその反対の場合)には連結部600の長さ変化が相殺される。そのため、連結部600の曲げ変形に関連する力のみが変位拡大動作に対する負荷となり、変位拡大動作に対する影響がより少なくて済む。なお、伸縮変位の縮退動作は、圧電素子が伸びた後に、本来の長さに戻ることを含む。
【0077】
ところで、圧電素子を有するアクチュエータを動作させる際に、周囲の温度変化があった場合や、圧電素子を高い頻度で駆動して圧電素子自身からの自己発熱によって温度が上昇する場合に、熱膨張により圧電素子の長さが変化するため、従来の圧電素子を有するアクチュエータでは、圧電素子の長さの変化により、作用部の初期位置は変化する。これに対し、上述したように、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bの一方に延び変位を発生させ、他方には縮変位を発生させる場合には、そのような初期位置の変化をなくすことができる。
【0078】
また、圧電素子には、ステップ状の電圧や一定の電圧等を印加した後、時間経過とともに、伸び量が安定せず変化してしまうクリープと称する現象が生じる。クリープ速度は時間対数的に減少する。クリープ現象は、クローズドループ制御の場合は補正することができるが、オープンループ制御では補正することができない。しかし、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bを互いに反対方向に所定の量で変位させることにより、クリープによる長さ変化が相殺され、クリープ現象による位置ずれを軽減することができる。このため、制御が複雑なクローズドループ制御を行う必要がない。
【0079】
また、このようなアクチュエータ1000は、本体部が、基部200、第1および第2の取付部300a,300b、第1および第2の圧電素子400a,400b、作用部500、ならびに連結部材600のみのシンプルな構成なので、高速駆動に適している。
【0080】
なお、アクチュエータは
図8の例に限らず、第1の実施形態の変位拡大機構、または第2の実施形態の変位拡大機構と同じ基本構成を有していてもよい。
【0081】
[アクチュエータを電子部品の処理に用いる作用子の駆動に用いた例]
図9は、
図8のアクチュエータを電子部品の処理に用いる作用子の駆動に用いた例を示す正面図である。アクチュエータ1000の作用部500(第2の作用部500b)の先端部には、対象物として作用子である測定プローブ1101が取り付けられている。
【0082】
駆動部700は、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bが互いに反対方向に所定の量で変位するように、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに電圧または電流を繰り返し高速で供給する。これにより、拡大した変位を測定プローブ1101に伝達して、測定プローブ1101を高速で上下動させることができる。
【0083】
図10は、上記測定プローブ1101により電子部品の電気特性を測定している状態を示す図である。
図10に示すように、測定装置のターンテーブル1090は、回転可能に設けられ、周方向に沿って電子部品1080を収納する複数の収納溝1091を有している。そして、ターンテーブル1090を回転させつつ、駆動装置1により作用子としての測定プローブ1101を高速で繰り返し変位(上下動)させることにより、複数の収納溝1091に収納された電子部品80の電気特性等を順次測定する。すなわち、ターンテーブル1090を回転させて収納溝1091に収納された電子部品1080が測定プローブ1101の直上の測定位置に達した際に、測定プローブ1101を上方に変位させて測定プローブ1101の先端を電子部品1080の下面に設けられた電極1081に接触させ、電子部品1080の電気特性を測定し、測定後、測定プローブ1101を下方に変位させて退避させる。そして、次の電子部品1080が測定位置に到達した時点で再び同様の動作を行い、これら動作を高速で繰り返す。
【0084】
このように、アクチュエータ1000を電子部品の測定に用いることにより、作用子である測定プローブを実用的なストロークで高速に駆動させることができる。また、圧電素子の引張りによる破損や、熱膨張およびクリープの影響を低減することができる。
【0085】
以上は、作用子として測定装置の測定プローブ1101を用いた例について示したが、作用子は測定プローブに限るものではない。
【0086】
図11は、作用子として吸着ノズル1102を用いたアクチュエータを電子部品処理装置に用いた状態を示す図であり、駆動される作用子が電子部品を吸着する吸着ノズルである場合を示す。本例では、アクチュエータ1000の作用部500に取り付けられている作用子が吸着ノズル1102に代わっている以外は
図9の例と同じである。
【0087】
吸着ノズル1102は、上下方向に延びるように作用部500(第2の作用部500b)に装着されている。吸着ノズル1102の上端部には、吸着機構(図示せず)が設けられている。そして、吸着機構に設けられた真空ポンプ等の吸引機構により吸引することにより、吸着ノズル1102の下端の吸着端1103に電子部品を吸着する。
【0088】
本例においてもアクチュエータ1000は、電子部品の測定を行うための測定装置に用いることができる。その際の測定装置の例を
図12に示す。この測定装置は、上記アクチュエータ1000と、上記吸着ノズル1102と、上記吸着機構(図示せず)と、ターンテーブル1110と、基盤1120と、測定治具1130とを有する。
【0089】
ターンテーブル1110は、回転可能に設けられ、周方向に沿って電子部品1080を収納する複数の収納溝1111を有している。収納溝1111はターンテーブル1110を貫通するように設けられている。電子部品1080は、電極1081が下面側になるように収納溝1111に収納される。基盤1120は、ターンテーブル1110を回転可能に支持し、その表面が電子部品1080の搬送面となっている。また、基盤1120には貫通孔1121が形成され、貫通孔1121の上方位置に作用子としての吸着ノズル1102が設けられ、貫通孔1121の下方位置に測定治具1130が設けられている。測定治具1130は架台1140に取り付けられており、測定治具1130の上面には、電子部品1080の電極1081に対応する位置に測定端子1131が設けられている。
【0090】
そして、ターンテーブル1110を回転させつつ、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに所定の電圧または電流を供給して、作用部500を介して作用子としての吸着ノズル100を高速で繰り返し変位(上下動)させることにより、複数の収納溝1111に収納された電子部品1080を順次吸着してその電気特性等を測定する。すなわち、ターンテーブル1110を回転させ、収納溝1111に収納された電子部品1080を基盤1120の搬送面に沿って搬送させて、貫通孔1121に対応する位置に達した際に、電子部品1080を吸着ノズル1102に吸着させ、この状態で吸着ノズル1102を下方に変位させて電子部品1080の電極1081を測定治具1130の電極1131に接触させ、電子部品1080の電気特性を測定する。測定後、吸着ノズル1102を上方に変位させて吸着ノズル1102に吸着された電気部品1080を搬送面に戻し、吸着を解除する。そして、次の電子部品1080が貫通孔1121に対応する位置に到達した時点で再び同様の動作を行い、これら動作を高速で繰り返す。
【0091】
このとき、作用子が測定プローブ1101から吸着ノズル1102に代わっただけであるので、測定プローブ1101を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0092】
また、吸着ノズル1102を装着したアクチュエータ1000は、電子部品をキャリアテープに装入する挿入装置に用いることもできる。その際の挿入装置の例を
図13に示す。この挿入装置は、上記アクチュエータ1000と、上記吸着ノズル1102と、上記吸着機構(図示せず)と、ターンテーブル1150と、基盤1160と、磁石1180とを有する。
【0093】
ターンテーブル1150は、回転可能に設けられ、周方向に沿って電子部品1090を収納する複数の収納溝1151を有している。収納溝1151はターンテーブル1150を貫通するように設けられている。基盤1160は、ターンテーブル1150を回転可能に支持し、その表面が電子部品1080の搬送面となっている。また、基盤1160の下方には、キャリアテープ1170が移動可能に配置されている。キャリアテープ1170には、電子部品1080が収納される複数のキャビティ1171が等間隔で設けられている。基盤1160には貫通孔1161が形成され、貫通孔1161の上方位置に作用子としての吸着ノズル1102が設けられ、キャリアテープ1170下方の貫通孔1161に対応する位置には磁石1180が設けられている。
【0094】
そして、ターンテーブル1150を回転させ、かつキャリアテープ1170を移動させつつ、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに電圧または電流を供給して、作用子としての吸着ノズル1102を高速で繰り返し変位(上下動)させることにより、複数の収納溝1151に収納された電子部品1080をキャリアテープ1170のキャビティ1171内に順次挿入させる。すなわち、ターンテーブル1150を回転させ、収納溝1151に収納された電子部品1080を基盤1160の搬送面に沿って搬送させて、貫通孔1161に対応する位置に達した際に、電子部品1080を吸着ノズル1102に吸着させるとともに、貫通孔1161に対応する位置にキャビティ1171を位置させ、その状態で吸着ノズル1102を下方に変位させ、吸着ノズル1102の吸着を解除して電子部品1080をキャビティ171内に挿入する。挿入後、吸着ノズル1102を上方に変位させて貫通孔1161および収納溝1151を経て
図13の位置まで戻す。そして、次の電子部品80が貫通孔161に対応する位置に到達した時点で再び同様の動作を行い、これら動作を高速で繰り返す。なお、磁石1180は、キャビティ1171内の電子部品1080を吸引して電子部品1080の姿勢を安定させるためのものである。
【0095】
以上のように吸着ノズル1102を挿入装置に用いた場合にも、測定プローブ1101を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0096】
<ディスペンサ>
次に、上記実施形態のアクチュエータを用いたディスペンサについて説明する。
図14は一実施形態に係るディスペンサを示す部分断面正面図、
図15、
図16は液吐出部材を示す断面図である。
である。
【0097】
図14に示すように、ディスペンサ2000は、液体が導入され、導入された液体を吐出する液体吐出部材2100と、液体吐出部材2100からの液体の吐出および遮断を行う弁2200と、弁2200を駆動するアクチュエータ2300とを有する。
【0098】
液体吐出部材2100は、
図15に示すように、本体部2101と、本体部2101内に形成された弁2200が挿通される液室2102と、液室2102に液体を導入する液体導入部2103と、液室2102の底部に連通する液体吐出口2104と、液室2102の底部に設けられ、弁2200の先端が着座する弁座2105とを有する。
【0099】
弁2200は先端が球面のロッド状をなし、鉛直方向である図中Y方向に延びており、液室2102は弁体2200の形状に対応した円柱状をなしている。弁2200は、通常、
図15に示すように、その先端が弁座2105に着座しており、液体吐出口2104は塞がれている。この状態では、液体は吐出されない。
【0100】
弁2200は、アクチュエータ2300によりY方向に昇降駆動されるようになっている。
図15の状態から、アクチュエータ2300を駆動させて弁2200を上昇させることにより、
図16に示すように液体吐出口2104が開かれて、液体吐出口2104から液体が吐出される。
【0101】
アクチュエータ2400は、
図8のアクチュエータ1000と同様、基盤となる基部200と、基部の一方側の面に設けられた第1の取付部300aおよび第2の取付部300bと、第1の取付部300aおよび第2の取付部300bに、それぞれその一端が接続される第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bと、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bの他端に接続される、圧電素子の伸縮により変位を生じる作用部500と、第1の圧電素子400aと第2の圧電素子400bの間の中央に配置され、作用部500と基部200を連結し、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bよりも高いヤング率を有する材質からなる連結部600と、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに電圧または電流を供給して、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bを伸縮駆動させる駆動部700とを備えている。第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bは、
図8のアクチュエータと同様、斜めに配置されている。そして、駆動部700により、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに電圧または電流が供給されて第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bが伸縮変位することにより、作用部500から拡大された変位が出力される。なお、本例では、第1の取付部300aおよび第2の取付部300bは、基部200の面に設けられている。
【0102】
作用部500は、圧電素子400が接続される第1の作用部500aと第1の作用部500aに接続される第2の作用部500bとを有する。第2の作用部500bの先端には、弁2200を取り付ける弁取付部1200が設けられている。第2の作用部500bは、軽量化のため、高張力アルミニウム材で構成され、図示するように中央部が肉薄部501になるように加工されていてもよい。
【0103】
このとき、駆動部700により第1の圧電素子400aに電圧を印加して伸長させることにより作用部500が上方に駆動され、それにともなって弁2200を上昇させることができる。また、第2の圧電素子400bに電圧を印加して伸長させることにより弁2200を下降させることができる。また、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bの一方に伸び変位を発生させ、他方に縮み変位を発生させて弁2200を上下動させてもよい。
【0104】
なお、アクチュエータ2300の基部200は、支持部材2400で支持されている。また、支持部材2400は、液体吐出部材2100も支持している。
【0105】
このように構成されるディスペンサ2000においては、第2の圧電素子400bのみに電圧を印加することにより、
図15に示すように、弁2200を下方に移動させて液体吐出口2104を塞ぎ、液体が吐出されない状態とすることができる。また、第1の圧電素子400aのみに電圧を印加することにより、
図16に示すように、弁2200を上方に移動させて液体吐出口2104を開き、液体吐出口2104から液体が吐出する状態とすることができる。
【0106】
また、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに電圧が印加されていない状態で、
図15に示すように、弁2200により液体吐出口2104が塞がれ、第1の圧電素子400aに延び変位、第2の圧電素子400bに縮み変位を発生させることにより、
図16に示すように、弁2200が上昇して液体吐出口2104が開かれ、液体吐出口2104から液体が吐出されるようなノーマルクローズにしてもよい。
【0107】
また、電圧を印加していないときに弁2200が液体吐出口2104が開いた状態となり、電圧の印加により第1の圧電素子400aに縮み変位、第2の圧電素子400bに伸び変位を発生させた際に、弁2200が下降され、液体吐出口2104が塞がれるノーマルオープンであってもよい。
【0108】
第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bの一方に延び変位を発生させ、他方に縮み変位を発生させる場合は、上述したように連結部600の長さ変化が相殺される。そのため、連結部600の曲げ変形に関連する力のみが変位拡大動作に対する負荷となり、変位拡大動作に対する影響がより少なくて済む。また、周囲の温度変化があった場合や、圧電素子を高い頻度で駆動して圧電素子自身からの自己発熱によって温度が上昇する場合に、熱膨張により圧電素子の長さが変化しても、その変動がキャンセルされ、液漏れを防止することができる。また、上述のように圧電素子のクリープの影響もキャンセルできるので、複雑な制御を必要とするクローズドループ制御を行わなくても液漏れをほぼ完全に抑制することができる。
【0109】
<エアバルブ>
次に、上記実施形態のアクチュエータを用いたエアバルブについて説明する。
図17は一実施形態に係るエアバルブを示す断面図、
図18はその斜視図である。
【0110】
これらの図に示すように、エアバルブ3000は、圧力空気が導入される空気圧力室3101を画成するハウジング3102、および空気圧力室3101から外部へ通じる空気排出口(ノズル)3103を有するバルブ本体3100と、空気排出口3103を閉鎖および開放するように動作する弁体3200と、弁体3200を駆動するアクチュエータ3300とを有する。
【0111】
空気圧力室3101には、ガス供給口3104が形成されており、図示しない空気圧供給源から空気供給口3104を介して圧力空気が導入される。空気排出口3103は、圧力空気室3101からバルブ本体3100の外側に抜けるように、バルブ本体3100の壁部の一箇所に設けられている。バルブ本体3100の空気排出口3103が設けられている部分には、圧力空気室3101側に弁座3105が設けられている。なお、3106は、ハウジング3102の蓋である。
【0112】
弁体3200は、例えばゴムシートで形成することができる。弁座3105には弁体3200が接離するようになっており、弁体3200が弁座3105に当接した際には、両者の間が密閉されるようになっている。なお、弁座を設けずに、ハウジング3102に弁座の機能を持たせてもよい。
【0113】
アクチュエータ3300は、
図8のアクチュエータ100と同様、基盤となる基部200と、基部の一方側の面に設けられた第1の取付部300aおよび第2の取付部300bと、第1の取付部300aおよび第2の取付部300bに、それぞれその一端が接続される第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bと、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bの他端に接続される、圧電素子の伸縮により変位を生じる作用部500と、第1の圧電素子400aと第2の圧電素子400bの間の中央に配置され、作用部500と基部200を連結し、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bよりも高いヤング率を有する材質からなる連結部600と、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに電圧または電流を供給して、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bを伸縮駆動させる駆動部700とを備えている。そして、駆動部700により、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに電圧または電流が供給されて第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bが伸縮変位することにより、作用部500から拡大された変位が出力される。なお、本例では、第1の取付部300aおよび第2の取付部300bは、基部200の面に設けられている。また、作用部500は、第1の作用部500aと第2の作用部500bに分かれておらず、一体に形成されている。
【0114】
図17,18の例では、空気供給口3104は圧電素子400a,400bに対応する位置に設けられている。これにより、空気供給口3104から供給される空気の流れにより、圧電素子400a,400bを冷却する効果が期待できる。また、空気供給口3104を空気排出口3103と一直線になるように配置した場合には、空気供給口3104から空気排出口3103に至る圧力損失を最小化できる。
【0115】
ハウジング3102および蓋3105は、アルミダイキャストあるいはPPS等の樹脂材料を適用することができる。ハウジング3102と蓋3105の接合は、アルミダイキャストの場合には、適宜シール材を挟んでエアタイトにネジ止めにより行うことができる。樹脂材料の場合には、超音波溶着あるいはレーザ溶着等を適用することができる。
【0116】
このように構成されるエアバルブ3000においては、下側の第1の圧電素子400aのみに電圧を印加することにより、弁体3200は上方に移動し、弁体3200は弁座3105に接した状態となり、空気排出口3103からの空気の放出は生じない。上側の第2の圧電素子400bのみに電圧を印加することにより、弁体3200は下方に移動し、弁体3200と弁座3105との間にギャップが生じる。これにより、空気供給口3104から供給された圧縮空気は、アクチュエータ3300の両脇の空間を通り、形成されたギャップを通して空気排出口3103から噴出する。
【0117】
また、第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bに電圧が印加されていない状態で、弁体3200により空気排出口3103が塞がれ、第1の圧電素子400aに縮み変位、第2の圧電素子400bに延び変位を発生させることにより、弁体220が下方に移動して空気排出口3103が開かれて圧縮空気が空気排出口3103から噴出されるようなノーマルクローズにしてもよい。
【0118】
また、電圧を印加していないときに空気排出口3103が開いた状態となり、電圧の印加により第1の圧電素子400aに延び変位、第2の圧電素子400bに縮み変位を発生させた際に、弁体3200が上方に移動され、空気排出口3103が塞がれるノーマルオープンであってもよい。
【0119】
第1の圧電素子400aおよび第2の圧電素子400bの一方に延び変位を発生させ、他方に縮み変位を発生させることにより、ディスペンサと同様の効果を得ることができ、エア漏れ等を防ぐことができる。
【0120】
<他の適用>
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、本発明の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0121】
例えば、上記実施形態では、変位拡大機構、研磨装置、およびアクチュエータとして、2つの圧電素子を用いた例を示したが、圧電素子を3つ以上用いてもよい。これにより作用部の変位方向の自由度を高くすることができる。
【0122】
また、本発明の一実施形態に係る変位拡大機構100は、複合的に使用しても良い。その際に、複数の変位拡大機構を直列に接続するような使い方、つまり、変位拡大機構100の基部200と別の変位拡大機構100の作用部500とを接続することも可能であり、それによって、変位をより大きくすることもできる。特に、スペースの制約が厳しい箇所では、このような使い方は、有効である。また、2台の変位拡大機構100を、その接続角度が90゜になるように結合する等の接続方法のバリエーションも考えられる。
【0123】
さらに、また、上記実施の形態では伸縮素子として圧電素子を用いた場合について説明したが、伸縮する素子であれば特に限定されず、磁歪素子あるいは形状記憶合金等の伸縮機能を有する他の素子を用いることも可能である。
なお、上述の実施例は少なくとも下記を開示している。
本発明に係る変位拡大機構は、基盤となる基部と、前記基部の一方側の面に設けられた第1の取付部および第2の取付部と、前記第1の取付部および前記第2の取付部に、それぞれその一端が取り付けられる第1の圧電素子および第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の他端に接続される、圧電素子の伸縮により変位を生じる作用部と、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子の間の中央に配置され、前記作用部と前記基部を連結し、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子よりも高いヤング率を有する材質からなる連結部と、を備える。
(1)
基盤となる基部と、
前記基部の一方側の面に設けられた第1の取付部および第2の取付部と、
前記第1の取付部および前記第2の取付部に、それぞれその一端が取り付けられる第1の圧電素子および第2の圧電素子と、
前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の他端に接続される、圧電素子の伸縮により変位を生じる作用部と、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子の間の中央に配置され、前記作用部と前記基部を連結する連結部と、
を備える変位拡大機構。
(2)
前記作用部は、前記基部の上部からの距離が、前記第1の取り付け部および前記第2の取付部の間の距離より長くなるように配置されている、(1)に記載の変位拡大機構。
(3)
前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子は、前記基部の設置面の垂直方向に対して所定の角度を持つように配置されている、(1)又は(2)に記載の変位拡大機構。
(4)
前記所定の角度は、前記変位拡大機構に負荷が印加される線上に、前記2つの圧電素子の伸縮方向の軸線の延長線が交わるように設けられている、(3)に記載の変位拡大機構。
(5)
前記連結部の材質は、金属であり、前記基部又は前記作用部の少なくともいずれか一つと一体加工されている、(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の変位拡大機構。
(6)
前記取付部は、前記圧電素子に対して接する幅よりも、前記基部に対して接する幅の方が狭くなるように形成されている、(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の変位拡大機構。
(7)
基盤となる基部と、
前記基部の一方側の面に設けられた第1の取付部および第2の取付部と、
前記第1の取付部および前記第2の取付部に、それぞれその一端が接続される第1の圧電素子および第2の圧電素子と、
前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の他端に接続される、圧電素子の伸縮により変位を生じる作用部と、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子の間の中央に配置され、前記作用部と前記基部を連結する連結部と、
前記作用部の、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に接している面とは逆側の面に設けられた研磨部と、
を備える研磨装置。
(8)
基盤となる基部と、
前記基部の一方側の面に取り付けられる第1の取付部および第2の取付部と、
前記第1の取付部および前記第2の取付部の先端部に、それぞれその一端が接続される第1の圧電素子および第2の圧電素子と、
前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の他端に接続される、圧電素子の伸縮により変位を生じる作用部と、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子の間の中央に配置され、前記作用部と前記基部を連結する連結部と、
前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に電圧または電流を供給して、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子を伸縮駆動させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部により、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に電圧または電流が供給されて前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子が伸縮変位することにより、前記作用部から拡大された変位が出力される、アクチュエータ。
(9)
前記駆動部は、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子が互いに反対方向に所定の量で変位するように、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子に電圧または電流を供給する、(8)に記載のアクチュエータ。
(10)
前記作用部は、前記基部からの距離が、前記第1の取り付け部および前記第2の取付部の間の距離より長くなるように配置されている、(9)に記載のアクチュエータ。
(11)
前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子は、前記基部の設置面の垂直方向に対して所定の角度を持つように配置されている、(9)又は(10)に記載のアクチュエータ。
(12)
前記所定の角度は、前記変位拡大機構に負荷が印加される線上に、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の伸縮方向の軸線の延長線が交わるように設けられている、(11)に記載のアクチュエータ。
(13)
チップ状の電子部品を処理する電子部品処理装置において電子部品の処理に用いる作用子を駆動する、(9)乃至(12)のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
(14)
前記電子部品処理装置は、電子部品の特性の測定を行うための測定装置であり、前記作用子は、前記電子部品に接触されて特性を測定するための測定プローブである、(13)に記載のアクチュエータ。
(15)
前記電子部品処理装置は、電子部品の特性の測定を行うための測定装置であり、前記作用子は、前記電子部品を吸着するための吸着ノズルであり、前記吸着ノズルに吸着された電子部品が特性を測定するための測定プローブに接触される、(13)に記載のアクチュエータ。
(16)
前記電子部品処理装置は、電子部品をテーピングする際に電子部品をキャリアテープに挿入する挿入装置であり、前記作用子は、前記電子部品を吸着するための吸着ノズルであり、前記吸着ノズルに吸着された電子部品が前記テープに挿入される、(13)に記載のアクチュエータ。
(17)
液体が導入され、導入された液体を吐出する液体吐出部材と、
前記液体吐出部材からの液体の吐出および遮断を行う弁と、
前記弁体を駆動する、(8)乃至(12)のいずれか1項に記載のアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータから出力された変位により、前記弁が変位し、前記液体吐出部材からの液体の吐出および遮断を行う、ディスペンサ。
(18)
圧力空気が導入される空気圧力室と、該空気圧力室から外部へ通じる空気排出口とを有するバルブ本体と、
前記空気圧力室内部で前記空気排出口を閉鎖および開放するように動作する弁体と、
前記空気圧力室に設けられ、前記弁体を駆動する、請求項8乃至請求項12のいずれか1項に記載のアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータから出力された変位により前記弁体が変位し、前記空気排出口からの空気の吐出および遮断を行う、エアバルブ。
【符号の説明】
【0124】
100 変位拡大機構
200 基部
300 取付部
400 圧電素子
500 作用部
600 連結部
700 駆動部
800 研磨部
900 研磨装置
901 被研磨物
902 遊離砥粒
1000 アクチュエータ
2000 ディスペンサ
3000 エアバルブ