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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】投光レンズ及び投光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/02 20060101AFI20230127BHJP
   G02B 3/06 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
G02B3/02
G02B3/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021536580
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2019030274
(87)【国際公開番号】W WO2021019771
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】397002201
【氏名又は名称】株式会社トヨテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】山本 高広
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-040315(JP,A)
【文献】特開2008-108674(JP,A)
【文献】特開2013-030446(JP,A)
【文献】特開2016-224389(JP,A)
【文献】特開2018-181726(JP,A)
【文献】特開2007-227410(JP,A)
【文献】登録実用新案第3153647(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00-3/14
F21V 5/04
H01L 33/58
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光が入射する入射面と、
前記入射面とは反対側の面であって前記入射面を通った光を投光側へ出射する出射面と、を備え、
前記入射面および前記出射面と交わる光軸をZ軸とし、そのZ軸と直交しつつ互いに直交する軸をX軸およびY軸とした場合、
前記入射面および前記出射面は、XZ断面およびYZ断面においてそれぞれZ軸に関し線対称に形成され、
XZ断面における前記入射面は、前記光源側に凹の曲線であって、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなり、
YZ断面における前記出射面は、前記投光側に凹の曲線であり、
XZ断面において、Z軸と前記入射面との交点における前記入射面の曲率の絶対値は、Z軸と前記出射面との交点における前記出射面の曲率の絶対値よりも大きく、
YZ断面において、Z軸と前記入射面との交点における前記入射面の曲率の絶対値は、Z軸と前記出射面との交点における前記出射面の曲率の絶対値よりも小さいことを特徴とする投光レンズ。
【請求項2】
前記入射面は、Z軸と前記入射面との交点におけるXZ断面の曲率の絶対値が、Z軸と前記入射面との交点におけるYZ断面の曲率の絶対値よりも大きく、
前記出射面は、Z軸と前記出射面との交点におけるYZ断面の曲率の絶対値が、Z軸と前記出射面との交点におけるXZ断面の曲率の絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の投光レンズ。
【請求項3】
前記入射面および前記出射面は、XZ断面およびYZ断面に関してそれぞれ対称に形成されるアナモフィック面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の投光レンズ。
【請求項4】
前記入射面および前記出射面の一方は、X軸方向またはY軸方向のいずれか一方に垂直な断面が直線状のシリンドリカル面であり、
前記入射面および前記出射面の他方は、X軸方向およびY軸方向に垂直な断面が両方とも曲線状のトロイダル面であることを特徴とする請求項3記載の投光レンズ。
【請求項5】
XZ断面における前記出射面は、Z軸近傍が凹であってZ軸から離れた位置で凸に変化する曲線により形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の投光レンズ。
【請求項6】
YZ断面における前記出射面は、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる凹の曲線であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の投光レンズ。
【請求項7】
XZ断面において、
前記光源から出射された光線は、発散角が0°より大きく半値半角以下の範囲の内側光線を含み、
前記入射面への前記内側光線の入射位置がZ軸から離れるにつれて前記入射面への前記内側光線の入射角が大きくなる位置に前記光源を置いた場合に、
前記内側光線が前記入射面に入射して屈折した第1X屈折光線は、前記内側光線を延長した第1X延長線に対してZ軸とは反対側に位置し、
前記第1X屈折光線が前記出射面に入射して屈折した第2X屈折光線は、前記第1X屈折光線を延長した第2X延長線に対してZ軸とは反対側に位置し、
前記第1X屈折光線と前記第1X延長線との間の第1X偏角は、前記入射面への前記内側光線の入射位置がZ軸から離れるにつれて大きくなり、
前記第2X屈折光線と前記第2X延長線との間の第2X偏角は、前記出射面への前記第1X屈折光線の入射位置がZ軸から離れるにつれて大きくなるように、
前記入射面および前記出射面の形状が設定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の投光レンズ。
【請求項8】
YZ断面において、
前記入射面から前記出射面へ向かう光線が第1Y屈折光線であり、
前記第1Y屈折光線が前記出射面に入射して屈折した第2Y屈折光線は、前記第1Y屈折光線を延長した第2Y延長線に対してZ軸とは反対側に位置し、
前記第2Y屈折光線と前記第2Y延長線との間の第2Y偏角は、前記出射面への前記第1Y屈折光線の入射位置がZ軸から離れるにつれて大きくなるように、
前記出射面の形状が設定されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の投光レンズ。
【請求項9】
前記光源から出射された光の波長における屈折率が1.56以上の材料によって形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の投光レンズ。
【請求項10】
Z軸方向に光を出射する光源と、請求項1から9のいずれかに記載の投光レンズと、を備える投光装置であって、
前記光源から出射される光は、XZ断面およびYZ断面における光強度分布がそれぞれZ軸に関して線対称であり、Z軸から離れるにつれて光強度が小さくなり、XZ断面における発散角がYZ断面における発散角よりも大きいことを特徴とする投光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光を矩形状の範囲に投光する投光レンズ及び投光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体検出装置や距離計測装置の投光系、表示装置のバックライト等に用いられる投光装置には、光源からの光を投光レンズによって広い範囲に投光するものが知られている。特許文献1には、投光範囲を長円状にしつつ、その投光範囲内の光強度を確保するために、出射面を複雑な三次元形状に形成すると共に、その出射面による投光範囲の形成などに影響を及ぼさないように入射面を半球状にする投光レンズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6460878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、投光レンズを通った光の投光範囲が長円状なので、例えば、物体検出装置により矩形状の範囲の物体を検出するために、その検出範囲を長円状の投光範囲の内側に含めた場合、検出範囲外に投光される光量が多くなり易い。そうすると、相対的に検出範囲内の光強度が低下し、物体検出装置の検出感度が低下するという問題が生じる。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、投光範囲を矩形状に近づけつつ、その投光範囲内の光強度を確保できる投光レンズ及び投光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の投光レンズは、光源から出射された光が入射する入射面と、前記入射面とは反対側の面であって前記入射面を通った光を投光側へ出射する出射面と、を備え、前記入射面および前記出射面と交わる光軸をZ軸とし、そのZ軸と直交しつつ互いに直交する軸をX軸およびY軸とした場合、前記入射面および前記出射面は、XZ断面およびYZ断面においてそれぞれZ軸に関し線対称に形成され、XZ断面における前記入射面は、前記光源側に凹の曲線であって、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなり、YZ断面における前記出射面は、前記投光側に凹の曲線であり、XZ断面において、Z軸と前記入射面との交点における前記入射面の曲率の絶対値は、Z軸と前記出射面との交点における前記出射面の曲率の絶対値よりも大きく、YZ断面において、Z軸と前記入射面との交点における前記入射面の曲率の絶対値は、Z軸と前記出射面との交点における前記出射面の曲率の絶対値よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の投光レンズによれば、XZ断面において、入射面が光源側に凹の曲線であり、Z軸と入射面との交点における入射面の曲率の絶対値が、Z軸と出射面との交点における出射面の曲率の絶対値よりも大きいので、光源からの光を入射面によって主にX軸方向に広げることができる。また、YZ断面において、出射面が投光側に凹の曲線であり、Z軸と入射面との交点における入射面の曲率の絶対値が、Z軸と出射面との交点における出射面の曲率の絶対値よりも小さいので、光を出射面によって主にY軸方向に広げることができる。このように、光源からの光を、入射面によって主にX軸方向に広げた後、出射面によって主にY軸方向に広げるので、投光レンズを通った光の投光範囲を矩形状に近づけることができる。
【0008】
さらに、XZ断面における入射面の曲率の絶対値がZ軸から離れるにつれて小さくなるので、入射面によって光線束を、Z軸近傍で大きく拡散しつつ、Z軸からX軸方向に離れた周辺部で小さく拡散できる。これにより、出射面に到達した光の光強度を、Z軸近傍で減少できると共に、Z軸からX軸方向に離れた周辺部で増加できる。光源から出射される光の光強度が大きい部分をZ軸に合わせることによって、入射面を通って出射面に到達した光の光強度をX軸方向の略全長に亘って確保できる。このような光強度の光線束が出射面によって主にY軸方向に広げられるので、投光レンズを通った光の光強度を投光範囲の略全体に亘って確保できる。
【0009】
請求項2記載の投光レンズによれば、請求項1記載の投光レンズの奏する効果に加え、次の効果を奏する。入射面は、Z軸と入射面との交点におけるXZ断面の曲率の絶対値が、Z軸と入射面との交点におけるYZ断面の曲率の絶対値よりも大きいので、光を入射面によってY軸方向に小さくX軸方向に大きく拡散できる。また、出射面は、Z軸と出射面との交点におけるYZ断面の曲率の絶対値が、Z軸と出射面との交点におけるXZ断面の曲率の絶対値よりも大きいので、光を出射面によってX軸方向に小さくY軸方向に大きく拡散できる。これらの結果、光源からの光をX軸方向に広げる役割とY軸方向に広げる役割とを、それぞれ入射面と出射面とに分担させ易くできるので、投光レンズを通った光の投光範囲をより矩形状に近づけつつ、その投光範囲内の光強度を確保し易くできる。
【0010】
請求項3記載の投光レンズによれば、請求項1又は2に記載の投光レンズの奏する効果に加え、次の効果を奏する。入射面および出射面は、XZ断面およびYZ断面に関してそれぞれ対称に形成されるアナモフィック面である。これにより、入射面におけるX軸方向への光の広げ方とY軸方向への光の広げ方とをそれぞれ個別に設定し易くできると共に、出射面におけるX軸方向への光の広げ方とY軸方向への光の広げ方とをそれぞれ個別に設定し易くできる。その結果、光の投光範囲を矩形状に近づけつつ、その投光範囲内の光強度を確保するための投光レンズを設計し易くできる。
【0011】
請求項4記載の投光レンズによれば、請求項3記載の投光レンズの奏する効果に加え、次の効果を奏する。入射面および出射面の一方は、X軸方向またはY軸方向のいずれか一方に垂直な断面が直線状のシリンドリカル面である。入射面および出射面の他方は、X軸方向およびY軸方向に垂直な断面が両方とも曲線状のトロイダル面である。トロイダル面よりも形成が容易で、誤差感度の小さいシリンドリカル面によって、一方向に光を拡散し易くできると共に、トロイダル面によって、他方向に光を拡散し易くしつつ一方向の光の拡散の仕方を調整できる。その結果、投光レンズを通った光の投光範囲を矩形状に調整し易くできると共に、その投光範囲内の光強度を確保し易くできる。
【0012】
請求項5記載の投光レンズによれば、請求項1から4のいずれかに記載の投光レンズの奏する効果に加え、次の効果を奏する。XZ断面における出射面は、Z軸近傍が凹であってZ軸から離れた位置で凸に変化する曲線により形成されている。これにより、出射面から出射された光線束を、Z軸近傍で大きく拡散しつつ、Z軸からX軸方向に離れた周辺部で小さく拡散できるので、光強度をZ軸からX軸方向に離れた周辺部で増加できる。
【0013】
請求項6記載の投光レンズによれば、請求項1から5のいずれかに記載の投光レンズの奏する効果に加え、次の効果を奏する。YZ断面における出射面は、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる凹の曲線である。これにより、出射面から出射された光線束を、Z軸近傍で大きく拡散しつつ、Z軸からY軸方向に離れた周辺部で小さく拡散できるので、光強度をZ軸からY軸方向に離れた周辺部で増加できる。
【0014】
請求項7記載の投光レンズによれば、請求項1から6のいずれかに記載の投光レンズの奏する効果に加え、次の効果を奏する。XZ断面において、光源から出射された光線は、発散角が0°より大きく半値半角以下の範囲の内側光線を含む。XZ断面において、内側光線が入射面に入射して屈折した光線を第1X屈折光線とし、内側光線を延長した線を第1X延長線とする。さらに、第1X屈折光線が出射面に入射して屈折した光線を第2X屈折光線とし、第1X屈折光線を延長した線を第2X延長線とする。入射面への内側光線の入射位置がZ軸から離れるにつれて、入射面への内側光線の入射角が大きくなる位置に光源を置いた場合に、以下の2つの条件を満たす形状に、XZ断面における入射面および出射面が設定されている。
【0015】
1つ目の条件は、第1X屈折光線が第1X延長線に対してZ軸とは反対側に位置し、第2X屈折光線が第2X延長線に対してZ軸とは反対側に位置することである。2つ目の条件は、入射面への内側光線の入射位置がZ軸から離れるにつれて、第1X屈折光線と第1X延長線との間の第1X偏角が大きくなり、出射面への第1X屈折光線の入射位置がZ軸から離れるにつれて、第2X屈折光線と第2X延長線との間の第2X偏角が大きくなることである。これらが満たされることで、内側光線をX軸方向の広い範囲に拡散でき、投光レンズをX軸方向に広角化できる。
【0016】
請求項8記載の投光レンズによれば、請求項1から7のいずれかに記載の投光レンズの奏する効果に加え、次の効果を奏する。YZ断面において、入射面から出射面へ向かう光線を第1Y屈折光線とし、第1Y屈折光線が出射面に入射して屈折した光線を第2Y屈折光線とし、第1Y屈折光線を延長した線を第2Y延長線とする。YZ断面において、第2Y屈折光線が第2Y延長線に対してZ軸とは反対側に位置すると共に、出射面への第1Y屈折光線の入射位置がZ軸から離れるにつれて、第2Y屈折光線と第2Y延長線との間の第2Y偏角が大きくなるように、出射面の形状が設定されている。これにより、出射面によってY軸方向の広い範囲に光線を拡散できるので、Y軸方向に投光レンズを広角化できる。
【0017】
請求項9記載の投光レンズによれば、請求項1から8のいずれかに記載の投光レンズの奏する効果に加え、次の効果を奏する。光源から出射された光の波長における屈折率が1.56以上の材料によって投光レンズが形成されている。これにより、投光レンズを小型化しながら広角化できる。
【0018】
請求項10記載の投光装置は、Z軸方向に光を出射する光源と、請求項1から9のいずれかに記載の投光レンズと、を備えるものであって、請求項1から9のいずれかに記載の投光レンズの奏する効果に加え、次の効果を奏する。光源から出射される光は、XZ断面およびYZ断面における光強度分布がそれぞれZ軸に関して線対称であり、Z軸から離れるにつれて光強度が小さくなり、XZ断面における発散角がYZ断面における発散角よりも大きい。この光は、光強度が入射面によってZ軸近傍で減少しつつZ軸からX軸方向に離れた周辺部で増加するように、入射面によって主にX軸方向に広げられた後、出射面によってY軸方向に広げられる。その結果、投光装置は、光の投光範囲を矩形状に近づけつつ、その投光範囲の略全体に亘って光強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施例における投光装置の斜視図である。
図2】(a)は投光レンズのXZ断面図であり、(b)は投光レンズのYZ断面図である。
図3】光源から出射される光の光強度分布図である。
図4】(a)はXZ断面の入射面における入射角、屈折角、偏角と光源からの光線の発散角との関係図であり、(b)はXZ断面の出射面における入射角、屈折角、偏角と光源からの光線の発散角との関係図であり、(c)はYZ断面の出射面における入射角、屈折角、偏角と光源からの光線の発散角との関係図である。
図5】(a)は投光装置による投光範囲を示す図であり、(b)はX軸方向の光強度分布図であり、(c)はY軸方向の光強度分布図である。
図6】(a)は第2実施例における投光レンズのXZ断面図であり、(b)は投光レンズのYZ断面図である。
図7】(a)は投光装置による投光範囲を示す図であり、(b)はX軸方向の光強度分布図であり、(c)はY軸方向の光強度分布図である。
図8】(a)は第3実施例における投光レンズのXZ断面図であり、(b)は投光レンズのYZ断面図である。
図9】(a)は投光装置による投光範囲を示す図であり、(b)はX軸方向の光強度分布図であり、(c)はY軸方向の光強度分布図である。
図10】(a)は第4実施例における投光レンズのXZ断面図であり、(b)は投光レンズのYZ断面図である。
図11】(a)は投光装置による投光範囲を示す図であり、(b)はX軸方向の光強度分布図であり、(c)はY軸方向の光強度分布図である。
図12】(a)は第5実施例における投光レンズのXZ断面図であり、(b)は投光レンズのYZ断面図である。
図13】(a)は投光装置による投光範囲を示す図であり、(b)はX軸方向の光強度分布図であり、(c)はY軸方向の光強度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、一実施形態における投光装置および投光レンズについて、図1から図4(c)を参照し、第1実施例の投光装置10及び投光レンズ11を用いて説明する。なお、図2(a)及び図2(b)は、光源2を模式的に点状とし、投光レンズ11の各断面のみを図示して、その断面の奥に見える部分を省略している。
【0021】
図1に示すように、投光装置10は、近赤外光を出射する光源2と、その光源2からの光を拡散して投光側(光源2とは反対側)へ出射する投光レンズ11と、を備えている。投光装置10は、物体検出装置や距離計測装置の投光系に用いられる。光源2から投光レンズ11へ向かう光軸をZ軸とし、そのZ軸と直交しつつ互いに直交する軸をそれぞれX軸およびY軸とする。Z軸およびX軸を含む断面をXZ断面とし、Z軸およびY軸を含む断面をYZ断面とする。各図面には、これらのX軸、Y軸、Z軸が一点鎖線で示されている。
【0022】
光源2は、750~1400nmの範囲から選択された単波長の近赤外光によるガウシアンビームをZ軸方向に出射するレーザーダイオード素子である。図3に例示されるように、光源2から出射される光は、XZ断面およびYZ断面における光強度分布がZ軸に関して線対称であり、Z軸から離れるにつれて光強度が小さくなる。また、光源2から出射される光は、XZ断面における発散角θがYZ断面における発散角θよりも大きく、その投光範囲がX軸を長軸とした楕円形状である。
【0023】
図1図2(a)及び図2(b)に示すように、投光レンズ11は、光源2から入射した光を広い範囲に投光するための1枚のレンズである。投光レンズ11は、投光範囲が矩形状に近づくと共に、その投光範囲の略全体に亘って光強度を確保できるように、光源2から入射した光を変換して投光する。
【0024】
光源2から出射される光が単波長なので、色収差を考慮せずに投光レンズ11を設計できる。また、投光レンズ11は、光源2から出射された光の波長における屈折率が1.56以上の材料によって形成されている。これにより、投光レンズ11を小型化しながら広角化できる。
【0025】
投光レンズ11は、光源2から出射された光が入射する入射面12と、入射面12とは反対側の面である出射面13と、を備えている。入射面12及び出射面13は、Z軸と交わり、XZ断面およびYZ断面がそれぞれZ軸に関して線対称に形成されている。なお、入射面12は、XZ断面が必ず曲線であり、YZ断面が直線であっても良い。また、出射面13は、YZ断面が必ず曲線であり、XZ断面が直線であっても良い。
【0026】
本明細書において、入射面12及び出射面13の形状の説明は、各面の有効径内に関するものであり、その有効径外の入射面12及び出射面13の形状は適宜設定可能である。なお、入射面12及び出射面13の有効径内は、光源2から出射された光線のうち、Z軸上の光強度を1とした場合に1/e(e:ネイピア数)以上の相対強度をもつ光線が通る範囲である。
【0027】
まず、入射面12及び出射面13のXZ断面およびYZ断面について説明する。XZ断面において、入射面12は、光源2側に凹の曲線であって、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる。さらにXZ断面において、Z軸と入射面12との交点における入射面12の曲率の絶対値が、Z軸と出射面13との交点における出射面13の曲率の絶対値よりも大きい。これにより、光源2からの光を入射面12によって主にX軸方向に広げることができる。
【0028】
YZ断面において、出射面13は、投光側(図2(b)紙面上側)に凹の曲線である。さらにYZ断面において、Z軸と入射面12との交点における入射面12の曲率の絶対値が、Z軸と出射面13との交点における出射面13の曲率の絶対値よりも小さい。これにより、入射面12からの光を出射面13によって主にY軸方向に広げることができる。
【0029】
このように、投光レンズ11は、光源2からの光を入射面12によって主にX軸方向に広げて帯状に形成した後、X軸方向に長い帯状の光を出射面13によって主にY軸方向に広げる。その結果、投光レンズ11を通った光の投光範囲を矩形状に近づけることができる。
【0030】
さらに、このような投光レンズ11によれば、X軸方向への光の広げ方とY軸方向への光の広げ方とをそれぞれ個別に設定し易くできる。そのため、光源2からの光の発散角θがXZ断面とYZ断面とで異なっていても、投光装置10は、光の投光範囲を矩形状に近づけ易くできる。
【0031】
また、XZ断面における入射面12の曲率の絶対値がZ軸から離れるにつれて小さくなるので、光源2からの複数の光線からなる光線束を、入射面12によって、Z軸近傍で大きく拡散しつつ、Z軸からX軸方向に離れたX周辺部で小さく拡散できる。これにより、出射面13に到達した光の光強度を、Z軸近傍で減少できると共に、X周辺部で増加できる。
【0032】
光源2からの光はZ軸から離れるにつれて光強度が小さくなるので、光源2から入射面12を通って出射面13に到達した光の光強度をX軸方向の略全長に亘って確保できる。このような光強度の光線束が出射面13によって主にY軸方向に広げられるので、投光レンズ11を通った光の光強度を矩形状の投光範囲の略全体に亘って確保できる。よって、矩形状の範囲の物体を検出する物体検出装置の投光系に投光装置10を用いる場合、その検出範囲と、投光装置10による投光範囲とを合わせ易くできるので、検出範囲内の光強度を大きくでき、検出感度を向上できる。
【0033】
光源2からの光は、XZ断面における発散角θがYZ断面における発散角θよりも大きいため、投光装置10による投光範囲をX軸方向に大きくし易い。この大きく広げ易いX軸方向の略全長に亘って、光強度を入射面12によって確保できるので、投光装置10による投光範囲の略全体に亘って光強度を確保し易くできる。また、元々Y軸方向の広がりが小さい光源2からの光を、入射面12によってY軸方向に大きく広げることなく、出射面13によって主にY軸方向に大きく広げるので、投光レンズ11をY軸方向に小型化できる。
【0034】
YZ断面における出射面13の曲率の絶対値は、Z軸から離れるにつれて小さくなる。これにより、出射面13によって光線束を、Z軸近傍で大きく拡散しつつ、Z軸からY軸方向に離れたY周辺部で小さく拡散できる。これにより、出射面13から出射された光の光強度を、Z軸近傍で減少できると共に、Y周辺部で増加できる。特に、Z軸から離れるにつれて光強度が小さくなる光源2からの光が、光強度をZ軸近傍で減少させつつY周辺部で増加させる投光レンズ11を通るので、投光装置10により投光される光の光強度をY軸方向の略全長に亘って確保できる。
【0035】
以上のように、投光装置10により投光される光の光強度は、入射面12及び出射面13によってZ軸近傍が減少しつつ、入射面12によってX周辺部が増加し、出射面13によってY周辺部が増加する。そのため、投光装置10は、矩形状に近づけた投光範囲内において、光強度の等強度線を矩形状に近づけることができる。
【0036】
XZ断面における出射面13は、Z軸近傍が投光側に凹であってZ軸から離れた位置で投光側に凸に変化する曲線により形成されていることが好ましい。これにより、出射面13から出射された光線束を、X周辺部でより小さく拡散できるので、X周辺部の光強度をより増加できる。
【0037】
特に、出射面13のXZ断面において、凹から凸に変わる変曲点までのZ軸からのX軸方向の距離は、Z軸から有効径(光源2から出射された1/eの相対強度の光線が通る位置)までのX軸方向の距離を100%とした場合に、75%以下であることが好ましい。これにより、出射面13から出射された光線束を、X周辺部の広い範囲で小さく拡散できるので、X周辺部の光強度をより一層増加できる。
【0038】
入射面12は、Z軸と入射面12との交点におけるXZ断面の曲率の絶対値が、Z軸と入射面12との交点におけるYZ断面の曲率の絶対値よりも大きいことが好ましい。これにより、光を入射面12によってY軸方向に小さくX軸方向に大きく拡散できる。また、出射面13は、Z軸と出射面13との交点におけるYZ断面の曲率の絶対値が、Z軸と出射面13との交点におけるXZ断面の曲率の絶対値よりも大きいことが好ましい。これにより、光を出射面13によってX軸方向に小さくY軸方向に大きく拡散できる。
【0039】
これらの結果、光源2からの光をX軸方向に広げる役割とY軸方向に広げる役割とを、それぞれ入射面12と出射面13とに分担させ易くできる。よって、投光レンズ11を通った光の投光範囲をより矩形状に近づけつつ、その投光範囲内の光強度を確保し易くできる。
【0040】
次に、入射面12及び出射面13の全体形状について説明する。入射面12及び出射面13は、XZ断面およびYZ断面に関してそれぞれ対称に形成されるアナモフィック面であることが好ましい。なお、アナモフィック面には、X軸方向およびY軸方向に垂直な断面が両方とも曲線状のトロイダル面と、X軸方向またはY軸方向のいずれか一方に垂直な断面が直線状であって、X軸方向またはY軸方向のいずれか他方に垂直な断面が曲線状であるシリンドリカル面と、がある。
【0041】
なお、Z軸と各面との交点を原点とし、X軸方向の距離をx、Y軸方向の距離をy、Z軸方向の距離をzとしたとき、トロイダル面(アナモフィック面)は以下の式(1)で示され、X軸方向に垂直な断面が直線状であるシリンドリカル面は以下の式(2)で示される。zは、原点よりも投光側の位置で正の値となる。また、Y軸方向に垂直な断面が直線状であるシリンドリカル面の形状を示す式は、式(2)のxをyに、cをcに、kをkに変更したものである。
【0042】
【数1】
【数2】
但し、
:XZ断面とZ軸との交点におけるXZ断面の曲率
:YZ断面とZ軸との交点におけるYZ断面の曲率
:XZ断面のコーニック定数
:YZ断面のコーニック定数
A,B,C,D,A,B:非球面係数(iは4~20の範囲の偶数)
【0043】
入射面12及び出射面13がいずれもアナモフィック面であれば、入射面12におけるX軸方向への光の広げ方とY軸方向への光の広げ方とをそれぞれ個別に設定し易くできると共に、出射面13におけるX軸方向への光の広げ方とY軸方向への光の広げ方とをそれぞれ個別に設定し易くできる。その結果、投光装置10による光の投光範囲を矩形状に近づけつつ、投光範囲内の光強度を確保するための投光レンズ11を設計し易くできる。
【0044】
さらに、入射面12及び出射面13がいずれもアナモフィック面なので、X軸方向の全体に亘ってY軸方向への光の広げ方を設定しながら、Y軸方向の全体に亘ってX軸方向への光の広げ方を設定できると共に、それらの設定を個別にできる。その結果、投光装置10は、矩形状に近づけた投光範囲内において、光強度の等強度線を矩形状に近づけ易くできる。
【0045】
入射面12及び出射面13の一方がシリンドリカル面であり、他方がトロイダル面であることがより好ましい。これにより、トロイダル面よりも形成が容易で、誤差感度の小さいシリンドリカル面によって、一方向に光を拡散し易くできると共に、トロイダル面によって、他方向に光を拡散し易くしつつ一方向の光の拡散の仕方を調整できる。その結果、投光レンズ11を通った光の投光範囲を矩形状に調整し易くできると共に、その投光範囲内の光強度を確保し易くできる。加えて、その投光範囲内の光強度の等強度線を矩形状に近づけ易くできる。
【0046】
次に図2(a)及び図2(b)を参照しながら、光源2から出射された光線の経路についてより詳しく説明する。図2(a)に示すように、XZ断面において、光源2から出射される光線は入射面12及び出射面13によってそれぞれ屈折し、1本の光線の経路が形成される。このXZ断面における1本の光線の経路に関して、各線および各角度を以下の通り定義する。
【0047】
光源2から入射面12までの光線をX光線14とする。X光線14が入射面12に入射して屈折した光線を第1X屈折光線15とする。X光線14を延長した仮想線を第1X延長線16とする。第1X屈折光線15が出射面13に入射して屈折した光線を第2X屈折光線17とする。第1X屈折光線15を延長した仮想線を第2X延長線18とする。
【0048】
X光線14と、そのX光線14が入射した位置の入射面12の法線19との角度を入射角α1とする。第1X屈折光線15と、その第1X屈折光線15が交わる位置の入射面12の法線19との角度を屈折角α2とする。第1X屈折光線15と、その第1X屈折光線15が入射した位置の出射面13の法線20との角度を入射角α3とする。第2X屈折光線17と、その第1X屈折光線17が交わる位置の出射面13の法線20との角度を屈折角α4とする。第1X屈折光線15と、その第1X屈折光線15が入射面12で交わる位置の第1X延長線16との角度を第1X偏角α5とする。第2X屈折光線17と、その第2X屈折光線17が出射面13で交わる位置の第2X延長線18との角度を第2X偏角α6とする。
【0049】
XZ断面において、X光線14は、発散角θが0°より大きく半値半角以下の範囲のX内側光線を含んでいる。なお、X光線14の半値半角とは、X光線14のうちZ軸上の光強度を1とした場合に0.5の相対強度をもつ光線と、Z軸との間の角度である。
【0050】
XZ断面における入射面12が光源2側に凹の曲線であるとき、入射面12へのX内側光線の入射位置がZ軸から離れるにつれて、入射面12へのX内側光線の入射角α1が大きくなる位置に光源2を置いた場合に、そのX内側光線により形成される各径路が以下の2つの条件を満たす形状に入射面12及び出射面13を設定することが好ましい。
【0051】
1つ目の条件は、第1X屈折光線15が第1X延長線16に対してZ軸とは反対側に位置し、第2X屈折光線17が第2X延長線18に対してZ軸とは反対側に位置することである。2つ目の条件は、入射面12へのX内側光線の入射位置がZ軸から離れるにつれて第1X偏角α5が大きくなり、出射面13への第1X屈折光線15の入射位置がZ軸から離れるにつれて第2X偏角α6が大きくなることである。これらが満たされることで、X内側光線をX軸方向の広い範囲に拡散でき、投光レンズ11をX軸方向に広角化できる。
【0052】
次いで、図2(b)に示すYZ断面においても同様に、光源2から出射される光線は入射面12及び出射面13によってそれぞれ屈折し、1本の光線の経路が形成される。このYZ断面における1本の光線の経路に関して、各線および各角度を以下の通り定義する。
【0053】
光源2から入射面12までの光線をY光線22とする。Y光線22が入射面12に入射して屈折した光線を第1Y屈折光線23とする。Y光線22を延長した仮想線を第1Y延長線24とする。第1Y屈折光線23が出射面13に入射して屈折した光線を第2Y屈折光線25とする。第1Y屈折光線23を延長した仮想線を第2Y延長線26とする。
【0054】
Y光線22と、そのY光線22が入射した位置の入射面12の法線27との角度を入射角β1とする。第1Y屈折光線23と、その第1Y屈折光線23が交わる位置の入射面12の法線27との角度を屈折角β2とする。第1Y屈折光線23と、その第1Y屈折光線23が入射した位置の出射面13の法線28との角度を入射角β3とする。第2Y屈折光線25と、その第2Y屈折光線25が交わる位置の出射面13の法線28との角度を屈折角β4とする。第1Y屈折光線23と、その第1Y屈折光線23が入射面12で交わる位置の第1Y延長線24との角度を第1Y偏角β5とする。第2Y屈折光線25と、その第2Y屈折光線25が出射面13で交わる位置の第2Y延長線26との角度を第2Y偏角β6とする。
【0055】
YZ断面における入射面12は直線でも良いので、第2Y屈折光線25が第2Y延長線26に対してZ軸とは反対側に位置すると共に、出射面13への第1Y屈折光線23の入射位置がZ軸から離れるにつれて第2Y偏角β6が大きくなるように、出射面13の形状が設定されることが好ましい。これにより、出射面13によってY軸方向の広い範囲にY光線22を拡散できるので、投光レンズ11をY軸方向に広角化できる。
【0056】
なお、YZ断面においても同様に、Y光線22は、発散角θが0°より大きく半値半角以下の範囲のY内側光線を含んでいる。なお、Y光線22の半値半角とは、Y光線22のうちZ軸上の光強度を1とした場合に0.5の相対強度をもつ光線と、Z軸との間の角度である。
【0057】
入射面12のYZ断面を曲線により形成しても良い。このとき、YZ断面において、入射面12へのY内側光線の入射位置がZ軸から離れるにつれて、入射面12へのY内側光線の入射角β1が大きくなる位置に光源2を置いた場合に、そのY内側光線により形成される各径路が以下の2つの条件を満たす形状に入射面12を設定することが好ましい。
【0058】
1つ目の条件は、第1Y屈折光線23が第1Y延長線24に対してZ軸とは反対側に位置することである。2つ目の条件は、入射面12へのY内側光線の入射位置がZ軸から離れるにつれて第1Y偏角β5が大きくなることである。これらが満たされることで、入射面12のYZ断面が曲線により形成されても、内側光線をY軸方向の広い範囲に拡散でき、投光レンズ11をY軸方向に広角化できる。
【実施例
【0059】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。なお、各実施例で共通する説明は、第1実施例でのみ説明し、その他の実施例での説明を省略する。
【0060】
(第1実施例)
図1図2(a)及び図2(b)に示すように、第1実施例における投光装置10は、光源2と、1枚の投光レンズ11とを備えている。光源2は、図3に示す光強度分布を有するピーク波長905nmの近赤外光を、Z軸方向に出射するレーザーダイオード素子である。光源2からの光の光強度がZ軸上で最も大きくなるように、光源2が配置されている。なお、Z軸に垂直な断面において、光源2からの光の投光範囲は、X軸を長軸とした楕円形状である。
【0061】
なお、図3に示す光強度分布図は、横軸がZ軸からの発散角θ(°=deg)である。図3の縦軸は、Z軸上(発散角θが0°)の光強度を1とした場合の相対的な光強度(RELATIVE INTENSITY)である。XZ断面における光強度分布を実線で示し、YZ断面における光強度分布を破線で示している。
【0062】
XZ断面において、相対強度が0.5となるときの発散角θである半値半角は約15°であり、相対強度が1/e(約0.135)となるときの発散角θは約27°である。YZ断面において、相対強度が0.5となるときの発散角θである半値半角は約8°であり、相対強度が1/eとなるときの発散角θは約13°である。
【0063】
投光レンズ11は、X軸方向に垂直な断面が直線状であるシリンドリカル面により形成される入射面12と、トロイダル面により形成される出射面13と、を備えている。光源2から入射面12までのZ軸上の距離は10.5mmであり、入射面12から出射面13までのZ軸上の距離は4.7mmである。投光レンズ11は、波長905nmの光に対する屈折率が1.63の合成樹脂により形成されている。
【0064】
また、この投光レンズ11の光学諸値およびレンズデータを表1に示す。なお、本明細書では、一部の値を10のべき乗数をEを用いて表す(例えば、1.0×10-4は1.0E-4である)。式(1)や式(2)に示されているが、表1に記載がない定数は0とする。
【表1】
【0065】
表1に示す光学諸値を式(1)及び式(2)に代入して得られた入射面12及び出射面13の形状は、以下の通りである。入射面12のXZ断面は、光源2側に凹の曲線であり、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる。
【0066】
出射面13のXZ断面は、Z軸近傍が投光側に凹であってZ軸から離れた位置で投光側に凸に変化する曲線により形成されている。その凹から凸に変化する変曲点までのZ軸からのX軸方向の距離は、Z軸から有効径までのX軸方向の距離を100%とした場合に、40%となる。出射面13のYZ断面は、投光側に凹の曲線であって、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる。
【0067】
入射面12のXZ断面の曲率cの絶対値0.667は、出射面13のXZ断面の曲率cの絶対値0.004よりも大きく、直線状である入射面12のYZ断面の曲率0よりも大きい。出射面13のYZ断面cの曲率の絶対値0.417は、入射面12のYZ断面の曲率0よりも大きく、出射面13のXZ断面の曲率cの絶対値0.004よりも大きい。
【0068】
入射面12のXZ断面における入射角α1、屈折角α2、第1X偏角α5と、XZ断面における発散角θとの関係図を図4(a)に示す。出射面13のXZ断面における入射角α3、屈折角α4、第2X偏角α6と、XZ断面における発散角θとの関係図を図4(b)に示す。出射面13のYZ断面における入射角β3、屈折角β4、第2Y偏角β6と、YZ断面における発散角θとの関係図を図4(c)に示す。
【0069】
図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、横軸が発散角θであり、縦軸がその断面における各角度(deg)である。なお、横軸の発散角θが大きい程、各断面への光線の入射位置がZ軸から離れていることを近似的に示している。また、各図面では、入射角のグラフを実線で示し、屈折角のグラフを破線で示し、偏角のグラフを一点鎖線で示している。さらに、各図面には、半値半角の位置Aと、相対強度が1/eとなるときの発散角θの位置Bとを二点鎖線で示している。
【0070】
第1X屈折光線15が第1X延長線16に対してZ軸とは反対側に位置する場合に、第1X偏角α5を正の値とする。同様に、第2X屈折光線17が第2X延長線18に対してZ軸とは反対側に位置する場合に、第2X偏角α6を正の値とし、第2Y屈折光線25が第2Y延長線26に対してZ軸とは反対側に位置する場合に、第2Y偏角β6を正の値とする。
【0071】
図4(a)及び図4(b)に示すように、第1X偏角α5及び第2X偏角α6が正の値である。加えて、位置Aよりも発散角θが小さい範囲では、即ち、X内側光線が入射面12へ入射する範囲では、発散角θが大きくなるにつれて入射角α1、第1X偏角α5及び第2X偏角α6が大きくなる。これにより、X内側光線が屈折した第1X屈折光線15や第2屈折光線17を、入射面12及び出射面13によってX軸方向の広い範囲に拡散できる。その結果、投光レンズ11をX軸方向に広角化できることが分かる。
【0072】
さらに、位置Aよりも発散角θが小さい範囲において、発散角θが大きくなるにつれて、第1X偏角α5の増加率が低下していく。この範囲において、入射面12から出射された第1X屈折光線15同士の間隔を、Z軸からX軸方向に離れるにつれて小さくできることが分かる。同様に、位置Aよりも発散角θが小さい範囲において、発散角θが大きくなるにつれて、第2X偏角α6の増加率が低下するので、出射面13から出射された第2X屈折光線17同士の間隔を、Z軸からX軸方向に離れるにつれて小さくできることが分かる。
【0073】
また、発散角θが大きくなるにつれて、位置Aと位置Bとの間で、第1X偏角α5及び第2X偏角α6の増加が減少へと変化する。この第1X偏角α5及び第2X偏角α6が減少する範囲では、入射面12から出射された第1X屈折光線15同士の間隔や、出射面13から出射された第2X屈折光線17同士の間隔を、Z軸からX軸方向に離れるにつれてより小さくできることが分かる。
【0074】
また、図4(c)に示すように、第2Y偏角β6が正の値であり、発散角θが大きくなるにつれて第2Y偏角β6が大きくなる。これにより、出射面13によってY軸方向の広い範囲に第2Y屈折光線25を拡散でき、投光レンズ11をY軸方向に広角化できることが分かる。さらに、発散角θが大きくなるにつれて、第2Y偏角β6の増加率が低下するので、出射面13から出射された第2Y屈折光線25同士の間隔を、Z軸からY軸方向に離れるにつれて小さくできることが分かる。
【0075】
なお、図示しないが、直線状の入射面12のYZ断面における入射角β1、屈折角β2、第1Y偏角β5の絶対値は、YZ断面における発散角θの増加に比例して増加する。第1Y屈折光線23が第1Y延長線24に対してZ軸側に位置するので、第1Y偏角β5は負の値である。
【0076】
次に、光源2を中心とした所定の球面上に実施例1の投光装置10から投光された光の投光範囲の外形線を図5(a)に示す。図5(a)の縦軸は、投光装置10から出射された光線とXZ断面とのY軸方向の角度(Y ANGLE(deg))である。図5(a)の横軸は、投光装置10から出射された光線とYZ断面とのX軸方向の角度(X ANGLE(deg))である。なお、X軸方向の角度およびY軸方向の角度が0°の位置がZ軸である。
【0077】
投光装置10は、光源2からの楕円形状の光を投光レンズ11によって、図5(a)に示すように、X軸方向に長い矩形状(長方形状)に形成できる。また、XZ断面およびYZ断面に関して、光源2からの光、入射面12及び出射面13が対称なので、投光装置10による投光範囲や、投光範囲内の光強度分布をXZ断面およびYZ断面に関して対称にできる。
【0078】
投光装置10による投光範囲において、Y軸方向の角度が0°のときのX軸方向の光強度分布を実線で、Y軸方向の角度が±20°のときのX軸方向の光強度分布を破線で図5(b)に示し、X軸方向の角度が0°のときのY軸方向の光強度分布を実線で、X軸方向の角度が±45°のときのY軸方向の光強度分布を破線で図5(c)に示す。図5(b)及び図5(c)の縦軸は、投光装置10による投光範囲のうち最も大きな光強度を100%とした場合の相対的な光強度(RELATIVE INTENSITY(%))である。図5(b)の横軸はX軸方向の角度であり、図5(c)の横軸はY軸方向の角度である。
【0079】
図5(b)及び図5(c)に示すように、投光装置10は、投光範囲の略全体に亘って、相対強度が50%以上となるように光強度を確保できる。さらに、投光装置10は、投光範囲内の光強度を、Z軸近傍で小さく、Z軸から離れた周辺部で大きくできる。
【0080】
(第2実施例)
図6(a)及び図6(b)に示すように、第2実施例における投光装置30は、光源2と、1枚の投光レンズ31とを備えている。投光レンズ31は、X軸方向に垂直な断面が直線状であるシリンドリカル面により形成される入射面32と、Y軸方向に垂直な断面が直線状であるシリンドリカル面により形成される出射面33と、を備えている。光源2から入射面32までのZ軸上の距離は10.0mmであり、入射面32から出射面33までのZ軸上の距離は4.1mmである。投光レンズ31は、波長905nmの光に対する屈折率が1.63の合成樹脂により形成されている。
【0081】
また、この投光レンズ31の光学諸値およびレンズデータを表2に示す。式(2)等に示されているが、表2に記載がない定数は0とする。
【表2】
【0082】
表2に示す光学諸値を式(2)等に代入して得られた入射面32及び出射面33の形状は、以下の通りである。入射面32のXZ断面は、光源2側に凹の曲線であり、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる。出射面33のYZ断面は、投光側に凹の曲線であって、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる。
【0083】
入射面32のXZ断面の曲率cの絶対値0.435は、直線状である出射面33のXZ断面の曲率0よりも大きく、直線状である入射面32のYZ断面の曲率0よりも大きい。出射面33のYZ断面cの曲率の絶対値0.091は、入射面32のYZ断面の曲率0よりも大きく、出射面33のXZ断面の曲率0よりも大きい。
【0084】
なお、入射面32のXZ断面における入射角α1、屈折角α2、第1X偏角α5と、XZ断面における発散角θとの関係図は、位置Aよりも発散角θが小さい範囲で、発散角θの増加に伴って第1X偏角α5が増加から減少に転じることを除いて、図4(a)に示した実施例1の関係図と略同様の挙動を示すことが確認されたので、その図示と説明とを省略する。同様に、出射面33のYZ断面における入射角β3、屈折角β4、第2Y偏角β6と、YZ断面における発散角θとの関係図は、位置Aよりも発散角θが小さい範囲で、発散角θの増加に伴って第2Y偏角β6が増加から減少に転じることを除いて、図4(c)に示した実施例1の関係図と略同様の挙動を示すことが確認されたので、その図示と説明とを省略する。
【0085】
また、直線状の出射面33のXZ断面における入射角α3、屈折角α4、第2X偏角α6の絶対値は、XZ断面における発散角θの増加に比例して増加する。直線状の入射面32のYZ断面における入射角β1、屈折角β2、第1Y偏角β5の絶対値は、YZ断面における発散角θの増加に比例して増加する。なお、第2X偏角α6は正の値であり、第1Y偏角β5は負の値である。
【0086】
次に、光源2を中心とした所定の球面上に実施例2の投光装置30から投光された光の投光範囲の外形線を図7(a)に示す。投光装置30は、光源2からの楕円形状の光を投光レンズ31によって、図7(a)に示すように、X軸方向に長い矩形状(長方形状)に形成できる。
【0087】
投光装置30による投光範囲において、Y軸方向の角度が0°のときのX軸方向の光強度分布を実線で、Y軸方向の角度が±10°のときのX軸方向の光強度分布を破線で図7(b)に示し、X軸方向の角度が0°のときのY軸方向の光強度分布を実線で、X軸方向の角度が±40°のときのY軸方向の光強度分布を破線で図7(c)に示す。図7(b)及び図7(c)に示すように、投光装置30は、投光範囲の略全体に亘って、相対強度が50%以上となるように光強度を確保できる。
【0088】
(第3実施例)
図8(a)及び図8(b)に示すように、第3実施例における投光装置40は、光源2と、1枚の投光レンズ41とを備えている。投光レンズ41は、X軸方向に垂直な断面が直線状であるシリンドリカル面により形成される入射面42と、Y軸方向に垂直な断面が直線状であるシリンドリカル面により形成される出射面43と、を備えている。光源2から入射面42までのZ軸上の距離は10.0mmであり、入射面42から出射面43までのZ軸上の距離は4.1mmである。投光レンズ41は、波長905nmの光に対する屈折率が1.63の合成樹脂により形成されている。
【0089】
また、この投光レンズ41の光学諸値およびレンズデータを表3に示す。式(2)等に示されているが、表3に記載がない定数は0とする。
【表3】
【0090】
表3に示す光学諸値を式(2)等に代入して得られた入射面42及び出射面43の形状は、以下の通りである。入射面42のXZ断面は、光源2側に凹の曲線であり、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる。出射面43のYZ断面は、投光側に凹の曲線であって、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる。
【0091】
入射面42のXZ断面の曲率cの絶対値0.435は、直線状である出射面43のXZ断面の曲率0よりも大きく、直線状である入射面42のYZ断面の曲率0よりも大きい。出射面43のYZ断面cの曲率の絶対値0.333は、入射面42のYZ断面の曲率0よりも大きく、出射面43のXZ断面の曲率0よりも大きい。
【0092】
なお、入射面42のXZ断面における入射角α1、屈折角α2、第1X偏角α5と、XZ断面における発散角θとの関係図は、位置Aよりも発散角θが小さい範囲で、発散角θの増加に伴って第1X偏角α5が増加から減少に転じることを除いて、図4(a)に示した実施例1の関係図と略同様の挙動を示すことが確認されたので、その図示と説明とを省略する。同様に、出射面43のYZ断面における入射角β3、屈折角β4、第2Y偏角β6と、YZ断面における発散角θとの関係図は、図4(c)に示した実施例1の関係図と略同様の挙動を示すことが確認されたので、その図示と説明とを省略する。
【0093】
また、直線状の出射面43のXZ断面における入射角α3、屈折角α4、第2X偏角α6の絶対値は、XZ断面における発散角θの増加に比例して増加する。直線状の入射面42のYZ断面における入射角β1、屈折角β2、第1Y偏角β5の絶対値は、YZ断面における発散角θの増加に比例して増加する。なお、第2X偏角α6は正の値であり、第1Y偏角β5は負の値である。
【0094】
次に、光源2を中心とした所定の球面上に実施例3の投光装置40から投光された光の投光範囲の外形線を図9(a)に示す。投光装置40は、光源2からの楕円形状の光を投光レンズ41によって変換し、図9(a)に示すように、投光範囲をX軸方向に長い矩形状(長方形状)に近づけることができる。具体的に、角を対角方向外側へ延ばした矩形状に投光範囲を近づけることができる。
【0095】
投光装置40による投光範囲において、Y軸方向の角度が0°のときのX軸方向の光強度分布を実線で、Y軸方向の角度が±20°のときのX軸方向の光強度分布を破線で図9(b)に示し、X軸方向の角度が0°のときのY軸方向の光強度分布を実線で、X軸方向の角度が±40°のときのY軸方向の光強度分布を破線で図9(c)に示す。図9(b)及び図9(c)に示すように、投光装置40は、投光範囲の略全体に亘って、相対強度が50%以上となるように光強度を確保できる。
【0096】
(第4実施例)
図10(a)及び図10(b)に示すように、第4実施例における投光装置50は、光源2と、1枚の投光レンズ51とを備えている。投光レンズ51は、X軸方向に垂直な断面が直線状であるシリンドリカル面により形成される入射面52と、Y軸方向に垂直な断面が直線状であるシリンドリカル面により形成される出射面53と、を備えている。光源2から入射面52までのZ軸上の距離は10.5mmであり、入射面52から出射面53までのZ軸上の距離は4.1mmである。投光レンズ51は、波長905nmの光に対する屈折率が1.63の合成樹脂により形成されている。
【0097】
また、この投光レンズ51の光学諸値およびレンズデータを表4に示す。式(2)等に示されているが、表4に記載がない定数は0とする。
【表4】
【0098】
表4に示す光学諸値を式(2)等に代入して得られた入射面52及び出射面53の形状は、以下の通りである。入射面52のXZ断面は、光源2側に凹の曲線であり、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる。出射面53のYZ断面は、投光側に凹の曲線であって、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる。
【0099】
入射面52のXZ断面の曲率cの絶対値0.714は、直線状である出射面53のXZ断面の曲率0よりも大きく、直線状である入射面52のYZ断面の曲率0よりも大きい。出射面53のYZ断面cの曲率の絶対値0.357は、入射面52のYZ断面の曲率0よりも大きく、出射面53のXZ断面の曲率0よりも大きい。
【0100】
なお、入射面52のXZ断面における入射角α1、屈折角α2、第1X偏角α5と、XZ断面における発散角θとの関係図は、位置Aよりも発散角θが小さい範囲で、発散角θの増加に伴って第1X偏角α5が増加から減少に転じることを除いて、図4(a)に示した実施例1の関係図と略同様の挙動を示すことが確認されたので、その図示と説明とを省略する。同様に、出射面53のYZ断面における入射角β3、屈折角β4、第2Y偏角β6と、YZ断面における発散角θとの関係図は、図4(c)に示した実施例1の関係図と略同様の挙動を示すことが確認されたので、その図示と説明とを省略する。
【0101】
また、直線状の出射面53のXZ断面における入射角α3、屈折角α4、第2X偏角α6の絶対値は、XZ断面における発散角θの増加に比例して増加する。直線状の入射面52のYZ断面における入射角β1、屈折角β2、第1Y偏角β5の絶対値は、YZ断面における発散角θの増加に比例して増加する。なお、第2X偏角α6は正の値であり、第1Y偏角β5は負の値である。
【0102】
次に、光源2を中心とした所定の球面上に実施例4の投光装置50から投光された光の投光範囲の外形線を図11(a)に示す。投光装置50は、光源2からの楕円形状の光を投光レンズ51によって変換し、図11(a)に示すように、投光範囲をX軸方向に長い矩形状(長方形状)に近づけることができる。
【0103】
投光装置50による投光範囲において、Y軸方向の角度が0°のときのX軸方向の光強度分布を実線で、Y軸方向の角度が±20°のときのX軸方向の光強度分布を破線で図11(b)に示し、X軸方向の角度が0°のときのY軸方向の光強度分布を実線で、X軸方向の角度が±45°のときのY軸方向の光強度分布を破線で図11(c)に示す。図11(b)及び図11(c)に示すように、投光装置50は、投光範囲の略全体に亘って、相対強度が50%以上となるように光強度を確保できる。
【0104】
(第5実施例)
図12(a)及び図12(b)に示すように、第5実施例における投光装置60は、光源2と、1枚の投光レンズ61とを備えている。投光レンズ61は、X軸方向に垂直な断面が直線状であるシリンドリカル面により形成される入射面62と、トロイダル面により形成される出射面63と、を備えている。光源2から入射面62までのZ軸上の距離は10.5mmであり、入射面62から出射面63までのZ軸上の距離は4.1mmである。投光レンズ61は、波長905nmの光に対する屈折率が1.63の合成樹脂により形成されている。
【0105】
また、この投光レンズ61の光学諸値およびレンズデータを表5に示す。式(1)及び式(2)に示されているが、表5に記載がない定数は0とする。
【表5】
【0106】
表5に示す光学諸値を式(1)及び式(2)に代入して得られた入射面62及び出射面63の形状は、以下の通りである。入射面62のXZ断面は、光源2側に凹の曲線であり、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる。出射面63のXZ断面は、Z軸近傍が投光側に凸の曲線により形成されている。出射面63のYZ断面は、投光側に凹の曲線であって、Z軸から離れるにつれて曲率の絶対値が小さくなる。
【0107】
入射面62のXZ断面の曲率cの絶対値0.714は、出射面63のXZ断面の曲率cの絶対値0.002よりも大きく、直線状である入射面62のYZ断面の曲率0よりも大きい。出射面63のYZ断面cの曲率の絶対値0.417は、入射面62のYZ断面の曲率0よりも大きく、出射面63のXZ断面の曲率cの絶対値0.002よりも大きい。
【0108】
なお、入射面62のXZ断面における入射角α1、屈折角α2、第1X偏角α5と、XZ断面における発散角θとの関係図は、図4(a)に示した実施例1の関係図と略同様の挙動を示すことが確認されたので、その図示と説明とを省略する。同様に、出射面63のXZ断面における入射角α3、屈折角α4、第2X偏角α6と、XZ断面における発散角θとの関係図は、図4(b)に示した実施例1の関係図と略同様の挙動を示すことが確認されたので、その図示と説明とを省略する。
【0109】
同様に、出射面63のYZ断面における入射角β3、屈折角β4、第2Y偏角β6と、YZ断面における発散角θとの関係図は、図4(c)に示した実施例1の関係図と略同様の挙動を示すことが確認されたので、その図示と説明とを省略する。また、直線状の入射面62のYZ断面における入射角β1、屈折角β2、第1Y偏角β5の絶対値は、YZ断面における発散角θの増加に比例して増加する。なお、第1Y偏角β5は負の値である。
【0110】
次に、光源2を中心とした所定の球面上に実施例5の投光装置60から投光された光の投光範囲の外形線を図13(a)に示す。投光装置60は、光源2からの楕円形状の光を投光レンズ61によって変換し、図13(a)に示すように、投光範囲をX軸方向に長い矩形状(長方形状)に近づけることができる。具体的に、角をX軸方向外側へ延ばした矩形状に投光範囲を近づけることができる。
【0111】
投光装置60による投光範囲において、Y軸方向の角度が0°のときのX軸方向の光強度分布を実線で、Y軸方向の角度が±20°のときのX軸方向の光強度分布を破線で図13(b)に示し、X軸方向の角度が0°のときのY軸方向の光強度分布を実線で、X軸方向の角度が±45°のときのY軸方向の光強度分布を破線で図13(c)に示す。図13(b)及び図13(c)に示すように、投光装置60は、投光範囲の略全体に亘って、相対強度が50%以上となるように光強度を確保できる。
【0112】
次に、上記実施例1~5を比較する。Y軸方向の投光範囲が狭い実施例2では投光範囲を矩形状にできるが、実施例2に対してY軸方向の投光範囲を広げた実施例3,4の投光範囲は、実施例2の投光範囲と比較して矩形状から遠ざかる。一方、このような実施例2~4に対して、実施例1,5では、投光範囲をY軸方向に広くできると共に、投光範囲をより矩形状に近づけながら、その投光範囲の略全体に亘って光強度を確保し易くできる。ここで、実施例2~4の出射面33,43,53がシリンドリカル面であるに対し、実施例1,5の出射面13,63はトロイダル面である。これらの結果、トロイダル面を用いることによって、投光装置10,60による投光範囲を広げても、その投光範囲を矩形状に近づけ易くできると共に、投光範囲の略全体に亘って光強度を確保し易くできることが分かる。
【0113】
出射面63のXZ断面のZ軸近傍が投光側に凸の曲線である実施例5と比べて、出射面13のXZ断面のZ近傍が投光側に凹の曲線である実施例1では、投光範囲をより矩形状に近づけながら、その投光範囲の略全体に亘って光強度を確保し易くできる。よって、出射面13のXZ断面のZ近傍を投光側に凹の曲線とすることで、投光装置10による投光範囲を矩形状に近づけ易くできると共に、投光範囲の略全体に亘って光強度を確保し易くできることが分かる。
【0114】
以上、実施形態および実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態および上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。投光レンズ11,31,41,51,61の光源2側や投光側に、屈折力が殆どないレンズ(カバーガラス等)を設けても良い。
【0115】
上記形態および上記実施例では、光源2が、波長905nmの近赤外光を出射するレーザーダイオード素子である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、波長750~1400nmの近赤外光を出射する光源や、1400nm以上の赤外光を出射する光源、380~750nmの可視光を出射する光源、380nm以下の紫外光を出射する光源を用いても良い。この波長における屈折率が1.56以上の材料によって投光レンズ11,31,41,51,61を形成することで、投光レンズ11,31,41,51,61を小型化しながら広角化できる。
【0116】
また、単波長の光を出射する光源に限らず、複数のピーク波長を有するスペクトルの光を出射する光源、例えばLED光源を用いても良い。この場合、最も強度が大きいピーク波長における屈折率が1.56以上の材料によって投光レンズ11,31,41,51,61を形成することで、投光レンズ11,31,41,51,61を小型化しながら広角化できる。また、光源の種類に応じて、表示装置のバックライト等に本発明の投光装置を用いても良い。
【0117】
なお、レーザーダイオード素子以外の光源であっても、一般的に、光源から出射された光の光強度は、中心部で大きく、中心部から離れた部分で小さくなる。この光の中心部をZ軸に合わせることで、投光装置から投光された光の光強度を投光範囲の略全体に亘って確保できる。
【0118】
上記実施例では、入射面12,32,42,52,62がシリンドリカル面であり、出射面13,33,43,53,63がシリンドリカル面またはトロイダル面である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、入射面をトロイダル面にして出射面をシリンドリカル面にしたり、入射面および出射面の両方をトロイダル面にしても良い。また、入射面や出射面の少なくとも一方を、アナモフィック面以外の自由曲面としても良く、Z軸に関して軸対称な面としても良い。
【符号の説明】
【0119】
2 光源
10,30,40,50,60 投光装置
11,31,41,51,61 投光レンズ
12,32,42,52,62 入射面
13,33,43,53,63 出射面
15 第1X屈折光線
16 第1X延長線
17 第2X屈折光線
18 第2X延長線
23 第1Y屈折光線
25 第2Y屈折光線
26 第2Y延長線
α5 第1X偏角
α6 第2X偏角
β6 第2Y偏角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13