(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】救助訓練用組立ユニット
(51)【国際特許分類】
E04B 1/00 20060101AFI20230127BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
E04B1/00 501C
G09B9/00 M
(21)【出願番号】P 2022170656
(22)【出願日】2022-10-25
【審査請求日】2022-10-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年6月17日に救助訓練用組立ユニットがウェブサイトに掲載された。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520461152
【氏名又は名称】八櫛 徳二郎
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八櫛 徳二郎
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-203137(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0233289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00-1/36
G09B 1/00-9/56、17/00-19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
救助作業者による模擬救助訓練を行うための救助訓練用組立ユニットであって、
分解可能に組み立てられる複数の第1パネルにより形成され、水平直進方向を第1軸線とする前記救助作業者の第1ほふく前進通路を第1内部空間によって構築する、第1直進訓練用パネル体と、
分解可能に組み立てられる複数の第2パネルにより形成され、水平直進方向を第2軸線とする前記救助作業者の第2ほふく前進通路を第2内部空間によって構築する、第2直進訓練用パネル体と、
分解可能に組み立てられる複数の第3パネルにより形成され、隣接して配置される前記第1直進訓練用パネル体と前記第2直進訓練用パネル体とを前記第1軸線と前記第2軸線とが直進方向ではない曲折角度となるように接続し、前記第1ほふく前進通路の出口から前記第2ほふく前進通路の入口に至る、水平直進方向を第3軸線とする前記救助作業者の第3ほふく前進通路を第3内部空間によって構築する、第1曲折訓練用パネル体と、
を有し、
互いに接続される前記第1直進訓練用パネル体、前記第1曲折訓練用パネル体、及び前記第2直進訓練用パネル体により前記第1ほふく前進通路、前記第3ほふく前進通路、及び前記第2ほふく前進通路がこの順序で連通して形成され、前記第1軸線、前記第3軸線、及び前記第2軸線がこの順序で含まれる態様で曲折する第1折れ線を軸線とする第1訓練ルートを形成する
ことを特徴とする救助訓練用組立ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の救助訓練用組立ユニットにおいて、
前記第1曲折訓練用パネル体は、
互いに異なる複数種類の前記曲折角度をそれぞれ与える複数種類が含まれており、
前記複数種類の第1曲折訓練用パネル体のうちいずれか1種類の第1曲折訓練用パネル体を選択的に用いることにより、前記第1折れ線の曲折態様が互いに異なる複数種類の前記第1訓練ルートを選択的に実現する
ことを特徴とする救助訓練用組立ユニット。
【請求項3】
請求項1記載の救助訓練用組立ユニットであって、
分解可能に組み立てられる複数の第4パネルにより形成され、水平直進方向を第4軸線とする前記救助作業者の第4ほふく前進通路を第4内部空間によって構築する、第3直進訓練用パネル体と、
分解可能に組み立てられる複数の第5パネルにより形成され、隣接して配置される前記第2直進訓練用パネル体と前記第3直進訓練用パネル体とを前記第2軸線と前記第4軸線とが直進方向ではない曲折角度となるように接続し、前記第2ほふく前進通路の出口から前記第4ほふく前進通路の入口に至る、水平直進方向を第5軸線とする前記救助作業者の第5ほふく前進通路を第5内部空間によって構築する、第2曲折訓練用パネル体と、
を有し、
互いに接続される前記第1直進訓練用パネル体、前記第1曲折訓練用パネル体、前記第2直進訓練用パネル体、第2曲折訓練用パネル体、及び第3直進訓練用パネル体により前記第1ほふく前進通路、前記第3ほふく前進通路、前記第2ほふく前進通路、前記第5ほふく前進通路、及び前記第4ほふく前進通路がこの順序で連通して形成され、前記第1軸線、前記第3軸線、前記第2軸線、前記第5軸線、及び前記第4軸線がこの順序で含まれる態様で曲折する第2折れ線を軸線とする第2訓練ルートを形成する
ことを特徴とする救助訓練用組立ユニット。
【請求項4】
請求項3記載の救助訓練用組立ユニットにおいて、
前記第1曲折訓練用パネル体は、
互いに異なる複数種類の前記曲折角度をそれぞれ与える複数種類が含まれており、
前記第2曲折訓練用パネル体は、
互いに異なる複数種類の前記曲折角度をそれぞれ与える複数種類が含まれており、
前記複数種類の第1曲折訓練用パネル体のうちいずれか1種類の第1曲折訓練用パネル体と前記複数種類の第2曲折訓練用パネル体のうちいずれか1種類の第2曲折訓練用パネル体との組み合わせを選択的に用いることにより、前記第2折れ線の曲折態様が互いに異なる複数種類の前記第2訓練ルートを選択的に実現する
ことを特徴とする救助訓練用組立ユニット。
【請求項5】
請求項4記載の救助訓練用組立ユニットにおいて、
前記複数種類の曲折角度は、
30°、45°、60°、及び90°を含む
ことを特徴とする救助訓練用組立ユニット。
【請求項6】
請求項1記載の救助訓練用組立ユニットにおいて、
分解可能に組み立てられる複数の第6パネルにより形成され、水平直進方向を第6軸線とする前記救助作業者の第6ほふく前進通路を第6内部空間によって構築する、第4直進訓練用パネル体と、
を有し、
前記第1曲折訓練用パネル体は、
前記第1直進訓練用パネル体と前記第2直進訓練用パネル体とを前記第1軸線と前記第2軸線とが略60°をなすように接続し、かつ、前記第2直進訓練用パネル体と前記第4直進訓練用パネル体とを前記第2軸線と前記第6軸線とが略60°をなすように接続し、かつ、前記第4直進訓練用パネル体と前記第1直進訓練用パネル体とを前記第6軸線と前記第1軸線とが略60°をなすように接続することで、上面視が略Y字状をなすように構成されており、
前記第1訓練ルートと、
互いに接続される前記第2直進訓練用パネル体、前記第1曲折訓練用パネル体、及び前記第4直進訓練用パネル体により前記第2ほふく前進通路、前記第3ほふく前進通路、及び前記第6ほふく前進通路がこの順序で連通して形成され、前記第1軸線、前記第3軸線、及び前記第6軸線がこの順序で含まれる態様で曲折する第3折れ線を軸線とする第3訓練ルートと、
互いに接続される前記第4直進訓練用パネル体、前記第1曲折訓練用パネル体、及び前記第1直進訓練用パネル体により前記第6ほふく前進通路、前記第3ほふく前進通路、及び前記第1ほふく前進通路がこの順序で連通して形成され、前記第6軸線、前記第3軸線、及び前記第1軸線がこの順序で含まれる態様で曲折する第4折れ線を軸線とする第4訓練ルートと、
形成することを特徴とする救助訓練用組立ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭隘空間における救助活動を訓練する救助訓練用組立ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
消防活動の訓練を行う技術として、例えば特許文献1に示す技術が知られている。特許文献1には、通気性並びに排水性を有する不燃性材料の床を備え、不燃性材料により構築或いは耐熱対策を施工した建屋内に、不燃性材料より成る建屋内設備や家具類のモックアップを配置し、床下に設けた換気用空気供給口と天井に設けた排気ダクトにより下方から上方に流通する換気装置を構成し、上記モックアップの火災源となる位置に、ガス燃料を燃焼するバーナーと人工煙吹出口を設け、床下に消火薬剤回収設備を設けて散布した消火薬剤或いは代替薬剤を分析可能に回収するように構成した消防訓練施設が開示されている。
【0003】
このような消防訓練施設に関する技術が知られている一方で、国内においては大規模地震の発生が強く危惧されており、全国的に消防機関で震災対策の整備が進められている。震災対策では破壊危惧や倒壊防止器具、震災用個人防護装備など、様々な資機材の整備が行われている。それらの震災対策を進める上で大きな壁となっているのが倒壊建物救助訓練施設の整備である。
【0004】
震災時には多くの倒壊建物が発生し、その倒壊建物に多くの逃げ遅れた市民が取り残され、生存した状態で長時間救出を待ち、困難性の高い救助活動が広範囲に多数の場所で必要になることは過去の災害からも明らかである。倒壊建物における狭隘空間での活動について訓練を行うには、具体的な狭隘空間を経験できる施設が必須であり、特に救助作業者にとってはこのような施設の普及が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、倒壊建物の救助訓練施設には広大な土地、カルバート、瓦礫などの様々な重量物の設置が必要であり、訓練場の建設や整備を行うことが困難となっている。そのため、広く一般の隊員に対して教養や訓練が十分になされていないという実情である。
【0007】
本発明の目的は、短時間で容易に設営することができ、現実的且つ効率的な狭隘空間での訓練を可能にすると共に、非使用時にはコンパクトに収納することが可能な救助訓練用組立ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明は、救助作業者による模擬救助訓練を行うための救助訓練用組立ユニットであって、分解可能に組み立てられる複数の第1パネルにより形成され、第1内部空間によって水平直進方向を第1軸線とする前記救助作業者の第1ほふく前進通路を構築する、第1直進訓練用パネル体と、分解可能に組み立てられる複数の第2パネルにより形成され、水平直進方向を第2軸線とする前記救助作業者の第2ほふく前進通路を第2内部空間によって構築する、第2直進訓練用パネル体と、分解可能に組み立てられる複数の第3パネルにより形成され、隣接して配置される前記第1直進訓練用パネル体と前記第2直進訓練用パネル体とを前記第1軸線と前記第2軸線とが直進方向ではない曲折角度となるように接続し、前記第1ほふく前進通路の出口から前記第2ほふく前進通路の入口に至る、水平直進方向を第3軸線とする前記救助作業者の第3ほふく前進通路を第3内部空間によって構築する、第1曲折訓練用パネル体と、を有し、互いに接続される前記第1直進訓練用パネル体、前記第1曲折訓練用パネル体、及び前記第2直進訓練用パネル体により前記第1ほふく前進通路、前記第3ほふく前進通路、及び前記第2ほふく前進通路がこの順序で連通して形成され、前記第1軸線、前記第3軸線、及び前記第2軸線がこの順序で含まれる態様で曲折する第1折れ線を軸線とする第1訓練ルートを形成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1直進訓練用パネル体、第2直進訓練用パネル体及び第1曲折訓練用パネル体の各訓練用パネル体を分解可能な複数のパネル体を組み立てて構築できるので、短時間で容易に設営でき、かつ、非使用時にはコンパクトに収納できる救助訓練用組立ユニットを実現できる。また、ワゴン車などの小型輸送車両で自在に運ぶことができるので、広大な土地や多数の重量物等を用意することなく、震災時等に発生する倒壊建物内の狭隘空間における救助訓練を場所を選ばずに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの全体斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの直進ブースのパーツ形状を示す図である。図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットにおいて45°曲折する場合の接続ブースのパーツ形状を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットにおいて30°曲折する場合の接続ブースのパーツ形状を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットにおいて90°曲折する場合の接続ブースのパーツ形状を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの接続パターンを示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの第1の組立工程を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの第2の組立工程を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの第3の組立工程を示す図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの第4の組立工程を示す図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの第5の組立工程を示す図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの全体斜視図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの接続パターンを示す図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの全体斜視図である。
【
図15】本発明の第3の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの接続ブースのパーツ形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットについて、図面を参照して説明する。本実施形態に係る救助訓練用組立ユニットは、災害発生時に倒壊した建物などで生じる狭隘空間を仮想的に設営し、消防士、自衛官、警官等の救助作業者が模擬救助訓練を行うことを可能とするものである。
【0012】
図1は、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの全体斜視図、
図2は、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの直進ブースのパーツ形状を示す図、
図3ないし
図5は、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの接続ブースのパーツ形状を示す図、
図6は、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの接続パターンを示す図である。
【0013】
図1において、救助訓練用組立ユニット1は、救助作業者がほふく前進するための直線状の内部空間を形成する2つの直進ブース(第1直進ブース10,第2直進ブース20)と、第1直進ブース10及び第2直進ブース20を所定の角度で接続する第1接続ブース50とを備える。なお、
図1において第1直進ブース10及び第2直進ブース20は同じ構造を有している。
【0014】
第1直進ブース10は、分解可能に組み立てられる複数の第1部材(各部材の詳細は後述する)により形成され、水平直進方向を第1軸線S1とする救助作業者の第1ほふく前進通路A1を第1内部空間によって構築する。第2直進ブース20は、分解可能に組み立てられる複数の第2部材(各部材の詳細は後述する)により形成され、水平直進方向を第2軸線S2とする救助作業者の第2ほふく前進通路A2を第2内部空間によって構築する。第1直進ブース10は第1直進訓練用パネル体の一例に相当し、第2直進ブース20は第2直進訓練用パネル体の一例に相当する。
【0015】
第1接続ブース50は、分解可能に組み立てられる複数の第3部材(各部材の詳細は後述する)により形成され、隣接して配置される第1直進ブース10と第2直進ブース20とを第1軸線S1と第2軸線S2とが直進方向ではない曲折角度となるように接続する。
図1においては、曲折角度が45度となっている。また、第1ほふく前進通路A1の出口から第2ほふく前進通路A2の入口に至る水平直進方向を第3軸線S3とする救助作業者の第3ほふく前進通路A3を第3内部空間によって構築する。第1接続ブース50は第1曲折訓練用パネル体の一例に相当する。
【0016】
図1に示すように、相互に接続される第1直進ブース10、第1接続ブース50及び第2直進ブース20により、第1ほふく前進通路A1、第3ほふく前進通路A3、及び第2ほふく前進通路A2がこの順序で連通し(すなわち、第1内部空間、第3内部空間及び第2内部空間がこの順序で連通し)、第1軸線S1、第3軸線S3及び第2軸線S2がこの順序で含まれる態様で曲折する第1折れ線を軸線とする第1訓練ルートR1が形成される。
【0017】
第1直進ブース10は、第1ほふく前進通路A1の左右の両側面に平行に対向して配置される2枚の横板11と、当該横板11の上辺部分に接合して配置される1枚の天井板12とを少なくとも有しており、この2枚の横板11と1枚の天井板12とで第1内部空間が形成される。2枚の横板11及び1枚の天井板12が第1パネルの一例に相当する。なお、第1直進ブース10は、これらのパネル以外にも後述するアンダーストッパー15を備える構成としてもよく、当該アンダーストッパー15を含めて第1部材とする。
【0018】
図2において、
図2(A)が第1直進ブース10及び第2直進ブース20の側面部材の形状を示し、
図2(B)が第1直進ブース10及び第2直進ブース20の上面部材の形状を示し、
図2(C)がアンダーストッパー15の形状を示している。
図2(A)に示す側面部材は、第1ほふく前進通路A1の側壁を形成する略矩形状の横板11を有しており、当該横板11は、水平方向を長手方向とし、垂直方向を短手方向とする略長方形の形状を有する。横板11の底辺側には、アンダーストッパー15の係止部16の凹溝に嵌合する凹部17が形成されている。アンダーストッパー15の係止部16と横板11の凹部17とが嵌合することで、横板11の下部が外側方向に広がるのを防止し、少なくとも一時的に起立状態に維持することが可能となる。なお、このアンダーストッパー15は、上記のように横板11を起立状態に安定すると共に、訓練作業における障害物としても機能させることが可能である。
【0019】
また、横板11の上辺側には、天井板12の接合孔19に嵌合する凸部18が形成されている。天井板12の接合孔19と横板11の凸部18とが嵌合することで、それぞれが接合され、横板11を側面とし、天井板12を上面とし、床を底面とする第1内部空間が形成される。
【0020】
さらに、横板11は、垂直方向の両短辺にヒンジ13を介して接合する転倒防止羽14を備える。転倒防止羽14は台形状に形成されており、2つのヒンジ13により折り畳み自在の状態で横板11に接合されている。横板11を使用する場合はヒンジ13を所定の角度に開くことで、
図1に示すように、転倒防止羽14の底辺と床との接触により横板11を起立状態に支持する。横板11を使用しない場合は、転倒防止羽14を完全に折り畳むことでコンパクトに収納することが可能となる。
【0021】
それぞれの転倒防止羽14には2つの接合孔14aが穿孔されており、後述する第1接続ブース50の接続用横板51の凸部57と嵌合するようになっている。
【0022】
天井板12は、横板11の長手方向と同じ長さの長辺を有する略長方形状であり、それぞれの長辺から僅かに離間した位置に当該長辺に沿って、上述したような横板11の凸部18と嵌合する接合孔19が穿孔されている。なお、天井板12の四隅は、面取りされることで後述する接続用天井板52との干渉を防止すると共に、安全性を確保することができる。
【0023】
アンダーストッパー15は、組み立て時において、横板11や天井板12の長手方向に対して垂直な方向に、横板11の凹部17が形成されている間隔と同じ間隔で並列されて配置される。アンダーストッパー15の長手方向の両端部近傍には、短手方向に沿った直線且つ凹溝状の係止部16が形成されている。係止部16の溝幅は少なくとも横板11の厚さ以上となっており、横板11の凹部17と嵌合することで、対向して配設される両側面の横板11の下部が外側方向に広がるのを防止し、横板11間の離間距離を一定に保ちつつ、横板11を起立状態に支持する。
【0024】
なお、第1直進ブース10と第2直進ブース20とは同じパーツを用いて同じ構造を有している。すなわち、第2直進ブース20においては、2枚の横板11と1枚の天井板12とで、第2ほふく前進通路A2の第2内部空間が形成される。この2枚の横板11及び1枚の天井板12が第2パネルの一例に相当する。なお、第2直進ブース20は、これらのパネル以外にもアンダーストッパー15を備える構成としてもよく、当該アンダーストッパー15を含めて第2部材とする。
【0025】
第1接続ブース50は、第1直進ブース10の一方の側面と第2直進ブース20の一方の側面とを接続する1枚の接続用横板51と、当該接続用横板51の上辺部分に接合すると共に、第1直進ブース10の天井板12の一端部、及び第2直進ブース20の天井板12の一端部に重複して接合する1枚の接続用天井板52とを備える。この1枚の接続用横板51と1枚の接続用天井板52とで第3内部空間が形成される。なお、第1直進ブース10の他方の側面と第2直進ブース20の他方の側面との接続は、接続用横板51を介さずに、後述するように接続用天井板52を介することで行われる。1枚の接続用横板51及び1枚の接続用天井板52が第3パネルの一例であり、第3部材に相当する。
【0026】
図3ないし
図5は、第1接続ブース50を構成するパーツの形状を示しており、
図3は、第1直進ブース10及び第2直進ブース20を45度の曲折角度で接続する場合のパーツであり、
図4は、第1直進ブース10及び第2直進ブース20を30度の曲折角度で接続する場合のパーツであり、
図5は、第1直進ブース10及び第2直進ブース20を90度の曲折角度で接続する場合のパーツである。
図3(A)、
図4(A)及び
図5(A)は、第1接続ブース50の接続用横板51の形状を示し、
図3(B)、
図4(B)及び
図5(B)は、第1接続ブース50の接続用天井板52の形状を示している。なお、
図1に示す救助訓練用組立ユニット1は、
図3の45度の曲折角度で接続する第1接続ブース50で第1直進ブース10と第2直進ブース20とを接続した状態を示している。
【0027】
図3(A)、
図4(A)及び
図5(A)に示す接続用横板51は、略矩形状になっており、曲折角度が大きくなるほど、その角度に応じて水平方向に長くなる。接続用横板51の両側辺には、第1直進ブース10や第2直進ブース20における転倒防止羽14の接合孔14aに嵌合する凸部57が形成されている。また、接続用横板51の上辺側には、接続用天井板52の接合孔59aに嵌合する凸部58が形成されている。この凸部58は、曲折角度が大きくなるほど、すなわち接続用横板51が水平方向に長くなるほど、その角度に応じて形成される個数が増加、又は相互の離間距離が長くなる。
【0028】
図3(B)、
図4(B)及び
図5(B)に示す接続用天井板52は、略等脚台形状に形成されている。ここでは、互いに平行な辺を上辺及び底辺とし、長さが短い方の辺を上辺とする。
図3(B)ないし
図5(B)に示すように、曲折角度が大きくなるほど、その角度に応じて底辺の長さが長くなる。接続用横板51は、接続用天井板52の底辺側に対応する側面を形成するように配置され、接続用天井板52の上辺側に対応する側面は、第1直進ブース10の横板11と第2直進ブース20の横板11とが密着することで形成される。また、一方の斜辺側は第1直進ブース10の出口側に接続され、他方の斜辺側は第2直進ブース20の入口側に接続される。
【0029】
接続用天井板52の底辺側には、接続用横板51の凸部58と嵌合する接合孔59aと、第1直進ブース10及び第2直進ブース20における横板11の凸部18と嵌合する接合孔59bとが穿孔されている。上辺側には、第1直進ブース10及び第2直進ブース20における横板11の凸部18と嵌合する接合孔59bが穿孔されている。
【0030】
接続用天井板52の一方の斜辺の直近に穿孔される2つの接合孔59bは、第1直進ブース10における横板11の出口側の凸部18と嵌合することで第1直進ブース10と接続し、他方の斜辺の直近に穿孔される2つの接合孔59bは、第2直進ブース20における横板11の入口側の凸部18と嵌合することで第2直進ブース20と接続する。すなわち、第1直進ブース10における横板11の出口側の凸部18は、天井板12の接合孔19、及び接続用天井板52の接合孔59bと嵌合するため、天井板12と接続用天井板52との一部が重複した状態で救助訓練用組立ユニット1の天井部分を形成する。第2直進ブース20における入口側の天井部分についても同様に、天井板12と接続用天井板52との一部が重複した構造となっている。
【0031】
上記のように、第1接続ブース50においては、接続用横板51を一方の側面とし、第1直進ブース10の横板11と第2直進ブース20の横板11とを密着させて他方の側面とし、接続用天井板52を上面とし、床を底面とする第3内部空間が形成される。
【0032】
図6は、救助訓練用組立ユニット1の接続パターンを示す図であり、
図3ないし
図5で示したように、曲折角度が45度、30度、90度の第1接続ブース50から1種類を選択的に用いた場合の接続パターンを示している。
図6において、右に45度曲折する訓練ルート(
図6(A))、左に45度曲折する訓練ルート(
図6(B))、右に30度曲折する訓練ルート(
図6(C))、左に30度曲折する訓練ルート(
図6(D))、右に90度曲折する訓練ルート(
図6(E))、左に90度曲折する訓練ルート(
図6(F))の6種類の接続パターンに加えて、第1直進ブース10と第2直進ブース20とを第1接続ブース50を介さずに接続した0度の訓練ルート(
図6(G))の接続パターンを入れた合計7種類の接続パターンを実現することが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態においては、
図3ないし
図5を用いて曲折角度が45度、30度、90度の場合の形状について具体的に記載しているが、訓練したい角度に合わせて任意の角度で接続用横板51及び接続用天井板52が形成されてもよい。また、
図6に示したように、第1接続ブース50は、異なる複数種類の曲折角度を与える複数種類が含まれており、いずれか1種類の第1接続ブース50を選択的に用いることにより、第1折れ線の曲折態様が互いに異なる複数種類の訓練ルートが選択的に実現される。
【0034】
次に、救助訓練用組立ユニット1の組立工程について、
図7ないし
図11を用いて説明する。まず、
図7に示すように、設営するコースに応じてアンダーストッパー15を並べて配置する。アンダーストッパー15は、救助作業者がほふく前進する方向に対して垂直となるように所定の間隔を空けて並列して配置される。配置されるアンダーストッパー15の個数は、第1直進ブース10及び第2直進ブース20における横板11に形成されている凹部17の数に応じたものとなる。
【0035】
アンダーストッパー15が設定コースのおおよその位置に配置されると、
図8に示すように、アンダーストッパー15の係止部16に横板11の凹部17を嵌合させて横板11を設置し、転倒防止羽14を所定角度に広げて横板11の起立状態を安定させる。
【0036】
第1直進ブース10及び第2直進ブース20の横板11が設置されると、
図9に示すように、第1接続ブース50の接続用横板51の凸部57を転倒防止羽14の接合孔14aに嵌合させて接続用横板51を設置する。これにより転倒防止羽14が固定され、コース全体が安定する。
【0037】
横板11及び接続用横板51が設置されると、
図10に示すように、横板11の凸部18に天井板12の接合孔19を嵌合させて、第1直進ブース10及び第2直進ブース20における天井板12を設置する。
【0038】
そして最後に、
図11に示すように、第1直進ブース10における横板11の出口側の凸部18に、接続用天井板52の一方の斜辺側の接合孔59bを嵌合させ、第2直進ブース20における横板11の入口側の凸部18に、接続用天井板52の他方の斜辺側の接合孔59bを嵌合させ、接続用横板51の凸部58に、接続用天井板52の接合孔59aを嵌合させて第1接続ブース50を形成し、救助訓練用組立ユニット1の組立を完了する。
【0039】
このように、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニット1においては、第1直進ブース10、第2直進ブース20及び第1接続ブース50の各訓練用パネル体を分解可能な複数のパネル体を組み立てて構築できるので、短時間で容易に設営でき、かつ、非使用時にはコンパクトに収納できる救助訓練用組立ユニット1を実現できる。また、ワゴン車などの小型輸送車両で自在に運ぶことができるので、広大な土地や多数の重量物等を用意することなく、震災時等に発生する倒壊建物内の狭隘空間における救助訓練を場所を選ばずに行うことができる。
【0040】
また、複数種類の第1接続ブース50を選択的に使い分けることにより、第1直進ブース10、第1接続ブース50及び第2直進ブース20の連続体の内部に形成される第1訓練ルートR1の様々な折れ曲がり具合を実現することができる。その結果、多種多様な形状の訓練ルートについてもれなく訓練可能とすることができる。
【0041】
さらに、第1訓練ルートR1の様々な折れ曲がり具合を、第1接続ブース50の軸線方向と、その前後の第1直進ブース10及び第2直進ブース20の軸線方向とのなす曲折角度の3種類の設定(30°、45°、90°)の中から適宜に選択するだけで、わかりやすく簡単に実現することができる。
【0042】
(本発明の第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットについて、図面を参照して説明する。本実施形態に係る救助訓練用組立ユニットは、3つの直進ブースを2つの接続ブースで接続したものである。なお、本実施形態において第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0043】
図12は、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの全体斜視図、
図13は、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの接続パターンを示す図である。
【0044】
本実施形態に係る救助訓練用組立ユニット1は、第1の実施形態において説明した第1直進ブース10、第1接続ブース50及び第2直進ブース20で構成される一連の第1訓練ルートR1に加え、分解可能に組み立てられる複数の第4部材(各部材は第1直進ブース10及び第2直進ブース20の部材と同じである)により形成され、水平直進方向を第4軸線S4とする救助作業者の第4ほふく前進通路A4を第4内部空間によって構築する第3直進ブース30と、分解可能に組み立てられる複数の第5部材(各部材は第1接続ブース50の部材と同じである)により形成され、隣接して配置される第2直進ブース20と第3直進ブース30とを第2軸線S2と第4軸線S4とが直進方向ではない曲折角度となるように接続し、第2ほふく前進通路A2の出口から第4ほふく前進通路A4の入口に至る水平直進方向を第5軸線S5とする救助作業者の第5ほふく前進通路A5を第5内部空間によって構築する第2接続ブース60とを備える。第3直進ブース30は第3直進訓練用パネル体の一例に相当し、第2接続ブース60は第2曲折訓練用パネル体の一例に相当する。
【0045】
図12に示すように、相互に接続される第1直進ブース10、第1接続ブース50、第2直進ブース20、第2接続ブース60及び第3直進ブース30により、第1ほふく前進通路A1、第3ほふく前進通路A3、第2ほふく前進通路A2、第5ほふく前進通路A5及び第4ほふく前進通路A4がこの順序で連通し(すなわち、第1内部空間、第3内部空間、第2内部空間、第5内部空間及び第4内部空間がこの順序で連通し)、第1軸線S1、第3軸線S3、第2軸線S2、第5軸線S5及び第4軸線S4がこの順序で含まれる態様で曲折する第2折れ線を軸線とする第2訓練ルートR2が形成される。
図12においては、第2直進ブース20と第3直進ブース30とが30°の曲折角度で接続されている。
【0046】
なお、第3直進ブース30の構造及び部材は、第1直進ブース10及び第2直進ブース20と同様に、2枚の横板11及び1枚の天井板12で構成され、これが第4パネルの一例に相当する。詳細は第1の実施形態の場合と同じであるため省略する。また、第2接続ブース60の構造及び部材は、第1接続ブース50と同様に、1枚の接続用横板51及び1枚の接続用天井板52で構成され、これが第5パネルの一例に相当する。詳細は第1の実施形態の場合と同じであるため省略する。さらに、組立工程についても、前記第1の実施形態において説明した組立工程に準じるものであるため、詳細な説明は省略する。
【0047】
図13は、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニット1の接続パターンを示す図であり、曲折角度が30度、45度、90度の第2接続ブース60から1種類を選択的に用いた場合の接続パターンを示している。
図13においては、前記第1の実施形態における
図6(C)で示した右に30度曲折する訓練ルートの接続パターンに対して、上記第2接続ブース60を選択的に用いた場合の接続パターンを示している。
【0048】
図13において、第2直進ブース20の出口から右に30度曲折する訓練ルート(
図13(A))、左に30度曲折する訓練ルート(
図13(B))、右に45度曲折する訓練ルート(
図13(C))、左に45度曲折する訓練ルート(
図13(D))、右に90度曲折する訓練ルート(
図13(E))、左に90度曲折する訓練ルート(
図13(F))の6種類の接続パターンに加えて、第2接続ブース60を介さずに第3直進ブース30を接続した0度の訓練ルート(
図13(G))の接続パターンを入れた合計7種類の接続パターンを実現することが可能となる。これが、
図6(A)~
図6(G)の各接続パターンごとに実現可能となるため、その組み合わせは合計で7通り×7通り=49通りとなり、第3の実施形態において後述する上面視Y字状の接続パターンを含めて合計50通りという膨大なパターン数の訓練ルートを実現することが可能となる。
【0049】
なお、本実施形態においても、第2接続ブース60の曲折角度は、訓練したい角度に合わせて任意の角度で接続用横板51及び接続用天井板52を設計して形成されてもよい。また、第2接続ブース60は、上述したように異なる複数種類の曲折角度を与える複数種類が含まれており、いずれか1種類の第2接続ブース60を選択的に用いることにより、第2折れ線の曲折態様が互いに異なる複数種類の訓練ルートが選択的に実現される。すなわち、第1接続ブース50の曲折角度の選択と組み合わせることで、膨大な数の訓練ルートを実現することができる。
【0050】
このように、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニット1においては、第1直進ブース10、第1接続ブース50、第2直進ブース20、第2接続ブース60、第3直進ブース30という5パネル体の連続体構造とすることで、訓練のバリエーションをさらに増やすことができる。
【0051】
また、複数種類の第1接続ブース50と複数種類の第2接続ブース60との組み合わせを選択的に使い分けることにより、第1直進ブース10、第1接続ブース50、第2直進ブース20、第2接続ブース60、第3直進ブース30の連続体の内部に形成される第2訓練ルートR2の様々な折れ曲がり具合を実現することができる。その結果、さらに多種多様な形状の訓練ルートについてもれなく訓練可能とすることができる。
【0052】
さらに、第2訓練ルートR2の様々な折れ曲がり具合を、第1接続ブース50の軸線方向と、その前後の第1直進ブース10及び第2直進ブース20の軸線方向とのなす曲折角度の3種類の設定(30°、45°、90°)、並びに第2接続ブース60の軸線方向と、その前後の第2直進ブース20及び第3直進ブース30の軸線方向とのなす曲折角度の3種類の設定(30°、45°、90°)の中から適宜に選択するだけで、膨大な接続パターンの中から所望の接続パターンをわかりやすく簡単に実現することができる。
【0053】
(本発明の第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る救助訓練用組立ユニットについて、図面を参照して説明する。本実施形態に係る救助訓練用組立ユニットは、3つの直進ブースを60度の曲折角度を有する1つの接続ブースで3方向に接続したものである。なお、本実施形態において前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0054】
図14は、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの全体斜視図である。本実施形態に係る救助訓練用組立ユニット1は、第1の実施形態において説明した第1直進ブース10、第2直進ブース20に加え、分解可能に組み立てられる複数の第6部材(各部材は第1直進ブース10及び第2直進ブース20の部材と同じである)により形成され、水平直進方向を第6軸線S6とする救助作業者の第6ほふく前進通路A6を第6内部空間によって構築する第4直進ブース40を有する。この第4直進ブース40は第4直進訓練用パネル体の一例に相当する。また、第1の実施形態において説明した第1接続ブース50が、第1直進ブース10と第2直進ブース20とを第1軸線S1と第2軸線S2とが略60度をなすように接続し、且つ、第2直進ブース20と第4直進ブース40とを第2軸線S2と第6軸線S6とが略60度をなすように接続し、且つ、第4直進ブース40と第1直進ブース10とを第6軸線S6と第1軸線S1とが略60度をなすように接続することで、上面視が略Y字状をなすように構成されている。
【0055】
図14に示すように、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニット1は、第1の実施形態において説明した、第1軸線S1、第3軸線S3及び第2軸線S2がこの順序で含まれる態様で曲折する第1折れ線を軸線とする第1訓練ルートR1を形成する。
【0056】
また、相互に接続される第2直進ブース20、第1接続ブース50及び第4直進ブース40により、第2ほふく前進通路A2、第3ほふく前進通路A3及び第6ほふく前進通路A6がこの順序で連通し(すなわち、第2内部空間、第3内部空間及び第6内部空間がこの順序で連通し)、第2軸線S2、第3軸線S3及び第6軸線S6がこの順序で含まれる態様で曲折する第3折れ線を軸線とする第3訓練ルートR3を形成する。
【0057】
さらに、相互に接続される第4直進ブース40、第1接続ブース50及び第1直進ブース10により、第6ほふく前進通路A6、第3ほふく前進通路A3及び第1ほふく前進通路A1がこの順序で連通し(すなわち、第6内部空間、第3内部空間及び第1内部空間がこの順序で連通し)、第6軸線S6、第3軸線S3及び第1軸線S1がこの順序で含まれる態様で曲折する第4折れ線を軸線とする第4訓練ルートR4を形成する。これらの第1訓練ルートR1、第3訓練ルートR3及び第4訓練ルートR4が組み合わさって、Y字状を形成する訓練ルートが実現される。
【0058】
図15は、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニットの接続ブースのパーツ形状を示す図である。前記第1の実施形態において説明した第1接続ブース50とは異なり、本実施形態に係る第1接続ブース50は、接続用横板51がなく接続用天井板52のみで形成される。接続用天井板52は、第1直進ブース10が接続する第1辺、第2直進ブース20が接続する第2辺、及び第4直進ブース40が接続する第3辺からなる略正三角形状となっており、各辺の近傍には、第1直進ブース10、第2直進ブース20及び第4直進ブース40の横板11の凸部18に嵌合する接合孔59aが穿孔されている。
【0059】
なお、接続用天井板52の角は、面取りされることで天井板12との干渉を防止すると共に、安全性を確保することができる。また、第4直進ブース40の構造及び部材は、第1直進ブース10及び第2直進ブース20と同様に、2枚の横板11及び1枚の天井板12で構成され、これが第6パネルの一例に相当する。詳細は第1の実施形態の場合と同じであるため省略する。さらに、組立工程についても、前記第1の実施形態において説明した組立工程に準じるものであるため、詳細な説明は省略する。
【0060】
このように、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニット1においては、上面視でみて、第1直進ブース10の第1軸線S1と、第2直進ブース20の第2軸線S2と、第4直進ブース40の第6軸線S6と、が互いに略60°をなすように(言い換えれば互いの角度間隔が180°となるように)、上面視でみて略Y字状に構築される。
【0061】
これにより、第1直進ブース10の第1ほふく前進通路A1~第1接続ブース50の第3ほふく前進通路A3~第2直進ブース20の第2ほふく前進通路A2という第1訓練ルートR1、第2直進ブース20の第2ほふく前進通路A2~第1接続ブース50の第3ほふく前進通路A3~第4直進ブース40の第6ほふく前進通路A6という第3訓練ルートR3、第4直進ブース40の第6ほふく前進通路A6~第1接続ブース50の第3ほふく前進通路A3~第1直進ブース10の第1ほふく前進通路A1という第4訓練ルートR4、の3種類の訓練ルートを形成することができる。
【0062】
この結果、第1訓練ルートR1を用いるとき、第3訓練ルートR3を用いるとき、第4訓練ルートR4を用いるとき、のそれぞれにおいて、別々の内容の救助訓練を個別に行うことができる。またその際、例えば、第1直進ブース10側から第1訓練ルートR1へと進入して開始される訓練と、第2直進ブース20側から第3訓練ルートR3へと進入して開始される訓練と、第4直進ブース40側から第4訓練ルートR4へと進入して開始される訓練とを、(各訓練ルート相互の重複部分での作業を同時に行わないような態様とすることで)それら3つの訓練を同時並行して行うことも可能となり、能率よく各訓練を実行することができる。
【0063】
具体的には、例えば、震災時に発生する倒壊建物における救助活動で必要となる3つの基本技術、(1)建物の進入口付近で行う安全管理と内部状況の把握、進入した隊員の管理を行う「指揮進入活動」、(2)狭隘空間での活動と要救助者の保温保護と言われる防水シートで身体を包み救出準備をする「保温保護活動」、(3)傷病者のバイタルなどを観察し、適切な救急活動を行う「部分接触を含む観察活動(部分接触とは、小さな隙間から救助隊員が手を差し込み、要救助者の体の一部に触れることができる状況で行う部分接触による観察のこと)」、をそれぞれの訓練ルートで(各訓練ルート相互の重複部分での作業を同時に行わないような態様で)同時に行うことができ、能率よく各訓練を実行することができる。
【0064】
(本発明のその他の実施形態)
その他の実施形態に係る救助訓練用組立ユニット1について、以下に説明する。なお、本実施形態において前記各実施形態を重複する説明は省略する。
【0065】
本実施形態に係る救助訓練用組立ユニット1は、各内部空間の高さ(天井高)を65cmから75cm、好ましくは70cm程度とする。狭隘空間では通常の消防活動が困難であり、その特殊性を訓練で体験することが需要であるが、訓練自体ができないほど狭い空間では実効性がない。そこで、様々な現場で活動する消防職員の通常活動の範囲を調査したところ、消防職員は火災現場において、姿勢を低く活動するための訓練が日常的に行われており、折り膝姿勢での活動は若干困難性があるものの十分に活動可能である。具体的に高さを測定すると90cmの高さでは折り膝姿勢が可能で十分に安定した状態で手元の作業が可能であり、この状態では狭隘空間での活動訓練には適さないと判断される。高さを80cmに設定すると折り膝姿勢が若干困難になり、首を深く曲げなければならないほどの活動障害があるが、折り膝姿勢での作業は可能である。さらに高さを低くし、70cmに設定した場合は、折り膝姿勢での活動は不能となり、ほふく前進による活動が主体となり、狭隘空間活動として適した状態となる。70cm未満にすると小さい障害物でも通過が難しくなり、訓練自体が困難となる。これらの結果から、各内部空間の高さを65cmから75cm程度の範囲に設定することで、ほふく前進による狭隘空間での訓練を効果的に行うことが可能である。
【0066】
また、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニット1は、移動不能材を設定できるようにしてもよい。移動不能材とは、震災時に発生する倒壊建物における狭隘空間の中で荷重が掛かっているため移動が危険な部材のことであり、救助活動においては移動不能材の除去の判断が極めて重要である。つまり、誤って移動不能材を除去してしまうと建物の倒壊が促進されたり、狭隘空間自体が埋没してしまうという危険性がある。本実施形態においては、各直進ブース(第1直進ブース10~第4直進ブース40)の横板11に貫通孔を穿けておき、左右の横板11に穿けられた貫通孔に長尺状の移動不能材を嵌入して固定することで、狭隘空間を左右に貫くように訓練用の移動不能材を設置する。このとき、貫通孔は、横板11の中心から偏心した位置に穿けておくことが望ましい。そうすることで、横板11の設置状況に応じて、上下方向及び/又は前後方向に斜めに傾斜した状態で狭隘空間の左右を貫く移動不能材をランダムに設定することができる。
【0067】
さらに、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニット1は、内部空間を暗闇にするために上部から暗幕用の布などで被覆するようにしてもよい。この場合、各直進ブースや各接続ブース(第1接続ブース50,第2接続ブース60)の横板11上端部や接続用横板21上端部に形成される凸部18,58を引掛部として機能させ、この引掛部に布を引っ掛けるように被せることで、布がずり落ちることを防止して安定して救助訓練用組立ユニット1を被覆することが可能となる。
【0068】
さらにまた、本実施形態に係る救助訓練用組立ユニット1は、救助作業者が救助作業中に天井板12や接続用天井板52などに接触することで、当該天井板12や接続用天井板52が上方に開放されてしまうことを防止するために、凸部18,58に対して天井板12や接続用天井板52の設置後にスライドロックや閂等で固定するようにしてもよい。
【0069】
ここで、本発明に係る救助訓練用組立ユニット1を消防隊員が実際に使用した場合の体感調査の結果を示す。体感調査では、組み立て・解体に要する時間について検証を行った。組み立てに要する時間について以下の表に示す。
【0070】
【0071】
表1は、初めて救助訓練用組立ユニット1を使用する消防隊員をA~Cの3つのグループに分け、(1)紙資料のみを参考に組み立て作業を行った場合、(2)加えて口頭により組み立て時のポイント説明した場合、(3)組み立て作業を数回練習した場合、のそれぞれに要した時間が示されている。表1に示すように、(1)については15分程度、(2)については8分程度、(3)については5分程度で組み立てが可能であった。解体に関しては、いずれのグループも3分程度で完了した。
【0072】
組み立てにおいても解体においても、ボルト締めなどの必要がなく組み込み式となっており、天井板や横板が標準化された構成となっているため、(1)の紙資料のみを参考にしての作業であっても、非常に短時間での組み立て・解体が可能であることが明確となった。
【0073】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0074】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0075】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0076】
1 救助訓練用組立ユニット
10 第1直進ブース
11 横板
12 天井板
13 ヒンジ
14 転倒防止羽
14a 接合孔
15 アンダーストッパー
16 係止部
17 凹部
18 凸部
19 接合孔
20 第2直進ブース
30 第3直進ブース
40 第4直進ブース
50 第1接続ブース
51 接続用横板
52 接続用天井板
57,58 凸部
59(59a,59b) 接合孔
60 第2接続ブース
【要約】
【課題】短時間で容易に設営することができ、現実的且つ効率的な狭隘空間での訓練を可能にすると共に、非使用時にはコンパクトに収納することが可能な救助訓練用組立ユニットを提供する。
【解決手段】救助作業者による模擬救助訓練を行うための救助訓練用組立ユニット1であって、救助作業者の第1ほふく前進通路A1を形成する第1直進ブース10と、救助作業者の第2ほふく前進通路A2を形成する第2直進ブース20と、第1直進ブース10及び第2直進ブース20を直進方向ではない曲折角度で接続し、救助作業者の第3ほふく前進通路A3を形成する第1接続ブース50とを有し、第1ほふく前進通路A1、第3ほふく前進通路A3、及び第2ほふく前進通路A2がこの順序で連通して第1訓練ルートR1を形成する。
【選択図】
図1