(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】無段変速装置
(51)【国際特許分類】
F16H 9/18 20060101AFI20230127BHJP
【FI】
F16H9/18 A
(21)【出願番号】P 2020106643
(22)【出願日】2020-06-20
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592167558
【氏名又は名称】春日 浩明
(74)【代理人】
【識別番号】100097629
【氏名又は名称】竹村 壽
(72)【発明者】
【氏名】春日 浩明
【審査官】田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-226596(JP,A)
【文献】特開2001-082559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイク、自動車等の車両を駆動するエンジンの出力を伝達する無段変速装置において、当該エンジンの出力によって回転するクランクシャフトの先端に取り付けられた第1のテンプレート
と、当該第1のテンプレートに嵌合され、この第1のテンプレートと共に回転するプーリーと、第2のテンプレートと、一端が当該プーリーの中心部分に換装され、他端が前記第2のテンプレートに取り付けられた回転シャフトと、前記プーリー及び前記第2のテンプレート間に挟持された推進ベルトと、を備え、前記プーリーには、中空円筒状ウエイトローラが移動し、外周から中心に向かって深くなる形状を有する通路が複数形成され、前記ウエイトローラの各々は、前記プーリーの回転によって生ずる遠心力によって前記通路を移動し、前記プーリー内部の全てのウエイトローラは、その中空内部を通してリング状の弾性体により一体化されていることを特徴とする無
段変速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイク、自動車などの車両に用いられる無段変速装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無段変速装置は、自動変速装置の一つであり、 車速に対応した最適なエンジン回転数の無段階な選定を可能にする。このようにエンジン回転数を無段階な選定を可能にすることにより、燃費が向上する。そして、エンジン回転数を大きく変更することなく車速を連続的に変更できるので、車速変更時のショックを有効に防止することができる。
【0003】
本発明に係る無段変速装置は、ウエイトローラがプーリーに働く遠心力によってプーリー内の通路を移動して車の速度に応じた最適なエンジン回転数の無段階な選定を可能とするものである。このような無段変速装置において、ウエイトローラを軽くすると、物体の質量に比例する遠心力が小さく、対応するエンジン回転数に相当する位置にウエイトローラが移動するためには時間が掛かり、場合によっては、その通路での動きが途中で止まることもある。また、ウエイトローラが重いと、回転数に応じてウエイトローラはプーリー内の通路を移動して最高速度に達することは容易に出来るが、回転数が低いときには、プーリーを動かす力が弱く前記通路の移動が遅くなる。
図2を参照して従来の無段変速装置を説明する。図には、エンジンの出力をタイヤなどの含む駆動部に無段変速装置を介して伝えるシステムが記載されている。従来、無段変速装置1は、エンジン2とエンジン2の出力が駆動するタイヤなどの駆動部7の間に接続される。エンジン2は、給気行程、圧縮行程、燃焼行程及び排気工程の4つの工程の周期で動作し、ピストン3を上下運動させる。ピストン3の上下運動によってクランクシャフト4は回転し、その回転力は、無段変速装置1を介して、無段変速装置1及び駆動部7に装荷された推進ベルト8により駆動部7に伝えられて駆動部7のタイヤを駆動する。
特許文献1には、ベルトとそれを狭持プーリーからなる無段変速装置が開示されている。ベルトの側面をプーリーで挟み、ベルトを左右から押し付け、その摩擦力によって動力を伝達するものである。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウエイトローラがプーリーに働く遠心力によってプーリー内の通路を移動して車の速度 に応じた最適なエンジン回転数の無段階な選定を可能とする無段変速装置において、ウエ イトローラを軽くすると、物体の質量に比例する遠心力が小さく、対応するエンジン回転 数に相当する位置にウエイトローラが移動するためには時間がかかり、場合によっては、 ウエイトローラの通路での動きが途中で止まることもある。また、ウエイトローラが重い と、回転数に応じてウエイトローラはプーリー内の通路を移動して最高速度に達すること が出来るが、回転数が低いときには、プーリーの押す力(遠心力)が弱くウエイトローラ の通路の移動が遅くなるという問題が認められる。 本発明は、このような事情によりなされたものであって、ウエイトローラに弾性体をウエイトローラの全部に通して、一体化させて使用し、その車両の加速性を高くする ことができる無段変速装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無段変速装置の一態様は、自動車等の車両を駆動するエンジンの出力を伝達する無段変速装置において、当該エンジンの出力によって回転するクランクシャフトの先端に取り付けられた第1のテンプレート、当該第1のテンプレートに嵌合され、この第1のテンプレートと共に回転するプーリーと、第2のテンプレートと、一端が当該プーリーの中心部分に貫通され、他端が前記第2のテンプレートに取り付けられた回転シャフトと、前記プーリー及び前記第2のテンプレート間に挟持された推進ベルトと、を備え、前記プーリーには、中空円筒状ウエイトローラが移動し、外周から中心に向かって深くなる形状を有する通路が複数形成され、前記ウエイトローラの各々は、前記プーリーの回転によって生ずる遠心力によって前記通路を移動し、前記プーリー内部の全てのウエイトローラは、その中空内部を通してリング状の弾性体により一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
ウエイトローラがプーリーに働く遠心力によってプーリー内の通路を移動して車の速 度に応じた最適なエンジン回転数の無段階な選定を可能とする無段変速装置において、ウ エイトローラを軽くすると、物体の質量に比例する遠心力が小さく、対応するエンジン回 転数に相当する位置にウエイトローラが移動するためには時間がかかり、場合によっては 、ウエイトローラの通路での動きが途中で止まることもある。また、ウエイトローラが重いと、回転数に応じてウエイトローラはプーリー内の通路を移動して最高速度に達することが出来るが、回転数が低いときには、プーリーの押す力が弱くウエイトローラの通路の移動が遅くなる。
本発明は、ウエイトローラに弾性体を全ウエイトローラに通して、一体化させたウエイトローラを使用し、その車両の加速性を高くすることを目的とするものである(図7参照)。
図7は、車両の速度(Km/h)と時間(t)との関係を表わしたものである。Aは本
発明に係る、弾性体を市販されている標準品のウエイトローラに通して載せた車両の速度
曲線であり、Bは市販されている標準品のウエイトローラを載せた、従来の車両の速度曲
線である。図でもわかるとおり、最高速度は、多少下がるものの、A速度曲線の上がり方
が、B速度曲線より早く、その加速性が良くなっている。
弾性体により一体化されたウエイトローラは、図3に示すように、一体化された状態で
各個がそれぞれの通路(15)に入れられ、遠心力により通路を移動する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1を説明する無段変速装置を構成するウエイトローラの平面図。
【
図2】実施例1及び従来技術を説明する車両の駆動システム概念図。
【
図3】実施例1を説明するウエイトローラが装着された無段変速装置を構成するプーリーの第1のテンプレートと対向する面を示す平面図。
【
図5】
図2に示すプーリーに第1のテンプレートを勘合した状態を示す平面図。
【
図6】
図2に示す第2のテンプレート及びプーリーによって挟持された推進ベルトを示す断面図。
【
図7】実施例1及び従来技術における駆動システムの最高速度とその速度に達する時間とを説明する特性図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例を参照して発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0011】
この実施例では、
図1乃至
図7を参照して、バイク、乗用車等の車両のガソリンエンジンの出力を駆動部に伝える駆動システムに用いられる無段変速装置について説明する。
【0012】
図2に示す駆動システムを参照して無段変速装置を説明する。
無段変速装置1は、エンジン2とエンジン2の出力により駆動されるタイヤなどの駆動部7の間に接続される。エンジン2は、給気行程、圧縮行程、燃焼行程及び排気工程の周期で動作し、ピストン3を上下運動させる。ピストン3の上下運動によって当該ピストンに接続されたクランクシャフト4は回転し、その回転力は、無段変速装置1を介して、無段変速装置1及び回転駆動部7に装荷された推進ベルト8により駆動部7に伝えられて駆動部(タイヤ)7を駆動可能にする。
【0013】
無段変速装置は、車速に対応した最適なエンジン回転数の無段階な選定を可能にするものである。このようにエンジン回転数を無段階な選定を可能にすることにより、燃費が向上する。そして、エンジン回転数を大きく変更することなく車速を連続的に変更できるので、車速変更時のショックを有効に防止することができる。
図2に示された通り、無段変速装置1は、第1のテンプレート5と、第2のテンプレート6と、推進ベルト8と、回転シャフト9と、プーリー10とを備えている。
【0014】
無段変速装置1は、エンジン2とエンジン2の出力により駆動されるタイヤなどの駆動部7の間に接続される。エンジン2は、給気行程、圧縮行程、燃焼行程及び排気行程の周期で動作し、ピストン3を上下運動させる。ピストン3の上下運動によって当該ピストンに接続されたクランクシャフト4は回転し、その回転力は、無段変速装置1を介して、無段変速装置1及び回転駆動部7に装荷された推進ベルト8により駆動部(タイヤ)7に伝えられて当該駆動部を駆動可能にする。
【0015】
第1のテンプレート5は、クランクシャフト4の先端に差し込まれ固定される。この先端には回転シャフト9の一端が固定されると共に、この先端部分には、プーリー10がその中心部分に形成された貫通孔に移動可能状態(
図2の両方向矢印参照)で挿入されている。そして、当該回転シャフトの他端には第2のテンプレート6が固定されている。つまり、第2のテンプレート6とプーリー10は、回転シャフト9上で対向しており、両者は、その状態で推進ベルト8を挟持している。
【0016】
図3は、プーリー10の平面図であり、第1のテンプレート5と対向する面を示している。プーリー10の当該面には、
図2に示すように、中空円筒状ウエイトローラ12が移動し、外周から中心に向かって深くなる形状を有する通路15が複数形成されている。
図4は、
図3のa-b線に沿う部分(通路15)の断面を示しており、左側が中心、右側が外周である。
図5は、プーリー10の前記対向面に第1のテンプレート5が対向している状態を示している。プーリー10の前記対向面には突起13、14が形成されている。第1のテンプレート5には、外周に複数の凹部16が形成され、これら凹部16に突起13、14が嵌合して第1のテンプレート5が回転したときにプーリー10が共に回転するように構成されている。
【0017】
次に、
図6を参照して推進ベルト8の動きを説明する。
図6に示すように、推進ベルト8は、プーリー10と第2のテンプレート6とによって推進シャフト9の上で挟持されている。
図6(a)に示すように、エンジン2が作動せず出力が零のときは、プーリー10が回転しないので、遠心力は発生せずに、ウエイトローラ12は、第1のテンプレート5に押圧されて、プーリー10の中心部に留まる(
図4参照)。エンジンを作動させて回転数を最高度に上げる(
図6(b))と、第1のテンプレート5が回転しプーリー10も共に回転する。このとき、前記ウエイトローラ12の各々は、前記プーリーの回転によって生ずる遠心力によって通路15を移動し、
図4に示す位置から前記プーリー外周の位置まで移動する。この移動によってプーリー10は、第1のテンプレート5に押圧されて、
図6(b)の矢印のように、プーリー10と第2のテンプレート6の間隔は狭まり、推進ベルトの径は広がり、エンジン回転数に対応する。
【0018】
図1に示すように、プーリー10内部の全てのウエイトローラは、その中空内部を通してリング状の弾性体20により一体化されている。
【0019】
図7は、回転数を0から最高度にしたときの時間(t)と速度(km/h)との関係を、この実施例(A)及び弾性体を用いない従来例(B)について、示した特性図である。実施例の最高速度V1及び達成時間t1、従来例の最高速度V2及び達成時間t2を比較すると、実施例は、最高速度は多少劣る(V1<V2)ものの、達成時間は短く(t1<t2)、途中の変化も早い。実施例における一例では、V1が50km/hであり、V2が55km/hである。
【符号の説明】
【0020】
1・・・無段変速装置
2・・・エンジン
3・・・ピストン
4・・・クランクシャフト
5・・・第1のテンプレート
6・・・第2のテンプレート
7・・・駆動部
8・・・推進ベルト
9・・・回転シャフト
10・・・プーリー
12・・・ウエイトローラ
13,14・・・プーリーの突起
15・・・ウエイトローラの通路
16・・・第1のテンプレートの凹部
20・・・弾性体