(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】コルゲートチューブ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 11/11 20060101AFI20230127BHJP
B29C 48/10 20190101ALI20230127BHJP
B29C 53/30 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
F16L11/11
B29C48/10
B29C53/30
(21)【出願番号】P 2018062116
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中平 雄人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 元気
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-211937(JP,A)
【文献】特開2000-240889(JP,A)
【文献】特開2014-128050(JP,A)
【文献】特開昭52-029618(JP,A)
【文献】実開昭63-106985(JP,U)
【文献】特開2015-228759(JP,A)
【文献】特開2014-025559(JP,A)
【文献】特開2007-060781(JP,A)
【文献】実開昭58-072925(JP,U)
【文献】特表2001-516004(JP,A)
【文献】特開2012-249518(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0012331(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/11
B29C 48/32
B29C 53/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓部と前記可撓部の一端に直管状のストレート部とが設けられたコルゲートチューブにおいて、
前記可撓部は、
複数の山部が第1ピッチで形成された蛇腹状の第1コルゲート部と、
前記第1コルゲート部と前記ストレート部との間に設けられ、前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチで複数の山部が形成された蛇腹状の第2コルゲート部と
を有し、
前記第2コルゲート部は、前記山部の軸心方向の長さが前記第1コルゲート部の前記山部の軸心方向の長さと同じであり、谷部の軸心方向の長さが前記第1コルゲート部の谷部の軸心方向の長さよりも大き
く、
前記第2コルゲート部の前記谷部の肉厚は前記第1コルゲート部の前記谷部の肉厚よりも大きい
ことを特徴とするコルゲートチューブ。
【請求項2】
前記第2コルゲート部の前記山部の肉厚は前記第1コルゲート部の前記山部の肉厚と同じであ
ることを特徴とする請求項
1に記載のコルゲートチューブ。
【請求項3】
前記第2コルゲート部の前記谷部と前記第1コルゲート部の前記谷部とは外径が同じであることを特徴とする請求項
1または2に記載のコルゲートチューブ。
【請求項4】
前記ストレート部は、前記可撓部の両端部にそれぞれ形成され、
前記第2コルゲート部は、少なくとも一方の端部の前記ストレート部と前記第1コルゲート部との間に設けられていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載のコルゲートチューブ。
【請求項5】
単位時間当たりの供給量を一定にして、管状の成形材料を鉛直下向きに供給する供給ステップと、
内周面に、直管状のストレート部を形成するストレート部成形面、第1ピッチで複数の山部が並ぶ蛇腹状の第1コルゲート部を形成する第1コルゲート部成形面、及び前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチで複数の山部が並ぶ蛇腹状であり、前記山部の軸心方向の長さが前記第1コルゲート部の前記山部の軸心方向の長さと同じであり、谷部の軸心方向の長さが前記第1コルゲート部の谷部の軸心方向の長さよりも大きい第2コルゲート部を形成する第2コルゲート部成形面が、移動方向に沿って前記ストレート部成形面、前記第2コルゲート部成形面、前記第1コルゲート部成形面の順番に設けられた金型内に前記成形材料を取り込み、前記金型を鉛直下向きに一定の速度で移動しながら成形を行う成形ステップと
を有
し、
前記第2コルゲート部の前記谷部の肉厚が前記第1コルゲート部の前記谷部の肉厚よりも大きいコルゲートチューブを製造する
ことを特徴とするコルゲートチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲートチューブ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所望とする経路、形状で配管できるように自在に曲げることができる樹脂製のコルゲートチューブが知られている。このコルゲートチューブは、配線の保護やフィラーパイプ等に使用される。例えばフィラーパイプとして使用されるコルゲートチューブとしては、自在に曲げることができる可撓部、この可撓部の両端に形成されほとんど曲がらない直管状のストレート部とを有するものがある。可撓部は、周方向に沿って環状にされた凸状の山部と凹状の谷部とが交互に並べて形成されて蛇腹状とされることで自在に曲げることができる。また、ストレート部には、燃料タンクや給油口のパイプが連結される。この連結には、ストレート部にパイプあるいはこのパイプに接続されたクイックコネクタが圧入されるのが一般的である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなコルゲートチューブのストレート部にパイプやクイックコネクタを圧入する際には、コルゲートチューブに対してその軸心方向に力を加える必要がある。このときに、作業スペースが制限されている等の理由から可撓部を把持して圧入した場合で、加えた力の方向が軸心方向からずれてしまうと、可撓部が曲がって圧入ができないことがある。また、圧入に必要な力が大きいため、可撓部が座屈して破壊してしまうこともある。一方で、十分に大きな力を加えないと、パイプやクイックコネクタの圧入が不完全となり液漏れや脱落の原因となる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パイプやクイックコネクタの圧入作業の作業性を向上することができるコルゲートチューブ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、可撓部と前記可撓部の一端に直管状のストレート部とが設けられたコルゲートチューブにおいて、前記可撓部は、複数の山部が第1ピッチで形成された蛇腹状の第1コルゲート部と、前記第1コルゲート部と前記ストレート部との間に設けられ、前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチで複数の山部が形成された蛇腹状の第2コルゲート部とを有し、前記第2コルゲート部は、前記山部の軸心方向の長さが前記第1コルゲート部の前記山部の軸心方向の長さと同じであり、谷部の軸心方向の長さが前記第1コルゲート部の谷部の軸心方向の長さよりも大きいものである。
【0007】
また、本発明のコルゲートチューブの製造方法は、単位時間当たりの供給量を一定にして、管状の成形材料を鉛直下向きに供給する供給ステップと、内周面に、直管状のストレート部を形成するストレート部成形面、第1ピッチで複数の山部が並ぶ蛇腹状の第1コルゲート部を形成する第1コルゲート部成形面、及び前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチで複数の山部が並ぶ蛇腹状の第2コルゲート部を形成する第2コルゲート部成形面が移動方向に沿って前記ストレート部成形面、前記第2コルゲート部成形面、前記第1コルゲート部成形面の順番に設けられた金型内に前記成形材料を取り込み、前記金型を鉛直下向きに一定の速度で移動しながら成形を行う成形ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1コルゲート部とストレート部との間に、第1コルゲート部よりも山部のピッチを大きくした第2コルゲート部を設けることにより、ストレート部にパイプやクイックコネクタを圧入する際に、ストレート部の他に曲げ剛性の高い第2コルゲート部を利用することができる。これにより、ストレート部にパイプやクイックコネクタを圧入する際の作業性を向上することができる。しかも、第2コルゲート部は、可撓性を有するので、コルゲートチューブを所望とする経路、形状で配管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るコルゲートチューブを示す平面図である。
【
図2】コルゲートチューブの断面を示す断面図である。
【
図3】コルゲータの構成を模式的に示す説明図である。
【
図4】異なるピッチで山部を形成した第2コルゲート部を有するコルゲートチューブを示す平面図である。
【
図5】ストレート部平均肉厚比率と平均破壊圧力比率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1において、コルゲートチューブ10は、例えばフィラーパイプとして用いられるものであり、可撓性を有する可撓部11と、可撓部11の両端に一体に形成されたストレート部12、13とを備える。可撓部11は、第1コルゲート部15及び第2コルゲート部16から構成されている。第1コルゲート部15の一端に第2コルゲート部16が一体に設けられ、第1コルゲート部15の他端にストレート部13が一体に設けられている。また、第2コルゲート部16の第1コルゲート部15と反対側の一端にストレート部12が一体に設けられている。したがって、第1コルゲート部15とストレート部12との間に第2コルゲート部16が設けられている。
【0011】
この例におけるコルゲートチューブ10は、ストレート部12へのクイックコネクタまたはパイプの圧入を想定しており、可撓部11のストレート部12側にだけ第2コルゲート部16を設けている。なお、第1コルゲート部15とストレート部13との間にも第2コルゲート部16を設けてもよい。
【0012】
第1コルゲート部15は、コルゲートチューブ10の周方向に沿って環状に形成された凸状の山部21と、同様に環状に形成された凹状の谷部22とがコルゲートチューブ10の軸心方向(矢印X方向)に交互に連続して設けられた蛇腹状に形成されている。第2コルゲート部16は、第1コルゲート部15と同様に環状に形成された凸状の山部23と凹状の谷部24とがコルゲートチューブ10の軸心方向に交互に連続して設けられた蛇腹状に形成されている。第1コルゲート部15と第2コルゲート部16の山部21、23は、互いに外径を含めて同じ形状である。また、第1コルゲート部15の谷部22と第2コルゲート部16の谷部24とは外径が同じである。
【0013】
第1コルゲート部15は、山部21がピッチP1(第1ピッチ)で形成されている。第2コルゲート部16は、第1コルゲート部15に比べて曲げ難くするために山部23がピッチP1よりも大きいピッチP2(第2ピッチ)で形成されている。この例では、第1コルゲート部15の谷部22よりも第2コルゲート部16の谷部24の軸心方向の長さを大きくして、第2コルゲート部16でのピッチP2を第1コルゲート部15でのピッチP1よりも大きくしている。例えば、第1コルゲート部15は、各谷部22が断面略U字状であって平坦となる底の長さは0mmであり、山部21のピッチP1が3mmであるのに対して、第2コルゲート部16は、各谷部24の平坦となる底の長さは2mmであり、山部23のピッチP2が5mmである。
【0014】
ストレート部12、13は、山部や谷部が形成されたものではなく、直管状である。このため、ストレート部12、13は、ほぼ曲がらない部分になっている。なお、ストレート部12、13は、直管状のストレート本体部12a、13aの端部にフランジ12b、13bが一体にそれぞれ形成されている。この例では、ストレート本体部12a、13aの外径は、山部21、23の外径よりも小さく、また谷部22、24の外径よりも大きい。
【0015】
上記のように構成されるコルゲートチューブ10では、第2コルゲート部16は、谷部24の軸心方向の長さを大きくして山部23のピッチP2が第1コルゲート部15の山部21のピッチP1よりも大きくなっている。このため、第2コルゲート部16は、第1コルゲート部15に比べて曲げ剛性が高い。
【0016】
コルゲートチューブ10は、第2コルゲート部16が適当な曲げ剛性を有しているので、例えばストレート部12にクイックコネクタ(あるいはパイプ)を連結する際に、ストレート部12ではなく第2コルゲート部16を把持して、ストレート部12内にクイックコネクタを押し込む力を加えることもできる。また、第1コルゲート部15やストレート部13を把持して同様な連結作業を行っても、第2コルゲート部16が設けられることによりストレート部12と合わせて曲げ剛性の高い部分が長くなっているので、加えた力が可撓部11を曲げる方向に逃げ難い。このように、コルゲートチューブ10は、クイックコネクタへの圧入作業が容易であり、作業性が向上する。しかも、第2コルゲート部16は、適当な可撓性を有するので、コルゲートチューブ10を所望とする経路、形状で配管することができる。
【0017】
上記第2コルゲート部16の高い曲げ剛性は、第2コルゲート部16の肉厚(管壁の厚さ)が第1コルゲート部15の肉厚よりも大きいことによるものでもある。以下、この点について説明する。
図2に示すように、第1コルゲート部15の山部21の肉厚をt1a、谷部22の肉厚をt1bとし、第2コルゲート部16の山部23の肉厚をt2a、谷部24の肉厚をt2bとする。なお、肉厚t1a、t2aは、山部21、23の頂部における厚みとし、肉厚t1b、t2bは、谷部22、24の底(外径が最小な部分)の厚みとする。
【0018】
コルゲートチューブ10を後述するコルゲータで作製する場合、山部21、23のピッチが大きいほど単位長さあたりの表面積が小さくなることにより、特に谷部22、24の肉厚t1b、t2bが大きくなる傾向を示す。上記のように、第2コルゲート部16のピッチP2は、第1コルゲート部15のピッチP1よりも大きいため、第2コルゲート部16は、その谷部24の肉厚t2bが第1コルゲート部15の谷部22の肉厚t1bよりも大きくなる。これにより、第2コルゲート部16は、その曲げ剛性が第1コルゲート部15よりも大きくなる。なお、山部21、23の肉厚t1a、t2aは、ピッチによる差があまり生じない。
【0019】
谷部22、24の肉厚t1b、t2bの大小を比較する場合、肉厚t1bについては第2コルゲート部16に隣接する谷部22の肉厚とし、肉厚t2bについては第1コルゲート部15に隣接する谷部24の肉厚とするのがよい。また、第2コルゲート部16のように谷部がコルゲートチューブ10の軸心方向に延びている場合には、例えば両側の山部の影響を最も受けない谷部の中央の位置の肉厚を用いるのがよい。
【0020】
図3に上記コルゲートチューブ10を製造するコルゲータ30を模式的に示す。コルゲータ30は、押出機31、成形部32等で構成される。押出機31は、成形材料33を送り出して成形部32に供給する。成形材料33は、熱可塑性樹脂であり、押出機31により加熱、軟化され、管状に押し出される。押出機31による成形材料33の送り出し速度は一定、すなわち単位時間当たりの成形材料33の供給量は一定である。
【0021】
成形部32は、一対の金型ユニット35A、35Bと真空吸引機構36とを備えている。金型ユニット35Aは、一対のプーリ38、これらプーリ38に巻き掛けられた無端ベルト39、金型を構成する複数の割型41、プーリ38を介して無端ベルト39を図中矢印の方向に走行させるモータ(図示省略)等で構成される。無端ベルト39の外周面には、その走行方向に沿って割型41が連続して取り付けられている。金型ユニット35Bについても金型ユニット35Aと同様な構成であり、一対のプーリ38、無端ベルト39、複数の割型42、無端ベルト39を走行させるモータ(図示省略)等で構成され、無端ベルト39の外周面に割型42が連続して取り付けられている。
【0022】
金型ユニット35A、35Bは、割型41と割型42とが互いに異なる方向に循環走行するように駆動される。これにより、割型41、42は、押出機31近傍の合流部において対応するもの同士で付き合わせられ、付き合わせられた状態で下流(
図3の右側)に向って移動し、分流部で開かれ、この後に合流部に向って移動する。金型ユニット35A、35Bは、割型41、42が互いに同じ速度で一定の速度を維持して移動するように駆動される。
【0023】
各割型41、42の外周側の面には、コルゲートチューブ10の外周面の形状に対応した成形面(図示省略)が形成されている。割型41、42のそれぞれには、コルゲートチューブ10の外周面の形状がその軸心方向に沿って複数に分割された成形面が割り当てられている。このため、割型41、42には、ストレート部12の形状に対応した成形面(ストレート部成形面)を有するもの、第2コルゲート部16に対応した成形面(第2コルゲート部成形面)を有するもの、第1コルゲート部15に対応した成形面(第1コルゲート部成形面)を有するもの、ストレート部13の形状に対応した成形面を有するものがある。このコルゲータ30では、1本のコルゲートチューブ10について、ストレート部12、第2コルゲート部16、第1コルゲート部15、ストレート部13の順番で成形されるように、割型41、42が配列されている。
【0024】
第1コルゲート部15に対応した成形面には、山部21に対応した半環状の凹部がピッチP1で形成され、第2コルゲート部16に対応した成形面には、山部23に対応した半環状の凹部がピッチP2で形成されている。第1コルゲート部15と第2コルゲート部16に対応した成形面には、谷部22、24に対応した半環状の凸部を有するが、谷部24に対応した凸部の方が谷部22に対応した凸部よりもコルゲートチューブ10の軸心方向(割型41、42の移動方向)の長さが大きい。
【0025】
上記のように付き合わせられた割型41、42の内部には、コルゲートチューブ10を成形するための成形面で囲まれた中空部が形成される。割型41、42は、上記のように付き合わせられる際に、その中空部に押出機31からの成形材料33を取り込み、下流に移動する。中空部に成形材料33を取り込んだ割型41、42が真空吸引機構36の位置にまで移動すると、割型41、42に設けた吸引口(図示省略)から真空吸引機構36による吸引が行われる。これにより、管状の成形材料33は、割型41、42の成形面に密着し、その成形面に応じた管形状に成形される。成形材料33の硬化後、分流部で割型41、42が開かれて、その内部から成形された部分が取り出される。
【0026】
割型41、42の中空部への成形材料33の取り込みから、成形された部分の取り出しまでが連続的に行われ、割型41、42が循環走行することによって、複数のコルゲートチューブ10の端部同士が繋がった状態で連続的に作製される。複数のコルゲートチューブ10は、それぞれの端部で個々のコルゲートチューブ10に切り離される。
【0027】
上記のように割型41、42の移動速度が一定である金型ユニット35A、35Bに対して、単位時間当たりの供給量を一定にして成形材料33を供給した場合、作製されるコルゲートチューブ10の単位長さ当たりの成形材料33の供給量が一定になる。単位長さは、コルゲートチューブ10の軸心方向の長さである。このため、コルゲータ30で作製されるコルゲートチューブ10の軸心方向における第1コルゲート部15の谷部22及び第2コルゲート部16の谷部24の肉厚t1b、t2bは、対応する第1コルゲート部15、第2コルゲート部16の単位長さ当たりの表面積が小さいほど大きくなる。単位長さ当たりの表面積は、山部21、23のピッチが大きいほど小さくなる。したがって、上記のように第1コルゲート部15の山部21のピッチP1に対して第2コルゲート部16の山部23のピッチP2を大きくすることで、第1コルゲート部15よりも第2コルゲート部16の単位長さあたりの表面積が小さくなり、この結果、第2コルゲート部16の谷部24の肉厚t2bが第1コルゲート部15の谷部22の肉厚t1bよりも大きくなる。
【0028】
上記のように第2コルゲート部16を設けたコルゲートチューブ10は、製造過程で発生する樹脂垂れに起因する可撓部の薄肉化にともなう耐圧性の低下を抑制する効果もある。以下、耐圧性の低下を抑制する効果について説明する。
【0029】
コルゲートチューブ10の樹脂垂れに起因する可撓部の薄肉化は、縦型のコルゲータを用いた場合に生じるものである。縦型コルゲータは、押出機が成形材料を下方(鉛直下向き)に送り出し、対応する割型同士が付き合わせられた状態で下方に向って移動している間に成形を行うものである。この他の縦型コルゲータの構成については、
図3に示すコルゲータ30と同様であるので図示を省略する。
【0030】
縦型のコルゲータにおいてコルゲートチューブ10を作製する場合、いずれかのストレート部、この例ではストレート部12が可撓部11に先行して成形され、可撓部11に対してストレート部12が下側にある。成形された成形材料33は、完全に硬化するまでの間に重力によって下方に垂れる。内周面に凹凸が形成されないストレート部12では、その内周面での成形材料33の垂れの量が可撓部11の内周面に比べて多くなる。この結果、ストレート部12の内周面における成形材料33の未硬化部分の垂れに引きずられて、可撓部11の内周面の一部の成形材料33が下方に移動し、その部分の肉厚が減少する。このようにして、樹脂垂れに起因する可撓部11の薄肉化が生じる。
【0031】
なお、縦型コルゲータでコルゲートチューブ10を作製した場合においては、やはり第2コルゲート部16の谷部24の肉厚t2bが第1コルゲート部15の谷部22の肉厚t1bよりも大きくなり、山部21、23の肉厚t1a、t2aについては、ピッチによる差があまり生じない。また、第2コルゲート部16内では、ストレート部12に近いほど肉厚t2a、t2bが小さくなる傾向を示す。
【0032】
従来のコルゲートチューブでは、上記のような樹脂垂れに起因する可撓部の薄肉化により、可撓部のストレート部の近傍の部分の肉厚が可撓部の他の部分に比べて小さくなり、その部分の耐圧性が低くなる。このような従来のコルゲートチューブでは、樹脂垂れに起因して薄肉化した可撓部の部分の耐圧性でコルゲートチューブの耐圧性が決まる。
【0033】
これに対して、この例におけるコルゲートチューブ10においても、樹脂垂れに起因して第2コルゲート部16の内周面の一部の成形材料33が下方に移動し、第2コルゲート部16の肉厚が減少する。しかしながら、山部23のピッチP2を適宜調整することで、上記のような樹脂垂れが生じても、第2コルゲート部16の肉厚を第1コルゲート部15と同じあるいはそれよりも大きくできる。より詳細には、第2コルゲート部16の谷部24の肉厚t2bを、第1コルゲート部15の谷部22の肉厚t1bと同じあるいはそれよりも大きくできる。
【0034】
このため、従来のコルゲートチューブの山部のピッチが第1コルゲート部15の山部21のピッチP1と同じとした場合、第2コルゲート部16は、その谷部24の肉厚t2bは、従来のコルゲートチューブにおいて樹脂垂れに起因して薄肉化した谷部の肉厚よりも大きい。また、第1コルゲート部15の谷部22の肉厚t1bは、樹脂垂れに起因する薄肉化が生じないので、従来のコルゲートチューブにおいて樹脂垂れに起因して薄肉化した谷部の肉厚よりも大きい。この結果、コルゲートチューブ10は、樹脂垂れに起因して薄肉化した第2コルゲート部16を含む可撓部11の耐圧性が従来のコルゲートチューブよりも向上する。
【0035】
なお、山部21、23と谷部22、24とのうちで、山部23の肉厚t2aが最小となった縦型コルゲータで作製されたコルゲートチューブ10に対して内圧を加えて破壊させた際の破壊箇所が第1コルゲート部15であった。第2コルゲート部16の谷部24の増大した肉厚が耐圧性の向上に寄与していると考えられる。
【0036】
上記のコルゲートチューブの形状、各コルゲート部の山部の個数及びピッチ等は、一例であり、それに限定されるものではない。
図4に示すコルゲートチューブ10は、第2コルゲート部16Aの長さが
図1に示すものよりも短く、その分だけ第1コルゲート部15を長くすることで、コルゲートチューブ10の全長が
図1のものと同じになっている。第2コルゲート部16Aの山部23の個数が3個(第1コルゲート部15との境界及びストレート部12との境界のものを含む)で構成され、山部23のピッチP3(第2ピッチ)は、例えば4.7mmになっている。そして、第1コルゲート部15の山部21のピッチP1に対して第2コルゲート部16Aの山部23のピッチP3を大きくすることによって、第2コルゲート部16Aの谷部24の肉厚t2bが第1コルゲート部15の谷部22の肉厚t1bと同じまたはそれよりも大きくしている。
【実施例】
【0037】
実施例1~10として、第2コルゲート部を有するコルゲートチューブを縦型コルゲータを用いて作製し、樹脂垂れに起因する可撓部の薄肉化に対する効果を確認した。実施例1~10では、それぞれ複数本のコルゲートチューブを作製し、作製された複数本のコルゲートチューブのうちから無作為に選択した3本のコルゲートチューブのそれぞれについて破壊圧力を測定した。
【0038】
実施例1~3では、それぞれ
図1に示される形状(以下、形状Aという)を有する複数のコルゲートチューブ10を作製した。この作製の際には、ストレート本体部12aの目標とする肉厚(以下、目標肉厚という)を1.03mmとしてコルゲータ30を調整した。実施例1~3の違いは、測定対象となるコルゲートチューブ10の製造ロットの違いである。
【0039】
形状Aは、第2コルゲート部16に6個の山部23を形成したものである。この第2コルゲート部16の6個の山部23には、第1コルゲート部15と第2コルゲート部16との境界部分及び第2コルゲート部16とストレート部12との境界部分の2個の山部23を含めている。形状Aにおける第1コルゲート部15の山部21のピッチP1を3mmとし、第2コルゲート部16における山部23のピッチP2を5mmとした。第1コルゲート部15の各谷部22は、断面略U字状であって、平坦となる底の長さは0mm、第2コルゲート部16の各谷部24の平坦となる底の長さは2mmであった。
【0040】
実施例4~6は、それぞれストレート本体部12aの目標肉厚を1.15mmとしてコルゲータ30を調整し、形状Aを有する複数のコルゲートチューブ10を作製した。その他の条件、形状の寸法等は実施例1~3と同じである。また、実施例4~6の違いは、測定対象となるコルゲートチューブ10の製造ロットの違いである。
【0041】
実施例7、8では、それぞれ
図4に示される形状(以下、形状Bという)を有する複数のコルゲートチューブ10を作製した。この作製の際には、ストレート本体部12aの目標肉厚を1.03mmとしてコルゲータ30を調整した。実施例7、8の違いは、測定対象となるコルゲートチューブ10の製造ロットの違いである。
【0042】
形状Bは、第2コルゲート部16Aに3個の山部23を形成したものである。この第2コルゲート部16Aの3個の山部23には、第1コルゲート部15及びストレート部12との境界部分の2個の山部23を含めている。形状Bにおける第1コルゲート部15は、形状Aと同形状であり、第2コルゲート部16Aにおける山部23のピッチP3は4.7mm、各谷部24の底の長さは1.7mmであった。
【0043】
実施例9,10は、それぞれストレート本体部12aの目標肉厚を1.15mmとしてコルゲータ30を調整し、形状Bを有する複数のコルゲートチューブ10を作製した。その他の条件、形状の寸法等は実施例7、8と同じである。また、実施例9、10の違いは、測定対象となるコルゲートチューブ10の製造ロットの違いである。
【0044】
なお、実施例1~6の形状Aのコルゲートチューブ10と実施例7~10の形状Bのコルゲートチューブ10は、両端のストレート部12、13の形状、長さは同じであり、また全体の長さは同じである。
【0045】
実施例1~10における3本のコルゲートチューブ10は、いずれも第2コルゲート部16、16Aの谷部24の肉厚t2bが第1コルゲート部15の谷部22の肉厚t1b以上であった。
【0046】
また、比較例1、2として、可撓部の全てについて第1コルゲート部15と同じ条件で山部を形成した形状(以下、形状Cという)の複数本のコルゲートチューブを作製し、作製したコルゲートチューブのうちから無作為に選択した3本のコルゲートチューブのそれぞれについて破壊圧力を測定した。比較例1では、ストレート部の目標肉厚を1.03mmとし、比較例2では、ストレート部の目標肉厚を1.15mmとした。比較例1、2のコルゲートチューブと、実施例1~10のコルゲートチューブ10とは、両端のストレート部の形状、長さは同じであり、また全体の長さも同じである。
【0047】
実施例1~10及び比較例1、2では、それぞれ選択した3本のコルゲートチューブに内圧をかけて、コルゲートチューブが破壊されたときの圧力を破壊圧力としてそれぞれ測定した。この測定結果に基づく平均破壊圧力比率を表1に示す。平均破壊圧力比率は、実施例1~10及び比較例1、2のそれぞれについて、3本のコルゲートチューブの破壊圧力の平均である平均破壊圧力を求め、比較例1の平均破壊圧力を基準(100%)としたときの基準に対する実施例1~10及び比較例1、2の平均破壊圧力の比率として求めた。表1には、実施例1~10及び比較例1、2のコルゲートチューブの肉厚の指標として便宜的にストレート部平均肉厚比率をあわせて示す。なお、ストレート部平均肉厚は、選択した3本のコルゲートチューブの両端のストレート本体部の肉厚を測定し、それぞれ最大値の平均値と最小値の平均値とを求め、両端のストレート本体部の各最大値の平均値と各最小値の平均値を平均した値である。また、表1の比較例1のストレート部平均肉厚比率と平均破壊圧力比率の欄の括弧内の値は、比較例1のストレート部平均肉厚と平均破壊圧力である。
【0048】
また、
図5にストレート部平均肉厚比率と平均破壊圧力比率との関係を示す。ストレート部平均肉厚比率は、比較例1のストレート部平均肉厚を基準(100%)として、基準に対するストレート部平均肉厚の比率である。
【0049】
【0050】
ストレート本体部12aの目標肉厚が1.03mmである実施例1~3及び実施例7,8と、同じく目標肉厚が1.03mmである比較例1とを比較した場合、明らかに第1コルゲート部15とストレート部12との間に第2コルゲート部16、16Aを設けた実施例1~3及び実施例7,8のコルゲートチューブ10の破壊圧力が高いことがわかる。また、ストレート本体部12aの目標肉厚が1.15mmである実施例4~6及び実施例9,10と、同じく目標肉厚が1.15mmである比較例2とを比較した場合、明らかに第1コルゲート部15とストレート部12との間に第2コルゲート部16Aを設けた実施例4~6及び実施例9,10のコルゲートチューブ10の破壊圧力が高いことがわかる。なお、実施例1~10については、第1コルゲート部15において破壊が生じ、比較例1、2ではストレート部との境界付近の可撓部において破壊が生じた。
【0051】
表2に、縦型コルゲータを用いて作製された形状Aの3本のコルゲートチューブ10における各山部21、23の肉厚t1a、t2aの平均をそれぞれ山部肉厚として、谷部22,24の肉厚t1b、t2bの平均をそれぞれ谷部肉厚として示す。表2では、山番号で各位置の山部21、23を区別しており、ストレート部12の側から順番に山番号1、2、3・・・を付している。同様に、谷番号で各位置の谷部22、24を区別しており、ストレート部12の側から順番に谷番号1.5、2.5、3.5・・・を付している。山谷平均肉厚は、それが記された欄に対応する1個の谷部とその谷部を挟む2個の山部の各肉厚の平均を示している。
【0052】
3本のコルゲートチューブ10のストレート本体部12aの肉厚の平均は、1.007mmであった。このストレート本体部12aの肉厚は、可撓部11との境界から10mmの位置で測定し、1本のコルゲートチューブ10について最大値と最小値の平均を求め、その3本の平均値である。
【0053】
【0054】
上記表2より、第2コルゲート部16の谷部24の肉厚t2bが第1コルゲート部15の谷部22の肉厚t1b以上であることがわかる。
【符号の説明】
【0055】
10 コルゲートチューブ
11 可撓部
12、13 ストレート部
15 第1コルゲート部
16、16A 第2コルゲート部
21、23 山部
22、24 谷部
30 コルゲータ