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特許7217633診断支援方法、診断支援プログラム及び診断支援装置
<図1>
  • 特許-診断支援方法、診断支援プログラム及び診断支援装置 図1
  • 特許-診断支援方法、診断支援プログラム及び診断支援装置 図2
  • 特許-診断支援方法、診断支援プログラム及び診断支援装置 図3
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  • 特許-診断支援方法、診断支援プログラム及び診断支援装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】診断支援方法、診断支援プログラム及び診断支援装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20230127BHJP
   G16H 30/20 20180101ALI20230127BHJP
【FI】
G01T1/161 D
G16H30/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019000707
(22)【出願日】2019-01-07
(65)【公開番号】P2020109380
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000230250
【氏名又は名称】日本メジフィジックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 基哉
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219531(JP,A)
【文献】特開2017-219490(JP,A)
【文献】小室敦司他,心筋血流SPECTにおける心筋血流定量評価のための摂取率測定法の考案,核医学技術,2015年,Vol.35,199-207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161-1/166
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いて核医学検査により定量評価を行う診断支援方法であって、
核医学画像撮像装置により撮像された三次元画像および二次元画像を格納するデータベースから、放射性医薬品が投与された被験者の核医学画像である第一の三次元画像および第一の二次元画像と、前記核医学画像撮像装置を用いて前記被験者を撮像することにより得られた第二の三次元画像および第二の二次元画像とを取得するステップと、
前記第二の三次元画像および前記第二の二次元画像に対して標的部位に係わる関心領域を設定するステップと、
前記第二の三次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数、および、前記第二の二次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数に基づいて、二次元画像と三次元画像とを相互に変換する変換係数を算出するステップと、
前記第一の二次元画像のカウント数から前記標的部位における前記放射性医薬品の投与量を算定し、前記変換係数を用いて、前記第一の三次元画像の定量評価を実行するステップと、
を含み、
前記標的部位が心臓であり、
前記変換係数を算出するステップでは、以下の式(1):
変換係数=(第二の二次元画像に設定された関心領域におけるピクセルあたりのカウント数の平均値)/第二の三次元画像に設定された関心領域におけるボクセルあたりのカウント数の平均値)・・・(1)
に従い前記変換係数を算出し、
前記定量評価を実行するステップでは、以下の式(2):
MUR=[第一の三次元画像から算定される左室心筋の放射能集積量/第一の二次元画像から算定される曲線下面積(Area Under the Curve、AUC)]×変換係数・・・(2)
を用いて心筋血流指標(Myocardial Uptake Ratio、MUR)を算出することで前記定量評価を算出する、診断支援方法。
【請求項2】
前記第二の三次元画像の撮像時間は、前記第一の三次元画像の撮像時間よりも短く、かつ、前記第二の二次元画像の撮像時間は、前記第一の二次元画像の撮像時間よりも短い、請求項1に記載の診断支援方法。
【請求項3】
前記第二の三次元画像および前記第二の二次元画像は、前記第一の三次元画像および前記第一の二次元画像の撮像前、または、前記第一の三次元画像および前記第一の二次元画像の撮像後に撮像されたものである、請求項1または2に記載の診断支援方法。
【請求項4】
前記第一の三次元画像および第一の二次元画像は、薬剤により前記標的部位に負荷がかけられた状態で前記放射性医薬品が投与された被験者の核医学画像である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の診断支援方法。
【請求項5】
コンピュータに、
核医学画像撮像装置により撮像された三次元画像および二次元画像を格納するデータベースから、放射性医薬品が投与された被験者の核医学画像である第一の三次元画像および第一の二次元画像と、前記核医学画像撮像装置を用いて前記被験者を撮像することにより得られた第二の三次元画像および第二の二次元画像とを取得する画像取得処理と、
前記第二の三次元画像および前記第二の二次元画像に対して標的部位に係わる関心領域を設定する関心領域設定処理と、
前記第二の三次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数、および、前記第二の二次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数に基づいて、二次元画像と三次元画像とを相互に変換する変換係数を算出する変換係数算出処理と、
前記第一の二次元画像のカウント数から前記標的部位における前記放射性医薬品の投与量を推定し、前記変換係数を用いて、前記第一の三次元画像の定量評価を実行する定量評価処理と、
を実行させ
前記標的部位が心臓であり、
前記変換係数算出処理では、以下の式(1):
変換係数=(第二の二次元画像に設定された関心領域におけるピクセルあたりのカウント数の平均値)/第二の三次元画像に設定された関心領域におけるボクセルあたりのカウント数の平均値)・・・(1)
に従い前記変換係数を算出し、
前記定量評価処理では、以下の式(2):
MUR=[第一の三次元画像から算定される左室心筋の放射能集積量/第一の二次元画像から算定される曲線下面積(Area Under the Curve、AUC)]×変換係数・・・(2)
を用いて心筋血流指標(Myocardial Uptake Ratio、MUR)を算出することで前記定量評価を算出するための診断支援プログラム。
【請求項6】
核医学画像撮像装置により撮像された三次元画像および二次元画像を格納するデータベースと、
前記データベースから、放射性医薬品が投与された被験者の核医学画像である第一の三次元画像および第一の二次元画像と、前記核医学画像撮像装置を用いて前記被験者を撮像することにより得られた第二の三次元画像および第二の二次元画像とを取得する画像取得部と、
前記第二の三次元画像および前記第二の二次元画像に対して標的部位に係わる関心領域を設定する関心領域設定部と、
前記第二の三次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数、および、前記第二の二次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数に基づいて、二次元画像と三次元画像とを相互に変換する変換係数を算出する変換係数算出部と、
前記第一の二次元画像のカウント数から前記標的部位における前記放射性医薬品の投与量を推定し、前記変換係数を用いて、前記第一の三次元画像の定量評価を実行する定量評価部と、
を備え
前記標的部位が心臓であり、
前記変換係数算出部では、以下の式(1):
変換係数=(第二の二次元画像に設定された関心領域におけるピクセルあたりのカウント数の平均値)/第二の三次元画像に設定された関心領域におけるボクセルあたりのカウント数の平均値)・・・(1)
に従い前記変換係数を算出し、
前記定量評価部では、以下の式(2):
MUR=[第一の三次元画像から算定される左室心筋の放射能集積量/第一の二次元画像から算定される曲線下面積(Area Under the Curve、AUC)]×変換係数・・・(2)
を用いて心筋血流指標(Myocardial Uptake Ratio、MUR)を算出することで前記定量評価を算出することを特徴とする診断支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断支援方法、診断支援プログラム及び診断支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核医学検査で得られる二次元核医学画像と三次元核医学画像とに関する変換係数を算出する方法として、あらかじめ既知の放射能濃度を封入したファントム実験により得られる二次元核医学画像及び三次元核医学画像データを利用した、使用する機器固有の変換係数を算出する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】小室敦司、外9名、「核医学技術35」、平成27年9月、p.199-207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示された変換方法は、ファントム実験により得られた二次元核医学画像データと三次元核医学画像データを利用した変換係数の算出方法であるため、事前に得た使用する機器固有の係数値のみで画一的な変換が行われる。したがって、被験者の体格などに付随した画像環境を反映した変換係数を得ることができていないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、被験者の体格およびそれに付随した画像環境を反映した変換係数を得ることのできる、診断支援方法、診断支援プログラム及び診断支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコンピュータを用いて核医学検査により定量評価を行う診断支援方法は、核医学画像撮像装置により撮像された三次元画像および二次元画像を格納するデータベースから、放射性医薬品が投与された被験者の核医学画像である第一の三次元画像および第一の二次元画像と、前記核医学画像撮像装置を用いて前記被験者を撮像することにより得られた第二の三次元画像および第二の二次元画像とを取得するステップと、前記第二の三次元画像および前記第二の二次元画像に対して標的部位に係わる関心領域を設定するステップと、前記第二の三次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数、および、前記第二の二次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数に基づいて、変換係数を算出するステップと、前記第一の二次元画像のカウント数から前記標的部位における前記放射性医薬品の投与量を算定し、前記変換係数を用いて、前記第一の三次元画像の定量評価を実行するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
このように構成された本発明に係る診断支援方法、診断支援プログラム及び診断支援装置によれば、被験者の体格などに付随した画像環境を反映した変換係数を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る情報処理装置及びその周辺装置を示す機能構成図である。
図2】解析対象とするデータを取得するための核医学測定プロトコルを説明するための図である。
図3】心筋血流指標を算出する処理を説明するためのフローチャートである。
図4】本法で求めた負荷時の心筋血流指標(Myocardial Uptake Ratio、MUR)の値と、NH-PET撮像で得られた負荷時の心筋血流量(Myocardial Blood Flow、MBF)の値との関係を示すグラフである。
図5】変形例に係る核医学測定プロトコルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。なお、以下の説明はあくまでも好ましい態様の一例を示したものであり、本発明の範囲を限定する意図ではない。
【0010】
(第1の実施形態)
はじめに、第1の実施形態の概要について説明する。図1は本発明の実施形態に係る診断支援装置100及びその周辺装置を示す機能構成図である。ここでは周辺装置として、撮像装置110、操作受付部120、表示装置130及びデータベース(DB)140を例示するが、これに限られない。
【0011】
診断支援装置100は、画像生成部102、関心領域設定部103、画像取得部104、変換係数算出部106及び定量評価部107を備える。
【0012】
撮像装置110は、被験者の核医学画像を撮像し、これを診断支援装置100に提供する。このような撮像装置110としては、ガンマカメラ又はPET(Positron Emission Tomography)装置等の核医学撮像装置がある。これらの装置により撮像された核医学画像は、専用のカメラによって放射線を検出し、再構成することによって取得される。画像生成部102は、撮像装置110から提供された被検者の核医学画像(三次元画像、二次元画像)をデータベース140に格納する。
【0013】
データベース140に格納された三次元画像および二次元画像として、通常の診断目的で撮像された三次元画像A(第一の三次元画像)および二次元画像A(第一の二次元画像)が挙げられる。三次元画像Aは特定の放射性同位元素でラベルされた薬剤(以下、放射性医薬品)の心筋内分布を評価する三次元画像であり、二次元画像Aは特定の放射性同位元素でラベルされた放射性医薬品の心筋内分布を評価する二次元画像である。
【0014】
放射性医薬品としては、診断対象となる標的部位に応じて適宜選択することができる。標的部位としては、例えば、心臓、腎臓及び脳等の臓器、骨、腫瘍その他病変などを挙げることができる。標的部位が心臓等の場合、SPECT用製剤として塩化タリウム(201TlCl)注射液、テトロホスミンテクネチウム(99mTc Tetrofosmin(以下、TFと称す))注射液、ヘキサキス(2-メトキシイソブチルイソニトリル)テクネチウム(99mTc MIBI)注射液、15-(4-ヨードフェニル)-3(R,S)-メチルペンタデカン酸(123I)注射液や、PET用製剤として13N-アンモニアや塩化ルビジウム(82RbCl)注射液などがある。また、標的部位が脳の場合、本実施形態に用いられる放射性医薬品としては、塩酸N-イソプロピル-4-ヨードアンフェタミン(123I-IMP(以下、IMPと称す))などを挙げることができる。
【0015】
また、データベース140には、三次元画像A及び二次元画像Aの被検者と同一の被験者を撮像装置110により撮像することにより得られた三次元画像B及び二次元画像Bが格納されている。三次元画像Bは変換係数(相互校正係数:Cross Calibration Factor、CCF)を算出するための三次元画像であり、二次元画像BはCCFを算出するための二次元画像である。三次元画像B及び二次元画像Bは、三次元画像A及び二次元画像Aと同じ撮像装置110で同じ被験者に対し撮像されたものであればよく、放射性医薬品が投与された被験者の画像であってもよいし、放射性医薬品が投与されていない被験者の画像であってもよいが、三次元画像A及び二次元画像Aの撮像プロトコルの中で撮像されていることが、被験者の負担軽減の観点から好ましい。三次元画像B及び二次元画像Bの撮像においては、通常の診断画像よりも少ない情報量でよいため、三次元画像Bの撮像時間は、三次元画像Aの撮像時間よりも短く、かつ、二次元画像Bの撮像時間は、二次元画像Aの撮像時間よりも短くすることができる。また、放射性医薬品が投与された被験者から三次元画像Bおよび二次元画像Bを生成する場合、放射性医薬品の投与後から、標的部位における放射性医薬品の分布が平衡とみなせる時間の経過後に、被験者を一定時間撮像して三次元画像Bおよび二次元画像Bを生成することができる。
【0016】
二次元画像Bは、放射性医薬品投与後の左室心筋内に残存する放射能量を、ある任意の方向より平面的に評価する目的で得る画像である。そのため、これを満たす画像データであれば撮像方法や撮像条件は特に限定されない。
【0017】
例えば、二次元画像Bは、平面画像法により撮像されたものであってもよいし、断層撮像法による撮像内から得られるものであってもよい。三次元画像B及び二次元画像Bは、三次元画像A及び二次元画像Aの撮像前に撮像されたものであってもよいし、三次元画像A及び二次元画像Aの撮像後に撮像されたものであってもよい。また、断層撮像法によって得られた複数の平面画像の一部を二次元画像Bとし、複数の平面画像に基づいて三次元画像Aや三次元画像Bを生成してもよい。三次元画像の解析処理としては、例えば、核医学検査では心電図同期SPECT解析処理を挙げることができる。
【0018】
画像取得部104は、データベース140から三次元画像A及び二次元画像Aと、三次元画像B及び二次元画像Bとを取得する。
【0019】
関心領域設定部103は、三次元画像B及び二次元画像Bに対して標的部位に係わる関心領域を設定する。具体的には、三次元画像Bには、VOI(Volume of Interest)を設定し、二次元画像Bには、ROI(Region of Interest)を設定する。三次元画像Bに設定されたVOIは、二次元画像Bに設定されたROIに対応する。なお、関心領域とは、画像を用いた解析手法において、観察又は測定対象となる一部領域のことをいう。
【0020】
変換係数算出部106は、三次元画像Bに設定されたVOIにおけるカウント数、及び、二次元画像Bに設定されたROIにおけるカウント数に基づいて、変換係数(相互校正係数:Cross Calibration Factor、CCF)を算出する。変換係数とは、二次元画像と三次元画像とを相互に変換するための係数であり、例えば、以下式(1)に従い、変換係数を算出することができる。
変換係数(CCF)=[二次元画像Bに設定されたROIにおけるピクセルごとのカウント数(カウント/pixel)の平均値]/三次元画像Bに設定されたVOIにおけるボクセルごとのカウント数(カウント/voxel)の平均値)・・・(1)
【0021】
定量評価部107は、二次元画像Aのカウント数から標的部位における放射性医薬品の投与量を推定し、変換係数算出部106が算出した変換係数を用いて、三次元画像Aの定量評価を実行する。具体的には、二次元画像Aに標的部位の関心領域(ROI)を設定し、ROIにおけるカウント数を時系列でプロットすることで時間放射能曲線(time-activity curve、TAC)を作成し、TAC下の面積(Area Under the Curve、AUC)を算定する。そして、三次元画像Aに設定された標的部位のVOIの放射能集積量とAUCとの比較に対し、CCFを乗じることで、三次元画像Aの関心領域における定量値を得る。なお、定量値としては、血流の指標を示す指標値や、SUV(Standardized Uptake Value)が挙げられる。
【0022】
なお、診断支援装置100は、関心領域設定部103、画像取得部104、変換係数算出部106及び定量評価部107をソフトウェア要素として備え、図示しないCPU(Central Processing Unit)によりメモリ(図示しない)に格納されるプログラムが実行されることにより、実現されてもよい。そのプログラムは、例えば、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記録媒体や他のコンピュータからネットワークを介してインストールされ、メモリに格納されてもよい。
【0023】
また、診断支援装置100は、上述の関心領域設定部103、画像取得部104、変換係数算出部106及び定量評価部107の各ソフトウェア要素の処理により、本実施形態に係る診断支援方法を実行することができる。言い換えると、診断支援装置100を形成する1以上のCPUがメモリに格納されるコンピュータプログラムを実行することにより、本方法を実行することができる。
【0024】
すなわち、本方法は、コンピュータを用いて核医学検査により定量評価を行う診断支援方法であり、撮像装置110により撮像された三次元画像A、B及び二次元画像A、Bを格納するデータベース140から、放射性医薬品が投与された被験者の核医学画像である三次元画像A、二次元画像A、三次元画像B及び二次元画像Bとを取得するステップと、三次元画像B及び二次元画像Bに対して標的部位に係わる関心領域を設定するステップと、三次元画像Bに設定されたVOIにおけるカウント数、及び、二次元画像Bに設定されたROIにおけるカウント数に基づいて、CCFを算出するステップと、二次元画像Aのカウント数から標的部位における放射性医薬品の投与量を算定し、CCFを用いて、三次元画像Aの定量評価を実行するステップと、を含む。
【0025】
また、本実施形態は、このような診断支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラム又はそのようなプログラムがコンピュータにより読み取り可能に記憶される記録媒体であってもよい。
【0026】
こうした本実施形態の診断支援方法、診断支援プログラム及び、診断支援装置100によれば、被験者の体格などに付随した画像環境を反映したCCFが取得でき、より精度の高い定量評価を実行することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
以下、標的部位を心臓とし、撮像装置110として、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置を用い、心筋血流の定量を行う例を挙げて、より詳細に説明する。心臓の核医学診断では、被験者の状況により、2つの異なる状態(負荷時及び安静時)を比較した診断が広く行われている。ここでは、負荷時、安静時の順で撮像を行う撮像プロトコルを例に挙げて説明するが、本実施形態はこれに限定されず、安静時と負荷時が逆の撮像プロトコルであってもよいし、負荷時の撮像のみの撮像プロトコルであっても、安静時のみの撮像プロトコルであってもよい。
【0028】
まず、負荷時の三次元画像A及び二次元画像Aを得るため、被験者の心臓に対して負荷が掛けられる。負荷を掛ける方法としては、患者に運動をさせる運動負荷と、患者の静脈に対して冠血管拡張作用を有する薬剤(例えばアデノシン、ジピリダモール、ATPなど)や、心運動量増大作用を有する薬剤(例えばドブタミンなど)を投与する薬剤負荷がある。そして、負荷が掛けられた被験者に対し、放射性医薬品が投与され、撮像装置110が、負荷時における被験者の心臓を平面撮像法及び断層撮像法によりそれぞれ撮像し、画像生成部102が、二次元画像A及び三次元画像Aを生成して、データベース140に格納する。
【0029】
その後、安静時の二次元画像B及び三次元画像Bを撮像する。続けて、被験者に放射性医薬品を投与し、安静時における被験者の心臓を平面撮像法及び断層撮像法によりそれぞれ撮像し、画像生成部102が、二次元画像B及び三次元画像Bの生成、並びに、安静時の二次元画像A及び三次元画像Aの生成を行い、データベース140に格納する。
【0030】
画像取得部104は、データベース140から、三次元画像B及び二次元画像Bを取得する。また、負荷時及び安静時の三次元画像A及び二次元画像Aをそれぞれ取得する。
【0031】
関心領域設定部103は、三次元画像Bに対してVOI、二次元画像Bに対してROIを設定する。関心領域は、左室心筋全体であっても、局所心筋でもよい。
【0032】
変換係数算出部106は、三次元画像Bに設定されたVOIにおけるカウント数及び二次元画像Bに設定されたROIにおけるカウント数に基づいて、CCFを算出する。
【0033】
そして、定量評価部107は、変換係数算出部106が算出したCCFを用いて、式(2)に従い、負荷時および安静時の心臓血流指標(Myocardial Uptake Ratio、MUR)をそれぞれ算出する。
[三次元画像Aから算定される心筋の放射能集積量/二次元画像Aから算定される曲線下面積(Area Under the Curve、AUC)]×変換係数・・・(2)
【0034】
式(2)において、三次元画像Aにおける放射能集積量の算定には、心筋表面を極座標型に展開して表示する左室心筋ポーラーマップの画素値を用いることができる。ポーラーマップでは、心筋表面がいくつかに分割されており、例えば、3セグメントや17セグメントに分割される。三次元画像Aにおける放射能集積量の算定においては、これらセグメントの全部または一部の画素値を用いることができる。
AUCは、第1の実施形態で説明したように、二次元画像Aの標的部位におけるカウント数を時系列でプロットすることでTACを作成し、求めることができる。
安静時の三次元画像A及び二次元画像A、並びに、負荷時の三次元画像A及び二次元画像Aそれぞれについて、式(2)に従い計算を実行することで、安静時のMUR、及び、負荷時のMURを算出することができる。
【0035】
なお、第2の実施形態では、二次元画像Bを平面撮像法で撮像する方法について説明したが、二次元画像Bは、三次元画像Aの画像解析により、生成されてもよい。また、この場合、三次元画像Bは、三次元画像Aの撮像中、あるいは、三次元画像Aの撮像前、又は、撮像後に連続して撮像されてもよい。
【実施例
【0036】
次に、図2に示す説明図及び図3に示すフローチャートを用いて、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
【0037】
(画像データの収集)
本実施例では、2名の正常被験者A、Bを対象に、RIトレーサーとしてTFを用いたSPECT撮像を行い、画像データを収集した。
【0038】
まず、被験者A、Bにアデノシンを投与(点滴静脈注射)して薬剤負荷を行った(ステップS1)。
【0039】
次いで、負荷をかけている最中に、TF(250MBq)を投与(静脈注射)した(ステップS2)。
【0040】
次いで、TF(250MBq)の投与開始時刻から予め定められた第三時間S3までの間の5分間にダイナミックプラナー撮像を行った(ステップS3)。
【0041】
次いで、TF(250MBq)の投与開始時刻から予め定められた第一時間T1から第二時間T2(60分間)が経過するまでの間に、負荷時の心臓に対する負荷心電図同期SPECT撮像を行った(ステップS4)。ステップS4では、放射性医薬品から放出される放射線に基づいて、複数の平面画像を求め、その複数の平面画像に基づいて三次元核医学画像を生成した。
【0042】
次いで、負荷心電図同期SPECT撮像後、TF(750MBq)の投与(静脈注射)(ステップS7)までの間に、Pre SPECT撮像を行った(ステップS5)。
【0043】
次いで、Pre SPECT撮像後、第五時間T5(60秒)が経過するまでの間に、Pre Planar撮像を行った(ステップS6)。
【0044】
次いで、Pre Planar撮像の直後に被験者にTF(750MBq)を投与(静脈注射)した(ステップS7)。
【0045】
次いで、TF(750MBq)の投与と同時に5分間、ダイナミックプラナー撮像を行った(ステップS8)。
【0046】
次いで、TF(750MBq)の投与から40分経過後に、15分間の安静心電図同期SPECT撮像を行った(ステップS9)。
【0047】
(データ解析)
次いで、ステップS5の負荷心電図同期SPECT撮像で得た心筋SPECT画像に基づいて、常法に従い左室心筋ポーラーマップを作成した(ステップS10)。
【0048】
次いで、ステップS6のPre Planar撮像で得た画像について左室心筋を輪郭抽出し、心筋画像データを得た(ステップS11)。
【0049】
次いで、以下の式(1)に基づきCCFを求めた(ステップS12)。
CCF=(プラナー画像上のROI)におけるピクセルあたりのカウント平均値)/SPECT画像のポーラーマップ上のボクセルあたりのカウント平均値)・・・(1)
【0050】
次いで、ステップS3の撮像で得たダイナミックプラナー画像に対してROIを心臓に設定し、心筋左室内腔の時間放射能曲線(Time Activity Curve、TAC)を得た(ステップS13)。
【0051】
次いで、ステップS4の撮像で得たSPECT画像を解析して左室心筋ポーラーマップ(カウント/ボクセル)を得た(ステップS14)。
【0052】
次いで、以下の式(2)に基づき、負荷時MURを算出した(ステップS15)。
負荷時MUR=負荷時のトレーサーの左室心筋集積量/負荷時の曲線下面積(Area Under the Curve、AUC)×CCF・・・(2)
【0053】
(NH-PET撮像で得られたMBFとの比較)
続いて、負荷時のNH-PET撮像で得られたMBFとの比較により、本法の有用性を検討した。以下、図4を参照しつつ、その検討結果を具体的に説明する。図4は、本法で求めた負荷時MURの値と、NH-PET撮像で得られた負荷時MBFの値との関係を示すグラフである。
【0054】
図4に示すように、本法で求めた負荷時MURの値は、NH-PET撮像で得られた負荷時MBFの値と、相関を示していた。すなわち、本法で求めた負荷時MURの値をY軸値として与え、NH-PET撮像で得られた負荷時MBFの値をX軸値として与えたところ、被験者Aの例では、両値の相関関係を求めた近似式の傾きは0.0746となり、相関係数はR=0.3717となった。一方、被験者Bの例では、両値の相関関係を求めた近似式の傾きは0.0618となり、相関係数はR=0.4627となった。これらの結果から、本法で求めるMURの値は、心筋血流の定量指標として臨床使用可能であるとの結論に至った。
【0055】
以上、本実施形態によれば、被験者の体格などに付随した画像環境を反映した変換係数を得ることができる。
【0056】
ここまで実施形態を示して本発明を説明したが、これらは一例である。また、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が単一の構成要素として構成されていること、一つの構成要素が複数の構成要素に分割されて形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0057】
また、上述した各種の構成要素は、必ずしも必須の構成要素ではなく、本発明の効果を阻害しない程度に省いても構わないし、同等に機能又は作用する他の構成要素に代えてもよい。
【0058】
例えば、図5に示すように、放射性医薬品の投与開始時刻から予め定められた第一時間T1から第二時間T2内であって、放射性医薬品から放出される放射線量に基づいて、複数の平面画像を求め、得られた平面画像に基づいて三次元核医学画像を生成し(S4)、複数の平面画像のうち所定の平面画像に基づいて二次元核医学画像を取得しても良い(S4)。
【0059】
また、二次元画像、三次元画像を得る際に、上述の実施形態や実施例では負荷時に画像を得た後に安静時に画像を得る順番であったが、負荷、安静を含む検査のプロトコルは上述の実施形態、実施例に限定されず、適宜順序等が選択されうる。さらに、図3のフローチャートにおけるデータ解析(ステップS10以降)の順序にも特段の限定はなく、検査者等が適宜順序を入れ替え、さらには複数の手順を同時に実施してもよい。
【0060】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)コンピュータを用いて核医学検査により定量評価を行う診断支援方法であって、核医学画像撮像装置により撮像された三次元画像および二次元画像を格納するデータベースから、放射性医薬品が投与された被験者の核医学画像である第一の三次元画像および第一の二次元画像と、前記核医学画像撮像装置を用いて前記被験者を撮像することにより得られた第二の三次元画像および第二の二次元画像とを取得するステップと、前記第二の三次元画像および前記第二の二次元画像に対して標的部位に係わる関心領域を設定するステップと、前記第二の三次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数、および、前記第二の二次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数に基づいて、二次元画像と三次元画像とを相互に変換する変換係数を算出するステップと、前記第一の二次元画像のカウント数から前記標的部位における前記放射性医薬品の投与量を算定し、前記変換係数を用いて、前記第一の三次元画像の定量評価を実行するステップと、を有する診断支援方法。
【0061】
(2)(1)に記載の診断支援方法において、前記第二の三次元画像の撮像時間は、前記第一の三次元画像の撮像時間よりも短く、かつ、前記第二の二次元画像の撮像時間は、前記第一の二次元画像の撮像時間よりも短い、診断支援方法。
【0062】
(3)(1)または(2)に記載の診断支援方法において、前記第二の三次元画像および前記第二の二次元画像は、前記第一の三次元画像および前記第一の三次元画像の撮像前、または、前記第一の三次元画像および前記第一の三次元画像の撮像後に撮像されたものである、診断支援方法。
【0063】
(4)(1)から(3)に記載の診断支援方法において、前記変換係数算出ステップでは、以下の式(1)に従い前記変換係数を算出する、診断支援方法。
変換係数=(第二の二次元画像に設定された関心領域におけるピクセルあたりのカウント数の平均値)/第二の三次元画像に設定された関心領域におけるボクセルあたりのカウント数の平均値)・・・(1)
【0064】
(5)(1)から(4)に記載の診断支援方法において、前記標的部位が心臓であり、前記定量評価処理ステップでは、以下の式(2)を用いてMURを算出することで前記定量評価を算出する、診断支援方法。
MUR=[第一の三次元画像から算定される左室心筋の放射能集積量/第一の二次元画像から算定される曲線下面積(Area Under the Curve、AUC)]×変換係数・・・(2)
【0065】
(6)(5)に記載の診断支援方法において、前記第一の三次元画像および第一の二次元画像、または前記第二の三次元画像及び第二の二次元画像は、薬剤により前記標的部位に負荷がかけられた状態で前記放射性医薬品が投与された被験者の核医学画像である、診断支援方法。
【0066】
(7)コンピュータに、核医学画像撮像装置により撮像された三次元画像および二次元画像を格納するデータベースから、放射性医薬品が投与された被験者の核医学画像である第一の三次元画像および第一の二次元画像と、前記核医学画像撮像装置を用いて前記被験者を撮像することにより得られた第二の三次元画像および第二の二次元画像とを取得する画像取得処理と、前記第二の三次元画像および前記第二の二次元画像に対して標的部位に係わる関心領域を設定する関心領域設定処理と、前記第二の三次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数、および、前記第二の二次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数に基づいて、二次元画像と三次元画像とを相互に変換する変換係数を算出する変換係数算出処理と、前記第一の二次元画像のカウント数から前記標的部位における前記放射性医薬品の投与量を推定し、前記変換係数を用いて、前記第一の三次元画像の定量評価を実行する定量評価処理と、を実行させるための診断支援プログラム。
【0067】
(8)核医学画像撮像装置により撮像された三次元画像および二次元画像を格納するデータベースと、前記データベースから、放射性医薬品が投与された被験者の核医学画像である第一の三次元画像および第一の二次元画像と、前記核医学画像撮像装置を用いて前記被験者を撮像することにより得られた第二の三次元画像および第二の二次元画像とを取得する画像取得部と、前記第二の三次元画像および前記第二の二次元画像に対して標的部位に係わる関心領域を設定する関心領域設定部と、前記第二の三次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数、および、前記第二の二次元画像に設定された前記関心領域におけるカウント数に基づいて、二次元画像と三次元画像とを相互に変換する変換係数を算出する変換係数算出部と、前記第一の二次元画像のカウント数から前記標的部位における前記放射性医薬品の投与量を推定し、前記変換係数を用いて、前記第一の三次元画像の定量評価を実行する定量評価部と、を備えることを特徴とする診断支援装置。
【符号の説明】
【0068】
100・・・診断支援装置
102・・・画像生成部
103・・・関心領域設定部
104・・・画像取得部
106・・・変換係数算出部
107・・・定量評価部
図1
図2
図3
図4
図5