(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】成形材料
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20230127BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20230127BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K5/098
C08J3/22 CFD
(21)【出願番号】P 2019018038
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】石津 忍
(72)【発明者】
【氏名】山路 悦司
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特公昭45-019392(JP,B1)
【文献】特表2007-505989(JP,A)
【文献】特開2005-082656(JP,A)
【文献】特開昭50-078647(JP,A)
【文献】特開2006-152127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00 -67/04
C08K 5/098
C08J 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレット表面に脂肪酸金属塩コーティングを有する成形材料であって、該ペレットは
ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して液晶ポリマー1~100質量部を含む樹脂組成物から構成され
、脂肪酸金属塩コーティングはペレットに対して1~10000ppmの量で存在する、成形材料。
【請求項2】
脂肪酸金属塩における脂肪酸の炭素原子数は12~30である、請求項1に記載の成形材料。
【請求項3】
脂肪酸金属塩の金属は、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、カリウムおよび亜鉛からなる群から選択される一種以上である、請求項1または2に記載の成形材料。
【請求項4】
脂肪酸金属塩はステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよびベヘン酸マグネシウムからなる群から選択される一種以上である、請求項1~3のいずれかに記載の成形材料。
【請求項5】
脂肪酸金属塩コーティングはペレットに対して
50~
1000ppmの量で存在する、請求項1~4のいずれかに記載の成形材料。
【請求項6】
液晶ポリマーは、式(I)および式(II)
【化1】
で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂である、請求項1~5のいずれかに記載の成形材料。
【請求項7】
液晶ポリマーは、式(I)および式(II)
【化2】
で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル樹脂である、請求項1~6のいずれかに記載の成形材料。
【請求項8】
液晶ポリマーは、式(I)~(IV)
【化3】
[式中、Ar
1およびAr
2はそれぞれ2価の芳香族基を表す]
で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル樹脂である、請求項1~6のいずれかに記載の成形材料。
【請求項9】
Ar
1およびAr
2は、それぞれ互いに独立して、式(1)~(4)
【化4】
で表される芳香族基から選択される1種以上である、請求項8に記載の成形材料。
【請求項10】
Ar
1は式(1)および/または式(4)で表される芳香族基であり、Ar
2は式(1)および/または(3)で表される芳香族基である、請求項8または9に記載の成形材料。
【請求項11】
前記ペレットはポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して液晶ポリマー
3~
70質量部を含む樹脂組成物から構成される、請求項1~10のいずれかに記載の成形材料。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の成形材料から構成される成形品。
【請求項13】
ペレット表面に脂肪酸金属塩コーティングを有する請求項1~11のいずれかに記載の成形材料の製造方法であって、脂肪酸金属塩コーティングは、脂肪酸金属塩と、ポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーを含む樹脂組成物から構成されるペレットとのドライブレンドによって形成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ブロッキング性および引張破断伸びが改良された、ポリエチレンテレフタレートおよび液晶ポリマーを含有する成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETまたはPET樹脂とも称する)は、吸湿しやすいため、製造後の樹脂ペレットを乾燥させる必要がある。しかしながら、高温での乾燥時において、ペレット同士が融着固化(ブロッキング)して流動性が低下し、ホッパータンクやホッパーなどでの詰まり、延いては、成形生産性低下の原因となるなどの問題があった。
【0003】
一般に、樹脂ペレットのブロッキングを解決するために、オレフィン系ワックス、脂肪酸エステルおよび脂肪酸エステルカルシウム塩から成る滑剤を樹脂とブレンドする方法(特許文献1)が提案されている。しかしながら、この方法は、樹脂と滑剤を溶融混練する必要があり、このような滑剤を大量に加えることで樹脂自体の物性に影響が出るといった問題があった。
【0004】
一方、PETと液晶性ポリエステルとのブレンドのシート状押出し物(特許文献2)が知られている。しかしながら、PETと液晶性ポリエステルとのブレンド樹脂は引張特性に難があり、シート状に加工した際に破断しやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-154507号公報
【文献】特表2004-339247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐ブロッキング性および成形時ないし成形品の引張特性が改良されたポリエチレンテレフタレートおよび液晶ポリマーを含有する成形材料を提供することにある。
【0007】
また、本発明の別の目的は、耐ブロッキング性および成形時ないし成形品の引張特性が改良されたポリエチレンテレフタレートおよび液晶ポリマーを含有する成形材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み、ポリエチレンテレフタレートを含有する成形材料の耐ブロッキング性および引張特性について鋭意検討した結果、ポリエチレンテレフタレート樹脂に液晶ポリマーをブレンドした樹脂組成物のペレットに、脂肪酸金属塩で表面をコーティングすることにより、耐ブロッキング性および成形時ないし成形品の引張特性、とりわけ引張破断伸びが改善されたペレットが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ペレット表面に脂肪酸金属塩コーティングを有する成形材料であって、該ペレットはポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーを含む樹脂組成物から構成される成形材料を提供する。
【0010】
また、本発明は、ペレット表面に脂肪酸金属塩コーティングを有する成形材料の製造方法であって、脂肪酸金属塩コーティングは、脂肪酸金属塩と、ポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーを含む樹脂組成物から構成されるペレットとのドライブレンドによって形成される、方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の成形材料は、耐ブロッキング性および成形時ないし成形品の引張特性、とりわけ引張破断伸びが改善される。そのため、本発明の成形材料は、ブロー成形やフィルム加工などの用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の成形材料は、ペレットと該ペレット表面に有する脂肪酸金属塩コーティングとを含んでなる。該ペレットはポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーを含む樹脂組成物から構成される。本発明の成形材料は、ポリエチレンテレフタレートと液晶ポリマーとを必須成分として含有する。
【0013】
本発明に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と1,2-エタンジオールまたはそのエステル形成性誘導体との縮合反応またはエステル交換反応により得られる重合体である。また、そのようなポリエチレンテレフタレート樹脂は、例えば第3成分として例えばイソフタル酸や1、4-シクロヘキサンジメタノールなどを用いた共重合体であってもよく、一般的にポリエチレンテレフタレートと呼ばれるものであれば、特に限定されない。
【0014】
本発明に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂の結晶融解温度は特に制限されないが、耐熱性に優れる点で、160℃以上であることが好ましく、165℃以上であることが好ましく、170℃以上であることが特に好ましい。
【0015】
本発明に用いられる液晶ポリマー(以下、LCPとも称する)は、異方性溶融相を形成するポリエステルまたはポリエステルアミドであり、当該技術分野においてサーモトロピック液晶ポリエステルまたはサーモトロピック液晶ポリエステルアミドと呼ばれるものであれば特に限定されない。
【0016】
異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージにのせた試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明における液晶ポリマーは光学的に異方性を示すもの、即ち、直交偏光子の間で検査したときに光を透過させるものである。試料が光学的に異方性であると、たとえ静止状態であっても偏光は透過する。
【0017】
本発明において用いる液晶ポリマーとしては、示差走査熱量計により測定される結晶融解温度が160~350℃であるものが好ましく、180~330℃であるものがより好ましく、200~310℃であるものがさらに好ましく、210~300℃であるものが特に好ましい。
【0018】
尚、本明細書および特許請求の範囲において、「結晶融解温度」とは、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、以下DSCと略す)によって、昇温速度20℃/分で測定した際の結晶融解温度ピーク温度から求めたものである。より具体的には、液晶ポリマーの試料を、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より20~50℃高い温度で10分間保持し、次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を液晶ポリマーの結晶融解温度とする。測定機器としては、例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製Exstar6000等を用いることができる。
【0019】
本発明における液晶ポリマーの構成単位を構成する重合性単量体としては、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。このような重合性単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上の重合性単量体を組み合わせてもよい。好適には、少なくとも1種のヒドロキシ基およびカルボキシル基を有する重合性単量体が用いられる。
【0020】
液晶ポリマーの構成単位を構成する重合性単量体は、前記化合物の1種以上が結合してなるオリゴマー、つまり1種以上の前記化合物から構成されるオリゴマーであってもよい。
【0021】
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、7―ヒドロキシ―2―ナフトエ酸、3―ヒドロキシ―2―ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度ならびに融点を調節し易いという観点から、4-ヒドロキシ安息香酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましい。
【0022】
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、3,4’-ジカルボキシビフェニルおよび4,4”-ジカルボキシターフェニル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性を効果的に高められる観点から、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく、テレフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0023】
芳香族ジオールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテルおよび2,2’-ジヒドロキシビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、重合時の反応性に優れる観点から、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよび2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく、ハイドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよび2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上の化合物がより好ましい。
【0024】
芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、4-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、6-アミノ-2-ナフトエ酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0025】
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4-アミノフェノール、N-メチル-4-アミノフェノール、3-アミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、4-アミノ-1-ナフトール、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルエーテル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルメタン、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルスルフィドおよび2,2’-ジアミノビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度のバランスをとりやすい観点から、4-アミノフェノールが好ましい。
【0026】
芳香族ジアミンの具体例としては、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのアミド形成性誘導体が挙げられる。
【0027】
脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ならびにそれらのアシル化物が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの脂肪族ジオールを含有するポリマーを、前記の芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などと反応させてもよい。
【0028】
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸およびヘキサヒドロテレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、重合時の反応性に優れる観点から、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸が好ましい。
【0029】
本発明における液晶ポリマーの構成単位を形成する重合性単量体は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の共重合成分として、ジヒドロキシテレフタル酸、4-ヒドロキシイソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、トリメリット酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸またはこれらのアルキル、アルコキシもしくはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体を含んでいてよい。これらの重合性単量体の使用量は、液晶ポリマーを構成する全構成単位に対して10モル%以下となるような量であるのが好ましい。
【0030】
本発明において液晶ポリマーは、本発明の目的を損なわない範囲で、チオエステル結合を含むものであってもよい。このような結合を与える重合性単量体としては、メルカプト芳香族カルボン酸、および芳香族ジチオールおよびヒドロキシ芳香族チオールなどが挙げられる。これらの重合性単量体の含有量は、液晶ポリマーを構成する全構成単位に対して10モル%以下となるような量であるのが好ましい。
【0031】
これらの繰返し単位を組み合わせたポリマーは、単量体の構成や組成比、ポリマー中での各繰返し単位のシークエンス分布によって異方性溶融相を形成するものと異方性溶融相を形成しないものとが存在するが、本発明に用いる液晶ポリマーは異方性溶融相を形成するものに限られる。
【0032】
本発明の成形材料に使用される液晶ポリマーとしては、流動性および機械特性に優れる点で、式(I)および式(II)で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂が好適に使用される。
【化1】
【0033】
また、本発明の成形材料に使用される液晶ポリマーとしては、流動性および機械特性に優れる点で、式(I)および式(II)で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル樹脂が好適に使用される。
【0034】
さらに、本発明の成形材料に使用される液晶ポリマーとしては、流動性および機械特性に優れる点で、式(I)~(IV)で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル樹脂が好適に使用される。
【化2】
[式中、Ar
1およびAr
2はそれぞれ2価の芳香族基を表す。]
【0035】
ここで、式(III)および式(IV)はそれぞれ、複数種のAr1およびAr2を含み得る。また、「芳香族基」は、6員の単環または環数2の縮合環である芳香族基を示す。
【0036】
流動性および機械特性に優れる点で、Ar
1およびAr
2は、それぞれ互いに独立して、下記の式(1)~(4)で表される芳香族基から選択される1種以上であることがより好ましい。Ar
1が式(1)および/または式(4)で表される芳香族基であり、かつAr
2が式(1)および/または式(3)で表される芳香族基であることが特に好ましい。
【化3】
【0037】
また、本発明の成形材料に使用される液晶ポリマーは、式(I)および式(II)で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、式(I)~(IV)で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル樹脂との混合物であってもよい。
【0038】
本発明の成形材料に用いる液晶ポリマーの構成単位を形成する重合性単量体の組み合わせの具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。
1)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、
2)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
3)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
4)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル/ハイドロキノン、
5)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/ハイドロキノン、
6)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン、
7)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
8)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
9)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン、
10)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
11)4-ヒドロキシ安息香酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
12)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン、
13)4-ヒドロキシ安息香酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン、
14)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン、
15)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
16)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール、
17)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール、
18)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール、
19)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル /4-アミノフェノール、
20)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/エチレングリコール、
21)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル/エチレングリコール、
22)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/エチレングリコール、
23)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル/エチレングリコール、
24)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル。
【0039】
これらの中でも、1)または9)の重合性単量体に由来する構成単位からなる液晶ポリマーが好ましい。
【0040】
上記の液晶ポリマーは単独で用いてもよく、2種以上の液晶ポリマーの混合物として用いてもよい。
【0041】
以下、本発明に用いる液晶ポリマーの製造方法について説明する。
【0042】
本発明に用いる液晶ポリマーの製造方法に特に制限はなく、重合性単量体を、エステル結合またはアミド結合を形成させる公知の重縮合方法、たとえば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などに供することにより液晶ポリマーを得ることができる。
【0043】
溶融アシドリシス法は、本発明の液晶ポリマー組成物に用いる液晶ポリマーを製造するのに好ましい方法である。この方法は、最初に重合性単量体を加熱して反応物質の溶融溶液を形成し、次いで重縮合反応を続けて溶融ポリマーを得るものである。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(たとえば酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。
【0044】
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で重合性単量体を反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
【0045】
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法のいずれの場合においても、液晶ポリマーを製造する際に使用される重合性単量体は、常温において、ヒドロキシル基および/またはアミノ基をアシル化した変性形態、すなわち低級アシル化物として反応に供することもできる。
【0046】
低級アシル基は炭素原子数2~5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。本発明の好ましい実施態様において、前記重合性単量体のアセチル化物を反応に供する。
【0047】
重合性単量体の低級アシル化物は、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、液晶ポリマーの製造時に重合性単量体に無水酢酸等のアシル化剤を加えて反応系内で生成せしめることもできる。
【0048】
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法のいずれの場合においても、重縮合反応は、温度150~400℃、好ましくは250~370℃で、常圧および/または減圧下で行うのがよく、必要に応じて触媒を用いてもよい。
【0049】
触媒の具体例としては、ジアルキルスズオキシド(例えばジブチルスズオキシド)、ジアリールスズオキシドなどの有機スズ化合物;二酸化チタン;三酸化アンチモン;アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物;カルボン酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(例えば酢酸カリウム);ルイス酸(例えば三フッ化硼素)、ハロゲン化水素(例えば塩化水素)などの気体状酸触媒などが挙げられる。
【0050】
触媒を使用する場合、該触媒の量は重合性単量体全量に対し、好ましくは1~1000ppm、より好ましくは2~100ppmである。
【0051】
このようにして重縮合反応させて得られた液晶ポリマーは、通常、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工される。
【0052】
本発明に用いるポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーを含む樹脂組成物は、通常、ポリエチレンテレフタレート樹脂と液晶ポリマーを任意の方法により混合することにより得られる。その際のポリエチレンテレフタレート樹脂と液晶ポリマーの配合比は、ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、通常は液晶ポリマー1~100質量部、好ましくは3~70質量部、より好ましくは5~50質量部、さらに好ましくは10~25質量部である。
【0053】
ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部に対する液晶ポリマーの比率が1質量部を下回ると、強度や耐熱性、ガスバリア性の向上が得られない場合がある。液晶ポリマーの比率が70質量部を上回ると、ポリエチレンテレフタレートの有する柔軟性や靭性などのしなやかな機械特性が損なわれる場合があると共に、ブロー成形やフィルム加工に不向きとなる場合がある。
【0054】
ポリエチレンテレフタレート樹脂と液晶ポリマーの混合に際して相溶化剤は特に必要ないが、相溶性をより向上させる目的で、相溶化剤を添加してもよい。ここで、相溶化剤とは、混合ポリマーを構成する各ポリマーの相の界面に局在し、それらの相間の界面張力を低下させる機能を有するものをいう。
【0055】
本発明に用いるポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーを含む樹脂組成物には、必要により、無機充填材および/または有機充填材を配合してもよい。
【0056】
配合する無機充填材および/または有機充填材としては、たとえばガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、アラミド繊維、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイト、クレイ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、および酸化チタンからなる群から選択される1種以上が挙げられる。これらの中では、ガラス繊維が物性とコストのバランスが優れている点で好ましい。
【0057】
無機充填材および/または有機充填材を用いる場合、該充填材の配合量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーの合計量100質量部に対して、0.1~200質量部であることが好ましく、より好ましくは1~100質量部、さらに好ましくは5~50質量部である。
【0058】
本発明に用いるポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーを含む樹脂組成物には、ポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマー以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに他の樹脂成分や添加剤を配合してもよい。他の樹脂成分としては、たとえばポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、およびその変性物、ならびにポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。添加剤としては、難燃剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0059】
他の樹脂成分および添加剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0060】
他の樹脂成分を配合する場合、該樹脂成分の配合量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーの合計量100質量部に対して0.1~100質量部であることが好ましく、0.1~80質量部であることがより好ましい。
【0061】
添加剤を配合する場合、該添加剤の配合量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーの合計量100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることがより好ましい。
【0062】
本発明に用いるペレットは、上記のポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーを、必要により上記の相溶化剤、無機充填材および/または有機充填材、他の樹脂成分、添加剤と共に、混練機で溶融混練を行った後、後述するように、粉砕または押し出して得たストランドを切断する等により製造することができる。相溶化剤、無機充填材および/または有機充填材、他の樹脂成分および添加剤は、予めポリエチレンテレフタレート樹脂または液晶ポリマーのいずれかに配合してもよく、また、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を成形材料に成形加工する際に配合してもよい。
【0063】
混練機としては、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出し機などが使用される。例えば、二軸押出し機を用いた場合などは、比エネルギー(吐出量あたりの押出機仕事量(kW・h/kg))0.1~0.25で、ベントポートを真空にしながら混練を行うのがよいが、これに限らず、不活性ガス雰囲気下で混練を行ってもよい。
【0064】
本発明の成形材料は、このようにして作製されたPETとLCPのペレットの表面に脂肪酸金属塩をコーティングすることによって得られる。
【0065】
本発明において「コーティング」とは、付着させ、塗布しまたは被覆する行為、ならびに、これによって得られた状態としての付着物、塗布物または被覆物を意味する。
【0066】
本発明の成形材料に使用する脂肪酸金属塩の脂肪酸としては、炭素原子数が12~30であるものが好ましく、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸からなる群から選択される一種以上を好適に用いることができる。
【0067】
本発明の成形材料に使用する脂肪酸金属塩の金属としては、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、カリウムおよび亜鉛からなる群から選択される一種以上が挙げられる。
【0068】
本発明の成形材料に使用する脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸ナトリウム、ベヘン酸マグネシウムおよびベヘン酸亜鉛などが挙げられる。これらの中でもブロッキング防止性に優れる点でステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよびベヘン酸マグネシウムからなる群から選択される一種以上を用いることが好ましく、ステアリン酸カルシウムを用いることがより好ましい。
【0069】
脂肪酸金属塩の表面コーティングは、ペレットの質量に対して1~10000ppmの量で行うことが好ましく、50~1000ppmがより好ましく、100~500ppmが特に好ましい。脂肪酸金属塩の表面コーティングが、ペレットに対して1ppm未満である場合、ブロッキングが生じる場合があり、10000ppm超の場合、物性に影響を及ぼす場合がある。ペレットの表面における脂肪酸金属塩のコーティング(付着物、塗布物または被覆物)は、ペレットの質量に対して1~10000ppmであることが好ましく、50~1000ppmがより好ましく、100~500ppmが特に好ましい。
【0070】
本発明におけるペレットの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、角柱状、球状、円柱状等とすることができる。ペレットの大きさとしては、角柱状の場合は最大辺の長さが1~20mmであることが好ましく、球状の場合は粒子径が1~20mmであることが好ましく、円柱状の場合は直径が1.5~5mm、高さが1.5~10mmであることが好ましい。ペレットの大きさが上記範囲内にあると、取扱性が向上し、成形材料の包装作業等が容易になる。本発明に用いるペレットは、通常、0.4~18g/ペレット100個である。
【0071】
本発明におけるペレットの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーを含む樹脂組成物をストランド状に押出し、得られたストランドをカッター等により適度な大きさに切断してペレットに加工する方法等を用いることができる。
【0072】
脂肪酸金属塩は、様々な従来技術のいずれかによってペレットの表面にコーティングさせることができる。なかでも、脂肪酸金属塩の粉末をペレットとドライブレンドすることによりコーティングを行うことが好ましい。例えば、飛散性粉末形状を有するステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩を、通常の混練または混合技術を用いて、コーティングがペレットの表面上に形成されるまでドライブレンドすることができる。
【0073】
また、脂肪酸金属塩の水性分散液中にペレットを例えば0.5~30分間浸漬し、次いでペレットを取り出し、乾燥させることによってコーティングを行ってもよい。脂肪酸金属塩の水性分散液は、水性媒体中に金属塩を分散するための界面活性剤を含有することが好ましい。
【0074】
ペレットの表面へ脂肪酸金属塩をコーティングする方法は、バッチプロセス、または連続プロセスで行うことができる。
【0075】
このようにして表面に脂肪酸金属塩がコーティングされたペレットは、次いで乾燥工程に供されて成形材料とすることができる。乾燥工程は通常120℃で4時間以上通風乾燥することによって行われる。脂肪酸金属塩による表面コーティングを有するペレットは、それ自体が耐ブロッキング性に優れるため、乾燥工程後もブロッキングすることなく、成形材料として好適に使用することができる。
【0076】
一方、脂肪酸金属塩で表面コーティングされていないペレットは、乾燥工程の際に、ペレット同士が凝集しブロッキングするため、乾燥工程に先駆けて結晶化工程(例えば60~80℃で真空乾燥)などの処理を行う必要がある。
【0077】
本発明の成形材料は、結晶化工程等が不要となるため、製造工程が簡略化されるとともにコスト的にも有利である。
【0078】
本発明の成形材料は、射出成形、ブロー成形、一軸延伸、二軸延伸、インフレーションなどの公知の成形方法によって、フィルム、シート、ボトル、その他の包装材料などに加工することができる。
本発明の成形材料は、引張特性、とりわけ引張破断伸びに優れるため、ブロー成形性やフィルム加工性が向上する。
【0079】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0080】
まず、実施例および比較例において使用する液晶ポリマーの合成例を記す。合成例における下記の略号は以下の化合物を表す。
【0081】
〔液晶ポリマーの合成に用いた単量体〕
POB:4-ヒドロキシ安息香酸
BON6:6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
HQ:ハイドロキノン
TPA:テレフタル酸
【0082】
[合成例1(LCP-1)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:349.3g(40モル%)、BON6:476.0g(40モル%)、HQ:69.7g(10モル%)およびTPA:105.0g(10モル%)を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0083】
窒素ガス雰囲気下に室温~145℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ350℃まで7時間かけ昇温した後、80分かけて10mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステル樹脂のペレット(LCP-1)を得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。
【0084】
[合成例2(LCP-2)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:655.4g(73モル%)、BON6:330.2g(27モル%)を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0085】
窒素ガス雰囲気下に室温~145℃まで1時間かけて昇温し、同温度で30分保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ345℃まで7時間かけて昇温した後、80分かけて10mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステル樹脂(LCP-2)のペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。
【0086】
ポリエチレンテレフタレート樹脂および脂肪酸金属塩として以下のものを使用した。
【0087】
[ポリエチレンテレフタレート樹脂]
PET1:ポリエチレンテレフタレート樹脂「ユニチカ社製NEH-2070」
PET2:ポリエチレンテレフタレート樹脂「ユニチカ社製SA-8339P」
【0088】
[脂肪酸金属塩]
Ca-St:ステアリン酸カルシウム「日東化成工業株式会社製Ca-St」
Mg-St:ステアリン酸マグネシウム「日東化成工業株式会社製Mg-St」
Mg-Be:ベヘン酸マグネシウム「日東化成工業株式会社製MS-7」
【0089】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、LCPを表1で示す量でドライ混合し、2軸押出機((株)日本製鋼所、TEX-30)を用いて、280℃のシリンダ温度にてコンパウンドし、押出成形して得られたストランドを、直径が約2.5mm、高さが約4mmの円柱状になるようにカッターで裁断し、LCPが混合されたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを得た。
【0090】
得られたペレット1kgに、ステアリン酸カルシウム0.1g(ペレットに対して100ppm)を添加後、ドライ混合し、ステアリン酸カルシウムがコーティングされたペレット(本発明の成形材料)を得た。得られた成形材料をバットに入れ、上から6kgの重石を載せた状態で120℃の通風乾燥機内で1時間乾燥させた。乾燥後、ブロッキング状態の確認および引張破断伸びの測定を実施した。結果を表1に示す。
【0091】
[実施例2~8、および比較例1~4]
ポリエチレンテレフタレート樹脂、LCP、脂肪酸金属塩を表1~4に示すような比率に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ペレットを取得し、脂肪酸金属塩と混合、乾燥させた。得られた成形材料に対して、実施例1と同様にブロッキング状態の確認および引張破断伸びの測定を実施した。結果を表1~4に示す。
【0092】
尚、各評価方法は下記の通り実施した。
【0093】
<ブロッキング状態>
○:ブロッキングが確認されなかった。
×:ブロッキングが確認された。
【0094】
<引張破断伸び>
得られたペレットを、日精樹脂工業(株)製射出成形機(UH1000-110)を用いて射出成形し、厚み4.0mmのISOダンベル試験片を作製した。INSTRON5567(インストロンジャパンカンパニイリミテッド社製万能試験機)を用いて、JIS-K7161、7162に準じて引張破断伸びを測定した。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
表1~4より、脂肪酸金属塩でコーティングされた実施例1~8に記載の本発明の成形材料は、脂肪酸金属塩でコーティングされていない比較例1~4の成形材料とそれぞれ比較して、耐ブロッキング性および引張破断伸びが改良されることが理解される。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕ペレット表面に脂肪酸金属塩コーティングを有する成形材料であって、該ペレットはポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーを含む樹脂組成物から構成される成形材料。
〔2〕脂肪酸金属塩における脂肪酸の炭素原子数は12~30である、〔1〕に記載の成形材料。
〔3〕脂肪酸金属塩の金属は、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、カリウムおよび亜鉛からなる群から選択される一種以上である、〔1〕または〔2〕に記載の成形材料。
〔4〕脂肪酸金属塩はステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよびベヘン酸マグネシウムからなる群から選択される一種以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の成形材料。
〔5〕脂肪酸金属塩コーティングはペレットに対して1~10000ppmの量で存在する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の成形材料。
〔6〕液晶ポリマーは、式(I)および式(II)
[化1]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の成形材料。
〔7〕液晶ポリマーは、式(I)および式(II)
[化2]
で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル樹脂である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の成形材料。
〔8〕液晶ポリマーは、式(I)~(IV)
[化3]
[式中、Ar
1
およびAr
2
はそれぞれ2価の芳香族基を表す]
で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル樹脂である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の成形材料。
〔9〕Ar
1
およびAr
2
は、それぞれ互いに独立して、式(1)~(4)
[化4]
で表される芳香族基から選択される1種以上である、〔8〕に記載の成形材料。
〔10〕Ar
1
は式(1)および/または式(4)で表される芳香族基であり、Ar
2
は式(1)および/または(3)で表される芳香族基である、〔8〕または〔9〕に記載の成形材料。
〔11〕前記ペレットはポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して液晶ポリマー1~50質量部を含む樹脂組成物から構成される、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の成形材料。
〔12〕〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の成形材料から構成される成形品。
〔13〕ペレット表面に脂肪酸金属塩コーティングを有する〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の成形材料の製造方法であって、脂肪酸金属塩コーティングは、脂肪酸金属塩と、ポリエチレンテレフタレート樹脂および液晶ポリマーを含む樹脂組成物から構成されるペレットとのドライブレンドによって形成される、方法。