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特許7217700安定化非タンパク質クロストリジウム毒素組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】安定化非タンパク質クロストリジウム毒素組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/48 20060101AFI20230127BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230127BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230127BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230127BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230127BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230127BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230127BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
A61K38/48
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/22
A61K47/02
A61P25/24
A61P9/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019513907
(86)(22)【出願日】2017-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 US2017051394
(87)【国際公開番号】W WO2018053021
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】62/394,009
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】アビアド モーリス
(72)【発明者】
【氏名】ダニ バス
(72)【発明者】
【氏名】シャラエフ エヴゲニー
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-509644(JP,A)
【文献】特表2012-512162(JP,A)
【文献】特表2014-507484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0250302(US,A1)
【文献】特表2019-526611(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103705913(CN,A)
【文献】特表2012-531442(JP,A)
【文献】特表2009-511485(JP,A)
【文献】特表2010-532784(JP,A)
【文献】齋藤 好廣,プルロニック系界面活性剤,日本油化学会誌,2000年,第49巻,第10号,p. 1071-1080
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)クロストリジウムボツリヌス毒素活性成分、
(ii)水性ビヒクル、
(iii)ポロキサマーP188、及び
(iv)約0.1~0.3質量%のメチオニン
を含み、
皮下または筋内への注射に適しており、かつ
40℃において少なくとも1か月間安定であり、
動物性タンパク質を実質的に含まない、液体医薬組成物。
【請求項2】
トレハロースをさらに含む、請求項1に記載の液体医薬組成物。
【請求項3】
前記トレハロースが約1~15質量%の量で存在する、請求項2に記載の液体医薬組成物。
【請求項4】
前記ポロキサマーP188が約0.5~8質量%の量で存在する、請求項1に記載の液体医薬組成物。
【請求項5】
前記メチオニンが約0.2質量%の量で存在する、請求項1に記載の液体医薬組成物。
【請求項6】
(i)クロストリジウムボツリヌス毒素活性成分、
(ii)約1~15質量%のトレハロース、
(iii)約0.5~8質量%のポロキサマーP188、及び
(iv)約0.1~0.3質量%のメチオニン
を含み、
皮下または筋内への注射に適しており、かつ
40℃において少なくとも1か月間安定であり、
動物性タンパク質を実質的に含まない、液体医薬組成物。
【請求項7】
前記メチオニンが約0.2質量%の量で存在する、請求項に記載の液体医薬組成物。
【請求項8】
前記ポロキサマーP188が約2~6質量%の量で存在する、請求項に記載の液体医薬組成物。
【請求項9】
前記トレハロースが約1~10質量%の量で存在する、請求項に記載の液体医薬組成物。
【請求項10】
うつ病の治療に使用するための請求項1記載の液体医薬組成物。
【請求項11】
心不整脈の治療に使用するための請求項1記載の液体医薬組成物。
【請求項12】
うつ病の治療に使用するための請求項記載の液体医薬組成物。
【請求項13】
心不整脈の治療に使用するための請求項記載の液体医薬組成物。
【請求項14】
クロストリジウムボツリヌス毒素活性成分、
約0.6~4質量%のポロキサマーP188、
約1~10質量%のトレハロース、
約0.1~0.3質量%のメチオニン、及び
20mMのヒスチジン緩衝剤
を含み、
動物性タンパク質を実質的に含まない、液体医薬組成物。
【請求項15】
クロストリジウムボツリヌス毒素活性成分、
約4質量%のポロキサマーP188、
約8質量%のトレハロース、
約0.2質量%のメチオニン、及び
20mMのヒスチジン緩衝剤
を含み、
pHが約6.0である、請求項14記載の液体医薬組成物。
【請求項16】
クロストリジウムボツリヌス毒素活性成分、
約4質量%のポロキサマーP188、
約2質量%のトレハロース、
約0.2質量%のメチオニン、及び
20mMのヒスチジン緩衝剤
を含み、
pHが約6.0である、請求項14記載の液体医薬組成物。
【請求項17】
さらに塩化ナトリウムを含む、請求項14または16記載の液体医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロストリジウム毒素活性成分及び1つ以上の非タンパク質賦形剤を含む固体及び液体医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬組成物は、少なくとも1つの活性成分(クロストリジウム毒素など)、及び例えば1つ以上の賦形剤、緩衝剤、担体、安定剤、防腐剤及び/又は増量剤を含有し、所望の診断結果又は治療効果を達成するために患者への投与に好適である製剤である。本明細書に開示される医薬組成物は、診断、治療、及び/又は研究上の有用性を有する。
【0003】
貯蔵安定性及び取り扱いの利便性のために、医薬組成物は、患者への投与前に生理食塩水又は水などの好適な液体で再構成することができる、凍結乾燥(すなわち、凍結乾燥)又は真空乾燥粉末として製剤化することができる。あるいは、医薬組成物は、水溶液又は懸濁液として製剤化することができる。医薬組成物は、タンパク質活性成分を含有することができる。残念なことに、タンパク質活性成分は安定化すること(すなわち、生物活性の損失が最小限に抑えられる状態で維持されること)が非常に困難であり得るので、使用前におけるタンパク質の製剤化中、再構成中(必要な場合)、及び貯蔵中に、タンパク質の損失及び/又はタンパク質活性の損失がもたらされる。安定性の問題は、タンパク質活性成分の表面吸着、例えば変性若しくは凝集などの物理的不安定性、又は例えば架橋、脱アミド化、異性化、酸化、酸性若しくは塩基性種の形成、メイラード反応、及び断片化などの化学的不安定性に起因して生じ得る。このような不安定性を防止するために、アルブミン及びゼラチンなどの様々なタンパク質ベースの賦形剤が、医薬組成物中に存在するタンパク質活性成分を安定化させるために使用されてきた。
【0004】
残念ながら、それらの既知の安定化効果にもかかわらず、医薬組成物におけるアルブミン又はゼラチンなどのタンパク質賦形剤の使用には重大な欠点が存在する。例えば、アルブミン及びゼラチンは高価であり、入手が困難である。更に、アルブミン及びゼラチンなどの血液製品又は動物由来製品は、患者に投与した場合、血液由来病原体又は感染病原体を取り入れる潜在的なリスクを患者に負わせる可能性がある。したがって、医薬組成物中に動物由来タンパク質賦形剤が存在することにより、感染因子が医薬組成物中に不注意に入ってしまう可能性があることが知られている。例えば、ヒト血清アルブミンの使用により、プリオンが医薬組成物に移される可能性があることが報告されている。したがって、医薬組成物中に存在するタンパク質活性成分を安定化させるために使用することができる、例えば、安定剤、抗凍結剤、及び抗凍結乾燥剤などの好適な非タンパク質賦形剤を見出すことが望ましい。
【0005】
クロストリジウム毒素の特有の特性は、クロストリジウム毒素活性成分を含む医薬組成物のための好適な非タンパク質賦形剤の選択を更に制約し、妨げる。例えば、クロストリジウム毒素は約150kDaの平均分子量を有する大きなタンパク質であり、非毒素関連タンパク質と更に複合体を形成して、これはサイズを約300~900kDaに増加させる。このサイズのクロストリジウム毒素複合体は、より小さい、より少ない複合体タンパク質よりもはるかに脆弱で不安定となり、それによりクロストリジウム毒素の安定性を維持すべき場合には製剤化及び取り扱いの困難性の度合いを増す。したがって、非タンパク質賦形剤、例えば、安定剤、抗凍結剤及び抗凍結乾燥剤などの非タンパク質賦形剤の使用は、毒素を変性、断片化、又は不活性化させないか、あるいは毒素複合体中に存在する非毒素関連タンパク質を解離させない様式で、クロストリジウム毒素活性成分と相互作用できなければならない。
【0006】
クロストリジウム毒素活性成分に関連する別の問題は、製剤化プロセスの全ての工程で必要とされる優れた安全性、精密度、及び正確度である。したがって、非タンパク質賦形剤は、それ自体が毒性であってはならず、又は既に非常に厳しい要件を更に悪化させないように取り扱いが困難であってはならない。
【0007】
クロストリジウム毒素活性成分と関連する更に別の困難は、医薬組成物中で使用されるクロストリジウム毒素の量が極めて少量であることである。一般的には酵素と同様に、クロストリジウム毒素の生物学的活性は少なくとも一部はその3次元構造に依存する。したがって、クロストリジウム毒素は、熱、様々な化学物質、表面の延伸、及び表面の乾燥によって解毒される。更に、既知の培養、発酵、及び精製方法によって得られたクロストリジウム毒素複合体を医薬組成物に使用される非常に低い濃度に希釈することにより、毒素の急速な不活性化がもたらされることが知られている。医薬組成物に使用されるクロストリジウム毒素活性成分が非常に少量であるために、例えば、実験室用ガラス器具の表面、容器、医薬組成物が再構成されるバイアル、及び医薬組成物を注射するために使用される注射器の内面に非常に吸着し易くなる。クロストリジウム毒素活性成分の表面へのこのような吸着は、活性成分の損失及び残ったクロストリジウム毒素活性成分の変性をもたらす可能性があり、その両方により医薬組成物中に存在する活性成分の総活性が低下する。したがって、非タンパク質賦形剤、例えば、安定剤、抗凍結剤、及び抗凍結乾燥剤などの非タンパク質賦形剤の使用は、クロストリジウム毒素活性成分の表面への吸着を防止するための表面ブロッカーとして作用できなければならない。
【0008】
クロストリジウム毒素活性成分に関係する更に別の問題は、複合体形成と関連するpH感受性である。例えば、900kDa BoNT/A複合体は、pH3.5~6.8で希釈水溶液に可溶性であることが知られている。しかしながら、約7を超えるpHでは、非毒性関連タンパク質が150kDaの神経毒素から解離し、これにより特にpHがpH8.0を超えて上昇した場合に毒性が失われることとなる。Edward J.Schantzら,pp.44~45,Preparation and characterization of botulinum toxin type A for human treatment,in Jankovic,J.,ら,Therapy with Botulinum Toxin(Marcel Dekker,Inc.,1994)を参照のこと。非毒性関連タンパク質は毒性が依存する二次及び三次構造を保存するか又は安定化するのを助けると考えられるため、これらのタンパク質の解離により、より不安定なクロストリジウム毒素活性成分が生ずる。したがって、クロストリジウム毒素活性成分を含む医薬組成物の製剤化に有用な非タンパク質賦形剤は、クロストリジウム毒素活性成分の活性を維持するのに必要なpHレベルの範囲内で操作できなければならない。
【0009】
したがって、クロストリジウム毒素活性成分(ボツリヌス毒素など)が非タンパク質賦形剤によって安定化されているクロストリジウム毒素医薬組成物が必要とされている。本発明は、固体又は液体医薬組成物中に存在するクロストリジウム毒素活性成分を安定化させるように機能する1つ以上の非タンパク質賦形剤を有する固体及び液体クロストリジウム毒素医薬組成物に関する。
【発明の概要】
【0010】
一態様において、クロストリジウム毒素活性成分、等張化剤、界面活性剤、及び酸化防止剤を含む、医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、ボツリヌス毒素である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、トレハロースを含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、ポロキサマー及び/又はポリソルベートを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、ポロキサマー188及び/又はポリソルベート20を含む。いくつかの実施形態において、酸化防止剤は、L-メチオニン、N-アセチル-システイン、及び/又はエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩(EDTA)又はEDTA類似体を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、緩衝剤を更に含む。一実施形態において、緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、5~7のpHを有する。いくつかの実施形態において、組成物は液体製剤である。いくつかの実施形態において、組成物は固体製剤である。
【0011】
一態様において、本開示は、クロストリジウム毒素誘導体、トレハロース、ポロキサマー188又はポリソルベート20、及びLーメチオニン又はN-アセチル-システイン(NAC)を含む、液体医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、液体医薬組成物はボツリヌス毒素を含む。いくつかの実施形態において、液体医薬組成物は、EDTA又はEDTA類似体を更に含む。いくつかの実施形態において、液体医薬組成物は、ヒスチジン緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、液体医薬組成物のpHは、5~7の範囲である。いくつかの実施形態において、L-メチオニンの相対重量は、約0.1%~約0.3%の範囲である。いくつかの実施形態において、NACの相対重量は、約0.1%~約0.5%の範囲である。いくつかの実施形態において、EDTAの相対重量は、約0.01%~約0.05%の範囲である。いくつかの実施形態において、トレハロースの相対重量は、約1.0~約10%の範囲である。いくつかの実施形態において、ポロキサマー188の相対重量は、約2%~約5%の範囲である。いくつかの実施形態において、ポリソルベート20の相対重量は、約0.02%~約0.06%の範囲である。
【0012】
別の態様において、本開示は、ボツリヌス毒素、トレハロース、ポロキサマー188又はポリソルベート20、NAC及びEDTA若しくはEDTA類似体を含む固体医薬組成物を提供する。代替の実施形態において、固体医薬組成物は、ボツリヌス毒素、トレハロース、ポロキサマー188、及びL-メチオニンを含む。いくつかの実施形態において、固体医薬組成物は、ヒスチジン緩衝剤を更に含む。いくつかの実施形態において、L-メチオニンの相対重量は、約0.1%~約0.3%の範囲である。いくつかの実施形態において、NACの相対重量は、約0.01%~約0.05%の範囲である。いくつかの実施形態において、EDTAの相対重量は、約0.01%~約0.05%の範囲である。いくつかの実施形態において、トレハロースの相対重量は、約1.0~約10%の範囲である。いくつかの実施形態において、ポロキサマー188の相対重量は、約0.5%~約5%の範囲である。いくつかの実施形態において、ポリソルベート20の相対重量は、約0.02%~約0.06%の範囲である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のある特定の組成物は、クロストリジウム毒素誘導体、二糖類、界面活性剤、及び酸化防止剤を含む、安定な液体又は固体医薬組成物を提供する。
【0014】
ある特定の実施形態はまた、本発明の態様に従って提供される組成物を使用した、例えば、鬱病、頭痛(例えば、片頭痛、緊張性頭痛など)、疼痛、多汗症、筋痙縮、頸部ジストニア、眼瞼痙攣、過活動膀胱(神経因性排尿筋過活動及び特発性過活動膀胱)、例えば皺、凹凸(irregularity)、窪み(depression)を含む皮膚状態などの様々な疾患、障害、又は状態の治療方法を提供する。実施形態は、例えば、筋内、皮内、皮下などの注射、点滴(instillation)、静脈内、経皮、及び皮膚(topical)を含む様々な投与技術を含むことができる。
定義
【0015】
本明細書で使用する場合、以下に記載される単語又は用語は、以下の定義を有する。
【0016】
本明細書で使用する場合、「約」又は「およそ」は、当業者によって判断されるとき、特定の値に対する許容可能な誤差範囲内であることを意味し、その値がどのように測定又は判定されたか(すなわち、測定系の限界)に一部依存する。例えば、「約」は、当該技術における行為に対して、1以内又は1超の標準偏差を意味する場合がある。特定の値が本出願及び特許請求の範囲に記載される場合、特に明記しない限り、用語「約」は、特定の値に対する許容可能な誤差範囲内であることを意味する。
【0017】
「投与」又は「投与する」は、対象あるいは医薬組成物を受容する対象にボツリヌス毒素を与える(すなわち投与する)工程を意味する。本明細書に開示される医薬組成物は、様々な方法によって局所投与することができる。例えば、筋内、皮内、皮下投与、髄腔内投与、腹腔内投与、皮膚(経皮)、点滴、及び(例えば、高分子インプラント又はミニ浸透ポンプなどの徐放性デバイスの)インプラントは全て、適切な投与経路であり得る。
【0018】
「緩和」は、疼痛、頭痛、又は疾患若しくは障害の任意の症状若しくは原因の発生の低下を意味する。したがって、緩和には、ある程度の低下、大幅な低下、ほぼ完全な低下、及び完全な低下が含まれる。
【0019】
「動物タンパク質を含まない」とは、血液由来の、血液貯蔵された(blood pooled)、及び他の動物由来の産物又は化合物が存在しないことを意味する。「動物」は、哺乳動物(ヒトなど)、鳥類、爬虫類、魚類、昆虫類、クモ類、又は他の動物種を意味する。「動物」は、細菌などの微生物を除外する。したがって、動物性タンパク質を含まない医薬組成物は、ボツリヌス神経毒素を含み得る。例えば、「動物性タンパク質を含まない」医薬組成物とは、血清由来アルブミン、ゼラチン、及び免疫グロブリンなどの他の動物由来タンパク質を実質的に含まないか、若しくは本質的に含まないか、又は全く含まないかのいずれかである医薬組成物を意味する。動物性タンパク質を含まない医薬組成物の例は、(活性成分として)ボツリヌス毒素及び安定剤又は賦形剤としての好適な多糖類を含むか又はそれらからなる医薬組成物である。
【0020】
「生物活性」は、生物に対する薬物の有益な又は有害な効果を表す。薬物が複合体化学混合物(complex chemical mixture)である場合、この活性は、物質の活性成分によって発揮されるが他の構成要素によって修飾され得る。生物活性は、インビボLD50若しくはED50アッセイによる効力又は毒性として、あるいは例えば、米国特許第20100203559号及び米国特許第20100233802号に記載されている細胞に基づく効力アッセイなどのインビトロアッセイによって評価することができる。
【0021】
「ボツリヌス毒素」は、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)によって産生される神経毒素、並びに、非クロストリジウム種によって組み換え的に製造されたボツリヌス毒素(又はその重鎖若しくは軽鎖)を意味する。本明細書で使用する場合、用語「ボツリヌス毒素」は、ボツリヌス毒素血清型A、B、C、D、E、F及びG、並びに、それらのサブタイプ及びそれらのサブタイプのうち任意の型、又は、いずれの場合も上記のうち任意のものの任意の遺伝子再操作したタンパク質、類似体、誘導体、ホモログ、パーツ、サブパーツ、バリアント(variant)又はバージョン(version)を包含する。本明細書で使用する場合、「ボツリヌス毒素」は、「修飾ボツリヌス毒素」も包含する。更に、本明細書で使用する場合、「ボツリヌス毒素」はまた、ボツリヌス毒素複合体(例えば、300、600及び900kDaの複合体)、並びに、複合タンパク質が結合していないボツリヌス毒素の神経毒素成分(150kDa)を包含する。
【0022】
「クロストリジウム毒素」は、クロストリジウム毒素が細胞内に入り、クロストリジウム毒素の低及び高親和性クロストリジウム毒素受容体への結合、毒素/受容体複合体の内部移行、クロストリジウム毒素軽鎖の細胞質内への移行(translocation)、及びクロストリジウム毒素基質の酵素的修飾を起こすことによって、全般的な細胞機構を遂行できるクロストリジウム毒素株によって産生される任意の毒素を指す。クロストリジウム毒素の非限定例には、BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/G、テタヌス(Tetanus)毒素(TeNT)、バラティ(Baratii)毒素(BaNT)、及びブチリカム(Butyricum)毒素(BuNT)などのボツリヌス毒素が含まれる。神経毒素ではないBoNT/C2細胞毒素及びBoNT/C3細胞毒素は、用語「クロストリジウム毒素」から除外される。本明細書に開示されるクロストリジウム毒素は、限定するものではないが、例えばクロストリジウム毒素アイソフォーム及びクロストリジウム毒素サブタイプなどの天然に存在するクロストリジウム毒素バリアント、非天然のクロストリジウム毒素バリアント、例えば、保存的クロストリジウム毒素バリアント、非保存的クロストリジウム毒素バリアント、クロストリジウム毒素キメラバリアント、及びそれらの活性クロストリジウム毒素断片、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。本明細書に開示されるクロストリジウム毒素はまた、クロストリジウム毒素複合体を含む。本明細書で使用する場合、用語「クロストリジウム毒素複合体」は、クロストリジウム毒素及び非毒素関連タンパク質(NAP)を含む複合体、例えば、ボツリヌス毒素複合体、テタヌス(Tetanus)毒素複合体、バラティ(Baratii)毒素複合体、及びブチリカム(Butyricum)毒素複合体を指す。クロストリジウム毒素複合体の非限定的な例には、Clostridium botulinumによって産生されるもの、例えば、900kDa BoNT/A複合体、500kDa BoNT/A複合体、300kDa BoNT/A複合体、500kDa BoNT/B複合体、500kDa BoNT/C1複合体、500kDa BoNT/D複合体、300kDa BoNT/D複合体、300kDa BoNT/E複合体、及び300kDa BoNT/F複合体が含まれる。
【0023】
「クロストリジウム毒素活性成分」は、対象又は患者への投与時又は投与後において効果を発揮するクロストリジウム毒素の任意の部分を含有する分子を指す。本明細書で使用する場合、用語「クロストリジウム毒素活性成分」は、約150kDaクロストリジウム毒素及び非毒素関連タンパク質(NAP)と纏めて称する他のタンパク質を含むクロストリジウム毒素複合体、約150kDaクロストリジウム毒素単独、又は修飾クロストリジウム毒素、例えば再標的化(re-targeted)クロストリジウム毒素を包含する。
【0024】
「変形(deformity)」とは、美容的、物理的若しくは機能的な不規則性(irregularity)、欠陥、異常、欠点、奇形(malformation)、窪み、又は歪みを意味する。
【0025】
生物学的有効成分に対して適用される「有効量」は、対象において所望の変化を引き起こすのに一般的に十分である成分の量を意味する。例えば、所望の効果が自己免疫障害の症状の軽減である場合、成分の有効量は、自己免疫障害の症状の少なくとも実質的な軽減を引き起こし、有意な毒性をもたらすことのない量である。
【0026】
クロストリジウム毒素組成物に添加される賦形剤の量又はその特定の組み合わせに関して使用される「有効量」とは、クロストリジウム毒素活性成分の所望の初期回復効力(initial recovered potency)を達成するのに必要な各賦形剤の量を指す。この実施形態の態様において、有効量の賦形剤又は賦形剤の組み合わせは、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも100%の初期回復効力をもたらす。この実施形態の他の態様において、クロストリジウム毒素活性成分の治療有効濃度は、治療される病気に関連する症状を例えば、最大で10%、最大で20%、最大で30%、最大で40%、最大で50%、最大で60%、最大で70%、最大で80%、最大で90%、又は最大で100%軽減する。
【0027】
「重鎖」は、ボツリヌス神経毒素の重鎖を意味する。これは約100kDaの分子量を有し、H鎖又はHと称し得る。
【0028】
Hcは、H鎖のカルボキシル末端セグメントとほぼ等しいボツリヌス神経毒素のH鎖に由来する断片(約50kDa)、又は無傷のH鎖中のその断片に対応する部分を意味する。Hcは免疫原性であり、高い親和性、運動ニューロンへのシナプス前結合(presynaptic binding)に関与する天然又は野生型ボツリヌス神経毒素の部分を含有すると考えられる。
【0029】
Nは、H鎖のアミノ末端セグメントとほぼ等しいボツリヌス神経毒素のH鎖に由来する断片(約50kDa)、又は無傷のH鎖中のその断片に対応する部分を意味する。HNは、細胞内エンドソーム膜を横切るL鎖の移行に関与する天然又は野生型ボツリヌス神経毒素の部分を含有すると考えられる。
【0030】
「軽鎖」は、クロストリジウム神経毒素の軽鎖を意味する。軽鎖は、約50kDaの分子量を有し、L鎖、L、又はボツリヌス神経毒素のタンパク質分解ドメイン(アミノ酸配列)と称し得る。
【0031】
LHN又はL-HNは、L鎖を含むクロストリジウム神経毒素に由来する断片、又はHNドメインに結合されたその機能的断片を意味する。それらは、Hcドメインを除去又は修飾するためのタンパク質分解により無傷のクロストリジウム神経毒素から得ることができる。
【0032】
「インプラント」は、制御放出(例えば、パルス放出又は連続放出)組成物又は薬物送達システムを意味する。インプラントは、例えば、人体に注入、挿入又は埋め込むことができる。
【0033】
「局所投与」は、医薬品の生物学的効果が望まれる場所である体表面若しくは体内又はその近傍への医薬品の投与を意味し、例えば、筋内若しくは皮内若しくは皮下注射、又は経皮投与などによる。局所投与は、静脈内投与又は経口投与などの全身性投与経路を除く。皮膚投与は、医薬品が患者の皮膚に適用される局所投与の一種である。
【0034】
「修飾ボツリヌス毒素」は、天然ボツリヌス毒素と比較して、少なくとも1つのアミノ酸が欠失し、修飾され、又は置換されたボツリヌス毒素を意味する。更に、修飾ボツリヌス毒素は、組み換えにより産生された神経毒素、又は組み換えにより作製された神経毒素の誘導体若しくは断片であり得る。修飾ボツリヌス毒素は、天然ボツリヌス毒素の少なくとも1つの生物活性、例えば、ボツリヌス毒素受容体に結合する能力、又はニューロンからの神経伝達物質放出を阻害する能力を保持する。修飾ボツリヌス毒素の一例は、1つのボツリヌス毒素血清型(血清型Aなど)由来の軽鎖、及び異なるボツリヌス毒素血清型(血清型Bなど)由来の重鎖を有するボツリヌス毒素である。修飾ボツリヌス毒素の別の例は、P物質などの神経伝達物質に結合されたボツリヌス毒素である。
【0035】
「変異」は、天然に存在するタンパク質又は核酸配列の構造修飾を意味する。例えば、核酸変異の場合、変異は、DNA配列中の1つ以上のヌクレオチドの欠失、付加、又は置換であり得る。タンパク質配列変異の場合、変異は、タンパク質配列中の1つ以上のアミノ酸の欠失、付加、又は置換であり得る。例えば、タンパク質配列を含む特定のアミノ酸を、別のアミノ酸、例えば、アミノ酸アラニン、アスパラギン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、チロシン、又は任意の他の天然若しくは非天然アミノ酸若しくは化学修飾アミノ酸を含む群から選択されるアミノ酸に置換し得る。タンパク質配列の変異は、DNA配列に対する変異の結果であり、DNAが転写され、得られたmRNAが翻訳されたときに変異タンパク質配列を生じる。タンパク質配列の変異はまた、所望の変異を含有するペプチド配列を所望のタンパク質配列に融合させることによって作り出すことが得る。
【0036】
「患者」は、医療又は獣医医療を受けるヒト又は非ヒト対象を意味する。したがって、本明細書に開示される組成物は、例えば哺乳動物などの任意の動物の治療に使用することができる。
【0037】
「末梢投与する」又は「末梢投与」は、皮下(subdermal)、皮内、経皮、又は皮下(subcutaneous)投与を意味するが、筋内投与を除外する。「末梢」とは、皮下の位置であり、内臓部位を除外することを意味する。
【0038】
「医薬組成物」とは、例えばボツリヌス毒素などのクロストリジウム毒素活性成分などの活性医薬成分、及び例えば安定剤又は賦形剤などの少なくとも1つの追加成分を含む組成物を意味する。したがって、医薬組成物は、ヒト患者などの対象への診断的又は治療的投与に好適な製剤である。医薬組成物は、例えば、凍結乾燥若しくは真空乾燥の状態、凍結乾燥若しくは真空乾燥された医薬組成物の再構成後に形成された溶液、又は再構成を必要としない溶液若しくは固体であり得る。
【0039】
「薬理学的に許容可能な賦形剤」は、「薬理学的賦形剤」又は「賦形剤」と同義であり、哺乳動物に投与されたときに実質的に長期的又は永久的な有害な効果を有さず、かつ例えば、安定剤、増量剤、抗凍結剤、抗凍結乾燥剤、添加剤、ビヒクル、担体、希釈剤、又は補助剤などの化合物を包含する、任意の賦形剤を指す。賦形剤は、一般に活性成分と混合され、又は活性成分を希釈又は封入する(enclose)ことが可能であり、固体、半固体、又は液体剤であり得る。クロストリジウム毒素活性成分を含む医薬組成物は、活性成分を薬学的に許容可能な組成物に加工するのを容易にする1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含み得ることも企図される。任意の薬理学的に許容可能な賦形剤がクロストリジウム毒素活性成分と不適合でない限り、薬学的に許容可能な組成物における賦形剤の使用が企図される。薬理学的に許容可能な賦形剤の非限定的な例は、例えば、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(Howard C.Ansel et al.,eds.,Lippincott Williams Wilkins Publishers,7th ed.1999);Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Alfonso R.Gennaro ed.,Lippincott,Williams Wilkins,20th ed.2000);Goodman Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(Joel G.Hardman et al.,eds.,McGraw-Hill Professional,10th ed.2001);及びHandbook of Pharmaceutical Excipients(Raymond C.Rowe et al.,APhA Publications,4th edition 2003)に見出すことができ、それらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0040】
医薬組成物の構成成分は、単一組成物(すなわち、任意の必要な再構成液体を除く全ての構成成分が医薬組成物の初期配合時に存在する)に含まれるか、又は2成分系として、例えば、医薬組成物の初期組成物中に存在しない成分などを含有し得る再構成ビヒクルで再構成された真空乾燥組成物中に含まれ得る。2成分系は、2成分系のうちの第1成分との長期貯蔵には十分に適合しない成分の導入を可能にすることを含む、いくつかの利益を提供することができる。例えば、再構成ビヒクルは、使用期間、例えば1週間の冷蔵貯蔵中に微生物増殖に対して十分な保護を提供するが、毒素を分解する可能性がある2年の冷凍庫貯蔵期間中に存在しない、防腐剤を含んでもよい。ボツリヌス毒素と適合し得ない他の成分又は長期間適合し得ない他の成分は、この方法、すなわち、第2のビヒクル中に(例えば再構成ビヒクル中に)おおよその使用時間で添加することで、導入することができる。医薬組成物はまた、ベンジルアルコール、安息香酸、フェノール、パラベン、及びソルビン酸などの防腐剤を含むことができる。医薬組成物は、例えば、表面活性剤、分散剤、不活性希釈剤、造粒剤及び崩壊剤、結合剤、潤滑剤、防腐剤、ゼラチンなどの生理学的に分解可能な組成物、水性ビヒクル及び溶媒、油性ビヒクル及び溶媒、懸濁化剤、分散剤又は湿潤剤、乳化剤、粘滑剤(demulcent)、緩衝剤、塩、増粘剤、充填剤、酸化防止剤、安定剤などの賦形剤と、薬学的に許容可能な高分子材又は疎水性材と、当該技術分野において既知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれるGenaro,ed.,1985,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.に記載される他の成分と、を含むことができる。
【0041】
「等張化剤」は、等張性を提供するために製剤に含まれる低分子量賦形剤を意味する。トレハロース又はスクロースなどの二糖類、ソルビトール又はマンニトールなどのポリアルコール、グルコースなどの単糖類、及び塩化ナトリウムなどの塩は、等張化剤として作用し得る。
【0042】
「多糖類」は、3つ以上の糖分子モノマーのポリマーを意味する。モノマーは、同一又は異なってもよい。
【0043】
「安定剤(stabilizing agent)」、「安定剤(stabilization agent)」又は「安定剤(stabilizer)」は、不安定な組成物と比較して医薬組成物の効力が増加するように、クロストリジウム毒素活性成分を安定化するように作用する物質を意味する。
【0044】
「安定剤」は、賦形剤を含むことができ、タンパク質及び非タンパク質分子を含むことができる。
【0045】
「治療製剤」は、例えば末梢筋の活動過多(すなわち痙縮)によって特徴付けられる障害若しくは疾患などの障害又は疾患を治療し、それにより緩和するために使用することができる製剤を意味する。
【0046】
本明細書で使用する「TEM」は、「標的化エキソサイトーシス調節因子」又は「再標的化エンドペプチダーゼ」と同義である。一般に、TEMは、クロストリジウム毒素軽鎖由来の酵素ドメイン、クロストリジウム毒素重鎖由来の移行ドメイン、及び標的化ドメインを含む。TEMの標的化ドメインは、天然に存在するクロストリジウム毒素によって利用される天然クロストリジウム毒素受容体以外の受容体に分子を標的化する、改変された(altered)細胞標的化能力を提供する。この再標的化能力は、クロストリジウム毒素の天然に存在する結合ドメインを非クロストリジウム毒素受容体に対する結合活性を有する標的ドメインで置き換えることによって達成される。TEMは、非クロストリジウム毒素受容体に結合するが、TEM/受容体複合体の細胞質への内部移行、小胞膜での孔及び二本鎖分子の形成、酵素ドメインの細胞質への移行、並びに標的細胞のSNARE複合体の成分に対するタンパク質分解効果の発揮を含む、中毒プロセスの全ての他の工程を行う。
【0047】
「局所投与」は、神経毒素の全身投与を除外する。言い換えれば、従来の治療的経皮方法とは異なり、ボツリヌス毒素の局所投与は、神経毒素の大部分が患者の循環系に入るなど、有意な量をもたらすものではない。
【0048】
「治療する」とは、例えば、皺、痙縮、鬱病、疼痛(例えば頭痛など)、膀胱の過活動などの症状又は障害のうちの少なくとも1つの症状を、一時的に若しくは持続的に緩和する(又は排除する)ことを意味する。
【0049】
「バリアント」は、野生型ボツリヌス毒素に対する少なくとも1つのアミノ酸の置換、修飾、付加、又は欠失によって修飾された野生型ボツリヌス毒素血清型A、B、C、D、E、F又はGなどのクロストリジウム神経毒素を意味し、これは、標的細胞によって認識され、標的細胞によって内部移行され、標的細胞中のSNARE(SNAP(可溶性NSF接着タンパク質)受容体)タンパク質を触媒的に開裂する。
【0050】
バリアント神経毒素成分の例は、置換、修飾、欠失、及び/又は付加された1つ以上のアミノ酸を有するボツリヌス毒素のバリアント軽鎖を含み得る。このバリアント軽鎖は、エキソサイトーシス、例えば、神経伝達物質小胞(neurotransmitter vesicle)の放出を防げる同じ又はより良好な能力を有し得る。更に、バリアントの生物学的効果は、親化学物質(chemical entity)と比較して低下し得る。例えば、除去されたアミノ酸配列を有するボツリヌス毒素型Aのバリアント軽鎖は、親(又は天然)ボツリヌス毒素A型軽鎖の生物学的持続性よりも短い生物学的持続性を有し得る。
医薬組成物
【0051】
本発明の特定の実施形態は、ボツリヌス毒素、二糖類、界面活性剤、及び酸化防止剤などのクロストリジウム毒素活性成分を含む(若しくはそれからなる、又はそれから本質的になる)医薬組成物を含む。
【0052】
本医薬組成物の態様は、一部において、クロストリジウム毒素活性成分を提供する。本明細書で使用する場合、用語「クロストリジウム毒素活性成分」は、治療有効濃度のクロストリジウム毒素活性成分、例えば、クロストリジウム毒素複合体、クロストリジウム毒素、修飾クロストリジウム毒素、又は再標的化クロストリジウム毒素などを指す。本明細書で使用する場合、用語「治療有効濃度」は、「治療有効量」、「有効量」、「有効用量」、及び「治療有効用量」と同義であり、所望の治療効果を達成するために必要なクロストリジウム毒素活性成分の最小用量を指し、治療される病気に関連する症状を低減するのに十分な用量を含む。この実施形態の態様において、クロストリジウム毒素活性成分の治療有効濃度は、治療される病気に関連する症状を、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも100%軽減する。この実施形態の他の態様において、クロストリジウム毒素活性成分の治療有効濃度は、治療される病気に関連する症状を、例えば、最大で10%、最大で20%、最大で30%、最大で40%、最大で50%、最大で60%、最大で70%、最大で80%、最大で90%、又は最大で100%軽減する。
【0053】
任意の量のクロストリジウム毒素活性成分を本明細書に開示されるクロストリジウム毒素医薬組成物の製剤化において添加することができ、但し、治療有効量のクロストリジウム毒素活性成分が回収可能であることを条件とすることが企図される。この実施形態の態様において、製剤に添加されるクロストリジウム毒素活性成分の量は、少なくとも0.1U/ml、少なくとも1.0U/ml、少なくとも10U/ml、少なくとも50U/ml、少なくとも100U/ml、少なくとも200U/ml、又は少なくとも1000U/mlである。この実施形態の他の態様において、製剤に添加されるクロストリジウム毒素活性成分の量は、最大で0.1U/ml、最大で1.0U/ml、最大で10U/ml、最大で50U/ml、最大で100U/ml、最大で200U/ml、又は最大で1000U/mlである。この実施形態の更に他の態様において、製剤に添加されるクロストリジウム毒素活性成分の量は、約0.1U/ml~約1000U/ml、又は約1.0U/ml~約1000U/mlである。この実施形態の更に他の態様において、製剤に添加されるクロストリジウム毒素活性成分の量は、約0.001U/ml~約100U/ml、約0.01U/ml~約100U/ml、約0.1U/ml~約100U/ml、又は約1.0U/ml~約100U/mlである。本明細書で使用する場合、用語「単位」又は「U」はLD50用量を指し、これは、クロストリジウム毒素、クロストリジウム毒素複合体、又は修飾クロストリジウム毒素を注射したマウスの50%を殺したクロストリジウム毒素、クロストリジウム毒素複合体、又は修飾クロストリジウム毒素の量として定義される。本明細書で使用する場合、用語「約」は、記載の項目、数字、パーセンテージ、又は期間の値を定量化する場合、記載の項目、パーセンテージ、パラメータ、又は期間の値の±10%の範囲を指す。
【0054】
この実施形態の他の態様において、製剤に添加されるクロストリジウム毒素活性成分の量は、少なくとも1.0pg、少なくとも10pg、少なくとも100pg、少なくとも1.0ng、少なくとも10ng、少なくとも100ng、少なくとも1.0μg、少なくとも10μg、少なくとも100μg、又は少なくとも1.0mgである。この実施形態の更に他の態様において、製剤に添加されるクロストリジウム毒素活性成分の量は、最大で1.0pg、最大で10pg、最大で100pg、最大で1.0ng、最大で10ng、最大で100ng、最大で1.0μg、最大で10μg、最大で100μg、又は最大で1.0mgである。この実施形態の更に他の態様において、製剤に添加されるクロストリジウム毒素活性成分の量は、約1.0pg~約10μg、約10pg~約10μg、約100pg~約10μg、約1.0ng~約10μg、約10ng~約10μg、又は約100ng~約10μgである。この実施形態の更に他の態様において、製剤に添加されるクロストリジウム毒素活性成分の量は、約1.0pg~約1.0μg、約10pg~約1.0μg、約100pg~約1.0μg、約1.0ng~約1.0μg、約10ng~約1.0μg、又は約100ng~約1.0μgである。この実施形態の更なる態様において、製剤に添加されるクロストリジウム毒素活性成分の量は、約1.0pg~約5.0μg、約10pg~約5.0μg、約100pg~約5.0μg、約1.0ng~約5.0μg、約10ng~約5.0μg、又は約100ng~約5.0μgである。この実施形態の更なる態様において、製剤に添加されるクロストリジウム毒素活性成分の量は、約1.0pg~約10μg、約10pg~約10μg、約100pg~約10μg、約1.0ng~約10μg、約10ng~約10μg、又は約100ng~約10μgである。
【0055】
この実施形態の態様において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/G、TeNT、BaNT、又はBuNTを含む。別の実施形態において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、クロストリジウム毒素活性成分としてクロストリジウム毒素バリアントを含む。この実施形態の態様において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、天然に存在するクロストリジウム毒素バリアント又は非天然のクロストリジウム毒素バリアントを含む。この実施形態の他の態様において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、BoNT/Aバリアント、BoNT/Bバリアント、BoNT/C1バリアント、BoNT/Dバリアント、BoNT/Eバリアント、BoNT/Fバリアント、BoNT/Gバリアント、TeNTバリアント、BaNTバリアント、又はBuNTバリアントを含み、バリアントは天然に存在するバリアント又は非天然のバリアントのいずれかである。
【0056】
本医薬組成物の態様は、一部において、クロストリジウム毒素活性成分としてクロストリジウム毒素複合体を提供する。本明細書で使用する場合、用語「クロストリジウム毒素複合体」は、クロストリジウム毒素及び関連するNAPを含む複合体、例えば、ボツリヌス毒素複合体、テタヌス(Tetanus)毒素複合体、バラティ(Baratii)毒素複合体、及びブチリカム(Butyricum)毒素複合体などを指す。クロストリジウム毒素複合体の非限定的な例には、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)によって生成されるもの、例えば、900kDa BoNT/A複合体、500kDa BoNT/A複合体、300kDa BoNT/A複合体、500kDa BoNT/B複合体、500kDa BoNT/C1複合体、500kDa BoNT/D複合体、300kDa BoNT/D複合体、300kDa BoNT/E複合体、及び300kDa BoNT/F複合体が含まれる。クロストリジウム毒素複合体は、Schantz,supra,(1992)、Hui Xiangら,Animal Product Free System and Process for Purifying a Botulinum Toxin、米国特許第7,354,740号に記載の方法を使用して精製することができ、それらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。クロストリジウム毒素複合体は、例えば、List Biological Laboratories,Inc.(キャンベル、カリフォルニア州)、the Centre for Applied Microbiology and Research(ポートンダウン、イギリス)、Wako(大阪、日本)、及びSigma Chemicals(セントルイス、ミズーリ州)から入手することができる。
【0057】
本医薬組成物の態様は、一部において、非タンパク質賦形剤を提供する。本明細書で使用する場合、用語「非タンパク質賦形剤」は、少なくとも15個のアミノ酸を含むポリペプチドではない任意の賦形剤を指す。任意の非タンパク質賦形剤が本明細書に開示されるクロストリジウム毒素医薬組成物を製剤化するのに有用であり、但し、治療有効量のクロストリジウム毒素活性成分がこの非タンパク質賦形剤を使用して回収されることを条件とすることが企図される。
【0058】
本医薬組成物の態様は、一部において、糖を提供する。本明細書で使用する場合、用語「糖」は、1~10個の単糖単位、例えば、単糖類、二糖類、三糖類、及び4~10の単糖単位を含むオリゴ糖を含む化合物を指す。任意の糖が本明細書に開示されるクロストリジウム毒素医薬組成物を製剤化するのに有用であり、但し、治療有効量のクロストリジウム毒素活性成分がこの糖を使用して回収されることを条件とすることが企図される。単糖類は、アルドース、ジアルドース、アルドケトース、ケトース及びジケトース、並びに環状形態、デオキシ糖及びアミノ糖、並びにそれらの誘導体を含む、3個以上の炭素原子を有するポリヒドロキシアルデヒド又はポリヒドロキシケトンである。単糖類には、グリセルアルデヒド及びジヒドロキシアセトンなどのトリオース;エリトロース、エリトルロース及びトレオースなどのテトロース;アラビノース、リキソース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロースなどのペントース;アロース、アルトロース、フルクトース、フコース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、マンノース、プシコース、ラムノース、ソルボース、タガトース、タロース及びトレハロースなどのヘキソース;セドヘプツロース及びマンノヘプツロースなどのヘプトース;オクツロース及び2-ケト-3-デオキシ-マンノ-オクトネートなどのオクトース;シアロースなどのノノース;及びデコースが含まれる。オリゴ糖は、少なくとも2つの単糖単位がグリコシド結合によって結合されている化合物である。単位の数によると、オリゴ糖は、二糖類、三糖類、四糖類、五糖類、六糖類、七糖類、八糖類、九糖類、十糖類などと称される。オリゴ糖は、非分枝状、分枝状、又は環状であり得る。一般的な二糖類には、限定するものではないが、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、ゲンチオビオース、コージビオース、ラミナリビオース、マンノビオース、メリビオース、ニゲロース、ルチノース、及びキシロビオースが含まれる。一般的な三糖類には、限定するものではないが、ラフィノース、アカルボース、マルトトリオース、及びメレジトースが含まれる。糖賦形剤の特定の使用の他の非限定的な例は、例えば、Ansel,supra,(1999)、Gennaro,supra,(2000)、Hardman,supra,(2001)、及びRowe,supra,(2003)に見出すことができ、それらの各々は照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0059】
一実施形態において、クロストリジウム毒素医薬組成物は糖を含む。この実施形態の態様において、クロストリジウム毒素医薬組成物は単糖類を含む。この実施形態の他の態様において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、二糖類、三糖類、四糖類、五糖類、六糖類、七糖類、八糖類、九糖類、又は十糖類を含む。この実施形態の更に他の態様において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、2~10個の単糖単位を含むオリゴ糖を含む。
【0060】
任意の量の糖が本明細書に開示されるクロストリジウム毒素医薬組成物を製剤化するのに有用であり、治療的有効量のクロストリジウム毒素活性成分がこの糖量を使用して回収されることを条件とすることが企図される。この実施形態の態様において、製剤に添加される糖の量は、約0.1%(w/w)、約0.5%(w/w)、約1.0%(w/w)、約1.5%(w/w)、約2.0%(w/w)、約2.5%(w/w)、約3.0%(w/w)、約3.5%(w/w)、約4.0%(w/w)、約4.5%(w/w)、約5.0%(w/w)、約5.5%(w/w)、約6.0%(w/w)、約6.5%(w/w)、約7.0%(w/w)、約7.5%(w/w)、約8.0%(w/w)、約8.5%(w/w)、約9.0%(w/w)、約9.5%(w/w)、約10%(w/w)、約15%(w/w)、約20%(w/w)、約25%(w/w)、約30%(w/w)、又は約35%(w/w)である。この実施形態の他の態様において、製剤に添加される糖の量は、少なくとも0.1%(w/w)、少なくとも0.5%(w/w)、少なくとも1.0%(w/w)、少なくとも1.5%(w/w)、少なくとも2.0%(w/w)、少なくとも2.5%(w/w)、少なくとも3.0%(w/w)、少なくとも3.5%(w/w)、少なくとも4.0%(w/w)、少なくとも4.5%(w/w)、少なくとも5.0%(w/w)、少なくとも5.5%(w/w)、少なくとも6.0%(w/w)、少なくとも6.5%(w/w)、少なくとも7.0%(w/w)、少なくとも7.5%(w/w)、少なくとも8.0%(w/w)、少なくとも8.5%(w/w)、少なくとも9.0%(w/w)、少なくとも9.5%(w/w)、少なくとも10%(w/w)、少なくとも15%(w/w)、少なくとも20%(w/w)、少なくとも25%(w/w)、少なくとも30%(w/w)、又は少なくとも35%(w/w)である。この実施形態の更に他の態様において、製剤に添加される糖の量は、最大で0.1%(w/w)、最大で0.5%(w/w)、最大で1.0%(w/w)、最大で1.5%(w/w)、最大で2.0%(w/w)、最大で2.5%(w/w)、最大で3.0%(w/w)、最大で3.5%(w/w)、最大で4.0%(w/w)、最大で4.5%(w/w)、最大で5.0%(w/w)、最大で5.5%(w/w)、最大で6.0%(w/w)、最大で6.5%(w/w)、最大で7.0%(w/w)、最大で7.5%(w/w)、最大で8.0%(w/w)、最大で8.5%(w/w)、最大で9.0%(w/w)、最大で9.5%(w/w)、最大で10%(w/w)、最大で15%(w/w)、最大で20%(w/w)、最大で25%(w/w)、最大で30%(w/w)、又は最大35%(w/w)である。
【0061】
一実施形態において、本クロストリジウム毒素医薬組成物は二糖類を含む。一般的な二糖類には、限定するものではないが、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、ゲンチオビオース、コージビオース、ラミナリビオース、マンノビオース、メリビオース、ニゲロース、ルチノース、及びキシロビオースが含まれる。この実施形態の態様において、クロストリジウム毒素医薬組成物はスクロースを含む。特定の一実施形態において、クロストリジウム毒素医薬組成物はトレハロースを含む。この実施形態の態様において、製剤に添加される製剤に添加される二糖類の量は、約0.1%(w/w)、約0.5%(w/w)、約1.0%(w/w)、約1.5%(w/w)、約2.0%(w/w)、約2.5%(w/w)、約3.0%(w/w)、約3.5%(w/w)、約4.0%(w/w)、約4.5%(w/w)、約5.0%(w/w)、約5.5%(w/w)、約6.0%(w/w)、約6.5%(w/w)、約7.0%(w/w)、約7.5%(w/w)、約8.0%(w/w)、約8.5%(w/w)、約9.0%(w/w)、約9.5%(w/w)、約10%(w/w)、約15%(w/w)、約20%(w/w)、約25%(w/w)、約30%(w/w)、又は約35%(w/w)である。
【0062】
本医薬組成物の態様は、一部において、界面活性剤を提供する。本明細書で使用する場合、用語「界面活性剤」は、天然又は合成両親媒性化合物を指す。界面活性剤は、非イオン性、両性イオン性、又はイオン性であり得る。任意の界面活性剤が本明細書に開示されるクロストリジウム毒素医薬組成物を製剤化するのに有用であり、但し、治療的有効量のクロストリジウム毒素活性成分がこの界面活性剤量を使用して回収されることを条件とすることが企図される。界面活性剤の非限定的な例には、ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)20)、ポリソルベート40(TWEEN(登録商標)40)、ポリソルベート60(TWEEN(登録商標)60)、ポリソルベート61(TWEEN(登録商標)61)、ポリソルベート65(TWEEN(登録商標)65)、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)、及びポリソルベート81(TWEEN(登録商標)81)などのポリソルベート;ポロキサマー124(PLURONIC(登録商標)L44)、ポロキサマー181(PLURONIC(登録商標)L61)、ポロキサマー182(PLURONIC(登録商標)L62)、ポロキサマー184(PLURONIC(登録商標)L64)、ポロキサマー188(PLURONIC(登録商標)F68)、ポロキサマー237(PLURONIC(登録商標)F87)、ポロキサマー338(PLURONIC(登録商標)L108)、ポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127)、BRIJ(登録商標)30及びBRIJ(登録商標)35などのポリオキシエチレングリコールドデシルエーテルなどのポロキサマー(ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー);2-ドデコキシエタノール(LUBROL(登録商標)-PX);ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(TRITON(登録商標)X-100);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ソルトール(solutol)HS15;3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS);3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSO);モノラウリン酸スクロース;及びコール酸ナトリウムが含まれる。界面活性剤賦形剤の他の非限定的な例は、例えば、Ansel,supra,(1999);Gennaro,supra,(2000);Hardman,supra,(2001);及びRowe,supra,(2003)に見出すことができ、それらの各々は照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0063】
したがって、一実施形態において、クロストリジウム毒素医薬組成物は界面活性剤を含む。この実施形態の態様において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、ポリソルベート、ポロキサマー、ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、2-ドデコキシエタノール、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ドデシル硫酸ナトリウム、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート、モノラウリン酸スクロース、又はコール酸ナトリウムを含む。
【0064】
任意の量の界面活性剤が本明細書に開示されるクロストリジウム毒素医薬組成物を製剤化するのに有用であり、但し、治療的有効量のクロストリジウム毒素活性成分がこの界面活性剤量を使用して回収されることを条件とすることが企図される。この実施形態の態様において、製剤に添加される界面活性剤の量は、約0.01%(w/w)、約0.02%(w/w)、約0.03%(w/w)、約0.04%(w/w)、約0.05%(w/w)、約0.06%(w/w)、約0.07%(w/w)、約0.08%(w/w)、約0.09%(w/w)、約0.1%(w/w)、約0.5%(w/w)、約1.0%(w/w)、約1.5%(w/w)、約2.0%(w/w)、約2.5%(w/w)、約3.0%(w/w)、約3.5%(w/w)、約4.0%(w/w)、約4.5%(w/w)、約5.0%(w/w)、約5.5%(w/w)、約6.0%(w/w)、約6.5%(w/w)、約7.0%(w/w)、約7.5%(w/w)、約8.0%(w/w)、約8.5%(w/w)、約9.0%(w/w)、約9.5%(w/w)、約10%(w/w)、約15%(w/w)、約20%(w/w)、約25%(w/w)、約30%(w/w)、又は約35%(w/w)である。この実施形態の他の態様において、製剤に添加される界面活性剤の量は、少なくとも0.01%(w/w)、少なくとも0.02%(w/w)、少なくとも0.03%(w/w)、少なくとも0.04%(w/w)、少なくとも0.05%(w/w)、少なくとも0.06%(w/w)、少なくとも0.07%(w/w)、少なくとも0.08%(w/w)、少なくとも0.09%(w/w)、少なくとも0.1%(w/w)、少なくとも0.5%(w/w)、少なくとも1.0%(w/w)、少なくとも1.5%(w/w)、少なくとも2.0%(w/w)、少なくとも2.5%(w/w)、少なくとも3.0%(w/w)、少なくとも3.5%(w/w)、少なくとも4.0%(w/w)、少なくとも4.5%(w/w)、少なくとも5.0%(w/w)、少なくとも5.5%(w/w)、少なくとも6.0%(w/w)、少なくとも6.5%(w/w)、少なくとも7.0%(w/w)、少なくとも7.5%(w/w)、少なくとも8.0%(w/w)、少なくとも8.5%(w/w)、少なくとも9.0%(w/w)、少なくとも9.5%(w/w)、少なくとも10%(w/w)、少なくとも15%(w/w)、少なくとも20%(w/w)、少なくとも25%(w/w)、少なくとも30%(w/w)、又は少なくとも35%(w/w)である。この実施形態の更に他の態様において、製剤に添加される界面活性剤の量は、最大で0.01%(w/w)、最大で0.02%(w/w)、最大で0.03%(w/w)、最大で0.04%(w/w)、最大で0.05%(w/w)、最大で0.06%(w/w)、最大で0.07%(w/w)、最大で0.08%(w/w)、最大で0.09%(w/w)、最大で0.1%(w/w)、最大で0.5%(w/w)、最大で1.0%(w/w)、最大で1.5%(w/w)、最大で2.0%(w/w)、最大で2.5%(w/w)、最大で3.0%(w/w)、最大で3.5%(w/w)、最大で4.0%(w/w)、最大で4.5%(w/w)、最大で5.0%(w/w)、最大で5.5%(w/w)、最大で6.0%(w/w)、最大で6.5%(w/w)、最大で7.0%(w/w)、最大で7.5%(w/w)、最大で8.0%(w/w)、最大で8.5%(w/w)、最大で9.0%(w/w)、最大で9.5%(w/w)、最大で10.0%(w/w)、最大で15%(w/w)、最大で20%(w/w)、最大で25%(w/w)、最大で30%(w/w)、又は最大で35%(w/w)である。
【0065】
いくつかの実施形態において、クロストリジウム毒素医薬組成物はポロキサマーを含む。本医薬組成物と共に使用することができるポロキサマーには、ポロキサマー124(PLURONIC(登録商標)L44)、ポロキサマー181(PLURONIC(登録商標)L61)、ポロキサマー182(PLURONIC(登録商標)L62)、ポロキサマー184(PLURONIC(登録商標)L64)、ポロキサマー188(PLURONIC(登録商標)L68)、ポロキサマー237(PLURONIC(登録商標)F87)、ポロキサマー338(PLURONIC(登録商標)L108)、ポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127)が含まれる。いくつかの実施形態において、ポロキサマー188はより有利であり得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、クロストリジウム毒素医薬組成物はポリソルベートを含む。本医薬組成物と共に使用することができるポリソルベートには、ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)20)、ポリソルベート40(TWEEN(登録商標)40)、ポリソルベート60(TWEEN(登録商標)60)、ポリソルベート61(TWEEN(登録商標)61)、ポリソルベート65(TWEEN(登録商標)65)、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)、及びポリソルベート81(TWEEN(登録商標)81)が含まれる。いくつかの実施形態において、ポリソルベート20は、いくつかの他のポリソルベートよりも有利であり得る。
【0067】
本医薬組成物の態様は、一部において、少なくとも酸化防止剤を提供する。酸化防止剤の非限定的な例には、限定するものではないが、メチオニン、システイン、N-アセチル-システイン(NAC)、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ビタミンE及びトロロックスCを含む類似体;EDTA(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩)、DPTA(ジエチレントリアミン五酢酸)又はDPTA-ビスアミド、カルシウムDTPA、及びCaNaDPTA-ビスアミドなどのキレート剤;又はこれらの組み合わせが含まれる。この実施形態の態様において、製剤に添加される酸化防止剤の量は、約0.01%(w/w)~約0.10%(w/w)の範囲である。
【0068】
本明細書に開示されるクロストリジウム毒素医薬組成物は、限定するものではないが、他の薬学的に許容可能な成分(又は医薬成分)を任意選択で含むことができることが更に企図され、成分には、限定するものではないが緩衝剤、防腐剤、等張化調整剤、塩、酸化防止剤、浸透圧調節剤、乳化剤、甘味剤、又は香味剤などが含まれる。得られる製剤が薬学的に許容可能であることを条件に、pHを調整するための様々な緩衝剤及び手段を使用して、本明細書に開示される医薬組成物を調製することができる。そのような緩衝剤には、限定するものではないが、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、中性緩衝生理食塩水、及びリン酸緩衝生理食塩水が含まれる。酸又は塩基を使用して、必要に応じて医薬組成物のpHを調整できることが理解される。任意の緩衝化pHレベルがクロストリジウム毒素医薬組成物を製剤化するのに有用であり得、但し、治療有効量のクロストリジウム毒素活性成分がこの有効pHレベルを使用して回収されることを条件とすることが企図される。この実施形態の一態様において、有効pHレベルは、少なくとも約pH5.0、少なくとも約pH5.5、少なくとも約pH6.0、少なくとも約pH6.5、少なくとも約pH7.0、又は約pH約7.5である。この実施形態の別の態様において、有効pHレベルは、最大で約pH約pH5.0、最大で約pH約pH5.5、最大で約pH6.0、最大で約pH6.5、最も約pH7.0、又は最大で約pH7.5.である。この実施形態の更に別の態様において、有効pHレベルは約pH5.0~約pH8.0であり、有効pHレベルは約pH5.0~約pH7.0であり、有効pHレベルは約pH5.0~約pH6.0であり、有効pHレベルは約pH5.5~約pH8.0であり、有効pHレベルは約pH5.5~約pH7.0であり、有効pHレベルは約pH5.5~約pH5.0であり、有効pHレベルは約pH5.5~約pH7.5であり、有効pHレベルは約pH5.5~約pH6.5である。
【0069】
本明細書に開示される医薬組成物は、再構成されたとき又は注射時に約5~8のpHを有することができる。ある特定の実施形態において、組成物は、8未満のpH、例えば、7.9、若しくは7.8、若しくは7.7、若しくは7.6、若しくは7.5、若しくは7.4、若しくは7.3、若しくは7.2、若しくは7.1、若しくは7.0、若しくは6.9、若しくは6.8、若しくは6.7、若しくは6.6、若しくは6.5、若しくは6.4、若しくは6.3、若しくは6.2、若しくは6.1、若しくは6.0、若しくは5.9、若しくは5.8、若しくは5.7、若しくは5.6、若しくは5.5、若しくは5.4、若しくは5.3、若しくは5.2、若しくは5.1などのpHを有する。いくつかの実施形態において、pHは5~7の範囲である。
【0070】
任意の濃度の緩衝剤がクロストリジウム毒素医薬組成物を製剤化するのに有用であり得、但し、治療的有効量のクロストリジウム毒素活性成分がこの有効濃度の緩衝剤を使用して回収されることを条件とすることが企図される。この実施形態の態様において、緩衝剤の有効濃度は、少なくとも0.1mM、少なくとも0.2mM、少なくとも0.3mM、少なくとも0.4mM、少なくとも0.5mM、少なくとも0.6mM、少なくとも0.7mM、少なくとも0.8mM、又は少なくとも0.9mMである。この実施形態の他の態様において、緩衝剤の有効濃度は、少なくとも1.0mM、少なくとも2.0mM、少なくとも3.0mM、少なくとも4.0mM、少なくとも5.0mM、少なくとも6.0mM、少なくとも7.0mM、少なくとも8.0mM、又は少なくとも9.0mMである。この実施形態の更に他の態様において、緩衝剤の有効濃度は、少なくとも10mM、少なくとも20mM、少なくとも30mM、少なくとも40mM、少なくとも50mM、少なくとも60mM、少なくとも70mM、少なくとも80mM、又は少なくとも90mMである。この実施形態の更に他の態様において、緩衝剤の有効濃度は、少なくとも100mM、少なくとも200mM、少なくとも300mM、少なくとも400mM、少なくとも500mM、少なくとも600mM、少なくとも700mM、少なくとも800mM、又は少なくとも900mMである。この実施形態の更なる態様において、緩衝剤の有効濃度は、最大で0.1mM、最大で0.2mM、最大で0.3mM、最大で0.4mM、最大で0.5mM、最大で0.6mM、最大で0.7mM、最大で0.8mM、又は最大0.9mMである。この実施形態の更に他の態様において、緩衝剤の有効濃度は、最大で1.0mM、最大で2.0mM、最大で3.0mM、最大で4.0mM、最大で5.0mM、最大で6.0mM、最大で7.0mM、最大で8.0mM、又は最大9.0mMである。この実施形態の更に他の態様において、緩衝剤の有効濃度は、最大で10mM、最大で20mM、最大で30mM、最大で40mM、最大で50mM、最大で60mM、最大で70mM、最大で80mM、又は最大90mMである。この実施形態の更に他の態様において、緩衝剤の有効濃度は、最大で100mM、最大で200mM、最大で300mM、最大で400mM、最大で500mM、最大で600mM、最大で700mM、最大で800mM、又は最大900mMである。この実施形態のなお更なる態様において、緩衝剤の有効濃度は、約0.1mM~約900mM、0.1mM~約500mM、0.1mM~約100mM、0.1mM~約90mM、0.1mM~約50mM、1.0mM~約900mM、1.0mM~約500mM、1.0mM~約100mM、1.0mM~約90mM、又は1.0mM~約50mMである。
【0071】
本発明の実施形態は、ボツリヌス毒素血清型A、B、C1D、E、F及びGからなる群から選択されるボツリヌス毒素血清型などの複数のボツリヌス毒素血清型を含む組成物を用いて実施することができる。ある特定の実施形態において、精製したボツリヌス毒素を使用することができる。他の実施形態において、修飾ボツリヌス毒素を使用し得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、患者への投与前に生理食塩水又は水などの好適な液体で再構成することができる、凍結乾燥(lyophilized)(すなわち凍結乾燥(freeze dried))又は真空乾燥粉末として製剤化することができる。代替の実施形態において、医薬組成物は、水溶液又は懸濁液として製剤化することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、固体クロストリジウム毒素医薬組成物は、ボツリヌス毒素、等張化剤、ポロキサマー、及び/又はポリソルベート、並びに酸化防止剤を含む。いくつかの実施形態において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、ボツリヌス毒素を含む。いくつかの実施形態において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、トレハロースを含む。いくつかの実施形態において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、ポロキサマー188又はポリソルベート20を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、EDTA又はEDTA類似体を含む。代替の実施形態において、組成物は、メチオニン及び/又はNACを含む。これらの代替の実施形態の態様において、組成物は、EDTA又はEDTA類似体を更に含む。いくつかの実施形態において、組成物は、緩衝剤を更に含む。一実施形態において、組成物は、ヒスチジン緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、トレハロース、ポロキサマー、及びメチオニンの相対重量は、それぞれ以下の範囲内:1~10%、0.5~5%、及び0.1~0.3%である。いくつかの実施形態において、トレハロース、ポリソルベート、及びメチオニンの相対重量は、それぞれ以下の範囲内:1~10%、0.02%~0.06%、及び0.1~0.3%である。いくつかの実施形態において、EDTA又はEDTA類似体の相対重量は、約0.01~0.10%である。いくつかの実施形態において、NACの相対重量は、0.01~0.5%の範囲である。
【0074】
これらの実施形態の態様において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、固体(すなわち、凍結乾燥又は真空乾燥)組成物として製剤化される。いくつかの実施形態において、固体医薬組成物は、0.01~0.05%の相対重量でNACを含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、EDTA又はEDTA類似体を更に含む。代替の実施形態において、固体医薬組成物は、メチオニン及びEDTA又はEDTA類似体を含む。
【0075】
これらの実施形態の代替の態様において、クロストリジウム毒素医薬組成物は、液体として製剤化される。いくつかの実施形態において、液体医薬組成物は、0.1~0.5%の相対重量でNACを含む。いくつかの実施形態において、液体医薬組成物は、NAC及びEDTA又はEDTA類似体を含む。いくつかの実施形態において、液体医薬組成物は、ヒスチジン緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、液体医薬組成物は、5~7のpHを有する。
【0076】
治療方法
実施形態において、本発明は、疾患、障害、状態などを治療する方法であって、本発明の医薬製剤を、それを必要とする対象に、患者の機能を改善するのに十分な量で投与する工程を含む方法を提供する。ある特定の実施形態において、疾患は、神経筋性質のものであり、例えば筋肉及びその神経制御に影響を及ぼす疾患など、例えば過活動膀胱などである。ある特定の実施形態は、例えば、頭痛、又は背部痛、又は筋肉痛の治療などの疼痛の治療に関する。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、例えば、鬱病、不安などを含む精神障害の治療を包含する。
【0077】
本発明の組成物及び方法は、例えば、アカラシア、裂肛、アニスムス、眼瞼痙攣、脳性麻痺、頸部ジストニア、頸部痙攣、頚椎性頭痛、片側顔面痙攣、汗疱状湿疹、嚥下障害、発音障害、食道運動障害、食道筋輪(esophageal muscular ring)、内斜視(乳児内)、アイリフト、顔面ミオキミア、歩行障害(特発性トウ-ウォーキング)、全身性ジストニア、片側顔面痙攣、過度顔皺線(hyperfunctional facial line)(眉間、額、目尻の皺、口の下降角)、多汗症、失禁(特発性又は神経性)、薬物乱用頭痛、偏頭痛、ミオクローヌス、例えば咬筋などを含む筋肉量又は活動の低下、筋・筋膜性疼痛症候群、閉塞性尿路症、分割膵膵炎、パーキンソン病、恥骨直腸筋症候群、手術瘢痕張力(surgical scar tension)の低下、唾液分泌過多、唾液腺粘液腫(sialocele)、第VI脳神経麻痺(sixth nerve palsy)、痙縮、言語/発音障害、斜視、手術補助(surgery adjunct)(眼)、遅発性ジスキネジア、顎関節障害、緊張性頭痛、胸郭出口症候群、捻転ジストニア、斜頸、トゥレット症候群、震え、むち打ち損傷関連頸痛、疼痛、痒み、炎症、アレルギー、癌及び良性腫瘍、発熱、肥満、感染疾患、ウイルス及び細菌、高血圧症、心不整脈、血管痙攣、アテローム性動脈硬化症、内皮過形成、静脈血栓症、静脈瘤、アフタ性口内炎、唾液分泌過多、顎関節症候群、多汗症、腋臭症、ざ瘡(acne)、酒さ、色素沈着過剰、肥厚性瘢痕、ケロイド、皮膚硬結(calluses)及び皮膚硬化(corns)、皮膚の皺、過剰皮脂生成、乾癬、皮膚炎、アレルギー性鼻炎、鼻詰まり、後鼻漏、くしゃみ、耳垢、漿液性及び化膿性中耳炎、扁桃肥大及び腺様増殖症、耳鳴り、浮動性目まい、回転性目まい、嗄声、咳、睡眠時無呼吸症、いびき、緑内障、結膜炎、ブドウ膜炎、斜視、バセドウ病、多毛症、脱毛、喘息、気管支炎、肺気腫、粘液産生、胸膜炎、凝固障害、骨髄増殖障害、好酸球、好中球、マクロファージ及びリンパ球を伴う障害、免疫寛容及び移植、自己免疫障害、嚥下障害、胃酸逆流、食道裂孔ヘルニア、胃炎及び胃酸過多、下痢及び便秘、痔疾、尿失禁、前立腺肥大、持続勃起症及びペロニー病、副睾丸炎、避妊、月経痛、早産の防止、子宮内膜症及び子宮筋腫、関節炎、変形性関節症、リウマチ、滑液包炎、腱鞘炎、腱滑膜炎(tenosynovitis)、線維筋痛症、発作性障害、痙縮、頭痛、並びに神経痛の治療、症状の軽減、及び/又は予防に有用であり得る。
【0078】
ある特定の実施形態において、患者は、任意の90日間にわたって投与される最大360Uのボツリヌス毒素に制限される。
神経/筋肉状態の治療
【0079】
一実施形態において、神経筋疾患は、多汗症である。多汗症を患っている対象は、本発明の医薬製剤の治療当たり、例えば、腋窩当たり約59U、腋窩当たり約58U、又は腋窩当たり約57U、又は腋窩当たり約56U、又は腋窩当たり約55U、又は腋窩当たり約54U、又は腋窩当たり約53U、又は腋窩当たり約52U、又は腋窩当たり約51U、又は腋窩当たり約50U、又は腋窩当たり約49U、又は腋窩当たり約48U、又は腋窩当たり約47U、又は腋窩当たり約46U、又は腋窩当たり約45U、又は腋窩当たり約44U、又は腋窩当たり約43U、又は腋窩当たり約42U、又は腋窩当たり約41U、又は腋窩当たり約40U、又は腋窩当たり約39U、又は腋窩当たり約38U、又は腋窩当たり約37U、又は腋窩当たり約36U以下を受容する。一実施形態において、合計50Uを、約1~2cm離れた10~15部位に皮内注射する。
【0080】
一実施形態において、神経筋疾患は、片側顔面痙攣である。片側顔面痙攣を患っている対象は、例えば、本発明の医薬製剤の治療当たり約1.5~15Uを受容する。更なる例において、対象は、片側顔面痙攣を有する患者に投与する治療当たり約1.5~3U、1.5~5U、1.5~7U、1.5~10U、1.5~12U、1.5~15U、5~10U、5~15U、又は10~15Uを受容する。なお更なる例において、対象は、片側顔面痙攣を有する患者に投与する治療当たり約1.5U、約2U、約2.5U、約3U、約3.5U、約4U、約4.5U、約5U、約5.5U、約6U、約6.5U、約7U、約7.5U、約8U、約8.5U、約9U、約9.5U、約10U、約10.5U、約11U、約11.5U、約12U、約12.5U、約13U、約13.5U、約14U、約14.5U、又は約15Uを受容する。治療当たり15Uより大きい投与量をまた、治療反応を達成するために片側顔面痙攣を有する患者に投与してもよい。治療活動(treatment session)は、複数の治療を含むことができる。
【0081】
一実施形態において、神経筋疾患は頸部ジストニアである。頸部ジストニアを患っている対象は、例えば、本発明の医薬製剤の治療当たり約15~300Uを受容する。更なる例において、対象は、頸部ジストニアを有する患者に投与される約35~250U、65~200U、85~175U、105~160U、又は125~145Uを受容する。一実施形態において、胸鎖乳突筋への投与量は、100U以下に制限される。治療当たり300Uより大きい投与量をまた、治療反応を達成するために頸部ジストニアを有する患者に投与してもよい。治療活動は、複数の治療を含むことができる。
【0082】
一実施形態において、神経筋疾患は、眼瞼痙攣である。例えば、眼瞼痙攣を患っている対象は、例えば、上眼瞼の内外側の瞼板前部眼輪筋(pretarsal orbicularis oculi)及び下眼瞼の外側の瞼板前部眼輪筋に注射される約1.25~2.5Uの本発明の医薬製剤を受容する。更なる例において、対象は、注射部位当たり、約1.5U、約1.6U、約1.7U、約1.8U、約1.9U、約2.0U、約2.1U、約2.2U、約2.3U、約2.4U、又は約2.5U以上を受容する。治療活動は、複数の治療を含むことができる。
【0083】
一実施形態において、神経筋疾患は、斜視である。斜視を患っている対象は、例えば、本発明の医薬製剤の注射部位当たり、約1.25~2.5Uを受容する。更なる例において、対象は、治療反応を達成するために、注射部位当たり、約1.5U、約1.6U、約1.7U、約1.8U、約1.9U、約2.0U、約2.1U、約2.2U、約2.3U、約2.4U、又は約2.5U以上を受容する。実施形態において、より低い用量は小さい偏り(deviations)の治療に使用される。実施形態において、20プリズム径未満の垂直筋及び水平斜視は、注射部位当たり1.25~2.5Uで治療することができる。治療活動は、複数の治療を含むことができる。
【0084】
一実施形態において、神経筋疾患は、筋肉痙縮である。筋肉痙縮を患っている対象は、例えば、本発明の医薬製剤の治療当たり約20~200Uを受容する。更なる例において、対象は、筋肉痙縮を有する患者に投与する治療当たり、約20~30U、20~40U、20~60U、20~80U、20~100U、20~125U、20~150U、又は20~175Uを受容する。なお更なる例において、対象は、筋肉痙縮を有する患者に投与する治療当たり、約20U、約25U、約30U、約35U、約40U、約45U、約50U、約55U、約60U、約65U、約70U、約75U、約80U、約85U、約90U、約95U、約100U、約105U、約110U、約115U、約120U、約125U、約130U、約135U、約140U、約145U、約150U、約155U、約160U、約165U、約170U、約175U、約180U、約185U、約190U、約195U、又は約200Uを受容する。一実施形態において、上腕二頭筋には、4つの注射部位に分割して100U~200Uを注射することができる。一実施形態において、橈側手根屈筋には、1つの注射部位に12.5U~50Uを注射することができる。一実施形態において、尺側手根屈筋には、1つの注射部位に12.5U~50Uを注射することができる。一実施形態において、深指屈筋には、1つの注入部位に30U~50Uを注入することができる。一実施形態において、浅指屈筋には、単一の注入部位に30U~50を注入することができる。治療当たり200Uより大きい投与量を、治療反応を達成するために筋痙縮を有する患者に投与してもよい。治療活動は、複数の治療を含むことができる。
【0085】
疼痛の治療
別の実施形態において、本発明は、疼痛を治療するための方法であって、本発明の医薬製剤をそれを必要とする対象に、疼痛を軽減するのに十分な量で投与する工程を含む方法を提供する。別の実施形態において、患者は、筋・筋膜性疼痛、偏頭痛、緊張性頭痛、神経因性疼痛、顔面痛、腰痛、副鼻腔頭痛、顎関節疾患に関連する疼痛、痙縮又は頸部ジストニアに関連する疼痛、術後創部痛、又は神経痛を患っている。治療活動は、複数の治療を含むことができる。
【0086】
一実施形態において、患者は顔面痛を患っている。顔面痛を患っている対象は、例えば、本発明の医薬製剤の治療当たり約4~40Uを受容する。更なる例において、対象は、顔面痛を患っている患者に投与する治療当たり、約4~10U、4~15U、4~20U、4~25U、4~30U、4~35U、7~15U、7~20U、7~25U、7~30U、7~35U、又は7~40Uを受容する。なお更なる例において、対象は、顔面痛を患っている患者に投与する治療当たり、約4U、約5U、約7.5U、約10U、約12.5U、約15U、約17.5U、約20.0U、約22.5U、約25.0U、約27.5U、約30.0U、約32.5U、約35U、約37.5U、又は約40Uを受容する。治療当たり40Uより大きい投与量を、治療反応を達成するために顔面痛を有する患者に投与してもよい。治療活動は、複数の治療を含むことができる。
【0087】
一実施形態において、患者は、筋・筋膜性疼痛を患っている。筋・筋膜性疼痛を患っている対象は、例えば、本発明の医薬製剤の治療当たり約5~100Uを受容する。更なる例において、対象は、筋・筋膜性疼痛を患っている患者に投与する治療当たり、約5~10U、5~20U、5~30U、5~40単位、5~50単位、5~60単位、5~70単位、5~80単位、5~90U、10~20U、10~30U、10~50U、又は10~60U、又は10~70U、又は10~80U、10~90U、又は10~100Uを受容する。更なる例において、対象は、筋・筋膜性疼痛を有する患者に投与する治療当たり、約5U、約10U、約15U、約20U、約25U、約30U、約35U、約40U、約45U、約50U、約55U、約60U、約65U、約70U、約75U、約80U、約85U、約90U、約95U、又は約100Uを受容する。治療当たり100Uより大きい投与量をまた、治療反応を達成するために筋・筋膜性疼痛を有する患者に投与してもよい。治療活動は、複数の治療を含むことができる。
【0088】
一実施形態において、対象は、腰痛を患っている。腰痛を患っている対象は、例えば、本発明の医薬製剤の治療当たり約15~150Uを受容する。更なる例において、対象は、腰痛を有する患者に投与する治療当たり、約15~30U、15~50U、15~75U、15~100U、15~125U、15~150U、20~100U、20~150U、又は100~150Uを受容する。なお更なる例において、対象は、腰痛を有する患者に投与する治療当たり、約15U、約20U、約25U、約30U、約35U、約40U、約45U、約50U、約55U、約60U、約65U、約70U、約75U、約80U、約85U、約90U、約95U、約100U、約105U、約110U、約115U、約120U、約125U、約130U、約135U、約140U、約145U、又は約150Uを受容する。治療当たり150Uより大きい投与量をまた、治療反応を達成するために腰痛を有する患者に投与してもよい。治療活動は、複数の治療を含むことができる。
【0089】
一実施形態において、患者は、片頭痛を患っており、患者は、1ヶ月当たり4時間以上、15日以上の片頭痛を患っている患者が含まれる。例えば、片頭痛を患っている対象は、例えば、本発明の医薬製剤の治療当たり約0.5~200Uを受容する。更なる例において、対象は、片頭痛を患っている患者に投与する治療当たり、約5~190U、15~180U、25~170U、35~160U、45~150U、55~140U、65~130U、75~120U、85~110U、又は95~105Uを受容する。治療活動は、複数の治療を含むことができる。
【0090】
例えば、治療部位当たり、約0.5U、約1.0U、約1.5U、約2.0U、約2.5U、約3.0U、約3.5U、約4.0U、約4.5U、約5.0U、約5.5U、約6.0U、約6.5U、約7.0U、約7.5U、約8.0U、約8.5U、約9.0U、約9.5U、約10.0U、約12U、約15U、約17U、約20U、約22U、約25U、約27U、約30U、約32U、約35U、約37U、約40U、約42U、約45U、約47U、又は約50Uを片頭痛を患っている患者に投与する。患者は、例えば、2部位、3部位、4部位、5部位、6部位、7部位、8部位、9部位、10部位、11部位、12部位、13部位、14部位、15部位、16部位、17部位、18部位、19部位、20部位、21部位、22部位、23部位、24部位、25部位、26部位、27部位、28部位、29部位、30部位、31部位、又は32部位以上などの複数の部位で治療することができる。一実施形態において、片頭痛を患っている患者に、皺眉筋(それぞれ5Uの2回の注射)、鼻根筋(5Uの1回の注入)、前頭(それぞれ5Uの4回の注射)、側頭筋(それぞれ5Uの8回の注射)、後頭(それぞれ5Uの6回の注射)、頸部傍脊柱(それぞれ5Uの4回の注射)、及び僧帽筋(それぞれ5Uの6回の注射)を介して、0.1mL注射あたり5Uで、31回注射する。正中線において注入することができる鼻根筋を除いて、ある特定の実施形態において、全ての筋肉は、注射部位の半分を頭部及び頸部の左側に及びその半分を頭部及び頸部の右側に、左右対称に注入することができる。治療当たり200Uより大きい投与量をまた、治療反応を達成するために片頭痛を有する患者に投与してもよい。治療活動は、複数の治療を含むことができる。
【0091】
一実施形態において、患者は、副鼻腔頭痛を患っている。副鼻腔頭痛を患っている対象は、例えば、本発明の医薬製剤の治療当たり約4~40Uを受容する。更なる例において、対象は、副鼻腔頭痛を患っている患者に投与する治療当たり、約4~10U、4~15U、4~20U、4~25U、4~30U、4~35U、7~15U、7~20U、7~25U、7~30U、7~35U、又は7~40Uを受容する。なお更なる例において、対象は、副鼻腔頭痛を有する患者に投与する治療当たり、約4U、約5U、約7.5U、約10U、約12.5U、約15U、約17.5U、約20.0U、約22.5U、約25.0U、約27.5U、約30.0U、約32.5U、約35U、約37.5U、又は約40Uを受容する。治療当たり40Uより大きい投与量をまた、治療反応を達成するために副鼻腔頭痛を有する患者に投与してもよい。治療活動は、複数の治療を含むことができる。
【0092】
一実施形態において、患者は、緊張性頭痛を患っている。緊張性頭痛を患っている対象は、例えば、本発明の医薬製剤の治療当たり約5~50Uを受容する。更なる例において、対象は、緊張性頭痛を有する患者に投与する治療当たり、約5~10U、5~15U、5~20U、5~25U、5~30U、5~35U、5~40U、5~45U、10~20U、10~25U、10~30U、10~35U、10~40U、又は10~45Uを受容する。なお更なる例において、対象は、緊張性頭痛を有する患者に投与する治療当たり、約5U、約10U、約20U、約25U、約30U、約35U、約40U、約45U、又は約50Uを受容する。一実施形態において、緊張性頭痛を患っている患者に、皺眉筋(それぞれ5Uの2回の注射)、鼻根筋(5Uの1回の注入)、前頭(それぞれ5Uの4回の注射)、側頭筋(それぞれ5Uの8回の注射)、後頭(それぞれ5Uの6回の注射)、頸部傍脊柱(それぞれ5Uの4回の注射)、及び僧帽筋(それぞれ5Uの6回の注射)を介して、0.1mL注射あたり5Uで、31回注射する。正中線において注入することができる鼻根筋を除いて、ある特定の実施形態において、全ての筋肉は、注射部位の半分を頭部及び頸部の左側に及びその半分を頭部及び頸部の右側に、左右対称に注入することができる。治療当たり200Uより大きい投与量をまた、治療反応を達成するために緊張性頭痛を有する患者に投与してもよい。治療活動は、複数の治療を含むことができる。
【0093】
一実施形態において、患者は、急性又は再発性慢性副鼻腔炎に関連する副鼻腔頭痛又は顔面疼痛を患っている。例えば、本発明の医薬製剤を鼻粘膜又は副鼻腔を覆う皮下構造に投与することができ、製剤の投与により、急性再発性又は慢性副鼻腔炎に関連する頭痛及び/又は顔面痛が軽減される。更なる実施形態において、本発明の医薬製剤のいずれかを、鼻粘膜又は副鼻腔を覆う皮下構造、例えば上顎骨、乳様突起、前頭骨、及び蝶形骨からなる群から選択される副鼻腔のうちの1つ以上を覆う皮下構造に投与することができる。別の実施形態において、副鼻腔を覆う皮下構造は、額、頬、側頭、耳介後部、及び唇からなる群から選択される1つ以上の領域内にある。実施形態において、それぞれ5Uの複数回の注射を投与して、急性又は再発性慢性副鼻腔炎に関連する洞頭痛又は顔面痛を治療する。
【0094】
別の実施形態において、急性又は再発性慢性副鼻腔炎に関連する副鼻腔頭痛又は顔面痛を患っている患者は、本発明の医薬製剤のいずれかを患者の罹患領域に投与することによって治療される。更なる実施形態において、本明細書に開示される医薬製剤は、副鼻腔を神経支配する三叉神経の突起に投与される。
【0095】
急性又は再発性慢性副鼻腔炎に関連する副鼻腔頭痛又は顔面疼痛を患っている患者は、鼻炎、副鼻腔過剰分泌(sinus hypersecretion)、及び/又は膿性鼻汁(purulent nasal discharge)を含む症状をしばしば示す。一実施形態において、本発明の医薬製剤で治療される患者は、副鼻腔過剰分泌及び膿性鼻汁の症状を示す。
【0096】
本発明の実施形態はまた、急性又は再発性慢性副鼻腔炎に関連する副鼻腔頭痛又は顔面痛を患っている患者を治療するための方法であって、患者は神経痛を患っている、方法を提供する。ある特定の実施形態において、神経痛は三叉神経痛である。別の実施形態において、神経痛は、感覚神経への圧縮力に関連し、内因性神経損傷、脱髄疾患、又は遺伝障害に関連し、代謝障害と関連し、中枢神経性血管疾患と関連し、又は外傷に関連している。本発明の別の実施形態において、疼痛は、抜歯又は歯の修復(reconstruction)に関連する。
【0097】
泌尿器系障害の治療
一実施形態において、本発明はまた、過活動膀胱(OAB)、例えば神経学的状態(NOAB)に起因する過活動膀胱など、又は特発性OAB(IOAB)を患っている患者を治療するための方法を提供する。例えば、本発明の医薬製剤を膀胱又はその近傍、例えば排尿筋に投与することができ、製剤の投与により、過活動膀胱に関連する切迫性尿失禁が軽減される。ある特定の実施形態において、投与量は、例えば200U以上又は200U以下などであり得る。例えば、投与量は、治療当たり、約15U、約20U、約25U、約30U、約35U、約40U、約45U、約50U、約55U、約60U、約65U、約70U、約75U、約80U、約85U、約90U、約95U、約100U、約105U、約110U、約115U、約120U、約125U、約130U、約135U、約140U、約145U、約150U、約160U、約170U、約180U、約190U、約200U、約210U、約220U、約230U、又は約240U以上であり得る。患者には、例えば、2部位、3部位、4部位、5部位、6部位、7部位、8部位、9部位、10部位、11部位、12部位、13部位、14部位、15部位、16部位、17部位、18部位、19部位、20部位、21部位、22部位、23部位、24部位、25部位、26部位、27部位、28部位、29部位、30部位、31部位、32部位、33部位、34部位、35部位、36部位、37部位、又は38部位以上などの複数の部位において注入することができる。一実施形態において、OABを患っている患者は、排尿筋への注射当たり約6.7Uの30mLの注射で治療される。
【0098】
一実施形態において、本発明はまた、神経学的状態に起因するものなどの神経因性排尿筋過活動(NDO)を患っている患者を治療するための方法を提供する。例えば、本発明の医薬製剤を膀胱又はその付近、例えば排尿筋に投与することができ、製剤の投与により、過活動膀胱に関連する切迫性尿失禁が軽減される。ある特定の実施形態において、投与量は、例えば200U以上又は200U以下などであり得る。例えば、投与量は、治療当たり、約15U、約20U、約25U、約30U、約35U、約40U、約45U、約50U、約55U、約60U、約65U、約70U、約75U、約80U、約85U、約90U、約95U、約100U、約105U、約110U、約115U、約120U、約125U、約130U、約135U、約140U、約145U、約150U、約160U、約170U、約180U、約190U、約200U、約210U、約220U、約230U、又は約240U以上であり得る。患者には、例えば、2部位、3部位、4部位、5部位、6部位、7部位、8部位、9部位、10部位、11部位、12部位、13部位、14部位、15部位、16部位、17部位、18部位、19部位、20部位、21部位、22部位、23部位、24部位、25部位、26部位、27部位、28部位、29部位、30部位、31部位、又は32部位以上などの複数の部位で注入することができる。一実施形態において、NDOを患っている患者は、排尿筋への注射当たり約6.7Uの30mLの注射で治療される。
【0099】
美容的特徴の治療
別の実施形態において、本発明は、軟組織特徴を美容的に修飾するための方法であって、本発明の少なくとも1つの医薬製剤を、それを必要とする対象に、当該特徴を修正するのに十分な量で投与する工程を含む方法を提供する。更なる実施形態において、医薬製剤は、単一の位置又は複数の位置のいずれかで経皮又は経粘膜注射によって投与される。
【0100】
実施形態において、本発明の医薬製剤は、対象の顔又は頸部に投与される。更なる実施形態において、本発明の医薬製剤は、皺(rhytide)を低減するのに十分な量で対象に投与される。例えば、製剤を、対象の眉の間に、眉の間及び鼻梁における縦線を低減するのに十分な量で投与することができる。医薬製剤はまた、対象の片方又は両方の眼の近くに、眦の線を低減するのに十分な量で投与することもできる。一実施形態において、本発明の組成物は、滑らかな皮膚に局所的に注入することができる。別の実施形態において、本発明の医薬製剤はまた、対象の額に、当該額の横線を低減するのに十分な量で投与することができる。本発明の更に別の実施形態において、医薬製剤は、対象の頸部に、頸部の筋帯(muscle band)を低減するのに十分な量で投与される。一実施形態において、医薬組成物は、筋肉を緩和させるため及び/又は咬筋の量(masseter mass)を減少させるために咬筋に適用される。
【0101】
更なる実施形態において、患者は顔皺を患っている。顔皺を患っている対象は、例えば、本発明の医薬製剤の治療当たり約1~100Uを受容することができる。更なる例において、対象は、炎症性障害を有する患者に投与する治療当たり約1~10U、1~20U、1~30U、1~40U、1~50U、1~60U、1~70U、1~80U、1~90U、5~20U、5~30U、5~40U、5~50U、5~60U、5~70U、5~80U、5~90U、又は5~100Uを受容する。なお更なる例において、対象は、患者に投与する治療当たり約1U、約10U、約20U、約30U、約40U、約50U、約60U、約70U、約80U、約90U、又は約100Uを受容する。治療当たり100Uより大きい用量をまた、治療反応を達成するために炎症又は炎症性疾患を患っている患者に投与してもよい。
炎症の治療
【0102】
別の実施形態において、本発明は、炎症を治療するための方法であって、本発明の医薬製剤を、それを必要とする対象に炎症を軽減するのに十分な量で投与する工程を含む。ある特定の実施形態において、本発明の医薬製剤は、筋力低下を生じさせることなく患者に投与される。一実施形態において、本発明の医薬製剤は、炎症状態を有する患者に投与される。ある特定の実施形態において、炎症性状態は、神経性炎症である。別の実施形態において、対象は、関節リウマチ又は胃腸炎症性疾患を患っている。
【0103】
更なる実施形態において、患者は炎症性障害を患っている。炎症性障害を患っている対象は、例えば、本発明の医薬製剤の治療当たり約1~100Uを受容する。更なる例において、対象は、炎症性障害を有する患者に投与する治療当たり、約1~10U、1~20U、1~30U、1~40U、1~50U、1~60U、1~70U、1~80U、1~90U、5~20U、5~30U、5~40U、5~50U、5~60U、5~70U、5~80U、5~90U、又は5~100Uを受容する。なお更なる例において、対象は、患者に投与する治療当たり約1U、約10U、約20U、約30U、約40U、約50U、約60U、約70U、約80U、約90U、又は約100Uを受容する。治療当たり100Uより大きい用量をまた、治療反応を達成するために炎症又は炎症性疾患を患っている患者に投与してもよい。
【0104】
皮膚状態の治療
皮膚障害を治療するための本発明の範囲内の方法は、患者の顔、手、又は足などの患者の皮膚障害の位置にボツリヌス神経毒素を局所投与する工程を有することができる。神経毒素は、約10-3単位/kg(患者の体重)~約35単位/kg(患者の体重)の量で局所投与することができる。例えば、神経毒素は、約10-2U/kg~約25U/kg(患者の体重)の量で局所投与される。更なる例において、神経毒素は、約10-1U/kg~約15U/kg(患者の体重)の量で投与される。本発明の範囲内の1つの方法において、神経毒素は、約1U/kg~約10U/kg(患者の体重)の量で局所投与される。臨床的な設定において、皮膚障害を効果的に治療するために、1U~3000UのA型又はB型ボツリヌス毒素などの神経毒素を皮膚障害の位置に局所適用又は皮下投与により投与することが有利であり得る。
【0105】
ボツリヌス毒素の投与は皮膚内の複数の部位で行うことができ、隣接する注射部位は約0.1~10cm、又は約0.5~約5cm、例えば約1.5~約3cm離れている。毒素は、ボツリヌス毒素A、B、C、D、E、F又はGのいずれかであり得る。投与される量は、製造業者の仕様、毒素の種類、及び投与様式に応じて、0.1~1000U、又は約1~約40、又は約5~約10Uで変動し得る。所望の変化を維持するためのこれらの投与の反復時間範囲は、注射される位置、調節される状態、及び患者の状態に実質的に従って変動する。したがって、反復時間は約1週間~約50週間で変動し得るが、一般的な範囲は約4~約25週間又は更には約12週間~約16週間である。
【0106】
投与(例えば注射)間の距離は、約1mm~約10cm、好適には約5mm~約5cm、より通常は約1cm~約3cmで変動し得る。したがって、例えばボツリヌスAを、約0.5~約10cm離して、約0.1~約10Uの皮内注射によって好適に投与し得る。
【0107】
別の実施形態において、本発明は、皮膚疾患を治療するための方法であって、本発明の医薬製剤を、それを必要とする対象に、皮脂分泌又は粘液分泌を低減するのに十分な量で投与する工程を含む方法を提供する。更なる実施形態において、本発明の医薬製剤は、筋力低下を生じさせることなく患者に投与される。ある特定の実施形態において、本発明の医薬製剤は、眼瞼又は結膜のうちの1つ以上の部位に注射される。別の実施形態において、本発明の製剤は、身体表面に投与される。
【0108】
別の実施形態において、医薬製剤は、限定するものではないがStaphylococcus、Streptococcus、及びMoraxellaを含み、皮膚細菌又は真菌の増殖を低減するのに十分な量で投与される。例えば、本発明の医薬製剤は、皮膚感染を軽減するために、眼瞼、頭皮、足、鼠径部、及び腋窩からなる群から選択される領域に投与される。
【実施例
【0109】
以下の実施例は、本発明の実施形態及び態様を例示するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0110】
実施例1:先行技術製剤に対する例示的な固体クロストリジウム医薬組成物の活性及び安定性
【0111】
ボツリヌス毒素のバルク溶液を、A型ボツリヌス毒素のバルクの適切なアリコートを以下の表1~3に記載されるいくつかのビヒクル溶液と混合することによって調製した。溶液をガラスバイアルに充填し、従来の凍結乾燥条件を使用して凍結乾燥した。凍結乾燥物(lyophile)を生理食塩水で再構成した後、凍結乾燥製剤の効力を細胞に基づく効力アッセイ(CBPA)によって試験した。凍結乾燥後及び示された温度での貯蔵後における効力回復の結果は表に示され、標的効力(製剤に添加された既知量の毒素)について標準化したものである。表1~3に示すように、本発明の態様に従って調製した固体組成物の効力を先行技術の製剤と比較した。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
実施例2:酸化防止剤の存在下又は非存在下での液体クロストリジウム医薬組成物の活性
【0117】
表4に示すように、バルク製剤溶液を、BoNT/A原薬(drug substance)(DS)の適切なアリコートを3つの異なるビヒクル溶液と混合することによって調製した。3つの製剤は全て、8% w/wトレハロース、4% w/wP188、及び20mMヒスチン緩衝液(pH6.0)を含有した。製剤10は、酸化防止剤を含有していなかった。製剤11及び12は、それぞれNAC及びメチオニンを含有した。バルク溶液を2mLのガラスバイアルに充填し(1.25mL充填)、ゴム栓及びアルミニウム外郭(shell)で密封した。製剤の効力を、充填後(時間ゼロ、t0)及び4つの温度(-70、5、25、及び40℃)で1ヶ月間貯蔵後において細胞に基づく効力アッセイ(CBPA)によって試験した。効力試験結果を表4に示す。簡潔に述べると、メチン含有製剤(番号12)は、40℃を含む4つの温度全てで1ヶ月貯蔵後においてその効力を保持したが、製剤w/o酸化防止剤は、25℃では約15%の効力を喪失し、40℃では本質的に全ての活性を喪失した(すなわち、完全な不活性化)。試験した第2の酸化防止剤であるN-アセチル-L-システインにより、酸化防止剤を含まない製剤と比較して効力の損失が促進されたが、このことはN-アセチル-L-システインがこの製剤で酸化促進剤として作用したことを実証している。
【0118】
【0119】
実施例3:例示的な液体製剤の安定性に対する例示的な酸化防止剤の影響
【0120】
表5に示すように、バルク製剤溶液を、BoNT/A原薬(DS)の適切なアリコートを異なる酸化防止剤と混合することにより調製した。全ての製剤は、8% w/wトレハロース、4% w/w P188、20mMヒスチジン緩衝液(pH6.0)、及び列挙したような1つの以上の酸化防止剤を含有した。標的効力は100U/mLであった。バルク溶液を2mLのガラスバイアルに充填し(1.25mL充填)、ゴム栓及びアルミニウム外郭で密封した。製剤の効力を、充填後(時間ゼロ、t0)並びに40℃で2週間及び1ヶ月間貯蔵後において細胞に基づく効力アッセイ(CBPA)によって試験した。効力試験結果を表5に示す。
【0121】
【0122】
本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの変更及び改変がなされてもよい。したがって、説明されている実施形態は例示目的でのみ掲載されており、実施形態は、以下の特許請求の範囲を制限するものと見なされるべきではないと理解されなくてはならない。したがって、以下の特許請求の範囲は、文字どおりに示される要素の組み合わせだけではなく、実質的に同じ結果を得るために実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を果たす全ての同等の要素を含むものであると読み取られる。このように、特許請求の範囲は、上で説明されているもの、概念的に同等であるもの、及び本開示の概念を包含するものを含むものと理解される。