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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】鋸テンプレートを含む医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/15 20060101AFI20230127BHJP
   A61F 2/36 20060101ALI20230127BHJP
   A61F 2/46 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
A61B17/15
A61F2/36
A61F2/46
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019539177
(86)(22)【出願日】2018-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2018051371
(87)【国際公開番号】W WO2018134383
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】102017101135.8
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ バーダー
(72)【発明者】
【氏名】アニル バルザーニ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー シュトール
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-126545(JP,A)
【文献】米国特許第06395004(US,B1)
【文献】特開2015-154951(JP,A)
【文献】特表2015-516220(JP,A)
【文献】特表2010-540123(JP,A)
【文献】米国特許第06206884(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0183952(US,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02854786(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15
A61F 2/36
A61F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
股関節内補綴物を埋め込むための医療器具(10;10”)であって、
鋸刃(30)用の少なくとも1つのガイド溝(28;28’;28”)を備えた少なくとも1つの鋸テンプレート(12;12”)を含み、
前記鋸テンプレートが、前記鋸テンプレート(12;12”)を人工関節やすりのやすり体(14)の第2連結要素(20)に連結位置において一時的に連結するための少なくとも1つの第1連結要素(18;18”)を含み、
固着装置(96)の第1固着要素(98;98”)が前記第1連結要素(18;18”)に関連し、前記連結位置における前記第1固着要素(98;98”)が、前記やすり体(14)上に配置される第2固着要素(100)に力ロック式及びポジティブロック式のやり方で固着位置において係合している、
医療器具(10;10”)において、
前記第1固着要素(98;98”)及び前記第2固着要素(100)が、協働する掛止部材(110、112)の形態に構成されること、
前記鋸テンプレート(12;12”)が、連結体(24;24”)及びテンプレート体(26;26’;26”)を含むこと、
前記少なくとも1つの第1連結要素(18;18”)が、前記連結体(24;24”)上に配置又は形成されること、
前記少なくとも1つのガイド溝(28;28’;28”)が、前記テンプレート体(26;26’;26”)上に配置又は形成されること、
前記医療器具が、前記連結体(24;24”)と前記テンプレート体(26;26’;26”)とを連結位置において一時的に連結するための連結装置(34;34”)を含むこと
記連結装置(34)が、掛止式又はスナップ式接続装置(36)の形態に構成され、前記連結位置において互いに係合している掛止又はスナップ要素(38、40)を含むこと、及び
前記連結位置における前記連結体(24;24”)と前記テンプレート体(26;26’;26”)とが、前記連結装置(34;34”)により規定される回転軸(80;80”)の周りで互いに対して回転可能であるように互いの上に装着されること、
を特徴とする医療器具。
【請求項2】
請求項1に記載の医療器具であって、
前記連結装置(34;34”)が、第1連結要素(42;42”)及び第2連結要素(44;44”)を含むこと、
前記第1連結要素(42;42”)及び第2連結要素(44;44”)が、一方で前記連結体(24;24”)上に、他方で前記テンプレート体(26;26’;26”)上に配置又は形成されること、
前記連結位置における前記第1連結要素(42;42”)と前記第2連結要素(44;44”)とが、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合していること、
及び、
前記第1連結要素(42;42”)及び第2連結要素(44;44”)が、少なくとも1つの連結突起(46;46”)及び対応する連結凹部(62;62”)の形態に構成されること、
を特徴とする医療器具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医療器具であって、
前記連結装置(34;34”)が、第1連結要素(42;42”)及び第2連結要素(44;44”)を含むこと、前記第1連結要素(42;42”)及び第2連結要素(44;44”)が、一方で前記連結体(24;24”)上に、他方で前記テンプレート体(26;26’;26”)上に配置又は形成されること、及び、前記連結位置における前記第1連結要素(42;42”)と前記第2連結要素(44;44”)とが、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合していること、
を特徴とする医療器具。
【請求項4】
請求項3に記載の医療器具であって、
前記第1連結要素(42)及び第2連結要素(44)が、前記掛止又はスナップ要素(38、40)を形成すること、
を特徴とする医療器具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の医療器具であって、
a)前記少なくとも1つの連結突起(46)が、前記テンプレート体(26)上に弾性的に配置又は形成されること、
及び/又は
b)前記連結位置における前記連結体(24;24”)と前記テンプレート体(26;26’;26”)とが、前記連結装置(34;34”)により規定される回転軸(80;80”)の周りで互いに対して回転可能であるように互いの上に装着されること、及び、前記少なくとも1つの連結突起(46)が、前記回転軸の方を向いて凹状に湾曲している装着ブラケット(50)の形態に構成されること、
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の医療器具であって、
前記連結位置における前記連結体(24;24”)と前記テンプレート体(26;26’;26”)とが、前記連結装置(34;34”)により規定される回転軸(80;80”)の周りで互いに対して回転可能であるように互いの上に装着されること、前記少なくとも1つの連結凹部(62;62”)が、前記回転軸(80;80”)から離れる方を向いて開放している環状溝(64;64”)の形態に構成されること、及び、前記連結位置における前記少なくとも1つの連結突起が、少なくとも部分的に、前記回転軸(80;80”)に関して周方向で前記連結凹部(62;62”)内へ係合すること、
を特徴とする医療器具。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の医療器具であって、
前記連結位置における前記連結体(24;24”)と前記テンプレート体(26;26’;26”)とが、前記連結装置(34;34”)により規定される回転軸(80;80”)の周りで互いに対して回転可能であるように互いの上に装着されること、及び
前記少なくとも1つの連結突起(46”)が、それ自体で閉じられる又は前記回転軸(80”)に関して周方向で少なくとも180°にわたって延びる連結リング(132”)の形態に構成されること、
を特徴とする医療器具。
【請求項8】
請求項~7のいずれか1項に記載の医療器具であって、
a)前記少なくとも1つの連結凹部(62;62”)が、前記回転軸(80;80”)から離れる方を向いて開放している環状溝(64;64”)の形態に構成されること、前記連結位置における前記少なくとも1つの連結突起が、少なくとも部分的に、前記回転軸(80;80”)に関して周方向で前記連結凹部(62;62”)内へ係合すること、及び、前記環状溝(64”)が、止め輪(128”)により側方で区切られること、
又は
b)前記少なくとも1つの連結凹部(62;62”)が、前記回転軸(80;80”)から離れる方を向いて開放している環状溝(64;64”)の形態に構成されること、前記連結位置における前記少なくとも1つの連結突起が、少なくとも部分的に、前記回転軸(80;80”)に関して周方向で前記連結凹部(62;62”)内へ係合すること、前記環状溝(64”)が、止め輪(128”)により側方で区切られること、及び、前記止め輪(128”)と前記連結体(24”)とが、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で、並びに/或いは材料接着により互いに接続されること、
を特徴とする医療器具。
【請求項9】
請求項~8のいずれか1項に記載の医療器具であって、
前記少なくとも1つの連結凹部(62;62”)が、前記回転軸(80;80”)から離れる方を向いて開放している環状溝(64;64”)の形態に構成されること、
前記連結位置における前記少なくとも1つの連結突起が、少なくとも部分的に、前記回転軸(80;80”)に関して周方向で前記連結凹部(62;62”)内へ係合すること、及び
前記第1連結要素(42”)と前記第2連結要素(44”)とが、前記回転軸(80”)に関して不連続の角度位置において、互いに対して整列可能であること、
を特徴とする医療器具。
【請求項10】
請求項~9のいずれか1項に記載の医療器具であって、
前記少なくとも1つの連結凹部(62;62”)が、前記回転軸(80;80”)から離れる方を向いて開放している環状溝(64;64”)の形態に構成されること、
前記連結位置における前記少なくとも1つの連結突起が、少なくとも部分的に、前記回転軸(80;80”)に関して周方向で前記連結凹部(62;62”)内へ係合すること、及び
前記医療器具が、前記回転軸(80”)に関する前記連結体(24”)と前記テンプレート体(26”)の互いに対する角度位置を調節するための角度調節装置(136”)を含むこと、
を特徴とする医療器具。
【請求項11】
請求項10に記載の医療器具であって、
a)前記角度調節装置(136”)が、複数の第1角度調節部材(138”)及び少なくとも1つの第2角度調節部材(140”)を含むこと、及び、前記少なくとも1つの第2角度調節部材(140”)が、異なる角度位置において、異なる第1角度調節部材(138”)に係合していること、
又は
b)前記角度調節装置(136”)が、複数の第1角度調節部材(138”)及び少なくとも1つの第2角度調節部材(140”)を含むこと、前記少なくとも1つの第2角度調節部材(140”)が、異なる角度位置において、異なる第1角度調節部材(138”)に係合していること、前記複数の第1角度調節部材(138”)が、角度部材凹部(142”)の形態に構成されること、及び、前記少なくとも1つの第2角度調節部材(140”)が、角度部材突起(144”)の形態に構成されること、
又は
c)前記角度調節装置(136”)が、複数の第1角度調節部材(138”)及び少なくとも1つの第2角度調節部材(140”)を含むこと、前記少なくとも1つの第2角度調節部材(140”)が、異なる角度位置において、異なる第1角度調節部材(138”)に係合していること、前記複数の第1角度調節部材(138”)が、角度部材凹部(142”)の形態に構成されること、及び、前記少なくとも1つの第2角度調節部材(140”)が、角度部材突起(144”)の形態に構成されること、並びに
c1)前記角度部材凹部(142”)が、前記第1連結要素(42”)又は第2連結要素(44”)上に配置又は形成され、前記回転軸(80”)への方向又は前記回転軸(80”)から離れる方向を向いて配置又は形成されること、
及び/又は
c2)前記少なくとも1つの角度部材突起(144”)が、弾性的に装着されており、前記第1連結要素(42”)と第2連結要素(44”)とを前記回転軸(80”)の周りで互いに対して回転することにより前記角度位置を変化させる際、前記角度部材凹部(142”)のうちの1つから付勢力に逆らって移動し、前記付勢力の結果として、別の角度位置において前記角度部材凹部(142”)のうちの1つへと戻るように移動すること、
を特徴とする医療器具。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の医療器具であって、
前記鋸テンプレート(12;12”)が、連結体(24;24”)及びテンプレート体(26;26’;26”)を含むこと、
前記少なくとも1つの第1連結要素(18;18”)が、前記連結体(24;24”)上に配置又は形成されること、
前記少なくとも1つのガイド溝(28;28’;28”)が、前記テンプレート体(26;26’;26”)上に配置又は形成されること、及び
前記連結体(24;24”)が、把持領域(56;56”)を規定すること、
を特徴とする医療器具。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の医療器具であって、
a)前記医療器具が人工関節やすりのやすり体(14)を含み、該やすり体(14)が、前記第1連結要素(18;18”)及び前記第2連結要素(20)を含む連結装置(22)の前記第2連結要素(20)を含むこと、
又は
前記医療器具が人工関節やすりのやすり体(14)を含み、該やすり体(14)が、前記第1連結要素(18;18”)及び前記第2連結要素(20)を含む連結装置(22)の前記第2連結要素(20)を含むこと、前記第1連結要素(18;18”)と前記第2連結要素(20)とが、前記連結位置において、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で互いに係合していること、及び、前記第1連結要素(18;18”)と前記第2連結要素(20)とが、洗浄位置において互いから完全に分離されること、
及び/又は
b)前記第1連結要素(18;18”)が、連結要素受け(82;82”)の形態に構成されること、
又は
前記第1連結要素(18;18”)が、連結要素受け(82;82”)の形態に構成されること、及び、前記第2連結要素(20)が、前記連結要素受け(82;82”)に対応する連結突起(86)の形態に構成されること、
を特徴とする医療器具。
【請求項14】
請求項13に記載の医療器具であって、
a)前記連結装置(22)が、前記第1連結要素(18;18”)及び/又は第2連結要素(20)により規定される連結長手方向軸(48;48”)を規定すること、
又は
前記連結装置(22)が、前記第1連結要素(18;18”)及び/又は第2連結要素(20)により規定される連結長手方向軸(48;48”)を規定すること、及び、前記連結長手方向軸(48;48”)が、前記回転軸(80;80”)と平行に又は略平行に走ること、及び/又は、前記回転軸(80;80”)が、前記連結長手方向軸(48;48”)を規定すること、
及び/又は
b)前記第1連結要素(18;18”)と前記第2連結要素(20)とが、前記連結位置において互いに回転不能に連結されること、
又は
前記第1連結要素(18;18”)と前記第2連結要素(20)とが、前記連結位置において互いに回転不能に連結されること、前記2つの掛止部材(110、112;110”、112’)のうちの一方が、掛止突起(108;108”)の形態に構成されること、及び、前記2つの掛止部材(110、112;110”、112’)のうちの他方が、対応する掛止凹部(102)の形態に構成されること、
又は
前記第1連結要素(18;18”)と前記第2連結要素(20)とが、前記連結位置において互いに回転不能に連結されること、前記2つの掛止部材(110、112;110”、112’)のうちの一方が、掛止突起(108;108”)の形態に構成されること、及び、前記2つの掛止部材(110、112;110”、112’)のうちの他方が、対応する掛止凹部(102)の形態に構成されること、及び、前記掛止突起(108;108”)が、前記第1連結要素(18;18”)と前記第2連結要素(20)とを係合させる際にベース位置から偏向位置へと偏向され、前記連結装置(22)が前記連結位置を採用する際にのみ前記偏向位置から前記掛止凹部(102)内へ係合して前記固着装置(96)が前記固着位置を採用することができるような仕方で、該掛止突起(108;108”)が構成されること、
を特徴とする医療器具。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の医療器具であって、
a)前記2つの固着要素(98、100;98”)のうちの一方が、前記第1連結要素(18;18”)上に配置又は形成されること、及び、前記2つの固着要素(98、100;98”)のうちの他方が、前記第2連結要素(20)上に配置又は形成されること、
及び/又は
b)前記鋸テンプレート(12;12”)が、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のガイド溝(28;28”)を含み、前記ガイド溝(28;28”)が、互いと平行に配置又は形成されること、
を特徴とする医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節内補綴物を埋め込むための医療器具であって、鋸刃用の少なくとも1つのガイド溝を備えた少なくとも1つの鋸テンプレートを含む、医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、損傷した股関節が股関節内補綴物に置き換えられてきた。このような股関節内補綴物の一部を、そのために準備された大腿骨腔内に挿入される人工関節ステムが形成する。人工関節ステム上に配置されるのは、患者の骨盤内で留められる関節窩と共に臼状関節を形成する関節頭である。
【0003】
大腿において、股関節内補綴物の人工関節ステムが、特にセメント無しに留められる。これによって大腿が、大腿骨から突き出す人工関節ステムの端部と最適に接するように大腿の頸部の領域で切除されると望ましい。
【0004】
このような切除は、例えば鋸テンプレートを用いて実施することができる。もっとも、鋸テンプレートはしっかりと事前決定される基準を大腿上に持たないため、鋸テンプレートが使用される際に、比較的大きな角度誤差及び切除高さのずれがしばしば生じる。換言すれば、大腿骨から過度に多く又は過度に少なく除去されるのであり、人工関節ステムの近位端領域において、大腿の近位端が所望するようには終端しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、冒頭に記載した種類の医療器具を大腿骨内で人工関節ステムを最適に留めることができるように改良することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明によれば、冒頭に記載した種類の医療器具において、前記鋸テンプレートが、前記鋸テンプレートを人工関節やすりのやすり体の第2連結要素に連結位置において一時的に連結するための少なくとも1つの第1連結要素を含むという点で達成される。
【0007】
本発明により提案される解決策により、人工関節やすりのやすり体に前記鋸テンプレートを、前記連結位置において、例えば規定のやり方で、特に単純なやり方で連結することが可能になる。患者の大腿骨上に骨空洞を準備するために、人工関節やすりが使用され、最終的に埋め込まれるべき前記人工関節ステムが完全に大腿骨腔内に収まるような仕方で骨空洞が準備される。このことは、前記人工関節ステムがセメントの無いやり方で留められる場合、特に重要である。前記人工関節ステムは、特に骨が内に伸びることを促進するオッセオインテグレーションコーティングを有することができる。従って、前記骨空洞内で締まり嵌めのみにより保持される前記人工関節ステムを、大腿骨に確実に永続的に接続することができる。従って、前記人工関節やすりの前記やすり体がその外輪郭において、埋め込まれるべき前記人工関節ステムに対応するため、大腿骨内の前記人工関節ステムの最終位置も、具体的に言えば大腿骨腔内へ押込まれる前記やすり体を通して既知である。その際前記やすり体は、大腿骨に対する前記鋸テンプレート用の基準を形成することができる。従って前記鋸テンプレート上の前記第2連結要素により、特に前記やすり体への規定の接続が可能になるのであり、前記鋸テンプレートを使用することにより、大腿骨を部分的に所望のやり方で、具体的に言えば、埋め込まれるべき前記人工関節ステムの近位端に対応させて又は埋め込まれるべき前記人工関節ステム上の前記オッセオインテグレーションコーティングの近位端線に対応させて、切除することができる。この目的で前記鋸テンプレートの前記少なくとも1つのガイド溝により、鋸刃を規定のやり方で案内することができる。鋸テンプレートは、前記人工関節やすりの前記やすり体に連結される。
【0008】
前記鋸テンプレートが連結体及びテンプレート体を含み、前記連結体上に前記少なくとも1つの連結要素が配置又は形成され、前記テンプレート体上に前記少なくとも1つのガイド溝が配置又は形成されると好ましい。特に前記連結体と前記テンプレート体とを一体部品として形成することができ、或いは、例えば接着、溶接、半田付け、又は同様のものにより、互いに永続的に接続することができる。
【0009】
前記器具が、前記連結体と前記テンプレート体とを連結位置において一時的に連結するための連結装置を含むと有利である。前記連結装置により、特に前記連結体と前記テンプレート体とを前記連結位置において互いに力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で一時的に連結することが可能になる。従って前記テンプレート体は、前記連結体から単純なやり方で分離し、必要に応じてこの連結体に再接続することができる。従って特に、前記器具の洗浄可能性が改良される。更に前記器具は任意でモジュール式の構成とすることもできる。例えば患者の大腿骨を部分的に切除するために、異なるテンプレート体を前記同じ連結体に係合させることができる。この事例では、特に特定のテンプレート体に、異なるやすり体を各々関連させることができ、従って外科医が大腿を処理するための規定の基準を指定することができる。
【0010】
前記連結装置が、掛止式又はスナップ式接続装置の形態に構成され、前記連結位置において互いに係合している掛止又はスナップ要素を含む場合、前記連結体と前記テンプレート体とを互いに単純なやり方で連結することができる。
【0011】
前記連結装置が第1及び第2連結要素を含み、前記第1及び第2連結要素が、一方で前記連結体上に、他方で前記テンプレート体上に配置又は形成され、前記連結位置における前記第1連結要素と前記第2連結要素とが、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合していると好ましい。従って前記第1連結要素と第2連結要素とを係合させることにより、前記連結体と前記テンプレート体とを互いに単純なやり方で一時的に接続することができる。
【0012】
有利なことに、前記第1及び第2連結要素は前記掛止又はスナップ要素を形成する。従って、前記連結装置は単純なやり方で構成することができる。
【0013】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記連結位置における前記連結体と前記テンプレート体とが、前記連結装置により規定される回転軸の周りで互いに対して回転可能であるように互いの上に装着されることを実現することができる。この実施形態により、特に前記連結体と前記テンプレート体とを規定のやり方で、例えば前記回転軸により指定される方向に、連結することが可能になる。一方、同時に、前記連結体と前記テンプレート体との互いに対する回転をも可能にすることができる。従って患者の大腿骨を、的を絞ったやり方で処理するために、前記テンプレート体を、特に所望のやり方で整列させることができる。このような回転可能性により、外科医は大腿骨を、異なる方向から処理することができる。従って、特に前記テンプレート体を、非常に小型に及びコンパクトであるように構成することができる。
【0014】
前記第1及び第2連結要素が、少なくとも1つの連結突起の形態に及び対応する連結凹部の形態に構成される場合、前記連結装置の構成は更に簡素化される。従って前記テンプレート体と前記連結体とを連結するために、前記少なくとも1つの連結突起を、対応する前記連結凹部に挿入することができる。
【0015】
前記少なくとも1つの連結突起は、好ましくは前記テンプレート体上に弾性的に配置又は形成される。別法として、連結突起は前記連結体上に配置又は形成することもできる。前記弾性的構成により、特に前記連結突起が対応する前記連結凹部内へパチンと嵌め込めることが可能になる。
【0016】
前記少なくとも1つの連結突起が、前記回転軸の方を向いて凹状に湾曲している装着ブラケットの形態に構成されると好ましい。特にその種類の2つ以上の連結突起を設けることができる2つ以上の連結突起は、前記回転軸から離れる方に面する前記連結体上の環状溝内へ係合し、前記環状溝を、特に同心円状に包囲する。
【0017】
前記テンプレート体と前記連結体との間の確実な接続を達成するために、前記少なくとも1つの連結突起が、それ自体で閉じられる又は前記回転軸に関して周方向で少なくとも180°にわたって延びる連結リングの形態に構成されると有利である。このようにして、前記連結体と前記テンプレート体とを容易にかつ確実に連結することができる。従って更に、前記連結体と前記テンプレート体との前記回転軸の周りでの互いに対する回転も、任意で単純なやり方で可能になる。
【0018】
前記少なくとも1つの連結凹部が、前記回転軸から離れる方を向いて開放している環状溝の形態に構成され、前記連結位置における前記少なくとも1つの連結突起が、少なくとも部分的に前記回転軸に関して周方向で前記連結凹部内へ係合する場合、前記器具は特にコンパクトに構成することができる。特に、2つ以上の連結突起を設けることができる。前記連結位置における2つ以上の連結突起は、前記環状溝内へ係合する。特に連結突起は、前記連結突起を前記環状溝内へパチンと嵌め込む又は掛止できることを可能にする形態に構成することができる。
【0019】
前記環状溝が、止め輪により側方で区切られると有利である。従って一つには、前記環状溝を単純なやり方で製造することができる。もう一つには、任意でそれ自体で閉じられる連結リングも、前記止め輪を用いて前記環状溝内に固着することができる。前記止め輪は、任意で前記連結凹部上に、永続的に又は一時的に配置又は形成することができる。
【0020】
前記止め輪と前記連結体とが、力ロック式及びポジティブロック式のやり方で、及び/又は材料接着により互いに接続されると好ましい。従って特に、前記テンプレート体を前記連結体に永続的に連結したままにしておくことができる。
【0021】
上述のように、前記連結体と前記テンプレート体とを互いに対して前記回転軸の周りで回転することが任意で可能である。これによって、特に前記第1連結要素と前記第2連結要素とが、前記回転軸に関して不連続の角度位置において、互いに対して整列可能であると好ましいことがある。特にここでは、複数の不連続の角度位置を設けることができる。従って特に、前記テンプレート体は、前記連結体に対して所望のやり方で整列させることができる。
【0022】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記器具が、前記回転軸に関する前記連結体と前記テンプレート体の互いに対する角度位置を調節するための角度調節装置を含むことを実現することができる。前記角度調節装置により、特に前記テンプレート体と前記連結体とを、前記回転軸に関して互いに対して所望のやり方で整列させることが可能である。
【0023】
前記角度調節装置が、複数の第1角度調節部材及び少なくとも1つの第2角度調節部材を含み、前記少なくとも1つの第2角度調節部材が、異なる角度位置において、異なる第1角度調節部材に係合していると好ましい。例えば前記少なくとも1つの第2角度調節部材は、前記複数の第1角度調節部材に、異なる角度位置において掛止するやり方で係合するように構成することができる。
【0024】
前記複数の第1角度調節部材が角度部材凹部の形態に構成され、前記少なくとも1つの第2角度調節部材が角度部材突起の形態に構成される場合、前記角度調節装置は単純なやり方で構成することができる。従って前記複数の第1角度調節部材は、特に歯列の形態に構成することができ、前記少なくとも1つの第2角度調節部材は、前記歯列のうち異なる角度位置における隣接する歯間に沈むことができる。
【0025】
前記角度部材凹部が、前記第1又は第2連結要素上に配置又は形成され、前記回転軸への方向又は前記回転軸から離れる方向を向いて配置又は形成されると有利である。従って前記テンプレート体を、前記連結体に対して規定の角度位置において単純なやり方で整列させることができる。
【0026】
前記少なくとも1つの角度部材突起が、弾性的に装着されており、前記第1連結要素と第2連結要素とを前記回転軸の周りで互いに対して回転することにより前記角度位置を変化させる際、前記角度部材凹部のうちの1つから付勢力に逆らって移動し、前記付勢力の結果として、別の角度位置において前記角度部材凹部のうちの1つへと逆に移動すると好ましい。この構成により、外科医は前記テンプレート体と前記連結体との間の角度位置を変化させることができる。この角度位置は、前記テンプレート体と前記連結体とを互いに対して単純に回転することにより、前記角度調節装置によって規定される。
【0027】
前記少なくとも1つのガイド溝が、前記回転軸に対して交差方向に走る誘導平面を規定すると有利である。特に前記誘導平面は、前記回転軸に対して垂直に走ることができる。任意で前記テンプレート体は、異なる人工関節ステムに関連する2つ、3つ、又はそれ以上のガイド溝を有することができる。従って外科医は、埋め込まれるべき前記人工関節ステムに依存して、大腿骨を唯1つのテンプレート体を用いて所望のやり方で切除することができる。このようにして、必要となるテンプレート体の数を著しく最小にすることができる。
【0028】
前記連結体が把持領域を規定する場合、前記器具は単純なやり方で取扱うことができる。前記外科医は前記領域にて前記連結体を把持し、従って例えば連結体を前記やすり体に係合させることができる。
【0029】
例えば前記把持領域が前記回転軸に関して対称に形成されることにより、前記器具を単純かつ安価なやり方で構成することができる。特に把持領域は、前記回転軸に関して回転対称に形成することができる。
【0030】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記医療器具が人工関節やすりのやすり体を含み、やすり体が、前記第1及び前記第2連結要素を含む連結装置の第2連結要素を含むことを実現することができる。特に、前記テンプレート体と前記連結体とを、互いにはっきりした規定のやり方で連結するために、前記第1連結要素と前記第2連結要素とを、互いに相応に形成することができる。特に前記連結要素の構成に依存して、軸方向の及び/又は回転不能な連結を達成することができる。
【0031】
前記第1連結要素と前記第2連結要素とが、前記連結位置において、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合しており、これらの連結要素が、洗浄位置において互いから完全に分離されると好ましい。従って前記テンプレート体と前記連結体とは互いに係合させ、特に洗浄の目的で互いから再度、単純なやり方で分離することができる。
【0032】
前記第1連結要素が連結要素受けの形態に構成される場合、前記器具は単純なやり方で構成することができる。特に前記第1連結要素は、前記連結体上に配置又は形成することができる。
【0033】
前記第2連結要素が、前記連結要素受けに対応する連結突起の形態に構成されると好ましい。このような連結突起は特に、単純なやり方で製造することができる。
【0034】
前記連結装置が長手方向軸を規定し、長手方向軸が特に、前記第1連結要素及び/又は第2連結要素により規定される場合、前記鋸テンプレートと前記やすり体との間の前記連結を、特に更に簡素化することができる。例えば前記第2連結要素は、前記連結長手方向軸を規定する連結突起の形態に構成することができる。前記連結突起は、特に前記連結長手方向軸及び/又は前記回転軸に関して回転対称に形成することができる。
【0035】
前記連結長手方向軸が前記回転軸と平行に又は略平行に走る場合、前記器具は、特に単純かつコンパクトな構成とすることができる。
【0036】
前記回転軸は、好ましくは前記連結長手方向軸を規定する。この構成により、外科医にとって、特に前記器具の取扱いが、より簡単になる。
【0037】
前記連結位置における前記第1連結要素と前記第2連結要素とが、互いに回転不能に連結されると有利である。従って前記鋸テンプレートと前記やすり体との間の確実な接続を、任意で遊びのないものをも、達成することができる。
【0038】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、固着装置の第1固着要素が前記第1連結要素に関連し、前記連結位置における前記第1固着要素が、前記やすり体上に配置される第2固着要素に、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で固着位置において係合していることを実現することができる。特に前記第1固着要素は、前記連結方向に対して交差方向に走る方向、即ち、前記第1連結要素と第2連結要素とを互いに係合させることのできる方向に対して交差方向に走る方向に作用するような仕方で、配置することができる。従って前記鋸テンプレートと前記やすり体とが互いから、望ましくないやり方で離れ得ることを、単純なやり方で防止することができる。
【0039】
前記第1及び前記第2固着要素が協働する掛止部材の形態に構成される場合、前記鋸テンプレートと前記やすり体とを、前記連結位置において互いに単純なやり方で固着することができる。例えば前記第1連結要素と第2連結要素とを係合させて前記鋸テンプレートと前記やすり体との間の接続を固着する際、第1固着要素と第2固着要素とは、自動的に相互係合し、共に掛止することができる。
【0040】
前記2つの掛止部材のうちの一方が掛止突起の形態に構成され、前記2つの掛止部材のうちの他方が、対応する掛止凹部の形態に構成されると好ましい。従って掛止接続装置を単純なやり方で形成し、前記連結位置において互いに係合している前記第1連結要素と第2連結要素とを固着することができる。
【0041】
前記2つの固着要素のうちの一方が前記第1連結要素上に配置又は形成され、前記2つの固着要素のうちの他方が前記第2連結要素上に配置又は形成されると有利である。従って前記器具は、単純かつコンパクトな構成とすることができる。
【0042】
前記掛止突起が、前記第1連結要素と前記第2連結要素とを係合させる際にベース位置から偏向位置へと移動し、前記連結装置が前記連結位置を採用する際にのみ前記偏向位置から前記掛止凹部内へ係合して前記固着装置が前記固着位置を採用することができるような仕方で、この掛止突起が構成されると好ましい。従って、前記第1連結要素と第2連結要素とが互いに係合させられる際、前記第1固着要素と第2固着要素とは互いに掛止することができる。
【0043】
前記鋸テンプレートが、2つの、3つの、4つの、又はそれ以上のガイド溝を含むと有利である。このことにより、特に、異なる人工関節ステム用に骨空洞を準備することのできるやすり体をただ一つ使用して大腿骨を準備することが可能になる。大腿の準備された空洞には、異なる人工関節ステムも別様に座しているため、規定の場合によっては相応に印のあるガイド溝をも、各人工関節ステムに関連させることができる。このようにして、前記器具の必要な部品の数を最小にすることができる。従って、前記器具に対する洗浄努力を著しく低減することができる。特に、前記ガイド溝は、互いと平行に又は略平行に、配置又は形成することができる。
【0044】
本発明の好適な実施形態の後続の記載は、図面と合わせると更に説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明による医療器具の第1実施形態の斜視図。
図2図1の医療器具の更なる全体斜視図。
図3図2の配置の分解図。
図4図1図3の器具のやすり体の側面図。
図5図4のやすり体の矢印Aの方向における図。
図6図5のやすり体の矢印Bの方向における側面図。
図7図4のやすり体の矢印Cの方向における図。
図8図1図3の器具の連結体の側面図。
図9図8の連結体の部分破断側面図。
図10図8の連結体の矢印Eの方向における図。
図11】長手方向断面図において連結体の連結される、図4と同様のやすり体の側面図。
図12図1図3のテンプレート体の側面図。
図13図12のテンプレート体の矢印Fの方向における平面図。
図14】テンプレート体の第2実施形態の側面図。
図15図14のテンプレート体の、矢印Gの方向における平面図。
図16】鋸テンプレートの第2実施形態の略斜視部分破断全体図。
図17図16の線17‐17に沿った断面図。
図18図16の鋸テンプレートの分解図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1図3に概略的に描くのは、全体として参照符号10で表す、股関節内補綴物を埋め込むための医療器具の第1実施形態である。器具は、少なくとも1つの鋸テンプレート12と、任意で図1に概略的に描く大腿骨の空洞を準備するための人工関節やすりのやすり体14とを含む。空洞内へは、埋め込まれるべき股関節内補綴物の人工関節ステムが挿入される。
【0047】
鋸テンプレート12は、鋸テンプレート12をやすり体14の第2連結要素20に連結位置において一時的に連結するための第1連結要素18を含む。この連結位置を、例えば図1図2、及び図11に概略的に描く。
【0048】
第1連結要素18と第2連結要素20とは、共に連結装置22を形成する。第1連結要素18と第2連結要素20とは、連結位置において、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合している。図3に概略的に描くような洗浄位置において、第1連結要素18と第2連結要素20とは互いから完全に分離される。従って洗浄位置では、鋸テンプレート12とやすり体14も、互いから完全に分離される。
【0049】
鋸テンプレート12は、連結体24とテンプレート体26とを含む。
【0050】
第1連結要素18は、連結体24上に配置又は形成される。
【0051】
テンプレート体26上に、外科用鋸の鋸刃30用の少なくとも1つのガイド溝28が配置又は形成される。鋸刃30は、図面においてより詳細には示さない。テンプレート体26上には2つ以上のガイド溝28を設けることができる。図1図3に概略的に描く実施形態ではそれぞれ、合計で3つのガイド溝28が配置され形成される。
【0052】
各ガイド溝28が誘導平面32を規定する。図1図3及び図12に概略的に描くテンプレート体26の実施形態において、前記誘導平面32は特に互いと平行に走る。
【0053】
器具10は、連結体24をテンプレート体26に連結位置において一時的に連結するための連結装置34を更に含む。例えば図1及び図2に、連結位置を概略的に描く。
【0054】
連結装置34は、掛止式又はスナップ式接続装置36の形態に構成されるのであり、連結位置において互いに係合している第1掛止又はスナップ要素38と第2掛止又はスナップ要素40とを含む。
【0055】
従って連結装置34は、第1連結要素42及び第2連結要素44を含み、第1連結要素42及び第2連結要素44が、掛止又はスナップ要素38及び40を形成する。
【0056】
第1連結要素42及び第2連結要素44は、一方ではテンプレート体26上に、具体的に言えば第1連結要素42が配置又は形成され、他方では連結体24上に、具体的に言えば第2連結要素44が配置又は形成される。第1連結要素42と第2連結要素44とは、連結位置において力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合している。
【0057】
第1連結要素は、連結突起46の形態に、具体的に言えば連結装置22により規定される連結長手方向軸の方を向いて凹状に湾曲している装着ブラケット50として、構成される。
【0058】
連結突起46は、例えば板ばねのように構成される接続部52を経由して、テンプレート体26に弾性的に接続される。
【0059】
テンプレート体26は、全体として一体部品として構成される。更にテンプレート体は、誘導平面32に対して垂直に走る対称面54に対して鏡像対称に形成される。
【0060】
連結体24は、全体として連結長手方向軸48に対して略回転対称に形成され、連結体24の近位端58に延びる把持領域56を規定する。
【0061】
連結体24上で遠位端60に隣接して、連結突起56に対応する連結凹部62が形成される。
【0062】
連結凹部62は、連結長手方向軸48から離れる方を向いて開放している環状溝64の形態に構成される。連結体24とテンプレート体26とが互いから分離される位置において、環状溝64の領域内の連結長手方向軸48に対して垂直な平面における連結体24の外径66は、2つの装着ブラケット50により規定される内径68よりも僅かに大きい。
【0063】
連結体24とテンプレート体26とを連結するには、テンプレート体26は、装着ブラケット50でもって、装着ブラケット50の自由端72を環状溝64まで、環状溝64により規定される挿入平面74と平行に、矢印70の方向にもたらされる。これによって端部72は、連結体24から離れる方を向く円筒形の溝ベース表面76上を、装着ブラケット50が互いから広がるように摺動する。これによって、装着ブラケット50の連結長手方向軸48への方向を向く内面78に溝ベース表面76が当接できるようになるまで、接続部52が互いから離れる方へ幾分変形する。接続部52は、装着ブラケット50を環状溝64内で幾分付勢下に保持する。
【0064】
連結装置34の記載する構成により、連結体24とテンプレート体26とは、連結位置において、連結長手方向軸48により規定される回転軸80の周りで互いに対して回転することができる。
【0065】
図に描く器具10の実施形態において、誘導平面32は回転軸80に対して交差方向に、特に垂直に走る。
【0066】
第1連結要素18は、連結要素受け82の形態に構成される。連結長手方向軸48に対して交差方向である切断面における連結要素受け82の自由断面は、図10に概略的に描くように略菱形である。
【0067】
第2連結要素20は、近位方向を向くその近位端面84から突き出している状態でやすり体14上に形成され、連結突起86を規定する。連結長手方向軸48に対して交差方向である平面における、連結突起46の断面エリア88は二等辺三角形90と半円形92とから成り、三角形90の底辺が半円形92の半径を規定する。
【0068】
従って連結突起86は、例えば図11に描くように、連結位置において連結体24上の連結要素受け82内に完全に沈むことのできる回転非対称の連結ピン94により形成される。連結要素受け82及び連結突起86の対応する構成の結果として、連結位置における第1連結要素18と第2連結要素20とは、互いに回転不能に係合している。
【0069】
鋸テンプレート12をやすり体14上に、連結位置において固着するために、第1連結要素18に関連する第1固着要素98を含む固着装置96が設けられる。
【0070】
固着位置にある第1固着要素98は第2固着要素100に、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合している。第2固着要素100はそれぞれ、やすり体14上に配置又は形成される。
【0071】
従って、固着要素98は第1連結要素80上に配置又は形成される。第2固着要素100は第2連結要素20上に配置又は形成される。第2固着要素100は、連結ピン94上で掛止凹部102の形態に構成され、連結長手方向軸48に対して交差方向である方向を向いて開放している。
【0072】
第1固着要素98は、掛止凹部102への方向を向く掛止突出部106を備えた板ばねブラケット104の形態に構成され、固着位置にある掛止突出部106は、掛止凹部102内へと沈む。ただしこのことは、連結要素18及び20が連結位置を採用する際にのみ可能である。
【0073】
掛止突出部106は、第1掛止部材110を形成する掛止突起108を形成する。第1掛止部材と協働する第2掛止部材112が、掛止凹部102により形成される。
【0074】
掛止部材110及び112の記載する構成により、特に第1連結要素18と第2連結要素20とを係合させる際に、掛止突起108が、図9に概略的に描くようなベース位置から連結長手方向軸48から離れる方へと外方へ偏向する位置へと移動することが可能になり、連結装置22が連結位置を採用する際にのみ、掛止突起は前記偏向位置から戻るように移動して掛止凹部102内へ係合することができるのであり、固着装置96は、固着要素98と固着要素100とが力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で互いに係合している固着位置を採用する。
【0075】
テンプレート体26上の3つのガイド溝28は、文字の組み合わせでもって印がつけられる。文字の組み合わせ「VAR」、「STD」、及び「VLG」は、用語「Varus(内反)」、「Standard(標準)」、及び「Valgus(外反)」の略語を形成する。3つのガイド溝28は、やすり体14上の溝形マーク114、116、及び端面84に対応するのであり、溝形マーク114、116及び端面84の各々は、互いと平行に走るドライブ平面118、120、及び122を規定する。
【0076】
従ってやすり体14が大腿骨16上の空洞内へ押込まれる際、マーク114、116及び端面84は、外科医により患者用に選択されるインプラントの具体的に言えばそれぞれの人工関節ステムの、ドライブ深度を規定する。外反位置を修正するには、マーク114に対応する人工関節ステムが使用される。標準の人工関節ステムにはマーク116が使用される。内反位置を修正するには、端面84が使用される。このようにして3つの異なる人工関節形状用に、唯1つのやすり体14を用いて大腿骨腔を準備することができる。
【0077】
第2連結要素20に連結される図示しないハンドルによって押込むことによりやすり体14が大腿骨16内に導入されると、このハンドルは除去することができ、第2連結要素20は連結体24に記載するやり方で、連結軸48に関して非回転式かつ軸方向に連結することができる。
【0078】
次に、これによって未だに連結体24にテンプレート体26が連結されていない場合、上に記載したやり方で連結体24にテンプレート体を係合させることができる。その際、挿入されるべき人工関節ステムにとって最適に適合される大腿骨端面126が形成される限りにおいて、外科医は、鋸を用いて大腿骨16を切除することができる。この目的で、外科医は鋸刃30を対応するガイド溝28を通して案内し、大腿骨16上に鋸カット124を入れる。この鋸カットを、例えば図1に内反位置を修正する人工関節ステム用に描く。鋸刃30が、「VAR」でもって表されるガイド溝28を通して案内され、対応する鋸カット120が大腿骨16上に形成される。
【0079】
連結体24に対するテンプレート体26の回転可能性の結果として、異なる方向から複数の鋸カット124を作成することができる。
【0080】
記載するやり方で大腿骨16に鋸カット124が設けられると、鋸テンプレート12を再度やすり体14から除去することができる。その後、やすり体14が大腿骨16から引き抜かれる。その後大腿骨16を、骨鋸を用いて更に処理することができる。これによって鋸カット124が鋸刃30用のガイドとして働き、その後、大腿骨端面126を形成するためにこの鋸刃を用いて大腿骨16が最終的に処理される。
【0081】
図14及び図15に、テンプレート体26’の第2実施形態を概略的に描く。テンプレート体26’はその構造において、テンプレート体26に対応する。特にテンプレート体26’を連結体24に連結するための第1連結要素42は、同一の構成である。
【0082】
連結体26’は、ガイド溝28’の間隔において連結体26と相違する。前記テンプレート体26’は、特に大腿骨腔を準備するために、例えば「標準」人工関節ステム用に又は「外反」位置を修正するための人工関節ステム用に又は異形成異常を修正するための人工関節ステム用に大腿骨腔がそれを用いて準備されるべきである別のやすり体14が使用される際に使用することができる。
【0083】
従って大腿骨を、やすり体14と相違するが図には描かない更なるやすり体と関連させて準備するために、テンプレート体26’を上に記載する仕方と同様のやり方で連結体24に連結することができる。
【0084】
図16図18に概略的に描くのは、全体として参照符号10”で表す器具の第2実施形態である。この第2実施形態は、連結体24”及びテンプレート体26”を含む。
【0085】
連結体24”はその構造において、ほぼ連結体24に対応する。一方、環状溝64”は、端部58”への方向を向いて側方で開放しているが、この環状溝を止め輪128”により側方で区切り、これによって側方で閉鎖することができる。
【0086】
止め輪128”と連結体24”とは、特に力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で、及び/又は材料接着により互いに接続することができる。特に連結体上に、環状溝64”に隣接させて環状の後退部分130”を形成することができるのであり、環状溝64”を側方で閉鎖する際に止め輪128はこの後退部分130”内へ係合する。
【0087】
連結体24”上の第1連結要素18”は、第1連結要素18と略同一に構成される。更に第1連結要素18”に関連するのは、第1連結要素18上の第1固着要素98と同一に形成及び配置される第1固着要素98”である。
【0088】
従って連結体24”は、上に記載する仕方と同一のやり方でやすり体14に連結することができる。
【0089】
テンプレート体26”は第2連結要素44”の構成において、テンプレート体26と実質相違する。第2連結要素44”は、それ自体でほぼ閉じられる、及び、連結長手方向軸48”により規定される回転軸80”に関して周方向に少なくとも180°を越えて延びる、連結リング132”の形態に構成される。
【0090】
テンプレート体26”を連結体24”に連結するために、連結リング132”はこの連結リング132”が溝ベース表面76”を包囲するように配置されるまで、把持領域56”上を、連結長手方向軸48”と平行な矢印134”の方向に押される。
【0091】
環状溝64”内で連結リング132”を固着するように働いているのは、記載するように、端部58”から至る把持領域56”にわたって矢印134と平行に同様に押され、後退部分130”までもたらされ、そこで固定される止め輪128”である。特に止め輪128”は後退部分130”に、溶接する、半田付けする、又は接着することができる。
【0092】
器具10”は、回転軸80”に関する連結体24”とテンプレート体26”の互いに対する角度位置を調節するための角度調節装置136”を更に含む。このことは、特に第1連結要素42”と第2連結要素44”とが回転軸80”に関する不連続の角度位置において互いに対して整列可能であることにより達成される。
【0093】
角度調節装置136”は、複数の第1角度調節部材138”と、少なくとも1つの第2角度調節部材140”とを含む。第2角度調節部材140”は、異なる第1角度調節部材138”に異なる角度位置において係合している。
【0094】
複数の第1角度調節部材138”は、角度部材凹部142”の形態に構成される。第2角度調節部材140”は、角度調節突起144”の形態に構成される。
【0095】
角度調節凹部142”は、第2連結要素44”上に配置又は形成され、回転軸80”への方向を向いて開放している。これらの角度調節凹部は連結リング132”上で一種の歯配置を形成し、歯配置は回転軸80”への方向を向く。
【0096】
角度部材突起144”はそれぞれ弾性的に形成又は装着されるのであり、具体的に言えば、連結体24”上でばねブラケット146”の自由端を形成する。自由端148”は、角度部材突起124”が角度部材凹部142”のうちの1つ内へ沈むことができるように、回転軸80”から離れる方を向いて連結体24”上の穿孔150”を通って外方へ突出する。
【0097】
テンプレート体を回転軸80”の周りで回転することにより連結体24”とテンプレート体26”との間の角度位置を変化させる際、ばねブラケット146”は、テンプレート体により及ぼされる付勢力に逆らって角度部材凹部142”のうちの1つから移動し、ばねブラケット146”内に付勢力が保存される結果として、対応する回転時に、隣接する角度部材凹部142”へと戻るように移動する。従って、角度部材凹部142”及び関連する角度部材突起144”の寸法及び幅がそれぞれ対応する結果としての異なる数の角度位置を規定することができる。
【0098】
テンプレート体26”を回転軸80”の周りで連結体24”に対して回転する際、外科医もこれらの異なる掛止を感じることができる。
【0099】
上に記載する器具10及び10”は、特に過熱蒸気により滅菌することのできる金属材料から完全に形成することができる。
【0100】
選択的にテンプレート体26の装着ブラケット50上に、角度部材凹部142”と同様の歯配置を設けることができ、その仕方で変更されたテンプレート体26を、任意で連結体24”と共に使用して、このように変更されたテンプレート体と連結体24”の回転軸に関する規定の角度位置を、互いに対して調節することもできる。
【符号の説明】
【0101】
10,10” 器具
12,12” 鋸テンプレート
14 やすり体
16 大腿骨
18,18” 第1連結要素
20 第2連結要素
22 連結装置
24,24” 連結体
26,26’,26” テンプレート体
28,28’,28” ガイド溝
30 鋸刃
32 誘導平面
34,34” 接続装置
36 掛止式又はスナップ式接続装置
38 第1掛止又はスナップ要素
40 第2掛止又はスナップ要素
42,42” 第1連結要素
44,44” 第2連結要素
46,46” 連結突起
48,48” 連結長手方向軸
50,50” 装着ブラケット
52 接続部
54 対称面
56,56” 把持領域
58,58” 端部
60 端部
62,62” 連結凹部
64,64” 環状溝
66 外径
68 内径
70 矢印
72 端部
74 挿入平面
76,76” 溝ベース表面
78 内面
80,80” 回転軸
82,82” 連結要素受け
84 端面
86 連結突起
88 断面積
90 三角形
92 半円形
94 連結ピン
96 固着装置
98,98” 第1固着要素
100 第2固着要素
102 掛止凹部
104,104” 板ばねブラケット
106,106” 掛止突出部
108,108” 掛止突起
110,110” 第1掛止部材
112 第2掛止部材
114 マーク
116 マーク
118 ドライブ平面
120 ドライブ平面
122 ドライブ平面
124 鋸カット
126 大腿骨端面
128” 止め輪
130” 後退部分
132” 連結リング
134” 矢印
136” 角度調節装置
138” 第1角度調節部材
140” 第2角度調節部材
142” 角度部材凹部
144” 角度部材突起
146” ばねブラケット
148” 端部
150” 穿孔
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