(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】股関節内補綴物システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/46 20060101AFI20230127BHJP
A61F 2/32 20060101ALI20230127BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
A61F2/46
A61F2/32
A61B17/56
(21)【出願番号】P 2019539859
(86)(22)【出願日】2018-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2018051501
(87)【国際公開番号】W WO2018134423
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】102017101191.9
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メブリュト スング
(72)【発明者】
【氏名】アニル バルザーニ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第90/013271(WO,A1)
【文献】特表2011-512926(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04439309(DE,A1)
【文献】登録実用新案第3185273(JP,U)
【文献】仏国特許出願公開第2770128(FR,A1)
【文献】国際公開第2016/187305(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0207873(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00
A61F 2/02-2/80
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込まれた股関節内補綴物(16)の人工関節ステム(14)を患者の大腿骨から引き抜くための医療器具(12)を含む股関節内補綴物システム(10)であって、
前記医療器具(12)が、前記人工関節ステム(14)から突き出す連結錐体(38)を収容するための連結凹部(50)を備えた連結体(48)を有し、
前記連結体(48)が、連結基体(52)と、前記連結基体(52)の連結挿入部受け(54)内に収容されて前記連結凹部(50)を規定する連結挿入部(56)とを含み、
前記連結凹部(50)が、前記連結錐体(38)により規定される長手方向軸(82)に対して交差方向に走る挿入方向(80)において前記連結錐体(38)を前記連結凹部(50)内へ挿入するための側方挿入開口(78)を有する、
股関節内補綴物システム。
【請求項2】
請求項1に記載の股関節内補綴物システムであって、前記連結基体(52)が、前記連結挿入部(56)よりも硬質の金属から形成されること、を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか1項に記載の股関節内補綴物システムであって、
a)前記連結基体(52)が、金属から形成されること、
又は
前記連結基体(52)が、金属、即ち器具スチールから形成されること、
及び/又は
b)前記連結挿入部(56)が、プラスチックから形成されること、
又は
前記連結挿入部(56)が、プラスチック、即ちポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び/又はポリプロピレン(PP)、及び/又はポリフェニレンスルホン(PPSU)から形成されること、
及び/又は
c)前記医療器具(12)が、器具ハンドル(18)に連結するための少なくとも1つの第1連結要素(60)を含むこと、
又は
前記医療器具(12)が、器具ハンドル(18)に連結するための少なくとも1つの第1連結要素(60)を含むこと、及び、前記第1連結要素(60)が、連結突起(62)の形態に構成されること、
を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の股関節内補綴物システムであって、
a)前記医療器具(12)が、器具ハンドル(18)を含むこと、
又は
b)前記医療器具(12)が、やすりハンドル(20)の形態に構成される器具ハンドル(18)を含むこと、
又は
c)前記医療器具(12)が、器具ハンドル(18)を含むこと、前記器具ハンドル(18)が、打撃面(24)を備えた打撃体(22)を含むこと、及び、前記打撃体(22)が、前記器具ハンドル(18)の近位端に配置又は形成される、或いは、前記器具ハンドル(18)の前記近位端を形成すること、
又は
d)前記医療器具(12)が、やすりハンドル(20)の形態に構成される器具ハンドル(18)を含むこと、前記器具ハンドル(18)が、打撃面(24)を備えた打撃体(22)を含むこと、及び、前記打撃体(22)が、前記器具ハンドル(18)の近位端に配置又は形成される、或いは、前記器具ハンドル(18)の前記近位端を形成すること、
を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項5】
請求項4に記載の股関節内補綴物システムであって、
a)前記器具ハンドル(18)が、前記少なくとも1つの第1連結要素(60)と連結位置において力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合させるための少なくとも1つの第2連結要素(68)を含むこと、
又は
b)前記器具ハンドル(18)が、前記少なくとも1つの第1連結要素(60)と連結位置において力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合させるための少なくとも1つの第2連結要素(68)を含むこと、並びに
b1)前記少なくとも1つの第2連結要素(68)が、前記少なくとも1つの第1連結要素(60)を収容するための連結要素受け(70)の形態に構成されること、
及び/又は
b2)前記少なくとも1つの第2連結要素(68)が、前記器具ハンドル(18)の遠位端(28)に配置又は形成される、或いは、前記器具ハンドル(18)の前記遠位端(28)を形成すること、
を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の股関節内補綴物システムであって、前記連結凹部(50)が、前記連結錐体(38)を力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で収容するように構成されること、を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の股関節内補綴物システムであって、
a)前記
挿入方向(80)が、前
記長手方向軸(82)に対し
て垂直に走
ること、
又は
b)前記連結凹部(50)が、前記挿入開口(80)に対して交差方向に開放している下方挿入開口(84)を有すること、
又は
前記連結凹部(50)が、前記挿入開口(80)に対して交差方向に、即ち垂直な方向に開放している下方挿入開口(84)を有すること、
又は
前記連結凹部(50)が、前記挿入開口(80)に対して交差方向に開放している下方挿入開口(84)を有すること、及び、前記連結挿入部(56)が前記連結挿入部受け(54)内に挿入される際に、前記側方挿入開口(78)及び前記下方挿入開口(84)が自由にアクセス可能であるような仕方で、前記連結基体(52)が前記連結挿入部(56)を包囲すること、
又は
前記連結凹部(50)が、前記挿入開口(80)に対して交差方向に、即ち垂直な方向に開放している下方挿入開口(84)を有すること、及び、前記連結挿入部(56)が前記連結挿入部受け(54)内に挿入される際に、前記側方挿入開口(78)及び前記下方挿入開口(84)が自由にアクセス可能であるような仕方で、前記連結基体(52)が前記連結挿入部(56)を包囲すること
、
又は
c)前記連結挿入部(56)が、前記側方挿入開口(78)及び/又は前記下方挿入開口(84)を画定する縁部又は移行領域を規定すること、
又は
d)前記
挿入方向(80)が、前
記長手方向軸(82)に対し
て垂直に走
ること、並びに
d1)前記連結凹部(50)が、前記挿入開口(80)に対して交差方向に開放している下方挿入開口(84)を有すること、
又は
前記連結凹部(50)が、前記挿入開口(80)に対して交差方向に、即ち垂直な方向に開放している下方挿入開口(84)を有すること、
又は
前記連結凹部(50)が、前記挿入開口(80)に対して交差方向に開放している下方挿入開口(84)を有すること、及び、前記連結挿入部(56)が前記連結挿入部受け(54)内に挿入される際に、前記側方挿入開口(78)及び前記下方挿入開口(84)が自由にアクセス可能であるような仕方で、前記連結基体(52)が前記連結挿入部(56)を包囲すること、
又は
前記連結凹部(50)が、前記挿入開口(80)に対して交差方向に、即ち垂直な方向に開放している下方挿入開口(84)を有すること、及び、前記連結挿入部(56)が前記連結挿入部受け(54)内に挿入される際に、前記側方挿入開口(78)及び前記下方挿入開口(84)が自由にアクセス可能であるような仕方で、前記連結基体(52)が前記連結挿入部(56)を包囲すること、
及び/又は
d2)前記連結挿入部(56)が、前記側方挿入開口(78)及び/又は前記下方挿入開口(84)を画定する縁部又は移行領域を規定すること、
を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の股関節内補綴物システムであって、
a)前記連結凹部(50)が、内側錐体(92)の形態を少なくとも一部で有する内輪郭(90)を有すること、
又は
b)前記連結凹部(50)が、内側錐体(92)の形態を少なくとも一部で有する内輪郭(90)を有すること、並びに
b1)前記内側錐体(92)が、前記下方挿入開口(84)を通過する長手方向錐体軸を規定すること、
及び/又は
b2)前記内側錐体(92)の断面が、前記下方挿入開口(84)への方向において増加すること、
及び/又は
b3)断面狭小部(96)が、前記内側錐体(92)と前記下方挿入開口(84)との間に形成されること、
を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の股関節内補綴物システムであって、前記連結挿入部受け(54)が、側方連結挿入部受け開口(98)及び下方連結挿入部受け開口(100)を有すること、を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項10】
請求項9に記載の股関節内補綴物システムであって、
a)前記側方連結挿入部受け開口(98)が、前記連結挿入部受け(54)内に前記連結挿入部(56)が挿入されるように構成されること、
及び/又は
b)前記連結挿入部受け(54)が、前記連結挿入部受け(54)の自由断面を前記下方連結挿入部受け開口(100)への方向において縮小することにより形成されるアンダカット(102)を有すること、
及び/又は
c)前記第1連結要素(60)が前記連結基体(52)上に、前記下方連結挿入部受け開口(100)と逆に又はほぼ逆に向くような仕方で配置されること、
を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の股関節内補綴物システムであって、前記連結挿入部(56)が、前記連結挿入部受け(54)内で、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で保持されること、を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の股関節内補綴物システムであって、前記医療器具(12)が、前記連結挿入部(56)と前記連結基体(52)とを接続位置において力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で接続するための接続装置(106)を含むこと、を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項13】
請求項12に記載の股関節内補綴物システムであって、前記接続装置(106)が、掛止式又はスナップ式接続装置(108)の形態に構成されること、を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項14】
請求項
12又は13に記載の股関節内補綴物システムであって、
a)前記接続装置(106)が、一方で前記連結挿入部(56)上に、他方で前記連結基体(52)上に形成される第1及び第2接続要素(110、112)を含むこと、及び、前記第1接続要素と前記第2接続要素とが、前記接続位置において力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合していること、
又は
b)前記接続装置(106)が、一方で前記連結挿入部(56)上に、他方で前記連結基体(52)上に形成される第1及び第2接続要素(110、112)を含むこと、及び、前記第1接続要素と前記第2接続要素とが、前記接続位置において力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合していること、並びに
b1)前記第1接続要素(110)が、接続要素凹部(114)の形態に構成されること、及び、前記第2接続要素(112)が、接続突起(116)の形態に構成されること、
及び/又は
b2)前記第1接続要素(110)及び/又は前記第2接続要素(112)が、前記側方連結挿入部受け開口(98)及び/又は前記側方挿入開口(78)と平行に又は略平行に延びること、
及び/又は
b3)前記連結基体(52)上で前記連結挿入部受け(54)内に形成される前記接続要素(110)が、前記下方連結挿入部受け開口(110)への方向を向くように配置又は形成されること、
を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の股関節内補綴物システムであって、
a)前記股関節内補綴物システムが、前記連結挿入部(56)を前記連結基体(52)の前記連結挿入部受け(54)から解放するための解放器具(120)を含むこと、
又は
b)前記股関節内補綴物システムが、前記連結挿入部(56)を前記連結基体(52)の前記連結挿入部受け(54)から解放するための解放器具(120)を含むこと、前記解放器具(120)が、解放部材(122)を含むこと、前記連結基体(52)が、解放部材開口(124)を含むこと、及び、前記解放部材(122)が、前記解放部材開口(124)の領域において前記連結基体(52)の厚さ(128)よりも大きい長さ(126)を有すること、
を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の股関節内補綴物システムであって、
前記股関節内補綴物システムが、前記連結挿入部(56)を前記連結基体(52)の前記連結挿入部受け(54)から解放するための解放器具(120)を含むこと、前記解放器具(120)が、解放部材(122)を含むこと、前記連結基体(52)が、解放部材開口(124)を含むこと、及び、前記解放部材(122)が、前記解放部材開口(124)の領域において前記連結基体(52)の厚さ(128)よりも大きい長さ(126)を有すること、並びに
a)前記解放部材開口(124)が、前記側方連結挿入部受け開口(98)の反対側に配置又は形成されること、
及び/又は
b)前記解放部材(122)が、前記解放器具から突出する解放ピン(130)の形態に構成されること、
及び/又は
c)前記解放部材(122)が雄ねじを備えること、及び、前記解放部材開口(124)が、前記雄ねじに対応する雌ねじを備えること、
を特徴とする股関節内補綴物システム。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の股関節内補綴物システムであって、前記股関節内補綴物システムが、股関節内補綴物(16)の人工関節ステム(14)を含み、該人工関節ステム(14)が、突出する連結錐体(38)を有すること、特徴とする股関節内補綴物システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込まれた股関節内補綴物の人工関節ステムを患者の大腿骨から引き抜くための医療器具を含む股関節内補綴物システムであって、前記医療器具が、人工関節ステムから突出する連結錐体を収容するための連結凹部を備えた連結体を有する、股関節内補綴物システムに関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり損傷した股関節を治療するために、股関節が股関節内補綴物に置き換えられてきた。これによって、そのために準備された大腿骨の空洞内に人工関節ステムが挿入される。例えば、頸部伸展部又は関節頭に連結可能な突出する連結錐体を有する人工関節ステムが知られている。股関節内補綴物の更なる構成要素として、患者の骨盤骨内に固定される関節窩がある。任意で寛骨臼は、極力耐摩耗性である関節頭との摺動対を形成する関節挿入物を収容することができる。
【0003】
例えば股関節内補綴物を埋め込むための手術の過程で、準備された骨空洞内に過度に大きい又は過度に小さい人工関節ステムが挿入される場合、この人工関節ステムは除去されねばならない。この目的で、人工関節ステムの連結錐体に連結可能な連結体を有する医療器具が使用される。ここでの1つの問題として、特に連結錐体は医療器具の連結体と協働する際に損傷し得るということがある。連結錐体は損傷すれば頸部片又は関節頭との確実な接続がもはや可能でないため、このことは全く望ましくない。これによって、連結錐体と頸部片又は関節頭との間の接続は自動ロックにより生じる。この目的で、互いと最適に適合する表面が必要である。連結錐体上に擦り傷及び隆起部があると、確実な自動ロック接続が防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、冒頭に記載した種類の股関節内補綴物システムを、患者の大腿骨から人工関節ステムを単純かつ確実に引き抜くことができるように改良することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明によれば冒頭に記載した種類の股関節内補綴物システムにおいて、前記連結体が、連結基体と、前記連結基体の連結挿入部受け内に収容されて前記連結凹部を規定する連結挿入部とを含むという点で達成される。
【0006】
冒頭に記載した種類の医療器具の本発明により提案する更なる展開により、特に、前記人工関節ステムの前記連結錐体よりも軟性である材料を用いて前記連結凹部を画定することが可能になる。従って、前記連結錐体の損傷を単純かつ確実なやり方で防止することができる。前記連結体を、連結基体と連結挿入部とによる少なくとも二部分構成にすることにより、任意で材料の異なる前記連結挿入部及び前記連結基体を形成することも可能になる。従って、特に前記連結錐体の損傷のリスクがそれを用いれば最小になる材料から、前記連結挿入部を形成することができる。一方、前記人工関節ステムを引き抜くために加えられるべき力を伝達し、前記力を前記連結錐体へ導入するために、前記連結基体は、十分に安定した構成とすることができる。
【0007】
前記連結基体は、好ましくは前記連結挿入部よりも硬質の材料から形成される。従って、前記連結錐体が前記連結挿入部のみと接触して協働することができる場合、前記連結体による前記人工関節ステムの前記連結錐体の損傷を最小にすることができる。例えば前記連結錐体は、インプラント鋼から、或いは、特にチタン又はチタン合金から形成することができる。その際、前記連結挿入部は、好ましくは前記連結錐体が形成される材料よりも軟性である材料から形成される。
【0008】
前記医療器具の十分な安定性を確実にするために、前記連結基体が金属から形成されると有利である。特に前記連結基体は、器具鋼から例えばコバルト・クロム合金から形成することができる。
【0009】
前記連結挿入部がプラスチックから形成される場合、前記股関節内補綴物システムは、単純かつ安価なやり方で構成することができる。特に、前記プラスチックは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び/又はポリプロピレン(PP)、及び/又はポリフェニレンスルホン(PPSU)とすることができる。言及した前記プラスチックは単純かつ安全に滅菌することができるのであり、これらのプラスチックは前記連結錐体が損傷することを防止するよう十分に軟性ではあるが、前記人工関節ステムを大腿骨から引き抜くことにとって必要な力を前記人工関節ステムに伝達できるようにするために寸法的に十分に安定している。
【0010】
前記医療器具が、器具ハンドルに連結するための少なくとも1つの第1連結要素を含むと好ましい。このことにより、特に前記連結体を、引抜き調整器とも呼ばれる調整器の形態に構成し、調整器を器具ハンドルに連結できることが可能になる。従って、特に寸法の異なる及び形状の異なる連結凹部を有する、ただし唯1つの器具ハンドルを有する複数の連結体を提供することが可能である。その際外科医は、例えば、適切な前記連結体を選択し、この連結体を前記人工関節ステムの前記連結錐体と係合させ、その後この連結体を前記器具ハンドルに連結して前記人工関節ステムを引き抜くことができる。従って、モジュール式股関節内補綴物システムを形成することができるのであり、モジュール式股関節内補綴物システムは、多数の異なる人工関節ステムを引き抜くための部品の数が最小限で済む。
【0011】
前記第1連結要素が連結突起の形態に構成される場合、前記連結基体は単純なやり方で形成することができる。連結突起は、例えば前記器具ハンドル上の対応する連結要素受けにより収容することができる。
【0012】
前記医療器具は、好ましくは器具ハンドルを含む。前記器具ハンドルは、特に前記連結基体との一体部品として形成することができる。一方記載するように、前記器具ハンドルは前記連結基体に一時的に連結可能とすることもできる。例えば前記器具ハンドルは、やすりハンドルの形態に構成することができる。特に前記やすりハンドルは、DE 10 2008 064518 A1に記載されるように構成することができる。前記器具ハンドルは、特にやすり体に連結して外科用やすりを形成することができる。大腿骨内の空洞は、前記股関節内補綴物の前記人工関節ステムを挿入する前に、前記やすりを用いて準備することができる。前記骨空洞が前記所望のやり方で準備されると、前記やすりハンドルは前記やすり体から分離することができる。その後、例えば前記やすりハンドルを前記第1連結要素と係合させることにより、前記連結基体を前記やすりハンドルに連結することができる。このモジュール式設計の結果として、股関節内補綴物の埋め込みにとって必要な器具の数を更に最小にすることができる。
【0013】
前記器具ハンドルが打撃面を備えた打撃体を含み、前記打撃体が、前記器具ハンドルの近位端に配置又は形成される、或いは、前記器具ハンドルの前記近位端を形成すると有利である。前記打撃体の前記打撃面に、例えばハンマーでもって作用することにより前記器具ハンドルが前記連結体に連結されると、前記器具ハンドルから前記連結体を介して、前記医療器具に連結された前記人工関節ステムに力の衝撃を伝達し、前記人工関節ステムを大腿骨骨幹部から解放する又は前記人工関節ステムと患者の大腿との間の接続を緩めることができる。
【0014】
前記器具ハンドルが、前記少なくとも1つの第1連結要素と連結位置において力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合させるための少なくとも1つの第2連結要素を含む場合、前記器具ハンドルを前記連結体に、単純なやり方で接続することができる。特に前記第1連結要素と前記第2連結要素とは、互いに対応して形成され、互いに適合して最適に連結する。
【0015】
前記少なくとも1つの第2連結要素は、好ましくは前記少なくとも1つの第1連結要素を収容するための連結要素受けの形態に構成される。特に前記第1連結要素が、前記連結要素受けに対応する連結突起の形態に構成される場合、連結要素受けを提供することが有利である。
【0016】
特に低侵襲の外科的介入では、前記少なくとも1つの第2連結要素が前記器具ハンドルの遠位端に配置又は形成される、或いは、前記器具ハンドルの前記遠位端を形成すると有利である。従って前記器具ハンドルは、前記連結体と単純かつ確実なやり方で係合させることができる。
【0017】
前記連結凹部は、好ましくは前記連結錐体を力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で収容するように構成される。従って、前記連結体と前記人工関節ステムの前記連結錐体との間の安定した接続を形成することができ、これによって大腿骨からの前記人工関節ステムの引き抜きをより容易にすることができる。
【0018】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記連結凹部が前記連結錐体により規定される長手方向軸に対して交差方向に、特に垂直に走る挿入方向において前記連結錐体を前記連結凹部内へ挿入するための側方挿入開口を有することを実現することができる。特に前記長手方向軸は、前記連結錐体の対称軸により規定することができる。従って、前記医療器具を前記連結体でもって前記連結錐体の隣に案内し、その後、前記挿入方向において医療器具を前記連結錐体に押し被せ、連結錐体を前記連結凹部内に収容することができる。
【0019】
更に前記連結凹部が、前記挿入方向に対して交差方向に、特に垂直な方向に開放している下方挿入開口を有すると有利である。前記下方挿入開口により、特に前記人工関節ステムを引き抜くために前記人工関節ステムを前記連結錐体から分離する必要のないことが可能になる。前記医療器具が前記人工関節ステムの前記連結錐体と係合している際、特に前記人工関節ステム上の接続領域が前記下方挿入開口を通過することができる。前記接続領域は、前記連結錐体を前記人工関節ステムの実際のシャフトに接続する。特に、前記シャフト、前記接続領域、及び前記連結錐体は、前記人工関節ステムを形成する一体部品として形成することができる。
【0020】
前記連結挿入部が前記連結挿入部受け内に挿入される際に、前記側方挿入開口及び前記下方挿入開口が自由にアクセス可能であるような仕方で、前記連結基体が前記連結挿入部を包囲すると更に有利である。従って、前記連結錐体は、前記連結凹部内に挿入することができるが、前記連結挿入部のみと接触し得るのであり、前記連結基体とは接触し得ない。従って、前記連結錐体を前記連結基体により損傷することを回避することができる。
【0021】
前記連結挿入部は、好ましくは前記側方挿入開口及び/又は前記下方挿入開口を画定する縁部又は移行領域を規定する。従って、特に前記連結錐体を前記連結凹部内に挿入する際に前記連結錐体が前記連結挿入部のみと接触し得るのであり、これによって前記連結錐体の損傷のリスクを最小にできることが確実になる。
【0022】
前記医療器具と前記人工関節ステムとの間で特に良好な力の伝達を達成するために、前記連結凹部が、内側錐体の形態を少なくとも一部で有する内輪郭を有すると有利である。前記連結凹部への前記連結錐体の面当接を少なくとも部分的に達成するために、特に前記内側錐体を前記連結錐体に対応させて形成することができる。
【0023】
前記内側錐体が、前記下方挿入開口を通過する長手方向錐体軸を規定する場合、前記連結体は前記連結錐体に単純なやり方で連結することができる。
【0024】
特に前記内側錐体の断面が、前記下方挿入開口への方向において増加する場合、前記人工関節ステムから離れる方へ先細になっている連結錐体を、前記連結体と係合させることができる。
【0025】
特に、前記医療器具により前記人工関節ステムに引張力又は圧縮力を及ぼすことができるようにするために、前記内側錐体と前記下方挿入開口との間に断面狭小部が形成されると有利である。前記断面狭小部は、特に前記人工関節ステムの前記連結錐体と前記シャフトとの間の前記移行領域内へ係合することができるのであり、移行領域は、狭窄部の形態に構成することができる。結果として、特に前記連結体上の前記断面狭小部を前記人工関節ステム上の前記狭窄部へと側方に挿入することができる。前記断面狭小部は、例えば前記長手方向錐体軸への方向を向く環状突起の形態に構成することができ、環状突起はそれ自体で完全に閉鎖されるわけではない。
【0026】
前記連結挿入部受けが、側方連結挿入部受け開口及び下方連結挿入部受け開口を有すると有利である。従って前記連結挿入部は、前記側方連結挿入部受け開口を通して前記連結挿入部受け内へ挿入することができる。前記下方連結挿入部受け開口により、特に前記連結挿入部の前記下方挿入開口が自由にアクセス可能のままであることが可能になる。
【0027】
前記側方連結挿入部受け開口は、好ましくは前記連結挿入部受け内に前記連結挿入部が挿入されるように構成される。従って前記連結挿入部と前記連結基体とは、単純かつ確実なやり方で互いに係合させることができる。
【0028】
特に、前記医療器具による引張力を前記人工関節ステムに伝達できるようにするために、前記連結挿入部受けの自由断面を前記下方連結挿入部受け開口への方向において縮小することにより形成されるアンダカットを前記連結挿入部受けが有すると好ましい。従って、特に軸方向への力、即ち、特に前記長手方向錐体軸と平行な力を、前記連結基体から前記連結挿入部へ、前記連結挿入部が前記連結基体から解放し得ることなく伝達することができる。
【0029】
前記連結挿入部は、好ましくは前記連結挿入部受け内で、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で保持される。このことにより、特に例えば前記医療器具を洗浄するために、前記連結挿入部を前記連結基体から分離することが可能になる。
【0030】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記医療器具が、前記連結挿入部と前記連結基体とを接続位置において力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で接続するための接続装置を含むことを実現することができる。前記接続装置を用いれば、特に前記連結挿入部と前記連結基体との間の規定の接続を確実にすることができる。
【0031】
前記接続装置が掛止式又はスナップ式接続装置の形態に構成される場合、前記股関節内補綴物システムは単純かつ安価なやり方で構成することができる。
【0032】
前記接続装置は、一方で前記連結挿入部上に、他方で前記連結基体上に形成される第1及び第2接続要素を含み、前記第1接続要素と前記第2接続要素とが前記接続位置において力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合している場合、単純なやり方で構成することができる。
【0033】
前記第1接続要素が接続要素凹部の形態に構成され、前記第2接続要素が接続突起の形態に構成されると有利である。特に前記第1接続要素と前記第2接続要素とは、互いに対応して形成される。これらの接続要素を、前記連結基体上に及び前記連結挿入部上に選択的に形成することもできる。
【0034】
前記第1及び/又は前記第2接続要素が、前記側方連結挿入部受け開口及び/又は前記側方挿入開口と平行に又は略平行に延びると好ましい。このことは、特に前記側方挿入開口が挿入開口面を規定し、前記接続要素がこの挿入開口面と平行に延びるという点で理解することができる。このことは、特に前記接続要素が互いに係合している結果として、前記連結挿入部が前記連結挿入部受けから、付加的な引き抜き力無しには移動し得ないという利点を有する。従って、特に前記接続要素は、前記挿入方向に対して交差方向に延び、前記連結挿入部と前記連結基体との間の相対移動を防止することができる。
【0035】
前記連結体上で前記連結挿入部受け内に形成される前記接続要素が、前記下方連結挿入部受け開口への方向を向くように配置又は形成される場合、前記医療器具は単純なやり方で構成することができる。例えば前記接続要素は、接続突起として又は接続要素受けとして、例えばリブ又は溝として構成することができる。
【0036】
前記医療器具を、特に低侵襲外科術の場合に使用できるようにするために、前記第1連結要素が前記連結基体上に、前記下方連結挿入部受け開口と逆に又はほぼ逆に向くような仕方で配置されると有利である。例えば前記第1連結要素は、前記連結基体から突き出して前記下方連結挿入部受け開口が開放している方向を向く方向と逆の方向を向く、連結突起の形態に構成される。
【0037】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記股関節内補綴物システムが、前記連結挿入部を前記連結基体の前記連結挿入部受けから解放するための解放器具を含むことを実現することができる。特に連結挿入部及び連結基体を洗浄及び滅菌するために、前記解放要素により、前記連結挿入部と前記連結基体とを互いから分離することが可能になる。
【0038】
前記解放器具が解放部材を含み、前記連結基体が解放部材開口を含み、前記解放部材が、前記解放部材開口の領域において前記連結基体の厚さよりも大きい長さを有すると好ましい。特に前記解放部材を前記解放部材開口内へ挿入することにより、前記連結挿入部に、好ましくは前記挿入方向と平行な方向に圧縮力を及ぼすことができるような仕方で前記解放部材が前記連結挿入部受け内へ突出し得ることがこの構成により可能になり、これによって、前記連結挿入部は前記連結挿入部受けからそれぞれ押し出す又は圧迫することができる。従って、特に前記接続装置を解放することにとって必要な力、即ち、相互に係合された第1接続要素と前記第2接続要素とを係合解除することにとって必要な力を前記連結挿入部に伝達することができる。
【0039】
前記解放部材開口が前記側方連結挿入部受け開口の反対側に配置又は形成される場合、前記連結挿入部は、前記連結基体から特に単純なやり方で解放することができる。従って前記連結挿入部は、前記連結挿入部受けから前記側方連結挿入部受け開口を通して直接圧迫することができる。
【0040】
前記解放部材が、前記解放要素から突出する解放ピンの形態に構成される場合、前記解放要素は単純なやり方で構成することができる。
【0041】
前記解放部材が雄ねじを備え、前記解放部材開口が前記雄ねじに対応する雌ねじを備える場合、前記接続装置の前記係合された接続要素間で作用する力を特に容易に克服して前記連結挿入部と前記連結基体とを互いから解放することができる。従って、前記解放部材は前記解放部材開口内にねじ込むことができ、これによって前記連結挿入部に解放力を、非常に調節されたやり方で伝達することができる。
【0042】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記股関節内補綴物システムが股関節内補綴物の人工関節ステムを含み、この人工関節ステムが、突出する連結錐体を有することを実現することができる。特に前記股関節内補綴物システムは、その種類の複数の異なる人工関節ステムを含むことができる。前記股関節内補綴物システムは、前記人工関節ステムの各連結錐体にとって適切な対応する連結体を含むことができるのであり、モジュール式股関節内補綴物システムを形成することができる。
【0043】
本発明の、好適な実施形態の後続の記載は、図面と合わせると更に説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明による股関節内補綴物システムの全体斜視図。
【
図3】人工関節ステムに連結される連結体の側面図。
【
図4】人工関節ステム、連結基体、及び連結挿入部の分解図。
【
図6】解放要素を用いて連結基体から連結挿入部を解放する際の連結体の部分破断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1に、全体として参照符号10で表す股関節内補綴物システムの第1実施形態を概略的に描く。この股関節内補綴物システムは、埋め込まれた股関節内補綴物16の人工関節ステム14を患者の大腿骨から引き抜くための医療器具12を含む。
【0046】
任意で、股関節内補綴物システム10は人工関節ステム14を更に含み、更に任意で器具ハンドル18を含む。器具ハンドル18は、例えば DE 10 2008 064 518 A1に記載されるように、特にやすりハンドル20の形態に構成することができる。
【0047】
器具ハンドル18はその近位端に近位方向を向くとともに、器具ハンドル18から離れる方を向いて僅かに凸状に湾曲している打撃面24を備えた打撃体22を有する。従って打撃体は、例えば
図1に描くように、器具ハンドル18の近位端を形成する。
【0048】
器具ハンドル18は、打撃体22から器具ハンドルの遠位端28に延びる長尺の曲がった器具体26を有する。
【0049】
人工関節ステム14は、遠位端32へ向かって断面が先細になっている長尺シャフト体30を含む。
【0050】
シャフト体の近位端34から連結錐体38が、シャフト体30の端面36に関して傾斜した状態で突出する。連結錐体38は、シャフト体30から離れる方を向く円形端面40への方向において断面が先細になっている切頂錐体の形態に構成される。
【0051】
連結錐体38の遠位端42には短い頸部区域44が接続され、頸部区域44は、連結錐体38の遠位端42にて断面が縮小され、従って連結錐体38とシャフト体30との間に狭窄部を形成する。
【0052】
連結錐体38は、股関節内補綴物16において図示しない関節頭に接続するように働く。関節頭は、人工関節ステム14と関節頭とを自動ロックにより互いに接続できるような、連結錐体38に対応する受承錐体を有する。任意で必要であれば、関節頭に関して記載したやり方において連結錐体38を伸展区域に連結することもでき、伸展区域は関節頭に連結することができる。伸展区域は図示しない。
【0053】
人工関節ステム14が、そのために準備された患者の大腿骨の空洞内に挿入されるが外科医が望むように適合しない場合、人工関節ステム14は大腿骨から再度引き抜かねばならない。器具12はこの目的に適う。前記器具12は、二部分の引抜き調整器46の形態に構成されるのであり、連結錐体を収容するための連結凹部50を備えた連結体48として働く。
【0054】
連結体48は、連結挿入部56が力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で中に収容される連結挿入部受け54を備えた連結基体52を含む。連結凹部50は、連結挿入部56上に形成される。
【0055】
連結基体52は、連結挿入部56よりも硬質の材料から形成される。例えば連結基体52は、金属、特に器具スチールから形成することができる。
【0056】
連結挿入部56は、好ましくは人工関節ステム14、特にその連結錐体38が形成される材料よりも軟性である材料から形成される。従って、引抜き調整器46の連結凹部50内で受けられる際の連結錐体38を損傷し得るリスクを最小にすることができる。連結挿入部56は、好ましくはプラスチックから形成される。例えば前記プラスチックは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン(PP)、及び/又はポリフェニレンスルホン(PPSU)とすることができる。ここでのPEEKは、特に最も適切な機械材料基準値、特に引張及び圧縮強度、硬度、ならびに弾性率を有する。
【0057】
器具12を器具ハンドル18に連結できるようにするために第1連結要素60が、連結体48上で、近位方向を向く端面58に配置又は形成される。前記連結要素60は、特に図に概略的に描くように、端面58に対して交差方向に、特に垂直に走る連結突起長手方向軸64を規定する連結突起62の形態に構成することができる。連結突起62上には側方に、アンダカットを規定する凹部66が形成される。
【0058】
第1連結要素60と連結位置において力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合させるための、第1連結要素60に対応する第2連結要素68が、器具ハンドル18上に形成される。第1連結要素60を例えば
図1~
図3に描く。第2連結要素68は、第1連結要素60を収容するための連結要素受け70の形態に構成される。連結要素受け70は、連結突起62に対応させて形成され、連結突起をポジティブロック式の又は略ポジティブロック式のやり方で収容する。
【0059】
引抜き調整器46を器具ハンドル18に固着するように働いているのは、連結突起長手方向軸64に対して交差方向に走る枢動軸74の周りで枢動可能であるように器具ハンドル18上に装着される、枢動可能な固着部材72である。遠位側にある固着部材72の端部は、ロック位置では例えば
図2に描くように凹部66内へ枢動されて、引抜き調整器46から器具ハンドル18を除去することのできる解放位置では外へ枢動されるロック式突出部76の形態に構成される。
【0060】
固着部材72は、器具ハンドル18上の対応する枢動機構に連結され、第1連結要素60に接続するために又は第1連結要素から解放するために枢動軸74の周りで枢動される。特に枢動機構は、DE 10 2008 064 518 A1に記載されるように構成することができる。
【0061】
第2連結要素68は、それぞれ器具ハンドル18の遠位端28に配置される又は端部28を形成する。
【0062】
連結凹部50は、連結錐体38を力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で収容するように構成される。連結凹部は、
図2に矢印80で概略的に示す挿入方向において連結錐体38を連結凹部50内へ押し込むための側方挿入開口78を有する。挿入方向80は、連結錐体38により規定される長手方向軸82に対して交差方向に特に垂直に走る。
【0063】
連結凹部50は、更に、挿入開口80に対して交差方向の特に垂直な方向に開放している下方挿入開口84を有する。
【0064】
連結基体52は、シェル様のやり方で又はシェルの形態に構成され、連結挿入部56が連結挿入部受け54内に収容される際に側方挿入開口78及び下方挿入開口84が自由にアクセス可能であるような仕方で連結挿入部56を包囲する。この構成を、特に
図1~
図3に容易に見ることができる。
【0065】
連結挿入部56は、側方挿入開口78ならびに縁部86、及び、下方挿入開口84を規定する縁部88をそれぞれ規定する。
【0066】
連結凹部50は、少なくとも一部で内側錐体92の形態を少なくとも有する内輪郭90を有する。
【0067】
内側錐体92は、下方挿入開口84を通過する長手方向錐体軸94を規定する。内側錐体92は、更に下方挿入開口84への方向へ増加する断面を有する。
【0068】
連結凹部50は更に、内側錐体92と下方挿入開口84との間に断面狭小部96が形成されるような仕方で構成される。人工関節ステム14が引抜き調整器46に連結される際、断面狭小部96は、連結錐体38とシャフト体30との間の頸部区域44内へ係合する。断面狭小部96は、長手方向錐体軸94への方向に凸状に湾曲しているいわば環状突起を形成する。
【0069】
連結挿入部受け54は、側方連結挿入部受け開口98及び下方連結挿入部受け開口100を有する。連結挿入部56は、相応に形成された側方連結挿入部受け開口98を通して連結挿入部受け54内にこれも挿入方向80に押し込むことができる。
【0070】
連結挿入部受け内で軸方向において、即ち長手方向錐体軸94と平行に連結挿入部56を固着するように働いているのは、近位方向を向いてそれ自体では閉鎖されない環状面104により画定されるアンダカット102である。アンダカット102は、連結挿入部受け54の自由断面を下方連結挿入部受け開口100への方向において縮小することにより形成される。
【0071】
連結挿入部56の外輪郭が連結挿入部受け54の内輪郭にほぼ一致するのであり、連結挿入部56は連結挿入部受け54内で、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で保持される。
【0072】
医療器具12上に、連結挿入部56を連結挿入部受け54内で、挿入方向80とは逆の移動に抗して固着するための接続装置106が設けられ、連結挿入部56と連結基体52とが、例えば
図2に描く接続位置において、力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で互いに接続される。
【0073】
接続装置106は、特に掛止式又はスナップ式接続装置108の形態に構成することができる。
【0074】
接続装置106は、一方で連結基体52上に、他方で連結挿入部56上に配置又は形成される第1接続要素110及び第2接続要素112を含む。接続要素110と接続要素112とは、接続位置において力ロック式及び/又はポジティブロック式のやり方で係合している。
【0075】
第1接続要素110は、接続要素凹部114の形態に構成される。第2接続要素112は、接続突起116の形態に構成される。
【0076】
接続要素110及び112は、側方連結挿入部受け開口98により規定されるとともに側方挿入開口78によっても規定される開口面118と平行に延びる。
【0077】
長尺の直方体構成である接続要素凹部114はそれぞれ、下方連結挿入部受け開口100への方向を向くように配置又は形成される。
【0078】
更に下方連結挿入部受け開口100は、第1連結要素60により規定される方向とは反対の方向を向いて開放している。
【0079】
股関節内補綴物システム10は、更に連結挿入部56を連結基体52の連結挿入部受け54から解放するための解放器具120を含むことができる。解放器具は、解放部材122を含む。
【0080】
連結基体52上に解放部材開口124が形成される。解放部材開口124の領域において、解放部材122の長さ126は、連結基体52の厚さ128よりも大きい。解放部材開口124は、それぞれ側方連結挿入部受け開口98の反対側に配置又は形成される。
【0081】
解放部材122は、解放器具120のシャフト134のシャフト長手方向軸132に対して交差方向に走る端面136から垂直に突出する解放ピン130の形態に構成される。
【0082】
解放器具120の近位端が、ハンドル138を形成する。
【0083】
好ましくは解放部材122に雄ねじが設けられ、雄ねじに対応する雌ねじが解放部材開口124に設けられる。
【0084】
解放ピン130を解放部材開口124内にねじ込むことにより、連結挿入部56は連結挿入部受け54から、矢印140により規定される方向に押し出される。矢印140により規定される方向は、挿入方向80と逆に向けられる。特定の状況下において、このために大きい力が必要なことがある。というのも、リブ形の接続突起116が接続要素凹部114から出てくることができるよう、接続突起が連結挿入部56を幾分圧縮せねばならないからである。
【0085】
連結挿入部受け54からの連結挿入部56の排出を促進するために、側方連結挿入部開口98から始まる窪み142が、連結挿入部受け54上で接続要素凹部114のちょうど前まで設けられる。窪み142内に接続突起116が中へ沈むことができる。従って、具体的に言えば、連結挿入部56を連結挿入部受け54内に押し込む際と、解放器具120を用いて連結挿入部56を連結挿入部受け54から圧迫する際の両方においてのみ、接続突起は短い突出リブ144を克服すればよい。
【0086】
引抜き調整器46は、好ましくは連結挿入部56の縁部86及び88のみが連結錐体38に接触できるのであり連結基体52の縁部は一切接触できないような仕方で構成される。従って、連結基体52により連結錐体38が損傷し得ることを防止することができる。好ましくは、連結基体52も金属から形成される。
【0087】
人工関節ステム14を挿入するための空洞を大腿骨上に準備するために、第1連結要素60は、特に器具ハンドル18に連結可能であるやすり体上の対応する連結要素と同一に構成することができる。
【0088】
記載した股関節内補綴物システムにより、大腿骨から人工関節ステム14を慎重に引き抜くことができるのであり、具体的に言えば連結錐体38を損傷させることはない。
【符号の説明】
【0089】
10 股関節内補綴物システム
12 器具
14 人工関節ステム
16 股関節内補綴物
18 器具ハンドル
20 やすりハンドル
22 打撃体
24 打撃面
26 器具体
28 端部
30 シャフト体
32 端部
34 端部
36 端面
38 連結錐体
40 端面
42 端部
44 頸部区域
46 引抜き調整器
48 連結体
50 連結凹部
52 連結基体
54 連結挿入部受け
56 連結挿入部
58 端面
60 第1連結要素
62 連結突起
64 連結突起長手方向軸
66 凹部
68 第2連結要素
70 連結要素受け
72 固着部材
74 枢動軸
76 ロック式突出部
78 側方挿入開口
80 矢印
82 長手方向軸
84 下方挿入開口
86 縁部
88 縁部
90 内輪郭
92 内側錐体
94 長手方向錐体軸
96 断面狭小部
98 側方連結挿入部受け開口
100 下方連結挿入部受け開口
102 アンダカット
104 環状面
106 接続装置
108 掛止式又はスナップ式接続装置
110 第1接続要素
112 第2接続要素
114 接続要素凹部
116 接続突起
118 開口面
120 解放器具
122 解放部材
124 解放部材開口
126 長さ
128 厚さ
130 解放ピン
132 シャフト長手方向軸
134 シャフト
136 端面
138 ハンドル
140 矢印
142 窪み
144 リブ