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特許7217710眼疾患の治療のための過リン酸化タウに特異的な抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】眼疾患の治療のための過リン酸化タウに特異的な抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230127BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230127BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230127BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20230127BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P27/02
A61P27/06
C12N15/13
C07K16/18 ZNA
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019556742
(86)(22)【出願日】2018-01-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2018050149
(87)【国際公開番号】W WO2018127519
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】PA201700006
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】591143065
【氏名又は名称】ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ペデルセン,ヤン,トーレイフ
(72)【発明者】
【氏名】ペデルセン,ラーズ,エステゴー
(72)【発明者】
【氏名】デクセル,ユストゥス,クラウス,アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥル-ラシード アズーニ,アヨデジ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンクヴィスト,ニーナ,ヘレン
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-502141(JP,A)
【文献】特表2014-531216(JP,A)
【文献】国際公開第2016/007414(WO,A1)
【文献】特許第6878395(JP,B2)
【文献】特表2019-529336(JP,A)
【文献】Phospho-Tau (Ser396) Monoclonal Antibody (PHF13.6),INVITROGEN CATALOG,2008年10月,#35-5300,pp.1-3
【文献】J. Biol. Chem. ,2015年02月13日,Vol.290, No.7,pp.4059-4074
【文献】J. Neurosci.,2016年05月25日,Vol.36, No.21,pp.5785-5798
【文献】Can. J. Ophthalmol.,2008年02月,Vol.43, No.1,pp.53-60
【文献】Med. Hypotheses.,2010年06月,Vol.74, No.6,pp.973-977
【文献】Exp. Eye Res.,2016年06月,Vol.147,pp.138-143
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈絡膜および網膜の疾患を治療するための、モノクローナル抗体を含む医薬組成物であって、
前記モノクローナル抗体が、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能であり、
前記モノクローナル抗体が、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み、
前記疾患が、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、並びに緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性からなる群から選択される、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病的過リン酸化(PHF)タウにおけるリン酸化セリン396残基(pS396)に特異的に結合するモノクローナル抗体の新規な種類、ならびに網膜アミロイドーシス(retinoid amyloidosis)、加齢黄斑変性症(ARMD)、および緑内障の治療にこれらの分子およびそれらのタウ結合フラグメントを使用する方法に関する。
【0002】
配列表の参照
本出願は、米国特許法施行規則(37 C.F.R.)第1.821条に従う1つまたは複数の配列表(以下参照)を含み、これは、コンピュータ可読媒体(ファイル名:1047-DKsequences ST25.txt、2017年12月12日に作成され、86kBのサイズを有する)で開示され、このファイルは、全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
アミロイドβ(Ab)を含む細胞外沈着は、網膜の老化の特徴である。世界的に不可逆的失明の主な原因である緑内障は、網膜神経節細胞(RGC)の選択的死によって特徴付けられる。Aβを遮断することにより、緑内障モデルにおいて網膜神経節細胞が保護される(Salt et al.,2014)。軸索に富んだ、微小管関連タンパク質タウが、アルツハイマー病および他のタウオパチーにおいて神経毒性の主なメディエータであるが、緑内障の患者が、眼および脳脊髄液中に変化したレベルのAβおよびタウを有することが示された(Nucci et al.,2011)。いくつかのエビデンスは、タウも網膜を損傷し得ることを示唆している。Chiasseu(J Neurosci.2016 May 25;36(21):5785-98)は、緑内障が、タウ蓄積、変化したリン酸化、およびミスソーティング(missorting)を含む、タウオパチーの特徴的な病理学的特徴を示すことを明らかにした。
【0004】
タウは、微小管動態において重要な役割を果たし、そのリン酸化は、細胞エネルギーの維持および細胞死シグナル伝達にとって重要なミトコンドリア動態の脱制御(deregulation)を含む細胞機能障害を生じる(Jeffery Experimental Eye Research 147(2016)138-143)。
【0005】
緑内障は、レーザー手術または従来の手術または点眼剤によって処置される。点眼剤は、眼からの流体の流出を増加させることによって作用し、かつ全身性の副作用が少なく、眼自体への変化に関連するプロスタグランジン類似体;流体の生成を減少させることによって作用し、全身性の副作用を有するβ遮断薬;流体の生成を減少させ、かつ排出を増加させるように作用するαアゴニスト;および眼内液の生成を減少させることによって眼圧を低下させるように作用する炭酸脱水酵素阻害剤(CAI)のいずれかである。有効な治療のためにこれらの薬剤の組合せが使用されることは珍しいことではない。別の作用機序によって作用する新たな治療選択肢が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ヒト(2N4Rアイソフォーム)タウ(配列番号1)のリン酸化残基セリン396に特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、およびそのエピトープ結合フラグメントに関する。抗体は、それらがリン酸化404残基に実質的に結合しないように、リン酸化残基396および404を区別することができるそれらの能力によってさらに特徴付けられる(配列番号2)。
【0007】
特定の理論によって制約されるものではないが、本発明者らによるエビデンスは、396ではなく残基404においてリン酸化されたタウタンパク質の存在下における、残基396においてリン酸化されたヒトタウタンパク質に対する本発明の抗体の区別および選択性が、病理学的および治療学的観点から顕著であることを実証している。本発明の抗体は、非病的であるが、リン酸化されたタウの存在下で、病的タウに対して選択的である。本発明の抗体は、正常なタウの存在下で、病的タウのタウもつれ(tau tangle)を除去することができる。特定の理論によって制約されるものではないが、タウ位置396においてリン酸化されたタウタンパク質を含むタウのもつれを除去することは、タウもつれへの病的タウのシーディングを防ぐものと考えられる。したがって、本発明の一態様は、分子がタウ位置404においてリン酸化されたタウタンパク質の存在下にある場合でも、396-リン酸化タウに選択的に結合することが可能な抗体に関する。本発明の関連する態様は、分子が非病原性タウの存在下にある場合でも、396-リン酸化タウに選択的に結合することが可能な抗体に関する。さらに定義される、本発明は、病的タウに対して選択的な抗体に関し、前記病的タウは、タウのヒト2N4Rアイソフォームを過剰発現するトランスジェニックマウスにおいて(ウエスタンブロット分析によって)64kDaバンドとして現われる過リン酸化タウである。
【0008】
本発明の一態様は、以下の試験基準を満たす抗タウ抗体に関する:i)抗体は、非リン酸化タウに結合しない;ii)抗体は、404においてリン酸化され、および396においてリン酸化されないタウに結合しない;iii)抗体は、396においてリン酸化されたタウに結合する;iv)抗体は、396および404の両方においてリン酸化されたタウに結合する。本発明者らは、試験基準iii)およびiv)下の結合が、同じ程度であることを発見し、位置404におけるリン酸化が、結合過程を阻害も促進もしないことを主張する。本発明者らは、試験基準ii)に反して、396においてリン酸化されず、404においてリン酸化されたタウタンパク質への結合が、試験モデルにおいて、もつれを除去せず、または病的タウも除去しないことをさらに発見した。
【0009】
本発明の一態様は、トランスジェニックマウスに由来する免疫枯渇rTg4510抽出物とともに使用されるとき、過リン酸化タウ64および70kDaバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、55kDaタウバンドを10%以下だけ減少させる抗タウ抗体に関する。本発明のさらなる態様は、過リン酸化タウ64および70kDaバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、55kDaタウバンドを10%以下だけ減少させる抗タウ抗体;または、本明細書に記載されるようにヒトAD死後脳に由来する抽出物とともに使用されるとき、リン酸化S396過リン酸化タウバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、非リン酸化タウバンドを10%超減少させない能力を持つ抗タウ抗体に関する。
【0010】
本発明の別の態様は、脈絡膜および網膜の疾患に関連するタウオパチーに罹患した患者を治療する方法であって、もつれを除去するか、または前記もつれの進行を軽減する工程を含み、前記もつれは、過リン酸化タウを含み、前記方法は、もつれが除去され、過リン酸化タウのその含有量が減少され、またはもつれ形成の進行が軽減されるように、過リン酸化タウを本発明の抗体と接触させる工程を含む方法に関する。
【0011】
別に定義される、本発明は、脈絡膜および網膜の疾患に関連するタウオパチーに罹患した患者を治療する方法であって、もつれから過リン酸化タウが取り除かれるように、リン酸化残基396を有するタウに対して選択的な抗体ともつれを接触させる工程を含む方法に関する。
【0012】
より詳細には、本発明の一実施形態は、C10-2抗体およびC10-2変異体、C5.2抗体、C8.3抗体、およびD1.2抗体から選択される抗体を用いて、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される脈絡膜および網膜の疾患からなる群から選択されるタウオパチーを治療することに関する。同様に、本発明は、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される脈絡膜および網膜の疾患の治療に使用するための、C10-2抗体、C10-2変異体、C5.2抗体、C8.3抗体、およびD1.2抗体から選択される化合物に関する。別に記載される、本発明は、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される脈絡膜および網膜の疾患の治療のための薬剤の調製に使用するための、C10-2抗体、C10-2変異体、C5.2抗体、C8.3抗体、およびD1.2抗体から選択される化合物に関する。
【0013】
一実施形態によれば、以下の抗体は、タウオパチー、特に、上に定義される脈絡膜および網膜の疾患を治療するのに使用され得る:
【0014】
本発明の一態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体C10-2、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0015】
本発明のさらなる態様は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0016】
IMGT定義を用いて別に定義される、本発明の一態様は、
(a)配列番号40のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号41のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号42のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号43のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号44のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号45のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0017】
Chotia定義を用いて別に定義される、本発明の一態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号52のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号53のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号54のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0018】
本発明の一態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体D55Eに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0019】
抗体D55Eに関する本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖:
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0020】
抗体D55Eに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0021】
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体D55Qに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0022】
抗体D55Qに関する本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0023】
抗体D55Qに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0024】
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体D55Sに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0025】
抗体D55Sに関する本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖および
(b)配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0026】
抗体D55Sに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
抗体D55S、抗体D55Q、抗体D55Eを用いた試験は、この残基の突然変異が、室温で長期間にわたる低pHでの処理の前および後に前記抗体を比較した際に、改変されていない結合特性を有する抗体をもたらすことを示し、これは、低pHで異性化が行われないこと、または任意の異性化タンパク質が、処理前と比較して改変されていない結合特性を有することを示す。
【0027】
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N32Sに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0028】
抗体N32Sに関する本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0029】
抗体N32Sに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0030】
IMGT定義を用いた抗体N32Sの別の定義は、
(a)配列番号46のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号47のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号48のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号43のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号44のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号45のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントである。
【0031】
Chotia定義を用いた抗体N32Sのさらに別の定義は、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号52のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号53のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号54のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントである。
【0032】
本発明のさらなる態様は、
(a)配列番号66のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号67のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号68のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号69のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号70のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号71のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体C5.2、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0033】
本発明のさらなる態様は、
(a)配列番号72のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号73のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0034】
本発明のさらなる態様は、
(a)配列番号74のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号75のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号76のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号77のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号78のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号79のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体C8.3、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0035】
本発明のさらなる態様は、
(a)配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号81のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0036】
本発明のさらなる態様は、
(a)配列番号58のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号59のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号60のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号61のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号62のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体D1.2、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0037】
本発明のさらなる態様は、
(a)配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号65のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0038】
本明細書において上述される抗体、およびそのエピトープ結合フラグメントは、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される脈絡膜および網膜のタウオパチー疾患を治療するのに使用され得る。
【0039】
本発明のさらなる態様は、対象の眼内の前記タウの存在または量を検出または測定するのに使用するための、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、あるいは前記抗体またはフラグメントを含む調製物または医薬組成物であって、抗体が、C10-2抗体、C10-2変異体、C5.2抗体、C8.3抗体、およびD1.2抗体からなる群から選択される、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、あるいは前記抗体またはフラグメントを含む調製物または医薬組成物に関する。
【0040】
本発明のさらなる態様は、患者における、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症(ARMD)、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される脈絡膜および網膜の疾患の進行を遅らせる方法であって、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されていない場合に残基404においてリン酸化された配列番号1に実質的に結合しないように、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能な抗体を投与することによって、前記患者における病的タウタンパク質の蓄積を減少させるかまたは軽減する工程を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】ヒト化C10-2およびC10-2変異体(C10-2_N32SおよびC10-2_N32S_A101T)を用いたAD-P3捕捉についての流体相阻害アッセイ。hC10-2(四角形)、hC10-2_N32S(黒丸)およびhC10-2_N332_A101T(白丸)を用いたP396特異的抗体によるAD-P3捕捉の濃度に応じた阻害。AD-P3抗原を、200ng/mlのマウスC10-2で被覆されたウェルにおけるインキュベーションの前に、増加する濃度の抗体(0~1000nM)とともに、室温(r/t)で60分間インキュベートした。捕捉されたAD-P3抗原を、スルホタグ化抗総タウ(MSD)を用いて検出した。■=c10-2、〇=C10-2_N32S、●=C10-2_N32S_A101T。hC10-2_N32S(黒丸)およびhC10-2_N332_A101T(白丸)C10-2変異体のIC50を計算すると、それぞれ44nMおよび14nMである。これは、図1の曲線を比較した際に分かるように、C10-2と比べて著しい改善である。したがって、本発明の一態様において、本明細書に記載される流体相阻害アッセイにおいて、100nM以下の抗体の濃度で、例えば50nM以下の濃度で、シグナルが50%減少されるように、抗体は、AD-P3を阻害する。
図2】hC10-2および関連するC10-2変異体の見かけの親和性を示すペプチド阻害アッセイ。Pタウ(P396)386~408による、流体相溶液中での、抗体結合の濃度に応じた阻害。ヒト化C10-2(四角形)、hC10-2_N32S(黒丸)および1ng/mlのhC10-2_N32_A101T(白丸)を、100ng/mlのPタウ386~408(P396/P404)で被覆されたウェルにおけるインキュベーションの前に、増加する濃度(0~10000nM)のPタウ386~408(P396)とともに、室温(r/t)で60分間インキュベートした。十分に結合された抗体が、スルホタグ化抗ヒトIgG(MSD)で検出された。■=c10-2(IC50=24nM)、〇=C10-2_N32S(IC50=50nM)、●=C10-2_N32S_A101T(IC50=34nM)。
図3-1】アルツハイマー脳およびrTg4510マウス脳における病的タウの免疫組織化学的検出。3つの異なるADドナーに由来する前頭前皮質において、hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tは、神経原線維変化、神経絨毛糸(neuropil thread)およびジストロフィー性神経突起を標識した。最も強い染色強度が、最も高い濃度の抗体で検出された。対照脳切片には、免疫活性がない。全ての3つの抗体が、進行した病変を有するrTg4510脳においてリン酸化タウを標識した。染色は、hC10-2からhC10-2_N32Sへと、およびhC10-2_N32S_A101Tへと増加した。最も強い染色強度が、hC10-2_N32S_A101T、次に、hC10-2_N32S、次に、hC10-2で検出された。100ng/mL程度のhC10-2_N32S_A101TおよびhC10-2_N32Sの濃度で、アルツハイマー病の脳における病的タウの免疫組織化学的検出があった。
図3-2】図3-1の説明と同じである。
図4】hC10-2の静脈内(i.v.)注射後の、rTg4510マウスにおけるタウ構造の装飾(左側のパネルは、rTg4510を表し;右側のパネルは、tTAを表す)。hC10-2は、rTg4510脳の海馬および皮質においてインビボで標的構造を特異的に標識するが、対照tTA脳においては標識しない。AlexaFluor488およびHoechstシグナルについての対の画像が、海馬切片において示される。
図5】hC10-2_N32Sの静脈内(i.v.)注射後の、rTg4510マウスにおけるタウ構造の装飾(左側のパネルは、rTg4510を表し;右側のパネルは、tTAを表す)。hC10-2_N32Sは、rTg4510脳の海馬および皮質においてインビボで標的構造を特異的に標識するが、対照tTA脳においては標識しない。AlexaFluor488およびHoechstシグナルについての対の画像が、海馬切片において示される。
図6】hC10-2_N32S_A101Tの静脈内(i.v.)注射後の、rTg4510マウスにおけるタウ構造の装飾(左側のパネルは、rTg4510を表し;右側のパネルは、tTAを表す)。hC10-2_N32S_A101Tは、rTg4510脳の海馬および皮質においてインビボで標的構造を特異的に標識するが、対照tTA脳においては標識しない。AlexaFluor488およびHoechstシグナルについての対の画像が、海馬切片において示される。図4~6の比較により、hC10.2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tが、静脈注射後に血液脳関門を通過することが示される。この図は、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tが、hC10-2と比較して、改善された結果を有して海馬および皮質における標的構造(もつれに対して免疫活性である)を標識することをさらに示す。
図7】アルツハイマー病(AD)の脳においてP-S396抗体に対して免疫活性であるタウ種。AD脳の切片において、タウもつれが、E1およびp396抗体によって共標識されるか(co-labelled)またはP-S396抗体のみに対して陽性であった(矢印)。
図8A】ウエスタンブロットによる病的タウの検出(図8A~C)。ウエスタンブロットによる、hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tを用いた病的タウの検出。32週齢で安楽死させた3匹のrTg4510マウスおよび非トランスジェニック(非tg)対照同腹仔からプールされた前脳および4匹のADマウスおよび4匹の健常対照(HC)ドナーからプールされた皮質試験片をそれぞれ、可溶性(S1)、TBS可溶性ペレット(S1p)およびサルコシル不溶性(P3)画分へと分画し、1μg/mlのhC10.2(A)、hC10-2_N32S(B)、hC10-2_N32S_A101T(C)を用いて、P-S396エピトープにおけるリン酸化タウについてウエスタンブロットによって分析した。rTg4510では、正常なヒト4R0Nタウが、55kDaにおいて示される一方、過リン酸化タウ種が、64および70kDaにおいて示される。ADでは、可変量のADの典型的塗抹標本(smear)を用いて、過リン酸化タウ種が、54、64、69kDa、および74kDaの4つのバンドとして示される。hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tのそれぞれは、非トランスジェニックマウスよりrTg4510マウスのタウタンパク質に対して、および健常対照ドナーよりADドナーに対して選択的である。さらに、可溶性(S1)、TBS可溶性ペレット(S1p)およびサルコシル不溶性(P3)画分において、hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tのそれぞれは、rTg4510マウスの正常タウ55kDaタンパク質よりrTg4510マウスの病原性タウ64kDaタンパク質に対して選択的である。
図8B図8Aの説明と同じである。
図8C図8Aの説明と同じである。
図9】AD脳からのタウの免疫沈降。AD脳からのhC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tによるタウの免疫沈降。4つのADおよび健常対照(HC)ドナーからプールされた皮質脳ホモジネートの500μgのプレクリアされた溶解物からの、10μgのhC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101T、ヒトIgG1対照(hIgG1)によるタウの免疫沈降を、ポリクローナルウサギ抗pS396タウ(pS396タウ)抗体を用いて、ウエスタンブロットによって分析した。ADでは、過リン酸化タウ種が、可変量のADの典型的塗抹標本を用いて、54、64、69kDa、および74kDaの4つのバンドとして示される。
図10】Cisbioアッセイによるタウ凝集の定量化。Wt(野生型)シーディング材料(WW)は、シーディングを示さず、バックグラウンドシグナルを、全ての播種された試料から差し引いた。対照的に、tg4510ホモジネート(CC)を効率的に播種した。このシーディング効果は、B12による処理によって影響されなかったが、タウ抗体(hC10-2_N32S_A101T>hC10-2_N32S>hC10-2)による処理によって部分的に改善された。グラフは、4つの独立した組の試料のプールされた結果を表し、相対タウ凝集としてプロットされ(総タンパク質に対して正規化されたバックグラウンドに対するシグナル倍数(fold signal))、相対不溶性p396タウを、triton X不溶性画分のウエスタンブロットの濃度測定によって定量化した(正規化されたバックグラウンドに対するシグナル倍数)。全ての試料を、アイソタイプ対照抗体B12に対して正規化した。
図11】異なる量のhC10-2および2.10.3抗体を用いたアルツハイマー病の脳抽出物の免疫枯渇後のタウ5ウエスタンブロットシグナルの定量化。抗体は両方とも、アルツハイマー病の脳抽出物からの総タウのごく一部を除去した。▲=2.10.3免疫枯渇;◆=hC10-2免疫枯渇。
図12】異なる量のhC10-2および2.10.3抗体を用いたアルツハイマー病の脳抽出物の免疫枯渇後のP-S422タウウエスタンブロットシグナルの定量化。この図は、セリン422においてリン酸化されたタウが、hC10-2または2.10.3のいずれかを用いた免疫枯渇によって、アルツハイマー病の脳抽出物から効率的に除去され得ることを示す。抗体は両方とも、90%超のP-S422タウを除去したが、さらに多くの2.10.3抗体が、同じ効果に達するのに必要とされた。
図13】異なる量のhC10-2および2.10.3抗体を用いたアルツハイマー病の脳抽出物の免疫枯渇後のP-S396タウウエスタンブロットシグナルの定量化。hC10-2免疫枯渇は、セリン396においてリン酸化された88%のタウを除去した一方、2.10.3は、アルツハイマー病の脳抽出物から55%のP-S396タウを除去したに過ぎなかった。▲=2.10.3免疫枯渇;◆=hC10-2免疫枯渇。
図14】異なる量のhC10-2および2.10.3抗体を用いたアルツハイマー病の脳抽出物の免疫枯渇後のP-S199/202タウウエスタンブロットシグナルの定量化。hC10-2免疫枯渇は、セリン199/202においてリン酸化された69%のタウを取り除いた。2.10.3抗体は、同じ用量依存的減少を示さなかった。▲=2.10.3免疫枯渇;◆=hC10-2免疫枯渇。
図15】免疫枯渇の前後のウエスタンブロットにおけるアルツハイマー病の脳抽出物。セリン396においてリン酸化された25kDaのタウフラグメントがある。hC10-2を用いた免疫枯渇により、25kDaのタウバンドの減少が生じた。2つの他のリン酸化特異的抗体2.10.3およびAT8は、この25kDa種を除去しなかった。
図16】異なる量のhC10-2変異体N32S、N32Q、N32S_A101T、N32Q_A101T、N32Q_D55EおよびN32S_D55Eを用いたアルツハイマー病の脳抽出物の免疫枯渇後のP-S396タウウエスタンブロットシグナルの定量化。アルツハイマー病の脳ホモジネートからセリン396においてリン酸化されたタウを除去する能力は相当であった。0.1μg未満の抗体(75ngにおけるデータ点)において、C10-2変異体が、(16%であったN32Q、D55Eを除いて)少なくとも28%だけS-P396シグナルを減少させた一方、C10.2は、S-P396シグナルを6%未満減少させた。■=c10-2、□=C10-2_N32S、◆=C10-2_N32S_D55E、
【数1】
、●=C10-2_N32Q_D55E、▲=2hC10-2_N32S;△=hC10-2_N32Q。
図17A】アルツハイマー病脳抽出物を注射することによって引き起こされる、海馬におけるタウもつれのシーディング。mC10-2処理は、播種された海馬におけるもつれ病変を、57%だけかなり減少させた(P<0.05)。hC10-2も病変を減少させたことを示す明白な傾向があった。比較によると、2.10.3は、効果を示すことができなかった。
図17B図17Aの説明と同じである。
図18】残基P-Ser396およびTyr394は、抗原結合部位の中心にある。Ile(392)-Val(393)-Tyr(394)-Lys(395)-P-Ser(396)-Pro(397)-Val(398)の構造が示される。本発明の抗体との主な相互作用は、タウペプチドの疎水性ポケット、P-Ser396およびY394を必要とする。Y(394)側鎖および骨格の間に、形成された広範囲の水素結合ネットワークおよびP-Ser396のホスフェートとの電荷/極性相互作用がある。本発明の抗体のHC CDR1は、パリンドローム(palindromic)8-残基モチーフ極性AA-疎水性AA-極性AA-荷電AA-荷電AA-極性AA-疎水性AA-極性AA(Thr-Phe-Thr-Asp-Arg-Thr-Ile-His)を含む。荷電残基は、抗体およびタウタンパク質の間の、水素結合、電荷/電荷、および電荷/極性相互作用によって形成される広範囲の結合ネットワークを介して相互作用する。
図19-1】(パネルA~D)MSDにおける病理学的P3材料への結合 パネルは、ヒトADおよび非罹患対照脳から単離されるタウに対する、D1.2(パネルA)、C5-2(パネルB)、C10-2(パネルC)およびC8-3(パネルD)のMeso Scale Discovery(MSD)ELISA結合の結果を示す(実施例9)。ELISAプレートにおいて罹患した脳(AD)および健常対照脳から単離されるタウの固定化を用いて、本明細書における抗体が、病的タウ種に特異的に結合することを実証することができる。増加する濃度の抗体は、飽和結合をもたらす。結合された抗体の量は、二次抗マウス抗体で検出される。
図19-2】図19-1の説明と同じである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
参照により援用される配列
配列番号1:ヒトタウ(2N4R)
配列番号2:タウ残基386~408(pS396、pS404)
配列番号3:C10-2軽鎖CDR1
配列番号4:C10-2軽鎖CDR2
配列番号5:C10-2軽鎖CDR3
配列番号6:C10-2重鎖CDR1
配列番号7:C10-2重鎖CDR2
配列番号8:C10-2重鎖CDR3
配列番号9:マウスC10-2軽鎖
配列番号10:マウスC10-2重鎖
配列番号11:ヒト化C10-2重鎖
配列番号12:ヒト化C10-2軽鎖
配列番号13:ヒト化C10-2重鎖変異体D55E
配列番号14:ヒト化C10-2重鎖変異体D55Q
配列番号15:ヒト化C10-2重鎖変異体D55S
配列番号16:ヒト化C10-2軽鎖変異体N32S
配列番号17:ヒト化C10-2軽鎖変異体N32Q
配列番号18:ヒト化C10-2軽鎖変異体N34S
配列番号19:ヒト化C10-2軽鎖変異体N34Q
配列番号20:ヒト化C10-2軽鎖変異体N32S、N34S
配列番号21:ヒト化C10-2軽鎖変異体N32Q、N34S
配列番号22:ヒト化C10-2軽鎖変異体N32Q、N34Q
配列番号23:ヒト化C10-2軽鎖変異体N32S、N34Q
配列番号24:ヒト化C10-2重鎖変異体A101T
配列番号25:ヒト化C10-2重鎖変異体D55E、A101T
配列番号26:ヒト化C10-2重鎖変異体D55Q、A101T
配列番号27:ヒト化C10-2重鎖変異体D55S、A101T
配列番号28:ヒト化C10-2重鎖CDR2変異体D55E
配列番号29:ヒト化C10-2重鎖CDR2変異体D55Q
配列番号30:ヒト化C10-2重鎖CDR2変異体D55S
配列番号31:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32S
配列番号32:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32Q
配列番号33:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N34S
配列番号34:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N34Q
配列番号35:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32S、N34S
配列番号36:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32Q、N34S
配列番号37:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32Q、N34Q
配列番号38:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32S、N34Q
配列番号39:ヒト化C10-2重鎖CDR3変異体A101T
配列番号40:IMGT番号付けヒト化C10-2軽鎖CDR1
配列番号41:IMGT番号付けヒト化C10-2軽鎖CDR2
配列番号42:IMGT番号付けヒト化C10-2軽鎖CDR3
配列番号43:IMGT番号付けヒト化C10-2重鎖CDR1
配列番号44:IMGT番号付けヒト化C10-2重鎖CDR2
配列番号45:IMGT番号付けヒト化C10-2重鎖CDR3
配列番号46:IMGT番号付けヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32S
配列番号47:IMGT番号付けヒト化C10-2軽鎖CDR2変異体N32S
配列番号48:IMGT番号付けヒト化C10-2軽鎖CDR3変異体N32S
配列番号49:IMGT番号付けヒト化C10-2重鎖CDR1変異体A101T
配列番号50:IMGT番号付けヒト化C10-2重鎖CDR2変異体A101T
配列番号51:IMGT番号付けヒト化C10-2重鎖CDR3変異体A101T
配列番号52:Chotia番号付けヒト化C10-2重鎖CDR1
配列番号53:Chotia番号付けヒト化C10-2重鎖CDR2
配列番号54:Chotia番号付けヒト化C10-2重鎖CDR3
配列番号55:Chotia番号付けヒト化C10-2重鎖CDR1変異体A101T
配列番号56:Chotia番号付けヒト化C10-2重鎖CDR2変異体A101T
配列番号57:Chotia番号付けヒト化C10-2重鎖CDR3変異体A101T
配列番号58:D1.2軽鎖CDR1
配列番号59:D1.2軽鎖CDR2
配列番号60:D1.2軽鎖CDR3
配列番号61:D1.2重鎖CDR1
配列番号62:D1.2重鎖CDR2
配列番号63:D1.2重鎖CDR3
配列番号64:D1.2軽鎖
配列番号65:D1.2重鎖
配列番号66:C5.2軽鎖CDR1
配列番号67:C5.2軽鎖CDR2
配列番号68:C5.2軽鎖CDR3
配列番号69:C5.2重鎖CDR1
配列番号70:C5.2重鎖CDR2
配列番号71:C5.2重鎖CDR3
配列番号72:C5.2軽鎖
配列番号73:C5.2重鎖
配列番号74:C8.3軽鎖CDR1
配列番号75:C8.3軽鎖CDR2
配列番号76:C8.3軽鎖CDR3
配列番号77:C8.3重鎖CDR1
配列番号78:C8.3重鎖CDR2
配列番号79:C8.3重鎖CDR3
配列番号80:C8.3軽鎖
配列番号81:C8.3重鎖
【0043】
発明の詳細な説明
本発明は、過リン酸化病原性P-S396タウに対して高度に選択的であり、Tg4510マウスのタウおよびヒトの眼内の両方において網膜に結合するタウ抗体の開発に基づいている。本発明は、本発明の抗体が、1μg/mL程度の濃度で、過リン酸化病原性P-S396タウに対して高度に特異的であり、かつヒト網膜の標識部分に対して高度に特異的であるという意外な発見に基づいている。本発明は、緑内障および加齢性黄斑変性症(AMD)を含む眼疾患の治療に関する。眼疾患は、アルツハイマー病(AD)の初期段階、および前駆段階ADの兆候に起因することがあり、またはADに関連していないことがある。本発明は、本発明の抗体を用いた、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される脈絡膜および網膜の疾患の治療に関する。
【0044】
本明細書において使用される際、「タウ」という用語は、「タウタンパク質」と同義であり、タウタンパク質アイソフォーム(例えば、P10636、1-9としてUniProtにおいて同定される)のいずれかを指す。本明細書において使用されるタウのアミノ酸の番号付けは、以下に示されるようにアイソフォーム2(配列番号1)に対して示され、メチオニン(M)は、アミノ酸残基1である:
配列番号1:
【化1】
【0045】
本発明は、タウ、特に、ヒトタウに特異的に結合することが可能であり、一実施形態において、ヒトタウのリン酸化S396残基(pS396)に特異的に結合する能力を示す抗体およびそのエピトープ結合フラグメントに関する。本発明の抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、例えば抗体制限または非飽和条件下で、ヒトタウにおけるリン酸化404(pS404)残基に特異的に結合することができないかまたは実質的にできないことによってさらに特徴付けられる。さらに、pS404におけるリン酸化は、pS396への特異的結合を妨げない。本明細書において使用される際、「pS」および「{p}S」という表記は、アミノ酸残基ホスホセリンを示す。本明細書において使用される際、抗体は、別のエピトープと比べて、このような結合が、このような他のエピトープで観察される結合の20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、より好ましくは、1%未満である場合、エピトープに結合することが「実質的に」できない。
【0046】
タウのリン酸化状態は、その固有の機能および微小管への結合親和性を変化させる。過リン酸化タウタンパク質は、凝集してオリゴマーおよび原線維になり、次に、ニューロンの細胞体樹状突起区画において神経原線維変化を形成する。
【0047】
本発明の文脈における「抗体」(Ab)という用語は、分子(「抗原」)のエピトープに特異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、または本発明のある実施形態によれば、免疫グロブリン分子のフラグメントを指す。天然抗体は、典型的に、通常、少なくとも2つの重(H)鎖および少なくとも2つの軽(L)鎖から構成される四量体を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)および、3つの領域(CH1、CH2およびCH3)から構成される重鎖定常領域から構成される。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4サブタイプ)を含む任意のアイソタイプのものであり得る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖は、κ鎖およびλ鎖を含む。重鎖および軽鎖可変領域が、典型的に、抗原認識に関与する一方、重鎖および軽鎖定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む、宿主組織または宿主因子への免疫グロブリンの結合を仲介し得る。VHおよびVL領域は、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存される配列の領域が散在する「相補性決定領域」と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4で配置される3つのCDR領域および4つのFR領域から構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合領域を含有する。特に関連があるのは、自然界に存在し得るものと異なる物理的環境中で存在するように「単離され」ているか、またはアミノ酸配列中の天然抗体と異なるように修飾された抗体およびそれらのエピトープ結合フラグメントである。
【0048】
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的結合が可能な抗原決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面基(surface grouping)からなり、通常、特定の三次元構造特性、ならびに特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープおよび線状エピトープは、後者ではなく、前者への結合が、変性溶媒の存在下で常に失われる点で区別される。エピトープは、特異的エピトープ結合ペプチドによって有効に遮断されるアミノ酸残基(言い換えると、アミノ酸残基は、特異的エピトープ結合ペプチドのフットプリント内にある)などの、結合に直接関与するアミノ酸残基および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含み得る。
【0049】
本明細書において使用される際、「抗体のエピトープ結合フラグメント」という用語は、エピトープに特異的に結合することが可能な抗体のフラグメント、部分、領域(region)または領域(domain)(それがどのように産生されるかにかかわらず(例えば、切断により、組み換えにより、合成的になど))を意味する。エピトープ結合フラグメントは、このような抗体のCDR領域の1、2、3、4、5または6つ全てを含有してもよく、このようなエピトープに特異的に結合することが可能であるが、このような抗体のものと異なるこのようなエピトープに対して特異性、親和性または選択性を示し得る。しかしながら、好ましくは、エピトープ結合フラグメントは、このような抗体のCDR領域の6つ全てを含有するであろう。抗体のエピトープ結合フラグメントは、単一のポリペプチド鎖(例えば、scFv)の一部であるか、もしくはそれを含んでもよく、またはアミノ末端およびカルボキシル末端(例えば、二重特異性抗体、Fabフラグメント、Fabフラグメントなど)をそれぞれ有する2つ以上のポリペプチド鎖の一部であるか、もしくはそれを含んでもよい。エピトープ結合能力を示す抗体のフラグメントは、例えば、無傷の抗体のプロテアーゼ切断によって得られる。より好ましくは、Fvフラグメントの2つの領域、VLおよびVHが、別個の遺伝子によって天然にコードされるが、このような遺伝子配列をコードするポリヌクレオチド(例えば、それらのコードcDNA)が、VLおよびVH領域が結合して一価エピトープ結合分子を形成する単一のタンパク質鎖(単一鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)85:5879-5883を参照)としてそれらが作製されるのを可能にするフレキシブルリンカーによって、組み換え方法を用いて結合され得る。あるいは、単一のポリペプチド鎖のVLおよびVH領域が一緒に結合するのを可能にするには短すぎるフレキシブルリンカー(例えば、約9個未満の残基)を用いることによって、二重特異性抗体(bispecific antibody)、二重特異性抗体(diabody)、または同様の分子(2つのこのようなポリペプチド鎖が一緒に結合して、二価エピトープ結合分子を形成する)を形成することができる(二重特異性抗体の説明については、例えばPNAS USA 90(14),6444-8(1993)を参照)。本発明の範囲内に包含されるエピトープ結合フラグメントの例としては、(i)Fab’またはFabフラグメント、VL、VH、CLおよびCH1領域からなる一価フラグメント、または国際公開第2007059782号パンフレットに記載されている一価抗体;(ii)F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHおよびCH1領域から本質的になるFdフラグメント;(iv)VLおよびVH領域から本質的になるFvフラグメント、(v)VH領域から本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al;Trends Biotechnol.2003 Nov;2i(ll):484-90)とも呼ばれるdAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341,544-546(1989));(vi)ラクダ科動物(camelid)またはナノボディ(Revets et al;Expert Opin Biol Ther.2005 Jan;5_(l):l ll-24)および(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つの領域、VLおよびVHが、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、VLおよびVH領域が組み合わされて、一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単一鎖抗体または単一鎖Fv(scFv)として知られている、例えばBird et al.,Science 242,423-426(1988)およびHuston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)を参照)としてそれらが作製されるのを可能にする合成リンカーによって、組み換え方法を用いて結合され得る。本発明の文脈におけるこれらのおよび他の有用な抗体フラグメントは、本明細書においてさらに説明される。抗体という用語は、特に規定されない限り、キメラ抗体およびヒト化抗体などの抗体様ポリペプチド、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、および組み換え技術などの任意の公知の技術によって提供される、抗原(エピトープ結合フラグメント)に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメントも含むことも理解されるべきである。生成される抗体は、任意のアイソタイプを有し得る。本明細書において使用される際、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)を指す。このような抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ;所望のエピトープに結合することが可能な好適なフラグメントは、無傷の抗体と同じように有用性について容易にスクリーニングされ得る。
【0050】
「二重特異性抗体」という用語は、それぞれ独立した標的を標的にする2つの独立したエピトープ結合フラグメントを含有する抗体を指す。これらの標的は、異なるタンパク質上に存在するエピトープ、または同じ標的上に存在する異なるエピトープであり得る。二重特異性抗体分子は、親単一特異性二価抗体分子のHCの定常領域における補償的アミノ酸改変を用いて作製され得る。得られるヘテロ二量体抗体は、2つの異なる親単一特異性抗体から与えられる1つのFabを含有する。Fc領域におけるアミノ酸改変は、時間を経ても安定した二重特異性を有するヘテロ二量体抗体の向上した安定性をもたらす(Ridgway et al.,Protein Engineering 9,617-621(1996)、Gunasekaran et al.,JBC 285,19637-1(2010)、Moore et al.,MAbs 3:6 546-557(2011)、Strop et al.,JMB 420,204-219(2012)、Metz et al.,Protein Engineering 25:10 571-580(2012)、Labrijn et al.,PNAS 110:113,5145-5150(2013)、Spreter Von Kreudenstein et al.,MAbs 5:5 646-654(2013))。二重特異性抗体は、ScFv融合を用いて生成される分子も含み得る。次に、2つの単一特異性scfvは、独立して、単一の二重特異性分子を生成するために安定したヘテロ二量体を形成することが可能なFc領域に結合される(Mabry et al.,PEDS 23:3 115-127(2010)。二重特異性分子は、二重の結合能を有する。例えば、CNS疾患を治療するために血液脳関門を横切って治療用抗体を送達するために、治療標的および経細胞輸送表面受容体の両方を標的にする。
【0051】
本明細書および図において使用される際のC10-2、ヒトC10-2、hC10-2、HC10-2、hC10.2、ヒト化C10-2およびヒト化C10-2という用語は、同義であることが意図され、抗体C10-2として定義される。この用語は、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(b)配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR4;および
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR5
を有する抗体軽鎖可変領域;
ならびに
(d)配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖CDR6;
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖CDR7;および
(f)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR8
を有する抗体軽鎖可変ドメインを含むかまたはそれからなる抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを示すことが意図される。
【0052】
抗体C10-2は、配列番号11の重鎖、配列番号12の軽鎖、または両方を含むものとして定義され得るヒト化抗体である。本発明の一実施形態は、配列番号11の重鎖および配列番号12の軽鎖を含む抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0053】
本明細書および図において使用される際のmC10-2という用語は、マウス抗体C10-2を意味することが意図され、配列番号9および10によって定義される。マウス抗体C10.2は、対照抗体として使用され、本発明の一部でない。
【0054】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32SおよびC10-2_N32Sという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからSにアミノ酸残基32の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32Sとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32QおよびC10-2_N32Qという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからQにアミノ酸残基32の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32Qとして定義される。
【0055】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_N34SおよびC10-2_N34Sという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからSにアミノ酸残基34の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N34Sとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_N34QおよびC10-2_N34Qという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからQにアミノ酸残基34の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N34Qとして定義される。
【0056】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32S_N34SおよびC10-2_N32S_N34Sという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからSにアミノ酸残基32および34の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32S、N34Sとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32Q_N34SおよびC10-2_N32Q_N34Sという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからQにおよびNからSにそれぞれアミノ酸残基32および34の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32Q、N34Sとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32Q_N34QおよびC10-2_N32Q_N34Qという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからQにアミノ酸残基32および34の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32Q、N34Qとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32S_N34QおよびC10-2_N32S_N34Qという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからSにおよびNからQにそれぞれアミノ酸残基32および34の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32S、N34Qとして定義される。
【0057】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_D55EおよびC10-2_D55Eという用語は、同義であることが意図され、重鎖がDからEにアミノ酸残基55の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体D55Eとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_D55Q、C10-2_D55Qという用語は、同義であることが意図され、重鎖がDからQにアミノ酸残基55の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体D55Qとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_D55S、C10-2_D55Sという用語は、同義であることが意図され、重鎖がDからSにアミノ酸残基55の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体D55Sとして定義される。
【0058】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_A101TおよびC10-2_A101Tという用語は、同義であることが意図され、重鎖がAからTにアミノ酸残基101の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体A101Tとして定義される。
【0059】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32S_A101T、C10-2_N32S_A101T、hC10-2_A101T_N32SおよびC10-2_A101T_N32Sという用語は、同義であることが意図され、重鎖がAからTにアミノ酸残基101の突然変異を少なくとも含むように変異されており、かつ軽鎖がNからSにアミノ酸残基32の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32S、A101Tとして定義される。
【0060】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32Q_A101T、C10-2_N32Q_A101T、hC10-2_A101T_N32QおよびC10-2_A101T_N32Qという用語は、同義であることが意図され、重鎖がAからTにアミノ酸残基101の突然変異を少なくとも含むように変異されており、かつ軽鎖がNからQにアミノ酸残基32の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32Q、A101Tとして定義される。
【0061】
本明細書において使用される際の「ヒト抗体」(「humAb」と略記され得る)という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によってまたは遺伝子再構成中にまたはインビボでの体細胞変異によって導入される突然変異)。
【0062】
本明細書において使用される際の「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一の分子組成物の抗体分子の調製物を指す。従来のモノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、2つ以上のFab領域から構成され得、それによって、2つ以上の標的に対する特異性を高める。「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、任意の特定の産生方法(例えば、組み換え、トランスジェニック、ハイブリドーマなど)によって限定されることは意図されていない。
【0063】
本発明の抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、特に治療目的に用いられる場合、好ましくは、「ヒト化」される。「ヒト化」という用語は、一般に組み換え技術を用いて調製される、非ヒト種に由来する免疫グロブリンから得られるエピトープ結合部位、およびヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づいた残りの免疫グロブリン構造を有する分子を指す。エピトープ結合部位は、ヒト定常領域に融合された完全な非ヒト抗体可変領域、またはヒト可変領域の適切なヒトフレームワーク領域に移植されたこのような可変領域の相補性決定領域(CDR)またはその部分のみのいずれかを含み得る。このようなヒト化分子のフレームワーク残基は、野生型(例えば、完全ヒト)であってもよく、またはそれらは、配列がヒト化のための基盤として機能したヒト抗体に見られない1つまたは複数のアミノ酸置換を含むように修飾され得る。ヒト化は、分子の定常領域がヒト個体における免疫原として働く可能性を低下させるかまたはなくすが、外来(foreign)可変領域に対する免疫応答の可能性は残る(LoBuglio,A.F.et al.(1989)“Mouse/Human Chimeric Monoclonal Antibody In Man:Kinetics And Immune Response”,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)86:4220-4224)。別の手法は、ヒト由来の定常領域を提供することだけでなく、可変領域を改変して、それらをヒト型にできる限り近くなるように再形成することにも焦点を当てている。重鎖および軽鎖の両方の可変領域が、該当する抗原に対する応答が異なり、結合能を決定する3つの相補性決定領域(CDR)を含み、これらの相補性決定領域(CDR)には、所与の種において比較的保存され、かつCDRの足場を提供すると考えられる4つのフレームワーク領域(FR)が隣接することが知られている。非ヒト抗体が、特定の抗原に対して調製される場合、可変領域は、非ヒト抗体に由来するCDRを、改変されるヒト抗体中に存在するFRに移植することによって、「再形成」または「ヒト化」され得る。様々な抗体に対するこの手法の適用は、Sato,K.et al.(1993)Cancer Res 53:851-856.Riechmann,L.et al.(1988)“Reshaping Human Antibodies for Therapy”,Nature 332:323-327;Verhoeyen,M.et al.(1988)“Reshaping Human Antibodies:Grafting An Antilysozyme Activity”,Science 239:1534-1536;Kettleborough,C.A.et al.(1991)“Humanization Of A Mouse Monoclonal Antibody By CDR-Grafting:The Importance Of Framework Residues On Loop Conformation”,Protein Engineering 4:773-3783;Maeda,H.et al.(1991)“Construction Of Reshaped Human Antibodies With HIV-Neutralizing Activity”,Human Antibodies Hybridoma 2:124-134;Gorman,S.D.et al.(1991)“Reshaping A Therapeutic CD4 Antibody”,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:4181-4185;Tempest,P.R.et al.(1991)“Reshaping A Human Monoclonal Antibody To Inhibit Human Respiratory Syncytial Virus Infection in vivo”,Bio/Technology 9:266-271;Co,M.S.et al.(1991)“Humanized Antibodies For Antiviral Therapy”,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:2869-2873;Carter,P.et al.(1992)“Humanization Of An Anti-p185her2 Antibody For Human Cancer Therapy”,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)89:4285-4289;およびCo,M.S.et al.(1992)“Chimeric And Humanized Antibodies With Specificity For The CD33 Antigen”,J.Immunol.148:1149-1154によって報告されている。ある実施形態において、ヒト化抗体は、全てのCDR配列(例えば、マウス抗体に由来する全ての6つのCDRを含むヒト化マウス抗体)を保存する。他の実施形態において、ヒト化抗体は、元の抗体に対して改変された1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)を有し、これらは、元の抗体からの1つまたは複数のCDR「に由来する」1つまたは複数のCDRとも呼ばれる。抗原をヒト化する能力は周知である(例えば、米国特許第5,225,539号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,859,205号明細書;同第6,407,213号明細書;同第6,881,557号明細書を参照)。
【0064】
抗体XXという用語は、軽鎖、軽鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインCDR1~3、およびそのそれぞれの配列番号によって定義される重鎖、重鎖可変ドメイン、または重鎖可変ドメインCDR1~3のいずれかを含むかまたはそれからなる抗体またはそのエピトープ結合フラグメント(例えば抗体「C10-2」)を示すことが意図される。特定の実施形態において、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、それらの配列番号によって定義されるように含むそれらの全重鎖可変ドメインおよびそれらの配列番号によって定義されるそれらの軽鎖可変ドメインによって定義される。
【0065】
本明細書において特に規定されない限り、抗体のFc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.米国保健福祉省の国立衛生研究所(Public Health Service,National Institutes of Health)、Bethesda,MD,1991に記載されているように、EU indexとも呼ばれるEU番号付与体系にしたがって行われる。
【0066】
本明細書において使用される際、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、別のエピトープと比べてそのエピトープと、より高頻度で、より迅速に、より長い期間および/またはより高い親和性または結合活性で反応または会合する場合、別の分子(すなわち、エピトープ)の領域に「特異的に」結合するといわれる。この定義を読むことによって、例えば、第1の標的に特異的に結合する抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、第2の標的に特異的にまたは優先的に結合しなくてもまたは結合しなくてもよいことも理解される。本明細書において使用される際、所定の抗原への抗体の結合の文脈における「結合」という用語は、典型的に、抗原をリガンドとしておよび抗体を検体として用いてBIAcore(登録商標)3000機器において例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定した際の約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下のKDに対応する親和性での結合を指し、所定の抗原または密接に関連している抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に対するその親和性より少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性がより低くなる量は、抗体のKDに依存するため、抗体のKDが非常に低い(すなわち、抗体が非常に特異的である)場合、抗原に対する親和性が、非特異的抗原に対する親和性より低くなる量は、少なくとも10,000倍であり得る。
【0067】
本明細書において使用される際の「kd」(秒-1または1/秒)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値は、koff値とも呼ばれる。
【0068】
本明細書において使用される際の「ka」(M-1×秒-1または1/M秒)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度定数を指す。
【0069】
本明細書において使用される際の「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指し、kdをkaで除算することによって得られる。
【0070】
本明細書において使用される際の「KA」(M-1または1/M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合平衡定数を指し、kaをkdで除算することによって得られる。
【0071】
一実施形態において、抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、以下の特性:
(i)非リン酸化タウに結合することが実質的にできないこと;
(ii)S404においてリン酸化され、S396においてリン酸化されないタウに結合することが実質的にできないこと;
(iii)S396においてリン酸化されたタウに結合する能力;
(iv)S396およびS404の両方においてリン酸化されたタウに結合する能力;
(v)それがリン酸化404残基(pS404)に結合することが実質的にできないように、リン酸化タウ残基S396およびS404を選択的に区別する能力;
(vi)ヒトアルツハイマー病の脳に由来する過リン酸化タウに結合する能力;
(vii)病的および非病的ヒトタウタンパク質を区別する能力;および/または
(viii)本明細書に記載されるように、トランスジェニックマウスに由来する免疫枯渇されたrTg4510抽出物とともに使用されるとき、過リン酸化タウ64kDaおよび70kDaバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、55kDaタウバンドを10%超減少させない能力;または本明細書に記載されるように、ヒトAD死後脳に由来する抽出物とともに使用されるとき、S396リン酸化過リン酸化タウバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、非過リン酸化タウバンドを10%超減少させない能力
の1つまたは複数を示す。
【0072】
さらなる実施形態において、抗体は、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される脈絡膜および網膜の疾患のための、リン酸化残基S396を含む病原性過リン酸化タウに対して免疫特異的な高特異性、高親和性抗体を生成するための方法によって生成され、前記方法は、
(A)2N4Rタウの残基386~410をカバーするTDHGAEIVYK{p}SPVVSGDT{p}SPRHL(配列番号2)を含む、18~40、例えば18~30、例えば20~30連続アミノ酸残基を含む二リン酸化ペプチドを含む免疫原を哺乳動物に注入して、それによって、前記哺乳動物を免疫する工程と;
(B)前記哺乳動物の前記免疫化を2回以上繰り返す工程と;
(C)リン酸化残基S396を含む病原性過リン酸化タウに結合することが可能であるが、非病原性タウに結合する能力が実質的に低い高特異性、高親和性抗体の存在について、前記繰り返し免疫された哺乳動物に由来する血清試料をスクリーニングする工程と;
(D)前記高特異性、高親和性抗体を回収する工程と
を含む。
【0073】
本明細書において使用される際、タウ分子に結合することが「実質的にできないこと」は、対照抗体によって仲介される検出可能な結合と比べて、機能性の20%超の相違、40%超の相違、60%超の相違、80%超の相違、100%超の相違、150%超の相違、2倍超の相違、4倍超の相違、5倍超の相違、または10倍超の相違を示す。
【0074】
「選択的」および「免疫選択的」という用語は、2つのエピトープに対する抗タウ抗体の結合能力に言及する場合、飽和条件下で観察される結合が、少なくとも80%の相違、少なくとも95%の相違、最も好ましくは、100%の相違(すなわち、1つのエピトープへの検出可能な結合なし)を示すことが意図される。「選択的」および「免疫選択的」という用語は、タウ抗体に言及する場合、抗体が、ヒトアルツハイマー病の脳に由来する過リン酸化タウに結合し、病的および非病的ヒトタウタンパク質を区別することができることを意味することがさらに意図される。
【0075】
TBS-抽出可能(S1)、高塩/サルコシル-抽出可能(S3)、およびサルコシル-不溶性(P3)画分という用語は、本明細書に記載されるタウ生化学的分画によって得られる画分である。
【0076】
いくつかの抗体において、CDRのごく一部、すなわち、SDRと呼ばれる、結合に必要とされるCDR残基のサブセットが、ヒト化抗体において結合を保持するのに必要とされる。関連するエピトープに接触せず、SDR中にないCDR残基が、過去の研究に基づいて(例えばCDR H2中の残基H60~H65は、必要とされないことが多い)、Chothia超可変ループの外側にあるKabat CDRの領域から(Kabat et al.(1992)SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST,National Institutes of Health Publication No.91-3242;Chothia,C.et al.(1987)“Canonical Structures For The Hypervariable Regions Of Immunoglobulins”,J.Mol.Biol.196:901-917を参照)、分子モデリングによっておよび/または実験により、またはGonzales,N.R.et al.(2004)“SDR Grafting Of A Murine Antibody Using Multiple Human Germline Templates To Minimize Its Immunogenicity”,Mol.Immunol.41:863-872に記載されるように特定され得る。1つまたは複数のドナーCDR残基が存在しないかまたは全ドナーCDRが省略される位置におけるこのようなヒト化抗体において、この位置を占めるアミノ酸は、受容体抗体配列において(Kabat番号付けによって)対応する位置を占めるアミノ酸であり得る。含まれるCDR中のドナーアミノ酸に対する受容体のこのような置換の数は、競合する考慮事項のバランスを反映する。このような置換は、ヒト化抗体中のマウスアミノ酸の数を減少させ、結果として、潜在的な免疫原性を低下させるのに潜在的に有利である。しかしながら、置換は、親和性の変化も引き起こすことがあり、親和性の著しい低下は回避されるのが好ましい。CDR内の置換の位置および置換するアミノ酸も、実験により選択され得る。
【0077】
CDR残基の単一のアミノ酸改変が、機能的結合の喪失をもたらし得るということ(Rudikoff,S.etc.(1982)“Single Amino Acid Substitution Altering Antigen-Binding Specificity”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)79(6):1979-1983)は、別の機能的CDR配列を系統的に同定するための手段を提供する。このような変異体CDRを得るための1つの好ましい方法において、CDRをコードするポリヌクレオチドが突然変異を起こされて(例えばランダム突然変異によって、または部位特異的方法(例えば、突然変異遺伝子座をコードするプライマーによるポリメラーゼ連鎖媒介性増幅)によって)、置換アミノ酸残基を有するCDRを生成する。元の(機能的)CDR配列中の関連する残基の同一性を、置換される(非機能的)変異体CDR配列の同一性と比較することによって、その置換についてのBLOSUM62.iij置換スコアが特定され得る。BLOSUMシステムは、信頼できるアラインメントについて配列のデータベースを分析することによって作成されるアミノ酸置換のマトリックスを提供する(Eddy,S.R.(2004)“Where Did The BLOSUM62 Alignment Score Matrix Come From?”,Nature Biotech.22(8):1035-1036;Henikoff,J.G.(1992)“Amino acid substitution matrices from protein blocks”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:10915-10919;Karlin,S.et al.(1990)“Methods For Assessing The Statistical Significance Of Molecular Sequence Features By Using General Scoring Schemes”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:2264-2268;Altschul,S.F.(1991)“Amino Acid Substitution Matrices From An Information Theoretic Perspective”,J.Mol.Biol.219,555-565。現在、最先端のBLOSUMデータベースは、BLOSUM62データベース(BLOSUM62.iij)である。表1は、BLOSUM62.iij置換スコアを示す(スコアが高くなるほど、置換がより保存的になり、ひいては置換が機能に影響を与えない可能性が高くなる)。得られるCDRを含むエピトープ結合フラグメントが、タウに結合できない場合、例えば、BLOSUM62.iij置換スコアは、不十分に保存的であると見なされ、より高い置換スコアを有する新たな置換候補が選択され、生成される。したがって、例えば、元の残基がグルタミン酸塩(E)であり、非機能的置換残基がヒスチジン(H)である場合、BLOSUM62.iij置換スコアは0であり、より保存的な変化(アスパラギン酸塩、アスパラギン、グルタミン、またはリジンなどへの)が好ましい。
【0078】
【表1】
【0079】
したがって、本発明は、改良されたCDRを同定するためのランダム突然変異誘発の使用を想定している。本発明の文脈において、保存的置換は、表2、3、または4の1つまたは複数に反映されているアミノ酸の種類の範囲内の置換によって定義され得る。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
より保存的な置換基(substitutions grouping)としては、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンが挙げられる。
【0084】
アミノ酸のさらなる基はまた、例えば、Creighton(1984)Proteins:Structure and Molecular Properties(2d Ed.1993),W.H.Freeman and Companyに記載されている原理を用いて配合され得る。
【0085】
ファージディスプレイ技術が、CDR親和性を増加させる(または低下させる)のに代わりに使用され得る。親和性成熟と呼ばれるこの技術は、突然変異誘発または「CDRウォーキング(walking)」を用い、再選択(re-selection)は、標的抗原またはその抗原性のエピトープ結合フラグメントを使用して、初期抗体または親抗体と比較した際に、抗原に対するより高い(またはより低い)親和性で結合するCDRを有する抗体を同定する(例えばGlaser et al.(1992)J.Immunology 149:3903を参照)。単一のヌクレオチドではなくコドン全体の突然変異誘発は、アミノ酸突然変異の半ランダム化レパートリーをもたらす。変異体クローンのプールからなるライブラリーが構築され得、変異体クローンのそれぞれが、単一のCDR中の単一のアミノ酸改変により異なり、各CDR残基に対して各可能なアミノ酸置換を提示する変異体を含む。抗原に対する増加した(または低下した)結合親和性を有する突然変異体は、固定化突然変異体を標識抗原と接触させることによってスクリーニングされ得る。当該技術分野において公知の任意のスクリーニング方法が、抗原に対する増加したまたは低下した親和性を有する突然変異体抗体を同定するのに使用され得る(例えば、ELISA)(Wu et al.1998,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)95:6037;Yelton et al.,1995,J.Immunology 155:1994を参照)。軽鎖をランダム化するCDRウォーキングが、使用可能であり得る(Schier et al.,1996,J.Mol.Bio.263:551を参照)。
【0086】
このような親和性成熟を達成するための方法は、例えば:Krause,J.C.et al.(2011)“An Insertion Mutation That Distorts Antibody Binding Site Architecture Enhances Function Of A Human Antibody”,MBio.2(1)pii:e00345-10.doi:10.1128/mBio.00345-10;Kuan,C.T.et al.(2010)“Affinity-Matured Anti-Glycoprotein NMB Recombinant Immunotoxins Targeting Malignant Gliomas And Melanomas”,Int.J.Cancer 10.1002/ijc.25645;Hackel,B.J.et al.(2010)“Stability And CDR Composition Biases Enrich Binder Functionality Landscapes”,J.Mol.Biol.401(1):84-96;Montgomery,D.L.et al.(2009)“Affinity Maturation And Characterization Of A Human Monoclonal Antibody Against HIV-1 gp41”,MAbs 1(5):462-474;Gustchina,E.et al.(2009)“Affinity Maturation By Targeted Diversification Of The CDR-H2 Loop Of A Monoclonal Fab Derived From A Synthetic Naive Human Antibody Library And Directed Against The Internal Trimeric Coiled-Coil Of Gp41 Yields A Set Of Fabs With Improved HIV-1 Neutralization Potency And Breadth”,Virology 393(1):112-119;最後に、W.J.et al.(2009)“Affinity Maturation Of A Humanized Rat Antibody For Anti-RAGE Therapy:Comprehensive Mutagenesis Reveals A High Level Of Mutational Plasticity Both Inside And Outside The Complementarity-Determining Regions”,J.Mol.Biol.388(3):541-558;Bostrom,J.et al.(2009)“Improving Antibody Binding Affinity And Specificity For Therapeutic Development”,Methods Mol.Biol.525:353-376;Steidl,S.et al.(2008)“In Vitro Affinity Maturation Of Human GM-CSF Antibodies By Targeted CDR-Diversification”,Mol.Immunol.46(1):135-144;およびBarderas,R.et al.(2008)“Affinity Maturation Of Antibodies Assisted By In Silico Modeling”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)105(26):9029-9034に記載されている。
【0087】
したがって、包含される抗体またはそれらのエピトープ結合フラグメントのCDR変異体の配列は、置換によって;例えば置換される4つのアミノ酸残基、3つのアミノ酸残基、2つのアミノ酸残基または1つのアミノ酸残基によって、親抗体、D1.2、C10-2、C5.2またはC8.3のCDRの配列と異なり得る。本発明の一実施形態によれば、CDR領域中のアミノ酸が、上記の3つの表において定義されるように、保存的置換で置換され得ることがさらに想定される。例えば、酸性残基Aspは、抗体の結合特性に実質的に影響を与えずにGluで置換され得る。
【0088】
「正常なタウ」という用語は、タンパク質のモル当たり2~3モルのホスフェートを含有する正常な脳タウを指す。
【0089】
「過リン酸化タウ」という用語は、ウエスタンブロットにおけるポリ-アニオン種に誘発される移動度シフトと一致するタウのポリリン酸化種またはリン酸化された5つ、6つまたは7つ超のセリン、トレオニンまたはチロシン部位を有するタウ種を指す。
【0090】
「リン酸化残基396を有するタウ」という用語は、残基396がリン酸化された、残基404がリン酸化されたまたはリン酸化されない過リン酸化タウに関連する。
【0091】
「トランスジェニック非ヒト動物」という用語は、1つまたは複数のヒト重鎖および/または軽鎖導入遺伝子または導入染色体(trans-chromosome)(動物の天然ゲノムDNAへと統合されるかまたは非統合のいずれか)を含み、完全ヒト抗体を発現することが可能なゲノムを有する非ヒト動物を指す。例えば、トランスジェニックマウスは、マウスが、タウ抗原および/またはタウを発現する細胞で免疫されるときにヒト抗タウ抗体を産生するように、ヒト軽鎖導入遺伝子およびヒト重鎖導入遺伝子またはヒト重鎖導入染色体のいずれかを有し得る。ヒト重鎖導入遺伝子は、トランスジェニックマウス、例えばHuMAbマウス(HCo7またはHCol2マウスなど)の場合と同様に、マウスの染色体DNAへと統合され得、またはヒト重鎖導入遺伝子は、国際公開第02/43478号パンフレットに記載されるように、導入染色体KMマウスの場合と同様に、染色体過剰に(extra-chromosomally)維持され得る。このようなトランスジェニックおよび導入染色体マウス(本明細書においてまとめて「トランスジェニックマウス」と呼ばれる)は、V-D-J組み換えおよびアイソタイプスイッチングを行うことによって、所与の抗原(IgG、IgA、IgM、IgDおよび/またはIgEなど)に対するヒトモノクローナル抗体の複数のアイソタイプを産生することが可能である。
【0092】
トランスジェニック、非ヒト動物も、特定の抗体をコードする遺伝子を誘導することによって、例えば動物の乳汁中で発現される遺伝子間を作動可能に連結することによって、特定の抗原に対する抗体の産生に使用され得る。
【0093】
本明細書において使用される際の「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」という用語は、疾患または障害の進行または重症度を改善し、遅らせ、軽減し、または抑制すること、またはこのような疾患または障害の1つまたは複数の症状または副作用を改善し、遅らせ、軽減し、または抑制することを意味する。本発明の趣旨では、「治療」または「治療すること」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るための手法をさらに意味し、ここで、「有益なまたは所望の臨床結果」としては、限定はされないが、部分的であるかまたは全体的であるか、検出可能か不可能かにかかわらず、症状の軽減、障害または疾患の程度の減少、安定した(すなわち、悪化していない)疾患または障害状態、疾患または障害状態の進行の遅延または緩徐化、疾患または障害状態の改善または緩和、および疾患または障害の寛解が挙げられる。
【0094】
「有効量」は、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに適用される場合、意図される生物学的効果または所望の治療結果(限定はされないが臨床結果を含む)を達成するのに、必要な投与量および期間にわたる、十分な量を指す。「治療的に有効な量」という語句は、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに適用される場合、障害もしくは疾患の状態の進行、または障害もしくは疾患の症状の進行を改善し、緩和し、安定させ、抑制し、遅らせ、軽減し、または遅延させるのに十分な、抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントの量を表すことが意図される。一実施形態において、本発明の方法は、他の化合物と組み合わせた、抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントの投与を提供する。このような場合、「有効量」は、意図される生物学的効果を引き起こすのに十分な組合せの量である。
【0095】
本発明の抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの治療的に有効な量は、個体の病状、年齢、性別、および体重、ならびに抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが個体における所望の応答を引き起こす能力などの要因に応じて変化し得る。治療的に有効な量はまた、抗体または抗体部分の何らかの毒性または有害作用を、治療的に有益な効果が上回る量である。
【0096】
上に示されるように、本発明は、特に、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、およびこのような分子(ひいてはそのこのようなエピトープ結合フラグメント)を産生するための完全に新規な方法に関する。この方法は図9にて概要が示されている。モノクローナル抗体を単離する新規な方法のこの能力は、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基セリン396({p}S396)に特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体を単離するその使用によって本明細書において例示される。これらの抗体は、タウが残基396においてもリン酸化されない限り、リン酸化セリン404でタウタンパク質に結合しないように、リン酸化残基セリン396およびセリン404(pS404)を区別するそれらの能力によってさらに特徴付けられる。
【0097】
本発明の抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントは、{p}S396特異的抗体(図9)の選択に好ましい方法(図9)の使用によって生成および単離された。さらに、この非常に厳密な抗体クローン選択手順を適用することによって、S396に対して高度に特異的であるだけでなく、リン酸化{p}S396エピトープに対しても高度に選択的である抗体が得られた。これらの抗体は、アルツハイマー病の脳に由来するタウを独自に認識する。図9にて概要が示されているスクリーニング手順が、機能的および治療的有用性を有する抗体の同定を確実にすることも実証することも説明する。
【0098】
抗体を、2N4Rタウの残基386~408をカバーする二リン酸化ペプチド:TDHGAEIVYK{p}SPVVSGDT{p}SPRHL(配列番号2)に対して誘導した(実施例1)。マウスをリン酸化ペプチドで免疫した。十分な抗体価が得られたら、マウスを殺処分し、ハイブリドーマを生成した(実施例2)。ハイブリドーマを、ドットブロット(実施例3)および免疫化されたヒト病的および非病的タウを用いたMSD ELISA(実施例4)を用いてスクリーニングした。ドットブロットおよびウエスタンブロットにおいて病的および非病的ヒトタウタンパク質を区別する能力を、ハイブリドーマの選択に使用した。16のクローンを選択し、そのうちの4つのハイブリドーマクローンを回収し、それにより、ヒト病的タウ材料に結合する目立った能力を示す抗体を産生した。
【0099】
また、病的および非病的タウへの特異的結合を、罹患および非罹患ヒトAD脳に由来するタウの単離およびMSD ELISAプレートにおけるこの材料の固定化によって決定した(実施例4)。
【0100】
本発明のさらなる態様は、2N4Rタウの残基386~410をカバーするTDHGAEIVYK{p}SPVVSGDT{p}SPRHL(配列番号2)内の少なくとも18、例えば少なくとも20連続アミノ酸残基を含む二リン酸化ペプチドに対して誘導されるモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。本発明のこの態様において、モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、典型的に、2N4Rタウの残基386~410をカバーするTDHGAEIVYK{p}SPVVSGDT{p}SPRHL(配列番号2)を含む18~40、例えば18~30、例えば20~30連続アミノ酸残基を含む二リン酸化ペプチドに対して誘導される。
【0101】
本発明は、リン酸化残基S396を含む病原性過リン酸化タウに対して免疫特異的な高特異性、高親和性抗体を生成するための方法によって生成される抗体であって、前記方法が、
(A)2N4Rタウの残基386~410をカバーするTDHGAEIVYK{p}SPVVSGDT{p}SPRHL(配列番号2)を含む、18~40、例えば18~30、例えば20~30連続アミノ酸残基を含む二リン酸化ペプチドを含む免疫原を哺乳動物に注入して、それによって、前記哺乳動物を免疫する工程と;
(B)前記哺乳動物の前記免疫化を2回以上繰り返す工程と;
(C)リン酸化残基S396を含む病原性過リン酸化タウに結合することが可能であるが、非病原性タウに結合する能力が実質的に低い高特異性、高親和性抗体の存在について、前記繰り返し免疫された哺乳動物に由来する血清試料をスクリーニングする工程と;
(D)前記高特異性、高親和性抗体を回収する工程と
を含む抗体にさらに関する。
【0102】
さらに詳細には、工程Aは、C10-2抗体、典型的に、コーティング緩衝液中の0.5μg/ml(捕捉抗体)によるMSDプレート(典型的に、4℃で一晩)コーティング、ブロッキング(典型的に、室温で1時間)および典型的に、3回の洗浄を含む。工程Bは、AD(3人の患者からプールされる)に由来するP3溶解物(典型的に、1:1000=2~4μg/mlの総タンパク質)および/またはS1(p)(典型的に、1:300=20~40ng/mlの総タンパク質)の試料を、段階的な濃度のpS396ペプチドエピトープ特異的抗体と混合し、(典型的に、室温で1時間)インキュベートすることを含む。続いて、反応物を、工程Aにおいて準備されたプレート上で2時間インキュベートする。工程Cは、スルホタグ化ヒトタウを用いてC10-2で捕捉されたタウを検出することを含む。製造業者の指示にしたがって、MSDからのタウ抗体(典型的に、1:50)。プレートを、MSD SECTOR(登録商標)S600において分析する。AD P3およびAD S1(p)を、同様の設備において試験する。
【0103】
さらなる実施形態は、ヒト細胞株、非ヒト哺乳動物細胞株、昆虫、酵母または細菌細胞株などの細胞株において生産または製造された、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能な抗体、またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0104】
CHO細胞株、HEK細胞株、BHK-21細胞株、マウス細胞株(骨髄腫細胞株など)、線維肉腫細胞株、PER.C6細胞株、HKB-11細胞株、CAP細胞株およびHuH-7ヒト細胞株において生産される、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能な抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0105】
疾患病変に関連するタウを認識するこれらの抗体の独自の能力は、本明細書の実施例7において実証される。本発明者らは、実施例3に記載されているアッセイにおいて病的対非病的タウの結合を比較している。比較は、5つの公開されたタウ抗体:hACI-2B6、IPN002、HJ8.5、2.10.3、および4E4に対して行われる。図6は、健常および罹患した脳に由来するタウに対する対照抗体のそれぞれの結合、および10月齢のTg4510タウトランスジェニックマウスから単離されたP301Lヒト突然変異体タウへの結合を示す。これは、単離された抗体が、ヒト病的タウに対する非常に高度な特異性および選択性を示すことを実証している。この選択性は、表5に示されるように比較用抗体のいずれよりも優れている。
【0106】
【表5】
【0107】
飽和において、結合抗体D1.2およびC10-2は、ヒトAD脳から単離されたP3タウに対する100倍超の選択性を示す。
【0108】
選択された抗体が、機能的および治療的有用性を有することを実証するために、抗体を、インビトロおよび細胞内のタウ凝集アッセイにおいて試験した。これらのアッセイは、抗体が、タウの病的凝集過程を妨げることができることを実証する機能アッセイである。HEK293細胞を、ヒトタウ-P301L-FLAG(4R0N)で一過性にトランスフェクトする。続いて、細胞を、ヒトAD脳またはトランスジェニックTg4510脳に由来するタウ抽出物に曝露する。病的タウへのこの曝露は、細胞へのタウの取り込みおよび細胞内凝集を促進する。抗体D1.2およびC10-2を用いたタウ標本の免疫枯渇、およびこれらの抗体による細胞の直接の処理は両方とも、タウ凝集体の形成を劇的に減少させることができる。
【0109】
抗体D1.2およびC10-2の治療的有用性も、ヒトタウ/PS1マウスにおいて評価された。このマウスモデルは、高齢期(12~18月齢)にのみAD病変を生じるさらなるAD疾患関連動物モデルである。しかしながら、マウスは、固体もつれ病変の発生前にタウ過リン酸化を示す。マウスに、15mg/kgの用量を週に2回、13週間にわたって長期的に注入した。抗体で処理されたマウスは、リン酸化タウの劇的な減少を示し、これは、抗体D1.2およびC10-2による長期治療が、もつれ病変、ひいてはその後のインビボの神経変性を減少させることを示す。
【0110】
本発明の抗体は、免疫枯渇方法によってrTg4510マウス脳抽出物から過リン酸化タウを特異的に除去する。さらに、本発明の抗体は、ホモジネートから正常なタウを除去しない一方、市販のタウ5抗体は正常なタウを除去する。残基404または残基404および396の両方においてリン酸化されたタウタンパク質に結合する市販の抗体と対照的に、本発明の抗体は、セリン396においてリン酸化された過リン酸化タウを95%だけ特異的に除去する。実験は、本発明の抗体が、脳ホモジネート中の総タウのごくわずかな部分(8%)のみを除去するにもかかわらず、抗体は、過リン酸化タウを(90%だけ)特異的に除去することを実証する。したがって、本発明の一態様は、病原性過リン酸化タウに免疫特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。さらに、過リン酸化タウを、本発明の抗体を用いて除去した実験において、シーディング活性がなくされた。ホモジネートから過リン酸化タウを除去することによって、ホモジネートは、タウ病変のシーディングをもはや誘発しない。
【0111】
より詳細には、上に詳述されるように、本発明は、P-S396に対して選択的な任意のタウモノクローナル抗体を用いて、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される脈絡膜および網膜の疾患を治療することに関する。
【0112】
全体で、実施例は、C10-2を含む本発明の抗体が、AD-P3抗原被覆MSDプレートに効率的に結合することを示す。比較すると、PHF-13などの市販の抗体は、低い結合活性を有する。さらに、PHF-13は、本発明の抗体と比較してかなり高い程度の非特異的結合を示した。C10-2被覆プレートにおけるPタウ抗原捕捉のmC10-2流体相阻害が有効である一方(IC50=10~20nM)、PHF-13は有効でない(IC50=500~1000nM)ことをデータは示す。
【0113】
本発明のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントは、典型的に、100nM以下の抗体の濃度、例えば50nM以下の抗体の濃度で、シグナルが50%だけ減少されるように、流体相阻害アッセイにおいてAD-P3を阻害する。本発明のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントは、典型的に、アルツハイマー病の脳抽出物における免疫枯渇試験後のP-S396タウのウエスタンブロットシグナルによれば、75ngの抗体で、アルツハイマー脳ホモジネートからセリン396においてリン酸化された少なくとも15%のタウを除去することが可能である。
【0114】
抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、好ましくは、ヒトまたはヒト化抗体である。
【0115】
本発明は、患者におけるタウもつれ形成を減少させる方法であって、このような治療を必要とする患者に、治療的に有効な量の本発明の抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを投与する工程を含む方法も提供する。
【0116】
本発明のさらなる態様は、薬学的に許容できる担体、希釈剤、補助剤および/または安定剤と一緒に組成物中の、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。本発明の抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントは、タウオパチーの治療のための療法に使用され得る。典型的に、タウオパチーは、からなる群から選択され、本発明によって想定される治療は、長期であってもよく、患者は、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間またはそれ以上治療され得る。
【0117】
本発明の抗体は、例えば、Kohler et al.,Nature 256,495(1975)によって最初に記載されているハイブリドーマ方法によって産生されるモノクローナル抗体であってもよく、または組み換えDNAもしくは他の方法によって産生されるモノクローナル抗体であってもよく、またはより好ましくは、本明細書に開示される新規な方法によって産生され得る(図9)。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al.,Nature 352,624-628(1991)およびMarks et al.,J.MoI.Biol.222,581-597(1991)に記載されている技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。モノクローナル抗体は、任意の好適な源から得られる。したがって、例えば、モノクローナル抗体は、例えば、表面において抗原を発現する細胞、または該当する抗原をコードする核酸の形態で、該当する抗原で免疫されたマウスから得られるマウス脾臓Bリンパ球細胞から調製されるハイブリドーマから得られる。モノクローナル抗体はまた、免疫されたヒトまたは非ヒト哺乳動物(ラット、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、霊長類など)の抗体発現細胞に由来するハイブリドーマから得られる。
【0118】
一実施形態において、本発明の抗体は、ヒト抗体である。タウに対するヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の部分を有するトランスジェニックまたは導入染色体マウスを用いて生成され得る。このようなトランスジェニックおよび染色体導入マウスは、本明細書においてそれぞれHuMAb(ヒトモノクローナル抗体)マウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含み、本明細書においてまとめて「トランスジェニックマウス」と呼ばれる。
【0119】
HuMAbマウスは、内因性μおよびK鎖遺伝子座を不活性化する標的突然変異と一緒に、再配列されていないヒト重鎖可変および定常(μおよびY)ならびに軽鎖可変および定常(κ)鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座(minilocus)を含む(Lonberg,N.et al.,Nature 368,856-859(1994))。したがって、マウスは、マウスIgMまたはIgKの減少した発現を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子が、クラススイッチおよび体細胞突然変異を起こして、高親和性ヒトIgG、κモノクローナル抗体を生成する(Lonberg,N.et al.(1994)、上記参照;Lonberg,N.,Handbook of Experimental Pharmacology 113,49-101(1994)、Lonberg,N.and Huszar,D.,Intern.Rev.Immunol.Vol.13 65-93(1995)およびHarding,F.and Lonberg,N.,Ann.N.Y.Acad.Sci 764 536-546(1995)に概説されている)。HuMAbマウスの作製は、Taylor,L.et al.,Nucleic Acids Research 20,6287-6295(1992)、Chen,J.et al.,International Immunology 5,647-656(1993)、Tuaillon et al.,J.Immunol.152,2912-2920(1994)、Taylor,L.et al.,International Immunology 6,579-591(1994)、Fishwild,D.et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に詳細に記載されている。米国特許第5,545,806号明細書、米国特許第5,569,825号明細書、米国特許第5,625,126号明細書、米国特許第5,633,425号明細書、米国特許第5,789,650号明細書、米国特許第5,877,397号明細書、米国特許第5,661,016号明細書、米国特許第5,814,318号明細書、米国特許第5,874,299号明細書、米国特許第5,770,429号明細書、米国特許第5,545,807号明細書、国際公開第98/24884号パンフレット、国際公開第94/25585号パンフレット、国際公開第93/1227号パンフレット、国際公開第92/22645号パンフレット、国際公開第92/03918号パンフレットおよび国際公開第01/09187号パンフレットも参照されたい。
【0120】
HCo7、HCo12、HCo17およびHCo20マウスは、それらの内因性軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているように)、それらの内因性重鎖遺伝子におけるCMD破壊(国際公開第01/14424号パンフレットの実施例1に記載されているように)、およびKCo5ヒトκ軽鎖導入遺伝子(Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように)を有する。さらに、HCo7マウスは、HCo7ヒト重鎖導入遺伝子(米国特許第5,770,429号明細書に記載されているように)を有し、HCo12マウスは、HCo12ヒト重鎖導入遺伝子(国際公開第01/14424号パンフレットの実施例2に記載されているように)を有し、HCo17マウスは、HCo17ヒト重鎖導入遺伝子(国際公開第01/09187号パンフレットの実施例2に記載されているように)を有し、HCo20マウスは、HCo20ヒト重鎖導入遺伝子を有する。得られるマウスは、内因性マウス重鎖およびκ軽鎖遺伝子座の破壊のためにバックグラウンドのホモ接合体においてヒト免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖導入遺伝子を発現する。
【0121】
KMマウス株において、内因性マウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているようにホモ接合的に破壊されており、内因性マウス重鎖遺伝子は、国際公開第01/09187号パンフレットの実施例1に記載されているようにホモ接合的に破壊されている。このマウス株は、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子、KCo5を保有する。このマウス株は、国際公開第02/43478号パンフレットに記載されているように、染色体14フラグメントhCF(SC20)から構成されるヒト重鎖導入染色体も保有する。HCo12-Balb/c、HCo17-Balb/cおよびHCo20-Balb/cマウスは、国際公開第09/097006号パンフレットに記載されているように、HCo12、HCo17およびHCo20を、KCo5[J/K](Balb)に交差させることによって生成され得る。
【0122】
rTg4510マウスは、突然変異体タウ導入遺伝子発現に対する時間的および空間的制御を提供する公知のタウオパチーモデルである。KMマウス株において、内因性マウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているようにホモ接合的に破壊されており、内因性マウス重鎖遺伝子は、国際公開第01/09187号パンフレットの実施例1に記載されているようにホモ接合的に破壊されている。このマウス株は、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子、KCo5を保有する。このマウス株は、国際公開第02/43478号パンフレットに記載されているように、染色体14エピトープ結合フラグメントhCF(SC20)から構成されるヒト重鎖導入染色体も保有する。
【0123】
これらのトランスジェニックマウスに由来する脾細胞は、周知の技術にしたがって、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成するのに使用され得る。本発明のヒトモノクローナルもしくはポリクローナル抗体、または他の種に由来する本発明の抗体はまた、該当する免疫グロブリン重鎖および軽鎖配列についてトランスジェニックな別の非ヒト哺乳動物または植物の生成、および回収可能な形態での抗体の産生によって遺伝子導入的に生成され得る。哺乳動物におけるトランスジェニック産生に関連して、抗体は、ヤギ、ウシ、または他の哺乳動物の乳汁中で産生され、それから回収され得る。例えば米国特許第5,827,690号明細書、米国特許第5,756,687号明細書、米国特許第5,750,172号明細書および米国特許第5,741,957号明細書を参照されたい。
【0124】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプのものであり得る。アイソタイプの選択は、典型的に、ADCC誘導などの所望のエフェクター機能によって導かれる。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、κまたはλのいずれかが使用され得る。必要に応じて、本発明の抗タウ抗体のクラスは、公知の方法によってスイッチされ得る。例えば、元はIgMであった本発明の抗体は、本発明のIgG抗体にクラススイッチされ得る。さらに、クラススイッチ技術は、あるIgGサブクラスを別のIgGサブクラスに、例えばIgGIからIgG2に変換するのに使用され得る。したがって、本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療的使用のために、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM抗体へのアイソタイプスイッチによって変更され得る。一実施形態において、本発明の抗体は、IgG1抗体、例えばIgG1、κである。抗体は、そのアミノ酸配列が、他のアイソタイプと比べてそのアイソタイプに最も相同性が高い場合、特定のアイソタイプのものであるといわれる。
【0125】
一実施形態において、本発明の抗体は、完全長抗体、好ましくは、IgG抗体、特に、IgG1、κ抗体である。別の実施形態において、本発明の抗体は、抗体エピトープ結合フラグメントまたは一本鎖抗体である。
【0126】
抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、例えば従来の技術を用いたエピトープ結合断片化によって得られ、エピトープ結合フラグメントは、全抗体について本明細書に記載されるのと同じように有用性についてスクリーニングされ得る。例えば、F(ab’)2エピトープ結合フラグメントは、抗体をペプシンで処理することによって生成され得る。得られるF(ab’)2エピトープ結合フラグメントは、ジスルフィド架橋を還元するように処理されて、Fab’エピトープ結合フラグメントを生成し得る。Fabエピトープ結合フラグメントはIgG抗体をパパインで処理することによって得られ;Fab’エピトープ結合フラグメントは、IgG抗体のペプシン消化により得られる。F(ab’)エピトープ結合フラグメントはまた、チオエーテル結合またはジスルフィド結合により、以下に記載されるFab’を結合することによって生成され得る。Fab’エピトープ結合フラグメントは、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる抗体エピトープ結合フラグメントである。Fab’-エピトープ結合フラグメントは、F(ab’)2エピトープ結合フラグメントを、ジチオスレイトールなどの還元剤で処理することによって得られる。抗体エピトープ結合フラグメントはまた、組み換え細胞におけるこのようなエピトープ結合フラグメントをコードする核酸の発現によって生成され得る(例えばEvans et al.,J.Immunol.Meth.184、123-38(1995)を参照)。例えば、F(ab’)2エピトープ結合フラグメントの一部をコードするキメラ遺伝子は、このような切断された抗体エピトープ結合フラグメント分子を生成するために、H鎖のCH1領域およびヒンジ領域をコードするDNA配列、続いて翻訳停止コドンを含み得る。
【0127】
一実施形態において、抗タウ抗体は、一価抗体、好ましくは、ヒンジ領域の欠失を有する国際公開第2007059782号パンフレット(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている一価抗体である。したがって、一実施形態において、抗体は、一価抗体であり、前記抗タウ抗体は、i)前記一価抗体の軽鎖をコードする核酸構築物を提供する工程であって、前記構築物が、選択された抗原特異的抗タウ抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列およびIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードする前記ヌクレオチド配列およびIgのCL領域をコードする前記ヌクレオチド配列が、作動可能に一緒に連結され、IgG1サブタイプの場合、CL領域をコードするヌクレオチド配列は、ポリクローナルヒトIgGの存在下でまたは動物もしくはヒトに投与されるとき、CL領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとともにジスルフィド結合または共有結合を形成することが可能なアミノ酸をCL領域が含まないように修飾されている工程と;ii)前記一価抗体の重鎖をコードする核酸構築物を提供する工程であって、前記構築物が、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列およびヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、CH領域をコードするヌクレオチド配列は、ヒンジ領域に対応する領域および、Igサブタイプによって必要とされるように、CH3領域などのCH領域の他の領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下でまたは動物ヒトに投与されるとき、ヒトIgのCH領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとともに、ジスルフィド結合または共有結合または安定した非共有重鎖間結合の形成に関与するアミノ酸残基を含まないように修飾されており、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードする前記ヌクレオチド配列および前記IgのCH領域をコードする前記ヌクレオチド配列が、作動可能に一緒に連結される工程と;iii)前記一価抗体を生成するために細胞発現系を提供する工程と;iv)(iii)の細胞発現系の細胞内で(i)および(ii)の核酸構築物を共発現することによって、前記一価抗体を生成する工程とを含む方法によって構築される。
【0128】
同様に、一実施形態において、本発明の抗タウ抗体は、
(i)本明細書に記載される本発明の抗体の可変領域または前記領域のエピトープ結合部分、および
(ii)免疫グロブリンのCH領域またはCH2およびCH3領域を含むその領域
を含む一価抗体であり、ここで、CH領域またはその領域は、ヒンジ領域に対応する領域および、免疫グロブリンがIgG4サブタイプでない場合、CH3領域などのCH領域の他の領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、同一のCH領域とともにジスルフィド結合を形成するか、または同一のCH領域とともに他の共有結合または安定した非共有重鎖間結合を形成することが可能なアミノ酸残基を含まないように修飾されている。
【0129】
さらなる実施形態において、本発明の一価抗体の重鎖は、ヒンジ領域全体が欠失しているように修飾されている。
【0130】
別のさらなる実施形態において、前記一価抗体の配列は、それがN結合型グリコシル化のための受容体部位を含まないように修飾されている。
【0131】
本発明は、抗タウ結合領域(例えば、抗タウモノクローナル抗体のタウ結合領域)が、2つ以上のエピトープを標的にする二価または多価二重特異性骨格の一部である「二重特異性抗体」も含む(例えば、第2のエピトープは、二重特異性抗体が、血液脳関門などの生物学的障壁を越える改良されたトランスサイトーシスを示し得るように、活性な輸送受容体のエピトープを含み得る)。したがって、別のさらなる実施形態において、抗タウ抗体の一価Fabは、異なるタンパク質を標的にするさらなるFabまたはscfvに結合されて、二重特異性抗体を生成し得る。二重特異性抗体は、二重機能、例えば抗タウ結合領域によって与えられる治療機能、および血液脳関門などの生物学的障壁を越える輸送を促進するために受容体分子に結合し得る輸送機能を有し得る。
【0132】
本発明の抗体、およびそのエピトープ結合フラグメントは、一本鎖抗体も含む。一本鎖抗体は、重鎖および軽鎖Fv領域が結合されたペプチドである。一実施形態において、本発明は、本発明の抗タウ抗体のFvにおける重鎖および軽鎖が、ペプチド一本鎖において(典型的に、約10、12、15つまたはそれ以上のアミノ酸残基の)フレキシブルペプチドリンカーと結合される一本鎖Fv(scFv)を提供する。このような抗体を産生する方法が、例えば米国特許第4,946,778号明細書、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)、Bird et al.,Science 242,423-426(1988)、Huston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)およびMcCafferty et al.,Nature 348,552-554(1990)に記載されている。一本鎖抗体は、単一のVHおよびVLのみが使用される場合、一価であり、2つのVHおよびVLが使用される場合、二価であり、または3つ以上のVHおよびVLが使用される場合、多価であり得る。
【0133】
本明細書に記載される抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、任意の好適な数の修飾アミノ酸の包含によって修飾され得るおよび/またはこのような共役置換基との結合によって修飾され得る。これに関連する適合性は、一般に、非誘導体化親抗タウ抗体に関連するタウ選択性および/または抗タウ特異性を少なくとも実質的に保持する能力によって決定される。1つまたは複数の修飾アミノ酸の包含は、例えば、ポリペプチド血清半減期を増加させ、ポリペプチド抗原性を低下させ、またはポリペプチド貯蔵安定性を増加させるのに有利であり得る。アミノ酸は、例えば、組み換え産生の際に翻訳と同時に(co-translationally)もしくは翻訳後に(post-translationally)修飾されるか(例えば、哺乳類細胞における発現の際のN-X-S/TモチーフにおけるN結合型グリコシル化)または合成手段によって修飾される。修飾アミノ酸の非限定的な例としては、グリコシル化アミノ酸、硫酸化アミノ酸、プレニル化(例えば、ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化)アミノ酸、アセチル化アミノ酸、アシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、カルボキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸などが挙げられる。アミノ酸の修飾の当業者の指針となるのに十分な言及は、文献全体を通して十分にある。例のプロトコルが、Walker(1998)Protein Protocols On CD-Rom,Humana Press,Totowa,NJに見られる。修飾アミノ酸は、例えば、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分にコンジュゲートされたアミノ酸、または有機誘導化剤にコンジュゲートされたアミノ酸から選択され得る。
【0134】
本発明の抗体およびそのエピトープ結合フラグメントはまた、例えばそれらの血中半減期を増加させるために、ポリマーへの共有結合によって化学修飾され得る。例示的なポリマー、およびそれらをペプチドに結合するための方法が、例えば米国特許第4,766,106号明細書、米国特許第4,179,337号明細書、米国特許第4,495,285号明細書および米国特許第4,609,546号明細書に示されている。さらなる例示的なポリマーとしては、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)(例えば、約1,000~約40,000、例えば約2,000~約20,000、例えば、約3,000~12,000g/molの分子量を有するPEG)が挙げられる。
【0135】
本発明の抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、診断法においてまたは画像診断用リガンドとしてさらに使用され得る。
【0136】
一実施形態において、1つまたは複数の放射性標識アミノ酸を含む本発明の抗体およびそのエピトープ結合フラグメントが提供される。放射性標識抗タウ抗体は、診断および治療目的の両方に使用され得る(放射性標識分子への結合は、別の考えられる特徴である)。このような標識の非限定的な例としては、限定はされないが、ビスマス(213Bi)、炭素(11C、13C、14C)、クロム(51Cr)、コバルト(57Co、60Co)、銅(64Cu)、ジスプロシウム(165Dy)、エルビウム(169Er)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム(68Ge)、金(198Au)、ホルミウム(166Ho)、水素(H)、インジウム(111In、112In、113In、115In)、ヨウ素(121I、123I、125I、131I)、イリジウム(192Ir)、鉄(59Fe)、クリプトン(81mKr)、ランタン(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、窒素(13N、15N)、酸素(15O)、パラジウム(103Pd)、リン(32P)、カリウム(42K)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルビジウム(81Rb、82Rb)、ルテニウム(82Ru、97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、ナトリウム(24Na)、ストロンチウム(85Sr、89Sr、92Sr)、硫黄(35S)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Tl)、スズ(113Sn、117Sn)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb、177Yb)、イットリウム(90Y)、亜鉛(65Zn)およびジルコニウム(89Zr)が挙げられる。ジルコニウム(89Zr)が特に興味深い。放射性標識アミノ酸および関連するペプチド誘導体を調製するための方法は、当該技術分野において公知である(例えばJunghans et al.,Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655-686(2nd edition,Chafner and Longo,eds.,Lippincott Raven(1996))ならびに米国特許第4,681,581号明細書、米国特許第4,735,210号明細書、米国特許第5,101,827号明細書、米国特許第5,102,990号明細書(米国再発行特許第35,500号明細書)、米国特許第5,648,471号明細書および米国特許第5,697,902号明細書を参照)。例えば、放射性同位体が、クロラミンT法によって結合され得る(Lindegren,S.et al.(1998)“Chloramine-T In High-Specific-Activity Radioiodination Of Antibodies Using N-Succinimidyl-3-(Trimethylstannyl)Benzoate As An Intermediate”,Nucl.Med.Biol.25(7):659-665;Kurth,M.et al.(1993)“Site-Specific Conjugation Of A Radioiodinated Phenethylamine Derivative To A Monoclonal Antibody Results In Increased Radioactivity Localization In Tumor”,J.Med.Chem.36(9):1255-1261;Rea,D.W.et al.(1990)“Site-specifically radioiodinated antibody for targeting tumors”,Cancer Res.50(3 Suppl):857s-861s)。
【0137】
本発明は、蛍光標識(希土類キレート(例えば、ユウロピウムキレート)など)、フルオレセイン型標識(例えば、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン)、ローダミン型標識(例えば、ALEXA FLUOR(登録商標)568(Invitrogen)、TAMRA(登録商標)またはダンシルクロリド)、VIVOTAG 680 XL FLUOROCHROME(商標)(Perkin Elmer)、フィコエリトリン;ウンベリフェロン、Lissamine;シアニン;フィコエリトリン、Texas Red、BODIPY FL-SE(登録商標)(Invitrogen)またはそれらの類似体(これらは全て、光学的検出に好適である)を用いて検出可能に標識される抗タウ抗体およびそのエピトープ結合フラグメントも提供する。化学発光標識が、用いられてもよい(例えば、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびイクオリン)。このような診断および検出はまた、本発明の診断用分子を、限定はされないが、様々な酵素、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含む酵素を含む検出可能な物質に、または限定はされないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどの補欠分子族複合体に結合することによって行われ得る。
【0138】
化学発光標識が、用いられてもよい(例えば、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびイクオリン)。このような診断および検出はまた、本発明の診断用分子を、限定はされないが、様々な酵素、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含む酵素を含む検出可能な物質に、または限定はされないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどの補欠分子族複合体に結合することによって行われ得る。常磁性標識も用いられ得、好ましくは、ポジトロン放出型断層撮影法(PET)または単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)を用いて検出される。このような常磁性標識としては、限定はされないが、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、イリジウム(Ir)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(M)、ネオジム(Nd)、オスミウム(Os)、酸素(O)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、サマリウム(Sm)、ナトリウム(Na)、ストロンチウム(Sr)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、タングステン(W)、およびジルコニウム(Zi)、特に、Co+2、CR+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、Fe+3、Ga+3、Mn+3、Ni+2、Ti+3、V+3、およびV+4の常磁性イオン、様々なポジトロン放出型断層撮影法を用いたポジトロン放出金属、および非放射性常磁性金属イオンを含有する化合物が挙げられる。
【0139】
したがって、一実施形態において、本発明の抗タウ抗体またはそのタウ結合フラグメントは、蛍光標識、化学発光標識、常磁性標識、放射性同位体標識または酵素標識で標識され得る。フラグメントの標識抗体は、対象の脳における前記タウの存在または量を検出または測定するのに使用され得る。この方法は、前記タウに結合された抗タウ抗体またはタウ結合フラグメントのインビボイメージングの検出または測定を含んでもよく、前記タウに結合された前記抗タウ抗体またはタウ結合フラグメントのエクスビボイメージングを含み得る。
【0140】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体またはそのタウ結合フラグメントの1つまたは複数のポリペプチド鎖をコードする発現ベクターに関する。このような発現ベクターは、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの組み換え産生に使用され得る。
【0141】
本発明の文脈における発現ベクターは、染色体ベクター、非染色体ベクター、および合成核酸ベクター(好適な組の発現制御要素を含む核酸配列)を含む、任意の好適なDNAまたはRNAベクターであり得る。このようなベクターの例としては、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組合せに由来するベクター、およびウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターが挙げられる。一実施形態において、抗タウ抗体コード核酸は、例えば、線形発現要素(linear expression element)(例えば、Sykes and Johnston,Nat Biotech 12,355-59(1997)に記載されているように)、圧縮(compacted)核酸ベクター(例えば米国特許第6,077,835号明細書および/または国際公開第00/70087号パンフレットに記載されているように)、pBR322、pUC 19/18、またはpUC 118/119、「ミッジ(midge)」最小サイズ核酸ベクターなどのプラスミドベクター(例えば、Schakowski et al.,MoI Ther 3,793-800(2001)に記載されているように)を含む裸のDNAまたはRNAベクターにおいて、またはCaPO沈殿構築物などの沈殿核酸ベクター構築物(例えば、国際公開第00/46147号パンフレット、Benvenisty and Reshef,PNAS USA 83,9551-55(1986)、Wigler et al.,Cell 14,725(1978)、およびCoraro and Pearson,Somatic Cell Genetics 2,603(1981)に記載されているように)として含まれる。このような核酸ベクターおよびその使用法は、当該技術分野において周知である(例えば米国特許第5,589,466号明細書および米国特許第5,973,972号明細書を参照)。
【0142】
一実施形態において、ベクターは、細菌細胞における本発明の抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの発現に好適である。このようなベクターの例としては、BlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster,J Biol Chem 264,5503-5509(1989))、pETベクター(Novagen,Madison,WI)など)などの発現ベクターが挙げられる。
【0143】
発現ベクターは、さらにまたは代わりに、酵母系における発現に好適なベクターであり得る。酵母系における発現に好適な任意のベクターが用いられてもよい。好適なベクターとしては、例えば、α因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHなどの構成的または誘導性プロモータを含むベクターが挙げられる(F.Ausubel et al.,ed.Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley InterScience New York(1987)、Grant et al.,Methods in Enzymol 153,516-544(1987)、Mattanovich,D.et al.Methods Mol.Biol.824,329-358(2012)、Celik,E.et al.Biotechnol.Adv.30(5),1108-1118(2012)、Li,P.et al.Appl.Biochem.Biotechnol.142(2),105-124(2007)、Boeer,E.et al.Appl.Microbiol.Biotechnol.77(3),513-523(2007)、van der Vaart,J.M.Methods Mol.Biol.178,359-366(2002)、およびHolliger,P.Methods Mol.Biol.178,349-357(2002)に概説されている)。
【0144】
本発明の発現ベクターにおいて、抗タウ抗体コード核酸は、任意の好適なプロモータ、エンハンサー、および他の発現促進要素を含むかまたはそれらと結合され得る。このような要素の例としては、強力な発現プロモータ(例えば、ヒトCMV IEプロモータ/エンハンサーならびにRSV、SV40、SL3-3、MMTV、およびHIV LTRプロモータ)、有効なポリ(A)終止配列、大腸菌(E.coli)におけるプラスミド産物の複製起点、選択可能なマーカーとしての抗生物質抵抗性遺伝子、および/または好都合なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)が挙げられる。核酸は、CMV IEなどの構成的プロモータとは対照的に誘導性プロモータも含み得る(当業者は、このような用語が、実際に、特定の条件下における遺伝子発現の程度の記述語であることを認識するであろう)。
【0145】
さらに他の態様において、本発明は、本明細書に定義される本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントまたは本明細書に定義される本発明の二重特異性分子を産生するトランスフェクトーマ(transfectoma)などの、組み換え真核生物または原核生物宿主細胞に関する。宿主細胞の例としては、酵母、細菌、および哺乳類細胞(CHOまたはHEK細胞など)が挙げられる。例えば、一実施形態において、本発明は、本発明の抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの発現のための配列コードを含む細胞ゲノムに安定に組み込まれた核酸を含む細胞を提供する。別の実施形態において、本発明は、本発明の抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの発現のための配列コードを含む、プラスミド、コスミド、ファージミド、または線形発現要素などの、融合されていない核酸を含む細胞を提供する。
【0146】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗タウ抗体を産生するための方法であって、a)本明細書において上述されるように本発明のハイブリドーマまたは宿主細胞を培養する工程と、b)培地から本発明の抗体を精製する工程とを含む方法に関する。
【0147】
一実施形態において、本発明は、調製物であって、このような用語が本明細書において使用される際、本明細書に定義される抗タウ抗体を含み、タウに結合することが可能でないかまたは調製物の抗タウ機能性を実質的に変更しない自然発生する抗体を実質的に含まない調製物に関する。したがって、このような調製物は、自然発生する血清、またはこのような血清の精製誘導体を包含せず、抗タウ抗体と、調製物の抗タウ抗体の機能性を変更しない別の抗体との混合物を含み、ここで、このような機能性は、
(i)非リン酸化タウに結合することが実質的にできないこと;
(ii)S404においてリン酸化され、S396においてリン酸化されないタウに結合することが実質的にできないこと;
(iii)S396においてリン酸化されたタウに結合する能力;
(iv)S396およびS404の両方においてリン酸化されたタウに結合する能力;
(v)それがリン酸化404残基に結合することが実質的にできないように、リン酸化タウ残基S396およびS404を選択的に区別する能力;
(vi)ヒトアルツハイマー病の脳に由来する過リン酸化タウに結合する能力;
(vii)病的および非病的ヒトタウタンパク質を区別する能力;および/または
(viii)本明細書に記載されるように、トランスジェニックマウスに由来する免疫枯渇されたrTg4510抽出物とともに使用されるとき、過リン酸化タウ64kDaおよび70kDaバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、55kDaタウバンドを10%超減少させない能力または本明細書に記載されるように、ヒトAD死後脳に由来する抽出物とともに使用されるとき、S396リン酸化過リン酸化タウバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、非過リン酸化タウバンドを10%超減少させない能力
である。
【0148】
本発明は、特に、天然抗タウ抗体の構造と比べてそのアミノ酸配列の構造変化を(そのCDR、可変領域、フレームワーク残基および/または定常領域のいずれかに)有するこのような抗タウ抗体の調製物であって、前記構造変化により、抗タウ抗体が、前記天然抗タウ抗体によって示される機能性と比べて著しく変化した機能性(すなわち、機能性の20%超の相違、40%超の相違、60%超の相違、80%超の相違、100%超の相違、150%超の相違、2倍超の相違、4倍超の相違、5倍超の相違、または10倍超の相違)を示し;ここで、このような機能性は、
(i)非リン酸化タウに結合することが実質的にできないこと;
(ii)S404においてリン酸化され、S396においてリン酸化されないタウに結合することが実質的にできないこと;
(iii)S396においてリン酸化されたタウに結合する能力;
(iv)S396およびS404の両方においてリン酸化されたタウに結合する能力;
(v)それがリン酸化404残基に結合することが実質的にできないように、リン酸化タウ残基S396およびS404を選択的に区別する能力;
(vi)ヒトアルツハイマー病の脳に由来する過リン酸化タウに結合する能力;
(vii)病的および非病的ヒトタウタンパク質を区別する能力;および/または
(viii)本明細書に記載されるように、トランスジェニックマウスに由来する免疫枯渇されたrTg4510抽出物とともに使用されるとき、過リン酸化タウ64kDaおよび70kDaバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、55kDaタウバンドを10%超減少させない能力;または本明細書に記載されるように、ヒトAD死後脳に由来する抽出物とともに使用されるとき、S396リン酸化過リン酸化タウバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、非過リン酸化タウバンドを10%超減少させない能力
であり、特に、このような変化した機能性は、構造変化の結果であり、したがってそれと切り離すことができない。
【0149】
自然発生する抗体を「実質的に含まない」という用語は、このような調製物におけるこのような自然発生する抗体の、または調製物のタウ結合特性を実質的に変更しないこのような調製物におけるある濃度のこのような自然発生する抗体の包含の完全な非存在を指す。抗体は、それが自然発生する対応物を有さないか、またはそれを自然に伴う成分から分離もしくは精製されている場合、「単離」されているといわれる。
【0150】
「自然発生する抗体」という用語は、それがこのような調製物に関する場合、生きたヒトまたは他の動物内で、それらの免疫系の機能の自然な結果として誘発される抗体(自然発生する自己抗体を含む)を指す。
【0151】
したがって、本発明の調製物は、抗タウ抗体およびタウによって保有されないエピトープに結合することが可能な意図的に加えられるさらなる抗体を含有するこのような調製物を除外せず、実際は明確にそれを包含する。
【0152】
本発明の主要な態様は、眼疾患を治療するための本明細書に定義されるタウ抗体の使用に関する。別に記載される、本発明の一態様は、患者の脈絡膜、視神経および/または網膜のタウオパチーの進行を遅らせる方法である。患者は、アルツハイマー病の初期段階にあり、または関連する診断がなくてもよい。
【0153】
本発明は、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントであって、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、配列番号1に実質的に結合しないように、前記モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントが、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能であるモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0154】
本発明の一実施形態において、本明細書に定義されるタウ抗体は、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性を治療する方法のためのものである。関連する実施形態において、タウオパチーは、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症(ARMD)(乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)、および緑内障からなる群から選択される疾患である。この疾患は、ADの初期段階の患者に、またはアルツハイマー病の前駆段階であるかもしくはアルツハイマー病と診断されていない患者における認知知覚変化を引き起こすことがあり、この疾患は、物体の読み取りおよび発見の困難、奥行き知覚の変化、動きからの構造の知覚の困難、色認識の困難、および空間対比感度の低下を含むことを含み得る。
【0155】
脈絡膜および網膜の疾患は、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)、網膜老化からなる群から選択され得る。
【0156】
治療は、もつれを除去するか、または前記もつれの進行を軽減することを含んでもよく、前記もつれは、過リン酸化タウを含み、前記方法は、もつれが除去され、過リン酸化タウのその含有量が減少され、またはもつれ形成の進行が軽減されるように、過リン酸化タウを本発明の抗体と接触させる工程を含む。
【0157】
一実施形態において、疾患は、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される。典型的に、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントは、本明細書に定義されるように、C10-2抗体、C10-2変異体、C5.2抗体、C8.3抗体、およびD1.2抗体からなる群から選択される。
【0158】
本発明のさらなる態様は、脈絡膜および網膜の疾患の治療のための薬剤の調製のための、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントであって、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されていない場合に残基404においてリン酸化された配列番号1に実質的に結合しないように、前記モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントが、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能であるモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。疾患は、典型的に、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される。
【0159】
本発明のさらなる態様は、対象における脈絡膜および網膜の疾患を治療、診断またはイメージングする方法であって、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されていない場合に残基404においてリン酸化された配列番号1に実質的に結合しないように、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを、有効量で前記対象に投与する工程を含む方法に関する。疾患は、典型的に、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される。
【0160】
本発明の一態様は、患者における、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症(ARMD)、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される脈絡膜および網膜の疾患の進行を遅らせる方法であって、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されていない場合に残基404においてリン酸化された配列番号1に実質的に結合しないように、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能な抗体を投与することによって、前記患者における病的タウタンパク質の蓄積を減少させるかまたは軽減する工程を含む方法に関する。
【0161】
本発明の一態様は、対象の眼内の前記タウの存在または量を検出または測定するのに使用するための、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、あるいは前記抗体またはフラグメントを含む調製物または医薬組成物であって、抗体が、C10-2抗体、C10-2変異体、C5.2抗体、C8.3抗体、およびD1.2抗体からなる群から選択される、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、あるいは前記抗体またはフラグメントを含む調製物または医薬組成物に関する。
【0162】
さらに他の態様において、本発明は、
(i)本明細書に定義されるタウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメント、または調製物であって、このような用語が本明細書において定義される際、このような抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む調製物、および
(ii)薬学的に許容できる担体
を含む医薬組成物に関する。
【0163】
医薬組成物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,2013に開示されているものなどの従来の技術にしたがって、薬学的に許容できる担体または希釈剤ならびに任意の他の公知の補助剤および賦形剤とともに製剤化され得る。
【0164】
薬学的に許容できる担体または希釈剤ならびに任意の他の公知の補助剤および賦形剤は、本発明の選択された化合物および選択された投与方法に好適であるべきである。医薬組成物の担体および他の成分のための適合性は、本発明の選択された化合物または医薬組成物の所望の生物学的特性に対する大きな悪影響がないことに基づいて決定される(例えば、エピトープ結合に対するそれほど大きくない影響(10%以下の相対的阻害、5%以下の相対的阻害など))。
【0165】
本発明の医薬組成物は、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、洗浄剤(例えば、Tween-20またはTween-80などの非イオン性洗浄剤)、安定剤(例えば、糖またはタンパク質を含まないアミノ酸)、防腐剤、組織固定剤、可溶化剤、および/または医薬組成物に含めるのに好適な他の材料も含み得る。希釈剤は、組合せの生物学的活性に影響を与えないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液である。さらに、医薬組成物または製剤は、他の担体、または非毒性の、非治療的、非免疫原性安定剤なども含み得る。組成物は、タンパク質、キトサンのような多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(例えば、ラテックス機能化(latex functionalized)セファロース、アガロース、セルロースなど)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)などの、大型のゆっくりと代謝される高分子も含み得る。
【0166】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、および投与方法に対する所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変化され得る。選択された投与量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、またはそのアミド、投与経路、投与時期、用いられる特定の化合物の排せつ速度、治療期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、病態、全体的な健康および過去の病歴、ならびに医療分野において周知の同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に応じて決まる。
【0167】
医薬組成物は、予防的および/または治療的処置のための非経口、局所、経口または経鼻手段を含む、任意の好適な経路および方法によって投与され得る。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、非経口的に投与される。本明細書において使用される際の「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、通常、注射による、腸内および局所投与以外の投与方法を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、および注入を含む。
【0168】
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、溶液中で投与される。投与は、硝子体内投与または眼周囲投与、例えば結膜下投与、テノン嚢下投与、または注射などの眼球後方投与によって、または眼内注入もしくは点眼剤によって、または眼の周りの皮膚もしくは眼瞼への軟膏、クリーム、または他の流体もしくはゲル製剤として行われ得る。
【0169】
インビボおよびインビトロで本発明の化合物を投与するさらなる好適な経路が、当該技術分野において周知であり、当業者によって選択され得る。
【0170】
一実施形態において、その医薬組成物は、静脈内または皮下注射または注入によって投与される。
【0171】
薬学的に許容できる担体としては、本発明の化合物と生理学的に適合性の、あらゆる好適な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤および吸収遅延剤などが挙げられる。
【0172】
本発明の医薬組成物に用いられ得る好適な水性および非水性担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油、およびゴマ油などの植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントガムおよび注射可能な有機酸エステル(オレイン酸エチルなど)、および/または様々な緩衝液が挙げられる。他の担体が、医薬品分野において周知である。
【0173】
薬学的に許容できる担体は、滅菌注射用溶液または分散体の即時調製用の滅菌水溶液または分散体および滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が想定される。
【0174】
適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散体の場合、所要の粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0175】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容できる酸化防止剤、例えば(1)水溶性酸化防止剤(アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);(2)油溶性酸化防止剤(パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど);および(3)金属キレート剤(クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)も含み得る。
【0176】
本発明の医薬組成物は、組成物中に糖類、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトール、グリセロールなど)または塩化ナトリウムなどの等張剤も含み得る。
【0177】
本発明の医薬組成物は、医薬組成物の保存可能期間または有効性を向上させ得る、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤または緩衝液などの、選択された投与経路に適切な1つまたは複数の補助剤も含有し得る。本発明の化合物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む、制御放出製剤などの速放性から化合物を保護する担体とともに調製され得る。このような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生分解性、生体適合性ポリマー(エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸など)を単独でまたはワックスまたは当該技術分野において周知の他の材料とともに含み得る。このような製剤の調製のための方法は、一般に、当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0178】
一実施形態において、本発明の化合物は、インビボでの適切な分配を確実にするように製剤化され得る。非経口投与用の薬学的に許容できる担体は、滅菌注射用溶液または分散体の即時調製用の滅菌水溶液または分散体および滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が想定される。補助的な活性化合物も、組成物に組み込まれ得る。
【0179】
注射用の医薬組成物は、典型的に、製造および貯蔵の条件下で、滅菌性かつ安定性でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬剤濃度に好適な他の規則構造として製剤化され得る。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)、および注射可能な有機酸エステル(オレイン酸エチルなど)を含有する、水性または非水性溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散体の場合、所要の粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール(グリセロール、マンニトール、ソルビトールなど)、または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収が、抗体の吸収を遅らせる物質、例えば、一ステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされ得る。滅菌注射用溶液は、例えば上に列挙されるような成分の1つまたは組合せを含む適切な溶媒中に所要量の活性化合物を組み込むこと、必要に応じて、その後の滅菌精密ろ過によって調製され得る。一般に、分散体は、塩基性分散媒および例えば上に列挙される成分からの所要の他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、予め滅菌ろ過されたそれらの溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0180】
滅菌注射用溶液は、上に列挙されるような成分の1つまたは組合せを含む適切な溶媒中に所要量の活性化合物を組み込むこと、必要に応じて、その後の滅菌精密ろ過によって調製され得る。一般に、分散体は、塩基性分散媒および上に列挙される成分からの所要の他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、予め滅菌ろ過されたそれらの溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0181】
治療の上記の方法および本明細書に記載される使用における投与計画は、最適な望ましい反応(例えば、治療反応)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスが投与されてもよく、いくつかの分割量が、時間をかけて投与されてもよく、または用量が、治療状況の要件によって示されるように比例的に減少または増加されてもよい。非経口組成物は、投与のしやすさおよび投与の均一性のために単位剤形で製剤化され得る。本明細書において使用される際の単位剤形は、治療される対象のための統一された投与量として適した物理的に別個の単位を指し;各単位は、所要の医薬担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の独自の特性および得られる具体的な治療効果、ならびに(b)個体における敏感性(sensitivity)の治療のためのこのような活性化合物の配合の技術分野に固有の制限に左右され、それらに直接依存する。
【0182】
本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの有効投与量および投与計画は、治療される疾患または病態に応じて決まり、当業者によって決定され得る。いずれの日も所定の投与量が投与され、投与量は、約0.0001~約100mg/kg、より通常は約0.01~約5mg/kg宿主体重の範囲であり得る。例えば、投与量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重または1~10mg/kg体重の範囲内であり得る。したがって、例示的な投与量としては、約0.1~約10mg/kg/体重、約0.1~約5mg/kg/体重、約0.1~約2mg/kg/体重、約0.1~約1mg/kg/体重、例えば約0.15mg/kg/体重、約0.2mg/kg/体重、約0.5mg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約1.5mg/kg/体重、約2mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、または約10mg/kg/体重が挙げられる。
【0183】
当該技術分野において通常の技能を有する医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師は、医薬組成物に用いられる本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの用量を、所望の治療効果を得るために必要とされるより少ないレベルから開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加し得る。一般に、本発明の組成物の好適な1日用量は、治療効果を生じるのに有効な最低用量である化合物の量であろう。このような有効用量は、一般に、上述される要因に応じて決まる。投与は、例えば静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下投与であり得る。必要に応じて、医薬組成物の有効1日用量は、任意選択的に単位剤形で、1日を通して適切な間隔で、別々に投与される2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の分割用量として投与され得る。本発明の化合物は、単独で投与されることが可能であるが、上述されるように医薬組成物として化合物を投与するのが好ましい。
【0184】
本発明の標識抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、疾患または障害を検出、診断、または監視するために、診断目的で使用され得る。本発明は、目のタウオパチーの検出または診断を提供し、(a)タウに特異的に結合する1つまたは複数の抗体を用いて、対象の細胞または組織試料内のピログルタミル化Aβフラグメントの存在を測定する工程と;(b)抗原のレベルを、制御レベル、例えば正常な組織試料におけるレベルと比較し、それによって、抗原の制御レベルと比較した、抗原の測定レベルの増加が、疾患または障害を示すか、または疾患または障害の重症度を示す工程を含む。
【0185】
本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、当該技術分野において周知の免疫組織化学法を用いて、生物学的試料内のタウまたはタウのフラグメントを測定するのに使用され得る。タンパク質を検出するのに有用な他の抗体ベースの方法としては、酵素結合免疫測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)およびメソスケールディスカバリープラットフォーム(mesoscale discovery platform)ベースのアッセイ(MSD)などの免疫測定法が挙げられる。好適な抗体標識が、このようなキットおよび方法に使用され得、当該技術分野において公知の標識としては、酵素標識(アルカリホスファターゼおよびグルコースオキシダーゼなど);放射性同位体標識(ヨウ素(125I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(121In)、およびテクネチウム(99mTc)など);および発光標識(ルミノールおよびルシフェラーゼなど);および蛍光標識(フルオレセインおよびローダミンなど)が挙げられる。
【0186】
標識抗タウ抗体またはそれらのタウ結合フラグメントの存在は、診断目的で、インビボで検出され得る。一実施形態において、診断は、a)有効量のこのような標識分子を対象に投与する工程;b)投与後、所定の時間間隔にわたって待機して、標識分子を、Aβ堆積の部位(もしあれば)で濃縮させ、非結合標識分子が、バックグラウンドレベルになるまで除去されるのを可能にする工程;c)バックグラウンドレベルを決定する工程;およびd)バックグラウンドレベルを超える標識分子の検出が、対象が疾患または障害に罹患していることを示すか、または疾患または障害の重症度を示すように、対象中の標識分子を検出する工程を含む。このような実施形態によれば、分子は、当業者に公知の特定のイメージングシステムを用いた検出に好適なイメージング部分で標識される。バックグラウンドレベルは、検出された標識抗体の量を、特定のイメージングシステムのために予め決定された標準値と比較することを含む、当該技術分野において公知の様々な方法によって決定され得る。本発明の診断法に使用され得る方法およびシステムとしては、限定はされないが、コンピュータ断層撮影法(CT)、ポジトロン放出型断層撮影法(PET)などの全身スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、および超音波検査法が挙げられる。
【0187】
さらなる態様において、本発明は、治療に使用するための、本明細書に定義されるモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
【0188】
さらなる態様において、本発明は、タウオパチーを治療、診断またはイメージングするのに使用するための、本明細書に定義されるモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
【0189】
さらなる態様において、本発明は、タウオパチーを治療、診断またはイメージングするための薬剤の製造に使用するための、本明細書に定義されるモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
【0190】
好ましい実施形態において、治療は、長期であり、好ましくは、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間またはそれ以上にわたる。
【0191】
さらなる態様において、本発明は、治療に使用するための、本明細書に定義される抗体、またはそのフラグメントを含むキットを提供する。
【0192】
実施形態
1.脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントであって、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されていない場合に残基404においてリン酸化された配列番号1に実質的に結合しないように、前記モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントが、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能であるモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0193】
2.治療が、もつれを除去するか、または前記もつれの進行を軽減する工程を含み、前記もつれは、過リン酸化タウを含み、前記方法は、もつれが除去され、過リン酸化タウのその含有量が減少され、またはもつれ形成の進行が軽減されるように、過リン酸化タウを本発明の抗体と接触させる工程を含む、実施形態1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0194】
3.疾患が、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される、実施形態1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0195】
4.抗体が、C10-2抗体、C10-2変異体、C5.2抗体、C8.3抗体、およびD1.2抗体からなる群から選択される、実施形態1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0196】
5.C5.2抗体が、
(a)配列番号66のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号67のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号68のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号69のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号70のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号71のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0197】
6.C5.2抗体が、
(a)配列番号72のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号73のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態5に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0198】
7.C8.3抗体が、
(a)配列番号74のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号75のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号76のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号77のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号78のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号79のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0199】
8.C8.3抗体が、
(a)配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号81のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態7に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0200】
9.D1.2抗体が、
(a)配列番号58のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号59のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号60のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号61のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号62のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0201】
10.D1.2抗体が、
(a)配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号65のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態9に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0202】
11.
(a)配列番号3、配列番号31;配列番号32;配列番号33;配列番号34;配列番号35;配列番号36;配列番号37;配列番号38;配列番号40;および配列番号46からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
(b)配列番号4;配列番号41;および配列番号47のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
(c)配列番号5;配列番号42;および配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(d)配列番号6;配列番号43;配列番号49;配列番号52;および配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
(e)配列番号7;配列番号28;配列番号29;配列番号30;配列番号44;配列番号50;配列番号53;および配列番号56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;および
(f)配列番号8、配列番号39;配列番号45;配列番号51;配列番号54;および配列番号57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0203】
12.
(a)配列番号12;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号19;配列番号20;配列番号21;配列番号22および配列番号23からなる群から選択される軽鎖;および
(b)配列番号11;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号24;配列番号25;配列番号26;および配列番号27からなる群から選択される重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0204】
13.
(a)軽鎖が配列番号12であり;
(b)重鎖が、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号24、配列番号25、配列番号26および配列番号27からなる群から選択される、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0205】
14.
(a)軽鎖が、配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号19;配列番号20;配列番号21;配列番号22および配列番号23からなる群から選択され;
(b)重鎖が配列番号11である、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0206】
15.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0207】
16.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖:
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0208】
17.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0209】
18.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0210】
19.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0211】
20.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0212】
21.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0213】
22.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0214】
23.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0215】
24.
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0216】
25.
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0217】
26.
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0218】
27.
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0219】
28.
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0220】
29.
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0221】
30.
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0222】
31.
(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0223】
32.
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0224】
33.
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0225】
34.
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0226】
35.
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0227】
36.
(a)配列番号35のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0228】
37.
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0229】
38.
(a)配列番号35のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0230】
39.
(a)配列番号36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0231】
40.
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0232】
41.
(a)配列番号36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0233】
42.
(a)配列番号37のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0234】
43.
(a)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0235】
44.
(a)配列番号37のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0236】
45.
(a)配列番号38のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0237】
46.
(a)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0238】
47.
(a)配列番号38のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0239】
48.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0240】
49.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0241】
50.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0242】
51.
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0243】
52.
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0244】
53.
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0245】
54.
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0246】
55.
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0247】
56.
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0248】
57.
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0249】
58.
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0250】
59.
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0251】
60.
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0252】
61.
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0253】
62.
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0254】
63.
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0255】
64.
(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0256】
65.
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0257】
66.
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0258】
67.
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0259】
68.
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0260】
69.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0261】
70.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0262】
71.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0263】
72.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0264】
73.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0265】
74.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0266】
75.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0267】
76.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0268】
77.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0269】
78.脈絡膜および網膜の疾患の治療のための薬剤の調製のための、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントであって、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されていない場合に残基404においてリン酸化された配列番号1に実質的に結合しないように、前記モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントが、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能であるモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0270】
79.疾患が、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される、実施形態78に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0271】
80.Fvフラグメント(例えば一本鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv);Fab様フラグメント、例えばFabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)フラグメント;およびドメイン抗体、例えば単一のV可変領域またはV可変領域からなる群から選択されるエピトープ結合フラグメントを含むかまたはそれからなる、実施形態1に記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0272】
81.ヒトまたはヒト化抗体である、先行する実施形態のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0273】
82.対象における脈絡膜および網膜の疾患を治療、診断またはイメージングする方法であって、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されていない場合に残基404においてリン酸化された配列番号1に実質的に結合しないように、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを、有効量で前記対象に投与する工程を含む方法。
【0274】
83.疾患が、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される、実施形態82に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療、診断またはイメージングする方法。
【0275】
84.対象の眼内の前記タウの存在または量を検出または測定するのに使用するための、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、あるいは前記抗体またはフラグメントを含む調製物または医薬組成物であって、抗体が、C10-2抗体、C10-2変異体、C5.2抗体、C8.3抗体、およびD1.2抗体からなる群から選択される、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、あるいは前記抗体またはフラグメントを含む調製物または医薬組成物。
【0276】
85.患者における、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症(ARMD)、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される脈絡膜および網膜の疾患の進行を遅らせる方法であって、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されていない場合に残基404においてリン酸化された配列番号1に実質的に結合しないように、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能な抗体を投与することによって、前記患者における病的タウタンパク質の蓄積を減少させるかまたは軽減する工程を含む方法。
【0277】
86.無傷の抗体からなる、実施形態1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体。
【0278】
87.Fvフラグメント(例えば一本鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv);Fab様フラグメント(例えばFabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント);ミニボディ(Fv)2-CH3領域、およびドメイン抗体(例えば単一のVH可変領域またはVL可変領域)からなる群から選択される、実施形態1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0279】
88.抗体が、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4の抗体からなる群から選択される、いずれかの先行する実施形態に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するための抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0280】
89.ヒトまたはヒト化抗体である、先行する実施形態のいずれかに記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0281】
90.抗体またはエピトープ結合フラグメントが、以下の特性
(a)ヒト病的タウに対する選択性および特異性;
(b)0.5~10nM、例えば1~5nMまたは1~2nMの、p-タウ386~408(pS396/pS404)(配列番号1)に対する結合親和性(KD)
の1つまたは複数を示す、先行する実施形態のいずれか1つに記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0282】
91.前記抗体が、タウ(配列番号1)におけるリン酸化404残基に実質的に結合しない、先行する実施形態のいずれか1つに記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0283】
92.(a)配列番号3のアミノ酸配列または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0284】
93.前記抗体またはそのフラグメントが、ヒトタウへの結合について、実施形態4~77に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントと競合する、脈絡膜および網膜の疾患を治療するための、先行する実施形態の1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0285】
94.非経口、局所、経口または経鼻投与のために製剤化される、脈絡膜および網膜の疾患を治療するための、実施形態1~83の1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを含む医薬組成物。
【0286】
95.腸内または局所投与のために製剤化される、脈絡膜および網膜の疾患を治療するための、実施形態1~77の1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを含む医薬組成物。
【0287】
96.表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心腔内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外および胸骨内注射および注入などを含む、注射のために製剤化される、脈絡膜および網膜の疾患を治療するための、実施形態1~77の1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを含む医薬組成物。
【0288】
97.溶液として製剤化される、脈絡膜および網膜の疾患を治療するための、実施形態1~77の1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを含む医薬組成物。
【0289】
98.硝子体内投与または眼周囲投与、例えば結膜下投与、テノン嚢下投与、または注射などによる眼球後方投与のために製剤化される、脈絡膜および網膜の疾患を治療するための、実施形態1~77の1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを含む医薬組成物。
【0290】
99.眼内注射のために製剤化される、または点眼剤としての投与のための、脈絡膜および網膜の疾患を治療するための、実施形態1~77の1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを含む医薬組成物。
【0291】
100.眼の周りの皮膚もしくは眼瞼などへの軟膏、クリーム、または他の流体もしくはゲルとして製剤化される、脈絡膜および網膜の疾患を治療するための、実施形態1~77の1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを含む医薬組成物。
【0292】
101.静脈内または皮下注射または注入のために製剤化される、脈絡膜および網膜の疾患を治療するための、実施形態1~77の1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを含む医薬組成物。
【実施例
【0293】
実施例1:リン酸化ペプチド396/404によるマウスの免疫化
C56/BL6およびFVBマウスを、TiterMax補助剤中で製剤化された10μgのP30コンジュゲートリン酸化タウ386~408(pS396/pS404)(配列番号2)で免疫した。
【0294】
マウス(C56/BL6およびFVB株、雌および雄、2~3月齢のマウス)を、ペプチドエピトープP30コンジュゲートリン酸化タウ386~408で免疫した。
【0295】
免疫原性P30コンジュゲートリン酸化タウ386~408(pS396/pS404)ペプチドを、TiterMax/供給業者のプロトコルにしたがって、TiterMax(1:1vol:volで混合される400μg/mlのペプチド)中で製剤化し、マウスに、20μgのペプチド(100μl)の抗原を皮下注入した。対照マウスに、補助剤のみを注入した。全てのペプチド免疫化マウスを、1ヶ月間隔で、0.5μgのペプチド/Titermax(上述されるように製剤化され、注入される10μg/mlのペプチド)で追加免疫した。最後に、マウスを、脾細胞とSP-2細胞との融合の3日前にTitermaxなしのP30コンジュゲートリン酸化タウ386~408(pS396/pS404)で追加免疫した。1μg/mlのリン酸化タウ386~408(pS396/pS404)で被覆されたELISAプレートへの陽性結合を示し、ADおよびTG4510脳溶解物(実施例3において後述される)に由来するS1およびP3抗原に対する優先的結合活性を示した後、ハイブリドーマを、再クローニングサイクルのために選択した。ドットブロットおよび脳溶解物で被覆されたELISAまたはMSDプレートを用いて、このような結合を、対照に由来する脳溶解物へのこのような抗体の結合活性と比較した。
【0296】
実施例2:ハイブリドーマ生成
マウスを、脾細胞とSP-2細胞との融合の3日前にTitermaxなしのP30コンジュゲートリン酸化タウ386~408(pS396/pS404)で追加免疫した。1μg/mlのリン酸化タウ386~408(pS396/pS404)で被覆されたELISAプレートへの陽性結合、およびドットブロットおよび脳溶解物で被覆されたELISAまたはMSDプレートを用いて、対照に由来する脳溶解物と比較した、ADおよびTG4510脳溶解物に由来するS1およびP3抗原に対する優先的結合活性の後、ハイブリドーマを、再クローニングサイクルのために選択した。
【0297】
実施例3.AD-P3捕捉についての流体相阻害アッセイ
実施例3Aの目的:マウスC10-2で被覆したMSDプレートのAD-P3脳物質中のP(396)タウ抗原に結合するヒトC10-2および突然変異体の阻害を定量化するため。阻害の程度が、抗原に結合する流体相抗体の見かけの親和性を反映するIC50値として示される。Graph Pad Prismソフトウェアを用いて1または2部位結合モデルに適合させることによって、IC50値を得た。P(404)タウと反応性の陰性対照抗体(マウスC10-1)を、比較のために加えた(データは示されない)。
【0298】
方法:MSDプレートを、室温で一晩、捕捉抗体(炭酸緩衝液pH8.5中の750ng/mlのC10-2)で被覆した後、ブロッキングし(PBS、3%のBSA、0.1%のNP40中で30分間)、5回洗浄した(PBS、0.1%のBSA、0.1%のNP40)。段階的濃度(0~1000nM)の抗体を、室温でAD-P3材料とともに60分間インキュベートし、続いて、上述されるようにマウスC10-2で被覆されたMSDプレートにおいて、室温で1時間インキュベートした。プレートを、(PBS、0.1%のBSA、0~.1%のNP40)中で5回洗浄し、抗ヒト総タウ(MSDスルホタグ化1:50)を、阻害されていない遊離タウ抗原を反映する捕捉されたタウを検出するために加えた。
【0299】
結果:データは、ヒトC10-2およびC10-2変異体を用いたタウ捕捉の用量依存的阻害を示した(図1)。C10-2変異体C10-2_N32SおよびC10-2_N32S:A101Tは、より強く阻害するが(1部位結合モデルに適合された、それぞれIC50=44および14nM)、C10-2は、2部位結合モデルへの最良適合によって反映される不均一な阻害を示した(IC50 14nM/630nM)。高親和性抗体結合(IC50=14nM)が全結合の25%未満を占めていたため、低親和性結合(IC50=630)が優勢であった。結果が、図1に示される。
【0300】
実施例3Bの目的:流体相阻害アッセイにおいてP(396)タウ386~408ペプチドに結合するヒトC10-2および突然変異変異体の阻害を定量化するため。阻害の程度が、抗体結合の見かけの親和性を反映するIC50値として示される。Graph Pad Prismソフトウェアを用いて、1または2部位結合モデルに適合させることによって、IC50値を得た。P(404)タウと反応性の陰性対照抗体(マウスC10-1)を、比較のために加えた(データは示されない)。
【0301】
方法:MSDプレートを、室温で一晩、炭酸緩衝液pH9.5中のP(396)タウ386~408ペプチドで被覆した後、ブロッキングし(PBS、3%のBSA、0.1%のNP40中で30分間)、5回洗浄した(PBS、0.1%のBSA、0.1%のNP40)。段階的濃度(0~1000nM)のP(396)タウ386~408を、室温で1ng/mlの抗体とともに60分間インキュベートし、続いて、上述されるようにP(396)タウ386~408で被覆されたMSDプレートにおいて室温で1時間インキュベートした。プレートを、(PBS、0.1%のBSA、0.1%のNP40)中で5回洗浄し、抗ヒト総タウ(MSDスルホタグ化1:50)を、阻害されていない遊離抗体を反映する結合抗体を検出するために加えた。結果が、図2に示される。
【0302】
実施例4.抗体の免疫組織化学的プロファイリング
組織
マウス:マウス脳組織を、8月齢のrTg4510マウスから採取した。これらのトランスジェニックマウスは、CamK2陽性ニューロン中、tet-off応答因子下でヒト変異タウ(P301L 0N4R)を発現し、6月齢以降に顕著なタウ過リン酸化およびもつれ形成を示す。非トランスジェニック同腹仔を対照として用いた。マウス脳を、4%のパラホルムアルデヒドへの浸漬によって固定し、パラフィンに包埋した。ヒト:ホルマリンで固定され、パラフィンで包埋された、前頭葉のヒト脳試料を、Tissue Solutions(Glasgow,UK)から取得した。末期と診断されたアルツハイマー病(AD;Braak段階V~VI)の3つのドナーに由来する組織を、月齢をマッチさせた、認知症でない対照ドナーと比較した。
【0303】
免疫組織化学:
マウスおよびヒト組織の4μm厚の切片を、ミクロトームで切断し、脱パラフィン化し、10分間にわたって、10mMのクエン酸緩衝液、pH6中で切片をマイクロ波処理することによって、抗原賦活化を行った。内因性ペルオキシダーゼを、1%の過酸化水素、続いて、PBS/1%のBSA/0.3%のTriton X-100(PBS-BT)中の5%の正常なブタ血清によりブロッキングした。切片を、図1に示される濃度の範囲で、PBS-BT中で希釈されたhC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101T抗体とともに、4℃で一晩インキュベートした。切片を、PBS、0.25%のBSA、0.1%のTriton X-100中で洗浄してから、1時間にわたって1:200でビオチン化二次ブタ抗ヒト抗体(#B1140;Sigma-Aldrich)とともにインキュベートした。さらなる洗浄後、ストレプトアビジン-ビオチン複合体キット(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を適用し、最後に、免疫活性を、0.05%のジアミノベンジジンで視覚化した。切片を、核の位置を示すためにヘマトキシリンで対比染色した。
【0304】
結果
hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tは、3つのAD脳内の病的タウ(すなわち、もつれ、神経絨毛糸、ジストロフィー性神経突起)と一致する構造を標識した。免疫活性の強度は、濃度依存性であった。例えばグリア細胞または血管の明らかな標識は検出されなかった。対照脳に由来する切片で免疫活性は検出されなかった。同様に、全ての3つの抗体は、rTg4510脳の海馬および皮質の両方においてリン酸化タウについて予測されるパターンを生じた。非トランスジェニックマウスに由来する脳切片では、免疫活性は検出されなかった。
【0305】
実施例5.静脈内(i.v.)注射後のrTg4510マウスにおけるタウ構造の装飾
方法
10月齢のrTg4510マウス。これらのトランスジェニックマウスは、CamK2陽性ニューロン中、tet-off応答因子下でヒト変異タウ(P301L 0N4R)を発現し、6月齢以降に顕著なタウ過リン酸化およびもつれ形成を示す。さらに、神経変性が、強い病変を有する領域において、rTg4510マウスの10月齢の時点で存在する。単一トランスジェニックtTA同腹仔を対照として用いた。マウスに、80mg/kgの濃度で、hC10-2、hC10-2_N32SまたはhC10-2_N32S_A101T抗体のいずれかを、尾静脈を介して単回注射した。マウス1匹につき150μLの体積を注射した。注射の3日後、マウスに、PBSを2分間灌流させた後、4%のパラホルムアルデヒドを10分間灌流させた。脳を、30%のスクロース中で凍結防止し、40ミクロンの自由に浮遊する低温切開片に切り分けた。切片を、20分間にわたってPBS/1%のBSA/0.3%のTriton X-100中の5%の正常なブタ血清とともにインキュベートし、PBSで洗浄し、最後に、1:200でAlexaFluor488コンジュゲート二次抗ヒトIgG(#709-545-149;Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,USA)とともにインキュベートした。Hoechstを核染色に使用した。切片を、PBS中で洗浄し、取り付け、蛍光顕微鏡によって調べた。
【0306】
結果
hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tの静脈内(i.v.)注射により、老化したrTg4510マウス脳の海馬および皮質における標的構造へのインビボ結合が生じた(図4~7)。観察される陽性構造の数は、個々のrTg4510動物によって異なっていた。tTA対照マウスでは、3つの抗体のいずれの注射の後も、特定の蛍光シグナルは検出されなかった(図4~7)。陰性対照として用いる、対照ヒトIgGの注射は、rTg4510マウスにおいてシグナルを生じなかった(データは示されない)。rTg4510脳における陽性シグナルは、細胞内染色として容易に見えず、神経変性の過程で放出される細胞外のタウ物質を表し得る。まとめると、これらのデータは、hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101T抗体が、脳実質中に浸透することができ、インビボでrTg4510マウスにおける標的を特異的に装飾することを示唆している。
【0307】
実施例6.アルツハイマー病の脳におけるタウ免疫活性の特性評価
組織:
パラフィンで包埋された、前頭葉のヒト脳試料を、Tissue Solutions(Glasgow,UK)から取得した。末期と診断されたアルツハイマー病(AD;Braak段階V~VI)のドナーに由来する組織が含まれていた。
【0308】
免疫組織化学
ヒト組織の4μm厚の切片を、ミクロトームで切断し、脱パラフィン化し、10分間にわたって、10mMのクエン酸緩衝液、pH6中で切片をマイクロ波処理することによって、抗原賦活化を行った。切片を、PBS/1%のBSA/0.3%のTriton X-100(PBS-BT)中の5%の正常なブタ血清とともにインキュベートした後、PBS-BTで希釈されたhC10-2またはhC10-2_N32S_A101T抗体とともに、4℃で一晩インキュベートした。切片を、PBS、0.25%のBSA、0.1%のTriton X-100中で洗浄した。免疫活性を、AlexaFluor488コンジュゲート二次抗ヒトIgG(1:200;#709-545-149,Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,USA)によって視覚化した。蛍光免疫二重染色のための、切片を、AT8(1:500;#MN1020,ThermoFisher,Waltham USA)またはE1総ヒトタウ抗体とともに共インキュベートし、特注のウサギ抗体が、N末端タウ19-33に対して産生された(Crowe et al,1991)。AT8およびE1の免疫活性をそれぞれ、抗マウスAlexaFluor568(1:400;#A10037,ThermoFisher)および抗ウサギAlexaFluor568(1:400;#A10042,ThermoFisher)で視覚化した。切片を、蛍光顕微鏡によって分析した。
【0309】
結果
N末端総タウおよびp396タウについて二重染色されたAD切片において、もつれを有するニューロンの集団を、E1ならびにhC10-2およびhC10-2_N32S_A101T抗体のいずれかによって標識した(図7)。多くのタウもつれが、hC10-2およびhC10-2_N32S_A101T抗体のいずれかのみによって標識された(図7、矢印)。細胞外タウ(ゴーストもつれ)は、N末端タウ抗体によって染色されないことが以前に示されている(例えばBondareff et al,1990;Braak et al,1994;Flores-Rodrigues et al,2015)。したがって、hC10-2またはhC10-2_N32S_A101T抗体のみによって標識されるタウ種は、細胞外のゴーストもつれを表す可能性が高い。
【0310】
ウエスタンブロットおよび免疫沈降
実験手順および実験の説明
トランスジェニックrTg4510マウスを使用した:P301L突然変異を有するヒトタウcDNA(4R0NタウP301L)を、テトラサイクリン-オペロン-レスポンダー(TRE)構築物の下流に配置した。導入遺伝子を活性化するために、レスポンダーは、テトラサイクリン調整遺伝子発現系(tTA)からなるアクチベータ構築物と共発現される必要がある。tTAアクチベータ系を、CaMKIIαプロモータの下流に配置し、それによって、主に前脳構造に対するTREの発現を制限した。タウ導入遺伝子レスポンダーは、FVB/N(Taconic)マウス系統で発現され、tTAアクチベータ系は、129S6(Taconic)マウス系統において維持された。それらのF1子孫は、非トランスジェニック(非tg)および単一トランスジェニック同腹仔マウスとともにレスポンダーおよびアクチベータ導入遺伝子(rTg4510)を有していた。F1マウスのみを実験に使用した。全てのマウスを、Taconic(Denmark)で飼育し、tTAアクチベータ導入遺伝子についてはプライマー対の5’-GATTAACAGCGCATTAGAGCTG-3’および5’-GCATATGATCAATTCAAGGCCGATAAG-3’、ならびに突然変異体タウレスポンダー導入遺伝子については5’-TGAACCAGGATGGCTGAGCC-3’および5’-TTGTCATCGCTTCCAGTCCCCG-3’を用いた尾部DNAの分析によって、遺伝子型を同定した。マウスを集団で飼育し、水および食物(Brogaarden、Denmark)を自由に与えるとともに栄養強化物質を与えた。明/暗サイクルは12時間であり;室温は21±2℃であり、55%±5%の相対湿度であった。実験動物(登録番号2014-15-0201-00339)についてのデンマークの法律にしたがって実験を行った。
【0311】
脳の代謝環境を保存するため、およびタウの生化学的プロファイルを変化させ得る人為的な影響を防ぐために、頸椎脱臼によってマウスを安楽死させた。マウス脳を、正中線で矢状方向に2等分して、2つの脳半球を得た。各動物の右脳半球の皮質および海馬を、ドライアイス上で迅速に凍結させ、使用するまで-80℃で貯蔵した。アルツハイマー病(AD)患者および老化した健常対照(HC)ドナーに由来する凍結されたヒト皮質を、Tissue Solution(Glasgow,UK)から購入した。ヒト脳試験片は、6時間未満の同様の死後処理時間を有しており、それをアミロイドおよびタウ病変について特性評価し、選択されたAD試験片をBraak段階V~VIとして分類した。
【0312】
脳溶解物からタウタンパク質を免疫沈降させるために、Crosslink免疫沈降キット(Thermo Fisher Pierce 26147)を、製造業者の指示にしたがって使用した。簡潔に述べると、抗体を、プロテインA/Gプラスアガロースに結合した後、結合抗体をDSS(スベリン酸ジスクシンイミジル)で架橋した。脳ホモジネートを、トリス緩衝液(25mMのトリス/HCl pH7.6、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのEGTA、および完全なプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤混合物)中で調製し、対照アガロース樹脂とともに4℃で一晩プレクリアした。プレクリアされた溶解物を、抗体-架橋樹脂とともに4℃で一晩インキュベートした後、50μlの溶出緩衝液(pH2.8)で抗原溶出を行い、5 μlの1Mのトリス、pH9.5を含む収集チューブ中に直ぐに遠心分離した。免疫沈降したタウを、ジチオスレイトール(DTT、100mM)を含むSDS-試料緩衝液に溶解させ、熱処理し(95℃で10分間)、後述されるようにウエスタンブロット法に供した。
【0313】
ヒトタウ濃度を、製造業者の指示(Invitrogen)にしたがって総ヒトタウについてELISAによって、脳ホモジネートおよびプレクリアされた溶解物中で測定した。
【0314】
組織を、以下のようにプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含有する10体積のトリス-緩衝生理食塩水(TBS)中で均質化した:50mMのトリス/HCl(pH7.4);274mMのNaCl;5mMのKCl;1%のプロテアーゼ阻害剤混合物(Roche);1%のホスファターゼ阻害剤混合物IおよびII(Sigma);および1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)。ホモジネートを、4℃で20分間にわたって27,000×gで遠心分離して、上清(S1)およびペレット画分を得た。ペレットを、5体積の高塩/スクロース緩衝液(0.8MのNaCl、10%のスクロース、10mMのトリス/HCl、[pH7.4]、1mMのEGTA、1mMのPMSF)中で再度均質化し、上記のように遠心分離した。上清を収集し、37℃で1時間にわたってサルコシル(1%の最終濃度;Sigma)とともにインキュベートした後、4℃で1時間にわたって150,000×gで遠心分離して、塩およびサルコシル抽出性(S3)およびサルコシル不溶性(P3)画分を得た。P3ペレットを、TE緩衝液(10mMのトリス/HCl[pH8.0]、1mMのEDTA)中で、脳ホモジネートに使用される元の体積の半分に等しい体積になるまで再度懸濁させた。過リン酸化タウ種についてS1画分を富化するために、S1画分の一部を、20分間にわたる150,000×gでのさらなる遠心分離によって、上清(S1s)および沈殿物(S1p)画分に分けた。S1pペレットを、TBS緩衝液中で、使用される元のS1体積の5分の1に等しい体積になるまで再度懸濁させた。分画組織抽出物S1、S1pおよびP3を、DTTを含有するSDS-試料緩衝液(100mM)に溶解させた。熱処理された試料(95℃で10分間)を、4~12%のビス-トリスSDS-PAGEゲル(Invitrogen)におけるゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜(BioRad Laboratories,Hercules,CA)上に移した。TBS中の5%の無脂肪乳および0.1%のTriton-X100を含有するブロッキング溶液でブロッキングした後、膜を、1μg/mlのhC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tまたはウサギ抗pS396タウ(Invitrogen)とともにインキュベートした。膜を洗浄し、ペルオキシダーゼコンジュゲート抗ヒトIgGまたは抗ウサギ抗体(1:5000;Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)とともにインキュベートした。結合抗体を、強化された化学発光システム(ECL PLUSキット;Perkin Elmer)を用いて検出した。ウエスタンブロット免疫活性の定量化および視覚分析を、コンピュータに連結されたLAS-4000 BioImaging Analyzer System(Fujifilm、東京、日本)およびMulti Gauge v3.1ソフトウェア(Fujifilm)を用いて行った。タウタンパク質を検出するために、マウスに由来する約2μgのS1、ヒト脳に由来する20μgのS1および等体積の異なる画分(S1、S1p、およびP3)を、SDS PAGEに充填した。
【0315】
ウエスタンブロットによる病的タウの検出
3匹の32週齢のrTg4510マウスおよび非トランスジェニック(非tg)対照同腹仔からプールされた前脳ホモジネートならびに4匹のADおよび4匹の健常対照(HC)ドナーからプールされた皮質試験片を、可溶性(S1)、TBS可溶性ペレット(S1p)およびサルコシル不溶性画分(P3)中に単離した。hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tを、ウエスタンブロットにおいて1μg/mlで使用し、rTg4510マウスおよびADから病的タウを検出した。本発明者らは、32週齢のrTg4510マウスに由来するS1において55および64kDaタウ、およびP3およびS1p画分において64および70kDaタウの検出を観察した。さらに、50kDa未満の3つの切断された(truncated)タウバンドが、P3画分において観察された。ヒト導入遺伝子タウを発現しない非tg対照同腹仔に由来するS1pおよびP3においてシグナルは検出されなかった。50kDa前後の弱いシグナルが、非tgマウスに由来するS1画分において検出され、これは、S396残基においてリン酸化された内因性マウスタウを表す可能性が最も高い(図8)。hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tは、rTg4510マウスにおいて、pS396タウ、ならびに正常なリン酸化55kDaおよび過リン酸化64kDaタウ種の両方を検出したことが要約される。最も強いシグナルが、hC10-2_N32S_A101Tで観察された。
【0316】
ADドナーに由来するS1、S1pおよびP3画分において、hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tは、典型的なADタウ塗抹標本および病的な4つのタウバンドパターン(54、64、69および74kDaタウ)を検出した。予測されるように、P3画分から単離されたサルコシル不溶性過リン酸化タウ種が最も顕著であり、続いて、S1p画分が富化された可溶性過リン酸化タウ種であった。健常対照(HC)に由来するP3画分においてシグナルは検出されなかった。HCに由来するS1およびS1p画分において、55kDa前後の弱いシグナルが検出され、これは、S396残基における正常なリン酸化タウを表す可能性が高い(図8)。hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tが、過リン酸化タウを表すADおよび病的な4つのタウバンドパターンに特徴的な典型的なタウ塗抹標本を検出したことが要約される。最も強いシグナルが、hC10-2_N32S_A101Tで観察された。
【0317】
病的タウの免疫沈降
非変性条件下でタウに結合するhC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tの能力を決定するために、タウ抗体をプロテインA/G樹脂上へと共有結合的に架橋し、それによって、抗体汚染のないIPを得るタウ免疫沈降(IP)プロトコルを確立した。SDS-PAGEによるタウ分析では、両方のタンパク質が50kDa前後で検出されるため、IPに使用される抗体の重鎖の存在は、シグナルを邪魔し得る。ヒト脳に由来する病的タウを破壊するhC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tの有効性を調べた。抗原として、それぞれ0.1μgおよび0.15μgのヒトタウ(ヒトタウELISAによって決定される)を含有する4匹のプールされたADおよびHCドナーに由来する脳ホモジネートからの500μgのプレクリアされた溶解物を使用した。hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101T(10μg)は、ポリクローナルウサギ抗pS396タウ抗体によって視覚化されるプレクリアされたADホモジネート(抗原/ab1:100の比率)からの54、64、69および74kDaタウ種(4つの病的タウバンド)およびAD塗抹標本を破壊した(図9)。hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tで破壊されたAD脳に由来するタウバンドの強度を、対照ヒトIgG抗体およびHC脳と比較すると、hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tが、AD脳のみに由来するpS396部位において過リン酸化タウを免疫沈降し、1:100の抗原/抗体比で有効であったことが要約され得る。
【0318】
細胞および凝集アッセイ
HEK293細胞を、平板培養の24時間後に、6ウェルプレートにおいてヒトタウ-P301L-FLAGで一過性にトランスフェクトし、続いて、24時間後に、24時間にわたって脳ホモジネートとともにインキュベートした後、細胞を分割および再度平板培養し、さらに24時間後に収集した。細胞を溶解させ、1%のtriton X、Phos-stopおよび完全なホスファターゼおよびプロテアーゼ阻害剤(Roche)緩衝液が補充されたPBS中で超音波処理し、30分間にわたって100,000×gで超遠心分離した。ペレットを、SDS中で再懸濁させ、超音波処理し、30分間にわたって100,000×gで超遠心分離した。上清を、ウエスタンブロット法によって分析した。ヒトタウ-P301Lを発現する細胞は、rTg4510タウトランスジェニックマウスに由来する総脳ホモジネートをシーディングすると、不溶性(SDS画分、E1/FLAG検出)、過リン酸化(D1.2/{P}S396検出)タウを示した。
【0319】
tTAマウスに由来する対照脳ホモジネートで処理された細胞は、凝集過リン酸化ヒトタウが存在しないことを示した。さらに、HEK293細胞の総細胞溶解物を、Cisbio製のタウ凝集アッセイを用いて分析した。このアッセイは、FRETにおいてドナー(Tb3+コンジュゲート)およびアクセプタ(d2コンジュゲート)Abの両方に同じ抗体を用いた時間分解蛍光に基づくものである。10μlの試料を、10μlの抗体混合物と混合し、20時間インキュベートした。プレートをPherastarプレートリーダーで読み取って、時間分解蛍光(励起光のスイッチング後に測定/積分される(integrated)FRETシグナル)を評価した。アッセイは、ヒト剖検材料、rTg4510マウスにおいて、および高い特異性および感度を有する播種されたHEK細胞において凝集タウを測定する。結果が図10に示される。
【0320】
実施例7.タウの免疫枯渇
アルツハイマー病の脳抽出物を、10倍体積の滅菌冷PBS中の凍結された死後前頭前皮質から作製した。組織を、ナイフホモジザイナー(knife homogenizer)を用いて均質化した後、超音波処理し、出力2で5×0.9秒パルス(Branson sonifier)にかけた。次に、ホモジネートを、4℃で5分間にわたって3000gで遠心分離した。上清を分割し、急速凍結させ、使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0321】
25μgの抗体(ヒト化C10-2変異体および2.10.3、マウスAT8、Thermo Scientific mn 1020)を、125μlのMagnetic dynabead懸濁液(免疫沈降キットDynabeads Protein G Novex、Cat no 10007D)に固定した。十分な洗浄の後、被覆ビーズを、可変量の非被覆洗浄ビーズと混合した。5μgの抗体に対応する100%のAb被覆ビーズから開始して、100%の非被覆ビーズに到るまで。ビーズの総量は、全ての試料において同じであった。ビーズを、20μlのAD抽出物と混合し、室温で10分間インキュベートした。電磁ビーズを、抽出物から分離し、抽出物を分割し、急速凍結させ、使用するまで-80℃で保持した。
【0322】
ウエスタンブロットを用いた枯渇の分析
試料を、1×LDSローディングバッファーおよび100mMのDTT中で沸騰させた。3μlの抽出物に対応する体積を、4~12%のビス-トリスNuPAGE Gel(LifeTech Novex)上に充填した。電気泳動の後、タンパク質を、Immobilon-FL PVDF膜(0.45μm、IPFL10100、Millipore)上にブロッティングした。膜を、SEAブロッキングバッファー(Prod#37527、Thermo)を用いてブロッキングした。タウおよびP-タウレベルを、タウ5を用いて試料中で評価した。Abcam ab80579、1:2000)マウスC10-2(1μg/ml)、P-S199/202(Invitrogen 44768 G、1:1000)、P-S422(Abcam ab79415、1:750)、ヒトIPN(1μg/ml)。Gapdhおよびアクチンを、充填対照(Abcam ab9484、1:2000、Sigma A5441、1:20000)として使用した。二次フルオロフォアコンジュゲートIgG抗体を使用し(IRDye 800CWヤギ抗ヒト、IRDye 800CW、ヤギ抗ウサギ、IRDye 680ヤギ抗マウス、LI-COR biosciences)、シグナルを、Odyssey CLxおよびImage studioソフトウェア(LI-COR biosciences)を用いて定量化した。全レーンにおける個々のバンドならびにシグナルの定量化を行い、これから、S字形用量反応曲線をプロットし、可能であれば、最大効果およびEC50値を推定した。
【0323】
結果
2.10.3およびC10-2抗体は両方とも、アルツハイマーの脳の調製物からタウのごく一部を除去する。これは、総タウタンパク質含量中のタウのサブセットに対する選択性を示す。P-S422タウに対する特異性を有するように設計された2.10.3は、総タウ量の最大で24%を除去する一方、C10-2は、総タウの最大で15%を除去する(図11を参照)。これは、P-S396サブセットが、全ての他の因子が等しいタウのより小さいサブセットであると解釈され得る。あるいは、データは、2.10.3抗体がpS422に対して選択的であるより、C10-2抗体がpS396に対してより選択的よりP-S396であると解釈され得る。
【0324】
2.10.3およびC10-2は両方とも、セリン422においてリン酸化されたタウの90%超を除去するが、P-S422タウの50%を除去するのに必要な抗体の量は異なり、2.10.3については、0.42μgの抗体が必要とされ、およびC10-2については、0.27μgが同じ効果のために必要とされた(図12を参照)。本発明の一実施形態において、抗体は、386~404内のエピトープに対して免疫特異的であり、ここで、ヒトタウの残基396がリン酸化され、1μg未満の抗体を用いて、P-S422タウの80%が除去される(ウエスタンブロット分析による免疫枯渇試験において)。
【0325】
C10-2は、セリン396においてリン酸化されたタウを効率的に除去する(最大効果:効果の88%および半分に、0.30μgの抗体を用いて達する)。2.10.3は、セリン396においてリン酸化されたタウをより少ない割合で除去する(最大効果:その効果の60%および半分に、0.63μgの抗体を用いたときに達する)(図13を参照)。これは、セリン422においてリン酸化された全てのタウが、セリン396においてもリン酸化されたが、過リン酸化タウの一部は、セリン396においてリン酸化され、ここで、位置422におけるリン酸化セリンが存在しないことを示す。本発明の一実施形態において、抗体は、386~404内のエピトープに対して免疫特異的であり、ここで、ヒトタウの残基396がリン酸化され、1μg未満の抗体を用いて、P-S396タウの80%が除去される(ウエスタンブロット分析による免疫枯渇試験において)。
【0326】
C10-2によって除去されるタウの大部分は、セリン199/202においてもリン酸化され、これは、そのリン酸化を有するタウの69%が免疫枯渇によって影響されるためである(0.34μgの抗体を用いたときの効果の50%)。2.10.3免疫枯渇は、P-S199/202タウにおいてS字形用量反応を示さないが、シグナルの低下が、増加する量の抗体で見られる(最大量の抗体(5μg)を用いたときに最大52%の低下(図14を参照)。本発明の一実施形態において、抗体は、386~404内のエピトープに対して免疫特異的であり、ここで、ヒトタウの残基396がリン酸化され、1μg未満の抗体を用いて、P-S199/202タウの80%が除去される(ウエスタンブロット分析による免疫枯渇試験において)。
【0327】
これらの結果は、リン酸化セリン396を標的にするC10-2抗体が、422位置におけるリン酸化セリンを標的にする2.10.3抗体より大きいプールの過リン酸化タウに結合することを示す。
【0328】
免疫枯渇後のウエスタンブロットにおける個々のバンドを調べる際、25kDaバンドが、セリン396においてリン酸化されたものと同定された。このフラグメントは、C10-2によって免疫枯渇されたが、2.10.3およびAT8は、このフラグメントを枯渇しなかった(図15を参照)。したがって、C10-2は、アルツハイマー病の脳抽出物に由来するこの切断型のタウを除去する独自の特徴を有する。
【0329】
実施例8.C10-2変異体の比較
全てのC10-2変異体は、免疫枯渇アッセイにおいて同じ高い効率を有していた(図16を参照)。これらは、導入された突然変異が、アルツハイマー病の脳に特有のタウへの機能的結合を減少させていないことを示す。
【0330】
8a.播種されたrTg4510マウスにおける抗体処理
CamK2陽性ニューロン(rTg4510)中、tet-off応答因子下でヒト突然変異タウ(P301L 0N4R)を発現するトランスジェニックマウスを使用した。このモデルは、通常、3月齢でタウ病変を発生し始めるが、妊娠中および子が生まれてから最初の3週間にわたって母親にドキシサイクリンを供給することによって、病変は、より遅い段階で発生する(6月齢後に開始する)。ドキシサイクリンで予め処理されたマウスを、2月齢から開始して、15mg/kg/週で、mC10-2、hC10-2、2.10.3または対照抗体で長期的に処理した。2.5ヶ月の時点で、アルツハイマー病の脳抽出物を、海馬に注入した。マウス20匹に、吸入剤の吸入によって麻酔をかけ、定位フレームに固定した。頭蓋骨を露出させ、ブレグマおよびラムダが水平になるまで調整した。ブレグマの2mm側方(右)および2.4mm後方で、頭蓋骨に孔を空けた。10μlのシリンジのベベルチップ(SGE)を用いて、シーディング材料を、上記の配置で、脳表面の1.4mm前面に注入した。2μlの、実施例7に記載される抽出物を、その部位(1μl/分)にゆっくりと注入し、シリンジを5分間そのままにして置いてから、それを取り出した。創傷を縫うことによって閉じ、目を覚ますまでマウスを加熱した。マウスを3ヶ月間飼育してから殺処分し、かん流を4%で固定。マウスを、シーディングの3ヵ月後に殺処分するまで、抗体で処理した。
【0331】
免疫組織化学
固定された脳を、NSA30において35μmの冠状断面へと切断し、6つ置きの切片を、タウもつれ(ガリアス銀染色)について染色した。陽性染色されたニューロン(細胞体)を、全ての脳の海馬の同側および反対側で計数した。海馬の全てのサブ領域が含まれていた。脳当たり8つの切片を計数した。結果は、8つの切片からの陽性ニューロンの合計を反映する。
【0332】
統計分析:群を比較すると、差異は、有意に異なっている。ここでは、ノンパラメトリック検定、クラスカル・ウォリス検定およびダンの多重比較検定を使用した。
【0333】
結果
抽出物は、同側海馬におけるもつれ病変のシーディングをもたらした。mC10-2処理は、播種された海馬のもつれ病変を57%だけ有意に減少させた(P<0.05)。hC10-2が病変を減少させたことを示す明らかな傾向があったが、2.10.3は、効果を示すことができなかった(図17を参照)。
【0334】
実施例9 固定化ヒト病的材料を用いた396/404抗体のスクリーニングおよび選択
ハイブリドーマ上清を、0.1Mの炭酸塩緩衝液pH9を用いて、1μg/mlのペプチドリン酸化タウ386~408(pS396/pS404)で被覆されたnuncプレートにおける抗体結合についてスクリーニングした。続いて、陽性上清を、それぞれADおよび健常対照(HC)に由来する脳(P3ペレット)溶解物抗原で被覆されたELISAまたはMSDプレートにおける結合のために、PBS、0.1%のBSAおよび0.1のNP40中で1:50~1:800に希釈した。脳溶解物抗原を、ELISAまたはMSDプレートのインキュベーション/コーティングの前に、0.1Mの炭酸塩緩衝液pH9中で1500倍に希釈した。続いて、ウェルを、室温で2時間にわたってブロックし(PBS、3mg/mlのBSA、0.1%のNP-40)、抗体結合活性を、供給業者のプロトコルにしたがって、HRP(DAKO)およびスルホタグ(MSD、product #)コンジュゲート抗マウスIgGを用いて検出した。0.1%のBSAを含むPBS中で希釈された抗体(D1-2、C5-2、C8-3およびC10-2)の選択が、用量反応によって特性評価され、AD-P3抗原で被覆されたプレートに対するサブナノモルないしナノモルの結合活性が、特異的および対照ペプチドの選択に対する結合活性についてさらに特性評価されたことを示した。結果が図19に示される。
【0335】
実施例10 ヒト網膜におけるリン酸化タウの免疫組織化学的検出
方法
ヒト網膜(男性、50歳)が、ヒトドナーに由来する10の器官を含むパラフィン切片の組織アレイ(US Biomax、cat.no.BN501)に含まれていた。切片を、脱パラフィンし、再水和し、5分間にわたって10mMのクエン酸緩衝液pH6中で沸騰させることによって、抗原賦活化を行った。内因性ペルオキシダーゼを、PBS中1%のH2O2で10分間クエンチした。次に、切片を、1%のBSA、0.3%のTriton X-100、PBS中5%の正常ブタ血清中で20分間インキュベートした後、1μg/mLの一次抗体とともに、4℃で加湿したチャンバ中で一晩インキュベートした。免疫反応性を視覚化するために、切片を、ビオチン化二次ヤギ抗ヒトIgG(Sigma、#B1140)、ストレプトアビジン-ビオチン複合体(Vectastain Elite,Vector Laboratories,#PK-6100)および最後に0.05%のジアミノベンジジンとともにインキュベートした。最後に、切片を、ヘマトキシリンで対比染色し、カバースリップをした。
【0336】
結果
1μg/mLのC10-2、C10-2_N32SおよびC10-2_N32S_A101T抗体は、ヒト網膜の切片を特異的に標識した。最も強い免疫反応性が、C10-2_N32S_A101T抗体で得られた。一次抗体を省略すると、シグナルが完全に消失した。

本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントであって、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されていない場合に残基404においてリン酸化された配列番号1に実質的に結合しないように、前記モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントが、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能である、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[2]
前記治療が、もつれを除去するか、または前記もつれの進行を軽減する工程を含み、前記もつれは、過リン酸化タウを含み、前記方法は、前記もつれが除去され、過リン酸化タウのその含有量が減少され、またはもつれ形成の進行が軽減されるように、過リン酸化タウを本発明の抗体と接触させる工程を含む、請求項1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[3]
前記疾患が、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される、請求項1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[4]
前記抗体が、C10-2抗体、C10-2変異体、C5.2抗体、C8.3抗体、およびD1.2抗体からなる群から選択される、請求項1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[5]
前記抗体が、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、請求項1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[6]
前記抗体が、
(a)配列番号11を含む重鎖、および
(b)配列番号12を含む軽鎖
を含む、請求項1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[7]
前記変異体が、
(a)配列番号13、配列番号14および配列番号15を含む重鎖、および
(b)配列番号12を含む軽鎖
を含む、請求項1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[8]
前記抗体が、
(a)配列番号11、配列番号13、配列番号14および配列番号15を含む重鎖、および
(b)配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22および配列番号23を含む軽鎖
を含む、請求項1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[9]
(a)配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
(b)配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;および
(c)配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3;および
(d)配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、および配列番号23からなる群から選択される軽鎖
を含む、請求項1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[10]
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群から選択される重鎖
を含む、請求項1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[11]
前記抗体が、配列番号24;配列番号25;配列番号26;および配列番号27のいずれか1つを含む、請求項1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[12]
前記抗体が、
(a)配列番号66のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号67のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号68のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号69のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号70のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号71のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
前記C8.3抗体が、
(a)配列番号74のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号75のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号76のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号77のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号78のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号79のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
前記D1.2抗体が、
(a)配列番号58のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号59のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号60のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号61のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号62のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、請求項1に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療するためのモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[13]
脈絡膜および網膜の疾患の治療のための薬剤の調製のための、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントであって、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されていない場合に残基404においてリン酸化された配列番号1に実質的に結合しないように、前記モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントが、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能である、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[14]
前記疾患が、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される、請求項13に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[15]
Fvフラグメント(例えば一本鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv);Fab様フラグメント、例えばFabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab) フラグメント;およびドメイン抗体、例えば単一のV 可変領域またはV 可変領域からなる群から選択されるエピトープ結合フラグメントを含むかまたはそれからなる、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
[16]
ヒトまたはヒト化抗体またはそのエピトープ結合フラグメントである、先行請求項のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
[17]
対象における脈絡膜および網膜の疾患を治療、診断またはイメージングする方法であって、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されていない場合に残基404においてリン酸化された配列番号1に実質的に結合しないように、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを、有効量で前記対象に投与する工程を含む方法。
[18]
前記疾患が、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される、請求項17に記載の、脈絡膜および網膜の疾患を治療、診断またはイメージングする方法。
[19]
対象の眼内の前記タウの存在または量を検出または測定するのに使用するための、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、あるいは前記抗体またはフラグメントを含む調製物または医薬組成物であって、前記抗体が、C10-2抗体、C10-2変異体、C5.2抗体、C8.3抗体、およびD1.2抗体からなる群から選択される、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、あるいは前記抗体またはフラグメントを含む調製物または医薬組成物。
[20]
患者における、網膜アミロイドーシス、加齢黄斑変性症(ARMD)、視神経症に関連する網膜神経節細胞神経変性(緑内障、乾燥型ARMDおよび滲出型ARMDを含む)からなる群から選択される脈絡膜および網膜の疾患の進行を遅らせる方法であって、前記方法が、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されていない場合に残基404においてリン酸化された配列番号1に実質的に結合しないように、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に免疫特異的に結合することが可能な抗体を投与することによって、前記患者における病的タウタンパク質の蓄積を減少させるかまたは軽減する工程を含む、方法。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19-1】
図19-2】
【配列表】
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