(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】真空ポンプシステム及び真空ポンプシステムを有する半導体製造アセンブリ
(51)【国際特許分類】
F04B 37/16 20060101AFI20230127BHJP
F04B 41/00 20060101ALI20230127BHJP
F04B 39/16 20060101ALI20230127BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20230127BHJP
F04B 39/10 20060101ALI20230127BHJP
C23C 14/00 20060101ALI20230127BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20230127BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
F04B37/16 H
F04B41/00 B
F04B37/16 D
F04B39/16 Z
F04B39/12 101A
F04B39/10 Z
C23C14/00 B
C23C16/44 E
H01L21/31 B
(21)【出願番号】P 2020500098
(86)(22)【出願日】2018-07-03
(86)【国際出願番号】 GB2018051861
(87)【国際公開番号】W WO2019008338
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-03-30
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】シーリー アンドリュー ジェイムズ
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-314869(JP,A)
【文献】特開2009-154091(JP,A)
【文献】国際公開第2013/134151(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/110694(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0134890(US,A1)
【文献】特表2009-540126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/16
F04B 41/00
F04B 39/16
F04B 39/12
F04B 39/10
C23C 14/00
C23C 16/44
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプシステムであって、該真空ポンプシステムは、
半導体製造アセンブリで用いるポンピングライン構成を備え、該ポンピングライン構成は、
半導体製造ツールの一部を形成して内部で少なくとも2つの処理ステップが行われるプロセスチャンバと流体的に接続可能なチャンバ接続ラインと、
前記チャンバ接続ラインに流体的に接続されるバルブモジュールであって、前記バルブモジュールは、前記チャンバ接続ラインをそれぞれ第1及び第2のポンピングラインに分け、前記第1のポンピングラインは、第1の処理ステップ排出ガス流を運ぶことが意図され、前記第2のポンピングラインは、前記第1の処理ステップ排出ガス流と不相溶性の第2の処理ステップ排出ガス流を運ぶことが意図される、バルブモジュールと、
を備え、
前記第1のポンピングラインは、その内部で流体的に接続された、前記第2の処理ステップ排出ガス流から1又は2以上の不相溶性の処理ステップ排出成分を除去するように構成された第1の事前除害モジュールを含み、前記第2のポンピングラインは、その内部で流体的に接続された、前記第1の処理ステップ排出ガス流から1又は2以上の不相溶性の処理ステップ排出成分を除去するように構成された第2の事前除害モジュールを含み、
前記第2の事前除害モジュールは、フッ素化剤を含み、
前記真空ポンプシステムは、
前記第1の処理ステップ排出ガス流を除害するように構成される
第1の主除害モジュールと、
前記第2の処理ステップ排出ガス流を除害するように構成される
第2の主除害モジュールと、を備え、
前記第1のポンピングラインは、前記第1の主除害モジュールに流体的に接続され、前記第2のポンピングラインは、前記第2の主除害モジュールに流体的に接続され、前記第1の主除害モジュールは、前記第1の事前除害モジュールの下流に配置され、前記第2の主除害モジュールは、前記第2の事前除害モジュールの下流に配置される、真空ポンプシステム。
【請求項2】
前記第1の事前除害モジュール及び前記第2の事前除害モジュールは各々、前記バルブモジュールのすぐ下流で
、対応する前記ポンピングライン中で流体的に接続される、請求項1に記載の真空ポンプシステム。
【請求項3】
前記第1のポンピングラインは、蒸着処理流を運ぶことが意図された蒸着ポンピングラインを定め、前記第2のポンピングラインは、浄化処理流を運ぶことが意図された浄化ポンピングラインを定め、前記第1の事前除害モジュールは、前記浄化処理流からの1又は2以上の不相溶性の処理ステップ排出成分を除去するように構成され、前記第2の事前除害モジュールは、前記蒸着処理流からの1又は2以上の不相溶性の処理ステップ排出成分を除去するように構成される、請求項1又は2に記載の真空ポンプシステム。
【請求項4】
第1の事前除害モジュールは、フッ素除去剤を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の真空ポンプシステム。
【請求項5】
前記フッ素除去剤は、炭酸カルシウム及び/又はシリコンである、又は炭酸カルシウム及び/又はシリコンを含有する、請求項4に記載の真空ポンプシステム。
【請求項6】
前記フッ素化剤は、遷移金属フッ化物及び/又はテトラフルオロコバルト酸カリウムである、又は遷移金属フッ化物及び/又はテトラフルオロコバルト酸カリウムを含有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の真空ポンプシステム。
【請求項7】
前記遷移金属フッ化物は、コバルト(III)フッ化物及び/又はフッ化鉄(フッ化鉄(III))である、又はコバルト(III)フッ化物及び/又はフッ化鉄(フッ化鉄(III))を含有する、請求項6に記載の真空ポンプシステム。
【請求項8】
前記真空ポンプシステムは、前記ポンピングライン構成を複数備え、前記チャンバ接続ラインは、1又は2以上の半導体製造ツールの一部を形成するそれぞれのプロセスチャンバに流体的に接続可能であり、
前記真空ポンプシステムは、
前記第1の主除害モジュール及び前記複数のポンピングライン構成の複数の前記第1のポンピングラインと流体連通状態
にある第1の共通ポンピングラインと、
前記第2の主除害モジュール及び前記複数のポンピングライン構成の複数の前記第2のポンピングラインと流体連通状態
にある第2の共通ポンピングラインと、を備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の真空ポンプシステム。
【請求項9】
流体的に接続された
請求項1から8のいずれか1項に記載の真空ポンプシステムを有する少なくとも1つのプロセスチャンバを含む半導体製造ツールを備える半導体製造アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造アセンブリ又は真空ポンプシステムで用いるポンピングライン構成に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンピングライン構成は、例えば、シリコンチップ、平面パネルディスプレイ、ソーラーパネル、又は発光ダイオード(LED)などの半導体を製造するアセンブリで用いる真空ポンプシステムの中に広く現れる。アセンブリは、1又は2以上の製造ツールを備え、各製造ツールは、内部で処理が生じる1又は2以上のチャンバを有することができる。チャンバ内の処理は、2以上の処理ステップを必要とし、各処理ステップは、異なる処理ガスを必要とする場合がある。1又は2以上の真空ポンプシステムは、チャンバ内で必要な処理圧力を維持すると共に処理ガスをチャンバから排気する。異なる不相溶性の処理ガス流を異なる実質的に専用のポンピングラインで運ぶことを目的とするポンピングライン構成において、異なる不相溶性の処理流が互いに混合しないことを保証することが望ましく、ある意味では、これによって異なる処理流の間の悲劇的反応が起こる高いリスクがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様によれば、半導体製造アセンブリで用いるポンピングライン構成が提供され、ポンピングライン構成は、
半導体製造ツールの一部を形成して内部で少なくとも2つの処理ステップが行われるプロセスチャンバと流体的に接続可能なチャンバ接続ラインと、
チャンバ接続ラインに流体的に接続されるバルブモジュールであって、バルブモジュールは、チャンバ接続ラインをそれぞれ第1及び第2のポンピングラインに分け、第1のポンピングラインは、第1の処理ステップ排出ガス流を運ぶことが意図され、第2のポンピングラインは、第1の処理ステップ排出ガス流と不相溶性の第2の処理ステップ排出ガス流を運ぶことが意図される、バルブモジュールと、
を備え、
第1のポンピングライン又は第2のポンピングラインのうちの少なくも一方が、その内部で流体的に接続された事前除害モジュールを含み、事前除害モジュールは、ポンピングラインの他方で運ばれることが意図された処理ステップ排出ガス流から1又は2以上の不相溶性の処理ステップ排出成分を除去するように構成される。
【0004】
図面と関連して以下で詳細に説明するように、所定のポンピングラインの中に、使用時、他方のポンピングライン、すなわち他方の処理流によって運ばれる可能性がある、1又は2以上の不相溶性の成分を処理流から除去するように構成された事前除害モジュールを含めることで、必要に応じて、ポンピングライン構成は、例えば、機械的故障又は制御システムの故障の場合に所定のポンピングラインの中を間違って流れる可能性がある、いかなる他方の処理流も中和することができる。換言すると、事前除害モジュールは、さもなければ所定のポンピングラインの対象の処理流と望ましくなく反応する、他方の処理流の1又は2以上の成分を除去するので、何らかのその後の、中和された他方の処理流と対象の処理流の下流側での混合が、これらの処理流の間の悲劇的な反応をもたらすことはないであろう。
【0005】
一方で、このような事前除害モジュールは、所定のポンピングラインを通過する対象の処理流への影響が最小であり、対象の処理流の除害は、対象の処理流の所定の性質に最適化された専用の除害モジュールで行うことができる。
【0006】
従って、事前除害モジュールは、正常な動作状態である限りにおいて、外部介入を必要とせず、対象の処理流への影響は最小であり、一方で、反対の動作状態、すなわち他方の処理流の間違った流れが事前除害モジュールを通る状態では、他方の処理流から前記又は各反応成分を除去するように作用する。
【0007】
好ましくは、前記又は各事前除害モジュールは、バルブモジュールのすぐ下流で対応するポンピングライン中で流体的に接続される。このような構成は、何らかの中和されていない他方の処理流が対象の処理流(例えば、所定のポンピングラインに残留する可能性がある対象の処理流の一部)と混合する可能性を最小にするのを助ける。
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、第1のポンピングラインは、その内部で流体的に接続された、第2の処理流から1又は2以上の不相溶性の処理ステップ排出成分を除去するように構成された第1の事前除害モジュールを含み、第2のポンピングラインは、その内部で流体的に接続された、第1の処理流から1又は2以上の不相溶性の処理ステップ排出成分を除去するように構成された第2の事前除害モジュールを含む。
【0009】
第1及び第2の事前除害モジュールを含めることは、第1及び第2のポンピングラインの各々において、第1及び第2の処理流の反応様式での間違った混合に対する保護を可能にする。
【0010】
随意的に、第1のポンピングラインは、蒸着処理流を運ぶことが意図された蒸着ポンピングラインを定め、第2のポンピングラインは、浄化処理流を運ぶことが意図された浄化ポンピングラインを定め、第1の事前除害モジュールは、浄化処理流からの1又は2以上の不相溶性の処理ステップ排出成分を除去するように構成され、第2の事前除害モジュールは、蒸着処理流からの1又は2以上の不相溶性の処理ステップ排出成分を除去するように構成される。
【0011】
このような構成は、蒸着及び浄化処理を定期的に利用する半導体製造アセンブリで用いるのに特に適切である。
【0012】
真空ポンプシステムにおいて、第1のポンピングラインは、その内部で流体的に接続されて、第1の処理流を除害するように構成された第1の主除害モジュールを含むことができ、第2のポンピングラインは、その内部で流体的に接続されて、第2の処理流を除害するように構成された第2の主除害モジュールを含むことができ、第1及び第2の主除害モジュールの各々は、対応する事前除害モジュールの下流に配置することができる。
【0013】
各ポンピングラインにそれぞれの主除害モジュールを含めることで、所定のポンピングラインによって運ばれる対象の処理流の性質に応じて、所定のポンピングラインの中で必須の除害を最適化することができ、関連の半導体製造処理の全体的効率を改善するのを助ける。
【0014】
好ましくは、第1の事前除害モジュールはフッ素除去剤を含む。このような除去剤を含めることは、間違って導入された場合に、標準の浄化流体、例えばフッ素ガスを第1のポンピングラインから除去するのを保証するのを助ける。
【0015】
随意的に、フッ素除去剤は、炭酸カルシウム及び/又はシリコンである、又は炭酸カルシウム及び/又はシリコンを含有する。
【0016】
炭酸カルシウム及びシリコンは、特に例えば約300℃の昇温時にフッ素と有利に反応して比較的不活性な副生成物を生成するので、第1のポンピングラインからフッ素を除去するのに用いることができる。さらに、炭酸カルシウム又はシリコンはいずれもシラン、アンモニア、又は水素などの標準の蒸着ガスと反応しなので、対象の処理流、すなわち蒸着処理流が第1のポンピングラインを通過する間に基本的に不動態(passive)のままである。
【0017】
本発明の他の好ましい実施形態において、第2の事前除害モジュールはフッ素化剤を含む。
【0018】
このようなフッ素化剤は、標準の浄化流体、すなわちフッ素ガスに対して不活性であり、少なくとも第2のポンピングライン内の対象の処理流の一部を構成する可能性が高い。一方で、このようなフッ素化剤は、第1の処理流の成分である可能性が高い1又は2以上の標準の蒸着ガス、例えばシランに対して反応性であり、このようなフッ素化剤は、第1の処理流が間違って導入された場合に、このような不相溶性の成分を第2のポンピングラインから除去するのに用いることができる。
【0019】
フッ素化剤は、遷移金属フッ化物及び/又はテトラフルオロコバルト酸カリウムである、又は遷移金属フッ化物及び/又はテトラフルオロコバルト酸カリウムを含有することができる。
【0020】
好ましくは、遷移金属フッ化物は、コバルト(III)フッ化物及び/又はフッ化鉄である、又はコバルト(III)フッ化物及び/又はフッ化鉄を含有することができる。
【0021】
上記に各々は、蒸着流体、例えばシランと有利に反応して比較的不活性な副生成物を生成するので、第2のポンピングラインから蒸着流体を除去するのに用いることができる。
【0022】
真空ポンプシステムの一実施例はこのようなポンピングライン構成を備え、真空ポンプシステムは、第1の主除害モジュール及び第2の主除害モジュールを備え、第1のポンピングラインは、第1の処理流を除害するように構成される第1の主除害モジュールに流体的に接続され、第2のポンピングラインは、第2の処理流を除害するように構成される第2の主除害モジュールに流体的に接続され、第1及び第2の主除害モジュールの各々は、対応する上流側の事前除害モジュールの下流に配置される。
【0023】
チャンバ接続ラインは、1又は2以上の半導体製造ツールの一部を形成するそれぞれのプロセスチャンバに流体的に接続可能とすることができ、第1の共通ポンピングラインは、第1の主除害モジュール及びポンピングライン構成の第1のポンピングラインと流体連通状態であり、第2の共通ポンピングラインは、第2の主除害モジュール及びポンピングライン構成の第2のポンピングラインと流体連通状態である。
【0024】
第1の共通ポンピングラインは、第1の真空ポンピング構成と流体連通状態とすることができ、第2の共通ポンピングラインは、第2の真空ポンピング構成と流体連通状態とすることができる。
【0025】
本発明の他の態様によれば、流体的に接続された請求項1から12に記載のポンピングライン構成を有する少なくとも1つのプロセスチャンバを含む半導体製造ツールを備える半導体製造アセンブリが提供される。
【0026】
本発明の半導体製造ツールは、ポンピングライン構成の対応する特徴の利点を共有する。
【0027】
以下に添付図面を参照して非限定的な実施例による本発明の一部の実施形態の簡単な説明が続く。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】半導体製造アセンブリにおける本発明の第1の実施形態によるポンピングライン構成の概略図を示す。
【
図2】他の半導体製造アセンブリにおける複数のポンピングライン構成の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照すると、半導体製造アセンブリ100が示されており、これは少なくとも2つの処理ステップが実行されるプロセスチャンバ14を含む半導体製造ツール15を備える。真空ポンプシステム102は、各処理ステップで必要な処理圧力を維持すると共に、各処理ステップに関する処理ステップ排出ガス流を排出する。
【0030】
真空ポンプシステムは、本発明の第1の実施形態によるポンピングライン構成10を備える。ポンピングライン構成は、使用時、プロセスチャンバ14に流体的に接続されるチャンバ接続ライン12を含む。
【0031】
図示の実施形態において、チャンバ接続ライン12は、その内部で流体的に接続したブースターポンプ17を含むが、これは必ずしも必要ではない。ブースターポンプは、特に真空ポンプシステムが1又は複数のチャンバから少し遠くに配置される場合にチャンバ接続ラインに沿ったガス流量を増大させる。
【0032】
本実施例において、2つの処理ステップ排出ガス流を必要とする2つの処理ステップが実行され、また、ポンピングライン構成10はバルブモジュール16を含み、バルブモジュールは、チャンバ接続ライン12に流体的に接続されると共にチャンバ接続ライン12を第1及び第2のポンピングライン18、20のそれぞれに分ける。バルブモジュールは、必要に応じて、処理ステップ排出ガス流を第1及び第2のポンピングラインのうちの選択された1つに運ぶ。これに関して、第1のポンピングライン18は、第1の処理ステップ排出ガス流を運ぶことを目的とするが、第2のポンピングラインは、第2の処理ステップ排出ガス流を運ぶことを目的とする。他の実施例において、3以上の処理ステップ排出ガス流を必要とする3以上の処理ステップが実行される場合、ポンピングライン構成は、少なくとも同等の数のポンピングラインを備えることになり、バルブモジュールは、ガスを選択されたポンピングラインに運ぶように構成されることになる。追加的に、チャンバを迅速に排気するために、ポンピングラインの下流にポンプが存在できる。
【0033】
典型的に、第1の処理流及び第2の処理流が、プロセスチャンバ14における製造時に連続的に交互に生じる。第1及び第2の処理流は、各々が1又は2以上の不相溶性の処理ステップ排出ガス成分を有するという点で互いに不相溶性であり、この処理ステップ排出ガス成分は、ことによると悲劇的に、他の処理流の1又は2以上のそのような不相溶性の処理ステップ排出ガス成分と反応することになる。
【0034】
例示された実施例において、第1のポンピングライン18は、蒸着処理流を運ぶことが意図された蒸着ポンピングライン22を定め、第2のポンピングライン20は、浄化処理流を運ぶことが意図された浄化ポンピングライン24を定める。図示の実施形態において、蒸着処理流は、単にシラン(SiH4)で構成されるが、アンモニア(NH3)、水素(H2)、又は同様の還元種とすること又はこれを含むこともできる。浄化処理流は、単にフッ素(F2)で構成されるが、他の酸化種、特に他のハロゲンも可能である。
【0035】
加えて、第1のポンピングライン18、すなわち本実施例では蒸着ポンピングライン22は、第1のポンピングライン18と流体的に相互接続される第1の事前除去(pre-abatement)モジュール26を含む。第1の事前除害モジュール26は、第2の処理流が偶発的に第1のポンピングラインを通って運ばれた場合に第2の処理流から不相溶性の成分を除去するように構成されるが、正常動作では、第1の処理流の通路は実質的に不変とすることができる。この実施例では、第2の処理流は浄化処理流であり、従って、第1の事前除害モジュールは、浄化処理流からフッ素を除去するように構成することができる。本発明の他の実施形態において(図示せず)、第1の事前除害モジュール26は、前述のフッ素と同様に又はその代わりに、第2の処理流の他の成分を除去するように構成することができる。
【0036】
第2のポンピングライン20、すなわち本実施例では浄化ポンピングライン24は、これと流体的に相互接続した第2の事前除害モジュール28を含む。第2の事前除害モジュール28は、第1の処理流が偶発的に第2のポンピングラインを通って運ばれた場合に第1の処理流から不相溶性の成分を除去するように構成されるが、正常動作では、第2の処理流の通路は実質的に不変とすることができる。この実施例では、第1の処理流は蒸着処理流であり、従って、第2の事前除害モジュールは、蒸着処理流からシランを除去するように構成される。本発明の他の実施形態において(図示せず)、第2の事前除害モジュール28は、前述のシランと同様に又はその代わりに、第1の処理流の別の成分を除去するように構成することができる。
【0037】
従って、第1及び第2の事前除害モジュールは、受動的な除害モジュールであり、これらは偶発的に処理ステップ排出ガス流が間違ったポンピングラインに沿って運ばれた場合にのみに除害を行う。これらは、正常動作時にガス流の混合は発生せず結果的に除害は主除害モジュール(以下に説明する)で行われるので、正常動作時には処理ガス流と有意に相互作用しないか又はそれを変更しない。さらに、事前除害モジュールは、正常動作時に実質的に劣化せず、一部の実施例において適正な処理流で満たすことができる。システムのブースターポンプ17又はバルブ16などの1又は2以上の部品が故障した場合、動作は正常に生じないことがある。
【0038】
第1及び第2の事前除害モジュール26、28の各々は、バルブモジュール16のすぐ下流に配置され、すなわち事前除害モジュール26、28のそれぞれとバルブモジュール16との間にあるポンピングライン18、20の部分には他の構成要素が存在しない。
【0039】
図示のバルブモジュールは三方バルブを含むが、他の実施形態において、単純な対のバルブ及び二方向パイプライン分岐などの別のバルブ構成を含むことができる。
【0040】
また、バルブモジュール16は、随意的に、第2の処理流の第1のポンピングライン18への間違った導入及び/又は第1の処理流の第2のポンピングライン20への間違った導入を防止するのを助ける、例えば機械的インターロック又は電子的応答確認などの電気的フェイルセーフ機構を含む。
【0041】
第1のポンピングライン18は、第1の事前除害モジュール26の下流に設置される第1の主除害モジュール30と流体連通状態で配置される。さらに、第1の主除害モジュール30は、例えば第1の主ポンプ32を介して第1のポンピングライン18と当該流体連通状態で配置することができ、第1の主ポンプは、第1のポンピングライン18を通る第1の処理流を進める。
【0042】
第1の主除害モジュール30は、随意的に、第1のポンピングライン18の中の対象の処理流、すなわち蒸着処理流の形態の第1の処理流を除害するように構成される。従って、図示の実施形態において、第1の主除害モジュール30は、蒸着処理流からシランを除害するように構成される。そのため第1の主除害モジュール30は、プラズマベース装置、フレームベース装置、又は酸化装置のうちのいずれかの形態を取ることができる。洗浄装置などの別の主除害モジュールは(図示せず)、第1の主除害モジュール30の排出流から何らかの残っている不相溶性の成分を除害ために、第1の主除害モジュール30の下流に配置することができる。
【0043】
一方で、第2のポンピングライン20は、第2の主ポンプ34を介して第2の主除害モジュール36と流体連通状態で配置されると共に、同様に対応する第2の事前除害モジュール28の下流に配置される。
【0044】
第2の主除害モジュール36は、随意的に、第2のポンピングライン20の中の対象の処理流、すなわち浄化処理流の形態の第2の処理流を除害するように構成される。従って、図示の実施形態において、第2の主除害モジュール36は、浄化処理流からフッ素を除害するように構成され、従って、湿式スクラバ(湿式洗浄装置)の形態を取ることができる。
【0045】
さらに、第1のポンピングライン18は、第1の共通ポンピングライン38と流体連通状態で配置され、第1の共通ポンピングライン38は、使用時、他の類似のポンピングライン構成(図示せず)の1又は2以上の第1のポンピングライン18と流体的に接続され、この類似のポンピングライン構成の各々は、今度は別の対応するプロセスチャンバに流体的に接続される。
【0046】
同様に、第2のポンピングライン20は、第2の共通ポンピングライン40と流体連通状態で配置され、第2の共通ポンピングラインは、使用時、他の類似のポンピングライン構成(図示せず)の1又は2以上の第2のポンピングライン18と流体的に接続され、この類似のポンピングライン構成の各々は、今度は前述の別の対応するプロセスチャンバに流体的に接続される。
【0047】
図2には、変更された半導体製造アセンブリ104が示されている。
図2において、類似の参照番号は、類似の構成要素に用いられている。
【0048】
このアセンブリは、複数のプロセスチャンバ14、14’、14”を含む変更された製造ツール15aを備える。変更された真空ポンプシステム106は、それぞれのプロセスチャンバに接続する複数のポンピングライン構成11、11’、11”を備える。図示のポンピングライン構成は、
図1に図示して説明したポンピングライン構成に類似する。
【0049】
図2の実施例において、第1及び第2の共通ポンピングライン38、40は、複数のポンピングライン構成に接続する。1又は複数の製造ツール15aは、
図1にも示される複数の真空ポンピング構成32、34によって排気される複数のプロセスチャンバを備える。複数の共通ポンピングライン38、40は、それぞれの関連した真空ポンピング構成に流体連通状体である。図示のように、第1の共通ポンピングライン38は真空ポンピング構成32と流体連通状態であり、第2の共通ポンピングライン40は真空ポンピング構成34と流体連通状態である。ポンピングライン構成11、11’、11”の第1のポンピングライン18は第1の共通ポンピングライン38と流体連通状態であり、ポンピングライン構成11、11’、11”の第2のポンピングライン24は第2の共通ポンピングライン40と流体連通状態である。
【0050】
従って、正常動作では、チャンバ14、14’、14”からの第1の処理ガス流は、第1の主除害モジュール30で除害するために、第1のポンピングライン18、第1の共通ポンピングライン38、及び第1の真空ポンピング構成32によって運ばれ、チャンバ14、14’、14”からの第2の処理ガス流は、第2の主除害モジュール36で除害するために、第2のポンピングライン24、第2の共通ポンピングライン40、及び第2の真空ポンピング構成34によって運ばれる。従って、各チャンバ14、14’、14”用のポンピングライン構成が存在すると共に、各処理ガス流に必要とされる同じ数のポンピングライン(及び共通ポンピングライン)が存在する。
【0051】
各チャンバにおいて、処理ステップは、連続して(第1のステップに第2のステップが続く)生じるので、不相溶性のガスは混合しないか、又は混合したとしても濃度は問題が生じないほど低い。複数のチャンバがある場合、第1の処理ガス流を用いる第1の処理ステップは、チャンバ14、14’、14”のうちの1つで行われるが、第2の処理ガス流を用いる第2の処理ステップは別のチャンバで行われる。従って、各チャンバに関して第1の処理ステップは第2の処理ステップと時間分解されるが、第1及び第2のステップは、概して複数のチャンバにわたって時間分解されない場合がある。例えば、第2の処理ガス流が、故障時、偶発的に構成11’の第1のポンピングライン18に沿ってチャンバ14’から排気される場合、これは構成11の第1のポンピングライン18に沿ってチャンバ14から排気された第1の処理ガス流と、ことによると悲劇的に混合することになる(事前除害モジュール26がない場合)。このような状況において、2つの不相溶性のガス流の濃度は、大惨事が激化されるようなものである。しかしながら、本構成では、事前除害モジュールは、このような混合を防ぐために、第1の処理ガス流の成分とは不相溶性の第2の処理ガス流からこれらの成分を除去する。
【0052】
図示の実施形態において、第1の事前除害モジュール26は、炭酸カルシウム(CaCO3)の形態のフッ素除去剤(図示せず)を含む。
【0053】
使用時、炭酸カルシウムは、例えば約300℃に昇温される、従って、正常動作時、シラン、アンモニア、又は水素などの標準的な蒸着ガスは、反応することなく炭酸カルシウムを通過するので、その下流で第1の主除害モジュール30、例えばDCプラズマ装置によって最適に除害される。
【0054】
対照的に、例えば、浄化処理流体(つまりフッ素ガス)が誤って第1のポンピングライン18に向けられた故障動作時、炭酸カルシウムは、以下の化学反応によってフッ素と反応する。
CaCO3+F2=CaF2+CO2+O2
【0055】
結果として生じる副生成物のフッ化カルシウム(CaF2)又は二酸化炭素(CO2)のいずれも、第1の処理流中に存在できる標準的な蒸着ガス(例えば、シラン、アンモニア、及び水素)のいずれとも反応しない。さらに、第1の処理流中の水素濃度が比較的低い場合、このような水素は、結果として生じる酸素(O2)副生成物と反応しないことになり、第1の処理流中のシラン濃度がその自然発火限界を下回る場合、このようなシランは、やはり酸素副生成物と反応しないことになる。
【0056】
従って、炭酸カルシウムが第2の処理流を中和するように作用するので、結果として生じる副生成物は、その下流で第1のポンピングライン18中で遭遇する場合、標準的な蒸着ガスと反応する可能性が低い。
【0057】
本発明の別の実施形態において(図示せず)、フッ素除去剤は、使用時、やはり約300℃に昇温されるシリコン(Si)とすることができる。
【0058】
同様に、正常動作時、標準的な蒸着ガスは、反応することなくシリコンを通過するので、その下流で第1の主除害モジュール30によって最適に除害することができる。
【0059】
再度、故障動作時、同様にシリコンは以下の化学反応によってフッ素と反応する。
Si+2F2=SiF4
【0060】
結果として生じる副生成物の四フッ化ケイ素(SiF4)は、第1の処理流中に存在できる標準的な蒸着ガスのいずれとも反応せず、好都合には、酸素が生成されず、これは、望ましくない反応が生じるリスク無しで高濃度の水素及び/又はシランを第1の処理流に含み得ることを意味する。
【0061】
従って、シリコンが同様に第2の処理流を中和するように作用するので、その後、結果として生じる副生成物は、第1のポンピングライン18中で遭遇する場合、標準的な蒸着ガスと反応する可能性は低い。
【0062】
さらに、図示の実施形態において、第2の事前除害モジュール28は、コバルト(III)フッ化物(8CoF3)の形態のフッ素化剤(図示せず)を含む。
【0063】
使用時、正常動作時には、フッ素などの標準的な浄化ガスは、反応することなくコバルト(III)フッ化物を通過するので、その下流で第2の主除害モジュール36、つまり湿式洗浄装置によって最適に除害することができる。
【0064】
対照的に、蒸着ガス、例えばシランが誤って第2のポンピングライン20中に向けられた故障動作時、シラン(SiH4)は、以下の化学反応によって容易にフッ素化される。
3SiH4+8CoF3=3SiF4+12HF+8Co
【0065】
結果として生じた副生成物のいずれも第2の処理流中の何らかの浄化ガス、つまりフッ素と反応せず、コバルト(III)フッ化物が第2の処理流を中和するように作用するので、結果として生じた副生成物は、その後、第2のポンピングライン20中で遭遇する可能性がある何らかのこのような標準的な浄化ガスに対して不活性である。
【0066】
金属コバルト(Co)副生成物は、その後、目的通りに第2のポンピングライン20に流れるフッ素に晒すことでバルト(III)フッ化物に再酸化することができる。フッ素に関して非反応性であるコバルト(III)フッ化物のための最適な担体は、フッ化カルシウム(CaF2)である。粒状フッ化カルシウムは、高温で水素フッ化物(HF)の希釈流を窒素(N2)中で粒状石灰を通過させることで都合よく作ることができる。以下に化学反応を示す。
CaO+2HF=CaF2+H2O
【0067】
その後、コバルト(III)フッ化物への好都合な反応経路は以下の化学反応で記載される。
2CoCl2+3F2=2CoF3+2Cl2
【0068】
次に、担体は、エタノール(C2H5OH)中のコバルト(II)塩化物(CoCl2)溶液をスプレー又はタンブリングすることでコーティングすることができる。これに関連して、コバルト(II)塩化物は、エタノール中に544g.l-1の濃度で容易に溶ける。
【0069】
エタノール溶液を用いることで、コバルト(II)塩化物は、フッ化カルシウムに転換する前に石灰上に吸収することが可能である。
【0070】
水素フッ化物(HF)は、以下の化学反応のように気相中でコバルト(II)塩化物と認めうるほど反応しない。
CoCl2+2HF=CoF2+2HCl
【0071】
しかしながら、実際には、いずれにせよ、コバルト(II)塩化物及びコバルト(II)フッ化物の両方は、フッ素と共に加熱することでコバルト(III)フッ化物に転換することができるので、前述の反応は重要ではない。
【0072】
本発明の他の実施形態において(図示せず)、フッ素化剤は、フッ化鉄などの他の遷移金属フッ化物、又はテトラフルオロコバルト酸カリウムとすることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 ポンピングライン構成
12 チャンバ接続ライン
14 プロセスチャンバ
15 半導体製造ツール
16 バルブモジュール
18 第1のポンピングライン
20 第2のポンピングライン
26 第1の事前除害モジュール
28 第2の事前除害モジュール
30 第1の主除害モジュール
36 第2の主除害モジュール