(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】広視野のニーズに適する静態リアルタイムCT画像形成システム及びその画像形成方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230130BHJP
【FI】
A61B6/03 311Z
A61B6/03 323H
A61B6/03 373
(21)【出願番号】P 2019546306
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(86)【国際出願番号】 CN2018077451
(87)【国際公開番号】W WO2018153382
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】201710109426.4
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517065220
【氏名又は名称】北京納米維景科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANOVISION TECHNOLOGY (BEIJING) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】曹 紅光
(72)【発明者】
【氏名】李 運祥
(72)【発明者】
【氏名】刑 金輝
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-357724(JP,A)
【文献】国際公開第2016/029845(WO,A1)
【文献】特開2009-017984(JP,A)
【文献】特表2006-524529(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0172024(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査ベットユニット、走査フレームユニット、マンマシンインタラクティブユニット、電源制御ユニット、放射線源制御ユニット、運動制御ユニット、データ収集処理ユニット、システムメイン制御ユニット及び画像データ記憶ユニットを含む静態リアルタイムCT画像形成システムにおいて、
前記走査フレームユニットには、多焦点リング状X線源と、リング状光子計数検出器とが含まれており、
前記多焦点リング状X線源は、リング状に配列した複数の走査X線源からなっており、前記リング状光子計数検出器は、リング状に配列した複数の光子計数検出器モジュールからなっており、
各前記走査X線源はブロードビームX線を順番に発射し、前記ブロードビームX線は、被検体を透過した後に、発射した前記走査X線源に対応する複数の光子計数検出器モジュールに投射され、
前記ブロードビームX線を投射された、複数の前記光子計数検出器モジュールは、作動し、対応する露光情報を前記データ収集処理ユニットに送り込み、前記データ収集処理ユニットで画像のリアルタイム再構成及びビジュアル再生を完了し、
各前記走査X線源に対応する複数の前記光子計数検出器モジュールは、オーバーラップ
するように作動しており、かつ、前記多焦点リング状X線源の焦点面と前記リング状光子計数検出器のZ方向の中心面とは、Z方向に重なり合っており、
補間走査方式を実現する場合、前記多焦点リング状X線源と前記リング状光子計数検出器が取り付けられた回転マウント全体は運動せず、走査ベットは、人体を携帯して円周方向に沿って回動する
ことを特徴とする静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項2】
前記システムメイン制御ユニットにおいて、走査タイミングコントローラーを有し、異なる領域における一つ又は複数の前記走査X線源は前記走査タイミングコントローラーの制御によって同時又は時分割で作動し、ポイントバイポイントで又は1ポイントおきに飛び越して、ラインバイラインで又は1ラインおきに飛び越してブロードビームX線を発射することを特徴とする請求項1記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項3】
前記多焦点リング状X線源は、均一な速度で2つの隣り合う焦点間の挟角範囲以上を回転し、前記挟角範囲を通過する運動時間内に、前記多焦点リング状X線源は、ブロードビームX線を複数回発射し、補間走査方式を実現することを特徴とする請求項1記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項4】
補間走査方式を実現する場合、前記多焦点リング状X線源は、円周方向に沿って回動を小さな角度で行うことを特徴とする請求項3記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項5】
補間走査方式を実現する場合、前記多焦点リング状X線源と前記リング状光子計数検出器とは、円周方向に沿って相対回動を行うことを特徴とする請求項3記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項6】
前記多焦点リング状X線源において、走査作業全体を完了するまで、ある走査X線源は、エネルギー瞬時切り替え方式によってエネルギースペクトル走査を行い、走査タイミング制御下での次の走査X線源は、同様な方式でエネルギースペクトル走査を行うことを特徴とする請求項1記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項7】
前記多焦点リング状X線源において、各前記走査X線源は、タイミング制御下で同一エネルギーレベルで1つの円周走査を行った後、エネルギーレベル切り替えの全てを完了するまで、全部で別のエネルギーレベルに切り替え、さらに、次の円周走査を重複して完了することを特徴とする請求項1記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項8】
前記多焦点リング状X線源において、円周に分布している前記走査X線源を複数群に分け、各群を1種類のエネルギーレベルに統合し、タイミング制御下で1つの円周走査を完了した後、全てのエネルギーレベル切り替えを完了するまで、各群の走査X線源のエネルギーレベルをそれぞれ対応する次のエネルギーレベルに切り替え、次の円周走査を重複して完成することを特徴とする請求項1記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項9】
前記多焦点リング状X線源は、複数の弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源を含み、そのうち、複数の前記弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源は、リング全体構造として接続して構成され、複数の前記弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源のうちの固定アノード反射放射線チューブの全ての焦点は、同一分布円に円周分布していることを特徴とする請求項1記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項10】
前記弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源は、弧状の放射線源ケース、放射線チューブマウント、複数の固定アノード反射放射線チューブ及び複数のグリッド制御スイッチを含み、そのうち、複数の前記固定アノード反射放射線チューブは、前記放射線チューブマウントによって前記弧状の放射線源ケースに固定され、複数の前記固定アノード反射放射線チューブの焦点は、同一分布円に分布しており、複数の前記グリッド制御スイッチと、複数の前記固定アノード反射放射線チューブとは、対応して接続されていることを特徴とする請求項
9記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項11】
前記放射線チューブマウントは、1つの弧状のマウントであり、前記放射線チューブマウントは、前記弧状の放射線源ケースの内弧壁板に固定され、複数の前記固定アノード反射放射線チューブは、前記放射線チューブマウントに固定され、複数の前記固定アノード反射放射線チューブの焦点は、同一分布円に均一に分布していることを特徴とする請求項
10記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項12】
前記放射線チューブマウントには、複数のスルーホールが均一に開設され、複数の前記固定アノード反射放射線チューブのアノード端は、それぞれ前記放射線チューブマウントのスルーホールから張り出し、かつ、複数の前記固定アノード反射放射線チューブは、それぞれフランジによって前記放射線チューブマウントに固定されていることを特徴とする請求項
10記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項13】
前記弧状の放射線源ケースの内弧壁板と、外弧壁板とは、それぞれ複数の前記固定アノード反射放射線チューブの焦点が位置する分布円と同心にして設けられており、
前記弧状の放射線源ケースの左側板と右側板の延長線は、それぞれ複数の前記固定アノード反射放射線チューブの焦点が位置する分布円の円心を通過することを特徴とする請求項
10記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項14】
各前記固定アノード反射放射線チューブは、それぞれ独立したグリッド制御スイッチが設けられ、前記グリッド制御スイッチは、マウントによって、前記固定アノード反射放射線チューブのチューブ本体に固定され、かつ、前記グリッド制御スイッチの出力端は、導線を介して前記固定アノード反射放射線チューブのグリッドに接続されていることを特徴とする請求項
10記載の静態リアルタイムCT画像形成システム。
【請求項15】
請求項1から
14の何れか1項に記載の静態リアルタイムCT画像形成システムによって実現された静態リアルタイムCT画像形成制御方法において、
異なる空間位置の前記光子計数検出器モジュール及びそれに対応する前記走査X線源を所定の走査タイミングで作動させるように制御するステップと、
前記走査X線源は、所定の発射タイミングでブロードビームX線を発射し、対応する前記光子計数検出器モジュールは、前記X線が被検体を透過した後に光子計数検出器モジュールにおける露光情報をオーバーラップするように収集するステップと、
を含むことを特徴とする静態リアルタイムCT画像形成制御方法。
【請求項16】
前記多焦点リング状X線源は、均一な速度で2つの隣り合う焦点間の挟角範囲以上を回転し、前記挟角範囲を通過する運動時間内において、前記多焦点リング状X線源は、ブロードビームX線を複数回発射し、補間走査方式を実現するステップ、を含むことを特徴とする請求項
15記載の静態リアルタイムCT画像形成制御方法。
【請求項17】
ある走査X線源は、エネルギー瞬時切り替え方式でエネルギースペクトル走査を行い、走査作動全体が完了するまで、走査タイミング制御下での次の走査X線源は、同様な方式でエネルギースペクトル走査を行うステップ、を含むことを特徴とする請求項
15記載の静態リアルタイムCT画像形成制御方法。
【請求項18】
各前記走査X線源は、タイミング制御下で同一エネルギーレベルで1つの円周走査を完了した後、全てのエネルギーレベル切り替えを完了するまで、全部で別のエネルギーレベルに切り替え、さらに、次の円周走査を重複して完了するステップ、を含むことを特徴とする請求項
15記載の静態リアルタイムCT画像形成制御方法。
【請求項19】
円周に分布している前記走査X線源を複数群に分け、各群を1種類のエネルギーレベルに統合し、全てのエネルギーレベル切り替えを完了するまで、タイミング制御下で1つの円周走査を行った後、さらに各群の前記走査X線源のエネルギーレベルをそれぞれ対応する次のエネルギーレベルに切り替え、次の円周走査を重複して完了するステップ、を含むことを特徴とする請求項
15記載の静態リアルタイムCT画像形成制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広視野のニーズに適する静態リアルタイムCT画像形成システムに関し、同時に、当該CT画像形成システムに基づいてリアルタイム画像形成を実現する方法に関するものであり、医療画像の技術分野に該当する。
【背景技術】
【0002】
CT(Computed Tomography)は、コンピューター断層走査技術の略称である。その画像形成の原理は次の通りである。X線ビーム及び感度の極高いX線検出器によって、人体のある部位を巡って逐層の断面走査を行い、X線検出器におけるフリッカ材料によって該層面を通したX線を受け、可視光に変換した後、光電変換器を介して電気信号に変換し、増幅した後、アナログ/デジタル変換によってデジタル信号に変換し、コンピューターに入力して処理する。コンピューターでは、選定した層面を幾つかの体積の同じ立方体に分けたものをボクセル(Voxel)と称する。逐層断面走査で取得した情報が計算された後、1ボクセルあたりのX線減衰係数又は吸収係数を取得し、マトリクスとして配列し、すなわち、ボクセルデジタルマトリクスとなる。ボクセルデジタルマトリクスにおけるデジタル情報を黒から白への異なる階調の小さいブロックに変換し、それを二次元投影で画素(Pixel)と称する。断層方式で配列することによって、CT画像が構成されている。
【0003】
出願人は、出願番号が201410425061.2である中国特許出願において、リング状光子計数検出器、リング状走査X線源及び走査タイミングコントローラーを含む静態リアルタイムCT画像形成システムを開示している。そのうち、走査タイミングコントローラーの制御下で、リング状走査X線源は、ナロービームX線を発射し、被検体を透過した後に対応するリング状光子計数検出器に投射する。リング状光子計数検出器は、走査ホスト及びメイン制御ユニットによって対応する露光情報をデータ収集処理ユニット及びマンマシンインタラクティブユニットに送り込み、データ収集処理ユニット及びマンマシンインタラクティブユニットにおいて画像の再構成を完了する。本発明は、電子制御によって、X線の投射位置を順次に切り替え、走査速度を何十倍高め、動態3次元立体画像を取得する。光子計数検出器を採用すれば、吸收データ及びエネルギーデータを取得し、これにより、リアルタイムデータ再構成を実現する。ナロービームX線を採用すれば、伝統的なCT画像形成システムの十分の一の剤量で優れた画像を取得し、患者が過度量の輻射から回避する。
【0004】
一方、コーンビームCTは、CTを発展させる新しい段階であり、平面検出器を用いて検出物体については異なる角度から一連の放射線による投影測定を行った後に、3次元再構成アルゴリズムによって物体の等方性の3次元構造情報を取得した。コーンビームCTによる検出中、X線源のテーパ角度と平面検出器の寸法には限られたものがあるため、被検体の寸法は、コーンビームCT画像形成視野(Field Of View,FOVと略称)を上回ったという場合が常にある。この場合、通常の走査方式及び再構成アルゴリズムで被検体全体について走査や再構成を良く行うことができない。物体について、複数回にブロックに分けて走査して再構成するという方法を採用すれば、各ブロックのデータに対応する投影データは、垂直方向又は水平方向に遮断される。通常のCT再構成アルゴリズムの場合、例えば被検体が完全にX線に覆されていることが要求されている。このような投影が遮断された場合、再構成効果は好適ではない。
【0005】
広視野の実際のニーズを満たすために、特許番号がZL 200910091282.Xである中国発明特許には、検出器をオフセットした広視野コーンビームX線斜め走査の3次元デジタル画像形成方法が開示されている。当該方法では、プレーンアレイ検出器をオフセットし、X線源にて発生したコーンビームX線は、部材の縦横表面に対して部材の画像形成領域を一定の角度に斜め投射する。走査中、放射線源とプレーンアレイ検出器は静止し、部材は、回転軸を同等のアングルステップで360度回転させ、プレーンアレイ検出器は、回転角度毎に部材を調製した後の放射線信号を取得する。当該発明は、システムハードウェア及び走査速度が変化しない条件の下で斜め走査の画像形成による視野を倍に向上させることができる。
【発明の概要】
【0006】
従来技術の欠点に対して、本発明が解決しようとする前提となる技術課題は、広視野のニーズに適する静態リアルタイムCT画像形成システムを提供している。
本発明が解决しようとする別の技術課題は、当該CT画像形成システムに基づいたリアルタイム画像形成の方法を提供することにある。
上記発明の目的を実現するために、本発明は以下の技術案を採用している。
【0007】
本発明の実施例の第1局面によって、走査ベットユニット、走査フレームユニット、マンマシンインタラクティブユニット、電源制御ユニット、放射線源制御ユニット、運動制御ユニット、データ収集処理ユニット、システムメイン制御ユニットと画像データ記憶ユニットを含み、
前記走査フレームユニットには、多焦点リング状X線源とリング状光子検出器が含まれており、
【0008】
前記多焦点リング状X線源は、リング状に配列した複数の走査X線源からなっており、前記リング状光子計数検出器は、リング状に配列した複数の光子計数検出器モジュールからなっており、
【0009】
各前記走査X線源は、ブロードビームX線を順番で発射し、被検体を透過した後、対応する光子計数検出器モジュールに投影し、前記走査X線源と対応する光子計数検出器モジュールとの間は、非反転幾何画像形成方式を採用しており、
【0010】
各前記光子計数検出器モジュールは、オーバーラップするように作動し、対応する露光情報を前記データ収集処理ユニットに送り込み、前記データ収集処理ユニットにおいて画像のリアルタイム再構成とビジュアル再現を完了する、静態リアルタイムCT画像形成システムを提供している。
本発明実施例の第2局面によって、
【0011】
走査タイミングコントローラーは、異なる空間位置の光子計数検出器モジュール及びそれに対応する走査X線源を所定の走査タイミングで作動させるように制御するステップと、
【0012】
前記走査X線源は、所定の発射タイミングでブロードビームX線を発射し、対応する前記光子計数検出器モジュールは、前記X線が被検体を透過した後に光子計数検出器モジュールにおける露光情報をオーバーラップするように収集するステップと、
を含む静態リアルタイムCT画像形成制御方法を提供している。
【0013】
従来技術に比較して、同静態リアルタイムCT画像形成システム及びその画像形成方法は、多焦点リング状X線源からブロードビームX線を発射し、放射線源に合わせて検出器との間に非反転幾何画像形成方式を採用し、広視野(即ち、視野角FOVは、450~500程度に達する)のニーズに適することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】は、同静態リアルタイムCT画像形成システムの機械構成概略図である。
【
図2】は、同静態リアルタイムCT画像形成システムにおける走査フレームユニット2の機械構成概略図である。
【
図3】は、同静態リアルタイムCT画像形成システムにおける走査フレームユニット2の機械構成概略図である。
【
図4】は、広視野のニーズに適する静態リアルタイムCT画像形成システムのコアとなる一部の正面図である。
【
図5】は、広視野のニーズに適する静態リアルタイムCT画像形成システムのコアとなる一部の側面図である。
【
図6】は、多焦点リング状X線源がX線を順番で発射したりX線を間欠的に発射する模式図である。
【
図7】は、多焦点リング状X線源が並列走査を行う模式図である。
【
図8】は、多焦点リング状X線源が補間走査を行う模式図である。
【
図9】は、多焦点リング状X線源が揺動補間を行う模式図である。
【
図10】は、弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源の構成概略図である。
【
図11】は、
図10における固定アノード反射放射線チューブと放射線チューブマウントとの接続模式図である。
【
図12A】は、固定アノード反射放射線チューブとグリッド制御スイッチとの接続構成の正面図である。
【
図12B】は、固定アノード反射放射線チューブとグリッド制御スイッチとの接続構成の側面図である。
【
図13】は、複数の弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源からなるリング全体構造概略図である。
【
図14】は、多焦点リング状X線源が円周のマルチエネルギースペクトル走査を行う模式図である。
【
図15】は、同静態リアルタイムCT画像形成システムによって画像再構成を実現するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の技術的内容について、図面及び具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。
【0016】
図1は、同静態リアルタイムCT画像形成システムの機械構成模式図である。当該静態リアルタイムCT画像形成システムは、具体的に、走査ベットユニット1、走査フレームユニット2、マンマシンインタラクティブユニット3、電源制御ユニット4、放射線源制御ユニット5、運動制御ユニット6、データ収集処理ユニット7、システムメイン制御ユニット8及び画像データ記憶ユニット9を含む。そのうち、マンマシンインタラクティブユニット3、電源制御ユニット4、放射線源制御ユニット5、運動制御ユニット6、データ収集処理ユニット7、システムメイン制御ユニット8及び画像データ記憶ユニット9などは、リング状CT走査モジュール内に設けられてもよい。当該リング状CT走査モジュールは走査フレームユニット2に取り付けられており、走査ベットユニット1は、走査フレームユニット2の中央において取り囲まれた円形の空間を通過している。
【0017】
本発明の一実施例では、マンマシンインタラクティブユニット3、電源制御ユニット4、放射線源制御ユニット5、運動制御ユニット6、データ収集処理ユニット7及び画像データ記憶ユニット9は、それぞれシステムメイン制御ユニット8に接続され、それから操作指令を取得する。
図2及び
図3は、同静態リアルタイムCT画像形成システムにおける走査フレームユニット2の機械構成模式図である。当該走査フレームユニット2は、さらにマウント15、メイン軸受け16、駆動モーター17、プーリ18、革ベルト19、回転マウント20、多焦点リング状X線チューブ21及びリング状光子検出器22を含む。説明すべき点としては、同静態リアルタイムCT画像形成システムの画像形成中、回転マウント20は、一般のCTのように回転して画像を形成するものではなく、大部分の時間において相対的に動かないものである。必要に応じて、駆動モーター17は、回転マウント20上の多焦点リング状X線チューブ21を円周方向に沿って小さい角度に揺動させるようにプーリ18、革ベルト19などを動かすことができる。これは、精細に再構成するために角度による補間を行うものであり、本質的に一般のCTのような回転画像形成方式に該当しない。
【0018】
上記静態リアルタイムCT画像形成システムは、多焦点リング状X線源からブロードビームX線を発射し、放射線源に合わせて検出器との間に非反転幾何画像形成方式を採用して広視野(即ち、視野角FOVが450~500程度に達する)のニーズに適するすることができる。以下、これについて、展開して具体的に説明する。
【0019】
広視野のニーズに適する静態リアルタイムCT画像形成システムは、多焦点リング状X線源とリング状光子検出器からなっている。そのうち、多焦点リング状X線源21とリング状光子検出器22は、回転マウント20に取り付けられており、かつ両者は、同一軸線上に位置し、当該軸線は、CT分野に共通して称されたZ軸である。
図4に示されるように、多焦点リング状X線源は、ブロードビームX線を発射し、対応するリング状光子検出器は、オーバーラップ(overlap)するように作動している。例えば,1号の走査X線源は、1、2、3、4、5号の光子検出器に対応して作動し、2号の走査X線源は、2、3、4、5、6号の光子検出器に対応して作動し、3号の走査X線源は、3、4、5、6、7号の光子検出器に対応して作動し、…という順番であるものとする。対応する作動モードは、リング全体で読み出すものであり、即ち、対応する複数の焦点の投影領域を一回に読み出すものである。多焦点リング状X線源の焦点面とリング状光子検出器のZ方向の中心面とは、Z方向に重なり合ってもよいし、重なり合っていなくてもよい。プロジェクトの実施の角度から考慮して、両者は重なり合っていないと、プロジェクトにおいてより容易に実現することができる。
図5に示されるように、両者が重なり合っていない場合、X線は、検出器の表面に斜めに照射するもの(即ちリング状光子検出器における各検出器モジュールは、対応する入射したX線に垂直になっていないもの)であり、画像形成時に必要な幾何学的補正を行う必要がある。具体的な幾何学的補正アルゴリズムは、当業者が一般的に把握する通常の技術手段であり、ここにて、重複して説明しない。
【0020】
当該多焦点リング状X線源は、緊密かつ均一にリング状に配列された複数の独立した走査X線源からなってもよいし、複数のカソードが均一に分布され複数の焦点を有するリング状X線源からなってもよいし、複数のカソードが均一に分布され複数の焦点を有する複数群の弧状のX線源からなってもよい。リング状光子検出器は、好適に緊密かつ均一にリング状に配列された複数の光子計数検出器モジュールからなっている。走査X線源と対応する光子計数検出器モジュールとの間は、非反転幾何画像形成方式を採用している。円周に配列された走査X線源の数と、光子計数検出器の数とは、一致してもよいし、一致しなくてもよい。上記のように、リング状光子検出器を構成する光子計数検出器も、直接変換、エネルギー区分型又はシンチレーターに基づいた積分型のX線検出器によって代替されてもよい。
【0021】
当該静態リアルタイムCT画像形成システムが作動する場合、多焦点リング状X線源は、放射線源制御ユニットによって制御され、円周方向に沿ってブロードビームX線を発射し、その効果が、従来のヘリカルCTの円周回動に同等である。説明すべき点としては、多焦点リング状X線源の各走査X射線源は、時計回りにX線を発射してもよいし、反時計回りにX線を発射してもよい。
図6に示されるように、多焦点リング状X線源における各走査X線源は、円周方向に沿って順番でX線を発射してもよいし、若干の走査X線源を隔てて順番でX線を発射してもよい。
図7に示されるように、多焦点リング状X線源は、同時に単一の走査X線源でX線を発射してもよいし、同時に複数の走査X線源でX線を並列して発射してもよい。X線を並列して発射する走査X線源の最大の数は、並列して発射するX線が光子計数検出器で互いに干渉しないことを前提としており、X線を並列して発射する走査X線源の円周分布は、均一な円周分布の方が好ましい。
【0022】
多焦点リング状X線源から発射されたX線は、被検体を透過した後にリング状光子検出器において対応する光子計数検出器に照射している。データ収集処理ユニットは、複数の分布型サブシステムからなっており、サブシステムに嵌め込み型GPUが集積されている。光子計数検出器は、受信したX線情報をデータ収集処理ユニットで収集し、再構成処理を行い、再構成処理後の画像情報を画像データ記憶ユニット及びマンマシンインタラクティブユニットに伝達し、画像データ記憶ユニット及びマンマシンインタラクティブユニットにおいて画像の記憶及びビジュアル再現を行う。勿論、下記の従来のCTのデータ収集処理方式に応じて行ってもよい。即ち、データ収集処理ユニットはデータだけを収集した後、データ資料を画像データ記憶ユニットに伝送して再構成して記憶させる。
【0023】
従来の技術では、多焦点リング状X線源中の焦点の数によって、静態走査時に円周における最も大きな投影密度が決まった。この投影密度によって、より高く要求された医学画像形成のニーズを満たすことができないという場合がある。円周における最も大きな投影密度を増加するために、本発明から提供された静態リアルタイムCT画像形成システムは、補間走査方式を採用することができる。補間走査方式によって、円周における投影密度がより高かくなり、エネルギースペクトルの走査機能が実現でき、多焦点の並列走査速度がより速くなる。
図8に示されるように、補間走査を行う時に、多焦点リング状X線源は、均一な速度で2つの隣り合う焦点間の挟角範囲以上を回転した。この挟角範囲を通過した運動時間内に、多焦点リング状X線源は、X線の発射を複数回完了し、2つの焦点間に複数の焦点が追加されたことに相当し、X線を何回に発射することは、幾つかの補間走査である。
【0024】
補間走査を行う時に、多焦点リング状X線源だけは、円周方向に沿って揺動を小さな角度で行うことができ、多焦点リング状X線源とリング状光子検出器は、円周方向に沿って相対揺動を行うことができ、さらに、回転マウント全体が運動せず、走査ベットで人体を携帯して円周方向に沿って揺動させることもできる。
図9に示される揺動補間原理が参照される。本発明の一実施例では、仮に円周方向に沿って150の焦点が均一に分布され、隣り合う焦点間のピッチが26mmであれば、多焦点リング状X線源とリング状光子検出器は、2.4°(360/150=2.4)相対に揺動し、焦点は、26mmの範囲内に揺動による補間を行って投影の数を追加し、投影の数を大いに増加し、画像の再構成の品質を効率よく改良することができる。
【0025】
同静態リアルタイムCT画像形成システムでは、多焦点リング状X線源は、グリッド制御反射ターゲットの方式で順番で点灯してもよい。このような方式は、電力が大きく、明度が高いという特徴があり、従来技術において常に用いられた偏向電子ビームによる透射ターゲットの明度よりも数百倍高くなる。上記方式を実現するために、多焦点リング状X線源は、複数の弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源を接続して実現することが好ましい。具体的に、以下に説明する。
【0026】
図10に示されるように、当該弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源は、弧状の放射線源ケース211、放射線チューブマウント212、複数の固定アノード反射放射線チューブ213及び複数のグリッド制御スイッチ214を含む。そのうち、複数の固定アノード反射放射線チューブ213は、放射線チューブマウント212によって弧状の放射線源ケース211に固定されており、複数の固定アノード反射放射線チューブ213の焦点は同一の分布円に分布している。好ましくは、複数の固定アノード反射放射線チューブ213の焦点は、同一分布円に対して一定の角度範囲α(360°≧α>0°)内に均一に分布されている。複数のグリッド制御スイッチ214と複数の固定アノード反射放射線チューブ213は対応して接続され、複数の固定アノード反射放射線チューブ213のオンオフを制御する。
以下、弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源の具体的な構成について、
図10に示される方位を例にして説明する。
【0027】
図10に示されるように、弧状の放射線源ケース211は、内弧壁板、外弧壁板、左側板、右側板、前側板及び後側板からなる密閉型ケースが好ましく、放射線チューブマウント212、複数の固定アノード反射放射線チューブ213、複数のグリッド制御スイッチ214は、弧状の放射線源ケース211内に設けられている。弧状の放射線源ケース211の左側板の外縁と右側板の外縁との間の挟角θは、0°~360°範囲内に任意に選択し、θは360°/Nが好ましく、そのうち、Nは正整数であり、例えばθは45°、60°、90°、180°等と同等である。θ=360°/N且つN>1である場合、N個の弧状の放射線源ケース211を円周回りに接続することで、N個の弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源を1つのリング全体構造として構成してもよく、複数の固定アノード反射放射線チューブ213の焦点を同一分布円に分布させることができる。θ=360°/N且つN=1である場合、弧状の放射線源ケース全体は、1つの円環構造となり、左側板と右側板が理論上に存在しないことが把握され得る。
【0028】
図11に示されるように、放射線チューブマウント212は、1つの弧状のマウントが好ましく、放射線チューブマウント212は、ボルトなどの接続部材によって、弧状の放射線源ケース211の内弧壁板に固定され、複数の固定アノード反射放射線チューブ213は、放射線チューブマウント212に固定されている。
【0029】
放射線チューブマウント212には、複数のスルーホールが均一に開設されており、複数の固定アノード反射放射線チューブ213のアノード端は、それぞれ放射線チューブマウント212のスルーホールから張り出し、かつ、複数の固定アノード反射放射線チューブ213は、それぞれフランジによって放射線チューブマウント212に固定されている。実際の構成では、固定アノード反射放射線チューブ213の放射線チューブマウント212への固定位置及び角度を微調整することで、複数の固定アノード反射放射線チューブ213の焦点を同一円に調整することができる。以下、複数の固定アノード反射放射線チューブ213の焦点を通過する円を、複数の固定アノード反射放射線チューブ213の分布円と称する。
【0030】
弧状の放射線源ケース211の内側と外側における2つの端面はそれぞれ弧面であり、且つ、内弧壁板と外弧壁板は、それぞれ、複数の固定アノード反射放射線チューブ213の分布円と同心にして設けられている。勿論、略同心にして設けられてもよく、そのうち、同心にして設けられていることが最適である。弧状の放射線源ケース211の左右端面は挟角θとなり、且つ、左側板と右側板の延長線がそれぞれ複数の固定アノード発射射線チューブ3の分布円の円心を通過することが最適である。
【0031】
複数の固定アノード反射放射線チューブ213の焦点は、当該分布円に対して一定角度の範囲α内に均一に分布し、当該角度範囲αは、弧状の放射線源ケース211の左側板外縁と右側板外縁との角度θ以下である。実際の構成では、左側板と右側板は、肉厚が小さく、且つ1つの弧状の放射線源ケース211内に設けられている固定アノード反射放射線チューブ213の数が少ない場合、αとθが略同等であり、好ましくは、同一の弧状の放射線源ケース211内に設けられているn個の固定アノード反射放射線チューブ213のうち、隣り合う2つの固定アノード反射放射線チューブ213間の角度はθ/nであり、最左側と最右側の固定アノード反射放射線チューブ213と、隣り合う側板の外縁との角度はθ/2nである。左側板と右側板は、厚肉が大きく、又は1つの弧状の放射線源ケース211内に設けられている固定アノード反射放射線チューブ213の数が多い場合、αはθよりも小さく、隣り合う2つの固定アノード反射放射線チューブ213間の角度はα/nであり、最左側と最右側の固定アノード反射放射線チューブ213と、隣り合う側板の外縁との角度は、α/2nよりも大きくなってもよいし、α/2nよりも小さくなってもよい。
【0032】
本発明の実施例では、使用した固定アノード反射放射線チューブ213のアノード端は、反射式固定アノードターゲットでX線ビームを生成する。固定アノード反射放射線チューブ213の両端は、それぞれアノード端とカソード端である。固定アノード反射放射線チューブ213内においてカソードに近い場所にグリッドが設けられている。
図12A及び
図12Bに示されるように、各固定アノード反射放射線チューブ213は、それぞれ、独立したグリッド制御スイッチ214が配設されている。グリッド制御スイッチ214は、マウントを介して固定アノード反射放射線チューブ213のチューブ本体に固定されており、かつ、グリッド制御スイッチ214の出力端は、導線を介して固定アノード反射放射線チューブ213のグリッドに接続され、固定アノード反射放射線チューブ213のオンオフを制御することで、放射線の制御を実現し、アノード端から反射された後に発されたX線ビーム215は
図12A及び3Bに示される通りである。勿論、隣り合う複数の固定アノード反射放射線チューブ213のオンオフは、同一のグリッド制御スイッチ214によって制御されてもよい。ただし、上記複数種類の制御方式のうち、図面に示される固定アノード反射放射線チューブ213とグリッド制御スイッチ214とが一々対応しているという制御方式が好ましい。
【0033】
図13に示されるように、N個の弧状の放射線源ケース211の左側板と右側板を首尾接続し、N個の弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源を1つの「リング全体構造」として接続してもよく、複数の固定アノード反射放射線チューブ213の焦点を同一分布円に円周分布させ、可及的に均一に分布することができる。リング全体構造におけるグリッド制御スイッチ214を制御することによって、固定アノード反射放射線チューブ213は、X線ビームを順次に発射し、360°方向における順番放射線走査を実現することができる。当該リング全体構造では、各固定アノード反射放射線チューブ213から発されたX線ビーム215は、それぞれリング全体の中心に照射している。
【0034】
同一の弧状の放射線源ケース211内に設けられている隣り合う2つの固定アノード反射放射線チューブ213間の角度は、θ/nであり、最左側と最右側の固定アノード反射放射線チューブ213と、隣り合う側板の外縁との角度は、θ/2nである場合、N個の弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源を1つのリング全体構造として構成することで、N個の弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源のうちの固定アノード反射放射線チューブ213の全ての焦点を分布円に均一に分布させることができる。同一の弧状の放射線源ケース211内に設けられている隣り合う2つの固定アノード反射放射線チューブ213間の角度は他の値を取った場合、N個の弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源からなるリング全体構造では、N個の弧状の放射線源ケース211内における固定アノード反射放射線チューブ213の全ての焦点は、同一分布円に分布し、かつ、各弧状の放射線源ケース211内における複数の固定アノード反射放射線チューブ213の焦点は、均一に分布している。
【0035】
本発明では、複数の弧状の放射線源ケースを1つのリング全体構造として接続して構成し、複数の弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源のうちの固定アノード反射放射線チューブの全ての焦点を、同一分布円に分布させ、完全な多焦点リング状X線源を形成することができる。当該弧状多焦点固定アノードグリッド制御放射線源のうち、複数のグリッド制御スイッチと、複数の固定アノード反射放射線チューブとは、対応して接続され、グリッド制御スイッチは、固定アノード反射放射線チューブ回路のオンオフを制御し、放射線への制御を実現することができる。上記弧状の多焦点固定アノードグリッド制御放射線源は、構成が簡単で、コストが低く、強度が十分な放射線を発生することができると同時に、円周方向に数が十分な焦点が分布している。
【0036】
図14に示されるように、当該静態リアルタイムCT画像形成システムは、多焦点リング状X線源によって複数の方式のエネルギースペクトル走査を行うことができる。具体的に、以下のように説明する。
【0037】
まず、多焦点リング状X線源は、単一の走査X線源のエネルギー瞬時切り替えによってエネルギースペクトル走査を行い、瞬時に複数種類のエネルギーレベル(例えば
図14において示される100kV、120kV、140kVの間の切り替え)を切り替えることができる。具体的に切り替えられたエネルギーレベルの数は、設計ニーズによって決まった。ある走査X線源は、エネルギー瞬時切り替えによって、エネルギースペクトル走査を行った後、走査全体の作動が完了するまで、走査タイミング制御下での次の走査X線源は、同様の方式でエネルギースペクトル走査を行うことができる。次に、多焦点リング状X線源は、円周間欠型エネルギー切り替えによってエネルギースペクトル走査を行い、つまり、多焦点リング状X線源の各走査X線源は、タイミング制御下で同一のエネルギーレベルで1つの円周走査を完了した後、全てのエネルギーレベルの切り替えを完了するまで、全部で別のエネルギーレベルに切り替え、次の円周走査を重複して完了する。さらに、多焦点リング状X線源も円周のマルチエネルギースペクトル走査方式でエネルギースペクトル走査を行い、つまり、円周に分布している走査X線源を複数群に分けて、各群を1種類のエネルギーレベルに統合し、タイミング制御下で1つの円周走査を完了した後、全てのエネルギーレベルの切り替えを完了するまで、各群の走査X線源のエネルギーレベルは、それぞれさらに対応する次のエネルギーレベルに切り替え、次の円周走査を重複して完了する。
【0038】
説明すべき点としては、同じ機能を実現するために、本発明の光子計数検出器も、積分型検出器によって代替する。積分型検出器は、光子計数検出器に対して画像形成の効果が良くないが、積分型検出器の技術が比較的に成熟しているため、その機能も相対的に安定となる。
【0039】
図15は、本発明から提供された静態リアルタイムCT画像形成システムで画像の再構成を実現するフローチャートである。静態リアルタイムCT画像形成システムでは、データ収集処理ユニット7は、メイン制御コンピューター、リアルタイム再構成システム、ビジュアル処理器からなっている。システムメイン制御ユニット8は、走査タイミングコントローラー及び高速データ伝送路などを含む。メイン制御コンピューターのデータ処理機能は、データ並列再構成を行うメインプロセッサと、ボクセルデータを記憶した記憶装置とによって完了される。走査ホストには、複数の光子計数検出器モジュール01~XX(XXは正整数、以下は同じ)が含まれている。各光子計数検出器モジュールも複数の光子計数検出器要素を含む。例えば、光子計数検出器モジュール01は光子計数検出器要素01~XXを含む。。
【0040】
本発明の好適な実施例では、各光子計数検出器モジュールは、4*8=32個の光子計数検出器要素からなっている。各光子計数検出器要素は、32*32個の光子計数検出器画素からなっている。各画素の寸法は400*400umである。各光子計数検出器モジュールの外形寸法は51.2mm*102.4mmである。リング状光子計数検出器は、合計50個の光子計数検出器モジュールからなっている。形成したリング状光子計数検出器は、直径が約800mm、幅が102.4mmである。データ収集チャネルが複数ある。各データ収集チャネルは、1つ又は複数の光子計数検出器モジュールに対応している。複数の光子計数検出器モジュール01~XXによって収集されたデータは、データ収集チャネル01~XXを介して走査ホストにおけるデータ前処理モジュールに伝送される。データ前処理モジュールはGPU、ASIC又はDSPからなり、データ収集チャネルから送られたオリジナル画素露光情報、又は並び替えや補正が行われたデータに対してフレームデータの前処理を行い、フレームデータブロックを形成し、メイン制御ユニットにおける高速データ並列伝送路を介してデータ収集処理ユニットの並列再構成モジュールに伝送する。並列再構成モジュールは、複数の並列GPUによって構成されてもよいし、専用ASICによって構成されてもよい。再構成モジュールは、アップロードしたフレーム又はブロックデータをデータブロックデータとして再構成する。上記過程がマルチチャンネル並列処理であるため、再構成速度は、リアルタイムのビジュアル表示のニーズを満たすことができる。
【0041】
データ収集処理ユニット7における収集コントローラーは、走査タイミングコントローラーの制御によって、収集命令チャネルを介して各光子計数検出器モジュールに命令を送信し、画素露光情報を収集する。そのうち、収集モジュールの全てが並列して収集命令を同期で受け付け、収集したフレームデータが同一のフレーム周期のデータとなることを確保するように、別々に設けられた収集命令チャネルは、マルチチャネルのワイドデジットバスである。収集した画素露光情報データについて、まず、光子計数検出器要素のレベルで画素情報を統合し、次に光子計数検出器モジュールが光子計数検出器要素のデータに対してデータの接続及びモジュールレベルでの画素データ補正を含む二回目の統合及び処理を行い、最後に統合を完了し又は初期で再構成したX線データは、光子計数検出器モジュールによって並列光ファイバデータ伝送路を介してデータプリプロセッサに送信された。
【0042】
データプリプロセッサは先に、異なる光子計数検出器モジュールからのX線データに対して、フレームデータの並び替え、フレームデータの補正、フレームデータのバッファリング及びフレームデータのリアルタイムの出力等を含むフレームデータの前処理を行う。リアルタイムに出力したフレームデータはリアルタイム再構成システム及びメイン制御コンピューターに送られた。そのうち、データプリプロセッサの主な任務は、複数の光子計数検出器モジュールからのデータを完全なデータフレーム及びデータブロックとなるように整理し、フレーム及びブロック形式でメイン制御コンピューターに送信した。ここでいうデータフレームとは、完全な360°の範囲をカバーしたデータ層をいう。データブロックとは、複数の上記データ層からなる複数組をいう。このようなデータ前処理メカニズムは、データ処理ジョブの一部をコンピューターに送信するまでに初期処理を完了し、コントローラーによって編集された各種の収集順番で取得したデータをフレームデータ及びブロックデータの形式としてコンパイルし、標準的なフレームデータ構成及びブロックデータ構成としてメイン制御コンピューターで処理することを目的としている。フレームデータ及びブロックデータに関する前処理機能の一部をデータプリプロセッサで完了してもよいし、或いはメイン制御コンピューターに送信した後にこの部分のデータ処理をメイン制御コンピューターで完了してもよいという場合がある。この部分の前処理が、1画素に対するオフセット補正、ハードニング補正、フレームデータのフラットフィールド補正、フレームデータ又はブロックデータの幾何学的補正、時刻ドリフト補正、エネルギー補正、散乱線抑制等を含むが、これに限定されない。
【0043】
従来技術のマルチスライスのヘリカルCTは、X線源が高速に回転する必要があるため、回転中、スリップリングコンダクト方式又は無線伝送方式によってデータを伝送するコンピューターが必要となる。従来のマルチスライスのヘリカルCTと比べて、同静態リアルタイムCT画像形成システムでは、通常の回転画像形成のステップが存在していないため、スリップリング構成を使用する必要がなく、機械運動アーチファクトも存在していない。同静態リアルタイムCT画像形成システムでは、速度及び信頼性のより良い光ファイバでデータを並列伝送することが実現されてもよいし、伝送データのトラフィック量が増大され、データ信号の信頼性が向上し、全体構造がさらにはっきりとして合理的なものになり、製品の信頼性および一致性がより良くなる。このように、三次元再構成アルゴリズムのリアルタイム性が効率よく確保された。
【0044】
並列再構成モジュールは、再構成して完了したボクセルデータをビジュアル画像プロセッサに送り、複数種類の成熟したビジュアルアルゴリズムによって、観察者に各々の図面のデータを提供し、各々の図面が、リアルタイム投影二次元図、リアルタイム3Dカラーレンダリング図、内視鏡シミュレーション図、表面レンダリング図、リアルタイムマルチウィンドウ階調吸収図、リアルタイムエネルギーパレット図及びリアルタイムDSA(Digital Subtraction Angiography、デジタルサブトラクション血管造影)図を含むが、これらに限定されない。本発明の1つの実施例では、ビジュアル画像の提供速度は、毎秒25個のフレーム又はブロックに達し、理論的に毎秒1024フレーム(即ち1024fps)又はブロック以上の再構成速度に達することができ、人間の目で動態画像を観察する場合のニーズを十分に満たすことができる。同静態リアルタイムCT画像形成システムを治療介入手術に適用する可能性が大いに高まった。
【0045】
以上、本発明から提供される広視野のニーズに適する静態リアルタイムCT画像形成システム及びその画像形成方法について詳細に説明した。当業者にとって、本発明の趣旨を逸脱しない前提でいかなる自明な変更がなされても、本発明の特許権侵害を構成してそれに応じて法的責任を負うものとする。