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特許7217884Tダイス清掃装置およびTダイスの清掃方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】Tダイス清掃装置およびTダイスの清掃方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/27 20190101AFI20230130BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20230130BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20230130BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20230130BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20230130BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20230130BHJP
   B29C 48/94 20190101ALI20230130BHJP
【FI】
B29C48/27
B29C48/08
B29C48/25
B29C48/305
B29C48/88
B29C48/92
B29C48/94
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019045678
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020146896
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516200530
【氏名又は名称】株式会社トウエイ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(72)【発明者】
【氏名】西松 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】坂神 光
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-238471(JP,A)
【文献】特開2014-151590(JP,A)
【文献】特開2013-086370(JP,A)
【文献】特開2006-321102(JP,A)
【文献】特開2000-289081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00 - 48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面内において一方向に延びる吐出口を有し溶融樹脂材料をシート状に押し出して冷却ロールの表面に吐出するTダイスに付着残存する付着樹脂を除去するための清掃装置であって、
前記一方向に延びる回転軸を中心に回転駆動される前記冷却ロールの回転方向に対して上流側に位置される前記吐出口の一方の開口縁部に先端部が押圧状態で当接されるスクレーパーと、前記スクレーパーを前記吐出口に沿って前記一方向に往復摺動させる摺動駆動機構を備え、
前記摺動駆動機構は前記一方向に水平に延びるネジ軸を備えたボールネジ機構により構成されており、
前記ネジ軸の前記Tダイスの吐出口に対する水平面内における前記一方向に直交する方向および鉛直方向の傾きを調整する位置調整機構をさらに備えていることを特徴とするTダイスの清掃装置。
【請求項2】
前記スクレーパーを前記Tダイスに当接する動作位置と前記Tダイスに対して前記冷却ロール側に離間した退避位置との間で鉛直方向に移動させるスクレーパー移動機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載のTダイスの清掃装置。
【請求項3】
前記スクレーパーの表面が滑り性を有する材料でコーティングされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のTダイスの清掃装置。
【請求項4】
前記スクレーパーがアルミニウム材からなることを特徴とする請求項3に記載のTダイスの清掃装置。
【請求項5】
前記スクレーパーの先端部が、幅寸法が先端に向かって小さくなるとともに厚みが先端に向かって小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のTダイスの清掃装置。
【請求項6】
前記Tダイスを支持する支持部材に対する取付部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のTダイスの清掃装置。
【請求項7】
水平面内において一方向に延びる吐出口を有し溶融樹脂材料をシート状に押し出して冷却ロールの表面に吐出するTダイスに付着残存する付着樹脂を除去するための清掃方法であって、
スクレーパーを前記一方向に延びるネジ軸を備えたボールネジ機構によって往復摺動させるようにし、
前記ネジ軸の前記吐出口に対する水平面内における前記一方向に直交する方向および鉛直方向の傾きを調整する位置調整を行い、
前記スクレーパーを前記冷却ロールの回転方向に対して上流側に位置される前記吐出口の一方の開口縁部に押圧状態で当接させた状態において、前記溶融樹脂材料の押し出しを停止することなく、前記スクレーパーを前記吐出口に沿って前記一方向に往復摺動させることを特徴とするTダイスの清掃方法。
【請求項8】
前記スクレーパーを前記Tダイスに当接させるに際して、前記スクレーパーを前記Tダイスに対して前記冷却ロール側に離間した退避位置から鉛直方向に移動させることを特徴とする請求項7に記載のTダイスの清掃方法。
【請求項9】
前記スクレーパーとして、表面が前記Tダイスに対して滑り性を有する材料でコーティングされたものを用いることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のTダイスの清掃方法。
【請求項10】
前記スクレーパーとして、アルミニウム材からなるものを用いることを特徴とする請求項9に記載のTダイスの清掃方法。
【請求項11】
前記スクレーパーとして、幅寸法が先端に向かって小さくなるとともに厚みが先端に向かって小さくなるように構成されたものを用いることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれかに記載のTダイスの清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の樹脂成形体を成形する過程においてTダイスに付着残存する付着樹脂を除去するためのTダイス清掃装置およびTダイスの清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プラスチックシートなどのシート状の樹脂成形体を製造する方法として、キャスティング法が知られている。この方法は、一方向に直線状に延びる吐出口(リップ)を有するTダイスが取り付けられた押出機によって、溶融された樹脂材料をTダイスの吐出口から冷却ロールの表面にシート状に押出し、冷却ロールで急冷・圧延することにより、シート状の樹脂成形体を連続的に成形するものである。
【0003】
押出成形にあっては、成形作業を長時間の間続けると、樹脂材料がTダイスの吐出口の開口縁部に付着し、付着した樹脂材料は時間経過とともに熱劣化により変色し、一般には「メヤニ」と称される異物として残存することが知られている。
Tダイスの吐出口にメヤニが付着したまま成形を続けると、成形品にメヤニが混入してその品質を低下させてしまったり、メヤニの痕跡(ダイライン)が成形品の表面に筋状に形成されて外観を損ねてしまったりするという問題がある。
このため、押出成形においては、Tダイスに残存するメヤニを除去する作業を所定の頻度で実施する必要があった。
【0004】
押出成形において不可避的に生ずるメヤニ対策としては、これまでに種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、Tダイスの吐出口にあてがわれる凹部を有する樹脂拭体を押圧摺動させることによりTダイスの吐出口に残存する付着樹脂を拭き取る方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-159591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、上記特許文献1に記載の方法では、メヤニ除去作業を行うに際しては、成形作業を中止し生産ラインを一旦停止させる必要があり、また、メヤニ作業自体に長時間の時間を要するため、生産性を低下させるという問題がある。しかも、メヤニ除去作業は樹脂材料を押し出しながら行う場合もあり、メヤニ除去作業中に吐出される樹脂材料が無駄になるという問題があった。
【0007】
本発明者らは、キャスティング法を利用した押出成形機においては、樹脂材料のTダイスの吐出口に対する付着位置が吐出口の冷却ロール回転方向上流側に位置される一方の開口縁部のみであることを見出し、スクレーパーを往復摺動させることで生産ラインを停止させることなくメヤニ除去作業を行うことができると考え、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、生産ラインを停止させることなくTダイスに付着残存する樹脂材料を除去することができ、従って、高い生産性を得ることができるとともに無駄になる樹脂材料の量を可及的に低減することができ、しかも作業負担を軽減することのできるTダイス清掃装置およびTダイスの清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のTダイス清掃装置は、水平面内において一方向に延びる吐出口を有し溶融樹脂材料をシート状に押し出して冷却ロールの表面に吐出するTダイスに付着残存する付着樹脂を除去するための清掃装置であって、前記一方向に延びる回転軸を中心に回転駆動される前記冷却ロールの回転方向に対して上流側に位置される前記吐出口の一方の開口縁部に先端部が押圧状態で当接されるスクレーパーと、前記スクレーパーを前記吐出口に沿って前記一方向に往復摺動させる摺動駆動機構を備え、前記摺動駆動機構は前記一方向に水平に延びるネジ軸を備えたボールネジ機構により構成されており、前記ネジ軸の前記Tダイスの吐出口に対する水平面内における前記一方向に直交する方向および鉛直方向の傾きを調整する位置調整機構をさらに備えた構成とされることにより、上記課題を解決するものである。
【0009】
本発明のTダイス清掃方法は、水平面内において一方向に延びる吐出口を有し溶融樹脂材料をシート状に押し出して冷却ロールの表面に吐出するTダイスに付着する付着樹脂を除去するための清掃方法であって、スクレーパーを前記一方向に延びるネジ軸を備えたボールネジ機構によって往復摺動させるようにし、前記ネジ軸の前記吐出口に対する水平面内における前記一方向に直交する方向および鉛直方向の傾きを調整する位置調整を行い、前記スクレーパーを前記冷却ロールの回転方向に対して上流側に位置される前記吐出口の一方の開口縁部に押圧状態で当接させた状態において、前記溶融樹脂材料の押し出しを停止することなく、前記スクレーパーを前記吐出口に沿って前記一方向に往復摺動させることにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1に記載のTダイス清掃装置および本請求項7に記載のTダイス清掃方法によれば、生産ラインを停止させずにTダイスに残存する付着樹脂を除去することができ、高い生産性を得ることができる。さらにまた、Tダイスの清掃作業をTダイスに付着した樹脂が経時的に劣化する前にもしくは付着量が少ないうちに行うことにより、スクレーパーにより掻き取った樹脂を冷却ロールの表面上に落下させた場合であっても、得られる成形品の品質を低下させることがなく、無駄になる樹脂材料を可及的に低減することができる。しかも、作業者(オペレータ)自身がTダイスの清掃作業を行う必要がないので、作業負担を大幅に低減することができる。
さらにまた、メンテナンスに際して取り外されたTダイスを再度押出機に取り付けた後に、スクレーパーのTダイスに対する適正な当接状態を高い再現性で得ることができ、スクレーパーが樹脂材料に接触することに起因する樹脂切れ(破れや穴開きなどの現象)などの成形不良が生ずることを確実に回避することができる。また、Tダイスの吐出口が延びる一方向においてスクレーパーをTダイスに対して均一に当接させることができるため、Tダイスに付着残存する付着樹脂を一層確実に除去することができる。
【0011】
本請求項2に記載のTダイス清掃装置および本請求項8に記載のTダイス清掃方法によれば、スクレーパーのTダイスに対する当接位置の制御をスクレーパーの一方向の移動のみで行うことができるので、スクレーパーの位置制御を容易に行うことができる。
また、スクレーパーのTダイスに対する押圧力を適正な大きさに調整することができるため、Tダイスに付着残存する付着樹脂を確実に除去することができる。
【0013】
本請求項3に記載のTダイス清掃装置および本請求項9に記載のTダイス清掃方法によれば、樹脂がスクレーパー自体に付着、堆積することを抑制することができ、所期の清掃効果を確実に得ることができる。
【0014】
本請求項4に記載のTダイス清掃装置および本請求項10に記載のTダイス清掃方法によれば、スクレーパーに錆が生ずることを回避することができ、所期の機能を長期間にわたって得ることができる。
【0015】
本請求項5に記載のTダイス清掃装置および本請求項11に記載のTダイス清掃方法によれば、Tダイスより押し出される溶融樹脂材料に対するスクレーパーの接触面積を可及的に減少させることができるため、成形不良が生ずることを確実に回避することができる。
【0016】
本請求項6に記載のTダイス清掃装置によれば、清掃装置がTダイスに対して直接に熱的に接触しない状態とされるので、高い断熱効果が得られTダイスの温度低下を抑制することができる。また、押出成形機の剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】Tダイ法による押出成形ラインの一例を概略的に示す図である。
図2図1に示す押出成形ラインにおけるTダイス周辺の構成を概略的に示す図である。
図3】本発明に係るTダイス清掃装置の一例における構成を示す正面側から見た斜視図である。
図4】スクレーパーの一例における構成を示す図であって、(a)側面図、(b)上面側から見た斜視図、(c)上面図である。
図5】スクレーパー移動機構の構成を概略的に示す図である。
図6】位置調整機構の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、熱可塑性樹脂の単層のシートやフィルムを成形する押出成形ラインにTダイス清掃装置を適用する場合を例に挙げて、図面を基に説明する。
図1は、Tダイ法による押出成形ラインの一例を概略的に示す図、図2は、図1に示す押出成形ラインにおける要部の構成を概略的に示す図である。
この押出成形ラインは、下面に開口するスリット状の吐出口(リップ)11が水平面内において一方向(図1および図2においては紙面に垂直な方向)に延びるように形成され溶融樹脂材料をシート状に押し出すTダイス10と、前記一方向に延びる回転軸Cを中心に回転駆動されTダイス10から吐出された溶融樹脂材料を急速冷却して樹脂シートSを成形する冷却ロール15と、複数の搬送ロール17からなる樹脂シート搬送手段16と、樹脂シートSを回収する巻き取りロール18とを備えている。以下においては、便宜上、前記一方向を「X方向」、水平面内においてX方向に直交する方向(図1および図2において左右方向)を「Y方向」、鉛直方向(図1および図2において上下方向)を「Z方向」と定義する。
【0019】
この押出成形ラインにおいては、Tダイス10の吐出口11の開口縁部に付着残存する付着樹脂を除去するTダイス清掃装置20が、冷却ロール15の外周面に沿って冷却ロール15の回転方向に対してTダイス10の上流側の位置に配置されている。Tダイス清掃装置20は、Tダイス10を吊下支持する支持フレーム(不図示)に取り付けられ、Tダイス清掃装置20がTダイス10に対して直接に熱的に接触しない状態とされている。
【0020】
Tダイス清掃装置20は、冷却ロール15の回転方向に対して上流側に位置される吐出口11の一方の開口縁部に先端部が押圧状態で当接されるスクレーパー50と、スクレーパー50を吐出口11に沿ってX方向に往復摺動させる摺動駆動機構21とを備える。摺動駆動機構21は、特に限定されるものではないが、例えばボールネジ機構により構成することができる。
【0021】
図3は、本発明に係るTダイス清掃装置の一例における構成を示す正面側から見た斜視図である。
このTダイス清掃装置20は、X方向に水平に延びる角筒状の横桿部26と、横桿部26の両端の各々に連続してZ方向に延びる角筒状の支柱部27と、各々の支柱部27の下端に固定された平板状の台座部28とを有するメインフレーム25を備えている。
【0022】
メインフレーム25の台座部28の下面には、2つのロッド状の下部リニアガイド37,37を保持する保持部材30が固定されている。
保持部材30は、互いにネジ止めされて固定されるブロック状の上面側保持部材31とブロック状の下面側保持部材33とを備えており、2つの下部リニアガイド37,37の各々を両端がX方向外方に突出する状態でX方向に水平に延びる姿勢で挟持して保持するように構成されている。本実施形態では、2つの下部リニアガイド37,37は、Z方向における同一のレベル位置においてY方向に並ぶよう保持されている。
上面側保持部材31には、下部リニアガイド37,37に対してZ方向上方側のレベル位置に、ボールネジ機構を構成するネジ軸22が挿通されるネジ軸挿通孔32が形成されている。
【0023】
ネジ軸22は、X方向に水平に延びる姿勢で、次のような保持構造によって保持されている。すなわち、メインフレーム25のX方向における両端の外方位置に、Tダイス10を支持する支持フレームに対する取付部を構成する一対の側板40,40が互いに対向して配置されており、ネジ軸22の両端部が各々の側板40,40の外面に設けられた、後述する位置調整機構70を構成する可動板71によって回転自在に保持されている。ネジ軸22の一端には、ネジ軸22を正転逆転可能に回転駆動させる駆動モータ23が連結されている。
【0024】
このTダイス清掃装置20においては、ネジ軸22の回転によってX方向に往復摺動されるブロック状のヘッド部45が下部リニアガイド37に摺動可能に取り付けられている。ヘッド部45には、ネジ軸挿通孔46が形成されており、ネジ軸挿通孔46にはネジ軸22に螺合装着されるナット部材24が設けられている。ヘッド部45の背面には、Z方向上方に向かって延びる連結板47が固定されており、連結板47の上端部には、上部リニアガイド35に摺動可能に取り付けられたガイドブロック48が固定されている。上部リニアガイド35は、メインフレーム25の横桿部26の背面に設けられた固定レール部材36に対してX方向に水平に延びる姿勢で固定されている。
ヘッド部45の下面には、正面方向に突出して延びる平板状のブラケット49が設けられており、ブラケット49の先端部にスクレーパー50が例えばネジ止めされて固定されている。
【0025】
スクレーパー50は、図4に示すように、ブラケット49の下面に対接されて固定される固定端部51と、固定端部51に連続して正面方向下方に向かって傾斜して延びる可撓アーム部52と、可撓アーム部52に連続する先端部53とを有する。
先端部53は、平坦なTダイス当接面54を上面に有し、Tダイスより押し出される溶融樹脂材料に対する接触面積が可及的に小さくなるような形態を有する。具体的には、先端部53は、幅寸法(X方向寸法)が先端に向かって小さくなるよう両側面がテーパ状に形成されるとともに、厚み(Z方向寸法)が先端に向かって小さくなるよう下面が正面方向上方に向かって傾斜して延びる傾斜面にされている。
【0026】
スクレーパー50を構成する材料としては、剛性を有しTダイスの構成材料(例えば鋳物)より硬度の小さいものであれば特に限定されるものではないが、樹脂の付着に起因した錆が生ずることを回避することができることから、例えばアルミニウム材が用いられることが好ましい。ここに、アルミニウム材とは、純アルミニウムおよびアルミニウム合金を含む。
また、スクレーパー50は、樹脂がスクレーパー50自体に付着することを回避するために、表面が滑り性を有する材料でコーティングされていることが更に好ましい。
コーティング用材料としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂などを用いることが好ましい。
【0027】
このTダイス清掃装置20は、図5にも示すように、スクレーパー50をTダイス10に当接する動作位置L1と、Tダイス10に対して冷却ロール15側に離間した退避位置L2との間でZ方向に移動させるスクレーパー移動機構60を備えている。
スクレーパー移動機構60は、例えばエアシリンダー61により構成されている。ブラケット49はZ方向に延びるピストンロッド62の先端に固定されており、不図示の弾性部材によって、Z方向上方に付勢されている。従って、スクレーパー50が動作位置L1にあるときには、図2に示すように、スクレーパー50の先端部がTダイス10の吐出口11における冷却ロール15の回転方向上流側に位置される一方の開口縁部に押圧状態で当接される。
図3および図5において、65は、エアシリンダー61に対する動作用エアの給排用ホース(不図示)を保持するケーブルキャリアであって、一端部がヘッド部45の上方位置においてX方向に水平に延びるよう配設された支持レール66に固定され他端部がヘッド部45の上面に設けられた支持体67に固定されている。
スクレーパー50の退避位置L2は、スクレーパー50の先端部53におけるTダイス当接面54とTダイス10の下面との離間距離hが0~20mmの範囲内となる位置に設定することができる。
【0028】
また、このTダイス清掃装置20においては、ネジ軸22、上部リニアガイド35および下部リニアガイド37の、吐出口11に対するY方向およびZ方向の相対的な傾きを調整する位置調整機構70が、各々の側板40,40のX方向外面側に設けられている。
【0029】
位置調整機構70は、図6に示すように、矩形状の可動板71と、可動板71の上方位置に可動板71と離間して設けられた上面側固定板72と、可動板71の正面側位置において可動板と離間して設けられた正面側固定板73と、可動板71の上面側固定板72および正面側固定板73に対する位置を調整するための複数の調整用ネジ74とを備えている。
上面側固定板72は、水平方向に延びるように側板40の外面にネジ止めされて固定されている。
正面側固定板73は、鉛直方向に延びるように側板40の外面にネジ止めされて固定されている。
可動板71は、上面側固定板72および正面側固定板73の各々と空隙を介して複数の調整用ネジ74によって連結されるとともに、側板40の外面に対して板状の座金75を介してネジ止めされて微小変位可能に設けられている。上述のように、可動板71は、ネジ軸22を回転自在に保持するとともに下部リニアガイド37の端部を保持している。
【0030】
このTダイス清掃装置20には、下面、背面および両側面を覆う外装体80が、位置調整機構70における可動板71に対してネジ止めされて取り付けられている。
外装体80の背面には、例えば3基の油煙排気ファン81がX方向に並んだ位置に設置されている。
【0031】
以下、上記実施形態のTダイス清掃装置20による樹脂材料除去処理について説明する。
先ず、退避位置L2にあるスクレーパー50がスクレーパー移動機構60によって動作位置L1に位置されるようにZ方向上方に移動され、スクレーパー50の先端部53におけるTダイス当接面54がTダイス10の吐出口11における冷却ロール15の回転方向上流側に位置される一方の開口縁部に押圧状態で当接される。このとき、例えばメンテナンス等の理由によって一旦取り外されたTダイス10が再度装着された状態である場合には、位置調整機構70によってネジ軸22、上部リニアガイド35および下部リニアガイド37の吐出口11に対するY方向およびZ方向の相対的な傾きが調整される。
【0032】
上述のように、押出成形ラインにあっては、成形作業が行われる過程において樹脂がTダイス10の吐出口11の開口縁部に不可避的に付着残存することとなるが、付着した樹脂が熱劣化する前に、上記Tダイス清掃装置20による付着樹脂除去処理が、押出成形ラインを停止することなく、換言すれば溶融樹脂材料の押出しを停止することなく、行われる。
付着樹脂除去処理は、例えば、Tダイス10の吐出口11から所定量の溶融樹脂材料が押出された場合や、先の付着樹脂除去処理が実施されてから所定時間が経過した場合などに実施されるが、成形動作時に継続して実施されるようにしてもよい。
付着樹脂除去処理にあっては、駆動モータ23によってネジ軸22が正転方向および逆転方向に回転されることによりヘッド部45が上部リニアガイド35および下部リニアガイド37によって案内されながらX方向に往復動される。これにより、スクレーパー50の先端部53がTダイス10の吐出口11の開口縁に沿ってX方向に往復摺動されTダイス10の吐出口11の開口縁部に不可避的に付着残存する付着樹脂が掻き取られる。掻き取られた樹脂は、冷却ロール15の表面上の硬化前の樹脂材料膜に落下され混入される。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明に係るTダイス清掃装置は、熱可塑性樹脂(プラスチック)の単層のシートやフィルムを成形する押出成形ラインだけでなく、複数の異なる材料を重ね合わせた多層のシート製品やフィルム製品またはラミネート製品を成形する押出成形ラインにおいて用いられるTダイスの吐出口に付着残存する付着樹脂を除去するために用いることもできる。
【符号の説明】
【0034】
10 ・・・ Tダイス
11 ・・・ 吐出口(リップ)
15 ・・・ 冷却ロール
16 ・・・ 樹脂シート搬送手段
17 ・・・ 搬送ロール
18 ・・・ 巻き取りロール
20 ・・・ Tダイス清掃装置
21 ・・・ 摺動駆動機構
22 ・・・ ネジ軸
23 ・・・ 駆動モータ
24 ・・・ ナット部材
25 ・・・ メインフレーム
26 ・・・ 横桿部
27 ・・・ 支柱部
28 ・・・ 台座部
30 ・・・ 保持部材
31 ・・・ 上面側保持部材
32 ・・・ ネジ軸挿通孔
33 ・・・ 下面側保持部材
35 ・・・ 上部リニアガイド
36 ・・・ 固定レール部材
37 ・・・ 下部リニアガイド
40 ・・・ 側板
45 ・・・ ヘッド部
46 ・・・ ネジ軸挿通孔
47 ・・・ 連結板
48 ・・・ ガイドブロック
49 ・・・ ブラケット
50 ・・・ スクレーパー
51 ・・・ 固定端部
52 ・・・ 可撓アーム部
53 ・・・ 先端部
54 ・・・ Tダイス当接面
60 ・・・ スクレーパー移動機構
61 ・・・ エアシリンダー
62 ・・・ ピストンロッド
65 ・・・ ケーブルキャリア
66 ・・・ 支持レール
67 ・・・ 支持体
70 ・・・ 位置調整機構
71 ・・・ 可動板
72 ・・・ 上面側固定板
73 ・・・ 正面側固定板
74 ・・・ 調整用ネジ
75 ・・・ 座金
80 ・・・ 外装体
81 ・・・ 油煙排気ファン
C ・・・ 回転軸
S ・・・ 樹脂シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6