IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミズホ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-脊椎固定システム 図1
  • 特許-脊椎固定システム 図2
  • 特許-脊椎固定システム 図3
  • 特許-脊椎固定システム 図4
  • 特許-脊椎固定システム 図5
  • 特許-脊椎固定システム 図6
  • 特許-脊椎固定システム 図7
  • 特許-脊椎固定システム 図8
  • 特許-脊椎固定システム 図9
  • 特許-脊椎固定システム 図10
  • 特許-脊椎固定システム 図11
  • 特許-脊椎固定システム 図12
  • 特許-脊椎固定システム 図13
  • 特許-脊椎固定システム 図14
  • 特許-脊椎固定システム 図15
  • 特許-脊椎固定システム 図16
  • 特許-脊椎固定システム 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】脊椎固定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20230130BHJP
【FI】
A61B17/70
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019559201
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2018045888
(87)【国際公開番号】W WO2019117251
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2017240192
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000193612
【氏名又は名称】ミズホ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】江原 宗平
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0106164(US,A1)
【文献】特開2004-97706(JP,A)
【文献】特開平2-198549(JP,A)
【文献】特開平8-252264(JP,A)
【文献】国際公開第00/18311(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊柱を構成する各椎骨を支持する支持要素と、脊柱の軸方向に沿って延び、前記各支持要素に連結されるロッドと、を備える脊椎固定システムであって、
前記ロッドに着脱自在に連結されるコネクタと、
該コネクタに連結され、椎弓に係合されるフック部材と、
を備え、
前記コネクタは、前記ロッドの軸方向と略直交する方向に延びるアーム部と、該アーム部に一体的に接続され、前記ロッドを受け入れるべく上面を開放したU字状の溝部を有するロッド受入部と、を備え、
前記フック部材は、前記コネクタの前記アーム部を受け入れるべく上面を開放したU字状の溝部を有するアーム受入部と、該アーム受入部と一体的に接続され、前記椎弓の椎弓板に脊柱管内から引っ掛けるように係合されるフック部と、を備えることを特徴とする脊椎固定システム。
【請求項2】
前記フック部材の前記アーム受入部は、前記フック部に対して、前記溝部の延びる方向が任意の方向に指向自在で、且つその任意の位置に一体的に連結可能に構成されることを特徴とする請求項に記載の脊椎固定システム。
【請求項3】
前記コネクタの前記ロッド受入部は、前記アーム部に対して、前記溝部の延びる方向が任意の方向に指向自在で、且つその任意の位置に一体的に連結可能に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の脊椎固定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、脊柱変形を矯正して固定するための脊椎固定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脊柱は、正常な状態では、後方から見ると概ね真っ直ぐであり、側方から見ると頚椎と腰椎とが前彎して、胸椎と仙椎とが後彎する、略S字状を呈するものである。そこで、脊柱変形症は、脊柱が変形した疾患であり、例えば、脊柱側彎症や、脊柱後彎症などがある。脊柱側彎症は、脊柱が側方へ彎曲しつつ、脊柱がねじれる疾患である。また、脊柱後彎症は、胸椎後彎の角度が極端に大きくなったり、腰椎の前彎が失われて後彎に変形する疾患である。
【0003】
このような脊柱変形症の治療に際して、脊柱変形矯正固定手術が一般的に行われる。この脊柱変形矯正固定手術は、変形した脊柱を、正常な状態、或いはそれに近い状態に矯正して固定する手術であり、後方矯正固定術、または前方矯正固定術が適用される。特に、後方矯正固定術は以下のようにして行われる。すなわち、後方矯正固定術は、患者を手術台上に腹臥位にて位置決めして、患者の背中の正中に手術創、または低侵襲である経皮的手術創をおいて、脊柱の後方の要素を展開する。続いて、脊柱に対して、後述の脊柱変形矯正固定システムを装着することで、脊柱変形を3次元的に矯正して、その状態で固定する術式である。
【0004】
一般に、脊柱変形矯正固定システムは、脊柱の各椎骨の椎弓根を介して椎体にねじ込まれる複数のスクリューと、各椎骨の椎弓根または横突起等に引っ掛ける複数のフック部材と、各スクリュー及び各フック部材のトップオープン溝部に連結され、脊柱の軸方向に沿って延び、また左右方向に間隔を置いて配置される一対のロッドと、一対のロッドに対してねじれ方向の剛性を高めるために各ロッド間に架橋される連結器(特許文献1参照)と、を備えたものが採用されている。また、ロッドと、スクリュー及びフック部材との連結には、セットスクリューが採用されている。そして、ロッドをスクリュー及びフック部材のトップオープン溝部に連結する際には、ロッドを、スクリュー及びフック部材のトップオープン溝部内に係合させた後、セットスクリューを、そのトップオープン溝部の内壁面に設けた雌ねじ部に螺合することで、ロッドをトップオープン溝部の底面に押圧して、ロッドと、スクリュー及びフック部材とを連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4907352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の脊柱変形矯正固定システムでは、各ロッド間を架橋する連結器を備えており、一対のロッドに対するねじれ方向の剛性は確保されているが、ロッドの、各スクリュー及び各フック部材に対する摺動方向の緩みや、各スクリューの椎体に対する抜け方向の緩みの懸念があり、脊柱への安定した矯正固定(固定力)に対して信頼性が欠けている。しかも、従来の脊柱変形矯正固定システムでは、脊柱変形を、ねじれを含む3次元的に矯正するための手術手技が非常に難しく煩雑となり、その結果として、手術時間が長くなり、患者への負担が増大する懸念がある。
【0007】
そして、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、手術手技を容易にしつつ、脊椎への安定した固定に対する信頼性を向上させる脊椎固定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の態様)
以下に示す発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項分けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0009】
(1)脊柱を構成する各椎骨を支持する支持要素と、脊柱の軸方向に沿って延び、前記各支持要素に連結されるロッドと、を備える脊椎固定システムであって、前記ロッドに着脱自在に連結されるコネクタと、該コネクタに連結され、椎弓に係合されるフック部材と、を備え、前記コネクタは、前記ロッドの軸方向と略直交する方向に延びるアーム部と、該アーム部に一体的に接続され、前記ロッドを受け入れるべく上面を開放したU字状の溝部を有するロッド受入部と、を備え、前記フック部材は、前記コネクタの前記アーム部を受け入れるべく上面を開放したU字状の溝部を有するアーム受入部と、該アーム受入部と一体的に接続され、前記椎弓の椎弓板に脊柱管内から引っ掛けるように係合されるフック部と、を備えることを特徴とする脊椎固定システム(請求項1の発明に相当)。
(1)項に記載の脊椎固定システムにおいては、ロッドにコネクタを介して連結され、椎弓に係合されるフック部材を備えているので、本脊椎固定システムによる、脊椎への固定力を向上させることができる。なお、フック部材は、椎弓の椎弓板に脊柱管内から引っ掛けるように係合される。
具体的に説明すると、一般的な脊柱変形矯正固定システムでは、ロッドが、セットスクリューを用いて、支持要素である、例えばスクリューやフック部材のトップオープン溝部に押圧されることで、ロッドがスクリューやフック部材に連結されて、脊柱変形を矯正固定している。これに対して、(1)項に記載の脊椎固定システムにおいては、ロッドにコネクタを介して連結され、椎弓板に係合されるフック部材を備えているので、ロッドに外力が作用した際、その外力を、コネクタ及びフック部材を介して椎弓に分散させることができる。その結果、ロッドの、スクリュー及びフック部材に対する摺動方向の緩みを抑制することができ、しかも、スクリューの椎体に対する抜け方向の緩みを抑制することができる。
【0011】
(2)(1)項に記載の脊椎固定システムであって、前記フック部材の前記アーム受入部は、前記フック部に対して、前記溝部の延びる方向が任意の方向に指向自在で、且つその任意の位置に一体的に連結可能に構成されることを特徴とする脊椎固定システム(請求項の発明に相当)。
(2)項に記載の脊椎固定システムでは、フック部材のアーム受入部は、フック部に対して、溝部の延びる方向が任意の方向に指向自在に連結されているので、術中、コネクタのアーム部を、フック部材のアーム受入部内に容易に係合させることができる。その結果、本脊椎固定システムを使用した手術手技を容易にすることができる。
【0012】
(3)(1)項または(2)項に記載の脊椎固定システムであって、前記コネクタの前記ロッド受入部は、前記アーム部に対して、前記溝部の延びる方向が任意の方向に指向自在で、且つその任意の位置に一体的に連結可能に構成されることを特徴とする脊椎固定システム(請求項の発明に相当)。
(3)項に記載の脊椎固定システムは、コネクタのロッド受入部は、アーム部に対して、溝部の延びる方向が任意の方向に指向自在に連結されているので、術中、ロッドを、コネクタのロッド受入部内に容易に係合させることができる。その結果、本脊椎固定システムを使用した手術手技を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る脊椎固定システムでは、手術手技を容易にすることができ、脊椎への安定した固定に対する信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第1の実施形態に係る脊椎固定システムを後方から見た図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る脊椎固定システムに採用したスクリューの斜視図である。
図3図3は、図2のスクリューにおけるロッド受入部の断面図である。
図4図4は、図2のスクリューを椎骨にねじ込んだ状態を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る脊椎固定システムに採用した第1フック部材の斜視図である。
図6図6は、図5の第1フック部材が椎弓の椎弓根に係合した様子を示す斜視図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る脊椎固定システムに採用した第2フック部材の斜視図である。
図8図8は、図7の第2フック部材が椎弓の椎弓板に係合した様子を示す斜視図である。
図9図9は、他の実施形態に係る第2フック部材の斜視図である。
図10図10は、図9の第2フック部材の断面図である。
図11図11は、他の実施形態に係る第1フック部材の斜視図である。
図12図12は、第1の実施形態に係る脊椎固定システムに採用したコネクタの斜視図である。
図13図13は、他の実施形態に係るコネクタの斜視図である。
図14図14は、図13のコネクタの断面図である。
図15図15は、第2の実施形態に係る脊椎固定システムを後方から見た図である。
図16図16は、第2の実施形態に係る脊椎固定システムに採用したコネクタ及び第2フック部材の斜視図である。
図17図17は、図16のコネクタのロッド受入部にロッドを一体的に連結した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図1図17に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1及び第2実施形態に係る脊椎固定システム1A、1Bは、脊柱側彎症や、後彎症等の脊柱変形を矯正固定するための脊柱変形矯正固定システムとして採用される。まず、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aを図1図14に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aは、脊柱の軸方向に沿って延びる一対のロッド3、3と、ロッド3に着脱自在に取り付けられ、各椎骨の椎弓根を介して椎体にねじ込まれるスクリュー4(支持要素)と、ロッド3に着脱自在に取り付けられ、各椎骨の椎弓根または横突起等に係合される第1フック部材5(支持要素)と、ロッド3に着脱自在に取り付けられるコネクタ6Aと、該コネクタ6Aに連結され、椎弓の椎弓板に係合される第2フック部材7Aと、を備えている。
【0022】
なお、第1フック部材5は、必要に応じて採用される。すなわち、側彎症等の症例に対しては、基本的にスクリュー4が採用されるが、例えば、椎弓根の外径が小さく、スクリュー4が椎弓根にねじ込むことができない場合などは、椎弓根または横突起(図6では椎弓根)に引っ掛けるように係合される第1フック部材5が採用される。これら、ロッド3、スクリュー4、第1フック部材5、コネクタ6A及び第2フック部材7Aは、チタン合金等の生体親和性に富む材料にて形成される。
【0023】
図1及び図4に示すように、ロッド3は、脊柱の軸方向に沿って延び、各椎弓の棘突起を境に左右向両側に一対配置されている。ロッド3は、断面略円形状に形成される。ロッド3の外径及び長さは、術者にて脊柱変形に対する矯正範囲等に基づいて適宜選択して、決定される。図4から解るように、スクリュー4は、脊柱の後方から各椎骨の椎弓根を介して椎体にねじ込まれるものである。該スクリュー4は、一般に、ペディクルスクリューとも称される。図2及び図3に示すように、スクリュー4は、ロッド3を受け入れる溝部13を有するロッド受入部10と、該ロッド受入部10に連結され、椎骨の椎弓根を介して椎体にねじ込まれるスクリュー部11と、を備えている。
【0024】
ロッド受入部10は、ブロック状に形成される。ロッド受入部10には、スクリュー部11側とは反対側の一端面を開放したU字状の溝部13がロッド3の軸方向に沿って形成される。当該溝部13にロッド3を受け入れる。該溝部13の底部には、挿通孔15が貫通して形成される。この挿通孔15内に、後述する、スクリュー部11の係合頭部22及び押圧部材32が係合される。該挿通孔15の内壁面には、スクリュー部11の係合頭部22に設けた球面29を係止する係止球面16が形成される。また、ロッド受入部10において、溝部13を境に対向する壁部17、17の内壁面には、雌ねじ部18がそれぞれ形成される。この雌ねじ部18に、セットスクリュー19がねじ込まれる。そして、該セットスクリュー19により、ロッド受入部10内に位置するロッド3をその溝部13の底部に向かって移動させ、該ロッド受入部10内に配置される、後述の押圧部材32を押し下げて押圧することで、ロッド3をスクリュー4に一体的に連結することができる。
【0025】
スクリュー部11は、ロッド受入部10の他端面から延びている。スクリュー部11は、ロッド受入部10の挿通孔15内に係合される係合頭部22と、該係合頭部22と接続部24を介して一体的に接続される雄ねじ部23と、を備えている。スクリュー部11の係合頭部22には、その頂部に形成される平面部28と、平面部28から連続して形成される球面29と、を備えている。ロッド受入部10は、スクリュー部11に対して、U字状の溝部13の延びる方向が任意の方向に指向自在で、且つその任意の位置に一体的に連結可能に構成される。その連結構造を詳しく説明する。ロッド受入部10の挿通孔15内に、押圧部材32が軸方向に摺動自在に係合されている。押圧部材32は略円筒状であって、その周方向の一部に軸方向に延び、内外を連通させる切欠き部34が形成される。押圧部材32の内壁面には、押圧球面35が形成される。押圧部材32の押圧球面35が、スクリュー部11の係合頭部22の球面29に当接される。
【0026】
これにより、ロッド受入部10は、スクリュー部11に対して、雌ねじ部18の軸線方向の周りを回動自在に連結される。また、ロッド受入部10は、スクリュー部11に対して、所定角度の範囲内で全方向に揺動自在に連結される。そして、セットスクリュー19をロッド受入部10の雌ねじ部18にねじ込み、ロッド3を押圧部材32と共にスクリュー部11側に向かって移動させることにより、押圧部材32の押圧球面35がスクリュー部11の係合頭部22の球面29を押圧すると共に該係合頭部22の球面29が挿通孔15の係止球面16を押圧することで、ロッド受入部10は、その溝部13の延びる方向がスクリュー部11に対して任意の位置に位置決めされて一体的に連結される。そしてこの作用と同時に、ロッド3が、スクリュー4のロッド受入部10に一体的に連結される。なお、本実施形態に採用されるスクリュー4は、ロッド受入部10が、スクリュー部11に対して、U字状の溝部13の延びる方向が任意の方向に指向自在に連結されているが、ロッド受入部10が、スクリュー部11に対して、U字状の溝部13の延びる方向に沿ってのみ所定角度の範囲内で、揺動自在に連結されるスクリューを採用することもできる。
【0027】
図5及び図6に示すように、図1も参照して、第1フック部材5は、椎弓の椎弓根または横突起(図6では椎弓根)に引っ掛けて係合するものである。第1フック部材5は、ロッド3を受け入れる溝部43を有するロッド受入部40と、該ロッド受入部40に一体的に接続される第1フック部41と、を備えている。ロッド受入部40は、ブロック状に形成される。ロッド受入部40には、第1フック部41側と反対側の一端面を開放したU字状の溝部43がロッド3の軸方向に沿って形成される。このU字状の溝部43にロッド3を受け入れる。ロッド受入部40において、溝部43を境に対向する壁部47、47の内壁面には、雌ねじ部48がそれぞれ形成される。この雌ねじ部48に、セットスクリュー49がねじ込まれる。
【0028】
このセットスクリュー49により、ロッド受入部40内に位置するロッド3を、該ロッド受入部40の溝部43の底面に押圧して、ロッド3を第1フック部材5に一体的に連結している。第1フック部41は、ロッド受入部40の他端面から略L字状で延びている。第1フック部41の先端は、ロッド受入部40に設けた溝部43の延びる方向と同方向に向かって延びている。この第1フック部41により、椎弓の椎弓根または横突起を係合することができる。なお、第1フック部41の内側の面に、椎弓の椎弓根または横突起との摩擦力を高めるために、先端が鋭利な凸状部や凹凸部等を縦方向または横方向に、一つ以上形成してもよい。
【0029】
図7及び図8に示すように、図1も参照して、第2フック部材7Aは、椎弓の椎弓板を脊柱管内から引っ掛けるように係合するものである。第2フック部材7Aは、後述するコネクタ6Aのアーム部81を受け入れる溝部53を有するアーム受入部50と、該アーム受入部50に一体的に接続される第2フック部51と、を備えている。アーム受入部50は、ブロック状に形成される。アーム受入部50には、第2フック部51側と反対側の一端面を開放したU字状の溝部53が形成される。該溝部53は、コネクタ6Aのアーム部81の軸方向、すなわちロッド3の軸方向と略直交する方向に沿って形成される。このU字状の溝部53にコネクタ6Aのアーム部81を受け入れる。
【0030】
アーム受入部50において、溝部53を境に対向する壁部57、57の内壁面には、雌ねじ部58がそれぞれ形成される。この雌ねじ部58には、セットスクリュー59がねじ込まれる。該セットスクリュー59により、アーム受入部50内に位置するコネクタ6Aのアーム部81を、該アーム受入部50の溝部53の底面に押圧して、アーム部81、ひいてはコネクタ6Aを第2フック部材7Aに一体的に連結している。第2フック部51は、アーム受入部50の他端面から略L字状で延びている。第2フック部51の先端は、アーム受入部50に設けた溝部53の延びる方向と略直交する方向に向かって延びている。言い換えれば、第2フック部51の先端は、アーム受入部50のいずれか一方の壁部57側に向かって延びている。この第2フック部51により、椎弓の椎弓板を脊柱管内から引っ掛けるように係合することができる。なお、第2フック部51の内側の面に、椎弓の椎弓板との摩擦力を高めるために、先端が鋭利な凸状部や凹凸部等を縦方向または横方向に、一つ以上形成してもよい。
【0031】
次に、他の実施形態に係る第2フック部材7A’を図9及び図10に基づいて説明する。他の実施形態に係る第2フック部材7A’では、アーム受入部50が、第2フック部51に対して、U字状の溝部53の延びる方向が任意の方向に指向自在で、且つその任意の位置に一体的に連結可能に構成される。その連結構造を詳しく説明する。第2フック部51は、椎弓板に引っ掛けて係合するコ字状フック部63と、該コ字状フック部63のアーム受入部50側の端部に接続部64を介して一体的に接続され、アーム受入部50に係合される係合頭部62と、を備えている。係合頭部62は球状に形成されており、その頂部に平面部68が形成される。なお、平面部68には、平面視多角形状の多角形凹部67が形成される。
【0032】
一方、アーム受入部50の溝部53の底部には、挿通孔55が貫通して形成されている。この挿通孔55内に、第2フック部51の係合頭部62が係合される。該挿通孔55の内壁面には、第2フック部51の係合頭部62に設けた球面69を係止する係止球面56が形成される。挿通孔55内には、その軸方向に摺動自在に押圧部材72が係合されている。押圧部材72は略円筒状であって、その周方向の一部に軸方向に延び、内外を連通させる切欠き部74が形成される。押圧部材72の内壁面には、押圧球面75が形成される。押圧部材72の押圧球面75が、第2フック部51の係合頭部62の球面69に当接される。なお、アーム受入部50と第2フック部51とは、第2フック部51の係合頭部62側からアーム受入部50の挿通孔55内に嵌入して組み付けられる。
【0033】
これにより、アーム受入部50は、第2フック部51に対して、アーム受入部50の雌ねじ部58の軸線方向の周りを回動自在に連結される。また、アーム受入部50は、第2フック部51に対して、所定角度の範囲内で全方向に揺動自在に連結される。そして、セットスクリュー59をアーム受入部50の雌ねじ部58にねじ込み、コネクタ6Aのアーム部81を押圧部材72と共に第2フック部51側に向かって移動させることにより、押圧部材72の押圧球面75が第2フック部51の係合頭部62の球面69を押圧すると共に該係合頭部62の球面69が挿通孔55の係止球面56を押圧することで、アーム受入部50は、その溝部53の延びる方向が第2フック部51に対して任意の位置に位置決めされて一体的に連結される。そして、この作用と同時に、後述のコネクタ6Aのアーム部81が、第2フック部材7A’のアーム受入部50に一体的に連結される。
【0034】
なお、前記第1フック部材5においても、他の実施形態に係る第2フック部材7A’と同様の実施形態を採用することができる。要するに、図11に示すように、他の実施形態に係る第1フック部材5’においても、ロッド受入部40が、第1フック部41に対して、U字状の溝部43の延びる方向が任意の方向に指向自在で、且つその任意の位置に一体的に連結可能に構成される。その連結構造は、他の実施形態に係る第2フック部材7A’と同等であるのでここでの説明を省略する。
【0035】
図12に示すように、図1も参照して、コネクタ6Aは、ロッド3を受け入れる溝部83を有するロッド受入部80と、該ロッド受入部80に一体的に接続されるアーム部81と、を備えている。コネクタ6Aのロッド受入部80は、第1フック部材5のロッド受入部40と略同様に形成される。コネクタ6Aのロッド受入部80は、ブロック状に形成される。ロッド受入部80には、一端面を開放したU字状の溝部83がロッド3の軸方向に沿って形成される。このU字状の溝部83にロッド3を受け入れる。ロッド受入部80において、溝部83を境に対向する壁部87、87の内壁面には、雌ねじ部88がそれぞれ形成される。この雌ねじ部88には、セットスクリュー89がねじ込まれる。該セットスクリュー89により、ロッド受入部80内に位置するロッド3を、該ロッド受入部80の溝部83の底面に押圧して、ロッド3をコネクタ6Aに連結している。アーム部81は、ロッド受入部80の一対の壁部87、87のうち一方の壁部87の外壁面であって、溝部83の底面付近の位置から一体的に突設されている。アーム部81は、断面円形状に形成される。アーム部81は、ロッド3の軸方向と略直交する方向、すなわち、溝部83の延びる方向と略直交する方向に沿って延びている。
【0036】
次に、他の実施形態に係るコネクタ6A’を図13及び図14に基づいて説明する。他の実施形態に係るコネクタ6A’では、ロッド受入部80が、アーム部81に対して、U字状の溝部83の延びる方向が任意の方向に指向自在で、且つその任意の位置に一体的に連結可能に構成される。その連結構造を詳しく説明する。アーム部81は、L字状を呈し、ロッド受入部80に係合される係合頭部92と、該係合頭部92から接続部94を介してロッド3と略直交する方向に延びるアーム本体部93と、を備えている。係合頭部92は球状に形成されており、その頂部に平面部98が形成される。なお、平面部98には、平面視多角形状の多角形凹部97が形成される。アーム本体部93は断面円形状に形成される。
【0037】
一方、ロッド受入部80の溝部83の底部には、挿通孔85が貫通して形成されている。この挿通孔85内に、アーム部81の係合頭部92が係合される。該挿通孔85の内壁面には、アーム部81の係合頭部92に設けた球面99を係止する係止球面86が形成される。挿通孔85内には、軸方向に摺動自在に押圧部材102が係合されている。押圧部材102は略円筒状であって、その周方向の一部に軸方向に延び、内外を連通させる切欠き部104が形成される。押圧部材102の内壁面には、押圧球面105が形成される。押圧部材102の押圧球面105が、アーム部81の係合頭部92の球面99に当接される。なお、ロッド受入部80とアーム部81とは、アーム部81の係合頭部92側からロッド受入部80の挿通孔85内に嵌入して組み付けられる。
【0038】
これにより、ロッド受入部80は、アーム部81(係合頭部92)に対して、ロッド受入部80の雌ねじ部88の軸線方向の周りを回動自在に連結される。また、ロッド受入部80は、アーム部81に対して、所定角度の範囲内で全方向に揺動自在に連結される。そして、セットスクリュー89をロッド受入部80の雌ねじ部88にねじ込み、ロッド3を押圧部材102と共にアーム部81側に向かって移動させることにより、押圧部材102の押圧球面105がアーム部81の係合頭部92の球面99を押圧すると共に該係合頭部92の球面99が挿通孔85の係止球面86を押圧することで、ロッド受入部80は、その溝部83が延びる方向がアーム部81に対して任意の位置に位置決めされて一体的に連結される。そしてこの作用と同時に、ロッド3が、コネクタ6A’のロッド受入部80に一体的に連結される。
【0039】
次に、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aによる、基本的な脊柱の矯正固定方法を説明する。
まず、脊柱の矯正範囲として選択された複数の椎骨に対して、後方から、スクリュー4を各椎弓の、一対の椎弓根または一方の椎弓根を介して椎体にねじ込む。なお、スクリュー4が椎弓根にねじ込むことができない場合などは、第1フック部材5の第1フック部41を、各椎弓の椎弓根または横突起に、頭側または尾側から引っ掛けるようにして係合する。
次に、各椎弓の椎弓根を介して椎体にねじ込まれた各スクリュー4に対して、脊柱の軸方向に沿って、互いに離反する方向に荷重を付与して、側彎に対して矯正する。
次に、この矯正状態を維持しながら、適宜部位が大きく屈曲されたロッド3を各スクリュー4のロッド受入部10、及び各第1フック部材5のロッド受入部40内に係合する。続いて、対応するセットスクリュー19、49を、各スクリュー4のロッド受入部10の雌ねじ部18、及び各第1フック部材5のロッド受入部40の雌ねじ部48にそれぞれ螺合して、ロッド3と、各スクリュー4及び各第1フック部材5とを仮止めする。
【0040】
このとき、スクリュー4は、ロッド受入部10がスクリュー部11に対して、U字状の溝部13の延びる方向が任意の方向に指向自在(首振り自在)に連結されているので、ロッド3を各スクリュー4のロッド受入部10内に容易に係合することができる。また、第1フック部材5においても、他の実施形態に係る第1フック部材5’を採用すれば、ロッド受入部40が第1フック部41に対して、U字状の溝部43の延びる方向が任意の方向に指向自在(首振り自在)に連結されているので、ロッド3を各第1フック部材5’のロッド受入部40内に容易に係合することができる。
次に、必要に応じて、再び、各スクリュー4に対して、脊柱の軸方向に沿って、互いに離反する方向、または近接する方向に荷重を付与して、側彎に対してさらに矯正する。続いて、専用の手術器具(図示略)によりロッド3を把持して、ロッド3を患者の左右方向に沿って回旋させることで、脊柱のねじれを矯正する。
【0041】
次に、各スクリュー4のロッド受入部10、及び各第1フック部材5のロッド受入部40に仮締めされたセットスクリュー19、49を本締めする。その結果、各スクリュー4においては、ロッド受入部10とスクリュー部11とが一体的に連結され、また他の実施形態の第1フック部材5’が採用されていれば、当該第1フック部材5’において、ロッド受入部40と第1フック部41とが一体的に連結される。そしてこれと同時に、ロッド3と、各スクリュー4及び各第1フック部材5(5’)とが一体的に連結される。
【0042】
次に、ロッド3の軸方向に沿う適宜位置にコネクタ6Aのロッド受入部80を係合させて、セットスクリュー89をコネクタ6Aのロッド受入部80の雌ねじ部88に仮締めして、ロッド3をコネクタ6Aのロッド受入部80内に仮止めする。続いて、コネクタ6Aのアーム部81をロッド3の軸線周りに回動させて、椎弓から離れた位置にて保持しておき、第2フック部材7Aの第2フック部51を脊柱管内から椎弓板に引っ掛けるように係合する。続いて、その状態を維持して、コネクタ6Aのアーム部81をロッド3の軸線周りに回動させると共に第2フック部材7Aのアーム受入部50内に係合して、セットスクリュー59をアーム受入部50の雌ねじ部58にねじ込み、コネクタ6Aのアーム部81の軸方向に沿う任意の位置を第2フック部材7Aのアーム受入部50に一体的に連結する。続いて、コネクタ6Aのロッド受入部80の雌ねじ部88に仮締めしていたセットスクリュー89を本締めして、コネクタ6Aとロッド3とを一体的に連結する。
【0043】
このとき、前記コネクタ6Aにおいて、他の実施形態に係るコネクタ6A’(図13及び図14参照)を採用すれば、ロッド受入部80が、アーム部81に対して、U字状の溝部83の延びる方向が任意の方向に指向自在(首振り自在)に連結されており、前記第2フック部材7Aにおいても、他の実施形態に係る第2フック部材7A’(図9及び図10参照)を採用すれば、アーム受入部50が、第2フック部51に対して、U字状の溝部53の延びる方向が任意の方向に指向自在(首振り自在)に連結されているので、ロッド3と第2フック部材7A’とを容易にコネクタ6A’を介して一体的に連結することが可能になる。なお、他の実施形態に係るコネクタ6A’を採用した際には、コネクタ6A’のロッド受入部80にロッド3を一体的に連結するためにセットスクリュー89を本締めしたときに、コネクタ6A’のロッド受入部80とアーム部81とが一体的に連結される。また、他の実施形態に係る第2フック部材7A’を採用した際には、コネクタ6A’のアーム部81を第2フック部材7A’のアーム受入部50に一体的に連結するためにセットスクリュー59を本締めしたときに、第2フック部材7A’のアーム受入部50と第2フック部51とが一体的に連結される。
【0044】
以上説明した、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aでは、特に、ロッド3にコネクタ6Aを介して連結され、椎骨の椎弓板に係合される第2フック部材7A(7A’)を備えているので、ロッド3に外力が作用した際、その外力を、コネクタ6A及び第2フック部材7A(7A’)を介して比較的強度の高い椎弓板に分散させることができる。その結果、ロッド3の、スクリュー4及び第1フック部材5(5’)に対する摺動方向の緩みを抑制することができ、スクリュー4の椎体に対する抜け方向の緩みを抑制することができる。要するに、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aでは、脊柱(脊椎)への矯正固定力を向上させ、ひいては、脊柱(脊椎)への安定した矯正固定に対する信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aは、脊柱変形症に対して全症例に対応可能となるが、近年増加している、高齢者で骨粗鬆症が進行している側彎症の場合は、同時に後彎症も併発しており、椎弓根を介して椎体にねじ込まれているスクリュー4が椎体から抜けやすくなる、という懸念がある。これを対策するために、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aでは、脊柱管内から椎弓板に引っ掛けるように係合される第2フック部材7A(7A’)を備えており、この第2フック部材7A(7A’)を椎骨の中でも比較的強度の高い椎弓板に簡便に設置して、脊椎への固定力を増加させることが可能になる。さらに、現在、脊椎固定システムによる固定力の増加目的でポリエチレン製テープが使用されているが、このテープを使用する際には、このテープを脊柱管内の神経周辺に通さなければならず、手術手技が相当煩雑となる。これに対して、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aでは、椎弓板に第2フック部材7A(7A’)を引っ掛けるように係合しているために、安全性がはるかに向上すると共に手術手技も簡単となる。
【0046】
また、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aでは、他の実施形態に係る第1フック部材5’(図11参照)を採用すれば、ロッド受入部40が、第1フック部41に対して、U字状の溝部43の延びる方向が任意の方向に指向自在(首振り自在)に連結されているので、ロッド3を各第1フック部41のロッド受入部40(溝部43)内に容易に係合することができる。また、他の実施形態に係るコネクタ6A’(図13及び図14参照)を採用すれば、ロッド受入部80が、アーム部81に対して、U字状の溝部83の延びる方向が任意の方向に指向自在(首振り自在)に連結され、また他の実施形態に係る第2フック部材7A’(図9及び図10参照)を採用すれば、アーム受入部50が、第2フック部51に対して、U字状の溝部53の延びる方向が任意の方向に指向自在(首振り自在)に連結されているので、ロッド3と第2フック部材7A’とを容易にコネクタ6A’を介して一体的に連結することが可能になる。
【0047】
要するに、脊柱変形矯正固定術では、各スクリュー4及び各ロッド3等により、変形した脊柱を矯正しつつ固定する必要があるが、ロッド3を、各スクリュー4及び各第1フック部材5のロッド受入部10、40に係合させる操作には、熟練を必要とする高度なテクニックが必要とされる。しかしながら、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aでは、他の実施形態に係る第1フック部材5’、コネクタ6A’及び第2フック部材7A’を採用することで、ロッド3、各スクリュー4、各第1フック部材5’、コネクタ6A’、及び第2フック部材7A’の連結が容易となる。これにより、脊柱変形矯正固定術における手術手技が高度なテクニックを必要とせず、その結果、手術時間を短縮することができ、患者への負担を軽減させることができる。
【0048】
なお、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aでは、ロッド3の外径と、コネクタ6A(6A’)のアーム部81の外径とを同一にすることで、他の実施形態に係る第1フック部材5’(図11参照)と、他の実施形態に係る第2フック部材7A’(図9参照)とを共通化させて、同一部材にすることができる。これにより、術中、術者が、対応するフック部材5’、7A’を適宜選択する必要がなく、手術時間の短縮に寄与できる。また、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aでは、第2フック部材7A(7A’)は、椎弓の脊柱管内から椎弓板に引っ掛けるように係合されているが、椎弓の椎弓根や横突起等に引っ掛けるように係合してもよい。
【0049】
次に、第2実施形態に係る脊椎固定システム1Bを図15図17に基づいて詳細に説明する。当該第2実施形態に係る脊椎固定システム1Bを説明する際には、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aとの相違点のみを説明する。該第2実施形態に係る脊椎固定システム1Bでは、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aに採用したコネクタ6A(6A’)及び第2フック部材7A(7A’)が相違される。
【0050】
第2実施形態に係る脊椎固定システム1Bに採用したコネクタ6Bは、ロッド3と略直交する方向に延びるアーム部110と、該アーム部110の長手方向両端部に設けられ、第2フック部材7Bの第2フック部121側を開放する溝部113を有するロッド受入部111と、を備えている。アーム部110は、一対のロッド3、3に架け渡される。アーム部110は、断面略矩形状に形成される。各ロッド受入部111の溝部113は、ロッド3の軸方向に沿って形成される。これらの溝部113、113に一対のロッド3、3をそれぞれ受け入れる。各ロッド受入部111には、溝部113に向かって貫通する雌ねじ部115が形成される。該雌ねじ部115に固定ねじ116が螺合される。固定ねじ116の先端は円錐状に形成される。
【0051】
そして、図17に示すように、ロッド受入部111の溝部113内にロッド3を係合させた状態で、固定ねじ116をロッド受入部111の雌ねじ部115にねじ込み、固定ねじ116の先端部のテーパ面がロッド3を溝部113の内壁面に押圧することで、ロッド3をロッド受入部111の溝部113に一体的に連結することができる。なお、コネクタ6Bのロッド受入部111に設けた溝部113は、第2フック部材7Bの第2フック部121側を開放するようにして形成されているので、コネクタ6Bのアーム部110を一対のロッド3、3に連結する際、容易に、ロッド受入部111、111の溝部113、113内に、一対のロッド3、3を係合させることができる。
【0052】
第2フック部材7Bは、アーム部110の軸方向に摺動自在に連結される摺動本体部120と、摺動本体部120から一体的に延び、椎弓の椎弓板に脊柱管内から引っ掛けるように係合される第2フック部121と、備えている。摺動本体部120は、対向する横板状部124、124と、該一対の横板状部124、124の端部に一体的に接続される縦板状部125と、からなる略コ字状に形成される。摺動本体部120の対向する横板状部124、124間にアーム部110が軸方向に摺動自在に連結される。摺動本体部120の対向する横板状部124、124間の距離は、アーム部110の厚みより、当該アーム部110が横板状部124、124間を摺動できる程度に大きく設定される。摺動本体部120の対向する横板状部124、124のうち一方の横板状部124の先端には、他方の横板状部124の先端に向かって突設するストッパ部(図示略)が形成される。このストッパ部と他方の横板状部124の先端との間の距離は、アーム部110の厚みよりも若干小さくなっている。
【0053】
そして、摺動本体部120をアーム部110に連結する際には、摺動本体部120の対向する横板状部124、124を、互いに拡げるように弾性変形させて、一方の横板状部124のストッパ部と、他方の横板状部124との間にアーム部110を入れ込むようにして連結する。その結果、ストッパ部により摺動本体部120がアーム部110から抜け落ちることなく、摺動本体部120がアーム部110の軸方向に沿って摺動可能にアーム部110に支持される。第2フック部121は、摺動本体部120の縦板状部125の外壁面に一体的に接続される。第2フック部121は、椎弓板を脊柱管内から引っ掛けるようにして係合すべく略L字状に形成される。なお、図示は省略するが、摺動本体部120において、第2フック部121側とは反対側の横板状部125に雌ねじ部を貫通して設け、該雌ねじ部にセットスクリューをねじ込み、セットスクリューからの押圧により、摺動本体部120をアーム部110の任意の位置に固定するように構成してもよい。
【0054】
以上説明した、第2実施形態に係る脊椎固定システム1Bでは、コネクタ6Bは、ロッド3と略直交する方向に延びるアーム部110と、該アーム部110の長手方向両端部に設けられ、第2フック部材7Bの第2フック部121側を開放する溝部113を有するロッド受入部111と、を備え、第2フック部材7Bの摺動本体部120が、アーム部110の軸方向に沿って摺動自在に連結される。またアーム部110の各ロッド受入部111、111の溝部113、113に一対のロッド3、3が一体的に連結される。これにより、第1実施形態に係る脊椎固定システム1Aによる作用効果に加え、一対のロッド3、3に対するねじれ方向の剛性を向上させることができ、脊柱(脊椎)への矯正固定力をさらに向上させ、ひいては、脊柱(脊椎)への安定した矯正固定に対する信頼性をさらに向上させることができる。
【0055】
なお、以上説明した、第1及び第2実施形態に係る脊椎固定システム1A、1Bは、脊柱側彎症や、後彎症等の脊柱変形を矯正固定するために、脊柱の比較的長い範囲を固定する脊柱変形矯正固定システムとして採用されているが、他の脊椎疾病、例えば脊椎すべり症や脊椎骨折等の際、脊柱を比較的短い範囲で固定して安定化させるシステムにも採用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1A、1B 脊椎固定システム,3 ロッド,4 スクリュー(支持要素),5、5’ 第1フック部材(支持要素),6A、6A’、6B コネクタ,7A、7A’、7B 第2フック部材,40 ロッド受入部,41 第1フック部,43 溝部,50 アーム受入部,51 第2フック部,53 溝部,80 ロッド受入部,81 アーム部,83 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17