(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】作業計画装置、作業計画装置の制御方法、および、その制御プログラム、ならびにドローン
(51)【国際特許分類】
G08G 5/00 20060101AFI20230130BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20230130BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230130BHJP
B64D 1/18 20060101ALI20230130BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20230130BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20230130BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230130BHJP
G01C 21/20 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
G08G5/00 A
A01M7/00 H
B64C39/02
B64D1/18
B64C13/18 Z
B64D27/24
B64C27/08
G01C21/20
(21)【出願番号】P 2020557761
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046303
(87)【国際公開番号】W WO2020111096
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2018221633
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019159277
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【氏名又は名称】栗原 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】柳下 洋
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/009688(WO,A1)
【文献】特開2018-050491(JP,A)
【文献】特開2018-142302(JP,A)
【文献】特開2015-168402(JP,A)
【文献】国際公開第2017/109780(WO,A1)
【文献】特開2018-052429(JP,A)
【文献】特開2017-204033(JP,A)
【文献】特開2017-158532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 ~ 99/00
A01M 7/00
B64C 13/18
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 1/18
B64D 27/24
G01C 21/00 ~ 21/36
G05D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持される資源を減少させながら移動する移動装置の、運転予定経路における資源の消費量を予測する消費量予測部と、
保持されている前記資源の量を取得する資源量取得部と、
前記消費量と、保持されている前記資源の量と、に基づいて、前記資源を前記移動装置に補充するために前記運転予定経路上において作業を中断する作業中断点を生成することで、前記運転予定経路を分割する運転経路分割部と、を備え
、
前記作業中断点から前記資源を補充する発着地点までの帰還経路において、前記移動装置が薬剤を散布することを決定する、
作業計画装置。
【請求項2】
保持される資源を減少させながら移動する移動装置の、運転予定経路における資源の消費量を予測する消費量予測部と、
保持されている前記資源の量を取得する資源量取得部と、
前記消費量と、保持されている前記資源の量と、に基づいて、前記資源を前記移動装置に補充するために前記運転予定経路上において作業を中断する作業中断点を生成することで、前記運転予定経路を分割する運転経路分割部と、を備え、
前記作業中断点から前記資源を補充する発着地点までの帰還経路において、薬剤が既に散布されているか否かを判定し、未散布の経路がある場合は、当該未散布の経路において前記薬剤を散布することを決定する帰還散布計画部をさらに備える
、
作業計画装置。
【請求項3】
前記帰還散布計画部は、前記帰還経路において散布が予想される薬剤の重量に基づいて、搭載されているバッテリにより前記移動装置が到達可能な地点を算出し、前記到達可能な地点に基づいて前記帰還経路を生成する、
請求項
2記載の作業計画装置。
【請求項4】
前記資源の量は、前記移動装置を駆動するバッテリの蓄電量である、
請求項1
又は2記載の作業計画装置。
【請求項5】
前記作業中断点の個数に基づいて、前記運転予定経路を移動するために必要なバッテリの補充回数を算出する、
請求項
4記載の作業計画装置。
【請求項6】
前記バッテリの蓄電量と、前記移動装置の速度に基づいて、作業の開始から前記作業中断点に到達するまでの所要時間を算出する、
請求項
4記載の作業計画装置。
【請求項7】
前記移動装置に搭載される前記バッテリの蓄電量によって前記移動装置が到達可能な地点を算出する、
請求項
4記載の作業計画装置。
【請求項8】
前記バッテリの蓄電量、ならびに前記バッテリの劣化状態および温度に伴う容量変化の少なくともいずれかに基づいて、前記バッテリによって到達可能な地点を算出する、
請求項
7記載の作業計画装置。
【請求項9】
前記消費量予測部は、前記移動装置の重量と、前記移動装置が消費する消費量の実績値と、前記運転予定経路の情報と、に基づいて、前記運転予定経路における消費量を予測する、
請求項1
又は2に記載の作業計画装置。
【請求項10】
前記消費量予測部は、所定範囲の加速度を有する動作ごとの消費量の予測値を算出し、
前記予測値を、前記運転予定経路において予定される加速度の変化に従って積算することで、前記運転予定経路における消費量を予測する、
請求項1
又は2に記載の作業計画装置。
【請求項11】
前記消費量予測部は、所定範囲の移動速度を有する動作ごとの消費量の予測値を算出し、
前記予測値を、前記運転予定経路において予定される移動速度の変化に従って積算することで、前記運転予定経路における消費量を予測する、
請求項1
又は2に記載の作業計画装置。
【請求項12】
前記消費量予測部は、前記移動装置が行う動作の種類ごとの消費量の予測値を算出し、
前記予測値を、前記運転予定経路において予定される動作に従って積算することで、前記運転予定経路における消費量を予測する、
請求項1
又は2に記載の作業計画装置。
【請求項13】
前記動作の種類は、直進、旋回、上昇、下降、ホバリングおよび対象エリア外移動のいずれかを少なくとも含む、
請求項
12記載の作業計画装置。
【請求項14】
前記作業中断点における前記資源の補充要否を判定する補充判定部をさらに備える、
請求項1
又は2に記載の作業計画装置。
【請求項15】
前記資源の量は、前記移動装置が対象エリアに散布するために貯留する薬剤の貯留量であり、前記資源量取得部は前記薬剤の貯留量を取得する、
請求項1
又は2に記載の作業計画装置。
【請求項16】
前記消費量予測部は、対象エリアの面積と、前記薬剤に応じてあらかじめ定められた散布濃度と、に基づいて、対象エリア全体に散布される薬剤量を算出し、前記対象エリア全体に予定される運転予定経路長に対する、所定地点から前記運転予定経路上の各地点までの経路長の割合に基づいて、前記所定地点から前記運転予定経路上の各地点までの薬剤消費量を予測する、
請求項
15記載の作業計画装置。
【請求項17】
前記消費量予測部は、前記薬剤の噴出流量の実績値と、前記実績値が対応する運転経路と、に基づいて、前記運転予定経路における前記薬剤の消費量を予測する、
請求項
15に記載の作業計画装置。
【請求項18】
前記運転予定経路において予測される前記薬剤の消費量と、補充される前記薬剤の量と、に基づいて、前記薬剤の補充回数を算出する、
請求項
15に記載の作業計画装置。
【請求項19】
前記薬剤の補充において、前記運転予定経路の終点である作業終了点までに必要な薬剤量を算出し、使用者に通知する、
請求項
18記載の作業計画装置。
【請求項20】
前記移動装置に貯留されている前記薬剤の量と、前記移動装置の薬剤散布速度に基づいて、作業の開始から前記作業中断点に到達するまでの所要時間を算出する、
請求項
15に記載の作業計画装置。
【請求項21】
前記資源量取得部は、前記移動装置への前記薬剤の補充中において、前記移動装置に貯留されている薬剤の量を取得し、所定の薬剤量が前記移動装置に貯留されていると判定するとき、前記移動装置の作業開始を許可する、
請求項
15に記載の作業計画装置。
【請求項22】
前記移動装置が前記運転予定経路上を移動している状態において、前記移動装置を駆動するバッテリの貯留量が、基準地点から作業終了点までの残経路の予想消費電力に対して所定以上のとき、前記残経路における前記移動装置の移動速度を上昇させる、
請求項1
又は2に記載の作業計画装置。
【請求項23】
移動速度を変更する速度変更命令を受信可能であり、前記運転経路分割部は、前記速度変更命令を受信するとき前記運転予定経路を分割する処理を行う、
請求項1
又は2に記載の作業計画装置。
【請求項24】
作業計画装置により生成される作業中断点を受信して、前記作業中断点において作業を中断するドローンであって、
前記作業計画装置は、請求項1
又は2に記載の作業計画装置である、ドローン。
【請求項25】
作業計画装置と、
飛行制御部と、
を備えるドローンであって、
前記作業計画装置は、請求項1
又は2に記載の作業計画装置である、ドローン。
【請求項26】
保持される資源を減少させながら移動する移動装置の作業を計画する作業計画装置の制御方法であって、
前記移動装置の運転予定経路における資源の消費量を予測するステップと、
保持されている前記資源の量を取得するステップと、
前記消費量と、保持されている前記資源の量と、に基づいて、前記資源を前記移動装置に補充するために前記運転予定経路上において作業を中断する作業中断点を生成するステップと、
前記作業中断点から前記資源を補充する発着地点までの帰還経路において、前記移動装置が薬剤を散布することを決定するステップと、
を含む、作業計画装置の制御方法。
【請求項27】
保持される資源を減少させながら移動する移動装置の作業を計画する作業計画装置の制御プログラムであって、
前記移動装置の運転予定経路における資源の消費量を予測する命令と、
保持されている前記資源の量を取得する命令と、
前記消費量と、保持されている前記資源の量と、に基づいて、前記資源を前記移動装置に補充するために前記運転予定経路上において作業を中断する作業中断点を生成する命令と、
前記作業中断点から前記資源を補充する発着地点までの帰還経路において、前記移動装置が薬剤を散布することを決定する命令と、
をコンピュータに実行させる、作業計画装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、作業計画装置、作業計画装置の制御方法、および、その制御プログラム、ならびにドローンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの薬剤散布が挙げられる(たとえば、特許文献1)。欧米と比較して農地が狭い日本においては、有人の飛行機やヘリコプターではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
準天頂衛星システムやRTK-GPS(Real Time Kinematic - Global Positioning System)などの技術によりドローンが飛行中に自機の絶対位置をセンチメートル単位で正確に知ることができるようになったことで、日本において典型的な狭く複雑な地形の農地でも、人手による操縦を最小限として自律的に飛行し、効率的かつ正確に薬剤散布を行なえるようになっている。
【0004】
その一方で、農業用の薬剤散布向け自律飛行型ドローンについては安全性に対する考慮が十分とは言いがたいケースがあった。薬剤を搭載したドローンの重量は数10キログラムになるため、人の上に落下する等の事故が起きた場合に重大な結果を招きかねない。また、通常、ドローンの操作者は専門家ではないためフールプルーフの仕組みが必要であるが、これに対する考慮も不十分であった。今までに、人間による操縦を前提としたドローンの安全性技術は存在していたが(たとえば、特許文献2)、特に農業用の薬剤散布向けの自律飛行型ドローンに特有の安全性課題に対応するための技術は存在していなかった。
【0005】
また、ドローンが保持して飛行するバッテリの蓄電量や、薬剤散布用ドローンにおいて散布される薬剤の貯留量は、飛行と共に減少する。バッテリや薬剤といった減少する資源を積載している場合、ドローンは、積載される資源が所定以下になると、エリア内の作業を適宜中断し、発着地点に帰還して資源を補充する。ドローンの使用者は、帰還したドローンに資源を補充するにあたり、効率的に補充の準備を行うため帰還するタイミングをあらかじめ知っておく必要がある。また、使用者が補充作業を行わない場合も、使用者が作業予定をあらかじめ把握するために、帰還する回数やタイミングを知ることができるとよい。そこで、エリア内においてあらかじめ計画されている運転予定経路に基づいて、作業を中断する位置や、資源の補充回数をあらかじめ予測し、使用者に通知可能な作業計画装置が必要とされている。
【0006】
特許文献3には、マップ情報記憶部を参照して、重量計測部により計測された重量の増加量が大きいほど、現在地からより近い範囲で安全度合が最も高い安全地を自律飛行の到達目標地点として設定する無人飛行体が開示されている。
【0007】
特許文献4には、UAVの重量計測値に応じてUAVの飛行可能距離を算出し、飛行ルートに沿ってUAVを飛行させた場合に必要なバッテリ容量を算出する無人飛行体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許公開公報 特開2001-120151
【文献】特許公開公報 特開2017-163265
【文献】特許公開公報 特開2017-218141
【文献】特許公開公報 特開2018-39420
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
移動装置が移動する運転予定経路に基づいて、資源の補充計画をあらかじめ予測し、使用者に通知可能な作業計画装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る作業計画装置は、保持される資源を減少させながら移動する移動装置の、運転予定経路における資源の消費量を予測する消費量予測部と、保持されている前記資源の量を取得する資源量取得部と、前記消費量と、保持されている前記資源の量と、に基づいて、前記資源を前記移動装置に補充するために前記運転予定経路上において作業を中断する作業中断点を生成することで、前記運転予定経路を分割する運転経路分割部と、を備える。
【0011】
前記資源の量は、前記移動装置を駆動するバッテリの蓄電量であってもよい。
【0012】
前記作業中断点の個数に基づいて、前記運転予定経路を移動するために必要なバッテリの補充回数を算出するように構成されていてもよい。
【0013】
前記バッテリの蓄電量と、前記移動装置の速度に基づいて、作業の開始から前記作業中断点に到達するまでの所要時間を算出するように構成されていてもよい。
【0014】
前記移動装置に搭載される前記バッテリの蓄電量によって前記移動装置が到達可能な地点を算出するように構成されていてもよい。
【0015】
前記バッテリの蓄電量、ならびに前記バッテリの劣化状態および温度に伴う容量変化の少なくともいずれかに基づいて、前記バッテリによって到達可能な地点を算出するように構成されていてもよい。
【0016】
前記消費量予測部は、前記移動装置の重量と、前記移動装置が消費する消費量の実績値と、前記運転予定経路の情報と、に基づいて、前記運転予定経路における消費量を予測するように構成されていてもよい。
【0017】
前記消費量予測部は、所定範囲の加速度を有する動作ごとの消費量の予測値を算出し、前記予測値を、前記運転予定経路において予定される加速度の変化に従って積算することで、前記運転予定経路における消費量を予測するように構成されていてもよい。
【0018】
前記消費量予測部は、所定範囲の移動速度を有する動作ごとの消費量の予測値を算出し、前記予測値を、前記運転予定経路において予定される移動速度の変化に従って積算することで、前記運転予定経路における消費量を予測するように構成されていてもよい。
【0019】
前記消費量予測部は、前記移動装置が行う動作の種類ごとの消費量の予測値を算出し、前記予測値を、前記運転予定経路において予定される動作に従って積算することで、前記運転予定経路における消費量を予測するように構成されていてもよい。
【0020】
前記動作の種類は、直進、旋回、上昇、下降、ホバリングおよび対象エリア外移動のいずれかを少なくとも含むように構成されていてもよい。
【0021】
前記作業中断点における前記資源の補充要否を判定する補充判定部をさらに備えるように構成されていてもよい。
【0022】
前記資源の量は、前記移動装置が対象エリアに散布するために貯留する薬剤の貯留量であり、前記資源量取得部は前記薬剤の貯留量を取得するように構成されていてもよい。
【0023】
前記消費量予測部は、対象エリアの面積と、前記薬剤に応じてあらかじめ定められた散布濃度と、に基づいて、対象エリア全体に散布される薬剤量を算出し、前記対象エリア全体に予定される運転予定経路長に対する、所定地点から前記運転予定経路上の各地点までの経路長の割合に基づいて、前記所定地点から前記運転予定経路上の各地点までの薬剤消費量を予測するように構成されていてもよい。
【0024】
前記消費量予測部は、前記薬剤の噴出流量の実績値と、前記実績値が対応する運転経路と、に基づいて、前記運転予定経路における前記薬剤の消費量を予測するように構成されていてもよい。
【0025】
前記運転予定経路において予測される前記薬剤の消費量と、補充される前記薬剤の量と、に基づいて、前記薬剤の補充回数を算出するように構成されていてもよい。
【0026】
前記薬剤の補充において、前記運転予定経路の終点である作業終了点までに必要な薬剤量を算出し、使用者に通知するように構成されていてもよい。
【0027】
前記移動装置に貯留されている前記薬剤の量と、前記移動装置の薬剤散布速度に基づいて、作業の開始から前記作業中断点に到達するまでの所要時間を算出するように構成されていてもよい。
【0028】
前記資源量取得部は、前記移動装置への前記薬剤の補充中において、前記移動装置に貯留されている薬剤の量を取得し、所定の薬剤量が前記移動装置に貯留されていると判定するとき、前記移動装置の作業開始を許可するように構成されていてもよい。
【0029】
前記作業中断点から前記資源を補充する発着地点までの帰還経路において、前記移動装置が前記薬剤を散布することを決定するように構成されていてもよい。
【0030】
前記作業中断点から前記資源を補充する発着地点までの帰還経路において、薬剤が既に散布されているか否かを判定し、未散布の経路がある場合は、当該未散布の経路において前記薬剤を散布することを決定する帰還散布計画部をさらに備えるように構成されていてもよい。
【0031】
前記帰還散布計画部は、前記帰還経路において散布が予想される薬剤の重量に基づいて、搭載されているバッテリにより前記移動装置が到達可能な地点を算出し、前記到達可能な地点に基づいて前記帰還経路を生成するように構成されていてもよい。
【0032】
前記移動装置が前記運転予定経路上を移動している状態において、前記移動装置を駆動するバッテリの貯留量が、基準地点から作業終了点までの前記残経路の予想消費電力に対して所定以上のとき、前記残経路における前記移動装置の移動速度を上昇させるように構成されていてもよい。
【0033】
移動速度を変更する速度変更命令を受信可能であり、前記運転経路分割部は、前記速度変更命令を受信するとき前記運転予定経路を分割する処理を行うように構成されていてもよい。
【0034】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係るドローンは、作業計画装置により生成される作業中断点を受信して、前記作業中断点において作業を中断するドローンであって、前記作業計画装置は、上述のいずれかに記載の作業計画装置である。
【0035】
上記目的を達成するため、本発明の別の観点に係るドローンは、作業計画装置と、飛行制御部と、
を備えるドローンであって、前記作業計画装置は、上述のいずれかに記載の作業計画装置である。
【0036】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る作業計画装置の制御方法は、保持される資源を減少させながら移動する移動装置の作業を計画する作業計画装置の制御方法であって、前記移動装置の運転予定経路における資源の消費量を予測するステップと、保持されている前記資源の量を取得するステップと、前記消費量と、保持されている前記資源の量と、に基づいて、前記資源を前記移動装置に補充するために前記運転予定経路上において作業を中断する作業中断点を生成するステップと、を含む。
【0037】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る作業計画装置の制御プログラムは、保持される資源を減少させながら移動する移動装置の作業を計画する作業計画装置の制御プログラムであって、前記移動装置の運転予定経路における資源の消費量を予測する命令と、保持されている前記資源の量を取得する命令と、前記消費量と、保持されている前記資源の量と、に基づいて、前記資源を前記移動装置に補充するために前記運転予定経路上において作業を中断する作業中断点を生成する命令と、をコンピュータに実行させる。
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、CD-ROMなどのコンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0038】
移動装置が移動する運転予定経路に基づいて、資源の補充計画をあらかじめ予測し、使用者に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本願発明に係るドローンの実施形態を示す平面図である。
【
図6】上記ドローンが有する薬剤散布システムの全体概念図である。
【
図7】上記ドローンの制御機能を表した模式図である。
【
図8】上記ドローンが、運転予定経路を飛行する様子を示す概念図である。
【
図9】上記ドローンが有する、作業計画装置の機能ブロック図である。
【
図10】上記作業計画装置がバッテリを交換する作業中断点を決定するフローチャートである。
【
図11】上記作業計画装置が薬剤を補充する作業中断点を決定するフローチャートである。
【
図12】上記作業計画装置が有する帰還散布計画部が、帰還経路を決定するフローチャートである。
【
図13】上記作業計画装置が有する飛行計画変更部が、バッテリ蓄電量の残量に基づいて残経路の飛行速度を変更するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0041】
本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。
【0042】
図1乃至
図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、バッテリ消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の本体110からのび出たアームにより本体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は
図1における紙面下向きを進行方向とする。
【0043】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。なお、一部の回転翼101-3b、および、モーター102-3bが図示されていないが、その位置は自明であり、もし左側面図があったならば示される位置にある。
図2、および、
図3に示されるように、ローターが異物と干渉しないよう設けられたプロペラガードを支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0044】
薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、薬剤を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0045】
薬剤タンク104は散布される薬剤を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、薬剤タンク104と各薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該薬剤ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、薬剤をノズルから吐出するための手段である。
【0046】
図6に本願発明に係るドローン100の薬剤散布用途の実施例を使用したシステムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。操作器401は、使用者402の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作機(図示していない)を使用してもよい(非常用操作機は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい)。操作器401とドローン100はWi-Fi等による無線通信を行う。
【0047】
圃場403は、ドローン100による薬剤散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の障害物が存在する場合もある。
【0048】
基地局404は、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK-GPS基地局としても機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっていてもよい(Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GPS基地局が独立した装置であってもよい)。営農クラウド405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。営農クラウド405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行ってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0049】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点406から離陸し、圃場403に薬剤を散布した後に、あるいは、薬剤補充や充電等が必要になった時に発着地点406に帰還する。発着地点406から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(進入経路)は、営農クラウド405等で事前に保存されていてもよいし、使用者402が離陸開始前に入力してもよい。
【0050】
図7に本願発明に係る薬剤散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0051】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、営農クラウド405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0052】
バッテリ502は、フライトコントローラー501、および、ドローンのその他の構成要素に電力を供給する手段であり、充電式であってもよい。バッテリ502はヒューズ、または、サーキットブレーカー等を含む電源ユニットを介してフライトコントローラー501に接続されている。バッテリ502は電力供給機能に加えて、その内部状態(蓄電量、積算使用時間等)をフライトコントローラー501に伝達する機能を有するスマートバッテリであってもよい。
【0053】
フライトコントローラー501は、Wi-Fi子機503を介して、さらに、基地局404を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、Wi-Fiによる通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えている。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、GPSモジュール504により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。GPSモジュール504は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのGPSモジュール504は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0054】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段(さらに、加速度の積分により速度を計算する手段)である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0055】
流量センサー510は薬剤の流量を測定するための手段であり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。マルチスペクトルカメラ512は圃場403を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。障害物検知カメラ513はドローン障害物を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きがマルチスペクトルカメラ512とは異なるため、マルチスペクトルカメラ512とは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。障害物接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の障害物に接触したことを検知するためのセンサーである。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。薬剤注入口センサー517は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報をWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0056】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0057】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。表示手段は、LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。Wi-Fi子機503は操作器401とは別に、たとえば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピューター等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi-Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0058】
ドローン100は、対象エリア内を運転予定経路に沿って飛行し、対象エリア上空において適宜の作業を行う。対象エリアは例えば圃場であり、ドローン100は、圃場を監視したり圃場に薬剤散布を行ったりする。しかし、ドローン100の移動につれて減少する資源、すなわちバッテリ502の蓄電量や薬剤の貯留量には搭載上限があるため、ドローン100は適宜作業を中断して資源を補充する必要がある。
【0059】
図8に示すように、発着地点406を出発したドローン100は、圃場403内に設定されている運転予定経路403rの始点、すなわち作業開始点30に到達する。ドローン100は、作業開始点30から、運転予定経路403rに沿って圃場403内を飛行する。ドローン100は、運転予定経路403r上に生成されている作業中断点31に到達すると、運転予定経路403r上の作業を中断し、帰還経路31aを通って発着地点406に帰還する。発着地点406において資源の補充が行われると、ドローン100は発着地点406を離陸し、作業中断点31に戻ると、運転予定経路403rに沿う飛行を再開する。本図においては、ドローン100は作業中断点32において再度作業を中断し、帰還経路32aを通って発着地点406に帰還して資源の補充を行う。ドローン100は、運転予定経路403rの終点である作業終了点40に到達すると、発着地点406に帰還し、運転予定経路403rにおける作業を完了する。
【0060】
図9に示すように、ドローン100は、運転予定経路403rに基づいて、作業中断点の位置や資源の補充回数をあらかじめ予測し、使用者に通知する作業計画装置20を有する。作業計画装置20は、ドローン100が飛行する運転予定経路403rの情報を有しており、運転予定経路403r上において適宜作業を中断し、当該資源を補充する計画を生成する。この構成によれば、使用者402は、補充する資源を必要な量だけあらかじめ準備することができるため、交換にかかる時間を短縮し、作業効率を向上させることができる。
【0061】
なお、作業計画装置20は、ドローン100と通信可能に構成されているドローン100とは別の構成であってもよく、例えば営農クラウド405上にあってもよい。ドローン100は、移動装置の例である。
【0062】
運転予定経路403rは、発着地点406から離陸し、対象エリア内を移動して所定の作業を行い、発着地点406に帰還するために計画される経路であり、ホバリング、加速運動、等速運動、減速運動が組み合わされ、ひいては直進、旋回、上昇、下降などの動作が連結されることにより構成されている。運転予定経路403rは、ドローン100が有する構成により生成されてもよいし、ドローン100と有線又は無線で接続される他の構成、例えば営農クラウド405上の構成により生成され、作業計画装置20が受信するように構成されていてもよい。
【0063】
作業計画装置20は、バッテリ補充計画部21と、薬剤補充計画部22と、帰還散布計画部23と、飛行計画変更部24と、通信処理部25と、を備える。
【0064】
バッテリ補充計画部21は、バッテリ502の交換のためにドローン100が作業を中断する作業中断点の位置およびバッテリ502の交換回数を算出する機能部である。
【0065】
バッテリ補充計画部21は、消費電力予測部211と、蓄電量取得部212と、運転経路分割部213と、バッテリ個数算出部214と、を有する。消費電力予測部211は、消費量予測部の例であり、蓄電量取得部212は、資源量取得部の例である。
【0066】
消費電力予測部211は、運転予定経路403rにおける消費電力を予測する機能部である。消費電力予測部211は、重量測定部211a、消費電力実績値取得部211b、運転経路取得部211c、および電力消費率算出部211dを有する。
【0067】
重量測定部211aは、ドローン100の総重量を測定する機能部である。重量測定部211aは、例えばドローン100の高度が変化しない状態において回転翼101が発揮する高さ方向の推力に基づいて、ドローン100の総重量を推定する。ドローン100の回転翼101が発揮する高さ方向の推力は、ドローン100の高度が変化しない状態において、ドローン100が受ける重力加速度と釣り合っているためである。
【0068】
また、重量測定部211aは、ドローン100の総重量のうち薬剤量のみが重量が変化し得るとみなして、薬剤量を推定した上でその他の構成の重量を加算することでドローン100の総重量を測定してもよい。また、重量測定部211aは、例えば薬剤タンク104内の液面高さを推定する機能を有していてもよい。重量測定部211aは、薬剤タンク104内に配置される液面計又は水圧センサー等を用いて薬剤の重量を推定してもよい。ドローン100が作業中の場合、重量測定部211aは、流量センサー510によって測定される薬剤タンク104からの吐出流量を積算して薬剤吐出量を求め、当初積載された薬剤量から薬剤吐出量を減算することにより、薬剤タンク104の重量を推定してもよい。本構成によれば、ドローン100の飛行状態に関わらず薬剤タンク104の重量を推定することができる。
【0069】
さらに、重量測定部211aは、着陸状態において、地面からの抗力に基づいて重量を測定する構成であっても、本発明の技術的範囲に含む。
【0070】
ドローン100の総重量が大きいほど、ドローン100の飛行に伴う消費電力は増大するため、ドローン100の総重量を考慮することで、より正確な消費電力予測が可能である。
【0071】
消費電力実績値取得部211bは、当該ドローン100の消費電力の実績値を取得する機能部である。消費電力の実績値とは、離陸直後にホバリングをしているドローン100においては、当該ホバリングにおける消費電力である。また、飛行中のドローン100においては、当該ドローン100が飛行する運転経路における消費電力を指す。飛行中のドローン100においては、発着地点406から消費電力の実績値の取得を行う地点までの消費電力であってもよいし、所定範囲の時間又は経路内における消費電力でもよい。ドローン100が飛行する圃場は気圧や風速が変化するため、ドローン100の消費電力を机上の計算により正確に算出することは困難である。そこで、消費電力を予測するにあたり過去の実績値を考慮することで、より正確な消費電力予測が可能である。
【0072】
運転経路取得部211cは、消費電力実績値取得部211bにより取得される消費電力の実績値に対応する運転経路を取得する機能部である。例えば、離陸直後にホバリングをしているドローン100においては、運転経路取得部211cに取得される運転経路はホバリングのみである。圃場403で作業中のドローン100においては、発着地点406から運転経路の取得を行う地点までにおけるすべての運転経路であってもよいし、所定範囲の時間における運転経路であってもよい。また、消費される電力が異なる動作として、加速移動、等速移動、および減速移動の動作を含むように、運転経路を選択してもよい。さらに、直進、旋回、上昇、下降、ホバリング又は圃場外移動等、それぞれ消費される電力が異なる所定の動作を含むように、運転経路を選択してもよい。なお、旋回は、ドローン100がその場で機首の向きを変える動作、および機首の向きを変えながらドローン100の位置が移動する動作を含む。旋回中の移動は、機首を進行方向に向けて移動する動作の他、後退する動作であってもよい。
【0073】
電力消費率算出部211dは、消費電力の実績値と、当該実績値に対応する運転経路に基づいて、ドローン100の動作に対する電力消費率を算出する機能部である。電力消費率算出部211dは、ドローン100の消費電力の実績値を運転経路の移動距離又は移動時間で除することにより、所定距離又は所定時間あたりの電力消費率を算出することができる。
【0074】
電力消費率算出部211dは、所定範囲の加速度を有する動作における消費電力の実績値と、当該実績値に対応する運転経路に基づいて、当該加速度を有する動作における電力消費率を算出してもよい。より具体的には、例えば、ドローン100の動作を加速度に応じて大別し、正の加速度をもつ移動を加速移動、負の加速度を持つ移動を減速移動、加速度が略ゼロの移動を等速移動とした上で、各移動を行った際の消費電力の実績値を求め、加速移動、減速移動および等速移動それぞれの電力消費率を算出してもよい。なお、加速度を大別する個数および各閾値はこれに限られるものではなく、例えば加速度を2以下又は4以上の段階に大別してそれぞれの消費電力を求めてもよい。ドローン100の消費電力は、特に加速度に応じて異なるため、加速度に応じた消費電力の実績値を求めることで、消費電力をより正確に予測することができる。
【0075】
また、電力消費率算出部211dは、所定範囲の移動速度を有する動作における消費電力の実績値と、当該実績値に対応する運転経路に基づいて、当該移動速度を有する動作における電力消費率を算出してもよい。ドローン100の消費電力は、移動速度に応じて異なるため、速度に応じた消費電力の実績値を求めることで、消費電力をより正確に予測することができる。
【0076】
また、電力消費率算出部211dは、ドローン100が行う動作の種類ごとの消費電力の予測値を算出してもよい。動作の種類とは、ドローン100が高頻度で行う加減速の動作の組み合わせ、すなわち直進、旋回、上昇、下降、ホバリングおよび圃場外移動の少なくともいずれかを含んでいてもよい。運転予定経路403rは、各動作を連結することにより構成されているため、電力消費率算出部211dが動作の種類ごとに予測値を算出することにより、後述する運転経路分割部213は、運転予定経路403rとして予定される動作に従って積算することで、運転予定経路403r上の各点における電力消費量の積算値を予測することができる。電力消費率算出部211dがより多くの種類の動作に対する電力消費率を算出することで、運転経路分割部213は、運転予定経路403rの電力消費量をより正確に予測可能である。
【0077】
電力消費率算出部211dは、加速移動および減速移動における正又は負の加速度の値に応じて電力消費率を算出してもよい。また、電力消費率算出部211dは、旋回の種類に応じて電力消費率を算出してもよい。旋回の種類は、ドローン100がその場で機首の向きを変える動作、および機首の向きを変えながらドローン100の位置が移動する動作がある。旋回中の移動は、機首を進行方向に向けて移動する動作の他、後退する動作であってもよい。また、電力消費率算出部211dは、旋回角度に応じて電力消費率を算出してもよい。なお、本実施形態では、旋回は機首の向きを変えるヨー回転を想定しているが、ロール回転又はピッチ回転を含んでもよい。
【0078】
また、電力消費率算出部211dは、ある所定の動作の消費電力率から、他の動作の消費電力率を推定する機能を有していてもよい。具体的には、例えばホバリング中の電力消費率を所定の計算式に代入することによって、加速移動、減速移動、等速移動としての直進、旋回、上昇、下降又は圃場外移動における電力消費率を推定してもよい。この構成によれば、ある種類の動作における消費電力の実績値のみしか取得できない場合においても、運転予定経路403rにおける各種動作の電力消費率を推定することができる。
【0079】
蓄電量取得部212は、バッテリ502に蓄電されている蓄電量を取得する機能部である。バッテリ502の蓄電量は、資源の補充なしにドローン100を動作可能なエネルギー量を指すものとする。バッテリ502は、一次電池、二次電池、又は燃料電池等どのような形式のエネルギー供給機構であってもよい。
【0080】
蓄電量取得部212はバッテリ502の蓄電量を計測する別の構成から情報を取得してもよいし、蓄電量取得部212自身がバッテリ502の蓄電量を計測してもよい。
【0081】
運転経路分割部213は、圃場内の運転予定経路403r上においてドローン100が資源を補充するために作業を中断する作業中断点を生成し、運転予定経路403rを作業中断点により区切られる複数の飛行ルートに分割する機能部である。資源の補充とは、バッテリ502の交換であってもよいし、バッテリ502の充電であってもよい。また、薬剤の補充であってもよく、搭載される薬剤タンクを、薬剤が十分貯留されている薬剤タンクに交換する作業であってもよい。
【0082】
運転経路分割部213は、運転予定経路403rとして予定される動作に従って、動作の種類ごとに求められた消費電力の予測値を積算する。運転経路分割部213は、予定される動作に対応する消費電力の予測値を作業開始点30又は作業中断点31,32から作業終了点40に向かって順次積算する。また、運転経路分割部213は、バッテリ502の蓄電量に基づいて到達可能な地点を算出し、当該地点を作業中断点とする。
【0083】
ドローン100は、作業中断点31,32で作業を中断すると、発着地点406まで帰還し、発着地点406において資源の補充を行う。そのため、運転経路分割部213は、発着地点406まで帰還可能な蓄電量を温存して、作業中断点31,32を生成する。なお、ドローン100は、発着地点406まで帰還せず、作業中断点31,32で資源の補充を行う構成であってもよい。
【0084】
また、運転経路分割部213は、バッテリ502の蓄電量に加えて、バッテリ502の劣化状態や温度に伴う容量変化の少なくともいずれかを考慮して到達可能地点を算出してもよい。この構成によれば、バッテリ502によって到達可能な地点を、より正確に算出することができる。この構成を実現するために、作業計画装置20は、バッテリ502の劣化状態や温度を測定する機能部、又はバッテリ502の劣化状態や温度を他の構成から取得する機能部を有していてもよい。
【0085】
運転経路分割部213は、圃場403内での作業で動作する各構成の消費電力を考慮して、中断作業点を生成してもよい。例えば、圃場403内で薬剤散布を行う場合は、ポンプ106の消費電力を積算する。また、圃場403内で撮影を行う場合は、マルチスペクトルカメラ512等の撮像可能な構成の消費電力を積算してもよい。
【0086】
バッテリ個数算出部214は、ドローン100が運転予定経路403rにおける作業を完了するために必要なバッテリの個数を算出する機能部である。バッテリ個数算出部214は、作業中断点の個数に基づいてバッテリの個数を算出してもよい。予備のバッテリ個数は、作業中断点の個数と同数である。算出されるバッテリの個数は、作業計画装置20が有する通信処理部25を通じて使用者402に通知される。バッテリ個数算出部214は、バッテリの個数に代えて、バッテリの充電回数を算出する機能部であってもよい。また、燃料電池における燃料タンクの個数であってもよい。
【0087】
バッテリ個数算出部214は、バッテリの交換を行う作業中断点に到達するまでの所要時間を計算し、通信処理部25を通じて使用者402に通知するように構成されていてもよい。所要時間を通知する構成によれば、使用者402があらかじめバッテリ交換の準備を行うことができるので、作業の利便性が高まる。
【0088】
運転経路分割部213により求められる作業中断点31,32の位置、およびバッテリ個数算出部214により求められるバッテリ502の個数は、通信処理部25を介して使用者402に通知される。通知は、操作器401の画面上への表示の他、音による通知であってもよい。また、ドローン100が有する構成を用いて、ドローン100自体が使用者402に通知を行う構成であってもよい。
【0089】
薬剤補充計画部22は、運転予定経路403rにおける薬剤散布作業を完了するために必要な、ドローン100に貯留される薬剤の補充のために作業を中断する地点、および補充回数を算出する機能部である。
【0090】
薬剤補充計画部22は、消費薬剤予測部221と、貯留量取得部222と、補充判定部223と、補充回数算出部224と、を有する。消費薬剤予測部221は消費量予測部の別の例であり、貯留量取得部222は資源量取得部の別の例である。
【0091】
消費薬剤予測部221は、運転予定経路403rにおいて消費される薬剤量を予測する機能部である。消費薬剤予測部221は、消費薬剤実績値算出部221aおよび薬剤消費率算出部221bを有する。
【0092】
消費薬剤実績値算出部221aは、当該ドローン100の薬剤消費量の実績値を取得する機能部である。薬剤消費量の実績値とは、圃場403で作業中のドローン100においては、当該ドローン100が飛行する運転経路中における薬剤消費量を指す。また、例えば離陸直後にホバリングをしているドローン100など、当該飛行中の実績値を取得できない場合においては、当該飛行前に行った薬剤散布の実績値であってもよい。薬剤消費量を予測するにあたり過去の実績値を考慮することで、より正確な消費量予測が可能である。
【0093】
薬剤消費率算出部221bは、ドローン100の薬剤消費率を算出する機能部である。ある圃場に散布される薬剤の散布量は、当該圃場の面積と、薬剤の種類によりあらかじめ定められた面積当たりの散布濃度により求めることができる。そこで、全体の運転予定経路長に対する所定地点から運転予定経路403r上の点までの経路長の割合から、散布された薬剤量を算出する。当該散布された薬剤量と、運転された経路長から、薬剤消費率を算出することができる。また、作業開始点30又は作業中断点31,32から運転予定経路403r上の各地点までの薬剤消費量の積算値を予測することができる。
【0094】
薬剤消費率算出部221bは、薬剤消費量の実績値と、実績値に対応する運転経路に基づいて、ドローン100の動作に対する薬剤消費率を算出してもよい。運転経路は、運転経路取得部211cにより取得される情報を用いる。薬剤消費率算出部221bは、ドローン100が行う動作の種類ごとの消費量の予測値を算出してもよい。動作の種類とは、例えば直進および旋回の少なくともいずれかを含む。後述する補充判定部223は、薬剤消費率算出部221bにより算出される動作の種類ごとの予測値を、運転予定経路403rとして予定される動作に従って積算することで、作業開始点30又は作業中断点31,32から運転予定経路403r上の各地点までの薬剤消費量の積算値を予測することができる。
【0095】
薬剤消費率算出部221bは、所定範囲の加速度を有する動作における薬剤消費量の実績値と、当該実績値に対応する運転経路に基づいて、当該加速度を有する動作における薬剤消費量を算出してもよい。より具体的には、例えば、ドローン100の動作を加速度に応じて大別し、正の加速度をもつ移動を加速移動、負の加速度を持つ移動を減速移動、加速度が略ゼロの移動を等速移動とした上で、各移動を行った際の薬剤消費量の実績値を求め、加速移動、減速移動および等速移動それぞれの薬剤消費率を算出してもよい。また、薬剤消費率算出部221bは、所定範囲の移動速度を有する動作における薬剤消費量の実績値と、当該実績値に対応する運転経路に基づいて、当該移動速度を有する動作における薬剤消費率を算出してもよい。
【0096】
貯留量取得部222は、薬剤タンク104における薬剤の現在の貯留量を推定する機能部である。貯留量取得部222は、重量測定部211aにより測定されるドローン100の重量から貯留量を推定してもよい。また、貯留量取得部222は、例えば薬剤タンク104内の液面高さを推定する機能を有していてもよい。貯留量取得部222は、薬剤タンク104内に配置される液面計又は水圧センサー等を用いて貯留量を推定してもよい。ドローン100が作業中の場合は、貯留量取得部222は、流量センサー510によって測定される薬剤タンク104からの吐出流量を積算して薬剤吐出量を求め、当初積載された薬剤量から薬剤吐出量を減算することにより、貯留量を推定してもよい。
また、貯留量取得部222は、飛行中の他、薬剤の補充中であっても薬剤の貯留量を推定することができる。貯留量取得部222は、薬剤タンク104内の薬剤量が後述する必要薬剤量以上となっているとき、ドローン100の離陸を許可するように構成されていてもよい。この構成によれば、必要薬剤量の注入を確実に行ってから離陸することができる。また、必要薬剤量に関わらず満タンなど所定量の注入を検知して離陸許可を行う構成に比べて、必要な量のみが注入されれば離陸することができるので、薬剤を過剰に注入することがない。
【0097】
補充判定部223は、バッテリ502の蓄電量に基づいて生成される各作業中断点において、薬剤の補充要否を判定する機能部である。具体的には、補充判定部223は、各作業中断点において薬剤タンク104内に貯留される薬剤量を予測した上で、次の作業中断点又は作業終了点40までに薬剤の残量が0又は所定以下になるか否かを判定する。次の作業中断点又は作業終了点40までに薬剤の残量が0又は所定以下になる場合は、当該作業中断点で薬剤の補充が必要であると判定する。バッテリ502の交換と同時に薬剤を補充することで、バッテリ502の交換と薬剤の補充を別々のタイミングで行う構成に比べて、作業の中断回数を減らすことができる。また、この構成では、薬剤の貯留量が次の作業中断点まで散布可能である場合は、当該作業中断点における薬剤補充を行わない。したがって、すべての作業中断点で薬剤を補充する構成に比べて、薬剤の補充回数を減らすことができる。
【0098】
補充判定部223は、作業中断点で補充される薬剤の量に基づいて、当該作業中断点の次の作業中断点における薬剤補充の要否を判定する。補充される薬剤の量に応じて、散布可能な地点が決定されるためである。補充される薬剤の量は、あらかじめ記憶されている所定量としてもよい。また、補充判定部223は、次の作業中断点31,32又は作業終了点40までに必要な薬剤の量(以下、「必要薬剤量」ともいう。)を算出し、使用者402に通知してもよい。この構成によれば、薬剤を必要な量だけ補充することができるため、不要な量の薬剤を投入することによる、作業終了後に薬剤を排出する手間を軽減することができる。また、不要な量の薬剤の運搬をしなくて済むため、消費電力を節約することができる。
【0099】
なお、薬剤補充計画部22は、薬剤を補充するための作業中断点を別途生成する機能部を有していてもよい。この構成は、薬剤タンク104内の貯留量が十分少なくなったときにのみ薬剤を補充できるので、薬剤の補充回数を減らしたい場合には有用である。また、この構成によれば、特にバッテリ502の蓄電量に基づいて生成される作業中断点で薬剤を補充しても、次の作業中断点又は作業終了点40までに薬剤が不足するような場合であっても、適切なタイミングで薬剤を補充することができる。
【0100】
補充回数算出部224は、ドローン100が運転予定経路403rにおける作業を完了するために必要な薬剤の補充回数を算出する機能部である。補充回数算出部224は、補充判定部233により薬剤の補充が必要であると判断される作業中断点の個数に基づいて、補充回数を算出する。また、薬剤を補充するための作業中断点が別途生成される場合は、その数を加算する。算出される薬剤の補充回数は、バッテリ502の個数を通知する場合と同様、通信処理部25を通じて使用者402に通知される。補充回数算出部224は、薬剤の補充を行う作業中断点に到達するまでの所要時間を計算し、通信処理部25を通じて使用者402に通知するように構成されていてもよい。所要時間を通知する構成によれば、使用者402があらかじめ薬剤補充の準備を行うことができるので、作業の利便性が高まる。
【0101】
帰還散布計画部23は、作業中断点31,32から発着地点406までの経路、すなわち帰還経路において、薬剤を散布するか否かを決定する機能部である。ドローン100は、作業中断点31,32から圃場403の端部、例えば作業開始点30又は作業終了点40まで移動し、圃場403外に出て発着地点406まで移動する。作業開始点30又は作業終了点40から発着地点406までの経路は、作業の中断に関わらず飛行が想定されている経路であるため、既に想定されている経路で圃場外を飛行することにより、別の経路を飛行する場合と比較して、使用者に安心感を与えることができる。
【0102】
ドローン100は、圃場403内においては、少なくとも部分的に運転予定経路403rに沿って移動して、作業開始点30又は作業終了点40に移動する。そこで、帰還散布計画部23は、帰還経路31a,32a(
図8参照)における薬剤の散布状況を参照し、薬剤が未散布の経路がある場合は、当該未散布の経路において薬剤を散布することを決定する。この構成によれば、帰還のための時間を薬剤散布にあてることができるため、総作業時間を短縮することができる。なお、薬剤の散布状況の参照を行わずに帰還経路での散布を決定する態様であっても、本発明の技術的範囲に含む。散布状況の参照を行わないことで、計算負担を軽減し、ひいては作業時間を短縮することができる。
【0103】
帰還散布計画部23は、帰還経路上に薬剤が未散布の経路がある場合、帰還経路において予想される薬剤の散布重量に基づいて、帰還経路を変更する機能を有していてもよい。薬剤が散布される場合、ドローン100の総重量が移動と共に減少するため、薬剤散布を行わずに帰還する場合に比べて少ない消費電力で飛行可能である。言い換えれば、バッテリ502でより長い距離を飛行可能である。そこで、帰還散布計画部23は、薬剤散布によって減少する総重量を考慮して、より長い経路の帰還経路を生成してもよい。特に、圃場403内の経路を長くし、より多くの薬剤を散布しながら帰還するように構成するとよい。この構成によれば、バッテリ502の蓄電量を限界まで消費して帰還することができる。
【0104】
飛行計画変更部24は、ドローン100が移動している状態において、ドローン100の飛行速度を変更する機能部である。例えば、飛行計画変更部24は、バッテリ502の蓄電量が、ドローン100が現在いる地点から作業終了点40までの残経路の予想消費電力に対して所定以上のとき、すなわちバッテリ502の蓄電量に余剰があるとき、残経路におけるドローン100の移動速度を上昇させる。残経路におけるドローン100の移動速度は、バッテリ502の蓄電量に応じて決定される。具体的には、蓄電量が多いほど、残経路の移動速度は速い。ドローン100が移動速度を上昇させることで、ドローン100の作業時間を短縮することができる。すなわち、本構成によれば、バッテリ502の蓄電量を残存させることなくドローン100を最大限動作させて作業を行い、作業を効率化することができる。
【0105】
なお、ドローン100には最大飛行速度が規定されているため、残経路におけるドローン100の移動速度は、ドローン100の最大飛行速度を超えない範囲で、残経路の経路長に基づいて決定される。言い換えれば、残経路における消費電力の予測値は、ドローン100の移動速度と、残経路の経路長に基づいて決定される。
【0106】
また、飛行計画変更部24は、圃場外移動の速度を上昇させるように構成されていてもよい。このとき、使用者402に別途の通知を行うことで、想定外の飛行を不安に感じる使用者402を、より安心させることができる。
【0107】
また、飛行計画変更部24は、使用者402からの速度変更命令に基づいて、ドローン100の移動速度を変更することが可能であってもよい。速度変更命令は、例えば操作器401を介して作業計画装置20に伝達される。例えば、ドローン100が通常の計画通りの速度で移動および散布する「ノーマルモード」と、ノーマルモードよりも速い速度で移動および散布する「スピード散布モード」とが、使用者402からの命令に基づいて切替可能に構成されていてもよい。このモードの切替は、離陸前、離陸直後のホバリング状態、圃場外移動、および圃場内作業中のいずれでも可能である。モードの切替が行われると、バッテリ補充計画部21および薬剤補充計画部22は、補充計画の再計算を行い、運転経路分割部213による運転予定経路403rの分割処理や、補充判定部223による補充要否の判定を行う。
【0108】
●作業計画装置がバッテリを交換する作業中断点を決定するフローチャート
作業計画装置20は、例えば、ドローン100がホバリングしているときに、作業中断点を決定する一連の工程を開始する。一連の工程は、発着地点406において離陸した直後のホバリング中に行う他、運転予定経路403r上の飛行中におけるホバリング中に行う場合もある。また、バッテリ502による到達可能地点が変化するような要因が生じたことを検知して、ホバリングを行い、作業中断点の見直しを行うように構成されていてもよい。到達可能地点が変化するような要因は、例えば強風の発生や気圧低下等であってもよい。また、ホバリングに代えて、着陸した状態で作業中断点を決定する工程を行ってもよい。
【0109】
図10に示すように、まず、重量測定部211aは、ドローン100の総重量を測定する(S11)。総重量の測定は、前述したとおり、ホバリング中にドローン100の回転翼101が発揮する高さ方向の推力が重力加速度と釣り合っていることを利用してもよいし、薬剤タンク104内の薬剤貯留量に基づいてもよい。また、着陸状態において、地面からの抗力に基づいて重量を測定する構成であっても、本発明の技術的範囲に含む。
【0110】
消費電力実績値取得部211bは、当該ドローン100の消費電力の実績値を取得する(S12)。
【0111】
運転経路取得部211cは、取得される消費電力の実績値に対応する運転経路を取得する(S13)。
【0112】
なお、ステップS11乃至S13は順不同であり、同時に行われてもよい。
【0113】
電力消費率算出部211dは、消費電力の実績値、および実績値に対応する運転経路に基づいて、当該ドローン100の加速度又は速度に応じて、もしくは動作の種類ごとに電力消費率を算出する(S14)。
【0114】
蓄電量取得部212は、ドローン100に現在搭載されているバッテリ502の蓄電量を取得する(S15)。なお、ステップS15は、ステップS11乃至S14の後に行われてもよいし、ステップS11乃至S14の前、又はステップS11乃至S14と同時に行われてもよい。
【0115】
運転経路分割部213は、電力消費率およびバッテリ502の蓄電量に基づいて、運転予定経路403r上においてドローン100が到達可能な地点を推定する(S16)。次いで、運転経路分割部213は、当該バッテリ502の蓄電量により運転予定経路403rの作業終了点40まで到達可能か否かを判定する(S17)。
【0116】
バッテリ502の蓄電量では作業終了点40まで到達することができないと判定される場合、運転経路分割部213は当該到達可能な運転予定経路403r上の地点を作業中断点31に決定し、作業中断点31までの飛行ルートを確定する(S18)。
【0117】
運転経路分割部213は、バッテリ交換後のドローン100が到達可能な運転予定経路403r上の地点を、新たに搭載されているバッテリの蓄電量に基づいて推定する(S19)。次いで、ステップS17に戻り、運転経路分割部213は、当該バッテリの蓄電量により作業中断点31から運転予定経路403rの作業終了点40まで到達可能か否かを判定する。以降、作業終了点40までの飛行ルートが確定されるまで、ステップS17乃至19の処理を繰り返す。ステップS17において作業終了点40まで到着可能と判定される場合、運転経路分割部213は新たな作業中断点を生成せず、作業終了点40までの運転予定経路403rを飛行ルートとして確定する(S20)。
【0118】
次いで、作業計画装置20は、作業中断点31,32の位置と、作業終了点40に到達するまでに必要なバッテリ個数および到達するまでの所要時間を使用者に通知する(S21)。なお、1個の作業中断点が確定するごとに、その都度使用者に通知する構成であってもよい。
【0119】
●作業計画装置が薬剤補充を行う作業中断点を決定するフローチャート
薬剤補充を行う作業中断点を決定する一連の工程は、バッテリ交換を行う作業中断点を決定する工程と同時に、又はバッテリ交換を行う作業中断点を決定する工程に続いて行われる。
【0120】
図11に示すように、まず、消費薬剤実績値算出部221aは、当該ドローン100の薬剤消費量の実績値を取得する(S31)。
【0121】
運転経路取得部211cは、取得される消費電力の実績値に対応する運転経路を取得する(S32)。
【0122】
なお、ステップS31およびS32は順不同であり、同時に行われてもよい。
【0123】
薬剤消費率算出部221bは、消費量の実績値、および実績値に対応する運転経路に基づいて、当該ドローン100の動作の種類ごとに薬剤消費率を算出する(S33)。
【0124】
貯留量取得部222は、ドローン100に現在搭載されている薬剤タンク104の薬剤貯留量を取得する(S34)。なお、ステップS34は、ステップS31およびS32の後に行われてもよいし、ステップS31およびS32の前、又はステップS31およびS32と同時に行われてもよい。
【0125】
補充判定部223は、薬剤消費率および薬剤タンク104の薬剤貯留量に基づいて、作業終了点40まで薬剤を散布可能か否か判定する(S35)。
【0126】
貯留されている薬剤の量では作業終了点40まで散布することができないと判定される場合、補充判定部223は、直近の作業中断点31の位置を参照し、直近の作業中断点31まで薬剤散布が可能か否か判定する(S36)。直近の作業中断点31とは、判定対象の位置から運転予定経路403r上最も近くに設定されている作業中断点である。貯留されている薬剤の量では直近の作業中断点31まで散布することができない場合、作業計画装置20は、貯留されている薬剤が0又は所定以下になる地点を、新たな作業中断点として設定し(S37)、ステップS35に戻る。
【0127】
直近の作業中断点31までの薬剤散布が可能である場合、補充判定部223は、薬剤散布ができない作業中断点に到達するまで、運転予定経路403r上の次の作業中断点まで薬剤散布が可能か否かを判定するステップS38を繰り返す。次の作業中断点まで散布ができない地点を判定すると、補充判定部223は当該作業中断点での薬剤補充を行うことを決定し(S39)、ステップS35に戻る。以降ステップS35乃至S39を繰り返し、作業終了点40まで薬剤を散布するために必要な、薬剤補充を行う作業中断点を決定する。
【0128】
作業終了点40まで散布可能と判定される場合、補充判定部223は、新たな薬剤補充を行わない旨の決定をする(S40)。作業計画装置20は、薬剤補充を行う作業中断点31,32の位置と、作業終了点40に到達するまでに必要な薬剤量、ならびに作業中断点31,32,および作業終了点40に到達するまでの所要時間を、使用者に通知する(S41)。なお、1個の作業中断点31,32が確定するごとに、その都度使用者に通知する構成であってもよい。
なお、薬剤補充をする際、薬剤タンク104内の薬剤量を貯留量取得部222により適宜取得し、必要薬剤量が貯留されているか否かを判定してもよい。貯留量取得部222は、薬剤タンク104内の薬剤量が必要薬剤量以上となっているとき、ドローン100の作業開始、すなわち離陸を許可する。
【0129】
●帰還散布計画部が帰還経路を決定するフローチャート
図12に示すように、ドローン100が発着地点406に帰還することが決定している地点を基準に、帰還散布計画部23は、発着地点406までの帰還経路を仮生成する(S51)。当該地点は、作業中断点31,32又は作業終了点40である他、作業計画装置20により設定される作業中断点31,32以外において、不測の事態により圃場403から退避する地点であってもよい。
【0130】
次いで、帰還散布計画部23は、作業中断点31,32から作業開始点30又は作業終了点40までの帰還経路において、薬剤散布されていない経路があるか否かを判定する(S52)。帰還経路において、薬剤散布されていない経路がない場合、帰還散布計画部23は、帰還経路には散布せず、発着地点406へ帰還することを決定する(S53)。
【0131】
作業中断点31,32から作業開始点30又は作業終了点40までの帰還経路において、薬剤散布されていない経路がある場合、帰還散布計画部23は、当該経路における薬剤散布を決定する(S54)。また、予定される薬剤の散布量に基づいて、帰還経路を変更する(S55)。
【0132】
●飛行計画変更部が残経路の飛行速度を決定するフローチャート
図13に示すように、まず、飛行計画変更部24は、運転予定経路403r上の基準地点から作業終了点までの残経路における消費電力を算出する(S61)。基準地点は、ドローン100が圃場403内を飛行している場合にはドローン100の現在位置であってもよい。また、所定時間後に到達が予想される地点を基準地点として、基準地点に到達する前に飛行速度を決定するように構成されていてもよい。この構成によれば、ドローン100が基準地点への到達前に加速を開始することができるので、基準地点においてより目標速度に近い速度を発揮することができる。また、目標速度で飛行させるドローン100が圃場403外の地点、例えば発着地点406にいる場合に、基準地点を運転予定経路403rに沿って順次移動させ、各地点における飛行速度をそれぞれ決定するように構成されていてもよい。
【0133】
蓄電量取得部212は、バッテリ502の蓄電量を算出する(S62)。なお、ステップS61及びS62は順不同であり、同時に行ってもよい。
【0134】
飛行計画変更部24は、残経路で予想される消費電力に対して、バッテリ502の蓄電量の余剰が所定以上であるか否かを判定する(S63)。蓄電量の残量が所定未満である場合、飛行計画変更部24は、処理を終了する。蓄電量の残量が所定以上である場合、飛行計画変更部24は、残量に基づいて残経路におけるドローン100の飛行速度を上昇させる(S64)。
【0135】
本発明に係る作業計画装置によれば、移動装置が移動する運転予定経路に基づいて、作業を中断する位置や、資源の補充回数をあらかじめ予測し、使用者に通知することができる。
【0136】
なお、本説明においては、薬剤散布用ドローンおよび運搬用ドローンを例に説明したが、本発明の技術的思想はこれに限られるものではなく、自律飛行を行うドローンの作業計画装置全般に適用可能である。また、ドローンに限らず、自律的に移動する移動装置の作業計画装置全般に適用可能である。
【0137】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本発明に係る作業計画装置においては、移動装置が移動する運転予定経路に基づいて、作業を中断する位置や、資源の補充回数をあらかじめ予測し、使用者に通知することができる。