(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】交通状況予測装置、交通状況予測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20230130BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20230130BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20230130BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20230130BHJP
【FI】
G08G1/00 C
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
(21)【出願番号】P 2021030555
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2021-03-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501138231
【氏名又は名称】国立研究開発法人防災科学技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】512171124
【氏名又は名称】株式会社ケー・シー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上石 勲
(72)【発明者】
【氏名】中村 一樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】仲条 仁
(72)【発明者】
【氏名】前田 真護
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/215801(WO,A1)
【文献】特開2019-057310(JP,A)
【文献】特開2011-185814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の交通状況を予測する交通状況予測装置であって、
道路の特性に関する道路特性データと道路の交通状況に影響を与える事象に関する事象データとを説明変数とし、道路の交通状況に関する交通状況値を目的変数とした統計処理により算出した相関式と、予測対象道路の前記道路特性データと、予測対象時間の前記事象データとに基づいて、前記予測対象時間における前記予測対象道路の前記交通状況値を予測する予測部を、有し、
前記道路特性データは、前記道路における車両が通行する通行部の特性、及び、前記道路における車両が走行する走行環境の少なくとも一方を含
み、
前記事象データは、降雪量、積雪重量及び積雪深の少なくとも1つを含み、
前記交通状況値は、前記道路を通行する車両の晴天時の旅行速度の平均値との速度差である、交通状況予測装置。
【請求項2】
道路に関する道路データと前記道路を走行した車両から得られたプローブデータとを取得する交通データ取得部と、
前記事象データを取得する事象データ取得部と、を有し、
前記予測部は、前記道路データ、前記プローブデータ及び前記事象データに応じた複数の前記説明変数を設定して前記統計処理を行うことで前記相関式を算出する、請求項1に記載の交通状況予測装置。
【請求項3】
前記統計処理は、重回帰分析である、請求項1又は2に記載の交通状況予測装置。
【請求項4】
前記道路特性データは、前記道路における車両が通行する通行部の特性、前記道路における車両が走行する走行環境、及び、前記道路を走行した車両の当該走行時の状態を含む、請求項
1に記載の交通状況予測装置。
【請求項5】
前記通行部の特性は、車道幅員と、道路改良率とを含み、
前記走行環境は、交差点密度と、代表沿道状況と、バス路線延長率とを含み、
前記走行時の状態は、前記車両の晴天時の旅行速度の平均値である晴天時旅行速度を含む、請求項
4に記載の交通状況予測装置。
【請求項6】
X
1を前記車道幅員、X
2を前記道路改良率、X
3を前記交差点密度、X
4を前記代表沿道状況、X
5を前記バス路線延長率、X
6を前記晴天時旅行速度、X
7を降雪量、X
8を積雪深、Yを前記速度差とすると、前記相関式は、
Y=0.258X
1+1.526X
2-0.038X
3+0.158X
4+0.467X
5-0.069X
6-4.208X
7-0.541X
8
で表される、請求項
5に記載の交通状況予測装置。
【請求項7】
前記予測部は、前記予測対象道路に含まれる道路リンクごとに前記速度差を予測し、
各道路リンクが当該道路リンクの前記速度差に応じた色で色分けされた地図情報を表示する出力部をさらに有する請求項
1乃至
6のいずれか一項に記載の交通状況予測装置。
【請求項8】
交通状況を予測する交通状況予測装置による交通状況予測方法であって、
道路の特性に関する道路特性データと道路の交通状況に影響を与える事象に関する事象データとを説明変数とし、道路の交通状況に関する交通状況値を目的変数とした統計処理により算出した相関式と、予測対象道路の前記道路特性データと、予測対象時間の前記事象データとに基づいて、前記予測対象時間における前記予測対象道路の前記交通状況値を予測し、
前記道路特性データは、前記道路における車両が通行する通行部の特性、及び、前記道路における車両が走行する走行環境の少なくとも一方を含
み、
前記事象データは、降雪量、積雪重量及び積雪深の少なくとも1つを含み、
前記交通状況値は、前記道路を通行する車両の晴天時の旅行速度の平均値との速度差である、交通状況予測方法。
【請求項9】
コンピュータに、
道路の特性に関する道路特性データと道路の交通状況に影響を与える事象に関する事象データとを説明変数とし、道路の交通状況に関する交通状況値を目的変数とした統計処理により算出した相関式と、予測対象道路の前記道路特性データと、予測対象時間の前記事象データとに基づいて、前記予測対象時間における前記予測対象道路の前記交通状況値を予測する手順を実行させ、
前記道路特性データは、前記道路における車両が通行する通行部の特性、及び、前記道路における車両が走行する走行環境の少なくとも一方を含
み、
前記事象データは、降雪量、積雪重量及び積雪深の少なくとも1つを含み、
前記交通状況値は、前記道路を通行する車両の晴天時の旅行速度の平均値との速度差である、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交通状況予測装置、交通状況予測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路の交通状況を予測する交通予測の分野では、降雪や積雪などの気象事象のような交通状況に影響を与える事象を考慮した交通状況の予測が注目されている。
【0003】
特許文献1には、所定の位置における交通量の観測値などに基づいて作成した地域・時期特性モデルに対して、交通量を予測する位置、時期、及び、気象事象などの変動要因に関するデータを入力することで交通量を予測し、その交通量に基づいて、混雑度など交通状況を予測するシミュレーションシステムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、気象事象のような交通状況に影響を与える事象を示す事象情報と、道路を走行する複数の車両から収集した位置情報及び速度情報などを含む走行情報とに基づいて、道路を構成する複数の道路リンクのそれぞれにおける車両の走行状態を予測する道路交通状況予測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-250594号公報
【文献】特開2016-75998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
交通工学の分野では、車両の速度、交通量及び交通密度の3つの交通指標の相互関係が理論的に定式化されている。このため、例えば、車両の速度は、他の2つの交通指標である交通量及び交通密度を実測又は予測した値を、交通量と交通密度との関係を示すQV曲線の式に代入することで予測することができる。
【0007】
特許文献1及び2に記載の技術は、上記の交通指標の相互関係を用いて交通状況を予測するものであるため、交通量又は速度情報のような時間と共に動的に変化する交通指標を予測又は実測することで取得する必要がある。このため、特に降雪又は積雪のような事象が発生した場合などでは、交通状況を予測するために必要なデータを取得するのは容易ではなく、交通状況の予測が難しいという問題がある。また、QV曲線を道路リンクごとに求める必要があるため、必要なデータを取得できたとしても、交通状況の予測は容易ではない。
【0008】
本開示の目的は、交通状況に影響を与える事象が発生した場合において、交通状況を容易に予測することが可能な交通状況予測装置、交通状況予測方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に従う交通状況予測装置は、道路の交通状況を予測する交通状況予測装置であって、道路の特性に関する道路特性データと道路の交通状況に影響を与える事象に関する事象データとを説明変数とし、道路の交通状況に関する交通状況値を目的変数とした統計処理により算出した相関式と、予測対象道路の前記道路特性データと、予測対象時間の前記事象データとに基づいて、前記予測対象時間における前記予測対象道路の前記交通状況値を予測する予測部を、有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、交通状況に影響を与える事象が発生した場合において、交通状況を容易に予測することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係る交通状況予測装置を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る交通状況予測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る交通状況予測装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】道路影響パラメータのp値などを示す図である。
【
図6】降雪時速度差の算定値と実測値との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態に係る交通状況予測装置を示す図である。
図1に示す交通状況予測装置1は、ユーザ端末2と、交通データ管理サーバ3と、気象データ管理サーバ4とに接続される。
【0014】
交通状況予測装置1は、交通データ管理サーバ3及び気象データ管理サーバ4を利用して道路の交通状況を予測し、その予測結果を示す交通状況予測情報をユーザ端末2に出力する装置である。なお、交通状況予測装置1は、ユーザ端末2、交通データ管理サーバ3及び気象データ管理サーバ4とインターネットなどの通信ネットワーク(図示せず)を介して相互に接続されてもよい。
【0015】
ユーザ端末2は、交通状況予測装置1からの交通状況予測情報を利用するユーザ(実務者)にて使用される情報端末である。ユーザ端末2は、交通状況予測装置1から交通状況予測情報を受け付け、その交通状況予測情報に応じた処理を行う。例えば、ユーザ端末2は、交通状況予測情報を表示する処理を行う。また、ユーザ端末2は、交通状況予測装置1に対して種々の要求を送信してもよい。要求には、例えば、交通状況予測情報の取得を要求する取得要求などがある。取得要求には、交通状況を予測する地理的及び時間的な範囲を含んでもよい。
【0016】
なお、ユーザ端末2は、交通状況予測情報を受け付けるための専用の情報端末でもよいし、PC(Personal Computer)、スマートホン及びタブレット端末などの汎用の情報端末でもよい。また、ユーザのIDなどを用いて情報端末を交通状況予測装置1にログインさせることで、ログインしている間、その情報端末をユーザ端末2としてもよい。
【0017】
交通データ管理サーバ3は、道路及び交通に関する交通データを管理する管理装置である。交通データは、道路に関する道路データと、道路を走行する車両から得られたプローブデータとを含む。なお、道路データとしては、例えば、国土交通省が主体となって実施している全国道路・街路交通情勢調査の結果などを使用することができる。プローブデータとしては、例えば、民間団体が取得したデータを使用することができる。また、交通データ管理サーバ3は、道路データを管理するサーバと、プローブデータを管理するサーバのように複数の装置で構成されてもよい。
【0018】
気象データ管理サーバ4は、道路の交通状況に影響を与える事象に関する事象データとして、気象事象に関する気象データを管理する管理装置である。本実施形態では、気象事象は降雪及び積雪であり、気象データは、降雪量、積雪重量及び積雪深の少なくとも1つを地域ごとに示す。降雪量、積雪重量及び積雪深は、時間帯別に予測されたものでもよい。なお、気象データは事象データの一例であり、事象データは気象データに限るものではなく、気象データは降雪量、積雪重量及び積雪深を示すものに限らない。例えば、気象データは、降水量、降雨量及び風量などを示すものでもよい。
【0019】
交通状況予測装置1は、
図1に示すように、予測対象設定部11と、交通データ取得部12と、データベース構築部13と、気象データ取得部14と、予測部15と、出力部16とを有する。
【0020】
予測対象設定部11は、道路の交通状況を予測する予測対象地域に含まれる道路交通網を、交通状況を予測する予測対象ネットワークとして設定する。例えば、予測対象設定部11は、予め用意されたデジタル道路地図から、予測対象地域に含まれる道路交通網を予測対象ネットワークとして抽出して設定する。予測対象ネットワークは、交差点のような複数の道路が接続する結節点などの点を示すノードと、ノード間の道路区画を示すリンクである道路リンクとで表現される。つまり、道路は複数の道路リンクから構成される。
【0021】
交通データ取得部12は、交通データ管理サーバ3から、予測対象ネットワークに含まれる道路である予測対象道路に関する道路データと、予測対象道路を走行した車両から得られたプローブデータとを交通データとして取得する。
【0022】
データベース構築部13は、交通データ取得部12が取得した交通データを整理して、予測対象道路の交通状況を予測するためのデータを集めた予測基礎データベースを構築する。予測基礎データベースは、具体的には、道路リンクごとに、その道路リンクの特性を示す道路特性データを有する。
【0023】
道路特性データは、例えば、項目として、道路リンクにおける車両が通行する通行部の特性、道路リンクにおける車両が走行する走行環境、及び、道路リンクを走行した車両の走行時の状態を含む。
【0024】
通行部の特性は、例えば、道路リンクの通行部の幅である車道幅員と、道路リンク全体の道路延長に対する所定の規格に適合した部分の道路延長の割合である道路改良率とを含む。所定の規格は、例えば、道路構造令の規定などで定義される。
【0025】
走行環境は、例えば、道路リンクにおける単位道路延長当たりの交差点の数である交差点密度と、道路リンクの沿道状況別延長のうち最も長い沿道状況である代表沿道状況と、道路リンクの道路延長に対するバスの運行区画の延長の割合であるバス路線延長率とを含む。
【0026】
走行時の状態は、晴天時に走行した車両の旅行速度である晴天時旅行速度を含む。道路リンクを走行した車両が複数ある場合、それらの車両の旅行速度の統計値(例えば、平均値)を晴天時旅行速度としてもよい。晴天時旅行速度は、時間帯別に規定されてもよい。また、例えば、曇天であっても降水量が0であれば晴天として扱ってもよい。なお、晴天時旅行速度は、過去に検出されたプローブデータから算出されるため、交通量などの交通指標とは異なり、道路の交通状況の予測時に動的に変化するものではない。
【0027】
気象データ取得部14は、気象データ管理サーバ4から、道路の交通状況を予測する予測条件に合う気象データを取得する。予測条件は、道路の交通状況を予測する予測対象地域及び予測対象時間を含む。
【0028】
予測部15は、データベース構築部13にて構築された予測基礎データベースと、気象データ取得部14にて取得された気象データとに基づいて、予想対象時間における予想対象道路の交通状況値を予測した交通状況予測値を算出する。具体的には、予測部15は、道路特性データと気象データとを説明変数とし、交通状況値を目的変数(被説明変数)とした統計処理により算出した相関式を用いて、交通状況予測値を算出する。
【0029】
本実施形態では、交通状況値は、降雪時及び降雪時の車両の旅行速度と晴天時旅行速度との差である降雪速度差であり、統計処理は、重回帰分析である。
【0030】
相関式は、予測部15にて算出されてもよい。具体的には、交通状況に影響を与える要因は、単一ではないため、予測部15は交通データと過去の気象データとに基づく複数のパラメータ(項目)を説明変数とした重回帰分析を行い、それらのパラメータから、交通状況予測値である降雪速度差に影響を与えるパラメータを道路影響パラメータとして特定するとともに、その道路影響パラメータの係数を求めることで、相関式を算出する。
【0031】
ここでは、相関式は、以下の式(1)で表されるとする。
Y=0.258X1+1.526X2-0.038X3+0.158X4+0.467X5-0.069X6-4.208X7-0.541X8・・・(1)
【0032】
相関式(1)において、Yは降雪速度差、X1~X8は道路影響パラメータであり、具体的には、X1は車道幅員、X2は道路改良率、X3は交差点密度、X4は代表沿道状況、X5はバス路線延長率、X6は対象時間晴天時旅行速度、X7は時間帯別降雪量、X8は時間帯別積雪深を示す。なお、X4はダミー変数であり、代表沿道状況が「DID(Densely Inhabited District:人口集中地区)」及び「その他市街部」の場合、1であり、それ以外の場合、0である。
【0033】
なお、予測部15は、予測結果と実測値とに基づいて、相関式の検証及び再導出などを定期的に行うことが好ましい。
【0034】
出力部16は、予測部15の予測結果である交通状況予測値を示す交通状況予測情報をユーザ端末2に出力して、交通状況予測情報をユーザ端末2に表示する。
【0035】
図2は、交通状況予測装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように交通状況予測装置1は、記録装置21、プロセッサ22、メインメモリ23、通信装置24、入力装置25及び表示装置26を有し、それらがバス27を介して接続されている。
【0036】
記録装置21は、書き込み及び読み出しが可能にデータを記録する装置であり、プロセッサ22の動作を規定するためのプログラム、デジタル道路地図、及び、データベース構築部13にて構築された予測基礎データベースなどの種々の情報を記録する。プロセッサ22は、記録装置21に記録されたプログラムをメインメモリ23に読み出し、メインメモリ23を利用してプログラムに応じた処理を実行することで、
図1に示した交通状況予測装置1の各部11~16を実現する。
【0037】
通信装置24は、ユーザ端末2、交通データ管理サーバ3及び気象データ管理サーバ4などの外部装置と通信可能に接続し、外部装置との間で情報の送受信を行う。入力装置25は、交通状況予測装置1の管理者などから種々の情報が入力される装置である。受信又は入力された情報は、例えば、プロセッサ22の処理に利用される。表示装置26は、種々の情報を表示する装置である。
【0038】
図3は、交通状況予測装置1の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0039】
先ず、予測対象設定部11は、交通状況予測装置1の管理者から又はユーザ端末2を介してユーザから、予測対象地域を示す予測対象地域情報を受け付ける(ステップS301)。予測対象設定部11は、予測対象地域情報に基づいて、デジタル道路地図から予測対象地域に含まれる道路交通網を予測対象ネットワークとして抽出して設定する(ステップS302)。
【0040】
その後、交通データ取得部12は、交通データ管理サーバ3から、予測対象ネットワークに含まれる予測対象道路に関する道路データ及びプローブデータを取得する(ステップS303)。
【0041】
データベース構築部13は、交通データ取得部12にて取得された道路データ及びプローブデータを整理して予測基礎データベースを構築して保存する(ステップS304)。例えば、データベース構築部13は、道路データから、予測対象道路を構成する道路リンクごとに、その道路リンクの特定を示す道路特性データを抽出する。また、データベース構築部13は、予測対象道路を構成する道路リンクごとに、その道路リンク走行した車両から得られたプローブデータから時間帯別の晴天時旅行速度である時間帯別晴天時旅行速度を算出する。そして、データベース構築部13は、道路リンクごとに、道路特性データと時間帯別晴天時旅行速度とを示す予測基礎データベースを構築する。
【0042】
そして、気象データ取得部14は、気象データ管理サーバ4から、道路の交通状況を予測する予測条件に合う気象データを取得する(ステップS305)。ここでは、気象データ取得部14は、予測対象地域における、予測時間範囲に含まれる時間帯別の降雪量及び積雪深である時間帯別降雪量及び時間帯別積雪深を気象データとして取得する。
【0043】
そして、予測部15は、予測基礎データベース及び気象データに基づいて、予測対象ネットワーク内の道路リンクごと、及び、予測時間範囲に含まれる時間帯ごとに、予測基礎データベースの道路特性データ及び時間帯別晴天時旅行速度と、気象データである時間帯別降雪量及び時間帯別積雪深とを、上述した相関式(1)に代入することで、各道理リンクの交通状況予測値として降雪時速度差を算出する(ステップS306)。
【0044】
出力部16は、予測部15の予測結果である降雪時速度差を示す交通状況予測情報をユーザ端末2に出力し(ステップS307)、処理を終了する。交通状況予測情報を出力するタイミングは、例えば、ユーザ端末から取得要求を受け付けたタイミングなどである。また、出力部16は、取得要求に含まれる地理的及び時間的な範囲に含まれる降雪時速度差を交通状況予測情報として出力してもよい。なお、ユーザ端末2は、交通状況予測情報を受け付けると、例えば、その交通状況予測情報を表示する。
【0045】
図4は、交通状況予測情報の一例を示す図である。
図4に示す交通状況予測情報40は、予想対象道路を構成する複数の道路リンク41を含む地図情報であり、各道路リンク41がその道路リンクの降雪時速度差に応じた色で色分けされている。これにより、ユーザは直感的に降雪時速度差が大きい道路を判別することが可能になる。
【0046】
なお、
図4の例は単なる一例であって、交通状況予測情報はこの例に限らない。例えば、交通状況予測情報は、ユーザが指定した出発地から目的地までの所要時間のような降雪時速度差に基づいて算出される値を含んでもよい。また、交通状況予測情報は、降雪時速度差に基づいて判別した交通流量のボトルネックとなる箇所などを示してもよい。また、交通状況予測情報は、積雪深のような気象データを、メッシュなどを用いて地図情報に重畳してもよい。
【0047】
図5は、相関式(1)で使用される道路影響パラメータX
1~X
8の係数、標準偏差、p値及びt値を示す図である。道路影響パラメータX
1~X
8は、ある地域での実際のデータを教師データ(サンプル数N:85368)として用いて最小二乗法による重回帰分析を実行することで推定したものである。
図5に示されたように道路影響パラメータX
1~X
8の全てにおいて、1%有意水準で統計的に有意であり、相関式(1)の重相関係数Rは0.607(重決定計数R
2:0.368)であった。
【0048】
図6は、相関式(1)を用いて過去の気象データから予測した降雪時速度差である算定値と、実際に測定した降雪時速度差である実測値との相関関係を示す図であり、横軸を実績値、縦軸を算定値とした散布図を示している。
図6に示されたように算定値と実測値とは相関が強く、その相関係数は0.510である。
【0049】
図7は、実測値に対する算定値の誤差の頻度を示す図である。
図7に示すように、誤差が10km/h未満の場合が76%、10km/h以上20km/h未満の場合が19%、20km/h以上の場合が5%である。つまり、誤差が10km/h未満の場合が8割程度である。
【0050】
したがって、
図5~
図7で示されたように相関式(1)を用いて道路特性データ及び気象データから交通状況を予測することが可能である。
【0051】
以上説明したように本実施形態によれば、予測部15は、道路の特性に関する道路特性データと道路の交通状況に影響を与える事象に関する事象データとを説明変数とし、道路の交通状況に関する交通状況値を目的変数とした統計処理により算出した相関式と、予測対象道路の道路特性データと、予測対象時間の事象データとに基づいて、予測対象時間における予測対象道路の交通状況値を予測する。したがって、車両の速度、交通量及び交通密度のような動的に変化する交通指標を用いずに、交通状況に関する交通状況値を予測することが可能となるため、交通状況に影響を与える事象が発生した場合において、交通状況を容易に予測することが可能になる。
【0052】
特に本実施形態では、相関式(1)を用いて降雪及び積雪時の交通状況を容易に予測することができる。
【0053】
また、本実施形態では、道路データと気象データとに基づいて相関式が算出されるため、データが蓄積されるほど予想精度を向上させることが可能になる。
【0054】
上述した本開示の実施形態は、本開示の説明のための例示であり、本開示の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本開示の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本開示を実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1:交通状況予測装置 2:ユーザ端末 3:交通データ管理サーバ 4:気象データ管理サーバ 11:予測対象設定部 12:交通データ取得部 13:データベース構築部 14:気象データ取得部 15:予測部 16:出力部