(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】生花製品
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20230130BHJP
A01G 5/06 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
B65D85/50 200
A01G5/06
(21)【出願番号】P 2018207392
(22)【出願日】2018-11-02
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】515047334
【氏名又は名称】有限会社いわみ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】乾 一心
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-208639(JP,A)
【文献】特開昭63-248679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
A01G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生花と、
柔軟性を有する透明樹脂材で形成され、内部に上記生花を収容する収容部を有する密封された袋体とで構成され、
該袋体の内部は、
常温で、且つ、40.8~51kPaの範囲に減圧されて真空状態になっていることを特徴とする生花製品。
【請求項2】
請求項1に記載の生花製品において
、
上記袋体の内部には、上記生花の茎の切り口又は根を浸す保水体が封入されていることを特徴とする生花製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、食料品店等にて展示販売する生花製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生花を製品化した生花製品は、一般的に、店頭に並べて販売される。生花製品は、生花が枯れたり、或いは、腐り易いという問題があるだけでなく、生花に付着する花粉や農薬、虫、雑菌等が食料品等に影響を及ぼさないような状態(例えば、食料品等から遠く離れた状態)で展示販売を行う必要がある。したがって、近年では、生花の付着物が食料品等に影響を及ぼさない製品構造の開発や、生花製品にしたときの生花の鮮度の持続時間を長くする取り組み等がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている生花製品は、生花と、柔軟性を有する透明樹脂材で形成された袋体とで構成されている。該袋体の内部には、生花が密封状態で収容され、生花の付着物を周囲に飛散させないようにしている。また、生花は、袋体の内部に収容する前において、その表面にアクリルポリマーを主成分として含む被覆処理液がコーティングされるとともに、生花に影響を及ぼさない程度に袋体内部の気体が冷却されていて、生花の呼吸を適度に抑えるとともに、生花中の水分の蒸散を抑制して、生花の精度を持続するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の生花製品は、生花を袋体に収容する前に、生花の表面に被覆処理液をコーティングするという作業を行う必要があり、作業が煩雑で製造コストが嵩むという問題がある。
【0006】
また、袋体内部の気体を冷却する必要があるので、展示販売する際に冷却装置が必要であり、展示販売の際に制約が加わるという問題もあった。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、あらゆる店舗において展示販売することができ、しかも、製造作業が簡単で低コストな生花製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、袋体の内部を真空にしたことを特徴とする。
【0009】
すなわち、第1の発明では、生花と、柔軟性を有する透明樹脂材で形成され、内部に上記生花を収容する収容部を有する密封された袋体とで構成され、該袋体の内部は、常温で、且つ、40.8~51kPaの範囲に減圧されて真空状態になっていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、上記袋体の内部には、上記生花の茎の切り口又は根を浸す保水体が封入されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明では、袋体が密封状態であるので、生花の付着物が袋体の外側に飛散しない。したがって、生花に付着する花粉や農薬、虫、雑菌等が食料品等に影響を及ぼさないような状態で展示販売を行うことができる。また、生花から蒸散する水分が袋体の内部に留まるようになるので、生花が萎れ難くなって鮮度を長く維持することができる。さらに、袋体内部が減圧状態になっているので、生花が酸化し難くなり、この点においても鮮度を長く維持することができる。また、特許文献1の如き被覆処理液を生体表面にコーティングするといった煩わしさが無く、製造コストを抑えることができるとともに、袋体内部の気体を冷却せずに鮮度を長く維持することができるので、あらゆる店舗において制約無く展示販売することができる。また、袋体の内部に所定の空間が形成された状態で生花を収容しているので、生花の形状が変形することなく、生花を袋体から取り出した後の生花の見栄えを良くすることができる。
【0013】
また、生花の種類に関係無く、生花の鮮度を長く維持することができる。
【0014】
第2の発明では、水分が気化し易い減圧下の袋体内部において、生花に十分な水分を直接的に供給できるようになり、生花の鮮度の持続期間をさらに長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る生花製品の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態における生花製品について、袋体の内部に収容する生花の種類を変えながら鮮度の維持日数を評価した結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る生花製品1を示す。該生花製品1は、例えば、食料品店等の店頭において販売するためのものであり、ユリの切花である生花3と、該生花3を内部に収容する収容部2aを有する袋体2とで構成されている。
【0018】
該袋体2は、例えば、ポリエチレンとナイロンとの多層構造の透明樹脂材料で形成され、柔軟性を有している。
【0019】
また、袋体2は、正面視で上下方向に長い台形状をなしており、上方に開口する収容部2aを有している。
【0020】
さらに、袋体2は、収容部2aの開口部分から生花3を収容するとともに当該生花3を収容部2aに収容した状態で当該収容部2aの開口部分を溶着により塞いで内部を密封するようになっている。
【0021】
袋体2の内部には、高吸収性樹脂を含有するゼリー体4(保水体)が封入され、該ゼリー体4には、生花3の茎の切り口3aが浸されている。
【0022】
袋体2は、その内部の空気が図示しない真空ポンプにより吸引されて真空状態である一方、収容部2aに収容された生花3が押し潰されずに原形を留める程度の空間を内部に有する形状になっている。
【0023】
具体的には、袋体2の内部は、20.4~71.3kPaに減圧されており、好ましくは、40.8~51kPaに減圧されている。
【0024】
次に、本発明の実施形態に係る生花製品1を用いて実験した結果について説明する。
【0025】
図2は、生花製品1の鮮度について、袋体2の収容部2aに収容する生花3の種類、保水体の有無、及び、袋体2の内部の真空状態をそれぞれ変更させながら、何日後までの生花製品1が売り出し可能かを官能評価した結果を示す表である。
【0026】
実験は、上述の各条件にて製造した各生花製品1を放置するとともに、3日後、5日後、7日後及び10日後における生花3を袋体2から取り出してその状態を観察し、鮮度が良好の場合には◎、生花3の一部に萎れや傷みが有る場合には〇、生花3の半分に萎れや傷みが有る場合には△、売り物にならない状態である場合には×、と判断することにした。生花3は、和花としてキクを、洋花としてユリを、アレンジメントとしてウレタン材にバラ、ガーベラ、ヒペリカム、シネンシス及びレザーファンをそれぞれ挿したものを、鉢・苗物としてケイトウ、サボテン及びバラをそれぞれ用いた。尚、袋体2の内部を真空状態にするのに、株式会社TOSEI製のV-930DL真空包装機を使用した。
【0027】
図2の結果から分かるように、袋体2の内部の真空状態が71.3kPa以下になると、鮮度の維持日数が長くなる生花3が現れ始めた。一方、袋体2の内部の真空状態を10.2kPa以下にすると、収容部2aに収容された生花3が袋体2の内面に押し潰されて原形を留めない状態になってしまい、生花3を袋体2から取り出した後において、売り物にならない状態であった。
【0028】
また、袋体2の内部の真空状態を40.8~51kPaにすると、どの種類の生花3であっても7日程度、ゼリー体4の有無に関わらず、生花3の鮮度を維持させることができるようになることが分かった。これは、袋体2の内部を減圧することにより、生花3が酸化し難くなったことが大きな要因と考えられる。
【0029】
以上より、本発明の実施形態によると、袋体2が密封状態であるので、生花3の付着物が袋体2の外側に飛散しない。したがって、生花3に付着する花粉や農薬、虫、雑菌等が食料品等に影響を及ぼさないような状態で展示販売を行うことができる。
【0030】
また、生花3から蒸散する水分が袋体2の内部に留まるようになるので、生花3が萎れ難くなって鮮度を長く維持することができる。
【0031】
さらに、袋体2内部が減圧状態になっているので、生花3が酸化し難くなり、この点においても鮮度を長く維持することができる。
【0032】
また、特許文献1の如き被覆処理液を生体表面にコーティングするといった煩わしさが無く、製造コストを抑えることができるとともに、袋体2内部の気体を冷却せずに鮮度を長く維持することができるので、あらゆる店舗において制約無く展示販売することができる。
【0033】
また、袋体2の内部に所定の空間が形成された状態で生花3を収容しているので、生花3の形状が変形することなく、生花3を袋体2から取り出した後の生花3の見栄えを良くすることができる。
【0034】
また、袋体2内部の真空状態を40.8~51kPaにすると、生花3の種類に関係無く、生花3の鮮度を長く維持することができる。
【0035】
また、密封された袋体2の内部にゼリー体4を封入すると、水分が気化し易い減圧下の袋体2内部において、生花3に十分な水分を直接的に供給できるようになり、生花3の鮮度の持続期間をさらに長くすることができる。
【0036】
尚、本発明の実施形態では、袋体2をポリエチレンとナイロンとの多層構造の透明樹脂材料で形成しているが、これに限らず、ポリエチレンからなる透明樹脂材料で形成してもよいし、ナイロンからなる透明樹脂材料で形成してもよく、その他の透明樹脂材料で形成してもよい。
【0037】
また、本発明の実施形態では、袋体2を正面視で略台形状にしているが、その他の形状であってもよい。
【0038】
また、本発明の実施形態では、生花3としてユリを用いたが、これに限らず、生花3としてその他の和花や洋花を用いてもよく、アレンジメント、鉢・苗物を用いてもよい。
【0039】
また、本発明の実施形態では、ゼリー体4を袋体2の内部に封入して生花3に保水を行っているが、例えば、鉢・苗物の場合には、保水体として水を含ませたウレタン材を封入して根を浸すようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば、食料品店等にて展示販売する生花製品に適している。
【符号の説明】
【0041】
1 生花製品
2 袋体
2a 収容部
3 生花
4 ゼリー体(保水体)