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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】どら焼き製品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/00 20060101AFI20230130BHJP
   A21D 13/32 20170101ALI20230130BHJP
【FI】
A23G3/00
A21D13/32
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018213244
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020078275
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】509219246
【氏名又は名称】株式会社ラマン
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】鳥川 勇
(72)【発明者】
【氏名】岡島 広伸
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】特公昭60-001846(JP,B2)
【文献】「どら焼きアイス|アイスマン福留のコンビニアイスマニア」,[online],インターネット,セブンプレミアム『どら焼きアイス』,[検索日:2022年11月15日]https://www.conveniice.com/archives/35871.html,2018年11月03日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G ,A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
どら焼きと笊とを組み合わせてなるどら焼き製品の製造方法であって、
所定の材料を混ぜ合わせてなる生地および餡を準備する工程、
前記生地を一定量ずつを焼いて円盤状の皮を作る工程、
前記皮のうち、焼き色の付いた面を下に向けたものを下皮とし、焼き色の付いた面を上に向けたものを上皮として準備する工程、
前記どら焼きよりも直径サイズの大きいサイズの笊であって、その周縁から中央にかけてしだいに下向きに窪む凹面部を有する前記笊を準備する工程、
前記笊の凹面部に沿って前記下皮を載せることにより、前記下皮にその周縁から中央にかけてしだいに下向きに膨らむ凸面部を形成する工程、
前記笊の上に載せた前記下皮の上に所定量の前記餡を載せ、さらにその上に前記上皮を重ねる工程、
前記笊と筒状の押型と間で前記下皮と上皮の周縁部分を圧接して耳締めすることにより、前記上皮にその周縁から中央にかけてしだいに上向きに膨らむ凸面部を形成する工程、
前記下皮と上皮を耳締めしてなる前記どら焼きを、前記笊の凹面部上に保つことにより、前記下皮の凸面部の形状を保持する工程
を行うことを特徴とする、どら焼き製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、どら焼き製品およびその製造方法に関し、詳しくは、通常よりも直径サイズの大きいどら焼き製品の製造技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国民的和菓子の代表例としてどら焼きが知られている。どら焼きは、パンケーキ風の皮に餡が包まれてなるもので、一般的なサイズとしては直径8~9cm程度である。
上下の皮に餡が包まれた形状が“ドラ(銅鑼)”に似ていることから、『どら焼き』の名が付いたとも言われている。アニメキャラクターの好物としてどら焼きが描かれていることもあって、どら焼きの色や形はその名前を聞いただけで容易にイメージすることができる。
【0003】
どら焼きの製造方法としては、まず、液卵、小麦粉などを混ぜて作った生地を鉄板で焼き、円盤状の皮を作る。皮には予め外側となる面に焼き色を付けておき、内側となる面は蒸し焼き状態にして生地の色を残しておく。
丸く焼き上がった皮のうち、焼き色の付いた面を下に向けたものを下皮とし、上に向けたものを上皮として準備する。下皮の上中央付近に餡を載せ、さらにその上に上皮を載せる。仕上げとして、下皮と上皮の周縁を筒状の押型で挟んで耳締め(圧接)する。
これにより、どら焼きの外観が“ドラ(銅鑼)”のように中央が上下対称的に膨らんだ形状になる。つまり、どら焼きの形状として、上下の皮の周縁から中央にかけてしだいに外向きに膨らんだ凸面部が形成される一方、上下の皮の周縁には両者を重ねて圧接した耳締め部が形成されることになる。
このように出来上がったどら焼きは、袋詰めなどの包装が施されてどら焼き製品として消費者に提供される。
なお、どら焼きに関連する先行技術としては特許文献1等が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-29922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のどら焼きは、通常よりも直径サイズを大きくしようとすると、皮や餡の重さによってその形状が崩れやすく、どら焼き本来の形を保持することが困難となる。
例えばホールケーキのように、切り分けて食べるサイズでどら焼きを提供する場合、完成時には通常サイズと同様な“ドラ(銅鑼)”の形を保っていても、時間の経過とともに下皮の周縁部分が下がって耳締め部で皮同士が剥がれてしまう。この結果、どら焼きを側方から見ると、円盤状の下皮の上にドーム状の上皮が載っているような形状になり、どら焼き本来の形状からかけ離れた不格好なものになる。
【0006】
これに対し、生地の材料や配合を変更することによりどら焼きの弾力性を高める対策が考えられる。どら焼きの弾力性が向上すれば、皮や餡の重さが増しても上記のような形状変形を抑えることができる。
しかし、このような対策では、通常のどら焼きの生地とは異なるものを使用することになるため、どら焼き本来の味や食感が損なわれてしまい、消費者の期待に沿えないおそれがある。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、大型サイズにしてもどら焼き本来の味や食感を損なうことなく、かつ、“ドラ(銅鑼)”の形状を保つことができるどら焼き製品およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題に対する対策を探るために生地の厚みや餡の分量などについて種々の検討を行った。大型どら焼きの試作を繰り返すことにより、どら焼きの形状がどのように崩れるかを観察し、生地や餡の等の改良を試みた。そして、このような改良を重ねる中で、どら焼きの形状を保つための型枠に着眼し、これをそのまま受け容器としてどら焼きに組み合わせることにより前記課題の解決を図ることとした。つまり、大型どら焼きを製品化するにあたり生地や餡を改良する発想を切り替え、どら焼きに予め受け容器を組み合わせることにより、大型どら焼きを製品として完成させるに至ったものである。
【0009】
(第1発明)
前記課題を解決するために本発明によるどら焼き製品は、下記の構成を採用する。
すなわち、上皮(21)と下皮(22)の間に餡(23)を包み込んでなるどら焼き(20)と、このどら焼きが載せられる受け容器(30)とを組み合わせてなるどら焼き製品(10)であって、
前記どら焼きの上皮および下皮に形成され、これらの皮の周縁から中央にかけてしだいに上下外向きに膨らむ凸面部(20a,20a)と、
前記上皮および下皮の周縁で両者を重ねて圧接することにより形成される耳締め部(20b)と、
前記受け容器の周縁から中央にかけてしだいに下向きに窪む前記受け容器の凹面部(30a)とを備えており、
前記どら焼きが前記受け容器に載せられるとき、前記下皮の凸面部が前記受け容器の凹面部の形状に沿って支持される構成とした。
【0010】
このようなどら焼き製品の構成によれば、どら焼きが受け容器に載せられると、下皮の凸面部が受け容器の凹面部の形状に沿って支持される。つまり、受け容器の凹面部に合わせてどら焼き(下皮)の形状が保たれることになる。これにより、どら焼きのサイズが大型になっても、上皮と下皮の耳締め部で皮同士が剥がれる不具合がなくなり、“ドラ(銅鑼)”の形状を安定的に保持することができる。
また、本発明の構成では、どら焼きの形状保持のために特殊な生地や餡を使用する必要がなく、通常サイズのどら焼きと同様なものを使用することができる。このため、どら焼きのサイズを大きくしても、どら焼き本来の味や食感を保つことができる。
さらには、予めどら焼きと受け容器とを組み合わせる構成であるため、大型サイズのどら焼きにそのままナイフを入れてホールケーキのように切り分けるといった食べ方を提供することもできる。
【0011】
(第2発明)
第2発明によるどら焼き製品は、第1発明の構成を備えたものであって、前記受け容器として笊(ざる)を採用する構成とした。
第1発明の構成において、どら焼きが受け容器に載せられると、下皮部分が受け容器で隠れるため、下皮表面に熱が籠もりやすくなる。焼き上がりの直後に受け容器の上で上下皮の耳締めを行うと、このような熱で下皮表面が蒸れて味や食感に影響を及ぼすおそれがある。
第2発明の構成では、受け容器として笊が採用されるため、その編み目(ざる穴)が通気孔となって下皮表面の熱を発散させる効果を発揮する。これにより、下皮表面の蒸れを抑えて味や食感をさらに良好に保つことができる。
【0012】
(第3発明)
本発明によるどら焼き製品の製造方法は、どら焼きと笊とを組み合わせてなるどら焼き製品の製造方法であって、
所定の材料を混ぜ合わせてなる生地および餡を準備する工程、
前記生地を一定量ずつを焼いて円盤状の皮を作る工程、
前記皮のうち、焼き色の付いた面を下に向けたものを下皮とし、焼き色の付いた面を上に向けたものを上皮として準備する工程、
前記どら焼きよりも直径サイズの大きいサイズの笊であって、その周縁から中央にかけてしだいに下向きに窪む凹面部を有する前記笊を準備する工程、
前記笊の凹面部に沿って前記下皮を載せることにより、前記下皮にその周縁から中央にかけてしだいに下向きに膨らむ凸面部を形成する工程、
前記笊の上に載せた前記下皮の上に所定量の前記餡を載せ、さらにその上に前記上皮を重ねる工程、
前記笊と筒状の押型と間で前記下皮と上皮の周縁部分を圧接して耳締めすることにより、前記上皮にその周縁から中央にかけてしだいに上向きに膨らむ凸面部を形成する工程、
前記下皮と上皮を耳締めしてなる前記どら焼きを、前記笊の凹面部上に保つことにより、前記下皮の凸面部の形状を保持する工程
を行うこととした。
【0013】
このようなどら焼き製品の製造方法によれば、どら焼きの下皮の形状(凸面部)を笊の凹面部に合わせて均一に形成することができる。どら焼きの完成後、笊の凹面部にどら焼きをそのまま保つことにより、下皮の形状(凸面部)が笊の凹面部に沿って支持される。これにより、どら焼きのサイズが大型になっても、上皮と下皮の耳締め部で皮同士が剥がれる不具合がなくなり、“ドラ(銅鑼)”の形状を安定的に保持することができる。
また、本発明の製造方法では、どら焼きの形状保持のために特殊な生地や餡を使用する必要がなく、通常サイズのどら焼きと同様なものを使用することができる。このため、どら焼きのサイズが大きくなっても、どら焼き本来の味や食感を保つことができる。
さらに、完成後のどら焼き製品がどら焼きと笊とを組み合わせたものとなるため、大型サイズのどら焼きにそのままナイフを入れてホールケーキのように切り分けるといった食べ方を提供することもできる。
さらに、本発明の製造方法によれば、笊の凹面部上に下皮を載せるとき、笊の編み目(ざる穴)が通気孔となって下皮表面の熱を発散させる効果を発揮する。これにより、下皮表面の蒸れを抑えて味や食感をさらに良好に保つことができる。特に、皮の焼き上がりの直後は、下皮の表面が高温になっているため、このような笊の放熱効果がどら焼きの品質向上につながる。
【0014】
(第1~3発明)
第1~3発明において、どら焼きの上下皮の材料(生地材料)は、液卵や小麦粉などの通常使用される材料をそのまま使用することができる。餡の材料についても同様である。
どら焼きのサイズについては、特に限定されないが、後述する本発明者らの試作実験の結果によれば直径サイズ11cm以上であると、本発明を適用する上で効果的である。
受け容器は、どら焼きのドラ“銅鑼”の形状に合う曲面をもった凹面部を有するものであればよく、木材、紙材、プラスチック、金属等の各種容器を採用することができる。
特に、どら焼きの形状(凸面部)に合わせた竹笊を選定するのが望ましい。受け容器として竹笊を採用すると、どら焼きの“和”のイメージにマッチするため、下皮の形状(凸面部)を保持する効果および放熱効果に加え、和菓子としての商品価値を高める装飾効果を期待することもできる。
第1~3発明には本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の構成要素との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るどら焼きを示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図2】同どら焼きの構成を説明するための分解図である。
図3】同どら焼きの構成を説明するための断面図である。
図4】同どら焼きの製造方法を説明するための工程図である。
図5】同どら焼きを耳締め工程の様子を示す断面図である。
図6】どら焼きのサイズを検討するための試作実験の結果を示すもので、直径サイズ9cmのどら焼きの形状変化の様子を示す比較図である。
図7】同試作実験の結果を示すもので、直径サイズ11cmのどら焼きの形状変化の様子を示す比較図である。
図8】同試作実験の結果を示すもので、直径サイズ17cmのどら焼きの形状変化の様子を示す比較図である。
図9】同試作実験の結果を示すもので、直径サイズ19cmのどら焼きの形状変化の様子を示す比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
図1に示すように、どら焼き製品10は、どら焼き20と竹笊30(受け容器)とを組み合わせてなる。円形の竹笊30の上にどら焼き20が載せられている。どら焼き20の直径サイズは約21cmである。どら焼き20を食べる際には竹笊30からどら焼き20の全部または一部が取り出されることになる(図2参照)。
どら焼き製品10を販売する際には、竹笊30にどら焼き20を載せたまま店頭にならべてもよいし、袋詰め等の包装を施してもよい。
【0017】
図3に示すように、どら焼き20は、上皮21と下皮22との間に餡23が包まれてなる。これらの皮は、周縁から中央にいくにしたがってしだいに上下外側に膨らむ凸面部20a,20aを備えており、上下の皮の周縁部には両皮を圧接してなる耳締め部20bが形成されている。どら焼き20を側方から見ると、通常のどら焼き20と同様にドラ(銅鑼)の形状に見える(図2参照)。
【0018】
竹笊30は、所定幅の竹籤を加工することで形成されるもので、円形の底編み31と縁巻き32とを備えている。底編み31の外周端に縁巻き32が結束材33(図1参照)によって固定される。
なお、竹笊30の種類は特に限定されないが、ゴザ目編み、四ツ目編み、六ツ目編み、網代(あじろ)編み、亀甲編み(鉄線編み)、松葉編み、麻の葉編み、輪口編み(輪弧編み)、やたら編み、ねじり編み、クモの巣編み、千代田編み、片締め編み、櫛目編み、石畳編み、五ツ目編み(キキョウ編み)、八ツ目編み等を用いることができる。
【0019】
竹笊30の上面側にはその周縁から中央にいくにしたがってしだいに下方に窪む凹面部30aが形成される。底編み31の上側の受け面が凹面部30aとなっている。この凹面部30aは、下皮22の凸面部20aにほぼ一致する曲面形状を有しており、これにより、竹笊30にどら焼き20を載せると、この凹面部30aに沿って下皮22の凸面部20aが支持される。
【0020】
凹面部30aには、底編み31の編み目(ざる穴)による通気孔Hが上下に貫通している。規則的な編まれた竹籤の隙間が通気孔Hになっており、各通気孔Hが凹面部30aの凹面全体に適度な間隔を保って配列されている。これらの通気孔Hにより、凹面部30aの下方の放熱性が高められる。
【0021】
竹笊30の外径サイズは、どら焼き20よりも若干大きく、竹笊30の縁巻き32がどら焼き20の外周を囲むような形になる(図1参照)。縁巻き32には十分な強度をもった竹材が使用されるため、どら焼き製品10に平面方向から衝撃等がかかっても、このような力がどら焼き20に直接伝わらず、その潰れや変形が防止される。
【0022】
本実施形態では、図3に示すように、どら焼き20と竹笊30との間に台紙40が置かれる。この台紙40は、円形の底編み31とほぼ等しい広さと形状を有するもので、どら焼き20の下皮22が底編み31に直接触れるのを防ぐ。また、台紙40が緩衝材の役割を果たすため、どら焼き20の重さによって下皮22の表面に竹編みの凹凸の痕が残りにくくなる。
なお、台紙40としては、調理用の各種シートやフィルム等を用いることができる。台紙40に放熱促進用の孔加工等を施してもよい。底編み31の種類によっては台紙40を省略することも可能である。
【0023】
どら焼き製品10によれば、どら焼き20が竹笊30に載せられると、下皮22の凸面部20aが竹笊30の凹面部30aの形状に沿って支持されるため、竹笊30の凹面部30aに合わせてどら焼き20(下皮22)の形状が保たれる。これにより、どら焼き20のサイズが大型になっても、上皮21と下皮22の耳締め部20bで皮同士が剥がれる不具合がなくなり、“ドラ(銅鑼)”の形状を安定的に保持することができる。
また、どら焼き20のサイズを大きくしても、通常サイズのどら焼きと同様な生地や餡を使用することができるため、どら焼き本来の味や食感を保つことができる。
さらに、どら焼き20と竹笊30とを組み合わせる構成であるため、大型サイズのどら焼き20にそのままナイフを入れてホールケーキのように切り分けるといった食べ方を提供することもできる。
さらに、竹笊30の編み目(ざる穴)が通気孔Hとなって下皮22表面の熱を発散させる効果を発揮するため、下皮22表面の蒸れを抑えて味や食感をさらに良好に保つことができる。
【0024】
次に、実施形態によるどら焼き製品の製造方法について説明する。
前述したどら焼き製品10は、例えば図4に示すように、下記の工程S1~S8により製造することができる。
[S1.生地・餡の準備]
まず、皮を焼くための生地と、これらの中に包む餡23を準備する。生地の材料は、通常のどら焼き20と同様なものでよく、下記に示すような配合例で小麦粉、液卵などを混ぜ合わせる。
[生地の配合比(重量%)]
小麦粉 : 55.0%
液卵 : 16.5%
水 : 18.0%
調味料 : 1.1%
蜂蜜 : 2.2%
乳製品 : 7.2%
合 計 : 100.0%
【0025】
餡23の材料は通常のどら焼き20と同様に小豆、砂糖などを煮込んで捏ねたものを使用する。市販の小倉餡をそのまま使用してもよい。クリームやジャムなどを餡として使用することもできる。
【0026】
[S2.生地焼き]
工程1で出来上がった生地を一定量ずつ鉄板上で焼いて円盤状の皮を作る。生地の分量は、通常サイズのどら焼き20(8~9cm程度)では一枚の皮に対して70~80gを使用するところ、本実施形態では170~180gを使用する。これにより、どら焼き20の直径が20cm程度になる。
生地の焼き方は通常のどら焼き20と同様である。まず、片面を数分焼いてきつね色の焼き色にする。他方の面は、蒸し焼きにして生地の色を残す。片面を焼いた後、生地を裏返して若干の焼き色を付けてもよい。
【0027】
[S3.上下皮の準備]
工程2で焼き上がった皮のうち、きつね色の焼き色が付いた面を下に向けたものを下皮22とし、この焼き色面を上に向けたものを上皮21として準備する。
上下の皮の準備は、焼き上がった後、直ぐに行う必要はなく、餡23を包む直前で上下の皮を区別するようにしてもよい。
【0028】
[S4.竹笊の準備]
完成後のどら焼き20に組み合わせる竹笊30を準備する。この竹笊30は、完成後のどら焼き20よりも直径サイズが若干大きく、かつ、どら焼き20の厚みの半分程度の深さをもって、その周縁から中央にかけてしだいに下向きに窪む凹面部30aを有するものを選定する。
【0029】
[S5.下皮載せ]
工程4で準備した竹笊30の凹面部30aに沿って台紙40を置き、その上に下皮22を載せる。このとき、竹笊30の凹面部30aに沿って下皮22が成形されるため、下皮22にその周縁から中央にかけて下向きに膨らむ凸面部20aが形成される。
下皮22と竹笊30の凹面部30aの間に位置ズレが生じている場合には下皮22を一旦取り出して竹笊30に置き直す。
【0030】
[S6.餡・上皮載せ]
続いて、竹笊30の上に載せた下皮22の中央付近に所定量の餡23を載せる。餡23の分量は、通常サイズのどら焼き20(8~9cm程度)では1個あたり30~40gを使用するところ、本実施形態では360~380gを使用する。下皮22の周縁部分には、後述の耳締め工程による仕上げを良好にするため、なくべく餡23が付着しないようにする。
このように餡23を載せた下皮22の上に上皮21を重ね、上下の皮の外周縁がほぼ一致するように位置合わせする。
【0031】
[S7.耳締め]
図5に示すように、竹笊30の上に載せた上下の皮に上方から筒状の押型50を当て、竹笊30と押型50との間で上下の皮の周縁部分を圧接して耳締めする。これにより、上皮21の表面にその周縁から中央にかけてしだいに上向きに膨らむ凸面部20aが形成される。
このような耳締めは、皮の焼き上がり後なるべく早いタイミングで行う。皮が冷めないうちに皮の周縁部分を圧接することでどら焼き20の形状が崩れにくくなる。
なお、押型50は、円筒部51の下端にフランジ部52、上端に底部53を備えているが(図5参照)、上下皮の周縁部分を圧接することができるものであれば他の構成の押型を使用してもよい。本実施形態のような有底筒状の押型50を使用すると、底部53の中央付近を押さえることで、上下皮の周縁部分を均等に圧接しやすくなる。
【0032】
[S8.形状保持]
工程7で耳締めしたどら焼き20を、竹笊30の凹面部30aに保つことにより、下皮22の凸面部20aの形状をそのまま保持する。そして、どら焼き20と竹笊30を組み合わせた状態でどら焼き製品10として完成させる。このどら焼き製品10は、このまま店頭に並べてもよいし、袋詰めなどの包装を行ってよい。
【0033】
このようなどら焼き製品10の製造方法によれば、どら焼き20の下皮22の形状(凸面部20a)を笊の凹面部30aに沿って形成することができる。どら焼き20の完成後、竹笊30の凹面部30aにどら焼き20をそのまま保つことにより、下皮22の形状(凸面部20a)が竹笊30の凹面部30aに沿って支持される。これにより、どら焼き20のサイズが大型になっても、上皮21と下皮22の耳締め部20bで皮同士が剥がれる不具合がなくなり、“ドラ(銅鑼)”の形状を安定的に保持することができる。
また、このような製造方法では、どら焼き20のサイズを大きくしても、通常サイズのどら焼きと同様な生地や餡を使用することができるため、どら焼き本来の味や食感を保つことができる。
さらに、完成後のどら焼き製品10がどら焼き20と竹笊30とを組み合わせたものとなるため、大型サイズのどら焼き20にそのままナイフを入れてホールケーキのように切り分けるといった食べ方を提供することもできる。
さらに、竹笊30の凹面部30a上に下皮22を載せるとき、竹笊30の網目(ざる穴)が通気孔Hとなって下皮22表面の熱を発散させる効果を発揮するため、下皮22表面の蒸れを抑えて味や食感をさらに良好に保つことができる。特に、皮の焼き上がりの直後は、下皮22の表面が高温になっているため、このような竹笊30の放熱効果がどら焼き20の品質向上につながる。
【0034】
次に、どら焼きのサイズについて本発明者らが行った試作実験について説明する。
試作実験では、前述した製造方法の工程S1~S8に準じて、直径サイズが9cm、11cm、15cm、17cm、19cm、21cmの各種どら焼きを製造し、どら焼きのドラ“銅鑼”形状を保てる限界の直径サイズを検討した。生地と餡の使用量(グラム数)は、通常サイズである直径9cmのどら焼きを基準として、これに比例するように各種サイズの生地と餡の使用量を決定した。
【0035】
試作実験によるどら焼きの製法は、まず、前述した各種直径サイズの下皮をこれよりも若干サイズの大きい竹笊に置き、この下皮の中央付近に餡を載せ、さらにその上に上皮を載せた。その後、図5に示すように、竹笊と押型との間で上下皮の周縁部分を圧接し耳締めを行い、どら焼きを完成させた。
これらの各種サイズのどら焼きを竹笊から取り出し、調理台の上に放置して時間の経過と共に形状がどのように変化するかを観察した。
【0036】
試作実験の結果を図6図9に示す。図6図9はそれぞれ直径サイズが9cm、11cm、19cm、21cmのどら焼きを示すもので、各図の上段は完成時、中段は30分経過時、下段は120分経過時(図9は90分経過時)の形状変化の様子を示す。
直径サイズ9cmのどら焼きでは、完成後120分経過しても形状の変化は見られなかったが(図6参照)、直径サイズ11cmのどら焼きでは、完成後30分経過後には下皮の形状(凸面部)が崩れ、120分経過後には上下皮の耳締め部が部分的に剥がれて餡が露出した(図7参照)。直径サイズ15cmのどら焼きもこれに近い形状変化を示した。
直径サイズ17cmおよび19cmのどら焼きでは、完成後30分経過後には下皮が円盤状になって側方から見たどら焼きの形状がドーム状に変化し、120分経過後には、上下皮の耳締め部がほぼ全周に亘って剥がれて餡が露出した(図8参照)。
直径サイズ21cmのどら焼きでは、完成後30分経過後には上下皮の耳締め部がほぼ全周に亘って剥がれて餡が露出した(図9参照)。
このような試作実験の結果から、どら焼きの直径サイズが11cm以上、特に17cm以上の場合には本発明の適用が効果的であることが判明した。
【符号の説明】
【0037】
10・・どら焼き製品
20・・どら焼き
20a・・凸面部
20b・・耳締め部
21・・上皮
22・・下皮
23・・餡
30・・竹笊(受け容器)
30a・・凹面部
31・・底編み
32・・縁巻き
33・・結束材
40・・台紙
50・・押型
H・・通気孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9