(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】ドアハンドル及びドアハンドルの製造方法
(51)【国際特許分類】
E05B 85/16 20140101AFI20230130BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20230130BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20230130BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
E05B85/16 C
B29C45/14
B29C51/10
B60J5/04 H
(21)【出願番号】P 2019084971
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】595067877
【氏名又は名称】株式会社丸三金属
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 一晴
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-102567(JP,A)
【文献】特許第6410984(JP,B1)
【文献】特開2013-123877(JP,A)
【文献】特開2015-196288(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0315430(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B29C 31/00-73/34
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアの外側の凹部を横断するように配設されるグリップ型のドアハンドルであって、
前記ドアの開閉時に把持する棒状のグリップ部と、該グリップ部の両端に設けられて、前記凹部の両側に配置される両端部とを備え、
前記グリップ部は、正面視において上下縁が略円弧状に湾曲しており、
前記グリップ部及び前記両端部の外殻は、表面が加飾されていないフレーム部材と、該フレーム部材の正面側に組み付けられたカバー部材とによって構成されており、
前記カバー部材の裏側には、前記フレーム部材が内嵌する凹部が形成されており、
前記カバー部材は、樹脂製の支持基材と、該支持基材の表面に一体的に接合する光輝フィルムとを備えてなり、
前記光輝フィルムは、前記グリップ部の外殻を構成する部分では、縦断面形状が略C字状をなすように、前記支持基材の正面側を覆うとともに、前記支持基材の上下縁から前記支持基材の裏側まで覆っており、
前記カバー部材の裏側の前記凹部は、前記光輝フィルムで覆われず、
前記グリップ部の裏面視において、前記光輝フィルムの上側の端縁が、前記グリップ部の上縁の湾曲形状に沿うように略円弧状に湾曲しており、
前記グリップ部の裏面視において、前記光輝フィルムは、該光輝フィルムの上側の端縁と、前記グリップ部の上縁との間の略一定幅の略円弧形状部分で、前記支持基材を覆って
おり、
前記グリップ部の裏面視において、前記カバー部材の裏側の前記凹部の上縁と、前記光輝フィルムの上側の端縁との間に、前記支持基材が前記光輝フィルムで被覆されずに露出する部分が存在することを特徴とするドアハンドル。
【請求項2】
請求項1に記載のドアハンドルの製造方法であって、
前記光輝フィルムを、圧空成形又は真空圧空成形によって、前記支持基材に接合可能な形状に賦形する賦形工程と、
前記賦形工程で賦形した前記光輝フィルムを、前記カバー部材の構成部品の形状に裁断する裁断工程と、
前記裁断工程で裁断した前記光輝フィルムを成形型にセットして前記支持基材を射出成形して、前記カバー部材を成形する射出成形工程と
を含むことを特徴とするドアハンドルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝フィルムで被覆された自動車用のドアハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の自動車のグリップ型ドアハンドルの多くは、外側のカバー部材と、内側のベース部材とが中空のグリップ部(手をかける部分)を形成し、該グリップ部の内部にアンテナ等の電装部品が内蔵される(特許文献1参照)。ここで、カバー部材は、通常、金属調の光輝性装飾が施された光輝性樹脂成形品によって構成されるものであるが、メッキによる光輝性装飾は通信電波を大きく阻害するため、アンテナを内蔵した外部ドアハンドルでは、メッキ代替品として、支持基材の表面を光輝フィルムで被覆したカバー部材が採用されている。光輝フィルムで被覆したカバー部材は、メッキ同等の金属光沢を有するとともに、メッキしたものに比べて薄く電波損失が少ないという利点がある。また、このように光輝フィルムで被覆したカバー部材は、圧空成形(真空圧空成形を含む)によって加飾フィルムを支持基材の表面形状に賦形し、フィルムインサート成形によって、光輝フィルムの裏面に支持基材を射出成形することによって製造されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、
図11に示すように、一般的なドアハンドル1bのグリップ部6bの場合、ドアAの外側から視認され易い部分、すなわち、正面側と上下両端部を含む断面略C字状の部分Pに光輝性装飾が求められる。このため、光輝フィルムを断面略C字状に賦形しようとする場合、光輝フィルムを、グリップ部6bの上下両端部で裏側内方に折り返してアンダーカット部を形成している。
【0004】
また、近年では、特許文献1の
図1に示されるような寸胴形状のグリップ部に替えて、意匠性向上や人間光学的観点からグリップ部の上下縁を略円弧状に湾曲させたドアハンドルが増加している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光輝フィルムは、加熱し過ぎると金属薄膜が白化して金属光沢が失われてしまうため、通常のフィルムに比べて、加熱軟化が不十分な状態で圧空成形を行わなくてはならない。このため、圧空成形時に光輝フィルムを大きく変形させようとすると、光輝フィルムが破れたり、金属薄膜がひび割れたりしてしまうという問題がある。このように、光輝フィルムは、白化や破損させずに大きく変形させるのが難しいため、上述のように、光輝フィルムを断面略C字状に賦形するのに困難が伴っていた。特に、寸胴形状のグリップ部の場合は、グリップ部の裏側を被覆する部分が可展面となるのに対して、正面視において上下縁が略円弧形状に湾曲したグリップ部の場合は、グリップ部の裏側を被覆する部分が三次元曲面となるため、光輝フィルムをより大きく変形させなくてはならない。このため、正面視において上下縁が略円弧形状に湾曲したグリップ部を、光輝フィルムで適切に被覆したドアハンドルは存在していなかった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みて為されたものであり、正面視において上下縁が略円弧形状に湾曲したグリップ部を具備するドアハンドルを、光輝フィルムで適切に被覆し得る構成の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自動車のドアの外側の凹部を横断するように配設されるグリップ型のドアハンドルであって、前記ドアの開閉時に把持する棒状のグリップ部と、該グリップ部の両端に設けられて、前記凹部の両側に配置される両端部とを備え、前記グリップ部は、正面視において上下縁が略円弧状に湾曲しており、前記グリップ部及び前記両端部の外殻は、表面が加飾されていないフレーム部材と、該フレーム部材の正面側に組み付けられたカバー部材とによって構成されており、前記カバー部材は、樹脂製の支持基材と、該支持基材の表面に一体的に接合する光輝フィルムとを備えてなり、前記光輝フィルムは、前記グリップ部の外殻を構成する部分では、縦断面形状が略C字状をなすように、前記支持基材の正面側を覆うとともに、前記支持基材の上下縁から前記支持基材の裏側まで覆っており、前記グリップ部の裏面視において、前記光輝フィルムの上側の端縁が、前記グリップ部の上縁の湾曲形状に沿うように略円弧状に湾曲しており、前記グリップ部の裏面視において、前記光輝フィルムは、該光輝フィルムの上側の端縁と、前記グリップ部の上縁との間の略一定幅の略円弧形状部分で、前記支持基材を覆っていることを特徴とするドアハンドルである。ここで、ドアハンドルの正面側とは、自動車のドアに取り付けられた状態で、ドアの正面側になる側を指し、ドアハンドルの裏面側は、正面側の裏側を指す。
【0009】
発明者の研究によれば、かかる構成のように、グリップ部の全長に亘って、光輝フィルムでグリップ部の裏側を略一定幅の略円弧形状となるように被覆すれば、グリップ部の裏側の三次元曲面に倣うように光輝フィルムを賦形する際に特定箇所に負荷が集中せず、光輝フィルムが白化・破損し難くなる。また、かかる略円弧形状の幅を適性幅に設定すれば、正面側から、光輝フィルムで被覆されていない部分が視認されるのを防止できる。したがって、本発明によれば、正面視において上下縁が略円弧形状に湾曲したグリップ部を具備するドアハンドルを、光輝フィルムで適切に被覆可能となる。
【0010】
また、上記発明のドアハンドルの製造方法として、前記光輝フィルムを、圧空成形又は真空圧空成形によって、前記支持基材に接合可能な形状に賦形する賦形工程と、前記賦形工程で賦形した前記光輝フィルムを、前記カバー部材の構成部品の形状に裁断する裁断工程と、前記裁断工程で裁断した前記光輝フィルムを成形型にセットして前記支持基材を射出成形して、前記カバー部材を成形する射出成形工程とを含むことを特徴とするドアハンドルの製造方法が提案される。かかる製造方法によれば、上記発明のドアハンドルを適切に製造可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上に述べたように、本発明のドアハンドルによれば、正面視において上下縁が略円弧形状に湾曲したグリップ部を具備するドアハンドルを、光輝フィルムで適切に被覆可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は、実施例のドアハンドル1の斜視図であり、(b)は、ドアハンドル1の分解斜視図である。
【
図2】本実施例のドアハンドル1を装着した自動車のドアAの正面図である。
【
図3】(a)は、カバー部材7の正面図であり、(b)は、カバー部材7の裏面図であり、(c)は、カバー部材7の側面図である。
【
図4】実施例のドアハンドル1のグリップ部6の縦断面図である。
【
図5】カバー部材7の製造工程を示す説明図である。
【
図6】賦形工程に用いる成形型30及び圧空ボックス31の断面図である。
【
図7】光輝フィルム10の賦形工程を示す説明図である。
【
図11】従来のドアハンドル1bの要加飾部位Pを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1(a)は、実施例のドアハンドル1の斜視図である。かかるドアハンドル1は、
図2に示すように、自動車のドアAの外板に形成された凹部Bを横断するように配設されるグリップ型である。
図1(a)に示すように、ドアハンドル1は、ドアAの外側に露出する左右に長尺なドアハンドル本体2を主体とする。ドアハンドル本体2は、凹部Bを横断するように架設され、ドアAの開閉時に把持する棒状のグリップ部6と、グリップ部6の両端に配設されて、凹部Bの両側に配置される左右一対の両端部4a,4bとを備えてなる。ここで、両端部4a,4bは、グリップ部6よりも縦幅が広くなるように上下に膨隆した形状となっている。また、グリップ部6は、中央部で縦幅が最も狭くなるように、正面視において上下縁が内側へ凹む略円弧状に湾曲している。また、ドアハンドル本体2の内部には、中空部5が形成される。図示は省略しているが、この中空部5には、電波通信用のアンテナや、利用者を検知するタッチセンサ等の電装品が内蔵される。また、ドアハンドル本体2の両端部4a,4bの裏側には、ドアAに連結される連結部3a,3bが配設される。具体的には、一方の連結部3aは、ドアAに配設されたベース部材(図示省略)に軸支され、他方の連結部3bは、同ベース部材(図示省略)に係止される。
【0014】
ドアハンドル1は、
図1(b)に示すように、ドアハンドル本体2の正面側を構成するカバー部材7と、裏側を構成するフレーム部材8の二部材によって主に構成される。フレーム部材8は、ドアハンドル本体2の裏側を構成するフレーム本体20の両端に、連結部3a,3bを夫々一体的に形成してなるものであり、フレーム本体20の正面側には、中空部5を形成する凹部21が設けられる。このフレーム部材8は、AES樹脂等からなる射出成形品である。フレーム部材8は、カバー部材7の裏側に内嵌して、ドアAの正面側からは視認困難となっているため、その表面は加飾されていない。
【0015】
カバー部材7は、
図1(b)に示すように、棒状をなしており、フレーム部材8のフレーム本体20を正面側から覆うように組み付けられて、カバー部材7とフレーム本体20とによってドアハンドル本体2の外殻を構成する。カバー部材7は、樹脂製の支持基材11の表面に金属光沢を有する一枚の光輝フィルム10が一体的に接合されてなる光輝性樹脂成形品である。
図3に示すように、カバー部材7の裏側には、フレーム本体20が内嵌する凹部12が形成される。光輝フィルム10は、当該凹部12を除いたカバー部材7の表面の略全てを覆っている。なお、支持基材11の形状や材料は、既存の光輝性樹脂成形品と同じものを採用できる。支持基材11の材料としては、PC-PBT、ABS樹脂、ポリカABS、AES樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、PE系樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0016】
図4は、ドアハンドル1のグリップ部6を、長手方向と垂直な方向に切断した端面図である。
図4に示されるように、グリップ部6の外殻は、カバー部材7とフレーム部材8とによって構成されている。ここで、グリップ部6の要加飾部である、外側部と上下両端部を含む断面略C字状の部分はカバー部材7によって構成され、フレーム部材8は、グリップ部6の裏側に露出するのみである。このように、ドアハンドル1は、グリップ部6の要加飾部をカバー部材7のみで構成することで、フレーム部材8を加飾不要としている。そして、
図4に示すように、グリップ部6の要加飾部の装飾は、カバー部材7の表面に溶着された一枚の光輝フィルム10によって実現されている。光輝フィルム10は、グリップ部6では、縦断面形状が略C字状をなすように、支持基材11の正面側を覆うとともに、支持基材11の上下縁から支持基材11の裏側まで被覆している。そして、
図3(b)に示すように、グリップ部6において、光輝フィルム10が支持基材11の上下縁から裏側内方に折り返された部分は、略円弧形状のアンダーカット部13を構成している。
【0017】
光輝フィルム10は、金属薄膜と、該金属薄膜の表面側を覆う透明な表面樹脂層と、該金属薄膜の裏面側を覆う有色の裏面樹脂層とを一体的に接合してなるものである。金属薄膜は、厚さ約500~800Åのインジウム薄膜からなるものであり、この金属薄膜によって光輝フィルムの表面に金属光沢が付与される。裏面樹脂層は、厚さ約150~250μmのABS樹脂製フィルムで構成される。表面樹脂層は、金属薄膜の表面に接する厚さ約10~30μmの透明なPET樹脂層と、該PET樹脂層の表面と接する厚さ約25~150μmの透明なPMMA樹脂層とで構成される。なお、PET樹脂層は金属薄膜形成時の基材を構成するものであるが、PMMA樹脂層を金属薄膜の基材とすることにより、表面樹脂層をPMMA樹脂層のみの一層構造とすることもできる。かかる光輝フィルム10については、既知の光輝フィルムを好適に用い得るため、詳細な説明は省略する。
【0018】
このように、本実施例にあっては、カバー部材7のグリップ部6を構成する部分を、一枚の光輝フィルム10が断面略C字状をなすようにして支持基材11の表面を覆っているため、グリップ部6の要装飾部に、メッキ同様の光沢を有する、継ぎ目のない光輝性装飾が実現される。
【0019】
次に、上記カバー部材7の製造方法の概略を説明する。上記カバー部材7は、以下に説明する各工程を順番に行うことによって製造される。
【0020】
<光輝フィルム製造工程>
光輝フィルム製造工程では、PET樹脂フィルム(PET樹脂層)の片面にインジウムを真空蒸着して金属薄膜を形成し、金属薄膜を形成したPET樹脂フィルムの両面に、PMMA樹脂フィルム(PMMA樹脂層)とABS樹脂フィルム(裏面樹脂層)を夫々接着し、金属薄膜と裏面樹脂層と表面樹脂層とからなる三層構造の光輝フィルム10を製造する。なお、PET樹脂フィルム(PET樹脂層)に対するインジウムの真空蒸着はインライン式の真空蒸着装置を用いて連続的に行うことができる。また、上述のように、表面樹脂層をPMMA樹脂層のみの一層構造とする場合には、PMMA樹脂層フィルムの片面にインジウムを真空蒸着して金属薄膜を形成し、これにABS樹脂フィルムを接着すればよい。各フィルムの製造及び接着は、周知の方法によって可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0021】
<賦形工程>
賦形工程では、平坦な光輝フィルム10(
図5(a)参照)に圧空成形を施して、光輝フィルム10に、支持基材11の表面に接合可能な凹凸形状を形成する(
図5(b)参照)。かかる賦形工程において、光輝フィルム10にアンダーカット部13が形成されることとなる。この賦形工程については、別途詳述する。
【0022】
<裁断工程>
裁断工程では、
図5(c)に示すように、賦形した光輝フィルム10を、カバー部材7の構成部品としての形状に裁断する。
【0023】
<射出成形工程>
射出成形工程では、まず、賦形、裁断した光輝フィルム10を、その表面が型面に密接するように金型にセットして型閉じし、光輝フィルム10の裏面側に溶融した黒色のAES樹脂を射出し、光輝フィルム10の裏面に支持基材11を成形する。この時、射出したAES樹脂が光輝フィルム10の裏面に溶着することによって、
図5(d)に示すように、光輝フィルム10の裏面に支持基材11が一体的に積層されてなるカバー部材7が得られる。
【0024】
以下に、上記賦形工程について詳述する。
図6は、賦形工程に用いる成形型30及び圧空ボックス31である。成形型30には、支持基材11の表面形状に合わせた断面キノコ状の突部32が二つ形成されており、突部32の根元の窪んだ部分33が、光輝フィルム10のアンダーカット部13を成形するためのアンダーカット成形部となっている。成形型30の型面には、成形型内部の空気を排出するための排気孔34,35が開口している。排気孔34,35は、アンダーカット成形部33に開口する第一排気孔34と、アンダーカット成形部33以外の部分に開口する第二排気孔35の二種類があり、別々に開閉可能となっている。また、圧空ボックス31には、圧空ボックス内部の空気を出し入れする通気孔36が形成される。
【0025】
賦形工程では、まず、
図7(a)に示すように、賦形前の平坦な光輝フィルム10の隅をクランプし、ヒーター37で加熱軟化させる(加熱軟化ステップ)。この時、光輝フィルム10の劣化を防ぐため、加熱温度は一般フィルムよりも低い100~160℃とする。続いて、
図7(b)に示すように、加熱軟化した光輝フィルム10を、成形型30と圧空ボックス31の間に挟み込む(型締めステップ)。この時、光輝フィルム10は、表側が圧空ボックス31に向いた状態とする。これらのステップは、既存の圧空成形と同様にできるため、詳細な説明は省略する。
【0026】
そして、
図7(d)に示すように、圧空ボックス31の通気孔36から加熱圧縮空気を注入するとともに、第二排気孔35を外気と連通させて自然排気状態とすることにより、15~100気圧程度の差圧を光輝フィルム10の両側に発生させる(賦形ステップ)。これにより、光輝フィルム10は、成形型30の型面により強く押し付けられて型面に密着し、型面の突部32の形状に賦形されることとなる。賦形ステップの期間は、成形型やフィルムの種類によって異なるため、一義的には決定されるものではないが、一般的には0.1秒~20秒程度である。
【0027】
賦形ステップが終了すると、通気孔36を外気と連通させて圧空ボックス31を大気圧として型開きをし、賦形した光輝フィルム10を冷却した後に脱型する。この時、光輝フィルム10のアンダーカット部13が、成形型30のアンダーカット成形部33に食い込むように型面に密着しているが、第一排気孔34から空気を吹きこんで光輝フィルム10を撓ませることで容易に成形型30から抜き取ることができる。
【0028】
なお、以上の賦形工程では光輝フィルム10を圧空成形で賦形しているが、圧空成形に替えて、真空圧空成形で光輝フィルム10を賦形することも可能である。
【0029】
以下に、本発明の要部に係る構成について説明する。
図4,8に示すように、本実施例に係るカバー部材7では、光輝フィルム10が、グリップ部6を構成する部分(グリップ部構成部)14において、カバー部材7の上縁17aと下縁17bから裏側に回り込み、グリップ部構成部14の上部の裏側と、下部の裏側を被覆している。なお、光輝フィルム10は、ドアハンドル本体2の端部4a,4bを構成する部分15a,15bにおいては、カバー部材7の裏側に回り込んでおらず、本実施例では、グリップ部構成部14のみにアンダーカット部13が設けられている。ここで、本実施例では、
図8に示すように、光輝フィルム10のアンダーカット部13は、グリップ部構成部14の全長に亘る、略一定幅の略円弧形状をなしている。具体的には、光輝フィルム10の上下の端縁18a,18bが、カバー部材7の裏面視において、グリップ部構成部14の上下縁17a,17bの湾曲形状に沿うように略円弧状に湾曲している。そして、これにより、グリップ部構成部14の上縁17aと、光輝フィルム10の上側の端縁18aとの間に、上方に凹となる略円弧形状のアンダーカット部13が形成される。また、同様にして、グリップ部構成部14の下縁17bと、光輝フィルム10の下側の端縁18bとの間に、下方に凹となる略円弧形状のアンダーカット部13が形成される。また、本実施例では、かかる略円弧形状のアンダーカット部13が、裏面視において、グリップ部構成部14の全長に亘って略一定幅となるように、裏面視における光輝フィルム10の上下の端縁18a,18bの形状を、グリップ部構成部14の上下縁17a,17bの形状を僅かに拡大した相似形状として、裏面視において、光輝フィルム10の上下の端縁18a,18bの曲率Rbを、グリップ部構成部14の上下縁17a,17bの曲率Raよりも僅かに小さく(緩やか)している。
にしている。
【0030】
このように、本実施例のドアハンドル1では、裏面視において、光輝フィルム10の上下のアンダーカット部13が、グリップ部6の全長に亘って略一定幅の略円弧形状となっているため、圧空成形や真空圧空成形で光輝フィルム10を賦形する際に、アンダーカット部13に局所的な負荷が掛かり難く、光輝フィルム10を破損させたり、白化させたりすることなく、グリップ部6の裏側を確実に賦形できるという利点がある。このため、当該略円弧形状の幅を適正値(通常は4mm以上)に設定すれば、自動車のドアAの外側から視認可能な部位を適切に被覆して、十分な意匠性を確保できる。
【0031】
図9は、上記実施例からカバー部材の形状を変更した、変形例のドアハンドル1の斜視図である。具体的には、上記実施例に係るグリップ部6が、正面視において中央部の縦幅が細くなるように、グリップ部6を構成する部分でカバー部材7の上下縁が内側に凹む略円弧形状をなしていたのに対して、本変形例のグリップ部6aは、正面視において中央部の縦幅が広くなるように、グリップ部6aを構成する部分でカバー部材7aの上下縁が外側に膨らむ略円弧形状をなしている。なお、本変形例について特に言及しない部分については、上記実施例と同じ構成であり、実施例と共通する構成については、
図9,10において同一符号を付している。
【0032】
図10に示すように、本変形例に係るカバー部材7aにあっても、光輝フィルム10は、グリップ部6aを構成する部分(グリップ部構成部)14aにおいて、カバー部材7の上縁17cと下縁17dから裏側に回り込み、グリップ部構成部14aの上部の裏側と、下部の裏側を被覆している。そして、本変形例では、光輝フィルム10のアンダーカット部13aは、グリップ部構成部14aの全長に亘って、外側に凸となる略一定幅の略円弧形状をなしている。具体的には、光輝フィルム10の上下の端縁18c,18dが、カバー部材7aの裏面視において、グリップ部構成部14aの上下縁17c,17dの湾曲形状に沿うように略円弧状に湾曲している。そして、これにより、グリップ部構成部14aの上縁17cと、光輝フィルム10の上側の端縁18cとの間に、上方に凸となる略円弧形状のアンダーカット部13aが形成される。また、同様にして、グリップ部構成部14aの下縁17dと、光輝フィルム10の下側の端縁18dとの間に、下方に凸となる略円弧形状のアンダーカット部13aが形成される。また、本実施例では、かかる略円弧形状のアンダーカット部13aが、裏面視において、グリップ部構成部14aの全長に亘って略一定幅となるように、裏面視における光輝フィルム10の上下の端縁18c,18dの形状を、グリップ部構成部14の上下縁17c,17dの形状を僅かに縮小した相似形状として、裏面視において、光輝フィルム10の上下の端縁18a,18bの曲率Rdを、グリップ部構成部14の上下縁17c,17dの曲率Rcよりも僅かに大きく(きつく)している。
【0033】
このように、正面視においてグリップ部6aの上下縁が外側に膨らむ略円弧形状をなしている場合であっても、裏面視において、光輝フィルム10の上下のアンダーカット部13aが、グリップ部6の全長に亘って略一定幅の略円弧形状となるよう構成すれば、圧空成形や真空圧空成形で光輝フィルム10を賦形する際に、アンダーカット部13aに局所的な負荷が掛かり難く、光輝フィルム10を破損させたり、白化させたりすることなく、グリップ部6aの裏側を確実に賦形できる。このため、当該略円弧形状の幅を適正値(通常は4mm以上)に設定すれば、自動車のドアAの外側から視認可能な部位を適切に被覆して、十分な意匠性を確保できる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施例の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、上記実施例では、左右両側のドアでドアハンドル1を共通部品化するために、カバー部材7は上下対称形状をなしているが、カバー部材7は上下非対称形状であってもよい。
【0035】
また、上記実施例では、光輝フィルム10のアンダーカット部13は、グリップ部6のみに形成されているが、グリップ部6に加えて、ドアハンドル本体2の端部4a,4bにもアンダーカット部を形成するようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施例に係るドアハンドルのグリップ部は、中央部の縦幅が最も狭く(又は最も広く)なる形状であったが、本発明に係るグリップ部は、正面視において上下縁が略円弧状に湾曲していればよく、縦幅の最も狭い部分が、中央部以外であっても構わない。
【0037】
また、本発明に係る光輝フィルムは、実施例の構成に限らず、金属薄膜の表裏を樹脂で被覆してなる既知の光輝フィルム全般を採用できる。光輝フィルムの金属薄膜は、樹脂フィルムに真空蒸着してなる真空蒸着膜や、樹脂フィルムにスパッタリングしてなるスパッタ膜が好適に用いられる。金属薄膜の材料は特に限定されないが、望ましいものとしては、アルミニウム、インジウム、ニッケル、クロム、ステンレスなどが挙げられ、電波透過性の観点では、インジウムが好適である。また、光輝フィルムは、全面が金属光沢を有しているものに限らず、その一部に金属光沢以外の装飾を施されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 ドアハンドル
2 ドアハンドル本体
3a,3b 連結部
4a,4b 両端部
6 グリップ部
7 カバー部材
8 フレーム部材
10 光輝フィルム
11 支持基材
12 凹部
13 アンダーカット部