(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】出力システムのキャリブレーション方法及び初期設定方法
(51)【国際特許分類】
G01D 13/04 20060101AFI20230130BHJP
G01D 13/22 20060101ALI20230130BHJP
G01D 18/00 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
G01D13/04 Z
G01D13/22 Z
G01D18/00
(21)【出願番号】P 2019087683
(22)【出願日】2019-05-07
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】516368173
【氏名又は名称】株式会社SIRC
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩章
(72)【発明者】
【氏名】中辻 文男
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044280(WO,A1)
【文献】特開2017-203775(JP,A)
【文献】特開2018-004294(JP,A)
【文献】特開2018-115890(JP,A)
【文献】特開2012-068114(JP,A)
【文献】特開2016-061708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 13/04,13/22
G08C 19/00
G01D 18/00
G01B 7/30
G01D 7/00, 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を有し、当該軸周りに回転する計器の指針が示す指示値を出力するための出力システムであって、
前記指針の前記軸上に配置され、前記指針と共に回転する磁石と、
磁界の検出感度が最大となる感度軸方向をそれぞれ有し、前記磁石の磁界を検出するように構成される複数の磁力センサと、
前記複数の磁力センサの検出値に基づいて、前記指針が示す指示値に関する指示値情報を生成する情報生成部と、
前記生成された指示値情報を出力する出力部と、
前記出力システムの初期設定情報の入力を受け付ける入力受付部と、
を備え、
前記複数の磁力センサは、各々の前記感度軸方向が前記計器上において互いに交差するように配置され、
前記情報生成部は、前記指針が示す指示値が定常な状態において、前記入力受付部を介して前記初期設定情報の入力が受け付けられると、前記定常な状態における前記複数の磁力センサの検出値と、前記初期設定情報とを関連付けたデータを生成するように構成され
、
前記定常な状態では、前記計器が組み込まれる設備が停止していない、
出力システム。
【請求項2】
前記複数の磁力センサは、各々の前記感度軸方向が前記指針の前記軸上で互いに交差するように配置される、
請求項1に記載の出力システム。
【請求項3】
前記初期設定情報は、前記定常な状態において前記計器の指針が示す指示値を表す情報である、
請求項1又は2に記載の出力システム。
【請求項4】
前記複数の磁力センサの検出値と、前記指示値との仮の対応関係を示す対応関係データを記憶する記憶部
をさらに備え、
前記情報生成部は、前記定常な状態における前記複数の磁力センサの検出値と、前記初期設定情報とを関連付けたデータを生成すると、当該生成されたデータに基づいて、前記対応関係データを更新する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の出力システム。
【請求項5】
軸を有し、当該軸周りに回転する計器の指針が示す指示値を出力するための出力システムであって、前記指針の前記軸上に配置され、前記指針と共に回転する磁石と、磁界の検出感度が最大となる感度軸方向をそれぞれ有し、前記磁石の磁界を検出するように構成される複数の磁力センサと、前記複数の磁力センサの検出値に基づいて、前記指針が示す指示値に関する指示値情報を生成する情報生成部と、前記生成された指示値情報を出力する出力部と、前記出力システムの初期設定情報の入力を受け付ける入力受付部とを備える出力システムの初期設定方法であって、
該方法は、
前記複数の磁力センサを、各々の前記感度軸方向が前記計器上において互いに交差するように配置することと、
前記指針が示す指示値が定常な状態において、前記初期設定情報を前記入力受付部に入力することと、
前記情報生成部に、前記定常な状態における前記複数の磁力センサの検出値と、前記初期設定情報とを関連付けたデータを生成させることと、
を備え
、
前記定常な状態では、前記計器が組み込まれる設備が停止していない、
初期設定方法。
【請求項6】
前記複数の磁力センサを配置することは、各々の前記感度軸方向が前記指針の前記軸上で互いに交差するように前記複数の磁力センサを配置することを含む、
請求項
5に記載の初期設定方法。
【請求項7】
前記初期設定情報は、前記定常な状態において前記計器の指針が示す指示値を表す情報である、
請求項
5又は
6に記載の初期設定方法。
【請求項8】
前記出力システムは、記憶部をさらに備え、
前記方法は、
前記記憶部に、前記複数の磁力センサの検出値と、前記指示値との仮の対応関係を示す対応関係データを記憶させることと、
前記情報生成部に、前記定常な状態における前記複数の磁力センサの検出値と、前記初期設定情報とを関連付けたデータを生成させた後、当該生成させたデータに基づいて、前記対応関係データを更新させることと、
をさらに備える、
請求項5から7のいずれか1項に記載の初期設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力システムのキャリブレーション方法及び初期設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧力計等の工業計器に後付け可能な磁気センサ装置及びその初期設定方法が開示されている。工業計器は、目盛り板と指針とを備える。指針は、目盛り板上で軸周りに回転し、目盛り板上の値を指示する。特許文献1で開示される磁気センサ装置は、指針の指示値を遠隔で読み取るための装置であり、磁石及び3つの磁気センサを備える。磁石は指針に取り付けられ、指針と共に回転する。磁気センサは、目盛り板上の目盛りのゼロ位置、最大位置、及びこれらの中間位置にそれぞれ配置される。これらの磁気センサにより磁気センサに対する磁石の相対位置が検出され、磁石の相対位置に基づいた指針の指示値が電気信号として出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される磁気センサ装置は、既存の計器に後付けされる。磁気センサ装置を後付けする際、磁気センサ装置の出力と、対象の計器の指示値とを対応させる初期設定が必要となる。特許文献1による初期設定は、対象となる計器の指針が目盛の最小値及び最大値を指すようにして、それぞれの場合に対応する磁気センサの出力を記憶させることにより行われる。即ち、計器に加わる圧力を実際に変化させるため、場合によっては計器が組み込まれている設備を初期設定のために稼働させる必要があり、磁気センサ装置の導入作業が煩雑になりがちである。また、特許文献1には指針を動かさず、磁気センサユニットを指針に対して動かす初期設定方法も開示されている。この方法では、指針がゼロ点を指すようにし、かつ、人手により磁気センサユニットを所定の位置に複数回位置合わせする必要があるので、やはり作業が煩雑となりがちである。また、磁気センサユニットに含まれる磁気センサの個体差等により、磁気センサの出力に基づいて読み取る指針の指示値に誤差が生じ得るが、特許文献1の初期設定方法及びキャリブレーション方法では、そのことが考慮されていない。
【0005】
本発明は、一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、計器の指針の指示値を出力する技術の品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る出力システムは、軸を有し、当該軸周りに回転する計器の指針が示す指示値を出力するための出力システムであって、磁石と、複数の磁力センサと、情報生成部と、出力部と、入力受付部とを備える。磁石は、前記指針の前記軸上に配置され、前記指針と共に回転する。複数の磁力センサは、磁界の検出感度が最大となる感度軸方向をそれぞれ有し、前記磁石の磁界を検出するように構成される。情報生成部は、前記複数の磁力センサの検出値に基づいて、前記指針が示す指示値に関する指示値情報を生成する。出力部は、前記生成された指示値情報を出力する。入力受付部は、前記出力システムの初期設定情報の入力を受け付ける。前記複数の磁力センサは、各々の前記感度軸方向が前記計器上において互いに交差するように配置される。前記情報生成部は、前記指針が示す指示値が定常な状態において、前記入力受付部を介して前記初期設定情報の入力が受け付けられると、前記定常な状態における前記複数の磁力センサの検出値と、前記初期設定情報とを関連付けたデータを生成するように構成される。
【0007】
上記一側面に係る出力システムにおいて、前記複数の磁力センサは、各々の前記感度軸方向が前記指針の前記軸上で互いに交差するように配置されてもよい。
【0008】
上記一側面に係る出力システムにおいて、前記初期設定情報は、前記定常な状態において前記計器の指針が示す指示値を表す情報であってもよい。
【0009】
本開示の一側面に係る出力システムの初期設定方法は、軸を有し、当該軸周りに回転する計器の指針が示す指示値を出力するための出力システムの初期設定方法である。前記出力システムは、磁石と、複数の磁力センサと、情報生成部と、出力部と、入力受付部とを備える。磁石は、前記指針の前記軸上に配置され、前記指針と共に回転する。複数の磁力センサは、磁界の検出感度が最大となる感度軸方向をそれぞれ有し、前記磁石の磁界を検出するように構成される。情報生成部は、前記複数の磁力センサの検出値に基づいて、前記指針が示す指示値に関する指示値情報を生成する。出力部は、前記生成された指示値情報を出力する。入力受付部は、前記出力システムの初期設定情報の入力を受け付ける。初期設定方法は、以下のことを備える。
・前記複数の磁力センサを、各々の感度軸方向が前記計器上において互いに交差するように配置すること。
・前記指針が示す指示値が定常な状態において、前記初期設定情報を前記入力受付部に入力すること。
・前記情報生成部に、前記定常な状態における前記複数の磁力センサの検出値と、前記初期設定情報とを関連付けたデータを生成させること。
【0010】
上記一側面に係る出力システムの初期設定方法において、前記複数の磁力センサを配置することは、各々の前記感度軸方向が前記指針の前記軸上で互いに交差するように前記複数の磁力センサを配置することを含んでもよい。
【0011】
上記一側面に係る出力システムの初期設定方法において、前記初期設定情報は、前記定常な状態において前記計器の指針が示す指示値を表す情報であってもよい。
【0012】
本開示の一側面に係る出力システムのキャリブレーション方法は、軸を有し、当該軸周りに回転する計器の指針が示す指示値を出力するための出力システムのキャリブレーション方法であって、前記出力システムは、磁石と、第1磁力センサと、第2磁力センサと、記憶部と、情報生成部と、出力部とを備える。前記磁石は、前記指針の前記軸上に配置され、前記指針と共に回転する。前記第1磁力センサは、磁界を検出し、第1検出値を出力するように構成される。前記第2磁力センサは、磁界を検出し、第2検出値を出力するように構成される。前記記憶部は、前記第1検出値及び前記第2検出値を補正するためのパラメータを記憶する。前記情報生成部は、前記パラメータを用いて補正された前記第1検出値及び前記第2検出値に基づいて前記指針が示す指示値に関する指示値情報を生成する。前記出力部は、前記生成された指示値情報を出力する。前記第1磁力センサは、磁界の検出感度が最大となる第1感度軸方向を有する。前記第2磁力センサは、磁界の検出感度が最大となる第2感度軸方向を有する。前記第1磁力センサ及び前記第2磁力センサは、前記第1感度軸方向と前記第2感度軸方向とが第1地点において交差するように配置される。キャリブレーション方法は、以下のことを備える。
・前記第1地点又は前記第1地点の付近を通る第1軸上に、第1磁石の中心を配置すること。
・前記第1軸回りに、前記第1磁石を前記第1磁力センサ及び前記第2磁力センサに対して相対回転させること。
・前記第1磁力センサから出力される前記第1検出値を順次取得すること。
・前記第2磁力センサから出力される前記第2検出値を順次取得すること。
・前記順次取得された第1検出値及び第2検出値に基づいて前記パラメータを算出すること。
・前記算出されたパラメータを前記記憶部に記憶させること。
【0013】
上記一側面に係る出力システムのキャリブレーション方法において、前記パラメータは、前記第1検出値の振幅と、前記第2検出値の振幅とのずれを補正するためのパラメータであってもよい。
【0014】
上記一側面に係る出力システムのキャリブレーション方法において、前記パラメータは、前記第1検出値のピーク値と前記第1検出値のボトム値との中間値からのずれ量を補正するためのパラメータであってもよい。
【0015】
上記一側面に係る出力システムのキャリブレーション方法において、前記パラメータは、前記第2検出値のピーク値と前記第2検出値のボトム値との中間値からのずれ量を補正するためのパラメータであってもよい。
【0016】
上記一側面に係る出力システムのキャリブレーション方法において、前記パラメータは、前記第1検出値の位相と、前記第2検出値の位相とのずれを補正するためのパラメータであってもよい。
【0017】
上記一側面に係る出力システムのキャリブレーション方法において、前記第1磁力センサ及び前記第2磁力センサは、前記第1感度軸方向と前記第2感度軸方向とが直交するように配置されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の観点によれば、初期設定が簡易な操作で実行可能な出力システムが提供される。これにより、計器の指針の指示値を出力する出力システムが既存の計器に対して一層導入しやすくなる。また、本発明の第7の観点によれば、出力システムが備える複数の磁力センサの個体差や、磁力センサの配置される位置のずれ等による磁力センサの検出値の誤差を補正することができる。これにより、出力システムの目盛の読み取り精度を向上させることができる。すなわち、本発明のこれらの観点によれば、計器の指針の指示値を出力する出力システムの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、出力システム及び計器の一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、出力システム及び計器の一例を示す側面図である。
【
図3】
図3は、出力システム及び計器の一例を示す分解側面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る磁力センサの一例を示す。
【
図6】
図6は、指針の軸付近の構成を示す部分断面図である。
【
図7】
図7は、センサユニットの取り付け方法の一例を説明する図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る出力システムの回路構成の一例を示す。
【
図9】
図9は、磁力センサの検出値のグラフである。
【
図10】
図10は、キャリブレーション方法を説明する図である。
【
図11】
図11は、初期設定の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、キャリブレーションの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14B】
図14Bは、位相ずれのキャリブレーション方法を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0021】
§1 構成例
まず、
図1~
図3を用いて、本実施形態に係る出力システム70の構成例について説明する。
図1~
図3は、本実施形態に係る出力システム70及び出力システム70が対象とする計器1の一例を模式的に示す平面図、側面図及び分解側面図である。なお、各図では、計器1の一例として、ブルドン管圧力計を例示する。しかしながら、計器1の種類は、ブルドン管圧力計に限られなくてもよく、軸周りに回転する指針を有するものであれば、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0022】
各図に示されるとおり、計器1は、本体部10、透明カバー11、目盛り板12、及び指針13を含む計器本体を備えている。計器1に出力システム70が適用されることにより、計器1は、指針13の指示値を出力可能に構成されるため、作業者の目視に依らずとも、指針13の指示値を確認することができるようになる。以下、各構成要素について説明する。
【0023】
[計器本体]
まず、計器本体について説明する。計器本体は、軸20、本体部10、透明カバー11、目盛り板12、及び指針13を含んでいる。本体部10は、軸20に沿って扁平な円筒状に形成されており、これによって、ブルドン管の内部機構15を収容する内部空間101を有するように構成されている(
図2参照)。
【0024】
内部機構15は、公知のブルドン管圧力計の内部機構と同様であり、回転軸151(後述する
図6参照)と接続している。回転軸151は、軸20と一致しており、内部機構15に供給される測定対象の圧力に応じて回転するように構成されている。回転軸151の上端は、目盛り板12の中央付近を貫通して、当該目盛り板12の上面側に露出している。
【0025】
目盛り板12の上面には、目盛り121が設けられている。目盛り121は、軸20周りに円弧状に形成されており、最小点を示す第1目印122、中間点を示す第2目印123、及び最大点を示す第3目印124を含んでいる。なお、目盛り121の数値は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。
図1の例では、第1目印122が0に対応付けられ、第2目印123が0.75に対応付けられ、第3目印124が1.5に対応付けられており、目盛り121は、0.05刻みで0から1.5までの数値を示している。
【0026】
回転軸151の上端には、連結具132を介して指針13が連結されている。これにより、指針13は、測定対象の圧力に応じて、目盛り板12上を軸20周りに回転するように構成されている。指針13は、その先端部分131が目盛り121上に配置される程度の長さを有しており、目盛り121に対して相対的に回転して、測定対象の圧力を示す。すなわち、先端部分131の直下の目盛り121の値が、指針13の示す値であり、測定対象の圧力の値である。
【0027】
また、本体部10の底部は閉じているのに対して、上端部102は開放されている。この上端部102には、透明カバー11が嵌り込んでおり、これによって、内部空間101は密閉されている。具体的には、透明カバー11は、カバー本体110、見返し111、及び透明板112を備えている。カバー本体110は、円筒状に形成されており、本体部10の外径よりもやや大きな内径を有している。これに対して、見返し111は、テーパを有する円筒状に形成されており、本体部10の内径とほぼ同じ又はやや小さい外径を有している。カバー本体110の上端は、円形状の透明板112で閉じられており、カバー本体110、見返し111、及び透明板112は適宜連結されている。見返し111が本体部10の上端部102側の内壁に嵌まり込むことで、透明カバー11は、本体部10の上端部102に固定される。
【0028】
目盛り板12及び指針13は、内部機構15よりも上方であって、透明カバー11の透明板112よりも下方に配置される。指針13が目盛り板12の上方に配置され、目盛り板12は、目盛り121の設けられた面が上面となるように配置される。これにより、目盛り121が上端部102側を向いた状態で、目盛り板12及び指針13は内部空間101に収容される。また、透明カバー11は、透明板112を介して目盛り板12及び指針13を視認可能な状態で上端部102をカバーする。透明板112の周縁部には、3つの貫通孔112aが互いに周方向に間隔を空けて形成される(
図1、7参照)。貫通孔112aには、後述するセンサユニット63を透明板112に取り付けるためのボルト14aが挿通される(
図1、7参照)。
【0029】
なお、透明板112の材料は、透明な材料であれば、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。例えば、透明板112には、ガラス板、アクリル板、ポリカーボネイト板、硬質の合成樹脂シート等が用いられてよい。透明板112の材料は、完全に透明な材料でなくてもよく、内部空間101に配置された目盛り板12及び指針13を視認可能な程度に透明であればよい。
【0030】
また、その他の構成要素の材料も、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。ここで、カバー本体110、見返し111、本体部10、及び目盛り板12の少なくともいずれかの材料には、磁気遮蔽体を用いることができる。これにより、後述する各磁力センサ(61、62)に対する地磁気の影響を遮断することができる。なお、磁気遮蔽体は、磁気を遮断可能な材料であり、当該磁気遮蔽体の一例として、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、ケイ素鋼、スーパーマロイ、パーマロイ、アモルファス磁性体等の他、ソフトフェライト等の酸化鉄を主成分とする軟磁性の電子セラミック材料、ポリエステル系銀銅導電塗料等を挙げることができる。
【0031】
[出力システム]
次に、出力システム70について説明する。
図3に示すように、出力システム70は、磁石30、第1磁力センサ61、第2磁力センサ62、第1基板40、及び第2基板50を備えている。以下では、第1磁力センサ61、第2磁力センサ62、第1基板40、及び第2基板50をまとめてセンサユニット63と称する。センサユニット63は、本実施形態では、透明板112の外側面に取り付けられる。出力システム70は、磁石30及びセンサユニット63とは別体として形成される制御装置(例えば、後述するタブレットPC90)をさらに備えてもよい。磁石30は、指針13の軸20上に配置され、指針13と共に回転する。各磁力センサ(61、62)は、磁石30の磁界を検出するように構成される。各基板(40、50)は、各磁力センサ(61、62)の検出値に基づいて指針13が示す指示値に関する指示値情報を生成し、タブレットPC90等に出力するように構成される。これにより、指針13の示す指示値が自動で読み取り可能になる。以下、各構成要素について説明する。
【0032】
(磁石)
まず、磁石30について説明する。磁石30は、例えば、永久磁石である。
図1に示されるとおり、本実施形態に係る磁石30は、指針13の回転に悪影響を及ぼすほどのトルクが生じないように、円形状に形成されている。そして、本実施形態に係る磁石30は、当該磁石30の中心が指針13の軸20上に位置するように配置され、固定される。そのため、指針13の回転に応じて磁石30の向きが変化し、磁石30の向きの変化に応じて磁石30から発生する磁界の状態が変化する。指針13の回転角度、すなわち、指針13の示す値に応じて、磁石30の回転角度が決定され、これによって、磁石30から発生する磁界の状態が決定される。
【0033】
なお、この磁石30を指針13上で固定する際、指針13に対する磁石30の向きは、適宜決定されてよい。例えば、指針13の先端部及び後端部を磁石30のN極及びS極にそれぞれ対応付けてもよい。このとき、磁石30のN極を指針13の先端部分131側に向けてもよいし、磁石30のS極を指針13の先端部分131側に向けてもよい。
【0034】
(第1基板及び第2基板)
次に、
図4A及び
図4Bを用いて、第1基板40及び第2基板50について説明する。
図4Aは、本実施形態に係る第1基板40の一例を示す。
図4Bは、本実施形態に係る第2基板50の一例を示す。
【0035】
図4Aに示すとおり、第1基板40は、MPU(microprocessor unit)52、電池41及び出力ユニット42を備える。出力ユニット42は、各磁力センサ(61、62)の検出値に基づいて生成される、指針13の示す値に関する指示値情報を出力するように適宜構成される。すなわち、出力ユニット42は、本発明の出力部として機能する。本実施形態に係る第1基板40は、円形状に形成されており、第1基板40の径は、指針13の長さ及び目盛り121の内径よりも小さくなっている。第1基板40の外縁部には、透明板112と同様に、周方向に間隔を空けた3つの貫通孔40aが形成される。3つの貫通孔40aの位置は、センサユニット63を透明板112に取り付けるときに、それぞれが3つの貫通孔112aの位置と重なるようになっている。また、第1基板40は、後述するようなスイッチ53をさらに備えていてもよい。本実施形態では、MPU52が配置される面と同じ面にスイッチ53が配置され、MPU52の配置される面とは反対側の面に電池41及び出力ユニット42が配置されている。
【0036】
一方、
図4Bに示すとおり、第2基板50上には、回路51が形成されている。この第2基板50の回路51には、後述するように一対のオペアンプ(511,513)が含まれる。また、回路51には、各磁力センサ(61、62)が接続される。本実施形態に係る第2基板50は、第1基板40と同様に円形状に形成されており、第2基板50の径は、指針13の長さ及び目盛り121の内径よりも小さくなっている。第2基板50の外縁部には、透明板112及び第1基板40と同様に、周方向に間隔を空けた3つの貫通孔50aが形成される。3つの貫通孔50aの位置は、センサユニット63を透明板112に取り付けるときに、それぞれが3つの貫通孔112a及び3つの貫通孔40aの位置と重なるようになっている。
【0037】
各基板(40、50)による回路構成の詳細については後述する。なお、指示値情報は、指針13の示す値に関する情報であれば、特に限定されなくてもよく、各磁力センサ(61、62)の第1検出値及び第2検出値そのものであってもよい。また、第1検出値及び第2検出値に基づいて特定された、磁石30(指針13)の回転角度であってもよい。さらに、第1検出値及び第2検出値に基づいて特定された、指針13の示す値であってもよい。なお、ここでいう第1検出値及び第2検出値は、後述するパラメータに基づいて補正された後の第1検出値及び第2検出値であってもよい。
【0038】
(各磁力センサ)
次に、
図5を用いて、磁界を検出する各磁力センサ(61、62)について説明する。
図5は、本実施形態に係る各磁力センサ(61、62)の構成の一例を模式的に例示する。各磁力センサ(61、62)の構成は、磁界の検出感度が最大となる感度軸方向を有するように構成されていれば、特に限定されなくてもよい。各磁力センサ(61、62)には、公知のセンサが利用可能である。例えば、各磁力センサ(61、62)には、特許第5885209号で公開される、磁気抵抗効果を利用した計測装置が利用可能である。本実施形態では、各磁力センサ(61、62)は、第2基板50上に配置される。より具体的には、第1磁力センサ61の第1感度軸方向Uと第2磁力センサ62の第2感度軸方向Vとが第2基板50上の第1地点Pで交差するように配置される(
図4B参照)。
【0039】
本実施形態では、各磁力センサ(61、62)は、矩形状に形成されており、第1部分81及び第2部分82の二つの部分に分かれている。第1部分81には、第2部分82とは反対側の第1端辺(図の上側の辺)を占めるように第1電極83が形成されている。同様に、第2部分82には、第1部分81とは反対側の第2端辺(図の下側の辺)を占めるように第2電極84が形成されている。
【0040】
そして、第1電極83及び第2電極84を設けた第1及び第2端辺とは直交する2つの端辺のうちの一方の第3端辺(図の右側の辺)には、第1部分81及び第2部分82の境界を跨ぐように矩形状の第3電極85が形成されている。これにより、第3電極85は、第1部分81及び第2部分82の両方で利用される。なお、各電極83~85の材料には、例えば、アルミニウム、銅等を用いることができる。
【0041】
第1部分81では、第1電極83と第3電極85との間に、磁性材料を用いて形成されたセンサ線86が形成されている。センサ線86は、第3電極85を設けた端辺とは反対の第4端辺(図の左側の辺)側で第1電極83と連結しており、第1及び第2端辺の対向する方向と第3及び第4端辺の対向する方向とに折り返しながら延びて、第3電極85と連結している。このセンサ線86には、第1及び第2端辺の対向する方向から傾く方向に延びる複数の導体膜87が、バーバーポールのように互いに間隔を空けて積層されている。
【0042】
同様に、第2部分82では、第2電極84と第3電極85との間に、磁性材料を用いて形成されたセンサ線88が形成されている。センサ線88は、第4端辺側で第2電極84と連結しており、第1及び第2端辺の対向する方向と第3及び第4端辺の対向する方向とに折り返しながら延びて、第3電極85と連結している。このセンサ線88には、第1及び第2端辺の対向する方向から傾く方向に延びる複数の導体膜89が、バーバーポールのように互いに間隔を空けて積層されている。
【0043】
なお、第1部分81及び第2部分82の境界線に対して、第2部分82のセンサ線88の形状と第1部分81のセンサ線86の形状とは互いに線対称になっている。また、第2部分82の各導体膜89の傾く向きは、第1部分81の各導体膜87の傾く向きと反対になっている。これにより、第2部分82の構成と第1部分81の構成とは線対称の関係になっている。
【0044】
以上のような各センサ線(86、88)及び各導体膜(87、89)における磁気抵抗効果の作用により、本実施形態に係る各磁力センサ(61、62)は、磁界の検出感度が最大となる感度軸方向(
図5の左右方向)を有するように構成される。なお、各センサ線(86、88)の磁性材料には、例えば、パーマロイ(NiFe)等を用いることができる。また、各導体膜(87、89)の材料には、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。
【0045】
(配置)
次に、
図6及び
図7を更に用いて、各基板(40、50)及び各磁力センサ(61、62)の配置について説明する。
図6は、本実施形態に係る指針13の軸20付近の構成を示す部分断面図である。本実施形態では、上記のとおり、内部機構15の回転軸151の上端に連結具132を介して指針13が連結しており、指針13の軸20上に磁石30が固定されている。これにより、磁石30は、指針13の回転に応じて軸20周りに回転する。本実施形態では、第2基板50が、各磁力センサ(61、62)が透明板112に対向し、オペアンプ(511,513)を含む回路51が上方を向くような向きで配置される。第1基板40は、第2基板50よりも上方に、電池41及び出力ユニット42が第2基板50に対向するような向きで配置されるとともに、MPU52及びスイッチ53が上方を向くような向きで配置される。
【0046】
図7は、本実施形態に係るセンサユニット63の取り付け方法の一例を説明する図である。センサユニット63は、透明板112の内部空間101側の面と反対側の面の中央付近に、例えばボルト14aとナット14bとを介して取り付けられる。
【0047】
具体的には、ボルト14aを第1基板40の貫通孔40a、第2基板50の貫通孔50a、及び透明板112の貫通孔112aにそれぞれ挿通して、透明板112の内部空間101側の面の側からナット14bを締めることにより、各基板(40、50)が透明板112に対して固定される。
【0048】
また、ボルト14aを貫通孔40a、50a、及び112aに挿通する際に、第2基板50と第1基板40との間、及び透明板112と第2基板50との間にそれぞれスペーサ14cを挟んでもよい。スペーサ14cは、例えば円筒状であり、中心にボルト14aが貫通する程度の径の貫通孔を有する。スペーサ14cを挟むことにより、第2基板50と第1基板40との間には一定の隙間が確保され、第2基板50と第1基板40とが対向する面において、互いに干渉し合うのを防止することができる。同様に、スペーサ14cを挟むことにより、第2基板50と透明板112との間には一定の隙間が確保され、磁石30からの磁力の強さを磁力センサに安定して与えることができる。スペーサ14cの長さは、確保したい間隔に応じて適宜調整することができる。
【0049】
本実施形態では、各磁力センサ(61、62)のサイズは、各基板(40、50)よりも小さくなっている。また、各基板(40、50)の径は、指針13の長さ及び目盛り121の内径よりも小さくなっている。そのため、各基板(40、50)及び各磁力センサ(61、62)を透明板112の面の中央付近に取り付けても、指針13の先端部分131及び目盛り121の視認性は損なわれることはない。つまり、指針13の先端部分131及び目盛り121を隠蔽しない状態で、各基板(40、50)及び各磁力センサ(61、62)を、透明板112の面の中央付近に取り付けることができる。
【0050】
なお、透明板112には、センサユニット63を雨水等から保護するためのカバー113が設置されてもよい(
図2、3参照)。本実施形態に係るカバー113は、上面114と側周面115とを有する有底の略円筒形状に形成され、側周面115が規定する開口の周縁にフランジ部116を有する。側周面115の内径は、各基板(40、50)の直径よりも大きく、上面114と側周面115により形成される内部空間117にセンサユニット63を収容することができる。フランジ部116は、透明板112に適宜固定され、これによってカバー113全体が透明板112に対して固定される。透明板112への固定は、接着剤による接着、接着シートによる接着、ビス止め等、実施の形態に応じて適宜行われてよい。なお、カバー113は、計器1の目盛り板の視認性を損なわないように、透明板112と同様、透明な素材で形成されることが望ましい。
【0051】
図1に示すように、平面視において各磁力センサ(61、62)を含むセンサユニット63は、目盛り板12上で、第1磁力センサ61の第1感度軸方向Uと第2磁力センサ62の第2感度軸方向Vとが角度Aをなして交差するように配置される。第1感度軸方向Uと第2感度軸方向Vとが交差する第1地点Pは、計器1上、好ましくは軸20上に配置される。このとき、指針13の回転に応じて軸20周りに回転する磁石30の磁界を各磁力センサ(61、62)により検出することで得られた検出値は、角度Aの分だけずれた挙動を示す。そのため、各磁力センサ(61、62)の検出値の組み合わせは、このずれに応じて一意に決定される。よって、各磁力センサ(61、62)の検出値に基づいて、指針13(磁石30)の回転角度、換言すると、指針13の示す値を特定することができるようになる。
【0052】
好ましくは、第1磁力センサ61の第1感度軸方向Uと第2磁力センサ62の第2感度軸方向Vとは、指針13の軸20上で直交するように設置される。すなわち、角度Aが90°となるように設置される。なお、
図1の例では、第1磁力センサ61及び第2磁力センサ62は、第1目印122及び第3目印124付近にそれぞれ配置されているが、各磁力センサ(61、62)の配置は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。
【0053】
(回路構成)
次に、
図8を用いて、各基板(40、50)の回路構成について説明する。
図8は、各基板(40、50)により構成される電子回路の一例を模式的に示す。
図8に示されるとおり、第2基板50の回路51は、一対のオペアンプ(511、513)を備える。一方、第1基板40に形成される回路は、一対のA(アナログ)/D(デジタル)変換器(512、514)、MPU52、スイッチ53、記憶部54及び出力ユニット42を備える。
【0054】
MPU52は、後述するように、各磁力センサ(61、62)の第1検出値及び第2検出値に基づいて、指針が示す指示値に関する指示値情報を生成する情報生成部として機能する。なお、ここでいう第1検出値及び第2検出値は、後述するパラメータにより補正された後の第1検出値及び第2検出値を含んでいてもよい。また、スイッチ53は本実施形態ではプッシュボタン式のスイッチであり、後述する出力システム70の初期設定の際に、初期設定情報の入力を受け付ける、入力受付部として機能する。
【0055】
本実施形態では、第1磁力センサ61の第1電極83が第1オペアンプ511の非反転入力端子に接続されており、第1磁力センサ61の第2電極84が第1オペアンプ511の反転入力端子に接続されている。同様に、第2磁力センサ62の第1電極83が第2オペアンプ513の非反転入力端子に接続されており、第2磁力センサ62の第2電極84が第2オペアンプ513の反転入力端子に接続されている。
【0056】
ただし、各磁力センサ(61、62)と各オペアンプ(511、513)との接続関係は、このような例に限られなくてもよい。例えば、各磁力センサ(61、62)の第1電極83が各オペアンプ(511、513)の反転入力端子に接続され、各磁力センサ(61、62)の第2電極84が各オペアンプ(511、513)の非反転入力端子に接続されてよい。なお、各磁力センサ(61、62)の第3電極85は、回路内のグランドに接続される。
【0057】
これにより、各オペアンプ(511、513)は、各磁力センサ(61、62)の第1電極83と第2電極84との間の電位差、換言すると、各磁力センサ(61、62)の検出値に応じた信号を出力する。上記のとおり、各磁力センサ(61、62)の第1電極83と第2電極84との間の電位差は、指針13の軸20上に配置された磁石30の向きによって決定される。そのため、指針13の回転に伴う磁石30の磁界の変化に応じて、各オペアンプ(511、513)の出力は変化する。
【0058】
具体的には、磁石30の磁界が第1磁力センサ61の第1感度軸方向Uに沿うときに、第1磁力センサ61の第1電極83と第2電極84との間の電位差が最も大きくなり、これに応じて、第1オペアンプ511の出力はプラス方向に最も大きくなる。一方、磁石30の磁界が第1磁力センサ61の第1感度軸方向Uの逆方向に沿うとき、第1磁力センサ61の第1電極83と第2電極84との間の電位差がマイナス方向に最も大きくなり、これに応じて、第1オペアンプ511の出力は最も小さくなる。第2磁力センサ62及び第2オペアンプ513の動作についても同様である。
【0059】
第1オペアンプ511は、第1A/D変換器512を介してMPU52に接続される。同様に、第2オペアンプ513は、第2A/D変換器514を介してMPU52に接続される。これにより、各オペアンプ(511、513)の出力信号は、各A/D変換器(512、514)によりデジタル信号(第1検出値及び第2検出値)に変換されて、MPU52に入力される。
【0060】
MPU52は、各磁力センサ(61、62)の第1及び第2検出値を受け取り、受け取った各磁力センサ(61、62)の第1及び第2検出値に基づいて、指針13の示す値に関する指示値情報を生成する。指針13の角度に応じて磁石30の磁界の状態が決定され、磁石30の磁界の状態に応じて各磁力センサ(61、62)の検出値の組み合わせは一意に決定される。
【0061】
MPU52は、例えば、各磁力センサ(61、62)の検出値の組み合わせに基づいて指針13の示す値を特定し、特定した指針13の示す値を指示値情報として生成してもよい。この場合、各磁力センサ(61、62)の検出値の組み合わせと指針13の指示値との対応関係を示す対応関係データは、記憶部54に記憶されていてもよいし、制御装置の記憶装置等に記憶されていてもよい。
【0062】
また、例えば、MPU52は、各磁力センサ(61、62)の検出値の組み合わせをそのまま指示値情報として生成してもよい。この場合、出力ユニット42から制御装置が受信した指示値情報と、制御装置の記憶装置等に保存された、各磁力センサ(61、62)の検出値の組み合わせと指針13の指示値との対応関係を示す対応関係データを参照して、制御装置が指針13の示す値を特定してもよい。
【0063】
ここで、対応関係データは、計器1の目盛り板12上に表示された目盛り121と、指針13(磁石30)、及び各磁力センサ(61、62)との相対的な位置関係に応じて一意に定まる。従って、出力システム70が初回に計器1に取り付けられる以前の状態では、記憶部54又は制御装置の記憶装置等に仮の対応関係データが予め保存される。後述する出力システム70の初期設定を行うことにより、仮の対応関係データが実際に出力システム70によって使用される対応関係データとして上書き保存される。
【0064】
MPU52は、生成した指示値情報を生成した時刻と共に記憶部54又は制御装置の記憶装置等に保存してもよい。これにより、指針13の示す値、すなわち、計器1の測定結果の履歴を生成することができる。記憶部54又は制御装置の記憶装置等には、これらの他、計器1の識別子、型式、較正期限、前回点検日時、点検予定日時、検査作業者名、タイムスタンプ等の情報が保存されてもよい。
【0065】
なお、記憶部54は、第1基板40の電池41に接続されており、当該電池41から電力供給を受けている限り、各種情報を保持し続ける。記憶部54は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、第1検出値及び第2検出値を補正するためのパラメータ(後述する)、MPU52で実行されるプログラム等、対応関係データ以外にも各種情報を記憶するように構成される。
【0066】
MPU52は、第1基板40の出力ユニット42を利用して、指示値情報を制御装置(
図8では、タブレットPC90)に出力する。即ち、出力ユニット42は、本発明の出力部として機能する。出力ユニット42は、指示値情報を制御装置に出力するように適宜構成されてよい。本実施形態では、出力ユニット42は、通信モジュール421とアンテナ422とを備える。通信モジュール421は、例えば、公知の無線通信モジュールである。これにより、出力ユニット42は、指示値情報を無線通信により制御装置に出力するように構成される。
【0067】
指示値情報の出力先となる制御装置の種類は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。制御装置は、例えば、汎用のデスクトップPC(Personal Computer)、タブレットPC、スマートフォン等であってもよい。
図8では、当該制御装置の一例として、タブレットPC90が例示されている。
【0068】
本実施形態に係るタブレットPC90は、通信モジュール91、アンテナ92、制御部93、及びタッチパネルディスプレイ94を備えている。通信モジュール91は、例えば、公知の無線通信モジュールである。制御部93は、例えば、CPU(central processing unit)及び記憶装置(RAM、ROM等)で構成される。これにより、タブレットPC90は、計器1と無線通信によるデータのやりとりを行うことができるように構成される。
[初期設定方法]
【0069】
以下では、本実施形態に係る出力システム70の初期設定方法について説明する。ここで、初期設定とは、指針13の指示値と、各磁力センサ(61、62)の第1及び第2検出値とを対応付けるための操作を指す。初期設定を行うタイミングは、出力システム70の初回適用時に限定されない。例えば、計器1の定期点検時、指針13に対する磁石30の位置が変化した時等、必要に応じたタイミングで行うことができる。
【0070】
初期設定は、計器1に磁石30及びセンサユニット63が取り付けられた状態で行われる。すなわち、初期設定方法は、第1磁力センサ61の第1感度軸方向Uと、第2磁力センサ62の第2感度軸方向Vとが計器1上で互いに交差するように各磁力センサ(61、62)が配置されることを備える。このとき、好ましくは、第1感度軸方向Uと第2感度軸方向Vとが指針13の軸20上で互いに交差するように配置される。出力システム70の磁石30は、中心が指針13の軸20上になるよう配置され、指針13に対して固定される。このとき、磁石30のN極は所定の向きに合わせられる必要はなく、磁石30は任意の向きで固定されてよい。
【0071】
以上のように、計器1に磁石30及びセンサユニット63が取り付けられた状態で、作業者が指針13の示す指示値を読み取る。読み取りは、指針13の示す指示値が定常な状態で行う。定常な状態とは、作業者が指針13の示す目盛り121を一意に特定できる程度に指針13が静止し、一定の値を指している状態をいうものとする。例えば、計器1に圧力が加わっていない状態において、指針13が静止して目盛り121の「0」を示すとき、作業者は指針13の指示値を「0」と読み取ることができる。
【0072】
作業者は、指針13の指示値を「0」と読み取ると、スイッチ53を例えば1回押下する。つまり、指針13の指示値が「0」であることを確認し、スイッチ53を1回押下することは、指針13の指示値が「0」であるという初期設定情報を、入力受付部に入力することに相当する。初期設定情報は、初期設定を行う時点で、作業者が読み取った指針13の指示値の値に関する情報とすることができる。
図11は、出力システム70による初期設定処理の流れを示すフローチャートである。スイッチ53が押下されると、MPU52は、スイッチ53を介して初期設定情報が入力されたことを検知する(ステップJ1)。
【0073】
次に、MPU52が第1検出値及び第2検出値を取得する(ステップJ2)。ここで、第1検出値及び第2検出値は、スイッチ53が押下された時点、つまり定常な状態における検出値として取得される。
【0074】
ここで、第1磁力センサ61と第2磁力センサ62とは、角度が90°時計回りに回転して配置されているとする。第1A/D変換器512を介してMPU52に入力される信号(第1検出値)は、第1磁力センサ61によって検出される磁石30の磁界の角度をθとすると、sinθに比例して変化すると言ってよい。また、第2A/D変換器514を介してMPU52に入力される信号(第2検出値)は、第1検出値に対して90°位相が進む信号になり、cosθに比例して変化すると言ってよい。したがって、磁石30の各磁力センサ(61,62)に対する回転位置は第1A/D変換器512のデータ(第1検出値)を第2A/D変換器514のデータ(第2検出値)で割り算した結果のarctan(アークタンジェント)を計算すれば求めることができる。
数式で表わすと、
θ=arctan(sinθ÷cosθ) (1)
で求めることができる。MPU52は、式(1)に従ってarctanを算出する(ステップJ3)。
【0075】
スイッチ53が押された時点(つまり、指針13の指示値が「0」の時点)での角度をθ0とすると、MPU52は式(1)の計算によって得られた角度θ0を指示値「0」のときの角度であると関連付け、記憶部54又は制御装置の記憶装置等に保存する(ステップJ4)。すなわち、情報生成部が、定常な状態における各磁力センサ(61,62)の検出値と、前記初期設定情報とを関連付けたデータを生成し、保存する。この操作によって、指示値「0」の時の角度がどのような値であっても指針13が回転したときの指示値「0」からの角度θ1は、
θ1=θ―θ0
で求めることができる。すなわち、MPU52は、記憶部54又は制御装置の記憶装置等から角度θ0を読み出すことにより、上式に従って角度θ1を算出することができる。あるいは、算出された角度θ0に基づいて、記憶部54又は制御装置の記憶装置等に予め保存された仮の対応関係データを書き換え、上書き保存してもよい。
【0076】
上述の初期設定は、指針13が目盛り121の「0」以外の値を示す状態においても行うことができる。例えば、指針13の示す目盛り121の値に対応するスイッチ53の押下回数を予め定めておき、スイッチ53の押下される回数を指針13の示す指示値に関する情報とすることも可能である。この場合、作業者は、指針13の指示値が定常である状態において目盛り121の値を読みとり、目盛り121の値に対して予め定められた回数だけスイッチ53を押下する。なお、予め定められた回数は、1回であってもよい。
【0077】
例えば、指針13が目盛り板12上の目盛りの「0.5」を指しているときは、スイッチ53を5回連続で押下し、指針13が目盛り板12上の目盛りの「1」を指しているときは、スイッチ53を10回連続で押下する等、予め目盛り121の値とスイッチ53の押下回数とを関連付けておくことができる。目盛り121の値とスイッチ53の押下回数とを関連付けた関連データは、記憶部54等に保存しておくことができる。スイッチ53が押下されると、MPU52は押下された回数をカウントし、カウント数に対応する関連データを記憶部54から読み出して、指針13の示す指示値を特定することができる。
【0078】
[特徴]
以上のとおり、出力システム70は、既存の計器1に変更を加えなくてもそのまま適用することができるが、出力システム70を計器1に適用する際、初期設定操作が必要となる。本実施形態に係る初期設定方法によれば、作業者の行う操作が簡易であり既存の計器が設定されている現場においても容易に行うことができる。また、磁石30を指針13に対して固定する場合に、磁石30のN極の向きを所定の方向に合わせる必要がない。このため、磁石30を軸20上に設置する作業が容易に行える。また、磁石30のN極の向きが所定の位置からずれることによる、出力システム70の指針13の指示値の読み取り誤差を考慮する必要がなく、出力システム70の利用性といった品質が向上する。
【0079】
また、本実施形態に係る初期設定方法は、計器1に圧力が加わっている状態においても実行することができる。このため、出力システム70を適用するために、計器1が組み込まれている設備を一時停止して、計器1に圧力が加わらない状態とする必要がない。従って、出力システム70を大規模な設備に組み込まれた計器や、多数の計器に対して適用する場合であっても、出力システム70の初期設定の負担を軽減することができる。即ち、既存の設備に対して容易に出力システム70を導入することができるので、出力システム70の利用性といった品質が向上する。
【0080】
[キャリブレーション方法]
以下では、出力システム70のキャリブレーション方法について説明する。なお、上で説明した初期設定方法と、以下で説明するキャリブレーション方法は、いずれか一方の方法のみを出力システム70に対して実行することもできるし、同一の出力システム70に対して組み合わせて実行することもできる。また、システム70に対してキャリブレーション方法のみが使用される場合、システム70においてスイッチ53の構成を省略することが可能である。
【0081】
本実施形態に係るキャリブレーション方法は、第2基板50上に配置される各磁力センサ(61、62)間の個体差や、第2基板50上に配置される際の位置ずれ等により生じ得る、各磁力センサ(61、62)の各検出値の誤差を較正するための方法である。各磁力センサ(61、62)が感度軸方向を有することにより、各磁力センサ(61、62)から出力される第1検出値及び第2検出値は、検出する磁界の角度に応じて三角関数的に変化する。
【0082】
上述したように、第1感度軸方向U及び第2感度軸方向Vの交点である第1地点Pは、好ましくは軸20上に配置される。このとき、第1検出値と第2検出値とは、第1感度軸方向U及び第2感度軸方向Vのなす角度Aの分だけ互いにずれた値となる。各磁力センサ(61、62)が
図1に示すような位置関係で配置され、角度Aが90°であるときの磁石30の磁界の角度θ[°]に対する第1検出値及び第2検出値[A/m]の例をそれぞれ
図9のグラフに示す。
図9から分かるように、第1検出値と第2検出値とは互いに90°だけずれた挙動を示す。これにより、第1検出値をαsinθ、第2検出値をαcosθと表すことができる。ただし、αは第1検出値及び第2検出値の振幅であり、磁界の角度θは、第2感度軸方向Vの方向を0°とする。
【0083】
この場合、(第1検出値)/(第2検出値)=sinθ/cosθ=tanθと表すことができるから、θ=90°、270°のときを除き、磁界の角度θをarctanθにより特定することができる。すなわち、第1検出値及び第2検出値から、磁石30の磁界の角度θ、つまり磁石30の向きを特定することができる。
【0084】
しかしながら、実際には各磁力センサ(61、62)の各検出値が上述したαsinθ、αcosθの関数に対して誤差を生じ得る。このような誤差は、例えば、第2基板50上に接着される各磁力センサ(61、62)が所定の位置からずれている場合、第1感度軸方向U及び第2感度軸方向Vのなす角度Aが90°からずれているような場合に生じ得る。また、各磁力センサ(61、62)の個体差によっても誤差が生じ得る。つまり、上述の方法によって特定される磁石30の回転角度は、実際には各磁力センサ(61、62)を含むセンサユニット63に固有の誤差を生じ得る。本実施形態に係るキャリブレーション方法では、各磁力センサ(61、62)の各検出値を補正する、センサユニット63に固有のパラメータを算出する。キャリブレーションにより予め算出されたパラメータを用いて各磁力センサ(61、62)の各検出値を補正することにより、指針13の指示値の読み取りの精度を向上させることができる。キャリブレーションで算出されたパラメータは、例えば記憶部54に保存される。
【0085】
キャリブレーションには、
図10に平面視で示すような冶具200が用いられる。冶具200は、モーター201と、モーター201の出力軸204に取り付けられた第1磁石202とを備える。モーター201は、図示しない電源に接続されており、軸204′を回転軸として出力軸204を一定の速度(回転速度)で回転させるように構成される。第1磁石202は、好ましくは、磁石30と同様の構成を有する円形の永久磁石である。第1磁石202の中心は、軸204′上に位置合わせされている。すなわち、出力軸204の回転軸である軸204′は、本発明の第1軸に相当し、第1軸上に第1磁石202の中心が配置される。これにより、第1磁石202は、モーター201の出力軸204に連動して一定の速度で回転する。
【0086】
冶具200は、センサユニット63がセットされるホルダ部203をさらに備える。ホルダ部203は、センサユニット63を軸204′に対して位置合わせするように構成される。より具体的には、センサユニット63をホルダ部203にセットすると、軸204′が第1地点P又は第1地点Pの付近を通るように、センサユニット63が位置合わせされる。なお、冶具200の構成は、モーター201の出力軸204、第1磁石202及びセンサユニット63の相対的な位置が上述したように配置される限り、特に限定されない。
【0087】
モーター201を駆動させ、出力軸204を回転させると、センサユニット63に対して第1磁石202が回転する。すなわち、軸204′回りに第1磁石202が所定の速度で各磁力センサ(61、62)に対して相対回転する。第1磁石202の相対回転に対して出力される各磁力センサ(61、62)の各検出値は、出力ユニット42と通信可能な外部装置によって順次取得される。外部装置は、例えば汎用のデスクトップPC、タブレットPC、スマートフォン等である。本実施形態では、外部装置は、汎用のデスクトップPC210である。デスクトップPC210は、通信モジュール211と、制御部212とを備える。制御部212は、例えば、CPU213、RAM214等で構成される。通信モジュール211は、例えば公知の無線通信モジュールである。以下の処理を
図12のフローチャートに従って説明する。
図12は、キャリブレーションの処理の流れを示すフローチャートである。
【0088】
汎用のデスクトップPC210のCPU213は、各磁力センサ(61、62)の各検出値を順次取得すると、第1検出値と第2検出値とが時系列順に組み合わせられたデータセットを作成する(ステップK1)。このデータセットは、センサユニット63を識別する識別子と関連付けられてRAM214に保存される(ステップK2)。また、CPU213は、第1検出値の時系列データから、第1検出値の第1ピーク値と、第1検出値の第1ボトム値とをそれぞれ特定する(ステップK3)。同様に、CPU213は、第2検出値の時系列データから、第2検出値の第2ピーク値と、第2検出値の第2ボトム値とをそれぞれ特定する(ステップK4)。ステップK3とステップK4の順序は前後してもよいし、同時に並行して行われてもよい。ここで、各ピーク値及び各ボトム値の特定は、各検出値を、時系列の前後で比較することにより行われる。ピーク値は、時系列データの中で周期的に出現する波形の山の値の平均値としてもよいし、時系列データ中の最大値をそのままピーク値としてもよい。また、ボトム値は、時系列データの中で周期的に出現する波形の谷の値の平均値としてもよいし、時系列データ中の最小値をそのままボトム値としてもよい。
【0089】
ここで取得する第1検出値の時系列データ及び第2検出値の時系列データは、それぞれが少なくとも1つの山及び少なくとも1つの谷を含んでいればよい。つまり、各時系列データが少なくとも1つの山及び少なくとも1つの谷を含む限りにおいて、第1磁石202の回転数や、取得する各磁力センサ(61、62)の各検出値のデータ数は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0090】
CPU213は、特定した第1ピーク値及び第1ボトム値から、第1検出値の振幅B1を算出する(ステップK5)。振幅B1は、第1ピーク値と第1ボトム値との差を取ることにより算出される。また、同様に、CPU213は、特定した第2ピーク値及び第2ボトム値から、第2検出値の振幅B2を算出する(ステップK6)。振幅B2は、第2ピーク値と第2ボトム値との差を取ることにより算出される。ここで、ステップK5とステップK6の順序は前後してもよいし、同時に並行して行われてもよい。また、ステップK3に続いてステップK5が行われ、ステップK4に続いてステップK6が行われてもよい。続くステップK7では、CPU213が各パラメータを算出する。算出するパラメータと、算出の具体的な方法は、以下の通りである。
【0091】
CPU213は、第1検出値の振幅B1と第2検出値の振幅B2とのずれを補正するパラメータSを算出する。より具体的には、パラメータSは、振幅B1を1としたときの振幅B1からの振幅B2のずれを補正するパラメータであり、以下の式に基づいて算出される。
S=B1/B2
【0092】
なお、パラメータSは、振幅B2を1としたときの振幅B2からの振幅B1のずれを補正するパラメータとすることもできる。この場合、パラメータSは、以下の式に基づいて算出される。
S=B2/B1
【0093】
CPU213は、算出したパラメータSを、通信モジュール211を介してセンサユニット63に送信する(ステップK8)。センサユニット63は、出力ユニット42を介してパラメータSを受け取る。センサユニット63のMPU52は、記憶部54にパラメータSを記憶させる(ステップK9)。
【0094】
CPU213は、特定した第1ピーク値と第1ボトム値との中間値からのずれ量M1をステップK5において算出してもよい。中間値からのずれ量M1は、第1ピーク値と第1ボトム値との和により算出される。同様に、CPU213は、特定した第2ピーク値と第2ボトム値との中間値からのずれ量M2をステップK6において算出してもよい。中間値からのずれ量M2は、第2ピーク値と第2ボトム値との和により算出される。中間値からのずれ量M1、M2は、各検出値の波形全体が、縦軸方向にずれている度合いを表す。例えば、中間値からのずれ量が正の値であるとき、検出値の波形は横軸に対して縦軸の正の方向にずれていることが分かる。一方、中間値からのずれ量が負の値であるとき、検出値の波形は横軸に対して縦軸の負の方向にずれていることが分かる。
【0095】
CPU213は、中間値からのずれ量M1に基づいて、第1検出値の縦軸方向のずれを補正するパラメータT12を算出する(ステップK7)。また、CPU213は、中間値からのずれ量M2に基づいて、第2検出値の縦軸方向のずれを補正するパラメータT22を算出する(ステップK7)。具体的には、パラメータT12、T22は、以下の式に基づいてそれぞれ算出される。
T12=-M1
T22=-M2
【0096】
ここで、中間値からのずれ量M1、M2が0に等しいか、無視できるほどその絶対値が小さい場合には、パラメータT12、T22の算出を省略してもよい。また、中間値からのずれ量M1、M2の絶対値の大きさに応じて、第1検出値及び第2検出値のうちいずれか一方についてのみ、パラメータを算出してもよい。
【0097】
CPU213は、算出したパラメータT12、T22を、通信モジュール211を介してセンサユニット63に送信する(ステップK8)。センサユニット63は、出力ユニット42を介してパラメータT12、T22を受け取る。センサユニット63のMPU52は、記憶部54にパラメータT12、T22を記憶させる(ステップK9)。
【0098】
さらに、CPU213は、第1検出値と第2検出値との位相のずれを補正するパラメータWをステップK7において算出してもよい。パラメータWは、第1検出値をB1sinθ、第2検出値をB2cos(θ+φ)で表したときの位相のずれ量φを補正するためのパラメータであり、以下の式に従って算出される。まず、第1検出値の出力と第2検出値の出力の振幅を同じにするために次式による処理を行い、y1及びy2を算出する。
y1 = B1sinθ÷B1 = sinθ
y2 = B2cos(θ+φ)÷B2 = cos(θ+φ)
【0099】
ここで、
図13を用いてずれ量φの求め方を説明する。
図13Aは、sinθ、cosθ及びcos(θ+φ)のグラフである。sinθが最大値を示すθ=90度の時のcos(θ+φ)の値を求める。
図13Aで位相ずれがない(φ=0)ときにはcos(θ+φ)は0になる。もしもcos(θ+φ)が0でなくc1という値であったとすると、位相のずれ量φはφ=(acos(c1)-90)により求まる。例えばc1が-0.1736であったとすると、acos(-0.1736) = 100になりφ=100-90 =10(度)の位相ずれが存在することになる。このように求めたずれ量φがパラメータWになる。
図13Bは、位相のずれ量φが最大で10度となる場合の誤差角度のグラフであり、横軸がθが示す角度位置(度)、縦軸がその角度位置における誤差の大きさ(度)である。
図13Bに示すように、誤差角度は0、180度付近の角度位置で最小となり、90、270付近の角度位置で最大となる。なお、
図13Bに示すグラフの誤差角度は、以下の式に基づいて算出される。
arctan(sinθ/cos(θ+φ))-arctan(sinθ/cosθ)
【0100】
CPU213は、算出したパラメータWを、通信モジュール211を介してセンサユニット63に送信する(ステップK8)。センサユニット63は、出力ユニット42を介してパラメータWを受け取る。センサユニット63のMPU52は、記憶部54にパラメータWを記憶させる(ステップK9)。
【0101】
各パラメータS、T12、T22、Wは、実施の形態に応じて全て算出されてもよいし、一部のみが算出されてもよい。また、各パラメータS、T12、T22を算出する順序は、特に限定されない。このようにして記憶部54に記憶された各パラメータS、T12、T22、Wは、出力システム70が計器1に適用され、各磁力センサ(61、62)が磁石30の磁界を検出したときに出力する検出値を補正するために利用される。以下、具体的な例を挙げて説明する。
【0102】
例えば、キャリブレーションにより第1検出値の振幅B1が1、第2検出値の振幅B2が1.1と特定されている場合について説明する。このとき、磁石30の磁界の向きが45°であれば、第1磁力センサ61は第1検出値としてsin45°、第2磁力センサ62は第2検出値として(1.1×cos45°)をそれぞれ出力する。(ただし、磁石30の磁界の向きが0°のとき第1磁力センサ61が0を出力し、第2磁力センサ62が1.1を出力するように、各磁力センサが位置合わせされているものとする。)このとき、(第1検出値)/(第2検出値)=(1/1.1)≒0.90と計算される。従って、arctanθにより特定される磁石30の磁界の向きは約42°となり、実際の磁石30の磁界の向き45°からの誤差が発生する。しかしながら、指示値情報を生成する際に、MPU52が記憶部54から予め記憶されたパラメータS(=1/1.1)を読み出し、第2検出値を補正することで、上記の誤差を較正することができる。MPU52は、出力された第2検出値にパラメータSを乗じることにより、第2検出値を補正する。
【0103】
また、例えばキャリブレーションにより中間値からのずれ量M1が0、中間値からのずれ量M2が0.1と特定されている場合について説明する。このとき、磁石30の磁界の向きが60°であれば、第1磁力センサ61は第1検出値としてsin60°、第2磁力センサ62は第2検出値として(cos60°+0.1)をそれぞれ出力する。(ただし、磁石30の磁界の向きが0°のとき第1磁力センサ61が0を出力し、第2磁力センサ62が1.1を出力するように、各磁力センサが位置合わせされているものとする。また、ここでは簡単のためB1=B2=1であるとする。)このとき、(第1検出値)/(第2検出値)≒(√3/2÷0.6)≒0.909と計算される。従って、arctanθにより特定される磁石30の磁界の向きは約55°となり、実際の磁石30の磁界の向き60°からの誤差が発生する。しかしながら、指示値情報を生成する際に、MPU52が記憶部54から予め記憶されたパラメータT22(=-0.1)を読み出し、第2検出値を補正することで、上記の誤差を較正することができる。MPU52は、出力された第2検出値からパラメータT22を減じることにより、第2検出値を補正する。
【0104】
また、例えば
図14Aに示すグラフのように、キャリブレーションにより位相のずれ量のパラメータWが10°と特定されている場合について、位相ずれ補正をおこなう方法を
図14B及び
図14Cを用いて説明する。まず、次のようにしてグラフにおける領域1、領域2、領域3、領域4を定める。
【0105】
s1=sin(10度)≒0.1736、s2=sin(100度)≒-0.1736を求める。s1、s2を用いて
領域1:sinθ≧s2 かつ cos(θ+φ)≧0
領域2:sinθ≧s1 かつ cos(θ+φ)<0
領域3:sinθ<s1 かつ cos(θ+φ)<0
領域4:sinθ<s2 かつ cos(θ+φ)≧0
領域1~4を
図14Aのグラフ上に表したものを
図14Bに示す。
【0106】
次に各領域ごとに次式で角度θを求める。
領域1、または領域2
θ = acos(θ+φ) -φ
領域3、または領域4
θ = 360-acos(θ+φ)-φ
図14Cは、位相ずれのキャリブレーション前後における角度誤差を比較するグラフである。上の補正式により
図14Cのグラフが示すように位相のずれ量が最大10度あったときの角度誤差をなくすことができる。
【0107】
[特徴]
以上のとおり、本実施形態に係るキャリブレーション方法によれば、各磁力センサ(61、62)の各検出値を補正することができる。従って、MPU52によって生成される指針13の指示値に関する指示値情報の精度を向上させることができる。つまり、出力システム70の読み取り精度が向上する。
【0108】
また、キャリブレーションにより、各磁力センサ(61、62)そのものや、これらの配置に生じる機械的な誤差やばらつきをある程度許容することができるので、センサユニット63の生産性が向上し、出力システム70の利用性が高められる。
【0109】
§2 変形例
以上、本発明の一実施形態について説明したが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、上記計器1の構成に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が行われてもよい。また、上記計器1の各構成要素の形状及び大きさは、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。具体的には、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0110】
上記実施形態では、計器1は、ブルドン管圧力計である。しかしながら、計器1の種類は、圧力計に限られなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、計器1の種類は、温度計、流体計、電力計等であってよい。また、計器1は、ブルドン管に限られなくてもよく、指針により測定値を示すものであれば、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0111】
また、上記実施形態では、各基板(40、50)及び各磁力センサ(61、62)は、透明カバー11の透明板112に取り付けられている。しかしながら、各基板(40、50)及び各磁力センサ(61、62)の配置は、このような例に限られなくてもよい。例えば、各基板(40、50)及び各磁力センサ(61、62)は、目盛り板12上に配置されてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、出力ユニット42は、無線通信によりデータを出力するように構成されている。しかしながら、出力ユニット42の構成は、このような例に限られなくてもよい。出力ユニット42は、有線通信によりデータを出力するように構成されてもよい。
【0113】
上記実施形態では、出力システム70は磁気センサを2つ備えていた。しかし、磁気センサの数はこれに限定されず、出力システム70が磁気センサを3つ以上備えることとしてもよい。
【0114】
上記実施形態では、センサユニット63が入力受付部としてスイッチ53を備えたが、入力受付部の形態はこれに限定されない。例えば、センサユニット63が入力受付部53を有さず、出力システム70が備えるタブレットPC90が、入力受付部53を有することとしてもよい。この場合、例えばタブレットPC90のタッチパネルディスプレイ94を入力受付部53として機能させることができる。
【0115】
このとき、作業者は、センサユニット63と無線通信可能な範囲にタブレットPC90を持っていき、タッチパネルディスプレイ94を操作して、タブレットPC90から計器1に対して初期設定開始を通知する信号を送信する。計器1のMPU52は、出力ユニット42を介して当該信号を受け取ると、指示値に関する情報の入力を要求する信号を生成し、出力ユニット42を介してタブレットPC90に送信する。当該信号を受け取ったタブレットPC90は、タッチパネルディスプレイ94等を介して、作業者に対して指示値に関する情報の入力を促すメッセージを発する。メッセージを確認した作業者は、指針13の指示値を読みとり、タッチパネルディスプレイ94を介して指示値に関する情報を入力し、センサユニット63に対して送信する。MPU52は、出力ユニット42を介して指示値に関する情報を受け取り、上述した初期設定処理を行う。
【0116】
ここで、指示値に関する情報は、読み取った目盛り121の値そのものであってもよく、この場合、作業者は例えば「0.5」等の数値をタッチパネルディスプレイ94を介して入力することができる。また、指示値に関する情報は、数値でなくてもよい。例えば、タッチパネルディスプレイ94に計器1の目盛り板12を模したグラフィックを表示することができる。この場合、当該グラフィック上で作業者が目盛り板12上の目盛りをタッチすると、作業者が読み取った指針13の指示値の値としてタッチされた目盛りの値がタブレットPC90に入力される構成とすることができる。
【0117】
上記実施形態では、算出された各パラメータS、T12、T22、Wは、記憶部54に記憶されたが、これに加えて又は代えて、算出された各パラメータS、T12、T22、WがタブレットPC90のRAMや記憶装置等に記憶されてもよい。また、タブレットPC90は複数のセンサユニット63についての各パラメータS、T12、T22、Wを記憶し、各センサユニット63のMPU52が、タブレットPC90のRAMや記憶装置等に記憶された各パラメータS、T12、T22、Wを適宜出力ユニット42を介して読み出す構成とすることも可能である。このとき、算出された各パラメータS、T12、T22、Wは、センサユニット63を識別する識別子と共にタブレットPC90のRAMや記憶装置等に保存されてもよい。
【0118】
キャリブレーションでは、第1検出値及び第2検出値をそれぞれ理想的なsin関数及びcos関数にフィッティングするためのパラメータをさらに算出してもよい。この場合、磁界の角度と、sin関数及びcos関数に基づく理想的な各検出値とを対応付けた表を、予めデスクトップPC210の記憶装置等に格納しておくことができる。パラメータは、例えばある磁界の角度に対する表の値と、各検出値との差を取ることにより算出することができる。
【符号の説明】
【0119】
1…計器、
10…本体部、
101…内部空間、102…上端部、
11…透明カバー、
110…カバー本体、111…見返し、112…透明板、
12…目盛り板、
121…目盛り、
13…指針、
131…先端部分、132…連結具、
15…内部機構、
20…軸
30…磁石、
40…第1基板、
41…電池、42…出力ユニット、
50…第2基板、
51…回路、
511…第1オペアンプ、512…第1A/D変換器、
513…第2オペアンプ、514…第2A/D変換器、
52…MPU、53…記憶部、
61…第1磁力センサ、62…第2磁力センサ、63…センサユニット
70…出力システム、
81…第1部分、82…第2部分、
83…第1電極、84…第2電極、85…第3電極、
86…センサ線、87…導体膜、88…センサ線、89…導体膜、
90…制御装置、91…通信モジュール、
92…アンテナ、93…制御部、94…タッチパネルディスプレイ