IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エアレックスの特許一覧

<>
  • 特許-パスボックス 図1
  • 特許-パスボックス 図2
  • 特許-パスボックス 図3
  • 特許-パスボックス 図4
  • 特許-パスボックス 図5
  • 特許-パスボックス 図6
  • 特許-パスボックス 図7
  • 特許-パスボックス 図8
  • 特許-パスボックス 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】パスボックス
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20230130BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20230130BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
A61L2/18 102
F24F7/06 C
C12M1/00 K
C12M1/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019091088
(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公開番号】P2020185126
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】599053643
【氏名又は名称】株式会社エアレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121784
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】川崎 康司
(72)【発明者】
【氏名】角田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】益留 純
(72)【発明者】
【氏名】北野 司
(72)【発明者】
【氏名】郭 志強
【審査官】齊藤 光子
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00-28
A61L 9/00-22
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌環境を維持した作業室の内部に物品を搬入する際に使用するパスボックスであって、
前記物品の外表面を除染剤で除染するための第1室と、除染後の当該物品の外表面に残留した除染剤を除去するための第2室と、除染剤を供給する除染剤供給装置と、供給された除染剤の動きを制御する除染剤制御装置と、前記物品を移動する移動装置と、清浄空気を供給排気する給排気装置とを有し、
前記第1室は、外部環境から物品を内部に搬入するための第1扉と、前記除染剤供給装置の供給口と、前記給排気装置の排気口とを備え、
前記第2室は、第1室との境界に設けた第2扉と、エアレーション後の物品を前記作業室の内部に搬出する第3扉と、前記給排気装置の給気口とを備え、
前記除染剤供給装置は、除染用薬液を除染用ミストに変換して前記供給口を介して物品を収容した第1室の内部に供給し、
前記除染剤制御装置は、第1室の内部壁面近傍に配置した震動盤を具備し、当該震動盤を超音波振動させて盤面から垂直方向に超音波による音響流を発生させ、当該第1室に供給された前記除染用ミストに音響放射圧による押圧を作用させることにより、当該除染用ミストを物品の外表面に集中して作用させ、
前記移動装置は、除染後の物品を第1室から第2室に移動し、
前記給排気装置は、前記給気口を介して清浄空気を第2室に供給して物品の外表面に残留した除染剤を除去するエアレーションを行うと共に、前記排気口を介してエアレーション後の除染剤を含む空気を外部環境に排出することを特徴とするパスボックス。
【請求項2】
前記第2室は、前記第1室の上部に位置すると共に、
前記給排気装置の給気口が第2室の上部に開口し、排気口が第1室の下部に開口するように配置され、
前記物品が第2室にあってエアレーションが行われている際には、給排気装置から第2室に供給された前記清浄空気は、第2室の上部から当該物品の外表面を経て第1室の上部から下部に至る一方向流となって物品の外表面及び第1室の内部をエアレーションしながら第1室の下部に開口する排気口から外部環境に排出されることを特徴とする請求項1に記載のパスボックス。
【請求項3】
前記除染剤制御装置は、複数の震動盤を具備し、
前記複数の震動盤は、前記第1室にある物品を間に介すると共に互いにその盤面を対向させて配置することにより、前記音響放射圧による押圧が主として各震動盤から物品の方向に集中して、
前記除染用ミストは、物品の外表面に集中して作用するように制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載のパスボックス。
【請求項4】
前記除染剤制御装置は、複数の震動盤を具備し、
前記複数の震動盤は、前記第1室にある物品を間に介すると共に互いにその盤面を対向させることなく配置することにより、前記音響放射圧による押圧が主として各震動盤から物品の側面に沿うように通過して、
前記除染用ミストは、第1室の内部を旋回するように移動して物品の外表面に集中して作用するように制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載のパスボックス。
【請求項5】
前記除染剤供給装置は、ミスト発生手段を有し、
前記ミスト発生手段は、1流体ノズルや2流体ノズルなどのスプレーノズル、又は、超音波加湿器、ネブライザー、ピエゾアトマイザーなどの超音波によるミスト発生器であって、
前記ミスト発生手段により発生した前記除染剤の1次ミストを前記第1室が備える除染剤供給装置の供給口を介して第1室に除染用ミストとして供給することを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載のパスボックス。
【請求項6】
前記除染剤供給装置は、ミスト微細化手段を有し、
前記ミスト微細化手段は、1又は2以上の震動盤を具備し、当該震動盤を超音波振動させて盤面から垂直方向に超音波による音響流を発生させ、
前記ミスト発生手段により発生した前記除染剤の1次ミストに前記音響流による超音波振動を作用させることにより、当該1次ミストを更に微細化した2次ミストとし、
発生した前記2次ミストを前記第1室が備える除染剤供給装置の供給口を介して第1室に微細化した除染用ミストとして供給することを特徴とする請求項5に記載のパスボックス。
【請求項7】
前記第2室は、内部壁面近傍に配置した1又は2以上の震動盤を具備し、当該震動盤を超音波振動させて盤面から垂直方向に超音波による音響流を発生させ、当該第2室においてエアレーションされる除染後の物品の外表面に前記清浄空気と前記音響流とを作用させることにより、当該物品の表面に残留した除染剤を除去することを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載のパスボックス。
【請求項8】
前記震動盤は、基盤と複数の送波器とを具備し、
前記基盤の平面上に前記複数の送波器の送波方向を統一して配置すると共にこれらの送波器を同位相で作動させることにより、
前記複数の送波器の正面方向の超音波を互いに強め合うと共に、当該複数の送波器の横方向の超音波を互いに打ち消し合うようにして、前記震動盤の盤面から垂直方向に指向性の強い超音波による音響流を発生させることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載のパスボックス。
【請求項9】
前記作業室内に供給された前記除染用ミストは、前記震動盤から発生する超音波振動により更に微細化することを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載のパスボックス。
【請求項10】
前記震動盤から発生する超音波の周波数と出力を可変とする、及び/又は、超音波を断続的に送波する制御装置を具備し、物品の外表面に集中して作用するように制御される前記除染用ミストの位置又は移動速度を制御することを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載のパスボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイソレーターなどの無菌環境室に付随したパスボックスに関するものであり、特にこれらの無菌エリアに搬入する物品を効率よく除染することのできるパスボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品などを製造する製造現場においては、室内の無菌状態を維持することが重要である。特に医薬品製造の作業室である無菌室の除染においては、GMP(Good Manufacturing Practice)に即した高度な除染バリデーションを完了させる必要がある。
【0003】
また、近年の再生医療分野の発展に伴い、インキュベータを使用して細胞を培養することが広く行われている。細胞を用いた再生医療では、採取した細胞の調整、培養、加工などの工程(細胞プロセッシング;Cell Processing )が必要となり、細胞プロセッシングセンター(CPC)と呼ばれる施設で行われている。このCPCにおいて、最も清浄度の高いグレードAを要求される作業室としてアイソレーターが使用される。
【0004】
アイソレーターは、小型のチャンバーを採用し、作業者がチャンバーの外部からグローブやハーフスーツを介して作業することができる。このアイソレーターのチャンバーには、外部環境から汚染物質が混入しないように無菌状態を維持する吸排気装置が設けられている。また、無菌状態のアイソレーターの内部に外部環境から必要な器具や物品を搬入する際にも、無菌状態の維持が図られている。
【0005】
例えば、アイソレーターの内部に物品を搬入する際には、パスボックスと呼ばれる小型の搬入用予備室が設けられている。物品をアイソレーターの内部に搬入しようとする作業者は、まず物品をパスボックス内に搬入する。このとき、アイソレーターとパスボックスとの間の搬入扉は封鎖されている。次に、パスボックスと外部環境との間の搬入扉を封鎖して、パスボックス内部と共に物品を除染する。パスボックスでの除染が完了し除染用ガスなどを排除してから、アイソレーターとパスボックスとの間の搬入扉を開放して物品をアイソレーターの内部に搬入する。
【0006】
近年、アイソレーターやパスボックスなどの作業室(以下、除染対象室という)及び搬入しようとする物品の除染には、過酸化水素(ガス又はミスト)が広く採用されている。この過酸化水素は、強力な滅菌効果を有し、安価で入手しやすく、且つ、最終的には酸素と水に分解する環境に優しい除染剤として有効である。
【0007】
過酸化水素による除染では、菌数の対数減少によるLRD値(Log Spore Reduction)の値が充分な除染効果として認められる4~6LRD又はそれ以上を確保することができる。しかし、過酸化水素による除染においては、除染操作に加え除染後に凝縮膜などの状態で物品やパスボックス内部に残留した過酸化水素を除去するエアレーション操作を含め45~120分ほどの長時間を要するという問題があった。
【0008】
そこで、清浄度がグレードAに維持されたアイソレーターへの物品の搬入の機会の多い再生医療分野では、下記特許文献1において過酸化水素による除染を採用しない細胞処理装置が提案されている。この細胞処理装置は、グレードAのアイソレーターにパスボックスを直列に2段接続する。これらのアイソレーターとパスボックスには、空気圧による空気の流れ方向が制御されている。
【0009】
まず、外部環境から物品を搬入した第1段のパスボックス内において、外部環境にある作業者がグローブを介して物品(滅菌された容器を収納した包装袋)の外表面をアルコールが塗布された布で拭き取ってアルコール除染する。次に、作業者は、除染された包装袋を第2段のパスボックス内に搬入し、包装袋から容器を取り出す。次に、取り出した容器をグレードAのアイソレーターに搬入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】再表2017-069147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記特許文献1においては、従来の過酸化水素による除染に比べ短時間の除染操作が可能である。しかし、医薬GMPでグレードAの環境に持ち込むことのできる4~6LRDを常に確保できるという保証がない。また、パスボックス内の空気圧制御を行う場合において、このような小空間での高度な制御、例えば空気圧カスケード制御などは容易ではない。従って、これまで広く採用されてきて信頼性の高い過酸化水素による除染の短時間化が求められていた。
【0012】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、グレードAの環境に搬入しようとする物品の表面に除染用ミストを集中させ、適正量の除染剤の供給で除染効果の完璧を図ると共に、エアレーション操作の時間も短縮することにより除染操作の効率化を図ることのできるパスボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、パスボックス内を除染室とエアレーション室とに区分すると共に、除染剤制御装置として超音波振動を採用してパスボックスに供給する過酸化水素ミストを微細化すると共にパスボックス内の物品の表面に過酸化水素ミストを集中させることにより本発明の完成に至った。
【0014】
即ち、本発明に係るパスボックスは、請求項1の記載によれば、
無菌環境を維持した作業室の内部に物品(P)を搬入する際に使用するパスボックス(100)であって、
前記物品の外表面を除染剤で除染するための第1室(30)と、除染後の当該物品の外表面に残留した除染剤を除去するための第2室(20)と、除染剤を供給する除染剤供給装置(70)と、供給された除染剤の動きを制御する除染剤制御装置(60)と、前記物品を移動する移動装置(50)と、清浄空気を供給排気する給排気装置とを有し、
前記第1室は、外部環境から物品を内部に搬入するための第1扉(31)と、前記除染剤供給装置の供給口と、前記給排気装置の排気口(34)とを備え、
前記第2室は、第1室との境界に設けた第2扉(25)と、エアレーション後の物品を前記作業室の内部に搬出する第3扉(21)と、前記給排気装置の給気口(23)とを備え、
前記除染剤供給装置は、除染用薬液を除染用ミスト(M2)に変換して前記供給口を介して物品を収容した第1室の内部に供給し、
前記除染剤制御装置は、第1室の内部壁面近傍に配置した震動盤(61、62)を具備し、当該震動盤を超音波振動させて盤面(61a、62a)から垂直方向に超音波による音響流(61b、62b)を発生させ、当該第1室に供給された前記除染用ミストに音響放射圧による押圧を作用させることにより、当該除染用ミストを物品の外表面に集中して作用させ、
前記移動装置は、除染後の物品を第1室から第2室に移動し、
前記給排気装置は、前記給気口を介して清浄空気を第2室に供給して物品の外表面に残留した除染剤を除去するエアレーションを行うと共に、前記排気口を介してエアレーション後の除染剤を含む空気を外部環境に排出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載のパスボックスであって、
前記第2室は、前記第1室の上部に位置すると共に、
前記給排気装置の給気口が第2室の上部に開口し、排気口が第1室の下部に開口するように配置され、
前記物品が第2室にあってエアレーションが行われている際には、給排気装置から第2室に供給された前記清浄空気は、第2室の上部から当該物品の外表面を経て第1室の上部から下部に至る一方向流となって物品の外表面及び第1室の内部をエアレーションしながら第1室の下部に開口する排気口から外部環境に排出されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1又は2に記載のパスボックスであって、
前記除染剤制御装置は、複数の震動盤を具備し、
前記複数の震動盤は、前記第1室にある物品を間に介すると共に互いにその盤面を対向させて配置することにより、前記音響放射圧による押圧が主として各震動盤から物品の方向に集中して、
前記除染用ミストは、物品の外表面に集中して作用するように制御されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1又は2に記載のパスボックスであって、
前記除染剤制御装置は、複数の震動盤を具備し、
前記複数の震動盤は、前記第1室にある物品を間に介すると共に互いにその盤面を対向させることなく配置することにより、前記音響放射圧による押圧が主として各震動盤から物品の側面に沿うように通過して、
前記除染用ミストは、第1室の内部を旋回するように移動して物品の外表面に集中して作用するように制御されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1~4のいずれか1つに記載のパスボックスであって、
前記除染剤供給装置は、ミスト発生手段を有し、
前記ミスト発生手段は、1流体ノズルや2流体ノズルなどのスプレーノズル、又は、超音波加湿器、ネブライザー、ピエゾアトマイザーなどの超音波によるミスト発生器であって、
前記ミスト発生手段により発生した前記除染剤の1次ミストを前記第1室が備える除染剤供給装置の供給口を介して第1室に除染用ミストとして供給することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項5に記載のパスボックスであって、
前記除染剤供給装置は、ミスト微細化手段(73)を有し、
前記ミスト微細化手段は、1又は2以上の震動盤(73a、73b)を具備し、当該震動盤を超音波振動させて盤面(73c、73d)から垂直方向に超音波による音響流(73e、73f)を発生させ、
前記ミスト発生手段により発生した前記除染剤の1次ミスト(M1)に前記音響流による超音波振動を作用させることにより、当該1次ミストを更に微細化した2次ミスト(M2)とし、
発生した前記2次ミストを前記第1室が備える除染剤供給装置の供給口を介して第1室に微細化した除染用ミストとして供給することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項1~6のいずれか1つに記載のパスボックスであって、
前記第2室は、内部壁面近傍に配置した1又は2以上の震動盤(328)を具備し、当該震動盤を超音波振動させて盤面(328a)から垂直方向に超音波による音響流(328b)を発生させ、当該第2室においてエアレーションされる除染後の物品の外表面に前記清浄空気と前記音響流とを作用させることにより、当該物品の表面に残留した除染剤を除去することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項1~7のいずれか1つに記載のパスボックスであって、
前記震動盤は、基盤(61c)と複数の送波器(61e)とを具備し、
前記基盤の平面上に前記複数の送波器の送波方向を統一して配置すると共にこれらの送波器を同位相で作動させることにより、
前記複数の送波器の正面方向の超音波を互いに強め合うと共に、当該複数の送波器の横方向の超音波を互いに打ち消し合うようにして、前記震動盤の盤面から垂直方向に指向性の強い超音波による音響流を発生させることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項1~8のいずれか1つに記載のパスボックスであって、
前記作業室内に供給された前記除染用ミストは、前記震動盤から発生する超音波振動により更に微細化することを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、請求項10の記載によれば、請求項1~9のいずれか1つに記載のパスボックスであって、
前記震動盤から発生する超音波の周波数と出力を可変とする、及び/又は、超音波を断続的に送波する制御装置を具備し、物品の外表面に集中して作用するように制御される前記除染用ミストの位置又は移動速度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
上記構成によれば、本発明に係るパスボックスは、無菌環境を維持した作業室の内部に物品を搬入する際に使用され、物品の外表面を除染剤で除染するための第1室と、除染後の当該物品の外表面に残留した除染剤を除去するための第2室と、除染剤を供給する除染剤供給装置と、供給された除染剤の動きを制御する除染剤制御装置と、物品を移動する移動装置と、清浄空気を供給排気する給排気装置とを有する。
【0025】
第1室は、外部環境から物品を内部に搬入するための第1扉と、除染剤供給装置の供給口と、給排気装置の排気口とを備えている。第2室は、第1室との境界に設けた第2扉と、エアレーション後の物品を作業室の内部に搬出する第3扉と、給排気装置の給気口とを備えている。除染剤供給装置は、除染用薬液を除染用ミストに変換して供給口を介して物品を収容した第1室の内部に供給する。除染剤制御装置は、第1室の内部壁面近傍に配置した震動盤を具備し、当該震動盤を超音波振動させて盤面から垂直方向に超音波による音響流を発生させ、当該第1室に供給された除染用ミストに音響放射圧による押圧を作用させることにより、当該除染用ミストを物品の外表面に集中して作用させる。移動装置は、除染後の物品を第1室から第2室に移動する。給排気装置は、給気口を介して清浄空気を第2室に供給して物品の外表面に残留した除染剤を除去するエアレーションを行うと共に、排気口を介してエアレーション後の除染剤を含む空気を外部環境に排出する。
【0026】
このように、上記構成によれば、グレードAの環境に搬入しようとする物品の表面に除染用ミストを集中させ、適正量の除染剤の供給で除染効果の完璧を図ると共に、エアレーション操作の時間も短縮することにより除染操作の効率化を図ることのできるパスボックスを提供することができる。
【0027】
また、上記構成によれば、第2室は、第1室の上部に位置する。また、給排気装置の給気口が第2室の上部に開口し、排気口が第1室の下部に開口するように配置されている。このことにより、物品が第2室にあってエアレーションが行われている際には、給排気装置から第2室に供給された清浄空気は、第2室の上部から当該物品の外表面及び第2扉を介して第1室の上部から下部に至る一方向流となって物品の外表面及び第1室の内部をエアレーションしながら第1室の下部に開口する排気口から外部環境に排出される。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0028】
また、上記構成によれば、除染剤制御装置は、複数の震動盤を具備し、これらの震動盤は、第1室にある物品を間に介すると共に互いにその盤面を対向させて配置することにより、音響放射圧による押圧が主として各震動盤から物品の方向に集中する。このことにより、除染用ミストは、物品の外表面に集中して作用するように制御される。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0029】
また、上記構成によれば、除染剤制御装置は、複数の震動盤を具備し、これらの震動盤は、第1室にある物品を間に介すると共に互いにその盤面を対向させることなく配置することにより、音響放射圧による押圧が主として各震動盤から物品の側面に沿うように通過する。このことにより、除染用ミストは、第1室の内部を旋回するように移動して物品の外表面に集中して作用する。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0030】
また、上記構成によれば、除染剤供給装置は、ミスト発生手段を有している。このミスト発生手段は、1流体ノズルや2流体ノズルなどのスプレーノズル、又は、超音波加湿器、ネブライザー、ピエゾアトマイザーなどの超音波によるミスト発生器である。このことにより、除染剤供給装置は、ミスト発生手段により発生した除染剤の1次ミストを第1室が備える除染剤供給装置の供給口を介して第1室に除染用ミストとして供給する。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0031】
また、上記構成によれば、除染剤供給装置は、ミスト発生手段に加えミスト微細化手段を有している。このミスト微細化手段は、1又は2以上の震動盤を具備し、当該震動盤を超音波振動させて盤面から垂直方向に超音波による音響流を発生させる。そして、ミスト発生手段により発生した除染剤の1次ミストに音響流による超音波振動を作用させることにより、当該1次ミストを更に微細化した2次ミストとする。このことにより、発生した2次ミストを第1室が備える除染剤供給装置の供給口を介して第1室に微細化した除染用ミストとして供給する。よって、上記作用効果をより更に効果的に発揮することができる。
【0032】
また、上記構成によれば、第2室は、内部壁面近傍に配置した1又は2以上の震動盤を具備し、当該震動盤を超音波振動させて盤面から垂直方向に超音波による音響流を発生させる。このことにより、第2室においてエアレーションされる除染後の物品の外表面に清浄空気と音響流とを作用させることにより、当該物品の表面に残留した除染剤を除去する。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0033】
また、上記構成によれば、震動盤は、基盤と複数の送波器とを具備し、基盤の平面上に複数の送波器の送波方向を統一して配置すると共にこれらの送波器を同位相で作動させる.このことにより、複数の送波器の正面方向の超音波を互いに強め合うと共に、当該複数の送波器の横方向の超音波を互いに打ち消し合うようにして、震動盤の盤面から垂直方向に指向性の強い超音波による音響流を発生させる。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0034】
また、上記構成によれば、作業室内に供給された除染用ミストは、震動盤から発生する超音波振動により更に微細化する。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0035】
また、上記構成によれば、震動盤から発生する超音波の周波数と出力を可変とする、及び/又は、超音波を断続的に送波する制御装置を具備するようにしてもよい。このことにより、物品の外表面に集中して作用するように制御される除染用ミストの位置又は移動速度を制御する。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1実施形態に係るパスボックスの正面図である。
図2図1のパスボックスの左側面図である。
図3図1のパスボックスを用いた除染時の内部の概要を示す正面断面図である。
図4図1のパスボックスの除染時の第1室の内部の概要を示す平面断面図である。
図5図1のパスボックスが有する除染剤供給装置の概要を示す正面断面図である。
図6図1のパスボックスが具備する震動盤においてスピーカー基盤に複数の超音波スピーカーを配置した状態を示す概要斜視図である。
図7図1のパスボックスのエアレーション時の内部の概要を示す正面断面図である。
図8】第2実施形態に係るパスボックスの除染時の第1室の内部の概要を示す平面断面図である。
図9】第3実施形態に係るパスボックスのエアレーション時の内部の概要を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明においては、液状の除染剤又は除染剤の水溶液をミスト状態で除染対象である物品に作用させる。ここで、「ミスト」とは、広義に解釈するものであって、微細化して空気中に浮遊する除染剤の液滴の状態、除染剤のガスと液滴が混在した状態、除染剤がガスと液滴との間で凝縮と蒸発との相変化を繰り返している状態などを含むものとする。また、粒径に関しても、場合によって細かく区分されるミスト・フォグ・液滴などを含んで広義に解釈する。
【0038】
よって、本発明に係るミストにおいては、場合によってミスト(10μm以下と定義される場合もある)或いはフォグ(5μm以下と定義される場合もある)と呼ばれるもの、及び、それ以上の粒径を有するものも含むものとする。なお、本発明においては、超音波振動の作用により、ミスト・フォグ・液滴などの3μm~10μm或いはそれ以上の液滴であっても、3μm以下の超微細粒子に均一化されて高度な除染効果を発揮するものと考えられる(後述する)。
【0039】
以下、本発明に係るパスボックスを各実施形態により詳細に説明する。なお、本発明は、下記の各実施形態にのみ限定されるものではない。
【0040】
《第1実施形態》
図1は、本第1実施形態に係るパスボックスの正面図であり、図2は、その左側面図である。図1及び図2において、本第1実施形態に係るパスボックス100は、床面Gに載置されたパスボックス本体100aと、その右側面の壁部に接合された電装・機械室100bとにより構成されている。本第1実施形態においては、パスボックス100の背面壁が医薬GMPでグレードAの環境に維持されたアイソレーター(図示せず)に連接している。
【0041】
パスボックス本体100aは、上部から上部機械室10、第2室20(エアレーション室20ともいう)、第1室30(除染室30ともいう)及び下部機械室40とから構成されている。上部機械室10は、その内部にエアレーション室20に清浄空気を供給する供給配管(後述する)を有している。エアレーション室20は、ステンレス製金属板で構成された筐体からなり、その背面壁においてアイソレーター(図示せず)の壁面に開閉扉21(内部扉21ともいう)を介して連接している(図2参照)。なお、エアレーション室20の内部の構成については後述する。
【0042】
除染室30は、ステンレス製金属板で構成された筐体からなり、その正面壁に外部環境への開閉扉31(外部扉31ともいう)と、エアレーション室20の内部への開閉扉(中央扉ともいう;後述する)とを有している(図1参照)。なお、除染室30の内部の構成については後述する。下部機械室40は、その内部に除染室30に除染剤を供給する除染剤供給装置(後述する)と、エアレーション室20及び除染室30の空気を排出する排気配管(後述する)を有している。
【0043】
電装・機械室100bは、その内部に上部機械室10の供給配管及び下部機械室40の排気配管と連通した給排気装置(図示せず)、並びに、除染剤供給装置等のパスボックス本体100aを制御する制御装置等(図示せず)を有している。また、電装・機械室100bは、制御盤を兼ねており、その正面壁には制御モニターS1と操作盤S2とが設けられている(図1参照)。
【0044】
なお、パスボックス本体100aとアイソレーターとの連接状態及び各開閉扉(内部扉21、外部扉31)の構造は特に限定するものではなく、従来のパスボックスの構造と同様である。また、アイソレーターに連接するパスボックスの壁面は、背面壁に限るものではなく左右側面壁等で連接するようにしてもよい。また、パスボックス内部には、除染及びエアレーションのための給排気装置を別途設けるようにしてもよい。
【0045】
次に、本第1実施形態に係るパスボックスを用いて、滅菌された複数の容器を収納したパッケージPの外表面を除染してグレードAの環境に維持されたアイソレーターの内部に搬入する操作について説明する。
【0046】
図3は、本第1実施形態に係るパスボックスを用いた除染時の内部の概要を示す正面断面図であり、図2におけるX-X断面図である(電装・機械室100bについては部分断面図)。図3において、上部機械室10には、供給配管11及び開閉弁12(いずれも概略図で示す)が設けられ、電装・機械室100bの内部に設置された給排気装置(図示せず)の給気機構から供給される清浄空気をエアレーション室20の上部壁22に開口する給排気装置の給気口23からエアレーション室20の内部に供給する。なお、図3に示す除染時においては、パスボックス本体100aの制御装置(図示せず)による制御で開閉弁12は閉じられており清浄空気は供給されていない。
【0047】
エアレーション室20には、上述の上部壁22に開口する給排気装置(図示せず)の給気口23と、エアレーション室20とアイソレーター(図示せず)とを連通する開口部に設けられた内部扉21と、エアレーション室20と除染室30との境界壁24に開口する連通部に設けられた中央扉25と、エアレーション室20の上部壁22の直ぐ下に配置されたフィルターファンユニット26(FFU26)が設けられている。なお、図3に示す除染時の前にエアレーション室20は、予め除染されグレードA又はグレードBの環境に維持されている。
【0048】
中央扉25の開閉は、パスボックス本体100aの制御装置(図示せず)により制御される。また、FFU26は、エアレーション時に給排気装置(図示せず)の給気口23から供給される清浄空気をエアレーション室20の上方から除染室30の下方に流れる一方向流として送風するように配置されている。なお、図3に示す除染時においては、内部扉21及び中央扉25は気密的に閉鎖され、FFU26はパスボックス本体100aの制御装置(図示せず)による制御で停止している。
【0049】
除染室30には、下部壁32に開口する給排気装置(図示せず)の排気口33と、除染剤供給装置70(後述する)の供給口34と、パッケージPを除染室30からエアレーション室20に移動する移動装置50と、除染剤制御装置60(詳細は後述する)とが設けられている。本第1実施形態においては、移動装置50として昇降装置50を採用する。昇降装置50は、パッケージPを上載するテーブル51と、このテーブル51を除染室30とエアレーション室20との間で昇降させる昇降ユニット(図示せず)とから構成され、パスボックス本体100aの制御装置(図示せず)による制御で昇降する。なお、テーブルの形状は特に限定するものではないが、パッケージPの底面部を効率よく除染するためにメッシュ構造などにすることもできる。また、テーブルの表面に凹凸を設けた構造として、超音波振動によりパッケージPの底面部が効率よく除染されるようにしてもよい。更に、テーブルを使用することなく、パッケージPを吊下げる方式にしてもよい。一方、昇降ユニットの方式と構造は、どのようなものであってもよく、例えば、手動引上げ、リフト方式、ロボットアーム等であってもよい。
【0050】
下部機械室40には、除染室30に除染剤を供給する除染剤供給装置70が設けられ、除染室30の下部壁32に開口する供給口34から除染室30の内部に除染剤を供給する。なお、図3に示す除染時においては、パスボックス本体100aの制御装置(図示せず)による制御で除染剤が供給されている。また、下部機械室40には、排気配管41、開閉弁42及び除染剤を分解する触媒ユニット43(いずれも概略図で示す)が設けられ、電装・機械室100bの内部に設置された給排気装置(図示せず)の排気機構からの吸引によりエアレーション室20及び除染室30から流出する空気を吸引し、その空気に含まれる除染剤を分解して外部環境に排出する。なお、図3に示す除染時においては、パスボックス本体100aの制御装置(図示せず)による制御で開閉弁42は閉じられており空気は排出されていない。
【0051】
次に、本発明の第1の特徴である除染操作について説明する。除染操作は、除染室30において行われる。図3においては、除染室30の内部中央下方の移動装置50のテーブル51の上に外部環境からパッケージPが搬入されている。本第1実施形態においては、このパッケージPの外表面が除染対象である。また、図3において、除染室30の内部には下部機械室40の除染剤供給装置70から、供給口34を介して除染剤が供給されている。
【0052】
ここで、本第1実施形態に係る除染剤供給装置70について説明する。図5は、本第1実施形態に係るパスボックスが有する除染剤供給装置の概要を示す正面断面図である。図5において、除染剤供給装置70は、ステンレス製金属板からなる筐体71と、1次ミストを発生するミスト発生ユニット72と、発生した1次ミストを更に微細化して2次ミストとするミスト微細化ユニット73と、発生した2次ミストを放出する供給口74とを有している。
【0053】
ミスト発生ユニット72は、除染剤を1次ミストに変換してミスト微細化ユニット73に供給する。なお、本第1実施形態においては、ミスト発生ユニット72として二流体スプレーノズル72を使用し、筐体71の底壁面71aに配置されている。また、本第1実施形態においては、除染剤として過酸化水素水(35W/V%)を使用した。
【0054】
二流体スプレーノズル72は、コンプレッサー(図示せず)からの圧縮空気により過酸化水素水を1次ミスト化して過酸化水素水ミストM1とし、ミスト微細化ユニット73に供給する。なお、本第1実施形態においては、ミスト発生ユニットとして二流体スプレーノズルを使用するが、本発明においてはこれに限るものではなく、ミスト発生ユニット及び出力等について特に限定するものではない。
【0055】
また、本第1実施形態においては、ミスト微細化ユニット73として2台の震動盤73a、73bを使用し、筐体71の対向する2面の側壁面71b、71cの内部を背にして、互いの震動面73c、73dを水平方向に対向させて二流体スプレーノズル72のミスト放出口72aの上部に向けて配置されている。また、ミスト微細化ユニット73は、二流体スプレーノズル72が1次ミストとして発生させた過酸化水素水ミストM1を微細化した2次ミストの微細ミストM2とする。微細化の詳細については後述する。
【0056】
供給口74は、筐体71の上壁面71dに開口して、除染室30の下部壁32に開口する供給口34に接続している。また、この供給口74(除染室30の供給口34)を介して、ミスト微細化ユニット73が2次ミストとして微細化した微細ミストM2を除染室30の内部に供給する。震動盤73の詳細は後述する。なお、本第1実施形態においては、ミスト微細化ユニットを採用するが、本発明においてはこれに限るものではなく、ミスト微細化ユニットを採用することなく、ミスト発生ユニットから発生する1次ミストを除染室30の内部に直接供給するようにしてもよい。
【0057】
ここで、除染剤制御装置60について説明する。図4は、除染時の第1室(除染室)の内部の概要を示す平面断面図であり、図1におけるY-Y断面図である。除染室30に関する図3の正面断面図及び図4の平面断面図において、除染剤制御装置60は、2台の震動盤61、62を具備している。2台の震動盤61、62は、除染室30の内部に左右側壁35、36を背にして震動面61a、62aを除染室30の内部に水平方向に向けて配置されている。これら2台の震動盤61、62は、互いに盤面(震動面)を対向(盤面同士が互いに正面に向き合うこと)させて配置されている(図4参照)。これらの震動面を対向させて配置する理由、及び、除染室30の内部に供給された微細ミストM2の挙動については後述する。
【0058】
ここで、震動盤について説明する。本第1実施形態においては、除染剤制御装置60の2台の震動盤61、62、及び、ミスト微細化ユニット73の2台の震動盤73a、73bを使用する。これらの震動盤は、基本的には同じ構造と機能を有している。ここでは、除染剤制御装置60の震動盤61を例にして説明する。図6は、本第1実施形態に係るパスボックスが具備する震動盤においてスピーカー基盤に複数の超音波スピーカーを配置した状態を示す概要斜視図である。図6において、震動盤61は、基盤と複数の送波器とを具備している。本第1実施形態においては、基盤としてスピーカー基盤61cを使用し、送波器として超音波スピーカー61eを使用した。本第1実施形態においては、スピーカー基盤61cの平面61d上に25個の超音波スピーカー61eをそれらの震動面61fの送波方向(図示正面左方向)を統一して配置されている。なお、超音波スピーカーの個数は、特に限定するものではない。
【0059】
本第1実施形態においては、超音波スピーカー61eとして超指向性の超音波スピーカーを使用した。具体的には、周波数40KHz付近の超音波を送波する周波数変調方式の超音波スピーカー(DC12V、50mA)を使用した。なお、超音波スピーカーの種類、大きさと構造、出力等に関しては、特に限定するものではない。また、本発明においては、除染剤制御装置60又はミスト微細化ユニット73が具備する震動盤に関しては超音波スピーカーに限るものではなく、超音波の発生機構、周波数域及び出力等について特に限定するものではない。
【0060】
本第1実施形態において、複数(25個)の超音波スピーカー61eの震動面61fの送波方向を統一すると共にこれらの送波器を同位相で作動させることにより、各超音波スピーカー61eの正面方向の超音波が互いに強め合うと共に、各超音波スピーカー61eの横方向の超音波が互いに打ち消し合うようになる。その結果、スピーカー基盤61cに配置された超音波スピーカー61eが超音波振動すると、各震動面61fから垂直方向に空気中を進行する指向性の強い音響流が発生する。なお、パスボックス本体100aの制御装置(図示せず)により除染剤制御装置60及びミスト微細化ユニット73の各超音波スピーカー61eの周波数と出力を制御することにより、除染室30の内部で効率的な除染操作が可能となる。
【0061】
次に、本第1実施形態に係る除染剤供給装置70及び除染剤制御装置60における過酸化水素水ミストの挙動について説明する。まず、除染剤供給装置70における過酸化水素水ミストの挙動を説明する。
【0062】
図5において、二流体スプレーノズル72が1次ミストとして発生させた過酸化水素水ミストM1がミスト微細化ユニット73に供給される。この状態でミスト微細化ユニット73の2台の震動盤73a、73bの超音波スピーカー61eが超音波振動すると、2つの震動面73c、73dからそれぞれ垂直方向に進行する指向性の強い音響流73e、73fが発生する。これらの震動盤73a、73bの震動面73c、73dから発生した音響流73e、73fは、二流体スプレーノズル72から放出された過酸化水素水ミストM1に作用する。この過酸化水素水ミストM1は、二流体スプレーノズル72からの放出圧により図示上方(供給口74の方向)に向かって進行する。
【0063】
このとき、1次ミストの過酸化水素水ミストM1は、震動面73c、73dから発生した音響流による超音波振動の作用により微細化した2次ミストの微細ミストM2となり、図示上方に向かって進行し供給口74(除染室30の下部壁32に開口する供給口34に接続)から上部に連通した除染室30の内部に供給される。このとき、微細ミストM2は、超音波振動の作用で微細化され粒径が小さく表面積が大きくなることから、ミストの蒸発効率が高く蒸発と凝縮とを繰り返しながら高度に微細化されたミストとして除染室30の内部に供給される。
【0064】
次に、除染室30の内部に供給された微細ミストM2の挙動について説明する。図3及び図4において、除染室30の内部の2面の側壁35、36に配置した震動盤61、62は、その震動面61a、62a(超音波スピーカー61eの震動面61fの方向と同じ)を除染室30の中央部に向けている。
【0065】
この状態で各震動盤の超音波スピーカー61eが超音波振動すると、2つの震動面61a、62aからそれぞれ垂直方向に進行する指向性の強い音響流61b、62bが発生する。これらの音響流61b、62bは、供給口34を介してミスト微細化ユニット73から放出された微細ミストM2を取り込んで、それぞれ音響放射圧による押圧を作用させ、除染室30の中央部に移動させる。この際に微細ミストM2は、音響流61b、62bによる超音波振動の作用により更に微細化された超微細ミストM3となる。
【0066】
図4において、2台の震動盤61、62は、パッケージPを間に挟むようにして互いの震動面61a、62aを対向させた状態に配置されている。この状態において、除染室30の中央部に搬入されたパッケージPは、2台の震動盤61、62の各震動面61a、62aよって挟まれた状態にある。本発明者らは、この状態において音響流61b、62bによる超音波振動の作用により更に微細化された超微細ミストM3が、両側から除染室30の中央部に位置するパッケージPの外表面に集中して作用することを見出した(図3及び図4参照)。この理由については定かではないが、各震動盤から発生する音響波が物品に到達した時に一部しか反射せず、主に物品表面に吸収又は散乱することにより、音響放射圧の押圧作用が物品の方向に集中するためと考えられる。
【0067】
このとき、超微細ミストM3は、超音波振動の作用で超微細化され粒径が非常に小さく表面積が大きくなることから、ミストの蒸発効率が高く蒸発と凝縮とを繰り返しているものと考えられる。また、超微細ミストM3は、高度に微細化されたミストでありパッケージPの外表面に集中すると共に、均一且つ薄層の凝縮膜をパッケージPの外表面に形成する。従って、除染室30の内壁面に無駄な凝縮を起こすことがない。
【0068】
このように、過酸化水素の超微細ミストM3は、超音波振動の作用を常に受けながら蒸発と凝縮と微細化を繰り返しながらパッケージPの周囲に集中する。また、パッケージPの外表面においても、超音波振動の作用を常に受け均一且つ薄層の凝縮膜の再蒸発と凝縮とが繰り返される。これらのことにより、パッケージPの周囲には過酸化水素の3μm以下の超微細粒子と過酸化水素ガスとが相変化しながら共存して高度な除染環境を発現するものと考えられる。
【0069】
また、パッケージPの外表面に均一且つ薄層で形成された凝縮膜が再蒸発と凝縮とを繰り返すことにより、過酸化水素水ミスト中の除染剤濃度を上げることが可能で、少量の除染剤で効率の良い除染を可能にする。また、少量の除染剤で効率よく除染できるので、除染時間が大幅に短縮できる。本発明者らによれば、パッケージPの除染に要する時間は、検体のように10~100mm程度の大きさものであれば約3~5分程度、300×300mm程度の大きさものであれば約10~20分程度で効果が確認できた。更に、副次的効果であるが、音響流61b、62bによる超音波振動及び音響放射圧によって、パッケージPの外表面への付着物の除去効果も得られる。
【0070】
次に、本発明の第2の特徴であるエアレーション操作について説明する。エアレーション操作は、エアレーション室20において行われる。まず、除染室30におけるパッケージPの除染が終了すると、パスボックス本体100aの制御装置(図示せず)による制御で除染剤供給装置70及び除染剤制御装置60が停止する。次に、制御装置による制御で電装・機械室100bの内部に設置された給排気装置(図示せず)の給気機構及び排気機構が作動する。このとき、制御装置による制御で中央扉25が開放され、エアレーション室20と除染室30とが連通する。
【0071】
図7は、本第1実施形態におけるエアレーション時の内部の概要を示す正面断面図である。図7において、上部機械室10の開閉弁12が開かれて給気機構からの清浄空気が供給配管11及び給気口23を介してエアレーション室20の内部に供給される。これに合わせて、給気口23の直ぐ下に配置されたFFU26も作動する。また、下部機械室40の開閉弁42が開かれて排気機構からの吸引によりエアレーション室20及び除染室30の空気が排気口33及び排気配管41を介して外部環境に排出される。このとき、排気される空気に含まれる過酸化水素は、触媒ユニット43により分解される。
【0072】
図7において、パッケージPは、昇降装置50のテーブル51に上載された状態で、昇降ユニット(図示せず)によってエアレーション室20に移動している(図7に元の位置を破線で示す)。この状態において、エアレーション室20の給気口23を介して供給される清浄空気は、FFU26のファンの作用によってエアレーション室20の上部から除染室30の下部に至る一方向流(図7に矢印で示す)となってパッケージPの外表面及び除染室30の内部をエアレーションしながら除染室30の排気口33を介して外部環境に排出される。このように、本第1実施形態においては、上方から下方に流れる一方向流によるエアレーションが行われるので、除染室30の上部にエアレーション室20を配置することが好ましい。
【0073】
上述のように、本第1実施形態に係る除染操作においては、超微細ミストM3は、高度に微細化されたミストでありパッケージPの外表面に集中すると共に、均一且つ薄層の凝縮膜をパッケージPの外表面に形成する。従って、本第1実施形態におけるエアレーション操作においては、エアレーション室20を除染室30から独立させると共に、除去する凝縮膜も薄層であることからエアレーションの効率も向上して短時間化が可能となる。本発明者らによれば、パッケージPのエアレーションに要する時間は、約1~2分程度で効果が確認できた。なお、エアレーションが完了したパッケージPは、内部扉21を介してグレードAに維持されたアイソレーターの内部に搬入される。
【0074】
よって、本第1実施形態によれば、グレードAの環境に搬入しようとする物品の表面に除染用ミストを集中させ、適正量の除染剤の供給で除染効果の完璧を図ると共に、エアレーション操作の時間も短縮することにより除染操作の効率化を図ることのできるパスボックスを提供することができる。
【0075】
《第2実施形態》
上記第1実施形態に係る除染剤制御装置が互いに対向する2台の震動盤を除染室に具備したパスボックスに関するものであることに対して、本第2実施形態においては、互いに対向しない2台の震動盤を除染室に具備したパスボックスに関するものである。図8は、本第2実施形態に係るパスボックスの除染時の第1室(除染室)の内部の概要を示す平面断面図である。なお、本第2実施形態に係るパスボックスの除染時の内部の概要を示す正面断面図、及び、エアレーション時の内部の概要を示す正面断面図は、上記第1実施形態と同様である(図3及び図7参照)。
【0076】
図8において、本第2実施形態に係るパスボックス200は、パスボックス本体200aと、その右側面の壁部に接合された電装・機械室200bとにより構成されている。パスボックス本体200aは、上記第1実施形態と同様に上部から上部機械室、第2室(エアレーション室ともいう)、第1室230(除染室230ともいう)及び下部機械室とから構成されている(図8においては、除染室230の内部のみを記載する)。なお、上部機械室、エアレーション室、下部機械室及び電装・機械室200bの構成は、上記第1実施形態と同様である(図3及び図7参照)。
【0077】
除染室230は、ステンレス製金属板で構成された筐体からなり、その正面壁に外部環境への開閉扉231(外部扉231ともいう)と、エアレーション室220の内部への開閉扉(図示せず)とを有している。また、図8の平面断面図において、除染剤制御装置260は、2台の震動盤261、262を具備している。なお、震動盤261、262は、上記第1実施形態の震動盤61、62と同様の構造をしたものを使用した(図6参照)。また、これらの震動盤261、262の周波数及び出力も上記第1実施形態の震動盤と同様のものを使用した。
【0078】
次に、除染室230の内部に供給された微細ミストM2の挙動について説明する。なお、本第2実施形態においても、過酸化水素水ミストは上記第1実施形態と同様の除染剤供給装置から供給される微細ミストM2である。図8において、2台の震動盤261、262は、除染室230の内部の図示右壁面235の下部及び左壁面236の上部の2か所に側壁面を背にして震動面261a、262aを除染室230の内部に水平方向に向けて配置されている。これら2台の震動盤261、262は、互いに盤面(震動面)を対向させることなく配置されている。
【0079】
除染室230の内部の図示右下に配置した震動盤261は、その震動面261aを図示左方向に向けている。この状態で各震動盤の超音波スピーカー61eが超音波振動すると、震動面261aから垂直方向(図示左方向)に進行する指向性の強い音響流261bは、供給口(図示せず)を介してミスト微細化ユニットから放出された微細ミストM2を取り込んで、音響放射圧による押圧を作用させ、音響流261bの進行方向(図示左方向)に移動させる。この際に微細ミストM2は、音響流261bによる超音波振動の作用により更に微細化された超微細ミストM3となり除染室230の内部を旋回するように循環する。
【0080】
一方、除染室230の内部の図示左上に配置した震動盤262は、その震動面262aを図示右方向に向けている。この状態で、超音波スピーカー61eが超音波振動すると、震動面262aから垂直方向(図示右方向)に進行する指向性の強い音響流262bが音響流261bによる超音波振動の作用により微細化され送られてきた超微細ミストM3に音響放射圧による押圧を作用させ、音響流262bの進行方向(図示右方向)に移動させる。この際に超微細ミストM3は、音響流262bによる超音波振動の作用により更に安定した超微細ミストとなり除染室230の内部を旋回するように循環する。
【0081】
このように、除染室230の内部では、音響流261b及び音響流262bにより微細安定化された超微細ミストM3が、図8の曲がった矢印方法(図示右回り)に旋回するように循環する。このとき、本発明者らは、この状態において音響流261b、262bによる超音波振動の作用により微細化された超微細ミストM3が、除染室230の中央部に位置するパッケージPの外表面付近に集中して旋回するように循環することを見出した(図8参照)。この理由については定かではないが、各震動盤から発生する音響波が物品に到達した時に音響放射圧による押圧が主として各震動盤からパッケージPの側面に沿うように回折するためと考えられる。
【0082】
このとき、超微細ミストM3は、超音波振動の作用で超微細化され粒径が非常に小さく表面積が大きくなることから、ミストの蒸発効率が高く蒸発と凝縮とを繰り返しているものと考えられる。また、超微細ミストM3は、高度に微細化されたミストでありパッケージPの外表面に集中すると共に、均一且つ薄層の凝縮膜をパッケージPの外表面に形成する。従って、除染室230の内壁面に無駄な凝縮を起こすことがない。
【0083】
このように、過酸化水素の超微細ミストM3は、超音波振動の作用を常に受けながら蒸発と凝縮と微細化を繰り返しながらパッケージPの周囲に集中する。また、パッケージPの外表面においても、超音波振動の作用を常に受け均一且つ薄層の凝縮膜の再蒸発と凝縮とが繰り返される。これらのことにより、パッケージPの周囲には過酸化水素の3μm以下の超微細粒子と過酸化水素ガスとが相変化しながら共存して高度な除染環境を発現するものと考えられる。
【0084】
また、パッケージPの外表面に均一且つ薄層で形成された凝縮膜が再蒸発と凝縮とを繰り返すことにより、過酸化水素水ミスト中の除染剤濃度を上げることが可能で、少量の除染剤で効率の良い除染を可能にする。また、少量の除染剤で効率よく除染できるので、除染時間が大幅に短縮できる。本発明者らによれば、パッケージPの除染に要する時間は、検体のように10~100mm程度の大きさものであれば約3~5分程度、300×300mm程度の大きさものであれば約10~20分程度で効果が確認できた。更に、副次的効果であるが、音響流261b、262bによる超音波振動及び音響放射圧によって、パッケージPの外表面への付着物の除去効果も得られる。なお、本第2実施形態におけるエアレーション操作については、上記第1実施形態と同様にして行うことができる。
【0085】
このように、本第2実施形態に係る除染操作においては、超微細ミストM3は、高度に微細化されたミストでありパッケージPの外表面に集中すると共に、均一且つ薄層の凝縮膜をパッケージPの外表面に形成する。従って、本第1実施形態に係るエアレーション操作においては、エアレーション室を除染室から独立させると共に、除去する凝縮膜も薄層であることからエアレーションの効率も向上して短時間化が可能となる。本発明者らによれば、パッケージPのエアレーションに要する時間は、約1~5分程度で効果が確認できた。
【0086】
よって、本第2実施形態によれば、グレードAの環境に搬入しようとする物品の表面に除染用ミストを集中させ、適正量の除染剤の供給で除染効果の完璧を図ると共に、エアレーション操作の時間も短縮することにより除染操作の効率化を図ることのできるパスボックスを提供することができる。
【0087】
《第3実施形態》
上記第1実施形態においては、エアレーション時に震動盤を使用しないものであるが、本第3実施形態においては、エアレーション時においても震動盤を使用する場合について説明する。図9は、本第3実施形態に係るパスボックスのエアレーション時の内部の概要を示す正面断面図である。なお、本第3実施形態に係るパスボックスの除染操作は、エアレーション室に設けた震動盤の作動以外は上記第1又は第2実施形態と同様に行うことができる。
【0088】
図9において、本第3実施形態に係るパスボックス300は、パスボックス本体300aと、その右側面の壁部に接合された電装・機械室300bとにより構成されている。パスボックス本体300aは、上記第1実施形態と同様に上部から上部機械室310、第2室320(エアレーション室320ともいう)、第1室330(除染室330ともいう)及び下部機械室340とから構成されている。なお、上部機械室310、除染室330、下部機械室340及び電装・機械室300bの構成は、上記第1実施形態と同様である(図3、4、5及び図7参照)。
【0089】
図9において、上部機械室310には、上記第1実施形態と同様に供給配管311及び開閉弁312(いずれも概略図で示す)が設けられ、電装・機械室300bの内部に設置された給排気装置(図示せず)の給気機構から供給される清浄空気をエアレーション室320の上部壁322に開口する給排気装置の給気口323からエアレーション室320の内部に供給する。なお、図9に示すエアレーション時においては、パスボックス本体300aの制御装置(図示せず)による制御で開閉弁312は開かれており清浄空気が供給されている。
【0090】
エアレーション室320には、上述の上部壁322に開口する給排気装置(図示せず)の給気口323と、エアレーション室320とアイソレーター(図示せず)とを連通する開口部に設けられた内部扉321と、エアレーション室320と除染室330との境界壁324に開口する連通部に設けられた中央扉325と、エアレーション室320の上部壁322の直ぐ下に配置されたフィルターファンユニット326(FFU326)が設けられている。なお、本第3実施形態においては、エアレーション室320の内部に左側壁327を背にして1台の震動盤328が震動面328aをエアレーション室320の内部に水平方向に向けて配置されている。
【0091】
本第3実施形態におけるエアレーション操作は、エアレーション室320において行われる。まず、除染室330におけるパッケージPの除染が終了すると、パスボックス本体300aの制御装置(図示せず)による制御で除染剤供給装置370及び除染剤制御装置360が停止する。次に、制御装置による制御で電装・機械室300bの内部に設置された給排気装置(図示せず)の給気機構及び排気機構が作動する。このとき、制御装置による制御で中央扉325が開放され、エアレーション室320と除染室330とが連通する。
【0092】
図9において、上部機械室310の開閉弁312が開かれて給気機構からの清浄空気が供給配管311及び給気口323を介してエアレーション室320の内部に供給される。これに合わせて、給気口323の直ぐ下に配置されたFFU326も作動する。また、下部機械室340の開閉弁342が開かれて排気機構からの吸引によりエアレーション室320及び除染室330の空気が排気口333及び排気配管341を介して外部環境に排出される。このとき、排気される空気に含まれる過酸化水素は、触媒ユニット343により分解される。なお、本第3実施形態においては、エアレーション時に震動盤328が作動する。
【0093】
図9において、パッケージPは、昇降装置350のテーブル351に上載された状態で、昇降ユニット(図示せず)によってエアレーション室320に移動している(図9に元の位置を破線で示す)。この状態において、エアレーション室320の給気口323を介して供給される清浄空気は、FFU326のファンの作用によってエアレーション室320の上部から除染室330の下部に至る一方向流(図9に矢印で示す)となってパッケージPの外表面及び除染室330の内部をエアレーションしながら除染室330の排気口333を介して外部環境に排出される。このように、本第3実施形態においては、上方から下方に流れる一方向流によるエアレーションが行われるので、除染室330の上部にエアレーション室320を配置することが好ましい。
【0094】
本第3実施形態に係るエアレーション操作においては、超微細ミストM3がパッケージPの外表面に均一且つ薄層の凝縮膜を形成している。この状態でFFU326のファンの作用による一方向流の清浄空気を供給すると共に震動盤328が超音波振動すると、震動面328aから垂直方向に進行する指向性の強い音響流328bが発生する。この音響流328bは、超音波振動と音響放射圧による押圧をパッケージPの外表面に作用させる。このことにより、パッケージPの外表面に形成した薄層の凝縮膜が振動して、清浄空気の作用に伴って凝縮膜の乾燥が促進されエアレーション効果が更に促進される。なお、エアレーションが完了したパッケージPは、内部扉321を介してグレードAに維持されたアイソレーターの内部に搬入される。
【0095】
従って、本第3実施形態に係るエアレーション操作においては、エアレーション室320を除染室330から独立させると共に、震動盤の作用によりエアレーションの効率が更に向上して短時間化が可能となる。
【0096】
よって、本第3実施形態によれば、グレードAの環境に搬入しようとする物品の表面に除染用ミストを集中させ、適正量の除染剤の供給で除染効果の完璧を図ると共に、エアレーション操作の時間も短縮することにより除染操作の効率化を図ることのできるパスボックスを提供することができる。
【0097】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記各実施形態においては、除染剤供給装置としてミスト発生ユニットとミスト微細化ユニットとを組み合わせて使用した。しかし、これに限るものではなく、ミスト発生ユニットから直接、除染室に除染剤ミストを供給するようにしてもよい。
(2)上記各実施形態においては、除染剤供給装置のミスト発生ユニットとして二流体スプレーノズルを使用した。しかし、これに限るものではなく、1流体ノズルなど他のスプレーノズル、又は、超音波加湿器、ネブライザー、ピエゾアトマイザーなどの超音波によるミスト発生器などを使用するようにしてもよい。また、複数種類のミスト供給装置を組み合わせて使用するようにしてもよい。
(3)上記各実施形態においては、ミスト微細化ユニット、ミスト制御装置、及び、エアレーション室に使用する震動盤としてスピーカー基盤に複数の超音波スピーカーを配置したものを使用した。しかし、これに限るものではなく、震動盤として一定面積を有するステンレス板にランジュバン型震動子を固定した震動盤やその他の超音波振動する盤面を有するものであればどのような震動盤を使用するようにしてもよい。
(4)上記各実施形態においては、ミスト微細化ユニット、ミスト制御装置、及び、エアレーション室に使用する震動盤としてスピーカー基盤に複数の超音波スピーカーを配置したものを使用し、超音波スピーカーの送波方向を統一して配置すると共にこれらの超音波スピーカーを同位相で作動させるようにした。しかし、これに限るものではなく、複数の超音波スピーカーを異なる位相で作動させるようにしてもよい。
(5)上記各実施形態においては、除染剤として過酸化水素水(H水溶液)を使用した。しかし、これに限るものではなく、除染剤として使用される液体状の除染剤であればどのようなものを使用するようにしてもよい。
(6)上記各実施形態においては、除染室の側壁に2台の震動盤を配置した。しかし、これに限るものではなく、他の側壁、上壁面、底壁面を加えた6面のうち1~6面に震動盤を配置するようにしてもよい。
(7)上記第1実施形態においては、除染室に2台の震動盤を互いに対向する位置に配置した。しかし、これに限るものではなく、1台の震動盤に対して超音波の反射盤を互いに対向する位置に配置するようにしてもよい。
(8)上記第2実施形態においては、除染室に2面の側壁に2台の震動盤を互いに対向しない位置に配置して、除染剤ミストが水平方向に循環するものについて説明した。しかし、これに限るものではなく、上壁と底壁に2台の震動盤を互いに対向しない位置に配置して、除染剤ミストが垂直方向に循環するようにしてもよい。
(9)上記第2実施形態においては、2面の側壁に2台の震動盤を互いに対向しない位置に配置して、除染剤ミストが水平方向に循環するものについて説明した。しかし、これに限るものではなく、4面の側壁に4台の震動盤を互いに対向しない位置に配置して、除染剤ミストが水平方向に循環するようにしてもよい。
(10)上記各実施形態においては、パッケージを除染室からエアレーション室に移動する移動装置として昇降装置を採用した。しかし、これに限るものではなく、リフトやロボットアームなど他の移動装置を使用するようにしてもよい。
(11)上記各実施形態においては、除染室とエアレーション室とを上下方向に配置した。しかし、これに限るものではなく、両室内のエアレーション時の空気の流れを制御できるのであれば、横方向に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
100、200、300…パスボックス、
100a、200a、300a…パスボックス本体、
100b、200b、300b…電装・機械室、
10、310…上部機械室、11、311…供給配管、12、312…開閉弁、
20、320…第2室(エアレーション室)、
21、321…開閉扉(内部扉)、22、322…上部壁、23、323…給気口、
24、324…境界壁、25、325…開閉扉(中央扉)、
26、326…フィルターファンユニット(FFU)、
327…側壁、328…震動盤、328a…震動面、328b…音響流、
30、230、330…第1室(除染室)、31、231…開閉扉(外部扉)、
32…下部壁、33、333…排気口、34、334…供給口、35、36…側壁、
40、340…下部機械室、41、341…排気配管、42、342…開閉弁、
43、343…触媒ユニット、50、350…移動装置、51、351…テーブル、
60…除染剤制御装置、61、62、261、262…震動盤、
61a、62a、261a、262a…震動面、
61b、62b、261b、262b…音響流、
61c…スピーカー基盤、61d…スピーカー基盤の平面、
61e…超音波スピーカー、61f…震動面、
70、370…除染剤供給装置、71…筐体、71a…底壁面、
71b、71c…側壁面、71d…上壁面、
72…ミスト発生ユニット(二流体スプレーノズル)、72a…放出口、
73…ミスト微細化ユニット、73a、73b…震動盤、73c、73d…震動面、
73e、73f…音響流、74…供給口、
M1…過酸化水素水ミスト、M2…微細ミスト、M3…超微細ミスト、
S1…制御モニター、S2…操作盤、G…床面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9