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特許7217970融合タンパク質を用いてT細胞受容体をリプログラミングするための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】融合タンパク質を用いてT細胞受容体をリプログラミングするための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230130BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230130BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230130BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230130BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230130BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230130BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230130BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230130BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230130BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230130BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230130BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20230130BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230130BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/12
C12N15/13
C07K19/00
C07K14/725
C07K16/28
C12N5/10
C12N5/0783
A61K35/17 Z
A61P35/00
C12P21/02 C
C12P21/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019513450
(86)(22)【出願日】2017-10-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 US2017055628
(87)【国際公開番号】W WO2018067993
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】62/405,551
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/510,108
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519032826
【氏名又は名称】ティーシーアール2 セラピューティクス インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】ボーエルレ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シェクズキーヴィッチ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ホフマイスター,ロバート
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/063419(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/090230(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/150327(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02258719(EP,A1)
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1993年,Vol.90, p.720-724
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする、組換え核酸分子であって、前記TFPは、
(a)
(i)TCR細胞外ドメインの少なくとも一部、
(ii)TCR膜貫通ドメイン、及び、
(iii)CD3ε、CD3δ、またはCD3γの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメイン、
を含むTCRサブユニット、ここで、TCR細胞外ドメイン、TCR膜貫通ドメイン、及びTCR細胞内ドメインは、CD3ε、CD3δ、またはCD3γである同じTCR鎖に由来する、及び
(b)抗メソテリン結合ドメインを含むヒトまたはヒト化scFvまたはsdAb、
を含み、
前記抗メソテリン結合ドメインは前記TCR細胞外ドメインの少なくとも一部のN末端に作動可能に連結され、
前記TFPは、T細胞で発現する際に内因性TCR複合体に機能的に統合される、組換え核酸分子。
【請求項2】
前記抗メソテリン結合ドメインが、コードしたリンカー配列によって、前記TCR細胞外ドメインの少なくとも一部に連結される、請求項1に記載の組換え核酸分子。
【請求項3】
前記コードしたリンカー配列が(GS)を含み、式中、n=1~4である、請求項2に記載の組換え核酸分子。
【請求項4】
前記TCRサブユニットが、全長のTCR細胞外ドメインを含む、請求項1に記載の組換え核酸分子。
【請求項5】
同じTCR鎖が、CD3εである、請求項1に記載の組換え核酸分子。
【請求項6】
前記組換え核酸分子が、ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである、請求項1に記載の組換え核酸分子。
【請求項7】
コードした抗メソテリン結合ドメインが、配列番号58または配列番号59で表されるVHH抗体ドメインの重鎖(HC)CDR1、HC CDR2、及び、HC CDR3の配列を含み、CDR配列は、Kabatの番号付けによって決定される、請求項1に記載の組換え核酸分子。
【請求項8】
前記抗メソテリン結合ドメインをコードする配列が、i)配列番号58に対して70~100%の配列同一性、または、ii)配列番号59に対して70~100%の配列同一性、を有する配列を含むVHH抗体ドメインをコードする、請求項7に記載の組換え核酸分子。
【請求項9】
抗メソテリン結合ドメインを含むヒトまたはヒト化scFvまたはsdAb、TCR細胞外ドメイン、TCR膜貫通ドメイン、及び、TCR細胞内ドメインを含む組換えTFP分子であって、抗メソテリン結合ドメインはTCR細胞外ドメインのN末端に作動可能に連結され、TCR細胞外ドメイン、TCR膜貫通ドメイン、及びTCR細胞内ドメインは、CD3ε、CD3δ、またはCD3γである同じTCR鎖に由来し、組換えTFP分子は、T細胞で発現する際に、内因性TCR複合体に取り込まれる、組換えTFP分子。
【請求項10】
前記抗メソテリン結合ドメインが、配列番号58または配列番号59で表されるVHH抗体ドメインの重鎖(HC)CDR1、HC CDR2、及びHC CDR3の配列を含み、CDR配列は、Kabatの番号付けによって決定される、請求項9に記載の組換えTFP分子。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1つの組換え核酸分子、または請求項9または10に記載の組換えTFP分子を含むヒト細胞。
【請求項12】
ヒト細胞が、TFPを含まないT細胞と比較して、メソテリンを発現する細胞に対する細胞傷害性の増加を随意に示すT細胞;CD8T細胞;CD4T細胞;CD4CD8T細胞;γδT細胞;αβT細胞;またはNK T細胞である、請求項11に記載のヒト細胞。
【請求項13】
T細胞によるIL-2またはIFNγの産生が、メソテリンを発現する細胞の存在下で増加し、あるいは、T細胞が、(a)抗メソテリン結合ドメインを含み、(b)CD28細胞外ドメインの少なくとも一部、(c)CD28膜貫通ドメイン、(d)CD28細胞内ドメインの少なくとも一部、および(e)CD3ζ細胞内ドメインに作動可能に連結するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含むCD8T細胞またはCD4T細胞よりも大きなまたは効率的な細胞傷害活性を有する、請求項12に記載のヒト細胞。
【請求項14】
癌、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸癌、子宮頸癌、脳腫瘍、肝臓癌、膵臓癌、甲状腺癌、膀胱癌、尿管癌、腎臓癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、胸腺癌、胆管癌、及び、これらの転移から選択される、メソテリンの発現に関連する疾患を有する哺乳動物を処置する方法で使用するための、請求項1~のいずれか1つの組換え核酸分子、または請求項9または10に記載の組換えTFP分子を含む細胞を含む組成物。
【請求項15】
細胞が、自己T細胞または同種異系T細胞である、請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2016年10月7日に出願された米国仮出願第62/405,551号、及び、2017年5月23日に出願された米国仮出願第62/510,108号の利益を主張するものであり、それら出願の全内容を、参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
末期の固形腫瘍を有するほとんどの患者は、標準的治療では治癒不可能である。加えて、従来の治療法の選択肢は、多くの場合、重篤な副作用がある。がん性細胞を拒絶するために患者の免疫系を誘導する数多くの試み、別名、がん免疫療法と呼ばれている方法が行われている。しかしながら、幾つかの障害が、その臨床効果の達成を困難なものにしている。何百ものいわゆる腫瘍抗原が特定されているが、これらは多くの場合、自己由来であるため、がん免疫療法を健康な組織に対して実施する可能性もあるし、あるいは、免疫原性に乏しい。さらに、がん細胞は、多重機構を用いて、それら自身を見えなくしたり、あるいは、がん免疫療法での免疫攻撃の開始及び伝播に敵対したりする。
【0003】
がん細胞の適切な細胞表面分子に、遺伝子操作したT細胞に改めて指示をするキメラ抗原受容体(CAR)変性自己T細胞治療を用いた最近の展開は、免疫系の作用を、B細胞悪性腫瘍の処置において利用することが期待できる結果を示している(例えば、Sadelain et al.,Cancer Discovery 3:388-398(2013)を参照されたい)。CD19特異的CAR T細胞(別名、CTL019)での臨床結果は、慢性リンパ性白血病(CLL)ならびに小児急性リンパ性白血病(ALL)の患者に完全寛解を示した(例えば、Kalos et al.,Sci Transl Med 3:95ra73(2011), Porter et al.,NEJM 365:725-733(2011),Grupp et al.,NEJM 368:1509-1518(2013)を参照されたい)。代替的な方法は、自己T細胞の遺伝子操作のために、腫瘍-関連ペプチド抗原に選ばれたT細胞受容体(TCR)アルファ及びベータ鎖の使用である。これらのTCR鎖は、完全なTCR複合体を形成し、そして、当該T細胞に第二の定義された特異性に対するTCRをもたらす。NY-ESO-1特異的TCRアルファ及びベータ鎖を発現する改変自己T細胞によって、滑膜癌の患者で有望な結果が得られた。
【0004】
CARまたは第二のTCRを発現する遺伝子組換えT細胞に関するインビトロ/エキソビボでそれぞれの標的細胞を認識及び破壊する能力に加えて、改変T細胞を用いた患者の治療の成功には、当該T細胞に強力な活性化、増殖、経時的な持続性の能力があること、及び、再発性疾患の場合、「記憶」応答を有効にすることを必要とする。CAR T細胞の高度で扱いやすい臨床効果は、現在のところ、BCMA-及びCD-19-陽性B細胞悪性腫瘍、及び、HLA-A2を発現するNY-ESO-1-ペプチド発現滑膜肉腫患者に限定されている。遺伝子操作されたT細胞を、様々なヒトの悪性腫瘍に対して、より広く作用するように改良する明確な必要性がある。本明細書では、CD3イプシロン、CD3ガンマ、及び、CD3デルタを含むTCRサブユニット、ならびに、既存の方法の限界を克服する可能性を有する細胞表面抗原に特異的な結合ドメインを備えたTCRアルファ及びTCRベータ鎖の新規の融合タンパク質を記載している。本明細書では、CARよりも標的細胞を効率的に死滅するが、炎症性サイトカインを同等またはそれよりも低レベルで放出する新規の融合タンパク質を記載している。これらサイトカイン値の上昇は、養子CAR-T療法に対する用量制限毒性と関連しているため、これらの融合タンパク質及びそれらの使用方法は、CARと比較して、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)の有効性を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)、1つ以上のTFPを発現するように改変されたT細胞、及び、疾患の処置のためにそれらを使用する方法を提供する。
【0006】
ある態様において、本明細書では、TCRサブユニットと、抗メソテリン抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインとを含む、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離した組換え核酸分子を提供する。
【0007】
ある態様において、本明細書では、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離した組換え核酸分子であって、当該TFPが、TCR細胞外ドメインの少なくとも一部、及び、CD3イプシロンの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメインを含むTCRサブユニット、ならびに、抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、当該TCRサブユニット及び当該抗体ドメインを、作動可能に連結し、当該TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む、当該分子を提供する。
【0008】
ある態様において、本明細書では、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離した組換え核酸分子であって、当該TFPが、TCR細胞外ドメインの少なくとも一部、及び、CD3ガンマの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメインを含むTCRサブユニット、ならびに、抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、当該TCRサブユニット及び当該抗体ドメインを、作動可能に連結し、当該TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む、当該分子を提供する。
【0009】
ある態様において、本明細書では、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離した組換え核酸分子であって、当該TFPが、TCR細胞外ドメインの少なくとも一部、及び、CD3デルタの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメインを含むTCRサブユニット、ならびに、抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、当該TCRサブユニット及び当該抗体ドメインを、作動可能に連結し、当該TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む、当該分子を提供する。
【0010】
ある態様において、本明細書では、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離した組換え核酸分子であって、当該TFPが、TCR細胞外ドメインの少なくとも一部、及び、TCRアルファの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメインを含むTCRサブユニット、ならびに、抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、当該TCRサブユニット及び当該抗体ドメインを、作動可能に連結し、当該TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む、当該分子を提供する。
【0011】
ある態様において、本明細書では、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離した組換え核酸分子であって、当該TFPが、TCR細胞外ドメインの少なくとも一部、及び、TCRベータの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメインを含むTCRサブユニット、ならびに、抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、当該TCRサブユニット及び当該抗体ドメインを、作動可能に連結し、当該TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む、当該分子を提供する。
【0012】
ある態様において、本明細書では、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離した組換え核酸分子であって、該TFPがTCRサブユニット及び、抗メソテリン抗原結合ドメインである抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含む、当該分子を提供する。
【0013】
幾つかの例では、当該TCRサブユニット及び当該抗体ドメインを、作動可能に連結する。幾つかの例では、当該TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む。幾つかの例では、コードした当該抗原結合ドメインは、リンカー配列で、当該TCR細胞外ドメインと連結する。幾つかの例では、コードした当該リンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=1~4である。幾つかの例では、当該TCRサブユニットは、TCR細胞外ドメインを含む。幾つかの例では、当該TCRサブユニットは、TCR膜貫通ドメインを含む。幾つかの例では、当該TCRサブユニットは、TCR細胞内ドメインを含む。幾つかの例では、当該TCRサブユニットは、(i)TCR細胞外ドメイン、(ii)TCR膜貫通ドメイン、及び、(iii)TCR細胞内ドメインを含み、(i)、(ii)、及び(iii)の内の少なくとも2つは同じTCRサブユニットに由来する。幾つかの例では、当該TCRサブユニットは、CD3イプシロン、CD3ガンマ、もしくはCD3デルタの細胞内シグナル伝達ドメインから選択される刺激ドメイン、または、それらに対する少なくとも1つ、2つ、または、3つの修飾を有するアミノ酸配列を含むTCR細胞内ドメインを含む。幾つかの例では、当該TCRサブユニットは、4-1BBの機能的シグナル伝達ドメイン、及び/または、CD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメインから選択される刺激ドメイン、または、それらに対する少なくとも1つの修飾を有するアミノ酸配列を含む細胞内ドメインを含む。幾つかの例では、当該ヒトまたはヒト化抗体ドメインは、抗体断片を含む。幾つかの例では、当該ヒトまたはヒト化抗体ドメインは、scFvまたはVドメインを含む。幾つかの例では、当該単離した核酸分子は、(i)本明細書に記載した抗メソテリン軽鎖結合ドメインの軽鎖(LC)CDR1、LC CDR2、及び、LC CDR3に対して、それぞれ、70~100%の配列同一性を有する、抗メソテリン軽鎖結合ドメインアミノ酸配列の軽鎖(LC)CDR1、LC CDR2、及び、LC CDR3、及び/または、(ii)本明細書に記載した抗メソテリン重鎖結合ドメインの重鎖(HC)CDR1、HC CDR2、及び、HC CDR3に対して、それぞれ、70~100%の配列同一性を有する、抗メソテリン重鎖結合ドメインアミノ酸配列の重鎖(HC)CDR1、HC CDR2、及び、HC CDR3をコードする。幾つかの例では、当該単離した核酸分子は、軽鎖可変領域をコードし、当該軽鎖可変領域が、本明細書に記載した軽鎖可変領域の軽鎖可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つ、最大で30個までの修飾を有するアミノ酸配列、または、本明細書に記載した軽鎖可変領域の軽鎖可変領域アミノ酸配列に対して95~99%が同一である配列を含む。幾つかの例では、当該単離した核酸分子は、重鎖可変領域をコードし、当該重鎖可変領域が、本明細書に記載した重鎖可変領域の重鎖可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つ、最大で30個までの修飾を有するアミノ酸配列、または、本明細書に記載した重鎖可変領域の重鎖可変領域アミノ酸配列に対して95~99%が同一である配列を含む。幾つかの例では、当該TFPは、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンTCRサブユニット、CD3ガンマTCRサブユニット、CD3デルタTCRサブユニット、それらの機能的断片、及び、少なくとも1つ、最大で20個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメイン、または、その一部を含むTCRサブユニットの細胞外ドメインを含む。幾つかの例では、コードした当該TFPは、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンTCRサブユニット、CD3ガンマTCRサブユニット、CD3デルタTCRサブユニット、それらの機能的断片、及び、少なくとも1つ、最大で20個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含む。幾つかの例では、コードした当該TFPは、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、TCRゼータ鎖、CD3イプシロンTCRサブユニット、CD3ガンマTCRサブユニット、CD3デルタTCRサブユニット、CD45、CD2、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、それらの機能的断片、及び、少なくとも1つ、最大で20個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含む。幾つかの例では、当該単離した核酸分子は、共刺激ドメインをコードする配列をさらに含む。幾つかの例では、当該共刺激ドメインは、DAP10、DAP12、CD30、LIGHT、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、及び、4-1BB(CD137)、及び、少なくとも1つ、最大で20個までのそれに対する修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質から得られる機能的シグナル伝達ドメインである。幾つかの例では、当該単離した核酸分子は、リーダー配列をさらに含む。幾つかの例では、当該単離した核酸分子は、mRNAである。
【0014】
幾つかの例では、当該TFPは、TCRサブユニットの免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含み、同サブユニットは、CD3ゼータTCRサブユニット、CD3イプシロンTCRサブユニット、CD3ガンマTCRサブユニット、CD3デルタTCRサブユニット、TCRゼータ鎖、Fcイプシロン受容体1鎖、Fcイプシロン受容体2鎖、Fcガンマ受容体1鎖、Fcガンマ受容体2a鎖、Fcガンマ受容体2b1鎖、Fcガンマ受容体2b2鎖、Fcガンマ受容体3a鎖、Fcガンマ受容体3b鎖、Fcベータ受容体1鎖、TYROBP(DAP12)、CD5、CD16a、CD16b、CD22、CD23、CD32、CD64、CD79a、CD79b、CD89、CD278、CD66d、それらの機能的断片、及び、少なくとも1つ、最大で20個までのそれらに対する修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質のITAMまたはその一部を含む。幾つかの例では、当該ITAMを、CD3ガンマ、CD3デルタ、または、CD3イプシロンのITAMと置き換える。幾つかの例では、当該ITAMを、CD3ゼータTCRサブユニット、CD3イプシロンTCRサブユニット、CD3ガンマTCRサブユニット、及び、CD3デルタTCRサブユニットからなる群から選択し、かつ、CD3ゼータTCRサブユニット、CD3イプシロンTCRサブユニット、CD3ガンマTCRサブユニット、及び、CD3デルタTCRサブユニットからなる群から選択される異なるITAMと置き換える。
【0015】
幾つかの例では、当該核酸は、ヌクレオチド類似体を含む。幾つかの例では、当該ヌクレオチド類似体は、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、修飾した2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、ロックド核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)、ペプチド核酸(PNA)、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、モルホリノ、メチルホスホン酸ヌクレオチド、チオールホスホン酸ヌクレオチド、及び、2’-フルオロN3-P5’-ホスホルアミダイトからなる群から選択される。
【0016】
ある態様において、本明細書では、本明細書で提供した核酸分子がコードした単離したポリペプチド分子を提供する。
【0017】
ある態様において、本明細書では、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含む、単離したTFP分子を提供する。
【0018】
ある態様において、本明細書では、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内シグナル伝達ドメインを含む、単離したTFP分子であって、内因性TCR複合体、及び/または、少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することができる当該TFP分子を提供する。
【0019】
幾つかの実施形態では、当該核酸がコードする抗メソテリン結合ドメインである抗原結合ドメイン、または、当該抗メソテリン結合ドメインを含む抗体、または、当該核酸がコードする当該抗メソテリン結合ドメインを発現する細胞を含む、当該ヒトまたはヒト化抗体ドメインは、最大で、約200nM、100nM、75nM、50nM、25nM、20nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、または、0.01nM、及び/または、少なくとも約100nM、75nM、50nM、25nM、20nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、または、0.01nM、及び/または、約200nM、100nM、75nM、50nM、25nM、20nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、または、0.01nMの親和性値を有する。
【0020】
ある態様において、本明細書では、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離したTFP分子であって、内因性TCR複合体に機能的に統合することができる当該TFP分子を提供する。
【0021】
幾つかの例では、当該単離したTFP分子は、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含む抗体または抗体断片を含む。幾つかの例では、当該抗メソテリン結合ドメインは、scFvまたは、Vドメイン、または、ラクダVHHドメインである。幾つかの例では、当該抗メソテリン結合ドメインは、本明細書に記載した重鎖のアミノ酸配列に対して95~100%の同一性の有する重鎖、それらの機能的断片、または、少なくとも1つ、最大で30個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列を含む。幾つかの例では、当該抗メソテリン結合ドメインは、本明細書に記載した軽鎖のアミノ酸配列に対して95~100%の同一性の有する軽鎖、それらの機能的断片、または、少なくとも1つ、最大で30個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列を含む。幾つかの例では、当該単離したTFP分子は、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンTCRサブユニット、CD3ガンマTCRサブユニット、CD3デルタTCRサブユニット、それらの機能的断片、及び、少なくとも1つ、最大で20個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含むTCR細胞外ドメインを含む。幾つかの例では、当該抗メソテリン結合ドメインは、リンカー配列で、当該TCR細胞外ドメインと連結する。幾つかの例では、当該リンカー領域は、(GS)を含み、式中、n=1~4である。
【0022】
幾つかの例では、当該単離したTFP分子は、共刺激ドメインをコードする配列をさらに含む。幾つかの例では、当該単離したTFP分子は、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする配列をさらに含む。幾つかの例では、当該単離したTFP分子は、リーダー配列をさらに含む。
【0023】
ある態様において、本明細書では、本明細書で提供したTFPをコードする核酸分子を含むベクターを提供する。幾つかの例では、当該ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)ベクター、または、レトロウイルスベクターからなる群から選択される。幾つかの例では、当該ベクターは、プロモーターをさらに含む。幾つかの例では、当該ベクターは、インビトロで転写したベクターである。幾つかの例では、当該ベクターの核酸配列は、ポリ(A)尾部をさらに含む。幾つかの例では、当該ベクターの核酸配列は、3’UTRをさらに含む。
【0024】
ある態様において、本明細書では、本明細書で提供したベクターを含む細胞を提供する。幾つかの例では、当該細胞は、ヒトT細胞である。幾つかの例では、当該T細胞は、CD8+またはCD4+T細胞である。幾つかの例では、当該T細胞は、ガンマデルタT細胞である。幾つかの例では、当該T細胞は、NK-T細胞である。幾つかの例では、当該細胞は、阻害分子の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドを含み、細胞内シグナル伝達ドメインからのポジティブシグナルを含む第2のポリペプチドと会合した阻害分子をコードする核酸をさらに含む。幾つかの例では、当該阻害分子は、PD1の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドと、共刺激ドメイン及び一次シグナル伝達ドメインを含む第2のポリペプチドとを含む。
【0025】
ある態様において、本明細書では、ヒトCD8+またはCD4+T細胞であって、少なくとも2つのTFP分子を含み、当該TFP分子が、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含み、当該TFP分子が、当該ヒトCD8+またはCD4+T細胞において、同細胞にて、及び/または、同細胞の表面で、内因性TCR複合体、及び/または、少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することができる当該ヒトCD8+またはCD4+T細胞を提供する。
【0026】
ある態様において、本明細書では、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含むTFP分子、ならびに、少なくとも1つの内因性TCR複合体を含むタンパク質複合体を提供する。
【0027】
幾つかの例では、当該TCRは、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンTCRサブユニット、CD3ガンマTCRサブユニット、及び、CD3デルタTCRサブユニットからなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメイン、または、その一部を含む。幾つかの例では、当該抗メソテリン結合ドメインは、リンカー配列で、当該TCR細胞外ドメインと連結する。幾つかの例では、当該リンカー領域は、(GS)を含み、式中、n=1~4である。
【0028】
ある態様では、本明細書において、本明細書で提供したタンパク質複合体あたり、少なくとも2つの異なるTFPタンパク質を含むヒトCD8+またはCD4+T細胞を提供する。
【0029】
ある態様では、本明細書において、本明細書で提供したベクターでT細胞に形質導入することを含む、細胞の作製方法を提供する。
【0030】
ある態様では、本明細書において、インビトロで転写したRNA、または、合成RNAを細胞に導入することを含む、RNA改変細胞の集団を生成する方法であって、当該RNAが、本明細書で提供したTFP分子をコードする核酸を含む、当該方法を提供する。
【0031】
ある態様では、本明細書において、哺乳動物に抗腫瘍免疫を付与する方法であって、当該哺乳動物に対して、本明細書で提供したTFP分子を発現する、または、本明細書で提供したポリペプチド分子を発現する有効量の細胞を投与することを含む、当該方法を提供する。
【0032】
幾つかの例では、当該細胞は、自己T細胞である。幾つかの例では、当該細胞は、同種異系T細胞である。幾つかの例では、当該哺乳動物は、ヒトである。
【0033】
ある態様では、本明細書において、メソテリンの発現に関連した疾患を有する哺乳動物を処置する方法であって、当該哺乳動物に対して、有効量の本明細書に記載したTFP分子、本明細書に記載した細胞、または、本明細書に記載したポリペプチド分子を投与することを含む、当該方法を提供する。幾つかの例では、メソテリンの発現に関連した当該疾患は、増殖性疾患、がん、悪性腫瘍、及び、メソテリンの発現を伴う非がん関連の適応症からなる群から選択される。幾つかの例では、当該疾患は、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸癌、子宮頸癌、脳腫瘍、肝臓癌、膵臓癌、甲状腺癌、膀胱癌、尿管癌、腎臓癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、胸腺癌、胆管癌、及び、胃癌からなる群より選択されるがんである。
【0034】
幾つかの例では、当該疾患は、がんである。幾つかの例では、当該疾患は、中皮腫、乳頭状漿液性卵巣腺癌、明細胞卵巣癌、混合型ミュラー管卵巣癌、子宮内膜粘液性卵巣癌、悪性胸膜癌、膵臓腺癌、乳管腺癌、子宮漿液性癌、肺腺癌、肝外胆管癌、胃腺癌、食道腺癌、結腸直腸腺癌、乳腺腺癌、メソテリン発現に関連する疾患、メソテリン発現に関連する疾患、非粘液性卵巣癌、浸潤性管腺癌、肺腺癌、胃/食道癌腺癌、結腸直腸腺癌、白血病、小児急性骨髄性白血病、浸潤性管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、子宮内膜腺癌、胃/食道腺癌、肺腺癌、乳腺癌、及び、これらの組合せからなる群から選択される。
【0035】
幾つかの例では、TFP分子を発現する当該細胞は、TFP分子を発現する細胞の有効性を増大させる作用物質と組み合わせて投与する。幾つかの例において、抗メソテリンキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞の有効量を投与した哺乳動物と比較して、少ないサイトカインを哺乳動物において放出する。幾つかの例では、TFP分子を発現する当該細胞を、TFP分子を発現する細胞の投与に関連する1つ以上の副作用を軽減する作用物質と組み合わせて投与する。幾つかの例では、TFP分子を発現する当該細胞を、メソテリンに関連する疾患を処置する作用物質と組み合わせて投与する。
【0036】
ある態様において、本明細書で提供した単離した核酸分子、本明細書で提供した単離したポリペプチド分子、本明細書で提供した単離したTFP、本明細書で提供した複合体、本明細書で提供したベクター、または、本明細書で提供した細胞は、医薬として使用するためのものである。
【0037】
ある態様において、本明細書では、有効量の本明細書で提供したTFP分子、本明細書で提供した細胞、または、本明細書で提供したポリペプチド分子を、哺乳動物に投与することを含み、抗メソテリンキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞の有効量を投与した哺乳動物と比較して、少ないサイトカインを哺乳動物において放出する、メソテリンの発現に関連する疾患を有する哺乳動物を処置する方法を提供する。
【0038】
参照による組み込み
本明細書において引用したすべての刊行物、特許、及び、特許出願を、個々の刊行物、特許、及び、特許出願のそれぞれが、参照により援用されることを個別かつ具体的に明示されているものと同然に、参照により本明細書に援用する。
【0039】
本発明の新規の特徴は、添付した特許請求の範囲に詳細に記載している。本発明の原理を利用している例示的な実施形態を記載した以下の詳細な説明、ならびに、添付した図面を参照することで、本発明の特徴及び利点についての理解を深める。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明のT細胞受容体融合ポリペプチド(TFP)の使用を実証する概略図である。例示的なTFPは、(GS)リンカー配列を介して融合した、抗メセテリンscFvと、全長CD3イプシロンポリペプチドとを含む。T細胞によって産生、または、そこに導入されると、当該TFPは、内因性T細胞受容体(TCR)の他のポリペプチド(2つのCD3イプシロンポリペプチド、1つのCD3ガンマポリペプチド、1つのCD3デルタポリペプチド、2つのCD3ゼータポリペプチド、1つのTCRアルファサブユニット、及び、1つのTCRベータサブユニットを含むことが示されており、水平方向の灰色セグメントは、原形質膜を表している)と会合して、当該内因性CD3イプシロンポリペプチドの一方または双方が、当該TFPによって置換されているリプログラミングしたTCRを形成する。
図2】本発明のリプログラミングしたT細胞受容体融合ポリペプチド(TFP)の例示的な変化を実証する概略図を示す。scFv:TCR-Vαと表記した図は、(GS)リンカー配列を介して融合した、抗メソテリンscFvと、全長TCR-Vαポリペプチドとを含むTFPを含む例示的なリプログラミングしたTCRを示す。scFv:TCR-Vα:TCR-Vβと表記した図は、i)(GS)リンカー配列を介して融合した、抗メソテリンscFvと全長TCR-Vαポリペプチド、及び、ii)(GS)リンカー配列を介して融合した、抗メソテリンscFvと全長TCR-Vβポリペプチドを含む複数のTFPを含む例示的なリプログラミングしたTCRを示す。scFv:ΔTCR-Vα:CD3εと表記した図は、i)(GS)リンカー配列を介して融合した、抗メソテリンscFvと短縮型(Δ)TCRポリペプチド、及び、ii)(GS)リンカー配列を介して融合した、抗メソテリンscFvと全長CD3イプシロンポリペプチドを含む複数のTFPを含む例示的なリプログラミングしたTCRを示す。当該短縮型(Δ)TCRポリペプチドは、Vαの欠失を受けて短縮している。scFv:ΔTCR-Vα:ΔTCR-Vβと表記した図は、i)(GS)リンカー配列を介して融合した、抗メソテリンscFvと短縮型(Δ)TCR Vαポリペプチド、及び、ii)(GS)リンカー配列を介して融合した、抗メソテリンscFvと短縮型(Δ)TCR Vβポリペプチドを含む複数のTFPを含む例示的なリプログラミングしたTCRを示す。当該短縮型(Δ)TCRポリペプチドは、Vβの欠失を受けて短縮している。
図3】本発明のT細胞受容体融合ポリペプチド(TFP)の使用を示す概略図である。例示的なTFPは、(GS)リンカー配列を介して融合した、抗メソテリンVドメインと全長CD3イプシロンポリペプチドを含む。T細胞によって産生、または、T細胞に導入されると、当該TFPは、内因性T細胞受容体(TCR)の他のポリペプチド(2つのCD3イプシロンポリペプチド、1つのCD3ガンマポリペプチド、1つのCD3デルタポリペプチド、2つのCD3ゼータポリペプチド、1つのTCRアルファサブユニット、及び、1つのTCRベータサブユニットを含むことが示されており、水平方向の灰色セグメントは、原形質膜を表している)と会合して、当該内因性CD3イプシロンポリペプチドの一方または双方が、当該TFPによって置換されているリプログラミングしたTCRを形成する。
図4】様々なTFPをコードするDNA構築物を実証する一連の概略図である。
図5A】活性化PBMC細胞でのTFPの例示的な表面発現分析を示しており、また、MSLN TFPで活性化し、そして、CD8(抗CD8 APCCy7、y軸)とメソテリン(「MSLN」)(Zenon(登録商標)R-フィコエリスリン標識hMSLN IgG、x軸)について染色したCD3細胞(抗CD3 APC、ゲート)を示す。左から右に向かって、非形質導入細胞、または、抗MSLN-CD3εTFP、抗MSLN-CD28ζCAR、及び、抗MSLN-41BBζCAR構築物のいずれかで形質導入した細胞を示す。
図5B】活性化PBMC細胞でのTFPの例示的な表面発現分析を示しており、また、組織内の単一ドメインTFPで活性化し、そして、MSLN Fcについて染色を行い、そして、GFPについて分析をした細胞を示す。最上列は(左から右へ)、非形質導入細胞、そして、コントロール抗MSLN-CD3εTFP(「SS1」)で形質導入した細胞を示す。第2~4列は、GFPタグを付けた(左から右へ)CD3εTFP、CD3γTFP、TCRβTFP、及び、CD28ζCAR構築物で形質導入された細胞における抗MSLNバインダーSD1、SD4、及び、SD6のそれぞれを示す。
図6A】抗MSLN-TFP構築物によるメソテリン(MSLN)ポジティブHeLa(子宮頸部腺癌、ATCC(登録商標)CCL-2(商標))標的細胞の経時的な死滅を示す例示的なグラフである。活性化したPBMCを、処置せず(トレース#1)、形質導入せず(トレース#2)、または、空のベクター(トレース#3)、抗MSLN-CD3εTFP(トレース#4)、抗MSLN-CD28ζCAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入を行い、そして、1×10個のMSLNポジティブHeLa標的細胞とインキュベートする前に、8日間、増殖させた。
図6B】抗MSLN-TFP構築物によるMSLNネガティブHeLa(子宮頸部腺癌、ATCC(登録商標)CCL-2(商標))標的細胞の経時的な死滅を示す例示的なグラフである。活性化したPBMCを、処置せず(トレース#1)、形質導入せず(トレース#2)、または、空のベクター(トレース#3)、抗MSLN-CD3εTFP(トレース#4)、抗MSLN-CD28ζCAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入を行い、そして、1×10個のMSLNポジティブHeLa標的細胞とインキュベートする前に、8日間、増殖させた。
図6C】2名の異なるヒトドナー由来のT細胞(上部及び下部)を用いて、MSLN高発現細胞株(HeLa細胞)におけるMSLNポジティブ細胞の死滅を示す。組織内抗MSLNバインダーSD1(図7A)、SD4(中央)、及び、SD6(右)を有するTFP T細胞についての細胞死滅トレースを示している。活性化したPBMCを、形質導入せず(トレース#1)、または、CD3εTFP(トレース#2)、CD3γTFP(トレース#3)、TCRβTFP(トレース#4)、または、CO28ζCARで形質導入した。細胞傷害性を示す正規化細胞指数を、リアルタイム細胞分析器(RTCA)アッセイで決定した。
図7A】メソテリンを高レベルで発現する標的細胞株(HeLa-Luc(MSLN high))に対する抗MSLN CAR T細胞、及び、TFP T細胞の結合活性を示す一連のグラフである。T細胞を含まない(「標的のみ」)、空ベクターを形質導入したもの(「NT」)、抗MSLN(ポジティブコントロール)、または、組織内抗メソテリンバインダーSD1(図7A)、SD4(図7B)、及び、SD6(図7C)を有しており、それぞれが、CD3εTFP、CD3γTFP、TCRβTFP、及び、CD28ζCARのフォーマットである抗メソテリンTFP T細胞を含む試料での死滅した細胞の%を示している。各グラフにおいて、黒色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:1であることを表しており、そして、灰色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:5であることを表す。第2のT細胞ドナーについても、同様の結果が得られた。
図7B】メソテリンを高レベルで発現する標的細胞株(HeLa-Luc(MSLN high))に対する抗MSLN CAR T細胞、及び、TFP T細胞の結合活性を示す一連のグラフである。T細胞を含まない(「標的のみ」)、空ベクターを形質導入したもの(「NT」)、抗MSLN(ポジティブコントロール)、または、組織内抗メソテリンバインダーSD1(図7A)、SD4(図7B)、及び、SD6(図7C)を有しており、それぞれが、CD3εTFP、CD3γTFP、TCRβTFP、及び、CD28ζCARのフォーマットである抗メソテリンTFP T細胞を含む試料での死滅した細胞の%を示している。各グラフにおいて、黒色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:1であることを表しており、そして、灰色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:5であることを表す。第2のT細胞ドナーについても、同様の結果が得られた。
図7C】メソテリンを高レベルで発現する標的細胞株(HeLa-Luc(MSLN high))に対する抗MSLN CAR T細胞、及び、TFP T細胞の結合活性を示す一連のグラフである。T細胞を含まない(「標的のみ」)、空ベクターを形質導入したもの(「NT」)、抗MSLN(ポジティブコントロール)、または、組織内抗メソテリンバインダーSD1(図7A)、SD4(図7B)、及び、SD6(図7C)を有しており、それぞれが、CD3εTFP、CD3γTFP、TCRβTFP、及び、CD28ζCARのフォーマットである抗メソテリンTFP T細胞を含む試料での死滅した細胞の%を示している。各グラフにおいて、黒色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:1であることを表しており、そして、灰色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:5であることを表す。第2のT細胞ドナーについても、同様の結果が得られた。
図8A】メソテリンを低レベルで発現する標的細胞株(PC3-MSLN(-/low))に対する抗MSLN CAR T細胞、及び、TFP T細胞の活性を示す一連のグラフである。T細胞を含まない(「標的のみ」)、空ベクターを形質導入したもの(「NT」)、抗MSLN(ポジティブコントロール、「SS1」)、または、CD3ε(図8A)、CD3γ(図8B)、TCRβ(図8C)、及び、CD28ζCAR(図8D)のTFPフォーマットである組織内抗メソテリン構築物SD1、SD4、及び、SD6を含む試料での死滅した細胞の%を示している。各グラフにおいて、黒色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:1であることを表しており、そして、灰色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:5であることを表す。第2のT細胞ドナーについても、同様の結果が得られた。
図8B】メソテリンを低レベルで発現する標的細胞株(PC3-MSLN(-/low))に対する抗MSLN CAR T細胞、及び、TFP T細胞の活性を示す一連のグラフである。T細胞を含まない(「標的のみ」)、空ベクターを形質導入したもの(「NT」)、抗MSLN(ポジティブコントロール、「SS1」)、または、CD3ε(図8A)、CD3γ(図8B)、TCRβ(図8C)、及び、CD28ζCAR(図8D)のTFPフォーマットである組織内抗メソテリン構築物SD1、SD4、及び、SD6を含む試料での死滅した細胞の%を示している。各グラフにおいて、黒色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:1であることを表しており、そして、灰色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:5であることを表す。第2のT細胞ドナーについても、同様の結果が得られた。
図8C】メソテリンを低レベルで発現する標的細胞株(PC3-MSLN(-/low))に対する抗MSLN CAR T細胞、及び、TFP T細胞の活性を示す一連のグラフである。T細胞を含まない(「標的のみ」)、空ベクターを形質導入したもの(「NT」)、抗MSLN(ポジティブコントロール、「SS1」)、または、CD3ε(図8A)、CD3γ(図8B)、TCRβ(図8C)、及び、CD28ζCAR(図8D)のTFPフォーマットである組織内抗メソテリン構築物SD1、SD4、及び、SD6を含む試料での死滅した細胞の%を示している。各グラフにおいて、黒色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:1であることを表しており、そして、灰色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:5であることを表す。第2のT細胞ドナーについても、同様の結果が得られた。
図8D】メソテリンを低レベルで発現する標的細胞株(PC3-MSLN(-/low))に対する抗MSLN CAR T細胞、及び、TFP T細胞の活性を示す一連のグラフである。T細胞を含まない(「標的のみ」)、空ベクターを形質導入したもの(「NT」)、抗MSLN(ポジティブコントロール、「SS1」)、または、CD3ε(図8A)、CD3γ(図8B)、TCRβ(図8C)、及び、CD28ζCAR(図8D)のTFPフォーマットである組織内抗メソテリン構築物SD1、SD4、及び、SD6を含む試料での死滅した細胞の%を示している。各グラフにおいて、黒色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:1であることを表しており、そして、灰色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:5であることを表す。第2のT細胞ドナーについても、同様の結果が得られた。
図9A】MSLN+細胞と共培養した場合に、抗MSLN CAR及びTFP構築物を発現するT細胞の活性化を実証するFACS分析の結果を示す。図9Aに示したように、左から右に記載したものは、形質導入をしていないT細胞、空ベクターで形質導入したT細胞、抗MSLN-CD3εTFP、抗MSLN-28ζCAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入したT細胞である。MSLN-細胞と共培養した細胞を最上列に示し、そして、MSLN+標的細胞と共培養した細胞を最下列に示す。これらの細胞を、次いで、表面活性化マーカーCD69及びCD25、または、細胞溶解性顆粒成分グランザイムB(GrB)に特異的な抗体で染色した。抗CD69で染色した細胞の数はx軸に対応しており、そして、抗CD25で染色した細胞の数はy軸に対応する。示したように、抗メソテリンCAR及びTFP構築物を発現するT細胞は、MSLN+細胞との培養によって活性化されており、このことは、MSLN-細胞との共培養と比較して、CD69及びCD25が高レベルで発現していることで実証されている(図9B)。MSLN-(白色棒)及びMSLN+(黒色棒)細胞における各構築物についてのCD25+細胞のパーセンテージを示す。形質導入していないT細胞、または、抗MSLNポジティブコントロールバインダーで形質導入したT細胞(「510-SS1-CD38」)のいずれかで、K562 MSLN-細胞(丸)、及び、K562-MSLN+細胞(四角)を用いて、同様の実験を行った(図9C)。データは、CD25+、CD69+、及び、CD25+/CD69+細胞の合計を表す。図9Dにおいて、TFPフォーマットCD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζCARを有するドナーT細胞と組み合わせたK562 MSLN-標的細胞(左パネル)、及び、K562 MSLN+細胞(右パネル)における組織内抗MSLNバインダーSD1(四角)、SD4(丸)、及び、SD6(三角)についてのデータを示す。第2のT細胞ドナー由来の細胞を用いて、同様の結果が認められた。
図9B】MSLN+細胞と共培養した場合に、抗MSLN CAR及びTFP構築物を発現するT細胞の活性化を実証するFACS分析の結果を示す。図9Aに示したように、左から右に記載したものは、形質導入をしていないT細胞、空ベクターで形質導入したT細胞、抗MSLN-CD3εTFP、抗MSLN-28ζCAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入したT細胞である。MSLN-細胞と共培養した細胞を最上列に示し、そして、MSLN+標的細胞と共培養した細胞を最下列に示す。これらの細胞を、次いで、表面活性化マーカーCD69及びCD25、または、細胞溶解性顆粒成分グランザイムB(GrB)に特異的な抗体で染色した。抗CD69で染色した細胞の数はx軸に対応しており、そして、抗CD25で染色した細胞の数はy軸に対応する。示したように、抗メソテリンCAR及びTFP構築物を発現するT細胞は、MSLN+細胞との培養によって活性化されており、このことは、MSLN-細胞との共培養と比較して、CD69及びCD25が高レベルで発現していることで実証されている(図9B)。MSLN-(白色棒)及びMSLN+(黒色棒)細胞における各構築物についてのCD25+細胞のパーセンテージを示す。形質導入していないT細胞、または、抗MSLNポジティブコントロールバインダーで形質導入したT細胞(「510-SS1-CD38」)のいずれかで、K562 MSLN-細胞(丸)、及び、K562-MSLN+細胞(四角)を用いて、同様の実験を行った(図9C)。データは、CD25+、CD69+、及び、CD25+/CD69+細胞の合計を表す。図9Dにおいて、TFPフォーマットCD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζCARを有するドナーT細胞と組み合わせたK562 MSLN-標的細胞(左パネル)、及び、K562 MSLN+細胞(右パネル)における組織内抗MSLNバインダーSD1(四角)、SD4(丸)、及び、SD6(三角)についてのデータを示す。第2のT細胞ドナー由来の細胞を用いて、同様の結果が認められた。
図9C】MSLN+細胞と共培養した場合に、抗MSLN CAR及びTFP構築物を発現するT細胞の活性化を実証するFACS分析の結果を示す。図9Aに示したように、左から右に記載したものは、形質導入をしていないT細胞、空ベクターで形質導入したT細胞、抗MSLN-CD3εTFP、抗MSLN-28ζCAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入したT細胞である。MSLN-細胞と共培養した細胞を最上列に示し、そして、MSLN+標的細胞と共培養した細胞を最下列に示す。これらの細胞を、次いで、表面活性化マーカーCD69及びCD25、または、細胞溶解性顆粒成分グランザイムB(GrB)に特異的な抗体で染色した。抗CD69で染色した細胞の数はx軸に対応しており、そして、抗CD25で染色した細胞の数はy軸に対応する。示したように、抗メソテリンCAR及びTFP構築物を発現するT細胞は、MSLN+細胞との培養によって活性化されており、このことは、MSLN-細胞との共培養と比較して、CD69及びCD25が高レベルで発現していることで実証されている(図9B)。MSLN-(白色棒)及びMSLN+(黒色棒)細胞における各構築物についてのCD25+細胞のパーセンテージを示す。形質導入していないT細胞、または、抗MSLNポジティブコントロールバインダーで形質導入したT細胞(「510-SS1-CD38」)のいずれかで、K562 MSLN-細胞(丸)、及び、K562-MSLN+細胞(四角)を用いて、同様の実験を行った(図9C)。データは、CD25+、CD69+、及び、CD25+/CD69+細胞の合計を表す。図9Dにおいて、TFPフォーマットCD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζCARを有するドナーT細胞と組み合わせたK562 MSLN-標的細胞(左パネル)、及び、K562 MSLN+細胞(右パネル)における組織内抗MSLNバインダーSD1(四角)、SD4(丸)、及び、SD6(三角)についてのデータを示す。第2のT細胞ドナー由来の細胞を用いて、同様の結果が認められた。
図9D】MSLN+細胞と共培養した場合に、抗MSLN CAR及びTFP構築物を発現するT細胞の活性化を実証するFACS分析の結果を示す。図9Aに示したように、左から右に記載したものは、形質導入をしていないT細胞、空ベクターで形質導入したT細胞、抗MSLN-CD3εTFP、抗MSLN-28ζCAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入したT細胞である。MSLN-細胞と共培養した細胞を最上列に示し、そして、MSLN+標的細胞と共培養した細胞を最下列に示す。これらの細胞を、次いで、表面活性化マーカーCD69及びCD25、または、細胞溶解性顆粒成分グランザイムB(GrB)に特異的な抗体で染色した。抗CD69で染色した細胞の数はx軸に対応しており、そして、抗CD25で染色した細胞の数はy軸に対応する。示したように、抗メソテリンCAR及びTFP構築物を発現するT細胞は、MSLN+細胞との培養によって活性化されており、このことは、MSLN-細胞との共培養と比較して、CD69及びCD25が高レベルで発現していることで実証されている(図9B)。MSLN-(白色棒)及びMSLN+(黒色棒)細胞における各構築物についてのCD25+細胞のパーセンテージを示す。形質導入していないT細胞、または、抗MSLNポジティブコントロールバインダーで形質導入したT細胞(「510-SS1-CD38」)のいずれかで、K562 MSLN-細胞(丸)、及び、K562-MSLN+細胞(四角)を用いて、同様の実験を行った(図9C)。データは、CD25+、CD69+、及び、CD25+/CD69+細胞の合計を表す。図9Dにおいて、TFPフォーマットCD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζCARを有するドナーT細胞と組み合わせたK562 MSLN-標的細胞(左パネル)、及び、K562 MSLN+細胞(右パネル)における組織内抗MSLNバインダーSD1(四角)、SD4(丸)、及び、SD6(三角)についてのデータを示す。第2のT細胞ドナー由来の細胞を用いて、同様の結果が認められた。
図10A】MSLN+細胞と共培養した場合に、抗MSLN CAR及びTFP構築物を発現するT細胞の活性化を実証するFACS分析の結果を示す。細胞の固定、浸透化、及び、抗グランザイムB Alexafluor700(x軸)を用いた染色を行う前に、同細胞を、抗CD3 APC(ゲート)、及び、抗CD8 APCcy7(y軸)で表面抗原について染色をした。図10Aに示したように、左から右に記載したものは、形質導入をしていないT細胞、空ベクターで形質導入したT細胞、抗MSLN-CD3εTFP、抗MSLN-28ζCAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入したT細胞である。MSLN-細胞と共培養した細胞を最上列に示し、そして、MSLN+標的細胞と共培養した細胞を最下列に示す。抗メソテリンCAR及びTFP構築物を発現するCD8 T細胞は、MSLN+細胞との培養によって活性化されており、このことは、MSLN-細胞との共培養と比較して、細胞内GrBレベルが上昇していることで実証されている(図10B)。MSLN-(白色棒)またはMSLN+(黒色棒)細胞と共培養したときの、各構築物についてのグランザイムB(「GrB+」)細胞のパーセンテージを示す。
図10B】MSLN+細胞と共培養した場合に、抗MSLN CAR及びTFP構築物を発現するT細胞の活性化を実証するFACS分析の結果を示す。細胞の固定、浸透化、及び、抗グランザイムB Alexafluor700(x軸)を用いた染色を行う前に、同細胞を、抗CD3 APC(ゲート)、及び、抗CD8 APCcy7(y軸)で表面抗原について染色をした。図10Aに示したように、左から右に記載したものは、形質導入をしていないT細胞、空ベクターで形質導入したT細胞、抗MSLN-CD3εTFP、抗MSLN-28ζCAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入したT細胞である。MSLN-細胞と共培養した細胞を最上列に示し、そして、MSLN+標的細胞と共培養した細胞を最下列に示す。抗メソテリンCAR及びTFP構築物を発現するCD8 T細胞は、MSLN+細胞との培養によって活性化されており、このことは、MSLN-細胞との共培養と比較して、細胞内GrBレベルが上昇していることで実証されている(図10B)。MSLN-(白色棒)またはMSLN+(黒色棒)細胞と共培養したときの、各構築物についてのグランザイムB(「GrB+」)細胞のパーセンテージを示す。
図11A】MSLNを過剰発現するK562細胞と共培養した場合に、抗MSLN CAR及びTFP構築物を発現する活性化T細胞におけるサイトカイン産生のELISA分析の結果を示す。BCMAを過剰発現しているK562細胞を、ネガティブコントロールとして使用した。24時間後に、細胞を、ELISAで、IFN-γ(図11A)、及び、IL-2(図11B)の発現について分析をした。各図において、左から右に記載したものは、形質導入をしていないT細胞、空ベクターで形質導入したT細胞、抗MSLN-CD3εTFP、抗MSLN-28ζCAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入したT細胞である。MSLN-細胞と共培養した細胞を白色棒で表し、また、MSLN+標的細胞と共培養した細胞を黒色棒で表す。
図11B】MSLNを過剰発現するK562細胞と共培養した場合に、抗MSLN CAR及びTFP構築物を発現する活性化T細胞におけるサイトカイン産生のELISA分析の結果を示す。BCMAを過剰発現しているK562細胞を、ネガティブコントロールとして使用した。24時間後に、細胞を、ELISAで、IFN-γ(図11A)、及び、IL-2(図11B)の発現について分析をした。各図において、左から右に記載したものは、形質導入をしていないT細胞、空ベクターで形質導入したT細胞、抗MSLN-CD3εTFP、抗MSLN-28ζCAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入したT細胞である。MSLN-細胞と共培養した細胞を白色棒で表し、また、MSLN+標的細胞と共培養した細胞を黒色棒で表す。
図12A】中皮腫異種移植マウスモデルにおけるインビボでのMSLN特異的sdAb TFP T細胞の有効性を示す一連のグラフである。マウス1匹あたりに1×10個の細胞を、ルシフェラーゼ標識MSTO-211H-FL-MSLN-Lucを用いて接種し、そして、腫瘍体積が約300mmになるまで腫瘍を増殖させ、1×10個のT細胞を、それぞれの動物に対して静脈内注射した。図12Aは、左から右にかけて、T細胞を含まないコントロール、SD1 CD3ε-TFP、及び、SD4 CD3ε-TFPを含むT細胞を注射した後の腫瘍体積を示す。図12Bは、SD1、及び、SD4バインダー、ならびに、SD1 CD28ζCARを有するCD3γ-TFPを示す。図12C~Dは、腫瘍細胞を再接種した12A-Bでの生存マウスから得た結果であり、マウスが2回目のT細胞注射が無くとも、それらの抗MSLN免疫を維持するかどうかを決定する。SD1 CD3ε-TFP T細胞(12C)、及び、SD1 CD3γ-TFP T細胞(12D)の投与を受け、また、それらの腫瘍を以前に除去したマウスに対して、MSLN+(MSTO)またはMSLN-(ラージ)腫瘍細胞株を再接種した。腫瘍体積を測定し、そして、x軸に示した。
図12B】中皮腫異種移植マウスモデルにおけるインビボでのMSLN特異的sdAb TFP T細胞の有効性を示す一連のグラフである。マウス1匹あたりに1×10個の細胞を、ルシフェラーゼ標識MSTO-211H-FL-MSLN-Lucを用いて接種し、そして、腫瘍体積が約300mmになるまで腫瘍を増殖させ、1×10個のT細胞を、それぞれの動物に対して静脈内注射した。図12Aは、左から右にかけて、T細胞を含まないコントロール、SD1 CD3ε-TFP、及び、SD4 CD3ε-TFPを含むT細胞を注射した後の腫瘍体積を示す。図12Bは、SD1、及び、SD4バインダー、ならびに、SD1 CD28ζCARを有するCD3γ-TFPを示す。図12C~Dは、腫瘍細胞を再接種した12A-Bでの生存マウスから得た結果であり、マウスが2回目のT細胞注射が無くとも、それらの抗MSLN免疫を維持するかどうかを決定する。SD1 CD3ε-TFP T細胞(12C)、及び、SD1 CD3γ-TFP T細胞(12D)の投与を受け、また、それらの腫瘍を以前に除去したマウスに対して、MSLN+(MSTO)またはMSLN-(ラージ)腫瘍細胞株を再接種した。腫瘍体積を測定し、そして、x軸に示した。
図12C】中皮腫異種移植マウスモデルにおけるインビボでのMSLN特異的sdAb TFP T細胞の有効性を示す一連のグラフである。マウス1匹あたりに1×10個の細胞を、ルシフェラーゼ標識MSTO-211H-FL-MSLN-Lucを用いて接種し、そして、腫瘍体積が約300mmになるまで腫瘍を増殖させ、1×10個のT細胞を、それぞれの動物に対して静脈内注射した。図12Aは、左から右にかけて、T細胞を含まないコントロール、SD1 CD3ε-TFP、及び、SD4 CD3ε-TFPを含むT細胞を注射した後の腫瘍体積を示す。図12Bは、SD1、及び、SD4バインダー、ならびに、SD1 CD28ζCARを有するCD3γ-TFPを示す。図12C~Dは、腫瘍細胞を再接種した12A-Bでの生存マウスから得た結果であり、マウスが2回目のT細胞注射が無くとも、それらの抗MSLN免疫を維持するかどうかを決定する。SD1 CD3ε-TFP T細胞(12C)、及び、SD1 CD3γ-TFP T細胞(12D)の投与を受け、また、それらの腫瘍を以前に除去したマウスに対して、MSLN+(MSTO)またはMSLN-(ラージ)腫瘍細胞株を再接種した。腫瘍体積を測定し、そして、x軸に示した。
図12D】中皮腫異種移植マウスモデルにおけるインビボでのMSLN特異的sdAb TFP T細胞の有効性を示す一連のグラフである。マウス1匹あたりに1×10個の細胞を、ルシフェラーゼ標識MSTO-211H-FL-MSLN-Lucを用いて接種し、そして、腫瘍体積が約300mmになるまで腫瘍を増殖させ、1×10個のT細胞を、それぞれの動物に対して静脈内注射した。図12Aは、左から右にかけて、T細胞を含まないコントロール、SD1 CD3ε-TFP、及び、SD4 CD3ε-TFPを含むT細胞を注射した後の腫瘍体積を示す。図12Bは、SD1、及び、SD4バインダー、ならびに、SD1 CD28ζCARを有するCD3γ-TFPを示す。図12C~Dは、腫瘍細胞を再接種した12A-Bでの生存マウスから得た結果であり、マウスが2回目のT細胞注射が無くとも、それらの抗MSLN免疫を維持するかどうかを決定する。SD1 CD3ε-TFP T細胞(12C)、及び、SD1 CD3γ-TFP T細胞(12D)の投与を受け、また、それらの腫瘍を以前に除去したマウスに対して、MSLN+(MSTO)またはMSLN-(ラージ)腫瘍細胞株を再接種した。腫瘍体積を測定し、そして、x軸に示した。
図13A】卵巣癌患者由来のMSLN-TFP T細胞の産生及び機能分析を示す。図13Aは、実験計画の概略図である。図13B~Cは、患者のSD1ε-TFP T細胞が、MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞をインビトロで死滅させることを示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)は、メソテリン発現が確認されており(13B)、SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、E:T(エフェクター:標的)比率を、5:1、1:1、または、1:5として、24時間添加した。SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー(Molecular devices)で、標的細胞の発光を相対発光単位(RLU)で測定した。図中の各線は、3回の反復実験の平均を表す(13C)。図13D~Lは、IFNγ(13D)、GM-CSF(13E)、グランザイムA(13F)、グランザイムB(13G)、IL-2(13H)、MIP-1α(13I)、MIP-1β(13J)、TNFα(13K)、及び、パーフォリン(13L)を含む卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のサイトカインプロファイルの測定値を示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)を、96平底プレートに、10000細胞/ウェルで播種した。SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、1対1の比率で、24時間添加した。細胞上清を回収し、サイトカインを、Luminex(登録商標)アッセイを用いて測定した。
図13B】卵巣癌患者由来のMSLN-TFP T細胞の産生及び機能分析を示す。図13Aは、実験計画の概略図である。図13B~Cは、患者のSD1ε-TFP T細胞が、MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞をインビトロで死滅させることを示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)は、メソテリン発現が確認されており(13B)、SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、E:T(エフェクター:標的)比率を、5:1、1:1、または、1:5として、24時間添加した。SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー(Molecular devices)で、標的細胞の発光を相対発光単位(RLU)で測定した。図中の各線は、3回の反復実験の平均を表す(13C)。図13D~Lは、IFNγ(13D)、GM-CSF(13E)、グランザイムA(13F)、グランザイムB(13G)、IL-2(13H)、MIP-1α(13I)、MIP-1β(13J)、TNFα(13K)、及び、パーフォリン(13L)を含む卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のサイトカインプロファイルの測定値を示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)を、96平底プレートに、10000細胞/ウェルで播種した。SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、1対1の比率で、24時間添加した。細胞上清を回収し、サイトカインを、Luminex(登録商標)アッセイを用いて測定した。
図13C】卵巣癌患者由来のMSLN-TFP T細胞の産生及び機能分析を示す。図13Aは、実験計画の概略図である。図13B~Cは、患者のSD1ε-TFP T細胞が、MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞をインビトロで死滅させることを示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)は、メソテリン発現が確認されており(13B)、SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、E:T(エフェクター:標的)比率を、5:1、1:1、または、1:5として、24時間添加した。SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー(Molecular devices)で、標的細胞の発光を相対発光単位(RLU)で測定した。図中の各線は、3回の反復実験の平均を表す(13C)。図13D~Lは、IFNγ(13D)、GM-CSF(13E)、グランザイムA(13F)、グランザイムB(13G)、IL-2(13H)、MIP-1α(13I)、MIP-1β(13J)、TNFα(13K)、及び、パーフォリン(13L)を含む卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のサイトカインプロファイルの測定値を示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)を、96平底プレートに、10000細胞/ウェルで播種した。SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、1対1の比率で、24時間添加した。細胞上清を回収し、サイトカインを、Luminex(登録商標)アッセイを用いて測定した。
図13D】卵巣癌患者由来のMSLN-TFP T細胞の産生及び機能分析を示す。図13Aは、実験計画の概略図である。図13B~Cは、患者のSD1ε-TFP T細胞が、MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞をインビトロで死滅させることを示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)は、メソテリン発現が確認されており(13B)、SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、E:T(エフェクター:標的)比率を、5:1、1:1、または、1:5として、24時間添加した。SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー(Molecular devices)で、標的細胞の発光を相対発光単位(RLU)で測定した。図中の各線は、3回の反復実験の平均を表す(13C)。図13D~Lは、IFNγ(13D)、GM-CSF(13E)、グランザイムA(13F)、グランザイムB(13G)、IL-2(13H)、MIP-1α(13I)、MIP-1β(13J)、TNFα(13K)、及び、パーフォリン(13L)を含む卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のサイトカインプロファイルの測定値を示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)を、96平底プレートに、10000細胞/ウェルで播種した。SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、1対1の比率で、24時間添加した。細胞上清を回収し、サイトカインを、Luminex(登録商標)アッセイを用いて測定した。
図13E】卵巣癌患者由来のMSLN-TFP T細胞の産生及び機能分析を示す。図13Aは、実験計画の概略図である。図13B~Cは、患者のSD1ε-TFP T細胞が、MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞をインビトロで死滅させることを示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)は、メソテリン発現が確認されており(13B)、SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、E:T(エフェクター:標的)比率を、5:1、1:1、または、1:5として、24時間添加した。SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー(Molecular devices)で、標的細胞の発光を相対発光単位(RLU)で測定した。図中の各線は、3回の反復実験の平均を表す(13C)。図13D~Lは、IFNγ(13D)、GM-CSF(13E)、グランザイムA(13F)、グランザイムB(13G)、IL-2(13H)、MIP-1α(13I)、MIP-1β(13J)、TNFα(13K)、及び、パーフォリン(13L)を含む卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のサイトカインプロファイルの測定値を示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)を、96平底プレートに、10000細胞/ウェルで播種した。SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、1対1の比率で、24時間添加した。細胞上清を回収し、サイトカインを、Luminex(登録商標)アッセイを用いて測定した。
図13F】卵巣癌患者由来のMSLN-TFP T細胞の産生及び機能分析を示す。図13Aは、実験計画の概略図である。図13B~Cは、患者のSD1ε-TFP T細胞が、MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞をインビトロで死滅させることを示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)は、メソテリン発現が確認されており(13B)、SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、E:T(エフェクター:標的)比率を、5:1、1:1、または、1:5として、24時間添加した。SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー(Molecular devices)で、標的細胞の発光を相対発光単位(RLU)で測定した。図中の各線は、3回の反復実験の平均を表す(13C)。図13D~Lは、IFNγ(13D)、GM-CSF(13E)、グランザイムA(13F)、グランザイムB(13G)、IL-2(13H)、MIP-1α(13I)、MIP-1β(13J)、TNFα(13K)、及び、パーフォリン(13L)を含む卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のサイトカインプロファイルの測定値を示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)を、96平底プレートに、10000細胞/ウェルで播種した。SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、1対1の比率で、24時間添加した。細胞上清を回収し、サイトカインを、Luminex(登録商標)アッセイを用いて測定した。
図13G】卵巣癌患者由来のMSLN-TFP T細胞の産生及び機能分析を示す。図13Aは、実験計画の概略図である。図13B~Cは、患者のSD1ε-TFP T細胞が、MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞をインビトロで死滅させることを示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)は、メソテリン発現が確認されており(13B)、SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、E:T(エフェクター:標的)比率を、5:1、1:1、または、1:5として、24時間添加した。SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー(Molecular devices)で、標的細胞の発光を相対発光単位(RLU)で測定した。図中の各線は、3回の反復実験の平均を表す(13C)。図13D~Lは、IFNγ(13D)、GM-CSF(13E)、グランザイムA(13F)、グランザイムB(13G)、IL-2(13H)、MIP-1α(13I)、MIP-1β(13J)、TNFα(13K)、及び、パーフォリン(13L)を含む卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のサイトカインプロファイルの測定値を示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)を、96平底プレートに、10000細胞/ウェルで播種した。SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、1対1の比率で、24時間添加した。細胞上清を回収し、サイトカインを、Luminex(登録商標)アッセイを用いて測定した。
図13H】卵巣癌患者由来のMSLN-TFP T細胞の産生及び機能分析を示す。図13Aは、実験計画の概略図である。図13B~Cは、患者のSD1ε-TFP T細胞が、MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞をインビトロで死滅させることを示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)は、メソテリン発現が確認されており(13B)、SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、E:T(エフェクター:標的)比率を、5:1、1:1、または、1:5として、24時間添加した。SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー(Molecular devices)で、標的細胞の発光を相対発光単位(RLU)で測定した。図中の各線は、3回の反復実験の平均を表す(13C)。図13D~Lは、IFNγ(13D)、GM-CSF(13E)、グランザイムA(13F)、グランザイムB(13G)、IL-2(13H)、MIP-1α(13I)、MIP-1β(13J)、TNFα(13K)、及び、パーフォリン(13L)を含む卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のサイトカインプロファイルの測定値を示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)を、96平底プレートに、10000細胞/ウェルで播種した。SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、1対1の比率で、24時間添加した。細胞上清を回収し、サイトカインを、Luminex(登録商標)アッセイを用いて測定した。
図13I】卵巣癌患者由来のMSLN-TFP T細胞の産生及び機能分析を示す。図13Aは、実験計画の概略図である。図13B~Cは、患者のSD1ε-TFP T細胞が、MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞をインビトロで死滅させることを示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)は、メソテリン発現が確認されており(13B)、SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、E:T(エフェクター:標的)比率を、5:1、1:1、または、1:5として、24時間添加した。SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー(Molecular devices)で、標的細胞の発光を相対発光単位(RLU)で測定した。図中の各線は、3回の反復実験の平均を表す(13C)。図13D~Lは、IFNγ(13D)、GM-CSF(13E)、グランザイムA(13F)、グランザイムB(13G)、IL-2(13H)、MIP-1α(13I)、MIP-1β(13J)、TNFα(13K)、及び、パーフォリン(13L)を含む卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のサイトカインプロファイルの測定値を示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)を、96平底プレートに、10000細胞/ウェルで播種した。SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、1対1の比率で、24時間添加した。細胞上清を回収し、サイトカインを、Luminex(登録商標)アッセイを用いて測定した。
図13J】卵巣癌患者由来のMSLN-TFP T細胞の産生及び機能分析を示す。図13Aは、実験計画の概略図である。図13B~Cは、患者のSD1ε-TFP T細胞が、MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞をインビトロで死滅させることを示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)は、メソテリン発現が確認されており(13B)、SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、E:T(エフェクター:標的)比率を、5:1、1:1、または、1:5として、24時間添加した。SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー(Molecular devices)で、標的細胞の発光を相対発光単位(RLU)で測定した。図中の各線は、3回の反復実験の平均を表す(13C)。図13D~Lは、IFNγ(13D)、GM-CSF(13E)、グランザイムA(13F)、グランザイムB(13G)、IL-2(13H)、MIP-1α(13I)、MIP-1β(13J)、TNFα(13K)、及び、パーフォリン(13L)を含む卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のサイトカインプロファイルの測定値を示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)を、96平底プレートに、10000細胞/ウェルで播種した。SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、1対1の比率で、24時間添加した。細胞上清を回収し、サイトカインを、Luminex(登録商標)アッセイを用いて測定した。
図13K】卵巣癌患者由来のMSLN-TFP T細胞の産生及び機能分析を示す。図13Aは、実験計画の概略図である。図13B~Cは、患者のSD1ε-TFP T細胞が、MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞をインビトロで死滅させることを示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)は、メソテリン発現が確認されており(13B)、SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、E:T(エフェクター:標的)比率を、5:1、1:1、または、1:5として、24時間添加した。SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー(Molecular devices)で、標的細胞の発光を相対発光単位(RLU)で測定した。図中の各線は、3回の反復実験の平均を表す(13C)。図13D~Lは、IFNγ(13D)、GM-CSF(13E)、グランザイムA(13F)、グランザイムB(13G)、IL-2(13H)、MIP-1α(13I)、MIP-1β(13J)、TNFα(13K)、及び、パーフォリン(13L)を含む卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のサイトカインプロファイルの測定値を示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)を、96平底プレートに、10000細胞/ウェルで播種した。SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、1対1の比率で、24時間添加した。細胞上清を回収し、サイトカインを、Luminex(登録商標)アッセイを用いて測定した。
図13L】卵巣癌患者由来のMSLN-TFP T細胞の産生及び機能分析を示す。図13Aは、実験計画の概略図である。図13B~Cは、患者のSD1ε-TFP T細胞が、MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞をインビトロで死滅させることを示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)は、メソテリン発現が確認されており(13B)、SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、E:T(エフェクター:標的)比率を、5:1、1:1、または、1:5として、24時間添加した。SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー(Molecular devices)で、標的細胞の発光を相対発光単位(RLU)で測定した。図中の各線は、3回の反復実験の平均を表す(13C)。図13D~Lは、IFNγ(13D)、GM-CSF(13E)、グランザイムA(13F)、グランザイムB(13G)、IL-2(13H)、MIP-1α(13I)、MIP-1β(13J)、TNFα(13K)、及び、パーフォリン(13L)を含む卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のサイトカインプロファイルの測定値を示す。MSTO-MSLN-Luc腫瘍細胞(標的細胞)を、96平底プレートに、10000細胞/ウェルで播種した。SD1ε-TFP T細胞(エフェクター細胞)、及び、適合する形質導入していないコントロールを、1対1の比率で、24時間添加した。細胞上清を回収し、サイトカインを、Luminex(登録商標)アッセイを用いて測定した。
図14A】MSLN高度異種移植片腫瘍マウスモデルにおける、患者由来のSD1 CD3ε-TFP T細胞のインビボでの有効性を示す。MSTO-211H-FL MSLN-Luc細胞を、マウス1匹あたり、1×10個の細胞で皮下接種した。腫瘍を注射して10日後(腫瘍体積は約200~300mm)に、5×10個のT細胞を、各動物に静脈内注射した。図中の各線は、一匹の動物を表す。データは、ND12(14A)、患者1(14B)、患者2(14C)、患者3(14D)、及び、患者4(14E)由来のT細胞について示している。丸形は、形質導入していないT細胞を接種したマウスにおける腫瘍の大きさを示しており、四角は、TFP T細胞を接種したマウスにおける腫瘍の大きさを示す。
図14B】MSLN高度異種移植片腫瘍マウスモデルにおける、患者由来のSD1 CD3ε-TFP T細胞のインビボでの有効性を示す。MSTO-211H-FL MSLN-Luc細胞を、マウス1匹あたり、1×10個の細胞で皮下接種した。腫瘍を注射して10日後(腫瘍体積は約200~300mm)に、5×10個のT細胞を、各動物に静脈内注射した。図中の各線は、一匹の動物を表す。データは、ND12(14A)、患者1(14B)、患者2(14C)、患者3(14D)、及び、患者4(14E)由来のT細胞について示している。丸形は、形質導入していないT細胞を接種したマウスにおける腫瘍の大きさを示しており、四角は、TFP T細胞を接種したマウスにおける腫瘍の大きさを示す。
図14C】MSLN高度異種移植片腫瘍マウスモデルにおける、患者由来のSD1 CD3ε-TFP T細胞のインビボでの有効性を示す。MSTO-211H-FL MSLN-Luc細胞を、マウス1匹あたり、1×10個の細胞で皮下接種した。腫瘍を注射して10日後(腫瘍体積は約200~300mm)に、5×10個のT細胞を、各動物に静脈内注射した。図中の各線は、一匹の動物を表す。データは、ND12(14A)、患者1(14B)、患者2(14C)、患者3(14D)、及び、患者4(14E)由来のT細胞について示している。丸形は、形質導入していないT細胞を接種したマウスにおける腫瘍の大きさを示しており、四角は、TFP T細胞を接種したマウスにおける腫瘍の大きさを示す。
図14D】MSLN高度異種移植片腫瘍マウスモデルにおける、患者由来のSD1 CD3ε-TFP T細胞のインビボでの有効性を示す。MSTO-211H-FL MSLN-Luc細胞を、マウス1匹あたり、1×10個の細胞で皮下接種した。腫瘍を注射して10日後(腫瘍体積は約200~300mm)に、5×10個のT細胞を、各動物に静脈内注射した。図中の各線は、一匹の動物を表す。データは、ND12(14A)、患者1(14B)、患者2(14C)、患者3(14D)、及び、患者4(14E)由来のT細胞について示している。丸形は、形質導入していないT細胞を接種したマウスにおける腫瘍の大きさを示しており、四角は、TFP T細胞を接種したマウスにおける腫瘍の大きさを示す。
図14E】MSLN高度異種移植片腫瘍マウスモデルにおける、患者由来のSD1 CD3ε-TFP T細胞のインビボでの有効性を示す。MSTO-211H-FL MSLN-Luc細胞を、マウス1匹あたり、1×10個の細胞で皮下接種した。腫瘍を注射して10日後(腫瘍体積は約200~300mm)に、5×10個のT細胞を、各動物に静脈内注射した。図中の各線は、一匹の動物を表す。データは、ND12(14A)、患者1(14B)、患者2(14C)、患者3(14D)、及び、患者4(14E)由来のT細胞について示している。丸形は、形質導入していないT細胞を接種したマウスにおける腫瘍の大きさを示しており、四角は、TFP T細胞を接種したマウスにおける腫瘍の大きさを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
ある態様において、本明細書では、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離した核酸分子であって、当該TFPが、TCRサブユニット、及び、抗メソテリン結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含む分子を説明する。幾つかの実施形態では、当該TCRサブユニットは、TCR細胞外ドメインを含む。その他の実施形態では、当該TCRサブユニットは、TCR膜貫通ドメインを含む。さらに他の実施形態では、当該TCRサブユニットは、TCR細胞内ドメインを含む。さらなる実施形態では、当該TCRサブユニットは、(i)TCR細胞外ドメイン、(ii)TCR膜貫通ドメイン、及び、(iii)TCR細胞内ドメインを含み、(i)、(ii)、及び、(iii)の少なくとも2つは、同じTCRサブユニット由来である。さらに別の実施形態では、当該TCRサブユニットは、CD3イプシロン、CD3ガンマ、もしくはCD3デルタの細胞内シグナル伝達ドメインから選択される刺激ドメイン、または、それらに対する少なくとも1つ、2つ、もしくは3つの修飾を有するアミノ酸配列を含むTCRの細胞内ドメインを含む。さらに別の実施形態では、当該TCRサブユニットは、4-1BBの機能的シグナル伝達ドメイン、及び/または、CD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメインから選択される刺激ドメイン、または、それらに対する少なくとも1つ、2つ、または、3つの修飾を有するアミノ酸配列を含む細胞内ドメインを含む。
【0042】
幾つかの実施形態では、当該単離した核酸分子は、(i)本明細書で提供したあらゆる抗メソテリン軽鎖結合ドメインアミノ酸配列の軽鎖(LC)CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3、及び/または、(ii)本明細書で提供したあらゆる抗メソテリン重鎖結合ドメインアミノ酸配列の重鎖(HC)CDR1、HC CDR2、及び、HC CDR3を含む。
【0043】
幾つかの実施形態では、当該軽鎖可変領域は、本明細書で提供した軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、または、3つの修飾から、最大で30、20、または、10個までの修飾を有するアミノ酸配列、または、本明細書で提供したアミノ酸配列に対して95~99%の同一性を有する配列を含む。その他の実施形態では、当該重鎖可変領域は、本明細書で提供した重鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、または、3つの修飾から、最大で30、20、または、10個までの修飾を有するアミノ酸配列、または、本明細書で提供したアミノ酸配列に対して95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0044】
幾つかの実施形態では、当該TFPは、T細胞受容体の当該アルファまたはベータ鎖、CD3デルタ、CD3イプシロン、または、CD3ガンマからなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部、または、それらの機能的断片、または、それらに対する少なくとも1つ、2つ、もしくは3つの修飾から、最大で20、10、または、5個までの修飾を有するアミノ酸配列を含むTCRサブユニットの細胞外ドメインを含む。その他の実施形態では、コードした当該TFPは、TCRの当該アルファ鎖、ベータ鎖、または、TCRサブユニットCD3イプシロン、CD3ガンマ、及び、CD3デルタからなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメイン、または、それらの機能的断片、または、それらに対する少なくとも1つ、2つ、または、3つの修飾から、最大で20、10、または、5個までの修飾を有するアミノ酸配列を含む膜貫通ドメインを含む。
【0045】
幾つかの実施形態では、コードした当該TFPは、当該TCRのアルファ、ベータ、または、ゼータ鎖、または、CD3イプシロン、CD3ガンマ、及び、CD3デルタCD45、CD2、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及び、CD154からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメイン、または、それらの機能的断片、または、それらに対する少なくとも1つ、2つ、もしくは3つの修飾から、最大で20、10、または、5個までの修飾を有するアミノ酸配列を含む膜貫通ドメインを含む。
【0046】
幾つかの実施形態では、コードした当該抗メソテリン結合ドメインを、リンカー配列で、当該TCRの細胞外ドメインと連結する。幾つかの例では、コードした当該リンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=1~4である。幾つかの例では、コードした当該リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。幾つかの例では、コードした当該長いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=2~4である。幾つかの例では、コードした当該リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。幾つかの例では、コードした当該短いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=1~3である。
【0047】
幾つかの実施形態では、当該単離した核酸分子は、共刺激ドメインをコードする配列をさらに含む。幾つかの例では、当該共刺激ドメインは、DAP10、DAP12、CD30、LIGHT、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、及び、4-1BB(CD137)からなる群から選択されるタンパク質、または、それらに対する少なくとも1つ、2つ、または、3つの修飾から、最大で20、10、または、5個までの修飾を有するアミノ酸配列から得られる機能的シグナル伝達ドメインである。
【0048】
幾つかの実施形態では、当該単離した核酸分子は、リーダー配列をさらに含む。
【0049】
また、本明細書では、上記した核酸分子のいずれかでコードした単離したポリペプチド分子も提供する。
【0050】
また、別の態様において、本明細書では、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含む単離したT細胞受容体融合タンパク質(TFP)分子を提供する。幾つかの実施形態では、当該単離したTFP分子は、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含む抗体または抗体断片を含む。
【0051】
幾つかの態様では、当該ヒトまたはヒト化抗体ドメインは、抗体断片を含む。幾つかの実施形態では、当該ヒトまたはヒト化抗体ドメインは、scFvまたはVドメインを含む。
【0052】
幾つかの実施形態では、当該抗メソテリン結合ドメインは、scFvまたはVドメインである。その他の実施形態では、当該抗メソテリン結合ドメインは、本明細書で提供したアミノ酸配列の軽鎖及び重鎖、または、それらの機能的断片、または、本明細書で提供した軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、または、3つの修飾から、最大で、30、20、または、10個までの修飾を有するアミノ酸配列、または、本明細書で提供したアミノ酸配列に対して95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0053】
幾つかの実施形態では、当該単離したTFP分子は、T細胞受容体のアルファ、または、ベータ鎖、CD3デルタ、CD3イプシロン、または、CD3ガンマからなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメイン、または、その一部、または、それらに対する少なくとも1つ、2つ、または、3つの修飾から、最大で20、10、または、5個までの修飾を有するアミノ酸配列を含むTCR細胞外ドメインを含む。
【0054】
幾つかの実施形態では、当該メソテリン結合ドメインは、リンカー配列で、当該TCR細胞外ドメインに連結する。幾つかの例では、当該リンカー領域は、(GS)を含み、式中、n=1~4である。幾つかの例では、当該リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。幾つかの例では、当該長いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=2~4である。幾つかの例では、当該リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。幾つかの例では、当該短いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=1~3である。
【0055】
幾つかの実施形態では、当該単離したTFP分子は、共刺激ドメインをコードする配列をさらに含む。その他の実施形態では、当該単離したTFP分子は、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする配列をさらに含む。さらに他の実施形態では、当該単離したTFP分子は、リーダー配列をさらに含む。
【0056】
また、本明細書では、上記したTFP分子のいずれかをコードする核酸分子を含むベクターを提供する。幾つかの実施形態では、当該ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、または、レトロウイルスベクターからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、当該ベクターは、プロモーターをさらに含む。幾つかの実施形態では、当該ベクターは、インビトロで転写したベクターである。幾つかの実施形態では、当該ベクターの核酸配列は、ポリ(A)尾部をさらに含む。幾つかの実施形態では、当該ベクターの核酸配列は、3’UTRをさらに含む。
【0057】
また、本明細書では、本明細書に記載したベクターのいずれかを含む細胞を提供する。幾つかの実施形態では、当該細胞は、ヒトT細胞である。幾つかの実施形態では、当該細胞は、CD8+またはCD4+T細胞である。その他の実施形態では、当該細胞は、阻害分子の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドを含み、細胞内シグナル伝達ドメインからのポジティブシグナルを含む第2のポリペプチドと会合した阻害分子をコードする核酸をさらに含む。幾つかの例では、当該阻害分子は、PD1の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドと、共刺激ドメイン及び一次シグナル伝達ドメインを含む第2のポリペプチドとを含む。
【0058】
別の態様において、本明細書では、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離したTFP分子を提供し、当該TFP分子は、内因性TCR複合体、及び/または、少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することができる。
【0059】
別の態様において、本明細書では、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離したTFP分子を提供し、当該TFP分子は、内因性TCRと機能的に統合することができる。
【0060】
別の態様において、本明細書では、ヒトCD8+またはCD4+T細胞であって、少なくとも2つのTFP分子を含み、当該TFP分子が、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含み、当該TFP分子が、当該ヒトCD8+またはCD4+T細胞において、同細胞にて、及び/または、同細胞の表面で、内因性TCR複合体、及び/または、少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することができる当該ヒトCD8+またはCD4+T細胞を提供する。
【0061】
別の態様において、本明細書では、i)ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含むTFP分子、及び、ii)少なくとも1つの内因性TCR複合体を含む、タンパク質複合体を提供する。
【0062】
幾つかの実施形態では、当該TCRは、当該T細胞受容体のアルファまたはベータ鎖、CD3デルタ、CD3イプシロン、または、CD3ガンマからなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメイン、または、その一部を含む。幾つかの実施形態では、当該抗メソテリン結合ドメインを、リンカー配列で、当該TCRの細胞外ドメインに連結する。幾つかの例では、当該リンカー領域は、(GS)を含み、式中、n=1~4である。幾つかの例では、当該リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。幾つかの例では、当該長いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=2~4である。幾つかの例では、当該リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。幾つかの例では、当該短いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=1~3である。
【0063】
また、本明細書では、本明細書に記載したあらゆるタンパク質複合体あたり、少なくとも2つの異なるTFPタンパク質を含むヒトCD8+またはCD4+T細胞を提供する。
【0064】
別の態様において、本明細書では、ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団であって、当該集団の当該T細胞が、個々に、または、集合的に、少なくとも2つのTFP分子を含み、当該TFP分子が、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含み、当該TFP分子が、当該ヒトCD8+またはCD4+T細胞において、同細胞にて、及び/または、同細胞の表面で、内因性TCR複合体、及び/または、少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することができる当該ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団を提供する。
【0065】
別の態様において、本明細書では、ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団であって、当該集団の当該T細胞が、個々に、または、集合的に、本明細書で提供した単離した核酸分子でコードした少なくとも2つのTFP分子を含む当該ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団を提供する。
【0066】
別の態様において、本明細書では、本明細書に記載したあらゆるベクターを用いてT細胞に形質導入することを含む、細胞の作製方法を提供する。
【0067】
別の態様において、本明細書では、インビトロで転写したRNAまたは合成RNAを細胞に導入することを含む、RNA改変細胞集団の生成方法であって、当該RNAが、本明細書に記載したTFP分子のいずれかをコードする核酸を含む、当該方法を提供する。
【0068】
別の態様において、本明細書では、哺乳動物に抗腫瘍免疫を与える方法であって、当該哺乳動物に対して、本明細書に記載のTFP分子のいずれかを発現する細胞の有効量を投与することを含む、当該方法を提供する。幾つかの実施形態では、当該細胞は、自己T細胞である。幾つかの実施形態では、当該細胞は、同種異系T細胞である。幾つかの実施形態では、当該哺乳動物は、ヒトである。
【0069】
別の態様において、本明細書では、メソテリンの発現に関連する疾患を有する哺乳動物を処置する方法であって、当該哺乳動物に対して、本明細書に記載のTFP分子のいずれかを含む細胞の有効量を投与することを含む、当該方法を提供する。幾つかの実施形態では、メソテリン発現に関連する当該疾患は、がんまたは悪性腫瘍などの増殖性疾患、または、膵臓癌、卵巣癌、胃癌、肺癌、または、子宮内膜癌などの前癌状態から選択され、あるいは、メソテリンの発現に関連した非がん関連の適応症である。
【0070】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載したTFP分子のいずれかを発現する細胞を、TFP分子を発現する細胞の投与に伴う1つ以上の副作用を改善する作用物質と組み合わせて投与する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載したTFP分子のいずれかを発現する当該細胞を、メソテリンに関連する疾患を処置する作用物質と組み合わせて投与する。
【0071】
また、本明細書では、医薬として使用する、本明細書に記載した、あらゆる単離した核酸分子、あらゆる単離したポリペプチド分子、あらゆる単離したTFP、あらゆるタンパク質複合体、あらゆるベクター、または、あらゆる細胞を提供する。
【0072】
定義
特に定義されていない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0073】
用語「a」及び「an」は、当該冠詞の文法上の目的語の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)のものを指す。例として、「要素」は、1つ以上の要素を意味する。
【0074】
本明細書では、「約」は、状況、及び、当業者が知る、または、知り得ることに応じて、±1パーセント未満、または、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、または、30パーセント超を意味することができる。
【0075】
本明細書では、「subject(対象)」、または、「subjects(対象)」、または、「個体」として、哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、家畜、農業用、または、野生の動物、ならびに、鳥類、及び、水生動物などがあるが、これらに限定されない。「患者」は、疾患、障害、または、病態に罹患している、あるいは、その発病の危険性がある対象、さもなければ、本明細書で提供する組成物及び方法を必要とする対象である。
【0076】
本明細書では、「処置する」または「処置」は、当該疾患または病態の処置または改善における、あらゆる成功の兆しのことを指す。処置するとは、例えば、当該疾患または病態の1つ以上の症状の重症度を低下させること、進行を遅らせること、または、軽減することを含む場合もあり、あるいは、患者が経験する疾患、不自由、障害、または、悪条件等の症状の頻度を減少させることを含む場合もある。本明細書では、「処置または予防」は、当該疾患または病態のある程度の処置または改善をもたらす方法を指すものとして本明細書で使用しており、また、当該病態の完全な予防など、このことに限らず、それらの目的に関する様々な結果を企図している。
【0077】
本明細書では、「予防する」は、患者における疾患または病態、例えば、腫瘍形成の予防のことを指す。例えば、腫瘍またはその他のがんの形態の発症の危険性がある個体が本発明の方法で処置を受け、後に当該腫瘍またはその他のがんの形態を発症しない場合、当該疾患は、少なくともある期間にわたって、その個体において予防されている。
【0078】
本明細書では、「治療有効量」は、組成物またはその活性成分の量であって、当該組成物を投与する個体に対して有益な効果を与える、さもなければ、有害な有益でない事象を減少させるのに十分な量のことである。「治療有効用量」は、本明細書では、1つ以上の所望の、または、望ましい(例えば、有益な)効果を生み出すために投与される用量のことを意味し、かかる投与は、特定期間に1回以上存在する。正確な用量は、当該治療の目的によって定まり、そして、当業者であれば、既知の技術を用いて解明することができる(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992);Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999);及び、Pickar, Dosage Calculations (1999)を参照されたい)。
【0079】
本明細書では、「T細胞受容体(TCR)融合タンパク質」または「TFP」は、当該TCRを含む様々なポリペプチド由来の組換えポリペプチドを含み、当該TCRは、一般的には、i)標的細胞の表面抗原に結合すること、及び、ii)通常は、T細胞内またはその表面で同一の場所に配置された場合に、インタクトなTCR複合体の他のポリペプチド成分と相互作用することができる。「TFP T細胞」は、(例えば、本明細書で開示した方法にしたがって)形質導入しており、そして、例えば、天然のTCRに組み込まれている、TFPを発現するT細胞である。幾つかの実施形態では、T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、または、CD4+/CD8+T細胞である。幾つかの実施形態では、当該TFP T細胞は、NK細胞である。幾つかの実施形態では、当該TFP T細胞は、ガンマ-デルタT細胞である。
【0080】
本明細書では、用語「メソテリン」、別名、MSLN、または、CAK1抗原、または、前巨核球増強因子は、ヒトにおいて、MSLN(または、巨核球増強因子(MPF))遺伝子がコードするタンパク質のことを指す。メソテリンは、正常な中皮細胞に存在しており、また、中皮腫、卵巣、及び、膵臓腺癌などの幾つかのヒト腫瘍で過剰発現している40kDaのタンパク質である。当該メソテリン遺伝子は、グリコホスファチジルイノシトール結合、及び、巨核球増強因子(MPF)と命名した31kDaの生成断片によって細胞膜に結合しているメソテリンを産生するように処理される前駆体タンパク質をコードする。メソテリンは、細胞接着に関与し得るかもしれないが、その生物学的機能は不明である。メソテリンは、通常は、胸膜、腹膜、及び、心膜を覆う中皮細胞に存在する腫瘍分化抗原である。メソテリンは、中皮腫細胞、卵巣癌細胞、膵臓腺癌細胞、及び、幾つかの扁平上皮癌において検出可能な抗原決定基である(例えば、Kojima et al.,J.Biol.Chem.270:21984-21990(1995)、及び、Onda et al.,Clin. Cancer Res.12:4225-4231(2006)を参照されたい)。メソテリンは、CA125/MUC16と相互作用する(例えば、Rump et al.,J.Biol.Chem.279:9190-9198(2004)、及び、Ma et al.,J.Biol.Chem.287:33123-33131(2012)を参照されたい)。
【0081】
ヒト及びマウスのアミノ酸、及び、核酸配列は、GenBank、UniProt、及び、Swiss-Protなどの公共のデータベースから得ることができる。例えば、ヒトメソテリンのアミノ酸配列は、UniProt/Swiss-Prot受託番号第Q13421にある。ヒトメソテリンポリペプチドの標準配列は、UniProt受託番号第Q13421号(または、第Q13421-1号)である。
MALPTARPLLGSCGTPALGSLLFLLFSLGWVQPSRTLAGETGQEAAPLDGVLANPPNISSLSPRQLLGFPCAEVSGLSTERVRELAVALAQKNVKLSTEQLRCLAHRLSEPPEDLDALPLDLLLFLNPDAFSGPQACTRFFSRITKANVDLLPRGAPERQRLLPAALACWGVRGSLLSEADVRALGGLACDLPGRFVAESAEVLLPRLVSCPGPLDQDQQEAARAALQGGGPPYGPPSTWSVSTMDALRGLLPVLGQPIIRSIPQGIVAAWRQRSSRDPSWRQPERTILRPRFRREVEKTACPSGKKAREIDESLIFYKKWELEACVDAALLATQMDRVNAIPFTYEQLDVLKHKLDELYPQGYPESVIQHLGYLFLKMSPEDIRKWNVTSLETLKALLEVNKGHEMSPQAPRRPLPQVATLIDRFVKGRGQLDKDTLDTLTAFYPGYLCSLSPEELSSVPPSSIWAVRPQDLDTCDPRQLDVLYPKARLAFQNMNGSEYFVKIQSFLGGAPTEDLKALSQQNVSMDLATFMKLRTDAVLPLTVAEVQKLLGPHVEGLKAEERHRPVRDWILRQRQDDLDTLGLGLQGGIPNGYLVLDLSMQEALSGTPCLLGPGPVLTVLALLLASTLA(配列番号15)。
【0082】
ヒトメソテリン転写変異体1をコードするヌクレオチド配列は、受託番号第NM005823号にある。ヒトメソテリン転写変異体2をコードするヌクレオチド配列は、受託番号第NM013404号にある。ヒトメソテリン転写変異体3をコードするヌクレオチド配列は、受託番号第NM001177355号にある。メソテリンは、中皮腫細胞、卵巣癌細胞、膵臓腺癌細胞、及び、扁平上皮癌に発現する(例えば、Kojima et al.,J.Biol.Chem.270:21984-21990(1995)、及び、Onda et al.,Clin.Cancer Res.12:4225-4231(2006)を参照されたい)。メソテリンを発現するその他の細胞は、以下の「メソテリンの発現に関連する疾患」の定義において後述する。また、メソテリンは、CA125/MUC16とも相互作用する(例えば、Rump et al.,J.Biol.Chem.279:9190-9198(2004)、及び、Ma et al.,J.Biol.Chem.287:33123-33131(2012)を参照されたい)。一例では、TFPの抗原結合部分は、正常または悪性中皮腫細胞、卵巣癌細胞、膵臓腺癌細胞、または、扁平上皮癌細胞で発現するように、当該メソテリンタンパク質の細胞外ドメイン内のエピトープを認識し、そして、そこに結合する。
【0083】
本明細書では、用語「抗体」は、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子に由来するタンパク質またはポリペプチド配列のことを指す。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル起源のインタクトな免疫グロブリン、あるいは、それらの断片とすることができ、また、天然または組換え起源に由来することができる。
【0084】
用語「抗体断片」または「抗体結合ドメイン」は、抗体の少なくとも一部、または、それらの組換え変異体のことを指すものであり、これは、抗原結合ドメイン、すなわち、インタクトな抗体の抗原決定可変領域を含み、これは、当該抗体断片の標的、例えば、抗原、及び、その明らかなエピトープに対する認識と特異的結合とを付与するのに十分である。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)、及び、Fv断片、一本鎖(sc)Fv(「scFv」)抗体断片、線状抗体、単一ドメイン抗体(「sdAb」と省略して表記される)(VまたはVのいずれか)、ラクダ科VHHドメイン、及び、抗体断片から形成した多重特異性抗体などがあるが、これらに限定されない。
【0085】
用語「scFv」は、軽鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片と、重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片と、を含む融合タンパク質を指しており、当該軽鎖及び重鎖の可変領域は、短い可動性ポリペプチドリンカーを介して隣接して連結されており、そして、単一のポリペプチド鎖として発現することができ、また、当該scFvは、それが由来するインタクトな抗体の特異性を保持している。
【0086】
抗体に関する「重鎖可変領域」または「V」(または、単一ドメイン抗体の場合、例えば、ナノボディ、「VHH」)は、フレームワーク領域として知られているフランキングストレッチの間に介在する3つのCDRを含む重鎖の断片のことを指すものであり、これらのフレームワーク領域は、一般的には、当該CDRよりも高度に保存されており、当該CDRを支持する骨格を形成する。
【0087】
特に断りがない限り、本明細書では、scFvは、V及びVの可変領域を、例えば、当該ポリペプチドのN末端及びC末端に関して、いずれの順序にもし得るものであり、当該scFvは、V-リンカー-Vを含み得るものであり、または、V-リンカー-Vを含み得る。
【0088】
抗体、または、それらの抗体断片を含む本発明のTFP組成物の一部は、様々な形態で存在し得るものであり、当該抗原結合ドメインは、例えば、単一ドメイン抗体断片(sdAb)、または、重鎖抗体HCAb、マウス、ヒト化、または、ヒト抗体に由来する一本鎖抗体(scFv)を含む、連続ポリペプチド鎖の一部として発現する(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y.;Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.;Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。ある態様では、本発明のTFP組成物の当該抗原結合ドメインは、抗体断片を含む。さらなる態様では、当該TFPは、scFvまたはsdAbを含む抗体断片を含む。
【0089】
用語「抗体重鎖」は、抗体分子に天然起源のコンホメーションで含まれる2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの大きい方を指し、これは通常、当該抗体が属するクラスを決定する。
【0090】
用語「抗体軽鎖」は、抗体分子に天然起源のコンホメーションで含まれる2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖のアイソタイプを指す。
【0091】
用語「組換え抗体」は、組換えDNA技術を用いて生成された抗体、例えば、バクテリオファージまたは酵母の発現系によって発現される抗体のことを指す。また、当該用語は、当該抗体をコードして、抗体タンパク質を発現するDNA分子、または、当該抗体を特定するアミノ酸配列を合成して生成した抗体を意味すると解釈されるものとし、この場合、当該DNAまたはアミノ酸配列は、当技術分野で利用可能であり、かつ、周知である組換えDNAまたはアミノ酸配列技術を用いて得たものである。
【0092】
用語「抗原」または「Ag」は、抗体によって特異的に結合することができ、さもなければ、免疫反応を誘発する分子のことを指す。この免疫反応は、抗体産生、または、特異的な免疫学的にコンピテントな細胞の活性化のいずれか、または、その両方を含み得る。
【0093】
当業者であれば、実質的にすべてのタンパク質、または、ペプチドを含めたあらゆる高分子が抗原の役割を果たすであろうことは理解する。さらに、抗原は、組換え、または、ゲノムDNAから誘導することができる。したがって、当業者であれば、免疫反応を惹起するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分的なヌクレオチド配列を含むあらゆるDNAが、本明細書で用いられる用語「抗原」をコードすることは理解する。さらに、当業者であれば、遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によって抗原を完全にコードする必要がないことを理解する。本発明が、複数の遺伝子の部分的なヌクレオチド配列の使用を含むが、これに限定されず、そして、これらのヌクレオチド配列が、所望の免疫反応を惹起するポリペプチドをコードする様々な組合せで配置することは自明である。さらに、当業者であれば、抗原は「遺伝子」によってコードされる必要は全くないことを理解する。抗原は、生成されても、合成されてもよく、または生体試料由来であってもよく、またはポリペプチド以外の高分子でもあることは自明である。そのような生体試料として、組織試料、腫瘍試料、細胞、または、その他の生物学的成分を含む液体などがあるが、これらに限定されない。
【0094】
用語「抗腫瘍効果」は、様々な手段で明らかにすることができる生物学的効果のことを指し、例えば、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の延長、腫瘍細胞増殖の減少、腫瘍細胞生存率の低下、または、がん性状態に関連する様々な生理学的症状の改善があるが、これらに限定されない。「抗腫瘍効果」は、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞、及び、抗体の最初の段階での腫瘍の発生の予防能力で明らかにすることもできる。
【0095】
用語「自己」は、あらゆる材料であって、後にそれが再導入される個体と同じ個体由来のもののことを指す。
【0096】
用語「同種異系」は、あらゆる材料であって、同じ種の異なる動物、または、当該材料が導入される個体と異なる患者由来のもののことを指す。遺伝子が1つ以上の遺伝子座で同一ではない場合、2つ以上の個体は互いに同種異系であると言われる。幾つかの態様では、同じ種の個体由来の同種異系材料は、抗原的に相互作用するのに十分に遺伝学的に異なり得る。
【0097】
用語「異種」は、異なる種の動物に由来する移植片のことを指す。
【0098】
用語「がん」は、異常細胞の急速かつ制御されない増殖を特徴とする疾患のことを指す。がん細胞は、局所的にも、血流、及び、リンパ系を介して身体の他の部分に広がることもできる。様々ながんの例を本明細書で記載しており、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌、皮膚癌、膵臓癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳腫瘍、肺癌などがあるが、これらに限定されない。
【0099】
成句「メソテリンの発現に関連する疾患」は、メソテリンの発現に関連する疾患、または、メソテリンを発現する細胞に関連する病態、例えば、がん、または、悪性腫瘍、または、前癌状態などの増殖性疾患などがあるが、これらに限定されない。ある態様では、当該がんは、中皮腫である。ある態様では、当該がんは、膵臓癌である。ある態様では、当該がんは、卵巣癌である。ある態様では、当該がんは、胃癌である。ある態様では、当該がんは、肺癌である。ある態様では、当該がんは、子宮内膜癌である。メソテリンの発現に関連するがんに関連しない適応症として、例えば、自己免疫疾患(例えば、狼瘡、慢性関節リウマチ、大腸炎)、炎症性障害(アレルギー及び喘息)、ならびに、移植があるが、これらに限定されない。
【0100】
用語「保存的配列修飾」は、当該アミノ酸配列を含む抗体または抗体断片の結合特性に多大に作用しない、または、多大に変えないアミノ酸修飾のことを指す。そのような保存的修飾として、アミノ酸の置換、付加、及び、欠失がある。修飾は、当該技術分野で既知の標準的技術、例えば、部位特異的突然変異誘発法、及び、PCR媒介突然変異誘発法などによって、本発明の抗体または抗体断片に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、当該アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーとして、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び、芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のアミノ酸がある。したがって、本発明のTFP内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置き換えることができ、かつ、変更したTFPは、本明細書に記載の機能アッセイを用いて検査することができる。
【0101】
用語「刺激」は、刺激ドメイン、または、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)が、その同族リガンドと結合し、それによって、シグナル伝達事象を媒介することで誘導される一次応答のことを指すものであり、同伝達事象として、当該TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達などがあるが、これらに限定されない。刺激は、特定の分子の変化した発現、及び/または、細胞骨格構造の再構成等を媒介することができる。
【0102】
用語「刺激分子」または「刺激ドメイン」は、T細胞によって発現される分子またはその一部のことを指し、当該T細胞は、一次細胞質シグナル伝達配列(複数可)を提供し、同シグナル伝達配列(複数可)は、当該T細胞のシグナル伝達経路の少なくとも幾つかの態様に対して、当該TCR複合体の一次活性化を促進的に調節する。ある態様では、当該一次シグナルは、例えば、TCR/CD3複合体が、ペプチドを担持したMHC分子と結合することに端を発し、そして、このことが、T細胞応答の媒介につながるのであり、同T細胞応答として、増殖、活性化、分化などがあるが、これらに限定されない。促進的に作用する一次細胞質シグナル伝達配列(別名、「一次シグナル伝達ドメイン」)は、免疫受容体チロシン活性化モチーフ、または、「ITAM」として知られているシグナル伝達モチーフを含み得る。本発明において特に有用な一次細胞質シグナル伝達配列を含むITAMの例として、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278(別名、「ICOS」)、及び、CD66d由来のものがあるが、これらに限定されない。
【0103】
用語「抗原提示細胞」または「APC」は、その表面の主要組織適合複合体(MHC)で複合化された外来抗原を提示するアクセサリー細胞(例えば、B細胞、樹状細胞など)などの免疫系細胞のことを指す。T細胞は、それらのT細胞受容体(TCR)を用いて、これらの複合体を認識する。APCは、抗原を加工し、そして、それらをT細胞に提示する。
【0104】
本明細書で用いる用語、「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、分子の細胞内部分のことを指す。当該細胞内シグナル伝達ドメインは、TFP含有細胞、例えば、TFP発現T細胞の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを生成する。例えば、TFP発現T細胞における免疫エフェクター機能の例として、細胞溶解活性、及び、サイトカインの分泌を含めたTヘルパー細胞活性がある。実施形態では、当該細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞内シグナル伝達ドメインを含むことができる。例示的な一次細胞内シグナル伝達ドメインとして、一次刺激、または、抗原依存性刺激に関与する分子に由来するものがある。実施形態では、当該細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激細胞内ドメインを含むことができる。例示的な共刺激細胞内シグナル伝達ドメインとして、共刺激シグナル、または、抗原非依存性刺激に関与する分子に由来するものがある。
【0105】
一次細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAM(「免疫受容体チロシン活性化モチーフ」)を含むことができる。ITAMを含む一次細胞質シグナル伝達配列の例として、CD3ゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及び、CD66d DAP10、及び、DAP12由来のものがあるが、これらに限定されない。
【0106】
用語「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、例えば、T細胞による共刺激反応を媒介する、T細胞での同族結合パートナーのことを指すものであって、同共刺激反応として、増殖があるが、これに限定されない。共刺激分子は、効率的な免疫反応に必要とされる、抗原受容体またはそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子として、MHCクラス1分子、BTLA、及び、Tollリガンド受容体、ならびに、DAP10、DAP12、CD30、LIGHT、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、及び、4-1BB(CD137)があるが、これらに限定されない。共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内部分とすることができる。共刺激分子は、以下のタンパク質ファミリー:TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、及び、活性化NK細胞受容体で表すことができる。かような分子の例として、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、及び、CD83に特異的に結合するリガンドなどがある。当該細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来する分子の細胞内部分全体、または、天然細胞内全体のシグナル伝達ドメイン、または、それらの機能的断片を含むことができる。用語「4-1BB」は、GenBank受託番号第AAA62478.2号が付与されたアミノ酸配列、または、非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、類人猿などに由来する同等の残基のTNFRスーパーファミリーのメンバーのことを指し、また、「4-1BB共刺激ドメイン」は、GenBank受託番号第AAA62478.2号のアミノ酸残基214~255、または、非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、類人猿などに由来する同等の残基として定義される。
【0107】
用語「コードする」は、定義したヌクレオチド配列(例えば、rRNA、tRNA、及び、mRNA)、または、定義したアミノ酸配列、及び、それに起因する生物学的特性のいずれかを有する生物学的プロセスにおけるその他のポリマー及び高分子の合成のための鋳型の役割を果たす、遺伝子、cDNA、または、mRNAなどのポリヌクレオチドでのヌクレオチドの特定の配列の固有の特性のことを指す。したがって、遺伝子、cDNA、または、RNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が、細胞またはその他の生体系にて当該タンパク質を産生する場合には、タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列が、mRNA配列と同一であり、通常は配列表に示されているコード鎖と、遺伝子、または、cDNAの転写の鋳型として用いられる非コード鎖との双方が、当該タンパク質、または、それらの遺伝子、または、cDNAの他の産物をコードしている、と見なすことができる。
【0108】
特に断りのない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いに縮重した型であり、そして、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という成句は、当該タンパク質をコードする当該ヌクレオチド配列が、幾つかのバージョンにおいて、1つ以上のイントロンを含む場合があるという程度まで、イントロンを含み得る。
【0109】
用語「有効量」または「治療有効量」は、本明細書では互換可能に用いられており、また、特定の生物学的または治療上の効果を達成するのに有効である、本明細書に記載した化合物、製剤、材料、または、組成物の量のことを指す。
【0110】
用語「内因性」は、生物、細胞、組織、または、系由来の、または、その内部で産生されるあらゆる材料のことを指す。
【0111】
用語「外因性」は、生物、細胞、組織、または、系から導入される、または、その外部で産生されるあらゆる材料のことを指す。
【0112】
用語「発現」は、プロモーターによって駆動する特定のヌクレオチド配列の転写、及び/または、翻訳のことを指す。
【0113】
用語「転移ベクター」は、単離した核酸を含み、当該単離した核酸を細胞の内部に送達するために用いることができる組成物のことを指す。線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物に会合したポリヌクレオチド、プラスミド、及び、ウイルスがあるが、これらに限定されることなく、数多くのベクターが当該技術分野では公知である。したがって、用語「転移ベクター」は、自己複製プラスミドまたはウイルスを含む。さらに、この用語は、細胞内への核酸の転移を容易にする非プラスミド及び非ウイルス性化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソーム等を含むとも解釈される。ウイルス性転移ベクターの例として、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどがあるが、これらに限定されない。
【0114】
用語「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に作動可能に連結した発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターのことを指す。発現ベクターは、発現のために十分なシスエレメントを含み、発現用のその他の要素は、宿主細胞によって、または、インビトロ発現系で供給され得る。発現ベクターとして、組換えポリヌクレオチドを組み込んだコスミド、プラスミド(例えば、裸の、または、リポソームに含まれるもの)、及び、ウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及び、アデノ随伴ウイルス)を含めて、当該技術分野で公知のすべてのものがある。
【0115】
用語「レンチウイルス」は、レトロウイルス科の属のことを指す。レンチウイルスは、レトロウイルスの中でも、非分裂細胞に感染することができるという点で独特である。レンチウイルスは、宿主細胞のDNAに大量の遺伝情報を送達することができるため、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIV、及び、FIVは、すべてレンチウイルスの例である。
【0116】
用語「レンチウイルスベクター」は、特に、Milone et al., Mol.Ther.17(8):1453-1464(2009)に示される自己不活性化レンチウイルスベクターを含めたレンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来するベクターのことを指す。臨床で使用され得るレンチウイルスベクターの他の例として、例えば、Oxford BioMedicaのLENTIVECTOR(商標)遺伝子送達技術、LentigenのLENTIMAX(商標)ベクターシステムなどがあるが、これらに限定されない。非臨床型のレンチウイルスベクターもまた利用可能であり、当業者に公知である。
【0117】
用語「相同」または「同一性」は、2つのポリマー分子間、例えば、2つのDNA分子、または、2つのRNA分子などの2つの核酸分子間、または、2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の同一性のことを指す。当該2つの分子の双方のサブユニット部分が同じモノマーサブユニットで占められている場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンで占められている場合、それらは、その位置で相同または同一である。2配列間の相同性は、一致位置または相同位置の数の一次関数であり、例えば、2つの配列の位置の半分(例えば、長さ10サブユニットのポリマーでの5つの位置)が相同である場合、当該2つの配列は、50%相同であり、位置の90%(例えば、10のうちの9)が、一致または相同の場合、当該2つの配列は、90%相同である。
【0118】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、最小限の非ヒト免疫グロブリン由来の配列を有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または、それらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、または、抗体のその他の抗原結合サブ配列)である。ほとんどの部分は、ヒト化抗体及びその抗体断片は、ヒト免疫グロブリン(レシピエントの抗体または抗体断片)であって、当該レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基は、所望の特異性、親和性、及び、能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置き換えられる。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられている。さらに、ヒト化抗体/抗体断片は、レシピエントの抗体にも、取り込まれたCDRやフレームワーク配列にも認められない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体または抗体断片の性能をさらに洗練及び最適化することができる。一般に、当該ヒト化抗体またはその抗体断片は、少なくとも1つ、及び、通常は2つの可変ドメインを実質的にすべて含み、すべての、または、実質的にすべてのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域のすべて、または、かなりの部分が、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体または抗体断片は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、一般的には、ヒト免疫グロブリンの少なくとも一部も含み得る。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature,321:522-525,1986;Reichmann et al.,Nature,332:323-329,1988;Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596,1992を参照されたい。
【0119】
「ヒト」または「完全ヒト」は、抗体または抗体断片などの免疫グロブリンであって、分子全体が、ヒト由来のものであるか、または、当該抗体または免疫グロブリンのヒト型に対して同一のアミノ酸配列からなるものを指す。
【0120】
用語「単離した」は、自然状態から改変または除去した、ことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは、「単離した」ものではないが、その自然状態の共存物質から部分的に、または、完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離した」ものである。単離した核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形で存在することも、例えば、宿主細胞などの非天然環境に存在することもできる。
【0121】
本発明にあっては、一般的に存在する核酸塩基について以下の略語を使用する。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、そして、「U」はウリジンを指す。
【0122】
用語「作動可能に連結した」または「転写制御」は、調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結のことを指し、後者の発現をもたらす。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係に置かれる場合、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と作動可能に連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、当該プロモーターは、コード配列に作動可能に連結している。作動可能に連結したDNA配列は、互いに隣接することができ、例えば、2つのタンパク質のコード領域を結合するために必要な場合、同じリーディングフレーム内にある。
【0123】
免疫原性組成物の「非経口」投与という用語は、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、または、胸骨内注射、腫瘍内、または、注入技術を含む。
【0124】
用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖形態のいずれかのデオキシリボ核酸(DNA)、または、リボ核酸(RNA)、及び、それらのポリマーのことを指す。特に制限されていない限り、当該用語は、参照の核酸と同様の結合特性を有し、そして、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される、天然のヌクレオチドの公知の類似体を含む核酸を含む。特に断りがない限り、特定の核酸配列は、明確に示された配列だけでなく、暗黙的に、保存的に修飾されたその変異体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び、相補的配列も含む。特に、縮重コドン置換は、1つ以上の選択した(または、すべての)コドンの3番目の位置が、混合塩基、及び/または、デオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);及び、Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes8:91-98(1994))。
【0125】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び、「タンパク質」は、互換可能に用いられており、そして、ペプチド結合で共有結合されたアミノ酸残基からなる化合物のことを指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなくてはならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成することができるアミノ酸の最大数に制限は無い。ポリペプチドには、ペプチド結合で互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含むあらゆるペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書で使用した当該用語は、当該技術分野で一般的には、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、及び、オリゴマーと呼ばれている短鎖、及び、当該技術分野で一般的には、タンパク質と呼ばれ、数多くのタイプがある長鎖の双方のことを指す。「ポリペプチド」には、例えば、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、変性ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質などが含まれる。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、または、それらの組合せを含む。
【0126】
用語「プロモーター」は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始するのに必要な、細胞の転写機構、または、導入がされた合成機構によって認識されるDNA配列のことを指す。
【0127】
用語「プロモーター/調節配列」は、当該プロモーター/調節配列に作動可能に連結した遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列のことを指す。幾つかの例では、この配列は、コアプロモーター配列の場合があり、そして、その他の例では、この配列は、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列、及び、その他の調節エレメントも含み得る。当該プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現するものとし得る。
【0128】
用語「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結した場合に、当該細胞のほとんど、または、すべての生理学的条件下で、細胞内に当該遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列のことを指す。
【0129】
用語「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結した場合に、当該プロモーターに対応する誘導因子が当該細胞に存在する場合に実質的に唯一、細胞内に遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列のことを指す。
【0130】
用語「組織特異的」プロモーターは、遺伝子によってコードまたは特定されるポリヌクレオチドと作動可能に連結した場合に、当該細胞が当該プロモーターに対応する組織型の細胞の場合に実質的に唯一、細胞内に遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列のことを指す。
【0131】
scFvとの関連で用いられる用語「リンカー」及び「可動性ポリペプチドリンカー」は、単独で、または、組み合わせて用いて、可変重鎖及び可変軽鎖領域を連結するグリシン、及び/または、セリン残基などのアミノ酸からなるペプチドリンカーのことを指す。ある実施形態では、当該該可動性ポリペプチドリンカーは、Gly/Serリンカーであり、アミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Ser)を含み、式中、nは1以上の正の整数である。例えば、n=1、n=2、n=3、n=4、n=5、n=6、n=7、n=8、n=9、及び、n=10。ある実施形態では、当該可動性ポリペプチドリンカーは、(GlySer)または(GlySer)を含むが、これらに限定されない。別の実施形態では、当該リンカーは、(GlySer)、(GlySer)、または(GlySer)の多重反復を含む。同様に、本発明の範囲は、(参照により本明細書に援用する)WO2012/138475に記載のリンカーを含む。幾つかの例では、当該リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。幾つかの例では、当該長いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=2~4である。幾つかの例では、当該リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。幾つかの例では、当該短いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=1~3である。
【0132】
本明細書で使用する5’キャップ(別名、RNAキャップ、RNA7-メチルグアノシンキャップ、または、RNA m7Gキャップ)は、転写開始の直後に真核生物のメッセンジャーRNAの「フロント」または5’末端に付加した修飾グアニンヌクレオチドである。当該5’キャップは、最初に転写したヌクレオチドに連結される末端基からなる。その存在は、リボソームによる認識、及び、RNアーゼからの保護に不可欠である。キャップの付加は、転写と対になっており、各々が他方に影響を与えるように同時転写的に起こる。転写開始の直後、合成されているmRNAの5’末端は、RNAポリメラーゼと会合したキャップ合成複合体で結合される。この酵素複合体は、mRNAのキャッピングに必要とされる化学反応を触媒する。合成は、多段階の生化学反応として進行する。当該キャッピング部分は、mRNAの機能、例えば、その安定性や翻訳効率を調節するために修飾することができる。
【0133】
本明細書で使用する、「インビトロで転写したRNA」は、インビトロで合成したRNA、好ましくは、mRNAのことを指す。一般的に、当該インビトロで転写したRNAは、インビトロ転写ベクターから生成される。当該インビトロ転写ベクターは、当該インビトロで転写したRNAを生成するために用いられる鋳型を含む。
【0134】
本明細書で使用する、「ポリ(A)」は、ポリアデニル化によってmRNAに結合した一連のアデノシンである。一過性発現のための構築物の好ましい実施形態では、当該ポリAは、50~5000、好ましくは、64を超え、より好ましくは、100を超え、最も好ましくは、300または400を超える。ポリ(A)配列は、局在化、安定性、または、翻訳効率などのmRNAの機能を調節するために、化学的または酵素的に修飾することができる。
【0135】
本明細書で使用する、「ポリアデニル化」は、メッセンジャーRNA分子に対するポリアデニリル部分、または、その修飾変異体の共有結合のことを指す。真核生物では、ほとんどのメッセンジャーRNA(mRNA)分子は、3’末端でポリアデニル化される。当該3’ポリ(A)尾部は、酵素、ポリアデニル酸ポリメラーゼの作用を介して、プレmRNAに付加された長い配列のアデニンヌクレオチド(多くの場合、数百)である。高等真核生物では、当該ポリ(A)尾部は、特定の配列、すなわち、ポリアデニル化シグナルを含む転写産物に付加される。当該ポリ(A)尾部、及び、それに結合したタンパク質は、エキソヌクレアーゼによる分解からmRNAを保護するのに役立つ。また、ポリアデニル化は、転写の終結、核からのmRNAの取り出し、及び、翻訳にとっても重要である。ポリアデニル化は、DNAのRNAへの転写の直後に核内で起こるが、後に細胞質内でもさらに起こり得る。転写が終結した後、当該mRNA鎖は、RNAポリメラーゼと会合したエンドヌクレアーゼ複合体の作用を介して切断される。当該切断部位は、通常、当該切断部位近傍の塩基配列AAUAAAの存在を特徴とする。当該mRNAが切断された後、アデノシン残基が当該切断部位の遊離3’末端に付加される。
【0136】
本明細書で使用する、「一過性」は、融合していない導入遺伝子の数時間、数日間、または、数週間の発現のことを指し、この場合、発現の期間は、当該遺伝子がゲノムに融合された場合、または、宿主細胞の安定なプラスミドレプリコン内に含まれた場合の発現期間よりも短い。
【0137】
用語「シグナル伝達経路」は、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達に関与する様々なシグナル伝達分子間の生化学的関係のことを指す。成句「細胞表面受容体」は、シグナルを受け取り、細胞膜を越えてシグナルを伝達することが可能な分子及び分子の複合体を含む。
【0138】
用語「対象」は、免疫反応が誘発され得る生物(例えば、哺乳動物、ヒト)を含むことを意図している。
【0139】
用語「実質的に精製した」細胞は、その他の細胞型を本質的に含まない細胞のことを指す。また、実質的に精製した細胞は、それらが天然に存在する状態では通常会合しているその他の細胞型から分離された細胞のことも指す。幾つかの例では、実質的に精製した細胞の集団は、均質な細胞の集団のことを指す。その他の例では、この用語は、単に、それらの天然の状態では自然に会合している細胞から分離された細胞のことを指す。幾つかの態様において、当該細胞は、インビトロで培養される。他の態様において、当該細胞は、インビトロでは培養されない。
【0140】
本明細書で使用する、用語「治療的」は、処置のことを意味する。治療効果は、病状の軽減、抑制、寛解、または、根絶によって得られる。
【0141】
本明細書で使用する、用語「予防」は、疾患または病状に対する予防または保護的処置のことを意味する。
【0142】
本発明にあっては、「腫瘍抗原」、または、「過剰増殖性疾患抗原」、または、「過剰増殖性疾患に関連する抗原」は、特定の過剰増殖性疾患に共通の抗原のことを指す。特定の態様において、本発明の当該過剰増殖性疾患抗原は、がんに由来するものであり、当該がんとして、原発性または転移性黒色腫、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸癌、子宮頸癌、脳腫瘍、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、子宮内膜癌、及び、胃癌があるが、これらに限定されない。
【0143】
幾つかの例において、当該疾患は、中皮腫、乳頭状漿液性卵巣腺癌、明細胞卵巣癌、混合型ミュラー管卵巣癌、子宮内膜粘液性卵巣癌、悪性胸膜疾患、膵臓腺癌、膵管腺癌、子宮漿液性癌、肺腺癌、肝外胆管癌、胃癌、食道腺癌、大腸腺癌、乳腺癌、メソテリン発現に関連する疾患、及び、それらの組合せ、メソテリン発現に関連する疾患、及び、それらの組合せからなる群から選択されるがんである。
【0144】
用語「トランスフェクトした」、または、「形質転換した」、または「形質導入した」は、外因性核酸を、宿主細胞に移入または導入する過程のことを指す。「トランスフェクトした」、または、「形質転換した」、または「形質導入した」細胞は、外因性の核酸でトランスフェクトした、形質転換した、または、形質導入したものである。当該細胞は、初代の対象細胞と、その後代とを含む。
【0145】
用語「特異的に結合する」は、試料に含まれる同族結合パートナー(例えば、メソテリン)を認識し、これには結合するが、当該試料でのその他の分子を必ずしも実質的に認識せず、それらに結合しない、抗体、抗体断片、または、特定のリガンドのことを指す。
【0146】
範囲:本開示を通して、本発明の様々な態様は、範囲の形式で示され得る。範囲の形式での説明は、単に便宜のため、及び、簡略して表現するためであることが理解されるものとし、本発明の範囲に対する厳格な制限と解釈されるものとはしない。したがって、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値だけでなく、具体的に開示されるすべての可能な部分的な範囲を有するものと見なす。例えば、1~6等の範囲の表記は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのように具体的に開示される部分的な範囲、そして、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び、6を有すると見なすものとする。別の例として、95~99%同一などの範囲は、95%、96%、97%、98%、または、99%が同一のものを含み、かつ、96~99%、96~98%、96~97%、97~99%、97~98%、及び、98~99%が同一であるなどの部分的な範囲を含む。このことは、当該範囲の幅にかかわらず適用する。
【0147】
説明
本明細書では、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質を用いた、がんなどの疾患の処置のための組成物及び使用方法を提供する。本明細書で使用する、「T細胞受容体(TCR)融合タンパク質」または「TFP」は、当該TCRを含む様々なポリペプチド由来の組換えポリペプチドを含み、同TCRは、一般的に、i)標的細胞での表面抗原に結合すること、及び、ii)一般的には、T細胞内、または、その表面で、同一の場所に配置された場合に、インタクトなTCR複合体の他のポリペプチド成分と相互作用することができる。本明細書で提供するように、TFPは、キメラ抗原受容体と比較して、かなりの利点をもたらす。用語「キメラ抗原受容体」または代替的に「CAR」は、scFvの形態の細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、以下に定義する刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメイン(本明細書では「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも称する)を含む組換えポリペプチドのことを指す。一般的に、CARの中心細胞内シグナル伝達ドメインは、通常、TCR複合体と会合して認められるCD3ゼータ鎖由来である。当該CD3ゼータシグナル伝達ドメインは、4-1BB(すなわち、CD137)、CD27、及び/または、CD28などの少なくとも1つの共刺激分子由来の1つ以上の機能的シグナル伝達ドメインと融合することができる。
【0148】
T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)
本発明は、TFPをコードする組換えDNA構築物であって、当該TFPが、メソテリン、例えば、ヒトメソテリンに特異的に結合する抗体断片を含み、当該抗体断片の配列が、TCRサブユニットまたはその一部をコードする核酸配列と隣接し、かつ、それと同じリーディングフレーム内にある構築物を含む。本明細書で提供するTFPは、1つ以上の内因性(または、代替的に、1つ以上の外因性、または、内因性及び外因性の組合せの)TCRサブユニットと会合して、機能的TCR複合体を形成することができる。
【0149】
ある態様では、本発明のTFPは、標的特異的結合因子、別名、抗原結合ドメインを含む。部分の選択は、標的細胞の表面を決定する標的抗原の型と数によって変化する。例えば、当該抗原結合ドメインは、特定の病状と関連する標的細胞の細胞表面マーカーとして作用する標的抗原を認識するために選択され得る。したがって、本発明のTFPにおける抗原結合ドメインに対して標的抗原の役割を果たし得る細胞表面マーカーの例として、ウイルス、細菌、及び、寄生虫感染症、自己免疫疾患、そして、がん性疾患(例えば、悪性疾患)に関連するものがある。
【0150】
ある態様では、当該TFP媒介T細胞応答は、所望の抗原に特異的に結合するTFPに抗原結合ドメインを組み込む方法によって、目的の抗原に向かわせることができる。
【0151】
ある態様では、当該抗原結合ドメインを含むTFPの部分は、メソテリンを標的とする抗原結合ドメインを含む。ある態様では、当該抗原結合ドメインは、ヒトメソテリンを標的とする。
【0152】
当該抗原結合ドメインは、抗原に結合することができるあらゆるドメインであることができ、同抗原として、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、及び、それらの機能的断片があるが、これらに限定されず、単一ドメイン抗体、例えば、重鎖可変ドメイン(V)、軽鎖可変ドメイン(V)、及び、ラクダ科由来ナノボディの可変ドメイン(VHH)、そして、当該技術分野で抗原結合ドメインとして機能することが公知の代替骨格、例えば、組換えフィブロネクチンドメイン、アンチカリン、DARPINなどがあるが、これらに限定されない。同様に、当該標的抗原を特異的に認識し、そして、そこに結合する天然または合成リガンドを、当該TFPに対する抗原結合ドメインとして使用し得る。幾つかの例では、当該抗原結合ドメインを、当該TFPが最終的に用いられるのと同じ種由来とすることが有益である。例えば、ヒトでの使用については、当該TFPの抗原結合ドメインが、抗体または抗体断片の抗原結合ドメインに対して、ヒトまたはヒト化残基を含むことが有益であり得る。
【0153】
したがって、ある態様では、当該抗原結合ドメインは、ヒト化またはヒト抗体、または、抗体断片、または、マウス抗体もしくは抗体断片を含む。ある実施形態では、当該ヒト化もしくはヒト抗メソテリン結合ドメインは、本明細書に記載したヒト化またはヒト抗メソテリン結合ドメインの軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、及び、軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)の1つ以上(例えば、3つすべて)、及び/または、本明細書に記載したヒト化またはヒト抗メソテリン結合ドメインの重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、及び、重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)の1つ以上(例えば、3つすべて)を含み、例えば、ヒト化またはヒト抗メソテリン結合ドメインは、1つ以上、例えば、3つすべてのLC CDRと、1つ以上、例えば、3つすべてのHC CDRと、を含む。ある実施形態では、当該ヒト化またはヒト抗メソテリン結合ドメインは、本明細書に記載したヒト化もしくはヒト抗メソテリン結合ドメインの重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、及び、重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)の1つ以上(例えば、3つすべて)を含み、例えば、当該ヒト化もしくはヒト抗メソテリン結合ドメインは、それぞれが、本明細書に記載したHC CDR1、HC CDR2、及び、HC CDR3を含む2つの可変重鎖領域を有する。ある実施形態では、当該ヒト化またはヒト抗メソテリン結合ドメインは、本明細書に記載したヒト化またはヒト軽鎖可変領域、及び/または、本明細書に記載したヒト化またはヒト重鎖可変領域を含む。ある実施形態では、当該ヒト化またはヒト抗メソテリン結合ドメインは、本明細書に記載したヒト化重鎖可変領域、例えば、本明細書に記載した少なくとも2つのヒト化またはヒト重鎖可変領域を含む。ある実施形態では、当該抗メソテリン結合ドメインは、本明細書で提供するアミノ酸配列の軽鎖及び重鎖を含むscFvである。ある実施形態では、当該抗メソテリン結合ドメイン(例えば、scFv)は、本明細書で提供する軽鎖可変領域のアミノ酸配列に少なくとも1つ、2つ、もしくは3つの修飾(例えば、置換)、最大で30、20、または、10個までの修飾(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または、本明細書で提供するアミノ酸配列に対して95~99%の同一性がある配列を含む軽鎖可変領域、及び/または、本明細書で提供する重鎖可変領域のアミノ酸配列に少なくとも1つ、2つ、もしくは3つの修飾(例えば、置換)、最大で30、20、または、10個までの修飾(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または、本明細書で提供するアミノ酸配列に対して95~99%の同一性がある配列を含む重鎖可変領域を含む。ある実施形態では、当該ヒト化またはヒト抗メソテリン結合ドメインは、scFvであり、また、本明細書に記載したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域は、リンカー、例えば、本明細書に記載したリンカーを介して、本明細書に記載したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域に取り付ける。ある実施形態では、当該ヒト化抗メソテリン結合ドメインは、(Gly-Ser)リンカーを含み、式中、nは、1、2、3、4、5、または、6であり、好ましくは、3または4である。scFvの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、例えば、以下の配向:軽鎖可変領域-リンカー-重鎖可変領域、または、重鎖可変領域-リンカー-軽鎖可変領域のいずれともし得る。幾つかの例では、当該リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。幾つかの例では、当該長いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=2~4である。幾つかの例では、当該リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。幾つかの例では、当該短いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=1~3である。
【0154】
幾つかの態様では、非ヒト抗体は、ヒト化され、そこで当該抗体の特定の配列または領域は、ヒトにおいて自然に産生される抗体またはその断片との類似性を増すように修飾される。ある態様では、当該抗原結合ドメインは、ヒト化される。
【0155】
ヒト化抗体は、当該技術分野で公知の様々な技術を用いて産生することができ、同技術として、CDR移植(例えば、それらの全内容を参照により本明細書に援用する、欧州特許第EP239,400号、国際公開第WO91/09967号、及び、米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、及び、同第5,585,089号を参照されたい)、ベニアリングまたはリサーフェーシング(例えば、それらの全内容を参照により本明細書に援用する、欧州特許第EP592,106号、及び、同第EP519,596号、Padlan,1991,Molecular Immunology,28(4/5):489-498、Studnicka et al.,1994,Protein Engineering,7(6):805-814、及び、Roguska et al.,1994,PNAS,91:969-973を参照されたい)、鎖シャフリング(例えば、その全内容を参照により本明細書に援用する、米国特許第5,565,332号を参照されたい)、及び、例えば、それらの全内容を参照により本明細書に援用する、米国特許出願公開第US2005/0042664号、米国特許出願公開第US2005/0048617号、米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、国際公開第WO9317105号、Tan et al.,J.Immunol.,169:1119-25(2002),Caldas et al.,Protein Eng.,13(5):353-60(2000),Morea et al.,Methods,20(3):267-79(2000),Baca et al.,J.Biol.Chem.,272(16):10678-84(1997),Roguska et al.,Protein Eng.,9(10):895-904(1996),Couto et al.,Cancer Res.,55(23 Supp):5973s-5977s(1995),Couto et al.,Cancer Res.,55(8):1717-22(1995),Sandhu J S,Gene,150(2):409-10(1994),及び、Pedersen et al.,J.Mol.Biol.,235(3):959-73(1994)に開示された教示などがあるが、これらに限定されない。多くの場合、フレームワーク領域内のフレームワーク残基を、CDRドナー抗体由来の対応する残基で置換して、抗原結合を、変更、例えば、改善する。これらのフレームワーク置換は、当該技術分野で周知の方法によって同定されるものであり、例えば、当該CDRとフレームワーク残基との相互作用をモデル化して、抗原結合及び配列比較に重要なフレームワーク残基を特定して、特定の位置で他とは異なるフレームワーク残基を特定する(例えば、それらの全内容を参照により本明細書に援用する、Queen et al.,米国特許第5,585,089号、及び、Riechmann et al.,1988,Nature,332:323を参照されたい)。
【0156】
ヒト化抗体または抗体断片は、非ヒトを起源とするものに残存する1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、「取り込み」残基と呼ばれており、これらは、一般的に、「取り込み」可変ドメインから取り出される。本明細書で提供するように、ヒト化抗体または抗体断片は、非ヒト免疫グロブリン分子及びフレームワーク領域に由来する1つ以上のCDRを含み、当該フレームワークを構成するアミノ酸残基は、完全に、または、大部分がヒト生殖細胞系由来である。抗体または抗体断片のヒト化に対する数多くの技術は、当該技術分野で周知であり、また、Winterと共同研究者らの方法(Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Riechmann et al., Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536(1988))に従って、齧歯類のCDRまたはCDR配列を、対応する配列のヒト抗体の代わりに用いることで、すなわち、CDR移植(それらの全内容を参照により本明細書に援用する、欧州特許第EP239,400号、PCT公開第WO91/09967号、及び、米国特許第4,816,567号、同第6,331,415号、同第5,225,539号、同第5,530,101号、同第5,585,089号、同第6,548,640号)で、基本的に行うことができる。かかるヒト化抗体及び抗体断片において、非ヒト種由来の対応する配列による置換は、インタクトなヒト可変ドメインよりかなり少ない。ヒト化抗体は、多くの場合、幾つかのCDR残基、及び、場合により幾つかのフレームワーク(FR)残基が、齧歯類抗体における類似部位由来の残基によって置換されるヒト抗体である。抗体及び抗体断片のヒト化は、ベニアリングまたはリサーフェーシング(欧州特許第EP592,106号、同第EP519,596号、Padlan,1991,Molecular Immunology,28(4/5):489-498;Studnicka et al.,Protein Engineering,7(6):805-814(1994);及び、Roguska et al.,PNAS,91:969-973(1994))、または、鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)でも達成することができ、これらの内容は全体が、参照により本明細書に援用する。
【0157】
当該ヒト化抗体の作製に用いる軽及び重の双方のヒト可変ドメインを選ぶことは、抗原性を減らすことである。いわゆる「最良適合」法では、齧歯類抗体の当該可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングする。齧歯類のものに最も近い当該ヒト配列は、次に、当該ヒト化抗体用のヒトフレームワーク(FR)として認められる(それらの全内容を参照により本明細書に援用する、Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993);Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987))。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定の亜群のすべてのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを用いる。同じフレームワークを、幾つかの異なるヒト化抗体に用いる場合がある(例えば、それらの全内容を参照により本明細書に援用する、Nicholson et al.Mol.Immun.34(16-17):1157-1165(1997);Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい)。幾つかの実施形態では、当該フレームワーク領域、例えば、重鎖可変領域の4つのすべてのフレームワーク領域は、V4-4-59生殖細胞系列配列に由来する。ある実施形態では、当該フレームワーク領域は、例えば、対応するマウス配列でのアミノ酸から、1つ、2つ、3つ、4つ、または、5つの修飾、例えば、置換を含むことができる。ある実施形態では、当該フレームワーク領域、例えば、当該軽鎖可変領域の4つのすべてのフレームワーク領域は、VK3-1.25生殖細胞系列配列に由来する。ある実施形態では、当該フレームワーク領域は、例えば、対応するマウス配列でのアミノ酸から、1つ、2つ、3つ、4つ、または、5つの修飾、例えば、置換を含むことができる。
【0158】
幾つかの態様において、抗体断片を含む本発明のTFP組成物の部分は、標的抗原に対する高い親和性、及び、その他の有益な生物学的特性を保持しながらヒト化される。本発明のある態様によれば、ヒト化抗体及び抗体断片は、当該親配列、及び、ヒト化配列の3次元モデルを用いて、当該親配列、及び、様々な概念的ヒト化産物の分析過程によって調製される。3次元免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者に周知のものである。コンピュータープログラムが利用可能であり、これは、選択した候補の免疫グロブリン配列の推定される3次元立体配座構造を説明及び表示する。これらの表示の検査は、候補の免疫グロブリン配列の機能性における当該残基の可能性のある役割の分析、例えば、当該候補の免疫グロブリンの標的抗原を結合する能力に影響を与える残基の分析を可能にする。このように、FR残基は、所望の抗体または抗体断片の特性、例えば、標的抗原に対する親和性の増加が達成されるように、当該レシピエント及び取り込み配列から選択ならびに組み合わせることができる。一般的に、当該CDR残基は、抗原結合への影響に対して、直接に、及び、最も実質的に関与している。
【0159】
ヒト化抗体または抗体断片は、元の抗体と同様の抗原特異性、例えば、本発明では、ヒトメソテリンに対する結合能を保持し得る。幾つかの実施形態では、ヒト化抗体または抗体断片では、ヒトメソテリンに対する結合の親和性、及び/または、特異性が向上する場合がある。
【0160】
ある態様では、当該抗メソテリン結合ドメインは、抗体または抗体断片の特定の機能的特徴または特性によって特徴づけられる。例えば、ある態様では、抗原結合ドメインを含む本発明のTFP組成物の部分は、ヒトメソテリンに特異的に結合する。ある態様では、当該抗原結合ドメインは、Nicholson et al.Mol.Immun.34(16-17):1157-1165(1997)に記載のFMC63 scFvと同じ、または、同様のヒトメソテリンに対する結合特異性を有する。ある態様では、本発明は、抗体または抗体断片を含む抗原結合ドメインに関し、当該抗体結合ドメインは、メソテリンタンパク質、または、その断片に特異的に結合し、当該抗体または抗体断片は、本明細書で提供したアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び/または、可変重鎖を含む。特定の態様において、当該scFvは、リーダー配列に隣接し、及び、これと同じリーディングフレーム内にある。
【0161】
ある態様では、当該抗メソテリン結合ドメインは、断片、例えば、一本鎖可変断片(scFv)である。ある態様では、当該抗メソテリン結合ドメインは、Fv、Fab、(Fab’)、または、二官能性(例えば、二重特異性)ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al.,Eur.J.Immunol.17,105(1987))である。ある態様では、本明細書に開示した抗体、及び、それらの断片は、野生型または親和性が向上したメソテリンタンパク質に結合する。
【0162】
また、標的抗原(例えば、メソテリン、または、融合部分結合ドメインの標的について本明細書の他の箇所に記載したあらゆる標的抗原)に特異的な抗体抗原結合ドメインを得るための方法であって、本明細書に記載のVドメインのアミノ酸配列での1つ以上のアミノ酸の付加、削除、置換、または、挿入を経て、当該Vドメインのアミノ酸配列変異体であるVドメインを準備し、任意に、このようにして準備したVドメインを1つ以上のVドメインと組合せ、そして、当該Vドメイン、または、V/Vの組合せ、または、複数の組合せを試験して、特定の結合メンバー、または、任意に、1つ以上の所望の特性を有する目的の標的抗原(例えば、メソテリン)に特異的な抗体抗原結合ドメインを特定する、ことを含む方法を本明細書に提供する。
【0163】
幾つかの例では、Vドメイン及びscFvは、当該技術分野で公知の方法にしたがって調製することができる(例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426、及び、Huston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい)。scFv分子は、V及びV領域を、可動性ポリペプチドリンカーを用いて連結させて生成することができる。当該scFv分子は、最適化された長さ、及び/または、アミノ酸組成のリンカー(例えば、Ser-Glyリンカー)を含む。当該リンカーの長さは、scFvの可変領域の折りたたみ方、及び、相互作用の仕方に大きく影響を受ける。実際のところ、短いポリペプチドリンカー(例えば、5~10アミノ酸)が用いられる場合、鎖内の折りたたみは妨げられる。鎖間の折りたたみもまた、当該2つの可変領域を一緒にして機能的エピトープ結合部位を形成するために必要である。幾つかの例では、当該リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。幾つかの例では、当該長いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=2~4である。幾つかの例では、当該リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。幾つかの例では、当該短いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=1~3である。リンカーの配向、及び、大きさの例については、例えば、それらの全内容を参照により本明細書に援用する、Hollinger et al.1993 Proc Natl Acad.Sci.U.S.A.90:6444-6448、米国特許第7,695,936号、米国特許出願公開第20050100543号、同第20050175606号、及び、PCT公開第WO2006/020258号、及び、同第WO2007/024715号を参照されたい。
【0164】
scFvは、そのV及びV領域間に、約10、11、12、13、14、15、または、15個を超える残基のリンカーを含むことができる。当該リンカー配列は、天然に存在するあらゆるアミノ酸を含み得る。幾つかの実施形態では、当該リンカー配列は、アミノ酸のグリシン及びセリンを含む。別の実施形態では、当該リンカー配列は、(GlySer)などのグリシンとセリンの繰り返しの組を含み、式中、nは、1以上の正の整数である。ある実施形態では、当該リンカーは、(GlySer)、または、(GlySer)とし得る。当該リンカーの長さの変動は、活性を保持または向上させる場合があり、活性研究における優れた有効性を生じさせる。幾つかの例では、当該リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。幾つかの例では、当該長いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=2~4である。幾つかの例では、当該リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。幾つかの例では、当該短いリンカー配列は、(GS)を含み、式中、n=1~3である。
【0165】
安定性と突然変異
抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFv分子(例えば、可溶性scFv)の安定性は、従来のコントロールscFv分子または完全長抗体の生物物理学的特性(例えば、熱安定性)に関して評価することができる。ある実施形態では、当該ヒト化またはヒトscFvは、説明をしたアッセイにおいて、親のscFvより、約0.1、約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約1.75、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、または、約15℃超の熱安定性を有する。
【0166】
当該抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvの熱安定性の改良は、続いて、メソテリン構築物全体にもたらされ、当該抗メソテリンTFP構築物の治療特性の改良につながる。当該抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvの熱安定性は、従来の抗体と比較して、少なくとも約2℃または3℃改良することができる。ある実施形態では、当該抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvは、従来の抗体と比較して、1℃改良された熱安定性を有する。別の実施形態では、当該抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvは、従来の抗体と比較して、2℃改良された熱安定性を有する。別の実施形態では、当該scFvは、従来の抗体と比較して、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、または、15℃改良された熱安定性を有する。比較は、例えば、本明細書に開示したscFv分子と、当該scFv V及びVが由来する抗体のscFv分子またはFab断片との間ですることができる。熱安定性は、当該技術分野で公知の方法を用いて測定することができる。例えば、ある実施形態では、Tを測定することができる。Tの測定方法、及び、タンパク質の安定性を決定するその他の方法を、以下に詳述する。
【0167】
scFvの変異(可溶性scFvのヒト化または直接突然変異誘発を介して生じる)は、当該scFvの安定性を変化させ、そして、当該scFv及び当該抗メソテリンTFP構築物の全体的な安定性を改良する。ヒト化scFvの安定性を、T、温度変性、及び、温度凝集などの測定結果を用いて、マウスのscFvに対して比較する。ある実施形態では、当該抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvは、変異したscFvが、当該抗メソテリンTFP構築物に改良された安定性を付与するように、当該ヒト化過程から生じる少なくとも1つの変異を含む。別の実施形態では、当該抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvは、変異したscFvが、当該メソテリンTFP構築物に改良された安定性を付与するように、当該ヒト化過程から生じる少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の変異を含む。
【0168】
ある態様では、当該TFPの抗原結合ドメインは、本明細書に記載した抗原結合ドメインのアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含み、当該抗原結合ドメインは、本明細書に記載した抗メソテリン抗体断片の所望の機能特性を保持する。ある特定の態様では、本発明のTFP組成物は、抗体断片を含む。さらなる態様では、その抗体断片は、scFvを含む。
【0169】
様々な態様では、当該TFPの抗原結合ドメインは、一方または双方の可変領域(例えば、V及び/またはV)内、例えば、1つ以上のCDR領域内、及び/または、1つ以上のフレームワーク領域内の1つ以上のアミノ酸を修飾することで改変される。ある特定の態様では、本発明のTFP組成物は、抗体断片を含む。さらなる態様では、その抗体断片は、scFvを含む。
【0170】
当業者であれば、本発明の抗体または抗体断片が、それらがアミノ酸配列の点で(例えば、野生型とは)異なるが、所望の活性の点では変化しないように、さらに修飾してもよいことを理解する。例えば、「非必須」アミノ酸残基でアミノ酸置換をもたらす、さらなるヌクレオチド置換を、当該タンパク質に行い得る。例えば、分子内の非必須アミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置き換え得る。別の実施形態では、一連のアミノ酸を、側鎖ファミリーのメンバーの順序、及び/または、組成が異なる構造的に同様の一連のもので置き換えることができ、例えば、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる保存的置換を行うことができる。
【0171】
同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び、芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)がある。
【0172】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列における同一性パーセントは、同じである2つ以上の配列のことを指す。2つの配列が、最大一致のために比較ウィンドウで、または、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、または、マニュアルアラインメント、及び、目視による調査で測定される指定された領域で、比較及び整列された場合に、同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドを特定の割合を有するとき、2つの配列は「実質的に同一」である(例えば、特定の領域にわたって、または、特定されていない場合、全配列にわたって、60%が同一である、任意に、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または、99%が同一である)。任意に、当該同一性は、少なくとも長さ約50ヌクレオチド(または、10アミノ酸)の領域にわたって、または、より好ましくは、長さ100~500、または、1000以上のヌクレオチド(または、20、50、200、または、それ以上のアミノ酸)の領域にわたって存在する。
【0173】
配列比較については、一般的には、ある配列が、参照配列の役割を果たし、これに対して、試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列及び参照配列をコンピューターに入力し、必要に応じてサブ配列座標を指定し、そして、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。デフォルトのプログラムパラメーターを用いてもよく、あるいは、別のパラメーターを指定してもよい。当該配列比較アルゴリズムは、次いで、当該プログラムパラメーターに基づいて、当該参照配列に対する当該試験配列の配列同一性率を計算する。比較のための配列のアラインメント方法は、当該技術分野で公知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、局所的相同性アルゴリズムのSmith and Waterman,(1970)Adv.Appl.Math.2:482c、相同性アラインメントアルゴリズムのNeedleman and Wunsch,(1970)J.Mol.Biol.48:443、類似法検索のPearson and Lipman,(1988)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444、これらアルゴリズムのコンピューターによる実施(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.でのGAP、BESTFIT、FASTA、及びmTFASTA)、または、マニュアルアラインメント及び目視による調査(例えば、Brent et al.,(2003)Current Protocols in Molecular Biologyを参照されたい)によって行うことができる。配列同一性及び配列類似性率の測定に適したアルゴリズムの2つの例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al.,(1977)Nuc.Acids Res.25:3389-3402;及び、Altschul et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410に記載されている。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationが公開している。
【0174】
ある態様では、本発明は、機能的に等価な分子を生成する出発抗体または断片(例えば、scFv)のアミノ酸配列の修飾を企図する。例えば、TFPに含まれる抗メソテリン結合ドメインのVまたはV、例えば、scFvは、当該抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvの出発VまたはVフレームワーク領域の少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を保持するように修飾することができる。本発明は、全TFP構築物の修飾、例えば、機能的に等価な分子を生成するための当該TFP構築物の様々なドメインの1つ以上のアミノ酸配列の修飾を企図する。当該TFP構築物は、出発TFP構築物の少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を保持するように修飾することができる。
【0175】
細胞外ドメイン
細胞外ドメインは、天然または組換え起源のいずれかから誘導し得る。当該起源が天然の場合、当該ドメインは、あらゆるタンパク質に由来し得るが、具体的には、膜結合または膜貫通タンパク質以外である。ある態様では、当該細胞外ドメインは、当該膜貫通ドメインと会合することができる。本発明における特定の用途の細胞外ドメインは、例えば、T細胞受容体のアルファ、ベータ、または、ゼータ鎖、または、CD3イプシロン、CD3ガンマ、または、CD3デルタ、または、別の実施形態では、CD28、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の少なくとも細胞外領域(複数可)を含み得る。
【0176】
膜貫通ドメイン
一般に、TFP配列は、単一のゲノム配列がコードする細胞外ドメインと、膜貫通ドメインとを含む。別の実施形態では、TFPは、当該TFPの細胞外ドメインに対して異種の膜貫通ドメインを含むようにデザインすることができる。膜貫通ドメインは、当該膜貫通領域に隣接した1つ以上のさらなるアミノ酸、例えば、当該膜貫通が由来したタンパク質の細胞外領域に会合した1つ以上のアミノ酸(例えば、当該細胞外領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または、15個までのアミノ酸)、及び/または、当該膜貫通タンパク質が由来するタンパク質の細胞内領域と会合した1つ以上のさらなるアミノ酸(例えば、当該細胞内領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または、15個までのアミノ酸)を含むことができる。ある態様では、当該膜貫通ドメインは、使用される当該TFPのその他のドメインの1つと会合しているものである。幾つかの例では、当該膜貫通ドメインは、かかるドメインが、同じ、または、異なる膜表面タンパク質の膜貫通ドメインに結合しないように、例えば、当該受容体複合体のその他のメンバーとの相互作用を最小限にするために、選択、または、アミノ酸置換で修飾することができる。ある態様では、当該膜貫通ドメインは、当該TFP-T細胞表面の別のTFPとホモ二量化することができる。異なる態様では、当該膜貫通ドメインの当該アミノ酸配列を、同じTFPに存在する天然の結合パートナーの結合ドメインとの相互作用を最小にするために、修飾または置換し得る。
【0177】
当該膜貫通ドメインは、天然または組換え起源のいずれかから誘導し得る。当該起源が天然の場合、当該ドメインは、あらゆる膜結合または膜貫通タンパク質由来とし得る。ある態様では、当該膜貫通ドメインは、当該TFPが標的に結合している場合はいつでも、当該細胞内ドメイン(複数可)にシグナル伝達することができる。本発明において、特定の用途の膜貫通ドメインは、例えば、T細胞受容体のアルファ、ベータ、または、ゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の少なくとも膜貫通領域(複数可)を含み得る。
【0178】
幾つかの例では、当該膜貫通ドメインは、当該TFPの細胞外領域、例えば、当該TFPの当該抗原結合ドメインに、ヒンジ、例えば、ヒトタンパク質由来のヒンジを介して結合させることができる。例えば、ある実施形態では、当該ヒンジを、ヒト免疫グロブリン(Ig)ヒンジ、例えば、IgG4ヒンジ、または、CD8aのヒンジとし得る。
【0179】
リンカー
任意に、長さが2~10個のアミノ酸の短いオリゴ、または、ポリペプチドリンカーは、当該TFPの当該膜貫通ドメインと当該細胞質領域間との間に結合を形成し得る。グリシン-セリンダブレットは、特に適切なリンカーを提供する。例えば、ある態様では、当該リンカーは、GGGGSGGGGS(配列番号53)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、当該リンカーは、GGTGGCGGAGGTTCTGGAGGTGGAGGTTCC(配列番号54)のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0180】
細胞質ドメイン
当該TFPの当該細胞質ドメインは、当該TFPが、CD3ガンマ、デルタ、または、イプシロンポリペプチドを含む場合、細胞内シグナル伝達ドメインを含むことができ、すなわち、TCRアルファ及びTCRベータサブユニットは、一般的に、シグナル伝達ドメインを欠いている。細胞内シグナル伝達ドメインは、一般的に、当該TFPが導入されている免疫細胞の少なくとも1つの正常なエフェクター機能の活性化に関与する。用語「エフェクター機能」は、細胞の特殊な機能のことを指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性、または、サイトカインの分泌を含めたヘルパー活性であり得る。したがって、用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、当該エフェクター機能シグナルを伝達し、そして、当該細胞に特殊機能を行うように指示するタンパク質の部分のことを指す。通常は、全細胞内シグナル伝達ドメインを使用することができるが、多くの場合、全鎖を使用する必要はない。当該細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が用いられる限りでは、かかる切断部分は、それがエフェクター機能のシグナルを伝達する限り、インタクトな鎖の代わりに使用し得る。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、したがって、当該エフェクター機能のシグナルを伝達するのに十分な当該細胞内シグナル伝達ドメインのあらゆる切断部分を含めることを意味する。
【0181】
本発明の当該TFPに用いる細胞内シグナル伝達ドメインの例として、同時に作用して、抗原受容体係合後にシグナル伝達を開始するT細胞受容体(TCR)及び共受容体の細胞質配列、ならびに、これらの配列のあらゆる誘導体または変異体、及び、同じ機能を有するあらゆる組換え配列がある。
【0182】
当該TCRだけを介して生成されるシグナルは、ナイーブT細胞の完全な活性化には不十分であること、ならびに、二次、及び/または、共刺激シグナルが必要であることが知られている。したがって、ナイーブT細胞の活性化は、2つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列、すなわち、当該TCRを介して抗原依存性の一次活性化を開始するもの(一次細胞内シグナル伝達ドメイン)、及び、抗原非依存的方法で作用し、二次または共刺激シグナルを与えるもの(二次細胞質ドメイン、例えば、共刺激ドメイン)によって媒介されると言うことができる。
【0183】
一次シグナル伝達ドメインは、促進的方法、または、抑制的方法のいずれかで、当該TCR複合体の一次活性化を調節する。促進的な方法で作用する一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)として知られるシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0184】
本発明において特に有用である一次細胞内シグナル伝達ドメインを含むITAMの例として、CD3ゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及び、CD66dのものがある。ある実施形態では、本発明のTFPは、細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3イプシロンの一次シグナル伝達ドメインを含む。ある実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、変性ITAMドメイン、例えば、天然のITAMドメインと比較して、活性が変化(例えば、増加または減少)している変異ITAMドメインを含む。ある実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、変性ITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、最適化された、及び/または、切断されたITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つ、または、それより多いITAMモチーフを含む。
【0185】
当該TFPの当該細胞内シグナル伝達ドメインは、当該CD3ゼータシグナル伝達ドメインをそれ自体で含むことも、あるいは、本発明のTFPとの関連で有用なその他のあらゆる所望の細胞内シグナル伝達ドメイン(複数可)と組み合わせることもできる。例えば、当該TFPの当該細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3イプシロン鎖部分、及び、共刺激シグナル伝達ドメインを含むことができる。当該共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の当該細胞内ドメインを含む当該TFPの部分のことを指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な反応に必要とされる、抗原受容体、または、そのリガンド以外の細胞表面分子である。そのような分子の例として、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、DAP10、DAP12、CD30、CD40、PD1、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及び、CD83に特異的に結合するリガンドなどがある。例えば、CD27共刺激は、ヒトTFP-T細胞のインビトロでの増殖、エフェクター機能、及び、生存性を高めること、そして、インビボでヒトT細胞の持続性と抗腫瘍活性とを増大させることが実証されている(Song et al. Blood. 2012;119(3):696-706)。
【0186】
本発明の当該TFPの当該細胞質部分内の当該細胞内シグナル伝達配列は、ランダムまたは特定の順序で互いに連結し得る。任意に、例えば、長さが2~10個のアミノ酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または、10個のアミノ酸)の短いオリゴ、または、ポリペプチドリンカーは、細胞内シグナル伝達配列間の結合を形成し得る。
【0187】
ある実施形態では、グリシン-セリンダブレットが適切なリンカーとして使用され得る。ある実施形態では、単一のアミノ酸、例えば、アラニン、グリシンを、適切なリンカーとして使用することができる。
【0188】
ある態様では、本明細書に記載の当該TFP発現細胞は、第2のTFP、例えば、異なる抗原結合ドメイン、例えば、同じ標的(メソテリン)、または、異なる標的(例えば、CD123)に対するものを含む第2のTFPをさらに含むことができる。ある実施形態では、当該TFP発現細胞が2つ以上の異なるTFPを含む場合、当該異なるTFPの当該抗原結合ドメインを、当該抗原結合ドメインが互いに相互作用しないようなものにすることができる。例えば、第1及び第2のTFPを発現する細胞は、第1のTFPの抗原結合ドメインを、例えば、断片、例えば、scFvとして有することができ、これは、当該第2のTFPの当該抗原結合ドメインと会合を形成しないものであり、例えば、当該第2のTFPの当該抗原結合ドメインは、VHHである。
【0189】
別の態様では、本明細書に記載したTFP発現細胞は、別の作用物質、例えば、TFP発現細胞の活性を高める作用物質をさらに発現することができる。例えば、ある実施形態では、当該作用物質は、抑制分子を阻害する作用物質とすることができる。抑制分子、例えば、PD1は、幾つかの実施形態では、TFP発現細胞の免疫エフェクター反応の開始能力を弱めることができる。抑制分子の例としては、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、及び、TGFRベータがある。ある実施形態では、抑制分子を阻害する当該作用物質は、第1のポリペプチド、例えば、ポジティブシグナルを、細胞、例えば、本明細書に記載した細胞内シグナル伝達ドメインに与える第2のポリペプチドに会合した抑制分子を含む。ある実施形態では、当該作用物質は、第1のポリペプチド、例えば、PD1、LAG3、CTLA4、CD160、BTLA、LAIR1、TIM3、2B4、及び、TIGIT、または、これらのあらゆる断片(例えば、これらのいずれかの細胞外ドメインの少なくとも一部)などの抑制分子のもの、及び、本明細書に記載した細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメイン(例えば、4-1BB、CD27、または、CD28、例えば、本明細書に記載したもの)及び/または、一次シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書に記載したCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)を含む)である第2のポリペプチドを含む。ある実施形態では、当該作用物質は、PD1の第1のポリペプチドまたはその断片(例えば、PD1の細胞外ドメインの少なくとも一部)、及び、本明細書に記載した細胞内シグナル伝達ドメインの第2のポリペプチド(例えば、本明細書に記載したCD28シグナル伝達ドメイン、及び/または、本明細書に記載したCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)を含む。PD1は、CD28、CTLA-4、ICOS、及び、BTLAも含む受容体のCD28ファミリーの抑制性メンバーである。PD-1は、活性化B細胞、T細胞、及び、骨髄細胞で発現される(Agata et al.1996 Int.Immunol 8:765-75)。PD1に対する2つのリガンド、すなわち、PD-L1、及び、PD-L2が、PD1への結合時、T細胞の活性化をダウンレギュレートすることが示された(Freeman et al.2000 J Exp Med 192:1027-34;Latchman et al. 2001 Nat Immunol 2:261-8;Carter et al.2002 Eur J Immunol 32:634-43)。PD-L1は、ヒトのがんに豊富に含まれている(Dong et al.2003 J Mol Med 81:281-7;Blank et al.2005 Cancer Immunol. Immunother 54:307-314;Konishi et al.2004 Clin Cancer Res 10:5094)。免疫抑制は、PD1とPD-L1の局所的相互作用を阻害することによって覆され得る。
【0190】
ある実施形態では、当該作用物質は、当該抑制分子の当該細胞外ドメイン(ECD)を含み、例えば、プログラム死1(PD1)は、膜貫通ドメイン、及び、任意に細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、41BB及びCD3ゼータ(本明細書ではPD1 TFPとも称する)と融合することができる。ある実施形態では、当該PD1 TFPは、本明細書に記載した抗メソテリンTFPと組み合わせて使用した場合、T細胞の持続性を改善する。ある実施形態では、当該TFPは、PD1の細胞外ドメインを含むPD1 TFPである。選択的に、例えば、プログラム死リガンド1(PD-L1)またはプログラム死リガンド2(PD-L2)に特異的に結合するscFvなどの抗体または抗体断片を含むTFPを提供する。
【0191】
別の態様では、本発明は、TFP発現T細胞、例えば、TFP-T細胞の集団を提供する。幾つかの実施形態では、TFP発現T細胞の当該集団は、異なるTFPを発現する細胞の混合物を含む。例えば、ある実施形態では、TFP-T細胞の当該集団は、本明細書に記載した抗メソテリン結合ドメインを有するTFPを発現する第1の細胞、及び、異なる抗メソテリン結合ドメイン、例えば、当該第1の細胞によって発現されるTFP内の抗メソテリン結合ドメインとは異なる本明細書に記載した抗メソテリン結合ドメインを有するTFPを発現する第2の細胞含むことができる。別の例として、TFP発現細胞の当該集団は、抗メソテリン結合ドメイン、例えば、本明細書に記載したものを含むTFPを発現する第1の細胞、及び、メソテリン以外の標的(例えば、別の腫瘍関連抗原)に対する抗原結合ドメインを含むTFPを発現する第2の細胞を含むことができる。
【0192】
別の態様では、本発明は、当該集団内の少なくとも1つの細胞が本明細書に記載した抗メソテリンドメインを有するTFPを発現する細胞の集団、及び、別の作用物質、例えば、TFP発現細胞の活性を高める作用物質を発現する第2の細胞を提供する。例えば、ある実施形態では、当該作用物質は、抑制分子を阻害する作用物質とすることができる。抑制分子は、例えば、幾つかの実施形態では、TFP発現細胞の免疫エフェクター反応の開始能力を弱めることができる。抑制分子の例として、PD1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、及び、TGFRベータがある。ある実施形態では、抑制分子を阻害する当該作用物質は、第1のポリペプチド、例えば、ポジティブシグナルを、細胞、例えば、本明細書に記載した細胞内シグナル伝達ドメインに与える第2のポリペプチドに会合した抑制分子を含む。
【0193】
本明細書では、TFPをコードする、インビトロで転写したRNAの生成方法を開示する。また、本発明は、細胞に直接トランスフェクトすることができるTFPをコードするRNA構築物を含む。トランスフェクションに用いるmRNAの生成方法は、特別にデザインしたプライマーを用いた鋳型のインビトロ転写(IVT)に続く、ポリA付加に関与しており、3’及び5’非翻訳配列(「UTR」)、5’キャップ、及び/または、配列内リボソーム進入部位(IRES)、発現される核酸、及び、一般的には、50~2000塩基の長さのポリA尾部を含む、構築物を生成することができる。このようにして生成したRNAは、異なる種類の細胞を効率的にトランスフェクトすることができる。ある態様では、当該鋳型は、当該TFPに対する配列を含む。
【0194】
ある態様では、当該抗メソテリンTFPは、メッセンジャーRNA(mRNA)によってコードされる。ある態様では、当該抗メソテリンTFPをコードするmRNAは、T細胞に導入されて、TFP-T細胞を産生する。ある実施形態では、当該インビトロで転写したRNA TFPは、一過性トランスフェクションとして細胞に導入することができる。当該RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で生成される鋳型を用いたインビトロ転写で生成される。あらゆる供給源に由来する目的のDNAは、PCRによって、インビトロmRNA合成用の鋳型に、適切なプライマー及びRNAポリメラーゼを用いて、直接変換することができる。当該DNAの供給源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列、または、あらゆる他の適切なDNAの供給源とすることができる。インビトロ転写用の当該所望の鋳型は、本発明のTFPである。ある実施形態では、PCRに使用される当該DNAは、オープンリーディングフレームを含む。当該DNAは、生物の当該ゲノムに由来する天然DNA配列由来とすることができる。ある実施形態では、当該核酸は、5’及び/または3’非翻訳領域(UTR)の一部または全部を含むことができる。当該核酸は、エクソン及びイントロンを含むことができる。ある実施形態では、PCRに使用される当該DNAは、ヒト核酸配列である。別の実施形態では、PCRに使用される当該DNAは、5’及び3’UTRを含むヒト核酸配列である。当該DNAは、代替的に、自然界に存在する生物で通常は発現されない人工DNA配列とすることができる。例示的な人工DNA配列は、融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを形成するために一緒に連結する遺伝子の部分を含むものである。一緒に連結するDNAの当該部分は、単一の生物由来、あるいは、複数の生物に由来することができる。
【0195】
PCRを用いて、トランスフェクションに用いられるmRNAのインビトロ転写用の鋳型を生成する。PCRの実施方法は、当該技術分野で周知である。PCR用のプライマーは、当該PCR用の鋳型として用いられるDNAの領域に実質的に相補的な領域を有するようにデザインする。本明細書で用いる「実質的に相補的」とは、当該プライマー配列における塩基の大部分またはすべてが相補的である、または、1つ以上の塩基が非相補的である、または、不一致であるヌクレオチド配列のことを指す。実質的に相補的な配列は、PCRに用いられるアニーリング条件下で、アニーリングまたは目的のDNA標的とのハイブリッドを形成することができる。当該プライマーは、当該DNA鋳型のあらゆる部分と実質的に相補的になるようにデザインすることができる。例えば、当該プライマーは、通常は細胞内で転写される核酸(オープンリーディングフレーム)の部分を、5’及び3’UTRを含めて、増幅するようにデザインすることができる。また、当該プライマーは、目的の特定のドメインをコードする核酸の部分を増幅するようにデザインすることもできる。ある実施形態では、当該プライマーを、ヒトcDNAのコード領域を、5’及び3’UTRのすべてまたは一部を含めて、増幅するようにデザインする。PCRに有用なプライマーは、当該技術分野で周知の合成方法で生成することができる。「フォワードプライマー」は、増幅される当該DNA配列の上流である当該DNA鋳型でのヌクレオチドに実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含むプライマーである。「上流」は、当該コード鎖に関して増幅される当該DNA配列に対する、5の位置を指すために、本明細書で使用する。「リバースプライマー」は、増幅される当該DNA配列の下流である二本鎖DNA鋳型に実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含むプライマーである。「下流」は、当該コード鎖に関して増幅される当該DNA配列に対する、3’の位置を指すために、本明細書で使用する。
【0196】
PCRに有用なあらゆるDNAポリメラーゼを、本明細書に開示した方法に用いることができる。それらの試薬とポリメラーゼは、複数の供給元から市販されている。
【0197】
安定性、及び/または、翻訳効率を促進する能力がある化学構造も用い得る。当該RNAは、好ましくは、5’及び3’UTRを有する。ある実施形態では、当該5’UTRは、1~3000ヌクレオチドの長さである。当該コード領域に付加される5’及び3’UTR配列の長さは、異なる方法によって変更することができ、同方法として、当該UTRの異なる領域にアニーリングするPCR用のプライマーのデザインがあるが、これに限定されない。この方法を用いて、当業者であれば、転写したRNAのトランスフェクションに続いて、最適な翻訳効率を達成するために必要とされる5’及び3’UTRの長さを改変することができる。
【0198】
当該5’及び3’UTRを、目的の核酸に対する自然界に存在する内因性5’及び3’UTRとすることができる。あるいは、目的の核酸にとって内因性でないUTR配列を、当該UTR配列をフォワード及びリバースプライマーに組み込むことで、または、当該鋳型のあらゆる他の修飾によって、付加することができる。目的の核酸にとって内因性でないUTR配列の使用は、当該RNAの安定性、及び/または、翻訳効率を改変するために有用なものとすることができる。例えば、3’UTR配列内のAUリッチ領域は、mRNAの安定性を弱めることができることが知られている。したがって、3’UTRは、当該技術分野で周知のUTRの特性に基づいて、当該転写したRNAの安定性を高めるように選択またはデザインすることができる。
【0199】
ある実施形態では、当該5’UTRは、当該内因性核酸のコザック配列を含むことができる。あるいは、当該目的の核酸にとって内因性でない5’UTRが上記した通りにPCRによって付加される場合、コンセンサスコザック配列は、当該5’UTR配列の付加によって改めてデザインすることができる。コザック配列は、幾つかのRNA転写産物の翻訳効率を高めることができるが、効率的な翻訳を可能にするために、すべてのRNAに必要であるとは思われない。多くのmRNAに対するコザック配列の必要性は、当該技術分野で公知である。他の実施形態では、当該5’UTRを、そのRNAゲノムが細胞内で安定であるRNAウイルスの5’UTRとすることができる。他の実施形態では、当該3’または5’UTRに様々なヌクレオチド類似体を用いて、当該mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨げることができる。
【0200】
遺伝子クローニングを必要とせずに、DNA鋳型からのRNA合成を可能にするために、転写プロモーターは、転写される配列の上流のDNA鋳型に取り付けられるべきである。RNAポリメラーゼに対するプロモーターとして機能する配列が、当該フォワードプライマーの5’末端に付加される場合、当該RNAポリメラーゼのプロモーターは、転写されるオープンリーディングフレームの上流のPCR産物に取り込まれる。ある好ましい実施形態では、当該プロモーターは、本明細書の他の箇所に記載したT7ポリメラーゼプロモーターである。その他の有用なプロモーターとしては、T3及びSP6 RNAポリメラーゼプロモーターがあるが、これらに限定されない。T7、T3、及び、SP6プロモーターに対するコンセンサスヌクレオチド配列は、当該技術分野で公知である。
【0201】
好ましい実施形態では、当該mRNAは、5’末端のキャップ、及び、3’ポリ(A)尾部の双方を有しており、これらは、細胞内でのmRNAのリボソーム結合、転写の開始、及び、安定性を決定する。環状DNA鋳型、例えば、プラスミドDNAで、RNAポリメラーゼは、真核細胞での発現に適さない長い鎖状体産物を生成する。3’UTRの末端で線形化したプラスミドDNAの転写で、通常のサイズのmRNAができるが、これが転写後にポリアデニル化されても、真核生物のトランスフェクションには有効ではない。
【0202】
線状DNA鋳型で、ファージT7 RNAポリメラーゼを、当該転写産物の3’末端を当該鋳型の最後の塩基を越えて延長することができる(Schenborn and Mierendorf,Nuc Acids Res.,13:6223-36(1985);Nacheva and Berzal-Herranz,Eur.J.Biochem.,270:1485-65(2003)。
【0203】
DNA鋳型内へのポリA/Tストレッチの従来の組込み法は、分子クローニングである。しかしながら、プラスミドDNA内に組み込んだポリA/T配列は、プラスミドの不安定性の原因となるため、細菌の細胞由来のプラスミドDNA鋳型は、多くの場合、欠失及びその他の異常によって非常に不純である。このことが、クローニング法を面倒で時間がかかるだけでなく、しばしば信頼できないものにする。それ故に、クローニングせずに、ポリA/T3’ストレッチを備えたDNA鋳型の構築を可能にする方法が待望されている。
【0204】
当該転写DNA鋳型のポリA/Tセグメントは、ポリT尾部、例えば、100T尾部(サイズは、50~5000Tとすることができる)を含むリバースプライマーを用いて、PCRの過程で、または、あらゆる他の方法によるPCRの後に生成することができ、同方法として、DNA連結反応、または、インビトロ組換えがあるが、これらに限定されない。また、ポリ(A)尾部は、RNAに安定性をもたらし、そして、それらの分解を減少させる。一般的に、ポリ(A)尾部の長さは、当該転写したRNAの安定性と正の相関がある。ある実施形態では、当該ポリ(A)尾部は、100~5000アデノシンである。
【0205】
RNAのポリ(A)尾部は、ポリ(A)ポリメラーゼ、例えば、E.coliのポリAポリメラーゼ(E-PAP)を用いて、インビトロ転写した後にさらに延長することができる。ある実施形態では、ポリ(A)尾部の長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドまで増加させると、当該RNAの翻訳効率は約2倍に増加する。加えて、3’末端に異なる化学基を連結すると、mRNAの安定性を増加させることができる。かかる連結は、変性/人工ヌクレオチド、アプタマー、及び、その他の化合物を含むことができる。例えば、ポリ(A)ポリメラーゼを用いて、当該ポリ(A)尾部に、ATP類似体を組み込むことができる。ATP類似体は、当該RNAの安定性をさらに高めることができる。
【0206】
5’キャップを付けることも、RNA分子に安定性をもたらす。好ましい実施形態では、本明細書に開示した方法で生成するRNAは、5’キャップを含む。この5’キャップは、当該技術分野で公知であり、かつ、本明細書に記載した技術を用いて提供する(Cougot,et al.,Trends in Biochem.Sci.,29:436-444(2001);Stepinski,et al.,RNA,7:1468-95(2001);Elango,et al.,Biochim.Biophys.Res.Commun.,330:958-966(2005))。
【0207】
本明細書に開示した方法で生成したRNAは、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列も含むことができる。当該IRES配列は、あらゆるウイルス、染色体、または、人工的にデザインした配列とし得るものであり、これが、mRNAに対するキャップ非依存性リボソーム結合を開始し、翻訳の開始を促す。糖類、ペプチド類、脂質類、タンパク質、酸化防止剤、及び、界面活性剤などの細胞の透過性及び生存能力を促進する因子を含むことができる、細胞のエレクトロポレーションに適したあらゆる溶質を含めることができる。
【0208】
RNAは、複数の異なる方法、例えば、商業利用可能なあらゆる方法を用いて、標的細胞に導入することができ、同方法として、エレクトロポレーション(Amaxa Nucleofector-II(Amaxa Biosystems,Cologne,Germany))、(ECM 830(BTX)(Harvard Instruments,Boston,Mass.)、または、Gene Pulser II(BioRad,Denver,Colo.)、Multiporator(Eppendort,Hamburg,Germany)、リポフェクションを用いたカチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、ポリマーカプセル化、ペプチド媒介トランスフェクション、または、微粒子銃粒子送達システム、例えば、「遺伝子銃」(例えば、Nishikawa,et al.Hum Gene Ther.,12(8):861-70(2001)を参照されたい)があるが、これらに限定されない。
【0209】
TFPをコードする核酸構築物
本発明は、本明細書に記載した1つ以上のTFP構築物をコードする核酸分子も提供する。ある態様では、当該核酸分子を、メッセンジャーRNA転写物として提供する。ある態様では、当該核酸分子を、DNA構築物として提供する。
【0210】
所望の分子をコードする当該核酸配列は、当該技術分野で公知の組換え法、例えば、当該遺伝子を発現する細胞のライブラリーのスクリーニング、同核酸を含むことが分かっているベクターからの当該遺伝子の抽出、または、同核酸を含む細胞及び組織からの直接単離を用いて、標準的な技術を用いて得ることができる。あるいは、目的の遺伝子は、クローンではなく、合成的に生成することができる。
【0211】
本発明は、本発明のDNAが挿入されるベクターも提供する。レンチウイルスなどのレトロウイルス由来のベクターは、それらが長期間にわたって安定した導入遺伝子の取り込みと、娘細胞におけるその増殖とを可能にするので、長期間にわたる遺伝子導入を達成するのに適したツールである。レンチウイルスベクターは、それらが肝細胞などの非増殖性細胞を形質導入することができるという点で、マウス白血病ウイルスなどのオンコレトロウイルス由来のベクターには無い利点を有する。また、それらは、低免疫原性というさらなる利点を有する。
【0212】
別の実施形態では、本発明の所望のTFPをコードする当該核酸を含むベクターは、アデノウイルスベクター(A5/35)である。別の実施形態では、TFPをコードする核酸の発現は、スリーピングビューティー、クリスパー、CAS9、及び、ジンクフィンガーヌクレアーゼなどのトランスポゾンを用いて達成することができる(参照により本明細書に援用する、June et al.2009 Nature Reviews Immunol.9.10:704-716を参照されたい)。
【0213】
本発明の発現構築物は、標準的な遺伝子導入プロトコルを用いて、核酸免疫付与、及び、遺伝子治療にも用い得る。遺伝子送達の方法は、当該技術分野で公知である(例えば、それらの全内容を参照により本明細書に援用する、米国特許第5,399,346号、同第5,580,859号、同第5,589,466号を参照されたい)。別の実施形態では、本発明は、遺伝子治療ベクターを提供する。
【0214】
当該核酸は、複数のタイプのベクターにクローニングすることができる。例えば、当該核酸は、ベクターにクローニングすることができ、同ベクターとして、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及び、コスミドがあるが、これらに限定されない。特に興味深いベクターとして、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び、配列決定ベクターがある。
【0215】
さらに、当該発現ベクターを、ウイルスベクターの形態で細胞に提供し得る。ウイルスベクター技術は、当該技術分野で公知のものであり、例えば、Sambrook et al.,2012,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,volumes 1-4,Cold Spring Harbor Press,NY、及び、その他のウイルス学、及び、分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとして、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及び、レンチウイルスがあるが、これらに限定されない。一般的に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物で機能する複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び、1つ以上の選択マーカーを含む(例えば、WO01/96584、WO01/29058、及び、米国特許第6,326,193号)。
【0216】
複数のウイルスベースの系が、哺乳動物細胞への遺伝子導入のために開発されてきた。例えば、レトロウイルスは、遺伝子導入系に好都合なプラットフォームを提供する。選択した遺伝子は、ベクターに挿入され、そして、当該技術分野で公知の技術を用いてレトロウイルス粒子内に格納することができる。当該組換えウイルスは、次に、単離され、そして、インビボまたはエキソビボのいずれかで、目的の細胞に導入することができる。複数のレトロウイルス系が、当該技術分野で公知である。幾つかの実施形態では、アデノウイルスベクターを用いる。複数のアデノウイルスベクターが、当該技術分野で公知である。ある実施形態では、レンチウイルスベクターを用いる。
【0217】
さらなるプロモーター要素、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。一般的に、これらは、開始部位の30~110bp上流の領域に位置しているが、複数のプロモーターが、当該開始部位の下流に同様に機能要素を含むことが示されている。要素が互いに反転または連動される場合、プロモーターの機能が保存されるように、プロモーター要素間の間隔に柔軟性があることが多い。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーター要素間の間隔は、活性が落ち始める前に50bp離れるまで、大きくすることができる。当該プロモーターに応じて、個々の要素は、協調的または独立的に機能して、転写を活性化することができると思われる。
【0218】
哺乳動物のT細胞においてTFP導入遺伝子を発現することができるプロモーターの例は、EF1aプロモーターである。天然EF1aプロモーターは、アミノアシルtRNAのリボソームへの酵素的導入に関与する伸長因子1複合体のアルファサブユニットの発現を駆動する。当該EF1aプロモーターは、哺乳動物の発現プラスミドに広く用いられており、また、レンチウイルスベクターにクローニングした導入遺伝子からのTFP発現を駆動させるのに有効であることが示されている(例えば、Milone et al.,Mol.Ther.17(8):1453-1464 (2009)を参照されたい)。プロモーターの別の例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに作動可能に連結したあらゆるポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動させることができる強力な構成的プロモーター配列である。しかしながら、その他の構成的プロモーター配列もまた使用し得るものであり、同プロモーターとして、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の長い末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーターがあるが、これらに限定されず、ならびに、ヒト遺伝子のプロモーターとして、例えば、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、伸長因子1aプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及び、クレアチンキナーゼプロモーターがあるが、これらに限定されない。さらに、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されない。誘導性プロモーターもまた、本発明の一部として企図している。誘導性プロモーターの使用は、作動可能に連結したポリヌクレオチド配列の発現を、かかる発現を望む場合にオンにすること、または、発現を望まない場合には当該発現をオフにすることが可能な分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例として、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及び、テトラサイクリン調節プロモーターがあるが、これらに限定されない。
【0219】
TFPポリペプチド、または、その一部の発現を評価するため、細胞に導入される発現ベクターはまた、選択マーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子のいずれか、または、その双方を含んで、ウイルスベクターを介してトランスフェクトまたは感染させようとする細胞の集団からの発現細胞の特定及び選択を容易にすることができる。他の態様において、当該選択マーカーは、DNAの別々の片上に担持され、そして、同時トランスフェクション法に用い得る。選択マーカーとレポーター遺伝子の双方が、当該宿主細胞内での発現を可能にするために、適切な調節配列に隣接し得る。有用な選択マーカーとして、例えば、抗生物質抵抗性遺伝子、例えば、neoなどがある。
【0220】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞を同定するため、及び、調節配列の機能を評価するために用いる。一般的に、レポーター遺伝子は、レシピエントの生物または組織内に存在せず、または、それらによって発現されず、そして、その発現が、幾分容易に検出が可能である特性、例えば、酵素活性で示されるポリペプチドをコードする遺伝子である。当該レポーター遺伝子の発現は、当該DNAが当該レシピエント細胞に導入された後の適切な時点でアッセイされる。適切なレポーター遺伝子として、ルシフェラーゼ、ベータガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または、緑色蛍光タンパク質遺伝子がある(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)。適切な発現系は周知であり、また、公知の技術を用いて調製してもよく、あるいは、市販品を入手し得る。一般的に、レポーター遺伝子の最大の発現レベルを示す最小の5’隣接領域を備えた構築物は、プロモーターとして同定される。かようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され、そして、プロモーター駆動転写を調節する能力について、作用物質を評価するために使用し得る。
【0221】
細胞内に遺伝子を導入及び発現させる方法は、当該技術分野で公知である。発現ベクターとの関連では、当該ベクターは、宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、または、昆虫の細胞に、当該技術分野のあらゆる方法で、容易に導入することができる。例えば、当該発現ベクターは、物理的、化学的、または、生物学的手段によって宿主細胞に移植することができる。
【0222】
宿主細胞内にポリヌクレオチドを導入するための物理的方法として、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどがある。ベクター、及び/または、外因性核酸を含む細胞の産生方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Sambrook et al.,2012, Molecular Cloning:A Laboratory Manual,volumes 1-4,Cold Spring Harbor Press,NYを参照されたい)。宿主細胞内へポリヌクレオチドを導入するための好ましい一方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0223】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞内に導入するための生物学的方法として、DNA及びRNAベクターの使用がある。ウイルスベクター、特に、レトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒト細胞に遺伝子を挿入するために最も広く用いられる方法となっている。その他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノウイルス、及び、アデノ随伴ウイルスなどから誘導され得る(例えば、米国特許第5,350,674号、及び、同第5,585,362号を参照されたい)。
【0224】
宿主細胞内にポリヌクレオチドを導入するための化学的手段として、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、そして、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及び、リポソームを含む脂質ベース系がある。インビトロ及びインビボでの送達媒体として使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。その他の最先端の核酸の標的化送達方法、例えば、標的化ナノ粒子またはその他の適切なサブミクロンサイズの送達システムでのポリヌクレオチドの送達などが利用可能である。
【0225】
非ウイルス送達システムを利用する場合、例示的な送達媒体は、リポソームである。脂質製剤の使用は、宿主細胞内への核酸の導入(インビトロ、エキソビボ、または、インビボ)を企図している。別の態様では、当該核酸は、脂質と会合され得る。脂質に会合した当該核酸は、リポソームの水性内部に封入し、リポソームの脂質二重層内に散在し、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの双方に会合した連結分子を介してリポソームに付着し、リポソーム内に封入し、リポソームと複合体化し、脂質含有溶液に分散し、脂質と混合し、脂質と合わせ、脂質に懸濁液として含有し、ミセルとともに含有または複合化し、または、その他の場合には、脂質と会合し得る。脂質、脂質/DNA、または、脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液においては、いかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは二層構造で、ミセルとして存在してもよく、または、「崩壊した」構造で存在してもよい。それらはまた、単に溶液に散在されてもよく、大きさも形状も均一でない凝集体を形成すると思われる。脂質は、脂肪性の物質であり、自然界に存在する脂質、または、合成脂質とし得る。例えば、脂質として、当該細胞質に自然に存在する脂肪小滴、ならびに、長鎖脂肪族炭化水素、及び、それらの誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール類、アミン類、アミノアルコール類、及び、アルデヒド類を含む化合物のクラスがある。
【0226】
使用に適した脂質は、市販元から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma,St.Louis,Moから入手することができ、リン酸ジセチル(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview,N.Y.)から入手可能であり、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手可能であり、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)、及び、その他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,Ala)から入手し得る。脂質のクロロホルムまたはクロロホルム/メタノールでの原液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムは、メタノールより容易に蒸発するため、唯一の溶媒として使用する。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成される様々な単層または多重膜の脂質媒体を含む総称である。リポソームは、リン脂質二重膜及び内側の水性媒体を備えた小胞構造を有することを特徴とすることができる。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液に懸濁された場合に自然に生じる。当該脂質成分は、自己再編成を経て、閉鎖構造を形成し、そして、当該脂質二重層の間に水と溶解した溶質とを封入する(Ghosh et al.,1991 Glycobiology 5:505-10)。しかしながら、通常の小胞構造とは溶液内での構造が異なる組成物も包含している。例えば、当該脂質は、ミセル構造をとってもよいし、あるいは、単に脂質分子の不均一な凝集体として存在し得る。リポフェクタミン・核酸複合体も企図している。
【0227】
宿主細胞内へ外因性核酸を導入するのに用いる方法、または、その他の場合には、本発明の阻害剤に細胞を暴露するのに用いる方法にかかわらず、宿主細胞内での組換えDNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイが行われ得る。かかるアッセイとして、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザン及びノーザンブロット法、RT-PCR、及び、PCR、「生化学的」アッセイ、例えば、特定のペプチドの有無を、例えば、免疫学的手段(ELISA及びウェスタンブロット法)によって、または、本明細書に記載したアッセイで検出して、本発明の範囲に含まれる作用物質を特定するものがある。
【0228】
また、本発明は、TFPをコードする核酸分子を含むベクターを提供する。ある態様では、TFPベクターは、細胞、例えば、T細胞に直接導入することができる。ある態様では、当該ベクターとして、クローニングまたは発現ベクター、例えば、1つ以上のプラスミド(例えば、発現プラスミド、クローニングベクター、ミニサークル、ミニベクター、二重微小染色体)、レトロウイルスベクター構築物、及び、レンチウイルスベクター構築物があるが、これらに限定されない。ある態様では、当該ベクターは、哺乳動物のT細胞でTFP構築物を発現することができる。ある態様では、当該哺乳動物のT細胞は、ヒトT細胞である。
【0229】
T細胞の供給源
増殖及び遺伝子組換えに先立って、T細胞の供給源を、対象から取得する。用語「対象」は、免疫反応を誘発することができる生体(例えば、哺乳動物)を含むことを意図している。対象の例としては、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、及び、それらのトランスジェニック種がある。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び、腫瘍を含めた複数の供給源から採取することができる。本発明の特定の態様において、当該技術分野で入手可能な様々なT細胞株を使用し得る。本発明の特定の態様において、T細胞は、当業者に公知の様々な技術、例えば、Ficoll(商標)分離を用いて、対象から回収して、血液の単位から得ることができる。ある好ましい態様において、個体の循環血液由来の細胞は、アフェレーシスによって採取される。当該アフェレーシス産物は、一般的には、T細胞を含めたリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、その他の有核白血球細胞、赤血球、及び、血小板を含む。ある態様では、アフェレーシスによって回収した細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、そして、当該細胞を、その後の処理段階に向けて、適切な緩衝液または媒体に配置し得る。本発明のある態様では、当該細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄する。別の態様では、当該洗浄液は、カルシウムを欠いており、かつ、マグネシウムを欠く場合も、2価カチオンのすべてではないが、その多くを欠く場合もある。カルシウムの非存在下での最初の活性化段階は、活性化の拡大につなげることができる。洗浄段階は、当業者に公知の方法、例えば、半自動の「フロースルー」遠心分離(例えば、Cobe 2991細胞プロセッサー、the Baxter CytoMate、または、the Haemonetics Cell Saver 5)を用いて、製造業者の指示に従うことで達成し得ることを当業者であれば容易に理解する。洗浄を終えた後に、当該細胞を、様々な生体適合性緩衝液、例えば、Ca不含、Mg不含のPBS、PlasmaLyte A、または、緩衝液を含有する、または、含有しないその他の生理食塩水に再懸濁され得る。あるいは、当該アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去し、そして、当該細胞を直接に培地で再懸濁し得る。
【0230】
ある態様では、赤血球を溶解し、単球を、例えば、PERCOLL(商標)勾配を介した遠心分離によって、または、向流遠心水簸によって枯渇させることで、T細胞を末梢血リンパ球から単離する。T細胞の特定の亜集団、例えば、CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、及び、CD45RO+T細胞を、ポジティブまたはネガティブの選択技術によって、さらに単離することができる。例えば、ある態様では、抗CD3/抗CD28(例えば、3×28)結合ビーズ、例えば、DYNABEADS(商標)M-450 CD3/CD28 Tを用いて、所望のT細胞のポジティブの選択に十分な期間をかけてインキュベートして、T細胞を単離する。ある態様では、当該期間は、約30分である。さらなる態様において、当該期間は、30分~36時間、または、それ以上、及び、その間のすべての整数値にまで及ぶ。さらなる態様では、当該期間は、少なくとも1、2、3、4、5、または、6時間である。なおもさらに別の好ましい態様では、当該期間は、10~24時間である。ある態様では、当該インキュベート期間は、24時間である。腫瘍組織または免疫不全の個体から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離するなど、その他の細胞型と比較してT細胞が少ないあらゆる状況でT細胞を単離するために、より長いインキュベート時間を用い得る。さらに、より長いインキュベート時間の使用は、CD8+T細胞の捕捉の効率を高めることができる。したがって、T細胞を、当該CD3/CD28ビーズに結合させる時間を単に短縮または延長することで、及び/または、(本明細書にさらに記載したように)T細胞に対する当該ビーズの割合を増加または減少させることで、T細胞の亜集団が優先的に、培養開始時、または、当該工程のその他の時点で選択または反選択することができる。加えて、当該ビーズまたはその他の表面にて抗CD3、及び/または、抗CD28抗体の比率を増加または減少させることで、T細胞の亜集団は優先的に、培養開始時またはその他の所望の時点で選択または反選択することができる。当業者であれば、本発明において複数の選択期間を使用することもできることを認識する。特定の態様において、当該選択手順を行い、そして、「選択されていない」細胞を、活性化及び増殖工程で用いることが望ましい場合がある。「選択されていない」細胞を、さらなる選択期間に供することもできる。
【0231】
ネガティブ選択によるT細胞集団の濃縮は、当該ネガティブに選択した細胞に特有の表面マーカーに対する抗体の組合せを用いて達成することができる。ある方法は、ネガティブに選択した細胞に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを用いるネガティブ磁気免疫接着、または、フローサイトメトリーを介した細胞選別、及び/または、選択である。例えば、ネガティブの選択によってCD4+細胞を濃縮するためには、モノクローナル抗体カクテルは、一般的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、及び、CD8に対する抗体を含む。特定の態様において、一般的には、CD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+、及び、FoxP3+を発現する調節性T細胞を濃縮またはポジティブに選択することが望ましい場合がある。あるいは、特定の態様において、調節性T細胞を、抗C25結合ビーズ、または、その他の同様の選択方法によって枯渇する。
【0232】
ある実施形態では、IFN-γ、TNF-アルファ、IL-17A、IL-2、IL-3、IL-4、GM-CSF、IL-10、IL-13、グランザイムB、及び、パーフォリン、または、その他の適切な分子、例えば、その他のサイトカインの1つ以上を発現するT細胞集団を選択することができる。細胞発現のスクリーニング方法は、例えば、PCT公開第WO2013/126712号に記載の方法で、決定することができる。
【0233】
ポジティブまたはネガティブの選択による所望の細胞集団の単離のため、細胞濃度、及び、表面(例えば、ビーズ等の粒子)を変更することができる。特定の態様では、ビーズと細胞を混合する体積を大幅に減少させて(例えば、細胞濃度を増加させて)、細胞とビーズを最大に接触させることが望ましい場合がある。例えば、ある態様では、20億個の細胞/mLの濃度を用いる。ある態様では、10億個の細胞/mLの濃度を用いる。さらなる態様において、1億個超の細胞/mLを用いる。さらなる態様では、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、または、5000万個の細胞/mLの細胞濃度を用いる。なおもさらにある態様では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または、1億個の細胞/mLの細胞濃度を用いる。さらなる態様では、1億2500万または1億5000万個の細胞/mLの濃度を用いることができる。高濃度の使用は、細胞収率、細胞活性化、及び、細胞増殖の増加をもたらすことができる。さらに、高細胞濃度の使用は、目的の標的抗原の発現が弱い可能性がある細胞、例えば、CD28ネガティブT細胞、または、多くの腫瘍細胞が存在する試料(例えば、白血病血液、腫瘍組織など)からの細胞を、より効率的に捕捉することを可能にする。かような細胞集団は、治療的価値を有する場合があり、また、得ることが望ましい。例えば、高細胞濃度の使用は、通常は、CD8の発現が弱いCD28+T細胞のより効率的な選択を可能にする。
【0234】
関連する態様では、より低濃度の細胞を使用することが望ましい場合がある。T細胞と表面(例えば、ビーズ等の粒子)の混合物を大胆に希釈することで、当該粒子と細胞との間の相互作用が最小化される。これは、当該粒子に結合する所望の抗原を豊富に発現する細胞を選択する。例えば、CD4+T細胞は、CD28を高レベルで発現し、そして、希釈濃度において、CD8+T細胞より効率的に捕捉される。ある態様では、使用する細胞濃度は、5×10/mLである。その他の態様では、使用する濃度は、約1×10/mL~1×10/mL、及び、その間のあらゆる整数値であり得る。その他の態様では、当該細胞は、回転装置上で、様々な長さの時間、様々な速度で、2~10℃、または、室温のいずれかでインキュベートし得る。
【0235】
刺激用のT細胞を、洗浄工程の後に、凍結させることもできる。理論に拘束されることを望むものではないが、凍結と、それに続く解凍工程とは、当該細胞集団での顆粒球、及び、ある程度の単球を除去することで、より均一な産物を提供する。血漿及び血小板を除去する洗浄工程の後に、当該細胞は、凍結溶液に懸濁し得る。数多くの凍結溶液とパラメーターとが当該技術分野で公知であり、また、このことに関して有用であるが、ある方法は、20%DMSO、及び、8%ヒト血清アルブミンを含むPBS、または、10%デキストラン40、及び、5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミン、及び、7.5%DMSO、または、31.25%Plasmalyte-A、31.25%デキストロース5%、0.45%NaCl、10%デキストラン40、及び、5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミン、及び、7.5%DMSOを含む培地、または、例えば、Hespan及びPlasmaLyte Aを含むその他の適切な細胞凍結媒体の使用を含み、当該細胞を、その後、-80℃になるまで毎分1の速度で凍結し、そして、液体窒素貯蔵タンクの気相で保存する。その他の制御凍結法は、-20℃、または、液体窒素中での制御されていない即時凍結と同様に使用し得る。特定の態様では、凍結保存細胞は、本明細書に記載した通りに解凍及び洗浄され、そして、室温で1時間静置され、その後に、本発明の方法を用いて活性化させる。
【0236】
本発明において同様に企図しているものは、本明細書に記載した増殖細胞を必要とし得る前の期間における、対象からの血液試料またはアフェレーシス産物の採取である。したがって、増殖する当該細胞の供給源は、あらゆる必要な時点で採取され、そして、所望の細胞、例えば、T細胞を、T細胞療法で恩恵を受ける様々な疾患または病態、例えば、本明細書に記載したもののためのT細胞療法の後での使用のために、単離及び凍結する。ある態様では、血液試料またはアフェレーシスは、一般的に、健康な対象から採取する。特定の態様では、血液試料またはアフェレーシスは、疾患の発症の危険性があるが、未だ発病していない概して健康な対象から採取し、そして、目的の細胞を、後の使用のために単離及び凍結する。特定の態様では、当該T細胞は、増殖され、凍結され、その後に使用され得る。特定の態様では、試料は、本明細書に記載した特定の疾患の診断の直後で、いずれかの治療の前の患者から採取される。さらなる態様では、当該細胞は、様々な関連する治療法に先立って、対象由来の血液試料またはアフェレーシスから単離するものであり、同治療法として、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス剤、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、及び、FK506、抗体、または、その他の免疫消失薬、例えば、アレムツズマブ、抗CD3抗体、シトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、及び、放射線照射などの作用物質を用いた治療があるが、これに限定されない。
【0237】
本発明のさらなる態様では、T細胞を、当該対象に機能的T細胞を残す治療の後に、患者から直接に採取する。その点について、特定のがん治療の後、免疫系に損傷を与える薬物での特定の治療において、治療の直後、患者が当該治療から通常回復する期間に、得られたT細胞の品質は、エキソビボでのそれらの増殖能が最適であるか、または、改善されている可能性があることが観察されている。同様に、本明細書に記載した方法を用いたエキソビボ操作の後、これらの細胞は、生着及びインビボ増殖の向上に好ましい状態にあり得る。したがって、本発明において、T細胞を含めた血液細胞、樹状細胞、または、造血系の他の細胞を、この回復期に採取することを企図している。さらに、特定の態様では、動員(例えば、GM-CSFでの動員)、及び、前処置レジメンを用いて、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生、及び/または、増殖を促進する対象における、特に治療後の所定の時間窓での条件を作成することができる。例示的な細胞型として、T細胞、B細胞、樹状細胞、及び、免疫系のその他の細胞がある。
【0238】
T細胞の活性化及び増殖
T細胞は、一般的に、例えば、米国特許第6,352,694号、同第6,534,055号、同第6,905,680号、同第6,692,964号、同第5,858,358号、同第6,887,466号、同第6,905,681号、同第7,144,575号、同第7,067,318号、同第7,172,869号、同第7,232,566号、同第7,175,843号、同第5,883,223号、同第6,905,874号、同第6,797,514号、同第6,867,041号、及び、同7,572,631号に記載の方法を用いて、活性化及び増殖し得る。
【0239】
一般的に、本発明のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質を付着した表面、及び、当該T細胞の表面の共刺激分子を刺激するリガンドとの接触によって増殖し得る。特に、T細胞集団は、本明細書に記載したように、例えば、抗CD3抗体、または、その抗原結合断片、または、表面に固定化された抗CD2抗体との接触によって、または、カルシウムイオノフォアと組み合わせてプロテインキナーゼC活性化剤(例えば、ブリオスタチン)との接触によって刺激し得る。T細胞表面のアクセサリー分子の共刺激に対しては、当該アクセサリー分子に結合するリガンドが用いられる。例えば、T細胞の集団は、当該T細胞の増殖を刺激するために適切な条件下で、抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触し得る。CD4+T細胞、または、CD8+T細胞のいずれかの増殖を刺激するためには、抗CD3抗体及び抗CD28抗体。抗CD28抗体の例として、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone,Besancon,France)があり、また、当該技術分野で一般的に公知のその他の方法(Berg et al.、Transplant Proc.30(8):3975-3977、1998;Haanen et al.、J.Exp.Med. 190(9):13191328、1999;Garland et al.、J.Immunol.Meth.227(1-2):53-63、1999)を用いることができる。
【0240】
多様な刺激時間に曝露されたT細胞は、異なる特性を呈し得る。例えば、典型的な血液またはアフェレーシスで得た末梢血の単核細胞産物は、ヘルパーT細胞集団(TH、CD4+)を有し、これは、細胞傷害性やサプレッサーT細胞集団(TC、CD8+)より多い。CD3及びCD28受容体を刺激することによるT細胞のエキソビボでの増殖は、約8~9日目より前には、主にTH細胞からなるT細胞集団を産生するが、約8~9日目より後は、T細胞集団は、次第に増加するTC細胞集団を含む。したがって、処置の目的に応じて、主にTH細胞を含むT細胞集団を対象に注入することが有利な場合がある。同様に、抗原特異的なTC細胞のサブセットを単離した場合、このサブセットをさらに増殖させることが有益な場合がある。
【0241】
さらに、CD4及びCD8のマーカーに加えて、当該細胞増殖工程において、その他の表現型のマーカーは大きく変化するが、大部分は再現性がよい。したがって、かかる再現性が、活性化T細胞産物を特定の目的用に調整する能力を可能にする。
【0242】
抗メソテリンTFPが構築されると、様々なアッセイを用いて当該分子の活性を評価することができ、同活性として、例えば、抗原刺激後のT細胞を増殖する能力、再刺激の非存在下でT細胞増殖を維持する能力、及び、適切なインビトロ及び動物モデルでの抗がん活性などがあるが、これらに限定されない。抗メソテリンTFPの効果を評価するアッセイの詳細は、以下で、さらに説明する。
【0243】
初代T細胞におけるTFP発現のウエスタンブロット分析を用いて、モノマー及びダイマーの存在を検出することができる(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。極めて簡潔に述べると、当該TFPを発現するT細胞(CD4+とCD8+T細胞との1:1混合物)を、インビトロで10日間よりも長く増殖させ、次いで、溶解して、還元条件下でSDS-PAGEに供する。TFPを、TCR鎖に対する抗体を用いて、ウエスタンブロット法で検出する。同じT細胞のサブセットを、非還元条件で、SDS-PAGE分析に用いて、共有結合ダイマーの生成の評価を可能にする。
【0244】
抗原刺激した後のTFPT細胞のインビトロでの増殖は、フローサイトメトリーで測定することができる。例えば、CD4及びCD8T細胞の混合物を、アルファCD3/アルファCD28、及び、APCで刺激し、次いで、分析されるプロモーターの制御下で、GFPを発現するレンチウイルスベクターで形質導入する。例示的なプロモーターとして、CMV IE遺伝子、EF-1アルファ、ユビキチンC、または、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーターがある。GFPの蛍光を、CD4+及び/またはCD8+T細胞のサブセットでの培養の6日目に、フローサイトメトリーで評価する(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。あるいは、CD4+とCD8+T細胞との混合物を、アルファCD3/アルファCD28被覆磁気ビーズで、0日目に、刺激し、そして、1日目に、TFPを発現するバイシストロニックなレンチウイルスベクターを用いて、eGFPと一緒に、2Aリボソームスキッピング配列を用いて、TFPで形質導入する。培養物を洗浄した後に、メソテリン+K562細胞(K562-メソテリン)、野生型K562細胞(K562野生型)、または、抗CD3及び抗CD28抗体の存在下でhCD32及び4-1BBLを発現するK562細胞(K562-BBL3/28)のいずれかで再刺激する。外因性IL-2を、当該培養物に、1日おきに、100IU/mLで加える。GFP+T細胞は、ビーズに基づく計数を用いて、フローサイトメトリーで数える(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。
【0245】
再刺激を実施せずとも持続するTFP+T細胞の増殖も測定することができる(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。要するに、アルファCD3/アルファCD28被覆磁気ビーズで、0日目に、刺激を与え、そして、示したTFPで、1日目に、形質導入した後に、培養の8日目に、平均T細胞体積(fl)を、Coulter Multisizer III粒子計測器を用いて測定する。
【0246】
動物モデルを用いてTFP-T活性を測定することもできる。例えば、免疫不全マウスにおいて、がんを治療するためのヒトメソテリン特異的TFP+T細胞を用いた異種移植モデルを用いることができる(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464 (2009)を参照されたい)。極めて簡潔に述べると、がんの定着後に、マウスを治療群に応じてランダム化する。異なる数の改変T細胞を、1:1の比率で、がんを担持しているNOD/SCID/γ-/-マウスに同時注入する。マウス由来の脾臓DNAにおける各ベクターのコピー数を、T細胞の注入後の様々な時点で評価する。動物を、1週間間隔で、がんについて評価する。末梢血メソテリン+がん細胞数を、アルファメソテリン-ゼータTFP+T細胞、または、モック(mock)形質導入T細胞を注入したマウスで測定する。これらの群についての生存曲線を、ログランク検定を用いて比較する。加えて、NOD/SCID/γ-/-マウスにT細胞を注入して4週間後の末梢血CD4+及びCD8+T細胞の絶対数も分析することができる。マウスにがん細胞を注入し、そして、3週間後に、eGFPに連結したTFPをコードするバイシストロニックレンチウイルスベクターで、TFPを発現するように改変したT細胞を注入する。T細胞を、注入に先立って、モック(mock)形質導入細胞と混合することで、45~50%インプットGFP+T細胞に対して正規化し、そして、フローサイトメトリーで確認をする。動物を、1週間の間隔でがんについて評価する。TFP+T細胞群についての生存曲線を、ログランク検定を用いて比較する。
【0247】
用量依存的なTFP処置反応を、評価することができる(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。例えば、末梢血を、21日目にTFP T細胞、同数のモック(mock)形質導入T細胞を注入したマウス、または、T細胞を注入していないマウスにおいて、がんが確立して35~70日後に採取する。35日目及び49日目に、各群のマウスから無作為に採血して、末梢血メソテリン+がん細胞数の測定を行い、その後に、殺処分する。残りの動物は、57日目及び70日目に評価する。
【0248】
細胞増殖及びサイトカイン産生の評価については、以前に、例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)に記載されている。要するに、TFP媒介増殖の評価は、マイクロタイタープレートにて、洗浄したT細胞を、メソテリンを発現する細胞、または、CD32、及び、CD137を発現する細胞(KT32-BBL)と、最終的なT細胞:メソテリンを発現する細胞の比率が2:1になるように混合して行われる。メソテリンを発現する細胞には、使用に先立って、ガンマ線を照射する。抗CD3(クローンOKT3)、及び、抗CD28(クローン9.3)モノクローナル抗体を、KT32-BBL細胞を含む培養物に加えると、T細胞増殖刺激のポジティブコントロールとなるが、これは、これらのシグナルが、長期的なCD8+T細胞のエキソビボでの増殖を支持しているためである。T細胞は、CountBright(商標)蛍光ビーズ(Invitrogen)、及び、フローサイトメトリーを用いて、培養下で、製造業者の指示に従って計数をする。TFP+T細胞は、eGFP-2Aが連結されたTFP発現レンチウイルスベクターで改変したT細胞を用いて、GFPの発現によって特定される。GFPを発現しないTFP+T細胞については、当該TFP+T細胞は、ビオチン化組換えメソテリンタンパク質、及び、二次アビジン-PE複合体で検出する。T細胞でのCD4+及びCD8+の発現は、特定のモノクローナル抗体(BD Biosciences)でも同時に検出される。サイトカインの測定は、再刺激の24時間後に採取した上清で、ヒトTH1/TH2サイトカインサイトメトリービーズアレイキット(BD Biosciences)を用いて、製造業者の指示にしたがって行う。蛍光は、FACScaliburフローサイトメーターを用いて評価し、また、データは、製造業者の指示にしたがって分析を行う。
【0249】
細胞傷害性は、標準的な51Cr放出アッセイによって評価することができる(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。要するに、標的細胞に、51Cr(NaCrOとして、New England Nuclear)を、37℃で、2時間、頻繁に攪拌しながらロードし、これを完全RPMI培地で2度洗浄し、そして、マイクロタイタープレートに播種する。エフェクターT細胞と標的細胞とを、当該ウェル内の完全RPMIにて、様々なエフェクター細胞:標的細胞(E:T)の比率で混合する。培地のみを含む(自然放出、SR)、または、界面活性剤トリトン-X100の1%溶液(総放出、TR)を含有する、さらなるウェルも用意する。37℃で、4時間のインキュベートの後に、各ウェルから上清を採取する。次いで、放出された51Crを、ガンマ粒子カウンター(Packard Instrument Co.,Waltham,Mass.)を用いて測定する。各条件を、少なくとも3連で行い、そして、溶解率を、式:溶解%=(ER-SR)/(TR-SR)(式中、ERは、各実験条件について放出された平均51Crを表す)を用いて計算する。
【0250】
画像技術を用いて、腫瘍担持動物モデルにおけるTFPの特異的輸送、及び、増殖を評価することができる。かかるアッセイは、例えば、Barrett et al.,Human Gene Therapy 22:1575-1586(2011)に記載されている。要するに、NOD/SCID/γc-/-(NSG)マウスに、がん細胞に続いて7日後に、TFP構築物でのエレクトロポレーションの4時間後に、T細胞を静注する。当該T細胞を、ホタルルシフェラーゼを発現させるために、レンチウイルス構築物を安定的にトランスフェクトし、そして、マウスを生物発光に対して撮像する。あるいは、がん異種移植モデルにおけるTFP+T細胞の単回注射の治療効果、及び、特異性は、以下のようにして測定することができる。NSGマウスに、ホタルルシフェラーゼを安定的に発現するように形質導入したがん細胞を注射し、続いて、7日後に、メソテリンTFPをエレクトロポレーションしたT細胞を、単回、尾静脈注射する。動物を注射した後の様々な時点で撮像する。例えば、代表的なマウスにおけるホタルルシフェラーゼ陽性がんの光子密度ヒートマップを、5日目(処置の2日前)、及び、8日目(TFP+PBLの24時間後)に生成することができる。
【0251】
本明細書の実施例の節に記載のもの、ならびに、当該技術分野で公知のものを含めたその他のアッセイもまた、本発明の抗メソテリンTFP構築物を評価するために用いることができる。
【0252】
治療への応用
メソテリン関連疾患及び/または障害
ある態様では、本発明は、メソテリンの発現を伴う疾患を処置するための方法を提供する。ある態様では、本発明は、腫瘍の一部がメソテリンに対して陰性であり、かつ、腫瘍の一部がメソテリンに対して陽性である、疾患を処置する方法を提供する。例えば、本発明のTFPは、メソテリンの発現の上昇を伴う疾患の処置を受けた対象の処置に有用であり、メソテリンのレベルを高める処置を受けた当該対象は、メソテリンのレベルの上昇を伴う疾患を呈する。
【0253】
ある態様では、本発明は、哺乳動物T細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結した抗メソテリンTFPを含むベクターに関する。ある態様では、本発明は、メソテリンを発現する腫瘍の処置における使用のためのメソテリンTFPを発現する組換えT細胞を提供し、当該メソテリンTFPを発現する組換えT細胞は、メソテリンTFP-Tと称する。ある態様では、本発明のメソテリンTFP-Tは、腫瘍細胞を、その表面に発現した少なくとも1つの本発明のメソテリンTFPと接触させることが可能であり、当該TFP-Tは、当該腫瘍細胞を標的とし、かつ、当該腫瘍の成長を阻害する。
【0254】
ある態様では、本発明は、メソテリンを発現する腫瘍細胞の成長の阻害方法であって、当該腫瘍細胞を、本発明のメソテリンTFP T細胞と接触させることを含み、当該TFP-Tが、抗原に応答して活性化され、かつ、当該がん細胞を標的化し、当該腫瘍の成長を阻害する、当該方法に関する。
【0255】
ある態様では、本発明は、対象におけるがんを処置する方法に関する。当該方法は、本発明のメソテリンTFP T細胞を、当該対象に投与することを含み、当該がんが、当該対象において処置される。本発明のメソテリンTFP T細胞で処置可能ながんの例として、メソテリンの発現を伴うがんがある。ある態様では、当該がんは、中皮腫である。ある態様では、当該がんは、膵臓癌である。ある態様では、当該がんは、卵巣癌である。ある態様では、当該がんは、胃癌である。ある態様では、当該がんは、肺癌である。ある態様では、当該がんは、子宮内膜癌である。幾つかの実施形態では、メソテリンTFP療法は、1つ以上のさらなる療法と組み合わせて使用することができる。
【0256】
本発明は、T細胞がTFPを発現するように遺伝子組換えされ、かつ、当該TFP発現T細胞を、それを必要とするレシピエントに注入する、一種の細胞療法を含む。注入した細胞は、レシピエントの腫瘍細胞を死滅させることが可能である。抗体療法と異なり、TFP発現T細胞は、インビボで複製することができ、長期にわたって持続し、そのことは、腫瘍の持続的制御につなげることができる。様々な態様では、患者に投与した当該T細胞、または、それらの後代は、患者に当該T細胞を投与した後に、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、2年、3年、4年、または、5年間、当該患者内に留まる。
【0257】
また、本発明は、T細胞が、TFPを一過的に発現するように、例えば、インビトロで転写したRNAで改変し、かつ、当該TFP発現T細胞を、それを必要とするレシピエントに注入する、一種の細胞療法も含む。注入した細胞は、レシピエントの腫瘍細胞を死滅させることができる。したがって、様々な態様では、患者に投与した当該T細胞は、患者に当該T細胞を投与した後に、1ヶ月未満、例えば、3週間、2週間、または、1週間は留まる。
【0258】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、当該TFP発現T細胞によって誘発される抗腫瘍免疫反応は、能動または受動免疫反応とし得るものであり、あるいは、直接対間接免疫反応によるものとし得る。ある態様では、当該TFPを形質導入したT細胞は、当該メソテリン抗原を発現するヒトがん細胞に反応して特定の炎症性サイトカイン分泌及び強力な細胞溶解反応を呈し、可溶性メソテリン阻害に耐性であり、バイスタンダー死滅を媒介し、及び/または、定着したヒト腫瘍の退行を媒介する。例えば、メソテリンを発現する腫瘍の異種フィールド内の抗原を持たない腫瘍細胞は、隣接する抗原陽性がん細胞にすでに反応しているメソテリン再指向性T細胞による間接的な破壊に対して敏感になり得る。
【0259】
ある態様では、本発明のヒトTFP改変T細胞は、哺乳動物における、エキソビボでの免疫付与、及び/または、インビボ療法のための一種のワクチンであり得る。ある態様では、当該哺乳動物は、ヒトである。
【0260】
エキソビボでの免疫付与に関しては、当該細胞を哺乳動物に投与する前に、以下のうちの少なくとも1つ、i)当該細胞の増殖、ii)TFPをコードする核酸を当該細胞に導入する、または、iii)当該細胞の凍結保存、がインビトロで行われる。
【0261】
エキソビボ手順は、当該技術分野で周知であり、その詳細を以下に述べる。要するに、細胞を、哺乳動物(例えば、ヒト)から単離し、そして、本明細書に開示したTFPを発現するベクターで、遺伝子組換えする(すなわち、インビトロで、形質導入またはトランスフェクトする)。当該TFPで改変した細胞を、哺乳動物レシピエントに投与して、治療効果を得ることができる。当該哺乳動物レシピエントを、ヒトとし得るものであり、そして、当該TFPで改変した細胞は、当該レシピエントに関して自己移植とすることができる。あるいは、当該細胞は、当該レシピエントに関して同種異系、同系、または、異種とすることができる。
【0262】
造血幹細胞及び前駆細胞のエキソビボでの増殖手順は、参照により本明細書に援用する米国特許第5,199,942号に記載されており、それを、本発明の細胞に適用することができる。その他の適切な方法は、当該技術分野で公知であり、したがって、本発明は、当該細胞のあらゆる特定のエキソビボでの増殖方法に限定されない。要するに、T細胞のエキソビボでの培養及び増殖は、(1)末梢血採取、または、骨髄外植片から、哺乳動物由来のCD34+造血幹細胞及び前駆細胞を採取し、及び、(2)かかる細胞を、エキソビボで増殖させることを含む。米国特許第5,199,942号に記載の細胞増殖因子に加えて、flt3-L、IL-1、IL-3、及び、c-kitリガンドなどのその他の因子を、当該細胞の培養及び増殖のために用いることができる。
【0263】
エキソビボでの免疫付与に関する細胞ベースのワクチンの使用に加えて、本発明は、患者の抗原に対する免疫反応を誘発するインビボでの免疫付与のための組成物及び方法もまた提供する。
【0264】
一般的に、本明細書に記載した活性化及び増殖した細胞は、免疫不全の個体で生じる疾患の処置及び予防に利用し得る。特に、本発明のTFPで改変したT細胞を、メソテリンの発現を伴う疾患、障害、及び、病態の処置に用いる。特定の態様では、本発明の細胞を、メソテリンの発現を伴う疾患、障害、及び、病態を発症する危険性がある患者の処置に用いる。したがって、本発明は、治療有効量の本発明のTFPで改変したT細胞を、メソテリンの発現を伴う疾患、障害、及び、病態の処置または予防を必要とする対象に投与することを含む、当該処置または予防のための方法を提供する。
【0265】
ある態様では、本発明のTFP-T細胞は、がん、または、悪性腫瘍、または、前癌状態などの増殖性疾患を処置するために使用し得る。ある態様では、当該がんは、中皮腫である。ある態様では、当該がんは、膵臓癌である。ある態様では、当該がんは、卵巣癌である。ある態様では、当該がんは、胃癌である。ある態様では、当該がんは、肺癌である。ある態様では、当該がんは、子宮内膜癌である。さらに、メソテリン発現に関連する疾患としては、例えば、非定型、及び/または、非古典的癌、悪性腫瘍、前癌状態、または、メソテリンを発現する増殖性疾患があるが、これらに限定されない。メソテリンの発現に関連するがんに関連しない適応症としては、例えば、自己免疫疾患(例えば、紅斑性狼瘡)、炎症性障害(アレルギー、及び、喘息)、及び、移植があるが、これらに限定されない。
【0266】
本発明のTFPで改変したT細胞は、単独で投与し得るものであり、または、希釈剤、及び/または、その他の成分、例えば、IL-2、あるいは、その他のサイトカイン、または、細胞集団と組み合わせて医薬組成物として投与し得る。
【0267】
また、本発明は、メソテリンを発現する細胞集団の当該増殖を阻害、または、当該集団を減少させる方法であって、メソテリンを発現する細胞を含む細胞集団を、メソテリンを発現する細胞に結合する本発明の抗メソテリンTFP-T細胞と接触させる、ことを含む方法を提供する。特定の態様では、本発明は、メソテリンを発現するがん細胞集団の増殖を阻害、または、当該集団を減少させる方法であって、メソテリンを発現するがん細胞集団を、メソテリンを発現する細胞に結合する本発明の抗メソテリンTFP-T細胞と接触させる、ことを含む方法を提供する。ある態様では、本発明は、メソテリンを発現するがん細胞集団の増殖を阻害、または、当該集団を減少させる方法であって、メソテリンを発現するがん細胞集団を、メソテリンを発現する細胞に結合する本発明の抗メソテリンTFP-T細胞と接触させる、ことを含む方法を提供する。特定の態様では、本発明の抗メソテリンTFP-T細胞は、細胞、及び/または、がん細胞の分量、数、量、または、割合を、メソテリンを発現する細胞に関連するがんを有する対象、または、動物モデルにおいて、ネガティブコントロールと比較して、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、または、少なくとも99%低下させる。ある態様では、当該対象は、ヒトである。
【0268】
また、本発明は、メソテリンを発現する細胞に関連する疾患(例えば、メソテリンを発現するがん)を予防、処置、及び/または、管理する方法であって、必要とする対象に対して、メソテリンを発現する細胞に結合する本発明の抗メソテリンTFP-T細胞を投与する、ことを含む方法を提供する。ある態様では、当該対象は、ヒトである。メソテリンを発現する細胞に関連する疾患の例として、自己免疫疾患(紅斑性狼瘡など)、炎症性疾患(アレルギー、及び、喘息など)、及び、がん(膵臓癌、卵巣癌、胃癌、肺癌、または、子宮内膜癌、あるいは、メソテリンを発現する非定型がんなど)があるが、これらに限定されない。
【0269】
また、本発明は、メソテリンを発現する細胞に関連する疾患を予防、処置、及び/または、管理する方法であって、必要とする対象に対して、メソテリンを発現する細胞に結合する本発明の抗メソテリンTFP-T細胞を投与する、ことを含む方法を提供する。ある態様では、当該対象はヒトである。
【0270】
本発明は、メソテリンを発現する細胞に関連するがんの再発を予防する方法であって、それを必要とする対象に対して、メソテリンを発現する細胞に結合する本発明の抗メソテリンTFP-T細胞を投与する、ことを含む方法を提供する。ある態様では、当該方法は、それを必要とする対象に対して、メソテリンを発現する細胞に結合する本明細書に記載した抗メソテリンTFP-T細胞の有効量を、別の治療の有効量と組み合わせて投与することを含む。
【0271】
併用療法
本明細書に記載したTFP-発現細胞は、他の公知の作用物質及び治療と組み合わせて使用し得る。本明細書で使用する「組み合わせて」投与したとは、当該対象に対して、2つ(または、それ以上)の異なる治療が、障害を負った当該対象の苦痛の過程において送達されること、例えば、当該2つ以上の処置が、当該対象が当該障害と診断された後、当該障害が治癒または除去される前、または、処置が他の理由のために中止される前に送達されることを意味する。幾つかの実施形態では、投与に関して重複があるように、1つの処置の送達は、第2の送達の開始時に依然として行われている。このことは、本明細書では「同時」または「同時送達」と称することがある。その他の実施形態では、一方の処置の送達は、他方の処置の送達の開始前に終了する。いずれかの場合の幾つかの実施形態では、当該処置は、併用投与が故に、より効果的である。例えば、当該第1の処置が無いままに、当該第2の処置を施す場合、または、類似の状況が当該第1の治療で認められる場合よりも、当該第2の処置は、例えば、当該第2の処置で少なくとも同等の効果が認められ、または、当該第2の治療が症状を大幅に減少するなど、より効果的である。幾つかの実施形態では、送達は、症状、または、障害に関連するその他のパラメーターの減少が、他方の非存在下で送達される1つの処置で認められるものよりも大きくなるようにする。当該2つの処置の効果は、一部相加的、完全相加的、または、相加的を超えることがある。当該送達は、送達された第1の処置の効果が、第2の処置が送達される際に、依然として検出可能とすることができる。
【0272】
幾つかの実施形態では、「少なくとも1つの追加の治療薬」は、TFP発現細胞を含む。また、同じもしくは異なる標的抗原、または同じ標的抗原にある同じもしくは異なるエピトープに結合する複数のTFPを発現するT細胞を提供する。また、T細胞の第1のサブセットが第1のTFPを発現し、かつ、T細胞の第2のサブセットが第2のTFPを発現するT細胞の集団を提供する。
【0273】
本明細書に記載したTFP発現細胞、及び、少なくとも1つの追加の治療薬は、同時に、同じもしくは別々の組成物で、または、連続的に投与することができる。連続投与については、本明細書に記載したTFP発現細胞を最初に投与し、次いで、当該追加の作用物質を投与することができ、あるいは、当該投与の順序を逆にすることもできる。
【0274】
さらなる態様では、本明細書に記載したTFP発現細胞は、手術、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、及び、FK506、抗体、または、その他の免疫消失薬、例えば、アレムツズマブ、抗CD3抗体、または、その他の抗体療法、サイトキシン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン類、及び、放射線照射と組み合わせて治療計画に使用し得る。また、本明細書に記載したTFP発現細胞は、ペプチドワクチン、例えば、Izumoto et al.2008 J Neurosurg 108:963-971に記載のものと組み合わせて使用し得る。さらなる態様では、本明細書に記載したTFP発現細胞は、骨髄細胞分化のプロモーター(例えば、オールトランスレチノイン酸)、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)増殖の阻害剤(例えば、c-キット受容体の阻害剤、または、VEGF阻害剤)、MDSC機能の阻害剤(例えば、COX2阻害剤、または、ホスホジエステラーゼ-5阻害剤)、または、MDSCの治療的除去(例えば、ドキソルビシン及びシクロホスファミドを用いた処置などの化学療法レジメンを使用するもの)とも組み合わせて使用し得る。MDSCの増殖を予防し得るその他の治療薬として、アミノ-ビホスホネート、ビホスファナート、シルデナフィル、及び、タダラフィル、ニトロアスピリン、ビタミンD3、及び、ゲムシタビンがある(例えば、Gabrilovich and Nagaraj、Nat.Rev.Immunol、(2009)v9(3):162-174)を参照されたい)。
【0275】
ある実施形態では、当該対象に、TFP発現細胞の投与に伴う副作用を減少または改善する作用物質を投与することができる。TFP発現細胞の投与に伴う副作用として、サイトカイン放出症候群(CRS)、及び、マクロファージ活性化症候群(MAS)、別名、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)があるが、これらに限定されない。CRSの症状として、高熱、吐き気、一過性低血圧、低酸素症などがある。したがって、本明細書に記載した方法は、本明細書に記載したTFP発現細胞を対象に投与し、そして、さらにTFP発現細胞での処置に起因する可溶性因子レベルの上昇を管理する作用物質を投与することを含むことができる。ある実施形態では、当該対象内で上昇する可溶性因子は、IFN-γ、TNFα、IL-2、IL-6、及び、IL-8の1つ以上である。したがって、この副作用を処置するために投与する作用物質は、これらの可溶性因子の1つ以上を中和する作用物質とすることができる。かかる作用物質として、ステロイド、TNFαの阻害剤、及び、IL-6の阻害剤があるが、これらに限定されない。TNFα阻害剤の例は、エンタネルセプトである。IL-6阻害剤の例は、トシリズマブ(toc)である。
【0276】
ある実施形態では、当該対象に、TFP発現細胞の活性を高める作用物質を投与することができる。例えば、ある実施形態では、当該作用物質は、抑制分子を阻害する作用物質とすることができる。抑制分子、例えば、プログラム死1(PD1)は、幾つかの実施形態では、TFP発現細胞の免疫エフェクター応答の開始能力を弱めることができる。抑制分子の例として、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、及び、TGFRベータがある。抑制分子の、例えば、DNA、RNA、または、タンパク質レベルでの阻害による阻害は、TFP発現細胞の性能を最適化することができる。実施形態では、抑制性核酸、例えば、抑制性核酸、例えば、dsRNA、例えば、siRNA、または、shRNAは、当該TFP発現細胞において、抑制分子の発現を阻害するために使用することができる。ある実施形態では、当該阻害剤は、shRNAである。ある実施形態では、当該抑制分子は、TFP発現細胞内で阻害される。これらの実施形態では、当該抑制分子の発現を阻害するdsRNA分子を、当該TFPの成分、例えば、すべての成分をコードする核酸に結合する。ある実施形態では、抑制シグナルの阻害剤は、例えば、抑制分子に結合する抗体または抗体断片とすることができる。例えば、当該作用物質を、PD1、PD-L1、PD-L2、または、CTLA4(例えば、イピリムマブ(別名、MDX-010、及び、MDX-101、Yervoy(商標)として市販されている、Bristol-Myers Squibb、トレメリムマブ(Pfizerから入手可能なIgG2モノクローナル抗体、チシリムマブとして公知であった、CP-675,206))に結合する抗体また抗体断片とすることができる。ある実施形態では、当該作用物質は、TIM3に結合する抗体または抗体断片である。ある実施形態では、当該作用物質は、LAG3に結合する抗体または抗体断片である。
【0277】
幾つかの実施形態では、当該T細胞は、レンチウイルス、例えば、CD4+またはCD8+T細胞を特異的に標的とするレンチウイルスを介して、インビボで(例えば、遺伝子導入で)改変し得る。(例えば、Zhou et al.,J.Immunol.(2015)195:2493-2501を参照されたい)。
【0278】
幾つかの実施形態では、TFP発現細胞の活性を高める作用物質を、例えば、第1のドメイン及び第2のドメインを含む融合タンパク質とすることができ、当該第1のドメインは、抑制分子またはその断片であり、かつ、当該第2のドメインは、ポジティブシグナルに関連するポリペプチド、例えば、本明細書に記載した細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドである。幾つかの実施形態では、ポジティブシグナルに関連している当該ポリペプチドは、CD28、CD27、ICOSの共刺激ドメイン、例えば、CD28、CD27、及び/または、ICOSの細胞内シグナル伝達ドメイン、及び/または、一次シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3ゼータ、例えば、本明細書に記載したものを含むことができる。ある実施形態では、当該融合タンパク質は、当該TFPを発現するのと同じ細胞で発現される。別の実施形態では、当該融合タンパク質は、細胞、例えば、抗メソテリンTFPを発現しないT細胞によって発現される。
【0279】
幾つかの実施形態では、当該核酸がコードする抗メソテリン結合ドメインである抗原結合ドメイン、または、抗メソテリン結合ドメインを含む抗体、または、当該核酸がコードする抗メソテリン結合ドメインを発現する細胞を含む、ヒトまたはヒト化抗体ドメインは、最大で、約200nM、100nM、75nM、50nM、25nM、20nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、または、0.01nM、及び/または、少なくとも約100nM、75nM、50nM、25nM、20nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、または、0.01nM、及び/または、約200nM、100nM、75nM、50nM、25nM、20nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、または、0.01nMの親和性値を有する。
【0280】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、TFP発現細胞、例えば、本明細書に記載した複数のTFP発現細胞を、医薬的または生理学的に許容される担体、希釈剤、または、賦形剤の1つ以上と組み合わせて含み得る。かかる組成物は、緩衝液、例えば、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水など、炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロース、または、デキストラン、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド、または、アミノ酸、例えば、グリシン、酸化防止剤、キレート剤、例えば、EDTA、または、グルタチオン、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、及び、保存料を含み得る。本発明の組成物を、ある態様では、静脈内投与のために製剤する。
【0281】
本発明の医薬組成物は、処置(または、予防)する疾患に適切な方法で投与し得る。投与の量及び頻度は、当該患者の病態、及び、当該患者の疾患のタイプ及び重症度などの要因によって決定するが、適切な用量は、臨床試験で決定し得る。
【0282】
ある実施形態では、当該医薬組成物は、例えば、エンドトキシン、マイコプラズマ、複製可能なレンチウイルス(RCL)、p24、VSV-G核酸、HIV gag、残存抗CD3/抗CD28被覆ビーズ、マウス抗体、保存ヒト血清、ウシ血清アルブミン、ウシ血清、培地成分、ベクターパッケージング細胞、または、プラスミド成分、細菌、及び、真菌からなる群から選択した混入物質を実質的に含んでおらず、例えば、当該混入物質が検出レベルで存在しない。ある実施形態では、当該細菌は、Alcaligenes faecalis、Candida albicans、Escherichia coli、Haemophilus influenza、Neisseria meningitides、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Streptococcus pneumonia、及び、Streptococcus pyogenes A群からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0283】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」「腫瘍阻害有効量」、または、「治療量」が示される場合、投与する本発明の組成物の正確な量は、当該患者(対象)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染または転移の程度、及び、病態の個体差を考慮して、医師が決定することができる。本明細書に記載したT細胞を含む医薬組成物は、10~10細胞/体重kg、幾つかの例では、10~10細胞/体重kgで、これらの範囲内のすべての整数値を含めた用量で投与できる、ということが一般的には言える。また、T細胞組成物は、これらの用量において複数回投与し得る。当該細胞は、免疫療法で広く知られている注入技術を用いて、投与することができる(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676,1988を参照されたい)。
【0284】
特定の態様では、望ましくは、活性化T細胞を対象に投与し、そして、次いで、再採血を行い(または、アフェレーシスを行い)、そこから本発明にしたがってT細胞を活性化し、及び、これらの活性化、及び、増殖したT細胞を当該患者に再注入し得る。このプロセスは、数週間ごとに複数回行うことができる。特定の態様では、T細胞は、10cc~400ccの採血から活性化することができる。特定の態様では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、または、100ccの採血から活性化される。
【0285】
目的の組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸液、注入、または、移植を含むあらゆる好都合な方法で行い得る。本明細書に記載した組成物は、患者に対して、経動脈的に、皮下に、皮内に、腫瘍内に、節内に、髄内に、筋肉内に、静脈内(i.v.)に注射し、または、腹腔内に投与し得る。ある態様では、本発明のT細胞組成物は、患者に対して、皮内または皮下注射で投与する。ある態様では、本発明のT細胞組成物は、i.v.注射で投与する。当該T細胞組成物は、腫瘍、リンパ節、または、感染部位に直接に注入し得る。
【0286】
特定の例示的な態様では、対象は、白血球を採取し、エキソビボで濃縮または枯渇させて目的の細胞、例えば、T細胞を選択、及び/または、単離する白血球除去療法を受け得る。これらのT細胞分離株は、当該技術分野で公知の方法で増殖され、そして、1つ以上の本発明のTFP構築物が導入し得るように処理され、それによって、本発明のTFP発現T細胞を生成し得る。それを必要とする対象は、その後に、標準的な大量化学療法での治療に続いて、末梢血幹細胞移植を受け得る。特定の態様では、当該移植の後、または、それと同時に、対象は、本発明の増殖したTFP T細胞の注入を受ける。さらなる態様では、増殖した細胞を、手術の前または後に投与する。
【0287】
患者に投与する上記処置での用量は、処置を受ける病態の正確な性質、及び、処置のレシピエントによって変わる。ヒトへの投与に対する用量のスケーリングは、当該技術分野で公知の慣行にしたがって行うことができる。例えば、アレムツズマブの投与量は、一般的には、成人患者に対して、1~約100mgの範囲であり、通常は、1~30日間、毎日、投与する。好ましい1日用量は、1~10mg/日であるが、幾つかの例では、(米国特許第6,120,766号に記載された)さらに大量の40mg/日までを使用し得る。
【0288】
ある実施形態では、当該TFPを、例えば、インビトロ転写を用いてT細胞内に導入し、当該対象(例えば、ヒト)は、本発明のTFP T細胞の最初の投与、及び、それに続く1回以上の本発明のTFP T細胞の投与を受けるが、当該それに続く1回以上の投与は、先の投与の後、15日未満で、例えば、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または、2日で実施される。ある実施形態では、本発明のTFP T細胞の複数回の投与が、当該対象(例えば、ヒト)に対して1週間ごとに施され、例えば、本発明のTFP-T細胞の2、3、または、4回の投与が、1週間ごとに施される。ある実施形態では、当該対象(例えば、ヒト対象)は、1週間ごとに複数回のTFP T細胞の投与(例えば、1週間ごとに2、3、または、4回の投与)(本明細書ではサイクルとも称する)を受け、続いて、1週間は、TFP T細胞の投与をせず、その後に、1回以上のさらなるTFP T細胞の投与(例えば、1週間ごとに複数回の当該TFP T細胞の投与)が当該対象に施される。別の実施形態では、当該対象(例えば、ヒト対象)は、複数サイクルのTFP T細胞を受け、そして、各サイクルの間隔は、10、9、8、7、6、5、4、または、3日未満である。ある実施形態では、当該TFP T細胞は、1週間ごとに3回の投与のために、1日おきに投与される。ある実施形態では、本発明のTFP T細胞を、少なくとも2、3、4、5、6、7、8週間、または、それ以上投与する。
【0289】
ある態様では、メソテリンTFP T細胞を、レンチウイルスなどのレンチウイルス性ウイルスベクターを用いて生成する。その方法で生成するTFP-T細胞は、安定的にTFPを発現する。
【0290】
ある態様では、TFP T細胞は、形質導入後、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日間、TFPベクターを一過性に発現する。TFPの一過性の発現は、RNA TFPベクターの送達によってもたらすことができる。ある態様では、当該TFP RNAを、エレクトロポレーションによってT細胞に形質導入する。
【0291】
一過性に発現するTFP T細胞(特に、マウスscFv担持TFP T細胞)を用いて処置する患者に生じ得る潜在的な問題は、複合的処置後のアナフィラキシーである。
【0292】
この理論に拘束されるものではないが、かかるアナフィラキシー反応は、体液性抗TFP反応を発症している患者、すなわち、抗IgEアイソタイプを有する抗TFP抗体によって引き起こされる可能性があると考えられる。患者の抗体産生細胞は、抗原への曝露が10~14日間中断された場合に、IgGアイソタイプ(このものはアナフィラキシーを引き起こさない)からIgEアイソタイプへのクラススイッチを受けていると思われる。
【0293】
患者が一過性TFP処置(RNA形質導入によって生成されるものなど)の過程で抗TFP抗体反応を生成する危険性が高い場合、TFP T細胞注入の中断は、10~14日より長く続けるべきではない。
【実施例
【0294】
本発明を、以下の実験実施例を参照して、さらに詳細に説明する。これらの実施例は、例示の目的でのみ提供し、特に明記しない限りは、限定することを意図していない。したがって、本発明は、以下の実施例には一切限定されないものと解釈されるものとし、本明細書で提供する教示の結果として明らかになる、ありとあらゆる変形を包含すると解釈されるものとする。さらに説明することなく、当業者には、上記した説明及び以下の例示的な実施例を用いて、本発明の化合物を製造及び利用すること、ならびに、特許請求の範囲に記載の方法を実施することが可能であると考えられる。以下の実施例は、本発明の様々な態様を具体的に挙げるが、これらは、本開示の残余の部分を限定する、とは一切解釈されない。
【0295】
実施例1:TFP構築物
抗メソテリンTFP構築物を、短いリンカー(SL):AAAGGGGSGGGGSGGGGSLE(配列番号2)、または、長いリンカー(LL):AAAIEVMYPPPYLGGGGSGGGGSGGGGSLE(配列番号3)をコードするDNA配列のいずれかで、CD3またはTCR DNA断片に連結した抗メソテリン scFv DNA断片を、XbaI及びEcoR1部位でp510ベクター((System Biosciences(SBI))にクローニングして、操作する。
【0296】
生成した抗メソテリンTFP構築物は、p510_抗メソテリン_LL_TCRα(抗メソテリンscFv-長いリンカー-ヒト完全長T細胞受容体α鎖)、p510_抗メソテリン_LL_TCRαC(抗メソテリンscFv-長いリンカー-ヒトT細胞受容体α定常ドメイン鎖)、p510_抗メソテリン_LL_TCRβ(抗メソテリンscFv-長いリンカー-ヒト完全長T細胞受容体β鎖)、p510_抗メソテリン_LL_TCRβC(抗メソテリンscFv-長いリンカー-ヒトT細胞受容体β定常ドメイン鎖)、p510_抗メソテリン_LL_CD3γ(抗メソテリンscFv-長いリンカー-ヒトCD3γ鎖)、p510_抗メソテリン_LL_CD3δ(抗メソテリンscFv-長いリンカー-ヒトCD3δ鎖)、p510_抗メソテリン_LL_CD3ε(抗メソテリンscFv-長いリンカー-ヒトCD3ε鎖)、p510_抗メソテリン_SL_TCRβ(抗メソテリンscFv-短いリンカー-ヒト完全長T細胞受容体β鎖)、p510_抗メソテリン_SL_CD3γ(抗メソテリンscFv-短いリンカー-ヒトCD3γ鎖)、p510_抗メソテリン_SL_CD3δ(抗メソテリンscFv-短いリンカー-ヒトCD3δ鎖)、p510_抗メソテリン_SL_CD3ε(抗メソテリンscFv-短いリンカー-ヒトCD3ε鎖)である。
【0297】
抗メソテリンCAR構築物であるp510_抗メソテリン_28ζは、抗メソテリン、部分的なCD28の細胞外ドメイン、CD28の膜貫通ドメイン、CD28の細胞内ドメイン、及び、CD3ゼータをコードする合成DNAを、XbaI及びEcoR1部位で、p510ベクターにクローニングすることで生成する。
【0298】
実施例2:抗体配列
抗体配列の生成
ヒトメソテリンポリペプチドの標準的な配列は、Uniprot受託番号Q13421(または、Q13421-1)である。ヒトメソテリンポリペプチド、及び、その断片またはドメインに特異的に結合することができる抗体ポリペプチドを提供する。抗メソテリン抗体を、様々な技術を用いて生成することができる(例えば、(Nicholson et al,1997)を参照されたい)。マウス抗メソテリン抗体を出発物質として使用する場合、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)処置、すなわち、このTFP.メソテリン構築物で形質導入したT細胞で処置を受ける対象では、これらマウス特異的残基が、ヒト-抗マウス抗原(HAMA)応答を誘導し得るマウス抗メソテリン抗体のヒト化が臨床環境では望まれる。ヒト化は、マウス抗メソテリン抗体由来のCDR領域を、適切なヒト生殖細胞系列のアクセプターフレームワークに移植すること、任意にCDR、及び/または、フレームワーク領域に対する他の修飾によって達成される。本明細書で提供した、抗体及び抗体断片残基の番号付けは、Kabatに従う(Kabat E.A. et al,1991;Chothia et al,1987)。
【0299】
scFvの生成
ヒトまたはヒト化抗メソテリンIgGを用いてTFP構築物のためのscFv配列を生成する。ヒトまたはヒト化V及びVドメインをコードするDNA配列を取得し、これら構築物のコドンを、任意に、ヒト由来の細胞での発現に最適化する。当該scFvに現れるV及びVドメインの順序は様々であり(すなわち、V-V、または、V-V配向)、及び、「G4S」または「GS」サブユニットの3つのコピー(GS)が、これら可変ドメインを連結して、scFvドメインを生成する。抗メソテリンscFvプラスミド構築物は、任意のFlag、His、または、その他のアフィニティタグを有することができ、HEK293またはその他の適切なヒトまたは哺乳動物の細胞株にエレクトロポレートして、そして、精製する。検証アッセイとして、FACSによる結合分析、Proteonを用いる動態解析、及び、メソテリン発現細胞の染色がある。
【0300】
例示的な抗メソテリンV及びVドメイン、CDR、及び、それらをコードするヌクレオチド配列は、米国特許第9,272,002号、同第8,206,710号、同第9,023,351号、同第7,081,518号、同第8,911,732号、同第9,115,197号、及び、同第9,416,190号、及び、米国特許公開第20090047211号、に記載のものとすることができる。その他の例示的な抗メソテリンV及びVドメイン、CDR、及び、それらをそれぞれコードするヌクレオチド配列を、それぞれ、以下のモノクローナル抗体、ラット抗メソテリン抗体420411、ラット抗メソテリン抗体420404、マウス抗メソテリン抗体MN-1、マウス抗メソテリン抗体MB-G10、マウス抗メソテリン抗体ABIN233753、ウサギ抗メソテリン抗体FQS3796(3)、ウサギ抗メソテリン抗体TQ85、マウス抗メソテリン抗体TA307799、ラット抗メソテリン抗体295D、ラット抗メソテリン抗体B35、マウス抗メソテリン抗体5G157、マウス抗メソテリン抗体129588、ウサギ抗メソテリン抗体11C187、マウス抗メソテリン抗体5B2、ウサギ抗メソテリン抗体SP74、ウサギ抗メソテリン抗体D4X7M、マウス抗メソテリン抗体C-2、マウス抗メソテリン抗体C-3、マウス抗メソテリン抗体G-1、マウス抗メソテリン抗体G-4、マウス抗メソテリン抗体K1、マウス抗メソテリン抗体B-3、マウス抗メソテリン抗体200-301-A87、マウス抗メソテリン抗体200-301-A88、ウサギ抗メソテリン抗体EPR2685(2)、ウサギ抗メソテリン抗体EPR4509、または、ウサギ抗メソテリン抗体PPI-2e(IHC)とすることができる。
【0301】
幾つかの実施形態では、配列番号58、59、及び、55(それぞれ、SD1、SD4、及び、SD6)に記載されたものなど、単一ドメイン(VHH)バインダーを使用する。
【0302】
TCRサブユニットの供給源
ヒトT細胞受容体(TCR)複合体のサブユニットは、すべて、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含む。ヒトTCR複合体は、CD3イプシロンポリペプチド、CD3ガンマポリペプチド、CD3デルタポリペプチド、CD3ゼータポリペプチド、TCRアルファ鎖ポリペプチド、及び、TCRベータ鎖ポリペプチドを含む。ヒトCD3イプシロンポリペプチドの標準的な配列は、Uniprot受託番号P07766である。ヒトCD3ガンマポリペプチドの標準的な配列は、Uniprot受託番号P09693である。ヒトCD3デルタポリペプチドの標準的な配列は、Uniprot受託番号P043234である。ヒトCD3ゼータポリペプチドの標準的な配列は、Uniprot受託番号P20963である。ヒトTCRアルファ鎖の標準的な配列は、Uniprot受託番号Q6ISU1である。ヒトTCRベータ鎖C領域の標準的な配列は、Uniprot受託番号P01850であり、ヒトTCRベータ鎖V領域の配列は、P04435である。
【0303】
ヒトCD3イプシロンポリペプチドの標準的な配列は、
MQSGTHWRVLGLCLLSVGVWGQDGNEEMGGITQTPYKVSISGTTVILTCPQYPGSEILWQHNDKNIGGDEDDKNIGSDEDHLSLKEFSELEQSGYYVCYPRGSKPEDANFYLYLRARVCENCMEMDVMSVATIVIVDICITGGLLLLVYYWSKNRKAKAKPVTRGAGAGGRQRGQNKERPPPVPNPDYEPIRKGQRDLYSGLNQRRI(配列番号4)である。
【0304】
ヒトCD3ガンマポリペプチドの標準的な配列は、
MEQGKGLAVLILAIILLQGTLAQSIKGNHLVKVYDYQEDGSVLLTCDAEAKNITWFKDGKMIGFLTEDKKKWNLGSNAKDPRGMYQCKGSQNKSKPLQVYYRMCQNCIELNAATISGFLFAEIVSIFVLAVGVYFIAGQDGVRQSRASDKQTLLPNDQLYQPLKDREDDQYSHLQGNQLRRN(配列番号5)である。
【0305】
ヒトCD3デルタポリペプチドの標準的な配列は、
MEHSTFLSGLVLATLLSQVSPFKIPIEELEDRVFVNCNTSITWVEGTVGTLLSDITRLDLGKRILDPRGIYRCNGTDIYKDKESTVQVHYRMCQSCVELDPATVAGIIVTDVIATLLLALGVFCFAGHETGRLSGAADTQALLRNDQVYQPLRDRDDAQYSHLGGNWARNKS(配列番号6)である。
【0306】
ヒトCD3ゼータポリペプチドの標準的な配列は、
MKWKALFTAAILQAQLPITEAQSFGLLDPKLCYLLDGILFIYGVILTALFLRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号7)である。
【0307】
ヒトTCRアルファ鎖の標準的な配列は、
MAGTWLLLLLALGCPALPTGVGGTPFPSLAPPIMLLVDGKQQMVVVCLVLDVAPPGLDSPIWFSAGNGSALDAFTYGPSPATDGTWTNLAHLSLPSEELASWEPLVCHTGPGAEGHSRSTQPMHLSGEASTARTCPQEPLRGTPGGALWLGVLRLLLFKLLLFDLLLTCSCLCDPAGPLPSPATTTRLRALGSHRLHPATETGGREATSSPRPQPRDRRWGDTPPGRKPGSPVWGEGSYLSSYPTCPAQAWCSRSALRAPSSSLGAFFAGDLPPPLQAGAA(配列番号8)である。
【0308】
ヒトTCRα鎖C領域の標準的な配列は、
PNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS(配列番号9)である。
【0309】
ヒトTCRα鎖V領域CTL-L17の標準的な配列は、
MAMLLGASVLILWLQPDWVNSQQKNDDQQVKQNSPSLSVQEGRISILNCDYTNSMFDYFLWYKKYPAEGPTFLISISSIKDKNEDGRFTVFLNKSAKHLSLHIVPSQPGDSAVYFCAAKGAGTASKLTFGTGTRLQVTL(配列番号10)である。
【0310】
ヒトTCRベータ鎖C領域の標準的な配列は、
EDLNKVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSVSYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDF(配列番号11)である。
【0311】
ヒトTCRベータ鎖V領域CTL-L17の標準的な配列は、
MGTSLLCWMALCLLGADHADTGVSQNPRHNITKRGQNVTFRCDPISEHNRLYWYRQTLGQGPEFLTYFQNEAQLEKSRLLSDRFSAERPKGSFSTLEIQRTEQGDSAMYLCASSLAGLNQPQHFGDGTRLSIL(配列番号12)である。
【0312】
ヒトTCRベータ鎖V領域YT35の標準的な配列は、
MDSWTFCCVSLCILVAKHTDAGVIQSPRHEVTEMGQEVTLRCKPISGHNSLFWYRQTMMRGLELLIYFNNNVPIDDSGMPEDRFSAKMPNASFSTLKIQPSEPRDSAVYFCASSFSTCSANYGYTFGSGTRLTVV(配列番号13)である。
【0313】
TCRドメイン及びscFvからのTFPの生成
メソテリンscFvを、リンカー配列、例えば、GS、(GS)、(GS)、または、(GS)を用いて、CD3イプシロン、または、その他のTCRサブユニット(1Cを参照されたい)に、組換え技術で連結する。様々なリンカー、及び、scFvの構造を利用する。TFPの生成のため、TCRアルファ鎖、及び、TCRベータ鎖を、完全長ポリペプチド、または、それらの定常ドメインのみのいずれかとして用いた。TCRアルファ及びTCRベータ鎖のあらゆる可変配列が、TFPの作製を可能にする。
【0314】
TFP発現ベクター
提供するものは、プロモーター(サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー-プロモーター)、分泌を可能にするためのシグナル伝達配列、ポリアデニル化シグナル、及び、転写ターミネーター(ウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子)、エピソーム複製、及び、原核生物における複製を可能にする要素(例えば、SV40起点、及び、ColE1、または、当該技術分野で公知のその他のもの)、及び、選択を可能にする要素(アンピシリン耐性遺伝子、及び、ゼオシンマーカー)を含む発現ベクターである。
【0315】
好ましくは、TFPをコードする核酸構築物を、レンチウイルス発現ベクターにクローニングし、そして、発現を、メソテリン+標的細胞に応答するTFP.メソテリン形質導入T細胞(「メソテリン.TFP」または「メソテリン.TFP T細胞」または「TFP.メソテリン」または「TFP.メソテリンT細胞」)のエフェクターT細胞応答の量と質に基づいて検証する。エフェクターT細胞応答として、細胞拡大、増殖、倍加、サイトカイン産生、及び、標的細胞溶解または細胞溶解活性(すなわち、脱顆粒)があるが、これらに限定されない。
【0316】
TFP.メソテリンレンチウイルス転移ベクターを、VSV-G偽型レンチウイルス粒子にパッケージされるゲノム材料を産生するために用いる。レンチウイルス転移ベクターのDNAを、VSV-Gの3つのパッケージング成分、gag/pol、及び、revをリポフェクタミン(登録商標)試薬と組み合わせて混合して、それらを、一緒に、HEK-293細胞(胚腎臓、ATCC(登録商標)CRL-1573(商標))にトランスフェクトする。24及び48時間後に、培地を回収し、濾過し、超遠心分離で濃縮する。得られたウイルス調製物を、-80Cで保存する。形質導入単位の数は、Sup-T1(T細胞リンパ芽球性リンパ腫、ATCC(登録商標)CRL-1942(商標))細胞での滴定で決定する。再指向性TFP.メソテリンT細胞は、新たなナイーブT細胞を、例えば、抗CD3抗CD28ビーズで24時間活性化し、その後、適切な数の形質導入単位を加えて、所望の割合の形質導入T細胞を得ることで、産生する。これらの改変T細胞を、細胞が休止し、そして、その大きさが減少するまで増殖させ、その時点で細胞を後の分析用に凍結保存する。細胞の数と大きさは、Coulter Multisizer(商標)IIIを用いて測定する。凍結保存の前に、形質導入した(TFP.メソテリンを細胞表面で発現する)細胞の割合、及び、その発現の相対的蛍光強度を、フローサイトメトリー分析で決定する。ヒストグラムのプロットから、これらのTFPの相対的発現レベルを、形質導入した割合とそれらの相対的蛍光強度とを比較することで調べる。
【0317】
幾つかの実施形態では、複数のウイルスベクターを用いたT細胞形質導入によって複数のTFPの導入を行う。
【0318】
ヒト化TFP再指向性T細胞の細胞溶解活性、増殖能力、及び、サイトカイン分泌の評価
TFP.メソテリンT細胞が、細胞表面で発現したTFPを産生すること、標的腫瘍細胞を死滅させること、増殖すること、及び、サイトカインを分泌することの機能的能力を、当該技術分野で公知のアッセイを用いて決定する。
【0319】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC、例えば、ナイーブT細胞が、T細胞、すなわち、CD4+及びCD8+リンパ球に対するネガティブ選択で得られる正常なアフェレーシスドナー由来の血液)を、ヒトインターロイキン-2(IL-2)で処理し、その後、抗CD3x抗CD28ビーズで、例えば、10%RPMIにて、37℃、5%COで活性化し、その後、TFPをコードするレンチウイルスベクターで形質導入する。フローサイトメトリーアッセイを用いて、例えば、抗FLAG抗体、または、抗マウス可変ドメイン抗体によって、TFPの細胞表面での存在を確認する。サイトカイン(例えば、IFN-γ)産生は、ELISA、または、その他のアッセイを用いて測定する。
【0320】
実施例3:ヒトALLマウスモデルにおけるヒトTFP T細胞の有効性
初代ヒトALL細胞は、インビトロでそれらを培養せずに、免疫不全マウス(例えば、NSGまたはNOD)で成長することができる。同様に、培養ヒトALL細胞株は、かかるマウスにおいて白血病を誘導することができる。ALL担持マウスは、例えば、HALLX5447モデルにおいて、ヒトTFP.メソテリンT細胞の効力を調べるために用いることができる。このモデルでの読み出しは、ALL細胞を静脈内(i.v.)注入した後のヒトTFP.メソテリンT細胞のi.v.投与の非存在下及び存在下でのマウスの生存率である。
【0321】
実施例4:多重TFPポリペプチドの実証、及び、多重ヒト化TFP再指向性T細胞の使用
本明細書で提供したTFPポリペプチドは、内因性TCRサブユニットのポリペプチドと機能的に会合して、機能的TCR複合体を形成することができる。ここで、レンチウイルスベクターにおける複数のTFPを用いて、機能的多重組換えTCR複合体を生成するために、T細胞を形質導入する。例えば、i)CD3デルタポリペプチド由来の細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインと、メソテリン特異的scFv抗体断片とを有する第1のTFP、及び、ii)CD3ガンマポリペプチド由来の細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインと、メソテリン特異的抗体断片を有する第2のTFPを含むT細胞を提供する。当該第1のTFP及び第2のTFPは、互いに相互作用することができ、また、内因性TCRサブユニットのポリペプチドと相互作用することができ、それにより、機能的TCR複合体を形成する。
【0322】
これらの多重ヒト化TFP.メソテリンT細胞の使用は、上記した実施例2及び3に示す通り、液性及び固形腫瘍で実証することができる。
【0323】
実施例5:TFPで形質導入したT細胞の調製
レンチウイルスの産生
適切な構築物をコードするレンチウイルスを、以下のようにして調製する。5×10個のHEK293FT細胞を、100mmのディッシュに播種し、培養密度70~90%になるまで一晩置く。示されたDNAプラスミド2.5μg、及び、レンチウイルスパッケージングミックス(ALSTEM、カタログ番号VP100)20μLを、0.5mLの血清を含まないDMEMまたはOpti-MEM(登録商標)I培地で希釈し、そして、緩やかに混合する。別のチューブで、NanoFect(登録商標)トランスフェクション試薬(ALSTEM、カタログ番号NF100)の30μLを、0.5mLの血清を含まないDMEMまたはOpti-MEM(登録商標)I培地で希釈し、そして、緩やかに混合する。これらNanoFect/DMEM、及び、DNA/DMEM溶液を、その後に混合し、そして、10~15秒間ボルテックスし、その後に、このDMEM-プラスミド-NanoFect混合物を、室温で、15分間、インキュベートする。前段階からの完全トランスフェクション複合体を、細胞のプレートに滴下し、そして、揺動してプレート内のトランスフェクション複合体を均等に分散させる。このプレートを、その後、加湿した5%COインキュベーター内で、37℃で、一晩、インキュベートする。翌日、上清を、10mLの新たな培地で置換し、ViralBoost(500x、ALSTEM、カタログ番号VB100)の20μLを追加する。これらのプレートを、その後、さらに24時間、37℃で、インキュベートする。レンチウイルスを含む上清を、その後、50mLの滅菌蓋つきコニカル遠心チューブに採取し、そして、氷上に置く。4℃で、15分間、3000rpmで遠心分離した後に、透明な上清を、低タンパク質結合性0.45μm滅菌フィルターで濾過し、続いて、ウイルスを、4℃で、1.5時間、25,000rpmの超遠心分離(Beckmann、L8-70M)で単離する。このペレットを取り出し、そして、DMEM培地に再懸濁し、次に、レンチウイルス濃度/力価を、定量的RT-PCRで、Lenti-X qRT-PCR滴定キット(Clontech;カタログ番号631235)を用いて確立する。あらゆる残余のプラスミドDNAは、DNaseIで処理して除去する。このウイルスストック調製物は、すぐに感染に用いるか、あるいは、等分して、後の使用のために-80℃で保存する。
【0324】
PBMC単離
末梢血単核細胞(PBMC)は、全血またはバフィーコートのいずれかから調製する。全血は、10mLのヘパリンバキュテナーに採取し、すぐに処理するか、あるいは、4℃で、一晩、保存する。抗凝固処理した全血約10mLを、50mLのコニカル遠心チューブで、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液と総体積20mLになるまで混合する(PBS、pH7.4、Ca2+/Mg2+を含まない)。この血液/PBS混合物の20mLを、その後、静かに15mLのFicoll-Paque(登録商標)PLUS(GE Healthcare、17-1440-03)の表面に載せ、その後、400gで、30~40分間、室温で、ブレーキをかけずに遠心分離する。
【0325】
バフィーコートは、Research Blood Components(Boston,MA)から購入した。Leucosep(登録商標)チューブ(Greiner bio-one)は、15mLのFicoll-Paque(登録商標)(GE Health Care)を加えて準備し、そして、1000gで、1分間、遠心分離する。バフィーコートは、PBS(pH7.4、Ca2+もMg2+も含まない)で1:3に希釈する。この希釈バフィーコートを、Leucosepチューブに移し、そして、1000gで、15分間、ブレーキをかけずに遠心分離する。希釈血漿/Ficoll界面に認められたPBMCを含む細胞層を、Ficollの混入を最小限にするように注意深く取り出す。次いで、残余のFicoll、血小板、及び、血漿タンパク質は、このPBMCを、40mLのPBSで、3回、室温で、200gで、10分間の遠心分離することで洗浄して除去する。次いで、これらの細胞を、血球計で計数する。この洗浄PBMCを、CAR-T培地(AIM V-AlbuMAX(登録商標)(BSA)(Life Technologies)で、一度、洗浄を行い、同培地は、5%AB血清、及び、1.25μg/mLアンホテリシンB(Gemini Bioproducts,Woodland,CA)、100U/mLペニシリン、及び、100μ/mLストレプトマイシン)を含む。あるいは、この洗浄PBMCを断熱バイアルに移し、そして、-80℃で、24時間凍結し、その後、後の使用のために液体窒素にて保存する。
【0326】
T細胞の活性化
全血またはバフィーコートのいずれかから調製したPBMCを、ウイルスの形質導入に先立って、抗ヒトCD28及びCD3抗体結合磁気ビーズで、24時間刺激する。新たに単離したPBMCを、5%AB血清、及び、1.25μg/mLアンホテリシンB(Gemini Bioproducts)、100U/mLペニシリン、及び、100μg/mLストレプトマイシンを含む)CAR-T培地(AIM V-AlbuMAX(BSA)(Life Technologies)で、huIL-2を用いずに、一度、洗浄を行い、その後、300IU/mLのヒトIL-2(1000xストックから;Invitrogen)を含むCAR-T培地に、1×10細胞/mLの最終濃度で再懸濁する。前もってPBMCを凍結していた場合には、これらを解凍し、そして、予め温めておいた(37℃)cDMEM培地(Life Technologies)の9mLに、1×10細胞/mLで再懸濁して、10%FBS、100U/mLペニシリン、及び、100μg/mLストレプトマイシンの存在下で、1×10細胞/mLの濃度とし、次いで、CAR-T培地で、一度、洗浄し、続いて、CAR-T培地に、1×10細胞/mLで再懸濁し、そして、上記のようにして、IL-2を添加する。
【0327】
活性化の前に、抗ヒトCD28及びCD3抗体結合磁気ビーズ(例えば、Invitrogen、Life Technologiesから入手可能)を、磁気ラックを使用して、1mLの滅菌1xPBS(pH7.4)で、3回、洗浄をして、ビーズをこの溶液から分離し、その後、300IU/mLのヒトIL-2と共にCAR-T培地に再懸濁し、最終濃度を4×10ビーズ/mLにする。次いで、PBMC及びビーズを、25μL(1×10個のビーズ)のビーズを、1mLのPBMCに移して、ビーズ対細胞の比率を1:1にして混合する。次いで、所望の数の分割量を、12ウェルの低付着性または未処理の細胞培養プレートの単一のウェルに分配し、そして、ウイルスの形質導入の前に、37℃、5%COで、24時間、インキュベートする。
【0328】
T細胞の形質導入/トランスフェクション及び増殖
PBMCの活性化後、細胞を、37℃、5%COで、48時間、インキュベートする。レンチウイルスを氷上で解凍し、そして、5×10個のレンチウイルスを、培地1mL当たり2μLのTransplus(商標)(Alstem)(最終希釈1:500)と共に、1×10個の細胞を各ウェルに加える。細胞を、さらに24時間インキュベートし、続いて、ウイルスの添加を繰り返す。あるいは、レンチウイルスを氷上で解凍し、それぞれのウイルスを、5μg/mLのポリブレン(Sigma)の存在下、5または50MOIで加える。細胞を、室温で、100分間、100gで遠心する。次いで、細胞を、300IU/mLのヒトIL-2の継続的な存在下で、6~14日間成長させる(総インキュベート時間は、必要とする最終的なCAR-T細胞の数による)。細胞濃度を、2~3日ごとに分析し、その際に、培地を追加して細胞懸濁液を1×10細胞/mLに維持する。
【0329】
幾つかの例では、活性化したPBMCを、インビトロで転写した(IVT)mRNAでエレクトロポレートする。ある実施形態では、ヒトPBMCを、Dynabeads(登録商標)(ThermoFisher)で、1対1の比率で、3日間、300IU/mlの組換えヒトIL-2(R&D System)(Milyeni PharmaceuticalsのTransAct T細胞などのその他の刺激試薬を使用し得る)の存在下で、刺激する。これらのビーズを、エレクトロポレーションの前に除去する。これらの細胞を洗浄し、OPTI-MEM培地(ThermoFisher)に、2.5×10細胞/mLの濃度で、再懸濁した。この細胞懸濁液(5×10細胞)の200μLを、2mmのギャップのElectroporation Cuvettes Plus(商標)(Harvard Apparatus BTX)に移し、そして、氷上で、予冷する。10μgのIVT TFP mRNAを、この細胞懸濁液に加える。次いで、このmRNA/細胞混合物を、ECM830 Electro Square Wave Porator(Harvard Apparatus BTX)を用いて、200Vで、20ミリ秒間エレクトロポレートする。このエレクトロポレーションの直後に、これらの細胞を、新たな細胞培養培地(AIM V AlbuMAX(BSA)無血清培地+5%ヒトAB血清+300IU/ml IL-2)に移し、そして、37℃で、インキュベートする。
【0330】
細胞染色によるTFP発現の検証
レンチウイルスの形質導入、または、mRNAのエレクトロポレーションに続いて、抗メソテリンTFPの発現を、抗マウスFab抗体を用いてフローサイトメトリーにて確認し、マウス抗メソテリンscFvを検出する。T細胞を、3mLの染色用緩衝液(PBS、4%BSA)で3回洗浄し、そして、ウェル当たり1×10個の細胞で、PBSに再懸濁する。死細胞の排除のため、細胞を、LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Aqua Dead Cell Stain(Invitrogen)で、30分間、氷上で、インキュベートする。細胞を、PBSで2回洗浄し、そして、50μLの染色用緩衝液に再懸濁する。Fc受容体をブロックするため、1μLの1:100希釈正常ヤギIgG(BD Bioscience)を各チューブに加え、そして、氷中で、10分間、インキュベートする。FACS緩衝液1.0mLを、各チューブに加え、よく混合し、そして、細胞を、300gで、5分間、遠心分離してペレットにする。scFv TFPの表面発現を、Zenon(登録商標)R-フィコエリスリン標識ヒトMSLN IgG1 Fc、または、ヒトIgG1アイソタイプコントロールで検出する。1μgの抗体を、それぞれの試料に添加し、そして、氷上で、30分間、インキュベートする。次いで、細胞を、2回洗浄し、そして、BD bioscienceからのAnti-CD3 APC(クローン、UCHT1)、anti-CD4-Pacific blue(クローンRPA-T4)、nti-CD8APCCy7(クローンSKI)を用いて、表面マーカーについて染色する。フローサイトメトリーを、LSRFortessaTM X20(BD Biosciences)を用いて行い、そして、データを、FACS divaソフトウェアを用いて取得し、そして、FlowJo(登録商標)(Treestar,Inc.Ashland,OR)で解析する。
【0331】
例示的な結果を図5Aに示しており、同図は、CD8(抗CD8 APCCy7、y軸)とメソテリン(「MSLN」)(Zenon(登録商標)R-フィコエリスリン標識hMSLN IgG、x軸)について染色した活性化PBMC細胞の表面発現分析を示す。左から右に向かって、非形質導入細胞、または、抗MSLN-CD3ε、抗MSLN-CD28ζ、及び、抗MSLN-41BBζ構築物のいずれかで形質導入した細胞を示す。CD8+、MSLN+細胞の割合を、各パネルの右上隅に示す。
【0332】
図5Bは、組織内単一ドメイン(「SD」)メソテリンバインダーを含むTFP構築物で形質導入した、MSLN及びGFPについて染色した活性化PBMC細胞からの同様の結果を示す。最上列は(左から右へ)、非形質導入細胞、及び、ポジティブコントロール抗MSLN-CD3εTFP(「SSI」)で形質導入した細胞を示す。第2~4列は、GFPタグを付けた(左から右へ)CD3εTFP、CD3γTFP、TCRβTFP、及び、CD28ζCAR構築物で形質導入した細胞における、抗MSLNバインダーSD1、SD4、及び、SD6のそれぞれを示す。GFP+、MSLN+細胞の割合を、各パネルの右上隅に示す。
【0333】
実施例6:フローサイトメトリーによる細胞傷害性アッセイ
メソテリンに対してポジティブまたはネガティブのいずれかである標的細胞を、蛍光染料であるカルボキシフルオレセイン二酢酸サクシニミジルエステル(CFSE)で標識する。これらの標的細胞を、形質導入していないか、あるいは、コントロールのCAR-T構築物で形質導入、または、TFPで形質導入したエフェクターT細胞と混合する。示されたインキュベーション時間の後、死対生CFSE標識標的細胞、及び、ネガティブコントロールの標的細胞のパーセンテージを、各エフェクター/標的細胞培養に対して、フローサイトメトリーで決定する。各T細胞ポジティブ標的細胞培養における標的細胞の生存率を、標的細胞のみを含むウェルに対して計算する。
【0334】
エフェクターT細胞の細胞傷害活性は、エフェクター及び標的細胞の共インキュベーション後のエフェクターT細胞を含まない、または、含む標的細胞における生存標的細胞の数を、フローサイトメトリーを用いて比較することで測定する。メソテリンTFPまたはCAR-T細胞での実験において、当該標的細胞は、メソテリンポジティブ細胞であり、一方で、ネガティブコントロールとして使用する細胞は、メソテリンネガティブコントロール細胞である。
【0335】
標的細胞を、一度、洗浄し、そして、PBSに、1×10細胞/mLで再懸濁する。蛍光染料のカルボキシフルオレセイン二酢酸サクシニミジルエステル(CFSE)(ThermoFisher)を、濃度0.03μMで、この細胞懸濁液に加え、そして、これらの細胞を、室温で、20分間、インキュベートする。反応体積の5倍の体積で、完全細胞培養培地(RPMI-1640+10%HI-FBS)を、この細胞懸濁液に加えることで、この標識化反応を停止し、そして、室温で、さらに2分間、これらの細胞をインキュベートする。これらの細胞を、遠心分離してペレットにし、そして、細胞傷害性培地(フェノールレッドを含まないRPMI1640(Invitrogen)プラス5%AB血清(Gemini Bioproducts)に、2×10細胞/mLで、再懸濁する。CFSE標識標的細胞懸濁液(10,000細胞に相当する)の50マイクロリットルを、96ウェルのU底プレート(Corning)の各ウェルに加える。
【0336】
抗メソテリンTFP構築物で形質導入したエフェクターT細胞を、ネガティブコントロールとしての未形質導入T細胞と一緒に洗浄し、そして、細胞傷害性培地に2×10細胞/mL、または、1×10細胞/mLで懸濁した。エフェクターT細胞懸濁液50μL(100,000または50,000細胞に相当する)を、播種した標的細胞に加えて、総体積100μLにて、それぞれ、エフェクター対標的の比率を、10対1または5対1にする。次いで、これらの培養物を混合し、沈降させ、そして、37℃で、5%COで、4時間、インキュベートする。このインキュベートの直後に、7AAD(7-アミノアクチノマイシンD)(BioLegend)を、製造業者が推奨するようにして、この培養細胞に加え、BD LSRFortessa(商標)X-20(BD Biosciences)でフローサイトメトリーを行う。フローサイトメトリーデータの解析は、FlowJo(登録商標)ソフトウェア(TreeStar,Inc.)を用いて行う。
【0337】
標的細胞の生存率は、エフェクターT細胞と標的細胞とを含む試料での生存標的細胞数(CFSE+7-AAD-)を、標的細胞だけを含む試料での生存標的細胞数(CFSE+7-AAD-)で除して計算する。エフェクター細胞の細胞傷害性は、標的細胞の死滅率=100%-細胞の生存率として計算する。
【0338】
抗MSLN-28ζCAR構築物で形質導入されたT細胞は、未形質導入のT細胞、あるいは、非メソテリン特異的CARコントロールで形質導入したT細胞との比較で、メソテリン発現細胞に対する細胞傷害性を実証し得る。しかしながら、抗メソテリン-CD3εで形質導入したT細胞は、抗メソテリンCARコントロールよりも標的に対して効果的な細胞傷害性を誘導し得る。また、抗メソテリン-CD3γTFPも、5~10:1のエフェクター:標的の比率で、抗メソテリンCARで認められるよりも高い強力な細胞傷害性を媒介し得る。多少の細胞傷害性が、抗メソテリン-TCRα、及び、抗メソテリン-TCRβTFPで認められ得る。同様の結果が、代替ヒンジ領域で構築した抗メソテリンTFPで得られ得る。また、メソテリン発現標的細胞に対する細胞傷害性は、抗メソテリン-CD3ε、または、抗メソテリン-CD3γTFPで形質導入したT細胞の方が、抗メソテリン-CARで形質導入したT細胞よりも大きくなり得る。
【0339】
また、メソテリンに特異的なTFPをコードするmRNAでエレクトロポレートしたT細胞も、メソテリン発現細胞に対する強い細胞傷害性を示し得る。コントロールまたは抗メソテリンTFP構築物のいずれでもメソテリンネガティブ細胞の有意な死滅は認められなかったが、メソテリン発現細胞のメソテリン特異的な死滅は、抗メソテリン-CD3εSLまたは抗メソテリン-CD3γSL TFPのいずれかで形質導入したT細胞で認められ得る。
【0340】
実施例8:リアルタイム細胞傷害性アッセイによる細胞傷害性の決定
また、抗メソテリンTFPは、リアルタイム細胞傷害性アッセイ(RTCA)形式でも抗メソテリンCARよりも優れた細胞傷害性を示し得る。このRTCAアッセイは、特殊な96ウェルプレートの各ウェルで、リアルタイムで、接着性の標的細胞単層の電気インピーダンスを測定し、そして、最終的な読み出しを、細胞指数と呼ばれる値として示す。細胞指数の変化は、同時にインキュベートしたT細胞エフェクターによる標的細胞の死滅の結果として、標的細胞単層の破壊を示す。したがって、エフェクターT細胞の細胞傷害性は、標的細胞及びエフェクターT細胞の双方を含むウェルの細胞指数と、標的細胞のみを含むウェルのものとを比較した変化として評価することができる。
【0341】
接着性標的細胞を、DMEM、10%FBS、1%抗生物質-抗真菌剤(Life Technologies)で培養する。当該RTCAの調製のため、50μLの、例えば、DMEM培地を、Eプレート(ACEA Biosciences,Inc,カタログ番号:JL-10-156010-1A)の適切なウェルに加える。次いで、このプレートを、RTCA MP機器(ACEA Biosciences,Inc.)内に配置し、そして、適切なプレートのレイアウトとアッセイスケジュールとを、製造業者のマニュアルの記載に従って、RTCA2.0ソフトウェアに入力する。ベースラインの測定は、100回の測定に対して、15分毎に行う。次いで、体積100μLの1×10個の標的細胞を、各アッセイウェルに加え、そして、これらの細胞を、15分間沈殿させる。このプレートを、読み取り機に戻し、そして、読み取りを再開する。
【0342】
翌日、エフェクターT細胞を洗浄し、そして、細胞傷害性培地(フェノールレッドを含まないRPMI1640(Invitrogen)プラス5%AB血清(Gemini Bioproducts;100-318))に再懸濁する。次いで、このプレートを、機器から取り出し、そして、細胞傷害性培地(フェノールレッドを含まないRPMI1640+5%AB血清)に懸濁したエフェクターT細胞を、100,000細胞または50,000細胞で各ウェルに加えて、エフェクター対標的の比率を、それぞれ、10対1または5対1にする。そして、このプレートを、機器に戻す。測定は、100測定について2分ごとに行い、そして、1000測定について15分ごとに行う。
【0343】
当該RTCAアッセイにおいて、メソテリンで形質導入した細胞の死滅は、エフェクター細胞を添加した後に、細胞のみ、または、コントロールのCAR構築物で形質導入したT細胞と共インキュベートした細胞と比較して、細胞指数の時間依存性の減少によって示されるように、抗メソテリン-28ζCARで形質導入したT細胞で形質導入したT細胞によって認められ得る。しかしながら、抗メソテリン-CD3εTFP発現T細胞による標的細胞の死滅は、抗メソテリンCARで認められるよりも深く、迅速であり得る。例えば、抗メソテリン-CD3ε TFPで形質導入したT細胞を添加して4時間以内に、メソテリン発現標的細胞の死滅は基本的に完了し得る。その他のCD3及びTCR構築物を含み複数のTFP構築物で形質導入したT細胞には、殆どまたは全く死滅が観察され得ない。同様の結果が、代替ヒンジ領域で構築した抗メソテリンTFPで取得し得る。メソテリンで形質導入した標的細胞に対する細胞傷害性は、抗メソテリン-CD3εまたは抗メソテリン-CD3γ TFPで形質導入したT細胞の方が、抗メソテリン-CARで形質導入したT細胞よりも大きくなり得る。
【0344】
TFPで形質導入したT細胞の細胞傷害活性は、形質導入に使用したウイルス量(MOI)に対して用量依存的となり得る。メソテリンポジティブ細胞の死滅の増加は、抗メソテリン-CD3εTFPレンチウイルスのMOIの増加とともに観察され、そして、TFPの形質導入と細胞傷害活性の関係をさらに強化し得る。
【0345】
RTCAアッセイの例示的な結果を、図6に示す。リンカー:GGGGSGGGGSGGGGSLE(配列番号1)をコードするDNA配列でCD3εDNA断片に連結した抗MSLN scFv DNA断片を、XbaI及びEcoRI部位で(SBIの)p510ベクターにクローニングすることによって、抗MSLN TFP構築物を改変した。生成したこの抗MSLN TFP構築物は、p510_抗MSLN_SS1_CD3ε(抗MSLN SS1 scFv-リンカー-ヒトCD3ε鎖)であった。
【0346】
全長メソテリン(NM_005823)を、pCMV6_XL4_Mesothelin(Origene)からPCR増幅し、そして、ギブソンリコンビナント反応によって、XbaI及びEcoRI制限消化したp527a(pCDH-EF1-MCS-T2A-Puro)(SBI)にクローニングした。
【0347】
当該RTCAの標的細胞は、メソテリンポジティブHeLa細胞(子宮頸部腺癌、ATCC(登録商標)CCL-2(商標))であり、そして、メソテリンネガティブPC-3細胞(前立腺腺癌、ATCC(登録商標)CRL-1435(商標))は、ネガティブコントロールとして用いた。接着性標的細胞を、10%FBSと1%抗生物質-抗真菌剤(Life Technologies)とを含むDMEMで培養した。
【0348】
細胞傷害性を示す正規化細胞指数を決定した。活性化PBMCは、未処理のもの(トレース#1)、非形質導入のもの(トレース#2)、または、空のベクター(トレース#3)、抗MSLN TFP(「抗MSLN-CD3ε TRuC」、トレース#4)、CD28ζ(トレース#5)、または、41BBζ(トレース#6)シグナル伝達ドメインを有する抗MSLN CAR(それぞれ「抗MSLN-28ζCAR」及び「抗MSLN-41BBζCAR」)で形質導入したものであった。
【0349】
図6Aに示すように、抗MSLN TFP形質導入T細胞は、ネガティブコントロールと比較して、当該標的MSLNポジティブHeLa細胞を効率的に死滅した。対照的に、いずれの構築物も、当該MSLNネガティブPC-3細胞を、効率的に死滅しなかった(図6B)。
【0350】
単一ドメイン抗メソテリンバインダーを有する組織内TFP構築物を用いて、同様の実験を行った。図6Cは、2名の別個のヒトドナー由来のT細胞(上と下)を用いた、高密度標的細胞株(HeLa-(MSLNhigh))におけるMSLNポジティブ細胞の死滅を示す。抗MSLNバインダーSD1(左)、SD4(中央)、及び、SD6(右)を有するTFP T細胞についての細胞死滅トレースを示す。活性化PBMCを、非形質導入(トレース#1)、または、CD3εTFP(トレース#2)、CD3γTFP(トレース#3)、TCRβTFP(トレース#4)、または、CD28ζCAR(トレース#5)で形質導入した。細胞傷害性を示す正規化細胞指数を、リアルタイム細胞分析器(RTCA)アッセイで決定した。図示したように、非形質導入のもの以外は、すべてのT細胞が、癌細胞を死滅することができた。
【0351】
実施例7:高密度または低密度の標的を有する細胞におけるルシフェラーゼベースの細胞障害性アッセイ
当該ルシフェラーゼベースの細胞傷害性アッセイ(「Luc-Cyto」アッセイ)は、共培養した後の残存生標的細胞におけるルシフェラーゼ酵素活性を間接的に測定することで、TFP T細胞及びCAR T細胞の細胞傷害性を評価する。Luc-Cytoアッセイに使用される高密度標的細胞は、HeLa-MSLNhigh細胞であり、また、使用された低密度標的細胞は、低レベルのメソテリンを発現するPC3細胞(PC3-MSLNlow)であり、それぞれは、ホタルルシフェラーゼを発現するように安定に形質導入した。ホタルルシフェラーゼをコードする当該DNAを、GeneArt(登録商標)(Thermo Fisher(登録商標))で合成し、そして、単一プロモーターレンチウイルスベクターpCDH527A-1(System Bioscience)のマルチクローニングサイトに挿入した。
【0352】
当該ホタルルシフェラーゼを担持するレンチウイルスを、上記したようにしてパッケージした。次いで、HeLa-MSLNhighまたはPC3-MSLNlow細胞を、当該レンチウイルスを担持するホタルルシフェラーゼ構築物で、24時間、形質導入し、そして、ピューロマイシン(5μg/mL)で選択した。HeLa-luc-MSLNhigh及びPC3-luc-MSLNlow-ルシフェラーゼ細胞の生成を、当該細胞内のルシフェラーゼ酵素活性をBright-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)を用いて測定して確認をした。
【0353】
2名の異なるヒトドナーに由来する別々の集団に、空の発現ベクター(「NT」)、または、以下のTFPまたはCAR、すなわち、抗MSLN(ポジティブコントロール、「SS1」、親和性11nM)、抗MSLN-SD1(親和性25nM)、抗MSLN-SD4(親和性6nM)、または、抗MSLN SD6(親和性0.59nM)を、それぞれ、CD3εTFP、CD3γTFP、TCRβTFP、及び、CH28ζCARのフォーマットにて形質導入をした。形質導入したT細胞の2つの集団を、HeLa-MSLNhigh図7)、または、PC3-MSLNlow図8)とインキュベートした。
【0354】
標的細胞を、96ウェルプレートに、1ウェルあたり5000個の細胞で播種した。TFP T、CAR T、または、コントロール細胞を、標的細胞に対して、エフェクターと標的とを、1:1(黒色棒)または1:5(灰色棒)の比率で加えた。次いで、生体標的細胞でのルシフェラーゼ酵素活性を、Bright-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイシステムで測定する前に、細胞の混合物を、37℃で、5%COで、24時間培養した。これらの細胞をペレットにして、そして、ルシフェラーゼ基質を含む培地に再懸濁した。ルシフェラーゼは、細胞溶解によって放出されるので、したがって、ルシフェラーゼ活性が強くなると、それに対応して細胞死の割合が大きくなる。
【0355】
高レベルのMSLNを発現している細胞を用いた結果を、図7に示す。T細胞を含まない(「標的のみ」)、形質導入した空ベクター(「NT」)、抗MSLN(ポジティブコントロール、「SS1」)、または、組織内の抗メソテリンバインダーSD1(図7A)、SD4(図7B)、及び、SD6(図7C)を、それぞれ、CD3εTFP、CD3γTFP、TCRβTFP、及び、CD28ζCARのフォーマットで含む抗メソテリンTFP T細胞を含むサンプルでの死滅した細胞の%を示す。各グラフにおいて、黒色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:1であることを表し、灰色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:5であることを表している。図示したように、すべてのTFP-T細胞、CAR-T細胞、及び、ポジティブコントロールSS1は、MSLNを効率的に死滅する。
【0356】
図8は、低レベルのメソテリンを発現する標的細胞株(PC3-MSLNlow)に対する抗MSLN CAR T細胞、及び、TFP T細胞の活性を示す一連のグラフである。T細胞を含まない(「標的のみ」)、形質導入した空ベクター(「NT」)、抗MSLN(ポジティブコントロール、「SS1」)、または、TFPフォーマットCD3ε(図8A)、CD3γ(図8B)、TCRβ(図8C)、及び、CD28ζCAR(図8D)における抗メソテリン構築物SD1、SD4、及び、SD6を含むサンプルでの死滅した細胞の%を示す。各グラフにおいて、黒色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:1であることを表し、灰色棒は、標的細胞に対するT細胞の比率が1:5であることを表している。第2のT細胞ドナーについても、同様の結果が認められた。
【0357】
図示したように、標的細胞に対するT細胞の1:1の比率は、予期した通り、標的細胞の最高レベルの死滅をもたらした。加えて、すべてのTFP T細胞及びCAR T細胞は、高レベルのMSLNを発現する細胞において、同様の活性を示した。
【0358】
実施例8:FACSによるT細胞の活性化の測定
抗MSLN CAR及びTFP構築物を発現するT細胞の活性化を、MSLN+及びMSLN-K562細胞を用いて行い、そして、図9に示す。上記したようにして、活性化PBMCを、2日間連続して50MOIのLVで形質導入し、そして、増殖させた。形質導入して8日後に、PBMCの共培養物を、細胞傷害性培地(フェノールレッドを含まないRPMI1640(Invitrogen)プラス5%AB血清(Gemini Bioproducts;100-318)において、E:Tが1:1の比率(0.2×10個の各細胞型)である標的細胞(MSLNを過剰発現するK562細胞)と組み合わせた。BCMAを過剰発現しているK562細胞を、ネガティブコントロールとして使用した。共培養を開始して24時間後に、細胞を採取し、PBSで3回洗浄し、そして、氷上で、30分間、Live/Dead Aquaで染色した。Fc受容体をブロックするために、ヒトFcブロック(BD)を添加し、そして、室温で、10分間、インキュベートした。続いて、これらの細胞を、抗CD3 APC(クローン、UCHT1)、抗CD8 APCcy7(クローンSK1)、BD Biosciencesの抗CD69-Alexa Fluor(登録商標)700(クローンFN50)、及び、抗CD25-PE(クローンBC96、eBioscience)で染色した。これらの細胞を、2回洗浄し、そして、BD LSRII-Fortessaによって分析した。FlowJo(登録商標)分析ソフトウェア(Tree star、Inc.)を用いて、データを上記したようにして分析した。
【0359】
図9Aに示したように、図中の左から右に、非形質導入のT細胞、空のベクターで形質導入したT細胞、抗MSLN-CD3ε TFP、抗MSLN-28ζ CAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入したT細胞である。MSLN-細胞と共培養した細胞を最上列に示し、そして、MSLN+標的細胞と共培養した細胞を最下列に示す。次いで、表面活性化マーカーCD69及びCD25に特異的な抗体で細胞を染色した。抗CD69で染色した細胞の数はx軸に対応しており、そして、抗CD25で染色した細胞の数はy軸に対応している。示したように、抗メソテリンCAR及びTFP構築物を発現するT細胞は、MSLN-細胞との共培養と比較して、高レベルのCD69及びCD25発現によって実証されているように、MSLN+細胞との培養によって活性化された(図9B)。MSLN-(白色棒)、及び、MSLN+(黒色棒)細胞における各構築物についてのCD25+細胞のパーセンテージを示している。
【0360】
形質導入していないT細胞、または、抗MSLNポジティブコントロールバインダーで形質導入したT細胞(「510-SS1-CD3ε」)のいずれかにおいて、K562 MSLN-細胞(図9C、丸形)、及び、K562-MSLN+細胞(図9C、四角)を用いて、同様の実験を行った。データは、CD25+、CD69+、及び、CD25+/CD69+細胞の合計を表す。図9Dでは、TFPフォーマットCD3ε、CD3γ、TCRβ、及び、CD28ζCARを有するドナーT細胞と組み合わせたK562 MSLN-標的細胞(左パネル)、及び、K562 MSLN+細胞(右パネル)における組織内抗MSLNバインダーSD1(四角)、SD4(丸形)、及び、SD6(三角)についてのデータを示す。第2のT細胞ドナー由来の細胞を用いても、同様の結果が認められた。
【0361】
T細胞の活性化は、グランザイムB産生の分析によって同様に評価し得る。T細胞を、上記したように培養し、増殖させ、そして、グランザイムBについての細胞内染色を、製造業者のキットの説明書(Gemini Bioproducts;100-318)に従って行う。細胞を回収し、PBSで3回洗浄し、そして、ヒトFcブロックで、10分間ブロックした。細胞を、抗CD3 APC(クローン、UCHT1)、及び、抗CD8 APCcy7(クローンSK1)を用いて、4℃で、30分間、表面抗原について染色した。次いで、細胞を、固定/透過処理液(BD Cytofix/Cytoperm固定/透過化キットカタログ番号554714)で、4℃で、20分間、固定し、そして、BD Perm/Wash緩衝液で洗浄した。続いて、細胞を、抗グランザイムB Alexafluor700(Clone GB11)で染色し、BD Perm /Wash緩衝液で2回洗浄し、そして、FACS緩衝液に再懸濁した。BD LSRII-Fortessaでデータを取得し、そして、FlowJo(登録商標)(Tree star Inc.)を使用して分析をした。
【0362】
図10Aに示したように、図中の左から右に、非形質導入のT細胞、空のベクターで形質導入したT細胞、抗MSLN-CD3εTFP、抗MSLN-28ζCAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入したT細胞である。MSLN-細胞と共培養した細胞を最上列に示し、そして、MSLN+標的細胞と共培養した細胞を最下列に示す。抗GrBで染色した細胞の数はx軸に対応しており、そして、抗CD8で染色した細胞の数はy軸に対応している。示したように、抗メソテリンCAR及びTFP構築物を発現するT細胞は、MSLN+細胞と培養することで活性化したが、MSLN-細胞では活性化されなかった。これらの結果を、図10Bに改めて示しており、図中、メソテリンネガティブ(「MSLN-」、白色棒)、及び、メソテリンポジティブ(「MSLN+」、黒色棒)細胞での各構築物についてのGrB+細胞のパーセンテージを示す。これらのデータは、MSLN発現細胞が、T細胞を特異的に活性化する能力を実証している。
【0363】
実施例9:ELISAによるIL-2及びIFN-γ分泌
同族抗原を担持する細胞の認識と関連するエフェクターT細胞活性化と増殖との別の尺度は、インターロイキン-2(IL-2)及びインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)などのエフェクターサイトカインの産生である。
【0364】
ヒトIL-2(カタログ番号EH2IL2、Thermo Scientific)、及び、IFN-γ(カタログ番号KHC4012、Invitrogen)に対するELISAアッセイを、製品添付文書に記載の通りに行う。ある例では、50μLの再構成した標準物または試料を、二連で、96ウェルプレートの各ウェルに加え、続いて、ビオチン化抗体試薬50μLを加える。プレートを数回静かにタップして、これらの試料を混合する。その後、標準物も試料も含まないウェルのすべてに対して標準希釈剤を50μL加え、そして、このプレートを慎重に接着プレートカバーで密封し、その後、室温(20~25℃)で、3時間、インキュベートする。次いで、このプレートカバーを外し、プレートの中を空にし、そして、各ウェルに洗浄用緩衝液を満たす。この洗浄手順を合計3回繰り返し、そして、このプレートを、紙タオルやその他の吸収材料にあてる。調製ストレプトアビジン-HRP溶液100μLを各ウェルに加え、そして、新しいプレートカバーを取り付けた後に、室温で、30分間、インキュベートする。このプレートカバーを再び外し、このプレートの内容物を廃棄し、そして、TMB基質溶液100μLを各ウェルに加える。室温の暗所で、30分間、反応させ、その後、停止液100μLを各ウェルに加える。このプレートを評価する。反応停止の30分以内に、450nm及び550nmに設定したELISAプレートリーダーで吸光度を測定する。450nmの値から550nmの値を引き、未知の試料のIL-2量を、IL-2標準曲線から得られる値と比較して計算する。
【0365】
あるいは、2-プレックスアッセイを、ヒトIL-2磁気ビーズキット(Invitrogen、LHC0021M)と、ヒトIFN-γ磁気ビーズキット(Invitrogen、LHC4031M)とを具備した、ヒトサイトカイン磁気緩衝液試薬キット(Invitrogen、LHB0001M)を用いて行う。要するに、25μLのヒトIL-2及びIFN-γ抗体ビーズを、96ウェルプレートの各ウェルに加え、以下のガイドラインを用いて、すなわち、1x洗浄液の200μLで2回洗浄して、プレートを磁気96ウェルプレートセパレーター(Invitrogen、A14179)に接触させて置き、ビーズを1分間沈殿させ、そして、液体をデカントして洗浄する。次いで、インキュベーション緩衝液の50μLを、プレートの各ウェルに、二連で再構成標準の100μL、または、三連で試料(細胞傷害性アッセイからの上清)の50μLとアッセイ用希釈剤の50μLとを加えて、合計体積を150μLにする。試料を、暗所にて、軌道半径3mmのオービタルシェーカーを用いて、室温で、2時間、600rpmで混合する。同じ洗浄ガイドラインにしたがって、このプレートを洗浄し、そして、100μLのヒトIL-2及びIFN-γビオチン化検出抗体を各ウェルに加える。試料を、暗所にて、軌道半径3mmのオービタルシェーカーを用いて、室温で、1時間、600rpmで混合する。同じ洗浄ガイドラインにしたがって、このプレートを洗浄し、ストレプトアビジン-R-フィコエリトリンの100μLを各ウェルに加える。試料を、暗所にて、軌道半径3mmのオービタルシェーカーを用いて、室温で、30分間、600rpmで混合する。同じ洗浄ガイドラインを用いて、このプレートを3回洗浄し、そして、液体をデカントした後に、これらの試料を1x洗浄液の150μLに再懸濁する。これらの試料を、軌道半径3mmのオービタルシェーカーを用いて、600rpmで、3分間、混合し、そして、4℃で、一晩保存する。その後、同じ洗浄ガイドラインにしたがって、このプレートを洗浄し、そして、これらの試料を、1x洗浄液の150μLに再懸濁する。
【0366】
このプレートを、MAGPIXシステム(Luminex)、及び、xPONENTソフトウェアを用いて読み取る。このデータの解析は、標準曲線とサイトカイン濃度を与えるMILLIPLEX Analystソフトウェアを用いて行う。
【0367】
非形質導入、または、コントロールのCARで形質導入されたT細胞に対して、抗メソテリンTFPで形質導入したT細胞は、内因的にメソテリンを発現する細胞、または、メソテリンで形質導入した細胞のいずれかと共培養した場合に高レベルのIL-2及びIFN-γの双方を産生し得る。対照的に、メソテリンネガティブ細胞または非形質導入細胞との共培養では、TFPで形質導入したT細胞からサイトカインは殆ど、または、全く放出し得ない。先の細胞傷害性のデータと一致して、代替ヒンジ領域で構築した抗メソテリンTFPは、メソテリンを担持する標的細胞との共培養で、同様の結果をもたらし得る。
【0368】
先の細胞傷害性のデータと一致して、抗メソテリン-CD3ε、及び、抗メソテリン-CD3γは、当該TFP構築物で最大レベルのIL-2及びIFN-γを生じ得る。しかしながら、抗メソテリン-CD3ε、及び、抗メソテリン-CD3γTFPで形質導入したT細胞によるサイトカイン産生は、これらのTFPが、さらに高レベルの標的細胞の死滅を示しているにもかかわらず、抗メソテリン-28ζCARを発現するT細胞のそれと同程度であり得る。TFPは、CARよりも効率的に標的細胞を死滅させるが、同程度、または、より低レベルの炎症性サイトカインを放出し得る可能性があるということは、高レベルのこれらサイトカインが、養子CAR-T療法に対する用量制限毒性と関連していることから、CARと比べてTFPの潜在的な利点を表している。
【0369】
例示的な結果を図11に示す。上記したように、活性化PBMCに、2日間連続して、50MOIレンチウイルスを形質導入し、そして、増殖させた。形質導入の8日後に、PBMCの共培養物を、細胞傷害性培地(フェノールレッドを含まないRPMI1640(Invitrogen)プラス5%AB血清(Gemini Bioproducts;100-318))において、E:Tが1:1の比率(0.2×10個の各細胞型)である標的細胞(MSLNを過剰発現するK562細胞)と組み合わせた。BCMAを過剰発現しているK562細胞を、ネガティブコントロールとして使用した。24時間後、細胞を、IFN-γ(図11A)、及び、IL-2(図11B)の発現について、上記したようにしてELISAで分析した。各図において、左から右に、非形質導入のT細胞、空のベクターで形質導入したT細胞、抗MSLN-CD3εTFP、抗MSLN-28ζCAR、または、抗MSLN-41BBζCARで形質導入したT細胞である。MSLN-細胞と共培養した細胞を、白色棒で表しており、また、MSLN+標的細胞と共培養した細胞は黒色棒で表している。図示した通り、抗メソテリンCAR及びTFP構築物を発現するT細胞は、IFN-γ及びIL-2双方の産生が証明しているように、MSLN-細胞ではなく、MSLN+細胞と共培養することで活性化されており、MSLN発現細胞が、T細胞を特異的に活性化する能力をさらに実証している。
【0370】
実施例10:フローサイトメトリーによるCD107aの曝露
T細胞活性化のさらなるアッセイは、休止細胞における細胞質細胞溶解性顆粒の膜に位置するリソソーム関連膜タンパク質(別名、LAMP-1)であるCD107aの表面発現である。エフェクターT細胞の脱顆粒、すなわち、細胞溶解活性の必要条件は、活性化誘導の顆粒エキソサイトーシスの後に、CD107aの細胞表面への動員をもたらす。したがって、CD107aの曝露は、細胞傷害性と密接に相関するサイトカイン産生に加えて、T細胞活性化のさらなる尺度を与える。
【0371】
標的及びエフェクター細胞を、別々に洗浄し、そして、細胞傷害性培地(RPMI+5%ヒトAB血清+1%抗生物質抗真菌剤)に再懸濁する。このアッセイは、U底96ウェルプレート(Corning)にて、最終体積100μLで、0.5μL/ウェルのPE/Cy7標識抗ヒトCD107a(LAMP-1)抗体(クローンH4A3、BD Biosciences)の存在下、2×10個のエフェクター細胞と、2×10個の標的細胞とを混合して行う。次いで、これらの培養物を、37℃、5%COで、1時間、インキュベートする。このインキュベーションの直後に、1:10希釈の分泌阻害剤モネンシン(1000x溶液、BD GolgiStop(商標))の10μLを、細胞を攪乱しないように慎重に、各ウェルに加える。次いで、これらのプレートを、37℃、5%COで、さらに2.5時間インキュベートする。このインキュベーションに続いて、これらの細胞を、APC抗ヒトCD3抗体(クローンUCHT1、BD Biosciences)、PerCP/Cy5.5抗ヒトCD8抗体(クローンSK1、BD Biosciences)、及び、パシフィックブルー抗ヒトCD4抗体(クローンRPA-T4、BD Biosciences)で染色し、その後、37℃、5%COで、30分間、インキュベートする。次いで、これらの細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄し、(分析に先立って、FACS緩衝液100μL及びIC固定緩衝液100ulに再懸濁する。
【0372】
T細胞表面でのCD107aの曝露は、フローサイトメトリーによって検出する。フローサイトメトリーは、LSRFortessa(商標)X20(BD Biosciences)で行い、そして、フローサイトメトリーデータの解析は、FlowJoソフトウェア(Treestar,Inc.Ashland,OR)を用いて行う。CD107+veであるCD3ゲート内のCD8+エフェクター細胞の割合を、各エフェクター/標的細胞培養について決定する。
【0373】
先の細胞傷害性及びサイトカインのデータと一致して、メソテリン発現標的細胞と抗メソテリン-28ζCARで形質導入したエフェクターT細胞との共培養は、メソテリンネガティブ標的細胞とともにインキュベートしたエフェクターと比較して、表面CD107a発現の増加を誘導し得る。同じ条件下で比較すると、抗メソテリン-CD3ε LL、または、抗メソテリン-CD3γ LL TFP発現エフェクターは、CD107a発現の5~7倍の誘導を呈し得る。代替ヒンジ領域で構築した抗メソテリンTFPは、メソテリンを担持する標的細胞との共培養で同様の結果をもたらし得る。
【0374】
実施例11:インビボでのマウスの有効性の研究
抗メソテリンTFPで形質導入したエフェクターT細胞のインビボでの抗腫瘍応答を達成する能力を評価するために、抗メソテリン-28ζCAR、抗メソテリン-CD3εLL TFP、または、抗メソテリン-CD3γLL TFPのいずれかで形質導入したエフェクターT細胞を、予めメソテリン+ヒト癌細胞株を接種したNOD/SCID/IL-2Rγ-/-(NSG-JAX)マウスに養子移入する。
【0375】
本研究の開始前に、少なくとも6週齢の雌のNOD/SCID/IL-2Rγ-/-(NSG-JAX)マウスを、The Jackson Laboratory(ストック番号005557)から入手し、そして、実験的使用の前に3日間、順化する。接種用のヒトメソテリン発現細胞株を、対数期の培養に維持し、その後、採取を行い、そして、トリパンブルーで計数して生細胞数を決定する。腫瘍投与の当日、これらの細胞を、300gで、5分間、遠心分離し、そして、予め温めた滅菌PBSに、0.5~1×10細胞/100μLのいずれかで再懸濁する。非形質導入、または、抗メソテリン-28ζCAR、抗メソテリン-CD3εLL TFP、または、抗CD3γLL TFP構築物で形質導入した養子移入用のT細胞を調製する。本研究の0日目に、実験群あたり10匹の動物に対して、0.5~1×10のメソテリン発現細胞を静脈内投与する。3日後に、滅菌PBSの100μLで、エフェクターT細胞集団の5×10個を、各動物に対して静脈内に移入する。これら動物における詳細な臨床観察を、安楽死させるまで、毎日、記録する。死亡または安楽死まで、すべての動物に対して、毎週、体重測定を行う。被験物質及び対照物質を養子移入して35日後に、すべての動物を安楽死させる。本研究中において、瀕死と思われたすべての動物は、獣医師と協議した上で、本研究の責任者の判断で安楽死させる。
【0376】
非形質導入T細胞と比較して、抗メソテリン-28ζCAR、抗メソテリン-CD3εLL TFP、または、抗メソテリン-CD3γLL TFPのいずれかで形質導入したT細胞の養子移入は、メソテリンを発現する細胞株腫瘍担持マウスの生存を延長させ、かつ、抗メソテリンCAR及びTFPで形質導入したT細胞の双方が、これらのマウスモデルにおける対応する生存の延長と共に、標的細胞の死滅を媒介することができることを示し得る。まとめると、これらのデータは、TFPが、インビトロ及びインビボの双方で、第1世代のCARよりも優れた抗原特異的な死滅を示すキメラ受容体を改変するための代替的なプラットフォームを表す、ということを示し得る。
【0377】
実施例12:インビボ固形腫瘍異種移植片マウスモデルでのヒトTFP T細胞処置
ヒトメソテリンを発現するALL、CLL、NHL、または、MSTOヒト細胞株に由来する皮下固形腫瘍を担持する免疫不全マウスモデルにおいて、ヒトTFP.メソテリンT細胞による処置の有効性を試験することもできる。ヒトTFP.メソテリンT細胞による処置に応答した腫瘍の縮小は、腫瘍サイズのキャリパー測定、あるいは、GFP発現腫瘍細胞が放出する緑色蛍光タンパク質(GFP)シグナルの強度を追跡することで、評価することができる。
【0378】
初代ヒト固形腫瘍細胞を、それらをインビトロで培養せずとも、免疫不全のマウスにおいて増殖させることができる。例示的な固形癌細胞として、The Cancer Genome Atlas(TCGA)、及び/または、the Broad Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE、Barretina et al., Nature 483:603(2012)を参照されたい)に記載されたものなどの固形腫瘍細胞株がある。例示的な固形癌細胞として、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸癌、子宮頸癌、脳腫瘍、肝臓癌、膵臓癌、腎臓、子宮内膜、または、胃癌から単離した初代腫瘍細胞がある。幾つかの実施形態では、処置するがんは、中皮腫、乳頭状漿液性卵巣腺癌、明細胞卵巣癌、混合型ミュラー管卵巣癌、子宮内膜粘液性卵巣癌、膵臓腺癌、乳管腺癌、子宮漿液性癌、肺腺癌、肝外胆管癌、胃腺癌、食道腺癌、結腸直腸腺癌、及び、乳腺腺癌からなる群から選択される。これらのマウスは、ヒト腫瘍異種移植片モデルにおけるTFP.メソテリンT細胞の有効性を試験するために使用することができる(例えば、Morton et al.,Nat.Procol.2:247(2007)を参照されたい)。1×10~1×10個の初代細胞(ECマトリックス材料でのコラゲナーゼ処理したバルク腫瘍懸濁液)、または、腫瘍断片(ECマトリックス材料での初代腫瘍断片)を移植または皮下注射した後に、治療開始前に、腫瘍を、200~500mmにまで増殖させる。
【0379】
上記したように、中皮腫異種移植片マウスモデルにおいて、インビボで、MSLN特異的単一ドメイン抗体(sdAb)活性の有効性を試験するために、そのような実験の1つを行った。ルシフェラーゼ標識MSTO-211H-FL-MSLN-Luc)を、マウス当たり1×10個の細胞で、Matrigel(登録商標)と1:1の比率で、皮下に接種した。腫瘍体積を、キャリパー測定によって、週に2回、モニターした。腫瘍注射から14日後に、腫瘍体積が約300mmになったときに、1×10個のT細胞を、各動物に静脈内注射した。使用したT細胞として、CD3ε-SD1 TFP、CD3γ-SD1 TFP、CD3ε-SD4 TFP、CD3γ-SD4 TFP、CD28ζSD1 CAR、及び、CD28ζSD1 CARで形質導入したものがある。T細胞の注射をしていないマウスの群を、ネガティブコントロールとして使用した。
【0380】
結果を図12Aに示す。CD3ε-SD1 TFP、及び、CD3γ-SD1 TFP T細胞を注射したマウスは、腫瘍体積の最大かつ最速の減少を示したが、T細胞コントロールを注射したマウスでは、T細胞を注射した後も、腫瘍体積の減少を示さなかった。
【0381】
中皮腫異種移植片マウスモデルにおいて生存したマウスを再投与することで、SD1ε-、及び、γ-TFP T細胞の持続的有効性をインビボで試験した。
【0382】
マウス1匹あたり1×10個の腫瘍細胞(MSTO 211H FL MSLN Luc)を、Matrigel(登録商標)(1対1の比率)と共に、マウスに皮下接種した。ラージ細胞を注射した1群のマウスを、ネガティブコントロールとし、そして、MSTO細胞のみを注射した1群のマウスも、ネガティブコントロールとした。週に2回、キャリパー測定して、腫瘍体積をモニターした。腫瘍注射をして14日後(腫瘍体積が約300mmに達したとき)に、1×10個のMSTO(MSLN+)、または、ラージ(MSLN-、ネガティブコントロールとして)を、各動物に静脈内注射した。結果を図12Bに示す。図中の各線は、一匹の動物を表している。図示したように、以前に抗MSLN TFP T細胞で処置したマウスは、腫瘍体積を、再び減少させるか、あるいは、腫瘍を根絶できており、このことは、最初に注射したT細胞がマウス内で持続していたこと、または、当該マウスが、抗MSLNメモリー応答を有することを示している。対照的に、ラージ(MSLN-)細胞を再接種したマウスは、ラージ腫瘍の増殖を制御することができず、したがって、TFP T細胞応答の特異性を示している。
【0383】
実施例13:MSLN腫瘍異種移植マウスモデルにおける患者由来のMSLNε-TFP T細胞のインビボ有効性
卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞を用いて、メソテリン発現腫瘍細胞(MSTO-MSLN-Luc)に対するSD1ε-TFP T細胞のインビトロ及びインビボでの抗腫瘍効果を試験した。
【0384】
レンチウイルスを、上記したようにして調製した。
【0385】
卵巣癌患者の全血からのCD4及びCD8T細胞の調製
CD4及びCD8T細胞は、以下のようにして、卵巣癌患者の全血から精製した(概略図を図13Aに示す)。卵巣癌患者のヘパリン処理全血の40~50mLを採取し、そして、Conversant Bio(Huntsville,Alabama)より急送した。当該血液を、等容量のPBSで希釈し、そして、50mLコニカルチューブで、35mLの希釈全血を、15mLのFicoll-Paque(登録商標)(GE healthcare、カタログ番号:17-5442-02)上に注意深く重層した。次いで、それを、揺動バケットローターにて、ブレーキをかけずに、室温で、20分間、800×gで遠心分離した。上層を吸引し、単核細胞層(リンパ球、単球、及び、血小板)を間期に撹乱せずに残した。当該単核細胞層を、新たな50mLコニカルチューブに移し、30mLのPBSを加え、室温で、10分間、300×gで遠心分離した。1~2mLのACK溶解緩衝液(ThermoFisher、カタログ番号:A1049201)をペレットに添加し、十分に混合し、そして、室温で、2分間、インキュベートし、20mLのPBSを添加し、室温で、300×gで、10分間、遠心分離した。細胞ペレットを、10mLの氷冷MAC緩衝液に再懸濁し、そして、細胞を、Cellometer Auto 2000を介して計数した。MiltenyiヒトCD4/8マイクロビーズ(カタログ番号:130-045-101;130-045-201)を製造業者の指示に従って使用をして、CD4+及びCD8+ T細胞の単離を行った。
【0386】
TFP T細胞を、上記したようにして産生し、そして、形質導入をFACSで決定した。メソテリンの発現は、標的細胞(MSLNhigh細胞株MSTO-211H-FL MSLN(親MSTO-211H、ATCC、CRL-2081から組織内産生した))で確認しており、また、MSLN-Fc発現は、ルシフェラーゼアッセイと同日に行ったフローサイトメトリーによって、SD1ε-TFP Tで確認した。ルシフェラーゼ標識標的細胞(MSTO-211H-FL MSLN-Luc、または、MSLN-細胞株C30-Luc(A2780、Sigma))の単一懸濁液を、R10培地で調製した。100μLにおける1×10個の標的細胞を、96ウェル平底プレートに添加した。TFP T細胞を、示したような異なるエフェクター対標的比(E:T)で、100μLに加えた。
【0387】
FACSに基づく形質導入効率及びT細胞活性化決定
TFP T細胞を解凍し、脱ビーズ化を行い(Dynabeads+IL-2条件にてエクスビボで増殖させた場合)、洗浄し、次いで、サイトカインを含まないT細胞培養培地に再懸濁した。所望の数のT細胞(100μLにおいて)を加えて、エフェクター対標的の比率を、それぞれ、5対1、1対1、及び、1対5とした。試験した比率で各タイプのT細胞について、3つの複製物を調製した。次いで、細胞を、5%COで、37℃で、24時、間培養した。24時間の共培養をした後に、当該プレートを、300×gで、2分間、遠心分離して細胞を沈降させた。各ウェルからの100μlの培養上清を、Luminexアッセイのために慎重に取り出した。Bright-Glo(商標)Luciferase Assay System(Promega、#E2650)からのアッセイ緩衝液100μLを、各ウェルに加えた。各ウェルの内容物を静かに上下にピペッティングして混合した。細胞-試薬の混合物を、3分間、室温で、暗所に放置して、細胞を完全に溶解させた。各ウェルからの200μLの細胞溶解物を、Greiner-One白色壁96ウェルプレートに移した。発光は、SpectraMax M5プレートリーダー(Molecular devices)で、相対発光単位(RLU)を測定した。
腫瘍溶解率(%)は、下記の式で算出した。
発光(腫瘍+T細胞)
腫瘍溶解%= 100×[1- ------------------]
発光(腫瘍)
【0388】
Luminex(登録商標)アッセイ
腫瘍-T細胞共培養物からの上清を採取し、そして、前記したようにして、-80℃で保存した。製造業者の指示に従って、Millipore Luminexキット(HCD8MAG-15K)を用いて、サイトカインプロファイルを検出した。上清を希釈せずにプレーティングし、そして、Magpix xMAP(登録商標)Technologyを用いて読み取り値を測定した。
【0389】
皮下中皮腫異種移植マウスモデル及びインビボでの評価
この試験では、6週齢の雌NSGマウス(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ,カタログ番号:005557,Jackson Laboratories)を使用した。これらの動物を、試験と同じ条件下で、最低3日間、順応させた。MSTO-211H-FLMSLN-Luc細胞を、1×10細胞/100μLの濃度で、無菌PBSに懸濁した。次いで、PBS細胞懸濁液を、氷冷Matrigel(登録商標)と1対1で混合して、各マウスについて、最終注射容量を200μLとした。得られたPBS/Matrigel(登録商標)細胞懸濁液を、マウスの後側腹部に皮下投与するまで、氷上に保った。腫瘍増殖は、キャリパー測定を用いて、腫瘍体積としてモニターした。腫瘍体積は、以下のようにして計算した。
腫瘍体積=1/2(長さ×幅
【0390】
腫瘍細胞を注射して10日後に、動物を、腫瘍体積(200~300mm)に応じて無作為化を行い、そして、10の群に分けて、異なる患者に由来するSD1ε-TFP T細胞を注射した(1群あたりのマウスの数は、注射の日に回収したSD1ε-TFP T細胞の数に応じて変わる)。T細胞の注射日を、試験の0日目と見なした。T細胞を、5×10細胞/100μLの濃度で、無菌PBSで調製した。次いで、細胞懸濁液を、尾静脈からマウスに静脈内注射した。
【0391】
卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のエクスビボ増殖
MSLNを標的とするSD1バインダーを有するTFPのCD3εフォーマットをコードするレンチウイルスを用いて、MSLN特異的sdAb TFP T細胞を調製した。10日目の生存細胞数によって決定された増殖倍率は、Dynabeads(登録商標)+IL-2を用いて調製した細胞では、0日目と比較して、8.58~28.2倍(17.8±3.3)の範囲であり、そして、TransAct(登録商標)+IL-7/15を用いて調製した細胞では、0日目と比較して、10~33.6倍(22.9±5.0)であった。SD1ε-TFP T細胞についての形質導入効率は、CD4及びCD8集団に関するGFP及びMSLN-Fcの存在についての表面染色によって、増殖の10日目に決定した。形質導入効率は、Dynabeads+IL-2を用いて調製した細胞では、28.6%~52.1%(40.9±4.0%)であり、そして、TransAct+IL-7/15を用いて調製した細胞では、5.7%~46.9%(26.8±6.3%)の範囲であり、Dynabeads+IL-2条件と、TransAct+IL-7/15条件との間で、増殖倍率及び形質導入効率に有意差はなかった。細胞あたりのベクターコピー数は、形質導入効率と一致しており、細胞あたり0.38のベクターコピー数を有する患者1を除いて、Dynabeads+IL-2条件、または、TransAct+IL7/15条件のいずれかにおいても、細胞あたり約1~2コピー数であった。
【0392】
卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のインビトロでの抗腫瘍活性
卵巣癌患者由来のSD1ε-TFP T細胞のインビトロでの有効性を、ルシフェラーゼレポーター腫瘍細胞溶解アッセイを用いて試験した。メソテリンの発現は、アッセイ当日に、MSTO-211H-FLMSLN-Luc細胞株で確認されており(図13B)、すべてのSD1ε-TFP T細胞は、異なるレベルの腫瘍死滅を示した。安定した腫瘍細胞溶解が、患者1、2、4、及び、5で観察された(75%~97%)。MSLNε-TFP T細胞を、MSTO-211H-FLMSLN-Luc(MSLN高発現体)と、5対1のエフェクター対標的の比率で共培養した場合に、患者3は、5対1のエフェクター対標的の比率で、約35%の腫瘍溶解を示しており、5名の患者のうちの4名(患者1、2、4、及び、5)は、1対1のエフェクター対標的の比率で、平均50%の腫瘍溶解を示しており、5名の患者のうちの2名(患者4、及び、5)は、1対5のエフェクター対標的の比率で、約50%の腫瘍溶解を示した。すべてのT細胞は、腫瘍細胞を急速に死滅させたことを示した。メソテリンネガティブ細胞株C30-Lucと共培養した場合、すべてのMSLNε-TFP(商標)T細胞については、腫瘍溶解は認められなかった(図13C)。5名の患者でのMSLNε-TFPのサイトカインプロファイルを、ヒトCD8 Luminex(登録商標)パネルを用いて分析し、IFN-γ、GM-CSF、グランザイム-A/B、IL-2、MIP-1α/β、及び、パーフォリンなどの細胞溶解性サイトカインは、非形質導入T細胞と比較して、MSLNε-TFP(商標)T細胞において、有意に増加した(図13D~L)。
【0393】
MSLN発現腫瘍マウス異種移植片モデルにおけるMSLNε-TFP T細胞のインビボでの有効性
MSTO-211H-FLMSLN-Lucを使用して、皮下異種移植したメソテリン発現腫瘍マウスモデルを確立した。腫瘍体積を、週に2回測定した。腫瘍を注射して10日後に、平均腫瘍体積は、200~300mmに達しており、そして、10日目に、1名の正常ドナー(ND12、図14A)、及び、患者1~4(図14B~E)に由来するMSLNε-TFP T細胞を増殖し、そして、これらを解凍し、その後に、形質導入効率を確認した。マウス1匹あたり5×10個のMSLNε-TFP T細胞、または、対応する非形質導入T細胞を、静脈内に注射し、そして、その後に腫瘍の体積をモニターした。4名の患者のうち3名(患者1、2、及び、4)に由来するMSLNε-TFP T細胞は、T細胞を注射して20日後までに完全な腫瘍クリアランスを示した。腫瘍クリアランスは、40日目まで維持された。6匹のマウスのうち5匹に、患者3に由来するMSLNε-TFP T細胞を与えると、部分的な防御を示した。ND12に由来するMSLNε-TFP T細胞を投与した4名の患者全員では、1名は完全な腫瘍クリアランスを示し、2人は部分的な腫瘍クリアランスを示した。
【0394】
文末注
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し説明してきたが、当業者には、かかる実施形態が例としてのみ提供していることは明らかであろう。多くの変形、変更、及び、置換は、本発明から逸脱することなく、当業者には直ちに想起されるであろう。本明細書に記載した本発明の実施形態に対する様々な代替が、本発明の実践において採用される場合があることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を規定すること、ならびに、これら特許請求の範囲内の方法、及び、構造、ならびに、それらの等価物が、その適用を受けることを意図している。
本願は以下の発明を包含する。

[項目1] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする、単離した組換え核酸分子であって、前記TFPが、
(a)
(i)TCR細胞外ドメインの少なくとも一部、及び
(ii)CD3εの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメインを含む、TCRサブユニット、及び
(b)抗メソテリン抗原結合ドメインである、抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、
前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインを、作動可能に連結し、及び、
前記TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む、前記単離した組換え核酸分子。
[項目2] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする、単離した組換え核酸分子であって、前記TFPが、
(a)
(i)TCR細胞外ドメインの少なくとも一部、及び、
(ii)CD3εの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメインを含む、TCRサブユニット、及び
(b)抗メソテリン抗原結合ドメインである、抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、
前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインを、作動可能に連結し、及び、
前記TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む、前記単離した組換え核酸分子。
[項目3] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする、単離した組換え核酸分子であって、前記TFPが、
(a)
(i)TCR細胞外ドメインの少なくとも一部、及び
(ii)CD3γの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメインを含む、TCRサブユニット、及び
(b)抗メソテリン抗原結合ドメインである、抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、
前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインを、作動可能に連結し、及び、
前記TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む、前記単離した組換え核酸分子。
[項目4] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする、単離した組換え核酸分子であって、前記TFPが、
(a)
(i)TCR細胞外ドメインの少なくとも一部、及び
(ii)CD3δの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメインを含む、TCRサブユニット、及び
(b)抗メソテリン抗原結合ドメインである、抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、
前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインを、作動可能に連結し、及び、
前記TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む、前記単離した組換え核酸分子。
[項目5] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする、単離した組換え核酸分子であって、前記TFPが、
(a)
(i)TCR細胞外ドメインの少なくとも一部、及び
(ii)TCRαの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメインを含む、TCRサブユニット、及び
(b)抗メソテリン抗原結合ドメインである、抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、
前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインを、作動可能に連結し、及び、
前記TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む、前記単離した組換え核酸分子。
[項目6] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする、単離した組換え核酸分子であって、前記TFPが、
(a)
(i)TCR細胞外ドメインの少なくとも一部、及び
(ii)TCRβの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメインを含む、TCRサブユニット、及び
(b)抗メソテリン抗原結合ドメインである、抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、
前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインを、作動可能に連結し、及び、
前記TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む、前記単離した組換え核酸分子。
[項目7] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離した組換え核酸分子であって、TCRサブユニットと、抗メソテリン抗原結合ドメインである、抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインとを含む、前記単離した組換え核酸分子。
[項目8] 前記TCRサブユニット、及び、前記抗体ドメインを、作動可能に連結する、項目7に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目9] 前記TFPは、T細胞で発現する際にTCRを取り込む、項目7または8に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目10] 前記コードした抗原結合ドメインを、リンカー配列で前記TCR細胞外ドメインに連結する、項目1~9のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目11] 前記コードしたリンカー配列が、(G S) を含み、式中、n=1~4である、項目10に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目12] 前記TCRサブユニットが、TCR細胞外ドメインを含む、項目1~11のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目13] 前記TCRサブユニットが、TCR膜貫通ドメインを含む、項目1~12のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目14] 前記TCRサブユニットが、TCR細胞内ドメインを含む、項目1~13のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目15] 前記TCRサブユニットが、(i)TCR細胞外ドメイン、(ii)TCR膜貫通ドメイン、及び、(iii)TCR細胞内ドメインを含み、(i)、(ii)、及び、(iii)の少なくとも2つが、同じTCRサブユニットに由来する、項目1~14のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目16] 前記TCRサブユニットが、CD3ε、CD3γ、もしくはCD3δの細胞内シグナル伝達ドメインから選択される刺激ドメインを含むTCR細胞内ドメイン、または、それらに対する少なくとも1つの修飾を有するアミノ酸配列を含む、項目1~15のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目17] 前記TCRサブユニットが、4-1BBの機能的シグナル伝達ドメイン、及び/または、CD3ζの機能的シグナル伝達ドメインから選択される刺激ドメインを含む細胞内ドメイン、または、それらに対する少なくとも1つの修飾を有するアミノ酸配列を含む、項目1~16のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目18] 前記ヒトまたはヒト化抗体ドメインが、抗体断片を含む、項目1~17のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目19] 前記ヒトまたはヒト化抗体ドメインが、scFvまたはV ドメインを含む、項目1~18のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目20] 前記ヒトまたはヒト化抗体ドメインが、sdAbまたはV HH ドメインを含む、項目1~19のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目21] (i)本明細書に記載した抗メソテリン軽鎖結合ドメインの軽鎖(LC)CDR1、LC CDR2、及び、LC CDR3に対して、それぞれ、70~100%の配列同一性を有する、抗メソテリン軽鎖結合ドメインアミノ酸配列の軽鎖(LC)CDR1、LC CDR2、及び、LC CDR3、及び/または、(ii)本明細書に記載した抗メソテリン重鎖結合ドメインの重鎖(HC)CDR1、HC CDR2、及び、HC CDR3に対して、それぞれ、70~100%の配列同一性を有する、抗メソテリン重鎖結合ドメインアミノ酸配列の重鎖(HC)CDR1、HC CDR2、及び、HC CDR3をコードする、項目1~20のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目22] 軽鎖可変領域をコードする項目1~21のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子であって、前記軽鎖可変領域が、本明細書に記載した軽鎖可変領域の軽鎖可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つ、最大で30個までの修飾を有するアミノ酸配列、または、本明細書に記載した軽鎖可変領域の軽鎖可変領域アミノ酸配列に対して95~99%が同一である配列を含む、前記単離した組換え核酸分子。
[項目23] 重鎖可変領域をコードする項目1~22のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子であって、前記重鎖可変領域が、本明細書に記載した重鎖可変領域の重鎖可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つ、最大で30個までの修飾を有するアミノ酸配列、または、本明細書に記載した重鎖可変領域の重鎖可変領域アミノ酸配列に対して95~99%が同一である配列を含む、前記単離した組換え核酸分子。
[項目24] 重鎖可変領域をコードする項目1~23のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子であって、前記重鎖可変領域が、本明細書に記載した重鎖可変領域の重鎖可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つ、最大で30個までの修飾を有するアミノ酸配列、または、本明細書に記載したV HH 領域の単一ドメイン抗体アミノ酸配列に対して95~99%が同一である配列を含む、前記単離した組換え核酸分子。
[項目25] 前記V HH 領域の前記配列が、本明細書に記載した配列に記載のものである、項目24に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目26] 前記TFPが、TCRα鎖、TCRβ鎖、CD3εTCRサブユニット、CD3γTCRサブユニット、CD3δTCRサブユニット、それらの機能的断片、及び、少なくとも1つ、最大で20個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはそれらの一部を含むTCRサブユニットの細胞外ドメインを含む、項目1~23のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目27] 前記コードしたTFPが、TCRα鎖、TCRβ鎖、CD3εTCRサブユニット、CD3γTCRサブユニット、CD3δTCRサブユニット、それらの機能的断片、及び、少なくとも1つ、最大で20個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含む、項目1~26のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目28] 前記コードしたTFPが、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRζ鎖、CD3εTCRサブユニット、CD3γTCRサブユニット、CD3δTCRサブユニット、CD45、CD2、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、それらの機能的断片、及び、少なくとも1つ、最大で20個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含む、項目1~27のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目29] 共刺激ドメインをコードする配列をさらに含む、項目1~28のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目30] 前記共刺激ドメインが、DAP10、DAP12、CD30、LIGHT、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、及び、4-1BB(CD137)、及び、それらに対する少なくとも1つ、最大で20個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質から得られる機能的シグナル伝達ドメインである、項目29に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目31] それらに対する少なくとも1つ、最大で20個までの前記修飾が、細胞のシグナル伝達を媒介するアミノ酸の修飾、または、前記TFPへのリガンド結合に反応してリン酸化するアミノ酸の修飾を含む、項目1~30のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目32] mRNAである、項目1~31のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目33] 前記TFPが、TCRサブユニットの免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含み、前記サブユニットが、CD3ζTCRサブユニット、CD3εTCRサブユニット、CD3γTCRサブユニット、CD3δTCRサブユニット、TCRζ鎖、Fcε受容体1鎖、Fcε受容体2鎖、Fcγ受容体1鎖、Fcγ受容体2a鎖、Fcγ受容体2b1鎖、Fcγ受容体2b2鎖、Fcγ受容体3a鎖、Fcγ受容体3b鎖、Fcβ受容体1鎖、TYROBP(DAP12)、CD5、CD16a、CD16b、CD22、CD23、CD32、CD64、CD79a、CD79b、CD89、CD278、CD66d、それらの機能的断片、及び、それらに対する少なくとも1つ、最大で20個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質のITAM、または、それらの一部を含む、項目1~32のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目34] 前記ITAMが、CD3γ、CD3δ、または、CD3εのITAMを置き換える、項目33に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目35] 前記ITAMが、CD3ζTCRサブユニット、CD3εTCRサブユニット、CD3γTCRサブユニット、及び、CD3δTCRサブユニットからなる群から選択され、かつ、CD3ζTCRサブユニット、CD3εTCRサブユニット、CD3γTCRサブユニット、及び、CD3δTCRサブユニットからなる群から選択される異なるITAMを置き換える、項目33に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目36] 前記核酸が、ヌクレオチド類似体を含む、項目1~35のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目37] 前記ヌクレオチド類似体が、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、修飾をした2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、ロックド核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)、ペプチド核酸(PNA)、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、モルホリノ、メチルホスホン酸ヌクレオチド、チオールホスホン酸ヌクレオチド、及び、2’-フルオロN3-P5’-ホスホルアミダイトからなる群から選択される、項目36に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目38] リーダー配列をさらに含む、項目1~37のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目39] 前記核酸がコードする抗メソテリン結合ドメインである抗原結合ドメイン、または、前記抗メソテリン結合ドメインを含む抗体、または、前記核酸がコードする前記抗メソテリン結合ドメインを発現する細胞を含む、前記ヒトまたはヒト化抗体ドメインは、最大で、約200nM、100nM、75nM、50nM、25nM、20nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、または、0.01nM、及び/または、少なくとも約100nM、75nM、50nM、25nM、20nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、または、0.01nM、及び/または、約200nM、100nM、75nM、50nM、25nM、20nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、または、0.01nMの親和性値を有する、項目1~38のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子。
[項目40] 項目1~39のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子がコードした単離したポリペプチド分子。
[項目41] ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含む単離した組換えTFP分子。
[項目42] ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離した組換えTFP分子であって、前記TFP分子が、内因性TCR複合体、及び/または、少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することができる、前記単離した組換えTFP分子。
[項目43] ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離した組換えTFP分子であって、前記TFP分子が、内因性TCR複合体に機能的に統合することができる、前記単離した組換えTFP分子。
[項目44] ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含む抗体または抗体断片を含む、項目41に記載の単離した組換えTFP分子。
[項目45] 前記抗メソテリン結合ドメインが、scFvまたはV ドメインである、項目41~44のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP分子。
[項目46] 前記抗メソテリン結合ドメインが、本明細書に記載した抗メソテリン軽鎖のアミノ酸配列、その機能的断片、または、少なくとも1つ、最大で30個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列に対して95~100%の同一性を有する重鎖を含む、項目41~45のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP分子。
[項目47] 前記抗メソテリン結合ドメインが、本明細書に記載した抗メソテリン重鎖のアミノ酸配列、その機能的断片、または、少なくとも1つ、最大で30個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列に対して95~100%の同一性を有する軽鎖を含む、項目41~46のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP分子。
[項目48] TCRα鎖、TCRβ鎖、CD3εTCRサブユニット、CD3γTCRサブユニット、CD3δTCRサブユニット、それらの機能的断片、及び、少なくとも1つ、最大で20個までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含むTCR細胞外ドメインを含む、項目41~47のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP分子。
[項目49] 前記TCRが、T細胞受容体の前記α鎖または前記β鎖、CD3δ、CD3ε、または、CD3γからなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含む、項目41~48のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP分子。
[項目50] 前記抗メソテリン結合ドメインを、リンカー配列によって、前記TCR細胞外ドメインに連結する、項目41~49のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP分子。
[項目51] 前記リンカー領域が、(G S) を含み、式中、n=1~4である、項目50に記載の単離した組換えTFP分子。
[項目52] 共刺激ドメインをコードする配列をさらに含む、項目41~51のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP分子。
[項目53] 細胞内シグナル伝達ドメインをコードする配列をさらに含む、項目41~52のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP分子。
[項目54] リーダー配列をさらに含む、項目41~53のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP分子。
[項目55] 項目41~54のいずれか1項に記載のTFPをコードする配列を含む核酸。
[項目56] 前記核酸が、DNA及びRNAからなる群から選択される、項目55に記載の核酸。
[項目57] 前記核酸が、mRNAである、項目55または56に記載の核酸。
[項目58] 前記核酸が、ヌクレオチド類似体を含む、項目55~57のいずれか1項に記載の核酸。
[項目59] 前記ヌクレオチド類似体が、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、修飾をした2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、ロックド核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)、ペプチド核酸(PNA)、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、モルホリノ、メチルホスホン酸ヌクレオチド、チオールホスホン酸ヌクレオチド、及び、2’-フルオロN3-P5’-ホスホルアミダイトからなる群から選択される、項目58に記載の核酸。
[項目60] プロモーターをさらに含む、項目55~59のいずれか1項に記載の核酸。
[項目61] 前記核酸が、インビトロで転写した核酸である、項目55~60のいずれか1項に記載の核酸。
[項目62] ポリ(A)尾部をコードする配列をさらに含む、項目55~61のいずれか1項に記載の核酸。
[項目63] 3’UTR配列をさらに含む、項目55~62のいずれか1項に記載の核酸。
[項目64] 項目41~54のいずれか1項に記載のTFPをコードする核酸分子を含むベクター。
[項目65] DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)ベクター、または、レトロウイルスベクターからなる群から選択される、項目64に記載のベクター。
[項目66] プロモーターをさらに含む、項目64または65に記載のベクター。
[項目67] インビトロで転写したベクターである、項目64~66のいずれか1項に記載のベクター。
[項目68] 前記ベクターの核酸配列が、ポリ(A)尾部をさらに含む、項目64~67のいずれか1項に記載のベクター。
[項目69] 前記ベクターの核酸配列が、3’UTRをさらに含む、項目64~68のいずれか1項に記載のベクター。
[項目70] 項目1~39のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子、項目40に記載の前記ポリペプチド分子、項目41~54のいずれか1項に記載のTFP分子、項目55~63のいずれか1項に記載の核酸、項目64~69のいずれか1項に記載のベクターを含む細胞。
[項目71] 前記細胞が、ヒトT細胞である、項目70に記載の細胞。
[項目72] 前記T細胞が、CD8+またはCD4+T細胞である、項目71に記載の細胞。
[項目73] 前記T細胞が、γδT細胞である、項目71に記載の細胞。
[項目74] 前記T細胞が、NKT細胞である、項目71に記載の細胞。
[項目75] 阻害分子の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドを含み、細胞内シグナル伝達ドメインからのポジティブシグナルを含む第2のポリペプチドと会合した阻害分子をコードする核酸をさらに含む、項目70~73のいずれか1項に記載の細胞。
[項目76] 前記阻害分子が、PD1の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドと、共刺激ドメイン及び一次シグナル伝達ドメインを含む第2のポリペプチドとを含む、項目75に記載の細胞。
[項目77] 少なくとも2つのTFP分子を含むヒトCD8+またはCD4+T細胞であって、前記TFP分子が、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含み、前記TFP分子が、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞において、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞にて、及び/または、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞の表面で、内因性TCR複合体、及び/または、少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することができる、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞。
[項目78] タンパク質複合体であって、
i)ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含むTFP分子、及び
ii)少なくとも1つの内因性TCRサブユニット、または、内因性TCR複合体、を含む前記タンパク質複合体。
[項目79] 前記TCRが、TCRα鎖、TCRβ鎖、CD3εTCRサブユニット、CD3γTCRサブユニット、及び、CD3δTCRサブユニットからなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメイン、または、それらの一部を含む、項目78に記載のタンパク質複合体。
[項目80] 前記抗メソテリン結合ドメインを、リンカー配列で前記TCR細胞外ドメインに連結する、項目78または79に記載のタンパク質複合体。
[項目81] 前記リンカー領域が、(G S) を含み、式中、n=1~4である、項目80に記載のタンパク質複合体。
[項目82] タンパク質複合体であって、
(a)項目1~39のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子がコードしたTFP、及び
(b)少なくとも1つの内因性TCRサブユニットまたは内因性TCR複合体、を含む前記タンパク質複合体。
[項目83] 項目78~82のいずれか1項に記載のタンパク質複合体あたり、少なくとも2つの異なるTFPタンパク質を含む、ヒトCD8+またはCD4+T細胞。
[項目84] 項目1~39のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子がコードした少なくとも2つの異なるTFP分子を含む、ヒトCD8+またはCD4+T細胞。
[項目85] ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団であって、前記集団のT細胞が、個々に、または、集合的に、少なくとも2つのTFP分子を含み、前記TFP分子が、ヒトまたはヒト化抗メソテリン結合ドメイン、TCR細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、細胞内ドメインを含み、前記TFP分子が、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞において、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞にて、及び/または、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞の表面で、内因性TCR複合体、及び/または、少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することができる、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団。
[項目86] ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団であって、前記集団のT細胞が、個々に、または、集合的に、項目1~39のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子がコードした少なくとも2つのTFP分子を含む、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団。
[項目87] 項目1~39のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子、項目55~63のいずれか1項に記載の核酸、または、項目64~69のいずれか1項に記載のベクターを用いて、T細胞に形質導入する、ことを含む細胞の作製方法。
[項目88] インビトロで転写したRNAまたは合成RNAを細胞に導入することを含む、RNA改変細胞集団の生成方法であって、前記RNAが、項目41~54のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP分子をコードする核酸を含む、前記方法。
[項目89] 哺乳動物に抗腫瘍免疫を付与する方法であって、前記哺乳動物に対して、有効量の項目1~39のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子、項目40に記載の単離したポリペプチド分子、項目40に記載の単離したポリペプチド分子を発現する細胞、項目41~54のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP分子、項目55~63のいずれか1項に記載の核酸、項目64~69のいずれか1項に記載のベクター、または、項目70~77及び83~87のいずれか1項に記載の細胞を投与することを含む、前記方法。
[項目90] 前記細胞が、自己T細胞である、項目89に記載の方法。
[項目91] 前記細胞が、同種異系T細胞である、項目89に記載の方法。
[項目92] 前記哺乳動物が、ヒトである、項目89~91のいずれか1項に記載の方法。
[項目93] メソテリンの発現に関連した疾患を有する哺乳動物を処置する方法であって、前記哺乳動物に対して、有効量の項目1~39のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子、項目40に記載の単離したポリペプチド分子、項目40に記載の単離したポリペプチド分子を発現する細胞、項目41~54のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP分子、項目55~63のいずれか1項に記載の核酸、項目64~69のいずれか1項に記載のベクター、または、項目70~77及び83~86のいずれか1項に記載の細胞を投与することを含む、前記方法。
[項目94] メソテリンの発現に関連した前記疾患が、増殖性疾患、がん、悪性腫瘍、及び、メソテリンの発現を伴う非がん関連の適応症からなる群から選択される、項目93に記載の方法。
[項目95] 前記疾患が、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸癌、子宮頸癌、脳腫瘍、肝臓癌、膵臓癌、甲状腺癌、膀胱癌、尿管癌、腎臓癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、胸腺癌、胆管癌、及び、胃癌からなる群から選択されるがんである項目93に記載の方法。
[項目86] 前記疾患が、中皮腫、乳頭状漿液性卵巣腺癌、明細胞卵巣癌、混合型ミュラー管卵巣癌、子宮内膜粘液性卵巣癌、膵臓腺癌、乳管腺癌、子宮漿液性癌、肺腺癌、肝外胆管癌、胃腺癌、食道腺癌、結腸直腸腺癌、乳腺腺癌、メソテリン発現に関連する疾患、及び、これらの組み合わせからなる群から選択されるがんである項目93に記載の方法。
[項目97] TFP分子を発現する前記細胞を、TFP分子を発現する細胞の有効性を増大させる作用物質と組み合わせて投与する、項目93に記載の方法。
[項目98] 前記哺乳動物では、抗メソテリンキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞の有効量を投与した哺乳動物と比較して、サイトカインの放出が少ない、項目93~97のいずれか1項に記載の方法。
[項目99] TFP分子を発現する前記細胞を、TFP分子を発現する細胞の投与に伴う1つ以上の副作用を改善する作用物質と組み合わせて投与する、項目93~98のいずれか1項に記載の方法。
[項目100] TFP分子を発現する前記細胞を、メソテリンに関連する疾患を処置する作用物質と組み合わせて投与する、項目93~99のいずれか1項に記載の方法。
[項目101] 医薬として使用するための、項目1~39のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子、項目40に記載の単離したポリペプチド分子、項目40に記載の単離したポリペプチド分子を発現する細胞、項目41~54のいずれか1項に記載の単離した組換えTFP、項目55~63のいずれか1項に記載の核酸、項目64~69のいずれか1項に記載のベクター、項目78~82のいずれか1項に記載の複合体、または、項目70~77及び83~86のいずれか1項に記載の細胞。
[項目102] メソテリンの発現に関連した疾患を有する哺乳動物を処置する方法であって、前記哺乳動物に対して、有効量の項目1~39のいずれか1項に記載の単離した組換え核酸分子、項目40に記載の単離したポリペプチド分子、項目40に記載の単離したポリペプチド分子を発現する細胞、項目41~54のいずれか1項に記載のTFP分子、項目55~63のいずれか1項に記載の核酸、項目64~69のいずれか1項に記載のベクター、または、項目70~77及び83~86のいずれか1項に記載の細胞を投与することを含み、前記哺乳動物では、抗メソテリンキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞の有効量を投与した哺乳動物と比較して、サイトカインの放出が少ない、前記方法。
【0395】
【表1-1】
【0396】
【表1-2】
【0397】
【表1-3】
【0398】
【表1-4】
【0399】
【表1-5】
【0400】
【表1-6】
【0401】
【表1-7】
【0402】
【表1-8】
【0403】
【表1-9】
【0404】
【表1-10】
【0405】
【表1-11】
【0406】
【表1-12】
【0407】
【表1-13】
【0408】
【表1-14】
【0409】
【表1-15】
【0410】
【表1-16】
【0411】
【表1-17】
【0412】
【表1-18】
【0413】
【表1-19】
【0414】
【表1-20】
【0415】
【表1-21】
【0416】
【表1-22】
【0417】
【表1-23】
【0418】
【表1-24】
【0419】
【表1-25】
【0420】
【表1-26】
【0421】
【表1-27】
【0422】
【表1-28】
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図13G
図13H
図13I
図13J
図13K
図13L
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
【配列表】
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