(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】電気手術装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/18 20060101AFI20230130BHJP
A61M 25/10 20130101ALN20230130BHJP
【FI】
A61B18/18 100
A61M25/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021128416
(22)【出願日】2021-08-04
(62)【分割の表示】P 2018555496の分割
【原出願日】2017-05-30
【審査請求日】2021-08-24
(32)【優先日】2016-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メドウクロフト,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ウェッブ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】エバット,ジュリアン・マーク
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-183158(JP,A)
【文献】特開2010-269156(JP,A)
【文献】特表2003-510126(JP,A)
【文献】特表2009-537271(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0211176(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
十二指腸の粘膜組織を切除するように構成される電気手術器具であって、前記器具が、
患者に対して外部に位置するジェネレーターから前記患者の十二指腸内に位置する治療部位にマイクロ波エネルギーを伝送するための可撓性の同軸ケーブルと、
前記可撓性の同軸ケーブルの遠位端に位置するアプリケータであって、前記アプリケータが、前記同軸ケーブルから前記マイクロ波エネルギーを受け取って、前記治療部位の生体組織内に受け取った前記マイクロ波エネルギーを送達するために接続されるエネルギー送達構造を有する、前記アプリケータと、を備え、
前記アプリケータが、前記治療の領域の十二指腸の粘膜組織と接触した箇所内に前記エネルギー送達構造を移動させるために
パドル上に配置した径方向に拡張可能な部分を含み、
前記径方向は、前記同軸ケーブルの中心軸に垂直な、前記器具の横方向に対応し、
前記アプリケータが
、前記径方向に前記パドルを動かすように構成される移動機
構を含み、前記エネルギー送達構造が前記パドル上に載置される双極アンテナを含む、電気手術器具。
【請求項2】
前記アプリケータが、互いに角度の付いた状態でオフセットして径方向に移動するように配置される複数のパドルを含む、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項3】
前記複数のパドルのうちの1つ以上は、その上に形成された、またはそれに関連するエネルギー送達構造を有さない、請求項2に記載の電気手術器具。
【請求項4】
前記移動機構はヒンジ機構を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項5】
前記ヒンジ機構がパンタグラフを含む、請求項4に記載の電気手術器具。
【請求項6】
前記パンタグラフは、一対の協働ヒンジ要素を備える、請求項5に記載の電気手術器具。
【請求項7】
少なくとも1つのパドルが、平坦または可撓性の細長い構造体を備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項8】
前記同軸ケーブルは、第1の誘電体材料によって分離された内部導体および外部導体を備え、前記双極アンテナは、第2の誘電体材料によって分離された一対の平行な導電性細片を備え、前記導電性細片の一方は、前記同軸ケーブルの前記内部導体に電気的に接続され、前記導電性細片の他方は、前記同軸ケーブルの前記外部導体に電気的に接続される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項9】
十二指腸の粘膜組織を切除するための電気手術装置であって、前記装置が、
患者の十二指腸内に位置する治療部位に前記患者へ挿入するための器具コードを有する外科用スコープ装置と、
マイクロ波エネルギーを供給するためのジェネレーターと、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電気手術器具と、を含み、
前記可撓性の同軸ケーブルがその近位端で前記ジェネレーターに接続され、
前記可撓性の同軸ケーブル及び前記アプリケータが前記治療部位に前記器具コードと共に挿入可能である、前記電気手術装置。
【請求項10】
前記器具コードがそれを通して延在する長手方向の器具チャネルを有し、前記可撓性の同軸ケーブル及び前記アプリケータが前記器具チャネルに摺動可能に載置されるために特定の寸法にされる、請求項9に記載の電気手術装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波エネルギーによって生体組織を治療するための電気手術装置及び方法に関する。特に本発明は、胃腸管、特に十二指腸の生体組織にマイクロ波エネルギーを送達することに関する。一例で、本発明は、十二指腸壁を切除する、またはその表面を直すために、制御可能にマイクロ波エネルギーを送達するのに適している電気手術器具を提供する。
【背景技術】
【0002】
2型(T2)糖尿病の治療可能性に対する多くの関心がある。これは、肥満及びより座りがちな生活スタイルが故に、ほとんどの先進諸国で急増する課題である。それは著しい医療保険費の一因にもなっている。NHS予算のほぼ20%は糖尿病及びその併存症に費やされる。
【0003】
現時点で、糖尿病は一般的に確認されて管理されるだけである。主要な消化管の再建手術以外、治療法がない。
【0004】
しかし、この分野のより最近の研究は、熱エネルギーを十二指腸壁に加えることによって、十二指腸の表面を直すことについて検討している。熱エネルギーは、消化管の適切な位置に挿入したバルーンに温水を送達することによって加えられる。熱エネルギーは十二指腸の粘膜を切除するために作用する。このように粘膜の再生を引き起こすことは、代謝の状態を回復させることができる、特にインスリン抵抗性を消失させる、糖への身体反応の方法を変えることができることを初期の成績は示す。[1]この技術は2型糖尿病の治療になる可能性を表す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
最も概括的には、本発明は、胃腸(GI)管の効果的かつ有効な熱治療のための電気手術装置及び方法を示す。特に本発明は、胃内視鏡などと共に使用するのに適したアプリケータを有する電気手術装置を提供し、それは標的化またはそれ以外の制御可能な方法でエネルギーを送達するために患者内に配置されることができる。
【0006】
いくつかの例では、アプリケータは、例えば放射線によってマイクロ波エネルギーを送達するように配置されており、それは生体組織によって直接受け取られる。マイクロ波エネルギーを使用する利点は、それが組織内に浸透する深さが浅いということであり、それはGI管の表面だけが影響を受けるのを確実にすることができる。直接かつ深さ制限したマイクロ波エネルギーの性質は、熱伝導に依存する治療よりそれを効果的にする。
【0007】
一態様によれば、本発明は、十二指腸の粘膜組織を切除するように構成される電気手術器具を提供し得、前記器具は、患者に対して外部に位置するジェネレーターから患者の十二指腸内に位置する治療部位にマイクロ波エネルギーを伝送するための可撓性同軸ケーブルと、可撓性同軸ケーブルの遠位端に位置するアプリケータと、を含み、アプリケータは、同軸ケーブルからマイクロ波エネルギーを受け取って、治療部位の生体組織内に受け取ったマイクロ波エネルギーを送達するために接続されるエネルギー送達構造を有し、アプリケータは、治療領域の十二指腸の粘膜組織と接触した箇所内にエネルギー送達構造を移動させるために配置した、径方向に拡張可能な部分を含む。十二指腸の粘膜組織をマイクロ波エネルギーで(例えばこのような器具を使用して)治療する方法は、本発明の独立した態様であり得る。マイクロ波エネルギーの適用は、表面下で組織を治療する(例えば、
1つ以上の粘膜下層の組織変質または変性させることを実行する)ためにも使用してよい。
【0008】
アプリケータは、バルーン、例えば弾性的に変形可能な(例えば伸縮性がある)誘電体材料から形成したバルーンを含んでよい。バルーンは、例えばガスまたは液体であり得る膨張媒質をそれに充填することによって膨張可能であり得る。膨張チャネルは、膨張媒質を送達するために同軸ケーブル内にまたはそれに沿って延在してよい。膨張媒質の特性(例えば比誘電率など)は、マイクロ波エネルギーの送達を促進するように選択され得る。
【0009】
バルーンはエネルギー送達構造であり得る、またはそれを保有し得る。例えばエネルギー送達構造は、バルーンによって囲まれている容積内に突出して、マイクロ波エネルギーを治療部位の生体組織内に放出するための単極アンテナを形成する、可撓性同軸ケーブルの内部導体の一部を備え得る。単極アンテナにより発される場は、バルーン表面上に導電性材料を提供することによって成形され得る。
【0010】
あるいはバルーンは、双極式マイクロ波エネルギー送達構造の一部を形成し得る、またはそれを保有し得る。例えば、外部導電構造はバルーンの外側表面上に形成され得る。外部導電構造を、例えば可撓性同軸ケーブルの外部導体に電気的に接続することによって接地し得る。
【0011】
エネルギー送達構造は、外部導電構造と、バルーンによって囲まれている容積内に位置する内部導電要素と、によって形成される、双極マイクロ波放出構造を備え得、内部導電要素は同軸ケーブルの内部導体に電気的に接続している。内部導電要素は同軸ケーブルの内部導体の延長でもよい、または膨張した構成のとき、それはバルーンの形状に適合するように配置した導電ループでもよい。あるいは、内部導電要素は、バルーンの内側表面上に形成される導電層でもよく、それによってバルーンスキンは双極放射構造の誘電材料である。別の例では、内部導電要素は、バルーンによって囲まれる容積内に位置する補助的な膨張可能バルーンの外側表面上に形成される導電層でもよい。誘電材料(例えば低密度PFTEまたは他の低損失材料)は、補助バルーンの外側表面と(主)バルーンの内側表面の間の容積に封入されてもよい。
【0012】
双極マイクロ波放出構造は、例えば外部導電構造に複数の放射用溝を提供することによって溝付きラジエータとして機能し得る。
【0013】
導電構造は、バルーンスキン上に形成された金属被覆層(例えば、Ag、Au、Pt、CuまたはAgメッキしたCuの)でもよい。
【0014】
いくつかの例で、バルーン材料は双極マイクロ波放出構造の一部を形成するが、この必要性は重要ではない。例えばバルーンは、治療される組織にごく接近してまたはそれに接触してその上に載置される、エネルギー送達構造を移動させるための輸送機構として機能し得る。一例にて、可撓性誘電材料を用いて作成される放射構造(下でより詳細に述べられる)は、バルーンの外側表面上に載置され得る。
【0015】
別の例でアプリケータは、パドルと、径方向にパドルを動かすように構成される移動機構と、を含み得、エネルギー送達構造はパドル上に載置される双極アンテナを含む。パドルは、GI管(特に十二指腸)壁に沿って、例えば接触して位置するように配置される、平坦なまたは可撓性の細長い構造でもよい。前記構造は鉗子の半分側に似ていてもよく、双極アンテナが径方向に外向きに広がるように配置される。双極式アンテナは、国際特許出願第WO2015/097472号または同第WO2015/052502号に記載されている、電気手術鉗子で使用するものと類似の構造を備えてもよい。
【0016】
互いに角度の付いた状態でオフセットして半径方向に移動するように配置される、複数のパドルがあり得る。例えば、互いに90度の方向に移動する4つのパドルがあり得る。複数のパドルの1つ以上は作動していなくてもよい、すなわち、その上に形成されるまたはそれと関連づけられるエネルギー送達構造を有しない。あるいは複数のパドルのそれぞれは独立して作動可能でもよく、その結果、方向性のある治療が可能である。十二指腸の組織表面の回旋性は、アプリケータが膨張して、治療表面領域を平坦化するために横方向の力を加えるのを望ましくし得る。作動していないパドルを、この目的のために使用することができる。これは、領域(例えば胆管の主/副乳頭)内及びその周囲での治療に対して特に有用であり得る。
【0017】
移動機構は、同軸ケーブルに沿って延在する制御ロッドまたは引張りワイヤによって制御し得る。移動機構は、例えばパンタグラフなどの形状の蝶番機構を備え得、それは長手方向の引張り力をパドル(複数可)の径方向外向きの移動に変える。
【0018】
エネルギー送達構造は、その第1表面上に形成される導電層と、同軸ケーブルの内部導体に電気的に接続する導電層と、その第2表面上に形成される複数の導電要素と、を有する可撓性誘電体基板を含み得、複数の導電要素は電気的に接地され、エネルギー送達構造によって受け取られるマイクロ波エネルギーの放射素子として作用するために特定の寸法にされる。複数の導電要素は、リーキーフィーダーとしてまたは放射状パッチアンテナとして構成され得る(例えば、特定の寸法にされ得る)。
【0019】
可撓性誘電体基板はシート形状でもよく、複数の導電要素はシート上の2次元の配列に配置される。シートは円筒形状に巻かれてもよい。
【0020】
あるいは、可撓性誘電体基板は1つ以上の細片の形状でもよく、複数の導電要素は各細片に沿って一列に配置される。アプリケータは、様々な方法でこれらの細片のうちの1つ以上を展開するように配置され得る。例えば細片は、伸縮自在なループまたは螺旋コイルの形状をとってもよい。別の例では、複数の長手方向に配置された可撓性細片は、展開力を適用する際、径方向に外向きに屈曲するように配置され得る。
【0021】
別の態様にて、本発明は、十二指腸の粘膜組織を切除するための電気手術装置を提供し得、前記装置は、患者の十二指腸内に位置する治療部位に患者へ挿入するための器具コードを有する外科用スコープ装置(例えば胃内視鏡)と、マイクロ波エネルギーを供給するためのジェネレーターと、上述のような電気手術器具と、を備え、可撓性同軸ケーブルはその近位端でジェネレーターに接続され、可撓性同軸ケーブル及びアプリケータは、治療部位に器具コードと共に挿入可能である。器具コードは、それを通して伸びる長手方向の器具チャネルを有する。好ましい構成では、可撓性同軸ケーブル及びアプリケータは、器具チャネルに摺動可能に載置されるために特定の寸法にされ得る。しかし他の例で、アプリケータは、治療前に器具チャネルを通過して移動することができない。搬送部は、アプリケータを保持するための器具コードの遠位端でまたはそれに隣接して提供され得る。同様に、可撓性同軸ケーブル及びアプリケータによって必要とされる他の任意のフィーダーは、器具チャネルを通って移動してもよく、または移動しなくてもよい。
【0022】
別の態様にて、本発明は、患者の胃腸管の生体組織の表面を直すためのエネルギーを送達するための電気手術器具を提供し得、前記器具は、患者に対して外部に位置するジェネレーターから患者の胃腸管内に位置する治療部位にマイクロ波エネルギーを伝送するための可撓性同軸ケーブルと、可撓性同軸ケーブルの遠位端に位置するアプリケータと、を含み、アプリケータは、同軸ケーブルからマイクロ波エネルギーを受け取って、治療部位の生体組織内に受け取ったマイクロ波エネルギーを送達するために接続されるエネルギー送
達構造を有し、アプリケータは治療部位で生体組織に沿って回転可能な放射構造を備える。
【0023】
アプリケータは同軸ケーブルを取り囲むプローブハウジングを備えてもよく、放射構造はプローブハウジングの遠位端に回転可能に載置される。放射構造は、横方向に配向された回転軸を有する円筒またはボール形状でもよい。
【0024】
放射構造は、同軸ケーブルの内部導体に電気的に接続する内部導電性リングと、放射構造の円周周辺で内部導電性リングを覆うために載置される環状誘電素子と、環状素子の外側表面上に形成された複数の接地した導電性パッチと、を備える。導電性パッチは、放射状アンテナとしてまたはリーキーフィーダーとして機能し得る。
【0025】
別の態様にて、本発明は、患者の胃腸管の生体組織の表面を直すためのエネルギーを送達するための電気手術器具を提供し得、前記器具は、患者に対して外部に位置するジェネレーターから患者の胃腸管内に位置する治療部位にマイクロ波エネルギーを伝送するための可撓性同軸ケーブルと、可撓性同軸ケーブルの遠位端に位置するアプリケータと、を備え、アプリケータは、同軸ケーブルからマイクロ波エネルギーを受け取るために接続されるエネルギー送達構造と、患者に対して外部に位置するガス供給からアプリケータにガスを輸送するように配置されるガス供給部と、を有し、アプリケータは、治療部位の生体組織に送達するためのプラズマと衝突するまたは維持するために、アプリケータで受け取るガス内に受けたマイクロ波エネルギーを送達するように配置される。
【0026】
アプリケータは、同軸ケーブルを取り囲み、ガス供給部に接続したガス流路を画定するプローブハウジングを備えてもよく、プローブハウジングはその遠位端に1つ以上のガス出口孔を有する。電界はプローブハウジング内に誘発され、ガス出口孔でプラズマと衝突し得る。例えばプローブハウジングは同軸ケーブルの外部導体に電気的に接続し得、エネルギー送達構造は、同軸ケーブルの遠位端から離れたプローブハウジング内に延在し、同軸ケーブルの内部導体に電気的に接続している導電要素を備え得る。導電要素はプローブハウジングの遠位端に電気的に接続して、電界が遠位端の接点から所定の距離で最大値を示す短絡状態を設定し得る。ガス出口孔は電界最大値に位置して、プラズマが衝突され得るようにする。
【0027】
本発明の他の態様は、異なるエネルギー源を使用してよい。例えば一態様では、本発明は、患者の胃腸管の表面にエネルギーを送達するための手術用器具を提供し得、前記器具は、患者に対して外部に位置するエネルギー源から治療部位にエネルギーを輸送するための可撓性エネルギー供給ケーブルと、可撓性エネルギー供給ケーブルの遠位端に位置するアプリケータと、を備え、可撓性エネルギー供給ケーブルはグラフェンケーブルの束を含み、アプリケータは、治療部位の生体組織内に熱エネルギーを送達するためのグラフェンケーブル終端の配列を備える。
【0028】
別の態様で、本発明は、患者の胃腸管の表面にエネルギーを送達するための手術用器具を提供し得、前記器具は、患者に対して外部に位置するエネルギー源から治療部位にエネルギーを輸送するための可撓性エネルギー供給ケーブルと、可撓性エネルギー供給ケーブルの遠位端に位置するアプリケータと、を備え、アプリケータは、治療部位に温度勾配を導入するように配置され、それによって治療部位の生体組織内に熱エネルギーを送達する、熱電装置を備える。
【0029】
本明細書の開示は、手術用装置(例えば、本明細書で示すアプリケータ)を外科用スコープ装置の器具コードの遠位端に固定する搬送構造についても述べる。搬送構造は、器具コードの遠位端に固定した、及びそこから離れて突出するまたはその周囲にある、可撓性
または変形可能な支持体(例えば、カップ状または凹所のあるハウジング)を含んでよい。搬送構造は、例えば環状リングを使用して器具コード上に留められ得る。他の例で、搬送構造は器具コードに付着し得る、またはそれと一体に形成され得る。
【0030】
搬送構造は器具コードの長さに沿って延在し得る。例えばそれは、器具コードの全長と並んで延在し、その長さに沿って間隔をおいてそれに固定される(例えば留められた)スリーブでもよい。あるいは搬送構造は、器具コードを取り囲む(すなわち、搬送のための管腔を画定する)スリーブでもよい。
【0031】
本明細書で、「マイクロ波」は概して、400MHz~100GHzの周波数範囲、しかし好ましくは1GHz~60GHzの範囲を示すために使用してよい。考慮される特定の周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz及び24GHzである。周波数14.5GHzは、消化管の、特に十二指腸の壁の生体組織内への浸透の深さに起因して、好ましくなり得る。
【0032】
本明細書で「導電性」材料または「導体」の意味は、文脈で明らかに別の意味を示さない限り、電気伝導率を指す。
【0033】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態で使用するための電気手術システムを示す概略図である。
【
図2A】それぞれ格納及び展開配置で、
図1で示す電気手術システムの遠位端アセンブリの概略断面図である。
【
図2B】それぞれ格納及び展開配置で、
図1で示す電気手術システムの遠位端アセンブリの概略断面図である。
【
図3】本発明の実施形態である電気手術器具の使用に適している膨張型バルーンアプリケータの構造を示す。
【
図4】本発明の別の実施形態である電気手術器具の使用に適している膨張型バルーンアプリケータの構造を示す。
【
図5】本発明の実施形態である電気手術器具の使用に適している別の膨張型バルーンアプリケータの構造の概略図を示す。
【
図6】本発明の実施形態である電気手術器具の使用に適している別の膨張型バルーンアプリケータを示す。
【
図7】本発明の実施形態である電気手術器具の使用に適している別の膨張型バルーンアプリケータの構造を示す。
【
図8A】本発明の別の実施形態である電気手術器具の遠位端アセンブリの概略側面図を示す。
【
図8B】本発明の別の実施形態である電気手術器具の遠位端アセンブリの概略側面図を示す。
【
図8C】
図8A及び
図8Bに示す遠位端アセンブリの使用に適している回転部材の概略側面図及び正面図を示す。
【
図9A】本発明の別の実施形態である径方向に拡張可能なパドル構造を有する、遠位端アセンブリの概略側面図である。
【
図9B】本発明の別の実施形態である径方向に拡張可能なパドル構造を有する、遠位端アセンブリの概略側面図である。
【
図10A】複数の径方向に拡張可能なパドルを有する電気手術器具の遠位端アセンブリの概略図である。
【
図10B】複数の径方向に拡張可能なパドルを有する電気手術器具の遠位端アセンブリの概略図である。
【
図11】本発明の別の実施形態である回転可能な可撓性基板を含む、電気手術器具の遠位端アセンブリの概略側面図である。
【
図12A】本発明の別の実施形態である電気手術器具の使用に適する可撓性基板を有する遠位端アセンブリの概略側面図を示す。
【
図12B】本発明の別の実施形態である電気手術器具の使用に適する可撓性基板を有する遠位端アセンブリの概略側面図を示す。
【
図12C】本発明の別の実施形態である電気手術器具の使用に適する可撓性基板を有する遠位端アセンブリの概略側面図を示す。
【
図13A】本発明の実施形態である電気手術器具で使用できる、可撓性基板細片及びその上に形成される放射素子を含む、遠位端アプリケータの概略側面図である。
【
図13B】本発明の実施形態である電気手術器具で使用できる、可撓性基板細片及びその上に形成される放射素子を含む、遠位端アプリケータの概略側面図である。
【
図13C】本発明の実施形態である電気手術器具で使用できる、可撓性基板細片及びその上に形成される放射素子を含む、遠位端アプリケータの概略側面図である。
【
図13D】本発明の実施形態である電気手術器具で使用できる、可撓性基板細片及びその上に形成される放射素子を含む、遠位端アプリケータの概略側面図である。
【
図14】プラズマが生体組織内へエネルギーを送達するために使用される、電気手術器具の遠位端アセンブリの概略側面図である。
【
図15】複数のグラフェンケーブルから形成される遠位端アセンブリの概略側面図である。
【
図16】熱電冷却装置を組み込む電気手術器具の遠位端アセンブリの概略図である。
【
図17】本発明と共に使用可能な遠位に載置したアセンブリの概略側面図である。
【
図18】本発明と共に使用可能な別の遠位に載置したアセンブリの概略側面図である。
【
図19】本発明と共に使用可能な搬送スリーブの概略図である。
【
図20】本発明と共に使用可能な別の搬送スリーブの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、電気手術器具の遠位端に電磁エネルギー(例えば、マイクロ波エネルギー)を供給することが可能な完全な電気手術システム100の概略図である。システム100は、エネルギー(マイクロ波エネルギー、熱エネルギー(例えば赤外線)または電気エネルギー(例えば直流電流)のうちの任意の1つ以上であり得る)を制御可能に供給するジェネレーター102を備える。一例にて、ジェネレーター102は国際特許出願第WO2012/076844号に記載されている形状を取り得、それはマイクロ波エネルギーを供給するように配置される。器具に伝達される適切な信号を測定するために、電気手術器具から返された反射信号(すなわち反射電力)を監視するように、ジェネレーター102を配置し得る。
【0036】
ジェネレーター102は、インターフェイスケーブル104によってインターフェイスジョイント106に接続される。インターフェイスジョイント106は、例えば後述するように液体またはガス(例えば空気)を使用して拡張可能なアプリケータを膨らませるための注射器などの流体送達装置108から流体供給107を受け取るためにも接続され得る。必要であれば、インターフェイスジョイント106は、トリガー110を摺動させることによって操作可能である器具制御機構を収容して、例えば1つ以上の制御ワイヤまたはプッシュロッド(図示せず)の長手方向の動き(前後)を制御できる。複数の制御ワイヤがある場合、完全な制御を提供するためにインターフェイスジョイント上に複数の摺動トリガーがあってもよい。インターフェイスジョイント106の機能は、ジェネレーター102、流体送達装置108及び器具制御機構からの入力を、インターフェイスジョイン
ト106の遠位端から延在する単一の可撓軸112内に結合することである。
【0037】
可撓軸112は外科用スコープ装置114(例えば、内視鏡、胃内視鏡、腹腔鏡など)の機器(作業)チャネルの全長を通して挿入可能である。本明細書で企図される十二指腸の治療において、胃内視鏡が好ましい場合がある。
【0038】
外科用スコープ装置114は、そこから器具コード120が延在する多くの入力ポート及び出力ポートを有する本体116を備える。器具コード120は複数の管腔を取り囲む外側ジャケットを備える。複数の管腔は、本体116から器具コード120の遠位端まで様々なものを運搬する。複数の管腔のうちの1つは上述の器具チャネルである。他の管腔は、例えば遠位端に照明を提供するまたは遠位端から画像を収集するために、光放射を伝送するチャネルを含んでもよい。本体116は遠位端を見るための接眼部122を含んでよい。遠位端に照明を提供するために、光源124(例えばLEDなど)は照明入力ポート126によって本体116と接続し得る。
【0039】
可撓軸112は、外科用スコープ装置114の器具チャネルを通って、その遠位端で(例えば、患者内部に)突出するように成形した、遠位アセンブリ118(
図1で縮尺どおりには示されていない)を有する。遠位端アセンブリは、ジェネレーター102からのエネルギーを生体組織内に送達するための手段を含む。
【0040】
遠位アセンブリ118の構造は、器具チャネルを通過するのに適している最大外径を有するように配置され得る。通常、胃内視鏡の器具チャネルの直径は、4.0mm未満(例えば2.8mm、3.2mm、3.7mm、3.8mmのうちの任意の1つ)である。可撓軸の長さは1.2m以上(例えば2m以上)であり得る。他の例にて、遠位アセンブリ118は、器具チャネルを通過して軸が挿入された後(そして器具コードが患者内に導入される前)、可撓軸112の遠位端に載置され得る。あるいは可撓軸112は、その近位接続をする前に、遠位端から器具チャネルに挿入されることができる。これらの配置で、遠位端アセンブリ118は、外科用スコープ装置114の器具チャネルより大きい寸法を有するのが可能になる。
【0041】
ジェネレーター102からのエネルギーがマイクロ波エネルギーである場合、本体116は可撓軸に接続するための電源入力ポート128を含み、それは、ジェネレーター102からのマイクロ波エネルギーを遠位アセンブリ118へ伝送するのが可能な同軸ケーブル(例えば従来の同軸ケーブル)を備える。
【0042】
少なくとも器具コード120の遠位端の位置を制御することが望ましい場合がある。本体116は、器具コード120を通って延在する1つ以上の制御ワイヤ(図示せず)によって器具コード120の遠位端に機械的に連結する、制御アクチュエータ130を含んでもよい。制御ワイヤは、器具チャネル内またはそれ自身の専用チャネル内を移動し得る。制御アクチュエータ130は、レバーもしくは回転ノブ、または他の任意の周知のカテーテル操作装置でもよい。器具コード120の操作は、例えばコンピュータ断層撮影(CT)画像から組み立てたバーチャル3次元マップを使用する、ソフトウェア支援によってもよい。
【0043】
以下の説明で、多くの異なる構成が上述の遠位アセンブリ118に関して記載されている。本明細書で遠位アセンブリ118は、遠位端アセンブリまたはアプリケータと呼ばれてもよい。その機能は、生体組織内にエネルギー(例えばマイクロ波エネルギー、熱エネルギーなど)を送達することである。
【0044】
後述する例は、マイクロ波エネルギーを送達するように配置されるアプリケータと、熱
エネルギー(例えば赤外線)を送達するまたは生体組織の他の熱的効果を励起するように配置されるアプリケータと、に分けることができる。マイクロ波エネルギーを利用するアプリケータ構造に関する議論から開始し、それは
図2~
図14に記載されている。
【0045】
図2~
図7は、器具チャネルの遠位端で膨張型バルーンを利用する多くのアプリケータ構造を示す。
図2Aに示すように、この種類のアプリケータ構造200は、スコープ装置の器具チャネル内に置かれるスリーブ202を有し得、それは、それを通してアプリケータの種々の要素が運ばれる管腔204を画定する。
図2A(及び次の図面)は、スリーブ202の短い遠位区域だけを示す。スリーブ202は器具チャネルの全長で延在し得ることが理解できる。
図2Aに示す例で、管腔204は同軸ケーブル206及び膨張管208を運ぶ。膨張管は、同軸ケーブル206内に組み込まれ得る(例えば、同軸ケーブル206の内部導体の中心を通過する中空路として)。膨張チャネル208の近位端は、流体(液体またはガス)供給に接続している。
【0046】
可撓性バルーン構造は、同軸ケーブル206の遠位端上に載置される。可撓性バルーン構造は、同軸ケーブル206の遠位端の囲まれた容積を画定する、変形可能な(例えば弾性)スキン210を備える。同軸ケーブルの内部導体212は、スキン210によって画定される容積内に延在する。膨張チャネル208は、囲まれた容積に流体連通を提供する、その遠位端の開孔を有する。流体は、バルーンを拡張する(膨らませる)またはそれを格納する(縮小する)ために、膨張チャネル208を通して送達され得る。アプリケータ200は、同軸ケーブル208及びバルーンがスリーブ202に対して移動可能であるように配置し得る。例えばスリーブ202は、同軸ケーブルに対して伸縮自在で、バルーンを露出させ得る。
【0047】
図2Bは拡張形状のアプリケータ200を示し、スリーブ202はバルーンを露出させるために同軸ケーブル206に対して近位に移動する。膨張媒質は膨張チャネル208を通して供給されて、バルーンを拡張させる。この例で、同軸ケーブル206はマイクロ波エネルギーを伝送するように配置される。同軸ケーブルの遠位端の内部導体212の露出部は、単極アンテナとして作用する。膨張媒質214は、バルーン210のスキンにマイクロ波エネルギーの効果的な移動を促進にするように配置される低損失材料でもよい。
【0048】
使用中、アプリケータ200は、
図2Aに示す格納位置のとき、GI管(例えば十二指腸)内に配置され得る。適切な位置にあると、アプリケータ200は
図2Bに示す拡張構成に変え得る。拡張構成へ移動する際、バルーンは、GI管の壁と接触するために径方向に外向きに延在し得る。良好な接触がバルーンと生体組織の間に形成されるように、スキン210は伸び得る。このように、アプリケータ200は、バルーン円周の周辺にマイクロ波エネルギーの均一用量を送達して、その周囲の生体組織を切除する、またはその表面を直すことができる。
【0049】
低損失材料214は、空気、または低密度PTFE、または泡状物質でもよい。低損失材料を提供することは、膨張媒質214内へのマイクロ波エネルギーの喪失によって膨張媒質の不必要な加熱が生じないことを確実にする。
【0050】
膨張可能バルーンは任意の形状になり得る。選択される形状は所望の治療の種類に依存し得る。例えば、GI管の一部に沿った周囲の治療が要求される場合、バルーンは細長い円筒形状を有し得る。他の実施形態にて、バルーンは、治療の長手方向の長さを制限するために短くてもよい(例えば球状)。
【0051】
図3は、膨張可能バルーンを組み込む別のアプリケータ250の概略図及び部分断面図である。
図2A及び
図2Bに示される装置と共通した特徴は同じ参照番号が付与され、再
度説明しない。スリーブ及び膨張チャネルは見やすさを考えて省略した。アプリケータ250は「溝付き」ラジエータとして構成される。複数の導電要素252はバルーンスキン210上に作成される。例えば導電要素252は、バルーンの外側の金属被覆領域または断片でもよい。導電要素252は、同軸ケーブル206の外部導体に電気的に接続し得る。導電要素252は、マイクロ波エネルギーの供給を制限するのに役立つ。
図3に示す実施形態で、マイクロ波エネルギーは導電要素252の間の間隙(溝)から送達される。このように治療の所望のパターンは、導電要素252の形状及び位置を適切に構成することによって得ることができる。例えばバルーンの片側は、マイクロ波エネルギーからGI管側面を遮蔽するために金属被覆され得る。金属被覆した部分は、それが膨張する際バルーンと共に拡張することができる。例えば導電要素252は、金属被覆した可撓性ポリマー層から形成されてよい。
【0052】
本明細書にて開示したバルーン型アプリケータ構造のいずれかで、膨張可能バルーンの形状及び構成は、同軸ケーブル206から生体組織内へのマイクロ波エネルギーの効果的な結合を補助するインピーダンス変成器として機能するように配置され得る。
【0053】
整合した状態で、インピーダンスは以下の関係を満たす。
【0054】
【0055】
式中、Z
tは組織インピーダンスであり、Z
0は同軸ケーブルの特性インピーダンスであり、Z
aはアプリケータのインピーダンスである。
図3に示すアプリケータ構造に関して、Z
aは以下として表される。
【0056】
【0057】
式中、εrはバルーンの材料の比誘電率であり、D1は内部導体の外径であり、D2はバルーン表面上に載置された導電要素の内側表面の直径空隙である。したがって、バルーン形状及びバルーンを膨らませる材料の適切な選択によって、アプリケータ構造250は生体組織内にマイクロ波エネルギーを効率的に送達するように配置されることができる。
【0058】
図4は、本発明で使用できる別のアプリケータ260の概略図及び部分断面図である。更に上述のアプリケータと共通する特徴には同じ参照番号が付与され、再説明しない。スリーブ及び膨張チャネルは見やすさを考えて
図4でも省略した。
【0059】
図4のアプリケータ260は、導電構造262がバルーンスキン210の表面に提供されるという点で、
図3に示すものと類似の構造を有する。しかし、この実施形態では、同軸ケーブル206の内部導体212は、エネルギーをバルーンスキン210により画定した容積内に放出しない。その代わりに、導電性コネクタ(この例でワイヤループ264)は、同軸ケーブル206の遠位端を越えて伸びて、内部導体を
導電構造262の遠位端に接続し、それにより、同軸ケーブル206の外部導体に接続する近位端を有する。これは短絡状態を作成する。溝266は、短絡状態の結果として発生した電界最大値に対応する位置で、導電構造262に提供される。したがって最初の溝は、ワイヤループ264と外部導電構造262の間の接続点から波長の1/4で離間配置される。次の溝266は半分の波長で隔置される。この場合、波長は膨張媒質の誘電特性に依存する。したがって、膨張媒質及び溝の基部の適切な選択によって、
図4に示す構造はマイクロ波エネルギーを効率的に放射できる。
【0060】
図5は、本発明の別の実施形態で使用できるアプリケータ280の概略側面図を示す。上述のとおり、これまでの例と共通の特徴には同じ参照番号が付与され、再説明しない。アプリケータ280は
図3に示す例と類似している。同軸ケーブル206の内部導体212は、膨張可能なスキン210により形成される膨張可能バルーン内に突出する。バルーンを膨らませるための膨張チャネルは見やすさを考えて省略する。
【0061】
この例で、折り畳み構成を有する導電構造282は膨張可能なスキン210の外側表面に形成される、またはその上に載置される。導電構造282は、バルーンの周囲に巻かれた2セットの導電バンドを備える。各セットは長手方向に隔置した複数の平行バンドを備える。第1セットのバンドは十字に交差した第2セットのバンド上にある。バンドの幅は選択され、その結果バルーンを膨らませる際、間隙284はバンドが交差する接合部に隣接して現れる。前記例で間隙284はひし形の形状を有する。拡張可能なスキン210は間隙で露出し、それは、それを通してマイクロ波エネルギーが送達できる放射孔を示す。器具チャネルを通った引き抜きまたはスリーブ(図示せず)内への後退を補助するために収縮した(引き戻された)構成のとき、バンドの十字交差の性質は十分な可撓性をバルーンに提供する。
【0062】
図5に示す例で、導電性材料282のバンドは同軸給電ケーブル206の外部導体に接続し得る。リーキーフィーダー型エネルギー送達構造として作動する
図5に示す構造のために、導電性バンドの幅はマイクロ波エネルギーの波長の半分に設定され得るが、一方で間隙284は波長の1/8以下の最大寸法を有し得る。上述のように、マイクロ波エネルギーの波長は膨張性スキン210内に含有される膨張媒質に依存する。したがって、膨らむとき、バルーン表面に現れる導電性バンド及び間隙のサイズに関連して膨張媒質を選択することによって、
図5で示す構造はリーキーフィーダーとして作動するように作成できる。
【0063】
図6は、本発明の実施形態による電気手術器具で使用できる別のアプリケータ290の概略側面図を示す。上述のとおり、これまでの実施形態と共通の特徴には同じ参照番号が付与され、再説明しない。スリーブ及び膨張チャネルは見やすさを考えて省略した。
【0064】
図6に示すアプリケータ290は、膨張性スキン210の外側表面上に形成された一連の十字に交差した円周バンドを含むという点で
図5のアプリケータ280と類似している。しかし、この実施形態では、同軸ケーブル206の内部導体212はマイクロ波エネルギーをバルーンの内部容積に放出するように配置されない。その代わりに、十字に交差したバンドは、その上に形成される細い導電性細片を有する誘電(絶縁)材料292の細片から形成される。十字に交差した細片は、バルーン周囲の一方向に巻かれた上面細片と、反対方向へ巻かれた底面細片と、を備える。これらのバンドのそれぞれ上の導電性細片は、同軸ケーブル206の異なる導体に接続している。したがって示される実施例にて、上面バンド上の導電性細片294は内部導体に接続し、底面バンド上の導電性細片296は外部導体に接続している。この構成で、放射状マイクロストリップ型構造は、最上層が最下層を通過する接合部で形成される。したがってこれらの接合部は、マイクロ波エネルギーを周囲の組織内に放射できる。
【0065】
図7は、本発明の別の実施形態による電気手術器具で使用できるアプリケータ300の概略部分断面図を示す。上述のとおり、これまでの例と共通の特徴には同じ参照番号が付与され、再説明しない。スリーブ及び膨張チャネルは見やすさを考えて省略した。この例
で同軸ケーブル206の内部導体212は、膨張性容積303を画定する拡張可能な内側表面304上の導電性被覆に接続している。内側表面303は、誘電体材料層302によって外側表面305から分離される。外側層305は、その上に形成される1つ以上の導電要素306を有し得る。これらの導電要素306は、放射状アンテナ(例えば放射状パッチなど)として作用するために特定の寸法にされ得る。
【0066】
誘電体材料層302はそれ自体上述した膨張性スキン201でもよく、すなわち内側表面304及び外側表面305は単に拡張可能な材料の同じ部分の反対面にある。しかし、別の実施形態では、内側表面304及び外側表面305は、間に挟んだ導電体302を有する材料の別個の層に提供され得る。この例で前記構造は、バルーン内のバルーンに似ている可能性がある(すなわち、表面305によって形成される外側バルーン内に入れ子になった表面304によって形成される膨張可能バルーン)。誘電体材料302は流体でもよい。それは一定の容積を有し得る、または例えば内側導電性表面304と外側導電要素306の間の距離を制御するために、それは別々に膨張可能でもよい。
【0067】
上述した例はすべて、膨張型バルーンがエネルギー送達構造の一部として使用されるアプリケータに関する。しかし本発明は、膨張可能バルーンの使用に限定する必要はない。マイクロ波エネルギーを送達するための代わりの構造は、ここで
図8~
図13に関連して述べられる。
【0068】
図8A及び
図8Bは、本発明の実施形態の電気手術器具の使用に適しているアプリケータ320による概略部分断面図を示す。膨張可能バルーンを使用する代わりに、アプリケータ320は、外科用スコープ装置の器具チャネル内に載置されるスリーブ202から延在して、格納されることができる回転可能な放射回転盤324を有する。
図8Aは、放射回転盤がスリーブ202内にある格納した構成のアプリケータ320を示す。
図8Bは、放射回転盤324がスリーブ202の外にあって、生体組織に隣接して接触できる延出した配置のアプリケータ320を示す。放射回転盤324は、スリーブ202内に摺動自在なハウジング322に回転可能に載置される。ハウジング322は、そこから放射回転盤324が突出するその末端に開孔323を有する。この例で開孔323はハウジング322の遠位端の一方にある。しかし、それは他の位置にあることができる。
【0069】
放射回転盤324は任意の好適な形状を有してもよい。それは球体、円筒または他の回転対称なものでもよい。放射回転盤324の回転軸はエネルギー伝送構造の一部でもよい。例えば回転軸は、ハウジング322を通って運搬される同軸ケーブル206の内部導体212に接続されてよい。あるいは別個の軸はハウジング322に載置され得、同軸ケーブルに連結した異なる手段が使用できる。
【0070】
図8Cは一例の放射回転盤用の適切な構造を概略的に示す。
図8Cは適切な放射回転盤構造324の概略側面図及び正面図を示す。この例で回転盤構造は、ハブがハウジング322に対して回転できるように、軸を受けるための孔328を有する内側ハブ326を有するシリンダまたはディスクを有する。ハブ326の外側表面はその上に形成される導電性材料330の層を有し、それは回転盤の片面または両面上の導電リング330として露出する。同軸ケーブル206の内部導体212は、導電リング330に接触するように成形される。回転盤324が回転する際、回転盤が同軸ケーブルに対して回転する場合でもリング330と内部導体の間の接点は残る。誘電材料332の環状部分は導電リング330の上部に提供される。誘電環状部分322の外側表面に複数の導電性パッチ334があり、それは接地され得る。パッチ334が同軸ケーブルにより送達されるマイクロ波エネルギーを放散するように、誘電体層332の厚み及びパッチ334の寸法は選択される。
【0071】
マイクロ波エネルギーが同軸ケーブルにより供給されると共に、
図8A、
図8B及び図
8Cに示す装置は、スリーブ202に対してハウジング332の長手方向の移動を生じさせることによってGI管生体組織の長手方向片を切除するのに好適であり得る。他の例では、例えば組織の周囲片の治療を可能にするために、放射回転盤の回転軸は異なることができる。
【0072】
図9A及び
図9Bは、本発明の実施形態の電気手術器具で使用できるアプリケータ350の概略側面図を示す。この例でアプリケータは、外科用スコープ装置の器具チャネル(またはスリーブ202)を通過して長手方向に移動できるパドル構造を含む。器具チャネルまたはスリーブ202内に適合できる輪郭を有する平坦な配置(
図9Aに示す)と、器具コードの遠位端周囲の生体組織と接触できる径方向に延出した配置(
図9Bに示す)と、の間にパドルは径方向に移動可能であり得る。
【0073】
図9Bに示すようにアプリケータ350はパドル352を備え、それは、その上へ放射構造354を載置したまたは作成した剛性誘電体材料の細片であることができる。放射構造354は、誘電体材料によって分離される一対の平行の導電性細片を有する双極構造でもよい。導電性細片は、スリーブ202内で載置した同軸ケーブル206の内部及び外部導体に、適切な導電配線(図示せず)によって電気的に接続され得る。平坦配置と径方向に延出した配置の間にパドル352を移動するために、パンタグラフ型ヒンジ機構356が同軸ケーブルとパドル352の間に提供される。パンタグラフ構造は一対の協働ヒンジ要素から形成され得る(それは、適切な剛性材料(例えばステンレス鋼)から形成したリビングヒンジであり得る)。前記構造は、スリーブを通って延在する引き棒358によって操作できる。
【0074】
図10A及び
図10Bは、
図9A及び
図9Bに示すものと同じ形状で動作するアプリケータ構造360を示す。この2つの例で共通の特徴には同じ参照符号が与えられており、その説明は繰り返さない。
図10A及び
図10Bで、
図10Bで示す装置の正面図に示すように、互いに角度90度で離間する方向に径方向に延在するように配置される4つのパドルがある。平坦構成のときのアプリケータ360の形状を
図10A及び
図10Bに点線362で示す。
【0075】
上述のパドルの例は、例えばパドル352上に載置され、固定した放射構造354を有する、膨張可能バルーンを含むように構成され得る。追加の圧力を治療領域に加えるのを可能にするために、バルーンの膨張は径方向への移動機構とは独立して制御され得る。
【0076】
図11、
図12及び
図13は、可撓性基板上に作成される1つ以上の放射素子からマイクロ波エネルギーが送達されるアプリケータ構造に関する。放射素子は例えばパッチアンテナでもよい。一例で可撓性基板は誘電層を表し、それは、片側の同軸ケーブルの内部導体と、反対側上に形成される1つ以上の導電性パッチ(それは接地される、または電気的に浮いている)と接続する導電層(例えば金属被覆層から形成される)を有する。導電性パッチは、可撓性基板上に形成される(基板表面上のまたはその下方の接続配線と共に)別個の金属被覆部分でもよい。導電性材料のパッチの寸法は、それが同軸ケーブルにより送達されるマイクロ波エネルギーを放散するように選択される。
【0077】
可撓性基板は、外科用スコープ装置の器具チャネルによる挿入に好適な格納配置と、GI管壁を形成する生体組織内にマイクロ波エネルギーを送達するのに好適な展開配置との間に移動可能であり得る。
【0078】
図11は、可撓性基板を使用するアプリケータ構造380の一例を示す。アプリケータ構造は、外科用スコープ装置(例えば胃内視鏡)の器具チャネル内の長手方向に摺動可能に載置されるカテーテル382を備える。カテーテル382は、器具チャネルを通って延
在するスリーブ202に摺動可能に載置されてよい、または単独で器具チャネルに載置されてよい。マイクロ波エネルギーを伝送する同軸ケーブル206は、カテーテルの長さに沿って延在する。同軸ケーブルの遠位端は可撓性誘電体材料シート384(例えば、Rogers Corporation製Rflex(登録商標))で終端する。長手方向溝385はカテーテル382の側面に形成される。溝がカテーテル382の外側に露出するように、可撓性誘電体シート384がそれを通して通過できるように、溝は特定の寸法にされる。可撓性誘電体シート384は、カテーテル382内で含まれるコイル状構成と、溝385を通過してカテーテル382の円周の一部または全体の周囲に位置する展開(または広げた)構成との間のカテーテル軸周囲を回転可能であり得る。
【0079】
可撓性誘電体シート384は曲がった形状に予め成形されてもよく、その結果、広げた構成のとき、それはカテーテル382の本体周囲に優先的に巻きつく。
【0080】
可撓性誘電体シート384の1つの表面は、その上の規則的間隔の配列で形成した複数の導電性パッチ386を有する。前記パッチは誘電体表面の金属被覆領域でもよい。可撓性誘電体シート384の反対側(
図11に示されない)で、導電性材料の完全な層(例えば金属被覆)は導電要素306の配列の後ろに形成される。完全な導電層は同軸ケーブル206の内部導体に電気的に接続する。導電性パッチ386は、同軸ケーブルにより送達されるマイクロ波エネルギーの放射素子として機能するために特定の寸法にされる。放射素子は、格納していない構成のとき、可撓性誘電体シート384の外向きに面する表面に配置される。
【0081】
図12Aは、可撓性基板384の異なる展開メカニズムを有するアプリケータ400の概略図を示す。この例で可撓性基板384は同軸ケーブルの遠位端に取り付けられる。スリーブ402は同軸ケーブル206周囲に載置される。可撓性基板384がスリーブ402の遠位口406を通過するように、スリーブ402及び同軸ケーブル206は互いに対して摺動可能である。可撓性シート384は、
図12Cで示す可撓性シートに巻いた構成を取らせる方法で口406と係合する近位に向く湾曲面404を有する。巻いた部分の直径は、可撓性シートがどのくらいスリーブ402内に位置するかに依存し得る。
【0082】
図12Bは可撓性シート304の代替形状を示す。この例で可撓性シートは、長手方向に延在する1つの平坦端と、
図12Cで示す可撓性シートに巻いた構成を取らせるスリーブ402の口406と係合するように配置される近位に向く1つの曲線縁408と、を有する。
【0083】
上述の可撓性アプリケータに関して、例えば特定の位置(例えば治療する組織に対向する)をとらせるために、可撓性シートの形状または配置を制御する手段を含むことも望ましい場合がある。したがってこのアプリケータはシート形状制御メカニズムを含み得る。これは任意の好適な形状を取り得る。例えばそれは、可撓性シートを外側に付勢するのに適している放射状コイルバネを備え得る。制御ロッドは、例えばスリーブを通過して挿入する間、バネが引き戻されるのを可能にするために提供され得る。別の例でシート形状制御メカニズムは、例えば可撓性シートの後面に適用される1つ以上のバイメタル要素を含んでよい。第3の例でシート形状制御メカニズムは、膨張する際に広がるのに適しているコイル状バルーンを含んでよい。可撓性シートは、それがバルーン膨張の際に必要な位置をとるように、バルーンに固着され得る。
【0084】
上述の例で放射素子は、可撓性誘電体材料のシート表面上の配列に作成された。他の例で可撓性基板材料は、そこに沿って形成した一連の放射素子を有する1つ以上の細片として提供され得る。
図13Aはこの着想の概略図を示す。
図13Aに、可撓性誘電体材料により形成された3つの細片410がある。各細片はその裏面(図示せず)上に形成される
一連の導電性材料を有し、それは適切なワイヤまたは配線414によって同軸ケーブル206の内部導体に接続している。各細片410の前面に、一連の導電性パッチ412は形成される。導電性パッチ412は、上述のものと類似のやり方で放射素子として機能するように構成される。
【0085】
本発明による電気手術器具での使用に適するアプリケータ構造にて、このような可撓性細片のうちの1つ以上を後述するように使用し得る。
【0086】
図13Bは、本発明の実施形態の電気手術器具での使用に適しているアプリケータ構造420を示す。アプリケータ構造420は、
図13Aに関連して上述したように可撓性基板片410を利用する。この例でアプリケータ構造は、外科用スコープ装置の器具チャネル内に摺動可能に載置される細長いプローブハウジング422を備える。プローブハウジング422は、それが位置に挿入されるとき損傷が生じるのを防ぐために、丸い遠位先端を有する。プローブハウジング422は器具チャネル内に存在するスリーブ202に載置されて、それに対して摺動可能であり得る、またはそれは任意の周囲の支持なしに器具チャネルに直接挿入され得る。
【0087】
図13Bに示す例で複数の長手方向溝424は、プローブハウジング422の遠位部に形成される。その上に形成される複数の放射素子412を有する可撓性細片410が貫通してそこから径方向に突出できるように、長手方向溝424はサイズ設定される。
【0088】
可撓性細片410は、プローブハウジング422の本体内に位置する平坦な構成と、例えば生体組織に接触してマイクロ波エネルギーをそれに送達するためにそれらが長手方向溝424の外側に突出する展開した構成(
図13Bに示す)との間に移動可能である。これらの2つの位置の間に移動するために、可撓性細片410は、プローブハウジング内に取り付け可能な摺動可能制御ロッドにその近位端で取り付けられる。一例で摺動可能な制御ロッドは、放射構造にマイクロ波エネルギーを供給した同軸ケーブル206である。
【0089】
図13Cは、本発明の実施形態の電気手術器具での使用に適しているアプリケータ構造430の概略側面図を示す。アプリケータ構造430は、装置の長手方向軸周囲の螺旋コイル構成に巻いた上述の可撓性細片410を使用する。放射素子(
図13Cに図示せず)は、螺旋コイルから径方向外向きに面するように配置される。この例で可撓性基体に使用される材料は、螺旋コイルが使用中にその形状を保持するのに十分な剛性を有するのを確実にするように選択されてもよい。コイル構造は、外科用スコープ装置の器具チャネルを通って延在するスリーブ202に摺動可能に載置され得る。一例でコイル構造の直径は、例えばコイル構造の遠位端434とコイル構造の近位端436の間の距離を制御することによって可変であり得る。近位端436は、コイル構造が同軸ケーブル206の遠位端と接続する(例えば、取り付けられる)ところでもよい。コイル構造の遠位端434は、近位端436に対して摺動可能な制御ロッド432に取り付けてよい。コイル構造の両端を近づくように動かすことで、コイルの回転に直径を増加させる場合がある。したがってコイル構造が展開した配置、すなわち器具チャネル及び/またはスリーブ202の外側にあるとき、制御ロッド432は治療する放射構造を、生体組織の近くにするために使用できる。
【0090】
図13Dは、本発明の実施形態の電気手術器具で使用できるアプリケータ構造440を示す。アプリケータ構造440は上述の可撓性細片410を使用する。この例で可撓性細片410は、プローブハウジング442から延在しかつ引き戻されることができるループを形成する。プローブハウジング442は、上述した例と同様にして外科用スコープ装置の器具チャネルに摺動可能に載置され得る。プローブハウジングは、ループの両端が通過するその遠位面に一対の開孔を有し得る。可撓性細片410は、プローブハウジング44
2内に載置される摺動可能な制御ロッドの操作によってこの開孔を通ってハウジング内に引き入れられることができる。一例で制御ロッドは同軸ケーブル206であることができる。
【0091】
図14は、本発明の実施形態の電気手術器具で使用できるアプリケータ460の概略側面図を示す。この例でエネルギーは、器具の遠位端で衝突されることができるプラズマによって生体組織に送達される。前記アプリケータは、外科用スコープ装置の器具チャネル内に摺動可能に載置されるプローブハウジング442(例えば単独でまたはガイドスリーブ202と共に)を備える。プローブハウジングは、同軸ケーブル206を運んでガス流路445を形成する内部管腔を画定する。プローブハウジング442の近位端は、ガス(例えばアルゴンなど)供給に接続している。プローブハウジング442の遠位端で、1つ以上の溝444または開孔はガスが流出するのを可能にするために側壁に形成され得る。同軸ケーブル206は、マイクロ波エネルギーをプローブハウジング442の遠位部に伝送するように配置される。同軸ケーブルの外部導体は、1つ以上のコネクタ446によってプローブハウジング442に電気的に接続している。同軸ケーブルの内部導体212は外部導体の遠位端を越えて突出し、プローブハウジング442の遠位端に電気的に接続している。この配置によって、プローブハウジング442内で電界を設定する短絡状態が生じる。プラズマがガス流路445に沿って供給されるガスと衝突することができるように、溝444は予想される電界最大値に位置する。
【0092】
上述のアプリケータ構造は組織内マイクロ波エネルギーを送達する方法に関する。
図15及び
図16は異なる形態のエネルギーを使用できるアプリケータ構造を示す。
【0093】
図15は本発明と共に使用するのに適しているアプリケータ500の概略側面図である。アプリケータ500はグラフェンケーブルの束502を備える。ケーブル束502は、外科用スコープ装置の器具チャネルを通過するのに好適な長さを有し得る。例えばそれは長さ2メートル以上でもよい。グラフェンケーブルが非常に効率的に熱エネルギーを伝動することは周知である。したがってケーブル束502の近位端は熱源(図示せず)と熱的連通関係にある。熱源からの熱エネルギーはごくわずかな損失で器具チャネルを通過してケーブル束によって伝送でき、それによって不必要な腔内加熱の危険性を制限するまたは最小限度に抑える。
【0094】
ケーブル束502の遠位端で、個々のグラフェンケーブル504は、生体組織内にケーブル502通って移送する熱を方向づけるために操作されることができるブラシ構造内に分離される。
【0095】
図16は本発明で使用できるアプリケータ構造510の概略側面図を示す。アプリケータ510は熱電冷却効果を利用して、遠位先端の両側に熱を移して生体組織の冷却及び/または加熱効果を誘導する。アプリケータ510は、外科用スコープ装置の器具チャネル内に摺動可能に載置されるプローブ512を備える。プローブ512は器具チャネルに直接載置されてよい、または適したスリーブ202内に保持され得る。プローブ512は、プローブが位置内に移動するとき組織の損傷を防ぐために丸い遠位先端514を有する。熱電装置516はプローブ512の遠位部に載置される。熱電装置516は、プローブ512の両側に配置される一対の熱伝導プレート518、520を有する。熱伝導プレート518、520は、ペルチェ効果を使用してその電流の印加の際にプレート518、520の間に熱流を作成するのに適している半導体構造によって分離される。電流は、ケーブル522を介して装置の近位端で適切なDC電源から提供される。
【0096】
内視鏡の器具チャネルによる挿入に適しているサイズで既に述べたようなアプリケータ構造を製造し得ると共に、場合によっては、アプリケータ構造はより大きいことが望まし
い場合がある。実際にいくつかの構造のレイアップ構造、複雑さ及びそれに伴う大きさを考慮すると、その近位端から一般的なGI可撓性ビデオ内視鏡の器具チャネルを通ってそれらを供給することは可能でない場合がある。本明細書の開示は、このようなアプリケータ構造の導入及び制御の多くの代替手段を想到する。このような構造の例は
図17~
図20に関連して後述する。これらの着想が任意のGI経口法または経直腸法の適用可能性を見いだし得、そこで可撓性内視鏡及び視覚化が必要とされ、遠位アプリケータ構造は可撓性GI内視鏡の器具(または操作)チャネルによる導入を防ぐためであることを理解すべきである。
【0097】
図17及び
図18は、患者への挿入前に器具コードの遠位端で載置できるアプリケータ(例えば上述のアプリケータのいずれか)用の搬送構造に関する。
【0098】
図17は、外科用スコープ装置(例えば内視鏡または胃内視鏡)の器具コード600の遠位端による概略断面図である。器具コードは、治療領域へ及びそこから光信号を伝送するための1つ以上の視覚化管腔602と、治療領域にプローブ606を運搬するための器具チャネル604(また、本明細書では操作チャネルとも称す)と、を備える。
【0099】
図17にて、アプリケータ612用の搬送部608は、器具コード600の遠位端上にまたはその周囲に載置できる適合クリップ式アタッチメントという形態をとる。アプリケータ612(本明細書で記載の遠位アプリケータアセンブリのしぼんだバルーン及び他の任意のものでもよい)が入れ子になる凹部を形成するために前方へ突出するカップ部610を、搬送部608は有する。カップ部は、導入の際、滑らかに外側にカーブした適合形状を患者に示す。折り畳まれた/しぼんだアプリケータ612は、導入の間、良好な可視性を確実にするために視覚化管腔(複数可)602を暗くするのを避けるような方法で、カップ部610の内面に対して配置される及び/またはそれに留められることができる。
【0100】
カップ部610は、クリップ614によって器具コード600の遠位端に固着する。器具コード600が患者内に挿入される前に、プローブ606は操作チャネル604により挿入される。これは、遠位端から操作チャネル604に後退するプローブ606(それは上述のようなマルチ管腔軸を備える)を入れることによって行ってよい。この後プローブの近位接続が行われ得、器具コード600が患者内に導入される前に、搬送部608は器具コード600の遠位端に取り付けられる。提供される代替例で、アプリケータ612はプローブ606の遠位端に取り付けてよい(例えば搬送部608を取り付けるのと同時に)。
【0101】
一旦治療部位でアプリケータ612は展開して、カップ部610のすぐ前の位置で使用できる、またはカップ部を越えて後退でき、そこでカップ部は治療の遮蔽板として機能できる。
【0102】
患者からの装置の回収は、器具コード600及びin situアプリケータ612の両方を患者から同時に引き出す前に、格納構成または低容積構成(例えばバルーンをしぼませることによって)内にアプリケータ612を切替えることによって実行される。
【0103】
図18は、外科用スコープ装置(例えば内視鏡または胃内視鏡)の器具コード600の遠位端による概略断面図である。
図17と共通の特徴には同じ参照番号が付けられ、再度説明しない。
【0104】
図18で、搬送部616は器具コード600の遠位端にまたはその周囲に提供され、その結果、その最遠位端は器具コードの端と事実上ぴったり重なる。搬送部616は、アプリケータ612を保持するポケット618を画定するために器具コード600の外側上に
載置した壁である。ポケット618は、器具コード600周辺の全部またはその一部の周囲に延在し得る。ポケットの外側形状は、導入を補助するために滑らか及び整合であり得る。アプリケータ612はポケット616内に置かれて、近位接続のために操作チャネル604を通って後退するように入れられるプローブ606に接続した。アプリケータの操作及び回収は
図17に関する上述のものと同じである。
【0105】
図19は本発明と共に使用するのに適している搬送システム650の概略部分断面図である。前記システムは、そこから延在する可撓性器具コード654を備える本体652を有する外科用スコープ装置を備える。この例で搬送システム650は、同軸にまたは偏心的に器具コードの全長上適合する可撓スリーブ656を提供する。
【0106】
スリーブ656は、1つ以上の必要とされる供給物(例えば膨張媒質、同軸ケーブル、制御ワイヤなど)を遠位アプリケータ660に運搬するためのカスタムメイドの外部導管を提供する。アプリケータ660を、
図17または
図18に関連して上述した搬送構造の1つを使用するスリーブ656の遠位端に載置し得る。スリーブ656はアプリケータ660の一体部分または別の要素でもよい。
【0107】
使用中、しぼんだアプリケータ660を備えるスリーブ656(例えば搬送部内に載置した)は、患者内への挿入前に、可撓性器具コード654上に最初に供給される。
【0108】
この配置で、アプリケータの供給は器具コードの操作チャネル内にあるように制約されない。これによって、大幅に小さい直径の可撓性ビデオスコープと共に装置が使用されることを可能にし得る。例えばスリーブを、操作チャネルを有しないスコープ装置と共に使用してもよい。あるいは操作チャネルを有するスコープ装置と共に使用する場合、操作チャネルは別個の(追加の)器具の導入のために使用してよい。
【0109】
図20は本発明と共に使用するのに適している搬送システム670の概略部分断面図である。
図19と共通の特徴には同じ参照番号が付けられ、再度説明されない。
【0110】
この例で、アプリケータ660に供給物を運搬する搬送スリーブ672は、外科用スコープ装置の器具コード654に固定される(例えば留められる)。搬送スリーブ672は、理想的にはロープロファイルレイアウトの多腔型軸管を備え得る。それは、その長さに沿って間隔をおいて複数のクリップ674によって器具コードに固着する。
図17及び
図18に関連して上述したものと類似の搬送部(図示せず)は、搬送スリーブ672の遠位端に載置され得、器具コード654の遠位端に留められ得る。
【0111】
上述のように、導入の間、操作者の良好な可視性を確実にしつつ、搬送部及び搬送スリーブ672は患者内に組み合わせた器具コード654及びアプリケータ660を導入するために小型な位置を提供し得る。ロープロファイル及び滑らかな適合した外側形状を提供することによって、搬送アセンブリ及びクリップは、導入の間、患者への不快さを、確実に、最小限度にできる。
【0112】
図19に示すシステムと同様に搬送システム670はスコープ操作チャネルを利用せず、それは、より小さな直径のスコープ(操作チャネルなし)を使用できる、または操作チャネルは異なる目的(例えば器具の分離)もしくは他の種類の供給(例えば流体)のために使用できることを意味する。
【0113】
別の例で本発明の装置は、アプリケータを治療部位へ運ぶための患者内の挿入用の可撓性イントロデューサーを備え得る。可撓性イントロデューサーは、別個の可撓性内視鏡に対する要件を不要にし得る。可撓性イントロデューサーは、同軸ケーブルを囲むことがで
きるスリーブを備え得る。あるいは可撓性イントロデューサーは、アプリケータに付随する供給ラインが取り付けられることできる可撓性ロッドまたは針を備え得る。可撓性イントロデューサーは操作可能であり得、例えばその長さに沿って延在する1つ以上の制御ワイヤを有し得る。イントロデューサーは、アプリケータとは別にまたはそれと一体化して形成され得る。
【0114】
イントロデューサーは、光放射を治療部位に伝送するための内部光チャネルを含んでよい。例えばイントロデューサーまたはアプリケータは、装置の遠位端に載置したカメラを含んでよい。光チャネルは、カメラからの照明信号及び画像信号を伝送するための光ファイバーを含んでよい。
【0115】
アプリケータにカスタムメイドのイントロデューサーを提供することは、より大きな直径の操作チャネルがアプリケータと付随する供給ラインを運搬するために提供されるのを可能にし得る。イントロデューサーは使い捨てまたは低容量リポーザブルであり得る。
【0116】
装置は、治療領域の直接の視覚化を提供するスコープ装置と共に使用する必要はない。例えば装置は、超音波スキャナまたは類似の種類の外部の視覚化手段と共に使用してもよい。このような例で使用する可撓性イントロデューサーまたはカニューレは、その近位及び遠位領域のその長さに沿った目盛りを備え得る。遠位の標識は、走査画像の可視性を改善するために放射線不透過性でもよい。したがって標識は治療の位置参照として使用できる。
【0117】
参考文献
[1]Cherrington,et al.13th World Congress on Insulin Resistance,Diabetes & Cardiovascular Disease.Los Angeles,Calif.,USA,December 2015。