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  • 特許-微細気泡形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】微細気泡形成装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/2373 20220101AFI20230130BHJP
   B01F 23/2326 20220101ALI20230130BHJP
【FI】
B01F23/2373
B01F23/2326
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021153850
(22)【出願日】2021-09-22
(62)【分割の表示】P 2017087650の分割
【原出願日】2017-04-11
(65)【公開番号】P2022000303
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】599072297
【氏名又は名称】日之出産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(72)【発明者】
【氏名】大林 世一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 英夫
(72)【発明者】
【氏名】鬼海 清
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-203206(JP,A)
【文献】特開平10-286594(JP,A)
【文献】特開2017-225961(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064159(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 23/00-25/90
C02F 7/00
A01K 63/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体供給手段から液体を導く液体導入管を有し、前記液体導入管の長手方向と平行な方向に中心軸を有し加圧液を噴射させる同心円筒形の噴射ノズルを有し、
前記噴射ノズルより大きな径で噴射液と自吸孔からの気体により微細気包含有液を生じさせる前記噴射ノズルと同心円状に設けられた第1、第2の微細気泡形成管を有し、
前記噴射ノズルと微細気泡形成管との間に設けられた前記自吸孔に連なる気体導入管を備え、
前記噴射ノズルから発した噴射液が、最外側の前記第1の微細気泡形成管に達する角度位置より短長で短径な第2の微細気泡形成管を前記第1の微細気泡形成管の内側に配設した、ことを特徴とする微細気泡形成装置
【請求項2】
噴射液により前記第2の微細気泡発生管に達した角度位置より短長で短径な少なくとも第3の微細気泡形成管をその内側に配設し、以下同様に繰り返して重ねて第4以上の微細気泡形成管をその内側に配設することができるよう構成したことを特徴とする、請求項1に記載の微細気泡形成装置。
【請求項3】
流体供給手段により液体導入管に導いた加圧供給液が液圧0.04~0.25Mpaを得るための噴射ノズル径(A)を設定し、(A)の径に対し1.3から4.0倍の微細気泡形成管径(C)を設定し、微細気泡形成管長(D)は噴射ノズルから発した噴射液が負圧により広がり微細気泡形成管に当たるまでの長さ以上を有すること、を特徴とする請求項1または2に記載の微細気泡形成装置。
【請求項4】
微細気泡発生のための通液量(体積)に対し、自吸する気体が75%(体積)に達することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の微細気泡形成装置。
【請求項5】
導管により、50%の微細気泡含有水を水平に50mまで、30%の微細気泡含有水を
水平に100mまで移動ができることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の微細気泡形成装置。
【請求項6】
導管により、40%の微細気泡含有水を揚程5mまで上昇できることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の微細気泡形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡崩壊法により微細気泡を発生させる微細気泡形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中で酸素呼吸をしている生物、即ち魚類や微生物等は水中の酸素を取り入れて活動・増殖するため水中の溶存酸素が消費される。従って、酸素を呼吸することで増殖する魚類、貝類の養殖、あるいは藻類やミドリ虫、好気性微生物の培養、また活性汚泥中の微生物に対し、酸素の効率の良い供給は重要である。低下した酸素を補給するため、従来はエアーポンプ等で空気を大きなバブルとして水中に吹き込むことが行われており、酸素溶解効率が低いものであった。
【0003】
また、食品製造工程で生クリーム、バター、ババロアミックスなどを泡だて器やフードプロセッサーにより気泡を混入させた後、低温保存やゲル状になるまで冷却し気泡が抜け
ないように製造するが、連続的に大量に製造することが困難であった。このように空気や窒素ガスを含んだ食品は含まないものに比べ食感が軽くなり、ホイップバターなどは冷たい状態でも容易にパンに塗ることができる。気泡を含有することで、物性や食感に変化をもたらす技術は食品業界で重要な技術である。
【0004】
水に酸素を供給する方法として、吹き込む空気の気泡をより細かく、例えばミクロン単位(直径)の気泡として吹き込むと、水中でのミクロブラウン運動等で上昇時間が長くなり、その結果、同一吹き込み量で比較すると大きな気泡の空気より、酸素の水への溶存率が上昇することが確認されている。
【0005】
微細気泡には、ミリ単位の気泡からマイクロバブルやナノバブルのような気泡径を有するものがあり、このような気泡を液体中に供給させる方法は種々存在する。加圧溶解法、せん断流法、散気膜法、気泡崩壊法、微細ニードル法、多孔質板法等が知られている。
【0006】
微細気泡とは、液体中の孤立した気体の塊であり、徳山高専の大成らは直径10~100μm、東京大学の松本らは直径数百μm以下とし、船舶の摩擦低減などでは500~1000μm程度の気泡をマイクロバブルと呼び、また、ナノ単位の気泡はナノバブルと呼ばれ、本願発明ではこれらを含めて微細気泡と称する(書籍「マイクロバブルの世界」森北出版(株)による)。マイクロ単位のバブルは気泡界面の電荷による物体の洗浄、水への効率良い酸素の供給等に使用され、食品加工法としても利用を検討し始めている。また、ナノ単位のバブルは生物への代謝の改良、医療への利用に使われ始めている。
【0007】
本願発明の微細気泡の確認は、社団法人日本下水道協会の下水道試験法(上巻)、透視度測定法の変法として測定した。すなわち長さ50cmの管であって、管底に二重十字を置いた有底管である透視時計の前記管底を閉じた後に、上部開口に試験液を注ぎ、透視度計の底部を上部開口からのぞき、管底の二重十字が確認できた時点の経過時間を透視可時間として測定した。ストークスの法則を利用し、経過時間により気泡の大きさの概数を算出したが、その中心は200μmから20μmと推定された。
【0008】
魚や貝の養殖、微生物類の培養、排水処理の曝気槽は大容量の水中に常時十分な酸素を供給することが重要である。それぞれの生物が酸素を呼吸し、活動、増殖するのであり、供給が不足し酸欠状態の場合、即座に死に至ることは疑いのないものである。
【0009】
従って、空気から酸素を取り入れる場合は、より多くの空気を水中に取り込まなくてはならない。また、酸素の溶解効率から言えば微細気泡の状態の方が、単位あたりの気泡の表面積は大きく、水との界面が大きくなることにより、且つ、微細気泡の方がゆっくり水中を上昇するので水中に酸素が効率よく溶け込むことが知られていることから、より小さな気泡を広範囲な区域に大量に放出する技術の向上が求められている。
【0010】
また、泡を有効に利用した食品も珍しくなく、飲料としてはビール、カフェラテ、炭酸飲料等、加工食品としてはホイップクリーム、アイスクリーム、エアインチョコ、含気性のデザート、ホイップバター、練り商品などがある。気泡の大きさは種々あり、気泡の混入法も水中油型の乳化を壊しながら気泡を混入させる方法、素材ミックスの粘性を利用して気泡を混入させて低温処理して封入する方法が採られている。これらの製造では、種々の性質を持った溶液から製品の高含気率、気泡径の大小、窒素ガスのような不活性ガスを混入できる技術が求められている。
【0011】
従来の微細気泡の発生方法で、加圧溶解法では加圧部から開放されて微細気泡が生じるため使用範囲が限定され、また、散気膜法、微細ニードル法や多孔質版法では揚程を要する場合、粘度が高い液体の使用、微細気泡含有水の移送に課題があり、そして多量の微細気泡を発生させることが困難である欠点があった。
【0012】
本願発明の微細気泡形成装置は気泡崩壊法の改良装置であり、同様な機構の装置の一つであるベンチュリー管法式は原則的にベンチュリー管内に気体を導入し、高流速条件で気泡が急激に崩壊し微細気泡を発生する方法である(非特許文献1)。気体導入機構のため大量の微細気泡を発生させることは問題があり、揚程、微細気包含有水の移送には課題があり、高粘度の液体の使用は困難である欠点があった。
【0013】
また、気泡崩壊法の一種であるエジェクター方式により微細気泡を造る際は、流路を狭くし複雑にすることが求められる(特許文献1)。また、特許文献2に記載された微細気泡発生機は円形パイプの中央に球状物体を設置しその隙間に高速流体を流す構造になっており、粘度の高い液体や不純物(固体やゴミ)が含まれている場合には流速が低下したり詰まってしまう問題があった。単純なエジェクター方式であっても水中ポンプに直接設置する(非特許文献2)方法で、微細気泡含有水の揚程、移送に問題があり、液体の粘度が高い場合は流速の低下や詰まる問題があるとともに、多量に微細気泡を発生することができないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許出願公開番号 2015-20165
【文献】特許出願公開番号 2003-305494
【非特許文献】
【0015】
【文献】修士論文発表会2011年2月3日「ベンチュリー管式マイクロバブル発生法を用いた洗浄技術の開発」筑波大学院構造エネルギー工学専攻 阿部弘樹
【文献】ジャパンフードサイエンス 2012年6月号p36~38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
解決しようとする問題点は、これまでの微細気泡の形成装置は大量の微細気泡を供給できず、海や湖沼での養殖や浄化、大きな工場排水施設や下水処理場に適さない点であり、また、揚程のある設備、移送距離を有する設備に利用できない点であり、粘度の高い液体や固体を含む液体に対応できない点である。本願発明は円筒形を基本構造とし、流体への抵抗の少ない構造を有し、種々の液体に対応し大量の微細気泡を発生させ、微細気泡含有水の揚程、移送を可能とした微細気泡形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明の一視点において、微細気泡形成装置が提供される。該微細気泡形成装置は、流体供給手段から液体を導く液体導入管を有し、前記液体導入管の長手方向と平行な方向に中心軸を有し加圧液を噴射させる同心円筒形の噴射ノズルを有し、
前記噴射ノズルより大きな径で噴射液と自吸孔からの気体により微細気包含有液を生じさせる前記噴射ノズルと同心円状に設けられた第1、第2の微細気泡形成管を有し、
前記噴射ノズルと微細気泡形成管との間に設けられた前記自吸孔に連なる気体導入管を備え、
前記噴射ノズルから発した噴射液が、最外側の前記第1の微細気泡形成管に達する角度位置(即ち、当たるまでの長さ)より短長で短径な第2の微細気泡形成管を前記第1の微細気泡形成管の内側に配設した、
ことを特徴とする。
本微細気泡形成装置1は、流体供給手段から液体を導く液体導入管3を有し、前記長手方向と平行な方向に中心軸(回転の中心軸)を有し加圧液を噴射させる同心円筒形の噴射ノズル4を有し、前記噴射ノズルより大きな径で噴射液と自吸孔5からの気体により微細気包含有液を生じさせる前記同様に同心円状に設けられた微細気泡形成管7を有し、前記噴射ノズルと微細気泡形成管との間に設けられた前記自吸孔から連なる気体導入管6を有する微細気泡形成装置である。
【0018】
流体供給手段により液体導入管3に導いた加圧供給液が水圧0.04~0.25Mpaを得るための噴射ノズル径Aを設定し、Aの径に対し1.3から4.0倍の微細気泡形成管径Cを設定し、微細気泡形成管長Dは噴射ノズルから発した噴射液が負圧により広がり微細気泡形成管に当たるまでの長さ以上とした。
【0019】
微細気泡形成管の噴射ノズルから発した噴射液が、最外側の微細気泡形成管7に達した角度位置より短長で短径な第2の微細気泡形成管をその内側に付設し、噴射液により第2の微細気泡発生管に達した角度より短長で短径な第3の微細気泡形成管をその内側に付設し、同様に繰り返して重ねて設置することができ、少なくても2個以上付設することもでき、流体供給手段から導入した液体の流速が変化しても揚程や移送に対応し微細気泡を形成する装置である。
【0020】
微細気泡発生のための通液量(体積)に対し、自吸する気体が最大75%(体積)である微細気泡を形成する装置である(常圧下)。
【0021】
導管により、50%の微細気泡含有水を水平に50mまで、30%の微細気泡含有水を水平に100mまで移動ができる微細気泡を形成する装置である。
【0022】
導管により、40%の微細気泡含有水を揚程5mまで上昇できる微細気泡を形成する装置である。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から明らかのように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)本願発明の微細気泡形成装置は上述の背景技術に鑑みてなされたものであり、深く広い湖沼や海洋での養殖や浄化、大きな工場排水処理施設や下水処理場に大量の微細気泡を供給でき、流体への抵抗の少ない円筒構造を基本形としており、揚程のある設備、移送のある施設、粘度の高い液体、固体を含む液体に対応できる特性を有する。
【0024】
(2)液体導入管3に導いた加圧供給液が液圧の変化があっても適切な流速があれば噴射ノズルの径を設定し、この径に対し1.3から4.0倍の微細気泡形成管の径を設定し、微細気泡形成管の長さは噴射ノズルから発した噴射液が陰圧により広がり微細気泡形成管に当たるまでの長さ以上を有すれは良い。これにより、種々の性能の装置の製造が可能となった。
【0025】
本願の発明は流体への抵抗の少ない円筒構造を基本形とし、最小径である噴射ノズル径は工業的な場合は10mm以上あり、噴射管径以下の固形物を含有している液体であれば使用でき、揚程、移送のある工程でも高粘度液体でも詰まりがなく、微細気泡の形成が可能となった。
【0026】
(3)微細気泡形成管の噴射ノズルから発した噴射液が、最外側の微細気泡形成管7に達した角度位置より短長で短径な第2の微細気泡形成管7-1を図2のように付設し、噴射液により第2の微細気泡発生管に達した角度位置より短長で短径な第3の微細気泡形成管7-2を付設し、同様に繰り返して重ねて設置することができ、少なくても2個以上の微細気泡形成管を付設すると揚程が存在しても、遠くに移送する場合でも、若しくは使用する液体の流速が粘度等で変化する場合であっても、その流量にあった微細気泡発生管に液体が噴射され、変化に対応ができる微細気泡形成装置が可能となった。
【0027】
含気食品の加工では粘度が高い液体や果実など固体を含有する液状物に微細気泡を混入させる工程が常套手段であるが、これまでの微細気泡形成装置では前記した様に細密機構のために困難であったが、本発明の多機能を有する微細気泡形成装置でこれらの製造が可能となった。
【0028】
(4)本願発明の微細気泡形成装置は、微細気泡発生のための通液量(体積)に対し、自吸する気体が75%(体積)に達し、液体が水、気体が空気としたとき水中に多量の空気の供給が可能で、広範囲に酸素が供給され、海、湖水での養殖・環境改善、あるいは藻類やミドリ虫、好気性微生物の培養、また活性汚泥中の微生物において、効率の良い酸素供給が可能となった。
【0029】
(5)本願発明の微細気泡形成装置は、微細気泡含有水を導管により水平に遠く移送ができるようになり、施設設計の創造性が大となった。
【0030】
(6)本願発明の微細気泡形成装置は、微細気泡含有水を導管により揚程5mまで上昇でき、設置する場所を限定しなので施設設計の創造性が大となった。
【0031】
本願発明の微細気泡形成装置1に液体を流すことで気体を自吸し、減圧された液体に気泡が含有され、衝撃波面を形成しつつ、気泡が崩壊し微細気泡を発生させることを実現した。
【0032】
次に、それぞれの部位について説明すると、主管部2は、前記長手方向において管状であり、前記長手方向と平行な方向に中心軸(回転の中心軸)を有する内部空間を有する。この部分の大きさ、太さは限定されるものではなく、微細気泡の必要気泡量に準じて設計すれば良い。
【0033】
液体導入管3は、液体ポンプ液Bを噴射ノズルに導入するための導管であり、ポンプ排出管の径またはホース径にあわせ、また、液体導入管3は、前記長手方向と平行な方向に中心軸(回転の中心軸)を有して徐々に細くする内部空間を有し、液体をスムーズに流す機構を有する。径とは本発明の記載上では直径を示すこととする。
【0034】
噴射ノズル4は、前記長手方向と平行な方向に中心軸(回転の中心軸)を有し、液体導入管から導かれた流体をスムーズに流し流速を一定に保ち出口より噴射させる部位であり、流体は負圧を生じて徐々に拡大し、径の大きな微細気泡形成管に接する。
【0035】
噴射ノズル径Aの設定は、ポンプから導入される液量から求める液圧になるように定めれば良い。ポンプからの液圧を0.05Mpa~0.2Mpaとすれば良いが、より好ましくは液圧が0.08Mpa~0.15Mpaを保つものであればなお良い。
【0036】
噴射ノズル4から液体が噴射されると微細気泡形成管7との間に負圧が生じ、その開口部の自吸孔5から気体が自給され、減圧された液体に気体が含有され、減圧されることで気泡が崩壊し、衝撃波面を形成しつつ微細気泡を発生させる。
【0037】
気体導入管6または自吸孔の径5は厳格に規定されるものではなく、断面形状は角型、円形で、1又は数個あってもよく、太さも特に限定されないがあまり太いと気泡径が大きくなり好ましくはない。また、気体が空気以外であれば、発生機やボンベに導線を用いて接続すればよい。その数、形状は自吸孔に合わせ、減圧弁や圧力計を設置できればなお好ましい。
【0038】
微細気泡形成管7は、前記長手方向に同心円状の筒形の内部空間を有し、噴射ノズルから噴出した液体を受け止め負圧部分を造り、微細気泡形成管径Cは噴射ノズル径に対し1.3から4.0倍の径で良く、より好ましくは1.5から3.5倍の径であればなお良い。微細気泡形成管長Dは噴射ノズルから発した噴射液が負圧により広がり微細気泡形成管に当たるまでの長さ以上を有すれば良く、微細気泡を形成させる部位である。
【0039】
気体流入調整装置8は、自吸孔又は気体導入管に設置するものである。気体量の導入を絞る必要がある場合はこれを設置するが、この先に気体流量測定器を設置することで気体導入量を測定できる。水道水程度の純度の水では、この孔を絞ることで噴射ノズルと微細気泡形成管の間でより微細な気泡を形成することができる。
【0040】
液状体とは、本発明を実施する際(本発明の装置の場合は、使用する際であり、以下、同様である。)の環境(具体的には、液状体が受ける温度、圧力等の環境条件)において流動性を有するもの(流動性を有する液状体であるもの)を用いることができる。例えば、室温(20~25℃)において本発明を実施する場合は、室温(20~25℃)において流動性を有するものを用いることができる。また、0℃以下において本発明を実施する場合は、0℃以下において流動性を有するものを用いることができる。
【0041】
また、液状体とは、(1)液体(使用する際の環境(温度等の環境条件)において液体であるもの)のみを含有するのではなく、(2)液体(使用する際の環境(温度等の環境条件)において液体であるもの)と前記液体に溶解しない不純物を含有するもの(より詳細には、液状体が流動性を失わない範囲の前記不純物を含有するもの)も含まれる。また、差し支えがない場合であれば、液状体には、気体が含有していても構わない。液状体には、例えば、水、油脂、鉱物油、有機溶媒、河川水、湖沼水、海水、排水処理水、洗濯水(界面活性剤の混入液)、浴場水、飲用物、加工食品ミックス液、血液、個体(例えば、金属あるいは無機粒子、果実・カット野菜)を含有する液体等である。
【0042】
微細気泡を形成するための気体は、本発明を実施する際の環境(具体的には、微細気泡を形成するための気体が受ける温度、圧力等の環境条件)において気体であるものを用いることができる。例えば、室温(20~25℃)において本発明を実施する場合は、室温(20~25℃)において気体であるものを用いることができる。
【0043】
また、微細気泡を形成させるための気体は、用途・使用目的に応じて、適宜気体を選択できる。例えば、微細気泡を形成しようとする液状体に殺菌力を保持させるには、オゾンガスないしオゾンガス含有ガスを使用する。また、微細気泡を形成しようとする液状体に対して、なるべく化学的な影響を与えないようにしたい場合には窒素ガス等の不活性ガスを使用する。また、微細気泡を形成しようとする液状体の溶存酸素の濃度を高めたい場合には酸素を使用することができる。
【0044】
本願発明の微細気泡形成装置の要素として、導入した液体の圧、噴射ノズル径、微細気泡形成管径及び長さにより示したが、当然、各圧力で導入した液体と噴射ノズル径による流量、流速の関係はベルヌーイの定理にある。
【0045】
本願発明の微細気泡形成装置の素材は、金属、プラスティック、セラミック等で形態を維持できれば素材を問わないし、作成方法もパイプの利用や削り出し、鋳物、3D(次元)プリンター方式を問うものではなく、何なる大きさ(能力)のものでも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本願発明を実施するための最良の第一の形態の微細気泡形成装置図である。
図2】本願発明を実施するための最良の第3の形態の微細気泡形成装置図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態に基づいて説明するが、次に実施例を挙げて更に詳細に説明する。しかし、本願発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
図1は、本願発明の実施例の断面図であって、図1は本願発明の一実施例の円筒形状の微細気泡形成装置1の概略断面図(概略円筒形状の微細気泡形成装置1の長手方向の概略断面図)である(但し、ハッチングは省略する)。本装置はポンプ等を用い微細気泡形成装置1の主管部2にある液体導入管3に適切な圧力の加圧液(a)を流し、噴射ノズル4から噴射させると、噴射ノズルより径の大きな微細気泡形成管7の間で負圧が生じ、気体導入管6の自吸孔5から気体が自吸され、負圧された液体に気体が含有され、前記した微細気泡形成管7に当たり衝撃波面を形成しつつ、気泡が崩壊し微細気泡を連続的に形成し
た。
【実施例2】
【0049】
微細気泡形成管径の設定に関する本願微細形成装置の前方に最適な水中ポンプ(2.2kw~5.5kw)を設置し、ここから3又は4インチのホースにて液体導入管3に繋ぎ、圧力計(山本計器製造(株))を用い0.05Mpaから0.2Mpa間の圧で直径7mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mmの噴射ノズルより噴射させ、噴射ノズルより径の大きな径を変動できる微細気泡形成管7を設置し、気体導入管6の自吸孔5から気体を吸引し、通水量(V:体積)の75%(V)の気体を微細気泡として発生させる微細気泡形成管の径をそれぞれ測定した。なお、気体の量は自吸孔に接続した気体流量計(CML080:アズビル(株))にて測定し、微細気泡径の確認は前記した濁度計を用い吐出液の白濁消失時間で確認した。


【0050】
それぞれの噴射ノズル径で通水量(V)の75%(V)を吸引し、微細気泡化する際に適する微細気泡形成管径の平均値を表1にまとめた。尚、噴射管ノズル径7mmの場合での微細気泡形成管径の関係式は[数1]Y=61.4x+8.9、噴射管ノズル径20mmの場合での微細気泡形成管径の関係式は[数2]Y=174.8x+25.5、噴射ノズル管径25mmの場合での微細気泡形成管径の関係式は[数3]Y=221.2x+31.95、噴射ノズル管径30mmでの微細気泡形成径の関係式は[数4]Y=265.8x+38、噴射ノズル管径35mmでの微細気泡形成管径の関係式は[数5]Y=310.2x+44.3、噴射ノズル管径40mmでの微細気泡形成管径の関係式は[数6]Y=354x+50.7であった。xは水圧(Mpa)でこれらの結果から、水圧が下がれば微細気泡形成管径は小さくなり、水圧が大きくなればその径は大きくなることが明確になった。
【0051】
[表1]
噴射ノズル径における各 Mpa時の微細気泡形成管径
単位mm
【実施例3】
【0052】
水中ポンプから微細気泡形成装置までの揚程(ポンプ揚程3m、ポンプ揚程10m)の変化に関する。
本願微細気泡形成装置の前方に水中ポンプ(機種:エバラDL型汚水汚物用水中ポンプ1000DLB75.7 7.5kw :荏原製作所)を設置し、ここから4インチのホースにて、水中ポンプから揚程3mにて液体導入管3に繋ぎ、0.09Mpaの圧にて径59mmの噴射ノズル4(流量:2200l/min)から気泡形成管径121.2mm、管長607mmに噴射させた。
【0053】
また、前記同様のポンプを用いその水中ポンプから揚程10mにて液体導入管3に繋ぎ、0.09Mpaの圧にて直径39.7mmの噴射ノズル4(流量:1000l/min)から気泡形成管径81.5mm、管長607mmに噴射させた。なお、気体の量は自吸孔に接続した前記した流量計にて測定したところ、両者ともに通水量(V)の75%の気体を微細気泡として発生させた。
【実施例4】
【0054】
二重微細気泡形成管による微細気泡水の移送距離に関する。
ポンプ(7.5kw:エバラDL型汚水汚物用水中ポンプ1000DLB75.7:荏原製作所(株))を使用し4インチのホースにて、水中ポンプから微細気泡形成装置までの揚程3mにて液体導入管3に繋ぎ、0.09Mpaの圧にて径59mm(流量:2200l/min)の噴射ノズル4から気泡形成管(管径121.2mm、管長607mm)に噴射させ、吐出揚程0mで8インチの塩ビ管を接続し、通水量(V)の75%の気体を微細気泡として発生させた。
【0055】
前記微細気泡形成管の内側に第2の微細気泡形成管(管径97.0mm、管長2043mm)を設置し噴射ノズルから噴射すると、吐出揚程0.5m以下であれば、50%の微細気泡を含有した水を約50m移送することが可能となり、30%の微細気泡を含有した水を約100m移送することが可能となった。
【実施例5】
【0056】
二重微細気泡形成管によるポンプ揚程3mで吐出揚程0mの場合、ポンプ揚程3mで吐出揚程5mの場合の比較に関する。
本願微細気泡形成装置の前方に水中ポンプ(7.5kw:エバラDL型汚水汚物用水中ポンプ1000DLB75.7:荏原製作所(株))を設置し、ここから4インチのホースにて、水中ポンプから微細気泡形成装置までの揚程3mにて液体導入管3に繋ぎ、0.09Mpaの圧にて直径59mmの噴射ノズル4(流量:2200l/min)から気泡形成管(管径121.2mm、管長607mm)に噴射させ、吐出揚程0mで長さ3mの6インチの塩ビ管を接続し、通水量(V)の75%の気体を微細気泡として発生させたが、吐出揚程5mでは十分に微細気泡を発生できなかった。
【0057】
吐出揚程5mの場合は、上記微細気泡形成管の内側に第2の微細気泡形成管(管径88.0mm、管長220mm)を設置し、噴射ノズル4から噴射させると通水量(V)の40%(V)の気体を微細気泡として発生させた。微細気泡形成管を二重に設置することで吐出揚程が0mから吐出揚程が5mの場合でも利用が可能となった。
【実施例6】
【0058】
多重微細気泡形成管を有する微細気泡形成装置に関する。
水180Lに攪拌しながら徐々に脱脂粉乳20kg、砂糖14kg、粉ゼラチン6kg、コーンスターチ10kgを加え、弱火から徐々に加熱していき75℃に達した後、攪拌しながら45℃付近に下げてミルクムースミックスを作った。このミックスを40℃以下に下げながら粘度計(英弘精機(株)LVDV-Iprime)で測定すると温度の低下と時間の経過とともに160から400cpに増粘した。
【0059】
このミックス液をポンプ(ツルミ 40PSF2.4S:(株)鶴見製作所)で吸い込み、径7mmの噴射ノズル4を用い管径18.2mm、管長250mmnの微細気泡形成管、その内側に管径14.5mm、管長120mmの微細気泡形成管、また、その内側に管径10.4mm、管長50mmの微細気泡形成管を設置した微細気泡形成装置に通すと空気を自吸し、微細気泡を含んだ増粘ゾル状液ができた。
【0060】
出来上がった微細気泡含有ゾル液を100mlの容器にて隙間のない様に注ぎ込み、冷蔵庫でゲル化させその重量を測定、気泡を入れる処理をしていないミックス溶液を100mlの容器に移し重量を測定、容器のみの重量を同様に測定し、アイスクリームなどのオーバーランの測定法に準じて計算した結果、30%から75%のオーバランを有したババロア状のデザートができた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本願発明は幅広い液圧、粘度溶液で、多様な設定(揚程、移送)で、微細気泡を多量に発生させることができる多機能な微細気泡形成措置である。例えば湖沼での養殖や水質改善、排水処理場での溶存酸素の効率良い供給源として利用、揚程や移送の必要のある複雑な施設での利用、含気食品等の加工関連に利用でき、その他、化学工業、医療や福祉と幅広い分野で利用できる。また、種々の気体や液体(個体を含む)を利用すれば、高度な食品加工、化学反応の多様化、医学の現場等、利用可能性の高い技術である。
【符号の説明】
【0062】
1.微細気泡形成装置
2.主幹部
3.液体導入管
4.噴射ノズル
5.自吸孔
6.気体導管
7.微細気泡形成管
8.気体流入調整装置
図1
図2